説明

アクティブマトリックス表示パネルを備えた表示装置及びその駆動方法

ゲートストレスを抑制して表示品質の低下を防止することができるアクティブマトリックス表示パネルを備えた表示装置及びその駆動方法。表示用走査パルスの供給時に1の行内の各画素部に薄膜トランジスタの第1のゲート電圧を示すデータパルスを個別に供給し、その後、1の行内の各画素部にリセット用走査パルスを供給し、リセット用走査パルスの供給時に1の行内の各画素部に薄膜トランジスタのゲート・ソース間電圧を発光駆動時とは逆極性にせしめるための薄膜トランジスタの第2のゲート電圧を示すリセットパルスを個別に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、アクティブマトリックス表示パネルを備えた表示装置及びその駆動方法に関する。
【背景技術】
発光素子を用いたアクティブマトリックス表示器には、画素毎の駆動素子として多結晶シリコン、アルモファスシリコン(a−Si)や有機半導体等を用いたTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)が用いられている。アルモファスシリコン或いは有機半導体を用いたTFTには、ゲートに電圧を印加し続けるとゲートスレッショルド電圧Vthがシフトする現象、すなわちゲートストレスがあることが知られている(例えば、S.J.Zilker,C.Detcheverry,E.Cantatore,and D.M.de Leeuw:APPLIED PHYSICS LETTERS VOLUME 79,NUMBER 8 20AUGUST 2001″Bias stress in organic thin−film transistors and logic gates″参照)。この現象をPチャネルTFTを例に説明する。図1A及び図1Bにゲートストレスによるゲートスレッショルド電圧Vthのシフトの様子を示す。PチャネルTFTの場合には、ゲート・ソース間電圧Vgsをマイナスにして印加し続けると、ゲートストレスによって時間経過と共にゲートスレッショルド電圧Vthが図1Aに示すようにマイナス方向に変化し、これにより、例えば、図1Bに示すようにVth1からVth2にシフトしていく。この変化は、Vgsを0V若しくはプラスにして印加し続けることによって基のVthに復帰する。逆に、Vgsをプラスにして印加し続けると、時間経過と共にVthはプラス方向にシフトし、その後、Vgsを0V若しくはマイナスにして印加し続けることによって元のVthに復帰する。シフト量は、Vgsの絶対値及び印加時間が大きいほど大きくなる。このような特性を示すTFTを有機EL素子の駆動に用いると、表示中に徐々にVthがシフトしていくことになる。
従来の駆動方法では、Vthの初期値のばらつきに加えてゲートストレスによるVthの変動まで見込んで駆動電圧、駆動条件を設定する必要があるため、駆動電圧の上昇を招き、消費電力の増大をもたらしていた。また、Vthのばらつきが大きくなるに従って、それを補正する回路を用いたとしても駆動電流の誤差が大きくなり表示品質の低下をもたらすという欠点もあった。
【発明の開示】
本発明の目的は、ゲートストレスを抑制して表示品質の低下を防止することができるアクティブマトリックス表示パネルを備えた表示装置及びその駆動方法を提供することである。
本発明の表示装置は、各々が発光素子とその発光素子に流れる電流を制御する薄膜トランジスタとを含む複数の画素部を有するアクティブマトリックス表示パネルを備えた表示装置であって、前記複数の画素部に電源電圧を供給する電源と、入力画像信号に応じて、フレーム毎に前記表示パネルの複数行のうちから1の行を所定のタイミングで順次指定し、前記1の行内の各画素部に表示用走査パルスを供給し、前記表示用走査パルスの供給時に前記1の行内の各画素部に前記薄膜トランジスタの第1のゲート電圧を示すデータパルスを供給し、その後、前記1の行内の各画素部にリセット用走査パルスを供給し、前記リセット用走査パルスの供給時に前記1の行内の各画素部に前記薄膜トランジスタのゲート・ソース間電圧を発光駆動時とは逆極性に、又は0ボルト又は0ボルト近傍にせしめるための前記薄膜トランジスタの第2のゲート電圧を示すリセットパルスを供給する表示制御手段と、を含み、前記複数の画素部各々は、前記表示用走査パルスに応答して前記データパルスに対応した前記第1のゲート電圧を前記薄膜トランジスタのゲートに供給し、前記リセット用走査パルスに応答して前記リセットパルスに対応した前記第2のゲート電圧を前記薄膜トランジスタのゲートに供給する駆動部を有することを特徴としている。
本発明の駆動方法は、各々が発光素子とその発光素子に流れる電流を制御する薄膜トランジスタと含む複数の画素部を有するアクティブマトリックス表示パネルの駆動方法であって、前記複数の画素部に電源電圧を供給し、入力画像信号に応じてフレーム毎に前記表示パネルの複数行のうちから1の行を所定のタイミングで順次指定し、前記1の行内の各画素部に表示用走査パルスを供給し、前記表示用走査パルスの供給時に前記1の行内の各画素部に前記薄膜トランジスタの第1のゲート電圧を示すデータパルスを供給し、その後、前記1の行内の各画素部にリセット用走査パルスを供給し、前記リセット用走査パルスの供給時に前記1の行内の各画素部に前記薄膜トランジスタのゲート・ソース間電圧を発光駆動時とは逆極性に、又は0ボルト又は0ボルト近傍にせしめるための前記薄膜トランジスタの第2のゲート電圧を示すリセットパルスを供給し、前記複数の画素部各々においては、前記表示用走査パルスに応答して前記データパルスに対応した前記第1のゲート電圧を前記薄膜トランジスタのゲートに供給し、前記リセット用走査パルスに応答して前記リセットパルスに対応した前記第2のゲート電圧を前記薄膜トランジスタのゲートに供給することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
図1A及び図1Bはゲートスレッショルド電圧の変化及びゲート電圧−ドレイン電流特性の変化を各々示す図である。
図2は本発明の実施例を示すブロック図である。
図3は図2の装置中の表示パネルの1つの画素部及びそれに対応したデータ信号供給回路内の構成を示す図である。
図4はフレーム毎の表示モード及びリセットモードの各期間を示す図である。
図5は表示モード及びリセットモード各々におけるゲート・ソース間電圧の設定範囲を示す図である。
図6は各フレームの表示モード及びリセットモードにおけるゲート・ソース間電圧を示す図である。
図7は本発明の他の実施例を示すブロック図である。
図8は図7の装置中の表示パネルの1つの画素部及びそれに対応したデータ信号供給回路内の構成を示す図である。
図9はフレーム毎の表示モード及びリセットモードの各期間を示す図である。
図10は図7の装置の場合の各フレームの表示モード及びリセットモードにおけるゲート・ソース間電圧を示す図である。
図11はサブフィールド法を適用した場合のフレーム毎の表示モード及びリセットモードの各期間を示す図である。
図12はサブフィールド法を適用した場合の各フレームの表示モード及びリセットモードにおけるゲート・ソース間電圧を示す図である。
図13は本発明の他の実施例として図7の装置中の表示パネルの1つの画素部及びそれに対応したデータ信号供給回路内の構成を示す図である。
図14は図13の実施例におけるフレーム毎の表示モード及びリセットモードの各期間を示す図である。
発明を実施するための形態
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図2は本発明によるアクティブマトリックス表示パネルを用いた表示装置を示している。この表示装置は、表示パネル11、走査パルス供給回路12、データ信号供給回路13、及びコントローラ15を備えている。
表示パネル11は、m×n個(m,nは2以上の整数)の画素からなるアクティブマトリックス型のものであり、各々が平行に配置された複数のデータ線X1〜Xmと、複数の走査線Y1〜Ynと、複数の画素部PL1,1〜PLm,nを有している。画素部PL1,1〜PLm,nは、データ線X1〜Xmと走査線Y1〜Ynとの交差部分に配置され、全て同一の構成を有する。また、画素部PL1,1〜PLm,nは電源線Zに接続されている。電源線Zには電源(図示せず)から電源電圧(正電圧Vdd)が供給される。
複数の画素部PL1,1〜PLm,n各々は図3に示すように、2つのTFT(薄膜トランジスタ)31,32と、キャパシタ34と、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子35とを備えている。図3に示した画素部ではそこに関係するデータ線をXi(iは1〜mのうちのいずれか1)、走査線をYj(jは1〜nのうちのいずれか1)としている。
2つのTFT31,32各々はPチャネルのものである。TFT31のゲートは走査線Yjに接続され、そのソースはデータ線Xiに接続されている。TFT31のドレインにはキャパシタ34の一端と駆動TFT32のゲートとが接続されている。キャパシタ34の他端とTFT32のソースとは電源線Zに接続されている。TFT32のドレインはEL素子35のアノードに接続されている。EL素子35のカソードはアース接続されている。
表示パネル11の走査線Y1〜Ynは走査パルス供給回路12に接続され、またデータ線X1〜Xmはデータ信号供給回路13に接続されている。コントローラ15は入力される画像信号に応じて表示パネル11を階調駆動制御するために走査制御信号及びデータ制御信号を生成する。走査制御信号は走査パルス供給回路12に供給され、データ制御信号はデータ信号供給回路13に供給される。
走査パルス供給回路12は、走査制御信号に応じて表示用走査パルスを所定のタイミングで走査線Y1〜Ynにその順番で供給し、リセット用走査パルスを所定のタイミングで走査線Y1〜Ynにその順番で供給する。その表示用走査パルス及びリセット用走査パルスの供給は入力画像信号のフレーム毎に行われる。走査線毎に1つの表示用走査パルスが供給されてから1/2フレーム期間後にリセット用走査パルスが供給される。
データ信号供給回路13は、データ制御信号に応じて走査パルスが供給される走査線上に位置する画素部各々に対する画素データパルスを生成する。その画素データパルスは発光輝度を示すデータ信号である。データ信号供給回路13は、データ線X1〜Xmを介して発光駆動すべき少なくとも1の画素部に対して画素データパルス及びリセットパルスを供給する。非発光の画素部に対してはEL素子を発光させることがないレベルの画素データパルス及びリセットパルスを供給する。データ信号供給回路13には、データ線X1〜Xm毎に画素データパルス発生部及びリセットパルス発生部が備えられている。例えば、図3に示すように、データ線Xiに対応して画素データパルス発生部21i及びリセットパルス発生部22iが備えられている。画素データパルス発生部はデータ制御信号に応じて画素データパルスを発生してデータ線X1〜Xmに供給する。リセットパルス発生部はデータ制御信号に応じてリセットパルスを発生してデータ線X1〜Xmに供給する。
入力画像信号の各フレームは図4に示すように、表示モードの期間とリセットモードの期間とに分けられている。走査線毎に表示用走査パルスの発生によって表示モードとなり、リセット用走査パルスの発生によって表示モードからリセットモードに変わる。表示モードとリセットモードとは互いに等しい時間的長さを有する。各フレーム期間において表示モードとリセットモードとの位置は走査線毎に走査タイミングに対応して時間方向にずれている。表示モードの期間は発光のための画素データパルスが供給された画素部のEL素子を発光させる。リセットモードの期間は非発光期間であり、ゲートストレスによるゲートスレッショルド電圧Vthのシフトを抑制する期間である。
表示モードの期間では、先ず、画素データパルス発生部各々から画素データパルスが発生され、データ線X1〜Xmに供給される。そのとき表示用走査パルスが印加された走査線が図3に示した画素部であるとして説明すると、TFT31がオンとなり、画素データパルス発生部21iからの画素データパルスがTFT31を介してTFT32のゲートに第1のゲート電圧として供給される。これにより、キャパシタ34が充電され、EL素子35を駆動するTFT32のゲート・ソース間電圧が電圧Vgs−dに設定される。Vgs−d≦0Vであり、EL素子の発光のためにはVgs−d<Vthである。
リセット用走査パルスが供給され、表示モードに続くリセットモードになると、それと同時にリセットパルス発生部各々からリセットパルスが発生され、データ線X1〜Xmに供給される。表示モードの場合と同様に図3に示した画素部について説明すると、リセット用走査パルスに応じてTFT31がオンとなり、リセットパルス発生部22iからのリセットパルスがTFT31を介してTFT32のゲートに第2のゲート電圧として供給される。これにより、画素部のキャパシタ34が表示モードとは逆極性で充電され、TFT32のゲート・ソース間電圧が電圧Vgs−rに設定される。Vgs−r≧0Vであり、Vgs−r=−Vgs−dの関係がある。
表示モード期間のゲート・ソース間電圧Vgs−dの設定範囲とリセットモード期間のゲート・ソース間電圧Vgs−rの設定範囲とは図5に示すように示すことができる。1つの画素部の表示モード期間のゲート・ソース間電圧Vgs−dがV1であれば、それに続くリセットモード期間のゲート・ソース間電圧Vgs−rは−V1となる。なお、VmaxはVgs−dの設定範囲の絶対値の最大値であり、−VmaxはVgs−rの設定範囲の絶対値の最大値である。
1つの画素部のフレーム毎の表示モード及びリセットモード各々の駆動TFTのゲート・ソース間電圧は例えば、図6に示す如く変化する。ゲート・ソース間電圧は画素データパルスの振幅値に応じて変化し、ゲート・ソース間電圧に応じたドレイン電流が駆動TFT及びEL素子には流れる。フレーム1〜4各々においてVgs−r=−Vgs−dの関係が得られている。ゲート・ソース間電圧の平均値は0Vとなる。
このように、各フレームにおいて駆動TFTにゲート・ソース間電圧Vgs−dが印加されると、それに対応してゲート・ソース間電圧Vgs−rが印加されるので、ゲートストレスを解消させることができ、その結果、ゲートスレッショルド電圧Vthの変動を抑えることができる。
図7は本発明の他の実施例として表示装置を示している。この表示装置は、表示パネル41、走査パルス供給回路42、データ信号供給回路43、及びコントローラ45を備えている。
表示パネル41は、m×n個の画素からなるアクティブマトリックス型のものであり、各々が平行に配置された複数のデータ線対X1a,X1b〜Xma,Xmbと、複数の走査線対Y1a,Y1b〜Yna,Ynbと、複数の画素部PL1,1〜PLm,nを有している。画素部PL1,1〜PLm,nは、データ線対X1a,X1b〜Xma,Xmbと走査線対Y1a,Y1b〜Yna,Ynbとの交差部分に配置され、全て同一の構成を有する。データ線X1a〜Xmaは画素データパルス用であり、データ線対X1b〜Xmbはリセットパルス用である。走査線Y1a〜Ynaは表示走査線であり、走査線Y1b〜Ynbはリセット走査線である。
複数の画素部PL1,1〜PLm,n各々は図8に示すように、3つのTFT51〜53と、キャパシタ54と、有機EL素子55とを備えている。図8に示した画素部ではそこに関係するデータ線対をXia,Xib(iは1〜mのうちのいずれか1)、走査線対をYja,Yjb(jは1〜nのうちのいずれか1)としている。
3つのTFT51〜53各々はPチャネルのものである。TFT51は表示モード用であり、そのゲートは走査線Yjaに接続され、そのソースはデータ線Xiaに接続されている。TFT52はリセットモード用であり、そのゲートは走査線Yjbに接続され、そのソースはデータ線Xibに接続されている。TFT51,52のドレインにはキャパシタ54の一端と駆動TFT53のゲートとが接続されている。キャパシタ54の他端とTFT53のソースとは電源線Zに接続されている。TFT53のドレインはEL素子55のアノードに接続されている。EL素子55のカソードはアース接続されている。
表示パネル41の走査線対Y1a,Y1b〜Yna,Ynbは走査パルス供給回路42に接続され、またデータ線対X1a,X1b〜Xma,Xmbはデータ信号供給回路43に接続されている。コントローラ45は入力される画像信号に応じて表示パネル11を階調駆動制御するために走査制御信号及びデータ制御信号を生成する。走査制御信号は走査パルス供給回路42に供給され、データ制御信号はデータ信号供給回路43に供給される。
走査パルス供給回路42は、走査制御信号に応じて表示用走査パルスを所定のタイミングで走査線Y1a〜Ynaにその順番で供給し、リセット用走査パルスを所定のタイミングで走査線Y1b〜Ynbにその順番で供給する。その各走査パルスの供給は入力画像信号のフレーム毎に行われる。1フレームに対する表示用走査パルスの走査期間とリセット用走査パルスの走査期間とは長さにおいて同一である。同一フレームに対しては表示用走査パルスによる走査が開始されてから1/2走査期間だけ遅れてリセット用走査パルスによる走査が開始される。
データ信号供給回路43は、データ線X1a〜Xma毎に画素データパルス発生部及びデータ線X1b〜Xmb毎にリセットパルス発生部を備えている。例えば、図8に示すように、データ線Xiaに対応して画素データパルス発生部61iが備えられ、データ線Xibに対応してリセットパルス発生部62iが備えられている。画素データパルス発生部は、データ制御信号に応じて表示用走査パルスが供給される走査線上に位置する画素部各々に対する画素データパルスを生成し、それをデータ線X1a〜Xmaを介して各画素部に対して供給する。また、リセットパルス発生部はデータ制御信号に応じてリセット用走査パルスが供給される走査線上に位置する画素部各々に対するリセットパルスを生成し、それをデータ線X1b〜Xmbを介して各画素部に対して供給する。非発光の画素部に対してはEL素子を発光させることがないレベルの画素データパルス及びリセットパルスを供給する。
入力画像信号の各フレームは図9に示すように、表示モードとリセットモードとに分けられている。表示モードとリセットモードとは互いに等しい時間的長さを有する。各フレーム期間において表示モードとリセットモードとの位置は走査線毎に走査タイミングに対応して時間方向にずれている。この図9から分かるように、図7の表示装置の走査速度は図2に示した表示装置の走査速度(図4)に比べて1/2になっている。
表示モードでは、先ず、画素データパルス発生部各々から画素データパルスが発生され、データ線X1a〜Xmaに供給される。そのとき表示用走査パルスが印加された表示走査線が図8に示した画素部であるとして説明すると、表示用走査パルスによってTFT51がオンとなり画素データパルスに応じて画素部のキャパシタ54が充電され、EL素子55を駆動するTFT53のゲート・ソース間電圧が電圧Vgs−dに設定される。Vgs−d≦0Vであり、EL素子の発光のためにはVgs−d<Vthである。
その表示モードに続くリセットモードになると、リセットパルス発生部62〜62各々からリセットパルスが発生され、データ線X1b〜Xmbに供給される。表示モードの場合と同様に図8に示した画素部について説明すると、リセット用走査パルスによってTFT52がオンとなり、リセットパルスに応じて画素部のキャパシタ34が表示モードとは逆極性で充電され、TFT53のゲート・ソース間電圧が電圧Vgs−rに設定される。Vgs−r≧0Vであり、Vgs−r=−Vgs−dの関係がある。
なお、Vgs−r=−Vgs−dではなくて、Vgs−rはゲートストレスを緩和する電圧に設定しても良い。例えば、Vgs−r=k×Vgs−dとし、kは任意の負の定数である。或いはVgs−r=Cの如く負の固定値Cとしても良い。Vgs−r=−Vmax/2とした場合には、1つの画素部のフレーム毎の表示モード及びリセットモード各々の駆動TFTのゲート・ソース間電圧は例えば、図10に示す如く変化する。ゲート・ソース間電圧Vgs−dは画素データパルスの振幅値に応じて変化するが、Vgs−rは常時−Vmax/2に設定される。
上記した各実施例においては、各フレームの表示モードの期間とリセットモードの期間とが等しいが、互いに異なる期間にしても良い。
また、上記した各実施例においては、1フレームを1フィールドとして表示する方法について説明したが、1フレーム期間を複数のフィールド期間に分割する、いわゆるサブフィールド法を用いて表示パネルを駆動する装置に本発明を適用しても良い。
サブフィールド法を用いた表示装置としては、図7に示した構成を用い、更に、複数の画素部PL1,1〜PLm,n各々としては図8に示した構成をそのまま用いることができる。入力画像信号の各フレーム期間は例えば、図11に示すように、3つのフィールド期間に分割されている。また、各フィールド期間には表示モード期間とリセットモード期間とが設けられている。すなわち、第1フィールドには第1表示モード及び第1リセットモードが存在し、第2フィールドには第2表示モード及び第2リセットモードが存在し、第3フィールドには第3表示モード及び第3リセットモードが存在する。第1表示モード及び第1リセットモードは互いに等しい時間的長さを有し、他の各モードより短い期間である。第2表示モード及び第2リセットモードは互いに等しい時間的長さを有する。第3表示モード及び第3リセットモードは互いに等しい時間的長さを有し、他の各モードより長い期間である。
かかるサブフィールド法を用いた表示装置においては、画素部のEL素子を発光させるフィールドでは、図12に示すように、第1及び第2フィールドの表示モードの期間にはTFT53のゲート・ソース間電圧は電圧Vgs−dに設定される。この電圧Vgs−dはTFT53をオン状態にさせる電圧である。第1及び第2フィールドのリセットモードの期間にはTFT53のゲート・ソース間電圧は電圧−Vgs−d(=Vgs−r)に設定される。一方、画素部のEL素子を非発光にさせるフィールドでは、第3フィールドの表示モードの期間にはTFT53のゲート・ソース間電圧は0Vに設定され、TFT53をオフ状態にさせる。第3フィールドのリセットモードの期間にはTFT53のゲート・ソース間電圧は0Vに設定される。ただし、非発光のフィールドでは、TFT53をオフ状態にさせるゲート・ソース間電圧であれば、表示モードは0V以外の電圧Voff(Voff<0)でも良く、それに対応してリセットモードの期間にはゲート・ソース間電圧は−Voffに設定される。
図13は本発明の他の実施例として画素部を示している。この画素部は図3に示した画素部の構成をEL素子を除いて2組(駆動部A,B)備えられている。すなわち、有機EL素子75を共通にして駆動部Aは2つのTFT71,72と、キャパシタ74とを備え、駆動部Bは2つのTFT81,82と、キャパシタ84とを備えている。1つの画素部に対して2つのデータ線Xia,Xibと1つの走査線Yjとが関係する。データ線XiaはTFT71のソースに接続され、データ線XibはTFT81のソースに接続され、走査線YjはTFT71,81のゲートに接続されている。
データ線Xiaには奇数フレーム期間ではデータ信号供給回路93内の画素データパルス発生部94iから画素データパルスがスイッチ96iを介して供給され、偶数フレーム期間ではデータ線Xiaにはデータ信号供給回路93内のリセットパルス発生部95iからリセットパルスがスイッチ96iを介して供給される。データ線Xibには奇数フレーム期間ではデータ信号供給回路93内のリセットパルス発生部95iからリセットパルスがスイッチ97iを介して供給され、偶数フレーム期間ではデータ線Xibにはデータ信号供給回路93内の画素データパルス発生部94iから画素データパルスがスイッチ97iを介して供給される。
よって、 入力画像信号の各フレームにおいては図14に示すように、フレーム1では駆動部Aが表示モード期間となり、画素データパルスに応じてEL素子75を駆動し、駆動部Bがリセットモード期間となり、リセットパルスに応じて駆動TFT82のゲートストレスを解消させる。フレーム2では駆動部Aがリセットモード期間となり、リセットパルスに応じて駆動TFT72のゲートストレスを解消させ、駆動部Bが表示モード期間となり、画素データパルスに応じてEL素子75を駆動する。駆動部Aは表示モード期間のTFT72のゲート・ソース間電圧がVgs−dであれば、次のフレームのリセットモード期間にはTFT72のゲート・ソース間電圧Vgs−rは−Vgs−dに設定される。同様に、駆動部Bは表示モード期間のTFT82のゲート・ソース間電圧がVgs−dであれば、次のフレームのリセットモード期間にはTFT82のゲート・ソース間電圧Vgs−rは−Vgs−dに設定される。
なお、上記した各実施例においては、PチャネルTFTを用いた表示パネルについて説明したが、本発明はNチャネルTFTを用いた表示パネルにも適用することもできる。図3に示した実施例では、TFT31のソースはデータ線Xiに接続され、ドレインはキャパシタ34の一端と駆動TFT32のゲートとに接続されているが、TFT31のドレインがデータ線Xiに接続され、ソースがキャパシタ34の一端と駆動TFT32のゲートとに接続される構成でも良い。また、図8に示した実施例のFET51,52及び図13に示した実施例のFET71,81についてもドレインとソースとが逆に接続されても良い。
更に、上記した実施例においては、リセット用走査パルスの供給時に選択画素部に薄膜トランジスタのゲート・ソース間電圧を発光駆動時とは逆極性にせしめるためのリセットパルスを個別に供給しているが、そのリセットパルスの個別供給は薄膜トランジスタのゲート・ドレイン間電圧を発光駆動時とは逆極性にせしめるためであっても良い。
また、表示パネルの各画素部は上記したデータ設定用TFTと駆動用TFTとの組み合わせによる構成に限らず、電流プログラム方式の回路であっても良い。
また、上記した各実施例においては、発光素子として有機EL素子を用いた場合について説明したが、本発明は無機LED、FED(Field Emission Display)等の他の電流駆動タイプの発光素子に適用することができる。
以上のように、本発明によれば、EL素子の発光駆動毎に駆動TFTのゲート・ソース電圧を発光駆動時とは逆極性にするようにゲート電圧を印加するので、ゲートストレスを抑制して表示品質の低下を防止することができる。

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が発光素子と前記発光素子に流れる電流を制御する薄膜トランジスタと含む複数の画素部を有するアクティブマトリックス表示パネルを備えた表示装置であって、
前記複数の画素部に電源電圧を供給する電源と、
入力画像信号に応じて、フレーム毎に前記表示パネルの複数行のうちから1の行を所定のタイミングで順次指定し、前記1の行内の各画素部に表示用走査パルスを供給し、前記表示用走査パルスの供給時に前記1の行内の各画素部に前記薄膜トランジスタの第1のゲート電圧を示すデータパルスを供給し、その後、前記1の行内の各画素部にリセット用走査パルスを供給し、前記リセット用走査パルスの供給時に前記1の行内の各画素部に前記薄膜トランジスタのゲート・ソース間電圧を発光駆動時とは逆極性に、又は0ボルト又は0ボルト近傍にせしめるための前記薄膜トランジスタの第2のゲート電圧を示すリセットパルスを供給する表示制御手段と、を含み、
前記複数の画素部各々は、前記表示用走査パルスに応答して前記データパルスに対応した前記第1のゲート電圧を前記薄膜トランジスタのゲートに供給し、前記リセット用走査パルスに応答して前記リセットパルスに対応した前記第2のゲート電圧を前記薄膜トランジスタのゲートに供給する駆動部を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1のゲート電圧に応じた前記薄膜トランジスタのゲート・ソース間電圧の絶対値は前記第2のゲート電圧に応じた前記薄膜トランジスタのゲート・ソース間電圧の絶対値に等しいことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記第2のゲート電圧に応じた前記薄膜トランジスタのゲート・ソース間電圧は固定電圧であることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
各フレーム期間は前記薄膜トランジスタのゲートに前記第1のゲート電圧が供給される表示モード期間と、前記薄膜トランジスタのゲートに前記第2のゲート電圧が供給されるリセットモード期間とを有することを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項5】
1のフレーム期間で前記薄膜トランジスタのゲートに前記第1のゲート電圧が供給される表示モード期間であった画素部は次のフレーム期間では前記薄膜トランジスタのゲートに前記第2のゲート電圧が供給されるリセットモード期間となることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項6】
前記画素部は前記薄膜トランジスタからなる等価な2つの駆動回路を備え、前記2つの駆動回路は前記表示モードと前記リセットモードとを交互に切り替えることを特徴とする請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
各フレーム期間においてサブフィールド法に基づいて表示モード期間と、前記リセットモード期間とが繰り返されることを特徴とする請求項4記載の表示装置。
【請求項8】
前記発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項9】
前記薄膜トランジスタは、アモルファシスシリコン薄膜トランジスタであることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項10】
前記薄膜トランジスタは、有機半導体薄膜トランジスタであることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項11】
各々が発光素子と前記発光素子に流れる電流を制御する薄膜トランジスタとを含む複数の画素部を有するアクティブマトリックス表示パネルの駆動方法であって、
前記複数の画素部に電源電圧を供給し、
入力画像信号に応じてフレーム毎に前記表示パネルの複数行のうちから1の行を所定のタイミングで順次指定し、前記1の行内の各画素部に表示用走査パルスを供給し、前記表示用走査パルスの供給時に前記1の行内の各画素部に前記薄膜トランジスタの第1のゲート電圧を示すデータパルスを供給し、その後、前記1の行内の各画素部にリセット用走査パルスを供給し、前記リセット用走査パルスの供給時に前記1の行内の各画素部に前記薄膜トランジスタのゲート・ソース間電圧を発光駆動時とは逆極性に、又は0ボルト又は0ボルト近傍にせしめるための前記薄膜トランジスタの第2のゲート電圧を示すリセットパルスを供給し、
前記複数の画素部各々においては、前記表示用走査パルスに応答して前記データパルスに対応した前記第1のゲート電圧を前記薄膜トランジスタのゲートに供給し、前記リセット用走査パルスに応答して前記リセットパルスに対応した前記第2のゲート電圧を前記薄膜トランジスタのゲートに供給することを特徴とする駆動方法。
【請求項12】
前記発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項11記載の駆動方法。
【請求項13】
前記薄膜トランジスタは、アモルファシスシリコン薄膜トランジスタであることを特徴とする請求項11記載の駆動方法。
【請求項14】
前記薄膜トランジスタは、有機半導体薄膜トランジスタであることを特徴とする請求項11記載の駆動方法。

【国際公開番号】WO2005/034072
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【発行日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514493(P2005−514493)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014712
【国際出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】