説明

めっき樹脂品の取付構造

【課題】グリル部材(第1部材)とグリルモール(第2部材)との摺接によるきしみ音の発生を、コストアップとなるのを抑制しつつ防止する。
【解決手段】第2部材2のクロムめっき皮膜4と摺接する第1部材1のメタリック塗膜3中に、フッ素樹脂からなる粒子を含ませることにより、光沢やリコート性などの塗膜物性を維持しつつ、きしみ音の発生を抑制することができる、またフェルトやスリップ剤などが不要となるとともに、マスキングが不要となり工数を大幅に低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1樹脂に塗装されてなる第1部材と、第2樹脂にめっきされてなる第2部材との取付構造に関し、詳しくは若干のクリアランスを有して取付けられた取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のラジエータグリルは、正面から視認されるものであるため高度の意匠性が要求されている。そのため、車体色に塗装されたもの、あるいはクロムめっきが施されたものなど、種々のものが知られている。
【0003】
また近年では、格子状の内側部材と、その外周に被覆された枠状の外側部材とからなる分割形状のラジエータグリルが増えている。その理由としては、一体型の全体をめっきした後に部分的に塗装する方法では、めっきのコストが高くなること、マスキング工数が多大であることなどがある。分割形状とすれば、一方にめっきを施し、他方に塗装を施した後に両者を組み付けることで、深みのある意匠を発現できるとともにコストを安価とすることができる。
【0004】
このような分割構造のラジエータグリルは、係合爪による係合、タッピングスクリューによる結合、樹脂クリップによる結合、などの手段によって一体化されている。例えば特開2003−205803号公報には、グリル部材(内側部材)にグリルモール(外側部材)を取付けた取付構造において、グリルモールに形成された係合突起をグリル部材に形成された係合リブに係合させることが記載されている。
【0005】
この取付構造によれば、少ない力で取付が可能となる。また、弾性変形可能な係合リブがグリル部材に形成されているので、グリルモールがめっきされることで硬くなっていても係合力に影響しない。
【0006】
ところが上記公報に記載の取付構造を実車のグリルに適用した場合、グリツを手で押したり背もたれすることにより押圧力が作用すると、グリル部材とグリルモールとが互いに摺接しながら相対移動するため、きしみ音が発生するという現象がある。このようなきしみ音は耳障りであり、高級感が損なわれるという不具合があった。
【0007】
そこで外側部材と内側部材の接触面にフェルトを貼着する、あるいはスリップ剤などを塗布して摺接面の摩擦抵抗を小さくするなどの対策が講じられているが、工数が多大となりコストアップとなるという問題がある。
【特許文献1】特開2003−205803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、コストアップとなるのを抑制しつつ、きしみ音の発生を防止することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明のめっき樹脂品の取付構造の特徴は、第1樹脂成形品に塗装されてなり塗膜を有する第1部材と、第2樹脂成形品に金属がめっきされてなりめっき皮膜を有する第2部材とよりなり、第1部材と第2部材とが互いに取付けられ、
第1部材は塗膜をもつ第1表面を有し、第2部材はめっき皮膜をもつ第2表面を有し、第1表面の塗膜と第2表面のめっき皮膜とが摺接する取付構造であって、
少なくとも第1表面に形成された塗膜には、フッ素樹脂からなる粒子を含むことにある。
【発明の効果】
【0010】
本願発明者らの研究によれば、きしみ音はめっき表面と塗装表面とが摺接することによって生じることが明らかとなった。そして鋭意研究の結果、互いに摺接する一対の表面のうち一方の表面が基材樹脂の表面であれば、きしみ音が発生しないことを見出し、特願2007−161705号を出願した。
【0011】
この技術によれば、フェルトやスリップ剤などが不要となるので、コストアップを抑制できる。しかしこの技術では、基材表面を部分的に表出させる必要があり、意匠の自由度が損なわれたり、マスキングなどの工数が多大となるという不具合があった。
【0012】
そこで本発明の取付構造によれば、塗膜中にフッ素樹脂からなる粒子を含有するだけで、きしみ音を抑制することができる。すなわち、従来用いられている塗料にフッ素樹脂からなる粒子を混合した塗料を用いて塗装するだけでよいので、フェルトやスリップ剤などが不要となるとともに、マスキングが不要となり工数を大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のめっき樹脂品の取付構造は、第1樹脂成形品に塗装されてなり塗膜を有する第1部材と、第2樹脂成形品に金属がめっきされてなりめっき皮膜を有する第2部材と、より構成され、第1部材と第2部材とが互いに取付けられている。
【0014】
第1樹脂成形品及び第2樹脂成形品の材質は、ABS、PA、PPなど特に制限されず、用途に応じて種々の樹脂を選択することができる。第1樹脂成形品と第2樹脂成形品とは同一の樹脂を用いてもよいし、異なる樹脂を用いてもよい。
【0015】
第1部材と第2部材とを互いに取付けるには、例えば第1部材に第1係合部を形成し、第2部材には第2係合部を形成し、第1係合部と第2係合部とを係合させることで行うことができる。
【0016】
第1係合部と第2係合部との係合構造は、例えば爪部と係合孔との係合構造とすることが好ましい。一般的な爪部と係合孔との係合構造は、第1部材と第2部材の一方を他方に向かって押圧するだけで係合させることができ、組付工数が小さいという効果が得られる。
【0017】
爪部と係合孔との係合構造においては、爪部の弾性変形を利用するのが一般的である。すなわち爪部は、板状の脚部と、脚部の先端に形成された係止爪とからなるものが一般的である。そして係合孔に係合する際には、係止爪のテーパ面が相手部材に当接し脚部が弾性変形する。そして係止爪の全体が係合孔に入ると、脚部は自身の弾性力で元の形状に戻り、係止爪が係合孔に係合する。
【0018】
したがって爪部と係合孔との係合構造においては、脚部の弾性変形による係止爪の揺動を可能とするために、さらには係止爪が係合孔に確実に係合するために、第1部材と第2部材との間に若干のクリアランスが必要である。このクリアランスは、爪部と係合孔との係合後も残存する。
【0019】
したがって例えば爪部と係合孔との係合による取付構造の場合には、第1部材と第2部材の一方を他方に向かって押圧する際に、押圧による過度の移動を規制して破損などを防止する必要がある。
【0020】
そこで第1部材と第2部材の少なくとも一方に規制面を形成し、第1部材と第2部材の少なくとも他方には規制面に当接して移動を規制する規制リブを形成することが望ましい。第1部材と第2部材の一方を他方に向かって押圧する際には、規制リブが規制面に当接することでそれ以上の移動が規制されるため、破損などの不具合を防止することができる。
【0021】
第1部材は塗膜をもつ第1表面を有し、第2部材はめっき皮膜をもつ第2表面を有し、第1表面の塗膜と第2表面のめっき皮膜とが摺接する。第1表面及び第2表面は、例えば上記した規制面及び規制リブ表面とすることができる。規制面を第1表面とすれば、規制リブの規制面に対向する表面が第2表面となり、規制面を第2表面とすれば、規制リブの規制面に対向する表面が第1表面となる。
【0022】
第1部材は、少なくとも第1表面に塗膜を有する必要がある。第1表面以外の部分には塗膜が無くてもよいが、マスキングを不要とするために、意匠表面あるいは意匠表面でない表面にも塗膜を有することが望ましい。塗膜を形成する塗料の種類は特に限定されず、公知の各種塗料を塗装して塗膜を形成することができる。塗膜の膜厚は10〜50μmなど一般的なものでよく、クリア塗膜、ソリッドカラー塗膜、メタリック塗膜など各種色調の塗膜とすることができる。ABSなどに塗装できる塗料としては、例えば二液硬化型のアクリルウレタン樹脂塗料などがある。
【0023】
本発明の最大の特徴は、少なくとも第1表面に形成された塗膜には、フッ素樹脂からなる粒子を含むことにある。こうすることで、第2表面のめっき皮膜と摺接したときのきしみ音を大きく抑制することができる。
【0024】
塗膜中におけるフッ素樹脂からなる粒子の含有量は、11質量%以下の範囲が好ましい。11質量%より多く含有すると、きしみ音の抑制効果が飽和するとともに、塗膜の光沢や透明性が低下する場合があり、塗膜物性に悪影響を及ぼす場合がある。塗料の種類、フッ素樹脂からなる粒子の粒径や分子量、あるいは組み合わせによって効果の程度が異なるため下限は規定できないが、2質量%以上含むことが望ましいと考えられる。
【0025】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)などが例示される。中でもポリテトラフルオロエチレンからなる粒子を用いれば、含有量がより少量で効果が発現する。なおポリテトラフルオロエチレンを用いる場合は、その数平均分子量が1,000〜500,000のものを用いるのが好ましい。
【0026】
フッ素樹脂からなる粒子の形状は、球状、鱗片状、不定形状など、特に制限されない。またその粒径は、塗膜の膜厚以下であれば特に制限されないが、1〜10μmの範囲が好ましく、2〜5μmの範囲が特に望ましい。粒径がこの範囲より小さくなると取り扱い作業性が低下し、粒径がこの範囲より大きくなると塗膜の表面粗さが大きくなる。
【0027】
第1樹脂に塗膜を形成するには、先ず塗料中にフッ素樹脂からなる粒子を混合する。粒子の混合量は、塗料の不揮発分に対して決定する。アクリルウレタン樹脂塗料を用いる場合には、アクリルポリオール樹脂溶液中に混合するが、ポリイソシアネート樹脂溶液との合計不揮発分に対して混合量を決定する。
【0028】
塗装方法は特に制限されず、スプレー塗装、静電塗装など各種塗装方法を用いることができる。次いで乾燥工程に移り、所定の温度で所定時間乾燥することで、第1部材が形成される。塗装は、意匠表面の全面に、必要であれば裏面にも行うことができ、マスキングは不要とすることができるので、従来方法に比べて工数の増大は無い。
【0029】
また第2部材は、第2樹脂成形品に金属がめっきされてなりめっき皮膜を有する。めっきの種類としては、金属調のクロムめっきが望ましいが、これに限るものではない。従来と同様に、無電解めっきにより銅、ニッケルなどの導電性皮膜を形成し、その後電気めっきによりクロムめっき皮膜などを形成することができる。めっき皮膜の厚さも一般的なものでよい。
【0030】
本発明のめっき樹脂品の取付構造において、第1部材又は第2部材を押圧すると、第1表面と第2表面とが摺接する。しかし塗膜にはフッ素樹脂からなる粒子が含まれているため、きしみ音の発生が防止される。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。本実施例では、自動車のラジエータグリルのグリル部材とグリルモールとの取付構造に本発明を適用している。
【0032】
(実施例1)
図1に本実施例のラジエータグリルを示す。このラジエータグリルは、ABS樹脂製のグリル部材1と、グリル部材1の外周に固定されたABS樹脂製のグリルモール2と、から構成されている。
【0033】
グリル部材1は、外周を規定する略四角形の枠体10と、枠体10の内部を上下方向で複数に区画する互いに平行な複数の横板11とからなる。隣接する横板11どうしは、連結板11a によって部分的に連結されている(図4参照)。枠体10の上部及び下部からは、前方に向かって突出する複数の爪部12が形成されている。この爪部12は、図2、図3に示すように、板状の脚部13と、脚部13の先端に形成された断面三角形状の係止爪14とからなり、脚部13がその厚さ方向に撓むように弾性変形可能である。また枠体10には、爪部12どうしの間の位置に、前方へ突出する複数の規制リブ15が形成されている。さらに枠体10には、車体に取付けるための図示しない複数のブラケットが形成されている。
【0034】
このグリル部材1は、表裏全面にアクリルウレタン系メタリック塗料が塗装されることで形成されたメタリック塗膜3を有する(図5)。メタリック塗膜3にはポリテトラフルオロエチレン粉末(以下PTFE粉末という)が3質量%含有され、その平均膜厚は20μmである。
【0035】
一方のグリルモール2は、上側壁20と、下側壁21と、上側壁20及び下側壁21を連結する中央壁22とからなる断面略コ字形状に形成され、その凸側表面が意匠表面を構成している。グリルモール2は、グリル部材1の外周形状に相当する枠状に形成され、枠の上側では上側壁20に複数の係合孔23が形成され、枠の下側では下側壁21に複数の係合孔23が形成されている(図2)。
【0036】
グリルモール2には、エッチング処理後に無電解めっきによってNi皮膜が形成され、その後に電気めっきすることで形成されたクロムめっき皮膜4(図5)が表裏全面に形成されている。
【0037】
このグリル部材1にグリルモール2を取付けるには、グリル部材1の外周にグリルモール2が位置するようにグリル部材1の表面側からグリルモール2を配置し、互いに近接する方向へ押圧する。すると図1に示す上下に設けられた複数の爪部12の係止爪14がそれぞれ上側壁20又は下側壁21に当接して押圧され、脚部13が内周側へ弾性変形する。そして係止爪14の全体が係合孔23の位置へ到達すると、脚部13の弾性反力によって係止爪14が係合孔23に係合する。これにより、図3に示すように、グリルモール2がグリル部材1に取付けられる。
【0038】
図4に示すように、このとき規制リブ15の上面16と下面17は、グリルモール2の上側壁20と下側壁21の内周表面にそれぞれ対向している。そしてグリルモール2が表面側から押圧されると、規制リブ15の上面16及び下面17が上側壁20と下側壁21の内周表面に摺接する。
【0039】
しかし本実施例のラジエータグリルにおいては、上側壁20と下側壁21の内周表面に形成されたクロムめっき皮膜4と、規制リブ15の表面に形成されたメタリック塗膜3が摺接する。メタリック塗膜3中には、PTFE粉末が含まれている。したがってきしみ音の発生が防止され、高級感を損なうような不具合がない。
【0040】
以下、メタリック塗膜3の形成方法を説明し、メタリック塗膜3の構成の詳細な説明に代える。
【0041】
二液硬化型アクリルウレタン樹脂塗料(「OPZ-11GY08色」オリジン電気社製)を用意した。この塗料は、アクリルポリウレタンを主成分としアルミニウム顔料や着色顔料を含むA液と、ポリイソシアネートを主成分とするB液とからなる。このA液に、PTFE粉末A(数平均分子量:1,000〜500,000、粒径:2μm)をミキサーで撹拌混合した。PTFE粉末Aの混合量は、A液とB液とを所定比率で混合した塗装時の混合物中に1重量%であり、PWCとして3重量%である。
【0042】
PTFE粉末Aを含むA液とB液とを所定比率で混合し、これをシンナーにて塗装粘度に希釈して、グリル部材1の全表面にエアスプレーにて塗装した。塗装後10分間放置し、次いで70℃で30分間乾燥してメタリック塗膜3を形成した。乾燥後の平均膜厚は30μmである。
【0043】
表1には、A液とB液が混合された塗料の詳細な組成を示している。またメタリック塗膜3の断面をEPMAにて分析したところ、フッ素原子がメタリック塗膜3の全体に均一に分布していることが認められた。
【0044】
得られたグリル部材1と、クロムめっき皮膜4をもつグリルモール2とを図3及び図4に示すように組付け、本実施例のラジエータグリルを構成した。
【0045】
(実施例2)
A液とB液とを所定比率で混合した塗装時の混合物中のPTFE粉末A量を2重量%とし、メタリック塗膜3中のPTFE粉末Aの含有量(=PWC)を6重量%としたこと以外は実施例1と同様である。
【0046】
(比較例1)
メタリック塗膜3中にPTFE粉末Aを含まないこと以外は実施例1と同様である。
【0047】
(比較例2)
A液とB液とを所定比率で混合した塗装時の混合物中のPTFE粉末A量を2重量%とし、メタリック塗膜3中のPTFE粉末Aの含有量(=PWC)を6重量%としたこと以外は実施例1と同様である。
【0048】
<試験例>
各実施例及び各比較例のラジエータグリルについて、グリル部材1を固定した状態で、グリルモール2をグリル部材1に向かって手指で押圧し、きしみ音の発生程度を官能評価した。結果を表1に示す。比較例1では耳障りなきしみ音が発生したため、それを×と評価し、きしみ音がほとんど発生しなかったものを○と評価し、きしみ音が発生してもほとんど気にならない程度のものを△〜○と評価した。
【0049】
またメタリック塗膜3の光沢を目視で評価するとともに光沢計にてメタリック塗膜3の光沢を測定し、結果を表1に示す。
【0050】
さらに、グリル部材1に塗料をリコートした場合の付着性試験も行った。一層目のメタリック塗膜3の乾燥時間を70℃で60分とし、 240時間放置した後、その表面に一層目に用いたものと同一のメタリック塗料を塗装して70℃で30分乾燥した。室温まで放冷した後、ゴバン目剥離試験後、40℃の温水に240時間浸漬し、塗膜の剥離が全く生じなかったものを○と評価した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
表1から、実施例1、2のラジエータグリルは比較例1に比べてきしみ音が抑制されていることがわかり、これはメタリック塗膜3中にPTFE粉末Aを含んだことによる効果であることが明らかである。またPTFE粉末Aの含有量が多くなると、比較例2に示されるように、きしみ音は防止されるものの光沢が低下する。したがってメタリック塗膜3中のPTFE粉末Aの含有量は、11質量%以下とすることが望ましい。なおメタリック塗膜3にPTFE粉末Aを含んでも、リコート性には影響が無いこともわかる。
【0053】
(実施例3)
グリル部材1の塗装に用いる二液硬化型アクリルウレタン樹脂塗料として、「OPZ-HG-11GY24色」(オリジン電気社製)を用い、メタリック塗膜3中のPTFE粉末A量が 5.7重量%となるように塗装したこと以外は実施例1と同様である。表2に塗料の組成を示す。そして上記した試験例と同様に試験を行い、結果を表2に示す。
【0054】
(実施例4)
ポリテトラフルオロエチレン粉末としてPTFE粉末B(数平均分子量:1,000〜500,000粒径:5〜7μm)を用い、メタリック塗膜3中のPTFE粉末B量が 5.7重量%となるように塗装したこと以外は実施例3と同様である。表2に塗料の組成を示す。そして上記した試験例と同様に試験を行い、結果を表2に示す。
【0055】
(実施例5)
メタリック塗膜3中のPTFE粉末B量が10.9重量%となるように塗装したこと以外は実施例3と同様である。表2に塗料の組成を示す。そして上記した試験例と同様に試験を行い、結果を表2に示す。
【0056】
(比較例3)
メタリック塗膜3中にPTFE粉末A及びPTFE粉末Bを含まないこと以外は実施例3と同様である。
【0057】
【表2】

【0058】
表2から、メタリック塗膜3中にPTFE粉末A又はPTFE粉末Bを含むことで、きしみ音が抑制されることが明らかである。またPTFE粉末AとPTFE粉末Bとを比較すると、きしみ音の抑制効果については両者の差は無いが、光沢に関しては粒径が大きいPTFE粉末Bの方が低下度合いが小さい。しかしPTFE粉末Bでも、含有量が多くなるにつれて光沢が低下していることから、メタリック塗膜3中のPTFE粉末Bの含有量は、11質量%以下とすることが望ましいと考えられる。
【0059】
しかし実施例3及び実施例4では、きしみ音の評価が△〜○であるので、メタリック塗膜3中のPTFE粉末A又はPTFE粉末Bの含有量は5質量%以上が望ましいと考えられる。
【0060】
(実施例6)
グリル部材1の塗装に用いる二液硬化型アクリルウレタン樹脂塗料として、「PZ-3-11GY24色」(オリジン電気社製)を用い、メタリック塗膜3中のPTFE粉末A量が 3.2重量%となるように塗装したこと以外は実施例1と同様である。表3に塗料の組成を示す。そして上記した試験例と同様に試験を行い、結果を表2に示す。
【0061】
(実施例7)
メタリック塗膜3中のPTFE粉末A量が 6.2重量%となるように塗装したこと以外は実施例6と同様である。表3に塗料の組成を示す。そして上記した試験例と同様に試験を行い、結果を表3に示す。
【0062】
(比較例4)
メタリック塗膜3中にPTFE粉末Aを含まないこと以外は実施例6と同様である。
【0063】
【表3】

【0064】
表3から明らかなように塗料の種類を変更しても、メタリック塗膜3にPTFE粉末Aを含むことで、他の実施例と同様に塗膜物性を維持しながらきしみ音を抑制できることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のめっき樹脂品の取付構造は、ラジエータグリルに限るものではなく、サイドモール、オーナメントなど、金属めっき皮膜と塗膜の両方を備える装飾部材にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施例に係るラジエータグリルの分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係るラジエータグリルの要部分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係るラジエータグリルの要部断面図である。
【図4】本発明の一実施例に係るラジエータグリルの要部断面図である。
【図5】本発明の一実施例に係るラジエータグリルの要部断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1:グリル部材(第1部材) 2:グリルモール(第2部材)
3:メタリック塗膜 4:クロムめっき皮膜
12:爪部 23:係合孔
15:規制リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂成形品に塗装されてなり塗膜を有する第1部材と、第2樹脂成形品に金属がめっきされてなりめっき皮膜を有する第2部材とよりなり、該第1部材と該第2部材とが互いに取付けられ、
該第1部材は該塗膜をもつ第1表面を有し、該第2部材は該めっき皮膜をもつ第2表面を有し、該第1表面の該塗膜と該第2表面の該めっき皮膜とが摺接する取付構造であって、
少なくとも該第1表面に形成された該塗膜には、フッ素樹脂からなる粒子を含むことを特徴とするめっき樹脂品の取付構造。
【請求項2】
前記塗膜はアクリルウレタン塗膜であり、前記めっき皮膜はクロムめっき皮膜である請求項1に記載のめっき樹脂品の取付構造。
【請求項3】
前記フッ素樹脂からなる粒子はポリテトラフルオロエチレンからなり、前記塗膜中に11質量%以下の量で含まれている請求項1又は請求項2に記載のめっき樹脂品の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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