説明

アキシャルギャップモータ

【課題】コギングトルクを低減することができるアキシャルギャップモータを提供する。
【解決手段】アキシャルギャップモータは、軸方向に延びるとともに周方向に複数設けられるティース13bとティース13bにそれぞれ巻回された巻線14とを有するステータと、ティース13bの軸方向第1端部と軸方向に対向する永久磁石を有するロータとを備える。複数のティース13bは軸方向第2端部側で基部13aにて連結され、基部13aには、周方向に隣り合う2つのティース13bの周方向の中間位置且つ径方向外側にずれた位置で軸方向のロータ側に延びる突起部13cが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータの巻線とロータの永久磁石とが軸方向に対向したアキシャルギャップモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アキシャルギャップモータのステータとしては、特性向上を図るべく、軸方向に延びるとともに周方向に複数設けられ、巻線が巻回されるティース(鉄心)を有したものがある(例えば、特許文献1参照)。又、このアキシャルギャップモータは、ティースの軸方向第1端部と軸方向に対向する永久磁石を有する第1のロータと、ティースの軸方向第2端部と軸方向に対向する永久磁石を有する第2のロータとを備え、それら第1及び第2のロータにおける各永久磁石を互いに周方向にずらすことでコギングトルクの低減が図られている。
【特許文献1】特開2006−288012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記したようなアキシャルギャップモータでは、ティースの軸方向両端部側(第1端部側及び第2端部側)にそれぞれロータ(第1及び第2のロータ)が配設されるものに特定され、ティースの軸方向第1端部側のみにロータが配設されるものについては、コギングトルクを低減することができないという問題がある。
【0004】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、コギングトルクを低減することができるアキシャルギャップモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明では、軸方向に延びるとともに周方向に複数設けられるティースと前記ティースにそれぞれ巻回された巻線とを有するステータと、前記ティースの軸方向第1端部と軸方向に対向する永久磁石を有するロータとを備えたアキシャルギャップモータであって、複数の前記ティースは軸方向第2端部側で基部にて連結され、前記基部には、周方向に隣り合う2つの前記ティースの周方向の中間位置且つ径方向にずれた位置で軸方向の前記ロータ側に延びる突起部が設けられた。
【0006】
同構成によれば、ティースを軸方向第2端部側で連結する基部には、周方向に隣り合う2つのティースの周方向の中間位置且つ径方向にずれた位置で軸方向のロータ側に延びる突起部が設けられるため、該突起部によってトルクの急激な変動が抑制されてコギングトルクが低減される。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のアキシャルギャップモータにおいて、
前記突起部は、前記ティースの径方向外側にずれた位置に設けられた。
同構成によれば、突起部は、ティースの径方向外側にずれた位置に設けられるため、ティースの径方向内側にずれた位置に設けられた場合に比べて、トルクの急激な変動を効果的に抑制することができる。
【0008】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載のアキシャルギャップモータにおいて、前記ロータには、前記突起部と軸方向に対向するように永久磁石が設けられた。
同構成によれば、ロータには、突起部と軸方向に対向するように永久磁石が設けられるため、突起部によってトルクの急激な変動を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コギングトルクを低減することができるアキシャルギャップモータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図1〜図5に従って説明する。図1に示すように、アキシャルギャップモータ1は、ステータ2とロータ3とを備えている。
ステータ2は、略有底筒状のハウジング11と、そのハウジング11の開口部を閉塞するエンドハウジング12と、ハウジング11の内部に固定されるステータコア13と、ステータコア13に対して固定される巻線14とを備える。
【0011】
ステータコア13は、磁性粉体よりなり、図2及び図3に示すように、略円板形状に形成された基部13aと、基部13aの第1平面(図1中、上側面)から軸方向に延びる周方向に複数のティース13bと、基部13aの外周から径方向外側に張り出すとともに前記ティース13bに沿って軸方向に延びる周方向に複数の突起部13cとを有する。
【0012】
詳しくは、本実施の形態のティース13bは、周方向に等角度間隔で9個形成されている。又、各ティース13bは、軸方向から見て径方向外側に向かうほどその周方向中心からの周方向幅が均等に大きくなるとともにその各角が曲線状とされた形状に形成されている。そして、各ティース13bには、それぞれ巻線14が図示しないインシュレータを介して巻回されている。尚、各ティース13bの巻線14は、周方向に2つおき(120度間隔)の3つずつが、3相(U相、V相、W相)に分類され、図示しない制御回路から各相の巻線14に位相差120度の交流電流が供給されることになる。
【0013】
又、突起部13cは、周方向に等角度間隔で9個形成されるとともに、図3に示すように、周方向に隣り合う2つのティース13bの周方向の中間位置、且つティース13b(及び巻線14)の径方向外側にずれた位置で前記ティース13bに沿って軸方向に延設されている。この突起部13cは、軸方向から見て扇状に形成され、その径方向外側面(外周面)は、図1に示すように、前記ハウジング11の内周面と同じ曲面に形成されている。又、本実施の形態の突起部13cは、基部13aからの軸方向高さがティース13bと同じに設定されている。又、本実施の形態の突起部13cの周方向長さは、周方向に隣り合う突起部13c同士の周方向間隔と同じ(即ち周方向の角度は20°)に設定されている。
【0014】
そして、ステータコア13は、その基部13aの第2平面(図1中、下側面)がハウジング11の底面に当接し、突起部13cの外周面がハウジング11の内周面と当接するようにして、ハウジング11(及びエンドハウジング12)内に収容保持されている。又、本実施の形態のステータ2において、ハウジング11の底部中心孔とステータコア13(基部13a)の中心孔とには、筒状の軸受15が内嵌されて保持されている。
【0015】
ロータ3は、前記軸受15に軸支された回転軸21と、略円板形状に形成されハウジング11(及びエンドハウジング12)内で回転軸21に固定されたロータコア22と、ロータコア22のステータ2側の平面(図1中、下側面)に固定されたそれぞれ周方向に複数の第1及び第2の永久磁石23,24(図2及び図4参照)とを備える。
【0016】
詳しくは、第1の永久磁石23は、前記ティース13b(及び巻線14)と対応した径方向位置、即ち、前記ティース13b(及び巻線14)の軸方向第1端部(図1中、上側端部)と軸方向に対向する径方向位置で、周方向に交互に磁極が形成されるように等角度間隔で12個配設されている。又、第2の永久磁石24は、前記突起部13cと対応した径方向位置、即ち、前記突起部13cと軸方向に対向する径方向位置で、第1の永久磁石23と同様に周方向に交互に磁極(第1の永久磁石23と同じ周方向位置で同じ磁極)が形成されるように等角度間隔で12個配設されている。又、第1及び第2の永久磁石23,24は、軸方向から見て径方向外側に向かうほどその周方向中心からの周方向幅が均等に大きくなる形状であって、扇状に形成されている。又、本実施の形態の第1及び第2の永久磁石23,24は、ロータコア22からの軸方向高さ、即ちその厚さが同じに設定されている。
【0017】
次に、上記実施の形態の特徴的な作用効果を以下に記載する。
(1)ステータコア13においてティース13bを軸方向第2端部側(図1中、下側)で連結する基部13aには、周方向に隣り合う2つのティース13bの周方向の中間位置且つ径方向にずれた位置で軸方向のロータ3側に延びる突起部13cが設けられるため、該突起部13cによってトルクの急激な変動が抑制されてコギングトルクが低減される。ここで、図5は、実験結果より得た特性図であって、図5(a)における特性X1は、本実施の形態(突起部13cを有するもの)における角度−トルク特性であって、図5(b)における特性X2は、従来技術(突起部13cを有さないもの)における角度−トルク特性である。図5(a)(b)に示すように、本実施の形態における特性X1のトルクの変動幅Z1は、従来技術における特性X2のトルクの変動幅Z2より小さくなり、コギングトルクが低減されていることがわかる。
【0018】
(2)突起部13cは、ティース13bの径方向外側にずれた位置に設けられるため、ティース13bの径方向内側にずれた位置に設けられた場合に比べて、トルクの急激な変動を効果的に抑制することができる。
【0019】
(3)ロータ3には、突起部13cと軸方向に対向するように第2の永久磁石24が設けられるため、突起部13cによってトルクの急激な変動を効果的に抑制することができる。
【0020】
(4)ティース13bと軸方向に対向する第1の永久磁石23と、突起部13cと軸方向に対向する第2の永久磁石24とは、それぞれ別体であるため、径方向における効果の高い(最適な)位置のみにそれぞれ配設することができる。
【0021】
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、ティース13bと軸方向に対向する第1の永久磁石23と突起部13cと軸方向に対向する第2の永久磁石24とは、それぞれ別体であるとしたが、これに限定されず、図6に示すように、ティース13bと軸方向に対向するものと突起部13cと軸方向に対向するものとが一体形成された永久磁石31としてもよい。このようにすると、それぞれ別体とした場合(上記実施の形態)に比べて、部品点数を低減することができる。
【0022】
・上記実施の形態では、突起部13cは、基部13aからの軸方向高さがティース13bと同じに設定されるとしたが、これに限定されず、例えば、図7に示すように、ティース13bと軸方向に対向する永久磁石41と径方向に対向する位置まで軸方向(ロータ3側)に延びる突起部13dとしてもよい。尚、勿論、この例における突起部13dにおいても周方向に隣り合う2つのティース13bの周方向の中間位置に形成されている。又、勿論、この例(図7参照)のロータコア22は、その外径が上記実施の形態のものより小さく設定され、その外周と一致するように永久磁石41が形成されている。このようにしても、突起部13dによってトルクの急激な変動が抑制されてコギングトルクが低減される。
【0023】
・上記実施の形態では、突起部13cは、ティース13bの径方向外側にずれた位置に設けられるとしたが、これに限定されず、ティース13bの径方向内側にずれた位置に設けてもよいし、ティース13bの径方向外側にずれた位置及びティース13bの径方向内側にずれた位置にそれぞれ設けてもよい。
【0024】
・上記実施の形態では、ステータコア13は磁性粉体よりなり、基部13aと複数のティース13bと複数の突起部13cとが一体形成されるものとしたが、これに限定されず、例えば、基部13a、ティース13b及び突起部13cの内の少なくとも1つが別体で形成されて組み付けられるものとしてもよい。
【0025】
・上記実施の形態では、第2の永久磁石24は、第1の永久磁石23と同じ周方向位置に配設されるとしたが、これに限定されず、第2の永久磁石24の周方向位置を第1の永久磁石23の周方向位置に対してずらして配置してもよい。尚、この場合、周方向に複数設けられる各第2の永久磁石24を各第1の永久磁石23に対して均等にずらす必要はなく、その一部のみをずらすようにしてもよい。そして、第2の永久磁石24の周方向位置を第1の永久磁石23の周方向位置に対してずらすことで、コギングトルクの更なる低減を図ってもよい。
【0026】
・上記実施の形態では、ティース13b及び巻線14が9個で、ティース13bと軸方向に対向する第1の永久磁石23が12個のアキシャルギャップモータ1としたが、これに限定されず、各数を変更してもよい。尚、勿論、それらの数の変更に応じて、突起部13cや第2の永久磁石24の数を変更する必要が生じる。
【0027】
・上記実施の形態では、ティース13bは、軸方向から見て径方向外側に向かうほどその周方向中心からの周方向幅が均等に大きくなる、即ち周方向中心に対して対称な形状であるとしたが、これに限定されず、軸方向から見て周方向中心に対して非対称な形状としてもよく、例えば、急激な磁束の流れを抑制すべく所謂スキュー構造としてもよい。尚、勿論、急激な磁束の流れを抑制するためにティース13bと対向する第1の永久磁石23の形状を軸方向から見てその周方向中心に対して非対称な形状としてもよい。このようにすると、コギングトルクの更なる低減を図ることができる。
【0028】
・上記実施の形態では、突起部13cは周方向に隣り合う2つのティース13bの周方向の中間位置に1つ設けられるとしたが、これに限定されず、周方向に隣り合う2つのティース13bの周方向の中間位置に複数設けられるように変更してもよい。例えば、図8に示すように、上記実施の形態の突起部13cを2つに分割した形状の一対の突起部13eに変更してもよい。
【0029】
上記各実施の形態から把握できる技術的思想について、以下にその効果とともに記載する。
(イ)請求項3に記載のアキシャルギャップモータにおいて、前記ティースと軸方向に対向する永久磁石と、前記突起部と軸方向に対向する永久磁石とは、それぞれ別体であることを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【0030】
同構成によれば、ティースと軸方向に対向する永久磁石と、突起部と軸方向に対向する永久磁石とは、それぞれ別体であるため、例えば、径方向における効果の高い位置のみにそれぞれ配設することができる。又、例えば、突起部と軸方向に対向する永久磁石の周方向位置を、ティースと軸方向に対向する永久磁石の周方向位置に対してずらすことができ、ひいては、コギングトルクの更なる低減を図ることができる。
【0031】
(ロ)上記(イ)に記載のアキシャルギャップモータにおいて、前記突起部と軸方向に対向する前記永久磁石の周方向位置は、前記ティースと軸方向に対向する前記永久磁石の周方向位置に対してずらされたことを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【0032】
同構成によれば、突起部と軸方向に対向する永久磁石の周方向位置は、ティースと軸方向に対向する永久磁石の周方向位置に対してずらされるため、それによってコギングトルクの更なる低減を図ることができる。
【0033】
(ハ)請求項3に記載のアキシャルギャップモータにおいて、前記ティースと軸方向に対向する永久磁石と、前記突起部と軸方向に対向する永久磁石とは、一体形成されたものであることを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【0034】
同構成によれば、ティースと軸方向に対向する永久磁石と、突起部と軸方向に対向する永久磁石とは、一体形成されたものであるため、それぞれ別体とした場合に比べて、部品点数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施の形態におけるアキシャルギャップモータの断面図。
【図2】本実施の形態におけるアキシャルギャップモータの一部断面斜視図。
【図3】本実施の形態のステータコア及び巻線の一部断面斜視図。
【図4】本実施の形態のロータコア、第1及び第2の永久磁石の一部断面斜視図。
【図5】(a)本実施の形態における角度−トルク特性図。(b)従来技術(突起部を有さないもの)における角度−トルク特性図。
【図6】別例におけるアキシャルギャップモータの一部断面図。
【図7】別例におけるアキシャルギャップモータの一部断面図。
【図8】別例におけるステータコア及び巻線の一部断面斜視図。
【符号の説明】
【0036】
2…ステータ、3…ロータ、13a…基部、13b…ティース、13c,13d,13e…突起部、14…巻線、23…第1の永久磁石(永久磁石)、24…第2の永久磁石(永久磁石)、31,41…永久磁石。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びるとともに周方向に複数設けられるティースと前記ティースにそれぞれ巻回された巻線とを有するステータと、
前記ティースの軸方向第1端部と軸方向に対向する永久磁石を有するロータと
を備えたアキシャルギャップモータであって、
複数の前記ティースは軸方向第2端部側で基部にて連結され、
前記基部には、周方向に隣り合う2つの前記ティースの周方向の中間位置且つ径方向にずれた位置で軸方向の前記ロータ側に延びる突起部が設けられたことを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアキシャルギャップモータにおいて、
前記突起部は、前記ティースの径方向外側にずれた位置に設けられたことを特徴とするアキシャルギャップモータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアキシャルギャップモータにおいて、
前記ロータには、前記突起部と軸方向に対向するように永久磁石が設けられたことを特徴とするアキシャルギャップモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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