説明

アクチュエータ

【課題】 より小型でかつ比較的簡素な構成によって、より大きな推力、好適にはより衝撃的な推力を得ることができるアクチュエータを得る。
【解決手段】 回転体(着磁筒3c)に設けた螺旋状の磁石21N,21Sと、着磁筒3cの筒内を挿通させた棒状の直動体4に設けた螺旋状の突条4a(4a1,4a2)との磁気的結合によって、着磁筒3cの回転動作を直動体4に直進動作に変換するアクチュエータにおいて、直動体4の軸方向一方側への移動を規制する移動規制機構を設け、当該移動規制機構によって磁石21N,21Sと突条4a(4a1,4a2)とを脱調させることにより、当該直動体4を断続動作あるいは往復動作させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動機構の回転動作から直線状の断続動作あるいは往復動作を得るアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転動作から往復動作を得るアクチュエータとして、レシプロ機構や、ボールネジ機構等、種々の機構が知られている。これらの機構によれば、モータ等の回転駆動機構による回転動作から往復動作を得ることができる。
【0003】
レシプロ機構は、回転体の回転中心から離間した所定の一点が所定の直線方向に関しては往復動作することを利用したものであり、例えば、回転体に設けられた案内子と、所定の直線方向に往復動可能な可動子とを備え、この可動子に、可動子の往復動方向と直交する方向に案内子をガイドするガイドを設けたものとして構成することができる。この場合、回転体の回転に伴って可動子が往復動作することになる。
【0004】
また、ボールネジ機構は、ネジ軸に螺合したナットの回転を規制した状態で当該ネジ軸を回転させると、ナットがネジ軸の軸方向に移動することを利用したものである。
【0005】
一方、これらの機構とは別に、回転体と直動体との磁気的な結合を利用したアクチュエータが知られている。このアクチュエータは、例えば、回転動作が規制されるとともに軸方向の移動が許容される筒状体と、当該筒状体の筒内に挿通されて回転する棒状の挿通体とを備え、挿通体の外周面に螺旋状の磁石を設けて当該挿通体を回転させることで、この磁石と筒状体との磁気的結合によって、筒状体の直進動作を得るものとして構成することができる(例えば特許文献1)。
【0006】
このアクチュエータは、磁気的結合を利用して機械的な摺動部分を減らすことができる分、ボールネジ機構等に比べて粉塵等の発生量を減らすことができるという利点があり、例えば、半導体製造装置のウエハ搬送機構等に利用されている。
【特許文献1】特開2000−130539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記レシプロ機構で大きなストロークを得ようとすると、回転体が大きくなり、装置構成が大型化してしまうという問題がある。
【0008】
この点、上記ボールネジ機構や、上記磁気的結合を利用したアクチュエータによれば、装置構成が径方向に大型化するのを抑制することは可能であるが、往復動作させるには、回転駆動機構の回動方向の切り替えが必要となる分、制御のための装置構成が複雑化してしまう。
【0009】
また、かかるアクチュエータを釘打ち工具等の電動工具に用いる場合、より衝撃的な推力を出力するものが望ましいが、上記従来の機構で、衝撃的な往復動作や直進動作を得ることは難しい。
【0010】
そこで、本発明は、より小型でかつ比較的簡素な構成によって、より大きな推力、好適にはより衝撃的な推力を得ることができるアクチュエータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明にあっては、回転駆動機構によって回転駆動される回転体と、当該回転体の回転軸方向に往復動作可能でありかつ回転軸回りの回転が規制される直動体と、を備え、上記回転体および直動体のうちいずれか一方に筒状部を形成するとともに、他方に当該筒状部の筒内に挿通される挿通部を形成し、筒状部の内面および挿通部の外面のうち少なくともいずれか一方に螺旋状に配置された磁石を設ける一方、他方には当該磁石に対応する結合部を設け、上記回転体の回転に応じて、上記磁石と上記結合部との磁気的結合によって、上記直動体に回転軸方向の推力を与えるアクチュエータにおいて、上記直動体の軸方向の一方側への移動を規制する移動規制機構を設け、当該移動規制機構によって上記磁石と上記結合部とを脱調させることにより、当該直動体を断続動作あるいは往復動作させるようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明にあっては、上記移動規制機構による直動体に対する移動規制に伴って弾性変形し、上記直動体の移動再開に伴って復元することで直動体の他方側への移動を補助する弾性体を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明にあっては、上記弾性体が、上記移動規制機構による直動体に対する移動規制に伴って上記回転体と上記直動体との間で作用する磁気的結合力よって弾性変形するようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明にあっては、上記移動規制機構は、上記直動体が上記回転体の回転に伴って上記磁石と上記結合部との磁気的結合によって上記一方側へ移動するのを規制し、その他方側に脱調によって移動するのを許容するものであることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明にあっては、上記移動規制機構として、アクチュエータの固定部側に上記直動体の移動方向に沿って設けられた鋸歯列と、上記直動体側に設けられて当該鋸歯列と係合する係合爪と、を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明にあっては、上記鋸歯列における鋸歯のピッチを、上記螺旋状に配置された磁石の軸方向ピッチの1/2以下に設定したことを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明にあっては、上記移動規制機構として、上記直動体側に、アクチュエータの固定部側に設定された摺動面上を当該直動体の移動方向に沿って摺動する摺動子を設け、上記摺動子と摺動面との摩擦による抵抗力が、上記回転体の回転に伴って上記磁石と上記結合部との磁気的結合によって上記直動体に作用する推力より大きく、かつ脱調時に上記直動体に作用する推力より小さくなるようにしたことを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明にあっては、上記移動規制機構として、上記直動体側に、アクチュエータの固定部側に設定された転動面上を転動するラッチローラを設けたことを特徴とする。
【0019】
請求項9の発明にあっては、アクチュエータの固定部側に、上記移動規制機構による移動規制を解除した状態で、上記直動体側の案内子を移動可能に案内する非規制案内経路を設けたことを特徴とする。
【0020】
請求項10の発明にあっては、アクチュエータの固定部側の上記直動体の脱調による移動経路の端部で上記移動規制機構による移動規制を解除する移動規制解除機構を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば、上記回転体と上記直動体との磁気的結合状態を遷移させる(脱調させる)ことにより、断続的な直進動作あるいは往復動作を得るアクチュエータを、より簡素な構成によって具現化することができる。また、脱調によって上記回転体と上記直動体との磁気的結合状態を遷移させる際に、当該直動体を磁力によって加速させることができ、その分、より大きな衝撃的な推力を得ることができる。
【0022】
請求項2の発明によれば、上記直動体の一方側への移動を規制している際に上記弾性体に蓄積したエネルギによって、上記直動体の他方側への推力を高めることができる。
【0023】
請求項3の発明によれば、上記直動体の移動を規制している際に上記弾性体をより確実に弾性変形させ、上記直動体の推力をより確実に高めることができる。
【0024】
請求項4の発明によれば、回転体の回転方向を切り替えることなく、当該回転体を一回転方向に回転させることで、脱調による上記逆方向への直進動作を得ることができる。
【0025】
請求項5の発明によれば、上記鋸歯列と上記係合爪とを含む比較的簡素な構成によって、上記移動規制機構を構築することができる。
【0026】
請求項6の発明によれば、上記直動体を、上記逆方向(脱調による移動方向)に断続的に直進動作させることができる。
【0027】
請求項7の発明によれば、上記摺動子と上記摺動面との摩擦抵抗を利用した比較的簡素な構成によって、上記移動規制機構を構築することができる。
【0028】
請求項8の発明によれば、上記ラッチローラが上記他方向(脱調による移動方向)にのみ転動することを利用することにより、比較的簡素な構成によって、上記移動規制機構を構築することができる。
【0029】
請求項9の発明によれば、上記移動規制機構による上記直動体の移動規制を解除して、磁気的結合を維持したまま回転体の回転に伴って直動体を所定方向に直進動作させることができるようになる。よって、脱調によって移動した直動体を、回転体の回転方向を変化させることなく移動前の位置に戻すことができる。
【0030】
請求項10の発明によれば、一定区間における脱調による移動が完了した上記直動体を、脱調による移動前の状態に復帰させることができる。よって、所定区間における直動体の脱調による移動を、容易に反復実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
(第1実施形態)図1は、本実施形態にかかるアクチュエータの斜視図、図2は、アクチュエータの回転体を含む一部の斜視図、図3は、アクチュエータの回転体を含む一部の縦断面図、図4は、アクチュエータの回転体を含む一部の分解斜視図、図5は、アクチュエータの固定部と直動体とを含む一部の分解斜視図、図6は、アクチュエータの固定部と直動体とを含む一部の縦断面図、図7は、回転体と直動体との位置関係の変化を示す説明図、図8は、回転体と直動体との磁気的結合状態の変化を示す説明図、図9は、移動規制機構の動作を示す説明図、図10は、スライダの動作軌跡を示す説明図である。
【0033】
本実施形態にかかるアクチュエータ1は、モータ等の回転駆動機構2と、回転駆動機構2によって回転駆動される回転体3と、回転体3の回転軸方向に往復動作可能でありかつ回転軸回りの回転が規制される直動体4とを備える。なお、本実施形態では、回転駆動機構2による回転は、複数のギヤ5a,5b,5cを含む減速機構5によって減速されて、回転体3に伝達される。
【0034】
回転体3は、アクチュエータ1の固定部に回転自在に支持されている。本実施形態では、回転体3の軸方向両端部が、固定部としての二つのブラケット8,8によって、ベアリング7,7を介して回転自在に支持されている。各ベアリング7は、ブラケット8の下側部材8aと上側部材8bとによって狭持されている。また、本実施形態では、回転体3の両端部に、スペーサ6が固定されており、このスペーサ6がベアリング7に回転自在に支持されている。
【0035】
また、この回転体3は、全体として筒状に形成されている。本実施形態では、基体筒3aと、基体筒3aの一端側で外装される外筒3bと、基体筒3a内に嵌装される着磁筒3cとを備えている。これら基体筒3a、外筒3b、および着磁筒3cは、相互に固定され、相対移動できないようにしてある。
【0036】
そして、回転体3(着磁筒3c)の筒内には、棒状の直動体4が装通されている。ここで、本実施形態では、スペーサ6の貫通穴の内径を、直動体4の外径とほぼ同じかあるいは僅かに大きく、かつ着磁筒3cの内径より小さくし、さらに、スペーサ6の貫通穴の中心と着磁筒3cの軸心とが略同心となるようにして、これにより、直動体4が、スペーサ6の貫通穴内を摺動し、かつ着磁筒3cの中心に配置されて、直動体4の外周と着磁筒3cの内周とが接触することなく、かつ直動体4の外周の全周に亘って、着磁筒3cとの間でほぼ一定距離の間隙Gが形成されるようにしてある。
【0037】
一方、直動体4の一端側には、アクチュエータ1の固定部としてのガイド体9と、ガイド体9によって直動案内されるスライダ10とが設けられている。直動体4は、スライダ10に固定されているため、ガイド体9に対するスライダ10の動作規制にしたがって動作することになる。
【0038】
ガイド体9は、帯状の底壁部9aの短手方向両端部に帯状の側壁部9bを固定して、全体として矩形断面を有する溝状に形成されている。底壁部9a上には、長手方向に連続的に一定のピッチで鋸歯17aを配列してなる鋸歯板17が配置されている。なお、側壁部9bの溝内側の上部には、底壁部9aから一定の高さ位置に、長手方向のほぼ全域に亘る段差9cが形成されており、さらに、この段差9cから一定の間隔をあけてほぼ平行に、溝内側に突出する突壁部18が、長手方向に沿って延設されている。
【0039】
一方、スライダ10は、略矩形の筐体部11と、筐体部11に往復動可能(底壁部9aに対して接離可能)に支持される可動部13と、可動部13をガイド体9の底壁部9a側(鋸歯板17側)に付勢する付勢機構としてのコイルスプリング14と、可動部13を往復動可能に支持するとともにコイルスプリング14を底壁部9aの反対側から押さえる蓋部12と、を備える。
【0040】
このうち、筐体部11は、ガイド体9の底壁部9aから遠い側とガイド体9の長手方向一方側とを開放した箱状に形成されており、その底壁部11aには、可動部13の爪部15およびピン16を挿通する貫通穴11b,11cが形成されている。
【0041】
また、可動部13は、細長い略円柱状の支持軸13bと、支持軸13bの軸方向一端側に配設される爪部15と、支持軸13bと爪部15との境界部に形成されるフランジ部13aと、爪部15の両側壁から側方に突出するピン16とを備える。
【0042】
また、蓋部12は、底壁部9aから遠い側の筐体部11の開放部を塞ぐようにして、当該筐体部11に取り付けられる。
【0043】
さらに、コイルスプリング14は、支持軸13bに外装されて、その軸方向に伸張する付勢力を作用させる圧縮バネとして機能する。
【0044】
そして、筐体部11の底壁部11aに設けられた貫通穴11b,11cに、当該筐体部11の内側から可動部13の爪部15とピン16とを挿通させるとともに、当該可動部13の支持軸13bを蓋部12の貫通穴に緩挿させた状態で、蓋部12を筐体部11に固定する。これにより、コイルスプリング14が蓋部12と可動部13のフランジ部13aとの間に狭持され、以て、可動部13の爪部15は、ガイド体9の底壁部9a側に向けて付勢された状態で、筐体部11の底壁部11aから露出することになる。
【0045】
このスライダ10については、ガイド体9によって、当該ガイド体9の長手方向の軸回りに回転するのが規制されている。ここで、ガイド体9は、回転体3および直動体4の軸方向に沿って延設されており、また、直動体4は、このスライダ10に例えばネジ止め等によって固定されている。すなわち、本実施形態では、このガイド体9とスライダ10との係合によって、直動体4の軸回りの回動が規制されている。
【0046】
一方、ガイド体9にスライダ10がセットされた状態で、鋸歯板17上に形成される鋸歯17aの列は、スライダ10から露出する爪部15と係合することができ、それらが係合した状態では、スライダ10はガイド体9の長手方向の一方側のみにしか移動できないようになっている。図6では、鋸歯17aの尖端は左側を指向しており、爪部15の尖端15aは右側を指向している。よって、この場合、爪部15の尖端15aと鋸歯17aとが相互に食いこんでスライダ10が同図の右方向に移動するのは規制されるが、同図の左方向に移動するのは許容されることになる。すなわち、本実施形態では、このガイド体9の鋸歯板17(鋸歯17aの列)と、スライダ10の爪部15とによって、移動規制機構が構築されている。なお、この移動規制機構は、直動体4が、回転体3と直動体4との磁気的結合による移動方向に移動するのを規制するが、その作用については後述する。
【0047】
ここで、図7〜図9を参照して、本実施形態にかかるアクチュエータ1の動作について説明する。
【0048】
まずは、図7および図8を参照しながら、回転体3および直動体4のより詳細な構成および動作について説明する。なお、図7の(a)〜(d)の各々において、左欄は軸方向からみた正面図、右欄は軸方向と直交する一方向から見た側面図である。また、図7中、左欄の実線の丸印は、回転体3上のある一点の軌跡(図7の(a)からの回動角度)を示すために便宜上付与したものである。破線の丸印は、図7の(a)における丸印の初期位置を示す。また、図7〜9は、ガイド体9および直動体4を全て同じ方向から見た図である。
【0049】
まず、回転体3の着磁筒3cの内周面には、螺旋状の磁化領域が形成されている。本実施形態では、内周側がN極となる螺旋磁石21N(以下、単にN極と記す)と、内周側がS極となる螺旋磁石21S(以下、単にS極と記す)とが、一定のピッチで二重螺旋状に相互に並行して配設されており、着磁筒3cの内周面には、軸方向に沿って、N極21NとS極21Sとが等間隔で交互に出現するようになっている。
【0050】
一方、直動体4の外周には、N極21NおよびS極21Sの二重螺旋と同じピッチで、二重螺旋状の突条4a(4a1,4a2)が設けられている。これら突条4aが、N極21NおよびS極21Sに対向(正対)したとき、着磁筒3cと直動体4とが磁気的に結合される。すなわち、本実施形態では、これら突条4aが結合部に相当する。
【0051】
さて、図7および図8の(a)の状態では、二重螺旋状のN極21NおよびS極21Sと、二重螺旋状の二つの突条4a(4a1,4a2)とが対向(正対)している。このとき、N極21Nに対向している突条は、4a2であり、S極21Sに対向している突条は、4a1である。
【0052】
この状態から、回転体3を回転させると、二重螺旋状のN極21NおよびS極21Sが、見かけ上(固定部に対して固定された回転軸を含む特定の平面において)、突条4a1,4a2に対して二重螺旋の巻方向と回転体3の回転方向とで決定される軸方向一方側(図7および図8では右側)に相対移動し、図7および図8の(b)の状態を経由して(c)の状態となる。
【0053】
図7および図8の(b)の状態では、N極21NおよびS極21Sと突条4a1,4a2との軸方向の相対的な位置ずれに伴い、磁気的な結合によって、直動体4には、図7および図8の右方向に推力が生じるが、ここで、上記移動規制機構、すなわち爪部15と鋸歯17aとの係止によって、直動体4の図7および図8の右側への移動が規制されるとともに、軸回りの回動も規制されているため、直動体4は、図7および図8の(a)の状態から移動することができずに静止したままとなる。
【0054】
また、図7および図8の(c)の状態では、軸方向については、螺旋磁石21Nおよび21Sの丁度中間に突条4a1,4a2が位置しており、この状態では、着磁筒3cと直動体4とに生じる磁気回路が相殺され、これらの磁気的な結合が解消される。
【0055】
ところが、さらに回転体3が回転して図7および図8の(d)の状態になると、突条4a1,4a2には、図7および図8の(a)の状態で磁気的に結合していたN極21NおよびS極21Sとは別の(図では左隣の)S極21SおよびN極21Nが近接して、直動体4には、図7および図8の左方向に磁気的な結合に伴う推力が作用する。これにより、突条4a1,4a2と磁気的に結合する螺旋磁石21N,21Sが入れ替わることになる。すなわち、N極21Nに対向する突条が、4a2から4a1に変化し、S極21Sに対向している突条が、4a1から4a2に変化する。
【0056】
このとき、上記移動規制機構、すなわち爪部15と鋸歯17aとによっては、直動体4の図7および図8の左方向への移動は規制されないため、磁気的な結合の新たな組み合わせによって、図8の(e)に示すように、直動体4は、図7および図8の左方向に移動する。
【0057】
このときのスライダ10および直動体4の一連の動作を、図9を参照して説明すると、まず、図7および図8の(a)〜(c)の状態では、図9の(a)に示すように、爪部15と鋸歯17aとが係合し、鋸歯17aの縦壁面17bと爪部15の縦壁面15bとが相互に当接しているため、スライダ10およびこれに固定される直動体4は、図9の右方向(すなわち図7および図8の右方向)には、移動することができない。なお、爪部15は、付勢機構としてのコイルスプリング14によって、鋸歯17aの根元側に押し付けられている。
【0058】
一方、図7および図8の(d)の状態では、直動体4には図7および図8の左方向に推力が生じるため、図9の(b)および(c)に示すように、爪部15は、左側に隣接する鋸歯17aの傾斜面を上り、図9の(d)に示すように、爪部15と当該左側に隣接する鋸歯17aとが係止する状態に遷移する。
【0059】
ここで、図8の(c)(すなわち磁気的に中立の状態)と(d)(すなわち次の組み合わせに移行しようとする状態)とを比較参照すると、相互に隣接する突条4aの軸方向のピッチ(=相互に隣接する螺旋磁石21N,21Sの軸方向のピッチ)をPとしたとき、直動体4の軸方向の移動距離は、最大でもその1/2(略0.5P)となることが理解できよう。本実施形態では、鋸歯17aのピッチを、ほぼ0.5Pとし、脱調による移動距離を大きくとっている。
【0060】
なお、鋸歯17aのピッチが0.5Pより低い場合には、当該ピッチが0.5Pに近いほど、スライダ10の動作は、移動速度が速い断続動作となり、ピッチが小さいほど、スライダ10の動作は往復動作に近付き、その移動速度が遅くなる。一方、鋸歯17aのピッチを0.5Pより大きくすると、スライダ10は所定区間内で往復動作することになる。
【0061】
このように、本実施形態にかかるアクチュエータ1は、移動規制機構によって、回転体3の回転方向と螺旋磁石21N,21Sおよび突条4a(4a1,4a2)の巻回方向とによって定まる磁気的結合による移動方向(順方向)に直動体4が移動する(回転体3に従動する)のを規制することで、磁気的結合の変化、すなわち脱調を生じさせて、直動体4を、当該順方向とは逆の方向に移動させるようにしたものである。
【0062】
かかるアクチュエータ1によれば、脱調による移動の際、回転体3と直動体4との磁気的な結合力によって直動体4が加速される分、当該直動体4により大きな衝撃的な推力を与えることができるという利点がある。
【0063】
また、本実施形態では、鋸歯板17に設けた鋸歯17aのピッチを、相互に隣接する突条4a1,4a2の軸方向のピッチ、すなわち相互に隣接する螺旋磁石21N,21Sの軸方向のピッチの1/2以下としたことで、直動体4を、脱調による移動方向に、断続的に移動させることができる。したがって、このアクチュエータ1は、断続的かつ衝撃的に一方向に打撃力を発生させる電動工具(例えば釘打ち工具等)に利用するのが好適である。この場合、出力(軸方向の出力)は、例えば直動体4の端部やスライダ10等から取り出すようにすればよい。
【0064】
さらに、本実施形態では、直動体4の脱調による移動経路の端部で、移動規制機構による移動規制を解除する移動規制解除機構を設けるとともに、アクチュエータ1の固定部側に、当該移動規制機構による移動規制を解除した状態で、直動体4側の案内子を移動可能に案内する非規制案内経路を設けている。本実施形態では、爪部15に設けたピン16を案内子として用いるとともに、ガイド体9の側壁部9bに設けた突壁部18を利用して、当該突壁部18に対して底壁部9aの反対側となる領域に非規制案内経路20を設けている。なお、移動規制機構による移動規制が有効な状態では、案内子としてのピン16は、突壁部18と、段差9cとの間に形成される溝状の移動経路19内で移動することになる。
【0065】
これら爪部15およびピン16の動作を、図10を参照して説明する。なお、図10は、図7〜図9と同じ視点から見た図である。
【0066】
移動規制機構による移動規制が有効な状態では、上述したように、爪部15は、脱調が生じるたびに、鋸歯17aを一つずつ乗り越えて左方向に移動する。このとき、ピン16は、爪部15の動作にしたがって、移動経路19内を上下しながら図10の左側に移動する。
【0067】
ここで、本実施形態では、鋸歯板17の鋸歯17aの列の終端部、すなわち、脱調による爪部15の移動方向の先方側の端部に、爪部15の移動に伴って当該爪部15を鋸歯17aから離間させる傾斜面17cが形成されている。すなわち、爪部15が傾斜面17cの手前(図10では右側)に位置する状態で脱調が生じると、爪部15には、図10の左方向に向かう推力が生じるが、この推力によって、爪部15は傾斜面17cに沿って図10の左上方向に移動する。このとき、この爪部15の移動に伴って、案内子としてのピン16は、非規制案内経路20内に移動する。そして、ピン16が非規制案内経路20にある状態では、コイルスプリング14から爪部15に付勢力が作用しても、ピン16が突壁部18に係合するため、爪部15は鋸歯17aから離間した状態を維持することができる。
【0068】
したがって、爪部15が傾斜面17cに沿って鋸歯17aから離間すると、ピン16が非規制案内経路20に沿って案内されることにより、回転体3の回転に応じて、当該回転体3と同期した直動体4およびスライダ10の移動に伴って、爪部15は、鋸歯17aから離間した状態のまま、図10の右方向に移動することができる。
【0069】
さらに、本実施形態では、突壁部18を、爪部15の脱調による移動方向の最も手前側の位置の近傍まで延設して、非規制案内経路20によって案内された爪部15が、脱調による移動方向の最も手前側の鋸歯17aと係止する位置まで戻るようにしている。こうすることで、一定区間における直動体4の断続的かつ衝撃的な直進動作を反復して実行することができる。
【0070】
ここで注目すべきは、こうした爪部15、ひいては直動体4の一連の動作、すなわち、直動体4の断続的かつ衝撃的な直進動作ならびに戻り動作について、回転体3の回転方向の切り替えを一切必要としない点である。すなわち、上記本実施形態によれば、複雑な制御回路等を要することなく、従来に比べて小型で、かつ簡素な構成によって、より大きな衝撃的かつ断続的な推力を得ることができるのである。
【0071】
以上のように、本実施形態によれば、回転体3と直動体4との磁気的結合状態を遷移させる(脱調させる)ことにより、断続的な直進動作あるいは往復動作を得るアクチュエータ1を、より簡素な構成によって具現化することができる。また、脱調によって回転体3と直動体4との磁気的結合状態を遷移させる際に、当該直動体4を磁力によって加速させることができ、その分、より大きな衝撃的な推力を得ることができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、回転体3の回転方向を切り替えることなく、当該回転体3を一回転方向に回転させることで、磁気的結合による直動体4の一方向への直進動作と、脱調による他方向への直進動作とを得ることができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、鋸歯17aの列と爪部15とを含む比較的簡素な構成によって、上記移動規制機構を構築することができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、直動体4を、上記逆方向(すなわち脱調による移動方向)に断続的に直進動作させることができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、上記移動規制機構による直動体4の移動規制を解除して、磁気的結合を維持したまま回転体3の回転に伴って直動体4を所定方向に直進動作させることができるようになる。よって、脱調によって移動した直動体4を、回転体の回転方向を変化させることなく移動前の位置に戻すことができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、一定区間における脱調による移動が完了した直動体4を、回転体3の回転方向を変化させることなく脱調による移動前の状態に復帰させることができる。よって、所定区間における直動体4の脱調による移動を、容易に反復実行することができる。
【0077】
(第2実施形態)図11は、本実施形態にかかるアクチュエータの固定部と直動体とを含む一部の縦断面図、図12は、アクチュエータの脱調時における直動体の推力エネルギを他の実施形態と比較して示す図である。なお、本実施形態にかかるアクチュエータは、上記実施形態にかかるアクチュエータと同様の構成要素を備えている。よってそれら対応する構成要素については、共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略するものとする。
【0078】
本実施形態にかかるアクチュエータは、移動規制機構による直動体4に対する移動規制に伴って弾性変形し、かつ直動体4の移動再開に伴って復元することで直動体4の移動を補助する弾性体22を設けたことを特徴とするものであり、この点以外は、上記第1実施形態とほぼ同様の構成である。
【0079】
具体的には、直動体4のスライダ10と連結される側の軸方向端部にフランジ23を固定し、このフランジ23とスライダ10との間に、弾性体22としてコイルスプリングを配置している。フランジ23には、ガイド体9の開口部にスライド可能に係合して、直動体4の回転を防止する回転止め23aが設けられる。
【0080】
この弾性体22には、適宜な弾性係数を設定し、移動規制機構によってスライダ10の移動(図11では右方向への移動)が規制された状態で、直動体4に磁気的結合による推力(図11では右方向への推力)が生じたときに、当該推力によって弾性変形(圧縮変形)するように構成される。
【0081】
図12は、横軸を回転体3と直動体4との軸方向の相対変位、縦軸を直動体4に作用する軸方向の推力(図11の右方向への推力を正とする)として、これらの相関関係を示したものであり、(a)は、上記第1実施形態の場合、(b)は本実施形態の場合を示したものである。
【0082】
まず、コイルスプリング等の弾性体22を設けない上記第1実施形態の場合(図12の(a))、回転体3の回転に伴って、螺旋磁石21N,21Sが、見かけ上(回転軸を含む特定の平面において)、突条4aに対して軸方向に沿って図11の右方向に0.5Pだけ相対移動する間は、直動体4およびスライダ10ともに、移動規制機構によって移動が規制されるため、出力として用い得るエネルギは無い(図7および図8の(a)〜(c)に相当)。
【0083】
その後、回転体3の回転に伴って、螺旋磁石21N,21Sが、見かけ上、図11の右方向にさらに進むと、脱調が生じ、そのときに作用する推力(磁気的結合の変化による推力)に基づくエネルギ(図12の(a)の面積Ea)を出力として用いることができる。
【0084】
一方、本実施形態の場合(図12の(b))、回転体3との磁気的結合によって、直動体4に、その移動が規制される方向(図11では右方向)の推力が作用すると、弾性体22が弾性変形して縮む。なお、直動体4はこの分だけ右側に移動することが許容される。このとき、図12中、ハッチングを施した領域の面積Ec分だけ、弾性体22にエネルギが蓄積される。
【0085】
さらに回転体3が回転し、回転体3と直動体4との磁気的結合力が弱まると、弾性体22は伸張しようとする。このとき、直動体4には弾性体22から図11の左側方向に付勢する推力が作用する。すなわち、この推力に基づくエネルギ(図12の(b)の面積Ec)を、出力として用いることができる。
【0086】
脱調による推力に基づくエネルギ(図12の(b)の面積Eb)は、弾性体22に引張力が作用する分だけ僅かに減少するが、その減少分は、上記弾性体22に蓄積されたエネルギより小さく、以て、エネルギの合計(Eb+Ec)は、上記第1実施形態のエネルギ(Ea)より大きくなる。
【0087】
なお、弾性体22のバネ定数を、回転体3と直動体4との間のピーク推力を相対変位量で除した値(図12の(b)中のKm)より小さく設定することで、かかる効果をより確実に得ることができる。
【0088】
以上の本実施形態によれば、弾性体22を設けたため、直動体4の移動を規制している際に弾性体22に蓄積したエネルギによって、直動体4の推力を高めることができ、以て、出力として用いるエネルギを高めることができる。
【0089】
また、本実施形態によれば、弾性体22が、上記移動規制機構による直動体4に対する移動規制に伴って回転体3と直動体4との間で作用する磁気的結合力よって弾性変形するようにしたため、直動体4の移動を規制している際に弾性体22をより確実に弾性変形させ、直動体4の推力をより確実に高めることができ、以て、出力として用いるエネルギをより確実に高めることができる。
【0090】
(第3実施形態)図13は、本実施形態にかかるアクチュエータの移動規制機構の構成を示す縦断面図、図14は、移動規制機構の構成を示す正面図、図15は、スライダの動作軌跡を示す説明図である。なお、本実施形態にかかるアクチュエータは、上記実施形態にかかるアクチュエータと同様の構成要素を備えている。よってそれら対応する構成要素については、共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略するものとする。
【0091】
本実施形態にかかるアクチュエータは、移動規制機構として、アクチュエータの固定部側に設定された摺動面17d上を直動体4の移動方向に沿って摺動する摺動子15Bを設け、摺動子15Bと摺動面17dとの摩擦による抵抗力が、回転体3の回転に伴って磁気的結合によって直動体4に作用する推力より大きく、かつ脱調時に直動体4に作用する推力より小さくなるようにしたことを特徴とするものであり、この点以外は、上記第1実施形態と同様の構成である。
【0092】
具体的には、鋸歯板17に替えて、摺動面17dが形成された摺動板17Bを設ける一方、スライダ10Bに、爪部15に替えて、底壁部9a側の端面を曲面状に形成した摺動子15Bを設け、摺動面17dと摺動子15Bとの摺動摩擦によって、スライダ10B、ひいては直動体4の動作を制御しようとするものである。
【0093】
すなわち、脱調時の磁気的結合によって直動体4に作用する推力は、同期時の磁気的結合によって直動体4に作用する推力に比べて大きくなる。よって、脱調時には、摺動子15Bが動いて摺動面17dと摺動子15Bとが動摩擦の状態となり、同期時の静摩擦の状態と比較して摩擦抵抗が小さい状態となる。一方、摺動面17dと摺動子15Bとの摩擦力は、コイルスプリング14による付勢力Nの他、摺動面17dや摺動子15Bの材質や、形状(接触面積や曲率等)、面粗度等によって調整することができる。したがって、これらのうち少なくとも一つを適宜に調整することで、摺動子15Bと摺動面17dとの摩擦による抵抗力Fが、回転体3の回転に伴って磁気的結合によって直動体4に作用する推力Fsより大きく、かつ脱調時に直動体4に作用する衝撃的な推力より小さくなるように設定することができる。
【0094】
そして、本実施形態の場合にも、図14および図15に示すように、上記第1実施形態と同様の突壁部18によって、脱調時の移動経路19と非規制案内経路20とを形成し、さらに脱調時の移動経路19の終端部に摺動子15Bを摺動面17dから離間させる傾斜面17eを設けることで、案内子としてのピン16を、図15に示すように移動案内することができ、以て、一定区間における直動体4の断続的かつ衝撃的な直進動作を反復して実行することができる。
【0095】
以上の本実施形態によれば、摺動子15Bと摺動面17dとの摩擦抵抗を利用した比較的簡素な構成によって、移動規制機構を構築することができる。
【0096】
(第4実施形態)図16は、本実施形態にかかるアクチュエータの移動規制機構の構成を側方から見た縦断面図、図17は、移動規制機構を正面から見た縦断面図、図18は、スライダの動作軌跡を示す説明図、図19は、ラッチローラの動作を示す説明図である。なお、本実施形態にかかるアクチュエータは、上記実施形態にかかるアクチュエータと同様の構成要素を備えている。よってそれら対応する構成要素については、共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略するものとする。
【0097】
本実施形態にかかるアクチュエータは、移動規制機構として、アクチュエータの固定部側に設定された転動面17d上を転動するラッチローラを設けたことを特徴とするものであり、この点以外は、上記第1実施形態と同様の構成である。
【0098】
具体的には、また、筐体部11の底壁部11aの裏面側には、相互に平行な一対の脚板11eを立設し、この脚板11e間に回動可能に架設したシャフト26に、歯車24と摩擦ローラ25を一体的に固定するとともに、可動部13に設けた爪部15Cを、歯車24と係合させるようにしている。すなわち、かかる構成では、歯車24と摩擦ローラ25とを一体的に回転させるようにするともに、歯車24に爪部15Cを係合させることで、シャフト26回りのいずれか一方の回転が規制されるラッチローラを構成している。
【0099】
そして、摩擦ローラ25と転動面17dとの摩擦(摺動摩擦)による抵抗力が、回転体3の回転に伴って磁気的結合によって直動体4に作用する推力より大きくなるようにしておく。摩擦力を増大させるために、摩擦ローラ25の外周面にはゴム等を装着するようにしてもよい。こうすることで、歯車24と爪部15Cとの係合によってラッチローラの転動が規制された状態では、摩擦ローラ25と転動面17dとの摺動摩擦によって、スライダ10Cが直動しないようにすることができる。
【0100】
ここで、ラッチローラが、脱調時に直動体4およびスライダ10Cに対して推力が作用する方向(図16の右方向)には転動するように構成し、かつ、同期時に直動体4およびスライダ10Cに対して推力が作用する方向(図16の左方向)には転動できないようにすれば、非転動時には、摩擦力が大きく摺動することもできないため、脱調時にのみ直動体4およびスライダ10Cの移動を許容する所期の移動規制機構を構築することができる。
【0101】
歯車24には、図19に示すように、その尖端側が一回転方向(図19では時計回り方向)を指向した複数の歯24aが形成されるとともに、爪部15Cは、コイルスプリング14によって、歯車24に押し付けられている。したがって、図19の(a)の状態では、爪部15Cの縦壁面15bと歯24aの端面24bとが当接して係合することにより、図19では反時計回り方向の歯車24の回転が規制される。
【0102】
一方、直動体4およびスライダ10Cに、図19の右側方向に向かう力が作用すると、図19の(b)〜(d)に示すように、爪部15Cが歯24aの緩斜面上を乗り越え、歯車24は図19の時計回り方向に回転することができる。なお、歯車24の歯24aのピッチは、スライダ10Cが0.5P(P:相互に隣接する突条4aの軸方向のピッチ;相互に隣接する螺旋磁石21N,21Sの軸方向のピッチ)以下の所定ピッチで動くことができる角度に設定する。
【0103】
そして、本実施形態の場合にも、図17および図18に示すように、上記第1実施形態と同様の突壁部18によって、脱調時の移動経路19と非規制案内経路20とを形成し、さらに脱調時の移動経路19の終端部に摩擦ローラ25を摺動面17dから離間させる傾斜面17eを設けることで、案内子としてのピン16を、図18に示すように移動案内することができ、以て、一定区間における直動体4の断続的かつ衝撃的な直進動作を反復して実行することができる。なお、ピン16は、一対の脚板11eに設けた二つの長穴11fを貫通して移動経路19内に挿入されている。
【0104】
以上の本実施形態によれば、ラッチローラを脱調による移動方向にのみ転動させることができ、比較的簡素な構成によって、移動規制機構を構築することができる。
【0105】
(第5実施形態)図20は、本実施形態にかかるアクチュエータの斜視図、図21は、アクチュエータの側面図、図22は、回転体と直動体との位置関係を示す説明図、図23は、回転体と直動体との磁気的結合状態の変化を示す説明図である。なお、本実施形態にかかるアクチュエータは、上記実施形態にかかるアクチュエータと同様の構成要素を備えている。よってそれら対応する構成要素については、共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略するものとする。
【0106】
本実施形態にかかるアクチュエータ1Dは、上記第1実施形態における直動体4と略同形状の棒状部材を回転体4Dとし、上記第1実施形態における回転体3と略同形状の筒状体を直動体3Dとしたものである。また、筒状の直動体3Dと棒状の回転体4Dとの間隙Gは、上記第1実施形態のスペーサ6と同形状のスペーサ27によって確保している。
【0107】
すなわち、直動体(着磁筒)3Dの筒内には、棒状の回転体4Dが装通されている。そして、本実施形態でも、スペーサ27の中心に設けた貫通穴の内径を、回転体4Dの外径とほぼ同じかあるいは僅かに大きく、かつ直動体(着磁筒)3Dの内径より小さくし、さらに、スペーサ27の貫通穴の中心と着磁筒3Dの軸心とが略同心となるようにして、これにより、回転体4Dが、スペーサ27の貫通穴内を摺動し、かつ着磁筒3Dの中心に配置されて、回転体4Dの外周と着磁筒3Dの内周とが接触することなく、かつ回転体4Dの外周の全周に亘って、着磁筒3Dとの間でほぼ一定距離の間隙Gが形成されるようにしてある。
【0108】
そして、直動体3Dの内周面には、螺旋状の磁化領域が形成されている。本実施形態では、内周側がN極となる螺旋磁石21N(以下、単にN極と記す)と、内周側がS極となる螺旋磁石21S(以下、単にS極と記す)とが、一定のピッチで二重螺旋状に配設されており、直動体3Dの内周面には、軸方向に向かうにつれて、N極21NとS極21Sとが等間隔で交互に出現するようになっている。
【0109】
一方、回転体4Dの外周には、N極21NおよびS極21Sの二重螺旋と同じピッチで、二重螺旋状の突条4aが設けられている。これら突条4aが、N極21NおよびS極21Sに対向(正対)したとき、直動体3Dと回転体4Dとが磁気的に結合される。すなわち、本実施形態では、これら突条4aが結合部に相当する。
【0110】
図23の(a)の状態では、二重螺旋状のN極21NおよびS極21Sと、二重螺旋状の二つの突条4a(4a1,4a2)とが対向(正対)している。このとき、N極21Nに対向している突条は、4a2であり、S極21Sに対向している突条は、4a1である。
【0111】
この状態から、回転体4Dを回転させると、突条4a1,4a2が、見かけ上(回転軸を含む特定の平面において)、二重螺旋状のN極21NおよびS極21Sに対して、当該二重螺旋の巻方向と回転体4Dの回転方向とで決定される軸方向一方側(図23では右側)に相対移動し、図23の(b)の状態を経由して(c)の状態となる。
【0112】
図23の(b)の状態では、突条4a1,4a2とN極21NおよびS極21Sとの軸方向の相対的な位置ずれに伴い、磁気的な結合によって、直動体3Dには、図23の右方向に推力が生じるが、ここで、ガイド体9とスライダ10とによって形成される移動規制機構によって、直動体3Dの図23の右側への移動が規制されるとともに、軸回りの回動も規制されているため、直動体3Dは、図23の(a)の状態から移動することができずに静止したままとなる。
【0113】
また、図23の(c)の状態では、軸方向については、螺旋磁石21Nおよび21Sの丁度中間に突条4a1,4a2が位置しており、この状態では、着磁筒3cと直動体4とに生じる磁気回路が相殺され、これらの磁気的な結合が解消される。
【0114】
ところが、さらに回転体4Dが回転して図23の(d)の状態になると、突条4a1,4a2には、図23の(a)の状態で磁気的に結合していたN極21NおよびS極21Sとは別の(図では左隣の)S極21SおよびN極21Nが近接して、直動体3Dには、図23の左方向に磁気的な結合に伴う推力が作用する。これにより、突条4a1,4a2と磁気的に結合する螺旋磁石21N,21Sが入れ替わることになる。すなわち、N極21Nに対向する突条が、4a2から4a1に変化し、S極21Sに対向している突条が、4a1から4a2に変化する。
【0115】
このとき、移動規制機構によっては、直動体3Dの図23の左方向への移動が規制されないため、磁気的な結合の新たな組み合わせにより、図23の(e)に示すように、直動体3Dは、図23の左方向に移動する。
【0116】
すなわち、本実施形態にかかるアクチュエータ1Dでも、移動規制機構によって、回転体4Dの回転方向と螺旋磁石21N,21Sおよび突条4a(4a1,4a2)の巻回方向とによって定まる磁気的結合による移動方向(順方向)に直動体3Dが移動する(回転体4Dに従動する)のを規制することで、磁気的結合の変化、すなわち脱調を生じさせて、直動体3Dを、当該順方向とは逆の方向に移動させるようにしたものである。
【0117】
かかるアクチュエータ1Dによっても、脱調による移動の際、回転体4Dと直動体3Dとの磁気的な結合力によって直動体3Dが加速される分、当該直動体4により大きな衝撃的な推力を与えることができるという利点がある。
【0118】
なお、本実施形態においても、移動規制機構による直動体3Dに対する移動規制に伴って弾性変形し、かつ直動体3Dの移動再開に伴って復元することで直動体3Dの移動を補助する弾性体を設け、直動体3Dの移動を規制している際に弾性体に蓄積したエネルギによって、直動体3Dの推力を高めることができ、以て、出力として用いるエネルギを高めるようにすることができる。例えば、直動体3D(スペーサ27)とスライダ10との間にコイルスプリング等の弾性体を設ければよい。
【0119】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0120】
例えば、上記各実施形態で開示した回転体や直動体、移動規制機構、その他の構成はあくまで一例に過ぎず、種々に変形して構成することができるし、回転体の回転方向や直動体の直進方向についても、上記実施形態には限定されない。
【0121】
また、各実施形態で開示した構成は、適宜に組み合わせて用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の実施形態にかかるアクチュエータの斜視図。
【図2】本発明の実施形態にかかるアクチュエータの回転体を含む一部の斜視図。
【図3】本発明の実施形態にかかるアクチュエータの回転体を含む一部の縦断面図。
【図4】本発明の実施形態にかかるアクチュエータの回転体を含む一部の分解斜視図。
【図5】本発明の実施形態にかかるアクチュエータの固定部と直動体とを含む一部の分解斜視図。
【図6】本発明の第1実施形態にかかるアクチュエータの固定部と直動体とを含む一部の縦断面図。
【図7】本発明の実施形態にかかるアクチュエータの回転体と直動体との位置関係の変化を示す説明図。
【図8】本発明の実施形態にかかるアクチュエータの回転体と直動体との磁気的結合状態の変化を示す説明図。
【図9】本発明の実施形態にかかるアクチュエータの移動規制機構の動作を示す説明図。
【図10】本発明の実施形態にかかるアクチュエータのスライダの動作軌跡を示す説明図。
【図11】本発明の第2実施形態にかかるアクチュエータの固定部と直動体とを含む一部の縦断面図。
【図12】本発明の第2実施形態にかかるアクチュエータの脱調時における直動体の推力エネルギを他の実施形態と比較して示す図。
【図13】本発明の第3実施形態にかかるアクチュエータの移動規制機構の構成を示す縦断面図。
【図14】本発明の第3実施形態にかかるアクチュエータの移動規制機構の構成を示す正面図。
【図15】本発明の第3実施形態にかかるアクチュエータのスライダの動作軌跡を示す説明図。
【図16】本発明の第4実施形態にかかるアクチュエータの移動規制機構の構成を側方から見た縦断面図。
【図17】本発明の第4実施形態にかかるアクチュエータの移動規制機構を正面から見た縦断面図。
【図18】本発明の第4実施形態にかかるアクチュエータのスライダの動作軌跡を示す説明図。
【図19】本発明の第4実施形態にかかるアクチュエータのラッチローラの動作を示す説明図。
【図20】本発明の第5実施形態にかかるアクチュエータの斜視図。
【図21】本発明の第5実施形態にかかるアクチュエータの側面図。
【図22】本発明の第5実施形態にかかるアクチュエータの回転体と直動体との位置関係の変化を示す説明図。
【図23】本発明の第5実施形態にかかるアクチュエータの回転体と直動体との磁気的結合状態の変化を示す説明図。
【符号の説明】
【0123】
1,1D アクチュエータ
2 回転駆動機構
3,4D 回転体
3D,4 直動体
4a(4a1,4a2) 突条(結合部)
15 爪部
15B 摺動子
16 ピン(案内子)
17 鋸歯板(鋸歯列)
17a 鋸歯
17d 摺動面
19 移動経路
21N,21S 磁石
22 弾性体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動機構によって回転駆動される回転体と、当該回転体の回転軸方向に往復動作可能でありかつ回転軸回りの回転が規制される直動体と、を備え、
前記回転体および直動体のうちいずれか一方に筒状部を形成するとともに、他方に当該筒状部の筒内に挿通される挿通部を形成し、
筒状部の内面および挿通部の外面のうち少なくともいずれか一方に螺旋状に配置された磁石を設ける一方、他方には当該磁石に対応する結合部を設け、
前記回転体の回転に応じて、前記磁石と前記結合部との磁気的結合によって、前記直動体に回転軸方向の推力を与えるアクチュエータにおいて、
前記直動体の軸方向の一方側への移動を規制する移動規制機構を設け、当該移動規制機構によって前記磁石と前記結合部とを脱調させることにより、当該直動体を断続動作あるいは往復動作させるようにしたことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記移動規制機構による直動体に対する移動規制に伴って弾性変形し、前記直動体の移動再開に伴って復元することで直動体の他方側への移動を補助する弾性体を設けたことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記弾性体が、前記移動規制機構による直動体に対する移動規制に伴って前記回転体と前記直動体との間で作用する磁気的結合力よって弾性変形するようにしたことを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記移動規制機構は、前記直動体が前記回転体の回転に伴って前記磁石と前記結合部との磁気的結合によって前記一方側へ移動するのを規制し、その逆方向に脱調によって移動するのを許容するものであることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一つに記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記移動規制機構として、アクチュエータの固定部側に前記直動体の移動方向に沿って設けられた鋸歯列と、前記直動体側に設けられて当該鋸歯列と係合する係合爪と、を備えることを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記鋸歯列における鋸歯のピッチを、前記螺旋状に配置された磁石の軸方向ピッチの1/2以下に設定したことを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記移動規制機構として、前記直動体側に、アクチュエータの固定部側に設定された摺動面上を当該直動体の移動方向に沿って摺動する摺動子を設け、
前記摺動子と摺動面との摩擦による抵抗力が、前記回転体の回転に伴って前記磁石と前記結合部との磁気的結合によって前記直動体に作用する推力より大きく、かつ脱調時に前記直動体に作用する推力より小さくなるようにしたことを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記移動規制機構として、前記直動体側に、アクチュエータの固定部側に設定された転動面上を転動するラッチローラを設けたことを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
アクチュエータの固定部側に、前記移動規制機構による移動規制を解除した状態で、前記直動体側の案内子を移動可能に案内する非規制案内経路を設けたことを特徴とする請求項5〜8のうちいずれか一つに記載のアクチュエータ。
【請求項10】
アクチュエータの固定部側の前記直動体の脱調による移動経路の端部で前記移動規制機構による移動規制を解除する移動規制解除機構を設けたことを特徴とする請求項9に記載のアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2007−57083(P2007−57083A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246758(P2005−246758)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】