説明

もずくを原料とする素麺及びその製造方法

【課題】もずく本来の有効作用を十分発揮でき、手軽に多くの量を食べることができ、しかも、長期間に亘って保存できるもずくを原料とする素麺を提供する。
【解決手段】原料のもずく1としてナガマツモ目ナガマツモ科の太もずくを使用する。もずく1を純水によって洗浄し、塩抜きをする初期洗浄・塩抜き工程S1を実行し、次に、バナジウムを多量に含有する天然水によって洗浄し、塩抜きをする仕上洗浄・塩抜き工程S2を実行する。その後、もずく1の各線状体を10〜30cmの長さ範囲になるように選定する長さ選定工程S4を実行して、もずくを原料とする素麺2を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、もずくの有する栄養素、腸内清掃作用、抗菌作用等を保持しつつ、誰にでも気軽に食べることができ、しかも、長期間に亘って保存できるようにしたもずくを原料とする素麺及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海藻であるもずくは、ナトリウム、カルシウム、カリウム等の不足しがちなミネラルは勿論、セルロースという不溶性食物繊維、アルギン酸、フコイダンという水溶性食物繊維を豊富に含むため、最近になって健康、美容食品として注目を集めている。
【0003】
不溶性食物繊維は、食道、胃、十二指腸内で完全に消化、分解されず、小腸、大腸に到達し、水を吸収して何十倍にも体積が膨張する。そのため、もずくは、食べると満腹感が得られ、腹持ちもよいことから、ダイエットに好適である。又、膨張した食物繊維は、腸を刺激し、動きを活発にするため、便秘を解消する手助けともなる。
【0004】
水溶性食物繊維は、腸内の悪玉コルステロールを包含して、体外に排出する作用があるため、生活習慣病を抑制することができるが、特に注目されているのは、フコイダンという成分であって、最近の研究によれば、ガン細胞死滅作用、病原菌O−157等に対する抗菌作用、血液凝固阻止作用等があると発表されている。
【0005】
このような理由から、もずくは、健康、美容食品として多く消費されるようになってきたが、通常は、料理屋又は家庭において、塩漬けもずくを洗浄し、塩抜きした後、輪切りにしたタコ、キュウリ等を添え、酢、醤油、みりん又は砂糖を調合した三杯酢をかけ、酢の物として食べるのが一般的である。
【0006】
最近では、家庭等においてより手軽に食べれるように、予め工場において洗浄、塩抜き等の処理をし三杯酢をかけたもずくを適宜大きさの容器に収容して、もずく加工品として販売することも増えてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
又、沖縄そば等の麺類ともずくを所定割合で混在させて、麺類と同様な感覚で食べやすくしたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、磨り潰して液状としたもずくを小麦粉等に混合し、練って、もずくの風味と食感を有するうどん麺としたものも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】

【特許文献1】特開2002−335918号公報
【特許文献2】特開2006−149353号公報
【特許文献3】特開平9−94073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の三杯酢をかけたもずくの酢の物の場合には、手軽に食べられるものの、一時にあまり多くの量を食べることはできない。又、酢が苦手な者が結構いるが、そのような者にとっては食べることができない。
【0010】
もずくを麺類と混在させたり、もずくを混合させた麺類とした場合には、小麦粉等からなる麺類を食べることになるため、ダイエット効果を得られない上、便秘解消作用、腸内清掃作用もあまり期待できない。
【0011】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みて為されたものであって、ダイエット効果、便秘解消作用、腸内清掃作用が大いに期待できると共に、手軽にかつ多くの量を、又、酢が苦手な者であっても、問題なく食べることができ、しかも、長期間に亘って保存できるもずく加工品、すなわち、もずくを原料とする素麺を提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、又、このもずくを原料とする素麺を好適に製造するもずくを原料とする素麺の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明のもずくを原料とする素麺は、原料のもずくとしてナガマツモ目ナガマツモ科の太もずくを使用し、もずくを天然水によって洗浄した後、もずくの各線状体を10〜30cmの長さ範囲になるように選定したことを特徴とする。
【0014】
本発明のもずくを原料とする素麺によれば、もずく本来が有する栄養素、腸内清掃作用、抗菌作用等が阻害されることはなく、素麺のように食べることができるから、誰にでも気軽に食べることができ、しかも、長期間に亘って保存することができる。
【0015】
ここで、前記原料のもずくとして、生もずくを使用すれば、塩もずくと比較して、より歯応えがあり、有用な成分の損失も少なく、より好ましい。
又、前記天然水として、バナジウムを多量に含有するものを使用すれば、もずくを原料とする素麺の保存可能期間は大幅に延びるので、より好ましい。
【0016】
誰にでも手軽に食べることができるように、もずくを原料とする素麺は、包装容器に挿入すると共に、麺汁、薬味を封入した包装用袋をこの包装容器に挿入して、又は、包装用袋に充填し、麺汁、薬味を封入した包装用袋をこの包装用袋に添付して販売するのが好ましい。
【0017】
本発明のもずくを原料とする素麺の製造方法は、本発明のもずくを原料とする素麺を好適に製造することができるものであって、原料のもずくとしてナガマツモ目ナガマツモ科の太もずくを使用し、天然水によってもずくを洗浄し、塩抜きをする洗浄・塩抜工程と、もずくの各線状体を10〜30cmの長さ範囲になるように選定する長さ選定工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
前記洗浄・塩抜き工程を、純水によってもずくを洗浄し、塩抜きをする初期洗浄・塩抜き工程と、天然水によってもずくを洗浄し、塩抜きをする仕上洗浄・塩抜き工程とから構成すれば、天然水の使用量を少なくすることができ、もずくを原料とする素麺をより安価で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のもずくを原料とする素麺(以下、「もずく素麺」という。)及びその製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明のもずくを原料とする素麺の製造方法を示す説明図である。
【0020】
本発明のもずく素麺の原料のもずく1としては、通称太もずく(ナガマツモ目ナガマツモ科の沖縄モズク)を使用する。太モズクは、太さが1〜3.5mmと通称糸もずく(ナガマツモ目モズク科もずく)と比較して太く、糸もずくよりは柔らかいが、太さゆえの歯応えがある。
原料のもずく1として、収穫したままの生もずくを使用するのが好ましいが、生もずくを塩漬けした塩もずくを使用してもよい。しかし、塩もずくを使用した場合には、生もずくに比較して、歯応えがあまりなく、有用な成分の損失も大きい。
【0021】
先ず、原料のもずく1を洗浄し、塩抜きをするのであるが、本発明のもずく素麺の製造方法では、もずくの洗浄・塩抜き工程は、第1段階の初期洗浄・塩抜き工程S1と第2段階の仕上洗浄・塩抜き工程S2とから構成される。
【0022】
第1段階の初期洗浄・塩抜き工程S1では、洗浄水として純水を使用し、例えば、純水を貯留させた容器内に生もずく1を挿入させ、5〜10分程度浸漬させて、付着した不純物を取り除くと共に、軽く塩抜きをする。
尚、原料として塩もずくを使用する場合には、純水に浸漬させる時間を適宜増やすようにする。
【0023】
第2段階の仕上洗浄・塩抜き工程S2では、洗浄水として天然水を使用し、例えば、天然水を貯留させた容器内に軽く塩抜きしたもずく1を挿入させ、5〜10分程度浸漬させて、略完全に塩抜きをする。
ここで、天然水を使用することによって、最終製品であるもずく素麺2の保存可能期間を延ばすことができ、又、天然水には無機塩類が溶解しているから、もずく素麺2に円やかさを与えることができる。
【0024】
特に、バナジウムを多量に含有する天然水によって洗浄すると、純水のみによって洗浄した場合に比較して、最終製品であるもずく素麺2の保存可能期間は、大幅に延びることがわかった。バナジウムを多量に含有する天然水としては、富士山麓で採取される天然水が知られており、バナジウムを100μg/1000ml以上含有する。
例えば、最終製品のもずく素麺2を10℃で保存した場合、純水のみによって洗浄した場合には、約2週間程度しか保存できなかったが、バナジウムを含有する天然水によって洗浄した場合には、約2ヶ月間も保存することができた。
さらに、バナジウムを多量に含有する天然水を使用することによって、血糖値を低下させるという効果も期待できる。
【0025】
次に、洗浄し、塩抜きしたもずく1の水切りを行う水切り工程S3を実行する。水切り工程S3では、完全に水を除去するまでは必要ないが、もずく1の各線状体が密着し過ぎない程度にまで水切りをする。
これによって、通常の素麺と同様の感覚で、最終製品のもずく素麺2の各線状体を箸で摘んで食べることができる。
【0026】
最後に、水きりしたもずく1の長さを選定する長さ選定工程S4を実行する。長さ選定工程S4では、もずく1の各線状体が所定範囲内の長さになるよう規定する。
通常、太もずくの線状体の長さは20〜30cm程度であるが、あまり短いものは除去して、もずく1の各線状体を10〜30cm程度の長さ範囲となるようにする。
これによって、通常の素麺と同様な感覚で、最終製品のもずく素麺2を口に飲み込んで食べることができる。
【0027】
本発明のもずく素麺2は、原料のもずく1としてナガマツモ目ナガマツモ科の太もずくを使用し、特別な加工、処理を施したものではなく、もずく自体をそのまま食べるものであるから、もずく本来が有する栄養素、腸内清掃作用、抗菌作用等が阻害されることはなく、健康、美容食品としての有用性は極めて高い。
【0028】
又、原料のもずく1としてナガマツモ目ナガマツモ科の太もずくを使用し、もずく1の各線状体を10〜30cm程度の長さ範囲としたから、あたかも通常の素麺のようにして食べることができ、手軽にかつ多くの量を、又、酢が苦手な者であっても、問題なく食べることができる。
【0029】
さらに、天然水、特には、バナジウムを多量に含有する天然水を使用してもずく1を洗浄することによって、もずく素麺2の保存可能期間は約2ヶ月程度にまで大幅に延びるから、もずく素麺2を長期間に亘って保存、管理することができ、賞味期限をより先に設定して販売することができる。
【0030】
上記のようにして、本発明のもずく素麺2は製造されるのであるが、製造後には、包装容器に挿入して、又は、包装用袋に充填して販売に供される。
【0031】
図2及び図3は、もずく素麺2を包装容器に挿入する場合を示し、包装容器10は、プラスチック製の本体11及び蓋体12と、本体11を被覆するプラスチック製の被覆フィルム13とから構成される。
この場合には、もずく素麺2を本体11内に挿入した後、本体11の上面にプラスチック製の被覆フィルム13を貼着して、完全に本体11内を密封状態とする。そして、蓋体12と被覆フィルム13との間に、麺汁、薬味等を封入した小さな包装用袋14,15を介在させ、蓋体12を本体11に被覆、嵌合させた上で、粘着テープ等により蓋体12を本体11に固定させる。
【0032】
この包装容器10に挿入されたもずく素麺2を食べる場合には、粘着テープ等を剥離して蓋体12を本体11から離反させ、包装用袋14,15を取り出す。そして、被覆フィルム13を剥離させて本体11内を開放する。
次いで、包装用袋14,15の一端部を破って、適宜汁椀又は蓋体12内に麺汁を溜め、又は、本体11内に麺汁を注ぎ、薬味等も適宜入れる。そして、通常の素麺を食べるように、箸で本体11内からもずく素麺2を適量摘んで取り出し、麺汁に漬けて食べる。
【0033】
このように、包装容器10に挿入された場合には、特に汁椀、盛皿等が傍になくても、何処でも手軽にもずく素麺2を食べることができるので、極めて便利である。
【0034】
図4は、もずく素麺2を包装用袋20に充填する場合を示し、包装用袋20は、2枚のプラスチック製のシート21,22を周辺部において融着させて袋体を形成したものである。
この場合には、2枚のプラスチック製のシート21,22の一辺部を除く周辺部を融着させて、一辺部を開口した開口袋体を形成しておく。そして、もずく素麺2をその開口から開口袋体内に挿入した後、開口している一辺部を融着させて、完全に密封状態とした包装用袋20を形成する。そして、もずく素麺2を充填した包装用袋20、麺汁、薬味等を封入した小さな包装用袋23,24をより大きな包装用袋に挿入する。
【0035】
この包装用袋20に挿入されたもずく素麺2を食べる場合には、先ず、より大きな包装用袋の一辺部を破断させて、もずく素麺2を充填した包装用袋20、麺汁、薬味等を封入した小さな包装用袋23,24を取り出す。
そして、包装用袋20の一辺部を破断させて開口を形成し、この開口から包装用袋20内のもずく素麺2を取り出し、適宜盛皿に移し変える。一方、包装用袋23,24の一端部を破って、麺汁、薬味等を適宜汁椀に溜め、通常の素麺を食べるように、箸でもずく素麺2を摘んで取り出し、麺汁に漬けて食べる。
【0036】
このように、包装用袋20に充填された場合には、汁椀、盛皿等を用意しなければならないが、包装用容器を使用しない分、低価格で販売することができ、保管時等においても場所をとらない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のもずくを原料とする素麺の製造方法を示す説明図である。
【図2】本発明のもずくを原料とする素麺を包装容器に挿入して販売する場合の説明図である。
【図3】図3に示す包装容器の本体と蓋体とを離反させ、麺汁、薬味等を封入した包装用袋を取り出した状態を示す説明図である。
【図4】本発明のもずくを原料とする素麺を包装用袋に充填して販売する場合の説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 もずく
2 もずくを原料とする素麺
10 包装容器
14 麺汁を封入した包装用袋
15 薬味等を封入した包装用袋
20 包装用袋
23 麺汁を封入した包装用袋
24 薬味等を封入した包装用袋
S1 初期洗浄・塩抜き工程
S2 仕上洗浄・塩抜き工程
S4 長さ選定工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料のもずくとしてナガマツモ目ナガマツモ科の太もずくを使用し、もずくを天然水によって洗浄した後、もずくの各線状体を10〜30cmの長さ範囲になるように選定したことを特徴とするもずくを原料とする素麺。
【請求項2】
前記もずくは、生もずくであることを特徴とする請求項1に記載のもずくを原料とする素麺。
【請求項3】
前記天然水は、バナジウムを多量に含有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のもずくを原料とする素麺。
【請求項4】
前記もずくを原料とする素麺を包装容器に挿入し、麺汁、薬味を封入した包装用袋を前記包装容器に挿入して販売することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のもずくを原料とする素麺。
【請求項5】
前記もずくを原料とする素麺を包装用袋に充填し、麺汁、薬味を封入した包装用袋を前記包装用袋に添付して販売することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のもずくを原料とする素麺。
【請求項6】
原料のもずくとしてナガマツモ目ナガマツモ科の太もずくを使用し、天然水によってもずくを洗浄し、塩抜きをする洗浄・塩抜工程と、もずくの各線状体を10〜30cmの長さ範囲になるように選定する長さ選定工程と、を有することを特徴とするもずくを原料とする素麺の製造方法。
【請求項7】
前記洗浄・塩抜工程は、純水によってもずくを洗浄し、塩抜きをする初期洗浄・塩抜き工程と、天然水によってもずくを洗浄し、塩抜きをする仕上洗浄・塩抜き工程と、から構成されることを特徴とする請求項6に記載のもずくを原料とする素麺の製造方法。
【請求項8】
前記天然水は、バナジウムを多量に含有するものであることを特徴とする請求項6又は7に記載のもずくを原料とする素麺の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate