説明

らせん状の立体構造を有する化合物及びその製造方法

【課題】 各種の材料、例えば分子認識の材料として用いられる他、有機EL素子、蛍光材料、有機バッファ層構成材料、非線形光学材料などの各種の光学デバイスなどに応用することが期待される、らせん状の構造を有する化合物、及びその製造方法の提供。
【解決手段】 下記一般式I(式中、XはO又はN−R(Rは、水素、又は一般式Iで表される化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第1の置換基を表す)で表される基であり、Yは2個以上の環が縮環してなる第1の縮環基であり、Zは2個以上の環が縮環してなる第2の縮環基である)で表され、且つらせん状の立体構造を有する化合物、及びその製造方法により、上記課題を解決する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、らせん状の立体構造を有する化合物、例えばヘリセン、ヘテロヘリセン及びそれらの誘導体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の芳香環が互いにオルト位で縮環したヘリセンはらせん構造を有するため、非平面π共役系に基づく機能、物性を奏すると考えられる。特に、多官能性の光学活性ヘリセンは、分子認識の材料として用いられる他、有機EL素子、蛍光材料、有機バッファ層構成材料、非線形光学材料などの光学デバイスへの応用が期待されている。
【0003】
特許文献1は、エレクトリック・ルミネッセンス(EL)素子としてヘリセン誘導体を用いることを開示する。特に、特許文献1は、発光層にヘキサヘリセン、ノナヘリセン、トリデカヘリセン、5-ニトロヘキサヘリセンを用いる一方、光学フィルタ部には発光層に用いた化合物とは逆方向の旋光性を有する化合物、例えば(+)−ノナヘリセンを用いている。
また、特許文献2は、ヘキサチアオクタヘリセンを含有する有機非線形光学材料を開示する。
【特許文献1】特開2000−195673。
【特許文献2】特開平5−273613。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ヘリセン及びその誘導体は、上述のように、各種の光学デバイスへの応用が期待されているにも関わらず、新規な化合物及びその製造法が開発されていない。
そこで、本発明の目的は、各種の材料、例えば分子認識の材料として用いられる他、有機EL素子、蛍光材料、有機バッファ層構成材料、非線形光学材料などの各種の光学デバイスなどに応用することが期待される、新規なヘテロヘリセン、及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、ヘテロヘリセンに限定されない、らせん状の構造を有する化合物、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、次の発明を見出した。
<1> 下記一般式I(式中、XはO又はN−R(Rは、水素、又は一般式Iで表される化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第1の置換基を表す)で表される基であり、Yは1個又は2個以上、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜3個の環が縮環してなる第1の縮環基であり、Zは1個又は2個以上、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜3個の環が縮環してなる第2の縮環基である)で表され、且つらせん状の立体構造を有する化合物。
【0006】
【化15】

【0007】
<2> 上記<1>において、Y及びZの環は、各々独立に脂環又は芳香環であり、且つ化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第2及び第3の置換基を有してもよい。Yが第2の置換基を、Zが第3の置換基を有するのがよい。第2及び第3の置換基は、各々独立に、1個又は複数個存在してもよい。
<3> 上記<2>において、第2及び第3の置換基は、1つ又は複数存在し、各々独立に、電子求引性基又は電子供与性基であるのがよい。
【0008】
<4> 上記<2>又は<3>において、第2及び第3の置換基は、各々独立に、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基及びアリール基、並びに第3の縮環基(縮環を構成する環が第1又は第2の縮環基と縮環してもよく、該環は、ヘテロ脂環を含む脂環、及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環からなる群から選ばれる)からなる群から選ばれるのがよい。
【0009】
<5> 上記<1>〜<4>のいずれかにおいて、Y及びZの環は各々、互いがオルト位で縮環するのがよい。
<6> 上記<1>〜<5>のいずれかにおいて、第1の置換基は、電子求引性基又は電子供与性基であるのがよい。
<7> 上記<1>〜<6>のいずれかにおいて、第1の置換基は、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基及びアリール基、並びに第4の縮環基(環は、ヘテロ脂環を含む脂環、及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環からなる群から選ばれる)からなる群から選ばれるのがよい。
【0010】
<8> 下記式II又はII’(式中、XはO又はN−R(Rは一般式II又はII’で表される化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第1の置換基を表し、A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、式II又はII’で表されるヘテロヘリセン及びその誘導体の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす置換基を表し、n、n’、m及びm’は0〜8の整数を表し、n+mが0〜8であり、n’+m’が0〜8である)で表されるヘテロヘリセン及びその誘導体。
【0011】
【化16】

【0012】
<9> 上記<8>において、A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、電子求引性基又は電子供与性基であるのがよい。
<10> 上記<8>又は<9>において、A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基、及びアリール基からなる群から選ばれる置換基であるか、もしくはA及びB又はA’及びB’が共に環(ヘテロ脂環を含む脂環;及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環を含む)を形成する基であるのがよい。
【0013】
<11> 下記式III(式中、X’はO又はSであり、Yは2個以上の環が縮環してなる第1の縮環基であり、Zは2個以上の環が縮環してなる第2の縮環基である)で表され、らせん状の立体構造を有する化合物の製造方法であって、
a)化合物VIを(CSOO(式中、gは1〜10、好ましくは1〜4の整数であり、h及びiは0以上の整数であり且つh+i=2g+1を満たす整数である)、式XI−1又はXI−2で表される化合物、及びハロゲン分子からなる群から選ばれる1種の化合物と反応させて化合物VII(式中、Dは、CSO−(g、h及びiは上記と同じ定義を有する)、式XI’−1又はXI’−2で表される基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1種の基を示す)を得る工程、
b)化合物VIIを触媒MLp(式中、MはPd又はNiを示し、Lは嵩高な有機P化合物配位子を示し、pは1以上の整数である)下で反応させて下記式IIIで表される化合物を得る工程、
を有する、上記方法。
【0014】
【化17】

【0015】
<12> 下記式III(式中、X’はO又はSであり、Yは1個又は2個以上、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜3個の環が縮環してなる第1の縮環基であり、Zは1個又は2個以上、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜3個の環が縮環してなる第2の縮環基である)で表され、らせん状の立体構造を有する化合物の製造方法であって、
a)化合物VIを(CFSOO又はハロゲン分子と反応させて化合物VII(式中、Dは、ハロゲン原子又はOTfを示し、Tfは−SOCFを示す)を得る工程、
b)化合物VIIを触媒MLp(式中、MはPd又はNiを示し、Lは嵩高な有機P化合物配位子を示し、pは1以上の整数である)下で反応させて下記式IIIで表される化合物を得る工程、
を有する、上記方法。
【0016】
【化18】

【0017】
<13> 上記<11>又は<12>において、a)工程前に、又はb)工程後に、光学分割工程を行い、光学活性な化合物IIIを得るのがよい。
<14> 上記<11>〜<13>のいずれかにおいて、a)工程前に光学分割工程を行い、該光学分割工程は、
c)下記式IVで表されるラセミ体の化合物IV(式中、X’、Y及びZは上記と同じ定義を有する)をキラルスルホン酸ハロゲン化物R’X(Xはハロゲン原子を示し、R’はキラルスルホニル基を示す)と反応させて化合物Vのキラルスルホン酸エステルのジアステレオマーを得る工程、
d)該ジアステレオマーVをクロマトグラフィーにより分離する工程、
e)化合物Vを加水分解することにより光学活性な化合物VIを得る工程、
を有するのがよい。
【0018】
【化19】

【0019】
<15> 上記<11>〜<14>のいずれかにおいて、Y及びZの環は、各々独立に脂環又は芳香環であり、且つ化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第2及び第3の置換基を有してもよい。
<16> 上記<15>において、第2及び第3の置換基は、1つ又は複数存在し、各々独立に、電子求引性基又は電子供与性基であるのがよい。
【0020】
<17> 上記<15>又は<16>において、第2及び第3の置換基は、各々独立に、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基及びアリール基、並びに第3の縮環基(縮環を構成する環が第1又は第2の縮環基と縮環し、該環は、ヘテロ脂環を含む脂環、及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環からなる群から選ばれる)からなる群から選ばれるのがよい。
<18> 上記<11>〜<17>のいずれかにおいて、Y及びZの環は各々、互いがオルト位で縮環するのがよい。
【0021】
<19> 下記式III’(式中、Rは、水素、又は一般式III’で表される化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第1の置換基を表し、Yは2個以上の環が縮環してなる第1の縮環基であり、Zは2個以上の環が縮環してなる第2の縮環基である)で表され、らせん状の立体構造を有する化合物の製造方法であって、
a)化合物VI’を、(CSOO(式中、gは1〜10の整数であり、h及びiは0以上の整数であり且つh+i=2g+1を満たす整数である)、式XI−1又はXI−2で表される化合物、及びハロゲン分子からなる群から選ばれる1種の化合物と反応させて化合物VII’(式中、D’はCSO−(g、h及びiは上記と同じ定義を有する)、式XI’−1又はXI’−2で表される基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1種の基を示す)を得る工程、
b)化合物VII’を、触媒MLp(式中、MはPd又はNiを示し、Lは嵩高な有機P化合物配位子を示し、pは1以上の整数である)下で、R−NH(式中、Rは上記と同じ定義を有する)と反応させて下記式III’で表される化合物を得る工程、
を有する、上記方法。
【0022】
【化20】

【0023】
<20> 下記式III’(式中、Rは、水素、又は一般式III’で表される化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第1の置換基を表し、Yは1個又は2個以上、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜3個の環が縮環してなる第1の縮環基であり、Zは1個又は2個以上、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜3個の環が縮環してなる第2の縮環基である)で表され、らせん状の立体構造を有する化合物の製造方法であって、
a)化合物VI’をトリフェニルホスフィンPPhの存在下、ハロゲン分子と反応させて化合物VII’(式中、D’は上記と同じ定義を有する)を得る工程、
b)化合物VII’を、触媒MLp(式中、MはPd又はNiを示し、Lは嵩高な有機P化合物配位子を示し、pは1以上の整数である)下で、R−NH(式中、Rは上記と同じ定義を有する)と反応させて下記式III’で表される化合物を得る工程、
を有する、上記方法。
【0024】
【化21】

【0025】
<21> 上記<19>又は<20>において、a)工程前、又はb)工程後に、光学分割工程を行い、光学活性な化合物III’を得るのがよい。
<22> 上記<19>〜<21>のいずれかにおいて、a)工程前に光学分割工程を行い、該光学分割工程は、
c)下記式IV’で表されるラセミ体の化合物IV’(式中、X’、Y及びZは上記と同じ定義を有する)をキラルスルホン酸ハロゲン化物R’X(Xはハロゲン原子を示し、R’はキラルスルホニル基を示す)と反応させて化合物V’のキラルスルホン酸エステルのジアステレオマーV’を得る工程、
d)該ジアステレオマーV’をクロマトグラフィーにより分離する工程、
e)化合物V’を加水分解することにより光学活性な化合物VI’を得る工程、
を有するのがよい。
【0026】
【化22】

【0027】
<23> 上記<19>〜<22>のいずれかにおいて、Y及びZの環は、各々独立に脂環又は芳香環であり、且つ化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第2及び第3の置換基を有してもよい。
<24> 上記<23>において、第2及び第3の置換基は、1つ又は複数存在し、各々独立に、電子求引性基又は電子供与性基であるのがよい。
【0028】
<25> 上記<23>又は<24>において、第2及び第3の置換基は、各々独立に、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基及びアリール基、並びに第3の縮環基(縮環を構成する環が第1又は第2の縮環基と縮環し、該環は、ヘテロ脂環を含む脂環、及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環からなる群から選ばれる)からなる群から選ばれるのがよい。
<26> 上記<19>〜<25>のいずれかにおいて、Y及びZの環は各々、互いがオルト位で縮環するのがよい。
【0029】
<27> 上記<19>〜<26>のいずれかにおいて、第1の置換基は、電子求引性基又は電子供与性基であるのがよい。
<28> 上記<19>〜<27>のいずれかにおいて、第1の置換基は、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基及びアリール基、並びに第4の縮環基(環は、ヘテロ脂環を含む脂環、及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環からなる群から選ばれる)からなる群から選ばれるのがよい。
【0030】
<29> 下記式IIIa(式中、X’はO又はSであり、A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、式IIIaで表されるヘテロヘリセンの吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす置換基を示し、n及びm並びにn’及びm’は0〜8の整数であり、且つn+mが0〜8の整数であり、n’+m’が0〜8の整数である)で表されるヘテロヘリセン及びその誘導体の製造方法であって、
a)式VIaで表される化合物を(CSOO(式中、gは1〜10、好ましくは1〜4の整数であり、h及びiは0以上の整数であり且つh+i=2g+1を満たす整数である)、式XI−1又はXI−2で表される化合物、及びハロゲン分子からなる群から選ばれる1種の化合物と反応させて式VIIaで表される化合物(式中、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’、並びにX’は上記と同じ定義を有し、Dは、CSO−(g、h及びiは上記と同じ定義を有する)、式XI’−1又はXI’−2で表される基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1種の基を示す)を得る工程、
b)式VIIaで表される化合物を触媒MLp(式中、MはPd又はNiを示し、Lは嵩高な有機P化合物配位子を示し、pは1以上の整数である)下で反応させて下記式IIIaで表されるヘテロヘリセンを得る工程、
を有する、上記方法。
【0031】
【化23】

【0032】
<30> 下記式IIIa(式中、X’はO又はSであり、A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、式IIIaで表されるヘテロヘリセンの吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす置換基を示し、n及びm並びにn’及びm’は0〜8の整数であり、且つn+mが0〜8の整数であり、n’+m’が0〜8の整数である)で表されるヘテロヘリセン及びその誘導体の製造方法であって、
a)式VIaで表される化合物を(CFSOOと反応させて式VIIaで表される化合物(式中、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’、並びにX’は上記と同じ定義を有し、Tfは−SOCFを示す)を得る工程、
b)式VIIaで表される化合物を触媒MLp(式中、MはPd又はNiを示し、Lは嵩高な有機P化合物配位子を示し、pは1以上の整数である)下で反応させて下記式IIIaで表されるヘテロヘリセンを得る工程、
を有する、上記方法。
【0033】
【化24】

【0034】
<31> 上記<29>又は<30>において、a)工程前、又はb)工程後に、光学分割工程を行い、光学活性な化合物IIIaを得るのがよい。
<32> 上記<29>〜<31>のいずれかにおいて、a)工程前に光学分割工程を行い、該光学分割工程は、
c)下記式IVaで表されるラセミ体の化合物IVa(式中、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’、並びにX’は上記と同じ定義を有する)をキラルスルホン酸ハロゲン化物R’X(Xはハロゲン原子を示し、R’はキラルスルホニル基を示す)と反応させて化合物IVaのキラルスルホン酸エステルのジアステレオマーを得る工程、
d)該ジアステレオマーをクロマトグラフィーにより分離して式Va又はVa’(式中、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’、並びにX’は上記と同じ定義を有する)で表される化合物を得る工程、
e)式Va又はVa’で表される化合物を加水分解することにより、式Va又はVa’で表される化合物のらせん構造が維持された化合物であって式VIa’又はVIa”で表される、光学活性な化合物(式中、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’、並びにX’は上記と同じ定義を有する)を得る工程、を有し、
前記a)工程及び前記b)工程により、式VIa’又はVIa”で表される、光学活性な化合物のらせん構造が維持された、式III a’又はIIIa”で表される、光学活性な化合物を得るのがよい。
【0035】
【化25】

【0036】
<33> 上記<29>〜<32>のいずれかにおいて、A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、電子求引性基又は電子供与性基であるのがよい。
<34> 上記<29>〜<33>のいずれかにおいて、A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基及びアリール基、並びに第3の縮環基(縮環を構成する環が第1又は第2の縮環基と縮環し、該環は、ヘテロ脂環を含む脂環、及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環からなる群から選ばれる)からなる群から選ばれるのがよい。
【0037】
<35> 下記式IIIb(式中、Rは、水素、又は一般式Iで表される化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第1の置換基を表し、A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、式IIIbで表されるヘテロヘリセンの吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす置換基を示し、n及びm並びにn’及びm’は0〜8の整数であり、且つn+mが0〜8の整数であり、n’+m’が0〜8の整数である)で表されるヘテロヘリセン及びその誘導体の製造方法であって、
a)式VIbで表される化合物を、(CSOO(式中、gは1〜10の整数であり、h及びiは0以上の整数であり且つh+i=2g+1を満たす整数である)、式XI−1又はXI−2で表される化合物、及びハロゲン分子からなる群から選ばれる1種の化合物と反応させて式VIIbで表される化合物(式中、D’はCSO−(g、h及びiは上記と同じ定義を有する)、式XI’−1又はXI’−2で表される基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1種の基を示し、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’は上記と同じ定義を有する)を得る工程、
b)式VIIbで表される化合物を触媒MLp(式中、MはPd又はNiを示し、Lは嵩高な有機P化合物配位子を示し、pは1以上の整数である)下でR−NH(式中、Rは上記と同じ定義を有する)と反応させて下記式IIIbを得る工程、
を有する、上記方法。
【0038】
【化26】

【0039】
<36> 下記式IIIb(式中、Rは、水素、又は一般式Iで表される化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第1の置換基を表し、A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、式IIIbで表されるヘテロヘリセンの吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす置換基を示し、n及びm並びにn’及びm’は0〜8の整数であり、且つn+mが0〜8の整数であり、n’+m’が0〜8の整数である)で表されるヘテロヘリセン及びその誘導体の製造方法であって、
a)式VIbで表される化合物をトリフェニルホスフィンPPhの存在下、ハロゲン分子と反応させて式VIIbで表される化合物(式中、D’はハロゲン原子を示し、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’は上記と同じ定義を有する)を得る工程、
b)式VIIbで表される化合物を触媒MLp(式中、MはPd又はNiを示し、Lは嵩高な有機P化合物配位子を示し、pは1以上の整数である)下でR−NH(式中、Rは上記と同じ定義を有する)と反応させて下記式IIIbを得る工程、
を有する、上記方法。
【0040】
【化27】

【0041】
<37> 上記<35>又は<36>において、a)工程前、又はb)工程後に、光学分割工程を行い、光学活性な化合物IIIbを得るのがよい。
<38> 上記<35>〜<37>のいずれかにおいて、a)工程前に光学分割工程を行い、該光学分割工程は、
c)下記式IVbで表されるラセミ体の化合物(式中、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’は上記と同じ定義を有する)をキラルスルホン酸ハロゲン化物R’X(Xはハロゲン原子を示し、R’はキラルスルホン酸を示す)と反応させて化合物IVbのキラルスルホン酸エステルのジアステレオマーを得る工程、
d)該ジアステレオマーをクロマトグラフィーにより分離して式Vb又はVb’(式中、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’は上記と同じ定義を有する)で表される化合物を得る工程、
e)式Vb又はVb’で表される化合物を加水分解することにより、式Vb又はVb’で表される化合物のらせん構造が維持された化合物であって式VIb’又はVIb”で表される、光学活性な化合物(式中、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’、並びにX’は上記と同じ定義を有する)を得る工程、を有し、
前記a)工程及び前記b)工程により、式VIb’又はVIb”で表される、光学活性な化合物のらせん構造が維持された、式III b’又はIII b”で表される、光学活性な化合物を得るのがよい。
【0042】
【化28】

【0043】
<39> 上記<35>〜<38>のいずれかにおいて、A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、電子求引性基又は電子供与性基であるのがよい。
<40> 上記<35>〜<39>のいずれかにおいて、A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基及びアリール基、並びに第3の縮環基(縮環を構成する環が第1又は第2の縮環基と縮環し、該環は、ヘテロ脂環を含む脂環、及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環からなる群から選ばれる)からなる群から選ばれるのがよい。
【0044】
<41> 上記<35>〜<40>のいずれかにおいて、Rは、電子求引性基又は電子供与性基であるのがよい。
<42> 上記<35>〜<41>のいずれかにおいて、Rは、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基及びアリール基、並びに第4の縮環基(環は、ヘテロ脂環を含む脂環、及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環からなる群から選ばれる)からなる群から選ばれるのがよい。
【発明の効果】
【0045】
本発明により、各種の材料、例えば分子認識の材料として用いられる他、有機EL素子、蛍光材料、有機バッファ層構成材料、非線形光学材料などの各種の光学デバイスなどに応用することが期待される、新規なヘテロヘリセン、及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明により、ヘテロヘリセンに限定されない、らせん状の構造を有する化合物、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、上記一般式Iで表される化合物、及びその製造方法に関する。以下、一般式Iで表される化合物について詳細に説明する。
一般式Iで表される化合物は、らせん状の立体構造を有する。なお、一般式Iで表される化合物などのらせん状の立体構造を有する化合物を表す式は、らせん構造が特記させていない限り、右らせん又は左らせんの立体構造を有する化合物、もしくはそれらの混合物を表す。
一般式Iにおいて、Xは、−O−又は>N−Rを意味する。ここで、Rは、水素、又は一般式Iで表される化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす、1価の第1の置換基を表す。
【0047】
第1の置換基、Rは、電子求引性基又は電子供与性基であるのがよく、例えば、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基及びアリール基、並びに第4の縮環基(環は、ヘテロ脂環を含む脂環、及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環からなる群から選ばれる)からなる群から選ばれるのがよい。
【0048】
一般式Iにおいて、Y及びZは各々、1個又は2個以上、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜3個の環が縮合してなる第1及び第2の縮環基を表す。ここで、環の数は、らせん状の立体構造を形成するのに有効な数を意味する。「有効な数」とは、らせん状の立体構造の形成には寄与しない環の数を除外する意図である。例えば、[化29]で表される化合物は、Yに相当する環が3個、Zに相当する環が2個存在する。しかしながら、Yに相当する環の3個のうち1個は、らせん状の立体構造を形成するのに「有効な数」には含まれない。したがって、[化29]で表される化合物は、Yの環が2個、Zの環が2個の化合物として表現することができる。
【0049】
【化29】

【0050】
なお、Y及びZは各々、1個の芳香環又は脂環からなる場合、[化30]に示すように、オルト位に置換基R、例えばメチル基、好ましくは嵩高い置換基Rを有するのがよい。この置換基が存在することにより、立体的な反発が生じ、[化30]に示す化合物はらせん構造を採ることができる。
【0051】
【化30】

【0052】
Y及びZを構成する環は、各々独立に、脂環又は芳香環である。Yは第2の置換基、Zは第3の置換基を、各々有してもよい。第2及び第3の置換基は、各々、0個、1個又は複数個存在してもよい。第2及び第3の置換基は、各々独立に、一般式Iで表される化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす基であるのがよく、電子求引性基又は電子供与性基であるのがよい。具体的には、第2及び第3の置換基は、各々独立に、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基及びアリール基、並びに第3の縮環基(縮環を構成する環が第1又は第2の縮環基と縮環し、該環は、ヘテロ脂環を含む脂環、及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環からなる群から選ばれる)からなる群から選ばれるのがよい。
Y及びZは、共役π系を形成してもよい。
【0053】
例えば、置換基を有しない状態でのY及びZとして、[化31]に示す基を挙げることができるが、これらに限定されない。Y及びZとして、特に、芳香族環が互いにオルト位で縮合してなる基であるのがよく、例えば[化31]に挙げる基C−1〜C−8、特にC−1〜C−4であるのがよい。なお、C−1〜C−8において表される点線は、一般式Iで表されるアリール基と縮合する箇所を示す。
【0054】
【化31】

【0055】
一般式Iで表される化合物として、下記の一般式II及びII’で表されるヘテロヘリセン及びその誘導体を挙げることができる。一般式II又はII’中、XはO又はN−R(Rは、上述と同様に定義される。即ち、一般式II又はII’で表される化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第1の置換基を表す)を表す。また、A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、式II又はII’で表されるヘテロヘリセン及びその誘導体の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす置換基を表す。n、n’、m及びm’は0〜8の整数を表し、n+mが0〜8の整数であり、n’+m’が0〜8の整数である。
【0056】
【化32】

【0057】
一般式II及びII’で表されるヘテロヘリセン及びその誘導体は、一般式Iにおいて、Y及びZが2個のベンゼン環から成り、化合物を形成する環は全て、お互いがオルト位で縮環してなるものに相当する。なお、Rは、一般式Iと同様であり、例えば、上記したものを挙げることができる。A及びBは第2の置換基に、A’及びB’は第3の置換基に、各々相当し、上述で挙げた基を用いることができる。特に、A及びB並びにA’及びB’の基として、例えば次の基である場合、以下のような応用が期待できる。即ち、Aが電子供与性基であり、Bが電子求引性基である場合、双極子モーメントが大きくなり、非線形光学材料としての応用が期待できる。また、A及び/又はBが長鎖アルキル基である場合、結晶性が低下するため、アモルファス状態が求められる有機EL素子への応用が期待できる。
【0058】
上述の一般式Iで表される化合物、具体的には一般式II及びII’で表されるヘテロヘリセン及びその誘導体は、各種の材料、例えば分子認識の材料として用いられる他、有機EL素子、蛍光材料、有機バッファ層構成材料、非線形光学材料などの各種の光学デバイスなどに応用することができる。
【0059】
<製造方法>
上述の一般式Iで表される化合物、具体的には一般式II及びII’で表されるヘテロヘリセン及びその誘導体は、例えば、次のような方法で製造することができる。
即ち、下記スキームI又はスキームIIに示す手順で行うことができる。なお、Y及びZ、並びにRは、上記と同じ定義を有する。X’はO又はSを示す。
【0060】
【化33】

【0061】
【化34】

【0062】
スキームIのステップI−aは、−OH基(X’がOの場合、双方の−OH基のうちの一方)をDで表される基に変換する工程である。具体的には、Dは、CSO−(式中、gは1〜10、好ましくは1〜4の整数であり、h及びiは0以上の整数であり且つh+i=2g+1を満たす整数である)、前述の式XI’−1又はXI’−2で表される基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1種の基を示す。より具体的には、−OH基を、−OTs化(−OTsは式XI’−1で表される基である)、−ONf化(Nfは−SOを示す)、−OTf化(Tfは−SOCFを示す)又はハロゲン化する工程である。
これらの工程は、用いる原料、即ち一般式VIで表される化合物などにより依存するが、例えば、特開平8-245662号公報(本文献はその内容全てが本明細書に含まれる))の「実施例1−(3)記載の方法により行うことができる。
【0063】
ハロゲン化の工程は、用いる原料、即ち一般式IVで表される化合物などにより依存するが、例えば、特開平7-118282号公報(本文献はその内容全てが本明細書に含まれる)に記載される方法により行うことができる。
【0064】
スキームIのステップI−aにより得られた、一般式VIIで表される化合物は、次いで、ステップI−bに付される。ステップI−bは、O−環化又はS−環化の工程である。
O−環化又はS−環化は、触媒MLp(式中、MはPd又はNiを示し、Lは嵩高な有機P化合物配位子を示し、pは1以上の整数である)の存在下で反応させることにより行われる。
【0065】
用いられる触媒MLpの配位子Lとして、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン、ビス(2−メチルフェニル)(フェニル)ホスフィン、(2−メチルフェニル)ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィン類、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリ(イソプロピル)ホスフィンなどの嵩高のアルキル基を持つトリアルキルホスフィン類;2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジ−tert-ブチルホスフィノ)ビフェニルなど有機ホスフィノ基置換ビフェニル類;1位、1位および1’位にフェニル基、嵩高なアルキル基、例えばtert-ブチル基、シクロヘキシル基からなる群から選ばれる2つの有機基(異なるものから選択されても良い)をもつホスフィノ基を有するフェロセン類;下記配位子群A;及び配位子群Bを挙げることができ、好ましくはトリ(tert-ブチル)ホスフィンであるのがよい。
【0066】
【化35】

【0067】
前記触媒のPd、Niなどの金属前駆体としては、Pd(dba)、Pd(dba)、Pd(OAc)、PdCl[P(メチルフェニル)、PdCl(dppf)、Ni(cod)、NiClとMeMgBrの混合物、Ni/C、NiCl(1,10−フェナンスロリン)とMeMgBrの混合物;及びこれらの溶媒和塩などを挙げることができる。ここで、dba=トランス、トランス−ジベンジリデン
アセトン(trans,trans-dibenzylidene acetone)、OAc=アセチル、dppf=1,1’−(ビスジフェニルホスフィノ)フェロセン(1,1'-(bisdiphenylphosphino)ferrocene)、cod=1,5−シクロオクタジエンである。
【0068】
触媒MLpを用いる場合、反応中に発生するHX(Xはハロゲン原子又は−OTf(「Tf」は前述と同義である))の受容体などとして機能する塩を反応系内に存在させるのが好ましい。これらの例として、tert-ブトキシアルカリ(アルカリとしては、Li、Na、K)、リン酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、トリアルキルアミンなどを挙げることができる。
【0069】
ステップI−bでの溶媒として、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族類;ヘキサン;エーテル;酢酸エチル;クロロホルム、塩化メチレン;ジメチルホルムアミド(DMF);テトラヒドロフラン(THF);1,4−ジオキサン;1,2−ジメトキシエタン、ジグライムなどを挙げることができ、好ましくはトルエン、キシレンであるのがよい。
ステップI−bでの反応温度は、20〜150℃の範囲であり、好ましくは120℃近辺であるのがよい。
【0070】
スキームIIのステップII−aは、−OH基の双方をD’で表される基に変換する工程である。具体的には、D’は、CSO−(式中、gは1〜10、好ましくは1〜4の整数であり、h及びiは0以上の整数であり且つh+i=2g+1を満たす整数である)、前述の式XI’−1又はXI’−2で表される基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1種の基を示す。
この工程は、用いる原料、即ち一般式VI’で表される化合物などにより依存するが、例えば、特開平7-118282号公報(本文献はその内容全てが本明細書に含まれる)に記載される方法により行うことができる。
【0071】
スキームIIのステップII−aにより得られた、一般式VII’で表される化合物は、次いで、ステップII−bに付される。
ステップII−bは、触媒MLp(式中、MはPd又はNiを示し、Lは嵩高な有機P化合物配位子を示し、pは1以上の整数である)の存在下で反応させることにより行われる。ここでの反応において用いられる諸条件は、ステップI−bで記載したものとほぼ同じである。例えば、後述の実施例で記載する、配位子とナトリウムt-ブトキサイドとの組合わせ、温度100℃などの条件を用いることができる。
【0072】
スキームI又はスキームIIにおいて、光学分割する工程を各スキーム前、又は各スキーム後に設けるのがよい。即ち、スキームIのステップI−a前に、用いる、一般式VIで表される化合物を光学分割するか、又はスキームIのステップI−b後に、得られた、一般式IIIで表される化合物を光学分割する工程を設けるのがよい。スキームIのステップI−a前に、用いる、一般式VIで表される化合物を光学分割することにより得られる光学活性体は、スキームIを介しても、その光学活性が維持されたままの化合物を得ることができる。
また、同様に、スキームIIのステップII−a前に、用いる、一般式VI’で表される化合物を光学分割するか、又はスキームIIのステップII−b後に、得られた、一般式III’で表される化合物を光学分割する工程を設けるのがよい。
【0073】
光学分割する工程を各スキーム前に設ける場合、下記スキームIIIのように行うのがよい。下記スキームIIIにおいて、Y、Z、X’は、上記と同じ定義を有する。なお、下記スキームIIIにおいて、X’がOの場合、スキームIIの一般式VI’を得るスキームとなる。
【0074】
【化36】

【0075】
ステップIII−cは、式IVで表されるラセミ体の化合物IVをキラルスルホン酸ハロゲン化物R’X(Xはハロゲン原子を示し、R’はキラルスルホン酸を示す)と反応させて化合物Vのキラルスルホン酸エステルのジアステレオマーを得る工程である。
ここでの反応条件は、用いる原料、即ち式IVで表されるラセミ体の化合物IV及びキラルスルホン酸ハロゲン化物R’Xに依存するが、次のものを挙げることができる。即ち、従来より公知のアルコールとスルホン酸塩化物との反応によるスルホン酸エステル合成(例えば、Chow, H. F.; Wan, C. W.; Ng, M. K., J. Org. Chem. 1996, 61,
8712-8714(本文献はその内容全てが本明細書に含まれる))の手法の反応条件を用いることができる。
【0076】
次いで、得られたジアステレオマーVをクロマトグラフィーにより分離する工程(ステップIII−d)に付される。クロマトグラフィーは、従来より公知の技術、条件を用いることができる。
次いで、ステップIII−e、即ち光学分割された化合物Vを加水分解する工程により、一方の光学活性体である化合物VIを得ることができる。なお、加水分解する工程は、従来より公知の技術、条件を用いることができる。
【0077】
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0078】
<3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ビフェナントリルの合成(rac-1)>
文献(Kanemasa, S.; Hamura, S.; Harada, E.;
Yamamoto, H. Tetrahedron lett. 35, 7985-7988.(本文献はその内容全てが本明細書に含まれる))記載の方法に従い、銅触媒をもちいた3-フェナントールの二量化反応により題記の化合物(rac-1)を収率69%で合成した。
【0079】
<3-ヒドロキシ-3’-トリフルオロメタンスルホニルオキシ-4,4’-ビフェナントリルの合成(rac-2)>
上記で得られた3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ビフェナントリル(rac-1)を、文献(特開平8-245662号公報(本文献はその内容全てが本明細書に含まれる))記載の方法に従って反応させて、題記の化合物(rac-2)を収率61%で合成した。
【0080】
<ジフェナントロ[3,4-b,4’,3’-d]フランの合成(rac-3)>
アルゴンガス雰囲気下、20
mL容のシュレンク管反応器に3-ヒドロキシ-3’-トリフルオロメタンスルホニルオキシ-4,4’-ビフェナントリル(176 mg, 0.34 mmol)、Pd2(dba)3・CHCl3(18 mg, 0.017 mmol)、配位子(25 mg, 0.068 mmol)、無水リン酸カリウム(144 mg, 0.68 mmol)、キシレン(2 mL)を入れ、凍結脱気した。120 ℃で18時間撹拌後、反応溶液をトルエンで希釈し、水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過・濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Rf = 0.62, ヘキサン:酢酸エチル= 5:1)により精製して、目的のジフェナントロ[3,4-b,4’,3’-d]フランを得た(57 mg, 収率45%)。
1H
NMR (CDCl3): δ
8.13 (d, J = 8.3 Hz,
2H), 8.05 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.99 (d, J = 8.7 Hz, 2H),
7.89-7.84 (m, 4H), 7.41 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.24 (t, J = 7.8 Hz,
2H), 6.28 (t, J = 7.6 Hz, 2H). 13C NMR (CDCl3): δ 156.06, 131.66,
130.25, 129.02, 128.50, 128.33, 127.13, 126.78, 126.69, 126.52, 125.84, 122.95,
118.97, 111.75.
【0081】
【化37】

【実施例2】
【0082】
<3,3’-ジブロモ-4,4’-ビフェナントリルの合成(rac-4)>
文献(特開平7-118282号公報(本文献はその内容全てが本明細書に含まれる))記載の方法にしたがって,3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ビフェナントリルから収率23%で合成した.
【0083】
<9-フェニル-ジナフト[2,1-c,1’,2’-g]カルバゾールの合成(rac-5)>
アルゴンガス雰囲気下、20
mL容のシュレンク管反応器に3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ビフェナントリル(174 mg, 0.34 mmol)、アニリン(37 mL, 0.41 mmol)、Pd2(dba)3・CHCl3(18 mg, 0.017 mmol)、配位子(20 mg, 0.034 mmol)、無水NaOtBu(92 mg, 0.95 mmol)、トルエン(2 mL)を入れ、凍結脱気した。100 ℃で24時間撹拌後、反応溶液をトルエンで希釈し、水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過、濃縮し、得られた粗成生物を分取HPLCにより精製して、目的の9-フェニル-ジナフト[2,1-c,1’,2’-g]カルバゾールを得た(95 mg, 0.22 mmol, 収率63%)。
1H
NMR (CDCl3): δ 8.03-8.00 (m, 4H), 7.85-7.82 (m, 4H), 7.78
(d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.72-7.71 (m, 4H), 7.64-7.60 (m, 1H), 7.50 (d, J
= 8.3 Hz, 2H), 7.19 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 6.27 (t, J = 7.3 Hz, 2H). 13C NMR (CDCl3): δ 140.30, 137.32, 131.494, 130.50, 130.24,
128.71, 128.67, 128.34, 127.50, 127.11, 127.01, 126.83, 126.41, 126.12, 124.69,
122.86, 117.35, 110.83.
【0084】
【化38】

【実施例3】
【0085】
<(S)-, (R)-3,3’-ジ[(1S)-カンファ-10-スルホニルオキシ]-4,4’-ビフェナントリルの合成[(S)-6, (R)-6]>
アルゴンガス雰囲気下、20
mL容のシュレンク管反応器に3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ビフェナントリル(3.8 g, 10 mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(61 mg, 0.50 mmol)、ジクロロメタン(20 mL)、トリエチルアミン(10 mL)を入れた。撹拌しながら0 ℃で(1S)-カンファ-10-スルホン酸塩化物ジクロロメタン溶液(3.0 M, 10 mL)をゆっくり加えた後、室温で3時間撹拌した。反応混合物に水を加えて反応を停止させ,有機層を分離した。水層をジクロロメタンで抽出し(300 mL x 3)、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過、濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル= 10:1)により精製して、目的の(S)- 3,3’-ジ[(1S)-カンファ-10-スルホニルオキシ]-4,4’-ビフェナントリル(Rf
= 0.38, 3.1 g, 3.6 mmol, 36%)と(R)-3,3’-ジ[(1S)-カンファ-10-スルホニルオキシ]-4,4’-ビフェナントリル(Rf
= 0.32, 3.0 g, 3.6 mmol, 36%)を得た。
【0086】
(S)-
3,3’-ジ[(1S)-カンファ-10-スルホニルオキシ]-4,4’-ビフェナントリル: 1H NMR (CDCl3): δ 8.11 (d, J = 9.2 Hz,
2H), 7.92 (d, J = 7.0 Hz, 2H), 7.84 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.80 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.76-7.74 (m, 4H),
7.31 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 6.89 (m, 2H), 2.89 (d, J = 15.1 Hz,
2H), 2.19-2.14 (m, 2H), 2.06 (d, J = 15.1 Hz, 2H), 1.87-1.85 (m, 2H),
1.76-1.65 (m, 6H), 1.23-1.09 (m, 4H), 0.58 (s, 6H), 0.44 (s, 6H). 13C NMR (CDCl3): δ 213.44, 133.50, 131.76, 131.21, 130.78,
130.60, 129.16, 129.01, 128.66, 128.35, 127.38, 127.34, 126.79, 126.68, 125.83,
121.46, 57.59, 48.20, 47.83, 42.85, 42.40, 26.88, 24.62, 19.54, 19.42.
(R)-3,3’-ジ[(1S)-カンファ-10-スルホニルオキシ]-4,4’-ビフェナントリル: 1H
NMR (CDCl3): δ
8.12 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 8.05 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.88-7.85 (m,
6H), 7.73 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.43 (t, J =
7.6 Hz, 2H), 6.99 (m, 2H), 2.42 (d, J = 14.7 Hz, 2H), 2.25-2.19 (m, 2H),
2.00-1.79 (m, 8H), 1.76 (d, J = 18.4 Hz, 2H), 1.29-1.19 (m, 4H), 0.81
(s, 6H), 0.62 (s, 6H). 13C
NMR (CDCl3): δ
213.34, 146.21, 133.50, 131.91, 131.01, 130.80, 130.59, 128.83, 128.49, 127.18,
127.15, 127.11, 126.63, 126.08, 121.34, 57.71, 48.83, 47.59, 42.89, 42.34,
26.79, 24.79, 19.42, 19.32.
【0087】
【化39】

【0088】
< (R)-3,3’-ジ[(1S)-カンファ-10-スルホニルオキシ]-4,4’-ビフェナントリルの加水分解>
100 mL容の丸底フラスコに(R)-3,3’-ジ[(1S)-カンファ-10-スルホニルオキシ]-4,4’-ビフェナントリル(2.7 g,
3.2 mmol)、テトラヒドロフラン(20 mL)、メタノール(5 mL)、5 M水酸化ナトリウム水溶液(10 mL)を入れ、25時間加熱還流した。1 M塩酸(50 mL)を加えて中和した後、減圧下でテトラヒドロフラン、メタノールを留去し、ジクロロメタンで抽出した(30 mL x 5)。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過、濃縮し、得られた粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル= 3:1)により精製して、目的の(R)- 3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ビフェナントリルを得た(1.2 g, 収率98%)。
【0089】
【化40】

【0090】
<ジフェナントロ[3,4-b,4’,3’-d]フランの合成[(R)-3]>
アルゴンガス雰囲気下、20 mL容のシュレンク管反応器に(R)- 3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ビフェナントリル(107 mg, 0.20 mmol)、Pd2(dba)3・CHCl3(21 mg, 0.020 mmol)、配位子(29 mg, 0.080 mmol)、無水リン酸カリウム(85 mg, 0.40 mmol)、トルエン(1 mL)を入れ、凍結脱気した。100 ℃で10時間撹拌後、反応溶液をトルエンで希釈し、水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過、濃縮し、得られた粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル= 5:1)により精製して、目的の(R)-ジフェナントロ[3,4-b,4’,3’-d]フランを得た(17 mg, 収率26%)。鏡像体過剰率95%、比旋光度 [α]18D
-2200° (c 0.12, CHCl3)。
【0091】
【化41】

【実施例4】
【0092】
<rac-3,3’-ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)-4,4’-ビフェナントリルの合成 [rac-7]>
アルゴンガス雰囲気下,20
mL容のシュレンク管反応器に(S)-3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ビフェナントリル(386 mg, 1.0 mmol),ピリジン(0.24 mL, 3.0 mmol),ジクロロメタン(8 mL)を入れた。撹拌しながら0 ℃でトリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.41 mL, 2.4 mmol)をゆっくり加えたのち,室温で9時間撹拌した。反応混合物に1 M塩酸を加えて反応を停止させ,ジクロロメタンを減圧下で留去した。酢酸エチル(50 mL)を加え,有機層を1M塩酸,飽和炭酸水素ナトリウム水溶液,飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後,ろ過・濃縮し,得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル= 3:1)により精製して,目的のrac-3,3’-ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)-4,4’-ビフェナントリル(Rf = 0.44, 0.63 g, 0.97 mmol, 97%)を得た。
1H NMR (CDCl3): δ 8.19 (d, J = 9.0 Hz, 2H),
7.95-7.91 (m, 8H), 7.66 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.47 (t, J = 7.8 Hz,
2H), 7.01 (t, J = 7.8 Hz, 2H). 13C NMR (CDCl3):
δ 145.65, 133.69, 132.91,
131.85, 130.94, 130.16, 129.52, 129.07, 127.45, 127.06, 126.71, 126.66, 125.46,
119.61, 117.84 (q, JC-F = 318 Hz).
【0093】
【化42】

【0094】
<rac-フェニルジナフト[2,1-c,1’,2’-g]カルバゾールの合成 [rac-5]>
アルゴンガス雰囲気下,20 mL容のシュレンク管反応器にrac-3,3’-ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)-4,4’-ビフェナントリル(195 mg, 0.30 mmol),アニリン(33 mL, 0.36 mmol),Pd2(dba)3・CHCl3(16 mg, 0.015 mmol),配位子(17 mg, 0.03 mmol),無水リン酸カリウム(178 mg, 0.84 mmol),キシレン(1.5 mL)を入れ,凍結脱気した。100 ℃で141時間撹拌後,反応溶液をトルエンで希釈し,1M塩酸で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後,ろ過・濃縮し,得られた粗成生物を分取HPLCにより精製して,目的のrac-9-フェニルジナフト[2,1-c,1’,2’-g]カルバゾールを得た(85 mg, 0.19 mmol, 収率64%)。
【0095】
【化43】

【実施例5】
【0096】
<(S)-3,3’-ビス(ノナフルオロブタンスルホニルオキシ)-4,4’-ビフェナントリルの合成 [(S)-8]>
アルゴンガス雰囲気下,20
mL容のシュレンク管反応器に(S)-3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ビフェナントリル(966 mg, 2.5 mmol),ピリジン(607 mL, 7.5 mmol),ジクロロメタン(15 mL)を入れた。撹拌しながら0 ℃でノナフルオロブタンスルホン酸無水物(1.69 mL, 5.5 mmol)をゆっくり加えたのち,室温で18時間撹拌した。反応混合物に1 M塩酸を加えて反応を停止させ,ジクロロメタンを減圧下で留去した。酢酸エチル(100 mL)を加え,有機層を1M塩酸,飽和炭酸水素ナトリウム水溶液,飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後,ろ過・濃縮し,得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル= 5:1)により精製して,目的の(S)-3,3’-ビス(ノナフルオロブタンスルホニルオキシ)-4,4’-ビフェナントリル(Rf = 0.50, 2.1 g,
2.2 mmol, 89%)を得た。
1H NMR (CDCl3): δ 8.16 (d, J = 8.9 Hz, 2H),
7.92-7.87 (m, 8H), 7.68 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.45 (t, J = 7.4 Hz,
2H), 7.00 (ddd, J = 8.7, 7.2, 1.4 Hz, 2H). 13C NMR (CDCl3):
δ 145.75, 133.72, 132.98,
131.81, 130.98, 130.19, 129.51, 129.14, 127.41, 127.17, 126.68, 126.65, 125.45,
119.91, 120.58-105.24 (m, 4C)
【0097】
【化44】

【0098】
<(S)-9-フェニル-ジナフト[2,1-c,1’,2’-g]カルバゾールの合成 [P-5]>
アルゴンガス雰囲気下,20 mL容のシュレンク管反応器に(S)-3,3’-ビス(ノナフルオロブタンスルホニルオキシ)-4,4’-ビフェナントリル(285 mg, 0.30 mmol),アニリン(33 mL, 0.36 mmol),Pd2(dba)3・CHCl3(31 mg, 0.03 mmol),配位子(35 mg, 0.06 mmol),無水リン酸カリウム(178 mg, 0.84 mmol),キシレン(1.5 mL)を入れ,凍結脱気した。100 ℃で123時間撹拌後,反応溶液をトルエンで希釈し,1M塩酸で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後,ろ過・濃縮し,得られた粗成生物を分取HPLCにより精製して,目的の(S)-9-フェニル-ジナフト[2,1-c,1’,2’-g]カルバゾールを得た(126 mg, 0.28 mmol, 収率94%)。鏡像体過剰率>99%,比旋光度 [α]22D 2310° (c 0.10, CHCl3)。
【0099】
【化45】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式I(式中、XはO又はN−R(Rは、水素、又は一般式Iで表される化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第1の置換基を表す)で表される基であり、Yは1個又は2個以上の環が縮環してなる第1の縮環基であり、Zは1個又は2個以上の環が縮環してなる第2の縮環基である)で表され、且つらせん状の立体構造を有する化合物。
【化1】

【請求項2】
Y及びZの環は、各々独立に脂環又は芳香環であり、且つ前記化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第2及び第3の置換基を有してもよい請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記第2及び第3の置換基は、1つ又は複数存在し、各々独立に、電子求引性基又は電子供与性基である請求項2記載の化合物。
【請求項4】
前記第2及び第3の置換基は、各々独立に、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基及びアリール基、並びに第3の縮環基(縮環を構成する環が第1又は第2の縮環基と縮環し、該環は、ヘテロ脂環を含む脂環、及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環からなる群から選ばれる)からなる群から選ばれる請求項2又は3記載の化合物。
【請求項5】
Y及びZの環は各々、互いがオルト位で縮環する請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
前記第1の置換基は、電子求引性基又は電子供与性基である請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
前記第1の置換基は、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基及びアリール基、並びに第4の縮環基(環は、ヘテロ脂環を含む脂環、及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環からなる群から選ばれる)からなる群から選ばれる請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
下記式II又はII’(式中、XはO又はN−R(Rは一般式II又はII’で表される化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第1の置換基を表し、A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、式II又はII’で表されるヘテロヘリセン及びその誘導体の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす置換基を表し、n、n’、m及びm’は0〜8の整数を表し、n+mが0〜8であり、n’+m’が0〜8である)で表されるヘテロヘリセン及びその誘導体。
【化2】

【請求項9】
A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、電子求引性基又は電子供与性基である請求項8記載のヘテロヘリセン及びその誘導体。
【請求項10】
A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基、及びアリール基からなる群から選ばれる置換基であるか、もしくはA及びB又はA’及びB’が共に環(ヘテロ脂環を含む脂環;及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環を含む)を形成する基である請求項8又は9記載のヘテロヘリセン及びその誘導体。
【請求項11】
下記式III(式中、X’はO又はSであり、Yは2個以上の環が縮環してなる第1の縮環基であり、Zは2個以上の環が縮環してなる第2の縮環基である)で表され、らせん状の立体構造を有する化合物の製造方法であって、
a)化合物VIを(CSOO(式中、gは1〜10の整数であり、h及びiは0以上の整数であり且つh+i=2g+1を満たす整数である)、式XI−1又はXI−2で表される化合物、及びハロゲン分子からなる群から選ばれる1種の化合物と反応させて化合物VII(式中、Dは、CSO−(g、h及びiは上記と同じ定義を有する)、式XI’
−1又はXI’−2で表される基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1種の基を示す)を得る工程、
b)化合物VIIを触媒MLp(式中、MはPd又はNiを示し、Lは嵩高な有機P化合物配位子を示し、pは1以上の整数である)下で反応させて下記式IIIで表される化合物を得る工程、
を有する、上記方法。
【化3】

【請求項12】
下記式III(式中、X’はO又はSであり、Yは2個以上の環が縮環してなる第1の縮環基であり、Zは2個以上の環が縮環してなる第2の縮環基である)で表され、らせん状の立体構造を有する化合物の製造方法であって、
a)化合物VIを(CFSOO又はハロゲン分子と反応させて化合物VII(式中、Dは、ハロゲン原子又はOTfを示し、Tfは−SOCFを示す)を得る工程、
b)化合物VIIを触媒MLp(式中、MはPd又はNiを示し、Lは嵩高な有機P化合物配位子を示し、pは1以上の整数である)下で反応させて下記式IIIで表される化合物を得る工程、
を有する、上記方法。
【化4】

【請求項13】
前記a)工程前、又は前記b)工程後に、光学分割工程を行い、光学活性な化合物IIIを得る請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
前記a)工程前に光学分割工程を行い、該光学分割工程は、
c)下記式IVで表されるラセミ体の化合物IV(式中、X’、Y及びZは上記と同じ定義を有する)をキラルスルホン酸ハロゲン化物R’X(Xはハロゲン原子を示し、R’はキラルスルホニル基を示す)と反応させて化合物Vのキラルスルホン酸エステルのジアステレオマーを得る工程、
d)該ジアステレオマーVをクロマトグラフィーにより分離する工程、
e)化合物Vを加水分解することにより光学活性な化合物VIを得る工程、
を有する請求項11〜13のいずれか1項記載の方法。
【化5】

【請求項15】
Y及びZの環は、各々独立に脂環又は芳香環であり、且つ前記化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第2及び第3の置換基を有してもよい請求項11〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記第2及び第3の置換基は、1つ又は複数存在し、各々独立に、電子求引性基又は電子供与性基である請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記第2及び第3の置換基は、各々独立に、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基及びアリール基、並びに第3の縮環基(縮環を構成する環が第1又は第2の縮環基と縮環し、該環は、ヘテロ脂環を含む脂環、及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環からなる群から選ばれる)からなる群から選ばれる請求項15又は16記載の方法。
【請求項18】
Y及びZの環は各々、互いがオルト位で縮環する請求項11〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
下記式III’(式中、Rは、水素、又は一般式III’で表される化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第1の置換基を表し、Yは2個以上の環が縮環してなる第1の縮環基であり、Zは2個以上の環が縮環してなる第2の縮環基である)で表され、らせん状の立体構造を有する化合物の製造方法であって、
a)化合物VI’を、(CSOO(式中、gは1〜10の整数であり、h及びiは0以上の整数であり且つh+i=2g+1を満たす整数である)、式XI−1又はXI−2で表される化合物、及びハロゲン分子からなる群から選ばれる1種の化合物と反応させて化合物VII’(式中、D’はCSO−(g、h及びiは上記と同じ定義を有する)、式XI’−1又はXI’−2で表される基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1種の基を示す)を得る工程、
b)化合物VII’を、触媒MLp(式中、MはPd又はNiを示し、Lは嵩高な有機P化合物配位子を示し、pは1以上の整数である)下で、R−NH(式中、Rは上記と同じ定義を有する)と反応させて下記式III’で表される化合物を得る工程、
を有する、上記方法。
【化6】

【請求項20】
下記式III’(式中、Rは、水素、又は一般式III’で表される化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第1の置換基を表し、Yは2個以上の環が縮環してなる第1の縮環基であり、Zは2個以上の環が縮環してなる第2の縮環基である)で表され、らせん状の立体構造を有する化合物の製造方法であって、
a)化合物VI’をトリフェニルホスフィンPPhの存在下、ハロゲン分子と反応させて化合物VII’(式中、D’はハロゲン原子を示す)を得る工程、
b)化合物VII’を、触媒MLp(式中、MはPd又はNiを示し、Lは嵩高な有機P化合物配位子を示し、pは1以上の整数である)下で、R−NH(式中、Rは上記と同じ定義を有する)と反応させて下記式III’で表される化合物を得る工程、
を有する、上記方法。
【化7】

【請求項21】
前記a)工程前、又は前記b)工程後に、光学分割工程を行い、光学活性な化合物III’を得る請求項19又は20記載の方法。
【請求項22】
前記a)工程前に光学分割工程を行い、該光学分割工程は、
c)下記式IV’で表されるラセミ体の化合物IV’(式中、X’、Y及びZは上記と同じ定義を有する)をキラルスルホン酸ハロゲン化物R’X(Xはハロゲン原子を示し、R’はキラルスルホニル基を示す)と反応させて化合物V’のキラルスルホン酸エステルのジアステレオマーV’を得る工程、
d)該ジアステレオマーV’をクロマトグラフィーにより分離する工程、
e)化合物V’を加水分解することにより光学活性な前記化合物VI’を得る工程、
を有する請求項19〜21のいずれか1項記載の方法。
【化8】

【請求項23】
Y及びZの環は、各々独立に脂環又は芳香環であり、且つ前記化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第2及び第3の置換基を有してもよい請求項19〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記第2及び第3の置換基は、1つ又は複数存在し、各々独立に、電子求引性基又は電子供与性基である請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記第2及び第3の置換基は、各々独立に、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基及びアリール基、並びに第3の縮環基(縮環を構成する環が第1又は第2の縮環基と縮環し、該環は、ヘテロ脂環を含む脂環、及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環からなる群から選ばれる)からなる群から選ばれる請求項23又は24記載の方法。
【請求項26】
Y及びZの環は各々、互いがオルト位で縮環する請求項19〜25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記第1の置換基は、電子求引性基又は電子供与性基である請求項19〜26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
前記第1の置換基は、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基及びアリール基、並びに第4の縮環基(環は、ヘテロ脂環を含む脂環、及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環からなる群から選ばれる)からなる群から選ばれる請求項19〜27のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
下記式IIIa(式中、X’はO又はSであり、A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、式IIIaで表されるヘテロヘリセンの吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす置換基を示し、n及びm並びにn’及びm’は0〜8の整数であり、且つn+mが0〜8の整数であり、n’+m’が0〜8の整数である)で表されるヘテロヘリセン及びその誘導体の製造方法であって、
a)式VIaで表される化合物を(CSOO(式中、gは1〜10の整数であり、h及びiは0以上の整数であり且つh+i=2g+1を満たす整数である)、式XI−1又はXI−2で表される化合物、及びハロゲン分子からなる群から選ばれる1種の化合物と反応させて式VIIaで表される化合物(式中、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’、並びにX’は上記と同じ定義を有し、Dは、CSO−(g、h及びiは上記と同じ定義を有する)、式XI’
−1又はXI’−2で表される基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1種の基を示す)を得る工程、
b)式VIIaで表される化合物を触媒MLp(式中、MはPd又はNiを示し、Lは嵩高な有機P化合物配位子を示し、pは1以上の整数である)下で反応させて下記式IIIaで表されるヘテロヘリセンを得る工程、
を有する、上記方法。

【化9】

【請求項30】
下記式IIIa(式中、X’はO又はSであり、A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、式IIIaで表されるヘテロヘリセンの吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす置換基を示し、n及びm並びにn’及びm’は0〜8の整数であり、且つn+mが0〜8の整数であり、n’+m’が0〜8の整数である)で表されるヘテロヘリセン及びその誘導体の製造方法であって、
a)式VIaで表される化合物を(CFSOOと反応させて式VIIaで表される化合物(式中、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’、並びにX’は上記と同じ定義を有し、Tfは−SOCFを示す)を得る工程、
b)式VIIaで表される化合物を触媒MLp(式中、MはPd又はNiを示し、Lは嵩高な有機P化合物配位子を示し、pは1以上の整数である)下で反応させて下記式IIIaで表されるヘテロヘリセンを得る工程、
を有する、上記方法。
【化10】

【請求項31】
前記a)工程前、又は前記b)工程後に、光学分割工程を行い、光学活性な化合物IIIaを得る請求項29又は30記載の方法。
【請求項32】
前記a)工程前に光学分割工程を行い、該光学分割工程は、
c)下記式IVaで表されるラセミ体の化合物IVa(式中、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’、並びにX’は上記と同じ定義を有する)をキラルスルホン酸ハロゲン化物R’X(Xはハロゲン原子を示し、R’はキラルスルホニル基を示す)と反応させて化合物IVaのキラルスルホン酸エステルのジアステレオマーを得る工程、
d)該ジアステレオマーをクロマトグラフィーにより分離して式Va又はVa’(式中、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’、並びにX’は上記と同じ定義を有する)で表される化合物を得る工程、
e)式Va又はVa’で表される化合物を加水分解することにより、式Va又はVa’で表される化合物のらせん構造が維持された化合物であって式VIa’又はVIa”で表される、光学活性な化合物(式中、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’、並びにX’は上記と同じ定義を有する)を得る工程、を有し、
前記a)工程及び前記b)工程により、式VIa’又はVIa”で表される、光学活性な化合物のらせん構造が維持された、式III a’又はIIIa”で表される、光学活性な化合物を得る請求項29〜31のいずれか1項記載の方法。
【化11】

【請求項33】
A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、電子求引性基又は電子供与性基である請求項29〜32のいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基及びアリール基、並びに第3の縮環基(縮環を構成する環が第1又は第2の縮環基と縮環し、該環は、ヘテロ脂環を含む脂環、及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環からなる群から選ばれる)からなる群から選ばれる請求項29〜33のいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
下記式IIIb(式中、Rは、水素、又は一般式Iで表される化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第1の置換基を表し、A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、式IIIbで表されるヘテロヘリセンの吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす置換基を示し、n及びm並びにn’及びm’は0〜8の整数であり、且つn+mが0〜8の整数であり、n’+m’が0〜8の整数である)で表されるヘテロヘリセン及びその誘導体の製造方法であって、
a)式VIbで表される化合物を、(CSOO(式中、gは1〜10の整数であり、h及びiは0以上の整数であり且つh+i=2g+1を満たす整数である)、式XI−1又はXI−2で表される化合物、及びハロゲン分子からなる群から選ばれる1種の化合物と反応させて式VIIbで表される化合物(式中、D’はCSO−(g、h及びiは上記と同じ定義を有する)、式XI’−1又はXI’−2で表される基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1種の基を示し、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’は上記と同じ定義を有する)を得る工程、
b)式VIIbで表される化合物を触媒MLp(式中、MはPd又はNiを示し、Lは嵩高な有機P化合物配位子を示し、pは1以上の整数である)下でR−NH(式中、Rは上記と同じ定義を有する)と反応させて下記式IIIbを得る工程、
を有する、上記方法。

【化12】

【請求項36】
下記式IIIb(式中、Rは、水素、又は一般式Iで表される化合物の吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす第1の置換基を表し、A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、式IIIbで表されるヘテロヘリセンの吸収スペクトルに長波長シフト又は短波長シフトをもたらす置換基を示し、n及びm並びにn’及びm’は0〜8の整数であり、且つn+mが0〜8の整数であり、n’+m’が0〜8の整数である)で表されるヘテロヘリセン及びその誘導体の製造方法であって、
a)式VIbで表される化合物をトリフェニルホスフィンPPhの存在下、ハロゲン分子と反応させて式VIIbで表される化合物(式中、D’はハロゲン原子を示し、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’は上記と同じ定義を有する)を得る工程、
b)式VIIbで表される化合物を触媒MLp(式中、MはPd又はNiを示し、Lは嵩高な有機P化合物配位子を示し、pは1以上の整数である)下でR−NH(式中、Rは上記と同じ定義を有する)と反応させて下記式IIIbを得る工程、
を有する、上記方法。
【化13】

【請求項37】
前記a)工程前、又は前記b)工程後に、光学分割工程を行い、光学活性な化合物IIIbを得る請求項35又は36記載の方法。
【請求項38】
前記a)工程前に光学分割工程を行い、該光学分割工程は、
c)下記式IVbで表されるラセミ体の化合物(式中、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’は上記と同じ定義を有する)をキラルスルホン酸ハロゲン化物R’X(Xはハロゲン原子を示し、R’はキラルスルホン酸を示す)と反応させて化合物IVbのキラルスルホン酸エステルのジアステレオマーを得る工程、
d)該ジアステレオマーをクロマトグラフィーにより分離して式Vb又はVb’(式中、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’は上記と同じ定義を有する)で表される化合物を得る工程、
e)式Vb又はVb’で表される化合物を加水分解することにより、式Vb又はVb’で表される化合物のらせん構造が維持された化合物であって式VIb’又はVIb”で表される、光学活性な化合物(式中、A及びB並びにA’及びB’、n及びm並びにn’及びm’、並びにX’は上記と同じ定義を有する)を得る工程、を有し、
前記a)工程及び前記b)工程により、式VIb’又はVIb”で表される、光学活性な化合物のらせん構造が維持された、式III b’又はIII b”で表される、光学活性な化合物を得る請求項35〜37のいずれか1項記載の方法。
【化14】

【請求項39】
A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、電子求引性基又は電子供与性基である請求項35〜38のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
A及びB並びにA’及びB’は、各々独立に、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基及びアリール基、並びに第3の縮環基(縮環を構成する環が第1又は第2の縮環基と縮環し、該環は、ヘテロ脂環を含む脂環、及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環からなる群から選ばれる)からなる群から選ばれる請求項35〜39のいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
Rは、電子求引性基又は電子供与性基である請求項35〜40のいずれか1項記載の方法。
【請求項42】
Rは、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシ基、エステル基、ニトリル基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、酸素原子含有基及びアリール基、並びに第4の縮環基(環は、ヘテロ脂環を含む脂環、及びヘテロ芳香族環を含む芳香族環からなる群から選ばれる)からなる群から選ばれる請求項35〜41のいずれか1項記載の方法。


【公開番号】特開2006−52200(P2006−52200A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64341(P2005−64341)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年3月11日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第84春季年会 講演予稿集2」に発表
【出願人】(899000024)株式会社東京大学TLO (50)
【Fターム(参考)】