説明

まつげをメークアップするための方法

本発明の一主題は、
a)生理学的に許容される媒体中で、組成物が、少なくとも部分的に乾燥状態で、1GPa以上の剛性係数Gpを達成できる少なくとも1種の化合物を含む、少なくとも1種の組成物の堆積物でまつげをコーティングするステップ、
b)前記化合物が感受性である刺激の存在下で、まつげの湾曲を修正するように、このようにコーティングされたまつげと接触して造形ツールを置くステップであって、前記接触が、組成物の剛性係数Gpが少なくとも1GPaに等しくなるまで維持され、前記刺激が、少なくとも1GPaの剛性係数が、堆積物を放置して室温で乾燥することによってそれを得ることが必要である時間t0よりも少ない時間tで得られるように選択される、ステップ
を含む、まつげをメークアップするための方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
a)生理学的に許容される媒体中で、組成物が、少なくとも部分的に乾燥状態で、1GPa以上の剛性係数Gpを達成できる少なくとも1種の化合物を含む、少なくとも1種の組成物の堆積物でまつげをコーティングするステップ、
b)前記化合物が感受性である刺激の存在下で、まつげの湾曲を修正するように、このようにコーティングされたまつげと接触して造形ツールを置くステップであって、前記接触が、組成物の剛性係数Gpが少なくとも1GPaに等しくなるまで維持され、前記刺激が、少なくとも1GPaの剛性係数が、堆積物を放置して室温で乾燥することによってそれを得ることが必要である時間t0よりも少ない時間tで得られるように選択される、ステップ
を含む、まつげをメークアップするための方法に関する。
【0002】
本発明によるメークアップ方法は、まつげを目的としている。組成物は、メークアップ組成物、メークアップ基剤、また上塗りと称されるメークアップに適用しようとする組成物、あるいは、まつげの美容上の処置のための他の組成物となり得る。とりわけ、本発明は、マスカラに関する。
【背景技術】
【0003】
マスカラと称される、まつげをメークアップするための組成物は、公知であるように、例えばWO-A-95/15741の文献によって記載されている通り、メークアップのフィルムをまつげに堆積させ、まつげを覆うための少なくとも1種のろうおよび少なくとも1種の皮膜形成ポリマーを一般に含む。使用者は、これらの製品に対して、まつげへの接着、まつげの伸びまたはカール、まつげのボリューム効果または優れた分離などの優れた化粧特性、あるいは、経時的なマスカラの優れた装着特性、具体的には、例えば、指によるまたは布地(ハンカチ、タオル)による摩擦に対する優れた抵抗性を期待する。しかし、マスカラ組成物は、常にまつげの造形維持しておくことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO-A-95/15741
【特許文献2】EP 0 465 744
【特許文献3】US 3 175 993
【特許文献4】US 4 772 675
【特許文献5】US 4 871 827
【特許文献6】US 4 888 380
【特許文献7】US 4 898 910
【特許文献8】US 4 906 719
【特許文献9】US 4 962 174
【特許文献10】WO 01/96450
【特許文献11】EP-A-847 752
【特許文献12】特許出願FR-A-2 792 190
【特許文献13】EP-A-749 747
【特許文献14】EP-A-749 746
【特許文献15】EP-A-923 928
【特許文献16】EP-A-930 060
【特許文献17】特許出願FR-A-2 262 303
【特許文献18】米国特許第4 887 622号
【特許文献19】フランス特許第2 796 529号
【特許文献20】フランス特許第2 761 959号
【特許文献21】WO 06/125122
【特許文献22】フランス特許第2769529
【特許文献23】フランス特許第2 792 618号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Lavoisier-Tec 1 Docによって出版された刊行物「Initiation a la rheologie [Introduction to Rheology]」、G. CouarrazeおよびJ.L.Grossiord、第2版、1991年
【非特許文献2】「Les photoinitiateurs dans la reticulation des revetements [Photoinitiators in the crosslinking of coatings]」、G. Li Bassi、Double Liaison - Chimie des Peintures、No. 361、1985年11月、34〜41頁
【非特許文献3】「Applications industrielles de la polymerisation photoinduite [Industrial ap-plications of photo-induced polymerization]」、Henri Strub、L'Actualite Chimique、2000年2月、5〜13頁
【非特許文献4】「Photopolymeres : considerations theoriques et reaction de prise [Photopolymers: theoretical considerations and setting reaction]」、Marc、J.M. Abadie、Double Liaison-Chimie des Peintures、No.435〜436、1992年、28〜34頁
【非特許文献5】S. Knaus、Pure Appl. Chem.、A33(7)、869(1996年)
【非特許文献6】S.Knaus、J.Polym. Sci.、Part A = Polym. Chem.、33巻、929頁(1995年)
【非特許文献7】R. Liska、Rad'Tech Europe 97、Lyon、F、1997年、Conference Proceedings
【非特許文献8】Kusabe,M.、Pitture e Verniei - European Coating; 12-B、43〜49頁、2005年
【非特許文献9】Probster,M.、Adhesion-Kleben & Dichten、2004年、481巻(1-2)、12〜14頁
【非特許文献10】Landon,S.、Pitture e Verniei vol.73、No.11、18〜24頁、1997年
【非特許文献11】Huang,Mowo、Pitture e Verniei vol.5、2000年、61〜67頁
【非特許文献12】Microemulsions Theory and Practice、L.M. Prince Ed.、Academic Press (1977年) 21〜32頁
【非特許文献13】J.Soc.Cosm.Chem. 1954年(5巻)、249〜256頁
【非特許文献14】「Encyclopedia of Chemical Technology、Kirk-Othmer」、22巻、333〜432頁、347〜377頁、第3版、1979年、Wiley
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、容易に適用され、特にカールの観点からまつげの造形を維持する、まつげをメークアップするための組成物を有することである。
【0007】
このような組成物は、特定の化合物と、光源および熱源から選択される刺激との組合せを用いることによって得ることができるということが発見された。
【0008】
本発明による組成物は、容易に適用され、まつげに十分に接着する。まつげの造形は、まつげへの適用後に速やかかつ容易に得られることが観察され、この造形が経時的に持続性であること(維持効果)が観察される。このメークアップは、使用者に心地良い。
【0009】
「まつげの造形の維持」という表現は、まつげの造形が経時的に、すなわち適用後少なくとも6時間、好ましくは少なくとも10時間、好ましくは少なくとも24時間持続性であるということを意味するものと理解される。したがって、まつげは、適用中にまつげに与えられた形状をこの最短時間保持する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
より具体的には、本発明の一主題は、
a)生理学的に許容される媒体中で、組成物が、少なくとも部分的に乾燥状態で、1GPa以上の剛性係数Gpを達成できる少なくとも1種の化合物を含む、少なくとも1種の組成物の堆積物でまつげをコーティングするステップ、
b)前記化合物が感受性である刺激の存在下で、まつげの湾曲を修正するように、このようにコーティングされたまつげと接触して造形ツールを置くステップであって、前記接触が、組成物のプラトー剛性係数Gpが少なくとも1GPaに等しくなるまで維持され、前記刺激が、少なくとも1GPaの剛性係数が、堆積物を放置して室温で乾燥することによってそれを得ることが必要である時間t0よりも少ない時間tで得られるように選択される、ステップ
を含む、まつげをメークアップするための方法である。
【0011】
好ましくは、本発明による方法では、時間tは、時間t0より少なくとも20%少ない、好ましくは少なくとも40%少ない。
【0012】
好ましくは、本発明による方法では、達成後、前記堆積物のプラトー剛性係数Gpは、堆積物が水もしくは皮脂に接触する場合、1GPaより下に低下しない。
【0013】
本発明による方法のステップa)に用いられる組成物は、組成物が、少なくとも部分的に乾燥状態で、1GPa以上のプラトー剛性係数Gpを達成できる少なくとも1種の化合物を含む。
【0014】
この剛性係数は、以下の方法に従って測定することができる。
【0015】
本発明による組成物は、特に少なくとも1種の流動学的なパラメータを用いた、その粘弾性的挙動によって特徴づけられる。
【0016】
せん断の影響下で、純然たる弾性材料の特性、すなわち、エネルギーを保存できる材料の特性、および純然たる粘稠の材料の特性、すなわち、エネルギーを散逸することができる材料の特性を有する場合、一般に、材料は粘弾性であると言われる。
【0017】
より具体的には、本発明による組成物の粘弾性的挙動は、その剛性係数G、その弾性δおよびその降伏点τcによって特徴づけることができる。これらのパラメータは、特にLavoisier-Tec 1 Docによって出版された刊行物「Initiation a la rheologie [Introduction to Rheology]」、G. CouarrazeおよびJ.L.Grossiord、第2版、1991年において定義される。
【0018】
これらのパラメータは、プレート/プレートの幾何学的配置を有するステンレス鋼スピンドルを装備したTHERMORHEO社から得られたHaake RheoStress 600(登録商標)の制御された応力レオメーターを用いて25℃±0.5℃で行われた測定によって決定され、プレートは、20mmの直径および0.3mmの間隙(組成物が堆積される固定子プレートとして公知の下部のプレートと、ロータープレートとして公知の上部プレートとの間の距離)を有する。2つのプレートは、プレートの壁での任意の滑りを制限するために線をつける。
【0019】
動力学的測定は、応力の調和した変動を適用することによって行われる。これらの実験では、材料の線形粘弾性の範囲の限界内(組成物の流動学的な特性を停止時に評価できるようになる条件)のままであるように、せん断の振幅、ずり速度および応力は低い。
【0020】
線形粘弾性の範囲は、材料の応答(すなわち、ひずみ)が、適用された力(すなわち、応力)の値にいかなる時でも正比例すると言う事実によって一般に定義される。この範囲において、適用された応力は低く、材料は、その顕微鏡的構造が修正されずにひずみを受ける。このような条件下で、材料は「停止時に」および非破壊的に試験される。
【0021】
組成物は、角振動数ω(ω=2Пν、νは適用されるせん断の振動数である)により正弦曲線状に変わる応力τ(t)に従って調和せん断を受ける。このようにせん断された組成物は、応力τ(t)を受け、剛性係数が、課された応力の関数としてほとんど変わらないマイクロひずみに対応する、ひずみγ(t)に従って応答する。
【0022】
応力τ(t)およびひずみγ(t)は、以下の方程式によってそれぞれ定義される。
τ(t)=τ0cos(ω・t) γ(t)=γ0cos(ω・t-δ)
τ0は、応力の最大振幅であり、γ0は、ひずみの最大振幅である。δは応力とひずみとの間の位相角である。
【0023】
測定は、1Hzの振動数で行われる(v=1Hz)。
【0024】
したがって、(τ0対γ0の比に対応する)剛性係数Gおよび(測定されたひずみに対して適用される応力の位相角に対応する)弾性δの変化は、適用される応力τ(t)の関数として測定される。
【0025】
具体的には、組成物のひずみは、剛性係数Gおよび弾性δの変化が7%未満(マイクロひずみ領域)であり、したがって「プラトー」パラメータGpおよびδpが決定される、応力領域について測定される。(流動を引き起こすために組成物に適用することが必要である最低限の力に対応する)降伏点τcは、曲線δ=f(τ)から決定され、δ(τc)=1.05δpであるτの値に対応する。
【0026】
組成物が、少なくとも部分的に乾燥状態で、1GPa以上のプラトー剛性係数Gpを達成できる化合物は、以下から選択することができる。すなわち、
-UV照射(光重合)の作用で、特に水および反応性粉末の存在下で重合するまたは架橋することができる化合物、
-ヒドロシリル化タイプの化学反応の作用で、重合するまたは架橋することができる化合物、
-イオンにより重合するまたは架橋することができる化合物である。
【0027】
好ましくは、この化合物は、光重合可能なイオノマー、縮合によってまたはヒドロシリル化によって反応するシリコーン化合物およびアルギン酸に基づく化合物から選択される。
【0028】
したがって、本発明の他の主題は、
a)生理学的に許容される媒体中で、光重合可能なイオノマー、縮合によってまたはヒドロシリル化によって反応するシリコーン化合物およびアルギン酸に基づく化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含む、少なくとも1種の組成物の堆積物でまつげをコーティングするステップ、
b)前記化合物が感受性であり、UVもしくは可視光線照射または熱源であることが可能である刺激の存在下で、まつげの湾曲を修正するように、このようにコーティングされたまつげと接触して造形ツールを置くステップであって、前記接触が、まつげのカールが得られるまで維持される、ステップ
を含む、まつげをメークアップするための方法である。
【0029】
「生理学的に許容される媒体」という用語は、ヒトの皮膚などのケラチン材料に適合する媒体を意味する。
【0030】
本発明による方法は、まつげをカールするステップ(すなわち、まつげの湾曲を修正するようにまつげを造形ツールと接触させるステップ)を含む。
【0031】
このカールステップは、ケラチン繊維上で使用することができる任意の塗布器を用いて手動で行うことができる。具体的には、この塗布器は、ケラチン繊維を分離するおよび/または滑らかにするための要素を装備しても装備しなくてもよい。かかる要素は、具体的には、剛毛または歯である。したがって、塗布器は、剛毛もしくは歯を装備したブラシまたはくしに対応することができる。塗布器は、下記の任意の塗布器、好ましくはアイラッシュカーラーに対応することもできる。
【0032】
本発明の他の主題は、組成物が、少なくとも部分的に乾燥状態で、上記で定義した1GPa以上のプラトー剛性係数Gpを達成できる化合物、およびさらに刺激の発生源および造形ツールを含む、まつげをメークアップするためのキットである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
光重合
本発明によるまつげをメークアップするための方法は、第1の代替形態によれば、以下のステップ、すなわち、
a)第1の組成物でおよび第2の組成物でまつげをコーティングするステップであって、第1の組成物は、少なくとも1種の光重合可能なイオノマーを含み、第2の組成物は少なくとも1種の反応性粉末を含み、第1および/または第2の組成物は、まつげ上で堆積物を形成するために水を含むステップと、
b)ステップa)と同時におよび/またはそれに続いて、まつげの湾曲を修正するように、このようにコーティングされたまつげと接触して造形ツールを置き、得られた堆積物を、前記堆積物の架橋を誘導するために十分な時間適当な波長の照射に曝露するステップとを含む。
【0034】
一代替形態によれば、第1および第2の組成物は、ケラチン繊維、具体的には、まつげへの適用前に混合される。
【0035】
第2の代替形態によれば、第1および第2の組成物は、ケラチン繊維、具体的にはまつげへの適用時にin situで混合される。
【0036】
本発明の他の主題は、
-少なくとも1種の光重合可能なイオノマーを含む第1の組成物;
-少なくとも1種の反応性粉末を含む第2の組成物;および
-光源を含み、
第1および/または第2の組成物が、少なくとも水を含み、
第1および/または第2の組成物が、顔料、ろう、充填剤、増粘剤、界面活性剤、皮膜形成ポリマー、および油から選択される少なくとも1種の添加剤を含む、ケラチン繊維をコーティングするための、具体的には、まつげをメークアップするためのキットである。
【0037】
光重合可能なイオノマー
これらの光重合可能なイオノマーは、以下の式(I)の化合物から好ましくは選択される。
BXmYn (I)
[式中、Bは、有機主鎖を表し、
Xは、独立に水および反応性粉末の存在下で重合反応を開始することができるイオン基を表し、
Yは、独立に光重合可能な基を表し、
mは、2以上の整数であり、
nは、1以上の整数である]。
【0038】
好ましくは、Bは、炭素-炭素結合を含む、場合によっては、酸素、窒素もしくは硫黄ヘテロ原子などの非干渉置換基を含む、オリゴマーのもしくはポリマーの有機主鎖である。「非干渉」という用語は、イオノマーの光重合反応にまたは暗闇で、イオノマーの反応性粉末との反応に過度に干渉しない置換基またはリンカーを意味するものと理解される。
【0039】
好ましくは、X基は、酸性基であり、好ましくはカルボキシル基である。
【0040】
Y基のうち、重合可能なエチレン不飽和基および重合可能なエポキシ基について言及することができる。エチレン不飽和基が好ましく、好ましくは、ラジカル反応機序により重合することができるものであり;例としては、置換されていようと非置換であろうと、特にアクリレート、メタクリレート、アルケンおよびアクリルアミドである。
【0041】
水性系では、例えば重合可能なエチレン不飽和基、例えばビニルエーテル基、および重合可能なエポキシ基などの陽イオン性機序によって重合される重合可能な基は、ラジカル機序が、かかる系において陽イオン性機序よりも容易に用いられるため、あまり好ましくない。
【0042】
XおよびY基は主鎖Bに、直接、または置換もしくは非置換であるアルキル、アルコキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキル、アルコキシアリール、アラルキルもしくはアルカリール基などの非干渉有機基によって結合させることができる。
【0043】
式(I)の光重合可能なイオノマーは、いくつかの合成経路に従って調製することができる。好ましい合成経路は、以下の通りである。すなわち、式B(X)m+nのポリマーのn個のX基とn個のペンダントY基を形成するために適当な化合物との間の反応である。
【0044】
「カプラー化合物」とも称される適当な化合物は、側鎖としてY基を主鎖Bに結合することによってカプラー化合物およびX基の間で共有結合を形成するために、Y基およびX基のためのポリマーと反応することができる反応基を含む。好ましいカプラー化合物は、有機化合物であり、場合によっては、Y基および反応基の間の非干渉置換基および/または非干渉リンカーを含む。
【0045】
式(I)の好ましい光重合可能なイオノマーは、それぞれのXがカルボキシル基であり、それぞれのYが、ラジカル反応によって重合することができるエチレン不飽和基であるものである。
【0046】
かかるイオノマーは、ポリアルケノイド酸(すなわち、それぞれのXがカルボキシル基である式B(X)m+nのポリマー)と、エチレン不飽和基およびカルボン酸基と反応することができる基の両方を含むカプラー化合物との間の反応によって従来どおり調製される。光重合可能なイオノマーの分子量は、好ましくは250から500000の間であり、好ましくは5000から100000の間である。これらのイオノマーは、一般に水溶性であるが、由来するポリアルケノイド酸よりも溶けにくい。
【0047】
好ましいポリアルケノイド酸は、例えばアクリル酸、2-クロロアクリル酸、3-クロロアクリル酸、2-ブロモアクリル酸、3-ブロモアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、グルタコン酸、アコニット酸、シトラコン酸、メサコン酸、フマル酸およびチグリン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸の単独重合および共重合によって調製されたものである。不飽和脂肪族カルボン酸と共重合することができるモノマーには、スチレン、ブタジエン、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、塩化ビニル、塩化アリル、酢酸ビニルなどの不飽和脂肪族化合物、ならびにアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、アクリル酸イソブチル、2-エチルヘキシルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレートおよびメタクリル酸2-ヒドロキシエチルなどのアクリルおよびメタクリル酸のエステルが含まれる。
【0048】
好ましくは、アクリル酸のホモポリマーおよびコポリマーは用いられる。
【0049】
ポリアルケノイド酸は、化粧品として許容されるもの、すなわち、非重合のモノマーがないものであるべきである。
【0050】
他の好ましいポリアルケノイド酸は、ポリアクリル酸のホモポリマー、ならびにアクリルおよびイタコン酸のコポリマー、アクリルおよびマレイン酸のコポリマー、メチルビニルエーテルおよび無水マレイン酸またはマレイン酸のコポリマー、エチレンおよび無水マレイン酸またはマレイン酸のコポリマー、ならびにスチレンおよび無水マレイン酸またはマレイン酸のコポリマーである。
【0051】
式B(X)m+nのポリマーは、例えば、フリーラジカル重合によって、すなわち、溶液中で、乳剤中でもしくは界面により調製することができる。かかるポリマーは、適当な触媒の存在下でカプラー化合物と反応することができる。
【0052】
カプラー化合物として、共有結合を形成するためにXと反応することができる少なくとも1個の基および少なくとも1個の重合可能なエチレン不飽和基をも含む化合物を特に使用することができる。Xがカルボキシル基である場合、Xと反応することができる基は、-OH、-NH2、-NCO、-COCl、および
【0053】
【化1】

【0054】
から選択することができる。
【0055】
カプラー化合物の例は、好ましくは以下の対応するメタクリレートおよびアクリレート
【0056】
【化2】

【0057】
[式中、pは、1から20の間であり、Rは、水素または1から6個の炭素原子を有するアルキル基である]、
およびさらに次式のアリル
【0058】
【化3】

【0059】
である。
【0060】
好ましいカプラー化合物は、前述した通りRを有する、以下の対応するメタクリレートおよびアクリレートである。
【0061】
【化4】

【0062】
[式中、qは1から18の間である]
【0063】
【化5】

【0064】
式(I)の好ましいイオノマーは、式B(X)m+n[式中、それぞれXは-COOH基である]のポリマーと、式-NCOの反応基を含むカプラー化合物との間の反応によって調製されるものである。
【0065】
上記の光重合可能なイオノマーは、本発明の第1の組成物の10から70重量%、好ましくは20から50重量%を一般に表す。
【0066】
反応性粉末
反応性粉末は、酸化亜鉛または酸化マグネシウムなどの金属酸化物、およびイオン放出ガラスから選択される少なくとも1種の反応性化合物を含む。
【0067】
好ましくは、反応性粉末は、放出可能なフッ素を含む。好ましくは、反応性粉末は、イオン放出ガラスから選択され、好ましくはフルオロアルミノシリケート (fluoroaluminosilicate)およびフルオロアルミノボレート(fluoroaluminoborate)から選択される。
【0068】
さらに、反応性粉末はまた、反応性化合物に加えて、少なくとも1種の重合開始剤を含むこともできる。このような重合開始剤は、光開始剤、特に、UV照射または可視光線によって誘導される重合のための開始剤から選択することができる。
【0069】
本発明の化粧組成物で用いることができる光開始剤はまた、当技術分野で公知であり、例えば、その内容が本特許出願の不可欠な部分を形成する以下の論文、すなわち、「Les photoinitiateurs dans la reticulation des revetements [Photoinitiators in the crosslinking of coatings]」、G. Li Bassi、Double Liaison - Chimie des Peintures、No. 361、1985年11月、34〜41頁;「Applications industrielles de la polymerisation photoinduite [Industrial applications of photo-induced polymerization]」、Henri Strub、L'Actualite Chimique、2000年2月、5〜13頁;および「Photopolymeres : considerations theoriques et reaction de prise [Photopolymers: theoretical considerations and setting reaction]」、Marc、J.M. Abadie、Double Liaison-Chimie des Peintures、No.435〜436、1992年、28〜34頁に記載されている。
【0070】
これらの光開始剤は、両方のラジカルおよび陽イオン性光開始剤を包含する。
・例えば、Ciba社によってIrgacure(登録商標)184、1173、2959、149、1000、500および4265という名で販売されているα-ヒドロキシケトン、
・例えば、Ciba社によってIrgacure(登録商標)907および369という名で販売されているα-アミノケトン、
・例えば、Akzo社によってTrigonal(登録商標)Pという名でおよびSandoz社によってSandoray(登録商標)1000によって販売されているクロロアセトフェノン、
・例えば、DainipponによってDaitocure(登録商標)という名で、UCBによってUvecryl(登録商標)P 36という名で、LambertiによってEsacure(登録商標)TZTという名でおよびWard BlenkinsopによってQuantacure(登録商標)ITXという名で販売されている、カンファーキノンおよび芳香族ケトンなどのジオン。チオキサントン(例えば、Sherwin WilliamsからのUltracure(登録商標)DXT)およびキノン(例えば、BASFからの2-エチルアントラキノン)について言及することもできる。これらのジオン、芳香族ケトンおよびキノンは通常、第3級アミン、より具体的にはアルカノールアミンなどの水素供与性化合物の存在を必要とし、
・例えば、Lamberti社によってEsacure(登録商標)EB 3という名でおよびAkzoによってTrigonal(登録商標)14という名で販売されているベンゾインエーテル、
・α-ジカルボニル誘導体であり、その最もよく知られている代表的なものは、CibaによってIrgacure(登録商標)651という名で販売されているベンジルジメチルケタールである。他の市販製品は、Lamberti社によってEsacure(登録商標)KBOという名でおよびWard Blenkinsop社によってQuantacure(登録商標)PDOという名で販売されている。
・例えば、Ciba社によってIrgacure(登録商標)819、1700、1800および1850ならびにDarocur(登録商標)4265という名で販売されている例えば、ビス-アシルホスフィンオキシド(BAPO)などのアシルホスフィンオキシド、
・Ciba社によって販売される、例えば、Irgacure(登録商標)OXE01およびOXE02などのオキシムエステル、
・ジアリールヨードニウムまたはトリアリールスルホニウムまたはフェロセニウム塩などのアリールオニウム塩。好ましくは、例えば、ジフェニルヨードニウムクロリド、臭化物、ヨウ化物またはヘキサフルオロリン酸塩などのジフェニルヨードニウム塩を使用する。
・例えば、ビス-(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマニウムなどのアシルゲルマニウム誘導体。
【0071】
本発明の好ましい一実施形態において、高分子量分子に付着したポリマー光開始剤または光開始剤を使用する。このような高重量の光開始剤の選択は、隣接する生物学的な基質に拡散することができる小型の、反応性の高い分子が存在しないことによる光架橋可能な化粧組成物のより優れた安全性の利点を有する。共重合可能な構成成分に関して、光開始剤の重量平均分子量は、好ましくは少なくとも500に等しい。
【0072】
例として、以下の式に対応し、LAMBERTI社によってESACURE(登録商標)KIP 150およびESACURE(登録商標)KIP EMという名で販売されているα-ヒドロキシケトンオリゴマーについて言及することができる。
【0073】
【化6】

【0074】
光開始剤基が結合されているポリマーは、高分子ネットワークに、光誘導性切断を起こさない光開始剤分子の統合を場合によっては可能にする1種または複数のエチレン二重結合を場合によっては含むことができる。
【0075】
エチレン二重結合を有するかかる高分子量光開始剤の例として、下記の式
【0076】
【化7】

【0077】
に対応し、
以下の論文、すなわち、S.Knaus、Pure Appl. Chem.、A33(7)、869頁(1996年);S.Knaus、J.Polym. Sci.、Part A = Polym. Chem.、33巻、929頁(1995年);およびR. Liska、Rad'Tech Europe 97、Lyon、F、1997年、Conference Proceedingsに記載されている構造に対応するものについて言及することができる。
【0078】
本発明の化粧組成物において、好ましくは、異なる波長で光を吸収する光開始剤の混合物を使用する。したがって、光架橋可能な化粧組成物の吸収スペクトルを、用いられる光源の発光スペクトルに適合することが可能である。
【0079】
使用される光開始剤の濃度は、例えば、混合物の様々な構成成分の反応性、顔料もしくは色素の存在、所望の架橋密度、光源の強度または曝露時間などの多数の因子に依存する。
【0080】
満足できる機械的特性を得るために、エチレン二重結合を含む化合物の全重量に対して、少なくとも0.01重量%に等しい、最大限でも5重量%に等しい、好ましくは0.1重量%から5重量%の間の光開始剤の総量が、一般に用いられる。
【0081】
好ましくは、ジフェニルヨードニウム塩であり、好ましくはジフェニルヨードニウムクロリドである光開始剤は用いられる。このような光開始剤は、Vitrebond 7512PおよびVitrebond 7510という参照で3Mによって販売されるフルオロアルミノシリケートガラスなどの反応性化合物をも含む、特に市販の組成物に存在する。
【0082】
好ましくは、粉末(すなわち、反応性粉末または反応性粉末+イオノマー)/液体重量比は、1/1から5/1の間である。
【0083】
光源
本発明による光源は、照射源に対応している。
【0084】
かかる照射源は、紫外線照射の発生源または可視光線の発生源から選択される。
【0085】
本発明の化粧組成物を架橋するために適した照射は、10nmから500μmの間、好ましくは400から700nmの間、好ましくは400から520nmの間の波長を有する。レーザーの使用は、想定することもできる。
【0086】
本発明の好ましい一実施形態において、UVランプ、具体的には水銀蒸気ランプを使用し、水銀は、場合によってはガリウムなどの他の元素でドープ処理され、光源の発光スペクトルを修正することができる。
【0087】
本発明の化粧組成物を架橋するために適した照射は、500から2400mW/cm2の間、好ましくは700から850mW/cm2の間の電力を有する。
【0088】
堆積したフィルムの照射への曝露時間は、化学的性質および反応性構成成分の濃度あるいは所望の架橋密度などの様々な因子に依存する。
【0089】
本発明による組成物のために、一般に10秒から10分の間、好ましくは10秒から1分の間、好ましくは15から40秒の間の曝露時間の満足する結果を得ようと努めている。
【0090】
親水性溶媒
第1および/または第2の組成物は、水を含む。
【0091】
それが水を含む場合、第1および/または第2の組成物は、少なくとも1種の共溶媒を含むこともできる。
【0092】
「共溶媒」という用語は、共溶媒およびイオノマーの均質な水溶液を形成するために、水に光架橋可能なイオノマーを溶解させるために役立つ化合物を意味するものと理解される。前記共溶媒は、水混和性溶媒(25℃で形成することができる溶媒/水混合物、眼に均質および透明である混合物)、例えば、エタノールもしくはイソプロパノールなどの1から5個の炭素原子を有する低級モノアルコール、2から8個の炭素原子を有するグリコール、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、あるいは1,3-プロパンジオールまたは1,a-ブタンジオールなどのジオール、アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトンなどのC3〜C6ケトン、C2〜C4アルデヒド、およびそれらの混合物から選択されるが、低分子量のアルケニル親水性共重合可能な溶媒、例えば、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルまたはメタクリル酸2-ヒドロキシプロピルからも選択される。「共重合可能な」という用語は、共溶媒がイオノマーと相容性がある方式で反応することができることを意味するものと理解される。
【0093】
水、および場合によっては水混和性有機溶媒は、第1および/または第2の組成物の全重量に対して、1重量%から95重量%、好ましくは5重量%から80重量%、さらに良いのは10重量%から60重量%の範囲の含有量に存在し得る。
【0094】
本発明による組成物は、上記化合物に加えて、顔料、油、ろう、界面活性剤、皮膜形成ポリマー、充填剤、増粘剤、粉状化合物、または任意の他の化粧添加剤を含むこともできる。
【0095】
化学架橋の作用で重合することができる化合物
ヒドロシリル化によってまたは縮合によって反応するシリコーン化合物
本発明によるまつげをメークアップするための方法は、第2の代替形態によれば、以下のステップ、すなわち、
a)まつげを第1の組成物および第2の組成物でコーティングするステップであって、第1の組成物は、まつげ上で堆積物を形成するために、少なくとも1種のシリコーン化合物Xを含み、第2の組成物が少なくとも1種のシリコーン化合物Yを含むステップと、
b)ステップa)と同時におよび/またはそれに続いて、前記堆積物の架橋を誘導するために十分な時間、まつげの湾曲を修正するように、このようにコーティングされたまつげと接触して造形ツールを置くステップを含む。
【0096】
一代替形態によれば、第1および第2の組成物は、ケラチン繊維への適用前に混合される。
【0097】
第2の代替形態によれば、第1および第2の組成物は、ケラチン繊維への適用時にin situで混合される。
【0098】
1-ヒドロシリル化によって反応することができるシリコーン化合物XおよびY
一実施形態によれば、化合物XおよびYは、ヒドロシリル化によって反応することができ、この反応を、以下に単純な用語で模式的に表すことができる。
【0099】
【化8】

【0100】
[ここで、Wは、1個もしくは複数の不飽和脂肪族基を含む炭素に基づく鎖および/またはシリコーン鎖を表す]。
【0101】
このような場合において、化合物Xは、少なくとも2個の不飽和脂肪族基を含むシリコーン化合物から選択することができる。例えば、化合物Xは、不飽和脂肪族基が主鎖(側基)上でペンダントであるまたは化合物(末端基)の主鎖の末端に位置しているシリコーン主鎖を含むことができる。説明の残りでは、これらの特定の化合物は、不飽和脂肪族基を含むポリオルガノシロキサンと称される。
【0102】
一実施形態によれば、化合物Xおよび/または化合物Yは、前述した通り、まつげとの少なくとも1つの水素結合を形成することができる、少なくとも1個の極性基を有する。この極性基は、少なくとも2個の不飽和脂肪族基を含む化合物Xによって生成されると有利である。
【0103】
一実施形態によれば、化合物Xは、例えば、それぞれがケイ素原子に結合した2もしくは3個のビニルまたはアリル基などの、少なくとも2個の不飽和脂肪族基を含むポリオルガノシロキサンから選択される。
【0104】
有利な一実施形態によれば、化合物Xは、次式のシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサンから選択される。
【0105】
【化9】

【0106】
[式中、
-Rは、1から30個の炭素原子、好ましくは1から20個、さらに良いのは1から10個の炭素原子を含む、直鎖もしくは環式の一価の炭化水素系基、例えば、1から10個の炭素原子を含む、例えば、短鎖アルキル基、具体的には、メチル基、あるいはフェニル基、好ましくはメチル基を表し、
-mは、1または2に等しく、
-R'は、
○ 2から10個、好ましくは2から5個の炭素原子を含む不飽和脂肪族炭化水素系基、例えば、ビニル基または-R''-CH=CHR'''基[式中、R''は、ケイ素原子に結合した1から8個の炭素原子を含む二価の脂肪族炭化水素系鎖であり、R'''は、水素原子または1から4個の炭素原子を含むアルキル基であり、好ましくは水素原子であり;言及することができるR'基には、ビニルおよびアリル基およびそれらの混合物が含まれる];または
○ 5から8個の炭素原子を含む不飽和の環式炭化水素系基、例えば、シクロヘキセニル基を表す]。
【0107】
好ましくは、R'は、不飽和脂肪族炭化水素系基であり、好ましくはビニル基である。
【0108】
具体的な一実施形態によれば、ポリオルガノシロキサンは、次式の単位をも含む。
【0109】
【化10】

【0110】
[式中、Rは、上記で定義した基であり、nは、1、2または3に等しい]
【0111】
変形形態によれば、化合物Xは、少なくとも2個のエチレン不飽和基を含むシリコーン樹脂となり得、前記樹脂は、ヒドロシリル化によって化合物Yと反応することができる。言及することができる例には、それ自体が-CH=CH2不飽和反応性末端を有するMQもしくはMTタイプの樹脂が含まれる。
【0112】
これらの樹脂は、架橋有機シロキサンポリマーである。
【0113】
シリコーン樹脂の呼び名は、「MDTQ」という名で知られており、この樹脂は、樹脂が含む様々なシロキサンモノマー単位の官能基として記載されており、それぞれのM、D、TおよびQという文字は、単位のタイプを特徴付ける。
【0114】
Mという文字は、式(CH3)3SiO1/2の単官能性単位を表し、ケイ素原子は、この単位を含むポリマー中で1個の酸素原子のみに結合している。
【0115】
Dという文字は、二官能性単位(CH3)2SiO2/2を意味し、ケイ素原子は、2個の酸素原子に結合している。
【0116】
Tという文字は、式(CH3)SiO3/2の三官能性単位を表す。
【0117】
上記で定義した単位M、DおよびTにおいて、メチル基の少なくとも1個は、2から10個の炭素原子を含む炭化水素系基(特にアルキル)またはフェニル基など、メチル基以外のR基、あるいはヒドロキシル基で置換することができる。
【0118】
最後に、Qという文字は、四官能性単位SiO4/2を意味し、ケイ素原子は、それ自体がポリマーの残りに結合している4個の水素原子に結合している。言及することができるかかる樹脂の例には、ポリ(フェニルビニルシルセスキオキサン)などのMTシリコーン樹脂、例えばGelest社によってSST-3PV1という参照で販売される製品が含まれる。
【0119】
好ましくは、化合物Xは、不飽和脂肪族基の0.01重量%から1重量%を含む。
【0120】
有利には、化合物Xは、ポリオルガノポリシロキサン、特にシロキサン単位(I)、および場合によっては上記の(II)を含むものから選択される。
【0121】
化合物Yは、好ましくは少なくとも2個の遊離のSi-H基(ヒドロシラン基)を含む。
【0122】
化合物Yは、以下の式を有する少なくとも1個のアルキルヒドロシロキサン単位を含む有機シロキサンから選択されると有利となり得る。
【0123】
【化11】

【0124】
式中、
Rは、1から30個の炭素原子を含む直鎖もしくは環式の一価の炭化水素系基、例えば、1から30個の炭素原子、好ましくは1から20個、さらに良いのは1から10個の炭素原子を含む、アルキル基、具体的にはメチル基、あるいはフェニル基を表し、pは、1または2に等しい。好ましくは、Rは、炭化水素系基であり、好ましくはメチルである。
【0125】
アルキルヒドロシロキサン単位を含むこれらの有機シロキサン化合物Yは、上記で定義した通り次式の単位を含むこともできる。
【0126】
【化12】

【0127】
化合物Yは、上記で定義した通り単位M、D、TおよびQから選択される少なくとも1個の単位を含み、少なくとも1個のSi-H基を含むシリコーン樹脂、例えばGelest社によってSST-3MH1.1という参照で販売されるポリ(メチルヒドリドシルセスキオキサン)となり得る。
【0128】
好ましくは、これらの有機シロキサン化合物Yは、Si-H基0.5重量%から2.5重量%を含む。
【0129】
有利には、基Rは、上記の式(I)、(II)および(III)においてメチル基を表す。
【0130】
好ましくは、これらの有機シロキサンYは、式(CH3)3SiO1/2の末端基を含む。
【0131】
有利には、有機シロキサンYは、式(H3C)(H)SiOの少なくとも2つのアルキルヒドロシロキサン単位を含み、場合によっては(H3C)2SiO単位を含む。
【0132】
ヒドロシラン基を含むかかる有機シロキサン化合物Yは、例えば、EP 0 465 744の文献中に記載されている。
【0133】
1a-追加の反応性化合物
一実施形態によれば、化合物Xおよび/またはYを含む組成物は、
-これらの表面で少なくとも2個の不飽和脂肪族基を含む有機もしくは鉱物粒子(例えば、例えばビニル基を含むシリコーン化合物で表面処理済みのシリカ、例えば、シクロテトラメチルテトラビニルシロキサンで処理されたシリカについて言及することができる)、
-ヘキサメチルジシラザンなどのシラザン化合物などの追加の反応性化合物を含むこともできる。
【0134】
1b-触媒
ヒドロシリル化反応は、化合物Xおよび/または化合物Yを含む組成物のいずれかまたは別々の組成物に存在し得る触媒の存在下で行われると有利であり、触媒は、好ましくは白金に基づいているまたはスズに基づいている。
【0135】
言及することができる例には、シリカゲルまたは木炭粉末の担体上で堆積した白金に基づく触媒、塩化白金、白金塩およびヘキサクロロ白金酸が含まれる。
【0136】
オルガノシリコーン媒体中で容易に分散可能である六水和物もしくは無水の形態のヘキサクロロ白金酸は、好ましくは使用される。
【0137】
ヘキサクロロ白金酸六水和物に基づくものおよびジビニルテトラメチルジシロキサンに基づくものなどの白金錯体について言及することもできる。
【0138】
触媒は、それを含む組成物の全重量に対して0.0001重量%から20重量%の範囲の含有量において本発明で有用である組成物のいずれかに存在し得る。
【0139】
重合防止剤または抑制剤、より具体的には触媒阻害剤(catalyst inhibitor)は、経時的に組成物の安定性を高めるためにまたは重合を抑制するために、本発明の組成物に投入することもできる。限定しない方式で、環式ポリメチルビニルシロキサン、具体的にはテトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、およびアセチレンアルコールについて言及することができ、好ましくはメチルイソブチノールなどの揮発性である。
【0140】
第1および第2の組成物の一方および/または他方における酢酸ナトリウムなどのイオン性塩の存在は、化合物の重合の速度に影響を与え得る。
【0141】
ヒドロシリル化によって反応する化合物XおよびYの組合せの例として、Dow Corning社によって販売される以下の参照、すなわちDC 7-9800 Soft Skin Adhesive Parts A & Bについて言及することができ、Dow Corningによって調製された以下の混合物AおよびBについても言及することができる。
【0142】
【表1】

【0143】
【表2】

【0144】
有利には、化合物XおよびYは、ヒドロシリル化によって反応することができるシリコーン化合物から選択され;具体的には、化合物Xは、上記の式(I)の単位を含むポリオルガノシロキサンから選択され、化合物Yは、上記の式(III)のアルキルヒドロシロキサン単位を含む有機シロキサンから選択される。具体的な一実施形態によれば、化合物Xは、ビニル末端基を含むポリジメチルシロキサンであり、化合物Yは、メチルヒドロシロキサンである。
【0145】
縮合によって反応することができる化合物XおよびY
本実施形態によれば、化合物XおよびYは、アルコキシシラン基を有する2種の化合物の反応による水(加水分解)の存在下での縮合によってまたはアルコキシシラン基を有する化合物およびシラノール基を有する化合物の反応によるもしくはシラノール基を有する2種の化合物の反応による「直接」縮合によって反応させることができる。
【0146】
縮合が水の存在下で行われる場合、この水は、特に周囲の水分、まつげの残留水、または外部の発生源によって、例えばまつげの前湿潤によってもたらされる水、(例えば、霧吹き、または天然もしくは人工の涙で)で有り得る。
【0147】
縮合による反応のこのモードにおいて、同一となり得るまたは異なり得る、化合物XおよびYは、したがって、主鎖がその鎖の側鎖および/または末端で少なくとも2個のアルコキシシラン基および/または少なくとも2個のシラノール(Si-OH)基を含む、シリコーン化合物から選択することができる。
【0148】
一実施形態によれば、化合物Xおよび/または化合物Yは、前述した通り、まつげと少なくとも1つの水素結合を形成することができる少なくとも1個の極性基を有する。
【0149】
有利な一実施形態では、化合物Xおよび/またはYは、少なくとも2個のアルコキシシラン基を含むポリオルガノシロキサンから選択される。「アルコキシシラン基」という用語は、少なくとも1つの-Si-OR部分を含む基を意味し、Rは、1から6個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0150】
化合物XおよびYは、特に、アルコキシシラン末端基を含むポリオルガノシロキサン、より具体的には、少なくとも2個のアルコキシシラン末端基、好ましくはトリアルコキシシラン末端基を含むものから選択される。
【0151】
これらの化合物Xおよび/またはYは好ましくは主に次式の単位を含む。
R9SSiO(4-s)/2 (IV)
式中、R9は、独立に1から6個の炭素原子を含むアルキル基、フェニルおよびフルオロアルキル基から選択される基を表し、Sは、0、1、2または3に等しい。好ましくは、R9は、独立に1から6個の炭素原子を有するアルキル基を表す。特に言及することができるアルキル基には、メチル、プロピル、ブチル、およびヘキシル、ならびにそれらの混合物が含まれ、好ましくはメチルまたはエチルである。言及することができるフルオロアルキル基は、3,3,3-トリフルオロプロピルである。
【0152】
具体的な一実施形態によれば、同一となり得るまたは異なり得る化合物XおよびYは、次式の単位を含むポリオルガノシロキサンである。
(R92SiO2)f- (V)
式中、R9は、前述した通りであり、好ましくはR9は、メチル基であり、
fは、特にポリマーが25℃で0.5から3000Pa.sの範囲の粘性、好ましくは5から150Pa.sの範囲の粘性を有するようなものであり、例えば、fは、2から5000、好ましくは3から3000、さらに良いのは5から1000の範囲となり得る。
【0153】
これらのポリオルガノシロキサン化合物XおよびYは、1ポリマー分子当たり少なくとも2個のトリアルコキシシラン末端基を含み、前記基は、以下の式を有する。
-ZSiR1x(OR)3-x (VI)
式中、
基Rは、独立にメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルまたはイソブチル基を表し、好ましくはメチルまたはエチル基を表し、
R1は、メチルまたはエチル基であり、
xは、0または1に等しく、好ましくはxは0に等しく、
Zは、いかなるエチレン不飽和基も含まず1から18個の炭素原子、好ましくは2から18個の炭素原子(アルキレン基)を含む二価の炭化水素系基、二価の炭化水素系基および以下の式(IX)のシロキサンセグメントの組合せから選択される。
【0154】
【化13】

【0155】
R9は、前述した通りであり、Gは、いかなるエチレン不飽和基も含まず、1から18個の炭素原子、好ましくは2から18個の炭素原子を含む二価の炭化水素系基であり、cは、1から6の整数である。
【0156】
ZおよびGは、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンなどのアルキレン基、およびフェニレンなどのアリーレン基から特に選択することができる。
【0157】
好ましくは、Zは、アルキレン基であり、さらに良いのはエチレンである。
【0158】
これらのポリマーは、平均して1分子当たり少なくとも1.2トリアルコキシシラン末端基または末端鎖、好ましくは平均して1分子当たり少なくとも1.5トリアルコキシシラン末端基を含むことができる。これらのポリマーが、1分子当たり少なくとも1.2トリアルコキシシラン末端基を含むことができるため、いくつかは、式CH2=CH-SiR92-もしくは式R63-Si-の末端基などの末端基の他のタイプを含むことができ、式中、R9は、上記で定義された通りであり、それぞれのR6基は、独立にR9またはビニル基から選択される。言及することができるかかる末端基の例には、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、ビニルジメトキシシランおよびビニルメチルオキシフェニルシラン基が含まれる。
【0159】
かかるポリマーは、US 3 175 993、US 4 772 675、US 4 871 827、US 4 888 380、US 4 898 910、US 4 906 719およびUS 4 962 174の文献中に特に記載されており、その内容は、参照により本特許出願に組み込まれる。
【0160】
化合物Xおよび/またはYとして、特に、次式のポリマーについて言及することができる。
【0161】
【化14】

【0162】
式中、R、R1、R9、Z、xおよびfは、前述した通りである。
【0163】
化合物Xおよび/またはYはまた、上記式(VII)のポリマーと以下の式(VIII)のポリマーとの混合物を含むこともできる。
【0164】
【化15】

【0165】
式中、R、R1、R9、Z、xおよびfは、前述した通りである。
【0166】
アルコキシシラン基を含むポリオルガノシロキサン化合物Xおよび/またはYがこのような混合物を含む場合、様々なポリオルガノシロキサンは、オルガノシリル末端鎖が、数によって、末端鎖の40%未満、好ましくは25%未満を表すような含有量で存在する。
【0167】
特に好ましいポリオルガノシロキサン化合物Xおよび/またはYは、上記の式(VII)のものである。かかる化合物Xおよび/またはYは、例えば、WO 01/96450の文献中で記載されている。
【0168】
好ましい一実施形態によれば、化合物XおよびYは、メトキシシラン基を含むポリジメチルシロキサンの混合物を表す。
【0169】
上記で示したように、化合物XおよびYは、同一となり得るまたは異なり得る。
【0170】
一変形形態によれば、2種の反応性化合物XまたはYの一方が、シリコーン性質であり、もう一方は有機の性質である。例えば、化合物Xは、有機オリゴマーもしくはポリマーまたは有機/シリコーンハイブリッドオリゴマーもしくはポリマーから選択され、前記ポリマーまたはオリゴマーは、少なくとも2個のアルコキシシラン基を含み、Yは、上記のポリオルガノシロキサンなどのシリコーン化合物から選択される。具体的には、有機オリゴマーもしくはポリマーは、ビニル、(メト)アクリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンおよび/またはポリ尿素、ポリエーテル、ポリオレフィンまたはペルフルオロポリエーテルオリゴマーまたはポリマー、ならびに高度に分枝した(hyperbranched)有機デンドリマーおよびポリマー、およびそれらの混合物から選択される。
【0171】
一実施形態によれば、有機の性質のもしくは有機/シリコーンハイブリッドの性質の化合物Xは、前述した通り、まつげとの少なくとも1つの水素結合を形成することができる少なくとも1個の極性基を有する。
【0172】
アルコキシシラン側基を有するビニルまたは(メト)アクリルの性質の有機ポリマーは、具体的には、少なくとも1種の有機ビニルまたは(メト)アクリルモノマーの(メト)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシランなどとの共重合によって得ることができる。
【0173】
言及することができる例には、Kusabe,M.、Pitture e Verniei - European Coating; 12-B、43〜49頁、2005年による文献中に記載されている(メト)アクリルポリマー、特に、KanekaからのMAXとして参照されるアルコキシシラン基を含むポリアクリレートまたはProbster,M.、Adhesion-Kleben & Dichten、2004年、481巻(1-2)、12〜14頁による刊行物に記載されているものが含まれる。
【0174】
ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンおよび/またはポリ尿素、およびポリエーテルなどの重縮合または重付加から生じる有機ポリマー、およびアルコキシシラン側基および/または末端基を有する有機ポリマーは、例えば、前述した通りオリゴマーのプレポリマーの、少なくとも1個のアルコキシシラン基を有する以下のシラン共試薬(coreagent)、すなわち、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシランの1つとの反応から生じ得る。
【0175】
アルコキシシラン基を含むポリエーテルおよびポリイソブチレンの例は、Kusabe,M.、Pitture e Verniei - European Coating; 12-B、43〜49頁、2005年による刊行物に記載されている。アルコキシシラン末端基を含むポリウレタンの例として、Probster,M.、Adhesion-Kleben & Dichten、2004年、481巻(1-2)12〜14頁による文献に記載されているものあるいはLandon,S.、Pitture e Verniei vol.73、No.11、18〜24頁、1997年による文献またはHuang,Mowo、Pitture e Verniei vol.5、2000年、61〜67頁による文献に記載されているものについて言及することができ;OSI-WITCO-GEからのアルコキシシラン基を含むポリウレタンについて特に言及することができる。
【0176】
言及することができるポリオルガノシロキサン化合物Xおよび/またはYには、それ自体がアルコキシシランおよび/またはシラノール末端を有するMQもしくはMTタイプの樹脂、例えば、Gelest社によるSST-S7C41(3個のSi-OH基)という参照で販売されているシラノール基で官能性をもたせたポリ(イソブチルシルセスキオキサン)樹脂が含まれる。
【0177】
2a-追加の反応性化合物
本発明に有用である組成物の1種は、少なくとも2個のアルコキシシランまたはシラノール基を含む追加の反応性化合物を含むこともできる。
【0178】
例えば、これらの表面でアルコキシシランおよび/またはシラノール基を含む有機もしくは鉱物粒子、例えば、かかる基で表面処理済みの充填剤について言及することができる。
【0179】
2b-触媒
縮合反応は、Xおよび/またはYを含む組成物のいずれかにまたは別々の組成物中に存在し得る金属に基づく触媒の存在下で行うことができる。反応のこのタイプに有用である触媒は、好ましくはチタンに基づく触媒である。
【0180】
次式のテトラアルコキシチタンに基づく触媒について特に言及することができる。
Ti(OR2)y(OR3)4-y
式中、R2は、tert-ブチル、tert-アミルおよび2,4-ジメチル-3-ペンチルなどの第三アルキル基から選択され;R3は、1から6個の炭素原子を含むアルキル基、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルまたはヘキシル基を表し、yは、3から4の範囲の数字、さらに良いのは3.4から4の範囲の数字である。
【0181】
触媒は、それを含む組成物の全重量に対して0.0001重量%から20重量%の範囲の含有量で本発明に有用である組成物のいずれかに存在し得る。
【0182】
2c-賦形剤
Xおよび/またはYを含む有用な組成物は、組成物の粘性を低下させるために揮発性シリコーン油(または賦形剤)を含むこともできる。この油は、ヘキサメチルジシロキサンまたはオクタメチルトリシロキサンなどの短鎖直鎖シリコーン、およびオクタメチルシクロテトラシロキサンおよびデカメチルシクロペンタシロキサンなどの環式シリコーン、およびそれらの混合物から選択することができる。
【0183】
このシリコーン油は、それぞれの組成物の重量に対して5重量%から95重量%、好ましくは、10重量%から80重量%を表すことができる。
【0184】
アルコキシシラン基を有し縮合によって反応する化合物XおよびYの組合せの例として、Dow Corning社によって調製された以下の混合物A'およびB'の組合せについて言及することができる。
【0185】
【表3】

【0186】
【表4】

【0187】
同一の化合物XおよびYは、混合物A'中で合わせることにさらに留意されたい。
【0188】
イオン架橋の作用で重合することができる化合物
本発明によるまつげをメークアップするための方法は、第3の代替形態によれば、以下のステップ、すなわち、
a)第1の組成物でおよび第2の組成物でまつげをコーティングするステップであって、第1の組成物は、アルギン酸に基づく少なくとも1種の化合物を含み、第2の組成物は、まつげ上で堆積物を形成するために、少なくとも1種の錯生成剤を含むステップと、
b)ステップa)と同時におよび/またはそれに続いて、前記堆積物の架橋を誘導するために十分な時間、まつげの湾曲を修正するように、このようにコーティングされたまつげと接触して造形ツールを置くステップとを含む。
【0189】
一代替形態よれば、第1および第2の組成物は、ケラチン繊維への適用前に混合される。
【0190】
第2の代替形態によれば、第1および第2の組成物は、ケラチン繊維への適用時にin situで混合される。
【0191】
アルギン酸に基づく化合物
「アルギン酸に基づく化合物」という表現は、特に、アルギン酸、アルギン酸誘導体およびアルギン酸の塩(アルギン酸塩)または前記誘導体の塩を意味することが理解される。
【0192】
好ましくは、アルギン酸に基づく化合物は、水溶性である。
【0193】
褐藻またはある種の細菌から生じる天然物質であるアルギン酸は、1,4-グリコシド結合によって結合した2つのウロン酸:β-D-マニュロン(M)酸およびα-L-グルクロン(G)酸から構成されるポリウロン酸である。
【0194】
アルギン酸は、ナトリウム、カリウムまたはリチウムなどのアルカリ金属、メチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンなどの低級アミンおよびアンモニウムの置換された陽イオンを有する水溶性塩(アルギン酸塩)を形成することができる。これらのアルギン酸塩は、pH4の水性媒体中で水溶性であるが、pH4未満のアルギン酸に解離する。
【0195】
これらのアルギン酸塩は、前記錯生成剤と残基Gの負に荷電した基との間にイオン結合を形成することによって、錯生成剤の存在下で一緒になって架橋することができる。いくつかのアルギン酸塩分子間で複数の架橋を形成することによって、水に溶けないゲル剤を形成するマトリックスを形成する。
【0196】
好ましくは、10000から1000000、好ましくは15000から500000、さらに良いのは20000から250000の範囲の重量平均分子量を有するアルギン酸に基づく化合物を使用する。
【0197】
好ましい一実施形態によれば、アルギン酸に基づく化合物は、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カリウムである。
【0198】
アルギン酸に基づく化合物は、それを含む組成物の全重量に対して0.1重量%から30重量%、好ましくは0.5重量%から20重量%、さらに良いのは1重量%から10重量%の範囲の含有量に存在し得る。
【0199】
錯生成剤
錯生成剤は、イオン結合の形成によってアルギン酸に基づく化合物と錯体生成することができる。この錯体生成は可逆的である。
【0200】
錯生成剤は、特に陽イオン高分子電解質および多価イオンおよびそれらの塩、具体的には多価陽イオンもしくはポリ陽イオンの塩から選択することができる。錯生成剤は、好ましくは第2の組成物中で水溶性の形態である。
【0201】
多価イオンは、特に、好ましくは2から4の範囲の原子価を有するポリ陽イオンまたは多価陽イオン、より好ましくは二価の陽イオン、具体的には、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、亜鉛、ニッケル、銅(+II)およびマンガン陽イオンなどの陽イオン、およびそれらの混合物となり得る。特に、上記陽イオンの塩化物または硫酸塩、具体的には塩化カルシウムなどの塩化物について言及することができる。
【0202】
高分子電解質として、例えば、ポリ(エチレンアミン)とも称されるポリ(エチレンイミン)、ポリ(L-リシン)、ポリ(L-グルタミン)、ポリビニルアミンまたはキトサンなどのポリアミンおよび2-ヒドロキシ-1-プロピル-N-メチルアンモニウムポリクロリド、2-ヒドロキシ-1-プロピル-1,N-ジメチルアンモニウムポリクロリド、2-ビニルイミダゾリニウムポリヒドロジェノスルファートまたはジアリルジメチルアンモニウムポリクロリドなどの四級化ポリアミンについて言及することができる。
【0203】
錯生成剤は、組成物の全重量に対して0.01重量%から30重量%、好ましくは0.02重量%から15重量%、さらに良いのは0.05重量%から5重量%の範囲の含有量で存在し得る。
【0204】
多糖類および錯生成剤の間の反応の速度は、組成物のpHおよび/または温度条件を修正することによって、あるいは多糖類および錯生成剤の間の反応を加速するまたは減速することができる化合物、例えば、アルギン酸に基づく誘導体の架橋を減速できるリン酸ナトリウムを加えることによって調節することができる。
【0205】

組成物は、少なくとも1種の油を含むことができる。このような構成成分は、それが揮発性である場合、本発明による組成物の乾燥中蒸発する。
【0206】
「揮発油」という用語は、本発明の意味の範囲内で、室温で、具体的には10-2から300mmHg(1.33Paから40000Pa)の範囲の、好ましくは0.3mmHg(30Pa)を超える、室温の非ゼロ蒸気圧および大気圧で、室温にて液体である揮発性化粧用油を意味することが理解される。
【0207】
「不揮発油」という用語は、10-2mmHg(1.33Pa)未満の蒸気圧を有する油を意味する。
【0208】
これらの油は、炭化水素系油、シリコーン油もしくはフルオロ油、またはそれらの混合物となり得る。
【0209】
「炭化水素系油」という用語は、水素および炭素原子、ならびに場合によっては酸素、窒素、硫黄またはリン原子を主に含む油を意味する。揮発性炭化水素系油は、8から16個の炭素原子を含む炭化水素系油、特に分枝C8〜C16アルカン、例えば、石油起源のC8〜C16イソアルカン(イソパラフィンとしても知られている)、例えばイソドデカン(2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプタンとしても知られている)、イソデカンおよびイソヘキサデカン、例えばIsoparまたはPermethylという商品名で販売されている油、分枝C8〜C16エステルおよびネオペンタン酸イソヘキシル、およびそれらの混合物から選択することができる。他の揮発性炭化水素系油は、例えば石油蒸留物、特にShell社によってShell Soltという名で販売されているものは、用いることもできる。揮発性溶媒は、8から16個の炭素原子を含む揮発性炭化水素系油、およびこれらの混合物から好ましくは選択される。
【0210】
用いることもできる揮発油には、揮発性シリコーン、例えば揮発性の直鎖もしくは環式のシリコーン油、特に、粘性≦8センチストーク(8 10-6 m2/秒)を有するもの、特に2から7個のケイ素原子を含むものが含まれ、これらのシリコーンは、1から10個の炭素原子を含むアルキルもしくはアルコキシ基を場合によっては含む。本発明に用いることができる揮発性シリコーン油として、特に、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルヘキシルトリシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサンおよびドデカメチルペンタシロキサン、およびそれらの混合物について言及することができる。
【0211】
1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタンまたはペルフルオロメチルシクロペンタンなどの揮発性フルオロ溶媒はまた、使用することもできる。
【0212】
揮発油は、組成物の全重量に対して、1重量%から95重量%、好ましくは、1重量%から65重量%の範囲の含有量で本発明による組成物中に存在し得る。
【0213】
組成物は、特に、不揮発性の炭化水素系油および/またはシリコーン油および/またはフルオロ油から選択される少なくとも1種の不揮発油を含むこともできる。
【0214】
特に言及することができる不揮発性炭化水素系油には、
-グリセロールの脂肪酸エステルからなるトリグリセリドなどの植物由来の炭化水素系油(その脂肪酸は、C4からC24まで変わる鎖の長さを有し得、これらの鎖は、おそらく、直鎖または分枝状の、および飽和または不飽和であり;これらの油は、特に、麦芽油、ヒマワリ油、グレープシード油、ゴマ油、トウモロコシ油、杏仁油、ヒマシ油、シア油、アボカド油、オリーブ油、ダイズ油、スイートアーモンド油、パーム油、ナタネ油、綿実油、ヘーゼルナッツ油、マカダミア油、ホホバ油、アルファルファ油、ケシ油、カボチャ油、マロー油、クロフサスグリ油、月見草油、キビ油(millet oil)、大麦油、キヌア油、ライムギ油、ベニバナ油、ククイナッツ油(candlenut oil)、トケイソウ油およびジャコウバラ油であり;あるいはカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、例えば、Stearineries Dubois社によって販売されるものまたはDynamit Nobel社によってMiglyol 810、812および818という名で販売されているものである)、
-10から40個の炭素原子を含む合成エーテル;
-ワセリン、ポリデセン、Parleamなどの水素化ポリイソブテンおよびスクアランなどの鉱物または合成起源の直鎖もしくは分枝状の炭化水素;
-式R1COOR2の油などの合成エステル[式中、R1は、1から40個の炭素原子を含む直鎖または分枝状の脂肪酸残基を表し、R2は、特に、R5+R6≧10である条件で、1から40個の炭素原子を含む分枝状の炭化水素系鎖を表す]、例えば、ピュアセリン油(オクタン酸セトステアリル)、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、C12からC15安息香酸アルキル、ラウリン酸ヘキシル、アジピン酸ジイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソステアリル、オクタン酸アルキルもしくはオクタン酸ポリアルキル、ジオクタン酸プロピレングリコールなどのデカノアートまたはリシノレアート;乳酸イソステアリルおよびリンゴ酸ジイソステアリルなどのヒドロキシル化エステル;およびペンタエリスリトールエステル;
-12から26個の炭素原子を含む分枝および/または不飽和の炭素に基づく鎖を有する、室温で液体である脂肪アルコール、例えば、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2-ヘキシルデカノール、2-ブチルオクタノールおよび2-ウンデシルペンタデカノール;
-オレイン酸、リノール酸またはリノレン酸などの高級脂肪酸;
-COGNIS社によりCETIOL CCという名で販売されている炭酸ジカプリリル;
およびそれらの混合物が含まれる。
【0215】
本発明による組成物に用いることができる不揮発性シリコーン油は、不揮発性ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シリコーン鎖でペンダントであるおよび/またはシリコーン鎖の末端にあるアルキルまたはアルコキシ基を含むポリジメチルシロキサン(これらの基は2から24個の炭素原子をそれぞれ含む)、フェニルシリコーン、例えば、フェニルトリメチコン、フェニルジメチコン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン、および2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリケートおよびそれらの混合物となり得る。
【0216】
本発明に用いることができるフルオロ油は、EP-A-847 752の文献中に記載される通り、具体的にはフルオロシリコーン油、フルオロポリエーテルおよびフルオロシリコーンである。
【0217】
不揮発油は、組成物の全重量に対して0.1重量%から80重量%の範囲、好ましくは0.1重量%から50重量%の範囲、優先的に0.1重量%から20重量%の範囲の含有量で本発明による組成物中に存在し得る。
【0218】
ろう
「ろう」という用語は、本発明の意味の範囲内で、可逆的な固体/液体の状態変化を有する、室温(25℃)で固体であり、30℃以上120℃までとなり得る融点を有する親油性化合物を意味することが理解される。
【0219】
ろうの融点は、示差走査熱量計(DSC)、例えば、Mettler社によりDSC 30という名で販売されている熱量計を用いて測定することができる。
【0220】
ろうは、炭化水素系ろう、フルオロろうおよび/またはシリコーンろうとなり得、植物、鉱物、動物および/または合成起源となり得る。具体的には、ろうは、25℃を超える、さらに良いのは45℃を超える融点を有する。
【0221】
本発明による組成物が、少なくとも1種のろうを含む場合、後者は、5重量%に少なくとも等しい含有量で存在し得る。好ましくは、これは、組成物の全重量に対して10重量%から50重量%、さらに良いのは10重量%から40重量%、さらに良いのは15重量%から30重量%の範囲の含有量で存在する。
【0222】
炭化水素系ろう、例えば、蜜ろう、ラノリンろうまたは支那ろう;コメろう、カルナウバろう、カンデリラろう、オウリキュリーろう(ouricury wax)、エスパルトろう(esparto grass wax)、コルク繊維ろう、サトウキビろう、もくろうおよびはぜろう;モンタンろう、微結晶ろう、パラフィンおよびオゾケライト;ポリエチレンろう、Fisher-Tropsch合成およびろう状コポリマーによって得られたろう、またそれらのエステルは、特に用いることができる。
【0223】
直鎖または分枝状のC8〜C32脂肪鎖を含む動物もしくは植物油の接触水素化によって得られたろうについて言及することもできる。
【0224】
これらのろうのうち、特に、水素化ホホバ油、水素化ヒマワリ油、水素化ヒマシ油、水素化ヤシ油、水素化ラノリン油およびHeterene社によってHest 2T-4Sという名で販売されているビス(1,1,1-トリメチロールプロパン)テトラステアレート、Heterene社によってHest 2T-4Bという名で販売されているビス(1,1,1-トリメチロールプロパン)テトラベヘネートについて言及することもできる。
【0225】
シリコーンろう、例えば、16から45個の炭素原子を含むアルキルまたはアルコキシジメチコーン、およびフルオロろうについて言及することもできる。
【0226】
Phytowax Olive 18L57という名で販売されているステアリルアルコールでエステル化されたオリーブ油の水素化によって得られたろう、あるいはSophim社によってPhytowax ricin 16L64および22L73という名で販売されているセチルアルコールでエステル化されたヒマシ油の水素化によって得られたろうは、用いることもできる。かかるろうは、特許出願FR-A-2 792 190に記載されている。
【0227】
具体的な一実施形態によれば、本発明による組成物は、粘着性ろうと称される少なくとも1種のろう、すなわち、0.7N.s以上の粘着力および3.5MPa以下の硬度を有するろうを含むことができる。
【0228】
粘着性ろうを用いることは、まつげに容易に適用され、まつげに十分に結合し、滑らかな、均一の、および厚くなったメークアップ結果の形成をもたらす化粧組成物を得ることが特に可能になり得る。
【0229】
用いられる粘着性ろうは、特に、0.7N.sから30N.sの範囲の粘着力、具体的には1N.s以上の粘着力、特に1N.sから20N.sの範囲の粘着力、具体的には、2N.s以上の粘着力、特に2N.sから10N.sの範囲の粘着力、具体的には2N.sから5N.sの範囲の粘着力を有することができる。
【0230】
ろうの粘着力は、45°の角度を形成する円錐のアクリルポリマースピンドルを備えた、RheoによってTA-TX2i(登録商標)という名で販売されているテクスチュロメーターを用いて20℃で、時間の関数として力(圧縮力または伸縮力)の変化を測定することによって決定される。
【0231】
測定プロトコールは、以下の通りである。
【0232】
ろうは、ろうの融点に等しい温度+10℃で融解される。融解したろうは、直径25mmおよび深さ20mm容器中に注がれる。ろうは、ろうの表面が平らで滑らかであるように室温で(25℃)で24時間再結晶化され、次いで、ろうは、粘着力を測定する前に少なくとも1時間20℃で貯蔵される。
【0233】
テクスチュロメータースピンドルは、0.5mm/秒の速さで移動され、次いで、ろうに浸透度(penetration depth)2mmまで浸透する。スピンドルが深度2mmまでろうに浸透している場合、スピンドルは、(弛緩時間に対応する)1秒間静止して保持され、次いで、0.5mm/秒の速さで抜き取られる。
【0234】
弛緩時間の間、力(圧縮力)は、0になるまで大幅に低下し、次いで、スピンドルの抜き取り中、力(伸縮力)は、負になり、次いで、再び0の値に上昇する。粘着力は、力(伸縮力)の負の値に対応する曲線の部分についての時間の関数として力の曲線の積分に対応する。粘着力の値は、N.sで表される。
【0235】
用いることができる粘着性ろうは、一般に3.5MPa以下の硬度、具体的には、0.01MPaから3.5MPaの範囲の硬度、特に0.05MPaから3MPaの範囲の硬度、またはさらに0.1MPaから2.5MPaの範囲の硬度を有する。
【0236】
硬度は、前述のプロトコールに従って測定される。
【0237】
用いることができる粘着性ろうには、単独でまたは混合物としてC20〜C40アルキル(ヒドロキシステアリルオキシ)ステアレート(20から40個の炭素原子を含むアルキル基)が含まれ、具体的には、式(II)のC20〜C40アルキル12-(12'-ヒドロキシステアリルオキシ)ステアレート
【0238】
【化16】

【0239】
[式中、mは、18から38の範囲の整数である]、または式(II)の化合物の混合物が含まれる。
【0240】
このようなろうは、特に、Koster Keunen社によってKester Wax K 82 P(登録商標)およびKester Wax K 80 P(登録商標)という名で販売されている。
【0241】
上記ろうは、一般に45℃未満の出発融点を有する。
【0242】
約0.46MPaの硬度および約1N.sの粘着力の値を有する、Strahl and PitschによってSP18という参照で販売されている微結晶ろうを使用することもできる。
【0243】
ろうは、水性ろう微粒分散の形態で存在し得る。「水性ろう微粒分散」という用語は、ろう粒子の水性分散を意味し、前記ろう粒子のサイズは、約1μm以下である。
【0244】
ろう微粒分散は、コロイド状ろう粒子の安定した分散であり、特に、Microemulsions Theory and Practice、L.M. Prince Ed.、Academic Press (1977年) 21〜32頁に記載されている。
【0245】
具体的には、これらのろう微粒分散は、界面活性剤の存在下で、場合によっては、水の一部の存在下でろうを溶融し、その後、撹拌しながら熱湯を徐々に加えることにより得ることができる。油中水型タイプのエマルジョンの中間体形成は観察され、その後、水中油型タイプのマイクロエマルジョンの最終生成で転相は観察される。冷却後、固形コロイド状ろう粒子の安定した微粒分散は得られる。
【0246】
ろう微粒分散は、超音波、高圧ホモジナイザーまたはターボミキサーなどの振とう手段を用いて、ろう、界面活性剤および水の混合物を撹拌することによって得ることもできる。
【0247】
ろう微粒分散の粒子は、好ましくは1μm未満(特に、0.02μmから0.99μmの範囲)、好ましくは0.5μm未満(特に0.06μmから0.5μmの範囲)の平均サイズを有する。
【0248】
これらの粒子は、ろうまたはろうの混合物から本質的に形成される。しかし、これらは、油性および/またはペースト状脂肪添加剤、界面活性剤および/または一般の添加剤/脂溶性の活性剤の微量な割合を含む。
【0249】
皮膜形成ポリマー
本出願において、「皮膜形成ポリマー」という用語は、担体上で、特にケラチン材料で連続的なおよび接着したフィルムを、それ自体または補助的な皮膜形成剤の存在下で、形成することができるポリマーを意味する。
【0250】
好ましくは、疎水性フィルム、すなわち、フィルムが25℃で1重量%未満の水に溶解性を有するポリマーを形成することができる皮膜形成ポリマーを使用する。
【0251】
本発明の組成物において用いることができる皮膜形成ポリマーのうち、フリーラジカルタイプまたは重縮合物タイプの合成ポリマー、天然起源のポリマー、およびそれらの混合物について言及することができる。
【0252】
「フリーラジカル皮膜形成ポリマー」という表現は、不飽和の、特にエチレンによる不飽和モノマーの重合によって得られたポリマーを意味し、それぞれのモノマーは、(重縮合物とは違って)単独重合することができる。フリーラジカルタイプの皮膜形成ポリマーは、特に、酸、エステルまたはアミドの形態のビニルポリマーまたはコポリマー、特に(メト)アクリルポリマーとなり得る。
【0253】
本発明においては、エステルのアルキル基は、フッ素化または全フッ素置換となり得る、すなわち、アルキル基の水素原子のいくつかまたはすべては、フッ素原子で置換されている。
【0254】
ビニル皮膜形成ポリマーは、ビニルエステルおよびスチレンモノマーから選択されたモノマーの単独重合または共重合から生じ得る。具体的には、これらのモノマーは、前述したものなど、酸モノマーおよび/またはそれらのエステルおよび/またはそれらのアミドで重合することができる。
【0255】
(シリコーン鎖で改変されたモノマーを含めて)アクリルおよびビニルモノマーのカテゴリーに含められる、当業者に知られた任意のモノマーを使用することが可能である。
【0256】
言及することができる皮膜形成重縮合物のうち、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステル-アミド、ポリアミド、エポキシエステル樹脂およびポリ尿素である。
【0257】
イソフタレート/スルホイソフタレートに基づくコポリマー、より具体的にはジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸およびスルホイソフタル酸の縮合によって得られたコポリマーを使用することができる。かかるポリマーは、例えば、Eastman Chemical Products社によってEastman AQ(登録商標)という商品名で販売されている。
【0258】
場合によっては改質された、天然起源のポリマーは、シェラック樹脂、サンダラック樹脂、ダンマル樹脂、エレミゴム、コーパル樹脂およびセルロースに基づくポリマー、およびそれらの混合物から選択することができる。
【0259】
本発明による組成物の第1の実施形態によれば、追加の皮膜形成ポリマーは、水性分散液中で粒子の形態で存在し得、ラテックスまたは擬似ラテックス(pseudolatex)として一般に知られている。これらの分散液を調製するための技法は、当業者に周知である。
【0260】
用いることができる皮膜形成ポリマーの水性分散液には、Avecia-Neoresins社によりNeocryl XK-90(登録商標)、Neocryl A-1070(登録商標)、Neocryl A-1090(登録商標)、Neocryl BT-62(登録商標)、Neocryl A-1079(登録商標)、Neocryl A-523(登録商標)、Dow Chemical社によりDow Latex 432(登録商標)、Daito Kasey KogyoによりDaitosol 5000 AD(登録商標)という名で販売されているアクリル分散液;あるいはAvecia-Neoresins社によりNeorez R-981(登録商標)、Neorez R-974(登録商標)、Goodrich社によりAvalure UR-405(登録商標)、Avalure UR-410(登録商標)、Avalure UR-425(登録商標)、Avalure UR-450(登録商標)、Sancure 875(登録商標)、Sancure 861(登録商標)、Sancure 878(登録商標)、Sancure 2060(登録商標)、Bayer社によりImpranil 85(登録商標)、Hydromer社によりAquamere H-1511(登録商標)という名で販売されている水性ポリウレタン分散液が含まれる。
【0261】
皮膜形成ポリマーの水性分散液として、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエステル、ポリエステルアミドおよび/またはアルキドからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーの既存の粒子の内側および/または部分的に表面で、1種または複数のフリーラジカルモノマーのフリーラジカル重合から生じるポリマーの分散液を使用することもできる。これらのポリマーは、一般に、「ハイブリッドポリマー」と称される。
【0262】
本発明による組成物の第2の実施形態の変形形態によれば、追加の皮膜形成ポリマーは、水溶性ポリマーとなり得、したがって、可溶化した形態で組成物の水相で存在する。言及することができる水溶性皮膜形成ポリマーの例には、
-タンパク質、例えば、小麦タンパク質および大豆タンパク質などの植物由来のタンパク質;ケラチンなどの動物起源のタンパク質、例えばケラチン加水分解物およびスルホンケラチン;
-陰イオン性、陽イオン性、両性のもしくは非イオン性キチンまたはキトサンポリマー;
-ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどのセルロースポリマー、また四級化セルロース誘導体;
-ポリアクリレートもしくはポリメタクリレートなどのアクリルポリマーまたはコポリマー;
-ビニルポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテルおよびリンゴ酸無水物のコポリマー、酢酸ビニルおよびクロトン酸のコポリマー、ビニルピロリドンおよび酢酸ビニルのコポリマー;ビニルピロリドンおよびカプロラクタムのコポリマー;ポリビニルアルコール;
-場合によっては、
.アラビアゴム、グアーガム、キサンタン誘導体、カラヤゴム;
.アルギネートおよびカラギーナン;
.グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸およびそれらの誘導体;
.シェラック樹脂、サンダラック樹脂、ダンマル樹脂、エレミゴムおよびコーパル樹脂;
.デオキシリボ核酸;
.ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸およびそれらの混合物などのムコ多糖などの、天然起源の改質されたポリマーが含まれる。
【0263】
本発明による組成物の他の実施形態の変形形態によれば、皮膜形成ポリマーは、前述のものなどの有機溶媒または油を含む液体脂肪相中に存在することもできる。「液体脂肪相」という表現は、本発明の意味の範囲内で、室温で液体であり、油としても公知の、一般に、互いに適合する1種または複数の脂肪物質から構成される、室温(25℃)および大気圧(760mmHg、すなわち、105Pa)で液体である脂肪相を意味するものと理解される。
【0264】
好ましくは、液体脂肪相は、場合によっては不揮発油と混合された、揮発油を含み、油は、おそらく上記油から選択される。
【0265】
本発明による組成物の第3の実施形態によれば、追加の皮膜形成ポリマーは、液体脂肪相に分散される表面安定化粒子の形態で存在し得る。
【0266】
表面安定化ポリマー粒子の分散液は、EP-A-749 747の文献中に記載される通りに製造することができる。
【0267】
ポリマー粒子は、単独でまたは混合物としてブロックポリマー、グラフトされたポリマーおよび/またはランダムポリマーとなり得る安定剤の手段によって表面安定化される。
【0268】
安定剤の存在下での液体脂肪相中の皮膜形成ポリマーの分散液は、EP-A-749 746、EP-A-923 928およびEP-A-930 060の文献中に特に記載され、この内容は、参照により本特許出願に組み込まれる。
【0269】
水相または液体脂肪相中の分散液中のポリマー粒子のサイズは、5nmから600nm、好ましくは20nmから300nmの範囲となり得る。
【0270】
本発明による組成物の第4の実施形態によれば、追加の皮膜形成ポリマーは、液体脂肪相に可溶化することができ、その場合では、皮膜形成ポリマーは、脂溶性ポリマーであると言われる。
【0271】
言及することができる脂溶性ポリマーの例は、ビニルエステル(ビニル基は、エステル基の酸素原子に直接結合し、ビニルエステルは、エステル基のカルボニルに結合した、1から19個の炭素原子の、飽和、直鎖もしくは分枝状の炭化水素系基を含む)および(すでに存在しているビニルエステル以外の)ビニルエステル、(8から28個の炭素原子を含む)α-オレフィン、(アルキル基が2から18個の炭素原子を含む)アルキルビニルエーテルまたは(エステル基のカルボニルに結合した、1から19個の炭素原子の飽和、直鎖もしくは分枝状の炭化水素系基を含む)アリルもしくはメタリルエステルとなり得る少なくとも1種の他のモノマーのコポリマーである。
【0272】
これらのコポリマーは、架橋剤の助けにより架橋することができ、これは、テトラアリルオキシエタン、ジビニルベンゼン、ジビニルオクタンジオアート、ジビニルドデカンジオアートおよびジビニルオクタデカンジオアートなどの、ビニルタイプまたはアリルもしくはメタリルタイプのいずれかとなり得る。
【0273】
言及することもできる脂溶性皮膜形成ポリマーには、脂溶性ホモポリマー、具体的には、9から22個の炭素原子を含むビニルエステルの単独重合またはアルキルアクリレートもしくはメタクリレートの単独重合から生じるものが含まれ、アルキル基は、10から20個の炭素原子を含む。
【0274】
上記で定義された脂溶性コポリマーおよびホモポリマーは、公知であり特許出願FR-A-2 262 303に特に記載されており;これらは、2000から500000、好ましくは4000から200000の範囲の重量平均分子量を有し得る。
【0275】
本発明において用いることができる脂溶性皮膜形成ポリマーとして、ポリアルキレン、具体的には、ポリブテンなどのC2〜C20アルケンのコポリマー、直鎖または分枝状の、飽和または不飽和のC1〜C8アルキル基を有するアルキルセルロース、例えば、エチルセルロースおよびプロピルセルロース、ビニルピロリドン(VP)のコポリマー、具体的にはビニルピロリドンおよびC2からC40アルケン、さらに良いのはC3からC20アルケンのコポリマーについて言及することもできる。
【0276】
本発明による組成物の好ましい一実施形態によれば、追加の皮膜形成ポリマーは、堆積物、特に、水中で7%の濃度で、40%の相対湿度で30℃で1%を超える、好ましくは1.2%を超える、さらに良いのは1.5%を超える、単離された角質層の収縮をもたらす、フィルムを形成することができるポリマーとなり得る。この収縮は、後述の方法に従ってエクステンシオメーターを用いて測定することができる。
【0277】
本発明による組成物は、室温で、本発明による多相性粒子のまたは追加の皮膜形成ポリマーのフィルムの形成を可能にする補助的な皮膜形成剤を含むことができる。補助的な皮膜形成剤は、当業者に公知のコアレッサまたは可塑剤となり得る。可塑剤は、一般にフィルムの形成中に組成物中に残存する有機化合物である。コアレッサは、一般に、フィルムの形成中に蒸発する揮発性有機化合物である。
【0278】
界面活性剤
本発明による組成物は、界面活性剤を含むことができ、これは、組成物の全重量に対して2重量%から30重量%、さらに良いのは5%から15%の範囲の割合で特に存在する。
【0279】
本発明によれば、水中ろう型(wax-in-water)または水中油型エマルジョンを得るために適切な方式で選択される界面活性剤を一般に使用する。具体的には、Griffinの意義の範囲内で、8以上のHLBバランス(親水性親油性バランス)を25℃で有する乳化剤を使用することができる。
【0280】
GriffinのHLB値は、J.Soc.Cosm.Chem. 1954年(5巻)、249〜256頁において定義される。
【0281】
これらの界面活性剤は、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性もしくは両性の界面活性剤、あるいは界面活性剤乳化剤から選択することができる。界面活性剤の(乳化)特性および機能の定義については「Encyclopedia of Chemical Technology、Kirk-Othmer」、22巻、333〜432頁、第3版、1979年、Wileyの文献について言及することができ、陰イオン性、両性および非イオン性界面活性剤については特にこの参照文献の347〜377頁について言及することができる。
【0282】
本発明による組成物に優先的に用いられる界面活性剤は、
a)単独でまたは混合物として用いられる、25℃でHLBが8以上の非イオン界面活性剤から選択することができ;特に:
-セチルステアリルグルコシドおよびセチルおよびステアリルアルコールの混合物などの糖類エステルおよびエーテル、例えば、SEPPICによるMontanov 68;
-グリセロールの(1から150個のオキシエチレンおよび/またはオキシプロピレン基を含むことができる)オキシエチレン化および/またはオキシプロピレン化エーテル;
-30個のオキシエチレン基を含むオキシエチレン化セテアリルアルコールエーテル(CTFA名Ceteareth-30)などの(特にC8〜C24、好ましくはC12〜C18アルコールの)脂肪アルコールの(1から150個のオキシエチレンおよび/またはオキシプロピレン基を含むことができる)オキシエチレン化および/またはオキシプロピレン化エーテル、20個のオキシエチレン基を含むステアリルアルコールのオキシエチレン化エーテル(CTFA名Steareth-20)および、Shell ChemicalsによってNeodol 25-7(登録商標)という名で販売されている7個のオキシエチレン基を含むC12〜C15脂肪アルコールの混合物のオキシエチレン化エーテル(CTFA名C12〜15 Pareth-7);
-(1から150個のエチレングリコール単位を含むことができる)ポリエチレングリコールの(特にC8〜C24、好ましくはC16〜C22酸の)脂肪酸エステル、例えば、ICI Uniqema社によってMyrj 52P(登録商標)という名で販売されているステアリン酸PEG-50およびモノステアリン酸PEG-40など;
-(1から150個のオキシエチレンおよび/またはオキシプロピレン基を含むことができる)オキシエチレン化および/またはオキシプロピレン化グリセリルエーテルの(特にC8〜C24、好ましくはC16〜C22酸の)脂肪酸エステル、例えば、SEPPIC社によってSimulsol 220 TM(登録商標)という名で販売されているPEG-200モノステアリン酸グリセリル;30個のエチレンオキシド基でポリエトキシ化されたステアリン酸グリセリル、例えば、Goldschmidt社によって販売される製品Tagat S(登録商標)、30個のエチレンオキシド基でポリエトキシ化されたオレイン酸グリセリル、例えば、Goldschmidt社によって販売される製品Tagat O(登録商標)、30個のエチレンオキシド基でポリエトキシ化されたグリセリルココアート、例えば、Sherex社によって販売される製品Varionic LI 13(登録商標)、30個のエチレンオキシド基でポリエトキシ化されたイソステアリン酸グリセリル、例えば、Goldschmidt社によって販売される製品Tagat L(登録商標)、および30個のエチレンオキシド基でポリエトキシ化されたラウリン酸グリセリル、例えば、Goldschmidt社による製品Tagat I(登録商標);
-(1から150個のオキシエチレンおよび/またはオキシプロピレン基を含むことができる)オキシエチレン化および/またはオキシプロピレン化ソルビトールエーテルの(特にC8〜C24、好ましくはC16〜C22酸の)脂肪酸エステル、例えば、Croda社によってTween 20(登録商標)という名で販売されているポリソルベート20およびCroda社によってTween 60(登録商標)という名で販売されているポリソルベート60;
-ジメチコンコポリオール、Dow Corning社によりQ2-5220(登録商標)という名で販売されている製品など;
-ジメチコンコポリオールベンゾアート(Finetex社によるFinsolv SLB 101(登録商標)および201(登録商標));
-EO/PO重縮合物としても公知である、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドのコポリマー;
-およびこれらの混合物について言及することができる。
【0283】
EO/PO重縮合物は、より具体的には、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールブロックから形成されたコポリマー、例えば、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールトリブロック重縮合物である。これらのトリブロック重縮合物は、例えば、以下の化学構造を有する。
H-(O-CH2-CH2)a-(O-CH(CH3)-CH2)b-(O-CH2-CH2)a-OH
[式中、aは、2から120の範囲であり、bは、1から100の範囲である]
【0284】
EO/PO重縮合物は、好ましくは、1000から15000の範囲の、さらに良いのは2000から13000の範囲の重量平均分子量を有する。有利には、前記EO/PO重縮合物は、20℃以上、好ましくは60℃以上の蒸留水中で、10g/lで曇り点を有する。曇り点は、標準ISO 1065に従って測定される。本発明に従って使用することができるEO/PO重縮合物として、ICIによりSynperonic PE/L44(登録商標)およびSynperonic PE/F127(登録商標)などの、Synperonic(登録商標)という名で販売されるポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールトリブロック重縮合物について言及することができる。
b)
-ステアリン酸スクロース、スクロースココアートおよびステアリン酸ソルビタン、およびそれらの混合物などの糖類エステルおよびエーテル、例えば、ICI社によって販売されるArlatone 2121(登録商標);
-2個のオキシエチレン基を含むステアリルアルコールオキシエチレンエーテル(CTFA名:「Steareth-2」)などの、(特にC8〜C24、好ましくはC12〜C18アルコールの)脂肪アルコールの(1から150個のオキシエチレンおよび/またはオキシプロピレン基を含むことができる)オキシエチレン化および/またはオキシプロピレン化エーテル;
-ポリオール、特にグリセロールまたはソルビトールの、(特にC8〜C24、好ましくはC16〜C22酸の)脂肪酸エステル、例えばステアリン酸グリセリル、Goldschmidt社によってTegin M(登録商標)という名で販売されている製品などのステアリン酸グリセリル、Huls社によってImwitor 312(登録商標)という名で販売されている製品などのラウリン酸グリセリル、ステアリン酸ポリグリセリル-2、ソルビタントリステアレートまたはリシノール酸グリセリルなど、;
-大豆レシチン(例えば、CargillからのEmulmetik 100 J、またはLucas MeyerからのBiophilic H)などのレシチン;
-Dow Corning社によってQ2-3225C(登録商標)という名で販売されているシクロメチコン/ジメチコンコポリオールの混合物などの、上記の通り、25℃でHLBが8を超える1種または複数の非イオン性界面活性剤と場合によって合わせた、25℃でHLBが8未満である非イオン性界面活性剤から選択される。
c)
-C16〜C30脂肪酸の塩、具体的には、ステアリン酸トリエタノールアミンおよび/または2-アミノ-2-メチルプロパン-1,3-ジオールステアレートなどのアミンに由来するもの;
--ポリオキシエチレン化された脂肪酸塩、特にアミンまたはアルカリ金属塩、およびそれらの混合物に由来するもの;
-オレス-10リン酸DEA(Croda社からのCrodafos N 10N)または1カリウムモノセチルリン酸塩(Givaudan社からのAmphisol K)などの、リン酸エステルおよびそれらの塩;
-PEG-5クエン酸ラウリルスルホコハク酸二ナトリウムおよびリシノールアミドMEAスルホスクシネート二ナトリウムなどの、スルホスクシネート;
-ラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのアルキルエーテル硫酸塩;
-イセチオネート;
-水素化タロウグルタミン酸二ナトリウム(味の素株式会社からのAmisoft HS-21 R(登録商標))およびステアロイルグルタミン酸ナトリウム(AjinomotoからのAmisoft HS-11 PF(登録商標))およびこれらの混合物などのアシルグルタメート;
-大豆誘導体、例えば、カリウムソイアート;
-クエン酸塩、例えば、クエン酸ステアリン酸グリセリル(DegussaからのAxol C 62 Pellets);
-プロリン誘導体、例えば、パルミトイルプロリンナトリウム(SEPPICからのSepicalm VG)またはパルミトイルサルコシン酸ナトリウム、パルミトイルグルタミン酸マグネシウム、パルミチン酸およびパルミトイルプロリン(SEPPICからのSepifeel One)の混合物;
-ステアロイル乳酸ナトリウム(Karlshamns ABからのAkoline SL)などのラクチレート;
-パルミトイルサルコシン酸ナトリウム(Nikkol sarcosinate PN)、またはステアロイルサルコシンおよびミリストイルサルコシンの75/25の混合物(CrodaからのCrodasin SM)などのサルコシネート;
-C14〜17アルキル-sec-スルホン酸ナトリウム(ClariantからのHostapur SAS 60)などのスルホン酸塩;
-ココイルグリシンナトリウム(AjinomotoからのAmilite GCS-12)などのグリシネートなどの陰イオン界面活性剤から選択される。
【0285】
ステアリン酸トリエタノールアミンは、本発明に特に最も適している。これは、一般に、ステアリン酸およびトリエタノールアミンを単純に混合することにより得られる。
【0286】
本発明による組成物は、例えば、N-アルキルアミノアセタートおよびココアンホ二酢酸二ナトリウムなどのN-アシルアミノ酸、ならびにステアラミンオキシドなどのアミンオキシド、あるいはシリコーン界面活性剤、例えば、PHOENIX CHEMICAL社によりPecosil PS 100(登録商標)という名で販売されているものなどのジメチコンコポリオールフォスファートなど、1種または複数の両性界面活性剤を含むこともできる。
【0287】
用いることができる界面活性剤はまた、ポリマー界面活性剤、具体的には熱ゲル化ポリマーとなり得る。
粉状化合物
【0288】
組成物は、例えば、組成物の全重量の0.01%から25%の割合で、粉状化合物などの、少なくとも1種の色素を含むこともできる。粉状化合物は、通常マスカラに用いられる顔料および/または真珠層から選択することができる。
【0289】
顔料は、白色であっても着色されていてもよく、鉱物および/または有機となり得る。鉱物顔料のうち、二酸化チタン、場合によっては表面処理済みの、酸化ジルコニウムまたは酸化セリウム、また酸化鉄または酸化クロム、マンガンバイオレット、群青、水酸化クロムおよびフェリックブルーについて言及することができる。言及することができる有機顔料のうちでもとりわけ、カーボンブラック、D&Cタイプの顔料、コチニールカルミンに基づくまたはバリウム、ストロンチウム、カルシウムもしくはアルミニウムに基づくレーキである。
【0290】
真珠層の顔料は、チタンまたはオキシ塩化ビスマスでコーティングされた雲母などの白色真珠層の顔料、酸化鉄でコーティングされたチタン雲母、特にフェリックブルーまたは酸化クロムでコーティングされたチタン雲母、前述のタイプの有機顔料でコーティングされたチタン雲母などの着色された真珠層の顔料、またオキシ塩化ビスマスに基づく真珠層の顔料から選択することができる。
【0291】
本発明による組成物は、当業者に周知であり化粧組成物に一般に用いられるものから選択することができる充填剤を含むこともできる。充填剤として、特に
-一般に40ミクロン未満の粒子の形態で用いられる含水ケイ酸マグネシウムである、タルク、
-サイズが2から200ミクロン、好ましくはサイズが5から70ミクロンの、および0.1から5ミクロンの間の厚さ、好ましくは0.2から3ミクロン厚さのフレークの形態で存在する様々な組成物のアルミノシリケートである、雲母(これらの雲母は、白雲母、真珠雲母、バナジン雲母、リシア雲母または黒雲母などの天然起源、または合成起源となることができる)
-デンプン、特にコメデンプン、
-一般にサイズが30ミクロン未満である等方性の形状の粒子の形態で存在する含水ケイ酸アルミニウムである、カオリン、
-一般にサイズが数ミクロンを超えない粒子の形態で使用される、酸化亜鉛および酸化チタン、
-炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムまたは炭酸水素マグネシウム、
-微結晶セルロース、
-シリカ、
-ポリエチレン、ポリエステル(イソフタル酸ポリエチレンまたはテレフタル酸ポリエチレン)などの合成ポリマー粉末、「Nylon」または「Teflon」という商品名で販売されているものなどのポリアミドおよびシリコーン粉末を用いることができる。
【0292】
本発明による組成物は、繊維を含むこともできる。
【0293】
「繊維」という用語は、LがDを十分に超えるような長さLおよび直径Dの物体(Dは繊維の横断面が内接される円の直径である)を意味するものとして理解されたい。具体的には、L/D比(または縦横比)は、3.5から2500、具体的には5から500、より具体的には5から150の範囲で選択される。
【0294】
本発明の組成物において用いることができる繊維は、合成もしくは天然起源の鉱物または有機繊維となり得る。これらは、短くても長くてもよく、個別でもまとめられていてもよく、例えば編むことができ、中空であっても中実であってもよい。これらは、任意の形状を有することができ、特に、想定される特定の適用に応じて円形もしくは多角形(正方形、六角形または八角形)の横断面を有することができる。具体的には、これらの末端は、損傷を防ぐために丸くされているかつ/または研磨される。
【0295】
具体的には、繊維は、1μmから10mm、具体的には、0.1mmから5mm、より具体的には0.3mmから3.5mmの範囲の長さを有する。これらの横断面は、2nmから500μmの範囲、具体的には100nmから100μm、より具体的には1μmから50μmの範囲の直径を有する円に含まれていてもよい。繊維の重量または番手はしばしば、デニールまたはデシテックスで表示され、糸の9km当たりのグラムで重量を表す。本発明による繊維は、具体的には、0.15から30デニール、特に0.18から18デニールの範囲内で選択される番手を有することができる。
【0296】
本発明の組成物に用いることができる繊維は、硬質のもしくは軟質の繊維から選択することができ、合成もしくは天然起源の鉱物または有機繊維となり得る。
【0297】
さらに、繊維は、表面処理されても表面処理されなくてもよく、コーティングしてもコーティングしなくてもよく、着色されても着色されなくてもよい。
【0298】
本発明による組成物に用いることができる繊維として、ポリアミド(Nylon(登録商標))繊維などの軟質の繊維またはポリイミドアミド繊維などの硬質の繊維、例えば、Rhodia社によってKermel(登録商標)およびKermel Tech(登録商標)という名で販売されているものまたはDuPont de Nemours社によってKevlar(登録商標)という名で特に販売されているポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)(またはアラミド)繊維について言及することができる。
【0299】
繊維は、組成物の全重量に対して0.01重量%から10重量%の範囲、具体的には0.1重量%から5重量%の範囲、より具体的には0.3重量%から3重量%の範囲の含有量で本発明による組成物中に存在し得る。
【0300】
本発明による組成物は、微量元素、軟化剤、金属イオン遮閉剤、香料、ビタミン、タンパク質、セラミド、化粧品に通常用いられる塩基性化剤または酸性化剤、皮膚軟化剤、保存剤、日焼け止めおよび酸化防止剤などの化粧品に一般的に用いられる成分を含むこともできる。
【0301】
言うまでもなく、本発明による組成物の有利な特性が、想定された添加によって悪影響を及ぼさないまたは実質的に悪影響を及ぼさないように、当業者は注意してこのまたはこれらの場合による追加の化合物、および/またはその量を選択する。
【0302】
本発明による組成物は、溶液、分散液または水中ろう型、ろう中水型、水中油型もしくは油中水型のエマルジョンの形態となり得る。第2の組成物は、無水の形態、すなわち、水10%未満、好ましくは水5%未満を含む形態になってもよい。
【0303】
本発明による組成物は、前記組成物を含む少なくとも1種のコンパートメントを区切る容器にそれぞれ包装することができ、前記容器は、閉鎖部材によって閉じられる。
【0304】
容器は、好ましくは、特に、撚線によって保持された剛毛の配列を含むブラシの形態で塗布器と組み合わされる。このようなねじれたブラシは、米国特許第4 887 622号に特に記載される。これは、特に成形によって得られた、複数の適用部材を含むくしの形態となることもできる。かかるくしは、例えば、フランス特許第2 796 529号に記載される。塗布器は、例えば、フランス特許第2 761 959号に記載される通り容器にしっかりと取り付けられていてもよい。有利には、塗布器は、それ自体閉鎖部材に取り付けられている軸にしっかりと取り付けられている。
【0305】
これは、WO 06/125122またはフランス特許第2769529号の文献中に記載されている通り成形くしまたは成形ブラシとなり得る。
【0306】
閉鎖部材は、ねじ込むことによって容器に連結させることができる。あるいは、閉鎖部材と容器との連結は、ねじ込むことによる以外に、特に差込機構によって、カチッと音を立てて固定することによってまたは締めることによって行われる。「カチッと音を立てて固定する」という用語は、具体的には、部分、特に閉鎖部材の弾性変形により、次いで、リムまたはビードが載せられた後、前記部分の弾性により応力がない位値に戻ることにより、材料のリムまたはビードを載せることを含む任意の系を意味するものと理解される。
【0307】
容器は、熱可塑性材料で少なくとも部分的に作られていてよい。言及することができる熱可塑性材料の例には、ポリプロピレンまたはポリエチレンが含まれる。
【0308】
あるいは、容器は、非熱可塑性材料、特にガラスまたは金属(もしくは合金)で作られる。
【0309】
容器は、容器の開口部の領域に配置されたぬぐい取り要素を好ましくは装備している。このようなぬぐい取り要素は、塗布器、おそらくそれがしっかりと取り付けられていてもよい軸をぬぐい取ることが可能である。このようなぬぐい取り要素は、フランス特許第2 792 618号に記載される。
【0310】
好ましくは、第1の組成物および第2の組成物は、別々の包装で包装される。
【0311】
それぞれの組成物は、同一の包装品で別々に包装することができる。
【0312】
それぞれの組成物は、同一の包装品内のコンパートメントで包装することもでき、2つの組成物の混合は、包装品の終わりにそれぞれの組成物の送達中に行われる。
【0313】
あるいは、第1および第2の組成物は、それぞれ異なる包装品で包装することができる。
【0314】
以下の実施例は、本発明の例証として提供され、その範囲を制限することはできない。
【0315】
模範的な実施形態
組成物1(3MからのVitrebond 7512L):
-イタコン酸<42%
-メタクリル酸2-ヒドロキシエチル20〜25%
-水30〜40%
【0316】
組成物2(3MからのVitrebond 7512P):
-ジフェニルヨードニウムクロリド1〜5%
-正リン酸水素二ナトリウム0.5〜1.5%
-フルオロアルミノシリケートガラス粉末95〜99%
【0317】
組成物1および2を、Vitrebond 7510という参照で3Mによってキットの形態で販売する。
【0318】
これらの2種の組成物を混合し、次いで、得られた混合物を、偽まつげの試験検体に施す。次いで、この試験検体を、光源(電力:800mW/cm2、波長:30秒間450から470nm)に曝露しながら、試験検体に曲線状の形状を機械的に与える。
【0319】
したがって、偽まつげは経時的に(少なくとも24時間)維持する湾曲で得られる。
【0320】
これらの2種の組成物は、偽まつげの試験検体でin situで直接混合することもできた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)生理学的に許容される媒体中で、組成物が、少なくとも部分的に乾燥状態で、1GPa以上の剛性係数Gpを達成できる少なくとも1種の化合物を含む、少なくとも1種の組成物の堆積物でまつげをコーティングするステップ、
b)前記化合物が感受性である刺激の存在下で、まつげの湾曲を修正するように、このようにコーティングされたまつげと接触して造形ツールを置くステップであって、前記接触が、組成物の剛性係数Gpが少なくとも1GPaに等しくなるまで維持され、前記刺激が、少なくとも1GPaの剛性係数が、堆積物を放置して室温で乾燥することによってそれを得ることが必要である時間t0よりも少ない時間tで得られるように選択される、ステップ
を含む、まつげをメークアップするための方法。
【請求項2】
時間tが時間t0よりも少なくとも20%少ない、好ましくは少なくとも40%少ないことを特徴とする、請求項1に記載のメークアップ方法。
【請求項3】
達成後、堆積物が水または皮脂と接触する場合、前記堆積物の剛性係数Gpが1GPaより下に低下しないことを特徴とする、請求項1に記載のメークアップ方法。
【請求項4】
まつげをメークアップするための方法であって、以下のステップ:
a)第1の組成物でおよび第2の組成物でまつげをコーティングするステップであって、第1の組成物は、少なくとも1種の光重合可能なイオノマーを含み、第2の組成物は、少なくとも1種の反応性粉末を含み、第1および/または第2の組成物は、まつげ上で堆積物を形成するために水を含むステップ、ならびに
b)ステップa)と同時におよび/またはそれに続いて、まつげの湾曲を修正するように、このようにコーティングされたまつげと接触して造形ツールを置き、得られた堆積物を、前記堆積物の架橋を誘導のに十分な時間、適当な波長の照射に曝露するステップ
を含む、方法。
【請求項5】
第1の組成物が、以下の式(I):
BXmYn (I)
[式中、Bは、炭素-炭素結合を含むオリゴマーもしくはポリマーの有機主鎖を表し、
Xは、カルボキシル基を表し;
Yは、独立に、置換されたまたは非置換であるアクリレート、メタクリレート、アルケンおよびアクリルアミドから選択されるエチレン不飽和基を表し、
mは、2以上の整数であり、
nは、1以上の整数である]
の少なくとも1種の光重合可能なイオノマーを含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
反応性粉末が、フルオロアルミノシリケートおよびフルオロアルミノボレートから選択されることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
光源が、10nmから500μmの間、好ましくは400から700nmの間、好ましくは400から520nmの間の波長を有することを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
光源が、500mW/cm2から2400mW/cm2の間、好ましくは700から850mW/cm2の間の電力を有することを特徴とする、請求項4から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2の組成物が、まつげへの適用前に混合されることを特徴とする、請求項4から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1および第2の組成物が、まつげへの適用時にin situで混合されることを特徴とする、請求項4から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1の組成物および/または第2の組成物が、顔料、ろう、充填剤、増粘剤、界面活性剤、皮膜形成ポリマー、および油から選択される、少なくとも1種の添加剤を含むことを特徴とする、請求項4から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ケラチン繊維をコーティングするためのキットであって、
少なくとも1種の光重合可能なイオノマーを含む第1の組成物;
少なくとも1種の反応性粉末を含む第2の組成物;および
光源を含み、
第1および/または第2の組成物が少なくとも水を含み、
第1および/または第2の組成物が、顔料、ろう、充填剤、増粘剤、界面活性剤、皮膜形成ポリマー、および油から選択される少なくとも1種の添加剤を含む、キット。

【公表番号】特表2012−522828(P2012−522828A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504051(P2012−504051)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050644
【国際公開番号】WO2010/116079
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】