説明

まゆ毛脱色剤、まゆ毛脱色方法、まゆ毛脱色シート

【課題】本発明は、まゆ毛に用いることができる安全性の高い脱色剤を提供することを課題とする。
【解決手段】 上記課題を解決するため、ラッカーゼを含有するまゆ毛脱色剤を提案する。また、上記まゆ毛脱色剤をまゆ毛に塗布する塗布工程と、塗布工程の後、まゆ毛を摂氏38度から40度で保温する保温工程と、保温工程の後、まゆ毛に塗布された前記まゆ毛脱色剤をふき取るふき取り工程と、からなるまゆ毛脱色方法を提案する。また、上記まゆ毛脱色剤を含み、皮膚に吸着可能な吸着材を備えたまゆ毛脱色シートを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まゆ毛脱色剤、まゆ毛脱色方法、まゆ毛脱色シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化剤を主成分とする毛髪脱色剤が知られている。例えば特許文献1に開示されているように、アルカリ剤と酸化剤とからなる二剤式の毛髪脱色剤が存在する。また、加硫酸塩等の造粒物をさらに含有する三剤式の毛髪脱色剤も存在する。さらに、特許文献2に開示されているように、油性成分を多量に含有する酸化型毛髪脱色剤も存在する。
【0003】
しかしながら、従来技術の脱色剤は、過酸化水素を酸化剤として含有しているため、皮膚が弱く目に近いまゆ毛部分に用いることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−342125
【特許文献2】特開2007−217291
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、まゆ毛の脱色剤として用いることができる安全性の高い脱色剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明者は、ラッカーゼを含有するまゆ毛脱色剤を提案する。なお、まゆ毛脱色剤はラッカーゼの含有量が0.01質量%以上であることが好ましい。また、まゆ毛脱色剤はメディエーター化合物をさらに含有することが好ましい。また、まゆ毛脱色剤のラッカーゼは低温耐性が高い菌由来のラッカーゼであることが好ましい。また、まゆ毛脱色剤はさらに増粘剤が添加されていることが好ましい。
【0007】
さらに、本発明者は、上記まゆ毛脱色剤をまゆ毛に塗布する塗布工程と、塗布工程の後、まゆ毛を摂氏38度から40度で保温する保温工程と、保温工程の後、まゆ毛に塗布されたまゆ毛脱色剤をふき取るふき取り工程と、からなるまゆ毛脱色方法を提案する。
【0008】
さらに、本発明者は、上記まゆ毛脱色剤を含み、皮膚に吸着可能な吸着材を備えたまゆ毛脱色シートを提案する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】まゆ毛脱色方法の流れの一例を示すフローチャート
【図2】まゆ毛脱色方法の流れの他の例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
【0011】
<概要>
本実施形態においては、ラッカーゼを含有するまゆ毛脱色剤などについて説明する。当該まゆ毛脱色剤などを用いると、安全にまゆ毛を脱色することが可能になる。
【0012】
本実施形態のまゆ毛脱色剤はラッカーゼを含有することを特徴とする。ラッカーゼは、フェノール類を酸化する能力を持つ酸化酵素であり、メラニン色素に対して脱色作用を有する。
【0013】
ラッカーゼの種類としては、漆などの植物由来のものや、カビやキノコ類などの菌類・細菌類由来のもの、動物由来のものなど種々存在する。本実施形態のまゆ毛脱色剤には、いずれの種類のものを含有させてもよいが、低温耐性が高い菌由来のラッカーゼを用いることが特に好ましい。低温耐性が高い菌由来のラッカーゼは、まゆ毛に塗布する温度環境(20〜80℃)において十分な酵素作用を発揮することができる。
【0014】
低温耐性が高い菌由来のラッカーゼとしては、担子菌、白色腐朽菌、木材腐朽菌由来のラッカーゼが挙げられるが、特に担子菌由来のラッカーゼが好ましい。担子菌としては、シイタケ、マイタケ、ヒラタケ、エリンギ、ブナシメジなどが挙げられる。これらの担子菌により生成されたラッカーゼは、30〜40℃の温度において活性化する性質を有する。また、ラッカーゼはpH4.0付近で活性化するため、まゆ毛脱色剤はpH3.0〜5.0に調整することが好ましく、特にpH3.5〜4.5とすることが好ましい。
【0015】
また、まゆ毛脱色剤におけるラッカーゼの含有量は、十分な脱色作用を期待するためには、0.005質量%以上とすることが好ましく、特に0.01質量%以上とすることが好ましい。
【0016】
また、まゆ毛脱色剤はメディエーター化合物をさらに含有することが好ましい。メディエーター化合物は、ラッカーゼの酵素反応を促進する性質を有する。
【0017】
メディエーター化合物としては、2,2'‐アジノビス‐(3‐エチルベンゾチアゾリン‐6‐硫酸)2アンモニウム塩(ABTS)、1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール(HBT)、ヴァイオルリック酸、ヴェラトリルアルコール、シリングアルデヒド、フェノールスルホン酸ナトリウム、p−ヒドロキシベンジルアルコール、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ桂皮酸、p−アセトアミドフェノール、p−ヨードフェノール、10−メチルフェノチアジン、p−クマル酸等が挙げられる。
【0018】
特に、メディエーター化合物として、1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール(HBT)、2,2'アジノビス‐(3‐エチルベンゾチアゾリン‐6‐硫酸)2アンモニウム塩(ABTS)、シリングアルデヒドを用いることが好ましい。なお、メディエーター化合物は一種類である必要はなく、複数種類のメディエーター化合物を混合して用いることも可能である。
【0019】
メディエーター化合物の含有量は、0.001〜0.05質量%とすることが好ましく、特に0.005〜0.025質量%とすることが好ましい。
【0020】
また、まゆ毛脱色剤は界面活性剤をさらに含有することが好ましい。界面活性剤は、分子内に親水基と親油基を持つ物質であり、極性物質と非極性物質を均一に混合させる性質や表面張力を弱める性質を有する。
【0021】
界面活性剤としては、ラッカーザの酵素反応を阻害しないものを用いることが好ましい。例えば、炭素数が12以上の飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、硬化ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、硬化パーム油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸などのカリウム塩、ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩、アンモニウム塩などの脂肪酸石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルサルコシン塩、N−アシルβアラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩等などを用いることが考えられる。
【0022】
特に、N−アシルグルタミン酸塩が好ましく、例えばN−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸カリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、ラウロイル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸・硬化牛脂脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウムなどを用いることが考えられる。
【0023】
また、その他の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、塩化ステアリルメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等を用いることも可能である。界面活性剤の種類は上記に限定されるものではなく、複数の種類を組み合わせて用いることも可能である。
【0024】
界面活性剤の含有量は、0.1〜10質量%とすることが好ましく、特に0.5〜2質量%とすることが好ましい。
【0025】
また、まゆ毛脱色剤は、さらにまゆ毛に対する浸透性を高めるために浸透促進剤を含有することが好ましい。浸透促進剤としては、グリセリンカーボネートイソプロピルエーテルや、イソプロピルグリセリルエーテル、4−プロピルオキシメチル−1、3−ジオキソラン−2−オン、N−アルキルピロリドン、芳香族アルコール、低級アルキレンカーボネートなどが挙げられる。
【0026】
浸透促進剤の含有量としては、1〜40質量%とすることが好ましく、特に5〜20質量%とすることが好ましい。
【0027】
また、まゆ毛脱色剤は、さらにpH緩衝液を含有することが好ましい。pH緩衝液とは、水素イオン濃度に対して緩衝作用のある溶液のことをいい、多少濃度が変化したとしてもpHが大きく変化しないように制御する性質を有する。
【0028】
pH緩衝液としては、コハク酸系緩衝液や、フタル酸系緩衝液、クエン酸系緩衝液、シュウ酸系緩衝液、アミノ酸系緩衝液、無機酸系緩衝液、有機酸系緩衝液、などが挙げられる。特に、コハク酸系緩衝液やフタル酸系緩衝液を用いることが好ましい。
【0029】
また、pH緩衝液の含有量としては、10〜50質量%とすることが好ましく、特に15〜35質量%とすることが好ましい。
【0030】
また、まゆ毛脱色剤は、さらに抗酸化剤を含有することが好ましい。抗酸化剤とは、他の含有成分の酸化を抑制する性質を有する。つまり、抗酸化剤を添加することにより、ラッカーゼが酸化してしまうことを抑制できる。
【0031】
抗酸化剤としては、アスコルビン酸や、α―トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアソニール、エリソルビン酸ナトリウムなどが挙げられる。特に、アスコルビン酸やα―トコフェロールを用いることが好ましい。
【0032】
抗酸化剤の含有量としては、0.01〜1.00質量%とすることが好ましく、特に0.05〜0.20質量%とすることが好ましい。
【0033】
また、まゆ毛脱色剤は、通常の化粧品等で用いられる水溶性高分子を含有していてもよい。水溶性高分子は、界面活性剤と同様に界面に吸着して、保護コロイド作用や増粘作用、ゲル化作用、乳化作用などの機能を発揮する。
【0034】
水溶性高分子としては、セルロースや両性樹脂が挙げられる。水溶性高分子の含有量としては、0.1〜10質量%とすることが好ましく、特に1〜5質量%とすることが好ましい。
【0035】
また、まゆ毛脱色剤は、さらに増粘剤を含有することが好ましい。増粘剤は、他の含有成分の粘度を増加させる性質を有する。当該増粘剤をまゆ毛脱色剤に含有させて適度な粘性を持たせることにより、まゆ毛から脱色剤がこぼれ落ちるのを抑制することが可能になる。
【0036】
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロ−ス、カルボキシビニルポリマ−、ヒドロキシエチルセルロ−ス、ヒドロキシプロピルセルロ−ス、メチルセルロ−ス、キサンタンガム、カラギ−ナン、アルギン酸塩、ペクチン、フェラ−セン、アラビアガム、ガッチガム、カラヤガム、トラガントガム、カンテン末、ベントナイト、架橋性ポリアルキル酸塩等が挙げられる。
【0037】
なお、まゆ毛脱色剤のその他の成分としては、主としてエタノールや精製水などを含有させることが考えられる。エタノールの含有量は、1〜10質量%とすることが好ましく、精製水の含有量は30〜70質量%とすることが好ましい。また、まゆ毛脱色剤には、キレート剤や、防腐剤、香料等をさらに含有させることも可能である。
【0038】
また、まゆ毛脱色剤は、脱酸素環境下にて保存することが好ましい。脱酸素環境下にする方法としては、まゆ毛脱色剤の容器に窒素などの不活性ガスを充填させたり、容器素材としてガラスや塩化ビニル樹脂、アルミなどの酸素低透過性素材を用いたりすることが考えられる。
【0039】
また、まゆ毛脱色剤は、そのまま液状で使用することも可能であるが、泡状にして使用することも可能である。泡状にする方法としては、まゆ毛脱色剤を容器内のメッシュに通すことによって泡状にする方法や、噴射剤や炭酸ガス、LPG等を用いて耐圧容器に充填して泡状にする方法が挙げられる。
【0040】
また、皮膚に吸着可能な吸着材を備えたシート(例えば、脱脂綿)にまゆ毛脱色剤を含有させてまゆ毛脱色シートとすることも可能である。まゆ毛脱色シートの吸着材をまゆ毛が生えている皮膚に吸着させることにより、まゆ毛以外の部分にまゆ毛脱色剤がこぼれ落ちてしまうことを抑制することが可能になる。
【0041】
<まゆ毛の脱色方法の流れ>
上記のまゆ毛脱色剤を用いてまゆ毛を脱色させる方法を以下に示す。図1は、まゆ毛脱色剤を用いたまゆ毛脱色方法の工程の流れを示すフローチャートである。まず、まゆ毛脱色剤をまゆ毛に塗布する(ステップ0101:塗布工程)。次に、塗布工程の後、まゆ毛を摂氏38度から40度で保温する(ステップ0102:保温工程)。次に、保温工程の後、まゆ毛に塗布されたまゆ毛脱色剤をふき取る(ステップ0103:ふき取り工程)。
【0042】
なお、上記のまゆ毛脱色シートを用いてまゆ毛を脱色させる方法も可能である。図2は、まゆ毛脱色シートを用いたまゆ毛脱色方法の工程の流れを示すフローチャートである。まず、まゆ毛脱色シートをまゆ毛が生えている皮膚に吸着させる(ステップS0201:吸着工程)。次に、吸着工程の後、まゆ毛脱色シートを摂氏38度から40度で保温する(ステップS0202:保温工程)。次に、保温工程の後、まゆ毛脱色シートをはがす(ステップS0203:はがし工程)。次に、はがし工程の後、まゆ毛に付着したまゆ毛脱色剤をふき取る(ステップS0204:ふき取り工程)。なお、保温工程においてまゆ毛脱色シートが摂氏38度から40度になるように保温成分又は発熱成分を脱色シートに含有させることも可能である。
【0043】
<効果>
本実施形態のまゆ毛脱色剤などを用いることにより、安全にまゆ毛を脱色することが可能になる。
【実施例1】
【0044】
表1、2は、まゆ毛脱色剤の配合成分とその含有量を示した表である。これらのまゆ毛脱色剤は、ラッカーゼと、メディエーター、界面活性剤、浸透促進剤、pH緩衝液、抗酸化剤、エタノール、精製水を成分としている。
【0045】
上記まゆ毛脱色剤は、数十分から数時間かけてメラニン色素を酵素分解し、まゆ毛を脱色させることが可能である。脱色作用を有するラッカーゼは、従来の過酸化水素などと比較して刺激性がほとんどないため、目に入っても洗い流せば足りる。つまり、安全にまゆ毛を脱色することが可能になる。
【表1】

【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラッカーゼを含有するまゆ毛脱色剤。
【請求項2】
前記ラッカーゼの含有量が0.01質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のまゆ毛脱色剤。
【請求項3】
メディエーター化合物をさらに含有する請求項1又は2に記載のまゆ毛脱色剤。
【請求項4】
前記ラッカーゼは、低温耐性が高い菌由来のラッカーゼである請求項1から3のいずれか一に記載のまゆ毛脱色剤。
【請求項5】
さらに増粘剤を添加した請求項1から4のいずれか一に記載のまゆ毛脱色剤。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一に記載のまゆ毛脱色剤をまゆ毛に塗布する塗布工程と、
塗布工程の後、まゆ毛を摂氏38度から40度で保温する保温工程と、
保温工程の後、まゆ毛に塗布されたまゆ毛脱色剤をふき取るふき取り工程と、
からなるまゆ毛脱色方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一に記載のまゆ毛脱色剤を含み、
皮膚に吸着可能な吸着材を備えたまゆ毛脱色シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−87067(P2012−87067A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232620(P2010−232620)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(510275301)
【Fターム(参考)】