説明

アクティブマトリクス型発光表示パネルの駆動装置および駆動方法

【課題】有機EL素子の順方向電圧に対応した逆バイアスを印加することで、発光素子の寿命を効果的に延ばせる発光表示パネルの駆動装置を提供する。
【解決手段】モニタ素子Exに発生する順方向電圧Vfに基づいて、DC−DCコンバータ6による出力電圧VHが制御される。各画素の走査および点灯期間においては、FETQ1,Q4がオン状態にされ、発光素子E1〜Enは、データドライバ2からのデータ電圧に応じて選択的に点灯制御される。画像信号の1フレームの切り換えタイミングにおいて、FETQ2,Q3,Q5がオン状態に制御され、これによりDC−DCコンバータ6による出力電圧VHは、各発光素子E1〜Enに対して逆バイアス電圧として印加される。逆バイアス電圧は、素子の経時変化に応じて制御されるので、素子の発光層に残留した順方向電圧印加時のキャリアを効果的に除去することができ、素子の発光寿命をより延命させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画素を構成する発光素子を例えばTFT(Thin Film Transistor)により選択的に発光駆動させて画像表示させると共に、前記発光素子に対して逆バイアス電圧を印加することで素子の発光寿命を延命させることができるように構成したアクティブマトリクス型発光表示パネルの駆動装置および駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や携帯型情報端末機(PDA)などの普及によって、高精細な画像表示機能を有し、薄型かつ低消費電力を実現することができる表示パネルの需要が増大しており、従来より液晶表示パネルがその要求を満たす表示パネルとして多くの製品に採用されてきた。一方、昨今においては自発光型表示素子であるという特質を生かした有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を用いた表示パネルが実用化され、これが従来の液晶表示パネルに代わる次世代の表示パネルとして注目されている。これは素子の発光機能層に、良好な発光特性を期待することができる有機化合物を使用することによって、実用に耐え得る高効率化および長寿命化が進んだことも背景にある。
【0003】
前記した有機EL素子は、基本的にはガラス等の透明基板上に、例えばITOによる透明電極と有機物質からなる発光機能層と金属電極とが順次積層されることで構成されている。そして、前記発光機能層は、有機発光層の単一層、あるいは有機正孔輸送層と有機発光層からなる二層構造、または有機正孔輸送層と有機発光層および有機電子輸送層からなる三層構造、さらにこれらの適切な層間に電子もしくは正孔の注入層を挿入した多層構造になされる場合もある。
【0004】
図1は前記した有機EL素子を発光素子として用いたアクティブマトリクス型表示パネルにおける1つの画素10に対応する最も基本的な回路構成の一例を示したものであり、この回路構成はコンダクタンスコントロール方式と呼ばれている。図1においてnチャンネル型制御用TFT(Tr1)のゲートは、走査ドライバ1からの走査ラインに接続され、そのソースはデータドライバ2からのデータラインに接続されている。また制御用TFTのドレインは、pチャンネル型駆動用TFT(Tr2)のゲートに接続されると共に、電荷保持用のコンデンサC1の一方の端子に接続されている。
【0005】
そして、駆動用TFT(Tr2)のソースは、前記コンデンサC1の他方の端子に接続されると共に、スイッチS1を介して駆動電圧源VHに接続されている。また駆動用TFTのドレインは発光素子としてのEL素子E1のアノードに接続され、当該EL素子のカソードはスイッチS2を介して基準電位点GNDに接続されている。この図1に示した例においては、前記スイッチS1およびS2をそれぞれ図示とは逆方向に切り換えることにより、前記EL素子E1に対して駆動用TFT(Tr2)を介して逆バイアス電圧を印加することができる。なお、図1においては制御用TFT(Tr1)、駆動用TFT(Tr2)およびコンデンサC1による画素回路を、符号3で示している。
【0006】
図1に示す構成において、制御用TFT(Tr1)のゲートに走査ラインを介してオン制御電圧Selectが供給されると、制御用TFT(Tr1)はソースに供給されるデータラインからの電圧Vdataに対応した電流を、ソースからドレインに流す。したがって、制御用TFTのゲートがオン電圧の期間に、前記コンデンサC1が充電され、その電圧が駆動用TFTのゲートにゲート電圧として供給される。それ故、駆動用TFTは、そのゲートとソース間電圧(Vgs)に基づいた電流をEL素子E1に流し、EL素子を発光駆動させる。
【0007】
一方、制御用TFT(Tr1)のゲートがオフ電圧になると、当該トランジスタはいわゆるカットオフとなり、制御用TFTのドレインは開放状態となるものの、駆動用TFT(Tr2)はコンデンサC1に蓄積された電荷によりゲート電圧が保持され、次の走査までEL素子E1の発光も維持される。
【0008】
ところで、前記した有機EL素子は、電気的にはダイオード特性を有する発光エレメントと、これに並列に接続された静電容量(寄生容量)を有していることは周知のとおりであり、また、有機EL素子は発光に関与しない逆方向の電圧(逆バイアス電圧)を逐次印加することで、EL素子に発生するリーク現象を自己リペア(修復)し、またEL素子の発光寿命を延ばすことができることが経験的に知られている。
【0009】
そこで、図1に示した構成においては、前記したとおりスイッチS1およびS2を利用してEL素子E1に対して逆バイアス電圧を印加することができるように構成されている。すなわち、スイッチS1およびS2が図に示す状態である場合には、発光駆動電圧VHを、駆動用TFT(TR2)とEL素子E1の直列回路に供給することができる。これにより、駆動用TFTのオン動作によりEL素子E1を点灯状態にすることができる。
【0010】
また、スイッチS1およびS2を図とは逆の方向に切り換えることにより、前記駆動電圧VHを逆バイアス電圧として駆動用TFT(Tr2)とEL素子E1の直列回路に供給することができ、これにより、EL素子E1の前記した自己リペアおよび延命効果を発揮させることができる。
【0011】
図1に示したように、予め定められた駆動電圧VHをスイッチS1およびS2を介してEL素子に順方向および逆方向に切り換えて印加することで、EL素子E1の発光寿命を延命させようとする表示パネルの駆動装置が特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2003−280582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、前記した有機EL素子は、図2(a)に示すように、駆動電流Iにほぼ比例した輝度Lで発光し、図2(b)に実線で示すように駆動電圧Vが発光閾値電圧Vth以上の場合において急激に電流Iが流れて発光する特性を有している。換言すれば、駆動電圧が発光閾値電圧Vth以下の場合には、EL素子には電流は殆ど流れず発光しない。したがって、EL素子の輝度特性は図2(c)に実線で示すように前記閾値電圧Vthより大なる発光可能領域においては、それに印加される電圧Vの値が大きくなるほど、その発光輝度Lが大きくなる特性を有している。
【0013】
一方、前記した有機EL素子は、長期の使用によって素子の物性が変化し、順方向電圧Vfが大きくなることが知られている。このために、有機EL素子は図2(b)に示したように実使用時間によって、V−I(L)特性が矢印に示した方向(破線で示した特性)に変化し、したがって輝度特性も低下することになる。
【0014】
さらに、有機EL素子の輝度特性は、温度によって概ね図2(c)に破線で示すように変化することも知られている。すなわちEL素子は、前記した発光閾値電圧より大なる発光可能領域においては、それに印加される電圧Vの値が大きくなるほど、その発光輝度Lが大きくなる特性を有するが、高温になるほど発光閾値電圧が小さくなる。したがってEL素子は、高温になるほど小さい印加電圧で発光可能な状態となり、同じ発光可能な印加電圧を与えても、高温時は明るく低温時は暗いといった輝度の温度依存性を有している。
【0015】
さらにまた、前記したEL素子はその発光色に応じて駆動電圧に対する発光効率が異なるという問題を有しており、現状において実用化し得るR(赤色)、G(緑色)、B(青色)をそれぞれ発光するEL素子の発光効率は、初期の段階においては概ね図2(d)に示したようにGの発光効率が高く、Bの発光効率が最も低いという状況にある。そして、これらR,G,Bを発光する各EL素子の個々においても、図2(b)および(c)で示したような経時変化および温度依存性をそれぞれ有している。
【0016】
一方、前記したように経時変化によりEL素子の順方向電圧Vfが上昇した場合においては、EL素子に対して一定の電圧を適宜逆バイアス電圧として印加しても、素子の延命効果を上げることができないという問題が生ずることを、本件出願の発明者は知見している。これは、順方向電圧Vfの値が上昇した状態においては、素子のカソード側に印加する電圧が一定である場合には、EL素子の発光層に残留したキャリアを逆バイアス電圧により完全に除去することができないためであると考えることができる。
【0017】
この発明は、前記した技術的な観点に基づいてなされたものであり、発光素子の順方向電圧Vfの変化に対応した発光輝度を補償すると共に、前記発光素子の順方向電圧Vfの増大にかかわらず逆バイアス電圧の印加による素子の延命効果を十分に発揮し得るアクティブ駆動型発光表示パネルの駆動装置および駆動方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる発光表示パネルの駆動装置は、請求項1に記載のとおり、ダイオード特性を有する発光素子を表示用画素としてそれぞれマトリクス状に配列し、前記発光素子を選択的に発光駆動させる発光駆動トランジスタを前記表示用画素毎に備えたアクティブマトリクス型発光表示パネルの駆動装置であって、前記各発光素子のアノード側には、当該発光素子を点灯駆動させる駆動電圧、もしくは非駆動電圧のいずれかを選択して印加する第1の選択手段と、前記各発光素子のカソード側には、各発光素子に逆バイアスを与える逆方向電圧、もしくは基準電圧のいずれかを選択して印加する第2の選択手段とが具備され、前記駆動電圧と逆方向電圧は、モニタ用素子によって得られる順方向電圧に追従した電圧値である点に特徴を有する。
【0019】
また、前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる発光表示パネルの駆動方法は、請求項7に記載のとおり、ダイオード特性を有する発光素子を表示用画素としてそれぞれマトリクス状に配列し、前記発光素子を選択的に発光駆動させる発光駆動トランジスタを前記表示用画素毎に備えたアクティブマトリクス型発光表示パネルの駆動方法であって、第1の選択手段によって、前記各発光素子のアノード側に、当該発光素子を点灯駆動させる駆動電圧もしくは非駆動電圧のいずれかを選択して印加すると共に、第2の選択手段によって、前記各発光素子のカソード側に、当該発光素子に逆バイアスを与える逆方向電圧もしくは基準電圧のいずれかを選択して印加する動作が実行され、前記駆動電圧と前記逆方向電圧は、モニタ用素子によって得られる順方向電圧に追従した電圧値になされている点に特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明にかかる発光表示パネルの駆動装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図3はその第1の実施の形態を示した回路構成図であり、符号1および2は、すでに説明した図1と同様に走査ドライバおよびデータドライバを示している。また、符号E1〜Enは1つの走査ラインに対応して配置された発光素子としての表示用EL素子を示しており、符号31〜3nは前記各EL素子E1〜Enを個々に発光駆動する画素回路を示している。すなわち、前記画素回路31〜3nが、コンダクタンスコントロール方式の回路構成である場合においては、すでに説明した図1における画素回路3と同様の回路構成にされる。
【0021】
そして、画素回路31〜3nとEL素子E1〜Enの組み合わせは、紙面の都合で1走査ラインに対応したものが示されているが、前記の組み合わせは図3における縦方向に多数(走査ライン分)配列され、これによりアクティブマトリクス型発光表示パネルを構成している。
【0022】
符号Exはモニタ用素子を示しており、これは表示パネル上に配列された前記した表示用の各EL素子E1〜Enの成膜工程時において、例えば同一のマスクを用いて表示パネルの一部に成膜することで、表示用の各EL素子E1〜Enと同一仕様(ほぼ同一寸法、同一面積)のEL素子とすることができる。これにより、表示用の各EL素子E1〜Enとモニタ用のEL素子Exは、その温度依存性および経時変化に対応した電気的な特性をほぼ一致させることができる。
【0023】
前記モニタ用素子Exには、電圧源Vccによって駆動される定電流源4より定電流が供給されるように構成されている。そして、定電流の供給によりモニタ用素子Exのアノード端子に生成される順方向電圧Vfは、サンプリングホールド回路5によってホールドされ、出力電圧制御手段としてのDC−DCコンバータ6に対して制御用電圧として供給されるように構成されている。
【0024】
前記DC−DCコンバータ6は、例えばバッテリーを一次側の電源とする昇圧型のスイッチングレギュレータにより構成されており、前記サンプリングホールド回路5によってホールドされたモニタ用素子Exの順方向電圧Vfに基づいて、その出力電圧VHが制御されるように機能する。したがって、後述するようにコンバータ6の出力を駆動電圧として表示用EL素子E1〜Enを点灯駆動させることで、好ましい温度補償および経時変化に対応した輝度補償動作を実現させることができる。
【0025】
図3に示す実施の形態においては、前記コンバータ6による出力VHは、pチャンネル型FETQ1を介して各表示用EL素子E1〜Enを発光駆動させる画素回路31〜3nに供給されるように構成されている。また、画素回路31〜3nへの電源供給線と基準電位点との間にはnチャンネル型FETQ2が接続されている。そして、FETQ1とQ2は後述するように択一的にオン動作されるように制御される。要するに、前記FETQ1とQ2との組み合わせは、図1に示したスイッチS1と同一の機能を果たすものであり、これを第1の選択手段と称呼することにする。
【0026】
また、前記EL素子E1〜Enの各カソード電極は、一般的にEL素子の成膜時に成形される一枚の共通陰極にそれぞれ接続された構成にされており、この共通陰極には、pチャンネル型FETQ3を介して前記コンバータ6からの出力VHが供給されるように構成されている。また、前記共通陰極と基準電位点との間にはnチャンネル型FETQ4が接続されている。そして、FETQ3とQ4は後述するように択一的にオン動作されるように制御される。要するに、前記FETQ3とQ4との組み合わせは、図1に示したスイッチS2と同一の機能を果たすものであり、これを第2の選択手段と称呼することにする。
【0027】
なお図3において、モニタ用素子Exのカソード端子は前記した表示用EL素子E1〜Enのカソード端子と共に共通陰極に接続されており、そのアノード端子と基準電位点との間にはnチャンネル型FETQ5が接続されている。このFETQ5は後述するように、モニタ用素子Exに対しても適宜逆バイアス電圧を印加するように機能する。
【0028】
図3に示した構成において、各画素の走査および点灯期間においては、前記FETQ1およびQ4がオン状態にされ、またFETQ2,Q3,Q5はオフ状態に制御される。これにより、画素回路31〜3nへの電源供給線には、FETQ1を介してコンバータ6からの出力、すなわち表示用EL素子の駆動電圧VHが印加される。また各EL素子のカソード側の共通陰極は、FETQ4を介して回路の基準電位点に接続され、前記共通陰極には基準電圧が印加される。したがって、各画素を構成するEL素子E1〜Enは、データドライバ2からのデータ電圧に応じて選択的に点灯制御され、これにより表示パネル上には画像信号に基づく映像が発光表示される。
【0029】
また、画像信号の例えば1フレームの切り換えタイミングにおいては、前記FETQ1およびQ4がオフ状態にされ、またFETQ2,Q3,Q5はオン状態に制御される。これにより、各画素を構成するEL素子E1〜Enに対して逆バイアス電圧を印加させることができる。すなわち、画素回路31〜3nへの電源供給線は、FETQ2を介して基準電位点に接続され、これにより画素回路31〜3nへの電源供給線には非駆動電圧が印加される。また各EL素子のカソード側の共通陰極には、FETQ3を介してコンバータ6からの出力VHが、逆方向電圧として印加される。
【0030】
またこの時、前記モニタ用素子Exに対しても、FETQ3,Q5を介して逆バイアス電圧を与えることができる。これにより、モニタ用素子Exの延命効果をもたらすことができると共に、モニタ用素子Exにより生ずる順方向電圧Vfと、表示用EL素子E1〜Enの順方向電圧に乖離が生ずるのを効果的に防止させることができる。なお、図3に示した回路構成においては、表示用EL素子を点灯駆動させる駆動電圧の電圧値と、各EL素子に逆バイアスを与える逆方向電圧の電圧値は、同じ値VHに設定されることになる。
【0031】
そして、各画素の走査および点灯期間においてなされる前記したFETQ1とQ4のオン動作に対するFETQ2,Q3,Q5のオフ動作、また表示用EL素子に逆バイアス電圧を印加する場合においてなされるFETQ1とQ4のオフ動作に対するFETQ2,Q3,Q5のオン動作は、それぞれ同期して実行される。
【0032】
ところで、前記した構成において、表示用EL素子としてR(赤)、G(緑)、B(青)をそれぞれ発光するサブピクセルを組としたカラー表示画素を多数配列することで、カラー表示を行うことができる。このカラー表示を行う場合においては、図2(d)に基づいて説明したとおり、R,G,BのそれぞれにおいてEL素子は発光効率が異なり、またそれぞれに異なった経時変化特性および温度依存性を有している。
【0033】
したがって、R,G,Bによるカラー表示パネルを構成する場合においては、各R,G,Bの画素に対して供給する駆動電圧を生成する出力電圧制御手段としての前記DC−DCコンバータ6を個別に用意し、前記各コンバータに与える制御用電圧を生成するモニタ用素子Ex、定電流源4およびサンプリングホールド回路5もそれぞれ独立した回路構成にされる。これにより、それぞれの順方向電圧Vfに基づいて、コンバータの出力電圧VHが制御されるようになされる。またR,G,Bに対応した各サブピクセルに対して各コンバータより駆動電圧を供給するために、図3に示すFETQ1とQ2の組み合わせが3組用意される。
【0034】
前記したカラー表示の駆動回路によると、図3に示すFETQ1およびQ4がオン状態にされ、またFETQ2,Q3,Q5がオフ状態に制御される各画素の走査および点灯期間においては、各R,G,Bに対応するサブピクセルには、R,G,Bに対応した順方向電圧Vfに基づく駆動電圧VHが印加される。これにより各サブピクセルは経時変化および温度依存性が補償された発光輝度による点灯動作が実行される。したがって、良好なカラーバランス(ホワイトバランス)を保持した状態で画像表示を行うことができる。
【0035】
なお、前記したようにR,G,Bに対応する各サブピクセルが配列されたカラー表示パネルにおいては、各サブピクセルのカソード電極は一枚の共通陰極にそれぞれ接続された構成にされる。したがって、前記したように画像信号の例えば1フレームの切り換えタイミングにおいて実行される各EL素子への逆バイアス電圧の印加動作時においては、R,G,Bのサブピクセルに対して、それぞれのコンバータからの出力電圧VHを個別に印加することはできない。
【0036】
すなわち、R,G,Bに対応するいずれか1つのコンバータからの駆動電圧の1つと、前記逆バイアス電圧の印加動作時における逆方向電圧の電圧値が同じ値に設定されることになる。この場合、R,G,Bに対応するコンバータのうちで、一番高い電圧を発生するコンバータ出力を逆バイアス電圧として利用するように構成することで、EL素子に発生するリーク現象を効果的に自己リペアさせることができる。また、EL素子の発光層に残留した順方向電圧印加時のキャリアを効果的に除去することができ、EL素子の発光寿命を延ばすことが可能となる。
【0037】
図3に示すダイオードD1,D2,D3は、R,G,Bに対応するコンバータのうちで、一番高い電圧を発生するコンバータ出力を逆バイアス電圧として利用するように構成した回路例を示すものである。すなわち、ダイオードD1,D2,D3のアノード側にはR,G,Bに対応するコンバータの各出力(他の2つのコンバータは図示を省略)がそれぞれ供給されるように構成される。そしてダイオードD1,D2,D3の各カソード側は共通接続されてFETQ3に接続された構成にされる。この構成によると、R,G,Bに対応するコンバータのうちで、一番高い電圧を発生するコンバータによる出力を共通接続されたカソード側にもたらすことができる。
【0038】
図4は、この発明にかかる駆動装置の第2の実施の形態を示した回路構成図である。なお、この図4においてはすでに説明した図3に示す各部に相当する部分は同一符号で示し、その説明は省略する。この図4に示す実施の形態においては、図3に示した構成に比較してサンプリングホールド回路7とDC−DCコンバータ8が追加されている。
【0039】
すなわち、図4に示した例においては、サンプリングホールド回路5とDC−DCコンバータ6により生成される出力VH1は、表示用EL素子を点灯駆動させるための駆動電圧源として利用し、サンプリングホールド回路7とDC−DCコンバータ8による出力VH2は、表示用EL素子E1〜Enに対して逆バイアス電圧を供給するための逆方向電圧生成手段として利用するように構成されている。
【0040】
この構成によると、表示用EL素子E1〜Enに対して逆バイアス電圧を供給する逆方向電圧を、表示用EL素子を点灯駆動させる駆動電圧とは異なる電圧に設定することができる。そして、この図4に示す構成を前記したようにカラー表示パネルの駆動装置に対応させようとする場合においては、逆方向電圧生成手段としての図示せぬ他の2つのコンバータ出力をダイオードD2,D3を介してFETQ3に供給することで、逆方向電圧生成手段として機能する一番高い電圧を発生するコンバータによる出力を、逆方向電圧として表示用EL素子の共通陰極に印加させることができる。そして、図4に示した実施の形態においても、図3に示した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0041】
なお、前記した実施の形態においては、表示パネルに配列される表示用およびモニタ用の各素子として有機EL素子を用いた例を示しているが、図2に示したような経時変化および温度依存性を有する他の発光素子を用いた場合においても、同様の作用効果を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】アクティブマトリクス型表示画素の一例を示した回路構成図である。
【図2】有機EL素子の諸特性を示した静特性図である。
【図3】この発明にかかる駆動装置の第1の実施の形態を示した回路構成図である。
【図4】同じく第2の実施の形態を示した回路構成図である。
【符号の説明】
【0043】
1 走査ドライバ
2 データドライバ
3,31〜3n 画素回路
4 定電流源
5,7 サンプリングホールド回路
6,8 DC−DCコンバータ(出力電圧制御手段)
10 発光画素
C1 電荷保持用コンデンサ
D1〜D3 ダイオード
E1〜En 有機EL素子(発光素子)
Q1〜Q5 FET
Tr1 制御用TFT
Tr2 駆動用TFT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオード特性を有する発光素子を表示用画素としてそれぞれマトリクス状に配列し、前記発光素子を選択的に発光駆動させる発光駆動トランジスタを前記表示用画素毎に備えたアクティブマトリクス型発光表示パネルの駆動装置であって、
前記各発光素子のアノード側には、当該発光素子を点灯駆動させる駆動電圧、もしくは非駆動電圧のいずれかを選択して印加する第1の選択手段と、
前記各発光素子のカソード側には、各発光素子に逆バイアスを与える逆方向電圧、もしくは基準電圧のいずれかを選択して印加する第2の選択手段とが具備され、
前記駆動電圧と逆方向電圧は、モニタ用素子によって得られる順方向電圧に追従した電圧値であることを特徴とするアクティブマトリクス型発光表示パネルの駆動装置。
【請求項2】
前記駆動電圧と逆方向電圧は、前記モニタ用素子によって得られる順方向電圧に基づいて出力電圧が制御される出力電圧制御手段によって生成された電圧であることを特徴とする請求項1に記載されたアクティブマトリクス型発光表示パネルの駆動装置。
【請求項3】
前記出力電圧制御手段は、前記駆動電圧および逆方向電圧をそれぞれ生成するために、個別に備えられていることを特徴とする請求項2に記載されたアクティブマトリクス型発光表示パネルの駆動装置。
【請求項4】
前記駆動電圧の電圧値と逆方向電圧の電圧値は、同じ値であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載されたアクティブマトリクス型発光表示パネルの駆動装置。
【請求項5】
前記表示用画素を形成する発光素子およびモニタ用素子は、異なる発光色に対応して備えられ、前記駆動電圧は前記モニタ用素子による順方向電圧に基づいて各発光色毎に生成されると共に、各発光色毎の前記駆動電圧のいずれか1つと、前記逆方向電圧の電圧値は、同じ値であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載されたアクティブマトリクス型発光表示パネルの駆動装置。
【請求項6】
前記表示用画素における発光素子およびモニタ用素子は、有機物質からなる発光機能層を少なくとも一層含む有機EL素子であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載されたアクティブマトリクス型発光表示パネルの駆動装置。
【請求項7】
ダイオード特性を有する発光素子を表示用画素としてそれぞれマトリクス状に配列し、前記発光素子を選択的に発光駆動させる発光駆動トランジスタを前記表示用画素毎に備えたアクティブマトリクス型発光表示パネルの駆動方法であって、
第1の選択手段によって、前記各発光素子のアノード側に、当該発光素子を点灯駆動させる駆動電圧もしくは非駆動電圧のいずれかを選択して印加すると共に、第2の選択手段によって、前記各発光素子のカソード側に、当該発光素子に逆バイアスを与える逆方向電圧もしくは基準電圧のいずれかを選択して印加する動作が実行され、
前記駆動電圧と前記逆方向電圧は、モニタ用素子によって得られる順方向電圧に追従した電圧値になされていることを特徴とするアクティブマトリクス型発光表示パネルの駆動方法。
【請求項8】
前記第1の選択手段によって、前記各発光素子のアノード側に非駆動電圧を印加し、前記第2の選択手段によって、前記各発光素子のカソード側に逆方向電圧を印加する動作が、同期して実行されることを特徴とする請求項7に記載されたアクティブマトリクス型発光表示パネルの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−276097(P2006−276097A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90574(P2005−90574)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】