説明

アクリルポリマー

【課題】アクリルモノマー、重合開始剤及びチオール化合物を用いて、アクリルモノマーを重合して得られたアクリルポリマーであって、耐候性が高められたアクリルポリマーを提供する。
【解決手段】アクリルモノマーと、重合開始剤と、架橋性官能基を有するチオール化合物とを用いて、アクリルモノマーを重合して得られたアクリルポリマーであって、アクリルポリマーの分子末端に結合したチオール化合物の数が、アクリルポリマー1分子あたり平均0.5個以上であり、かつ重合開始剤の分解物の残渣が100ppm以下である、アクリルポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルモノマー、重合開始剤及びチオール化合物を用いて、アクリルモノマーを重合して得られたアクリルポリマーであって、耐候性が高められたアクリルポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクリルモノマー、重合開始剤、チオール化合物などの連鎖移動剤等を用いて、アクリルモノマーを重合させて、アクリルポリマーが製造されている。アクリルモノマーの重合は、酢酸エチル、トルエン、工業用アルコール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤中で一般的に行われている。
【0003】
アクリルポリマーの分子量は、アクリルモノマーの重合に際して用いられる有機溶剤の種類、アクリルモノマーの濃度、さらには連鎖移動剤、重合開始剤の分解温度や添加量によって変化する。
【0004】
例えば、低分子量のアクリルポリマーを製造する方法としては、連鎖移動性が大きいトルエンなどの有機溶剤を用いる方法、アクリルモノマーの濃度を低くする方法、チオール化合物などの連鎖移動剤を多く添加する方法、重合初期に重合開始剤を多く添加する方法等が挙げられる。
【0005】
有機溶剤の種類は、環境衛生に対する影響を考慮して選ぶ必要があり、単にアクリルポリマーの分子量を制御する目的だけでは選ぶことはできない。また、アクリルモノマーの濃度を低くすると、低分子量のアクリルポリマーを得ることができるが、分子量分布が広がることがある。この場合、アクリルポリマーの性能は分子量分布により変わるので、得られたアクリルポリマーの性能を確認する必要がある。さらに、有機溶剤の種類やアクリルモノマーの濃度によっては、有機溶剤を除去するために多くのエネルギーが必要となることがあり、廃棄物の増加などの問題も発生する。
【0006】
他方、重合開始剤を重合初期に多く添加すると、低分子量のアクリルポリマーを得ることができる。しかしながら、この場合重合開始剤を重合初期に多く添加するだけでなく、反応熱の対策として、同時にアクリルモノマー濃度を低くする必要があり、非効率である。
【0007】
一方、チオール化合物は、連鎖移動反応によって分子末端に結合するので、チオール化合物の添加量を調整することにより、アクリルポリマーの分子量を制御することができる。チオール化合物の添加量を調整する方法では、有機溶剤の種類、アクリルモノマーの濃度、重合開始剤の添加条件などによって発生する上述の問題も生じない。そのため、低分子量のアクリルポリマーを得る場合には、チオール化合物を多く添加する方法が一般的に採用されている。
【0008】
また、チオール化合物としては、架橋性を有する架橋性官能基を有する化合物が用いられている。架橋性官能基を有するチオール化合物を用いることで、アクリルポリマーの分子末端に架橋性官能基を導入することができる。
【0009】
従って、アクリルポリマーの分子量を所望の範囲とするために、さらに分子末端に架橋性官能基を導入するために、架橋性官能基を有するチオール化合物が広く用いられ、アクリルポリマーが製造されている。
【0010】
チオール化合物を用いて得られたアクリルポリマーの一例として、下記の特許文献1には、メタクリル酸メチル単独又はメタクリル酸メチルを主体とする単量体混合物を重合する際に、重合開始剤として単量体重量当り0.01〜2重量%のtert−ブチルパーオキシエステルと、連鎖移動剤として単量体重量当り0.02〜3重量%の直鎖アルキルメルカプタン(チオール化合物)とを添加し、60〜120℃で反応させて得られたメタクリル系樹脂成形材料が開示されている。特許文献1のメタクリル系樹脂成形材料は、着色がなく無色透明で、かつ優れた耐熱分解性を有するとされている。
【特許文献1】特開昭55−5950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記アクリルポリマーは、接着剤やシーリング材などの用途に用いられている。このような用途に用いられたアクリルポリマーは、屋外暴露されることがある。
【0012】
特許文献1のメタクリル系樹脂成形材料では、屋外暴露される例えば接着剤やシーリング材等の用途に用いられたときに、耐候性に劣りがちであった。すなわち、特許文献1のメタクリル系樹脂成形材料では、屋外暴露されると、チョーキングやクラックが発生することがあった。
【0013】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、アクリルモノマー、重合開始剤及びチオール化合物を用いて、アクリルモノマーを重合して得られたアクリルポリマーであって、耐候性が高められたアクリルポリマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るアクリルポリマーは、アクリルモノマーと、重合開始剤と、架橋性官能基を有するチオール化合物とを用いて、アクリルモノマーを重合して得られたアクリルポリマーであって、アクリルポリマーの分子末端に結合した架橋性官能基を有するチオール化合物の数が、アクリルポリマー1分子あたり平均0.5個以上であり、かつ重合開始剤の分解物の残渣が100ppm以下であることを特徴とする。
【0015】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0016】
本願発明者らは、アクリルポリマーの耐候性を高めるために、以下の検討を行った。
【0017】
アクリルモノマーと、重合開始剤と、架橋分解性官能基を有するチオール化合物とを用いて、溶剤中でアクリルモノマーを重合して得られたアクリルポリマーの重合体溶液のPHは6程度であり、やや弱い酸性を示した。これに対し、アクリルポリマーの重合体溶液の溶剤を除去、すなわち脱溶剤を行い、次に脱溶剤装置の温度を上げて揮発分を回収した後、得られたアクリルポリマーのPHは7程度であり、中性であった。
【0018】
一方、重合開始剤のみを溶剤中で加熱し、得られた重合開始剤の分解物を含む溶液のPHは4程度であり、酸性であった。このことから、重合開始剤が分解した結果、カルボン酸などの酸性物質が生成すると考えられ、重合開始剤の分解物の残渣により上記アクリルポリマーの重合体溶液は酸性を示すと考えられた。また、揮発分の回収後は、重合開始剤の分解物が取り除かれたため、上記アクリルポリマーは中性を示すと考えられた。
【0019】
ところで、アクリルポリマーに架橋性官能基を導入する方法としては、架橋性官能基を有するモノマーを用いて、架橋性官能基を導入する方法と、架橋性官能基を有するチオール化合物を用いて、分子末端に架橋性官能基を導入する方法とが知られている。架橋性官能基を有するモノマーを用いた場合は、ランダムな重合によって架橋性官能基が分子のどの部分、すなわち分子鎖中に導入されるか、分子末端に導入されるかが判らない。これに対し、チオール化合物を用いた場合は、分子末端に架橋性官能基を導入することができる。分子末端に架橋性官能基を導入することで、アクリルポリマーの硬化物の伸びや硬度等の設計の自由度を高めることができる。
【0020】
しかしながら、架橋性官能基を有するチオール化合物を用いて、分子末端に架橋性官能基が導入されたアクリルポリマーでは、分子鎖中に架橋性官能基が導入されたアクリルポリマーよりも耐候性に劣ることが判った。この理由は、アクリルポリマーの分子末端に結合しているチオール化合物に由来する骨格部分が、熱と光で構造変化を起こし易いためと考えられる。
【0021】
ここで、分子末端及び/又は分子鎖中に架橋性官能基が導入された中性又は酸性のアクリルポリマーについて、耐候性を評価した結果を下記表1に示す。充分な耐候性を有する場合を「○」、耐候性に劣る場合を「×」として評価した。
【0022】
【表1】

【0023】
上記結果から、中性のアクリルポリマーの硬化物では、架橋性官能基が分子末端及び分子鎖中にある場合、分子鎖中のみにある場合とも耐候性が同等であることが判った。しかし、酸性条件下では分子末端及び分子鎖中に架橋性官能基が導入されたアクリルポリマーは、分子鎖中にのみ架橋性官能基が導入されたアクリルポリマーよりも耐候性に劣ることが判った。このことから、分子末端に架橋性官能基が導入されたアクリルポリマーにおいて、PHを中性に維持することで耐候性を充分に高めることができる構成を見出した。
【0024】
すなわち、アクリルポリマーの分子末端に結合した架橋性官能基を有するチオール化合物の数が、アクリルポリマー1分子あたり平均0.5個以上であり、かつ重合開始剤の分解物の残渣が100ppm以下である構成によって、アクリルポリマーの耐候性が充分に高められることを見出し、本発明をなすに至った。
【0025】
アクリルポリマーの分子末端に結合したチオール化合物の数が、アクリルポリマー1分子あたり平均0.5個未満であると、十分な架橋ができないことがある。アクリルポリマーの分子末端に結合したチオール化合物の数の好ましい上限は、チオール化合物は分子量を調整する作用があるため、所望とする分子量により決定される。
【0026】
重合開始剤の分解物の残渣が100ppmを超えると、酸性度が高くなり、耐候性に劣る。
【0027】
本発明に係るアクリルポリマーは、アクリルモノマーと、重合開始剤と、架橋性官能基を有するチオール化合物とを用いて、アクリルモノマーを重合して得られる。
【0028】
上記アクリルモノマーとしては、特に限定されないが、アクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル等が挙げられる。アクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルとしては、特に限定されず、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等が挙げられる。これらのアクリルモノマーは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
上記アクリルモノマーは、アクリルモノマー以外の他のモノマーと併用されてもよい。アクリルモノマー以外のモノマーとしては、アクリルモノマーと共重合可能なモノマーであれば、特に限定されない。アクリルモノマー以外のモノマーとしては、特に限定されず、ビニルエステルモノマー、スチレン系モノマーが挙げられる。
【0030】
上記ビニルエステルモノマーとしては、特に限定されないが、酢酸ビニル、蟻酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、n−カプロン酸ビニル、イソカプロン酸ビニル、オクタン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリメチル酢酸ビニル、ピバル酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、トリクロロ酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられる。
【0031】
上記スチレン系モノマーとしては、特に限定されないが、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−(2−クロロエチル)スチレンなどが挙げられる。
【0032】
アクリルモノマーと共重合可能なモノマーであれば、上述したモノマー以外のものを用いてもよい。アクリルモノマーと共重合可能なモノマーとして、架橋性官能基を有するモノマーを用いてもよい。
【0033】
上記架橋性官能基を有するモノマーとしては、分岐アクリル酸基を有する化合物、分岐メタクリル基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、酸無水物、酸ハロゲン化物、アルデヒド、アミン、フェノール類、チオフェノール類、含硫黄酸基若しくはその誘導体、アジリジン類、イソシアン酸基を有する化合物、保護されたイソシアン酸基を有する化合物、イミン、イソチオシアン酸基を有する化合物、ビニルスルフォン、ハロシラン基を有する化合物、アルコキシシラン基を有する化合物、3若しくは4員環ラクトン等の構造を有するアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好適に使用される。特に、接着剤やシーリング材などの用途に用いるアクリルポリマーを得る場合には、エポキシ基、アルコキシシラン基、イソシアン酸基などを有するモノマーが好適に用いられる。
【0034】
上記重合開始剤としては、特に限定されないが、過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤が好ましく用いられる。重合開始剤の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物系重合開始剤;2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等のアゾ系重合開始剤等のラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0035】
上記チオール化合物としては、架橋性官能基を有するものであれば、特に限定されない。上記チオール化合物の架橋性官能基としては、分岐アクリル酸基、分岐メタクリル酸基、含硫黄酸基、保護されたイソシアン酸基、ハロシラン基、アルコキシシラン基等が挙げられる。
【0036】
架橋性官能基を有する上記チオール化合物としては、具体的には、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプト酢酸などが挙げられる。これらのチオール化合物は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。特に、接着剤やシーリング材などの用途に用いるアクリルポリマーを得る場合には、アルコキシシラン基を有するチオール化合物が好適に用いられる。
【0037】
アクリルモノマーの重合の際には、好ましくは、溶剤が用いられる。上記溶剤としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらの溶剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
本発明のアクリルポリマーは、接着剤、シーリング材などの用途、特に屋外暴露される用途に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係るアクリルポリマーは、アクリルポリマーの分子末端に結合した架橋性官能基を有するチオール化合物の数が、アクリルポリマー1分子あたり平均0.5個以上であり、かつ重合開始剤の分解物の残渣が100ppm以下であるので、耐候性に優れている。よって、接着剤、シーリング材等の屋外暴露される用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げることにより本発明の効果を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
以下の原料を使用した。
【0042】
(アクリルモノマー)
ブチルアクリレート(日本触媒社製、重合禁止剤15ppm含む)
(その他のモノマー)
KBM−503(信越化学工業社製、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)
n−DDM(和光純薬社製、n−ドデシルメルカプタン)
(架橋性官能基を有するチオール化合物、モノマー)
KBM−803(信越化学工業社製、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)
(溶剤)
ソルミックAP−7(工業用アルコール、日本アルコール社製、沸点約80℃)
(重合開始剤)
パーヘキサTMH(日本油脂社製、十時間半減期温度86.7℃)
パーヘキシルPV(日本油脂社製、十時間半減期温度53.2℃)
【0043】
(実施例1)
ブチルアクリレート98.7重量部と、KBM−503 0.5重量部と、KBM−803 0.8重量部と、ソルミックAP−7 25重量部とをフラスコに入れた。これを沸点まで加熱し、30分間還流させた後、下記表2に示す時間が経過した後に、下記表2に示す量のパーヘキサTMH及びパーヘキシルPVをそれぞれ添加し、アクリルモノマーを重合した。しかる後、反応開始から10時間が経過した後、フラスコを冷却し、重合反応を終了し、アクリルポリマーの重合体溶液を得た。
【0044】
次に、アクリルポリマーの重合体溶液から溶剤を除去するために、脱溶剤工程を行った。得られたアクリルポリマーの重合体溶液をナスフラスコに入れた後、エバポレーターに接続して130℃に加熱した。大気圧下で大半の溶剤を除去した後、120℃まで加熱しながら真空ポンプで0.27N/cmに減圧し、さらに溶剤を除去した。気泡が発生しなくなった段階から30分間減圧状態を維持し、その後冷却して、アクリルポリマーを得た。
【0045】
(実施例2、3及び比較例1、2)
使用した原料の種類と配合量、重合開始剤の投入時期とその添加量、並びに重合体溶液をエバポレーターに接続して加熱する際の温度、すなわち脱溶剤条件を下記表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、アクリルポリマーを得た。
【0046】
(アクリルポリマーの評価)
(1)PHの測定
脱溶剤工程を行う前のアクリルポリマー重合体溶液のPH、並びに脱溶剤工程を行った後のアクリルポリマーのPHを測定した。PHの測定は、JIS K1557に準拠して行った。
【0047】
(2)アクリルポリマーの分子量の測定
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、ウォーターズ社製、カラム:昭和電工社製、ポリスチレンゲルLF−804、溶媒:THF、流速:1mL/分)を用いて、アクリルポリマーの数平均分子量(Mn)をポリスチレン換算で測定した。
【0048】
(3)アクリルポリマーの分子末端に結合した架橋性官能基を有するチオール化合物の数の測定
使用したチオール化合物を標準物質として、脱溶剤工程を行った後のアクリルポリマーのGC−MS測定を行った。得られたピークを定量し、下記式(1)により、アクリルポリマーの分子末端に結合したチオール化合物の数を求めた。なお、測定を行う前に、アクリルポリマーをアルコール/イオン交換水の混合溶液で水洗し、未反応のチオール化合物を取り除いた。
【0049】
アクリルポリマーの分子末端に結合したチオール化合物の数=(チオール化合物の重量%/チオール化合物の分子量)/(アクリルポリマーの重量%/アクリルポリマーの数平均分子量)
【0050】
(4)重合開始剤分解物残渣の測定
使用した重合開始剤を標準物質として、脱溶剤工程を行った後のアクリルポリマー揮発成分のGC−MS測定を行い、重合開始剤分解物残渣の含有量を求めた。
【0051】
(5)耐候性の評価
脱溶剤工程を行った後の各アクリルポリマー100重量部と、チヌビン328(紫外線吸収剤、チバガイギー社製)1重量部と、チヌビン765(光安定剤、チバガイギー社製)1重量部と、イルガノックス1010(酸化防止剤、チバガイギー社製)1重量部と、NCC2310(重炭酸カルシウム、白石カルシウム社製)150重量部と、ユニオールD−4000(可塑剤、日本油脂社製)50重量部と、SB−65(触媒、三共有機合成社製)1重量部とを攪拌脱泡装置に投入し、十分攪拌混合した。しかる後、脱泡した混合物を取り出した。これを厚さ5mmの型枠の中に空気が入らないように充填し、23℃、相対湿度50%RHに調整された室内で、2週間硬化させた。
【0052】
硬化後のサンプルについて、サンシャインウエザロメーターを用いて下記表2に示す時間硬化物の耐候性の評価を行った。チョーキングが見られない場合を「○」、チョーキングが発生した場合を「×」と判断した。
【0053】
結果を下記表2に示す。
【0054】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルモノマーと、重合開始剤と、架橋性官能基を有するチオール化合物とを用いて、前記アクリルモノマーを重合して得られたアクリルポリマーであって、
アクリルポリマーの分子末端に結合した前記架橋性官能基を有するチオール化合物の数が、アクリルポリマー1分子あたり平均0.5個以上であり、かつ前記重合開始剤の分解物の残渣が100ppm以下であることを特徴とする、アクリルポリマー。

【公開番号】特開2008−111067(P2008−111067A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295871(P2006−295871)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】