説明

めっき処理方法、めっき処理装置および記憶媒体

【課題】めっき液の反応速度を向上させることにより、基板1枚あたりのめっき処理時間を短縮することが可能なめっき処理方法およびめっき処理装置を提供する。
【解決手段】基板2の表面に前処理液が残っている状態で、基板2を第1回転数で回転させ、基板2にめっき液を供給することにより液置換を行う(液置換工程S305)。次に、基板2にめっき液を供給し続けた状態で、基板2を停止または第2回転数で回転させて、基板2に初期成膜を行う(インキュベーション工程S306)。その後、基板2にめっき液を供給し続けた状態で、基板2を第3回転数で回転させて、めっき膜を成長させる(めっき膜成長工程S307)。第1回転数は、第3回転数より回転数が高く、第3回転数は、第2回転数より回転数が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理方法、めっき処理装置および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体ウエハや液晶基板などの基板には、表面に回路を形成するための配線が施されている。この配線は、アルミニウム素材に替わって電気抵抗が低く信頼性の高い銅素材によるものが利用されるようになってきている。しかしながら、銅はアルミニウムと比較して酸化されやすいので、銅配線表面の酸化を防止するために、高いエレクトロマイグレーション耐性を有する金属によってめっき処理することが望まれる。
【0003】
めっき処理は、例えば、銅配線が形成された基板の表面に無電解めっき液を供給することによって実施される。従来、このような無電解めっき処理は、バッチ処理装置で行うのが一般的であった。また、無電解めっき処理においては、ウエハ表面近傍で酸化還元反応を生じることによりめっき膜を成膜させるため、成膜中ウエハを静置しておくことが望ましいとされていた。このため、上記バッチ処理装置により無電解めっき処理を行う場合、めっき液の温度、めっき液の濃度および成膜時間を調整することにより、めっき膜の成膜速度を制御している。また、バッチ処理装置の構造上、めっき液中でウエハを動かそうとしても、せいぜい数cm程度揺り動かす程度のことしか行えない。このため、従来のバッチ処理装置を用いた場合、めっき液の反応速度をこれ以上向上させることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−249679号公報
【特許文献2】特開2001−73157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、枚葉式装置で無電解めっき処理を行うものとして、特許文献1においては、基板を回転させる基板回転機構と、基板上にめっき液を吐出するノズルと、ノズルを基板に沿った方向に移動させるノズル移動機構と、を備えためっき処理装置が提案されている。特許文献1に記載のめっき処理装置によれば、基板を回転させながらめっき液を供給することで、基板の表面上にめっき液の均一な流れが形成される。これによって、基板の表面全域にわたって均一にめっき処理が施される。
【0006】
また、特許文献2においては、薬液の使用量を減らすため、薬液を塗布する工程と、液盛り処理する工程と、薬液を除去する工程とを複数回繰り返す技術が記載されている。しかしながら、このような方法を用いて厚膜のめっき膜を形成する場合、処理時間が長くなってしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、めっき液の反応速度を向上させることにより、基板1枚あたりのめっき処理時間を短縮することが可能なめっき処理方法、めっき処理装置および記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点によれば、基板にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理方法において、前記基板の表面に前処理液が残っている状態で、前記基板を第1回転数で回転させ、前記基板にめっき液を供給することにより液置換を行う液置換工程と、前記基板にめっき液を供給し続けた状態で、前記基板を停止または第2回転数で回転させて、前記基板に初期成膜を行うインキュベーション工程と、前記基板にめっき液を供給し続けた状態で、前記基板を第3回転数で回転させて、めっき膜を成長させるめっき膜成長工程とを備え、前記第1回転数は、前記第3回転数より回転数が高く、前記第3回転数は、前記第2回転数より回転数が高いことを特徴とするめっき処理方法が提供される。
【0009】
本発明の第2の観点によれば、基板にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理装置において、基板を保持して回転させる基板回転保持機構と、前記基板回転保持機構に保持された前記基板に向けてめっき液を吐出する吐出機構と、前記吐出機構にめっき液を供給するめっき液供給機構と、前記基板回転保持機構、前記吐出機構および前記めっき液供給機構を制御する制御機構と、を備え、前記制御機構は、前記基板の表面に前処理液が残っている状態で、前記基板回転保持機構により前記基板を第1回転数で回転させ、前記吐出機構により前記基板にめっき液を供給することにより液置換を行い、前記吐出機構から前記基板にめっき液を供給し続けた状態で、前記基板回転保持機構により前記基板を停止または第2回転数で回転させて、前記基板に初期成膜を行い、前記吐出機構から前記基板にめっき液を供給し続けた状態で、前記基板回転保持機構により前記基板を第3回転数で回転させて、めっき膜を成長させるように、前記基板回転保持機構、前記吐出機構および前記めっき液供給機構を制御し、前記第1回転数は、前記第3回転数より回転数が高く、前記第3回転数は、前記第2回転数より回転数が高いことを特徴とするめっき処理装置が提供される。
【0010】
本発明の第3の観点によれば、めっき処理装置にめっき処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、前記めっき処理方法は、基板にめっき液を供給してめっき処理を行う方法であって、前記基板の表面に前処理液が残っている状態で、前記基板を第1回転数で回転させ、前記基板にめっき液を供給することにより液置換を行う液置換工程と、前記基板にめっき液を供給し続けた状態で、前記基板を停止または第2回転数で回転させて、前記基板に初期成膜を行うインキュベーション工程と、前記基板にめっき液を供給し続けた状態で、前記基板を第3回転数で回転させて、めっき膜を成長させるめっき膜成長工程とを備え、前記第1回転数は、前記第3回転数より回転数が高く、前記第3回転数は、前記第2回転数より回転数が高い、方法からなっていることを特徴とする記憶媒体が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板の表面に前処理液が残っている状態で、基板を第1回転数で回転させ、基板にめっき液を供給することにより液置換を行う(液置換工程)。次に、基板にめっき液を供給し続けた状態で、基板を停止または第2回転数で回転させて、基板に初期成膜を生成させる(インキュベーション工程)。その後、基板にめっき液を供給し続けた状態で、基板を第3回転数で回転させて、めっき膜を成長させる(めっき膜成長工程)。この場合、第1回転数は、第3回転数より回転数が高く、第3回転数は、第2回転数より回転数が高い。このように、基板に初期成膜を行った後、基板にめっき液を供給し続けた状態で基板を第3回転数で回転させることにより、反応種濃度が低下しためっき液を積極的に新しいめっき液に置換し、安定しためっき成長を促進することができる。この結果、基板1枚あたりのめっき処理時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態によるめっき処理システムの概略構成を示す平面図。
【図2】図2は、本発明の一実施の形態によるめっき処理装置を示す側面図。
【図3】図3は、図2に示すめっき処理装置の平面図。
【図4】図4は、めっき液供給機構を示す図。
【図5】図5は、めっき液供給機構の加熱手段を示す図。
【図6】図6は、本発明の一実施の形態によるめっき処理方法を示すフローチャート。
【図7】図7(a)〜(e)は、Coめっき工程においてCoめっき層が形成される様子を示す断面図。
【図8】図8は、Coめっき工程において基板の回転数と時間との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1乃至図8を参照して、本発明の一実施の形態について説明する。まず図1により、本実施の形態におけるめっき処理システム1全体について説明する。
【0014】
めっき処理システム
図1に示すように、めっき処理システム1は、基板2(ここでは、半導体ウエハ)を複数枚(たとえば、25枚)収容するキャリア3を載置し、基板2を所定枚数ずつ搬入及び搬出するための基板搬入出室5と、基板2のめっき処理や洗浄処理などの各種の処理を行うための基板処理室6と、を含んでいる。基板搬入出室5と基板処理室6とは、隣接して設けられている。
【0015】
(基板搬入出室)
基板搬入出室5は、キャリア載置部4と、搬送装置8を収容した搬送室9と、基板受渡台10を収容した基板受渡室11とを有している。基板搬入出室5においては、搬送室9と基板受渡室11とが受渡口12を介して連通連結されている。キャリア載置部4は、複数の基板2を水平状態で収容するキャリア3を複数個載置する。搬送室9では、基板2の搬送が行われ、基板受渡室11では、基板処理室6との間で基板2の受け渡しが行われる。
【0016】
このような基板搬入出室5においては、キャリア載置部4に載置されたいずれか1個のキャリア3と基板受渡台10との間で、搬送装置8により基板2が所定枚数ずつ搬送される。
【0017】
(基板処理室)
また基板処理室6は、中央部において前後(図1の左右)に伸延する基板搬送ユニット13と、基板搬送ユニット13の一方側および他方側において前後に並べて配置され、基板2にめっき液を供給してめっき処理を行う複数のめっき処理装置20と、を有している。
【0018】
このうち基板搬送ユニット13は、前後方向に移動可能に構成した基板搬送装置14を含んでいる。また基板搬送ユニット13は、基板受渡室11の基板受渡台10に基板搬入出口15を介して連通している。
【0019】
このような基板処理室6においては、各めっき処理装置20に対して、基板搬送ユニット13の基板搬送装置14により、基板2が、1枚ずつ水平に保持した状態で搬送される。そして、各めっき処理装置20において、基板2が、1枚ずつ洗浄処理及びめっき処理される。
【0020】
各めっき処理装置20は、用いられるめっき液などが異なるのみであり、その他の点は略同一の構成からなっている。そのため、以下の説明では、複数のめっき処理装置20のうち一のめっき処理装置20の構成について説明する。
【0021】
めっき処理装置
以下、図2および図3を参照して、めっき処理装置20について説明する。図2は、めっき処理装置20を示す側面図であり、図3は、めっき処理装置20を示す平面図である。
【0022】
めっき処理装置20は、図2および図3に示すように、ケーシング101の内部で基板2を保持して回転させる基板回転保持機構110と、基板回転保持機構110に保持された基板2の表面に向けてめっき液を吐出する吐出機構21と、吐出機構21にめっき液を供給するめっき液供給機構30と、昇降機構164により上下方向に駆動され、排出口124,129,134を有するカップ105により基板2から飛散しためっき液などをそれぞれ排出口124,129,134に集めて排出する液排出機構120,125,130と、基板回転保持機構110、吐出機構21およびめっき液供給機構30を制御する制御機構160と、を備えている。
【0023】
(基板回転保持機構)
このうち基板回転保持機構110は、図2および図3に示すように、ケーシング101内で上下に伸延する中空円筒状の回転軸111と、回転軸111の上端部に取り付けられたターンテーブル112と、ターンテーブル112の上面外周部に設けられ、基板2を支持するウエハチャック113と、回転軸111を回転駆動する回転機構162と、を有している。このうち回転機構162は、制御機構160により制御され、回転機構162によって回転軸111が回転駆動され、これによって、ウエハチャック113により支持されている基板2が回転される。この場合、制御機構160は、回転機構162を制御することにより、回転軸111およびウエハチャック113を回転させ、あるいは停止させることができる。また、制御機構160は、回転軸111およびウエハチャック113の回転数を上昇させ、下降させ、あるいは一定値に維持させるように制御することが可能である。
【0024】
(吐出機構)
次に、基板2に向けてめっき液などを吐出する吐出機構21について説明する。吐出機構21は、基板2に向けてCoPめっき液などの化学還元タイプのめっき液を吐出する第1吐出ノズル45を含んでいる。化学還元タイプのめっき液は、めっき液供給機構30から第1吐出ノズル45に供給される。第1吐出ノズル45の詳細については後述する。なお、図2では1つの第1吐出ノズル45のみを示しているが、この第1吐出ノズル45に加えて、基板2に向けてCoPめっき液などの化学還元タイプのめっき液を吐出する他の吐出ノズル(追加の吐出ノズル)が設けられていても良い。
【0025】
また吐出機構21は、図2に示すように、吐出口71および吐出口72を含む第2吐出ノズル70をさらに有していてもよい。図2および図3に示すように、第2吐出ノズル70は、アーム74の先端部に取り付けられており、このアーム74は、上下方向に延伸可能であるとともに回転機構165により回転駆動される支持軸73に固定されている。
【0026】
第2吐出ノズル70において、吐出口71は、置換タイプのめっき液、例えばPdめっき液を供給するめっき液供給機構76にバルブ76aを介して接続されている。また吐出口72は、洗浄処理液を供給する洗浄処理液供給機構77にバルブ77aを介して接続されている。このような第2吐出ノズル70を設けることにより、一のめっき処理装置20内において、化学還元タイプのめっき液によるめっき処理だけでなく、置換タイプのめっき液によるめっき処理、および洗浄処理を実施することが可能となる。
【0027】
また図2に示すように、第2吐出ノズル70の吐出口72に、めっき処理に先立って実施される前処理のための前処理液、例えば純水などのリンス処理液を供給するリンス処理液供給機構78がバルブ78aを介してさらに接続されていてもよい。この場合、バルブ77aおよびバルブ78aの開閉を適切に制御することにより、第2吐出ノズル70から、洗浄処理液またはリンス処理液のいずれかが選択的に基板2に吐出される。
【0028】
〔第1吐出ノズル〕
次に第1吐出ノズル45について説明する。図2および図3に示すように、第1吐出ノズル45は吐出口46を含んでいる。また第1吐出ノズル45は、アーム49の先端部に取り付けられており、このアーム49は、基板2の半径方向(図2および図3において矢印Dにより示される方向)において進退自在となるよう構成されている。このため、第1吐出ノズル45は、基板2の中心部に近接する中心位置と、中心位置よりも周縁側にある周縁位置との間で移動可能となっている。なお図3において、中心位置にある第1吐出ノズルが符号45’で示されており、周縁位置にある第1吐出ノズルが符号45”で示されている。
【0029】
(めっき液供給機構)
次に、吐出機構21の第1吐出ノズル45に、CoPめっき液などの化学還元タイプのめっき液を供給するめっき液供給機構30について説明する。図4は、めっき液供給機構30を示す図である。
【0030】
図4に示すように、めっき液供給機構30は、めっき液35を貯留する供給タンク31と、供給タンク31のめっき液35を第1吐出ノズル45へ供給する供給管33と、を有している。供給管33にはバルブ32が介挿されている。
【0031】
また図4に示すように、供給タンク31には、めっき液35を貯留温度に加熱するタンク用加熱手段50が取り付けられている。またタンク用加熱手段50と第1吐出ノズル45との間において、供給管33に、めっき液35を貯留温度よりも高温の吐出温度に加熱する加熱手段60が取り付けられている。タンク用加熱手段50および加熱手段60については、後に詳細に説明する。
【0032】
なお上述の「貯留温度」は、めっき液35内での自己反応による金属イオンの析出が進行する温度(めっき温度)よりも低く、かつ常温よりも高い所定の温度となっている。また「吐出温度」は、上述のめっき温度に等しいか、若しくはめっき温度よりも高い所定の温度となっている。本実施の形態によれば、このように、めっき液35が二段階でめっき温度以上の温度に加熱される。
【0033】
このため、めっき液35が供給タンク31内でめっき温度以上の温度に加熱される場合に比べて、供給タンク31内のめっき液35中で還元剤の失活や成分の蒸発を防ぐことができる。これによって、めっき液35の寿命を長くすることができる。また、供給タンク31においてめっき液35が常温で貯留され、その後に加熱手段60によってめっき温度以上の温度に加熱される場合に比べて、めっき液35を小さいエネルギーで素早くめっき温度以上の温度に加熱することができる。このことにより、金属イオンの析出を抑制させることができる。
【0034】
供給タンク31には、めっき液35の各種の成分が貯蔵されている複数の薬液供給源(図示せず)から各種薬液が供給されている。例えば、Coイオンを含むCoSO金属塩、還元剤(例えば、次亜リン酸など)および添加剤などの薬液が供給されている。この際、供給タンク31内に貯留されるめっき液35の成分が適切に調整されるよう、各種薬液の流量が調整されている。
【0035】
〔タンク用加熱手段〕
タンク用加熱手段50は、図4に示すように、供給タンク31の近傍でめっき液35の循環経路を形成する循環管52と、循環管52に取り付けられ、めっき液35を貯留温度に加熱するヒータ53と、循環管52に介挿され、めっき液35を循環させるポンプ56と、を有している。タンク用加熱手段50を設けることにより、供給タンク31内のめっき液35を供給タンク31近傍で循環させながら上述の貯留温度まで加熱することができる。
【0036】
また図4に示すように、循環管52には供給管33が接続されている。ここで、バルブ36が開放され、バルブ32が閉鎖されているときは、ヒータ53を通っためっき液35が供給タンク31に戻される。一方、バルブ36が閉鎖され、バルブ32が開放されているときは、ヒータ53を通っためっき液35が第1吐出ノズル45に到達する。
【0037】
なお図4に示すように、循環管52にフィルター55が介挿されていてもよい。これによって、めっき液35をタンク用加熱手段50によって加熱する際、めっき液35に含まれる様々な不純物を除去することができる。また図4に示すように、循環管52に、めっき液35の特性をモニタするモニタ手段57が設けられていてもよい。モニタ手段57は、例えば、めっき液35の温度をモニタする温度モニタや、めっき液35のpHをモニタするpHモニタなどからなっている。
【0038】
また図4に示すように、めっき液供給機構30が、供給タンク31に接続され、供給タンク31に貯留されためっき液35中の溶存酸素および溶存水素を除去する脱気手段37をさらに有していてもよい。この脱気手段37は、例えば、窒素などの不活性ガスを供給タンク31内に供給するよう構成されている。この場合、めっき液35中に窒素などの不活性ガスを溶解させることにより、既にめっき液35中に溶存している酸素や水素などのその他のガスをめっき液35の外部に排出することができる。めっき液35から排出された酸素や水素は、排気手段38によって供給タンク31から排出される。
【0039】
〔加熱手段〕
次に図5を参照して、加熱手段60について説明する。加熱手段60は、タンク用加熱手段50によって貯留温度まで加熱されためっき液35を、さらに吐出温度まで加熱するためのものである。この加熱手段60は、図5に示すように、所定の伝熱媒体を吐出温度または吐出温度よりも高い温度に加熱する温度媒体供給手段61と、供給管33に取り付けられ、温度媒体供給手段61からの伝熱媒体の熱を供給管33内のめっき液35に伝導させる温度調節器62と、を有している。また図5に示すように、第1吐出ノズル45の内部に至るよう設けられ、第1吐出ノズル45内に位置する供給管33を通るめっき液35を吐出温度で保持するための温度保持器65がさらに設けられていてもよい。
【0040】
温度調節器62は、温度媒体供給手段61から供給される温度調節用の伝熱媒体(たとえば温水)を導入する供給口62aと、伝熱媒体を排出する排出口62bと、を有している。供給口62aから供給された伝熱媒体は、温度調節器62の内部の空間62cを流れる間に供給管33と接触する。これによって、供給管33を流れるめっき液35が吐出温度まで加熱される。めっき液35の加熱に用いられた後の伝熱媒体は、排出口62bから排出される。
【0041】
好ましくは、温度調節器62内の供給管33は、図5に示すようにらせん状に形成されている。これによって、伝熱媒体と供給管33との間の接触面積を大きくすることができ、このことにより、伝熱媒体の熱を効率良くめっき液35に伝えることができる。
【0042】
温度保持器65は、温度調節器62によって吐出温度に加熱されためっき液35が第1吐出ノズル45から吐出されるまでの間、めっき液35の温度を保持するためのものである。この温度保持器65は、図5に示すように、温度保持器65内で供給管33に接触するよう延びる保温パイプ65cと、温度媒体供給手段61から供給される伝熱媒体を保温パイプ65cに導入する供給口65aと、伝熱媒体を排出する排出口65bと、を有している。保温パイプ65cは、供給管33に沿って第1吐出ノズル45の先端部近傍まで延びており、これによって、第1吐出ノズル45の吐出口46から吐出されるめっき液35の温度を均一に吐出温度に保持することができる。
【0043】
保温パイプ65cは、図5に示すように、第1吐出ノズル45の内部で開放され、温度保持器65内の空間65dと通じていてもよい。この場合、温度保持器65は、その断面中心に位置する供給管33、供給管33の外周に熱的に接触させて配設された保温パイプ65c、および、保温パイプ65cの外周に位置する空間65dからなる三重構造(三重配管の構造)を有している。供給口65aから供給された伝熱媒体は、第1吐出ノズル45の先端部に至るまで保温パイプ65cを通ってめっき液35を保温し、その後、温度保持器65内の空間65dを通って排出口65bから排出される。空間65dを流れる伝熱媒体は、保温パイプ65cを流れる伝熱媒体(およびその内側の供給管33を流れるめっき液35)と温度保持器65の外側の雰囲気とを熱的に遮断する作用をする。したがって、保温パイプ65cを流れる伝熱媒体の熱損失を抑えるとともに、保温パイプ65cを流れる伝熱媒体から供給管33を流れるめっき液35への熱伝達を効率的に行うことができる。
【0044】
なお図5においては、温度調節器62に供給される伝熱媒体と、温度保持器65に供給される伝熱媒体とがいずれも、温度媒体供給手段61から供給される伝熱媒体となっている例が示されている。しかしながら、これに限られることはなく、温度調節器62に供給される伝熱媒体と、温度保持器65に供給される伝熱媒体とが、それぞれ別個の伝熱媒体の供給源から供給されてもよい。
【0045】
(液排出機構)
次に、基板2から飛散しためっき液や洗浄液などを排出する液排出機構120,125,130について、図2を参照して説明する。図2に示すように、ケーシング101内には、昇降機構164により上下方向に駆動され、排出口124,129,134を有するカップ105が配置されている。液排出機構120,125,130は、それぞれ排出口124,129,134に集められる液を排出するものとなっている。
【0046】
基板2から飛散した処理液は、液の種類ごとに排出口124,129,134を介して液排出機構120,125,130により排出される。例えば、基板2から飛散したCoPめっき液はめっき液排出機構120から排出され、基板2から飛散したPdめっき液はめっき液排出機構125から排出され、基板2から飛散した洗浄液およびリンス処理液は処理液排出機構130から排出される。
【0047】
(その他の構成要素)
図2に示すように、めっき処理装置20は、基板2の裏面に処理液を供給する裏面処理液供給機構145と、基板2の裏面に気体を供給する裏面ガス供給機構150と、をさらに有していてもよい。
【0048】
以上のように構成されるめっき処理装置20を複数含むめっき処理システム1は、制御機構160に設けた記憶媒体161に記録された各種のプログラムに従って制御機構160で駆動制御され、これによって基板2に対する様々な処理が行われる。ここで、記憶媒体161は、各種の設定データや後述するめっき処理プログラム等の各種のプログラムを格納している。記憶媒体161としては、コンピューターで読み取り可能なROMやRAMなどのメモリーや、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROMやフレキシブルディスクなどのディスク状記憶媒体などの公知のものが使用され得る。
【0049】
めっき処理方法
本実施の形態において、めっき処理システム1およびめっき処理装置20は、記憶媒体161に記録されためっき処理プログラムに従って、基板2にめっき処理を施すよう駆動制御される。以下の説明では、はじめに、一のめっき処理装置20で基板2にPdめっき処理を置換めっきにより施し、その後、Coめっき処理を化学還元めっきにより施す方法について、図6乃至図8を参照して説明する。
【0050】
(基板搬入工程および基板受取工程)
はじめに、基板搬入工程および基板受入工程が実行される。まず、基板搬送ユニット13の基板搬送装置14を用いて、1枚の基板2を基板受渡室11から一のめっき処理装置20に搬入する。めっき処理装置20においては、はじめに、カップ105が所定位置まで降下され、次に、搬入された基板2がウエハチャック113により支持され、その後、排出口134と基板2の外周端縁とが対向する位置までカップ105が昇降機構164により上昇させられる。
【0051】
(洗浄工程)
次に、リンス処理、前洗浄処理およびその後のリンス処理からなる洗浄工程が実行される(S301)。はじめに、リンス処理液供給機構78のバルブ78aが開かれ、これによって、リンス処理液が基板2の表面に第2吐出ノズル70の吐出口72を介して供給される。次に、前洗浄工程が実行される。はじめに、洗浄処理液供給機構77のバルブ77aが開かれ、これによって、洗浄処理液が基板2の表面に第2吐出ノズル70の吐出口72を介して供給される。なお、洗浄処理液としては例えばリンゴ酸を用いることができ、リンス処理液としては例えば純水を用いることができる。その後、上述の場合と同様にして、リンス処理液が基板2の表面に第2吐出ノズル70の吐出口72を介して供給される。処理後のリンス処理液や洗浄処理液は、カップ105の排出口134および処理液排出機構130を介して廃棄される。なお洗浄工程S301および以下の各工程のいずれにおいても、特に言及しない限り、基板2は基板回転保持機構110により第1回転方向R1に回転されている。
【0052】
(Pdめっき工程)
次に、Pdめっき工程が実行される(S302)。このPdめっき工程S302は、前洗浄工程後の基板2が乾燥されていない状態の間に、置換めっき処理工程として実行される。このように、基板2が乾燥していない状態で置換めっき処理工程を実行することで、基板2の被めっき面の銅などが酸化してしまい良好に置換めっき処理できなくなることを防止することができる。
【0053】
Pdめっき工程においては、はじめに、排出口129と基板2の外周端縁とが対向する位置までカップ105を昇降機構164により下降させる。次に、めっき液供給機構76のバルブ76aが開かれ、これによって、Pdを含むめっき液が、基板2の表面に第2吐出ノズル70の吐出口71を介して所望の流量で吐出される。このことにより、基板2の表面にPdめっきが施される。処理後のめっき液は、カップ105の排出口129から排出される。排出口129から排出されためっき液は、液排出機構125を介して、回収され再利用されるか、若しくは廃棄される。
【0054】
(リンス処理工程)
次に、Coめっき工程に先立って実施される前処理として、例えばリンス処理工程が実行される(S303)。このリンス処理工程S303においては、前処理液として例えばリンス処理液が基板2の表面に供給される。なお、このリンス処理工程の後、薬液処理により基板2を洗浄処理し、その後当該薬液を洗浄するためにリンス処理液を用いてリンス処理を行っても良い。
【0055】
(Coめっき工程)
その後、上述の工程S301〜303が実行されたのと同一のめっき処理装置20において、Coめっき工程が実行される(S304)。このCoめっき工程S304は、化学還元めっき処理工程として実行される。このCoめっき工程S304は、図6に示すように、液置換工程S305(第1工程)と、インキュベーション工程S306(第2工程)と、めっき膜成長工程S307(第3工程)と、を含んでいる。
【0056】
なおCoめっき工程において析出してめっき層を形成する元素がCoに限られることはなく、その他の元素が同時に析出してもよい。例えば、Coめっき工程において用いられるめっき液に、Coのイオンだけでなくその他の元素のイオンが含まれる場合、Coと同時にその他の元素が析出してもよい。ここでは、めっき液にCoのイオンおよびPのイオンが含まれており、このため、CoだけでなくPをも含むめっき層(CoP)が形成される場合について説明する。なお以下の説明においては、めっき層にCo以外の元素が含まれる場合であっても、Coめっき工程により得られるめっき層を「Coめっき層」と称する。
【0057】
上述の工程S305〜307のうち液置換工程S305は、上述のリンス処理工程S303において基板2に供給され、基板2の表面に残っているリンス処理液(例えば純水)を、CoPを形成するめっき液35によって置換する工程となっている。またインキュベーション工程S306は、液置換工程S305の後、基板2にめっき液35を供給し続けた状態で、後述するPdめっき層83上の全域にわたって初期のCoめっき層84を形成する工程となっている。なお初期のCoめっき層84とは、厚みが数nm〜数十nmのCoめっき層84のことをいう。まためっき膜成長工程S307は、基板2にめっき液35を供給し続けた状態で、インキュベーション工程S306によって形成された初期のCoめっき層84上でめっき反応をさらに進行させ、十分な厚み、例えば100nm〜1μmの厚みを有するCoめっき層84を形成する工程となっている。
【0058】
以下、Coめっき工程について図7(a)〜(e)および図8を参照して詳細に説明する。図7(a)は、Pdめっき工程S302およびリンス処理工程S303が実施された後の基板2を示す図である。図7(a)に示すように、基板2は、有機化合物などからなる絶縁層81と、銅などからなる配線82と、配線82を覆うよう設けられたPdめっき層83と、を有している。また基板2上には、リンス処理工程S303により供給されたリンス処理液79が残存している。
【0059】
〔液置換工程〕
はじめに、制御機構160が基板回転保持機構110を制御することにより、基板回転保持機構110に保持された基板2を第1回転数で回転させる(図8)。この場合、第1回転数は、例えば100rpm〜300rpmとすることができる。この状態で、図7(b)に示すように、加熱手段60によって吐出温度に加熱されためっき液35を、基板2の表面に向けて第1吐出ノズル45の吐出口46から吐出する。このとき、第1吐出ノズル45の吐出口46から吐出されためっき液35は、基板2の略中心部に到達する。
【0060】
第1吐出ノズル45を用いて基板2に向けてめっき液35を吐出することにより、図7(b)に示すように、基板2上に存在していたリンス処理液79が、CoPを形成するめっき液35によって置換される。すなわち、上述の液置換工程S305が完了する。液置換工程S305に要する時間は、基板2の寸法やめっき液35の流量によって異なるが、例えば1秒〜2分程度となっている。なお、このとき第1吐出ノズル45を、基板2の中心側から基板2の周縁側に向けて水平移動(スキャン)し、リンス処理液79を基板2の表面から効率的に掻き出すようにしても良い。
【0061】
〔インキュベーション工程〕
次に、第1吐出ノズル45を用いて基板2にめっき液35を供給し続けた状態で、制御機構160が基板回転保持機構110を制御する。これにより、基板回転保持機構110に保持された基板2の回転を停止させるか、または基板2を第1回転数より低い第2回転数で回転させるようにする(図8)。この間、基板2上にめっき液35のパドル(液盛り)が形成されるとともに、基板2表面のPdめっき層83上にCoめっきの初期成膜が行われる。
【0062】
すなわち、引き続き第1吐出ノズル45を用いて基板2に向けてめっき液35を吐出すると、図7(c)に示すように、Pdめっき層83上に初期のCoめっき層84が部分的に形成される。さらに基板2に向けてめっき液35を吐出し続けると、図7(d)に示すように、Pdめっき層83上の全域にわたって初期のCoめっき層84が形成される。すなわち、Pdめっき層83上に厚みが数nm〜数十nmのCoめっき層84が形成され、上述のインキュベーション工程S306が完了する。
【0063】
なお、インキュベーション工程S306に要する時間は、液置換工程S305に要する時間より長く、例えば10秒〜10分程度とすることが好ましい。
【0064】
また、インキュベーション工程S306において、基板2にめっき液35を供給する際、第1吐出ノズル45は、基板2の中心部に近接する中心位置で静止していても良く、あるいは基板2の中心部に近接する中心位置(図3の符号45’)と、中心位置よりも周縁側にある周縁位置(図3の符号45”)との間で水平移動しても良い。例えば、第1吐出ノズル45が周縁位置から中心位置へ移動している間に、第1吐出ノズル45が基板2に向けてめっき液35を吐出するようにしても良い。この場合、第1吐出ノズル45から吐出されためっき液35と基板2上に既に存在するめっき液35とが衝突し、これによってめっき液35の流れが停滞することにより、基板2上にめっき液35の液盛り部分が形成されると考えられる。このような液盛り部分を形成することにより、Pdめっき層83上に初期のCoめっき層84が形成されることを促進することができる。
【0065】
ところで、図8に示すように、このインキュベーション工程S306において、上述したように、基板2の回転を停止するか、または基板2を第1回転数より低い第2回転数で回転させるようになっている(すなわち第1回転数>第2回転数となっている)。このように、基板2の回転を停止するかまたは低回転とする理由は以下の通りである。すなわち、Coめっき層84を材質の異なるPdめっき層83上に成膜する場合、成膜初期の段階で、めっき液35の動きが大きいとCoめっき層84の成膜の進行が妨げられる。このため、基板2の回転を停止するかまたは低回転とすることにより、めっき液35の動きを少なくする必要があるためである。なお、第2回転数としては、例えば0rpm〜30rpmとすることができる。
【0066】
〔めっき膜成長工程〕
次に、第1吐出ノズル45を用いて基板2にめっき液35を供給し続けた状態で、制御機構160が基板回転保持機構110を制御し、基板回転保持機構110に保持された基板2を第3回転数で回転させる(図8)。これにより、基板2表面でCoめっき層84をさらに成長させる。
【0067】
すなわち、引き続き第1吐出ノズル45を用いて基板2に向けてめっき液35を吐出すると、図7(e)に示すように、Pdめっき層83上のCoめっき層84の厚みが、所定の厚み、例えば1μmに到達する。すなわち、上述のめっき膜成長工程S307が完了する。なお、めっき膜成長工程S307に要する時間は、液置換工程S305およびインキュベーション工程S306に要する時間より長く、例えば1分〜20分程度とすることが好ましい。
【0068】
また、めっき膜成長工程S307において、基板2にめっき液35を供給する際、第1吐出ノズル45は、基板2の中心部に近接する中心位置で静止していても良く、あるいは基板2の中心部に近接する中心位置(図3の符号45’)と、中心位置よりも周縁側にある周縁位置(図3の符号45”)との間で水平移動しても良い。例えば、第1吐出ノズル45が周縁位置から中心位置へ移動している間に第1吐出ノズル45が基板2に向けてめっき液35を吐出するよう、制御機構160により第1吐出ノズル45およびアーム49を制御してもよい。これによって、めっき膜成長工程S307においてCoめっき層84が成長することを促進することができる。
【0069】
図8に示すように、このめっき膜成長工程S307において、基板2を回転する第3回転数は、上述した第2回転数より高く、かつ上述した第1回転数より低くなっている(すなわち第1回転数>第3回転数>第2回転数となっている)。このように、基板2をインキュベーション工程S306(第2回転数)より高回転(第3回転数)で回転させる理由は以下の通りである。すなわち、Coめっき層84を成長させていく場合、Coめっき層84の表面でめっき液35中の反応種濃度が徐々に低下していく。これに対して、本実施の形態のように、基板2をインキュベーション工程S306よりも高回転で回転させることにより、めっき液35をCoめっき層84の表面で動かすことができる。このことにより、反応種濃度が低下しためっき液35を積極的に新しいめっき液35に置換し、めっき液35中の反応種濃度の低下を抑え、安定しためっき成長を促進することができるからである。また、基板2をインキュベーション工程S306よりも高回転で回転することにより、基板2の表面に発生する不純物等を基板2から効率的に除去することができるという効果も得られる。なお、第3回転数としては、例えば30rpm〜100rpmとすることができる。
【0070】
なお、めっき膜成長工程S307においては、基板2を常時一定の回転数で回転させる必要はなく、一時的に回転数を下げたり、一時的に回転を止めたりしても良い。ただし、第3回転数を低くしすぎた場合、上述した効果、すなわちめっき液35中の反応種濃度の低下を抑え、安定しためっき成長を促すという効果が得られなくなるおそれがある。一方、第3回転数を高くしすぎ、例えば第1回転数を上回る程度に高回転数となった場合、Coめっき層84が基板2の面内で均一に成長しなくなるおそれがある。
【0071】
なおCoめっき工程S304においては、排出口124と基板2の外周端縁とが対向する位置までカップ105が昇降機構164により下降されている。このため、処理後のめっき液35は、カップ105の排出口124から排出される。排出された処理後のめっき液35は、液排出機構120を介して、回収され再利用されるか、若しくは廃棄される。
【0072】
このようにして、液置換工程S305(第1工程)と、インキュベーション工程S306(第2工程)と、めっき膜成長工程S307(第3工程)とからなるCoめっき工程S304が完了する。
【0073】
(洗浄工程)
次に、Coめっき処理が施された基板2の表面に対して、リンス処理、後洗浄処理およびその後のリンス処理からなる洗浄工程S308が実行される。この洗浄工程S308は、上述の洗浄工程S301と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0074】
(乾燥工程)
その後、基板2を乾燥させる乾燥工程が実行される(S309)。例えば、ターンテーブル112を回転させることにより、基板2に付着している液体が遠心力により外方へ飛ばされ、これによって基板2が乾燥される。すなわち、ターンテーブル112が、基板2の表面を乾燥させる乾燥機構としての機能を備えていてもよい。
【0075】
このようにして、一のめっき処理装置20において、基板2の表面に対して、はじめにPdめっきが置換めっきにより施され、次にCoめっきが化学還元めっきにより施される。
【0076】
その後、基板2は、Auめっき処理用の他のめっき処理装置20に搬送されてもよい。この場合、他のめっき処理装置20において、基板2の表面に、置換めっきによりAuめっき処理が施される。Auめっき処理の方法は、めっき液および洗浄液が異なる点以外は、Pdめっき処理のための上述の方法と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0077】
(本実施の形態の作用効果)
このように、本実施の形態によれば、上述のように、基板2の表面にリンス処理液が残っている状態で、基板2を第1回転数で回転させ、基板2にめっき液35を供給することにより液置換を行う(液置換工程S305)。次に、基板2にめっき液35を供給し続けた状態で、基板2を停止または第2回転数で回転させて、基板2に初期成膜を行う(インキュベーション工程S306)。その後、基板2にめっき液35を供給し続けた状態で、基板2を第3回転数で回転させて、めっき膜を成長させる(めっき膜成長工程S307)。この場合、第1回転数は、第3回転数より回転数が高く、第3回転数は、第2回転数より回転数が高くなっている。例えば、第1回転数を100rpm〜300rpmとし、第2回転数を0rpm〜30rpmとし、第3回転数を30rpm〜100rpmとしている。このことにより、とりわけめっき膜成長工程S307において、反応種濃度が低下しためっき液35を積極的に新しいめっき液35に置換し、安定しためっき成長を促進することができる。この結果、基板1枚あたりのめっき処理時間を短縮することができる。
【0078】
本実施の形態において、第1吐出ノズル45から基板2に向けて吐出される化学還元タイプのめっき液35として、CoPめっき液が用いられる例を示した。しかしながら、用いられるめっき液35がCoPめっき液に限られることはなく、様々なめっき液35が用いられ得る。例えば、化学還元タイプのめっき液35として、CoWBめっき液、CoWPめっき液、CoBめっき液またはNiPめっき液など、様々なめっき液35が用いられ得る。
【符号の説明】
【0079】
1 めっき処理システム
2 基板
20 めっき処理装置
21 吐出機構
30 めっき液供給機構
45 第1吐出ノズル
50 タンク用加熱手段
110 基板回転保持機構
160 制御機構
161 記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理方法において、
前記基板の表面に前処理液が残っている状態で、前記基板を第1回転数で回転させ、前記基板にめっき液を供給することにより液置換を行う液置換工程と、
前記基板にめっき液を供給し続けた状態で、前記基板を停止または第2回転数で回転させて、前記基板に初期成膜を行うインキュベーション工程と、
前記基板にめっき液を供給し続けた状態で、前記基板を第3回転数で回転させて、めっき膜を成長させるめっき膜成長工程とを備え、
前記第1回転数は、前記第3回転数より回転数が高く、前記第3回転数は、前記第2回転数より回転数が高いことを特徴とするめっき処理方法。
【請求項2】
前記第1回転数は100rpm〜300rpmであることを特徴とする請求項1に記載のめっき処理方法。
【請求項3】
前記第2回転数は0rpm〜30rpmであることを特徴とする請求項1または2に記載のめっき処理方法。
【請求項4】
前記第3回転数は30rpm〜100rpmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のめっき処理方法。
【請求項5】
前記液置換工程を行う時間より前記インキュベーション工程を行う時間の方が長く、前記インキュベーション工程を行う時間より前記めっき膜成長工程を行う時間の方が長いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のめっき処理方法。
【請求項6】
めっき液は、吐出ノズルにより前記基板に対して供給され、前記液置換工程において、前記吐出ノズルは、前記基板の中心側から前記基板の周縁側に向けて移動されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のめっき処理方法。
【請求項7】
めっき液は、CoPめっき液、CoWBめっき液、CoWPめっき液、CoBめっき液またはNiPめっき液からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のめっき処理方法。
【請求項8】
基板にめっき液を供給してめっき処理を行うめっき処理装置において、
基板を保持して回転させる基板回転保持機構と、
前記基板回転保持機構に保持された前記基板に向けてめっき液を吐出する吐出機構と、
前記吐出機構にめっき液を供給するめっき液供給機構と、
前記基板回転保持機構、前記吐出機構および前記めっき液供給機構を制御する制御機構と、を備え、
前記制御機構は、
前記基板の表面に前処理液が残っている状態で、前記基板回転保持機構により前記基板を第1回転数で回転させ、前記吐出機構により前記基板にめっき液を供給することにより液置換を行い、
前記吐出機構から前記基板にめっき液を供給し続けた状態で、前記基板回転保持機構により前記基板を停止または第2回転数で回転させて、前記基板に初期成膜を行い、
前記吐出機構から前記基板にめっき液を供給し続けた状態で、前記基板回転保持機構により前記基板を第3回転数で回転させて、めっき膜を成長させるように、前記基板回転保持機構、前記吐出機構および前記めっき液供給機構を制御し、
前記第1回転数は、前記第3回転数より回転数が高く、前記第3回転数は、前記第2回転数より回転数が高いことを特徴とするめっき処理装置。
【請求項9】
めっき処理装置にめっき処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記めっき処理方法は、基板にめっき液を供給してめっき処理を行う方法であって、
前記基板の表面に前処理液が残っている状態で、前記基板を第1回転数で回転させ、前記基板にめっき液を供給することにより液置換を行う液置換工程と、
前記基板にめっき液を供給し続けた状態で、前記基板を停止または第2回転数で回転させて、前記基板に初期成膜を行うインキュベーション工程と、
前記基板にめっき液を供給し続けた状態で、前記基板を第3回転数で回転させて、めっき膜を成長させるめっき膜成長工程とを備え、
前記第1回転数は、前記第3回転数より回転数が高く、前記第3回転数は、前記第2回転数より回転数が高い、方法からなっていることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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