めっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法
【課題】高品質で均一な膜厚のめっき膜を得ることが可能であると共に、めっき効率を向上させ、省エネを図ることができるめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】素子本体10を収容する収容部24を持つキャリアプレート22と、キャリアプレート22と共に移動する搬送ベルト30と、キャリアプレート22の移動途中で、収容部24に、めっき液を供給するめっき液含浸ロール40と、収容部24に、めっき液が供給されている状態で、素子本体10におけるめっきすべき予定部分に直接または間接的に接続するアノード電極およびカソード電極とを有する。
【解決手段】素子本体10を収容する収容部24を持つキャリアプレート22と、キャリアプレート22と共に移動する搬送ベルト30と、キャリアプレート22の移動途中で、収容部24に、めっき液を供給するめっき液含浸ロール40と、収容部24に、めっき液が供給されている状態で、素子本体10におけるめっきすべき予定部分に直接または間接的に接続するアノード電極およびカソード電極とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばチップ型電子部品のような小型部品に均一なめっき層を形成するために、従来では、バレルめっき装置が用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来のバレルめっき装置では、回転するバレルの内部で、多数のめっき対象物同士が無秩序に重なり合うために、めっき対象物同士の付着や、めっき対象物にめっき液中の泡が付着するなどの課題がある。めっき対象物同士の付着や、めっき対象物への泡の付着などが生じると、その部分に、めっき膜が形成されず、高品質で均一な厚さのめっき膜を形成することが困難になる。
【0004】
また、従来のバレルめっき装置およびめっき方法では、めっき液中でのアノード電極からカソード電極までの電力線が長いため、電力量に比較してめっき効率は高くなく、しかも電力線の集中も起こりやすく、めっき膜厚のバラツキの原因にもなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−36249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、高品質で均一な膜厚のめっき膜を得ることが可能であると共に、めっき効率を向上させ、省エネを図ることができるめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るめっき装置は、
めっき対象物を収容する収容空間を持つ収容体と、
前記収容体と共に移動する搬送手段と、
前記収容体の移動途中で、前記収容空間に、めっき液を供給するめっき液供給手段と、
前記収容空間に、めっき液が供給されている状態で、前記めっき対象物におけるめっきすべき予定部分に直接または間接的に接続するアノード電極およびカソード電極とを有する。
【0008】
本発明に係るめっき方法は、
めっき対象物を収容する収容空間を持つ収容体を移動する工程と、
前記収容体の移動途中で、前記収容空間に、めっき液を供給する工程と、
前記収容空間に、めっき液が供給されている状態で、前記めっき対象物におけるめっきすべき予定部分に直接または間接的にアノード電極およびカソード電極を接触させる工程とを有する。
【0009】
本発明に係るチップ型電子部品の製造方法は、
素子本体を製造する工程と、
前記素子本体に下地電極層を形成する工程と、
前記下地電極層の表面にめっき膜を形成する工程とを有するチップ型電子部品の製造方法であって、
前記めっき膜を形成する工程が、
前記素子本体を収容する収容空間を持つ収容体を移動する工程と、
前記収容体の移動途中で、前記収容空間に、めっき液を供給する工程と、
前記収容空間に、めっき液が供給されている状態で、前記下地電極層の表面に直接または間接的にアノード電極およびカソード電極を接続させる工程とを有する。
【0010】
本発明に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法では、めっき液が供給される収容空間毎に、好ましくは単一、ブリッジしない(めっき膜により相互に付着しない)範囲であれば、多くて5個程度のめっき対象物(たとえば素子本体、以下同様)が収容され、めっき対象物に直接または間接的にアノード電極およびカソード電極が接続して電解めっきされる。そのため、従来のバレルめっき法と異なり、めっき対象物同士の付着が少なく、しかも、めっき対象物への泡の付着なども生じ難く、高品質で均一な膜厚のめっき膜を形成することができる。
【0011】
さらに本発明では、めっき対象物を挟んでアノード電極およびカソード電極が近くに位置し、めっき対象物におけるめっきすべき予定部分(たとえば下地電極、以下同様)の表面に直接または間接的に接続している。そのため、めっき液に接触する前記予定部分において、アノード電極からカソード電極までの電力線が短く、電力量に比較してめっき効率は高くなり、省エネに寄与する。しかも本発明では、電力線の不均一も起こり難く、めっき膜厚のバラツキも少ない。
【0012】
好ましくは、前記アノード電極が、前記めっき液供給手段および前記搬送手段のいずれか一方の少なくとも一部で構成され、前記カソード電極が、前記めっき液供給手段および前記搬送手段のいずれか他方の少なくとも一部で構成される。このように構成することで、アノード電極およびカソード電極を、めっき液供給手段および搬送手段とは別に設ける必要が無くなり、部品点数の削減に寄与し、装置構成もシンプルになる。また、アノード電極およびカソード電極が、めっき対象物に確実に接続され、高品質で均一な膜厚のめっき膜を形成することができる。
【0013】
好ましくは、前記アノード電極が、前記めっき液供給手段の少なくとも一部で構成され、前記カソード電極が、前記搬送手段の少なくとも一部で構成される。めっき液供給手段を収容体の鉛直方向上方に位置させ、搬送手段を収容体の鉛直方向下方に位置させた場合には、めっき対象物が収容される収容空間には、めっき液供給手段から搬送手段方向に流れるめっき液流れが形成される。このため、アノード電極をめっき液供給手段の少なくとも一部で構成することで、アノード電極から溶出しためっき成分が、めっき液の流れに沿ってめっき対象物に接触し、めっき対象物の予定部分に確実に均一なめっき膜を形成することができる。
【0014】
好ましくは、前記めっき液供給手段は、前記収容体の移動途中で、前記めっき対象物に接触可能なめっき液含浸ローラを有する。めっき対象物に接触可能なめっき液含浸ローラの少なくとも一部がアノード電極を構成することで、アノード電極から溶出しためっき成分が、めっき液と共に、めっき液含浸ローラを介してめっき対象物の周囲に供給され、めっき対象物の予定部分に確実に均一なめっき膜を形成することができる。
【0015】
好ましくは、前記搬送手段は、めっき液を流通可能な導電性部材を有し、さらに好ましくは導電性部材が組み込まれた搬送ベルトを有する。これらの導電性部材をカソード電極の一部として用いることで、搬送手段により収容体を移動させた状態で、収容体の収容空間に収容してあるめっき対象物に対して容易にカソード電極を接続させることができる。
【0016】
本発明では、めっき液供給手段は、搬送手段の鉛直方向下方に配置しても良い。その場合には、収容体の収容空間に収容してあるめっき対象物に直接または間接的に接続される搬送手段の少なくとも一部は、アノード電極として機能してもよい。めっき液の流れが、収容体の収容空間において、鉛直方向の下方から上方に向かう流れとなるからである。このような場合には、収容体の上方に配置されて、めっき対象物に接触可能なローラは、カソード電極の少なくとも一部と成るように構成しても良い。
【0017】
好ましくは、前記収容体は、行列状に配置された複数の前記収容空間を有するキャリアプレートである。この場合には、キャリアプレートを挟むように、搬送手段およびめっき液供給手段を配置しやすくなる。また、アノード電極またはカソード電極の少なくとも一部をそれぞれ構成する搬送手段およびめっき液供給手段が、キャリアプレートの両面で、複数の収容空間に収容してある各めっき対象物に対して同時に接触することが容易となり、めっき処理の歩留まりが向上する。
【0018】
二枚以上のキャリアプレートなどの収容体は、各収容空間にめっき対象物を収容した状態で、重ねて搬送手段により移動させても良い。その場合には、二枚以上のキャリアプレートなどの収容体の積層体を挟むように、搬送手段およびめっき液供給手段を配置することが好ましい。
【0019】
収容体と共に移動するための搬送手段は、収容体を略水平方向に移動させることが好ましいが、必ずしも水平ではなくともよく、略鉛直方向に移動させても良いし、水平と鉛直の間で傾斜させて収容体を移動させても良い。
【0020】
好ましくは、前記収容空間の底部には、前記めっき対象物を保持する支持部が前記収容体に形成してある。支持部を形成することで、キャリアプレートなどの収容体を、搬送ベルトなどの搬送手段から取り出した状態でも、めっき対象物が収容体に保持される。そのため、めっき処理の前後で、めっき対象物を、収容体の収容空間に収容した状態で持ち運びが可能となり、めっき対象物のハンドリングが容易になる。
【0021】
好ましくは、前記支持部の少なくとも一部が、前記めっき対象物および前記搬送手段の双方に接触する導電体で構成してある。アノード電極またはカソード電極の一部となる搬送手段が支持部の導電体に接触することで、支持部で保持されるめっき対象物に電気的に接続される。
【0022】
好ましくは、前記支持部が、めっき液を流通可能に構成してある。支持部に孔を開けることにより、めっき液を流通可能に構成しても良いし、支持部をメッシュなどの通液性部材により構成することにより、めっき液を流通可能に構成しても良い。
【0023】
前記収容空間は、当該収容空間に前記めっき対象物が収容された状態で、前記めっき対象物の少なくとも一部が、前記搬送手段の一部に接触するように構成してもよい。たとえば板状の収容体に表裏面を貫通する複数の孔を設け、各孔を収容空間とし、板状の収容体を搬送手段とめっき液供給手段とで挟み込むことで、収容空間に収容されためっき対象物を、搬送手段の一部に接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係るめっき装置の概略斜視図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態に係るめっき方法により処理されるチップ型電子部品の断面図である。
【図3】図3は図1に示すキャリアプレート付近の要部断面図である。
【図4】図4は本発明の他の実施形態に係るめっき装置におけるキャリアプレート付近の要部断面図である。
【図5】図5は本発明のさらに他の実施形態に係るめっき装置におけるキャリアプレート付近の要部断面図である。
【図6】図6は本発明のさらに他の実施形態に係るめっき装置におけるキャリアプレート付近の要部断面図である。
【図7】図7は本発明のさらに他の実施形態に係るめっき装置におけるキャリアプレート付近の要部断面図である。
【図8】図8は本発明のさらに他の実施形態に係るめっき装置におけるキャリアプレート付近の要部断面図である。
【図9】図9は本発明のさらに他の実施形態に係るめっき装置におけるキャリアプレート付近の要部断面図である。
【図10】図10は本発明のさらに他の実施形態に係るめっき装置におけるキャリアプレート付近の要部断面図である。
【図11】図11は本発明のさらに他の実施形態に係るめっき装置の全体概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
第1実施形態
めっき対象物としての積層チップコンデンサ
【0026】
まず、本発明の一実施形態に係る図1に示すめっき装置20を用いてめっき処理されるチップ型電子部品としての図2に示す積層チップコンデンサ2について説明する。図2に示すように、積層チップコンデンサ2は、内部電極層4,6と誘電体層8とが積層された構成の素子本体10を有する。この素子本体10の両端部11,13には、素子本体10の内部に配置された内部電極層4,6と各々導通する一対の外部端子電極12,14が形成してある。
【0027】
内部電極層4,6は、各端面が素子本体10の対向する両端部11,13の表面に露出するように積層してある。一対の外部端子電極12,14は、素子本体10の両端部に形成され、内部電極層4,6の露出端面にそれぞれ接続されて、コンデンサ回路を構成している。
【0028】
誘電体層8は、誘電性材料であれば特に限定されないが、たとえばチタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、あるいはこれらの複合酸化物などを主成分とする誘電体材料で構成される。この誘電体材料には、シリコン酸化物、希土類酸化物、マンガン酸化物、マグネシウム酸化物、バナジウム酸化物、アルミニウム酸化物、クロム酸化物などの副成分が含まれていても良い。
【0029】
本発明に係るめっき対象物としての積層チップ部品は、チップコンデンサ2に限定されず、たとえばチップバリスタ、チップインダクタ、チップサーミスタであってもよく、その場合には、誘電体層8は、バリスタ材料層、インダクタ材料層、NTCサーミスタ材料層などで構成されてもよい。
【0030】
内部電極層4,6は、導電材を含んで構成される。内部電極層4,6に含まれる導電材としては、特に限定されないが、コンデンサ2として用いる場合には、ニッケル、もしくはニッケル合金などが好ましい。内部電極層4,6の厚さは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常0.2〜5μm程度である。
【0031】
外部端子電極12,14も導電材を含んで構成される。外部端子電極12,14に含まれる導電材としては、特に限定されないが、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。本実施形態では、ペースト電極膜から成る下地電極層12p,14pの表面に、電気メッキ等により、Ni及びSn膜などで構成されるめっき膜12c,14cが形成してある。下地電極層12p,14pの厚みは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常5〜50μm程度である。また、めっき膜12c,14cの厚みは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常3〜10μm程度である。
【0032】
素子本体10の形状は、特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて決定され、特に、1005形状(縦1.0mm×横0.5mm×厚み0.5mm)サイズ以下、たとえば、小さく軽く電極間距離が短い0603形状(縦0.6mm×横0.3mm×厚み0.3mm)サイズ以下である場合にも本実施形態の装置および方法が適用できる。
【0033】
素子本体10において、内部電極層4,6および誘電体層8の積層方向の両外側端部には、外側誘電体層18が配置してあり、素子本体10の内部を保護している。外側誘電体層18の材質は、誘電体層8の材質と同じであっても異なっていても良いが、通常、誘電体層8の材質とほぼ同じであり、誘電体材料で構成されている。
【0034】
一対の下地電極層12p,14pの外側にめっき膜12c,14cを形成する際には、そのめっき処理時に、外側誘電体層18の外表面(素子本体10の表面10α)には、めっき膜が形成されてショート不良となりやすい。そのため、その表面10αには、ガラスコートなどの保護膜16を形成しても良いが、必ずしも保護膜16は形成されていなくとも良い。保護膜16を形成する場合には、保護膜16の厚さは、好ましくは0.05〜0.2μm程度に薄い。保護膜16が厚すぎると、保護膜16を形成した後に、下地電極層12p,14pを形成する際に、内部電極層4および6と下地電極層12p,14pとのコンタクトが困難になる傾向にある。
【0035】
下地電極層12p,14pは、電極ペーストの焼付け処理により形成されている。下地電極層12p,14pは、素子本体10の端面に位置する端面部分12γ,14γと、端面部分12γ,14γに連続して形成され、素子本体10の端面近傍の四側面にまで延びる側面部分12β,14βとを有している。
積層チップコンデンサの製造方法
【0036】
次に、図2に示す積層チップコンデンサ2の製造方法について説明する。
まず素子本体10を製造する。素子本体10を製造するために、印刷工法またはシート工法等により、内部電極層4,6が互い違いに両端部に露出するように、誘電体層8と内部電極層4,6を交互に積層し、その積層方向の両端に外側誘電体層18を積層し、積層体を形成する。
【0037】
次に、この積層体を切断し、グリーンチップを得る。次に、必要に応じて脱バインダー処理を行い、グリーンチップを焼成し、素子本体10を得る。次に、必要に応じて、素子本体10の研磨(たとえば一般的なバレル研磨)を行い、内部電極の端部を素子本体の両端面に露出させる。その後に、素子本体10の両端部に外部端子電極12,14を形成するための電極ペーストを塗布、焼き付けして下地電極層12p,14pを形成する。
【0038】
次に、下地電極層12p,14pの表面を研磨して、下地電極層12p,14pの表面に導電性粒子を露出させ、その下地電極層12p,14pの表面にめっき膜12c,14cを均一に形成しやすくする。その研磨手段としては、一般的なバレル研磨などが用いられる。
【0039】
そのような研磨後に、図2に示す下地電極層12p,14pの表面に、めっき膜12c,14cを、図1に示すめっき装置20を用いて電気めっき法により形成する。このようにして図2に示す積層チップコンデンサ2が製造される。
【0040】
なお、図2に示すガラスコートなどの保護膜16の形成は、めっき処理の前に行っても、下地電極層12p,14pの形成前に行っても良い。保護膜16は、十分に薄いので、素子本体10の端面に下地電極層12p,14pを形成する際に、内部電極層4,6との接続を確保することが可能である。
めっき装置
【0041】
次に、めっき処理を行うためのめっき装置について説明する。
図1および図3に示すように、めっき装置20は、下地電極層12p,14pが形成された素子本体10を個別に収容するための収容部(収容空間)24が行列状に形成してあるキャリアプレート(収容体)22を有する。
【0042】
収容部24は、本実施形態では、図3に示すように、キャリアプレート22の表裏面を貫通する貫通孔であり、プレート22が搬送手段としての搬送ベルト30の上に置かれることで、収容部24内に収容してある素子本体10は、搬送ベルト30の表面に直接に接触して搬送ベルト30により保持される。
【0043】
キャリアプレート22は、プラスチック部材あるいはセラミック部材などの絶縁材料で構成されることが好ましく、各収容部24の間で絶縁が保たれる。収容部24を構成する貫通孔は、単一の素子本体10が収容されるのに適した縦横サイズで形成してあり、収容部24の深さt1、すなわち本実施形態ではプレート22の厚み(図3参照)は、下地電極層12p,14pを形成後の素子本体10の厚みt0(図2参照)に対して、5〜150%の厚みである。
【0044】
図1に示すように、略水平に配置されて搬送ベルト30と共に搬送方向X1に移動するキャリアプレート22の移動途中には、搬送ベルト30の上に、めっき液含浸ローラ40が搬送方向X1に沿って複数配置してある。これらのめっき液含浸ローラ40の軸芯は、搬送方向X1に垂直で、水平に配置された搬送ベルト30の面に平行な幅方向Y1に平行である。本実施形態では、搬送方向X1が水平面のX軸に一致し、幅方向Y1が水平面のY軸に一致する。
【0045】
各ローラ40は、それぞれのシャフト42により回転可能に構成してあり、各シャフト42は、その軸方向の両端に設けられた軸受けボックス44により回転自在に保持される。ローラ40は、たとえば多孔性ゴムや合成樹脂などで構成してあるめっき液が含浸可能なローラであり、ローラ40の軸方向(幅方向Y1)の一端上部に設けられためっき液供給ノズル46から供給されるめっき液48を吸収する。
【0046】
シャフト42は、導電性部材、たとえば金属で構成してあり、電源34のプラス端子に接続され、アノード電極の少なくとも一部を構成している。また、電源34のマイナス端子は、搬送ベルト30の移動を案内する案内ローラ32を介して、搬送ベルト30に接続してある。搬送ベルト30は、本実施形態では、通液性の導電性部材、たとえば導電性メッシュ部材で構成してあり、搬送ベルト30は、カソード電極の少なくとも一部を構成している。
【0047】
図3に示すように、キャリアプレート22は、ローラ40と搬送ベルト30との間に挟まれて、ローラ40の回転および/またはベルト30の搬送移動により、搬送方向X1に送られる。ローラ40を回転駆動させるには、シャフト42をモータなどで回転駆動すればよい。
【0048】
ローラ40を回転駆動する場合には、ローラ40の回転力がキャリアプレート22および素子本体10を通して、搬送ベルトに伝わり、搬送ベルト30は、ローラ40の回転力に追随して搬送方向に移動することが好ましい。また、図示省略してある駆動ローラにより搬送ベルト30を搬送方向X1に移動させる場合には、搬送ベルト30の移動力が、キャリアプレート22および素子本体10を通して、ローラ40に伝わり、ローラ40は、その動きに追随して回転することが好ましい。
【0049】
図3に示すように、各ローラ40は、その外周が、収容部24に収容してある素子本体10の両端に形成してある下地電極層12p,14pにそれぞれ接触するように搬送方向X1に所定間隔で配置されることが好ましい。ただし、素子本体10のサイズが小さい場合には、各ローラ40の外径は、収容部24に収容してある素子本体10の両端に形成してある下地電極層12p,14pの二つに同時に接触するような外径であっても良い。
【0050】
さらに、各ローラ40の外径は、図1に示す搬送方向X1に沿って隣接する複数の収容部24にそれぞれ収容してある複数の素子本体10に同時に接触するような外径であっても良い。いずれにしても、ローラ40は、搬送ベルト30との間に位置するキャリアプレート22の収容部24に収容してある素子本体10を搬送ベルト30方向に押し付けることができる程度のサイズを有することが好ましい。素子本体10の両端に形成してある各下地電極層12pおよび14pは、めっき液48の存在下で、ローラ40と搬送ベルト30との二つに同時に電気的に接続するように、素子本体10が収容部の内部に収容してある。
【0051】
ローラ40は、幅方向Y1に沿って細長い形状を有するために、キャリアプレート22の幅方向Y1に沿って配置された複数の収容部24に収容してある素子本体10の下地電極層12p,14pに同時に接触することが可能である。ローラ40は、スポンジゴムなどで構成され、吸液性であり、めっき液供給ノズル46から供給されるめっき液48を含んでおり、素子本体10に押し付けられることにより、めっき液を収容部24の内部に流し込む。
【0052】
収容部24の内部に流し込まれためっき液は、収容部24の内部を満たし、通液性の搬送ベルト30から鉛直方向Z(X軸およびY軸に垂直なZ軸)の下方に排出される。図1に示すように、複数のローラ40との接触が完了したキャリアプレート22の収容部では、めっき液48が排出され、収容部24の内部には、下地電極層12p,14pの外表面にめっき膜が形成された素子本体10のみが残る。
【0053】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法では、図3に示すように、めっき液48が供給される収容部24毎に、単一の素子本体10が収容される。そして、収容部24毎に収容される素子本体10の下地電極層12p,14pに対して、アノード電極となるシャフト42を含むめっき液含浸ローラ40が、直接または間接的に接続する。また、素子本体10の下地電極層12p,14pに対して、カソード電極となる導電性の搬送ベルト30が接触する。
【0054】
その結果、収容部24に収容している素子本体10の下地電極層12p,14pは、めっき液48の存在下で、アノード電極の少なくとも一部を構成するローラ40と、カソード電極の少なくとも一部を構成する搬送ベルト30との間に挟まれ、下地電極層12p,14pの表面にめっき膜が形成される。
【0055】
本実施形態に係るめっき装置およびめっき方法では、従来のバレルめっき法と異なり、素子本体10同士の付着が少なく、しかも、素子本体10への泡の付着なども生じ難く、高品質で均一な膜厚のめっき膜を形成することができる。
【0056】
さらに本実施形態では、アノード電極の少なくとも一部となる導電性搬送ローラ40と、カソード電極の少なくとも一部となる導電性の搬送ベルト30とが、キャリアプレート22および素子本体10を挟んで近くに位置する。そのため、めっき液48に接触する下地電極層12p,14pにおいて、アノード電極からカソード電極までの電力線が短く、電力量に比較してめっき効率は高くなり、省エネに寄与する。しかも本実施形態では、電力線の不均一も起こり難く、下地電極層12p,14pの表面に形成されるめっき膜厚のバラツキも少ない。
【0057】
また、本実施形態では、シャフト42に接続しているめっき液供給手段としてのめっき液含浸ローラ40がアノード電極の少なくとも一部となり、カソード電極の少なくとも一部が搬送ベルト30で構成される。しかも、ローラ40をキャリアプレート22の鉛直方向上方に位置させ、搬送ベルト30をキャリアプレート22の鉛直方向下方に位置させている。そのため、素子本体10が収容される収容部24には、ローラ40から搬送ベルト30の鉛直方向Zに流れるめっき液流れが形成される。このため、アノード電極としてのシャフト42から溶出しためっき成分が、めっき液の流れに沿って下地電極層12p,14pに接触し、それらの表面に確実に均一なめっき膜を形成することができる。
【0058】
さらに本実施形態では、アノード電極およびカソード電極を、ローラ40、シャフト42および搬送ベルト30とは別に設ける必要が無くなり、部品点数の削減に寄与し、装置構成もシンプルになる。
【0059】
また本実施形態では、行列状に配置された複数の収容部24を有するキャリアプレート22を挟むように、ローラ40および搬送ベルト30が配置してある。そのため、キャリアプレート22の両面で、複数の収容部24に収容してある各素子本体10に対して、アノード電極となるローラ40と、カソード電極となる搬送ベルト30が同時に接触することが容易となり、めっき処理の歩留まりが向上する。
第2実施形態
【0060】
図4に示すように、本実施形態に係るめっき装置では、絶縁材で構成してあるキャリアプレート22の鉛直方向Zの下方に導電性部材26が接続固定してある。導電性部材26は、キャリアプレート22よりも薄いプレートで構成してあり、プレート22の裏面に接合してあり、収容部24を構成する貫通孔に対応するサイズと同等な貫通孔28が形成してある。貫通孔28を通してめっき液が排出される。なお、導電性部材26としては、特に限定されず、たとえば金属プレート、金属メッシュなどが例示される。
【0061】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法におけるその他の構成は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様な作用効果を奏する。
第3実施形態
【0062】
図5に示すように、本実施形態に係るめっき装置では、絶縁材で構成してあるキャリアプレート22の鉛直方向Zの下方に導電性部材26aが接続固定してある。導電性部材26aは、キャリアプレート22よりも薄いプレートで構成してあり、プレート22の裏面に接合してあり、収容部24を構成する貫通孔に対応するサイズよりも小さい貫通孔28aが形成してある。
【0063】
そのため、導電性部材26aの一部は、収容部24の底板を構成し、収容部24に収容してある素子本体10を下側から保持する支持部27となる。支持部27をキャリアプレート22に形成することで、キャリアプレート22を、搬送ベルト30などの搬送手段から取り出した状態でも、素子本体10が収容部24に保持される。そのため、めっき処理の前後で、素子本体10を、キャリアプレート22の収容部24に収容した状態で持ち運びが可能となり、小さな部品である素子本体10のハンドリングが容易になる。
【0064】
また、支持部27は、導電性部材26aで構成してあり、搬送ベルト30および素子本体10の下地電極層12p、14pの双方に接続するために、搬送ベルト30および支持部27は、カソード電極を構成する。したがって、カソード電極となる支持部27と、アノード電極であるシャフト42を持つめっき液含浸ローラ40とにより挟まれる下地電極層12p,14pの表面には、電解めっきを良好に行うことができる。
【0065】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法におけるその他の構成は、第2実施形態と同様であり、第2実施形態と同様な作用効果を奏する。
第4実施形態
【0066】
図6に示すように、本実施形態に係るめっき装置では、絶縁材で構成してあるキャリアプレート22aに形成してある収容部24aの底部には、キャリアプレート22aに一体成形された支持部27aが形成してある。支持部27aには、収容部24aを構成する貫通孔に対応するサイズよりも小さい貫通孔28bが形成してある。
【0067】
支持部27aは、収容部24aに収容してある素子本体10を下側から保持する。支持部27aをキャリアプレート22aに形成することで、キャリアプレート22aを、搬送ベルト30などの搬送手段から取り出した状態でも、素子本体10が収容部24aに保持される。そのため、めっき処理の前後で、素子本体10を、キャリアプレート22aの収容部24aに収容した状態で持ち運びが可能となり、小さな部品である素子本体10のハンドリングが容易になる。
【0068】
また、支持部27aの表裏面には、表裏面で連続する導体膜29が形成してあり、搬送ベルト30および素子本体10の下地電極層12p、14pの双方に電気的に接続するようになっている。導体膜29は、たとえば金属膜で構成される。この導体膜29と導電性の搬送ベルト30は、カソード電極を構成する。
【0069】
したがって、カソード電極となる導体膜29と、アノード電極となるシャフト42を有するめっき液含浸ローラ40とにより挟まれる下地電極層12p,14pの表面には、電解めっきを良好に行うことができる。
【0070】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法におけるその他の構成は、第3実施形態と同様であり、第3実施形態と同様な作用効果を奏する。
第5実施形態
【0071】
図7に示すように、本実施形態に係るめっき装置では、めっき液含浸ローラ40のシャフト42aを中空シャフトで構成し、その内部をめっき液48の供給通路とし、そこからローラ40にめっき液48を含浸させる。ローラ40が接触する素子本体10が収容してある収容部24の内部には、ローラ40から浸みだしためっき液48が流れ込む。
【0072】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法におけるその他の構成は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様な作用効果を奏する。
第6実施形態
【0073】
図8に示すように、本実施形態に係るめっき装置は、図1〜図3に示す実施形態に係るめっき装置の変形例であり、搬送ベルト30の上で、収容部24に素子本体10がそれぞれ収容してあるキャリアプレート22を、鉛直方向Zの上下に複数枚重ねられて移動させるように構成してある。
【0074】
そして、鉛直方向Zの上下に複数枚重ねられるキャリアプレート22,22の間には、導電性のメッシュ部材50を介在させている。導電性のメッシュ部材50は、鉛直方向Zの上下に複数枚重ねられるキャリアプレート22,22の収容部24にそれぞれ収容してある上下の素子本体10の下地電極層12p,14pに電気的に接続される。
【0075】
そのため、カソード電極となる搬送ベルト30のカソード電圧は、鉛直方向Zの下側に位置する素子本体10の下地電極層12p,14pからメッシュ部材50を介して上側に位置する素子本体10の下地電極層12p,14pにも伝わる。また、上側に配置してあるキャリアプレート22の収容部24に収容してある素子本体10に圧接してローラ40から染み出すめっき液48は、上側の収容部24からメッシュ部材50を通して下側の収容部24に流れ、通液性を有する搬送ベルト30から排出される。このため、上下の素子本体10の下地電極層12p,14pの表面は、同時にめっき液48に浸されてカソード電圧が印加されるので、めっき膜が同時に良好に形成される。
【0076】
なお、本実施形態においては、鉛直方向Zの上下に配置される収容部24の位置は、位置合わせされることが好ましいが、多少ずれていても、メッシュ部材50を通して、上下に位置する収容部24にはめっき液48が流れ、メッシュ部材50を介してカソード電圧が伝達するので、めっき膜の形成には支障はない。また、本実施形態では、メッシュ部材50は、キャリアプレート22とは別部品で構成したが、上側のキャリアプレート22の下面に固定してあっても良い。
【0077】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法におけるその他の構成は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様な作用効果を奏する。
第7実施形態
【0078】
図9に示すように、本実施形態に係るめっき装置は、図8に示す実施形態に係るめっき装置の変形例であり、搬送ベルト30の上に積み重ねて同時に移動させられるキャリアプレート22の種類が、図8に示す実施形態の場合と異なる。すなわち、本実施形態では、図9に示すように、上下に積み重ねられる各キャリアプレート22の下面には、図5に示す実施形態と同様な導電性部材26aが接続固定してある。導電性部材26aは、キャリアプレート22よりも薄いプレートで構成してあり、プレート22の裏面に接合してあり、収容部24を構成する貫通孔に対応するサイズよりも小さい貫通孔28aが形成してある。
【0079】
そのため、導電性部材26aの一部は、収容部24の底板を構成し、収容部24に収容してある素子本体10を下側から保持する支持部27aとなる。支持部27aをキャリアプレート22に形成することで、キャリアプレート22を、搬送ベルト30などの搬送手段から取り出した状態でも、素子本体10が収容部24に保持される。そのため、めっき処理の前後で、素子本体10を、キャリアプレート22の収容部24に収容した状態で持ち運びが可能となり、小さな部品である素子本体10のハンドリングが容易になる。
【0080】
また、支持部27aは、導電性部材26aで構成してあり、下側に位置するキャリアプレート22の支持部27aは、搬送ベルト30および素子本体10の下地電極層12p、14pの双方に接続する。また、上側に位置するキャリアプレート22の支持部27aは、その上下に位置する素子本体10の下地電極層12p、14pの双方に接続する。
【0081】
そのため、カソード電極となる搬送ベルト30のカソード電圧は、鉛直方向Zの下側に位置するキャリアプレート22の導電性部材26a、素子本体10の下地電極層12p,14pから、上側に位置するキャリアプレート22の導電性部材26aを介して上側に位置する素子本体10の下地電極層12p,14pにも伝わる。また、上側に配置してあるキャリアプレート22の収容部24に収容してある素子本体10に圧接してローラ40から染み出すめっき液48は、上側の収容部24から導電性部材26aの貫通孔28aを通して下側の収容部24に流れ、導電性部材26aの貫通孔28aを通して搬送ベルト30から排出される。このため、上下の素子本体10の下地電極層12p,14pの表面は、同時にめっき液48に浸されてカソード電圧が印加されるので、めっき膜が同時に良好に形成される。
【0082】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法におけるその他の構成は、第6実施形態と同様であり、第6実施形態と同様な作用効果を奏する。
第8実施形態
【0083】
図10に示すように、本実施形態に係るめっき装置は、図1〜図3に示す実施形態に係るめっき装置の変形例であり、めっき液供給手段としてのめっき液供給ノズル46aを、搬送ベルト30の鉛直方向Zの下方に配置する。しかも、供給ノズル46aは、搬送ベルト30の鉛直方向Zの下方に接触するように、幅方向Y1に沿って細長く構成し、たとえば搬送ベルト30の幅方向Y1の幅と同等よりわずかに小さい程度にする。
【0084】
図10に示す実施形態では、供給ノズル46aの搬送方向X1の幅は、キャリアプレート22に形成してある供給部24の搬送方向幅と同程度に構成してあるが、多少狭くてもよく、広くても良い。供給ノズル46aは、搬送ベルト22の下面において、図1に示すローラ40の位置に対応して設けられることが好ましいが、必ずしもローラ40に対して一対一に設ける必要はない。たとえば複数のローラ40に対して、単一の供給ノズル46aであっても良い。
【0085】
搬送ベルト30は、キャリアプレート22と共に、供給ノズル46aに対して、搬送方向X1に移動するが、供給ノズル46aからは常時めっき液48を上方に流出するようにしても良い。あるいは、供給ノズル46aの直上に供給部24が位置するタイミングで、供給ノズル46aからめっき液48を流し、通液性の搬送ベルト30を通して、供給部24の内部をめっき液で満たし、供給部24の上部開口から溢れさせるように構成しても良い。
【0086】
本実施形態では、導電性の搬送ベルト30を電源34のプラス端子に接続し、導電性のローラ40aのシャフト42を電源のマイナス端子に接続しても良い。その場合には、ローラ40aがカソード電極となり、搬送ベルト30がアノード電極となる。あるいは、本実施形態においても、前述した実施形態と同様に、搬送ベルト30をカソード電極とし、ローラ40aのシャフトをアノード電極としても良い。
【0087】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法におけるその他の構成は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様な作用効果を奏する。
第9実施形態
【0088】
図11に示すように、本実施形態に係るめっき装置20aは、図1〜図3に示す実施形態に係るめっき装置の変形例であり、搬送ベルト22は、収容体としてのキャリアプレート22を、水平方向のみではなく、主として略鉛直方向Zの上下に連続して移動させている。すなわち、キャリアプレート22の搬送方向Z1が鉛直方向Zに略一致する。
【0089】
しかも、めっき液含浸ローラ40は、鉛直方向Zに移動する搬送ベルト30の表面に対して、キャリアプレート22の厚みと同等以下の間隔で、鉛直方向Zに沿って多数連続して配置してある。鉛直方向Zに沿って多数連続して配置してある2列のローラ40の最上部には、めっき液供給ノズル46がそれぞれ配置してあり、各列の全てのローラ40にめっき液を上から順次供給可能になっている。ローラ40に含浸されためっき液は、搬送ベルト30とローラ40との間を、キャリアプレート22が通過することで、キャリアプレート22の収容部24に充填される。
【0090】
図11に示すように、多数の素子本体10が各収容部24に収容されたキャリアプレート22は、搬送ベルト30とローラ40との間を、最初は鉛直方向Zの上方に移動し、次に、鉛直方向Zの下方に移動する。搬送ベルト30とローラ40との間を、多数の素子本体10が各収容部24に収容されたキャリアプレート22が通過することで、図1〜図3に示す実施形態と同様にして、素子本体10の下地電極層12p,14pの表面に確実に均一なめっき膜を形成することができる。
【0091】
なお、搬送ベルト30によるキャリアプレートの搬送方向Z1は、水平方向Xと鉛直方向Zとの間で傾斜させて移動させても良い。たとえば多数の素子本体10が各収容部24に収容されたキャリアプレート22を、搬送ベルト30とローラ40との間で、最初は傾斜方向の上方に移動させ、次に、傾斜方向の下方に移動させてもよい。
【0092】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法におけるその他の構成は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0093】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0094】
たとえば、上述した実施形態では、各収容部24には、好ましくは単一の素子本体10が収容されるが、必ずしも単一でなくてもよく、各収容部24毎に複数の素子本体10が収容されても良い。また、搬送手段としては、搬送ベルト30以外に、揺動ベルト、振動ベルトなどが例示される。
【0095】
さらに、めっき液供給手段としては、めっき液供給ノズル46,46aやめっき液含浸ロール40以外に、スプレーなどでも良い。さらにまた、収容体としては、キャリアプレート22以外に、導電シート、発泡シートなどでも良い。
【符号の説明】
【0096】
2…積層チップコンデンサ
6,8…内部電極
10…素子本体
12,14…外部端子電極
12p,14p…下地電極層
12c,14c…めっき膜
20…めっき装置
22…キャリアプレート
24…収容部
26…導電性部材
27,27a…支持部
28,28a…貫通孔
30…搬送ベルト
34…電源
40…めっき液含浸ローラ
40a…導電性のローラ
42,42a…シャフト
46,46a…めっき液供給ノズル
48…めっき液
50…導電性メッシュ
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばチップ型電子部品のような小型部品に均一なめっき層を形成するために、従来では、バレルめっき装置が用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来のバレルめっき装置では、回転するバレルの内部で、多数のめっき対象物同士が無秩序に重なり合うために、めっき対象物同士の付着や、めっき対象物にめっき液中の泡が付着するなどの課題がある。めっき対象物同士の付着や、めっき対象物への泡の付着などが生じると、その部分に、めっき膜が形成されず、高品質で均一な厚さのめっき膜を形成することが困難になる。
【0004】
また、従来のバレルめっき装置およびめっき方法では、めっき液中でのアノード電極からカソード電極までの電力線が長いため、電力量に比較してめっき効率は高くなく、しかも電力線の集中も起こりやすく、めっき膜厚のバラツキの原因にもなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−36249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、高品質で均一な膜厚のめっき膜を得ることが可能であると共に、めっき効率を向上させ、省エネを図ることができるめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るめっき装置は、
めっき対象物を収容する収容空間を持つ収容体と、
前記収容体と共に移動する搬送手段と、
前記収容体の移動途中で、前記収容空間に、めっき液を供給するめっき液供給手段と、
前記収容空間に、めっき液が供給されている状態で、前記めっき対象物におけるめっきすべき予定部分に直接または間接的に接続するアノード電極およびカソード電極とを有する。
【0008】
本発明に係るめっき方法は、
めっき対象物を収容する収容空間を持つ収容体を移動する工程と、
前記収容体の移動途中で、前記収容空間に、めっき液を供給する工程と、
前記収容空間に、めっき液が供給されている状態で、前記めっき対象物におけるめっきすべき予定部分に直接または間接的にアノード電極およびカソード電極を接触させる工程とを有する。
【0009】
本発明に係るチップ型電子部品の製造方法は、
素子本体を製造する工程と、
前記素子本体に下地電極層を形成する工程と、
前記下地電極層の表面にめっき膜を形成する工程とを有するチップ型電子部品の製造方法であって、
前記めっき膜を形成する工程が、
前記素子本体を収容する収容空間を持つ収容体を移動する工程と、
前記収容体の移動途中で、前記収容空間に、めっき液を供給する工程と、
前記収容空間に、めっき液が供給されている状態で、前記下地電極層の表面に直接または間接的にアノード電極およびカソード電極を接続させる工程とを有する。
【0010】
本発明に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法では、めっき液が供給される収容空間毎に、好ましくは単一、ブリッジしない(めっき膜により相互に付着しない)範囲であれば、多くて5個程度のめっき対象物(たとえば素子本体、以下同様)が収容され、めっき対象物に直接または間接的にアノード電極およびカソード電極が接続して電解めっきされる。そのため、従来のバレルめっき法と異なり、めっき対象物同士の付着が少なく、しかも、めっき対象物への泡の付着なども生じ難く、高品質で均一な膜厚のめっき膜を形成することができる。
【0011】
さらに本発明では、めっき対象物を挟んでアノード電極およびカソード電極が近くに位置し、めっき対象物におけるめっきすべき予定部分(たとえば下地電極、以下同様)の表面に直接または間接的に接続している。そのため、めっき液に接触する前記予定部分において、アノード電極からカソード電極までの電力線が短く、電力量に比較してめっき効率は高くなり、省エネに寄与する。しかも本発明では、電力線の不均一も起こり難く、めっき膜厚のバラツキも少ない。
【0012】
好ましくは、前記アノード電極が、前記めっき液供給手段および前記搬送手段のいずれか一方の少なくとも一部で構成され、前記カソード電極が、前記めっき液供給手段および前記搬送手段のいずれか他方の少なくとも一部で構成される。このように構成することで、アノード電極およびカソード電極を、めっき液供給手段および搬送手段とは別に設ける必要が無くなり、部品点数の削減に寄与し、装置構成もシンプルになる。また、アノード電極およびカソード電極が、めっき対象物に確実に接続され、高品質で均一な膜厚のめっき膜を形成することができる。
【0013】
好ましくは、前記アノード電極が、前記めっき液供給手段の少なくとも一部で構成され、前記カソード電極が、前記搬送手段の少なくとも一部で構成される。めっき液供給手段を収容体の鉛直方向上方に位置させ、搬送手段を収容体の鉛直方向下方に位置させた場合には、めっき対象物が収容される収容空間には、めっき液供給手段から搬送手段方向に流れるめっき液流れが形成される。このため、アノード電極をめっき液供給手段の少なくとも一部で構成することで、アノード電極から溶出しためっき成分が、めっき液の流れに沿ってめっき対象物に接触し、めっき対象物の予定部分に確実に均一なめっき膜を形成することができる。
【0014】
好ましくは、前記めっき液供給手段は、前記収容体の移動途中で、前記めっき対象物に接触可能なめっき液含浸ローラを有する。めっき対象物に接触可能なめっき液含浸ローラの少なくとも一部がアノード電極を構成することで、アノード電極から溶出しためっき成分が、めっき液と共に、めっき液含浸ローラを介してめっき対象物の周囲に供給され、めっき対象物の予定部分に確実に均一なめっき膜を形成することができる。
【0015】
好ましくは、前記搬送手段は、めっき液を流通可能な導電性部材を有し、さらに好ましくは導電性部材が組み込まれた搬送ベルトを有する。これらの導電性部材をカソード電極の一部として用いることで、搬送手段により収容体を移動させた状態で、収容体の収容空間に収容してあるめっき対象物に対して容易にカソード電極を接続させることができる。
【0016】
本発明では、めっき液供給手段は、搬送手段の鉛直方向下方に配置しても良い。その場合には、収容体の収容空間に収容してあるめっき対象物に直接または間接的に接続される搬送手段の少なくとも一部は、アノード電極として機能してもよい。めっき液の流れが、収容体の収容空間において、鉛直方向の下方から上方に向かう流れとなるからである。このような場合には、収容体の上方に配置されて、めっき対象物に接触可能なローラは、カソード電極の少なくとも一部と成るように構成しても良い。
【0017】
好ましくは、前記収容体は、行列状に配置された複数の前記収容空間を有するキャリアプレートである。この場合には、キャリアプレートを挟むように、搬送手段およびめっき液供給手段を配置しやすくなる。また、アノード電極またはカソード電極の少なくとも一部をそれぞれ構成する搬送手段およびめっき液供給手段が、キャリアプレートの両面で、複数の収容空間に収容してある各めっき対象物に対して同時に接触することが容易となり、めっき処理の歩留まりが向上する。
【0018】
二枚以上のキャリアプレートなどの収容体は、各収容空間にめっき対象物を収容した状態で、重ねて搬送手段により移動させても良い。その場合には、二枚以上のキャリアプレートなどの収容体の積層体を挟むように、搬送手段およびめっき液供給手段を配置することが好ましい。
【0019】
収容体と共に移動するための搬送手段は、収容体を略水平方向に移動させることが好ましいが、必ずしも水平ではなくともよく、略鉛直方向に移動させても良いし、水平と鉛直の間で傾斜させて収容体を移動させても良い。
【0020】
好ましくは、前記収容空間の底部には、前記めっき対象物を保持する支持部が前記収容体に形成してある。支持部を形成することで、キャリアプレートなどの収容体を、搬送ベルトなどの搬送手段から取り出した状態でも、めっき対象物が収容体に保持される。そのため、めっき処理の前後で、めっき対象物を、収容体の収容空間に収容した状態で持ち運びが可能となり、めっき対象物のハンドリングが容易になる。
【0021】
好ましくは、前記支持部の少なくとも一部が、前記めっき対象物および前記搬送手段の双方に接触する導電体で構成してある。アノード電極またはカソード電極の一部となる搬送手段が支持部の導電体に接触することで、支持部で保持されるめっき対象物に電気的に接続される。
【0022】
好ましくは、前記支持部が、めっき液を流通可能に構成してある。支持部に孔を開けることにより、めっき液を流通可能に構成しても良いし、支持部をメッシュなどの通液性部材により構成することにより、めっき液を流通可能に構成しても良い。
【0023】
前記収容空間は、当該収容空間に前記めっき対象物が収容された状態で、前記めっき対象物の少なくとも一部が、前記搬送手段の一部に接触するように構成してもよい。たとえば板状の収容体に表裏面を貫通する複数の孔を設け、各孔を収容空間とし、板状の収容体を搬送手段とめっき液供給手段とで挟み込むことで、収容空間に収容されためっき対象物を、搬送手段の一部に接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係るめっき装置の概略斜視図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態に係るめっき方法により処理されるチップ型電子部品の断面図である。
【図3】図3は図1に示すキャリアプレート付近の要部断面図である。
【図4】図4は本発明の他の実施形態に係るめっき装置におけるキャリアプレート付近の要部断面図である。
【図5】図5は本発明のさらに他の実施形態に係るめっき装置におけるキャリアプレート付近の要部断面図である。
【図6】図6は本発明のさらに他の実施形態に係るめっき装置におけるキャリアプレート付近の要部断面図である。
【図7】図7は本発明のさらに他の実施形態に係るめっき装置におけるキャリアプレート付近の要部断面図である。
【図8】図8は本発明のさらに他の実施形態に係るめっき装置におけるキャリアプレート付近の要部断面図である。
【図9】図9は本発明のさらに他の実施形態に係るめっき装置におけるキャリアプレート付近の要部断面図である。
【図10】図10は本発明のさらに他の実施形態に係るめっき装置におけるキャリアプレート付近の要部断面図である。
【図11】図11は本発明のさらに他の実施形態に係るめっき装置の全体概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
第1実施形態
めっき対象物としての積層チップコンデンサ
【0026】
まず、本発明の一実施形態に係る図1に示すめっき装置20を用いてめっき処理されるチップ型電子部品としての図2に示す積層チップコンデンサ2について説明する。図2に示すように、積層チップコンデンサ2は、内部電極層4,6と誘電体層8とが積層された構成の素子本体10を有する。この素子本体10の両端部11,13には、素子本体10の内部に配置された内部電極層4,6と各々導通する一対の外部端子電極12,14が形成してある。
【0027】
内部電極層4,6は、各端面が素子本体10の対向する両端部11,13の表面に露出するように積層してある。一対の外部端子電極12,14は、素子本体10の両端部に形成され、内部電極層4,6の露出端面にそれぞれ接続されて、コンデンサ回路を構成している。
【0028】
誘電体層8は、誘電性材料であれば特に限定されないが、たとえばチタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、あるいはこれらの複合酸化物などを主成分とする誘電体材料で構成される。この誘電体材料には、シリコン酸化物、希土類酸化物、マンガン酸化物、マグネシウム酸化物、バナジウム酸化物、アルミニウム酸化物、クロム酸化物などの副成分が含まれていても良い。
【0029】
本発明に係るめっき対象物としての積層チップ部品は、チップコンデンサ2に限定されず、たとえばチップバリスタ、チップインダクタ、チップサーミスタであってもよく、その場合には、誘電体層8は、バリスタ材料層、インダクタ材料層、NTCサーミスタ材料層などで構成されてもよい。
【0030】
内部電極層4,6は、導電材を含んで構成される。内部電極層4,6に含まれる導電材としては、特に限定されないが、コンデンサ2として用いる場合には、ニッケル、もしくはニッケル合金などが好ましい。内部電極層4,6の厚さは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常0.2〜5μm程度である。
【0031】
外部端子電極12,14も導電材を含んで構成される。外部端子電極12,14に含まれる導電材としては、特に限定されないが、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。本実施形態では、ペースト電極膜から成る下地電極層12p,14pの表面に、電気メッキ等により、Ni及びSn膜などで構成されるめっき膜12c,14cが形成してある。下地電極層12p,14pの厚みは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常5〜50μm程度である。また、めっき膜12c,14cの厚みは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常3〜10μm程度である。
【0032】
素子本体10の形状は、特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて決定され、特に、1005形状(縦1.0mm×横0.5mm×厚み0.5mm)サイズ以下、たとえば、小さく軽く電極間距離が短い0603形状(縦0.6mm×横0.3mm×厚み0.3mm)サイズ以下である場合にも本実施形態の装置および方法が適用できる。
【0033】
素子本体10において、内部電極層4,6および誘電体層8の積層方向の両外側端部には、外側誘電体層18が配置してあり、素子本体10の内部を保護している。外側誘電体層18の材質は、誘電体層8の材質と同じであっても異なっていても良いが、通常、誘電体層8の材質とほぼ同じであり、誘電体材料で構成されている。
【0034】
一対の下地電極層12p,14pの外側にめっき膜12c,14cを形成する際には、そのめっき処理時に、外側誘電体層18の外表面(素子本体10の表面10α)には、めっき膜が形成されてショート不良となりやすい。そのため、その表面10αには、ガラスコートなどの保護膜16を形成しても良いが、必ずしも保護膜16は形成されていなくとも良い。保護膜16を形成する場合には、保護膜16の厚さは、好ましくは0.05〜0.2μm程度に薄い。保護膜16が厚すぎると、保護膜16を形成した後に、下地電極層12p,14pを形成する際に、内部電極層4および6と下地電極層12p,14pとのコンタクトが困難になる傾向にある。
【0035】
下地電極層12p,14pは、電極ペーストの焼付け処理により形成されている。下地電極層12p,14pは、素子本体10の端面に位置する端面部分12γ,14γと、端面部分12γ,14γに連続して形成され、素子本体10の端面近傍の四側面にまで延びる側面部分12β,14βとを有している。
積層チップコンデンサの製造方法
【0036】
次に、図2に示す積層チップコンデンサ2の製造方法について説明する。
まず素子本体10を製造する。素子本体10を製造するために、印刷工法またはシート工法等により、内部電極層4,6が互い違いに両端部に露出するように、誘電体層8と内部電極層4,6を交互に積層し、その積層方向の両端に外側誘電体層18を積層し、積層体を形成する。
【0037】
次に、この積層体を切断し、グリーンチップを得る。次に、必要に応じて脱バインダー処理を行い、グリーンチップを焼成し、素子本体10を得る。次に、必要に応じて、素子本体10の研磨(たとえば一般的なバレル研磨)を行い、内部電極の端部を素子本体の両端面に露出させる。その後に、素子本体10の両端部に外部端子電極12,14を形成するための電極ペーストを塗布、焼き付けして下地電極層12p,14pを形成する。
【0038】
次に、下地電極層12p,14pの表面を研磨して、下地電極層12p,14pの表面に導電性粒子を露出させ、その下地電極層12p,14pの表面にめっき膜12c,14cを均一に形成しやすくする。その研磨手段としては、一般的なバレル研磨などが用いられる。
【0039】
そのような研磨後に、図2に示す下地電極層12p,14pの表面に、めっき膜12c,14cを、図1に示すめっき装置20を用いて電気めっき法により形成する。このようにして図2に示す積層チップコンデンサ2が製造される。
【0040】
なお、図2に示すガラスコートなどの保護膜16の形成は、めっき処理の前に行っても、下地電極層12p,14pの形成前に行っても良い。保護膜16は、十分に薄いので、素子本体10の端面に下地電極層12p,14pを形成する際に、内部電極層4,6との接続を確保することが可能である。
めっき装置
【0041】
次に、めっき処理を行うためのめっき装置について説明する。
図1および図3に示すように、めっき装置20は、下地電極層12p,14pが形成された素子本体10を個別に収容するための収容部(収容空間)24が行列状に形成してあるキャリアプレート(収容体)22を有する。
【0042】
収容部24は、本実施形態では、図3に示すように、キャリアプレート22の表裏面を貫通する貫通孔であり、プレート22が搬送手段としての搬送ベルト30の上に置かれることで、収容部24内に収容してある素子本体10は、搬送ベルト30の表面に直接に接触して搬送ベルト30により保持される。
【0043】
キャリアプレート22は、プラスチック部材あるいはセラミック部材などの絶縁材料で構成されることが好ましく、各収容部24の間で絶縁が保たれる。収容部24を構成する貫通孔は、単一の素子本体10が収容されるのに適した縦横サイズで形成してあり、収容部24の深さt1、すなわち本実施形態ではプレート22の厚み(図3参照)は、下地電極層12p,14pを形成後の素子本体10の厚みt0(図2参照)に対して、5〜150%の厚みである。
【0044】
図1に示すように、略水平に配置されて搬送ベルト30と共に搬送方向X1に移動するキャリアプレート22の移動途中には、搬送ベルト30の上に、めっき液含浸ローラ40が搬送方向X1に沿って複数配置してある。これらのめっき液含浸ローラ40の軸芯は、搬送方向X1に垂直で、水平に配置された搬送ベルト30の面に平行な幅方向Y1に平行である。本実施形態では、搬送方向X1が水平面のX軸に一致し、幅方向Y1が水平面のY軸に一致する。
【0045】
各ローラ40は、それぞれのシャフト42により回転可能に構成してあり、各シャフト42は、その軸方向の両端に設けられた軸受けボックス44により回転自在に保持される。ローラ40は、たとえば多孔性ゴムや合成樹脂などで構成してあるめっき液が含浸可能なローラであり、ローラ40の軸方向(幅方向Y1)の一端上部に設けられためっき液供給ノズル46から供給されるめっき液48を吸収する。
【0046】
シャフト42は、導電性部材、たとえば金属で構成してあり、電源34のプラス端子に接続され、アノード電極の少なくとも一部を構成している。また、電源34のマイナス端子は、搬送ベルト30の移動を案内する案内ローラ32を介して、搬送ベルト30に接続してある。搬送ベルト30は、本実施形態では、通液性の導電性部材、たとえば導電性メッシュ部材で構成してあり、搬送ベルト30は、カソード電極の少なくとも一部を構成している。
【0047】
図3に示すように、キャリアプレート22は、ローラ40と搬送ベルト30との間に挟まれて、ローラ40の回転および/またはベルト30の搬送移動により、搬送方向X1に送られる。ローラ40を回転駆動させるには、シャフト42をモータなどで回転駆動すればよい。
【0048】
ローラ40を回転駆動する場合には、ローラ40の回転力がキャリアプレート22および素子本体10を通して、搬送ベルトに伝わり、搬送ベルト30は、ローラ40の回転力に追随して搬送方向に移動することが好ましい。また、図示省略してある駆動ローラにより搬送ベルト30を搬送方向X1に移動させる場合には、搬送ベルト30の移動力が、キャリアプレート22および素子本体10を通して、ローラ40に伝わり、ローラ40は、その動きに追随して回転することが好ましい。
【0049】
図3に示すように、各ローラ40は、その外周が、収容部24に収容してある素子本体10の両端に形成してある下地電極層12p,14pにそれぞれ接触するように搬送方向X1に所定間隔で配置されることが好ましい。ただし、素子本体10のサイズが小さい場合には、各ローラ40の外径は、収容部24に収容してある素子本体10の両端に形成してある下地電極層12p,14pの二つに同時に接触するような外径であっても良い。
【0050】
さらに、各ローラ40の外径は、図1に示す搬送方向X1に沿って隣接する複数の収容部24にそれぞれ収容してある複数の素子本体10に同時に接触するような外径であっても良い。いずれにしても、ローラ40は、搬送ベルト30との間に位置するキャリアプレート22の収容部24に収容してある素子本体10を搬送ベルト30方向に押し付けることができる程度のサイズを有することが好ましい。素子本体10の両端に形成してある各下地電極層12pおよび14pは、めっき液48の存在下で、ローラ40と搬送ベルト30との二つに同時に電気的に接続するように、素子本体10が収容部の内部に収容してある。
【0051】
ローラ40は、幅方向Y1に沿って細長い形状を有するために、キャリアプレート22の幅方向Y1に沿って配置された複数の収容部24に収容してある素子本体10の下地電極層12p,14pに同時に接触することが可能である。ローラ40は、スポンジゴムなどで構成され、吸液性であり、めっき液供給ノズル46から供給されるめっき液48を含んでおり、素子本体10に押し付けられることにより、めっき液を収容部24の内部に流し込む。
【0052】
収容部24の内部に流し込まれためっき液は、収容部24の内部を満たし、通液性の搬送ベルト30から鉛直方向Z(X軸およびY軸に垂直なZ軸)の下方に排出される。図1に示すように、複数のローラ40との接触が完了したキャリアプレート22の収容部では、めっき液48が排出され、収容部24の内部には、下地電極層12p,14pの外表面にめっき膜が形成された素子本体10のみが残る。
【0053】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法では、図3に示すように、めっき液48が供給される収容部24毎に、単一の素子本体10が収容される。そして、収容部24毎に収容される素子本体10の下地電極層12p,14pに対して、アノード電極となるシャフト42を含むめっき液含浸ローラ40が、直接または間接的に接続する。また、素子本体10の下地電極層12p,14pに対して、カソード電極となる導電性の搬送ベルト30が接触する。
【0054】
その結果、収容部24に収容している素子本体10の下地電極層12p,14pは、めっき液48の存在下で、アノード電極の少なくとも一部を構成するローラ40と、カソード電極の少なくとも一部を構成する搬送ベルト30との間に挟まれ、下地電極層12p,14pの表面にめっき膜が形成される。
【0055】
本実施形態に係るめっき装置およびめっき方法では、従来のバレルめっき法と異なり、素子本体10同士の付着が少なく、しかも、素子本体10への泡の付着なども生じ難く、高品質で均一な膜厚のめっき膜を形成することができる。
【0056】
さらに本実施形態では、アノード電極の少なくとも一部となる導電性搬送ローラ40と、カソード電極の少なくとも一部となる導電性の搬送ベルト30とが、キャリアプレート22および素子本体10を挟んで近くに位置する。そのため、めっき液48に接触する下地電極層12p,14pにおいて、アノード電極からカソード電極までの電力線が短く、電力量に比較してめっき効率は高くなり、省エネに寄与する。しかも本実施形態では、電力線の不均一も起こり難く、下地電極層12p,14pの表面に形成されるめっき膜厚のバラツキも少ない。
【0057】
また、本実施形態では、シャフト42に接続しているめっき液供給手段としてのめっき液含浸ローラ40がアノード電極の少なくとも一部となり、カソード電極の少なくとも一部が搬送ベルト30で構成される。しかも、ローラ40をキャリアプレート22の鉛直方向上方に位置させ、搬送ベルト30をキャリアプレート22の鉛直方向下方に位置させている。そのため、素子本体10が収容される収容部24には、ローラ40から搬送ベルト30の鉛直方向Zに流れるめっき液流れが形成される。このため、アノード電極としてのシャフト42から溶出しためっき成分が、めっき液の流れに沿って下地電極層12p,14pに接触し、それらの表面に確実に均一なめっき膜を形成することができる。
【0058】
さらに本実施形態では、アノード電極およびカソード電極を、ローラ40、シャフト42および搬送ベルト30とは別に設ける必要が無くなり、部品点数の削減に寄与し、装置構成もシンプルになる。
【0059】
また本実施形態では、行列状に配置された複数の収容部24を有するキャリアプレート22を挟むように、ローラ40および搬送ベルト30が配置してある。そのため、キャリアプレート22の両面で、複数の収容部24に収容してある各素子本体10に対して、アノード電極となるローラ40と、カソード電極となる搬送ベルト30が同時に接触することが容易となり、めっき処理の歩留まりが向上する。
第2実施形態
【0060】
図4に示すように、本実施形態に係るめっき装置では、絶縁材で構成してあるキャリアプレート22の鉛直方向Zの下方に導電性部材26が接続固定してある。導電性部材26は、キャリアプレート22よりも薄いプレートで構成してあり、プレート22の裏面に接合してあり、収容部24を構成する貫通孔に対応するサイズと同等な貫通孔28が形成してある。貫通孔28を通してめっき液が排出される。なお、導電性部材26としては、特に限定されず、たとえば金属プレート、金属メッシュなどが例示される。
【0061】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法におけるその他の構成は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様な作用効果を奏する。
第3実施形態
【0062】
図5に示すように、本実施形態に係るめっき装置では、絶縁材で構成してあるキャリアプレート22の鉛直方向Zの下方に導電性部材26aが接続固定してある。導電性部材26aは、キャリアプレート22よりも薄いプレートで構成してあり、プレート22の裏面に接合してあり、収容部24を構成する貫通孔に対応するサイズよりも小さい貫通孔28aが形成してある。
【0063】
そのため、導電性部材26aの一部は、収容部24の底板を構成し、収容部24に収容してある素子本体10を下側から保持する支持部27となる。支持部27をキャリアプレート22に形成することで、キャリアプレート22を、搬送ベルト30などの搬送手段から取り出した状態でも、素子本体10が収容部24に保持される。そのため、めっき処理の前後で、素子本体10を、キャリアプレート22の収容部24に収容した状態で持ち運びが可能となり、小さな部品である素子本体10のハンドリングが容易になる。
【0064】
また、支持部27は、導電性部材26aで構成してあり、搬送ベルト30および素子本体10の下地電極層12p、14pの双方に接続するために、搬送ベルト30および支持部27は、カソード電極を構成する。したがって、カソード電極となる支持部27と、アノード電極であるシャフト42を持つめっき液含浸ローラ40とにより挟まれる下地電極層12p,14pの表面には、電解めっきを良好に行うことができる。
【0065】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法におけるその他の構成は、第2実施形態と同様であり、第2実施形態と同様な作用効果を奏する。
第4実施形態
【0066】
図6に示すように、本実施形態に係るめっき装置では、絶縁材で構成してあるキャリアプレート22aに形成してある収容部24aの底部には、キャリアプレート22aに一体成形された支持部27aが形成してある。支持部27aには、収容部24aを構成する貫通孔に対応するサイズよりも小さい貫通孔28bが形成してある。
【0067】
支持部27aは、収容部24aに収容してある素子本体10を下側から保持する。支持部27aをキャリアプレート22aに形成することで、キャリアプレート22aを、搬送ベルト30などの搬送手段から取り出した状態でも、素子本体10が収容部24aに保持される。そのため、めっき処理の前後で、素子本体10を、キャリアプレート22aの収容部24aに収容した状態で持ち運びが可能となり、小さな部品である素子本体10のハンドリングが容易になる。
【0068】
また、支持部27aの表裏面には、表裏面で連続する導体膜29が形成してあり、搬送ベルト30および素子本体10の下地電極層12p、14pの双方に電気的に接続するようになっている。導体膜29は、たとえば金属膜で構成される。この導体膜29と導電性の搬送ベルト30は、カソード電極を構成する。
【0069】
したがって、カソード電極となる導体膜29と、アノード電極となるシャフト42を有するめっき液含浸ローラ40とにより挟まれる下地電極層12p,14pの表面には、電解めっきを良好に行うことができる。
【0070】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法におけるその他の構成は、第3実施形態と同様であり、第3実施形態と同様な作用効果を奏する。
第5実施形態
【0071】
図7に示すように、本実施形態に係るめっき装置では、めっき液含浸ローラ40のシャフト42aを中空シャフトで構成し、その内部をめっき液48の供給通路とし、そこからローラ40にめっき液48を含浸させる。ローラ40が接触する素子本体10が収容してある収容部24の内部には、ローラ40から浸みだしためっき液48が流れ込む。
【0072】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法におけるその他の構成は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様な作用効果を奏する。
第6実施形態
【0073】
図8に示すように、本実施形態に係るめっき装置は、図1〜図3に示す実施形態に係るめっき装置の変形例であり、搬送ベルト30の上で、収容部24に素子本体10がそれぞれ収容してあるキャリアプレート22を、鉛直方向Zの上下に複数枚重ねられて移動させるように構成してある。
【0074】
そして、鉛直方向Zの上下に複数枚重ねられるキャリアプレート22,22の間には、導電性のメッシュ部材50を介在させている。導電性のメッシュ部材50は、鉛直方向Zの上下に複数枚重ねられるキャリアプレート22,22の収容部24にそれぞれ収容してある上下の素子本体10の下地電極層12p,14pに電気的に接続される。
【0075】
そのため、カソード電極となる搬送ベルト30のカソード電圧は、鉛直方向Zの下側に位置する素子本体10の下地電極層12p,14pからメッシュ部材50を介して上側に位置する素子本体10の下地電極層12p,14pにも伝わる。また、上側に配置してあるキャリアプレート22の収容部24に収容してある素子本体10に圧接してローラ40から染み出すめっき液48は、上側の収容部24からメッシュ部材50を通して下側の収容部24に流れ、通液性を有する搬送ベルト30から排出される。このため、上下の素子本体10の下地電極層12p,14pの表面は、同時にめっき液48に浸されてカソード電圧が印加されるので、めっき膜が同時に良好に形成される。
【0076】
なお、本実施形態においては、鉛直方向Zの上下に配置される収容部24の位置は、位置合わせされることが好ましいが、多少ずれていても、メッシュ部材50を通して、上下に位置する収容部24にはめっき液48が流れ、メッシュ部材50を介してカソード電圧が伝達するので、めっき膜の形成には支障はない。また、本実施形態では、メッシュ部材50は、キャリアプレート22とは別部品で構成したが、上側のキャリアプレート22の下面に固定してあっても良い。
【0077】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法におけるその他の構成は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様な作用効果を奏する。
第7実施形態
【0078】
図9に示すように、本実施形態に係るめっき装置は、図8に示す実施形態に係るめっき装置の変形例であり、搬送ベルト30の上に積み重ねて同時に移動させられるキャリアプレート22の種類が、図8に示す実施形態の場合と異なる。すなわち、本実施形態では、図9に示すように、上下に積み重ねられる各キャリアプレート22の下面には、図5に示す実施形態と同様な導電性部材26aが接続固定してある。導電性部材26aは、キャリアプレート22よりも薄いプレートで構成してあり、プレート22の裏面に接合してあり、収容部24を構成する貫通孔に対応するサイズよりも小さい貫通孔28aが形成してある。
【0079】
そのため、導電性部材26aの一部は、収容部24の底板を構成し、収容部24に収容してある素子本体10を下側から保持する支持部27aとなる。支持部27aをキャリアプレート22に形成することで、キャリアプレート22を、搬送ベルト30などの搬送手段から取り出した状態でも、素子本体10が収容部24に保持される。そのため、めっき処理の前後で、素子本体10を、キャリアプレート22の収容部24に収容した状態で持ち運びが可能となり、小さな部品である素子本体10のハンドリングが容易になる。
【0080】
また、支持部27aは、導電性部材26aで構成してあり、下側に位置するキャリアプレート22の支持部27aは、搬送ベルト30および素子本体10の下地電極層12p、14pの双方に接続する。また、上側に位置するキャリアプレート22の支持部27aは、その上下に位置する素子本体10の下地電極層12p、14pの双方に接続する。
【0081】
そのため、カソード電極となる搬送ベルト30のカソード電圧は、鉛直方向Zの下側に位置するキャリアプレート22の導電性部材26a、素子本体10の下地電極層12p,14pから、上側に位置するキャリアプレート22の導電性部材26aを介して上側に位置する素子本体10の下地電極層12p,14pにも伝わる。また、上側に配置してあるキャリアプレート22の収容部24に収容してある素子本体10に圧接してローラ40から染み出すめっき液48は、上側の収容部24から導電性部材26aの貫通孔28aを通して下側の収容部24に流れ、導電性部材26aの貫通孔28aを通して搬送ベルト30から排出される。このため、上下の素子本体10の下地電極層12p,14pの表面は、同時にめっき液48に浸されてカソード電圧が印加されるので、めっき膜が同時に良好に形成される。
【0082】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法におけるその他の構成は、第6実施形態と同様であり、第6実施形態と同様な作用効果を奏する。
第8実施形態
【0083】
図10に示すように、本実施形態に係るめっき装置は、図1〜図3に示す実施形態に係るめっき装置の変形例であり、めっき液供給手段としてのめっき液供給ノズル46aを、搬送ベルト30の鉛直方向Zの下方に配置する。しかも、供給ノズル46aは、搬送ベルト30の鉛直方向Zの下方に接触するように、幅方向Y1に沿って細長く構成し、たとえば搬送ベルト30の幅方向Y1の幅と同等よりわずかに小さい程度にする。
【0084】
図10に示す実施形態では、供給ノズル46aの搬送方向X1の幅は、キャリアプレート22に形成してある供給部24の搬送方向幅と同程度に構成してあるが、多少狭くてもよく、広くても良い。供給ノズル46aは、搬送ベルト22の下面において、図1に示すローラ40の位置に対応して設けられることが好ましいが、必ずしもローラ40に対して一対一に設ける必要はない。たとえば複数のローラ40に対して、単一の供給ノズル46aであっても良い。
【0085】
搬送ベルト30は、キャリアプレート22と共に、供給ノズル46aに対して、搬送方向X1に移動するが、供給ノズル46aからは常時めっき液48を上方に流出するようにしても良い。あるいは、供給ノズル46aの直上に供給部24が位置するタイミングで、供給ノズル46aからめっき液48を流し、通液性の搬送ベルト30を通して、供給部24の内部をめっき液で満たし、供給部24の上部開口から溢れさせるように構成しても良い。
【0086】
本実施形態では、導電性の搬送ベルト30を電源34のプラス端子に接続し、導電性のローラ40aのシャフト42を電源のマイナス端子に接続しても良い。その場合には、ローラ40aがカソード電極となり、搬送ベルト30がアノード電極となる。あるいは、本実施形態においても、前述した実施形態と同様に、搬送ベルト30をカソード電極とし、ローラ40aのシャフトをアノード電極としても良い。
【0087】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法におけるその他の構成は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様な作用効果を奏する。
第9実施形態
【0088】
図11に示すように、本実施形態に係るめっき装置20aは、図1〜図3に示す実施形態に係るめっき装置の変形例であり、搬送ベルト22は、収容体としてのキャリアプレート22を、水平方向のみではなく、主として略鉛直方向Zの上下に連続して移動させている。すなわち、キャリアプレート22の搬送方向Z1が鉛直方向Zに略一致する。
【0089】
しかも、めっき液含浸ローラ40は、鉛直方向Zに移動する搬送ベルト30の表面に対して、キャリアプレート22の厚みと同等以下の間隔で、鉛直方向Zに沿って多数連続して配置してある。鉛直方向Zに沿って多数連続して配置してある2列のローラ40の最上部には、めっき液供給ノズル46がそれぞれ配置してあり、各列の全てのローラ40にめっき液を上から順次供給可能になっている。ローラ40に含浸されためっき液は、搬送ベルト30とローラ40との間を、キャリアプレート22が通過することで、キャリアプレート22の収容部24に充填される。
【0090】
図11に示すように、多数の素子本体10が各収容部24に収容されたキャリアプレート22は、搬送ベルト30とローラ40との間を、最初は鉛直方向Zの上方に移動し、次に、鉛直方向Zの下方に移動する。搬送ベルト30とローラ40との間を、多数の素子本体10が各収容部24に収容されたキャリアプレート22が通過することで、図1〜図3に示す実施形態と同様にして、素子本体10の下地電極層12p,14pの表面に確実に均一なめっき膜を形成することができる。
【0091】
なお、搬送ベルト30によるキャリアプレートの搬送方向Z1は、水平方向Xと鉛直方向Zとの間で傾斜させて移動させても良い。たとえば多数の素子本体10が各収容部24に収容されたキャリアプレート22を、搬送ベルト30とローラ40との間で、最初は傾斜方向の上方に移動させ、次に、傾斜方向の下方に移動させてもよい。
【0092】
本実施形態に係るめっき装置、めっき方法およびチップ型電子部品の製造方法におけるその他の構成は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0093】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0094】
たとえば、上述した実施形態では、各収容部24には、好ましくは単一の素子本体10が収容されるが、必ずしも単一でなくてもよく、各収容部24毎に複数の素子本体10が収容されても良い。また、搬送手段としては、搬送ベルト30以外に、揺動ベルト、振動ベルトなどが例示される。
【0095】
さらに、めっき液供給手段としては、めっき液供給ノズル46,46aやめっき液含浸ロール40以外に、スプレーなどでも良い。さらにまた、収容体としては、キャリアプレート22以外に、導電シート、発泡シートなどでも良い。
【符号の説明】
【0096】
2…積層チップコンデンサ
6,8…内部電極
10…素子本体
12,14…外部端子電極
12p,14p…下地電極層
12c,14c…めっき膜
20…めっき装置
22…キャリアプレート
24…収容部
26…導電性部材
27,27a…支持部
28,28a…貫通孔
30…搬送ベルト
34…電源
40…めっき液含浸ローラ
40a…導電性のローラ
42,42a…シャフト
46,46a…めっき液供給ノズル
48…めっき液
50…導電性メッシュ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき対象物を収容する収容空間を持つ収容体と、
前記収容体と共に移動する搬送手段と、
前記収容体の移動途中で、前記収容空間に、めっき液を供給するめっき液供給手段と、
前記収容空間に、めっき液が供給されている状態で、前記めっき対象物におけるめっきすべき予定部分に直接または間接的に接続するアノード電極およびカソード電極とを有するめっき装置。
【請求項2】
前記アノード電極が、前記めっき液供給手段および前記搬送手段のいずれか一方の少なくとも一部で構成され、
前記カソード電極が、前記めっき液供給手段および前記搬送手段のいずれか他方の少なくとも一部で構成される請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記収容体は、行列状に配置された複数の前記収容空間を有するキャリアプレートである請求項1または2に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記収容空間の底部には、前記めっき対象物を保持する支持部が前記収容体に形成してある請求項1〜3のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項5】
前記支持部の少なくとも一部が、前記めっき対象物および前記搬送手段の双方に接触する導電体で構成してある請求項4に記載のめっき装置。
【請求項6】
前記支持部が、めっき液を流通可能に構成してある請求項4または5に記載のめっき装置。
【請求項7】
前記収容空間は、当該収容空間に前記めっき対象物が収容された状態で、前記めっき対象物の少なくとも一部が、前記搬送手段の一部に接触するように構成してある請求項1〜3のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項8】
前記めっき液供給手段は、前記収容体の移動途中で、前記めっき対象物に接触可能なめっき液含浸ローラを有する請求項1〜7に記載のめっき装置。
【請求項9】
前記搬送手段は、めっき液を流通可能な導電性部材を有する請求項1〜8のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項10】
めっき対象物を収容する収容空間を持つ収容体を移動する工程と、
前記収容体の移動途中で、前記収容空間に、めっき液を供給する工程と、
前記収容空間に、めっき液が供給されている状態で、前記めっき対象物におけるめっきすべき予定部分に直接または間接的にアノード電極およびカソード電極を接続させる工程とを有するめっき方法。
【請求項11】
素子本体を製造する工程と、
前記素子本体に下地電極層を形成する工程と、
前記下地電極層の表面にめっき膜を形成する工程とを有するチップ型電子部品の製造方法であって、
前記めっき膜を形成する工程が、
前記素子本体を収容する収容空間を持つ収容体を移動する工程と、
前記収容体の移動途中で、前記収容空間に、めっき液を供給する工程と、
前記収容空間に、めっき液が供給されている状態で、前記素子本体における下地電極の表面に直接または間接的にアノード電極およびカソード電極を接続させる工程とを有するチップ型電子部品の製造方法。
【請求項1】
めっき対象物を収容する収容空間を持つ収容体と、
前記収容体と共に移動する搬送手段と、
前記収容体の移動途中で、前記収容空間に、めっき液を供給するめっき液供給手段と、
前記収容空間に、めっき液が供給されている状態で、前記めっき対象物におけるめっきすべき予定部分に直接または間接的に接続するアノード電極およびカソード電極とを有するめっき装置。
【請求項2】
前記アノード電極が、前記めっき液供給手段および前記搬送手段のいずれか一方の少なくとも一部で構成され、
前記カソード電極が、前記めっき液供給手段および前記搬送手段のいずれか他方の少なくとも一部で構成される請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記収容体は、行列状に配置された複数の前記収容空間を有するキャリアプレートである請求項1または2に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記収容空間の底部には、前記めっき対象物を保持する支持部が前記収容体に形成してある請求項1〜3のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項5】
前記支持部の少なくとも一部が、前記めっき対象物および前記搬送手段の双方に接触する導電体で構成してある請求項4に記載のめっき装置。
【請求項6】
前記支持部が、めっき液を流通可能に構成してある請求項4または5に記載のめっき装置。
【請求項7】
前記収容空間は、当該収容空間に前記めっき対象物が収容された状態で、前記めっき対象物の少なくとも一部が、前記搬送手段の一部に接触するように構成してある請求項1〜3のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項8】
前記めっき液供給手段は、前記収容体の移動途中で、前記めっき対象物に接触可能なめっき液含浸ローラを有する請求項1〜7に記載のめっき装置。
【請求項9】
前記搬送手段は、めっき液を流通可能な導電性部材を有する請求項1〜8のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項10】
めっき対象物を収容する収容空間を持つ収容体を移動する工程と、
前記収容体の移動途中で、前記収容空間に、めっき液を供給する工程と、
前記収容空間に、めっき液が供給されている状態で、前記めっき対象物におけるめっきすべき予定部分に直接または間接的にアノード電極およびカソード電極を接続させる工程とを有するめっき方法。
【請求項11】
素子本体を製造する工程と、
前記素子本体に下地電極層を形成する工程と、
前記下地電極層の表面にめっき膜を形成する工程とを有するチップ型電子部品の製造方法であって、
前記めっき膜を形成する工程が、
前記素子本体を収容する収容空間を持つ収容体を移動する工程と、
前記収容体の移動途中で、前記収容空間に、めっき液を供給する工程と、
前記収容空間に、めっき液が供給されている状態で、前記素子本体における下地電極の表面に直接または間接的にアノード電極およびカソード電極を接続させる工程とを有するチップ型電子部品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−208203(P2011−208203A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75949(P2010−75949)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]