説明

アクチュエータ、アクチュエータ装置及び可変レンズ装置

【課題】一端部が固定された円弧状のアクチュエータにおいて、効率的な変位量及び発生力が得られる固定構造を有するアクチュエータ、アクチュエータ装置及びこれを用いた可変レンズ装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係るアクチュエータ1は、固定端2と自由端6とを有する円弧状の圧電素子Pと、圧電素子Pの外周側自由長の中心角をθA、圧電素子Pの内周側自由長の中心角をθBとしたとき、θA<θBとなるように圧電素子を固定する固定部材20とを具備する。これにより、θA=θBの場合と比較して、自由端6における変位量を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円弧状の圧電素子を備えたアクチュエータ、このアクチュエータを複数用いて構成されたアクチュエータ装置及び可変レンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2つのレンズ間距離を可変する距離可変手段及びレンズの傾斜を可変するチルト可変手段として、円周方向に複数に分割された円弧状の分割セラミックス体や分割バイモルフ体からなる環状のアクチュエータが提案されている(特許文献1参照。)。これらのアクチュエータにおいては、分割セラミックス体及び分割バイモルフ体は、その中央部が固定されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−48382号公報(段落[0038]〜[0051]、図6、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献には、円弧状の分割セラミックス体及び分割バイモルフ体の中央部が固定された構造が記載されているが、一端を固定する場合については記載されていない。円弧状の分割アクチュエータの一端を固定して使用する場合、単純に径方向に沿って固定することが考えられる。
【0005】
しかしながら、このような構成においては、内径側の自由長と外径側の自由長とで差が生じ、更にアクチュエータ平面内で一端部から他端部まで湾曲した形状となっているため、アクチュエータ平面に対して斜め方向の曲げが発生し、他端部先端で所望の変位量が得られないという問題があった。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、円弧状のアクチュエータの一端部を固定した際、効率的な変位量及び発生力が得られる固定構造を有するアクチュエータ、アクチュエータ装置及び可変レンズ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するにあたり、本発明に係るアクチュエータは、
固定端である第1の端部と、自由端である第2の端部とを有する円弧状の圧電素子と、
前記圧電素子の外周側自由長の中心角をθA、前記圧電素子の内周側自由長の中心角をθBとしたとき、θA<θBとなるように前記第1の端部を固定する固定部材とを具備する。
【0008】
本発明においては、上記圧電素子の上記第1の端部をθA<θBとなるように上記固定部材で固定するようにしている。これにより、上記圧電素子の外周側自由長と内周側自由長とが近似することで、圧電素子の主面に対して斜め方向に曲がる曲げの力を小さくすることができ、自由端における大きな変位量を効率よく得ることができる。
【0009】
本発明に係るアクチュエータにおいて、前記θBは160度以上190度以下であり、前記θAは110度以上であることとすることができる。
【0010】
これにより、θA=θBとなるように圧電素子の固定端を固定したときに比べて、自由端の変位量を大きくすることができる。
【0011】
また、θBを170度、θAを120度とすることにより、上記θA=θBである固定構造と比較して、変位量及び発生力ともに高いアクチュエータを得ることができる。
【0012】
また、本発明の他の観点に係るアクチュエータ装置は、
固定端である第1の端部と、自由端である第2の端部とをそれぞれ有する円弧状の第1及び第2の圧電素子と、
前記第1及び第2の圧電素子の外周側自由長の中心角をθA、前記第1及び第2の圧電素子の内周側自由長の中心角をθBとしたとき、θA<θBとなるように前記第1及び第2の圧電素子の前記第1の端部をそれぞれ固定する第1及び第2の固定部材とを具備する。
【0013】
これにより、上記圧電素子の外周側自由長と内周側自由長とが近似することで、圧電素子の主面に対して斜め方向に曲がる曲げの力を小さくすることができ、自由端における大きな変位量を効率よく得ることができる。
【0014】
本発明に係るアクチュエータ装置において、前記第1の圧電素子の前記第2の端部は、前記第2の圧電素子の前記第1の端部に対向し、前記第2の圧電素子の前記第2の端部は、前記第1の圧電素子の前記第1の端部に対向するように構成することができる。
【0015】
これにより、圧電アクチュエータ装置の占有面積を低減して、変位量が大きく、薄型かつ小型の圧電アクチュエータ装置を提供することができる。
【0016】
本発明の他の観点に係る可変レンズ装置は、
固定端である第1の端部と、自由端である第2の端部とをそれぞれ有する円弧状の第1及び第2の圧電素子と、
前記第1及び第2の圧電素子の外周側自由長の中心角をθA、前記第1及び第2の圧電素子の内周側自由長の中心角をθBとしたとき、θA<θBとなるように前記第1及び第2の圧電素子の前記第1の端部をそれぞれ固定する第1及び第2の固定部材と、
前記第1の圧電素子の前記第2の端部と前記第2の圧電素子の前記第2の端部とに支持され、前記第1及び第2の圧電素子の駆動により変形または変位するレンズとを具備する。
【0017】
これにより、レンズの変位量または変形量の大きな可変レンズ装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、一端部が固定された円弧状の圧電素子を備えるアクチュエータの変位量を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0020】
(アクチュエータ及びアクチュエータ装置)
【0021】
本発明の一実施形態におけるアクチュエータ及びアクチュエータ装置を図1〜図3を用いて説明する。本実施形態におけるアクチュエータは、例えば液体レンズを用いた可変焦点レンズ装置に組み込まれ、液体レンズの焦点を調整するのに用いられる。
【0022】
図1はアクチュエータ装置の概略平面図である。図2は図1の線A−A´における概略断面図である。図3は、図1に示すアクチュエータ装置を構成する分割アクチュエータの概略平面図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、アクチュエータ装置70は中央部に貫通孔10を有する略環状を有している。略円形状の貫通孔10を形成するアクチュエータ装置70の内周円と、略円形状のアクチュエータ装置70の外周を形成する外周円とは同心円である。例えば可変焦点レンズ装置にアクチュエータ装置70を適用した際、貫通孔10に対応する領域に液体レンズが位置する。
【0024】
アクチュエータ装置70は、その円周方向に分割された2つの分割アクチュエータ1(第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータ)で構成されている。本実施形態において、各分割アクチュエータ1は、それぞれ同一の構成を有している。
【0025】
各分割アクチュエータ1は、固定端2(第1の端部)と自由端6(第2の端部)とを有する円弧状の圧電素子Pと、この圧電素子Pの固定端2を固定する固定部材20とを有する。
【0026】
一方の分割アクチュエータ1(圧電素子P)の自由端6は、他方の分割アクチュエータ1(圧電素子P)の固定端2に対向しており、当該他方の分割アクチュエータ1(圧電素子P)の自由端6は、上記一方の分割アクチュエータ(圧電素子P)の固定端2に対向している。本実施形態では、2つの分割アクチュエータ1(圧電素子P)のそれぞれの固定端2は、アクチュエータ装置70の中心部に関して対称に配置されている。
【0027】
そして、これら2つの分割アクチュエータ1(圧電素子P)との間に、被可動部材としてのレンズを収容するための貫通孔10(収容部)が形成されている。
【0028】
固定部材20は、圧電素子Pを他の部材に固定するためのものであり、圧電素子Pの図1及び図3において斜線で示す固定領域R1に接着などによって取り付けられている。本実施形態において固定領域R1は平面形状が略三角形状を有している。圧電素子Pの固定領域R1以外の領域R2は、当該圧電素子Pへの電圧印加時に変形または変位が可能な可動領域である。固定領域R1と可動領域R2の境界7の詳細については後述する。
【0029】
図3に示すように、圧電素子Pは、両面に電極面が形成された一対の圧電体3、5と、これら一対の圧電体3、5の間に介在する金属板4とからなるバイモルフ構造を有している。他のバイモルフ構造として、積層圧電バイモルフ、一体焼結積層バイモルフといった構造のものを用いることもできる。
【0030】
積層圧電バイモルフ構造は、内部と両面に電極面が形成された一対の圧電体と、これら一対の圧電体間に介在する金属板とから構成され、圧電バイモルフをより小さな電圧で駆動させることができる。一体焼結積層バイモルフ構造は、圧電焼結体自身が屈曲変位を発生させるものである。
【0031】
図1及び図3に示すように、アクチュエータ装置70は、略円形状の貫通孔10を形成する半径R1(以下、内径R1と称す)の内周円と、略円形状のアクチュエータ70の外周を形成する半径R2(以下、外径R2と称す)の外周円を有する。本実施形態においては、外径R2が13.8mm、内径R1が7.2mm、厚みが約600um(マイクロメートル)である。なお、外径R2、内径R1及び厚みは上記の例に限定されない。
【0032】
図3に示すように、分割アクチュエータ1を構成する圧電素子Pの可動領域R2は、中心角θAの外周側自由長と、中心角θBの内周側自由長とを有している。そして、圧電素子Pの固定領域R1は、内周側自由長の中心角θBが外周側自由長の中心角θAよりも大きくなるように設定されている。固定領域R1と可動領域R2の境界7は直線とされるが、これに限られない。
【0033】
本実施形態では、θBは160度以上190度以下であり、θAは110度以上である。具体的に本実施形態では、θBは170度、θAは120度とされる。
【0034】
このように、圧電素子Pの可動領域R2を内周側自由長の中心角θBが外周側自由長の中心角θAよりも大きくなるように設定することで、後述するようにθAとθBとが同一である場合に比べて、自由端6において高い変位量を得ることができる。
【0035】
以下、中心角θA及びθBと圧電素子の変位量及び発生力との関係を図5〜図9を参照して説明するとともに、本実施形態の如くθA<θBとすることによる効果について説明する。
【0036】
図5は、図3に示す本実施形態における分割アクチュエータの内周側自由長の中心角θBを170度に固定し、境界線7の外周円上の点を規定する外周側自由長の中心角θAの値を110度から170度の範囲で変えて、作用点における変位量U1及び発生力F1を計算したシミュレーション結果である。作用点30は、図3に示すように、分割アクチュエータ1の自由端6側の外周端部に設定した。
【0037】
図6は、比較例としての分割アクチュエータ100の概略平面図である。略環状のアクチュエータ100は、その円周方向に2つに分割された分割アクチュエータ101からなる。分割アクチュエータ101は、一端が固定端102、他端が自由端106となっている。作用点130は、2つの分割アクチュエータ101それぞれの自由端106側の外周端部である。比較例における分割アクチュエータ101の固定領域R1と可動領域R2との境界107は、分割アクチュエータ101の中心角θCにおける内周円上の点と外周円上の点とを結んだ線とした。言い換えると、比較例の分割アクチュエータ101における境界線107は、θC=θB=θAの場合のものであり、境界線107はアクチュエータ100の径方向に沿っている。
【0038】
図7は、図6に示す比較例としての分割アクチュエータ101において、角度θCを60度〜270度の範囲で変えて計算した変位量U2と発生力F2のシミュレーション結果である。
【0039】
図8は、図5に示した本実施形態の分割アクチュエータ1における変位量U1と発生力F1、図7に示した比較例の分割アクチュエータ101における変位量U2と発生力F2をそれぞれ同一グラフ上にプロットし、比較したグラフである。尚、図8において、比較例の分割アクチュエータ101における変位量U2と発生力F2は、角度θCを90度〜170度の範囲で変えた場合の値をプロットしている。
【0040】
図9は、図5に示した本実施形態の分割アクチュエータ1における変位量U1と発生力F1の積UF1、図7に示した比較例の分割アクチュエータ101における変位量U2と発生力F2との積UF2を比較したグラフである。
【0041】
ここで、一般的な短冊型及び台形型のバイモルフ構造のアクチュエータの構成及び特性について図10〜図12を用いて説明する。
【0042】
図10(a)は短冊型、図10(b)は台形型のバイモルフ構造のアクチュエータの平面図及び断面図である。図11は、バイモルフ型アクチュエータの電圧無印加時及び電圧印加時におけるアクチュエータの駆動を示す断面図であり、(a)は電圧無印加時、(b)(c)は電圧印加時を示す。図12は、短冊型又は台形型のバイモルフ構造のアクチュエータの作用点における変位量と発生力との関係を示すグラフである。ここで、変位量U0(um)とは、図4(a)に示すように、アクチュエータ1(201、202)に対して外力が加わっていない状態における電圧印加時の作用点における変位の度合を示すものである。発生力F0(gf)は、電圧印加時の分割アクチュエータ1(201、202)が変位できないときに作用点に生じる力を示すものである。
【0043】
図10(a)、図10(b)に示すように、一般的な形状である短冊型や台形型のバイモルフ構造のアクチュエータ201、202は、その一端が固定部材220により固定され他端が自由端となっている。アクチュエータ201、202は、金属部材204の両面にこれを挟み込むように一対の圧電体203、205が配置されて構成され、自由端の長さである自由長Lを有している。作用点は、アクチュエータ201、202の自由端部に位置する。
【0044】
図11に示すように、圧電体203は圧電層223と電極層213を有し、圧電体205は圧電層215と電極層225を有している。2つの圧電層223、215はそれぞれその厚み方向に分極処理されている。分極方向が同じ向きであるパラレル型においては、図11(b)に示すように、電極層213、225にプラスの電圧を、金属板204にマイナスの電圧を印加することにより、上部の圧電層223は圧電横効果によって縮み、下部の圧電層215は伸び、その結果、全体としては上部に曲がる。これに対し、図11(c)に示すように、電極213、225にマイナスの電圧を、金属板204にプラスの電圧を印加することにより、下部の圧電層215は圧電横効果によって縮み、上部の圧電層223は伸び、その結果、全体としては下部に曲がる。
【0045】
図12に示すように、上述したような自由長Lが湾曲せず真っ直ぐなバイモルフ型アクチュエータにおいては、作用点となる自由端端部にかかる変位量と発生力との関係は、変位量が大きいほど発生力が小さくなり、発生力が小さいほど変位量が大きくなるという傾向がある。アクチュエータとして用いる場合、変位量及び発生力がともに大きいことが望まれる。
【0046】
これに対し、円周方向に複数に分割した分割アクチュエータから構成される環状アクチュエータにおいては、分割アクチュエータにおける内周側自由長と外周側自由長とで差が生じ、更に一端部から他端部までがアクチュエータ平面内で湾曲した形状となっているため、アクチュエータ平面に対して斜め方向の曲げが発生してしまう。このため、単純に図6に示す比較例の分割アクチュエータ101の如く固定領域R1と可動領域R2の境界線107を径方向に沿って設定すると、所望の変位量及び発生力が得られないということが生じてしまう。図7に示すように、比較例の分割アクチュエータ101のように上記境界線107を径方向に沿って設定する場合、変位量は、角度θCが170度前後で最大となり、角度θCがその角度より大きく又は小さくなるにつれ減少していく傾向にある。また、発生力は角度θCが大きくなるにつれ減少していく傾向にある。
【0047】
このように、比較例に係る円弧状の分割アクチュエータ101においては、角度θCが170度よりも小さい範囲では、変位量が増加するにつれ発生力が減少していく傾向にあり、角度θCが170度よりも大きい範囲では、変位量及び発生力ともに減少していく傾向にあり、角度θCによって変位量と発生力との関係が異なってくる。
【0048】
本実施形態においては、比較例の分割アクチュエータ101において、角度θCが170度の時に変位量が最も大きくなったことを考慮して内周側自由長の中心角θBを170度に固定し、外周側自由長の中心角θAの値を110〜170度の範囲で変化させて、変位量U1及び発生力F1を計算した。
【0049】
その結果、図5及び図8に示すように、比較例の分割アクチュエータ101と比較して、本実施形態における分割アクチュエータ1は、外周側自由長の中心角θAを内周側自由長の中心角θBよりも小さく設定することにより、常に大きい変位量を得ることができた。また、図8からもわかるように、比較例及び本実施形態において、発生力は概略同じであり、角度150度以上では全く同じ、角度が150度よりも小さくなるにつれ本実施形態における発生力は比較例と比較して若干小さくなっていく傾向にある。
【0050】
また、図9に示すように、変位量と発生力との積を比較しても、本実施形態における分割アクチュエータ1の方が比較例における分割アクチュエータ101よりも高い値を得ている。図9に示すように、変位量と発生力との積は、比較例も本実施形態もともに、θAが120度の時に最大となる。
【0051】
以上のように、圧電素子の外周側自由長の中心角θAと内周側自由長の中心角θBの設定、言い換えると固定領域R1と可動領域R2の境界線7の設定の仕方により、変位量及び発生力、特に変位量が大きく変化することがわかる。本実施形態のように、θBが170度の場合、θAを110度以上170度よりも小さい値とすることにより、比較例と比較して大きい変位量を得ることができる。更に、θAを120度とすることにより、変位量と発生力との積は、θAが120度の時に最大となるので、変位量及び発生力をともに大きくすることができる。
【0052】
また、θBが170度である場合に限られず、θBが160度以上190度以下の場合においても、θAを110度以上のθBよりも小さい値とすることにより、θBが170度である場合とほぼ同様の傾向の変位量及び発生力変化となり、比較例と比較して高い変位量を得ることができる。
【0053】
また、上述の本実施形態においては、環状のアクチュエータを2つの半円弧状の分割アクチュエータで構成したが、90度よりも大きい中心角を有する劣弧状の分割アクチュエータを3つ用いて環状のアクチュエータを構成してもよい。この場合、3つの円弧状アクチュエータを等角度間隔で配置することができる。この場合においても、劣弧状の分割アクチュエータの固定構造として、内周側自由長の中心角θBを外周側自由長の中心角θAよりも大きくすることにより、θAとθBが同一である場合と比較して、高い変位量を得ることができる。
【0054】
以上のように、本実施形態においては、円弧状の分割アクチュエータを固定する際、外周側自由長の中心角をθA、内周側自由長の中心角をθBとしたとき、θA<θBとなるように設定される。これにより、内周側自由長と外周側自由長とが近似し、θA=θBの場合と比較して大きな変位量を得ることができる。
【0055】
(可変レンズ装置)
【0056】
上述のアクチュエータ1を用いた可変レンズ装置としての可変焦点レンズ装置について図13を用いて説明する。
【0057】
図13は、可変焦点レンズ装置の分解斜視図である。
【0058】
図13に示すように、可変焦点レンズ装置50は、上述の実施形態のアクチュエータ装置70と、可変焦点レンズ60を備えている。分割アクチュエータ1を固定する固定部材20は可変焦点レンズ60の容器45に接着固定される。
【0059】
可変焦点レンズ60は、環状の底面44を有しその外周部に側壁を有する容器45と、容器45の中央部空間に対応して互いに離間して設けられた円形状の透明板42及び透明弾性膜41と、環状の底面44に対向し離間して設けられた環状の弾性膜46とを有している。更に、容器45、透明板42、透明弾性膜41、弾性膜46によって形成された空間内には透明なシリコンオイルからなる流体43が封入されている。容器45の中央形成される中空部はレンズ孔340として機能する。レンズ孔340と、アクチュエータ装置70の中央に位置する貫通孔10と、透明板42と、透明弾性膜41とは、互いに同軸に配設されている。また、透明板42、透明弾性膜41及び流体43とにより液体レンズ部40が構成される。液体レンズ部40は、各分割アクチュエータ1の自由端6に支持され又は接触しており、自由端6の変位とともに移動可能とされている。
【0060】
可変焦点レンズ60においては、アクチュエータ装置70に電圧を印加すると、アクチュエータ装置70の変位に伴って透明板42が光軸方向に移動する。これにより、透明板42、透明弾性膜41及び容器45によって形成される空間内に封入されている流体43の圧力が変動する。この圧力変動によって透明弾性膜41が変形し、弾性膜41の凹凸形状の曲率が変化する。この曲率の変化を利用して液体レンズ部40の焦点位置が変動し、焦点調整を行うことができる。
【0061】
本実施形態における可変焦点レンズ装置50において、本発明に係るアクチュエータ装置70を備えているので、液体レンズ部40の可動範囲が広くなることで、焦点距離の調整範囲の拡大を図ることが可能となる。
【0062】
また、本実施形態におけるアクチュエータ装置70は、一方の分割アクチュエータ1(圧電素子P)の自由端6は、他方の分割アクチュエータ1(圧電素子P)の固定端2に対向しており、当該他方の分割アクチュエータ1(圧電素子P)の自由端6は、上記一方の分割アクチュエータ(圧電素子P)の固定端2に対向している。これにより、圧電アクチュエータ装置の占有面積を低減して、変位量が大きく、薄型かつ小型の圧電アクチュエータ装置を提供することができる。
【0063】
そして、可変焦点レンズ装置50を構成するアクチュエータ装置70は、2つの分割アクチュエータ1(圧電素子P)との間に、被可動部材としてのレンズ(液体レンズ部40)を収容するための貫通孔10(収容部)が形成されている。これにより、中央部の貫通孔に対応してレンズを配置することができ、貫通孔は光路としての使用に適している。
【0064】
また、上述の可変焦点レンズ装置においては、レンズとして液体レンズを用いたが、図14(a)に示すように、通常の固体レンズを用いた場合においても、本発明のアクチュエータを使用することができる。この場合、図14(b)に示すように、2つの分割アクチュエータ1が同一方向に変位するように、2つの分割アクチュエータ1に電圧を印加し、アクチュエータ70をその軸長方向(図面における上下方向)に変位させ、この変位に伴って固体レンズ140の位置を可変させ、焦点調整を行うことができる。
【0065】
尚、図14(a)は固体レンズとアクチュエータとの関係を示す概略平面図であり、図14(b)は、同図(a)の断面図であり、電圧印加時の固体レンズの駆動を示す図である。
【0066】
また、上述の可変レンズ装置においては、レンズ焦点位置の調整にアクチュエータを用いたが、例えば、図16に示すように、可変レンズ装置としての光ピックアップ120にアクチュエータ70を適用し、光ピックアップ120の対物レンズ122のチルト角αの調整を行うこともできる。以下、図15、図16を用いて説明する。
【0067】
図15(a)は対物レンズとアクチュエータとの関係を示す概略平面図である。図15(b)は、同図(a)の断面図であり、電圧印加時の対物レンズの駆動を示す図である。図16は光ピックアップの概略断面図である。
【0068】
図16に示すように、光ピックアップ120は、対物レンズ122とアクチュエータ70を有し、対物レンズ122によって集光したレーザ光を光ディスク121に対して照射するものである。図15(b)に示すように、2つの分割アクチュエータ1が逆方向に変位するように、2つの分割アクチュエータ1に電圧を印加し、アクチュエータ70を変位させ、この変位に伴って対物レンズ122の傾きを可変させてチルト角αの調整を行うことができる。また、このようにチルト角調整にアクチュエータを使用する場合、3つの分割アクチュエータからなるアクチュエータを用いることによって所望のチルト角に調整することがより容易となる。
【0069】
上述の実施形態において、圧電素子として、PZTに代表される圧電セラミックス、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の圧電性を有する有機材料や、導電性高分子やイオン伝導アクチュエータなどの高分子材料などを用いることができる。また、アクチュエータとして、金属板の両面に圧電素子を配置した構成のものを用いたが、熱膨張率が異なる2枚の金属板を貼り合わせたバイメタルや、磁歪素子を用いたバイモルフなどを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態におけるアクチュエータ装置の概略平面図である。
【図2】図1の線A−A´における概略断面図である。
【図3】図1のアクチュエータ装置を構成する分割アクチュエータの概略平面図である。
【図4】変位量U0及び発生力F0を説明する図である。
【図5】図3に示す分割アクチュエータの変位量と発生力を示すシミュレーション結果の一例である。
【図6】比較例としての分割アクチュエータの概略平面図である。
【図7】図6に示す比較例としての分割アクチュエータの変位量と発生力を示すシミュレーション結果の一例である。
【図8】図5に示した本実施形態の分割アクチュエータにおける変位量と発生力、図7に示した比較例の分割アクチュエータにおける変位量と発生力をそれぞれ同一グラフ上にプロットし、比較したグラフである
【図9】図5に示した本実施形態の分割アクチュエータにおける変位量と発生力の積、図7に示した比較例の分割アクチュエータにおける変位量と発生力との積をそれぞれプロットし、比較したグラフである。
【図10】短冊型及び台形型のバイモルフ構造のアクチュエータの構成を説明するための平面図及び断面図である。
【図11】バイモルフ型アクチュエータの電圧印加時における動作特性を示す断面図である。
【図12】短冊型又は台形型のバイモルフ構造のアクチュエータの変位量と発生力との関係を示すグラフである。
【図13】一実施形態のアクチュエータを用いた可変焦点レンズ装置の分解斜視図である。
【図14】一実施形態のアクチュエータを用いた個体レンズを有する可変焦点レンズ装置における電圧印加時のレンズの駆動を説明する図である。
【図15】一実施形態のアクチュエータを用いた光ピックアップにおける対物レンズの電圧印加時の駆動を説明する図である。
【図16】一実施形態のアクチュエータを用いた光ピックアップの概略断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 分割アクチュエータ
2 固定端
6 自由端
7 境界線
10 貫通孔
20 固定部材
40 液体レンズ部
50 可変焦点レンズ装置
70 アクチュエータ装置
120 光ピックアップ
122 対物レンズ
140 固体レンズ
P 圧電素子
R1 固定領域
R2 可動領域
θA 外周側自由長の中心角
θB…内周側自由長の中心角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定端である第1の端部と、自由端である第2の端部とを有する円弧状の圧電素子と、
前記圧電素子の外周側自由長の中心角をθA、前記圧電素子の内周側自由長の中心角をθBとしたとき、θA<θBとなるように前記第1の端部を固定する固定部材と
を具備するアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータであって、
前記θBは160度以上190度以下であり、前記θAは110度以上である
アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2記載のアクチュエータにおいて、
前記θBは170度であり、前記θAは120度である
アクチュエータ。
【請求項4】
固定端である第1の端部と、自由端である第2の端部とをそれぞれ有する円弧状の第1及び第2の圧電素子と、
前記第1及び第2の圧電素子の外周側自由長の中心角をθA、前記第1及び第2の圧電素子の内周側自由長の中心角をθBとしたとき、θA<θBとなるように前記第1及び第2の圧電素子の前記第1の端部をそれぞれ固定する第1及び第2の固定部材と
を具備するアクチュエータ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のアクチュエータ装置であって、
前記第1の圧電素子の前記第2の端部は、前記第2の圧電素子の前記第1の端部に対向し、
前記第2の圧電素子の前記第2の端部は、前記第1の圧電素子の前記第1の端部に対向している
アクチュエータ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のアクチュエータ装置であって、
前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子との間に、被可動部材を収容するための収容部を有する
アクチュエータ装置。
【請求項7】
固定端である第1の端部と、自由端である第2の端部とをそれぞれ有する円弧状の第1及び第2の圧電素子と、
前記第1及び第2の圧電素子の外周側自由長の中心角をθA、前記第1及び第2の圧電素子の内周側自由長の中心角をθBとしたとき、θA<θBとなるように前記第1及び第2の圧電素子の前記第1の端部をそれぞれ固定する第1及び第2の固定部材と、
前記第1の圧電素子の前記第2の端部と前記第2の圧電素子の前記第2の端部とに支持され、前記第1及び第2の圧電素子の駆動により変形または変位するレンズと
を具備する可変レンズ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−254058(P2009−254058A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96764(P2008−96764)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】