説明

ろう付け方法

セラミック酸化物表面を有する少なくとも2つの部品を結合するためのろう付け方法が説明される。当該方法に用いられるろう材フィラーは、貴金属および第2金属を含む。ろう付け方法の間、フィラーは、空気のような酸化雰囲気を含む。加熱は、少なくとも貴金属が溶融するまで実施される。フィラーは、第2金属の安定で不揮発性の酸化物から形成される表面酸化物を含んで成り、溶融貴金属と大きく合金しない。溶融フィラーは、セラミック酸化物表面をぬらすことができ、その後に、これらを一体に結合するように冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、オーストラリア特許第2009903255号に基づく優先権の利益を主張し、これによってその全体が本明細書内に組み込まれる。
【0002】
本願発明は、セラミック酸化物表面(ceramic oxide surface)を含んで成る部品(またはコンポーネント、component)の結合(または接合、joining)に関する。
【背景技術】
【0003】
セラミックスは、ロバスト性および耐食性のような、優れた機械的特性を有する。しかしながら、現在、経済的に、複数のより小さな部品を含んで成る大きなまたは複雑なセラミック部品を製造できないことにより、セラミックスの使用は制限されている。このより小さなセラミック部品は、容易に形成できるがしかし、このより小さな部品の間の結合部に、弱さがしばしば存在する。
【0004】
セラミックベースの固体酸化物燃料電池スタックは、セラミック部品、またはセラミック酸化物表面を有する金属部品を含んで成り、該セラミック酸化物表面は、該スタック(セラミック部品、または金属表面および他のセラミック表面を有する金属部品を含んで成る)内の他の部品とハーメチックに密封する(hermetically seal)結合を必要とする。燃料電池は、電解質膜を横切って生じる酸素イオンの勾配に起因して機能するので、燃料電池スタックが効率的に機能するために、部品同士の間のハーメチックシールは、安定して、かつ気密性がなければならない。
【0005】
セラミック酸化物表面同士の間の一体的な結合を高めるように、結合は、結合する面(接合面とも言う。任意の中間体に亘って含む)に亘り形成しなければならない。この結合は、得られた製品が使用される条件下において安定した状態を維持しなければならない。得られた製品が曝されるであろう条件は、約30,000時間以下またはそれより多くの寿命に亘り、少なくとも750℃の平均作動温度と、カソードサイド(得られた製品が、固体酸化物燃料電池スタック内で用いられる)において酸化雰囲気への連続的な暴露と、を含んで成る。燃料電池の種類によって、得られた製品は、アノードサイドにおける還元する環境にも連続して曝されてよい。
【0006】
ろう付けは、液相プロセスであり、金属表面同士の間のハーメチック結合(hermetic join)およびハーメチックシールを形成するのに通常用いられる。金属表面は、フィラー(または溶加材、filler)によって結合され、該フィラーは、加熱する間に金属表面と反応することができる。フィラーは、通常、接合する表面の金属と合金化して、界面に結合体を形成する。一般的なフィラーは、貴金属のような非鉄金属を含んで成る。ろう付けは、はんだ付けと類似しているが、ただし、金属の表面を結合するのに用いられるフィラーは、通常、450℃よりも高く、かつ金属表面の融点以下で加熱される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
セラミック酸化物表面は、貴金属を含んで成る溶融したろう材フィラーによってぬれることが本質的に困難である。フィラーは、通常、セラミック酸化物表面上で丸まって固化する(またはビーズアップする、beads-up)。フィラーとセラミックの粒子が結合(inter-lock)できないことにより、得られた結合の強度は減少する。すなわち、フィラーが溶融される場合、該フィラーは、セラミック酸化物表面に亘ってぬれずまたは広がらず、それゆえ、結合体は、2つの材料の間で形成できない。
【0008】
この問題を克服する1つの方法は、メタライゼーションである。この方法は、フィラーをセラミック酸化物表面に接触させる前に、セラミック酸化物表面に金属の表面または金属のような表面を付与することによって、セラミック酸化物表面を前処理することを含む。最も広く用いられているメタライゼーションの方法の1つは、ガラス、モリブデンおよびマンガンの粉末混合物をセラミック表面に付与し、かつ1500℃の湿潤水素雰囲気中で加熱する工程を含む。この工程は、高価であり得る。メタライゼーションの更なる問題は、その後のろう付け工程が、慎重な温度制御下、および真空下または不活性ガス(例えば、アルゴン)下のような酸素フリー雰囲気中で実施されなければならないことである。酸素フリー雰囲気下または真空下における作業は、高価および労働集約的であり得る。
【0009】
この問題を克服する別の方法は、反応性金属のろう付けと言われる。この方法は、ろう材フィラー中にジルコニウムまたはチタンのような活性金属を含んで成ることを含み、ろう付け作業の間、部品の表面における活性金属とセラミック酸化物との間の反応は、活性金属の酸化物がリッチな相である薄い中間層の形成をもたらす。これは、フィラーがより効果的に結合できる表面をもたらす。活性金属のろう付けの問題は、このプロセスが、再び、慎重な温度制御の高価な条件下および酸素フリー雰囲気中で実施されなければならないことである。
【0010】
従って、セラミック酸化物表面を一体的に結合する、新規なまたは改善された方法への要求があり、当該方法は、従来技術の方法の少なくともいくつかの課題を軽減し、かつ得られた製品が曝される可能性がある厳しい環境下で機能できる密閉を形成できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明によれば、貴金属と第2金属とを含んで成るフィラーによって、2つの部品のそれぞれのセラミック酸化物表面を結合するためのろう付け方法が提供され、該プロセスは、
少なくとも貴金属が溶融するまで酸化雰囲気中でフィラーを加熱し、少なくとも部分的に溶融したフィラーが、第2金属の安定で不揮発性の酸化物から形成される表面酸化物を含んで成る工程と、
2つの部品のセラミック酸化物表面を少なくとも部分的に溶融したフィラーと接触させ、それによって、フィラーがセラミック酸化物表面をぬらす工程と、
セラミック酸化物表面同士の間でフィラーを冷却して固化させ、それによって、2つの部品のそれぞれのセラミック酸化物表面を結合する工程と、
を含んで成り、
第2金属の酸化物は、溶融貴金属と大きく合金化しない。
【0012】
当該方法により形成された物品は、2つより多い部品から形成されてよく、それぞれの部品の向かい合う表面は、本願発明の方法により結合されてよい。
【0013】
また、本願発明によれば、ろう材フィラーによって一体的に結合した少なくとも2つの部品を含んで成る製品が提供され、ろう材フィラーは、2つの部品のそれぞれのセラミック酸化物表面を結合し、ろう材フィラーは、貴金属と、第2金属の酸化物とを含んで成り、前記第2金属の酸化物は、貴金属と大きく合金化しない。
【0014】
1つの実施形態において、製品は、平面の固体酸化物燃料電池と平面の金属性ガス分離プレートとを交互に配置したスタックを含んで成る。この実施形態では、固体酸化物部品は、金属部品の表面に形成されたセラミック酸化物表面により、金属部品に結合される。
【0015】
別の実施形態では、製品は、各々のガス分離プレートと、隣接した燃料電池との間に金属カバープレートを備えた、固体酸化物燃料電池と金属性ガス分離プレートとのスタックを含んで成る。この実施形態では、隣接した金属部品は、金属部品の表面に形成されたセラミック酸化物表面によって結合され、固体酸化物部品は、金属部品の表面に形成されたセラミック酸化物表面によって金属部品と結合する。
【0016】
第2金属の酸化物は、溶融貴金属と大きく合金化しない。このことは、得られた、少なくとも部分的に溶融したフィラー(以下、便宜上「溶融フィラー」とも言う)が均質(homogenous)ではないことを意味している。貴金属と合金化した任意の約1重量%より多い第2金属の酸化物は、「かなり多い(significant)」と考えられる。有利な対応では、貴金属と合金化した第2金属の酸化物は、存在しない。しかしながら、微々たる量の合金化は、結合プロセスの結果に影響を及ぼさないであろう。複数の実施形態において、貴金属と合金化した第2金属の酸化物は、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下または0.1重量%以下であってよい。溶融フィラーの複数の成分の微々たる合金化のため、溶融フィラーは、不均質であると考えられる。貴金属は、フィラーのバルク部を形成し、第2金属の酸化物は、溶融貴金属に、少なくとも部分的な表面酸化物層を形成する。このことは、溶融フィラーが少なくとも部分的な金属酸化物表面を有することを示しており、金属酸化物表面は、溶融貴金属よりもセラミック酸化物表面にとって化学的に魅力的である。
【0017】
ろう付け方法は、空気のような酸化雰囲気中で実施される。酸素を含んで成るいかなる雰囲気も適切であるが、空気は、安価かつ便利である。この方法は、酸素フリー雰囲気中で実施されない。実際に、この方法は、金属酸化物の形成を容易にする雰囲気、すなわち、酸素含有雰囲気中で実施されなければならない。濃縮された酸素の環境を用いることもあり得るがしかし、経済的には望まれないであろう。酸化雰囲気は、この方法が真空を必要とせず、または不活性ガスの連続的な適用を必要とせずに実施でき、それによって、容易な方法工程(process step)の形態およびコスト節約の重要な製造利点を提供できるという利点を有する。
【0018】
酸化雰囲気中でフィラーを加熱することは、第2金属の酸化物が形成されるのを促進する。一旦形成されると、それぞれの前記セラミック酸化物表面に隣接する、または隣接するであろう溶融フィラーの表面は、溶融フィラーのバルク部に対し、前記第2金属の酸化物により改善される。
【0019】
本願発明の方法は、セラミック酸化物の表面を変えることよりもむしろ溶融フィラーの表面/界面を変えることにより機能し、溶融フィラーによってセラミック酸化物表面のぬれ性を改善する。セラミック酸化物表面の事前のメタライゼーション(pre-metallisation)は要求されない。更に、既知の反応性元素のろう付け方法は、チタンのような活性金属とセラミック酸化物表面との間の別の分離相の形成に依存している。この新しい相は、セラミック酸化物表面が形成される材料から区別された1またはそれより多くの化学成分を含んで成り、溶融フィラーの材料とは区別される。この新しい相は、ろう付け結合の分析が実施される場合に特定できる。本方法では、フィラー材料とセラミック酸化物表面との間のぬれ/結合は、分離した別の新しい相の形成に起因せず、依存しないと考えられる。いくつかの系において、このような別の新しい相が形成してよいが、一方で、例えば、ニッケルが第2金属である、別の新しい相が形成しないであろう多くの系において、ニッケルは、アルミニウム酸化物,セラミックス酸化物と反応し、NiAlを形成してよい。
【0020】
第2金属の酸化物は、フィラーの溶融貴金属部の表面全体に、連続した酸化物相を形成してよいがしかし、必ずしも連続的である必要はない。溶融貴金属の少なくとも一部の表面が第2金属の酸化物を含んで成ることは十分である。溶融フィラーに付与された不連続な酸化物相は、適切であり、該溶融フィラーは、下部に位置するセラミック酸化物表面をぬらすことができる。有利な対応では、溶融貴金属の表面積の100%が、第2金属の酸化物相を有する。しかしながら、いくつかの実施形態では、溶融貴金属の表面積のたった10%またはそれ以下が、第2金属の酸化物により覆われてよい。100%〜10%の範囲またはそれより少ない範囲において、溶融貴金属の表面積の任意のパーセンテージが、第2の酸化物により覆われるであろう。
【0021】
いくつかの実施形態では、フィラーを加熱する工程とセラミック酸化物表面を溶融フィラーに接触させる工程とを同時に実施する。すなわち、フィラーは、セラミック酸化物表面同士の間で保持された状態で加熱されてよい。一旦溶融すると、溶融フィラーは、セラミック酸化物表面と接触した状態で維持され、それによって、溶融フィラーは、セラミック酸化物表面をぬらす。
【0022】
2つのセラミック酸化物表面またはそれらの1つは、このセラミック酸化物から全体的または部分的に作られた部品表面であり得る。このようなセラミック酸化物は、劣化せずに高温に耐えることができる任意の非金属材料を含んで成ることができる。例えば、セラミック酸化物は、アルミナ、ジルコニア、クロミアまたはベリリアのような金属酸化物であろう。固体酸化物燃料電池内で一般的に用いられる標準的な電解質は、イットリアのような1つまたはそれより多くの要素によって安定化されたジルコニア(すなわち、イットリア安定化ジルコニア(YSZ))である。YSZは、様々な作業条件下でのその化学的安定性に起因して、燃焼電池の好ましい電解質である。セラミック酸化物表面は、燃料電池内で用いられるYSZまたは任意の他のセラミック酸化物を含んで成ることができる。
【0023】
または、2つのセラミック酸化物表面またはそれらの1つは、金属部品の表面に形成される酸化物表面であってよい。この金属部品のセラミック酸化物を、金属部品が酸化雰囲気中で加熱される場合に形成することができる。この加熱する工程は、フィラーを用いて加熱する工程であってよく、該フィラーは、少なくとも部分的に溶融してよい。好ましい金属部品は、高温で加熱された際にその表面にアルミナまたはクロミアを形成し得る金属部品を含んで成る。その表面にニッケル酸化物を形成する金属は、適しているがしかし、好ましくない。従って、適した金属は、ステンレス鋼、耐熱性超合金および他の耐熱合金を含んで成る。適した金属表面は、また、米国特許第6,843,406号にも開示され、本願の全体の内容が参照によって本明細書内に組み込まれる。
【0024】
従って、本願発明の方法は、2つの接合セラミック酸化物表面、例えば、YSZ表面とYZS表面、を結合するように用いることができる。または、この方法は、YSZ表面のようなセラミック酸化物表面を、セラミック酸化物表面を有する、金属部品または他の部品に結合するように用いることができる。または、再び、当該方法は、セラミック酸化物表面を有する、2つの金属部品または他の部品を結合するように用いることができる。本願発明の方法または製品の利用の好ましい実施形態において、2つのセラミック酸化物表面は、ジルコニア、CrおよびAlのうちの1つまたはそれより多くから好都合に選択されるであろう。
【0025】
本願発明のろう付け方法に用いられるフィラーは、貴金属および第2金属を含んで成る。大部分の卑金属とは違って、貴金属は、耐食性または耐酸化性を有する。貴金属は、しばしば、地殻にあるそれらの希少性に起因して高価な金属である傾向がある。通常、貴金属は、安定で不揮発性の金属酸化物を形成しない金属である。好ましくは、フィラーの貴金属マトリックスは、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)およびパラジウム(Pd)のうちの1つまたはそれより多くを含んで成る。銀は、リーズナブルな価格で市販されているので好ましい。銀は、また、固体酸化物燃料電池アセンブリの有力な候補成分でもある。1つより多い貴金属が用いられる場所では、これらの貴金属は、溶融すると、好都合に互いに混和性を有する。
【0026】
第2金属は、安定で不揮発性の酸化物を形成する任意の金属であり得る。第2金属の酸化物は、「不揮発性」を有しており、このことは、この酸化物が、第2金属の固相とは異なる、気相または蒸気相の状態で形成されず、溶融貴金属の表面上に存在することを意味している。好ましい第2金属は、アルミニウム、錫(スズ)、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、ジルコニウムならびにチタン(Al、Sn、Ni、Co、Cr、Fe、ZrおよびTi)およびそれらの混合物を含んで成る。第2金属の選択は、結合した製品内の第2金属の存在の受容性(または認容性、acceptable)に依存するであろう。モリブデン、タングステンおよびバナジウムは、これらの酸化物が、高揮発性を有し、かついくつかの酸化物があまりに低い融点を有することに起因して、一般的に適切ではない。
【0027】
当然のことながら、特定の金属への言及は、市販純度である場合のこのような金属を含んで成る。従って、不可避不純物が、記載された材料中に存在してよい。
【0028】
第2金属は、加熱された場合に安定な酸化物を形成し、従って、フィラー中の過剰な量の第2金属は望まれない。なぜなら、過剰な量の第2金属は、ろう内部に多孔を形成することによってろうの質を低下させる可能性があるからである。従って、第2金属は、好ましくは、フィラー中の金属の全重量の約10%未満を含み、該フィラーは、貴金属により形成された、フィラーの重量のその残りを有する。フィラー中の第2金属の重量パーセントを決定する際、フィラーの結合剤(またはバインダー、binder)成分は、考慮されない。酸化できる第2金属に対する貴金属の重量比は、好ましくは、10:1〜10,000:1の範囲内であり、より好ましくは、100:1〜1000:1の範囲内である。いくつかの実施形態では、第2金属は、フィラー中の金属の全重量の約0.1重量%〜約5重量%の範囲内で含まれる。1つの実施形態では、第2金属は、フィラー中の金属の全重量の約0.1重量%〜約1重量%の範囲内で含まれる。
【0029】
フィラーを作製するように、好ましくは、結合剤の存在下で貴金属の粉末および第2金属の更なる粉末を混合でき、そのことは以下に更に詳細に示されるであろう。チタンのような反応性の第2金属のために、第2金属は、取り扱いやすさを目的として化合物の形態で提供(provide)することができる。例えば、第2金属の水素化物は、粉末状の元の(elemental)第2金属(例えば、水素化チタン(TiH)を、元のチタンの代わりに用いることができる)の代わりに粉末形態で提供することができる。ここで、「第2金属」への言及は、文脈上他の意味に解すべき場合を除いて第2金属の化合物を含んで成ることを理解すべきである。
【0030】
貴金属を含んで成る粉末および第2金属を含んで成る更なる粉末が提供される複数の実施形態において、これらの粉末を結合するように、結合剤のような輸送体または他のキャリアが要求されてよい。結合剤は、粉末のためのキャリアとして働き、2つの金属の均一な混合を容易にする潤滑化機能を有する。すなわち、結合剤は、粘着性のない(loose)金属粉末を一体的に保持し、それらの混合を容易にする。結合剤が混ぜ込まれた粉末は、フィラーを含んで成るスラリーまたはペーストを有してよい。
【0031】
適切な結合剤の選択および使用は、粉末および他の微粒子材料のスクリーン印刷(固体酸化物燃料電池スタックのための微粒子成分のスクリーン印刷を含む)の従来技術において良く知られている。多くのこのような結合剤は、一般的に、スラリーの処理に用いられている。適切な結合剤の1つの例は、Cerdec80863(登録商標)で商品として市販されている、2−エトキシエタノールおよびエタノールに含まれるヒドロキシプロピルセルロースエーテルである。具体的な材料は、エタノールに含まれる2−(2−エトキシエトキシ)−ヒドロプロピルセルロースであることが理解される。別の適切な結合剤は、Cerdec80858(登録商標)で市販されている商品であり、プロパノールに含まれる(2−(2−メトキシメチルエトキシ)メチルエトキシ)−ヒドロキシプロピルセルロースであると考えられる。
【0032】
一般的に、貴金属と第2金属の両方の粉末粒子のサイズは、約0.1ミクロン(μm)〜約100μmの範囲内である。概して、平均粒子サイズがより細かいほど、得られるろう付け接合の質は良くなり、従って細かいサイズが好ましい。好都合な実施形態では、 貴金属を含んで成る粉末は、第2金属を含んで成る粉末よりも粗い(大きい)。すなわち、第2金属を含んで成る粉末の平均粒子サイズは、貴金属を含んで成る粉末の平均粒子サイズよりも小さい。いくつかの好都合な実施形態では、貴金属の粉末は、約1μm〜約100μmの範囲内、好ましくは、約40μm〜約50μmの範囲内で収まる(fall)平均粒子サイズ、例えば、平均粒子サイズ約44μm(容易に商用的に利用できる)を有する。好都合に、第2金属の粉末は、約0.1μm〜約20μmの範囲内、例えば、約1μm〜約6μmの範囲内で収まる平均粒子サイズ、例えば、約5μmを有する。好都合な実施形態では、貴金属の粒子の平均粒子サイズは、第2金属の粉末の平均粒子サイズの範囲の約5倍〜約100倍の範囲であり、例えば、約10倍または約50倍でさえである。より微細なサイズにされた粉末が概して好まれるがしかし、一方で、より微細な粉末は、より高価であり、これらのより高いコストは、意図された目的のために弁明(または正当化、justify)されなくてよい。
【0033】
2つまたはそれより多くの貴金属が粉末形態で提供される場合、これらは、粉末状の銀もしくは粉末状の金のような特定の金属であってよく、または貴金属の粉末状の合金であってよい。粉末状の合金は、合金の粉末を作製するのに付随して高価であるために商業的に望まれないであろう。
【0034】
第2金属を含んで成る粉末は、1よりも多くの種類の金属も含んで成り得る。例えば、第2金属は、粉末状のアルミニウム金属と粉末状の錫との混合物を含んで成るであろう。
【0035】
第2金属と貴金属との粉末がフィラーを作製するように用いられる場合、第2金属の最適な含有量は、この粉末の粒子サイズと、選択された第2金属の化学的な反応性とに依存してよい。すなわち、第2金属の粉末が微細であるほど、利用可能な表面積の増加に起因して、その微細さが要求されるであろう。このことは、本明細書の教示に基づいた当業者により当然であろう。
【0036】
フィラーは、貴金属の融点以上に加熱される。このフィラーは、好ましくは、貴金属の融点よりも約3℃〜約15℃高い範囲またはそれより高い温度まで加熱される。フィラーが、融点よりも少なくとも3℃高い温度まで加熱されないと、フィラーは、広がるのに十分なほど溶融しない可能性がある。フィラーが、融点よりも15℃高い温度よりも高く加熱されると、エネルギーの導入(input)は不必要であり、望まれない関連コストを有する。いくつかの実施形態では、フィラーは、貴金属の融点よりも約5℃〜約10℃高い範囲で加熱される。例えば、大気中における純銀の融点は、約962℃である。従って、銀が、貴金属として選択される場合、好都合に、ろう付け温度は、約965℃〜約978℃、好ましくは968℃〜972℃の範囲であり得る。貴金属が貴金属の合金である実施形態にとって、フィラーは、この合金の固相線温度よりも高く、好ましくは固相線温度よりも3℃高くまたはそれより高く、および好ましくは液相温度よりも高くまで加熱される。フィラーは溶融し得るがしかし、第2金属は、溶融フィラー中で溶融する必要はなく、付与された第2金属は、安定で不揮発性の酸化物層または部分的な層を更に形成する。
【0037】
いくつかの実施形態では、フィラーは、少なくとも部分的に溶融するまで加熱でき、それから第1のセラミック酸化物表面と接触できる。そして、第2のセラミック酸化物表面は、第1のセラミック酸化物表面上の溶融フィラーと接触できる。または、フィラーは、少なくとも部分的に溶融するまで加熱でき、それと同時に両方のセラミック酸化物表面と接触できる。従って、いくつかの実施形態では、更に以下に、より詳細に記載されるように、フィラーは、所定の位置、すなわちセラミック酸化物表面同士の間で加熱される。
【0038】
この方法は、セラミック酸化物表面を有する少なくとも2つの部品を結合するように用いることができる。2つより多い部品が存在する場合、1つの一体化製品を形成するように結合される。
【0039】
いくつかの実施形態では、フィラーは、結合剤を含んで成るペーストまたはスラリーの形態で、第1のセラミック酸化物表面および/または第2のセラミック酸化物表面(および結合される部品の任意の他の表面)に付与される。それからこの表面は、互いに接触でき、大気中で加熱できる。加熱中、結合剤は、一般的に約350℃〜約420℃までの範囲の温度で焼かれ、貴金属と、第2金属の酸化物とを残す。
【0040】
1つの特定の実施形態では、試作品の形態をしたフィラーが、以下の工程によって試作できる:

スクリーン印刷またはスクリーンディスペンシング(screen dispensing)のような技術によって、ろう付けペースト/スラリーを、第1の厚さを有するリボンまたはストリップまたはガスケットタイプの形状に形成する工程であって、第1の厚さが、ペースト/スラリーが本願発明の方法に用いられてよい約300μm〜約500μmの範囲であり得る工程と、
結合剤を焼くのに十分な温度で、形成されたろう材フィラーを加熱する工程と、
加熱されたフィラーを冷却し、それによって、可とう性を有する固体フィラーの試作品を生産する工程と、
固体フィラーの試作品を圧延によって圧縮し、その厚さを更に低減させ、その多孔率を低減させる工程(いくつかの実施形態では、圧延は、厚さを約50%低減させるように実施できる)。
【0041】
このような高密度リボン、ストリップまたはガスケットを生産するのに用いられる一体化工程および加熱する工程は、その後のフィラーの使用が更に便利であることを意味している。フィラー試作品を圧縮された試作品へと変換する圧縮工程の間、試作品の多孔率は、約50%〜約60%の空隙率から約10%より少ない空隙率まで低減できる。
【0042】
ろう付け時間、すなわち、表面がろう付け温度で維持される時間は、概して、約10分〜約60分までの範囲内であろう。しかしながら、この時間は、用いられる材料によって変更されるであろう。当業者は、所望の接合一体化をもたらすのに十分な長さの時間を決定できるであろう。この時間は、フィラーの溶融と、セラミック酸化物表面のぬれと、の所望の度合いを実現する。
【0043】
酸化雰囲気(例えば、大気)中で加熱される場合、フィラー中の第2金属は酸化し始める。フィラーが昇温するにつれ、微細に分散された第2金属の酸化微粒子の層は、フィラー材料と、ろう付けされるセラミック酸化物表面と、の間に形成される。温度が更に上昇して、貴金属が溶融するにつれ、セラミック酸化物表面は、界面で微細に分散した酸化物粒子の存在に起因して、溶融貴金属によってぬれる。ろう材フィラー(溶融した)と、セラミック酸化物表面との間の直接接触は、実現される。
【0044】
ろう付けの後に続いて、セラミック酸化物表面を結合するように、フィラーは、ろう付け温度から冷却されて、フィラーを固化でき、それによって、セラミック酸化物を結合できる。概して、フィラーは、室温まで冷却できる。最適冷却速度は、一体に結合された材料に依存する。この速度は、実験(およびある程度の試行錯誤)によって決められ、それらは、当業者にとって一般的な技術的事項(またはスキルセット、skill set)の一部を構成するものである。毎分2℃の冷却速度が一般的である。
【0045】
複数の平面の固体酸化物燃料電池を含んで成る燃料電池スタックの構造において、シート状の部品を対面して結合することが要求されてよく、該スタック内の交互のシートは、それぞれ、ジルコニアセラミック(燃料電池の電解質層)と、その表面にCrの保護層を形成する耐熱合金とである(例えば、ガス分離プレートまたはカバープレート)。シート状の部品を結合するように、隣接したシートは、必要に応じてその間に位置した圧縮されているフィラーの試作品(上述したように)のリボンを備えて配置され得る。適切な負荷は、部品のスタックに掛けられ、それから、該スタックは、少なくとも貴金属の溶融と酸化物表面のぬれとを実現するのに十分な時間、ろう付け温度まで加熱され、その後、室温まで冷却されるであろう。これは、単一の部品として、一体に強固にろう付けされ、かつ交互に配置された、セラミックと合金シートとをもたらすであろう。
【0046】
本願発明の好ましい実施形態は、以下の図を参照して記載され、例示のみが意図されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、YSZセラミック表面上に位置した、銀を含んで成るフィラー(約30分間970℃で加熱した後)の写真である。
【図2】図2は、YSZセラミック表面上に位置した、銀を含んで成るフィラー(約30分間975℃で加熱した後)の写真である。
【図3】図3は、YSZセラミック表面上に位置した、銀と0.2重量%のアルミニウムとを含んで成るフィラー(約30分間970℃で加熱した後)の写真である。
【図4】図4は、YSZセラミック表面上に位置した、銀と0.4重量%のアルミニウムとを含んで成るフィラー(約30分間975℃で加熱した後)の写真である。
【図5】図5は、YSZセラミック表面上に位置した、銀と0.5重量%の錫とを含んで成るフィラー(約30分間975℃で加熱した後)の写真である。
【図6】図6は、YSZセラミック表面上に位置した、銀と、0.4重量%の水素化チタンとを含んで成るフィラー(約30分間970℃で加熱した後)の写真である。
【図7】図7は、YSZセラミック表面上に位置した、銀と、0.4重量%の水素化チタンとを含んで成るフィラー(約30分間975℃で加熱した後)の写真である。
【図8】図8は、クロム酸化物を形成するステンレススチールの表面上に位置した、銀を含んで成るフィラー(約30分間975℃で加熱した後)の写真である。
【図9】図9は、クロム酸化物を形成するステンレススチールの表面上に位置した、銀と、0.4重量%のアルミニウムとを含んで成るフィラー(約30分間975℃で加熱した後)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
セラミック酸化物表面をぬらす点で、本願発明のフィラーの効率の良さを例示するように、以下の実験が実施された。これらの実験は、本願発明の方法を用い、ろう材フィラーによってセラミック酸化物表面を別の表面と結合する(実際の結合が形成されない場合でさえ)ことの実現可能性を示すことを理解されるであろう。結合が形成される場合、フィラーが溶融状態にあると、第2の表面は、セラミック酸化物表面と結合するであろう。
【0049】
以下の例に示される本願発明の実施形態は、例示のみであり、非制限的であるとするものとして考慮されるべきである。
【0050】
実施例1
銀金属の粉末が、Cerdec80683(登録商標)の結合剤によって混合され、スラリーを形成した(第2金属を欠いて)。銀粒子は、44μmよりも小さいサイズにされた。このスラリーの小さな液滴(約0.1ml)は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含んで成るセラミック酸化物表面上に位置した。
【0051】
フィラーをその表面上に有する表面は、約30分間、溶融するまで約970℃まで大気中で加熱された。それから、この表面は、室温まで冷却された。図1は、セラミック酸化物表面から得られた銀の小さな丸まり(beads)を示す。銀の丸まり(beading)は、この銀が、加熱条件下においてセラミック表面に亘って広がらず、またはぬらさないことを示唆している。視認検査(visual inspection)は、銀が、セラミック酸化物表面と結合しにくかったことを示す。
【0052】
銀のみを含んで成るフィラーの液滴をその表面上に有する別のYSZ表面が、約30分間約975℃まで大気中で加熱された(第2金属を欠いて)。それから、この表面は、室温まで冷却された。図2は、銀が、小型の丸まり(bead)を形成して、セラミック酸化物表面に亘って広がらなかったことを示す。
【0053】
実施例2
フィラーに付加された第2金属が、セラミック酸化物表面をぬらすフィラーの能力を改善できることを例示するように、フィラーの作製中、アルミニウムを含んで成る更なる粉末が、銀粉末に付加された。粉末混合物は、約0.2重量%のアルミニウム(結合剤の重量を含まず)を含んで成った。アルミニウムは、5μmの平均粒子サイズを有した。2つの粉末(銀とアルミニウム)は、結合剤と一体に攪拌することによって混合され、スラリーを形成した。攪拌は、手によって、または機械的攪拌機を用いて実施できる。
【0054】
実施例1の液滴と概ね同じサイズの小さな液滴が、実施例1に用いられた種類と同じ種類のセラミック酸化物表面上に位置した。この表面は、約30分間、銀の融点(すなわち975℃まで)よりも高く大気中で加熱され、その後冷却された。
【0055】
図3は、約0.2重量%のアルミニウムを含んで成るフィラーが、セラミック酸化物表面との減少した接触角度を有することを示している(アルミニウムを欠いた同じフィラーと比較して)。セラミック酸化物とフィラーとの間の界面張力が減少することに起因して、フィラーが広がり、セラミック酸化物表面をぬらした。冷却されたフィラーは、セラミック酸化物表面とよく結合した。
【0056】
実施例3
フィラーに付加された別の量の第2金属がセラミック酸化物表面のぬれ性を改善できることを例示するように、フィラーの作製中、0.4重量%のアルミニウム粉末が、銀粉末に付加された。加熱温度が970℃であったこと(違いは、比較的重要ではないと考えられる)を除いて実施例2に記載されるのと同じ条件を用いて、フィラーがYSZセラミック表面上で溶融され、それから冷却された。溶融フィラー/蒸気界面におけるアルミニウム酸化物の形成に起因して、セラミック酸化物面上において向上したぬれ性を有するフィラーが、図4に示される。冷却されたフィラーが、セラミック酸化物表面とよく結合した。
【0057】
実施例4
異なる第2金属の効率の良さを例示するように、実施例4、5、6が実施された。実施例4では、フィラーの作製中、44μm未満で選別(または選抜、screen)された錫を含んで成る粉末が、銀粉末に付加された。この粉末混合物は、約0.5重量%の錫(結合剤の重量を含まず)を含んで成った。2つの粉末は、Cerdec80683(登録商標)の結合剤と混合され、スラリーを形成した。前記の実施例のサイズと概ね同じサイズの小さな液滴が、前記の実施例に用いられたセラミック酸化物表面と同じ種類のセラミック酸化物表面上に位置した。この表面は、室温まで冷却される前に、約30分間975℃まで大気中で加熱された。図5は、フィラー中の0.5重量%の錫の存在によって、この銀がセラミック酸化物表面をぬらしたことを示している。冷却されたフィラーは、セラミック酸化物表面とよく結合した。
【0058】
実施例5
フィラーの作製中、水素化チタンを含んで成る代わりの粉末が、銀粉末に付加された。この粉末混合物は、約0.4重量%の水素化チタン(結合剤の重量を含まず)を含んで成った。水素化チタン粉末は、44μmよりも小さくなるまで選別された。2つの粉末はCerdec 80683(登録商標)の結合剤と混合され、スラリーを形成した。前記の実施例のサイズと概ね同じサイズの小さな液滴が、前記の実施例に用いられたセラミック酸化物表面と同じ種類のセラミック酸化物表面上に位置した。この表面は、約30分間975℃まで大気中で加熱され、それから、室温まで冷却された。図6は、フィラー中の0.4重量%のチタンが、セラミック酸化物表面と銀フィラーとの間の接触角度の減少をもたらすことを示している。冷却されたフィラーは、セラミック酸化物表面とよく結合した。
【0059】
実施例6
フィラー作製中、44μm未満に選別されたニッケルを含んで成る代わりの粉末は、銀粉末に付加された。この粉末混合物は、約0.33重量%のニッケル(結合剤の重量を含まず)を含んで成った。2つの粉末は、Cerdec80683(登録商標)の結合剤と混合され、スラリーを形成した。前記の実施例のサイズと概ね同じサイズの小さな液滴が、前記の実施例に用いられたセラミック酸化物表面と同じ種類のセラミック酸化物表面上に位置した。この表面は、約30分間975℃まで大気中で加熱され、それから室温まで冷却された。図7では、ニッケル添加による改善されたぬれ性が示される。冷却されたフィラーは、セラミック酸化物表面とよく結合した。
【0060】
実施例7
第2金属が、セラミック酸化物表面を有する金属をぬらすという利点を備えもすることを例示するように、実施例1の銀粉末スラリーは、クロム酸化物を形成する446gradeステンレススチール(chromium oxide forming 446 grade stainless steel)の表面上で、溶融するまで約30分間975℃まで空気中で加熱され(第2金属を欠いて)、それから冷却された。
【0061】
図8は、この銀金属がこの表面上で丸まりを形成することを示している。この銀のバルクは、広がらず、表面をぬらさない。視認検査は、この銀がクロム酸化物表面と結合しにくかったことを示している。
【0062】
実施例8
実施例7と同じ条件下において、フィラー作製中、0.5μmの平均粒子サイズを有する0.4重量%の粉末状アルミニウムが、銀粉末に付加された。図9は、溶融フィラー/蒸気界面におけるアルミニウム酸化物の形成に起因して、結果として得られた、表面ぬれ性の改善を示している。冷却されたフィラーは、セラミック酸化物表面とよく結合した。
【0063】
本願発明の効率の良さを例示するように、ろう付け結合が以下の実施例に記載されるように試験された。
【0064】
実施例9
耐熱性ステンレススチールの2つのシートは、実施例2に記載されたフィラーを用いて結合された。スチールは、Hitachi Metals Ltdにより市販されている商用グレードZMG232Lであった。フィラーは、シート間に位置し、それから、該シートは、フィラー中の銀が溶融することに伴い、約30分間大気雰囲気中で975℃までかまど(furnace)内で加熱され、その後、毎分2℃で冷却された。このスチールは、高温でクロム酸化物の保護表面コーティングを形成し、該コーティングは、下に位置したスチールと堅く結合し、また、このようなコーティングは、加熱する工程の間に形成した。冷却すると、2つのシートは、互いに堅く結合した。それから、2つのシートを、結合強度をテストするように剥離試験に曝した。剥離(または破損、failure)が起こった場合、剥離は、フィラー内部でなく、フィラーと酸化物コーティングとの界面上でもなかったことが見出された。その代わりに、この剥離は、酸化物コーティングと下に位置する金属との界面上に存在し、フィラーと酸化物コーティングとの間の結合強度を実証している。
【0065】
当業者は、本明細書内で記載された本願発明は、詳細に説明したもの以外に変更や変形が可能であることを理解するであろう。本願発明の精神および技術的範囲内に含まれるものであれば、そのような変更例および変形例は、すべて本発明に含まれることを理解されるべきである。
【0066】
本明細書および以下のクレームを通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除いて用語「含む(comprise)」と、「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」は、示された要素もしくは工程、または要素群もしくは工程群を含むことを意味するのを理解されるであろう。
【0067】
本明細書における先行技術(またはそれから得られる情報)あるいは公知の事項についての言及は、それらの刊行物(またはそれから得られる情報)あるいは公知の事項が、本明細書の関係する分野の公知技術の一部を構成するものであることの自認または承認またはいかなる示唆を示すものでもなく、またそのように見なすべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属と第2金属とを含んで成るフィラーによって、2つの部品のそれぞれのセラミック酸化物表面を結合するためのろう付け方法であって、
少なくとも前記貴金属が溶融するまで酸化雰囲気中で前記フィラーを加熱し、少なくとも部分的に溶融した前記フィラーが、前記第2金属の安定で不揮発性の酸化物から形成される表面酸化物を含んで成る工程と、
前記2つの部品の前記セラミック酸化物表面を前記少なくとも部分的に溶融したフィラーと接触させ、それによって、前記フィラーが前記セラミック酸化物表面をぬらす工程と、
前記セラミック酸化物表面同士の間で前記フィラーを冷却して固化させ、それによって、前記2つの部品の前記それぞれのセラミック酸化物表面を結合させる工程と、
を含んで成り、
前記第2金属の前記酸化物が、前記溶融貴金属と大きく合金化しない、ろう付け方法。
【請求項2】
前記セラミック酸化物表面と接触させた状態で前記フィラーを加熱し、少なくとも部分的に溶融させることを特徴とする、請求項1に記載のろう付け方法。
【請求項3】
前記貴金属が、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)およびパラジウム(Pd)のうちの1つまたはそれより多くを含んで成ることを特徴とする、請求項1または2に記載のろう付け方法。
【請求項4】
前記第2金属が、アルミニウム(Al)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)およびチタン(Ti)のうちの1つまたはそれより多くを含んで成ることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のろう付け方法。
【請求項5】
前記セラミック酸化物表面の少なくとも1つが、YSZのようなジルコニア、CrおよびAlのうちの1つまたはそれより多くを含んで成ることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のろう付け方法。
【請求項6】
前記フィラーが、前記貴金属を含んで成る粉末、前記第2金属を含んで成る付加的な粉末および結合剤のペーストまたはスラリーを含んで成ることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のろう付け方法。
【請求項7】
前記付加的な粉末の前記第2金属が、水素化物であることを特徴とする、請求項6に記載のろう付け方法。
【請求項8】
前記貴金属を含んで成る粉末および前記第2金属を含んで成る付加的な粉末の平均粒子半径が、0.1ミクロン〜100ミクロンの範囲であることを特徴とする、請求項6または7に記載のろう付け方法。
【請求項9】
前記第2金属を含んで成る付加的な粉末の平均粒子サイズが、前記貴金属を含んで成る粉末の平均粒子サイズよりも小さいことを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載のろう付け方法。
【請求項10】
前記貴金属を含んで成る粉末が、第1貴金属の粉末および付加的な貴金属の粉末または貴金属の合金の粉末を含んで成ることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか1項に記載のろう付け方法。
【請求項11】
前記第2金属を含んで成る粉末が、第1の第2金属の粉末および付加的な第2金属の粉末または第2金属の合金の粉末を含んで成ることを特徴とする、請求項6〜10のいずれか1項に記載のろう付け方法。
【請求項12】
前記第2金属が、前記フィラー中の全金属の約10重量%まで含まれることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のろう付け方法。
【請求項13】
前記第2金属が、前記全金属の約0.1重量%〜約5重量%の範囲で含まれることを特徴とする、請求項12に記載のろう付け方法。
【請求項14】
前記第2金属が、前記全金属の約0.1重量%〜約1重量%の範囲で含まれることを特徴とする、請求項13に記載のろう付け方法。
【請求項15】
前記酸化雰囲気が、空気であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載のろう付け方法。
【請求項16】
前記フィラーを、前記貴金属の融点よりも約3℃〜約15℃高い範囲で加熱することを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載のろう付け方法。
【請求項17】
ろう材フィラーによって、一体に結合された少なくとも2つの部品を含んで成る製品であって、
前記ろう材フィラーが、前記部品のそれぞれのセラミック酸化物表面を結合しており、また、該ろう材フィラーが、貴金属と、第2金属の酸化物とを含んで成り、前記第2金属の酸化物が、該貴金属と大きく合金化されない、製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−532022(P2012−532022A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518697(P2012−518697)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000882
【国際公開番号】WO2011/003154
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(500101988)セラミック・フューエル・セルズ・リミテッド (12)
【Fターム(参考)】