説明

もちもちとした食感を有する包み形状食品及びその製造方法

【課題】 電子レンジによる加熱調理により、もちもちとした食感を簡便にかつ継続的に楽しむことができる、新規な包み形状食品を提供する。
【解決手段】 焼成された生地により、ペースト状のソースと、成形された餅とを含む具材を外部から見えないように包み込んでなる食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包み形状食品及びその製造方法に関する。より詳しくは、もちもちとした食感を有する、電子レンジで加熱調理して喫食するための包み形状食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、餅を生地で包む食品として、餅入りギョーザ(特許文献1)、揚げ物(特許文献2)、パイ包み餅(特許文献3)、餃子様食品(特許文献4)が知られている。しかしながら、これらの食品は、喫食前に蒸す、揚げる、オーブン等で焼く、油ちょうする等、喫食するのに手間がかかるものであり、簡便に喫食できるものではなかった。
【0003】
一方、最近では、調理の手軽さを追求した結果、電子レンジによる加熱調理だけで簡便にかつ片手で喫食可能となる食品、例えば、ピザ生地のような焼生地でハムやチーズ等の具材を包みこんだ加工食品(特許文献5)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−21463号公報
【特許文献2】特開2000−152768号公報
【特許文献3】特許第3974119号公報
【特許文献4】特開2007−49903号公報
【特許文献5】特開2003−189800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電子レンジによる加熱調理だけで喫食可能となる食品で、もちもちとした食感を出すために、餅等を焼生地で包み込んだものは、未だ提供されていないのが現状である。
【0006】
したがって、本発明の課題は、電子レンジによる加熱調理により、もちもちとした食感を簡便にかつ継続的に楽しむことができる、新規な包み形状食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、韓国もち等の成形された餅類とペースト状のソースとを含む具材を一緒に、当該具材が外部から見えないように焼成された生地に包み込むことにより、電子レンジによる加熱調理後も餅類が乾燥し、固くなることなく、もちもちとした食感を継続的に維持することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)焼成された生地により、ペースト状のソースと、成形された餅とを含む具材を包み込んでなり、前記具材が外部から見えないように包み込まれている、電子レンジで加熱調理して喫食するための食品、
(2)前記餅の形状が、板状または円筒状に成形されていることを特徴とする、上記(1)項に記載の食品、
(3)前記餅が、韓国もちであることを特徴とする、上記(1)または(2)項に記載の食品、
(4)前記餅の厚みが、6mm〜10mmであることを特徴とする、上記(1)〜(3)項のいずれかに記載の食品、および
(5)前記具材が、さらに、ハム、ソーセージ及びベーコンからなる群より選択される少なくとも1以上の畜肉加工品、および/または、チーズ、バター及びヨーグルトからなる群より選択される少なくとも1以上の乳製品を含むことを特徴とする、上記(1)〜(4)項のいずれかに記載の食品
に関する。
【0009】
また、本発明は、
(6)焼成された生地を準備する工程と、
前記生地の上に、ペースト状のソースと成形された餅とを含む具材を載せる工程と、
前記生地により、前記具材を外部から見えないように包み込む工程と
を含む、電子レンジで加熱調理して喫食するための食品の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る食品は、電子レンジで加熱調理すると、ペースト状のソースが溶けて、熱により餅が柔らかくなるとともに、さらにソースから発生する蒸気が焼成された生地の中に閉じこめられるために、餅の柔らかさが持続する。したがって、本発明に係る食品は、ソースの味覚とともに、焼成された生地に包み込まれた餅によるもちもちとした食感を継続的にかつ簡便に楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】焼成された生地に、ペースト状のソースと餅を載せた一例を示す。
【図2】焼成された生地の包み込み方の過程の一例を示す。
【図3】焼成された生地の包み込み方の過程の一例を示す。
【図4】焼成された生地の包み込み方の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
焼成された生地
本発明に用いられる「焼成された生地」は、穀粉と水を含む生地原料を混練して調製した練り生地を焼成することによって得ることができる。
【0013】
上記生地原料として使用可能な穀粉としては、食品に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、小麦粉、トウモロコシ粉、イモ粉、米粉、大豆粉、大麦粉、ライ麦粉、テフ粉、ひえ粉、ヒヨコマメ粉、そば粉、片栗粉、葛粉、タピオカ粉、栗粉等が挙げられる。これら穀粉は、単独で使用してもよいし、任意に組み合わせて使用してもよい。また、胚芽の状態であってもよい。
【0014】
例えば、小麦粉を主原料とし、これにトウモロコシの粉(例えば、タコスまたはトルティーヤの混合物)および/またはポテトの粉を添加したものを生地原料とすることができる。
【0015】
また、この生地原料に、さらに発泡剤(例えば、イーストや重炭酸塩等の有機/無機発泡剤、または炭酸ガス、窒素ガスあるいは酸素ガス等を用いた発泡剤)を加え、これを混練して調製したものを、生地原料に採り入れることもできる。この場合、生地原料の調合と取り扱いを十分に管理して、イースト等の発泡成分の過剰な活性化/非活性化を避けるようにする。なお、イースト等の発泡成分は、生地を焼成するまで休止状態にあり、焼成後に活性を呈するものを選択することが好ましい。
【0016】
このようにして得られた生地原料を、常法に従って、水と混練して練り生地を調製し、この練り生地を圧延し、オーブン等の焼成手段により焼成することによって、本発明に使用される焼成された生地を得る。本発明において、生地の焼成温度は、約400℃〜約500℃とするのが好ましい。また、生地の焼成時間は、約15秒〜約70秒とするのが好ましい。
【0017】
焼成された生地の形状としては、円盤状(楕円盤状も含む)でもよいし、多角形状(例えば、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状等)でもよいし、不定形状でもよい。
【0018】
本発明において用いられる焼成された生地としては、例えば、パン生地、ピザ生地、トルティーヤ生地等が挙げられるが、これらの中でも、ピザ生地、トルティーヤ生地等が好ましく用いられるが、中身を巻くことができる形状であれば特に使用する生地は限定されない。
【0019】
ペースト状のソース
本発明に用いられる「ペースト状のソース」としては、調理において他の食品に添えるペースト状のソース、あるいは、そのまま調理に用いられるペースト状のソースであれば、特に限定されない。例えば、澱粉類、調味料、糖類、食塩、油脂類、野菜類、肉類、香辛料等を任意に組み合わせて、常法に従い、ペースト状のソースを調製することができる。
【0020】
ここで、「ペースト状のソース」とは、常温または冷蔵下で、ある程度粘性を有し、練りものとして扱えるソースをいい、電子レンジによる加熱調理により、流動性を有するようになるものである。
【0021】
上記澱粉類としては、食用であれば限定されないが、例えば、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、小麦粉澱粉等が挙げられ、未加工であっても加工澱粉であってもよい。
【0022】
上記調味料としては、製造される食品によって様々用いることができ、例えば、醤油、魚醤、コチュジャン、豆板醤、XO醤、甜麺醤、トマトソース、サルサソース、ケチャップ、オイスターソース、チリソース、チャツネ、マスタード、マヨネース、ラー油、ウスターソース、酢、バルサミコ、ワインビネガー、カレー粉、味噌、アミノ酸(例えば、グルタミン酸ナトリウム等)等が挙げられるが、これらに限定されない。これら調味料は単独で使用してもよいし、任意に組み合わせて使用してもよい。
【0023】
上記糖類としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、液糖等、食品に用いることが可能なものであればいずれも使用できる。
【0024】
上記油脂類としては、食用として使用されているものであれば植物性、動物性のいずれでもよく、例えば、ラード等が好ましく用いられる。
【0025】
上記野菜類としては、人参、ニンニク、タマネギ、トマト、キャベツ、セロリ、アスパラガス、かぼちゃ等、一般に調理に使用されている野菜であれば、特に限定されない。当該野菜類は、ソースとして調製するために適当な大きさに加工してもよいし、ピューレー状、ダイス状、粉末状、顆粒状等としてもよい。
【0026】
上記肉類としては、豚肉、牛肉、鶏肉、馬肉等、一般に食用に使用されている肉類であれば、特に限定されない。当該肉類は、ソースとして調製するために適当な大きさに加工される。
【0027】
上記香辛料としては、製造される食品によって様々用いることができ、唐辛子、パプリカ、ナツメグ、ローリエ、胡椒(ペッパー)、生姜、サフラン等が挙げられるが、これらに限定されない。これら香辛料も単独で使用してもよいし、任意に組み合わせて使用してもよい。
【0028】
以上述べた、澱粉類、調味料、糖類、食塩、油脂類、野菜類、肉類、香辛料の使用量は、製造される食品、消費者の嗜好、好みに応じて、適宜、任意に設定すればよい。
【0029】
ペースト状のソースには、さらに、所望に応じて、例えば、ゼラチン、増粘剤(例えば、ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン等)、日持ち向上剤(例えば、グリシン等)等の食品添加剤を加えてもよい。
【0030】

餅(もち)とは、一般的に、穀物、特に米に水分と熱を加えた後に、外力を加えて練り合わせ、成形した食品をいう。餅には、主にもち米から作られる「日本もち」、主にうるち米から作られる「韓国もち」、主に小麦粉から作られる「中国もち」等がある。
【0031】
本発明に用いられる「餅」としては、上記いずれの餅でもよいが、本発明に係る包み形状食品の特徴であるもちもちとした食感を出すためには、通常、主にうるち米を脱穀して粒状または粉状としたものを蒸して、杵や機械等でついて作られる「韓国もち」を用いるのが好ましい。「韓国もち」と上記「ペースト状のソース」とを含む具材を一緒に、当該具材が外部から見えないように、上記「焼成された生地」に包み込んだ食品とすることで、電子レンジによる加熱調理後、時間が経過しても餅が乾燥し、固くなることがなく、もちもちとした食感を継続的に維持することができる。
【0032】
上記「餅」の形状としては、特に限定されず、板状でもよいし、円筒状でもよいし、多角形状でもよいし、不定形状でもよいが、板状または円筒状であるのが好ましい。
【0033】
上記「餅」の厚みとしては、電子レンジによる加熱調理後であっても、もちもちとした食感を楽しめることができる程度の厚さであればよい。電子レンジによる加熱調理により簡単にもちもちとした食感を出すためには、餅の厚みをある程度揃えたものが好ましい。コンビニエンスストア等で通常用いられる業務用電子レンジは、出力が約1500W程度と高いため、加熱時間のちょっとした長短で大きく加熱具合が変化することを鑑みると、餅の厚い場合、もちもちとした食感となるまで加熱すると、餅以外の他の食材が過加熱状態となり、味覚等が悪い食品となってしまう。逆に、餅が薄い場合、包み込まれたペースト状のソース等の他の食材に影響されるため、もちもちとした食感を出すことができない。したがって、「餅」の厚みは、最も厚みのある部分で、約6mm〜約10mm程度が好ましく、約7mm〜約9mm程度がより好ましく、約8mm程度が最も好ましい。このように「餅」の厚みを設定することで、もちもちとした食感のよい食品とすることができる。
【0034】
本発明に係る食品の製造方法
焼成された生地を準備し、その生地の上に、ペースト状のソースと餅を載せる。先にペースト状のソースを載せ、その上に餅を載せてもよいし、逆に、先に餅を載せ、その上にペースト状のソースを載せてもよい。また、ペースト状のソースと餅をまず絡めてそれを焼成された生地の上に載せてもよい。餅を載せる前または後に、さらなる所望の具材を載せてもよい。
【0035】
焼成された生地の上に載せる餅は、1枚の生地に対し、1個でもよいし、2個以上でもよい。
【0036】
焼成された生地の上に載せるペースト状のソースと餅の重量比は、ペースト状のソース:餅=約5:1〜約1:1が好ましく、より好ましくは、約3:1〜約2:1である。このようにペースト状のソースと餅の重量比を設定することで、電子レンジによる加熱調理により、もちもちとした食感のある食品とすることができる。
【0037】
またさらに、上記ペースト状のソースと餅に加えて、所望に応じて、さらなる具材、例えば、ハム、ソーセージ、ベーコン等の畜肉加工品、チーズ、バター、ヨーグルト等の乳製品等、またはこれらを任意に組み合わせたものを焼成された生地の上に載せてもよい。
【0038】
続いて、焼成された生地により、上記ペースト状のソースと餅等の具材を、焼成された生地により、包み込むことにより、本発明に係る食品を製造することができる。包み込みの形態としては、焼成された生地により、ペースト状のソースと餅等の具材が外部から見えないように包み込まれる限り、特に限定されない。このように、焼成された生地により、ペースト状のソースと餅等の具材が外部から見えないように包み込まれることにより、電子レンジで加熱調理した際に、ペースト状のソースが溶けて、熱により餅が柔らかくなるとともに、さらにソースから発生する蒸気が焼成された生地の中に閉じこめられるために、餅の柔らかさが持続する。したがって、本発明に係る食品は、ソースの味覚とともに、焼成された生地に包み込まれた餅によるもちもちとした食感を継続的に楽しむことができる。
【0039】
包み込み方の一例としては、例えば図2に示すように、焼成された生地により、上記ペースト状のソース2と餅3等の具材を、焼成された生地1の両端部を折り曲げて、包み込む。さらに、例えば図3に示すように、開端している焼成された生地1の底端部を折り曲げて閉端する。そして、例えば図4に示すように、開端している焼成された生地1の頂端部を折り曲げて閉端すること等が挙げられる。
【0040】
製造された食品は、喫食するまでの間、保存のために冷蔵または冷凍状態としてもよい。
【0041】
調理及び喫食
本発明に係る食品は、電子レンジで加熱調理することにより、喫食可能となる。電子レンジにおける加熱調理時間は、焼成された生地、ペースト状のソース、餅、その他の具材の種類により、また、電子レンジの出力(ワット)により、適宜、適切な時間を決定することができる。例えば、通常、約1500W程度の業務用電子レンジでは、約20秒〜約30秒程度であり、約500W程度の家庭用電子レンジでは、約1分〜約1分20秒程度である。いずれにしても、短時間で調理をすることができる。
【0042】
加熱調理後の食品は熱くなっているため、あらかじめ紙(例えば、耐水/耐油製樹脂コーティング等で表面コーティングした加工紙(例えば、ターポリン紙、パラフィン紙等)、プラスティックフィルム(例えば、ポリエチレンフィルム等)でラミネート処理した加工紙等)等の包装容器に本発明に係る食品を入れた状態で電子レンジによる加熱調理を行えば、短時間の加熱調理後すぐに片手で簡便に喫食可能となる、いわゆる「ワンハンドスナック」となるため好ましい。
【実施例】
【0043】
以下に、本発明の実施例を提示するが、当然のことながら、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
焼成された生地の製造
生地原料として、小麦粉100重量部に対し、油脂類10重量部、発酵調味料2重量部、水55重量部を混合した。この混合物を、常法に従い、捏ね上げて圧延して得た円盤状の生地を400℃のオーブンで、20秒間焼成して、焼成された生地を得た。
【0045】
ペースト状のソースの製造
表1に、ペースト状のソースの原料とその重量及び構成比を示す。
【表1】



表1のソース原料を、常法に従い、混合することにより、ペースト状のソースを得た。
【0046】
包み形状食品の製造及び調理
円盤状の焼成された生地(直径:約15cm)60gの生地中心部に、まず、ペースト状のソース33gを、次いで、厚さを揃えて成形した板状の韓国もち(厚さ:最厚部分で約8mm)17gを1枚載せた。そして、生地の両側端を折り曲げてこれら具材を交互に生地で覆った。その後、開端している生地の頂端側及び底端側を折り曲げて、具材が外部から見えないように閉端することにより、包み形状食品110gを得た。
【0047】
上記のようにして得られた包み形状食品を電子レンジ(出力1500W)で、25秒間加熱調理した。
【0048】
電子レンジで加熱調理をした食品を喫食したところ、もちもちとした食感を有し、非常に美味であった。また、時間が経っても具材の韓国もちは乾燥し固くなることなく、もちもちとした食感を簡便にかつ継続して楽しむことができた。
【符号の説明】
【0049】
1 焼成された生地
2 ペースト状のソース
3 餅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成された生地により、ペースト状のソースと、成形された餅とを含む具材を包み込んでなり、前記具材が外部から見えないように包み込まれている、電子レンジで加熱調理して喫食するための食品。
【請求項2】
前記餅の形状が、板状または円筒状に成形されていることを特徴とする、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
前記餅が、韓国もちであることを特徴とする、請求項1または2に記載の食品。
【請求項4】
前記餅の厚みが、6mm〜10mmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の食品。
【請求項5】
前記具材が、さらに、ハム、ソーセージ及びベーコンからなる群より選択される少なくとも1以上の畜肉加工品、および/または、チーズ、バター及びヨーグルトからなる群より選択される少なくとも1以上の乳製品を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の食品。
【請求項6】
焼成された生地を準備する工程と、
前記生地の上に、ペースト状のソースと成形された餅とを含む具材を載せる工程と、
前記生地により、前記具材を外部から見えないように包み込む工程と
を含む、電子レンジで加熱調理して喫食するための食品の製造方法。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−13349(P2013−13349A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147013(P2011−147013)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000118497)伊藤ハム株式会社 (57)
【Fターム(参考)】