説明

ろ過脱塩装置

【課題】ろ過脱塩装置において、十分な処理容量と良好なメンテナンス性を確保しつつ、装置の高さを抑える。
【解決手段】ろ過脱塩装置10は、内部空間12を有する外側容器20と、外側容器20の内部空間12を上下方向に延びる内壁40であって、内壁40の内側をろ過室41に、外側をイオン交換体が充填される脱塩室22に仕切り、内壁40の上方に位置する上部空間34を介してろ過室41と脱塩室22とが連通する内壁40と、脱塩室22の側方位置で外側容器20に開口する複数のイオン交換体充填配管24と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所または原子力発電所の復水処理システムに設置される、ろ過装置と脱塩装置とが一体化された複合型のろ過脱塩装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や原子力発電所では、蒸気発生器等で給水を蒸気とし、蒸気でタービンを駆動することにより発電が行われる。タービンの駆動に使用した蒸気は、復水器で凝縮された後、復水処理システムにおいて復水処理が行われ、再び給水として蒸気発生器等に供給される。火力発電所や原子力発電所における復水処理システムは、大量の復水を処理できることを前提に、復水中の溶解性不純物(イオン性不純物)及び懸濁不純物(クラッド)を除去し、発電設備に必要な水質を安定的に確保することが求められる。これらのイオン性不純物やクラッドは、通常運転中の他、復水器で冷却水として使用している海水や湖沼水等が万一の漏洩によって復水系に流入した場合にも発生する。
【0003】
一般に、復水処理システムは、復水中のクラッドを除去するろ過装置と、復水中のイオン性不純物を除去する脱塩装置と、を有している。ろ過装置は、中空糸膜モジュール等のろ過材を備え、脱塩装置は、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とが充填された混床式の充填層を備えている。脱塩装置は、ろ過装置の後段に独立して設置されている。
【0004】
ろ過装置と脱塩装置を個別に設置すると、装置毎にタンク、ポンプ、バルブ、配管、制御盤等の機器が必要になると共に、装置の運転に必要な補給水、所内用空気及び計装用圧縮空気等のユーティリティ系の設備も必要となる。このため、設備費用が増大する他、ろ過装置及び脱塩装置の設置スペースを確保するため、建屋の建設費用が増加するという課題も生じる。このような課題に対処するため、ろ過装置と脱塩装置を一体化する技術が知られている。特許文献1は、中空糸膜の中空部にイオン交換樹脂を充填したろ過脱塩装置を開示している。特許文献2は、中空糸膜モジュールと共にイオン交換体をカラムに充填したろ過脱塩装置を開示している。特許文献3は、容器の内部を上下に分割し、上方エリアに中空糸膜モジュールを設置し、下方エリアにイオン交換体の充填層を設け、ろ過装置と脱塩装置とを一体化させたろ過脱塩装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−170363号公報
【特許文献2】特開昭62−83003号公報
【特許文献3】特開平8−117746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載のろ過脱塩装置は、ろ過装置と脱塩装置とが機能的に一体化されているため、イオン交換樹脂の充填や抜き取り、あるいは再生の操作が煩雑であり、メンテナンス性の面で制約が多い。特許文献3に記載のろ過脱塩装置は、ろ過装置と脱塩装置が一つの容器の中でエリア的に分離されているため、上述の問題は小さいが、装置自体の高さが極めて高くなる。全高の高いろ過脱塩装置を建屋内に配置するためには、当該エリアの階高を他のエリアの階高と異ならせたり、当該エリアだけ床スラブを抜いたりするなどの対処が必要となり、建屋設計への影響が大きい。一般にろ過脱塩装置では、装置本体の他、メンテナンスのための空間が装置の上方に必要となるため、全高の高いろ過脱塩装置はメンテナンス空間を含んだ高さ方向の必要スペースが増加しやすく、建屋設計への影響がさらに大きくなる。このため、建屋設計上、装置の全高が制限されて、復水処理量を賄うのに十分な容量を確保できなくなる可能性もある。
【0007】
このため、本発明は十分な処理容量と良好なメンテナンス性を確保しつつ、装置の高さを抑えることの容易なろ過脱塩装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明に係るろ過脱塩装置は、内部空間を有する外側容器と、外側容器の内部空間を上下方向に延びる内壁であって、内壁の内側をろ過室に、外側をイオン交換体が充填される脱塩室に仕切り、内壁の上方に位置する上部空間を介してろ過室と脱塩室とが連通する内壁と、脱塩室の側方位置で外側容器に開口する複数のイオン交換体充填配管と、を有している。
【0009】
このように構成されたろ過脱塩装置では、ろ過室と脱塩室が内壁の内側と外側に平面的に配置されるため、装置の高さを抑えることが容易である。このため、建屋の階高の制約を受けにくく、十分な処理量を確保することができる。ろ過室と脱塩室がエリア的に分離された構成のため、ろ過材及びイオン交換体を、従来と同様の専用のスペース(ろ過室及び脱塩室)に個別に設けることができるため、メンテナンスなどの手間も個別設置されるろ過装置及び脱塩装置と大きく変わるところがない。また、イオン交換体充填配管が複数個設けられているため、イオン交換体充填の際にイオン交換体が均一な充填高さで充填されやすく、メンテナンス性が一層向上する。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、十分な処理容量と良好なメンテナンス性を確保しつつ、装置の高さを抑えることの容易なろ過脱塩装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態にかかるろ過脱塩装置の縦断面図である。
【図2】図1に示すろ過脱塩装置の横断面図である。
【図3】図1のA部部分詳細図である。
【図4】図1のB部部分詳細図である。
【図5】垂れ壁の効果を示す模式図である。
【図6】イオン交換体充填配管とイオン交換体の抜き出しノズルの配置のバリエーションを示す模式的な平面図である。
【図7】イオン交換体保持板の変形例を示す模式図である。
【図8】イオン交換体保持板の変形例を示す模式図である。
【図9】イオン交換体保持板の変形例を示す模式図である。
【図10】垂れ壁の効果を示す模式図である。
【図11】フラッシング配管の変形例を示す模式図である。
【図12】フラッシング配管と堰とが組み合わされた変形例を示す模式図である。
【図13】他のフラッシング方法を示す模式図である。
【図14】本発明の他の実施形態にかかるろ過脱塩装置の縦断面図である。
【図15】イオン交換体保持板の変形例を示す模式図である。
【図16】イオン交換体保持板の変形例を示す模式図である。
【図17】フラッシングノズルの代替構成を示す模式図である。
【図18】イオン交換体充填配管とイオン交換体の抜き出しノズルの配置のバリエーションを示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のろ過脱塩装置の一実施形態について、図1〜5を用いて説明する。図1は、第一の実施形態にかかるろ過脱塩装置の縦断面図である。図2は、図1のII−II線に沿ったろ過脱塩装置の断面図である。図3は、図1のA部部分詳細図、図4は、図1のB部部分詳細図である。図5は、垂れ壁の効果を示す模式図である。
【0013】
(外側容器20及び上蓋30)
ろ過脱塩装置10は、内部空間12と上部開口31とを有する外側容器20を備えている。内部空間12は、脱塩室22とろ過室41とを含むいくつかの空間に分離されている。上部開口31には、上蓋30が開閉可能に取り付けられている。外側容器20及び上蓋30は圧力容器の一部をなす。このため、外側容器20は好ましくは円筒形状であり、上蓋30は好ましくは、ボルト等の内部圧力に耐えうる手段によって、外側容器20に取り付けられている。上蓋30は外側容器20に対し着脱可能(取り外し可能)に設けられているが、開閉のみが可能であるように、ヒンジなどによって取り付けられていてもよい。後述するように、上部開口31は、仕切板44、内壁40の上部部分40c、及び整流板36の取り出し及び取付けを可能とする開口寸法を有している。上蓋30には、着脱式の配管32が接続されている。
【0014】
(内壁40)
外側容器20の内部空間12には内壁40が設けられている。内壁40は本実施形態では概ね円筒形状であり、外側容器20と同心円状に設けられている。内壁40は外側容器20の底面まで上下方向に延びており、内壁40の内側をろ過材42が配置されるろ過室41に、内壁40の外側をイオン交換体が充填される脱塩室22に仕切っている。脱塩室22の下部は、イオン交換体が充填されるイオン交換体充填層21となっている。内壁40は、下端40aが全周で外側容器20の底部20cに達しており、内壁40の外側と内側とを完全に仕切っている。これに対し、内壁40の上端40bは外側容器20まで達しておらず、内部空間12で終端している。このため、ろ過室41と脱塩室22は、内壁40の上方に位置する外側容器20の上部空間34を介して連通している。
【0015】
図2に示す、内壁40の内径D2と、外側容器20の内径D1との比率は、被処理水の水質、ろ過材の種類及びイオン交換体の種類を勘案して決定することができる。一般に、D2/D1=2/10〜8/10の範囲で選択することが好ましく、より好ましくはD2/D1=4/10〜6/10である。このような範囲であれば、ろ過材によるクラッド除去性能と、イオン交換体による脱塩性能とのバランスを取り、被処理水を高度に浄化することができる。
【0016】
内壁40は上部部分40cと下部部分40dとを有している。下部部分40dは内壁40の下端40aから上部部分40cと下部部分40dとの接続部40eまで延びる、円筒形の固定構造物である。内壁40の上部部分40cは、接続部40eから上端40bまで延びる円筒形の構造物であり、内壁40の下部部分40dに対し取り外し可能に構成されている。下部部分40dの頂部40fと上部部分40cの底部40gは共にフランジが形成されており、上部部分40cはボルト及びナット(図示せず)によって、下部部分40dに対して取り外し可能に支持されている。上部部分40cの上端40b付近には後述する整流板36を支持する支持部であるブラケット40jが設けられている。
【0017】
上部開口31は、取り外された内壁40の上部部分40cを外側容器20の外部に取り出し可能な開口寸法を有している。具体的には、上部開口31の開口寸法をd1、ブラケット40jを含む上部部分40cの外径をd2としたときに、d1>d2の関係となっている。このため、ブラケット40jが固定された状態で、内壁40の上部部分40cを外側容器20から取り出すことができ、外側容器20の内部のメンテナンス終了後には、取り外した上部部分40cを上部開口31を通して、外側容器20の内部に取り付けることができる。なお、上部部分40cを取り外すためには、後述する手順で整流板36をあらかじめ取り外して、上部開口31から搬出しておく必要がある。
【0018】
内壁40は外側容器20と比べ、薄肉の構造物とすることができる。これは、本実施形態ではろ過室41と脱塩室22とが内壁40を介して平面配置されているため、内壁40には事実上、ろ過室41及び脱塩室22で発生する圧力損失に相当する差圧しか掛らないためである。本実施形態のろ過脱塩装置10は、特許文献3のようにろ過室と脱塩室を縦積みにする構造と比べて、復水系の系統圧力が内圧として掛る範囲を減らすことができる。復水系の系統圧力は、一例では約2.0〜3.0MPaである。これに対して、内壁40の上部部分40c(正確には、イオン交換体充填層21よりも上方部分)にはろ過室41で生じる差圧しか掛らない。この差圧は一例では約0.3MPaであり、復水系の系統圧力の約10分の1である。イオン交換体充填層21の下方、すなわち内壁40の下部部分40dには、ろ過室41及び脱塩室22で生じる差圧の合計が掛るが、いずれにしても復水系の系統圧力と比べて大幅に低い。このため、内壁40の物量を減らし、ろ過脱塩装置の設備コストの低減が可能となる。
【0019】
内壁40はわずかな差圧しか掛らないため、形状の自由度も高く、必要に応じて三角断面、四角断面、六角断面、八角断面などの多角形断面形状を採用することも容易である。ただし、差圧に対する耐圧性の確保や、後述するイオン交換体のフラッシング水流をスムーズに生じさせる観点からは、内壁40は円筒形またはこれに近い多角形断面形状であることが好ましい。
【0020】
(仕切板44)
内壁40の上端40bには仕切板44が支持されている。仕切板44は、内壁40の内側空間を覆ってろ過室41の頂面を画定する。仕切板44にはろ過材42に等しい数の流出口44aが設けられている。後述するように、ろ過材42の被処理水出口側である上端部は流出口44aによって保持され、上部空間34と連通している。仕切板44は、ろ過材42を保持するとともに、ろ過室41でろ過された被処理水をろ過室41から流出させる機能を有している。ろ過材42のメンテナンス時には、ろ過材42は仕切板44に装着されたまま上方のメンテナンスエリア(図示せず)に引き上げることができる。このため、上部開口31は、仕切板44を外側容器20の外部に取り出し可能な開口寸法を有している。
【0021】
(分散板48)
内壁40の下部部分40dにはろ過室41の底部を画定する分散板48が固定されている。分散板48は、例えばろ過材42と等しい数の貫通孔48aが設けられた、円形の部材である。分散板48の下方は外側容器20の底部20cの中央領域となっており、被処理水が供給される入口配管46に接続した入口ノズル45が設けられている。
【0022】
(ろ過材42)
ろ過材42としては、被処理水がろ過材42の上端面から流出可能な部材であれば限定されない。ろ過材42としては、中空糸膜モジュールや、円筒プリーツフィルタ等の外圧式フィルター等が好適に用いられ、中空糸膜モジュールが特に好適である。中空糸膜モジュールはろ過面積が大きく、ろ過室41をコンパクトに保ちながら大容量の復水を効率よく処理できる。
【0023】
中空糸膜モジュールの一例としては、複数の中空糸膜を長さ方向の両端で束ねた中空糸膜束が挙げられる。中空糸膜束を構成する各中空糸膜の上端は開口し、下端は閉止されている。各中空糸膜の上端開口は対応する流出口44aに固定され、上部空間34に連通している。中空糸膜モジュールの下端は分散板48から離間している。中空糸膜を透過し中空糸膜の内部(中空孔)に至った被処理水は、各中空糸膜の上端面から流出口44aを通って上部空間34に流出する。
【0024】
ろ過材42として円筒プリーツフィルタを用いる場合も同様の構成となる。すなわち、円筒プリーツフィルタは、上端面が流出口44aに接続されて、仕切板44に固定される。
【0025】
中空糸膜モジュールに用いられる中空糸膜は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルフォン(PS)、ポリエチレン(PE)等から形成することができる。
【0026】
両端に開口端面が形成された中空糸膜束を用いることもできる。この場合も、各中空糸膜の上端は流出口44aと接続されている。各中空糸膜の下端は、分散板48に設けられた流出口44aと同様の流出口(図示せず)を介して、分散板48の下方の集水部(図示せず)に接続されている。集水部は水路(図示せず)によって流出口44aと連通している。中空糸膜を透過し中空孔に至った被処理水の一部は、各中空糸膜の上端面から流出する。被処理水の残部は各中空糸膜の下端面から集水部に集められ、水路を通って、流出口44aに至り、最終的に上部空間34に流出する。
【0027】
(イオン交換体保持板28)
外側容器20の側壁と内壁40の外側面40hとの間には、脱塩室22と同一の断面を有するリング状のイオン交換体保持板28が設けられている。イオン交換体保持板28は、外縁が外側容器20の側壁20aに沿って、内縁が内壁40に沿って、周方向に連続的に延びている。イオン交換体保持板28の内側縁部28fは、内壁40の下部部分40dに溶接等の適宜の手段で固定支持されている。イオン交換体保持板28は脱塩室22の底面を画定するとともに、その上面28aでイオン交換体を保持し、イオン交換体充填層21を形成する。
【0028】
イオン交換体保持板28は、被処理水が流通する複数の開口28bを備えており、イオン交換体保持板28の開口28bには、図5に示すようなストレーナ部材28eが設けられている。ストレーナ部材28eは、充填されるイオン交換体がイオン交換樹脂の場合には、イオン交換樹脂の粒径より小さい目開きの貫通孔またはスリットが複数設けられた、樹脂製もしくは金属製のストレーナ部材である。ストレーナ部材28eは、イオン交換体の脱塩室22からの流出を防止するとともに、イオン交換されてイオン性不純物が除去された被処理水が脱塩室22から流出することを可能としている。
【0029】
イオン交換体保持板28の下方は外側容器20の底部20cの外周領域となっており、出口配管38に接続された出口ノズル37が設けられている。
【0030】
(整流板36)
外側容器20の側壁20aと内壁40の外側面40hとの間の、イオン交換体保持板28の上方には、脱塩室22の頂面を画定する整流板36が設けられている。整流板36は外側容器20の側壁20aと内壁40との間を、外縁が外側容器20の側壁20aに沿って、内縁が内壁40に沿って、周方向に連続的に延びる、イオン交換体保持板28と同様のリング状の構造物である。整流板36は仕切板44よりも若干下方に設けられている。このため、ろ過室41を出た被処理水は、仕切板44の流出口44aから流出した後、仕切板44の外側に位置する整流板36にオーバーフローする。整流板36に流れ込んだ被処理水は、整流板36の上面に分散して一時的に滞留し、液面がほぼ均一化される。整流板36には複数の開口36aが設けられており、整流板36の上面に一時的に滞留した被処理水は、各開口36aから脱塩室22に向けてほぼ均等な量で落下する。
【0031】
整流板36は、内壁40の頂部40bに取り付けられた支持部であるブラケット40jと、外側容器20の側壁20aのこれと同一高さに取り付けられた支持部であるブラケット20bとの間に跨るように、これらのブラケット40j,20bで支持されている。整流板36は6分割、8分割等の適宜の分割数で周方向に分割可能であり、個々の分割セグメントはブラケット20b,40jにボルト止めされている。分割セグメントの一例が図12に示されている。メンテナンス時には、分割セグメントごとに整流板36をブラケット20b,40jから取り外すことができる。上部開口31は、取り外され分割された整流板36を外側容器20の外部に取り出し可能な開口寸法を有している。整流板36を外側容器の中から取り出すには、ブラケット20b,40jに取り付けられている整流板36を分割セグメント毎に取り外し、上部開口31から搬出する。
【0032】
(イオン交換体)
充填層21に充填されるイオン交換体は、被処理水の水質を勘案して選択することができ、例えば、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、モノリス状多孔質イオン交換体が挙げられる。中でも、最も汎用的で、優れたイオン除去能力と高いイオン交換容量とを備え、かつ容易に再生が行えるイオン交換樹脂が好ましい。イオン交換樹脂としては、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂が挙げられる。陰イオン交換樹脂としては強塩基性陰イオン交換樹脂、弱塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられる。陽イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
イオン交換体の充填形態は、被処理水の水質と脱イオン水に求められる水質とを勘案して決定することができる。イオン交換体の充填形態としては、陰イオン交換体の単床形態、陽イオン交換体の単床形態、または陰イオン交換体と陽イオン交換体の混床もしくは複床形態を用いることができる。特に、陰イオン交換体と陽イオン交換体の混床形態は、復水中のイオン性不純物である陽イオン成分及び陰イオン成分を高度に除去できるため、好ましい。
【0034】
以上の説明から明らかなように、ろ過室41は、内壁40によって側方を画定され、仕切板44によって頂部を画定され、分散板48によって底部を画定された、外側容器20内の独立した空間として構成されている。同様に、脱塩室22は、外側容器20及び内壁40によって側方を画定され、整流板36によって頂部を画定され、イオン交換体保持板28によって底部を画定された、外側容器内20の独立した空間として構成されている。
【0035】
脱塩室22内には、イオン交換体が大量に充填されるが、特に、イオン交換樹脂が充填される場合は、ストレーナ部材28eの貫通孔やスリットが樹脂によって目詰まりなどを起こしやすい。ストレーナ部材28eはイオン交換体保持板28の上面28aから突き出すように設けられているため、ストレーナ部材28e同士の間に樹脂が滞留しやすいという問題もある。このため、イオン交換体保持板28については定期的なメンテナンスが必要である。この作業は、作業員が外側容器20の内部空間12に入って、手作業で行うのが一般的である。本実施形態のろ過脱塩装置10では、上述のように、内壁40の上部部分40cを、メンテナンス時に外側容器20の外部に取り出すことができる。つまり、仕切板44と、ろ過材42と、を外側容器20の外部に取り出した後、整流板36を取り外し、さらに内壁40の上部部分40cを取り出すことで、イオン交換体保持板28の周囲に広いスペースが確保される。整流板36を取り外すため、内部空間12の上部には、一部の配管を除きほとんど構造物がない状態となり、イオン交換体保持板28の上方にも広いスペースが確保される。この結果、作業員が内部空間12の中央部分から、外周部に位置するイオン交換体保持板28に容易にアクセスすることが可能となる。イオン交換体保持板28へのアクセス性が向上する結果、イオン交換体保持板28に残存した樹脂の除去やストレーナ部材28eの清掃といったメンテナンス作業を効率的に行うことができる。
【0036】
ろ過脱塩装置10は、通常運転の際は以下のように作動する。入口配管46から入口ノズル45を経由して外側容器20の底部空間20dに供給された被処理水は、分散板48を通過し、ろ過材42の外周部からろ過材42を透過し、ろ過材42の中空孔に至る。この間、主に、ろ過材42を透過できないクラッド等が除去される(ろ過処理)。ろ過材42の中空孔に至った被処理水は、中空孔を流通し、流出口44aから上部空間34に流出する。上部空間34に流入した被処理水は、整流板36を通過して内壁40と外側容器20の間に位置する脱塩室22に流入する。脱塩室22では、被処理水は充填層21のイオン交換体内を拡散しながら流通し、主に被処理水中のイオン性不純物である陽イオン成分と陰イオン成分とが除去される(脱塩処理)。こうして、ろ過処理によりクラッドが高度に除去され、脱塩処理によりイオン性不純物が高度に除去された処理水は、出口ノズル37からろ過脱塩装置10の外部に流出し、出口配管38を介して、例えば、蒸気発生器等の使用点に送られる。
【0037】
ろ過脱塩装置10でろ過と脱塩の一方の処理だけを行う場合には、配管32を利用することができる。ろ過だけを行い脱塩室22をバイパスする場合は、出口配管38に設けられたバルブ(図示せず)を閉止するとともに配管32に設けられたバルブ(図示せず)を開放する。上述の手順で処理水を入口配管46から供給すると、ろ過室41でろ過された被処理水は脱塩室22に流入することなく、配管32からろ過脱塩装置10の外部に流出する。脱塩だけを行いろ過室41をバイパスする場合は、入口配管46に設けられたバルブ(図示せず)を閉止するとともに、配管32に設けられたバルブ(図示せず)を開放する。そして、配管32からろ過脱塩装置10に被処理水を供給する。これによって、被処理水はろ過室41をバイパスして直接脱塩室22に流入し、上記の手順で脱塩処理を受けた後、出口ノズル37を介して、出口配管38から流出する。
【0038】
被処理水のろ過処理及び脱塩処理を継続すると、ろ過材42の外周部にクラッド等が付着する。この現象によって、被処理水の透過率が下がると共に差圧が高くなり、ろ過効率が低下する。また、脱塩室22では、充填層21のイオン交換体のイオン交換容量が飽和し、イオン性不純物が処理水に漏洩する。このような場合には、ろ過材42の逆洗及びイオン交換体の再生を行う。
【0039】
ろ過材42の逆洗のため、ろ過脱塩装置10は、分散板48の下方に開口する空気供給配管50と、ろ過室41の上部に開口する空気排出配管52と、を備えている。ろ過材42の逆洗は以下のように行われる。まず、空気供給配管50から、空気を分散板48の下方空間(底部空間20d)に供給する。供給された空気は水中を上昇し、分散板48を通過する。空気は分散板48を通過する際に気泡となり、気泡の状態でろ過室41内を上昇する。この気泡によって、ろ過室41内の水中にエアリフト上昇流が生起される。エアリフト上昇流は、ろ過材42の外周面にせん断力を加え、ろ過材42に対しエアスクラビング洗浄を行う。このエアスクラビング洗浄によって、ろ過材42の外周面に付着したクラッド等が剥離されて、ろ過室41内の水に分散される。そして、ろ過室41内に放出された空気は、空気排出配管52を流通して外側容器20の外部に排出される。
【0040】
イオン交換体の再生には、イオン交換体の抜き出しと充填が必要となる。イオン交換体の抜き出しのため、イオン交換体の抜き出しノズル26が設けられている。抜き出しノズル26は外側容器20の側壁20aにおいて、イオン交換体保持板28の上面28a付近(充填層21の底部付近)に開口している。イオン交換体の充填のため、整流板36の下方で、充填層21の上方にはイオン交換体を充填するイオン交換体充填配管24が設けられている。イオン交換体充填配管24は脱塩室22の上部位置に開口している。イオン交換体充填配管24は、運転モードを切り替えることによって、イオン交換体の抜き取り時に樹脂のフラッシング水を供給することもできる。イオン交換体充填配管24から送出されたフラッシング水は、イオン交換樹脂をイオン交換体保持板28の上面に沿って周方向に押し流す水流となる。
【0041】
図6は、イオン交換体充填配管24とイオン交換体の抜き出しノズル26の配置のバリエーションを示す模式的な平面図である。イオン交換体充填配管24とイオン交換体の抜き出しノズル26は、同図(a)に示すように、互いに180度の間隔で1つずつ設けることもできる。同図(b)に示すように、互いに90度の間隔で交互に2つずつ設けることもできる。同図(c)に示すように、互いに45度の間隔で交互に4つずつ設けることもできる。図示は省略するが、イオン交換体充填配管24とイオン交換体の抜き出しノズル26の個数を互いに異ならせることも可能である。
【0042】
イオン交換体の再生は以下のように行われる。まず、イオン交換体充填配管24を適宜の方法で空気供給源に切換え、イオン交換体充填配管24から、脱塩室22の充填層21の上方に空気を供給すると共に、出口ノズル37から、脱塩室22に補給水を供給する。こうして、補給水と空気を供給しながら、充填層21のイオン交換体を抜き出しノズル26から外側容器20の外部に抜き出す。抜き出したイオン交換体は、図示されない再生槽へ移送される。移送されたイオン交換体は、再生剤に浸漬され、あるいは、再生剤が通液されることで、イオン交換体に吸着したイオン性不純物が溶離される(溶離処理)。再生されたイオン交換体は、洗浄水で洗浄されて、再生剤が除去される(洗浄処理)。
【0043】
洗浄処理されたイオン交換体は、イオン交換体充填配管24により、脱塩室22に設けられたイオン交換体保持板28の上に充填される。この間、余剰な水は出口ノズル37から排水される。外側容器20内の余剰な空気は、配管32から排出される(以上、再生工程)。こうして、イオン交換体の再生が行われる。
【0044】
イオン交換体の表面に付着したクラッド等の除去を行うために、イオン交換体の逆洗を行うことができる。この目的で、ろ過脱塩装置10は、イオン交換体保持板28の下方に位置し外側容器20に開口する空気供給ノズル29を備えている。イオン交換体の逆洗は以下のように行われる。まず、空気供給ノズル29から、脱塩室22のイオン交換体保持板28の下方に空気を供給する。供給された空気は、イオン交換体保持板28を通過する際に気泡となって、脱塩室22内を上昇する。この間、気泡のエアリフト上昇流により、充填層21のイオン交換体のエアスクラビング洗浄が行われる。こうして、イオン交換体の表面の付着物は、剥離されて、脱塩室22内の水に分散される。脱塩室22内を上昇した気泡は、整流板36を通過し上部空間34に至り、上部空間34から配管32を通って外側容器20の外部へ排気される。
【0045】
上述のように、イオン交換体の再生のためには、イオン交換体の抜き出しと充填が必要である。しかし、脱塩装置内には大量のイオン交換体が充填されるため、イオン交換体を効率よく抜き取ることが重要である。特にイオン交換樹脂を用いた場合には、上述のように樹脂の抜き取りの際にイオン交換体保持板28に樹脂が残留しやすく、抜き出し効率の向上が望まれる。そこで、本発明のろ過脱塩装置10は、これらの作業を効率化するために、さらにフラッシングノズル27とフラッシング配管33を備えている。
【0046】
(フラッシングノズル27)
イオン交換体保持板28の上方には、外側容器20の側壁20aに開口するフラッシングノズル27が設けられている。フラッシングノズル27は、イオン交換体の抜き取り時に外側容器20の側壁20a側から水平方向に送出され、イオン交換樹脂をイオン交換体保持板28の上面に沿って周方向に押し流す水流を供給する。フラッシングノズル27の下端はイオン交換体保持板28の上面よりわずかに上方(例えば10mm程度。)に位置している。これによって、イオン交換体保持板28の上面をフラッシング水で覆うとともに、イオン交換体保持板28の上面付近に滞留する樹脂に直接的に水流を加えることが可能となり、樹脂のフラッシング効率を高めることができる。フラッシングノズル27の向きは特に限定されないが、ノズルの製作性からは、図2に示すように、外側容器20の側壁20aに対して垂直となる向きに設けることが好ましい。この結果、水流も内壁40に対して垂直となるように流れ、内壁40に衝突した水流は左右2方向に均等に分岐する。従って、水流をフラッシングに効果的に利用することができる。
【0047】
フラッシングノズル27の位置は特に限定されないが、フラッシングノズル27はイオン交換体の抜き出しノズル26からできるだけ離れた位置に設けることが望ましい。フラッシングノズル27とイオン交換体の抜き出しノズル26を各々1つずつ設ける場合は、図2に示すように、互いに180度の間隔で設けることによって、左右に分岐した水流の各々を有効に利用することができる。フラッシングノズル27の個数も特に限定されない。コストの面からは1つだけ設けることが望ましいが、フラッシング効率を高めるために、複数個のフラッシングノズル27を設けることもできる。この際、図示は省略するが、フラッシングノズル27とイオン交換体の抜き出しノズル26の位置関係は図6と同様に考えることができる。すなわち、図6(a)〜(c)において、イオン交換体充填配管24をフラッシングノズル27に読み替えることができる。
【0048】
(フラッシング配管33)
脱塩室22内には、外側容器20を貫通し、整流板36の下方を延びて、内壁40の外側面40hの頂部付近に開口するフラッシング配管33が設けられている。フラッシング配管33は、内壁40の外側面40hに沿って下降する水流を供給する。この水流は、イオン交換体保持板28の上面に到達すると、そこから左右に広がり、樹脂をイオン交換体保持板28に沿って周方向に押し流す。すなわち、フラッシング配管33は、フラッシングノズル27とともにイオン交換体保持板28に沿ったフラッシング水流を生成する機能を有している。従って、機能的にはいずれかを省略することも可能である。
【0049】
これらのフラッシングノズル27及びフラッシング配管33を用いてフラッシングを行う場合、フラッシング水としては、脱気超純水を用いることが望ましい。これは溶存酸素の多い水を使用すると樹脂が酸化劣化を起こす可能性が高いためである。複数基のろ過脱塩装置を入口ヘッダ配管及び出口ヘッダ配管で並列に接続し、一部のろ過脱塩装置の運転を継続しながら、他の一部のろ過脱塩装置のメンテナンスを行う場合は、出口ヘッダ配管を流通する処理水を用いることができる。具体的には、出口ヘッダと各ろ過脱塩器10のフラッシングノズル27及びフラッシング配管33とを接続する接続配管をあらかじめ設けておく。メンテナンス対象のろ過脱塩器10を、ヘッダ配管からの分岐部に設けられた弁を閉止することによって隔離する。出口ヘッダの水は運転中のろ過脱塩装置10によって処理され、脱気超純水となっている。そこで、接続配管に出口ヘッダの水を流通させ、フラッシングノズル27及びフラッシング配管33に脱気超純水を供給する。
【0050】
(空気供給ノズル29)
前述のように、空気供給ノズル29はイオン交換体の逆洗の際に、イオン交換体保持板28の下方空間に空気を供給する。イオン交換樹脂の抜き取り時にはこの空気供給ノズル29を利用することができる。具体的には、フラッシングノズル27及びフラッシング配管33(またはいずれか一方)からのフラッシング水で、樹脂をイオン交換体保持板28上で押し流すとともに、イオン交換体保持板28の下方から、複数の開口28bを通して気泡を脱塩室22に進入させ、イオン交換樹脂を流動化し攪拌する。これらの相互作用によって、ストレーナ部材28eに詰まった樹脂や、ストレーナ部材28e同士の間に滞留したイオン交換樹脂を浮き上がらせ、効率よくフラッシングすることができる。
【0051】
図5を参照すると、イオン交換体保持板28の下面28gには、イオン交換体保持板28の開口28bの周囲に沿って下方に延びる筒状の垂れ壁28dが設けられている。垂れ壁28dは、空気供給ノズル29の開口下端29aよりも下方まで延び、貫通孔28fを備えている。このような垂れ壁28dを設けることで、個々の開口28bが空気供給ノズル29に対して遮蔽されるため、空気流が開口28bに直接流入することが防止される。また、垂れ壁28d同士の間に貫通孔28fが形成されているため、垂れ壁28dの内外の空間が互いに連通する。空気層49は、貫通孔28fの圧力損失に応じて形成され、同量の空気が貫通孔28fを介して垂れ壁28dに流入し、脱塩室22に侵入する。このようにして、気泡はイオン交換体保持板28の全域から均等に脱塩室22に進入する。
【0052】
垂れ壁28dがない場合、特定の開口28b(特に、空気供給ノズル29に対して直視可能な位置にある開口28b)に空気が流れやすくなる。このため、空気流の一種のショートカットが生じて、気泡の分布がイオン交換体保持板28上の位置によってばらつく可能性がある。垂れ壁28dを設けることによって、空気流が分散され、気泡の分布が均一化される。空気供給ノズル29は従来から設置されていたイオン交換体逆洗用の配管を用いるため、新たな設備を設ける必要はない。
【0053】
垂れ壁28dは、空気流を分散し、気泡を各開口28bから均等に流出させるので、イオン交換体の逆洗の際にも有効に機能する。
【0054】
以上説明したフラッシングノズル27、フラッシング配管33及び空気供給ノズル29は、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0055】
(他の実施形態)
(樹脂面平坦化ノズル39)
イオン交換体の再生のためには、イオン交換体の再充填が必要となる。しかし、イオン交換樹脂を用いる場合、イオン交換樹脂は粒状体であるため、流動性が低く、充填量(充填高さ)が特に周方向でばらつくという問題がある。すなわち、一般に粉体が堆積する際には、粉体は自発的に崩れることなく安定を保つ斜面角度(安息角)で山状に堆積することが知られており、イオン交換樹脂についても例外ではない。この現象は、主に充填量の周方向におけるばらつきにつながる。イオン交換樹脂の充填量の少ない(充填高さの低い)位置ではイオン交換容量が早期に飽和するため、結果として装置全体のイオン交換時期が早められることになる。一方、イオン交換樹脂の充填量の多い(充填高さの高い)位置では、イオン交換樹脂はまだ飽和しておらず、無駄にイオン交換樹脂の再生処理を行うことになりかねない。
【0056】
そこで、本発明のろ過脱塩装置10は、イオン交換樹脂をできるだけ平坦に充填するため、樹脂面平坦化ノズル39をオプションとして備えることができる。図1に破線で示すように、樹脂面平坦化ノズル39は、脱塩室22の側方位置で外側容器20に開口しており、概ね水平方向に空気流を供給する。樹脂面平坦化ノズル39の位置は、イオン交換体が平坦に充填された時のイオン交換体の頂面位置(すなわち、均された後の頂面位置。)より上方にある。イオン交換樹脂の充填高さが周方向あるいは径方向にばらついている場合、樹脂面平坦化ノズル39で水平方向に空気流を供給することで、充填高さのばらつき、不均一が徐々に均され、平坦な樹脂充填面が得られる。樹脂面平坦化ノズル39の個数は限定されず、1つだけでもよいし、必要に応じて複数個設けることもできる。
【0057】
イオン交換樹脂をできるだけ平坦に充填するためには、イオン交換体充填配管24を複数個設けることの望ましい。イオン交換体充填配管24を複数個設ける場合には、イオン交換体の充填の際に複数のイオン交換体充填配管24を切り替えながらイオン交換体を供給することが望ましい。経時的にイオン交換体充填配管24を切り替えることによって、複数の箇所でイオン交換体を充填できるため、充填高さのばらつきを抑えることができる。そのために、複数のイオン交換体充填配管24を設ける場合、図6(b),(c)に示すように、これらを切換え手段47によって切換えることが有効である。切換え手段47の態様は限定されないが、一例として、三方弁、四方弁やこれらの組み合わせを用いることができる。
【0058】
(イオン交換体保持板28の代替構造)
樹脂の引き抜き効率を高めるためには、図7〜9に示すように、イオン交換体保持板28に傾斜をつけることが望ましい。イオン交換体保持板28は全体的に傾斜している方が望ましいが、一部だけが傾斜しても一定の効果は得られる。以下にいくつかの実施形態を示すが、いずれの形態でも、抜き出しノズル26はイオン交換体保持板28の上面の最低位置付近に設けられていることが好ましい。なお、図7〜9において、(a)はイオン交換体保持板の斜視図を、(b)は断面図を示す。
【0059】
図7を参照すると、イオン交換体保持板28は、内壁40の外側面40hの各位置からこれと対向する外側容器20の側壁20aの各位置まで下り傾斜となっている。すなわちイオン交換体保持板28は、その内周側が外周側よりも高くなっている。イオン交換体保持板28の全体的な形状は、円錐台の側面部の形状に等しい。本実施形態では、抜き出しノズル26の位置及び個数は特に限定されない。
【0060】
フラッシング配管33からの水流は内壁40に沿って流れるため、イオン交換体保持板28に傾斜を設けることによって、樹脂をイオン交換体保持板28の内周側から外周側に効率的に移行させることができる。このため、フラッシング水をイオン交換体保持板28の周方向だけでなく、径方向にも効率的に行き渡らせ、フラッシング効果を高めることができる。さらに、イオン交換体保持板28と外側容器20の側壁20aとの間にフラッシング水が流通する溝状の経路が形成されるため、フラッシング水による樹脂の運搬効率が高まる。そして、溝状の経路に沿って運搬された樹脂は、イオン交換体保持板28の外周側に設けられている抜き出しノズル26から効率よく排出される。
【0061】
図8を参照すると、イオン交換体保持板28は、内壁40の外側面40hの互いに対向する2つの位置63a,63bを通る稜線53を挟んで互いに反対方向に下り傾斜となる2つの仮想面54a,54bの面内に位置している。イオン交換体保持板28の全体的な形状は、リングをその中心線に沿って折り曲げた形状である。仮想面54a,54bは本実施形態では平面であるが、曲面であっても構わない。抜き出しノズル26はイオン交換体保持板28の上面の、各仮想面54a,54bにおける最低位置55a,55bの付近に各々位置している。フラッシング水は稜線53を分水嶺として分流し、2つの仮想面54a,54bに沿ってイオン交換体保持板28の上を流れ、各々の抜き出しノズル26から排出される。本実施形態では、フラッシング配管33は、稜線53を形成する位置63a,63bの上方に位置していることが望ましい。
【0062】
図9を参照すると、イオン交換体保持板28は、一方向に傾斜した仮想面56の面内に位置している。イオン交換体保持板28の全体的な形状は、リングをその法線が鉛直線に対して傾くように傾斜させた形状である。仮想面56は本実施形態では平面であるが、曲面であっても構わない。抜き出しノズル26はイオン交換体保持板28の上面の最低位置57の付近に位置している。フラッシング水は仮想面56に沿ってイオン交換体保持板28の上を流れ、ただ一つ設けられた抜き出しノズル26から排出される。本実施形態では、フラッシング配管33はイオン交換体保持板28の上面の最高位置の上方に位置していることが望ましい。
【0063】
(垂れ壁の代替構造)
垂れ壁の代替構造として、空気流遮蔽壁を利用することもできる。図10を参照すると、イオン交換体保持板28の下面には、開口28bを空気供給ノズル29に対して遮蔽する空気流遮蔽壁28cが設けられている。空気流遮蔽壁28cは、空気供給ノズル29といずれの開口28bとの間にも直視の関係が生じないように、その位置及び形状が選択されている。このため、図10に示すように、空気供給ノズル29から流入した空気は一旦空気流遮蔽壁28cに衝突し、そこから四方に広がり拡散される(空気の流れを矢印で示している。)。空気がこのように拡散されるため、供給する空気の量を適切に調整することによって、イオン交換体保持板28の下面のほぼ全域に定常的な空気層49を形成することができる。空気供給ノズル29から供給された空気は、直接開口28bから脱塩室22に進入することなく、一旦空気層49に吸収される。そして、空気層49に含まれる空気が徐々に開口28bから脱塩室22に進入していく。このような現象が生じる結果、複数の開口28bの各々から同程度の量の空気が脱塩室22に進入する。イオン交換体保持板28の位置によらず、その上にあるイオン交換樹脂が攪拌されやすくなるため、全体的な攪拌効果が増大する。空気流遮蔽壁28cは垂れ壁28dの代替構造として設けることもできるが、両者を併用することも可能である。なお、図5と同様、空気の流れは矢印で示している。
【0064】
(下向き水流の他の供給手段)
樹脂のフラッシング効率を高めるためには上述のように内壁40に沿った下降水流を供給することが有効である。この下降水流の実現手段として、さらに下記に示すような実施形態が可能である。
【0065】
図11を参照すると、2本のフラッシング配管58が互いに対向する方向から外側容器20を貫通し、整流板36の上方を延びて、内壁40の外側面40hの頂部付近に開口している。図12を併せて参照すると、整流板36の上面に位置し、内壁40の一部に沿って設けられた堰59が設けられている。堰59は、整流板36の複数の開口36aを内壁40とともに包囲する枡状の形状をなしており、フラッシング配管58は堰59の内側に開口している。枡状の堰59に流入したフラッシング水は、開口36aを通って内壁40沿いに落下する。
【0066】
この実施形態は、フラッシング水の角度位置が堰59の位置によって規定されるため、特定の角度位置に下降水流を形成する場合に有利である。すなわち、フラッシング水は一旦堰59の内部に保持され、液位が均一化され、その後、整流板36の複数の開口36aから下降していくため、下降水流の形成される角度範囲を極めて厳密に制御することができるとともに、当該角度範囲に渡って均一な下降流を形成することができる。特に、図8,9に示す傾斜付きのイオン交換体保持板28を用いた場合には、抜き取りノズル26の位置が限定されるため、本実施形態と組み合わせて適用することで大きな効果が得られる。
【0067】
例えば、図8に示す実施形態の場合、抜き取りノズルは各仮想面54a,54bの最低位置55a,55bの近傍に設けられる。これに対して堰59は、各仮想面54a,54bの最高位置に相当する稜線53の上方位置で、稜線53を跨ぐように設けることが好ましい。このように堰59の位置を決めることで、各堰59から下降するフラッシング水はイオン交換体保持板28に到達すると、稜線53の両側に分流し、仮想面54a,54bにそって各々の最低位置55a,55bに向けて流れる。つまり、2つの堰59とイオン交換体保持板28の稜線53とを利用して4つのフラッシング流を生成し、イオン交換体保持板28の全周を効率的にフラッシングすることができる。
【0068】
堰59は、分割方式の整流板36と組み合わせることも可能である。この場合、図12に示すように、堰59を整流板36の分割セグメント36bの一つにだけ設けるようにすれば、整流板36の取付け、取り外しが容易となる。
【0069】
フラッシング水はろ過室41の内部を通して供給することもできる。図13を参照すると整流板36の上面に堰60が設けられている。この堰60は図11,12の枡状の堰59と異なり、内壁40の全周に沿って内壁40と同心円状に設けられ、整流板36の開口を内壁40とともに包囲している。このような堰60を設ける場合、入口配管46をフラッシング水の供給源として用いることができる。すなわち、前述のように入口配管46は、外側容器20の底部20cを貫通し、ろ過室41の被処理水入口側に開口している。従って、入口配管46からフラッシング水を供給すると、フラッシング水はろ過室41内に充満し、さらに内壁40の外側にオーバーフローする。オーバーフローしたフラッシング水は、内壁40の全周に沿って設けられた堰60によってせき止められ、開口36aから内壁40の外側面40hに沿って落下する。フラッシング水の流量を調整することによって、堰60からのオーバーフローを防ぎながら、内壁40の外側面40hに沿った定常的な下降流を形成することができる。図13において、フラッシング水の流れは矢印で示している。この下降水流は内壁40の全周に沿って形成される。このようなフラッシング方法を採用する場合、ろ過室41内は仕切板44及びろ過材42が取り外されて、空洞状態となっていることが望ましい。
【0070】
本実施形態では、堰60を用いているが、フラッシング流量を適切に調整すれば堰60を省略することも可能である。この場合、内壁40の外側にオーバーフローしたフラッシング水は、そのまま内壁40の外側面40hに沿って落下する。
【0071】
フラッシング水として用いる水は特に限定されないが、上述の各実施形態において用いるフラッシング水を、配管61及び弁62を介して入口配管46につなぎこんで利用することが望ましい。
【0072】
以上の実施形態では下向き水流を内壁40に沿って供給し、樹脂は外側容器20の側壁20aから抜き出していたが、この関係を逆にすることもできる。図14を参照すると、イオン交換体の抜き出し口は、イオン交換体保持板28の内周側に設けられている。具体的には、樹脂の抜き出し管70が、イオン交換体保持板28の上面に開口し、外側容器20の底部20cを貫通するように設けられている。このような構成の抜き出し管70は、イオン交換体保持板28上の水位が下がっても樹脂を抜き取ることが容易である。重力を利用しているため、フラッシング水の流速が遅くても、抜き取りノズルを側壁20aに設ける場合と比べて移送効率が高い。一方、外側容器20の側壁20aには、側壁20aに沿って延びるリング状の流路64が設けられている。流路64は側壁20aを一周していてもよいし、途中で終端していてもよい。流路64には外側容器20の側壁20aを貫通する水供給管65が接続されており、フラッシング水が供給される。流路64にはスプレイノズル66が下向きに設けられている。スプレイノズル66は、イオン交換樹脂の抜き取り時に、例えば90度〜120度程度のスプレイ角度でフラッシング水を噴霧する。フラッシング水の一部は外壁20の側壁20aに衝突し、そのまま下向きの水流となって、側壁20aに沿って降下する。広角度のスプレイ角度をもったスプレイノズル66で噴霧することによって、側壁20aの広い角度範囲にフラッシング水を噴霧することができる。スプレイノズル66は所定の間隔で、複数個設けられていることが好ましい。また、下向き水流の形成される角度範囲は減少するが、スプレイノズル66の代わりに、流路64に単純な開口を側壁20aを向くように設けてもよい。下向き水流が外側容器20の側壁20aに沿って形成されるため、イオン交換体保持板28に達した水流はイオン交換体保持板28を半径方向内方(外側容器20の中心方向)に流れる。このため、フラッシング水が半径方向内方に流れるに従い流路が絞られ、流速が増えていく。この結果、水流の流れが速くなり、あるいは水流の速度が維持されて、樹脂が押し流されやすくなる。
【0073】
イオン交換体保持板28は平坦でもよいが、図7、8に示すのと同様の傾斜を設けることができる。
【0074】
図15を参照すると、イオン交換体保持板28は、外側容器20の側壁20aの各位置からこれと対向する内壁40の外側面40hの各位置まで下り傾斜となっている。すなわちイオン交換体保持板28は、その外周側が内周側よりも高くなっている。イオン交換体保持板28の全体的な形状は、円錐台の側面部の形状に等しく、図7に示す全体的な形状を転置したものとなっている。本実施形態では、抜き出し管70の位置及び個数は特に限定されない。
【0075】
図16を参照すると、内壁40の外側面の互いに対向する2つの位置73a,73bを通る線74を挟んで互いに反対方向に上り傾斜となる2つの仮想面54a,54bの面内に位置している。イオン交換体保持板28の全体的な形状は、リングをその中心線に沿って折り曲げた形状であるが、図8とは折り曲げる方向が逆になっている。仮想面54a,54bは本実施形態では平面であるが、曲面であっても構わない。抜き出し管70は線74上にある2つの位置73a,73b(これらは最低位置にある。)の付近に各々位置している。フラッシング水は2つの仮想面54a,54bに沿ってイオン交換体保持板28の上を線74に向けて流れ、抜き出し管70から排出される。本実施形態では、スプレイノズル66は、2つの仮想面54a,54bの各々の最高位置55a,55bの上方に位置していることが望ましい。
【0076】
流路とスプレイノズルを備えた同様の構造は、フラッシング水供給手段にも適用できる。図14を参照すると、外側容器20の側壁20aに沿って延びる流路67が設けられている。流路67に接続されたフラッシング水供給管69が外側容器20の側壁20aを貫通しており、フラッシング水が供給される。流路67の内壁40を向いた位置には開口またはスプレイノズル68が設けられている。スプレイノズル68を設けた場合、フラッシング水の一部は水平に噴霧(送出)され、内壁40に衝突し、イオン交換体保持板28に沿って周方向に流れる水流が形成される。他の一部はイオン交換体保持板28の上面に直接噴霧される。イオン交換体保持板28の上面は樹脂の抜き出しの際に最後まで樹脂が滞留しやすい部位である。この部位に直接的な水流を供給することで、イオン交換体保持板28の上面に残留した樹脂を効果的に回収することができる。なお、流路は側壁とは独立した配管要素として設けてもよいが、図17に示すように、側壁20aの一部を利用したボックス構成71としてもよい。
【0077】
さらに、図18は、イオン交換体充填配管24とイオン交換樹脂の抜き出し管70の配置のバリエーションを示す、図6と同様の、模式的な平面図である。図6に示したのと同様に、イオン交換体充填配管24と抜き出し管70は交互に、好ましくは互いに等間隔で配置することが望ましい。図示は省略するが、スプレイノズル66,68と抜き出し管70の位置関係についても図6と同様に考えることができる。すなわち、図18(a)〜(c)において、イオン交換体充填配管24をスプレイノズル66,68に読み替えることができる。
【0078】
同様の構造は図1に示す実施形態にも適用できる。図1の構成においては、フラッシング配管33の先端は単純な開口となっているが、フラッシング配管33の先端に図14に示すのと同様のリング状の配管を接続し、この配管にスプレイノズルまたは開口を設けるようにしてもよい。
【0079】
以上、本発明の様々な実施形態を説明したが、これらの実施形態は互いに組み合わせて適用できることは言うまでもない。また、本実施形態では、内壁40の内側がろ過室41に、外側が脱塩室22に仕切られているが、内壁40の内側をイオン交換体が充填される脱塩室22に、外側をろ過室41に仕切っていてもよい。このような構成でも整流板36や内壁40の上部部分40cを取り出し可能な構成とすることは可能である。
【0080】
内壁の上部部分40cと下部部分40dは、イオン交換体保持板28を介して接続するように(つまり、上部部分40cと下部部分40dの間にイオン交換体保持板28が介在するように)構成してもよい。すなわち、イオン交換体保持板28を内壁40よりも内側まで延長し、イオン交換体保持板28の下面と内壁の下部部分40dとを溶接等で固定し、イオン交換体保持板28と上部部分40cとボルトによって着脱可能に接続しても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0081】
10 ろ過脱塩装置
12 内部空間
20 外側容器
21 イオン交換体充填層
22 脱塩室
24 イオン交換体充填配管
26 抜き出しノズル
27 フラッシングノズル
28 イオン交換体保持板
28c 空気流遮蔽壁
29 空気供給ノズル
30 上蓋
31 上部開口
33 フラッシング配管
36 整流板
39 樹脂面平坦化ノズル
40 内壁
40c 上部部分
40d 下部部分
41 ろ過室
44 仕切板
48 分散板
59,60 堰

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有する外側容器と、
前記外側容器の前記内部空間を上下方向に延びる内壁であって、該内壁の内側をろ過室に、外側をイオン交換体が充填される脱塩室に仕切り、該内壁の上方に位置する上部空間を介して前記ろ過室と前記脱塩室とが連通する内壁と、
前記脱塩室の側方位置で前記外側容器に開口する複数のイオン交換体充填配管と、
を有する、ろ過脱塩装置。
【請求項2】
イオン交換体の充填の際に前記複数のイオン交換体充填配管を切り替えながらイオン交換体を供給するようにされた、前記複数のイオン交換体充填配管の切換え手段を有している、請求項1に記載のろ過脱塩装置。
【請求項3】
前記脱塩室の側方位置で前記外側容器に開口し、イオン交換体が平坦に充填された時のイオン交換体の頂面位置より上方に設けられた、樹脂面平坦化用の空気を供給する樹脂面平坦化ノズルを有している、請求項1または2に記載のろ過脱塩装置。
【請求項4】
前記外側容器の側壁と前記内壁の外側面との間を連続的に延びて前記脱塩室の底面を画定するとともに、上面でイオン交換体を保持し、被処理水が流通する複数の開口を備えたイオン交換体保持板と、
前記イオン交換体保持板の下方位置で前記外側容器に開口する空気供給ノズルであって、該空気供給ノズルから供給された空気が前記複数の開口を介して前記脱塩室に進入することによって、充填されたイオン交換体を攪拌する空気供給ノズルと、
を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のろ過脱塩装置。
【請求項5】
前記空気供給ノズルといずれの前記開口との間にも直視の関係が生じないように、前記開口を前記空気供給ノズルに対して遮蔽する空気流遮蔽壁を有している、請求項4に記載のろ過脱塩装置。
【請求項6】
前記イオン交換体保持板の下面に、前記イオン交換体保持板の前記開口の周囲に沿って前記空気供給ノズルの開口下端よりも下方まで延び、貫通孔を備えた筒状の垂れ壁を有している、請求項4または5に記載のろ過脱塩装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−161336(P2011−161336A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24615(P2010−24615)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】