説明

アクリルエラストマー組成物

【課題】(A)ハロゲン含有アクリルエラストマー、(B)多価カルボン酸、(C)4級オニウム塩および(D)受酸剤を含有するアクリルエラストマー組成物において、ロール混練シートや二次加硫物にみられる分散不良の点を改善したものを提供する。
【解決手段】上記組成を有するアクリルエラストマー組成物において、(B)成分の多価カルボン酸として加硫温度、好ましくは150〜250℃の加硫温度で分解し、遊離の多価カルボン酸を形成し得る多価カルボン酸エステル、好ましくは多価カルボン酸とアルキルビニルエーテルまたはアルキルビニルチオエーテルとの反応生成物、さらに好ましくはそれと塩基性物質との混合物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルエラストマー組成物に関する。さらに詳しくは、分散性にすぐれた多価カルボン酸系加硫剤を用いたアクリルエラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン含有アクリルエラストマー、多価カルボン酸、第4級アンモニウム塩および受酸剤を含有するアクリルエラストマー組成物は、既に公知である。また、上記アクリルエラストマー組成物において、多価カルボン酸の塩を使用することも提案されている。しかしながら、多価カルボン酸またはその塩は融点が高く、アクリルエラストマーへの溶解性も低いため、これらの多価カルボン酸(塩)を加硫剤とするアクリルエラストマー組成物は、分散性の点で問題がみられる。
【特許文献1】特開昭50−132057号公報
【特許文献2】特許第3324502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、(A)ハロゲン含有アクリルエラストマー、(B)多価カルボン酸、(C)4級オニウム塩および(D)受酸剤を含有するアクリルエラストマー組成物において、ロール混練シートや二次加硫物にみられる分散不良の点を改善したものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる本発明の目的は、上記組成を有するアクリルエラストマー組成物において、(B)成分の多価カルボン酸として加硫温度、好ましくは150〜250℃の加硫温度で分解し、遊離の多価カルボン酸を形成し得る多価カルボン酸エステル、好ましくは多価カルボン酸とアルキルビニルエーテルまたはアルキルビニルチオエーテルとの反応生成物、さらに好ましくはそれと塩基性物質との混合物を用いることによって達成される。
【発明の効果】
【0005】
本発明アクリルエラストマー組成物において、加硫剤として用いられている多価カルボン酸は、エステル化され、水酸基同士の水素結合がなくなるため、分子間力がなくなり、多くの場合に液状であり、また適度な長さのアルキル基の導入により、炭化水素系溶媒の如き極性の小さい溶媒にも溶解するようになる。さらに、エステル基の存在により、エステル、ケトン等の溶媒にも溶け易くなる。その上、アクリルエラストマー自身との溶解性にすぐれているので、アクリルエラストマー組成物としたとき、分散不良を生じない。
【0006】
このエステル化された多価カルボン酸は、加硫温度においては熱分解し、分散性良好な遊離酸とアルキルビニルエーテルまたはアルキルビニルチオエーテルとになるので、加硫物に分散不良の多価カルボン酸を残すことはなく、気体であるアルキルビニル(チオ)エーテルを発生するが、その発生は加硫反応よりも時間的に早いため、二次加硫物が発泡することもない。このため、従来技術にみられた分散不良に起因する加硫物の強度や伸びにみられるバラツキの問題も解消される。
【0007】
なお、混練に際しては、加工助剤として高級アルコールの酸性リン酸エステルまたはポリオキシエチレンアルキルエーテルの酸性リン酸エステルを使用することが好ましく、これによりステアリン酸の場合にみられるような加硫阻害もみられない。
【0008】
このような特性を有する本発明のアクリルエラストマー組成物は、オイルシール、Oリング、パッキン、ガスケット等のシール材やホースなどの加硫成形材料として有効に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(A)成分のハロゲン含有アクリルエラストマーとしては、アルキルアクリレート、アルコキシアルキルアクリレート、アルキルチオアルキルアクリレート、シアノアルキルアクリレートなどの少なくとも一種類を主成分(約60〜99.8重量%)とし、これに(1)2-クロロエチルビニルエ−テル、2-クロロエチルアクリレ−ト、ビニルベンジルクロライド(クロロメチルスチレン)、(2)ビニルクロロアセテート、アリルクロロアセテート、(3)グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジル化合物とモノクロロ酢酸との付加反応生成物、あるいは(4)α-またはβ-ハロゲン置換脂肪族モノカルボン酸のアルケニルエステル、(メタ)アクリル酸のハロアルキルエステル、ハロアルキルアルケニルエステル、ハロアルキルアルケニルケトンまたはハロアセトキシアルキルエステル、ハロアセチル基含有不飽和化合物等の架橋サイトハロゲン含有単量体などを約0.1〜10重量%、好ましくは約1〜5重量%共重合させた共重合体が用いられ、この共重合体中には他の一般的なビニル化合物を約30重量%以下の範囲内で共重合させることもできる。あるいはラクトン変性アクリレートや末端シアノラクトン変性アクリレートなどを共重合させたアクリル共重合体を用いることもできる。
【特許文献3】特開昭63−264612号公報
【特許文献4】特開平1−123809号公報
【0010】
また、ハロゲン含有アクリルエラストマーとしては、ハロゲンおよびカルボキシル基含有アクリルゴム、例えば上記ハロゲン含有アクリルエラストマー中に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和モノカルボン酸またはマレイン酸モノ低級アルキル等の不飽和ジカルボン酸モノエステルを約0.1〜10重量%、好ましくは約1〜5重量%共重合させたものなども用いられる。
【0011】
(B)成分の多価カルボン酸エステルとしては、加硫温度、好ましくは150〜250℃の加硫温度で分解し、遊離の多価カルボン酸を形成し得る多価カルボン酸エステル、好ましくは多価カルボン酸とアルキルビニルエーテルまたはアルキルビニルチオエーテルの反応生成物が用いられる。
【0012】
多価カルボン酸としては、炭素数が4〜30の脂肪族、脂環式または芳香族の多価カルボン酸、好ましくは脂肪族ジカルボン酸が用いられ、多価カルボン酸は酸無水物であってもよい。
【0013】
より具体的には、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジオン酸、β,β-ジメチルコハク酸、β,β-ジメチルグルタル酸、β-エチルグルタル酸、α-エチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、n-ヘキシルコハク酸、n-オクチルコハク酸、n-デシルコハク酸、n-デセニルコハク酸、n-テトラデシルコハク酸、n-オクタデシルコハク酸、イソオクタデセニルコハク酸、n-エイコセニルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられ、好ましくはセバシン酸、アジピン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸などが用いられる。
【0014】
これらの多価カルボン酸は、アルキル基の炭素数が1〜18、好ましくは2〜6のアルキルビニルエーテルまたはアルキルビニルチオエーテルと反応させて、エステル化させて用いられる。用いられるアルキルビニルエーテルとしてはメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、第3ブチルビニルエーテル、n-アミルビニルエーテル、イソアミルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-オクタデシルビニルエーテル等が挙げられ、またアルキルビニルチオエーテルとしては、これらに対応するチオエーテルが用いられ、好ましくは入手のし易さなどの点からイソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、エチルビニルチオエーテル、ブチルビニルチオエーテル等が用いられる。
【0015】
これらの多価カルボン酸とアルキルビニル(チオ)エーテルとから得られる多価カルボン酸エステルは、次のような一般式で示される。
R〔COOCH(CH3)OR′〕n
R〔COOCH(CH3)SR′〕n
R:多価カルボン酸由来の基
R′:アルキルビニル(チオ)エーテルのアルキル基由来の基
n:多価カルボン酸の多価塩基性数で、好ましくは2〜4
【0016】
なお、ハロゲン含有アクリルゴムにアルキルビニルエーテルを配合することにより、加硫物の常態物性や熱老化性などの特性を実質的に損なうことなく、耐圧縮永久歪特性を改善することが、先に本出願人によって提案されているが、この場合には未加硫特性としてムーニー粘度(ML1+4)やスコーチタイムが同時に測定されているだけであって、分散不良の解消が目的とはされていない。
【特許文献5】特開平8−295779号公報
【0017】
本発明においては、好ましくは多価カルボン酸エステルが塩基性物質、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属化合物との混合物、より具体的には多価カルボン酸エステル中に塩基性物質を約0.01〜0.1重量%残留させたものが用いられる。塩基性物質を残留させる目的は、多価カルボン酸エステルの保存安定性を向上せしめることにある。
【0018】
かかる混合物は、多価カルボン酸とアルキルビニル(チオ)エーテルとを、酸性リン酸エステル等の酸性物質を触媒として、アセトン等の溶媒中その還流温度で数時間程度加熱し、反応終了後塩基性物質で触媒および未反応の酸を中和し、水洗して、塩基性物質を所定量残留させたまま、乾燥させることにより得ることができる。
【0019】
多価カルボン酸エステルは、ハロゲン含有アクリルエラストマー100重量部当り約0.5〜20重量部、好ましくは約1〜10重量部の割合で用いられる。これよりも少ない使用割合では架橋不足となり、物理的特性が損なわれるようになり、一方これよりも多い割合で用いられても同様である。
【0020】
(C)成分の4級オニウム塩は、次のような一般式で表わされ、好ましくは4級ホスホニウム塩が用いられる。
(R1R2R3R4N)+X- または (R1R2R3R4P)+X-
R1〜R4:炭素数1〜25のアルキル基、アルコキシル基、アリール基、アル キルアリール基、アラルキル基またはポリオキシアルキレン基で あり、あるいはこれらの内2〜3個がNまたはPと共に複素環構造を 形成することもできる。
X-:Cl-、Br-、I-、HSO4-、H2PO4-、RCOO-、ROSO2-、CO3--等のア
ニオン
【0021】
具体的には、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、n-ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムブロマイド、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジウムブロマイド、セチルピリジウムサルフェート、テトラエチルアンモニウムアセテート、トリメチルベンジルアンモニウムベンゾエート、トリメチルベンジルアンモニウムボレート、5-ベンジル-1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノネニウムクロライド、5-ベンジル-1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノネニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩類、またはテトラフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、トリフェニルメトキシメチルホスホニウムクロライド、トリフェニルメチルカルボニルメチルホスホニウムクロライド、トリフェニルエトキシカルボニルメチルホスホニウムクロライド、トリオクチルベンジルホスホニウムクロライド、トリオクチルメチルホスホニウムクロライド、トリオクチルエチルホスホニウムアセテート、テトラオクチルホスホニウムクロライド、トリオクチルエチルホスホニウムジメチルホスフェート等の4級ホスホニウム塩類が用いられる。
【0022】
これらの4級オニウム塩は、ハロゲン含有アクリルエラストマー100重量部当り約0.1〜10重量部、好ましくは約0.5〜5重量部の割合で用いられる。これ以下の使用割合では、加硫の進行が著しく遅くなり、一方これ以上の割合で用いられると、物理的特性が損われるようになる。
【0023】
また、(D)成分の受酸剤としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の脂肪酸塩や炭酸塩も用いられるが、好ましくはハイドロタルサイト類等の陰イオン交換体が用いられる。
【0024】
ハイドロタルサイト類は、一般式 Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2Oで表わされ、表面処理、表面未処理、脱結晶水、焼成等の合成ハイドロタルサイト、ロシアウラル地方産、ノルウェースナルム地方産等の天然鉱物のいずれをも用いることができる。実際には、市販品、例えば協和化学製品DHT-4A、DHT-4A-2、KW-2000等をそのまま用いることができる。
【0025】
これらのハイドロタルサイト類は、無機物の陰イオン交換体であって、その構造中のCO3部分がハロゲンイオン等と置換してハロゲンを不活性化させる。例えば、塩素イオンの場合、
Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O + 2HCl
→ Mg4.5Al2(OH)13Cl2・mH2O + CO2
の如く反応し、キャッチされた塩素は約450℃以上になる迄脱離しないので、通常では完全に不活性となる。一般に使用されている金属酸化物、例えばMgOでは、塩酸をキャッチした後MgCl2が生成するため、これが原因で耐水性の劣化、金属腐食の原因ともなるが、ハイドロタルサイト類では、こうした問題の発生を防止することができる。
【0026】
かかる作用を奏するハイドロタルサイト類等の受酸剤は、ハロゲン含有アクリルエラストマー100重量部当り約0.5〜20重量部、好ましくは約1〜10重量部の割合で用いられる。これ以下の使用割合では、加硫が阻害されて殆んど進行せず、一方これ以上の割合で用いられると、物理的特性が損われるようになる。
【0027】
以上の各必須成分以外に、他の配合剤、例えば充填剤、滑剤、加硫遅延剤、可塑剤、老化防止剤等が適宜配合されて用いられる。一般には、ステアリン酸等の高級脂肪酸が滑剤として用いられているが、本発明の組成物においては高級脂肪酸は架橋を阻害するので、一般式(HO)nPO〔(OCH2CH2)mOR〕3-n(R:炭素数10〜20のアルキル基、n:1または2、m:0〜5の整数)で示される高級アルコールの酸性リン酸エステルまたはポリオキシエチレンアルキルエーテルの酸性リン酸エステル、例えばポリオキシエチレンオクタデシルエーテルホスフェート等が加工助剤として使用され、実際には市販品である東邦化学製品フォスファノールRL210等が用いられる。これらの高級アルコールの酸性リン酸エステルまたはポリオキシエチレンアルキルエーテルの酸性リン酸エステルは、ハロゲン含有アクリルエラストマー100重量部当り約0.1〜10重量部、好ましくは約1〜5重量部の割合で用いられる。これ以下の使用割合では粘着防止効果がみられず、一方これ以上の割合で用いられると加硫速度を遅らせる。
【0028】
組成物の調製は、ニーダ、バンバリーミキサ、オープンロール等の混合機を用いて混練することにより行われ、混練物の加硫は約150〜250℃で約0.5〜30分間プレス加硫あるいは射出成形することにより行われ、さらに必要に応じて約150〜200℃で約1〜24時間程度オーブン加硫または蒸気加硫が二次加硫として行われる。組成物の一成分として用いられた多価カルボン酸エステルは、この加硫温度で分解し、加硫剤として作用する遊離のカルボン酸を形成させる。
【実施例】
【0029】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0030】
参考例1
温度計、還流冷却器および攪拌機を備えた容量500mlの四口フラスコ中に、セバシン酸10.1g(49.9ミリモル)、n-ブチルビニルエーテル15g(150ミリモル)、アセトン50gおよびジブチルアシッドホスフェート(第八化学製品DP-4)0.1gを加え、液温60℃で16時間反応させた。反応液を室温まで冷却した後、濃度0.5モル/LのKOH水溶液100mlを加えた。水層を廃棄し、トルエン100mlを加え、さらに同濃度のKOH水溶液100mlを加え、トルエン層を分離した。
【0031】
トルエン層をNo.2ロ紙でロ過し、同濃度のKOH水溶液0.1mlを加え、トルエンおよび水をエバポレータで留去した。セバシン酸にブチルビニルエーテルが2モル付加した構造の化合物(分子量402.57;理論収量20.088g)が19.70g(収率98.1%)得られた。この化合物(KOHとの混合物)の外観は液状で、酸価は0でフリーの酸は存在しなかった。
【0032】
TG/DTA測定により熱分解温度を測定したところ、重量1%減少温度が170℃、重量5%減少温度が188℃、100%解温度が225℃であった。なお、この測定は、昇温速度10℃/分、雰囲気窒素気流下で行われた。この生成物(KOHとの混合物)1gを1gのn-ヘキサン、アセトン、酢酸ブチルに溶解させたところ、いずれも均一に溶解した。赤外線吸収スペクトル(日本分光製FT/IR 480plus)では、1700cm-1および3300cm-1付近にカルボン酸の吸収が認められず、1HNMRでは下記の構造であることが特定された。
1HNMR(300MHz;日本分光製JNM-LA300FTNMR)
a:0.89〜0.94ppm
b:1.32〜1.41ppm
c:1.32〜1.41ppm
d:3.4〜3.7ppm
e:5.9〜6.0ppm
f:1.32〜1.41ppm
g:2.29〜2.31ppm
h:1.53〜1.55ppm
i:1.32〜1.41ppm
CH3CH2CH2CH2OCH(CH3)OCOCH2CH2(CH2)4CH2CH2COOCH(CH3)OCH2CH2CH2CH3
A b c d e f g h i h g e f d c b a
【0033】
参考例2
参考例1において、n-ブチルビニルエーテルの代りに同モル数のエチルビニルサルファイドC2H5SCH=CH2 13.2g(0.15モル)を用い、次の化合物(KOHとの混合物)を18.1g(収率64.2%)得た。この化合物の外観は液状で、酸価は0、溶解性も参考例1と同様であった。
C2H5SCH(CH3)OCOCH2CH2(CH2)4CH2CH2COOCH(CH3)SC2H5
【0034】
参考例3
参考例1において、トルエン層をNo.2ロ紙でロ過し、同濃度のKOH水溶液0.1mlを加える代りに、トルエン層を蒸留水100mlで5回洗浄し、洗浄液を中性にした後、トルエン層をNo.2ロ紙でロ過し、その後トルエンおよび水をエバポレータで留去し、セバシン酸にブチルビニルエーテルが2モル付加した構造の化合物を得た。この化合物の溶解性、赤外線吸収スペクトルおよび1HNMRのデーターは、いずれも参考例1のそれらと同様であった。
【0035】
実施例1
EA-BA-MEA-CMS(48/24.5/25/2.5重量%)共重合ゴム 100重量部
FEFカーボンブラック 50 〃
4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン 2 〃
(大内新興化学製品ノクラックCD)
加工助剤(東邦化学製品フォスファノールRL210) 2 〃
参考例1で得られたセバシン酸ジエステル-KOH混合物 2.1 〃
オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド 1 〃
合成ハイドロタルサイト(協和化学製品DHT 4A-2) 2 〃
注) EA:エチルアクリレート
BA:n-ブチルアクリレート
MEA:2-メトキシエチルアクリレート
CMS:p-クロロメチルスチレン
VCA:ビニルクロロアセテート(実施例2)
以上の各成分をオープンロールで混練した後、混練物について180℃、10分間のプレス加硫を行い、さらに175℃、4時間のオーブン加硫(二次加硫)を行った。
【0036】
混練物、ロール混練シートおよび二次加硫について、次の諸特性の観察ならびに測定を行った。
混練性:ロール粘着の有無を目視で観察
ロール混練シートの外観観察:倍率100倍でシート断面の顕微鏡観察を行い、分散不良の有無を観察
二次加硫物の外観観察:倍率100倍でシート断面の顕微鏡観察を行い、分散不良の有無および発泡の有無を観察
二次加硫物の加硫物特性:JIS K6301準拠
二次加硫物の圧縮永久歪:JIS K6301準拠;150℃、70時間、25%圧縮
【0037】
実施例2
実施例1において、アクリルエラストマーとしてEA-BA-MEA-VCA(48/25/25/2重量%)共重合ゴムが同量用いられた。
【0038】
実施例3
実施例1において、参考例1で得られたセバシン酸ジエステル-KOH混合物の代りに、同量の参考例2で得られたセバシン酸ジエステル-KOH混合物が用いられた。
【0039】
実施例4
実施例1において、参考例1で得られたセバシン酸ジエステル-KOH混合物の代りに、同量の参考例3で得られたセバシン酸ジエステルが用いられた。
【0040】
比較例1
実施例1において、参考例1で得られたセバシン酸ジエステル-KOH混合物の代りに、同モル数のセバシン酸1gが用いられた。
【0041】
比較例2
実施例2において、参考例1で得られたセバシン酸ジエステル-KOH混合物の代りに、同モル数のセバシン酸1gが用いられた。
【0042】
比較例3
実施例1において、加工助剤(フォスファノールRL210)が使用されなかった。
【0043】
以上の各実施例および比較例で得られた結果は、次の表に示される。

観察・測定項目 実-1 実-2 実-3 実-4 比-1 比-2 比-3
混練性
ロール粘着の有無 なし なし なし なし なし なし あり
ロール混練シート外観
分散不良の有無 なし なし なし なし あり あり −
二次加硫物外観
分散不良の有無 なし なし なし なし あり あり −
発泡の有無 なし なし なし なし なし なし −
二次加硫物特性
硬さ (JIS A) 69 70 69 69 69 70 −
100%モジュラス(MPa) 7.1 7.2 7.0 7.2 6.9 6.7 −
破断時強さ (MPa) 13.0 14.8 13.5 13.0 12.8 14.5 −
破断時伸び (%) 220 170 240 220 240 180 −
圧縮永久歪 (%) 12 11 12 11 12 11 −

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ハロゲン含有アクリルエラストマー、(B)多価カルボン酸、(C)4級オニウム塩および(D)受酸剤を含有するアクリルエラストマー組成物において、(B)成分として加硫温度において分解し、遊離の多価カルボン酸を形成し得る多価カルボン酸エステルを用いることを特徴とするアクリルエラストマー組成物。
【請求項2】
150〜250℃の加硫温度で分解し、遊離の多価カルボン酸を形成し得る多価カルボン酸エステルが用いられた請求項1記載のアクリルエラストマー組成物。
【請求項3】
(B)成分として用いられる多価カルボン酸エステルが多価カルボン酸とアルキルビニルエーテルまたはアルキルビニルチオエーテルとの反応生成物である請求項1または2記載のアクリルエラストマー組成物。
【請求項4】
多価カルボン酸エステルが塩基性物質との混合物として用いられる請求項1、2または3記載のアクリルエラストマー組成物。
【請求項5】
塩基性物質がアルカリ金属化合物である請求項4記載のアクリルエラストマー組成物。
【請求項6】
多価カルボン酸エステルと塩基性物質との混合物が、多価カルボン酸エステル中に0.01〜0.1重量%の塩基性物質を残留せしめたものである請求項4または5記載のアクリルエラストマー組成物。
【請求項7】
さらに高級アルコールの酸性リン酸エステルまたはポリオキシエチレンアルキルエーテルの酸性リン酸エステルが添加された請求項1記載のアクリルエラストマー組成物。

【公開番号】特開2007−204708(P2007−204708A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28392(P2006−28392)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】