説明

アクリルアミド誘導体および該誘導体を含む重合体

【課題】鋭敏な温度応答性を保持したまま多くの官能基を導入された高分子、あるいはハイドロゲルを調製するためのモノマーおよびその重合体あるいはハイドロゲルを提供する。
【解決手段】下式一般式(I)


(式中、Xはアミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、−COOR4)で表されるアクリルアミド誘導体を用いて、重合体または共重合体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側鎖に官能基を有するアクリルアミド誘導体およびこの誘導体の単独重合体、共重合体、さらに該重合体の架橋物に関する。本発明のアクリルアミド誘導体は、容易にラジカル重合し簡便に単独重合体が得られ、他のモノマーとの共重合も可能である。本発明のアクリルアミド誘導体から合成される共重合体は、水溶液中で特定の温度を境に低温側で溶解、高温側では不溶化を起こす、温度応答性高分子と成りうる。従って、固体表面に固定化することにより、特定の温度を境に低温側で親水性、高温側で疎水性となる。本発明の共重合体を用いれば狭い温度範囲で、親水性、疎水性の変化を起こすばかりでなく、荷電状態から非荷電状態への温度変化のみによるスイッチが可能となる。さらに種々の官能基を有しているために、これを利用して共有結合あるいは水素結合などにより様々な分子の導入が可能である。
【背景技術】
【0002】
N−アルキル置換アクリルアミド重合体は、温度応答性高分子の一つであり、中でもポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(以下、PIPAAmと略記する)は、32℃の相転移温度を境にそれ以下では水溶性を示し、それ以上では急激に不溶化して沈殿を生起する。PIPAAm連鎖を固体表面に導入して、温度変化のみで親水性・疎水性を変化させ、細胞培養後の細胞の回収や、クロマトグラフィーへの展開が行われている。かかる技術は、例えば、下記の文献に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】T.Okano, N.Yamada, H.Sakai, Y.Sakurai, Journal of Biomedical Materials Research,27巻,1243〜1251ページ(1993年)
【非特許文献2】T.Okano, N.Yamada, M.Okuhara, H.Sakai, Y.Sakurai, Biomaterials, 16巻,297〜303ページ(1995年)
【非特許文献3】H.Kanazawa, K.Yamamoto, Y.Matsushima, N.Takai, A.Kikuchi, Y.Sakurai, T.Okano, Analytical Chemistry,68巻,100〜105ページ(1996年)
【非特許文献4】H.Kanazawa, Y.Kashiwase, K.Yamamoto, Y.Matsushima, A.Kikuchi, Y.Sakurai,T.Okano, Analytical Chemistry,69巻,823〜830ページ(1997年)
【0004】
この温度応答性高分子に官能基を導入するために、アクリル酸等の官能基を有するコモノマーとの共重合が一般に行われている。ところが、直鎖状の重合体あるいはハイドロゲル(すなわち、架橋物)においては、アクリル酸の導入率を増加させると、相転移温度は顕著に上昇してしまい、さらにその転移挙動も鈍感になってしまうことが避けられなかった。すなわち、温度応答性重合体またはハイドロゲルにおいて鋭敏な温度応答性を保持したまま、多くの官能基を導入する方法はこれまでなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、鋭敏な温度応答性を保持したまま多くの官能基が導入された高分子、あるいはハイドロゲル(すなわち、架橋物)を調製するためのモノマーおよびその重合体あるいはハイドロゲル(すなわち、架橋物)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に基づいて鋭意検討を加えた。その結果、共重合させるモノマーと構造を極めて類似させることにより、単独重合体が保持している温度応答性を発現させることが出来ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記一般式(I)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R2、R3は各々独立して炭素数1〜6のアルキレン基を表すか、または、R2とR3は一体となってシクロアルカンを形成しても良く、Xは水素原子、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表し、Yはアミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表す。)で表されるアクリルアミド誘導体を提供する。
【0010】
また、本発明は、下式一般式(II)
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R2、R3は各々独立して炭素数1〜6のアルキレン基を表すか、または、R2とR3は一体となってシクロアルカンを形成しても良く、Xは水素原子、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表し、Yはアミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表す。)で表される繰り返し単位からなる重合体を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、前記一般式(II)で表される繰り返し単位と、一般式(III)
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R6は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表す。)で表される繰り返し単位とからなる共重合体を提供する。
【0016】
さらに加えて、本発明は、上記重合体を含む架橋物および上記共重合体を含む架橋物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、pH6.4のリン酸緩衝液中での各架橋物の平衡膨潤度を表すグラフである。
【図2】図2は、pH7.4のリン酸緩衝液中での各架橋物の平衡膨潤度を表すグラフである。
【図3】図3は、pH9.0のリン酸緩衝液中での各架橋物の平衡膨潤度を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において、炭素数1〜6の直鎖または分岐したアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル、n−ペンチル基およびn−ヘキシル基を挙げることができる)。
【0019】
本発明において、炭素数1〜6のアルキレン基の例としては、モノメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基およびヘキサメチレン基を挙げることができる。好ましいメチレン基としてはモノメチレン基を挙げることができる。
【0020】
本発明において、ハロゲン原子とはフッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子のいずれかを意味する。特に好ましいハロゲン原子は塩素原子である。
本発明において、置換フェニル基の置換基としては、特に制限されないが、例えば、ニトロ基、メチルメルカプト基が挙げられる。特に好ましい置換フェニル基の置換基はニトロ基である。
【0021】
本発明において、置換ベンジル基としては、特に制限されないが、例えば、トリフェニルメチル基、ジフェニルメチル基が挙げられる。
一般式(I)および一般式(II)において、R2とR3が一体となって環を形成する場合、好ましい環としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等が挙げられる。
【0022】
本発明において、一般式(II)で表される繰り返し単位からなる重合体の重合度は、繰り返し単位の数が2以上であれば特に限定されないが、好ましくは50〜500である。
【0023】
本発明において、一般式(II)で表される繰り返し単位と、一般式(III)で表される繰り返し単位とからなる共重合体は、各々の繰り返し単位の数の合計が2以上であれば特に限定されないが、好ましくは50〜500である。また、前者の繰り返し単位と後者の繰り返し単位との割合も特に限定されないが、一般式(II)で表される繰り返し単位の数:一般式(III)で表される繰り返し単位の数=1〜50:99〜50が好ましい。
【0024】
以下、本発明のアクリルアミド誘導体、該誘導体を用いて得られる重合体、共重合体および架橋物の製造方法を示す。
本発明のアクリルアミド誘導体は、例えば、一般式(IV)
【0025】
【化4】

【0026】
(式中、R2は炭素数1〜4の直鎖または分岐したアルキル基、R3は炭素数1〜6のアルキレン基、Xは水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、−COOR4(R4は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す)を表し、Yはアミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)で表されるエステル基、−NH−R5(R5は炭素数1〜6の直鎖あるいは分岐したアルキル基、アルキルオキシカルボニル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基、ベンジルオキシカルボニル基、置換ベンジルオキシカルボニル基を表す。)で表される置換アミノ基を表し、R2とR3は一体となってシクロアルカンを形成しても良い。)と、例えば、一般式(V)
【0027】
【化5】

【0028】
(式中、R1は水素原子あるいは炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表す。)で表される化合物と反応させることにより、容易に得られる。
化合物(V)で表される化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、α−n−ブチルアクリル酸、α−n−ヘキシルアクリル酸を例示でき、一般に市販されているものもある。この反応では縮合剤を用いることによりより効率的に進行し、縮合剤はジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N'−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド、ベンゾトリアゾール−1−イル−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン化物ジフェニルホスホリルアジド等が例示でき、単独であるいはN−ヒドロキシスクシンイミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール等と組み合わせて用いられる。反応は溶媒中で行うことが望ましく、用いられる溶媒は化合物を溶解するが反応に関与しないものであればいずれでもよく、水、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。反応は通常0℃〜100℃の範囲内で円滑に進行する。
【0029】
これらの縮合剤を用いない場合は、一般式(V)を酸ハロゲン化物に変換した化合物を用いることにより、反応が容易に進行する。酸ハロゲン化物としては、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、アクリル酸ブロミド、メタクリル酸ブロミドを例示でき、一部は市販されている。その他のものに関しては、塩化チオニル、三塩化リン、五酸化リンなどを用いて公知の方法で酸ハロゲン化物に変換できる。反応は有機溶媒中、不活性ガス雰囲気下において容易に進行する。用いられる溶媒としては、反応に関係しないものであれば何でもよく、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
この反応は塩基性物質存在下で行うことが好ましく、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アルミニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等が好適に用いられる。
【0031】
一般式(IV)で用いられる化合物としては、1−(ヒドロキシメチル)エチルアミン、1−(ヒドロキシメチル)プロピルアミン、β−アミノ酪酸、β−アミノ酪酸メチルエステル、β−アミノ酪酸p−ニトロフェニルエステル、β−アミノ酪酸ベンジルエステル、2−アミノプロピルクロリド、2−アミノプロピルブロミド、γ−アミノ吉草酸、γ−アミノ吉草酸メチルエステル、γ−アミノ吉草酸p−ニトロフェニルエステル、γ−アミノ吉草酸ベンジルエステル、β−アミノ吉草酸、β−アミノ吉草酸ベンジルエステル、1−メチルアミノ−2−アミノプロパン、1−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−2−アミノプロパン、1−ベンジルアミノ−2−アミノプロパン、1−(ベンジルオキシカルボニル)アミノ−2−アミノプロパンを例示できる。これらの中で一部のものは市販されている。
【0032】
本発明の一般式(I)で表されるアクリルアミド誘導体は単独重合により、一般式(II)で表される繰り返し単位からなる重合体が一般的な重合法により得られ、特に、ラジカル重合法により簡便に製造できる。ラジカル重合法においては、バルク重合、溶液重合、乳化重合などの公知の方法を用いることができ、ラジカル開始剤の添加により効率よく開始される。反応に好適に用いられるラジカル開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物が例示でき、重合促進剤と呼ばれるN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルパラトルイジンなどのアミン化合物と組み合わせて用いることにより低温での迅速な重合が可能である。さらに、ジラウロイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどの有機過酸化物あるいはα,α−アゾビスイソブチロニトリルやアゾビスシクロヘキサンカルボニトリルのようなアゾ化合物を例示することができる。
【0033】
この場合のラジカル重合反応に利用できる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。反応は通常0℃〜100℃の範囲内で円滑に進行する。
【0034】
一般式(II)で表される繰り返し単位と一般式(III)で表される繰り返し単位とからなる共重合体は、例えば、イソプロピルアクリルアミド、イソブチルアクリルアミド、3−ペンチルアクリルアミド、シクロペンチルアクリルアミド、3−ヘキシルアクリルアミドなどと一般式(I)で表される化合物とを共重合させることにより容易に合成できる。この際、一般的な重合法が用いられ、特に、ラジカル重合法により簡便に製造できる。ラジカル重合法においては、バルク重合、溶液重合、乳化重合などの公知の方法を用いることができ、ラジカル開始剤の添加により効率よく開始される。反応に好適に用いられるラジカル開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物が例示でき、重合促進剤と呼ばれるN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルパラトルイジンなどのアミン化合物と組み合わせて用いることにより低温での迅速な重合が可能である。さらに、ジラウロイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどの有機過酸化物あるいはα,α−アゾビスイソブチロニトリルやアゾビスシクロヘキサンカルボニトリルのようなアゾ化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
この場合のラジカル重合反応に利用できる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。反応は通常0℃〜100℃の範囲内で円滑に進行する。
【0036】
一般式(II)で表される繰り返し単位を含む架橋物および一般式(II)と一般式(III)で表される共重合体を含む架橋物は、一般に架橋剤と呼ばれる多官能性の化合物を共存させて重合反応を行うことにより容易に得られる。架橋剤としては、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどを例示でき、一部は市販されている。この際、一般的な重合法が用いられ、特に、ラジカル重合法により簡便に製造できる。ラジカル重合法においては、バルク重合、溶液重合、乳化重合などの公知の方法を用いることができ、ラジカル開始剤の添加により効率よく開始される。反応に好適に用いられるラジカル開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物が例示でき、重合促進剤と呼ばれるN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルパラトルイジンなどのアミン化合物と組み合わせて用いることにより低温での迅速な重合が可能である。さらに、ジラウロイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどの有機過酸化物あるいはα,α−アゾビスイソブチロニトリルやアゾビスシクロヘキサンカルボニトリルのようなアゾ化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
この場合のラジカル重合反応に利用できる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、n−ヘキサノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。反応は通常0℃〜100℃の範囲内で円滑に進行する。
【0038】
本発明で得られた重合体の温度応答性は、水あるいは緩衝溶液に溶解させた後、その溶液の温度を一定の速度で変化させた時の濁度変化を測定し、濁度変化が完結するのに要する温度幅を測定することにより評価できる。また架橋物については、温度変化させたときの各温度での平衡膨潤度を測定し、その変化の程度で評価できる。
【実施例】
【0039】
以下実施例、比較例、参考例により本発明を更に詳しく説明する。ただし、本発明がこれらに限定されるものではないことはもちろんである。
【0040】
[参考例1〜4]
表1記載の量のN−イソプロピルアクリルアミド(IPAAmと略す)、アクリル酸(AAcと略す)、および11.5mgの重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBNと略す)を35mlのテトラヒドロフランに溶解させ、脱気封管後、65℃で2.5時間撹拌した。反応後ジエチルエーテルへの沈殿を2回繰り返して精製した。
【0041】
【表1】

【0042】
[参考例5〜8]
試験官中に、表2記載の量のN−イソプロピルアクリルアミド(IPAAmと略す)、アクリル酸(AAcと略す)、26.6mgの架橋剤メチレンビスアクリルアミド(MBAAmと略す)および48μlの重合促進剤N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミンを10mlの水に溶解させた。窒素ガスをバブリングした後、40mg/mlの過硫酸アンモニウム水溶液200μlを直ちに加えた後、キャピラリー管中に溶液を吸い上げた。0℃で24時間保った後、キャピラリーより調製した架橋物を取り出し、冷水中に1日間浸漬して精製した。
【0043】
【表2】

【0044】
[実施例1]
【0045】
【化6】

【0046】
[化6]の合成スキームに従い、はじめにβ−アミノ酪酸18.1g、ベンジルアルコール87.5ml、p−トルエンスルホン酸40.0gを175mlのベンゼンに溶解させ、還流させた。生成してくる水をベンゼンとの共沸混合物として除去した。反応溶液にジエチルエーテル280ml、ヘキサン280mlを加え、沈殿を生成させた。この沈殿を濾別し、エーテル・エタノールの混合溶液中で再結晶させて、生成した。53.8mgのβ−アミノ酪酸ベンジルエステル・p−トルエンスルホン酸塩を白色結晶として得た。1H−NMR測定結果により、β−アミノ酪酸ベンジルエステル・p−トルエンスルホン酸塩の合成を確認した。以下に、1H−NMRスペクトル測定結果を示す。下線部は化合物中の対応するプロトンの位置を示す。なお、以下のNMRデータにおいて、「Φ−」はフェニル基を表す。
1H−NMRδ(DMSO−d6,ppm)1.20(d,3H,CH3CHCH2),2.29(s,3H,Ф−CH3),2.68(m,2H,CH3CHCH2),3.54(m,1H,CH3CHCH2),5.14(s,2H,COOCH2−Ф),7.11および7.48(m,4H,p−トルエンスルホン酸塩のベンゼン環の水素),7.39(m,5H,ベンジルエステルのベンゼン環の水素),7.81(m,2H,CH3CH(NH2CH2
次に、50.0gのβ−アミノ酪酸ベンジルエステル・p−トルエンスルホン酸塩を54.3mlのトリエチルアミンを含む300mlのエーテルに分散させた。この溶液に0℃でアクリル酸クロリド12.7mlをゆっくりと加え、2時間撹拌した。エーテル層を回収後濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、目的の2−(ベンジルオキシカルボニル)イソプロピルアクリルアミド19.59gを白色結晶として得た。1H−NMR測定、元素分析により合成を確認した。以下に、1H−NMRスペクトル測定結果および元素分析結果を示す。下線部は化合物中の対応するプロトンの位置を示す。
1H−NMRδ(DMSO−d6,ppm)1.11(d,3H,CH3CHCH2),2.53(m,2H,CH3CHCH2),4.20(m,1H,CH3CHCH2),5.06(s,2H,COOCH2−Ф),5.55、6.07および6.18(m,3H,CH=CH2),7.35(m,5H,ベンゼン環の水素),8.10(d,1H,CONH

1417NO3 247.32
計算値: C67.93 H6.94 N5.66
測定値: C67.92 H6.90 N5.73

1H−NMRスペクトル測定結果および元素分析結果により、上記目的化合物の合成が確認された。
【0047】
[実施例2]
【0048】
【化7】

【0049】
[化7]の合成スキームに従って、実施例1で合成した2−(ベンジルオキシカルボニル)イソプロピルアクリルアミド1.0gを1Nの水酸化ナトリウム水溶液50mlに分散させ、1時間撹拌した。エーテルを用いて脱保護されたベンジルアルコールを除去後、溶液全体がpH2になるまで濃塩酸を加えた。塩化水素および水を完全に留去した後、残渣にメタノールを加え2時間撹拌した。メタノール層のみを分離し、濃縮して目的とする2−カルボキシイソプロピルアクリルアミドを透明な粘性液体として得た。構造は1H−NMRを用いて確認した。1H−NMRδ(DMSO−d6,ppm)1.35(d,3H,CH3CHCH2),2.38(m,2H,CH3CHCH2),4.15(m,1H,CH3CHCH2),5.55、6.06および6.12(m,3H,CH=CH2),8.10(d,1H,CONH
1H−NMRスペクトル測定結果により、上記目的化合物の合成が確認された。
【0050】
[実施例3〜4]
表3記載の量のN−イソプロピルアクリルアミド(IPAAmと略す)、2−カルボキシイソプロピルアクリルアミド(CIPAAmと略す)、および11.5mgの重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBNと略す)を35mlのテトラヒドロフランに溶解させ、脱気封管後、65℃で2.5時間撹拌した。反応後、ジエチルエーテルへの沈殿を2回繰り返して精製した。
【0051】
【表3】

【0052】
[実施例5〜7]
【0053】
【表4】

【0054】
試験管中に、表4記載の量のN−イソプロピルアクリルアミド(IPAAmと略す)、2−カルボキシイソプロピルアクリルアミド(CIPAAm)、26.6mg/mlの架橋剤メチレンビスアクリルアミド(MBAAmと略す)水溶液100μlおよび4.8μlの重合促進剤N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミンを0.9mlの水に溶解させた。窒素ガスをバブリングした後、40mg/mlの過硫酸アンモニウム水溶液20μlを直ちに加えた後、キャピラリー管中に溶液を吸い上げた。0℃で24時間保った後、キャピラリーより調製した架橋物を取り出し、冷水中に1日間浸漬して精製した。
【0055】
[実施例8]
【0056】
【化8】

【0057】
[化8]のスキームに従って、はじめに蒸留精製した1,2−ジアミノプロパン119.4mlとトリエチルアミン194.9mlを脱水した500mlのジエチルエーテルに溶解させた。0℃でカルボベンゾキシクロリド20.0mlをゆっくりと滴下し、室温で18時間撹拌した。上清を回収し、水で洗浄後濃縮した。酢酸エチルを加えて結晶を析出させ、これを濾別、除去した。濾過液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製して1−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−アミノ−プロパン9.51gを透明無色の粘性液体として得た。合成は以下に示した1H−NMRスペクトル測定結果により確認された。
1H−NMRδ(DMSO−d6,ppm)0.91(d,3H,CH3CHCH2),2.80(m,1H,CH3CHCH2),2.85(m,2H,CH3CHCH2),5.01(s,2H,COOCH2−Ф),7.35(m,5H,ベンゼン環の水素
8.0gの1−アミノ−2−(ベンジルオキシカルボニル)アミノプロパンと8.0mlのトリエチルアミンをジエチルエーテル200mlに溶解させ、塩化アクリロイル3.74mlを0℃でゆっくり滴下した。2時間撹拌後、濃縮し残渣に酢酸エチルを加え、溶解させた。さらにこの溶液を水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。カラムクロマトグラフィーにより精製して、2−(ベンジルオキシカルボニル)アミノイソプロピルアクリルアミド3.43gを板状結晶として得た。合成は以下に示した1H−NMRスペクトル測定結果により確認された。
1H−NMRδ(DMSO−d6,ppm)1.03(d,3H,CH3CHCH2),3.04(m,2H,CH3CHCH2),3.92(m,1H,CH3CHCH2),5.01(m,2H,COOCH2−Ф),5.57、6.07および6.18(m,3H,CH=CH2),7.34(m,5H,ベンゼン環の水素
【0058】
[実施例9]
【0059】
【化9】

【0060】
実施例8で合成した2−(ベンジルオキシカルボニル)アミノイソプロピルアクリルアミド1.0gを臭化水素酢酸溶液に分散させ、2時間撹拌した。臭化水素、酢酸を徹底的に留去した後、残渣に水を加えた。エーテルを用いて脱保護されたベンジルブロミドを抽出除去した後、水層を濃縮した。残渣にメタノールを加え2時間撹拌した。メタノール層のみを分離し、濃縮して目的とする2−アミノイソプロピルアクリルアミド臭化水素酸塩を白色固体として得た。構造は1H−NMRを用いて確認した。
1H−NMRδ(DMSO−d6,ppm)1.35(d,3H,CH3CHCH2),2.89(m,2H,CH3CHCH2),4.21(m,1H,CH3CHCH2),5.50、6.06および6.12(m,3H,CH=CH2),8.08(d,1H,CONH)
1H−NMRスペクトル測定結果により、上記目的化合物の合成が確認された。
【0061】
[比較例1〜12]
参考例1〜4で調製したN−イソプロピルアクリルアミド/アクリル酸共重合体またはN−イソプロピルアクリルアミド単独重合体を各種のpHのリン酸緩衝液に0.6%になるように溶解させた。20℃から昇温して90%透過度と10%透過度を示す温度の中間の温度を下限臨界溶液温度(LCST)とした。さらにこの温度幅を相転移の敏感さの指数とした。すなわち、この指数が小さいほどより狭い温度幅で相転移が起こったことを表し敏感であることを示す。測定の結果を表5に示す。
【0062】
【表5】

【0063】
[実施例10〜15]
【0064】
【表6】

【0065】
実施例3および4で調製したN−イソプロピルアクリルアミド(IPAAmと略す)/2−カルボキシイソプロピルアクリルアミド(CIPAAmと略す)共重合体をリン酸緩衝液に0.6%になるように溶解させた。LCSTおよび相転移の敏感さの指数を比較例1〜12の場合と同じように評価した。測定の結果を表6に示す。表中にはPIPAAm単独重合体と比較するために比較例1、5、9の結果も記載した。
【0066】
表6および比較例の表5より明らかなように、実施例で得られたN−イソプロピルアクリルアミド(IPAAm)と類似な構造を有する2−カルボキシイソプロピルアクリルアミド(CIPAAm)からなる共重合体は、約10mol%のCIPAAm含有率においてもIPAAm単独重合体で観察されるのとほぼ同じ温度で相転移を起こし、そのときの温度幅もきわめて小さいことから、比較例中のアクリル酸との共重合体とは全く異なるものである。
【0067】
[比較例13〜16]
pH6.4のリン酸緩衝液中で、参考例5〜8のN−イソプロピルアクリルアミド(IPAAm)とアクリル酸(AAc)共重合架橋物の10℃から50℃までの各温度での平衡膨潤度を測定した。ここでいう平衡膨潤度とは参考例5〜8で調製した際のキャピラリー径に相当する初期の径(d0)で各温度での平衡に達したときの径(d)を割った値を3乗したもの((d/d03)と定義した。結果を図1に示す。
【0068】
[比較例17〜20]
pH7.4のリン酸緩衝液中で、参考例5〜8のN−イソプロピルアクリルアミド(IPAAm)とアクリル酸(AAc)共重合架橋物の10℃から50℃までの各温度での平衡膨潤度を測定した。ここでいう平衡膨潤度とは比較例13〜16の場合と同一の定義である。結果を図2に示す。
【0069】
[比較例21〜24]
pH9.0のリン酸緩衝液中で、参考例5〜8のN−イソプロピルアクリルアミド(IPAAm)とアクリル酸(AAc)共重合架橋物の10℃から50℃までの各温度での平衡膨潤度を測定した。ここでいう平衡膨潤度とは比較例13〜16の場合と同一の定義である。結果を図3に示す。
【0070】
[実施例16〜18]
pH6.4のリン酸緩衝液中で、実施例5〜7のN−イソプロピルアクリルアミド(IPAAm)と2−カルボキシイソプロピルアクリルアミド(CIPAAm)共重合架橋物の10℃から50℃までの各温度での平衡膨潤度を測定した。ここでいう平衡膨潤度とは比較例13〜16の場合と同一の定義である。結果を図1に示す。
【0071】
[実施例19〜21]
pH7.4のリン酸緩衝液中で、実施例5〜7のN−イソプロピルアクリルアミド(IPAAm)と2−カルボキシイソプロピルアクリルアミド(CIPAAm)共重合架橋物の10℃から50℃までの各温度での平衡膨潤度を測定した。ここでいう平衡膨潤度とは比較例13〜16の場合と同一の定義である。結果を図2に示す。
【0072】
[実施例22〜24]
pH9.0のリン酸緩衝液中で、実施例5〜7のN−イソプロピルアクリルアミド(IPAAm)と2−カルボキシイソプロピルアクリルアミド(CIPAAm)共重合架橋物の10℃から50℃までの各温度での平衡膨潤度を測定した。ここでいう平衡膨潤度とは比較例13〜16の場合と同一の定義である。結果を図3に示す。
【0073】
図1〜3より、N−イソプロピルアクリルアミドとアクリル酸とからなる共重合体架橋物においては、アクリル酸の含量の増加に従って、体積変化が完結する温度が高温側に移動し、また各温度の平衡膨潤度の変化も鋭敏ではなくなる傾向を示した。これに反して、PIPAAmと2−カルボキシイソプロピルアクリルアミド(CIPAAm)からなる共重合体においては、PIPAAm単独重合体と同じ温度で体積変化が完結し、また平衡膨潤度変化もシャープであった。すなわち、反応性に富むカルボキシル基を有しながらも、PIPAAm単独重合体と同様な極めて鋭敏な体積変化挙動を示す架橋物が得られた。
【0074】
[発明の効果]
本発明により、鋭敏な温度応答性を保持したまま多くの官能基を導入された高分子、あるいはハイドロゲル(すなわち、架橋物)を調製するためのモノマーおよびその重合体あるいはハイドロゲル(すなわち、架橋物)を提供することが可能になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式一般式(I)
【化1】

(式中、R1は水素原子または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R2、R3は各々独立して炭素数1〜6のアルキレン基を表すか、または、R2とR3は一体となってシクロアルカンを形成しても良く、Xは水素原子、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表し、Yはアミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表す。)で表されるアクリルアミド誘導体を用いた温度応答性重合体。
【請求項2】
下式一般式(II)
【化2】

(式中、R1は水素原子または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R2、R3は各々独立して炭素数1〜6のアルキレン基を表すか、または、R2とR3は一体となってシクロアルカンを形成しても良く、Xは水素原子、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表し、Yはアミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表す。)で表される繰り返し単位を用いた温度応答性重合体。
【請求項3】
下記一般式(II)
【化3】

(式中、R1は水素原子または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R2、R3は各々独立して炭素数1〜6のアルキレン基を表すか、または、R2とR3は一体となってシクロアルカンを形成しても良く、Xは水素原子、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表し、Yはアミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表す。)で表される繰り返し単位と、下記一般式(III)
【化4】

(式中、R1は水素原子または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R6は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表す。)で表される繰り返し単位とを用いた温度応答性共重合体。
【請求項4】
一般式(III)で表される繰り返し単位がN−イソプロピルアクリルアミドである請求項3記載の温度応答性共重合体。
【請求項5】
請求項2記載の温度応答性重合体からなる架橋物。
【請求項6】
請求項3記載の温度応答性共重合体からなる架橋物。
【請求項7】
一般式(III)で表される繰り返し単位がN−イソプロピルアクリルアミドである請求項6記載の架橋物。
【請求項8】
Xが水素原子である請求項1または2記載の温度応答性重合体。
【請求項9】
Xが水素原子である請求項3または4記載の温度応答性共重合体。
【請求項10】
下式一般式(I)
【化5】

(式中、R1は水素原子または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R2、R3は各々独立して炭素数1〜6のアルキレン基を表すか、または、R2とR3は一体となってシクロアルカンを形成しても良く、Xは水素原子、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表し、Yはアミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表す。)で表されるアクリルアミド誘導体を用い重合体の温度応答性を保持させる方法。
【請求項11】
下式一般式(II)
【化6】

(式中、R1は水素原子または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R2、R3は各々独立して炭素数1〜6のアルキレン基を表すか、または、R2とR3は一体となってシクロアルカンを形成しても良く、Xは水素原子、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表し、Yはアミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表す。)で表される繰り返し単位を用い重合体の温度応答性を保持させる方法。
【請求項12】
下記一般式(II)
【化7】

(式中、R1は水素原子または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R2、R3は各々独立して炭素数1〜6のアルキレン基を表すか、または、R2とR3は一体となってシクロアルカンを形成しても良く、Xは水素原子、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表し、Yはアミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表す。)で表される繰り返し単位と、下記一般式(III)
【化8】

(式中、R1は水素原子または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R6は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表す。)で表される繰り返し単位とを用い重合体の温度応答性を保持させる方法。
【請求項13】
一般式(III)で表される繰り返し単位がN−イソプロピルアクリルアミドである請求項12記載の方法。
【請求項14】
Xが水素原子である請求項10または11記載の方法。
【請求項15】
Xが水素原子である請求項12または13記載の方法。
【請求項16】
温度応答性を有する重合体の製造における下式一般式(I)
【化9】

(式中、R1は水素原子または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R2、R3は各々独立して炭素数1〜6のアルキレン基を表すか、または、R2とR3は一体となってシクロアルカンを形成しても良く、Xは水素原子、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表し、Yはアミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表す。)で表されるアクリルアミド誘導体の使用。
【請求項17】
温度応答性を有する重合体の製造における下式一般式(II)
【化10】

(式中、R1は水素原子または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R2、R3は各々独立して炭素数1〜6のアルキレン基を表すか、または、R2とR3は一体となってシクロアルカンを形成しても良く、Xは水素原子、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表し、Yはアミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表す。)で表される繰り返し単位の使用。
【請求項18】
温度応答性を有する共重合体の製造における下記一般式(II)
【化11】

(式中、R1は水素原子または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R2、R3は各々独立して炭素数1〜6のアルキレン基を表すか、または、R2とR3は一体となってシクロアルカンを形成しても良く、Xは水素原子、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表し、Yはアミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基もしくは−COOR5(R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基、置換ベンジル基を表す。)を表す。)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(III)
【化12】

(式中、R1は水素原子または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R5は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、R6は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表す。)で表される繰り返し単位との使用。
【請求項19】
一般式(III)で表される繰り返し単位がN−イソプロピルアクリルアミドである請求項18記載の使用。
【請求項20】
請求項17記載の温度応答性を有する重合体を更に架橋剤によって架橋することを特徴とする架橋物の製造方法。
【請求項21】
請求項18記載の温度応答性を有する共重合体を更に架橋剤によって架橋することを特徴とする架橋物の製造方法。
【請求項22】
一般式(III)で表される繰り返し単位がN−イソプロピルアクリルアミドである請求項21記載の架橋物の製造方法。
【請求項23】
Xが水素原子である請求項16または17記載の使用。
【請求項24】
Xが水素原子である請求項18または19記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−255001(P2010−255001A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146920(P2010−146920)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【分割の表示】特願平11−15827の分割
【原出願日】平成11年1月25日(1999.1.25)
【出願人】(501345220)株式会社セルシード (39)
【Fターム(参考)】