説明

アクティブマトリクス反射表示デバイスのための電圧フィードバック回路

本発明は、反射表示デバイスで使用する駆動回路である。好ましい実施形態において、表示デバイスは、画素化されたアクティブマトリクスエレクトロクロミックデバイスである。本発明の回路は、サンプリングコンデンサおよび複数のインバータを含む。このサンプリング回路は、迅速にデータ電圧を格納する。アクティブマトリクスにおける複数のエレクトロクロミック画素のアドレス指定は、それによって加速される。インバータは、エレクトロクロミック画素を格納されたデータ電圧に迅速に駆動するために、比較的高電源および低電源に結合される。本発明の回路は、アクティブマトリクスにおけるエレクトロクロミック画素の迅速なリフレッシュを可能にし、かつエレクトロクロミック画素を白くするかつ再充電することなく色勾配を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して反射表示デバイス、特に電気化学表示器デバイスを駆動するための回路に関する。
【背景技術】
【0002】
反射表示デバイスは、今日の典型的な表示器デバイスとは根本的に異なる。反射表示デバイスは、入射光を反射し、一方典型的な表示器デバイスは、光源を選択的に覆う。典型的な表示器デバイスは、陰極線管(CRT)、液晶表示器(LCD)、およびプラズマ表示器を含む。典型的な表示器デバイスのこれら全ての例において、光源は、像を生成するために選択的に覆われまたは着色される。一方、反射表示器は、像を生成するために入射光を選択的に反射する。反射表示器の例は、エレクトロクロミック(electrochromic)表示器、電気泳動(electrophoretic)表示器、電気濡れ(electrowetting)表示器、誘電泳動(dielectrophoresis)表示器、および異方性回転ボール(anisotropically rotating ball)表示器を含む。反射表示器は、バックライトを必要とせず、優れたコントラスト比を生成し、かつ屋外などの明るい周囲光において容易に視認可能である。
【0003】
エレクトロクロミック化合物は、電子を得るまたは失うときに、可逆の色変化を示す。エレクトロクロミック化合物の固有の特性を活用する単一セグメント(single segment)のエレクトロクロミックデバイスは、大面積静的表示器(static display)および自動調光ミラー(dimming mirror)に応用され、良く知れられている。複数セグメントのエレクトロクロミック表示器デバイスは、エレクトロクロミック化合物を含む制御された領域を通過する選択的な変調光によって像を生成する。多数の制御されたエレクトロクロミック領域は、高解像度の像を集合的に生成するために、画素(pixel)として個別に機能することができる。典型的には、これらの表示器デバイスは、エレクトロクロミック化合物の下側に反射層を含み、各観察者にエレクトロクロミック領域を超えて通過することができる光を反射する。簡単に言えば、エレクトロクロミック画素が、光を遮断するか、または光が下側にある反射層を通過することを可能にするシャッタとして作用する。
【0004】
図1に示される典型的な従来技術のエレクトロクロミック表示器デバイス10は、典型的にはガラスまたはプラスチックであり、透明導体層20を支持するベース基板10を含み、透明導体層20は、例えば、フッ素がドープされた酸化錫(FTO)またはインジウムがドープされた酸化錫(ITO)の層であり得る。ナノ多孔性のナノ結晶半導体薄膜(nanoporous−nanocrystalline semi−conducting film)30(以降、単にナノ構造化薄膜(nano−structured film)30と称する)が、透明導体20上に、好ましくは有機結合剤を用いるスクリーン印刷を用いて堆積される。ナノ構造化薄膜は、典型的には、アンチモン酸化錫(ATO)などのドープされた金属酸化物である。任意選択で、酸化還元反応促進化合物(redox reaction promoter compound)が、ナノ構造化薄膜30上に吸着される。典型的には白色二酸化チタン(white titanium dioxide)(TiO2)であるイオン透過可能な反射層40が、好ましくは有機結合剤を用いてスクリーン印刷し、その後で焼結することにより、ナノ構造化薄膜30上に任意選択で堆積される。
【0005】
透明である第2の基板50は、FTOまたはITOの層であり得る透明導体層60を支持する。吸着された酸化還元発色団(redox chromophore)75、典型的には4、4’−ビピリジニウム誘導体化合物(4、4’−bipyridinium derivative compound)を有するナノ構造化薄膜70は、溶液からの自己組織化された(self−assembled)単層堆積(mono−layer deposition)を用いて、透明導体60上に堆積される。
【0006】
ベース基板10および第2の基板50は、次に、イオン透過可能な反射層40と、吸着された酸化還元発色団75を有するナノ構造化薄膜70との間に配置される電解液80とともに組み立てられる。カソード電極90およびアノード電極100に印加される電位は、吸着された酸化還元発色団75を還元し、それによって色変化を生成する。電位の極性を反転すると、色変化が反転する。酸化還元発色団75が、還元された状態でほぼ黒色または非常に深い紫色であるとき、観察者110は、ほぼ黒色または非常に深い紫色を視認する。酸化還元発色団75が、酸化された状態にありほぼ透明であるとき、観察者110は、ほぼ白色であるイオン透過可能な反射層40の反射された光を視認する。このように、黒色および白色表示器は、観察者110によって認識される。
【0007】
上述されたものなどエレクトロクロミック表示器デバイスは、参照によって本明細書に組み込まれる、いずれもFitzmauriceらへの特許文献1および特許文献2に非常に詳細に記載される。
【0008】
図1に示されるエレクトロクロミック表示器10は、個別の像要素(すなわち、画素A、BおよびC)を有する画素化された(pixilated)表示器である。各画素A、BおよびCに印加される電位は、透明導電層60内の専用のルーティングトラック(routing track)によって提供される。各画素A、BおよびCは、したがって、直接駆動される。画素Aに印加される電圧は、画素BまたはCを妨げない。高解像度像を表示できる大きなエレクトロクロミック表示器を生成するために、多数の画素が必要であり、したがって多数の直接駆動ルーティングトラックが必要である。数百万の画素を有する典型的なコンピュータモニタのために、数百万の直接駆動ルーティングトラックを製造することは実際的でない。
【0009】
各画素に独自の直接駆動ルーティングトラックを提供する複雑性を低減するために、アクティブマトリクスを使用されることができる。アクティブマトリクスにおいて、各画素は、全ての他の画素から各画素を電気的に絶縁するために、かつ各画素のマトリクスアドレス指定(matrix addressing)のためにアクティブ構成要素を有する。図2Aは、行R1・・・R4および列C1・・・C7にアドレス指定される複数の画素を制御するためのアクティブマトリクス200の概略図示である。多数のアクティブデバイス210、典型的にはトランジスタが、各行および列の交差部に配置される。図2Aおよび図2Bを参照すると、各アクティブデバイス210は、ゲート電極220、ソース電極230、およびドレイン電極240を含む。各画素260のカソード250は、アクティブデバイス210のドレイン電極240に電気的に接続される。画素260のアノード270は、全ての画素にわたって共通に接続される。
【0010】
所望の画素260、例えば行R2および列C2の交差部の画素260にデータを書き込むために、行信号が、アクティブデバイス210を活性化するように行R2に印加され、一方、異なる行信号が、全ての他の行(すなわち、行R1、R3およびR4)に印加され、これら行におけるアクティブデバイス210が不活性に維持されることを確実にする。列信号が、次に、画素210にデータを書き込むために列C2に印加される。典型的には、画素の全体の行は、同時に選択された行における各画素にデータを書き込むことによって同時に更新される。このように、多数の高密度の画素を、各画素の電気的な絶縁を維持しながら、個別に制御されることができる。
【0011】
典型的には、アクティブマトリクスは、薄膜トランジスタ(TFT)から構成される。TFTの製造は、従来技術で良く知られており、絶縁基板上への不透明な金属層の堆積を含む。したがって、TFTは、透明でも半透明でもない。さらに、上述の種類のエレクトロクロミック表示器における最適な切り替え時間および性能を達成するために、各TFTのドレインは、表示器のカソード側(すなわち、吸着されたビオロゲン(viologen)を有するナノ構造化薄膜を含む側)になければならない。したがって、エレクトロクロミック表示器10における画素A、BおよびCのアクティブ制御を達成することは、観察者100に対して表示器の前面に不透明なTFTを配置することを必要とする。これは、不透明なTFTが、表示器の反射率を減らし、画素開口を低減し、かつ表示器のコントラスト比および見掛けの輝度(apparent brightness)に悪影響を及ぼすので不利である。
【0012】
画素開口を低減することに加えて、従来技術のエレクトロクロミックデバイス駆動回路は、エレクトロクロミック画素の低速の切り替え時間を生成し、複数レベルの着色を提供する能力を欠き、かつ画素を最初に白くする(bleaching)ことなく、エレクトロクロミック画素を駆動することができない。典型的には、従来技術の駆動回路は、単一の直流電位によって給電される。したがって、駆動回路は、中間電圧を提供する能力なしに画素にオンまたはオフ信号を単に提供する。従来技術の駆動回路は、瞬間的な画素状態および駆動回路における不均一性を補償する能力も欠く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6301038号明細書
【特許文献2】米国特許第6870657号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Solar Energy Materials and Solar Cells、57、(1999)、107〜125
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、上記欠点を解消するアクティブマトリクス反射表示器のための駆動回路が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、反射表示デバイス、特にエレクトロクロミックデバイスで使用する駆動回路である。好ましい実施形態において、エレクトロクロミック表示器デバイスは、画素化されたアクティブマトリクスデバイスである。本発明の回路は、サンプリングコンデンサおよび複数のインバータを含む。このサンプリング回路は、迅速にデータ電圧を格納する。アクティブマトリクスにおける複数のエレクトロクロミック画素のアドレス指定は、それによって加速される。複数のインバータは、エレクトロクロミック画素を格納されたデータ電圧に迅速に駆動するために、比較的高電源および低電源に結合される。本発明の回路は、アクティブマトリクスにおけるエレクトロクロミック画素の迅速なリフレッシュを可能にし、かつエレクトロクロミック画素を白くするかつ再充電することなく色勾配(color gradient)を達成する。
【0017】
本発明のより詳細な理解は、例として与えられかつ添付の図面に関連して理解されるべき以下の説明からもたらされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】直接駆動の従来技術のエレクトロクロミック表示器デバイスである。
【図2A】表示器デバイスにおける複数の画素を制御するためのアクティブマトリクスの概略図示である。
【図2B】図2Aのアクティブマトリクスの単一のアクティブ要素の概略図示である。
【図3】本発明の好ましい実施形態による電圧フィードバック回路の概略図である。
【図4】反射絶縁層および本発明の好ましい実施形態による図3の電圧フィードバック回路を備えるアクティブマトリクスエレクトロクロミック表示器デバイスである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図3を参照すると、本発明による従来技術の欠点を解消するための回路300が示される。回路300は、スイッチ310、サンプリングコンデンサ320、および複数のインバータ330を含み、エレクトロクロミック画素340に結合される。好ましい実施形態において、回路300は、Vselect電極およびVdata電極のマトリクスの交差部に配置される。しかしながら、回路300は、セグメント化された(segmented)直接駆動エレクトロクロミックデバイスで使用されることもできることに留意されたい。
【0020】
回路300は、サンプリングコンデンサを使用し、それによって、その結合されるエレクトロクロミック画素340が選択されたとき、データ電圧が回路にプログラムされることを可能にする。次いでエレクトロクロミック画素340を、それが選択されず、かつ表示デバイスの残りの画素がアドレス指定される間に充電することができる。これは、表示器全体が、従来技術で以前に達成されたより非常に速いリフレッシュ速度で更新されることを可能にする。
【0021】
所定のエレクトロクロミック画素340をアドレス指定するために、マトリクスの選択電極355が選択される。所定のエレクトロクロミック画素340にデータを書き込むために、データ電極355が、エレクトロクロミック画素340にデータ電圧Vdataを提供する。n型トランジスタであるトランジスタM1での電圧差は、トランジスタM1を切り替える。したがって、ノード1は、Vdataのデータ電圧で充電される。サンプリングコンデンサ320であるC1は、同様にデータ電圧Vdataに充電される。
【0022】
アドレス指定フェーズの間、トランジスタM3は、オンに切り替えられかつ導通し、それによって、高電圧源Vhiと低電圧源Vlowとの間の準安定状態で、インバータ330(すなわちトランジスタM4およびM5)の第1段階を保持する。トランジスタM2は、行アドレス期間の間にオフであり、それによって、エレクトロクロミック画素340をノード1から絶縁する。
【0023】
選択電極350が選択されていないとき、ノード1は、データ電極355から絶縁されるようになり、次にトランジスタM2を介してエレクトロクロミック画素340に結合される。エレクトロクロミック画素340の容量が、コンデンサC2の容量より非常に大きいように、コンデンサC2が選択される。したがって、ノード1での電圧は、エレクトロクロミック画素340に格納される電圧にほぼ等しい。トランジスタM3は、第1のインバータ(すなわちM4およびM5)の入力および出力にもはや結合されず、ノード1での電圧変化は、C2を介して第1のインバータ(すなわちM4およびM5)の入力に結合される。第1のインバータ(すなわちM4およびM5)および第2のインバータ(すなわちM6およびM7)は、第3のインバータ(すなわちM8およびM9)が飽和に駆動されるように、結合される信号への電圧利得を加える。飽和に駆動される第3のインバータの特定のトランジスタであるM8またはM9は、Vdata(t−1)とVdata(t)との間の電圧差に応じ、ここでtは、所定の時間サンプルである。
【0024】
高電圧源Vhiおよび低電圧源Vlowは、好ましくは、エレクトロクロミック画素の典型的な駆動電圧に対して比較的高電圧源および低電圧源である。第3のインバータが、適切な電圧で飽和に駆動されるとき、エレクトロクロミック画素340は、画素340をVdataで直接単に充電するより速い速度で充電される。
【0025】
エレクトロクロミック画素340での電圧は変化するので、変化は、コンデンサC2を介して第1のインバータ(すなわちM4およびM5)の入力に結合され、それを、その元の準安定ポイントに向かって戻させる。第2のインバータ(すなわちM6およびM7)および第3のインバータ(すなわちM8およびM9)の入力は、また順安定電圧ポイントに強制される。エレクトロクロミック画素340の作動電圧範囲が、準安定電圧に比較的近い場合に、回路の静的安定位置が、最小の静的電力消費を確実にする。
【0026】
エレクトロクロミック画素340での最終状態が、トランジスタM1からM9の閾値および移動度に無関係であるので、トランジスタ不均一性のために、回路300は、像アーチファクト(image artifact)を最小化する。回路300のフィードバックループ設計は、所望の電圧レベルが画素340の電極に到達するとき、インバータ330がエレクトロクロミック画素340を充電することを停止させる。
【0027】
好ましくは、非アドレス指定期間の間、例えばエレクトロクロミック画素340が双安定モードであるとき、高電圧源Vhiおよび低電圧源Vlowは、準安定電圧にされ、それによって電力消費を最小化する。好ましい実施形態において、準安定電圧は、ゼロ(0)ボルトであるように選択される。
【0028】
エレクトロクロミック画素340に書き込まれるべきデータが、所定の時間期間にわたって変化しない場合に、電圧は、コンデンサC2を介して結合されず、回路300は、静的なままである。このシナリオにおいて、従来技術の駆動回路で必要なように、白くする段階または電力を消費する充電は必要ない。
【0029】
好ましくは、n型およびp型トランジスタM1からM9の閾値電圧は、平均動作ポイントの周りで非対称である。この実施形態では、回路における静的電力消費を最小化するエレクトロクロミック画素340のための新規な動作電圧範囲を選択することができる。他の実施形態では、電圧がノード1で格納されるとき、コンデンサC1が全く省略される。
【0030】
駆動スキーム(driving scheme)の一部として、トランジスタM3の電荷注入を、電圧信号Vdataに電圧オフセットを組み込むことによって説明することができる。この原理は、M1の切り替えから任意の電荷注入の影響を調整するために使用することもできる。これらの技術は、サンプリングコンデンサC1の必要な寸法を低減することを助長する。この電圧オフセットは、好ましくは、ガンマ調整回路、またはそうでなければ駆動信号経路で実施される。
【0031】
回路300の動作の基本原理を維持しながら、P型およびN型トランジスタが、交換可能であり得ることに留意されたい。n型だけまたはp型だけのデバイスを用いる実施が使用されてもよい。好ましくは、トランジスタは、集合的に相補的な金属酸化物半導体電界効果(CMOS)TFTとして知られている、nチャネルの金属酸化物半導体電界効果(NMOS)TFTとpチャネルの金属酸化物半導体電界効果(PMOS)TFTの組合せである。代わりに、有機TFT、または任意の他の種類のアクティブデバイスが使用され得る。コンデンサおよびトランジスタの不均一性は、エレクトロクロミック画素340を充電するために必要な時間が、画素毎にわずかに異なることを意味する。しかしながら、最小の充電時間およびトランジスタ寸法は、製造による最小トランジスタ性能に応じて特定することができる。したがって、最小の許容可能な性能は、所定のリフレッシュ期間で保証される。
【0032】
代わりの実施形態において、追加のトランジスタ(図示せず)が、第1のインバータ330の入力および出力に追加される。この追加のトランジスタは、好ましくはP型トランジスタであり、トランジスタM3の切り替えに起因する電荷注入を妨害することを助長する。追加のトランジスタは、選択電極350の反転信号に結合されるゲート信号を含む。
【0033】
好ましい実施形態において、図4を参照すると、背面基板410上に堆積された本発明による複数の駆動回路405を備えるアクティブマトリクスエレクトロクロミックデバイス400が示される。エレクトロクロミック表示器400が、純粋に例示目的で4つの画素D、E、FおよびGを含むことに留意されたい。各画素D、E、FおよびGは、その画素を駆動するための駆動回路305をそれぞれ有する。背面基板410は、好ましくはガラスであるが、駆動回路405およびエレクトロクロミック表示器400を備える以降の層を支持することができる任意の材料であり得る。例えば、背面基板410は、プラスチック、木材、皮、様々な組成物の織物、金属などの材料を含むことができる。したがって、これらの材料は、剛性または可撓性であり得る。
【0034】
絶縁層415が、駆動回路405上に堆積される。絶縁層415は、電解液420に実質的に不浸透性であり、それによって、駆動回路405を電解液420の可能性がある腐食効果から保護する。好ましくは、絶縁層415は、スピンコートされたガラスまたはポリイミドなどのポリマーである。絶縁層415は、単一のモノリシック層であることができ、またはそれは、所望の三次元構造を達成するために所望の特性を有する、同一または異なる材料の複数の層を備えることができる。好ましい実施形態において、絶縁層415は反射性である。絶縁層415の反射特性は、層を備える材料に固有であってもよく、または反射性粒子が、絶縁層415に散在されてもよい。
【0035】
ビア(via)として従来技術で知られている動作可能な接続部425は、駆動回路405を導体430に電気的に接続するために絶縁層に設けられる。好ましくは、動作可能な接続部425は、当業者に良く知られているフォトリソグラフィ技術を介して生成される。各動作可能な接続部またはビア425は、絶縁層415を通してほぼ上方に延在し、それぞれの導体430と電気接触し、導体430は、好ましくは、絶縁層415内に形成されまたはエッチングされた複数のウエル(well)435の底部および側部を覆う。動作可能な接続部425(すなわちビア)および導体430は、好ましくは両方とも透明であり、好ましくはFTO、ITOまたは導電ポリマーである。
【0036】
ウエル435は、好ましくはフォトリソグラフィ技術を使用して絶縁層415にエッチングされる。代わりに、ウエル435は、堆積された平坦な薄膜に機械的にエンボス加工することによって、ウエル435を規定する事前形成されたワッフルタイプの構造を含む薄膜を加えることによって形成される。
【0037】
仕切り(partition)440は、各ウエル435の電気的絶縁を維持し、またウエル435が、インクジェット堆積された材料のためのレセプタクル(receptacle)として作用することを可能にする。仕切り440は、エレクトロクロミックデバイス400のカソード445とアノード450との間のスペーサとしてさらに作用することができ、電解液420を介する画素間のイオンのクロストーク(ionic crosstalk)を低減するように作用する。仕切り440は、各ウエル435間の見える境界の目的をさらに果たし、各ウエル435の最適な外観を達成するために所望の寸法にされ得る。仕切りは、ウエル435のほぼ上方にかなり延在して示されているが、それらは、代わりにウエル435の頂部とほぼ同一面であることができることに留意すべきである。
【0038】
吸着された電子発色団を有する半導体層460は、導体430上に堆積される。好ましくは、半導体層460は、前述されたナノ構造化された金属酸化物半導体薄膜である。半導体金属酸化物は、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、クロム、モリブデン、タングステン、バナジウム、ニオブ、タンタル、銀、亜鉛、ストロンチウム、鉄(Fe2+またはFe3+)、またはニッケル、あるいはそれらのペロブスカイトなどの任意の適切な金属の酸化物であり得る。TiO2、WO3、MoO3、ZnO、およびSnO2が、特に好ましい。最も好ましくは、ナノ構造化された薄膜は、二酸化チタン(TiO2)であり、吸着された電子発色団は、一般式I〜IIIの化合物である。
【0039】
【化1】

【0040】
1は、以下のいずれかから選択される。
【0041】
【化2】

【0042】
2は、C1-10アルキル、N酸化物、ジメチルアミノ、アセトニトリル、ベンジル、フェニル、ニトロによってモノまたはジ置換されたベンジル、ニトロによってモノまたはジ置換されたフェニルから選択される。R3は、C1-10アルキルであり、R4、R5、R6およびR7は、水素、C1-10アルキル、C10アルキレン、アリルまたは置換されたアリル、ハロゲン、ニトロ、およびアルコール基からそれぞれ無関係に選択される。Xは、電荷平衡イオンであり、n=1〜10である。
【0043】
式I〜IIIの化合物は、良く知られており、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる非特許文献1に記載されるように調製され得る。好ましい実施形態において、吸着された電子発色団は、ビス−(2−フォスフォノエチル)−4,4’−ビピリジニウム二塩化物である。
【0044】
代わりの実施形態において、反射絶縁層415は、各画素D、E、FおよびG透明導体430のほぼ平坦な電気絶縁体であることができ、半導体層460は、空間的な分離、追加の絶縁層、または他の絶縁手段によって達成される。駆動回路405への電解液420の腐食効果は、この代わりの構成における絶縁層415によってまだ妨げられる。任意選択で、選択的に寸法決定されたスペーサビード455を、カソード445とアノード450との間の所望の間隔を維持するために使用することができる。
【0045】
実質的に透明である前面基板465は、実質的な透明導体470を支持する。基板465は、ガラスまたはプラスチックなどの任意の適切な透明材料であり得る。材料は、剛性または可撓性であり得る。FTO、ITO、または任意の他の適切な透明導体が、透明導体470に使用されてもよい。
【0046】
半導体層475が、透明導体470上に堆積される。好ましくは、半導体層475は、SbがドープされたSnO2を含むナノ構造化された金属酸化物半導体薄膜である。代わりの実施形態において、半導体層475は、カソード445の半導体層460に吸着されたエレクトロクロミック化合物の酸化および還元を助長するための、吸着された酸化還元促進物を含む。
【0047】
エレクトロクロミック表示器400は、カソード電極445上にアノード電極450を配置することによって組み立てられ、2つの電極445、450が接触しないことを確実にする。好ましくは、可撓性シールが、周囲の周りに形成され、電極445、450が接触しないことを確実にする。代わりに、カソード電極445とアノード電極450の物理的分離が、本明細書に記載されるように、第1に堆積したスペーサビード455または他のスペーサ構造によって確実にされ得る。絶縁層415上に形成された仕切り440は、カソード電極445とアノード電極450との間の分離を維持するように作用することもできる。アノード電極450が、画素D、E、FおよびGの全面積を覆い、かつ画素D、E、FおよびGの面積に対応する個別面積にセグメント化されないことに留意すべきである。電解液420は、好ましくは真空チャンバ内でのバックフィリング(back−filling)によって、電極445、450間に設けられる。
【0048】
カソード電極445およびアノード電極450に印加される電位は、吸着された電子発色団を有する半導体層460における電子の流れを引き起こす。酸化および還元時に、吸着された電子発色団は色を変化させる。好ましくは、吸着された電子発色団は、還元された状態で実質的に黒色であり、酸化された状態でほぼ透明である。観察者480は、ほぼ黒色の画素として還元され吸着された電子発色団を含む画素を視認する。観察者480は、下にある反射絶縁層415の色として、酸化され吸着された電子発色団(すなわち、透明の吸着された電子発色団)を含む画素を視認する。このように、アクティブマトリクスエレクトロクロミック表示器が認識される。
【0049】
代わりに、各ウエル435は、異なる色特性を示す吸着された電子発色団を有する半導体層460を含み得る。例えば、還元された状態で赤色、緑色、および青色に見え、かつ酸化された状態で透明に見える吸着された電子発色団が使用され得る。この代わりの実施形態において、反射絶縁層415は、好ましくは白色である。各画素に電位を選択して印加することによって、各画素D、E、FおよびGの外観は、電子発色団の着色された状態と、下の反射絶縁層415の色との間で切り替えられることができる。
【0050】
上述の実施形態は、エレクトロクロミック表示器デバイスと組み合わせて記載されたが、これは単に例示である。発明の駆動回路は、電気泳動表示器、電気濡れ表示器、誘電泳動表示器、異方性回転ボール表示器、および他の種類の反射表示デバイスなどの、任意の種類の反射表示デバイスで使用され得る。
【0051】
本発明の特徴および要素は、特定の組合せで好ましい実施形態で記載されたが、各特徴または要素は、好ましい実施形態の他の特徴および要素なしに単独に使用されてもよく、または本発明の他の特徴および要素との様々な組合せで、あるいは本発明の他の特徴および要素なしに使用されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射表示画素を充電する方法であって、
前記反射表示画素にデータ信号を提供することと、
前記データ信号を格納することと、
前記反射表示画素を電気的に絶縁することと、
駆動信号を生成するために前記データ信号を増幅することと、
前記反射表示画素の電位が前記格納されたデータ信号と等しくなるまで、前記駆動信号を前記反射表示画素に提供することとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記反射表示画素は、エレクトロクロミック画素であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エレクトロクロミック画素は、アクティブマトリクスエレクトロクロミック表示器に含まれることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エレクトロクロミック画素は、トランジスタを用いて前記アクティブマトリクスから電気的に絶縁されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アクティブマトリクスは、選択ラインおよびデータラインを含み、前記データ信号は、前記データラインを用いて前記エレクトロクロミック画素に提供されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記データ信号は、コンデンサに格納されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記データ信号は、前記駆動信号を生成するために複数のインバータによって増幅されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のインバータそれぞれは、電圧プルアップデバイスおよび電圧プルダウンデバイスを備えることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記電圧プルアップデバイスはp型トランジスタであり、かつ前記電圧プルダウンデバイスはn型トランジスタであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
各電圧プルアップデバイスは、比較的高電圧源に結合されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
各電圧プルダウンデバイスは、比較的低電圧源に結合されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記複数のインバータそれぞれは、電圧利得を提供することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
反射表示画素を充電するための回路であって、
データ信号からエレクトロクロミック画素を選択的に絶縁するための手段と、
前記データ信号をサンプリングするための手段と、
駆動電位を生成するために前記データ信号を増幅するための手段とを備え、
前記回路は、前記エレクトロクロミック画素上で前記駆動電位を維持することを特徴とする回路。
【請求項14】
前記反射表示画素は、エレクトロクロミック画素であることを特徴とする請求項13に記載の回路。
【請求項15】
アクティブマトリクス反射表示デバイスにおける画素を充電するための回路であって、前記アクティブマトリクスは、選択ラインおよびデータラインを備え、前記回路は、
前記選択ラインと前記データラインとの間の電圧差が、所定の閾値より高いときに、前記画素を選択するためのスイッチと、
前記データラインによって供給されるデータ信号を格納するためのコンデンサと、
前記コンデンサに格納された前記データ信号を増幅するための複数のインバータとを備え、
前記電圧差が前記所定の閾値より高くないとき、前記スイッチは、前記コンデンサを前記データラインから絶縁することを特徴とする回路。
【請求項16】
前記画素は、エレクトロクロミック画素であることを特徴とする請求項15に記載の回路。
【請求項17】
前記スイッチは、
第1のトランジスタを備え、前記第1のトランジスタのソースは、前記データラインに結合され、前記第1のトランジスタのゲートは、前記選択ラインに結合され、かつ前記第1のトランジスタのドレインは、前記コンデンサに結合されることを特徴とする請求項15に記載の回路。
【請求項18】
前記スイッチは、さらに、
第2のトランジスタを備え、前記第2のトランジスタのソースは、画素電極に結合され、前記第2のトランジスタのドレインは、前記コンデンサに結合され、かつ前記第2のトランジスタのゲートは、前記選択ラインに結合されることを特徴とする請求項17に記載の回路。
【請求項19】
前記複数のインバータそれぞれは、さらに、
比較的高電圧源に結合されるソースを有するプルアップデバイスと、
比較的低電圧源に結合されるソースを有するプルダウンデバイスとを備えることを特徴とする請求項15に記載の回路。
【請求項20】
前記複数のインバータそれぞれは、さらに、
比較的高電圧源に結合されるソースを有するp型トランジスタと、
比較的低電圧源に結合されるソースを有するn型トランジスタとを備えることを特徴とする請求項15に記載の回路。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−518456(P2010−518456A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549611(P2009−549611)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/001863
【国際公開番号】WO2008/100518
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(504000096)エヌテラ リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】NTERA LIMITED
【出願人】(509228798)エヌテラ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】