説明

アクリル系粘着性組成物およびアクリル系粘着テープ

【課題】低温時における低極性被着体に対するアクリル系粘着テープの接着性を向上させる。
【解決手段】本発明のある態様のアクリル系粘着テープは、アクリル系粘着性組成物で形成された粘着剤層を有する単層の粘着テープである。アクリル系粘着性組成物は、アクリル系ポリマー(A)とガラス転移温度が45℃以下、かつ、重量平均分子量が1500以上4000以下である(メタ)アクリル系重合体(B)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系粘着性組成物およびアクリル系粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクリル系粘着剤層を有するアクリル系粘着テープは、耐光性、耐候性、耐油性等に優れ、また、粘着力、凝集力等の粘着特性、及び耐熱性、耐候性等の耐老化性に優れているため、広く用いられている。特に、アクリル系粘着テープの用途として、家電製品、自動車、建材などの材料として幅広く使用されているガラス、ステンレス等の高極性被着体のみならずポリスチレン、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂)、ポリカーボネートなどの低極性被着体への適用が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭57−17030号公報(米国特許第4223067号)
【特許文献2】特開平7−48549号公報
【特許文献3】特開2001−212900号公報
【特許文献4】特開2002−088320号公報
【特許文献5】特開2002−003800号公報
【特許文献6】特開2002−121505号公報
【特許文献7】特開2004−018761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のアクリル系粘着テープは、低温時(より具体的には5℃)における低極性被着体(特には、ABS)に対する接着性が十分でないため、使用できる温度範囲が制約されるという課題があるため、低極性被着体に対する低温時の接着性を向上させることが要望されている。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温時における低極性被着体に対する接着性が向上したアクリル系粘着性組成物またはアクリル系粘着テープの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、アクリル系粘着性組成物である。当該アクリル系粘着性組成物は、アクリル系ポリマー(A)と、ガラス転移温度が45℃以下、かつ、重量平均分子量が1500以上4000以下である(メタ)アクリル系重合体(B)と、を備える。
【0007】
上記態様のアクリル系粘着性組成物によれば、低温時における低極性被着体に対する接着性を向上させることができる。
【0008】
上記態様の粘着性組成物において、カルボキシ基含有チオールを連鎖移動剤として含み、(メタ)アクリル系重合体(B)の重合度が連鎖移動剤により調節されていてもよい。
【0009】
本発明の他の態様は、アクリル系粘着テープである。当該アクリル系粘着テープは、上述したいずれかの態様のアクリル系粘着性組成物を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアクリル系粘着性組成物またはアクリル系粘着テープによれば、低温時における低極性被着体に対する接着性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
(実施の形態)
実施の形態に係るアクリル系粘着テープは、アクリル系粘着性組成物で形成された粘着剤層を有する単層の粘着テープである。
【0013】
アクリル系粘着性組成物は、アクリル系ポリマー(A)および(メタ)アクリル系重合体(B)を主な成分として備える。以下、アクリル系粘着性組成物の各成分について詳述する。
【0014】
[アクリル系ポリマー(A)]
アクリル系ポリマー(A)は、直鎖又は分岐鎖状の炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として50重量%以上含有する。アクリル系ポリマー(A)は、炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。アクリル系ポリマー(A)は、重合開始剤とともに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合(たとえば、溶液重合、エマルション重合、UV重合)させることにより得ることができる。
【0015】
炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、アクリル系ポリマー(A)を調整するためのモノマー成分全量に対して50重量%以上99.9重量%以下、好ましくは、60重量%以上95重量%以下、さらに70重量%以上93重量%以下であることが好ましい。
【0016】
炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C1−20アルキルエステル、好ましくは(メタ)アクリル酸C2−14アルキルエステル、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C2−10アルキルエステル等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとはアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルをいい、「(メタ)・・・」は全て同様の意味である。
【0017】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、たとえば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルや、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0018】
なお、アクリル系ポリマー(A)は、凝集力、耐熱性、架橋性等の改質を目的として、必要に応じて、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な、他のモノマー成分(共重合性モノマー)を含んでいてもよい。従って、アクリル系ポリマー(A)は、主成分としての、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共に、共重合性モノマーを含んでいてもよい。共重合性モノマーとしては、極性基を有するモノマーを好適に使用することができる。
【0019】
共重合性モノマーの具体的な例としてはアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等の水酸基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(N−置換)アミド系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシヘキサメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルへキシルイタコンイミド、N−シクロへキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−(メタ)アクリロイル−2−ピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−ビニルモルホリン等の窒素含有複素環系モノマー;N−ビニルカルボン酸アミド類;N−ビニルカプロラクタム等のラクタム系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子等を有するアクリル酸エステル系モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー、チオグリコール酸;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等のオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のイミド基含有モノマー;2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基含有モノマー;フッ素原子含有(メタ)アクリレート;ケイ素原子含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、これらの共重合性モノマーは1種又は2種以上使用できる。
【0020】
アクリル系ポリマー(A)が、主成分としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共に共重合性モノマーを含有する場合、カルボキシル基含有モノマーを好適に使用することができる。その中でも、アクリル酸を好適に使用することができる。共重合性モノマーの使用量としては、特に制限されないが、通常、前記アクリル系ポリマー(A)を調整するためのモノマー成分全量に対して、共重合性モノマーを0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、さらに好ましくは1〜15重量%含有することができる。
【0021】
共重合性モノマーを0.1重量%以上含有することで、アクリル系粘着テープの凝集力の低下を防ぎ、高いせん断力を得ることができる。また、共重合性モノマーの含有量を30重量%以下とすることで、凝集力が高くなり過ぎるのを防ぎ、常温(25℃)、さらには低温(5℃)でのタック感を向上させることができる。
【0022】
また、アクリル系ポリマー(A)には、形成する粘着剤層の凝集力を調整するために必要に応じて多官能性モノマーを含有してもよい。
【0023】
多官能性モノマーとしては、たとえば、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。多官能(メタ)アクリレートは、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
多官能性モノマーの使用量としては、その分子量や官能基数等により異なるが、アクリル系ポリマー(A)を調整するためのモノマー成分全量に対して、0.01〜3.0重量%、好ましくは0.02〜2.0重量%であり、さらに好ましくは0.03〜1.5重量%となるように添加する。
【0025】
多官能性モノマーの使用量が、アクリル系ポリマー(A)を調整するためのモノマー成分全量に対して3.0重量%を超えると、たとえば、粘着剤層の凝集力が高くなりすぎ、接着力が低下したりする場合等がある。一方、0.01重量%未満であると、たとえば、粘着剤層の凝集力が低下する場合等がある。
【0026】
<重合開始剤>
アクリル系ポリマー(A)の調製に際して、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)等の重合開始剤を用いた熱や紫外線による硬化反応を利用して、アクリル系ポリマー(A)を容易に形成することができる。特に、重合時間を短くすることができる利点等から、光重合開始剤を好適に用いることができる。重合開始剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
熱重合開始剤としては、たとえば、アゾ系重合開始剤[たとえば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライド等]、過酸化物系重合開始剤(たとえば、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルマレエート、過酸化ラウロイル等)、レドックス系重合開始剤等が挙げられる。
【0028】
熱重合開始剤の使用量としては、特に制限されず、従来、熱重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0029】
光重合開始剤としては、特に制限されず、たとえば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等を用いることができる。
【0030】
具体的には、ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、たとえば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[BASF社製、商品名:イルガキュア651]、アニソールメチルエーテル等が挙げられる。;アセトフェノン系光重合開始剤としては、たとえば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[BASF社製、商品名:イルガキュア184]、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン[BASF社製、商品名:イルガキュア2959]、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン[BASF社製、商品名:ダロキュアー1173]、メトキシアセトフェノン等が挙げられる。;α−ケトール系光重合開始剤としては、たとえば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等が挙げられる。;芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、たとえば、2−ナフタレンスルホニルクロライド等が挙げられる。;光活性オキシム系光重合開始剤としては、たとえば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等が挙げられる。
【0031】
また、ベンゾイン系光重合開始剤には、たとえば、ベンゾイン等が含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、たとえば、ベンジル等が含まれる。;ベンゾフェノン系光重合開始剤には、たとえば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が含まれる。;ケタール系光重合開始剤には、たとえば、ベンジルジメチルケタール等が含まれる。;チオキサントン系光重合開始剤には、たとえば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が含まれる。
【0032】
アシルフォスフィン系光重合開始剤としては、たとえば、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−n−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(1−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−t−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)シクロヘキシルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)オクチルホスフィンオキシド、ビス(2−メトキシベンゾイル)(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2−メトキシベンゾイル)(1−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエトキシベンゾイル)(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエトキシベンゾイル)(1−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジブトキシベンゾイル)(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)(2,4−ジペントキシフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)ベンジルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2−フェニルプロピルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2−フェニルエチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)ベンジルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2−フェニルプロピルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)一2一フェニルエチルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルベンジルブチルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルベンジルオクチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジイソプロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2−メチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−4−メチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジエチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,3,5,6−テトラメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジ−n−ブトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)イソブチルホスフィンオキシド、2,6−ジメチトキシベンゾイル−2,4,6−トリメチルベンゾイル−n一ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジブトキシフェニルホスフィンオキシド、1,10−ビス[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド]デカン、トリ(2−メチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、などが挙げられる。
【0033】
これらの中でも特に、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド[BASF社製、商品名:イルガキュア819]、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジ−n−ブトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド[BASF社製、商品名:ルシリンTPO]、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドが好ましい。
【0034】
光重合開始剤の使用量としては、特に制限されないが、たとえば、アクリル系ポリマー(A)を調整するモノマー成分100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.03〜3重量部、さらに好ましくは0.05〜2重量部の範囲内の量で配合される。
【0035】
ここで、光重合開始剤の使用量が、0.01重量部より少ないと、重合反応が不十分になる場合がある。光重合開始剤の使用量が、5重量部を超えると、光重合開始剤が紫外線を吸収することにより、紫外線が粘着剤層内部まで届かず、重合率の低下を招くおそれがある。生成するポリマーの分子量が小さくなることによって、形成される粘着剤層の凝集力が低くなり、粘着剤層を被着体から剥離する際に、粘着剤層の一部が被着体に残る場合がある。なお、光重合性開始剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
凝集力を調整するには、前記した多官能性モノマー以外に架橋剤を用いることも可能である。架橋剤は通常用いる架橋剤を使用する事ができ、たとえば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等を挙げることができる。特に、好適には、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤を使用することができる。
【0037】
具体的には、イソシアネート系架橋剤の例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートおよびこれらのトリメチロールプロパン等のポリオールとのアダクト体を挙げることができる。
【0038】
エポキシ系架橋剤としては、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンおよび1,3-ビス(N,N'-ジアミングリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0039】
本実施の形態において、アクリル系ポリマー(A)は、前記モノマー成分と重合開始剤を配合した混合物に紫外線(UV)を照射させて、モノマーを一部重合させた部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)として調整することもできる。アクリル系ポリマーシロップに後述する(B)成分を配合してアクリル系粘着性組成物を調整し、このアクリル系粘着性組成物を塗布し、紫外線を照射させて重合を完結させることもできる。またアクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)としては、100000〜5000000である。
【0040】
[(メタ)アクリル系重合体(B)]
(メタ)アクリル系重合体(B)は粘着付与樹脂として機能し、かつアクリル系ポリマー(A)(アクリル系ポリマーシロップ)に添加してUV重合する際に重合阻害を起こしにくいという利点を有する。(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は1500以上4000以下、好ましくは2000以上3800以下、より好ましくは2500以上3700以下であり、かつガラス転移温度(Tg)が45℃以下、好ましくは0℃以上45℃以下、より好ましくは15℃以上45℃以下である。(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が4000を超えると低極性被着体に対する低温での接着性が低下する。また、(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量が1000未満であると、低分子量となるため粘着テープの粘着性能や保持性能の低下を引き起こす場合がある。また、(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度(Tg)が45℃を超えると低極性被着体に対する低温での接着性が低下する。
【0041】
なお、(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量の測定は、GPC法によりポリスチレン換算して求められる。具体的には東ソー株式会社製のHPLC8020に、カラムとしてTSKgelGMH−H(20)×2本を用いて、テトラヒドロフラン溶媒で流速0.5ml/分の条件にて測定される。
【0042】
(メタ)アクリル系重合体(B)の添加量は、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して5〜45重量部であるのが好ましく、10〜30重量部であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル系重合体(B)を45重量部を超えて添加すると、粘着剤層の弾性率が高くなり低温での接着性能が悪くなったり、室温においても粘着性を発現しなくなる場合がある。また、添加量が5部より少ない場合はその効果が得られない場合がある。
【0043】
なお、本実施の形態において(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度は、DSC(示差熱量分析)により求められたものとして定義される。具体的には、島津製作所製のDSC−50を用いて、以下のように求められる。
(1)(メタ)アクリル系重合体(B)を5mg程度秤量し、アルミニウム製のセルに仕込み、測定用サンプルを調製する。
(2)作製したサンプルを上記装置にセットし、N雰囲気下(N流量、40ml/分)にて一旦200℃まで10℃/分の昇温速度で昇温させた後、取り出して放冷(急冷)させる。
(3)その後、上記装置を室温まで冷却させた後、再び上記のサンプルをセットし、−40℃まで冷却し、再度上記(2)と同様に200℃まで昇温させて測定を行う。
(4)このときの吸熱開始温度をガラス転移温度とする。
【0044】
<(メタ)アクリル系重合体(B)の作製方法>
(メタ)アクリル系重合体(B)は、たとえば、(メタ)アクリル酸エステルを、溶液重合法やバルク重合法、乳化重合法、懸濁重合、塊状重合等により重合することで作製される。
【0045】
このような(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、シクロヘキシル(メタ)アクリレートや(メタ)アクリル酸イソボルニルのような(メタ)アクリル酸の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステルを挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0046】
なお、(メタ)アクリル系重合体(B)を構成するモノマー単位としては、シクロヘキシルメタクリレートを好適に使用することができる。
【0047】
また、(メタ)アクリル系重合体(B)は、上記(メタ)アクリル酸エステル成分単位のほかに、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な重合性不飽和結合を有するモノマーを共重合させて得ることも可能である。
【0048】
(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な重合性不飽和結合を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピルのような(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩等の塩;エチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、プロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルのような(ポリ)アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステルのような多価(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル;塩化ビニリデン;(メタ)アクリル酸−2−クロロエチルのようなハロゲン化ビニル化合物;2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有重合性化合物;(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸−2−アジリジニルエチルのようなアジリジン基含有重合性化合物;アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−2−エチルグリシジルエーテルのようなエポキシ基含有ビニルモノマー;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの付加物のようなヒドロキシル基含有ビニルモノマー;フッ素置換(メタ)アクリル酸アルキルエステルのような含フッ素ビニルモノマー;イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸のような不飽和カルボン酸、これらの塩ならびにこれらの(部分)エステル化合物および酸無水物;2−クロルエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニルのような反応性ハロゲン含有ビニルモノマー、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシエチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、N−アクリロイルモルホリンのようなアミド基含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、2−メトキシエトキシトリメトキシシランのような有機ケイ素含有ビニルモノマー;その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー類を挙げることができる。これら単量体は単独あるいは組み合わせて、上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合してもよい。
【0049】
本実施の形態のアクリル系粘着テープにおいて、(メタ)アクリル系重合体(B)としては、例えば、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とイソブチルメタクリレート(IBMA)の共重合体、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とイソボルニルメタクリレート(IBXMA)の共重合体、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とアクリロイルモルフォリン(ACMO)の共重合体、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とジエチルアクリルアミド(DEAA)の共重合体が、低極性被着体に対する低温での接着性が向上したアクリル系粘着テープを提供することができる点で好ましい。
【0050】
前記(メタ)アクリル系重合体(B)を構成する共重合体の組成比としては、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)が50〜85重量%、好ましくは55〜75重量%であり、イソブチルメタクリレート(IBMA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、アクリロイルモルフォリン(ACMO)、ジエチルアクリルアミド(DEAA)が15〜50重量%、25〜45重量%である。
【0051】
さらに(メタ)アクリル系重合体(B)は、エポキシ基またはイソシアネート基と反応性を有する官能基が導入されていてもよい。このような官能基の例としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メルカプト基を挙げることができ、(メタ)アクリル系重合体(B)を製造する際にこうした官能基を有するモノマーを使用することが好ましい。
【0052】
<(メタ)アクリル系重合体(B)の分子量の調整方法>
(メタ)アクリル系重合体(B)の分子量を調整するためにその重合中に連鎖移動剤を用いることができる。使用する連鎖移動剤の例としては、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプト基を有する化合物;チオグリコール酸、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのチオグリコール酸エステル、ネオペンチルグリコールのチオグリコール酸エステル、ペンタエリスリトールのチオグリコール酸エステルが挙げられるが、この中で、カルボキシ基含有チオールを好適に使用することができる。
【0053】
連鎖移動剤の使用量としては、特に制限されないが、通常、アクリル系モノマー100重量部に対して、連鎖移動剤を0.1〜20重量部、好ましくは、0.2〜15重量部、さらに好ましくは0.3〜10重量部含有する。このように連鎖移動剤の添加量を調整することで、好適な分子量の(メタ)アクリル系重合体(B)を得ることができる。
【0054】
アクリル系粘着性組成物には、各種添加剤が配合されていてもよい。このような添加剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤などの架橋剤;ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などの粘着付与剤;可塑剤;充填剤;老化防止剤;界面活性剤などが挙げられる。
【0055】
粘着剤層の形成方法は、特に制限されないが、たとえば、セパレータや基材等の適当な支持体上にアクリル系粘着性組成物を塗布して粘着剤層を形成した後、必要に応じて乾燥や硬化(熱や活性エネルギー線による硬化)させることにより形成される。また、活性エネルギー線による硬化(光硬化)を行う際には、光重合反応は空気中の酸素に阻害されるため、粘着剤層上にセパレータや基材等の適当な支持体を貼り合わせたり、また窒素雰囲気下で光硬化を行うこと等により、酸素を遮断することが好ましい。粘着剤層の形成の際に用いられる適当な支持体は、アクリル系粘着テープを作製する際、適宜な時期に剥離されてもよいし、作製後のアクリル系粘着テープを利用する際に剥離されてもよい。
【0056】
粘着剤層の厚さは、アクリル系粘着テープの使用目的や加熱による粘着力の低減性などに応じて適宜選択されるが、例えば、1〜300μm、好ましくは10〜250μm、さらに好ましくは30〜200μm程度である。粘着剤層の厚さが薄すぎると、被着体を保持するために十分な粘着力を得られない場合がある。
【0057】
以上説明したアクリル系粘着テープによれば、ポリスチレン、ABS、ポリカーボネートなどの低極性被着体に対する低温での接着性が向上する。なお、「低温」とは、5℃程度の温度をいう。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0059】
表1は、実施例1〜4、比較例1に係るアクリル系粘着テープの成分を示す。なお、実施例1〜4、比較例1のアクリル系粘着テープは粘着剤層がいずれも単層である。
【0060】
【表1】

表1中の略語は以下の化合物を示す。
2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
AA:アクリル酸
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
IBMA:イソブチルメタクリレート
【0061】
(A:アクリル系ポリマーシロップ(2−EHA/AA=94/6)の調整)
2−エチルヘキシルアクリレート(94重量部)及びアクリル酸(6重量部)から構成されるモノマー混合物に、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」BASF社製、0.07重量部)と光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」BASF社製、0.07重量部)とを配合した後、粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度:30℃)が15Pa・sになるまで紫外線を照射し、一部が重合した組成物(アクリル系ポリマーシロップ)を得た。
【0062】
(B:(メタ)アクリル系重合体(CHMA/IBMA=60/40)の調整)
シクロヘキシルメタクリレート(CHMA、60重量部)、イソブチルメタクリレート(IBMA、40重量部)、チオグリコール酸(5.0重量部)を配合した後、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を除去した。ついで90℃まで昇温したところで、パーヘキシルO(日油株式会社製、0.005重量部)、パーヘキシルD(日油株式会社製、0.01重量部)を混合した。さらに、90℃で1時間攪拌後、1時間かけて150℃まで昇温し、150℃で1時間攪拌した。次いで、1時間かけて170℃まで昇温し、170℃で60分間攪拌した。
【0063】
次に、170℃の状態で減圧し、1時間攪拌して残留モノマーを除去し、(メタ)アクリル系重合体(B)を得た。なお、得られた(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)は、それぞれ、3200、30℃であった。
【0064】
実施例1に係るアクリル系粘着テープの作製方法について説明する。
【0065】
(アクリル系粘着性組成物の調整)
上述したアクリル系ポリマーシロップ1(100重量部)に対して、TMPTA(0.20重量部)、上記で得た(メタ)アクリル系重合体(B)(25重量部)、およびイルガキュア651(0.05重量部)を配合し、アクリル系粘着性組成物を得た。
【0066】
(粘着剤層の作製)
得られたアクリル系粘着性組成物をロールコーターにて片面剥離処理された厚さ38μmのポリエステルフィルム(ポリエステル製剥離ライナー)の剥離処理された面上に厚さ70μmとなるように塗布した。次いで、塗布されたアクリル系粘着性組成物の他方の面に、ポリエステル製剥離ライナーの剥離処理された面がアクリル系粘着性組成物の一方の面と対向するように貼り合わせた。次いで、照度5mW/cm2のブラックライトランプにて3分間両面から紫外線照射を行った。このようにして厚さ70μmのアクリル系粘着テープを得た。
【0067】
(実施例2〜4)
実施例2〜4に係るアクリル系粘着テープの基本的な作製方法は、(メタ)アクリル系重合体(B)の組成比とチオグリコール酸添加部数を除き、実施例1と同様である。実施例2〜4に係るアクリル系粘着テープに含まれる(メタ)アクリル系重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、いずれも1500以上4000以下の範囲内であった。また、実施例2〜4に係るアクリル系粘着テープに含まれる(メタ)アクリル系重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は、いずれも45℃以下であった。
【0068】
(比較例1)
比較例1に係るアクリル系粘着テープの基本的な作製方法は、実施例1と同様である。ただし、比較例1に係るアクリル系粘着テープに含まれる(メタ)アクリル系重合体(B)は、CHMAのみで構成されており、その重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)は、それぞれ4000、55℃であった。
【0069】
(試験方法)
[90°剥離試験]
低極性被着体として、ABS板を用意した。各実施例および比較例1のアクリル系粘着テープについて、23℃雰囲気下にて一方の側の剥離ライナーを剥がし、厚み130μmのアルミニウムフィルムを裏打ちしたアクリル系粘着テープを5℃の雰囲気下30分放置した後、同環境下にてもう片方の剥離フィルムを剥がし粘着剤層を露出させ、ABS板に5kgローラー片道で圧着させた後、同雰囲気下で20分間エージング後、90°剥離方向に引張速度300mm/分にて、アクリル系粘着テープを剥離することにより低温(5℃)下でのABS板に対する粘着力(単位:N/25mm)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0070】
【表2】

表2に示すように、実施例1〜4のアクリル系粘着テープは、低温下において低極性被着体であるABS板に対する接着力が比較例1のアクリル系粘着テープに比べて向上していることがわかる。
【0071】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【0072】
たとえば、上述の実施の形態のアクリル系粘着テープでは、アクリル系粘着性組成物からなる粘着剤層が単層であるが、アクリル系ポリマー(A)および(メタ)アクリル系重合体(B)の成分が異なる粘着剤層を積層してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマー(A)と、
ガラス転移温度が45℃以下、かつ、重量平均分子量が1500以上4000以下である(メタ)アクリル系重合体(B)と、
を備えるアクリル系粘着性組成物。
【請求項2】
カルボキシ基含有チオールを連鎖移動剤として含み、
前記(メタ)アクリル系重合体(B)の重合度が前記連鎖移動剤により調節されている請求項1に記載のアクリル系粘着性組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアクリル系粘着性組成物を含むアクリル系粘着テープ。

【公開番号】特開2011−236413(P2011−236413A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87356(P2011−87356)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】