説明

アクリル系複層体

【課題】
優れた寸法安定性、耐熱収縮性、耐衝撃性、耐割れ性およびフレキシブル性を有し、且つ、層間剥離やフィルムの割れがなくロール状として使用できるアクリル系複層体の提供、また、さらに耐表面傷つき性および表面平滑性に優れるアクリル系複層体の提供。
【解決手段】
引張弾性率が1〜1000MPaであるアクリル系樹脂組成物層(I)と、該アクリル系樹脂組成物層(I)との引張弾性率の比が2以上500以下である樹脂組成物層(II)とを備え、アクリル系樹脂組成物層(I)の主面の両面に樹脂組成物層(II)を1層ずつ備える複層体および樹脂組成物層(II)の主面の両面にアクリル系樹脂組成物層(I)を1層ずつ備える複層体から選ばれるアクリル系複層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系複層体に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル樹脂等からなるメタクリル樹脂系シートまたはフィルムは、透明性、耐光性および耐表面傷つき性などに優れるため、従来から、屋根材、自動車ランプカバー、看板、表示装置の導光板などに幅広く用いられている。また、ポリカーボネート樹脂等からなるポリカーボネート樹脂系シートまたはフィルムは、優れた透明性・低吸水性等を活かして、種々の光学部材などとして用いられている。しかしながら、メタクリル樹脂系、ポリカーボネート樹脂系のシートまたはフィルムは、耐衝撃性やフレキシブル性に劣るため、シートが割れる場合があったりロール加工できなかったりする欠点があった。
一方、透明性、耐衝撃性、フレキシブル性に優れるシートまたはフィルムとして、アクリル系ブロック共重合体またはそれを含む樹脂組成物、アクリルゴム粒子を配合したアクリル系樹脂組成物、あるいは可塑剤とメタクリル樹脂を配合したアクリル系樹脂組成物などアクリル系樹脂組成物からなるシートまたはフィルムが知られている(特許文献1〜8)。しかし、これらのシートまたはフィルムは、耐表面傷つき性や寸法安定性に劣るという問題があった。また、上記特許文献には、これらのシートまたはフィルムを他の重合体や布帛等からなる基材に積層することができる旨が開示されている。しかしながら、これらの積層体は、層間剥離が起こる場合があり、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−349782号公報
【特許文献2】特開2007−182585号公報
【特許文献3】特開2009−125985号公報
【特許文献4】国際公開第2010/055798号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2009/054553号パンフレット
【特許文献6】特開2008−93921号公報
【特許文献7】特開2002−291353号公報
【特許文献8】特開2009−91531号公報
【特許文献9】特表2005−515281号公報
【特許文献10】特開平11−335432号公報
【特許文献11】特開平11−292940号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Macromol. Chem. Phys., 2000年,201巻,p.1108〜1114
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、優れた寸法安定性、耐熱収縮性、耐衝撃性、耐割れ性およびフレキシブル性を有し、且つ、層間剥離やフィルムの割れがなくロール状として使用することができるアクリル系複層体を提供することである。また、本発明の別の目的は、上記に加え、さらに耐表面傷つき性および表面平滑性に優れるアクリル系複層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、
[1]引張弾性率が1〜1000MPaであるアクリル系樹脂組成物層(I)と、該アクリル系樹脂組成物層(I)との引張弾性率の比が2以上500以下である樹脂組成物層(II)とを備え、アクリル系樹脂組成物層(I)の主面の両面に樹脂組成物層(II)を1層ずつ備える複層体および樹脂組成物層(II)の主面の両面にアクリル系樹脂組成物層(I)を1層ずつ備える複層体から選ばれるアクリル系複層体;
[2]前記アクリル系樹脂組成物層(I)がアクリル系ブロック共重合体または該アクリル系ブロック共重合体を含有する樹脂組成物のいずれかからなる[1]のアクリル系複層体;
[3]前記樹脂組成物層(II)が、メタクリル酸エステル系重合体組成物またはポリカーボネート系樹脂組成物から選ばれる樹脂組成物からなる、[1]または[2]のアクリル系複層体。
[4]アクリル系樹脂組成物層(I)と樹脂組成物層(II)を構成する各々の樹脂組成物の屈折率差が0.05以下である[1]〜[3]のいずれかのアクリル系複層体。
[5]アクリル系複層体全体の厚みに対するアクリル系樹脂組成物層(I)の合計の厚み比率(層比率)が、0.5以上0.95未満の範囲である[1]〜[4]のいずれかのアクリル系複層体。
[6]アクリル系複層体全体の厚みに対するアクリル系樹脂組成物層(I)の合計の厚み比率(層比率)が、0.05以上0.5未満の範囲である[1]〜[4]のいずれかのアクリル系複層体。
[7]樹脂組成物層(II)の主面の両面に1層以上ずつアクリル系樹脂組成物層(I)を備え、アクリル系複層体の最外層がアクリル系樹脂組成物層(I)である[1]〜[6]のいずれかのアクリル系複層体;
[8]アクリル系樹脂組成物層(I)の主面の両面に1層以上ずつ樹脂組成物層(II)を備え、アクリル系複層体の最外層が樹脂組成物層(II)である[1]〜[6]のアクリル系複層体;
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、優れた寸法安定性、耐熱収縮性、耐衝撃性、耐割れ性およびフレキシブル性を有し、且つ、層間剥離やフィルムの割れがなくロール状として使用することができるアクリル系複層体を提供できる。また、さらに耐表面傷つき性および表面平滑性に優れるアクリル系複層体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のアクリル系複層体は、アクリル系樹脂組成物層(I)と、樹脂組成物層(II)とを備え、アクリル系樹脂組成物層(I)の主面の両面に樹脂組成物層(II)を1層ずつ備える複層体および樹脂組成物層(II)の主面の両面にアクリル系樹脂組成物層(I)を1層ずつ備える複層体から選ばれる。
【0009】
本発明で使用するアクリル系樹脂組成物層(I)の引張弾性率は1〜1000MPaであり、好ましくは50〜500MPaである。引張弾性率が上記範囲より小さい場合は、得られるアクリル系複層体の引張強さなどの力学強度が不十分となり耐衝撃性が不足する。また、アクリル系樹脂組成物層(I)が形状保持できず、アクリル系複層体の端面からアクリル系樹脂組成物層(I)がはみ出る問題が生じる。引張弾性率が上記範囲より大きい場合は、本発明のアクリル系複層体のフレキシブル性が不十分となり、耐衝撃性に劣るため、製品をロールとする場合に割れや巻き癖が生じる。
ここで、上記アクリル系樹脂組成物層(I)の引張弾性率は、ISO527−3に記載の方法に準拠して、23℃で、引張速度300mm/minの条件で測定した値である。
【0010】
上記アクリル系樹脂組成物層(I)を構成するアクリル系樹脂組成物は、アクリル系ブロック共重合体、アクリル系グラフト共重合体、アクリル系ブロック共重合体またはアクリル系グラフト共重合体を含有する組成物、アクリルゴム粒子を含有する組成物、メタクリル酸エステル系重合体と可塑剤との組成物などを挙げることができる。
【0011】
上記アクリル系ブロック共重合体およびアクリル系グラフト共重合体は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体からなるガラス転移温度が25℃未満の重合体ブロック(以下、ソフトブロックと表記することがある)とガラス転移温度の25℃以上の重合体ブロック(以下、ハードブロックと表記することがある)を有する。
【0012】
上記のアクリル系ブロック共重合体およびアクリル系グラフト共重合体のハードブロックとソフトブロックの質量比は特に限定されず、本発明で使用するアクリル系樹脂組成物層(I)の引張弾性率が上記の範囲となるように制御すれば良いが、通常、ソフトブロック/ハードブロック=15/80〜85/15が好ましく、25/75〜75/25がより好ましく、30/70〜60/40がさらに好ましい。ソフトブロック/ハードブロックのソフトブロックの割合が上記の範囲より小さい場合は、アクリル系樹脂組成物層(I)のフレキシブル性が不十分となる傾向にある。ソフトブロック/ハードブロックのソフトブロックの割合が上記の範囲より大きい場合は、アクリル系ブロック共重合体、アクリル系グラフト共重合体、およびこれらを含有する樹脂組成物をペレット形状とすることが困難となり、取り扱い性に劣る傾向にある。
【0013】
上記ソフトブロックを形成する重合体としては、ガラス転移温度が25℃未満の(メタ)アクリル酸エステル系重合体を選ぶことができ、かかる重合体を構成する単量体の具体例としてはメタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニルエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニルエチル、アクリル酸2−メトキシエチルなどが挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステルは1種を単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
上記ハードブロックを形成する重合体としては、ガラス転移温度が25℃未満の(メタ)アクリル酸エステル系重合体を選ぶことができ、かかる重合体を構成する単量体の具体例としてはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸メチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニルなどが挙げられる。上記メタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルは1種を単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
上記ソフトブロックを形成する重合体中に、ソフトブロックの特性を損なわない範囲で、ハードブロックを形成する重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位が含まれていてもよいし、上記ハードブロックを形成する重合体中に、ハードブロックの特性を損なわない範囲で、ソフトブロックを形成する重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位が含まれていてもよい。
【0016】
上記の(メタ)アクリル酸エステルに加えて、ソフトブロック、ハードブロックの特性を損なわない範囲で他のモノマーを共重合してもよい。共重合可能なモノマーとしては、例えばメタクリル酸;メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸N−イソプロピルアミド等の反応性基を持つメタクリル酸エステル;アクリル酸;アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸N−イソプロピルアミド等の反応基を持つアクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;酢酸ビニル;エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのオレフィン;塩化ビニル;塩化ビニリデン;フッ化ビニル;フッ化ビニリデン;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン;無水マレイン酸などが挙げられる。
【0017】
上記のアクリル系ブロック共重合体およびアクリル系グラフト共重合体の重量平均分子量は、本発明のアクリル系複層体の溶融押出成形性を向上させる観点から、10,000〜500,000が好ましく、30,000〜150,000がより好ましい。アクリル系ブロック共重合体およびアクリル系グラフト共重合体の重量平均分子量が10,000よりも小さいと、溶融押出成形において十分な溶融張力を保持できず、厚み精度が低下し、良好なアクリル系複層体が得られにくい。一方、500,000よりも大きいと、溶融樹脂が高粘度化し、溶融押出成形で得られるアクリル系複層体の表面に未溶融物(高分子量体)に起因するブツが発生し、良好なアクリル系複層体が得られにくい傾向がある。また、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量の比)は、本発明のアクリル系複層体の透明性を向上させる観点から、1.01〜1.50が好ましく、1.01〜1.35がより好ましい。このような範囲を取ることにより、本発明のアクリル系複層体のブツの発生原因である未溶融物の含有量を極めて少量とすることができる。
【0018】
上記のアクリル系ブロック共重合体の形態としては、ソフトブロック−ハードブロックのジブロック共重合体、ハードブロック−ソフトブロック−ハードブロックのトリブロック共重合体、ハードブロック−ソフトブロック−ハードブロック−ソフトブロックのテトラブロック共重合体、及びこれらの星型共重合体が挙げられる。中でもトリブロック共重合体や、トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物がより好ましい。
【0019】
ブロック共重合の方法としては、末端反応性基を有する重合体を重合開始剤、重合停止剤、連鎖移動剤として使用する方法や、リビング重合が挙げられ、リビング重合がより好ましい。リビング重合としてはリビングラジカル重合方法、リビングカチオン重合方法、リビングアニオン重合方法が挙げられるが、リビングラジカル重合方法、リビングアニオン重合方法がより好ましく、得られるアクリル系ブロック共重合体の透明性の観点からリビングアニオン重合方法が最も好ましい。リビングラジカル重合方法としては、特許文献9のような安定ニトロキシ基化合物を用いたコントロールラジカル重合方法(CRP)、非特許文献1のような原子移動ラジカル重合方法(ATRP)などが挙げられる。リビングアニオン重合方法としては特許文献10のような有機アルミニウム化合物を用いた重合方法や、有機サマリウム錯体を用いた重合方法、塩化リチウムやリチウムメトキシエトキシドなどのアルコキシリチウムを用いた重合方法が挙げられる。上記の重合方法のうち、原子移動ラジカル重合方法、有機アルミニウム化合物を用いたリビングアニオン重合方法が好ましく、分子量や分子量分布の制御に優れ、目的のブロック構造以外のアクリル系ブロック共重合体の含有量が少なく構造がより制御され、透明性や溶融流動性に優れる点、未反応モノマー分やオリゴマー成分が少ないことから、有機アルミニウム化合物を用いたリビングアニオン重合方法がより好ましい。
【0020】
グラフト共重合の方法としては、末端に重合反応性基を有する、ハードブロックを形成する重合体をマクロモノマーとして用いて、ソフトブロックを形成するモノマーと共重合する方法が挙げられる。マクロモノマーの重合にはラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合が挙げられる。また、ソフトブロックを形成する重合体の側鎖からハードブロックを形成するモノマーを重合させる方法が挙げられる。
【0021】
上記アクリル系樹脂組成物は、上記アクリル系ブロック共重合体、アクリル系グラフト共重合体のみからなるものでもよいが、これらのいずれか又は両方を含む樹脂組成物であってもよい。その場合、アクリル系ブロック共重合体及びアクリル系グラフト共重合体の合計質量の割合はアクリル系樹脂組成物中15〜100質量%が好ましく、30〜100質量%がより好ましく、50〜100質量%がさらに好ましい。アクリル系ブロック共重合体及びアクリル系グラフト共重合体の他に含んでいてもよい成分としては、他の重合体、高分子加工助剤、着色剤、粘着付与樹脂、可塑剤、充填材などを挙げることができる。
【0022】
他の重合体としては、例えば、メタクリル酸エステル系重合体が挙げられる。メタクリル酸エステル系重合体とは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニルエチル、メタクリル酸イソボルニルなどの官能基を有さないメタクリル酸エステルの重合体である。上記メタクリル酸エステルに加えて、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸N−イソプロピルアミドなどの官能基を有するメタクリル酸エステル;アクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニルエチル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸N−イソプロピルアミドなどのアクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル;酢酸ビニル;エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのオレフィン;塩化ビニル;塩化ビニリデン;フッ化ビニル;フッ化ビニリデン;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン;無水マレイン酸などを少量共重合してもよい。
【0023】
上記アクリル系ブロック共重合体およびアクリル系グラフト共重合体のいずれか又は両方を含有する樹脂組成物が、メタクリル酸エステル系重合体を含有する場合、該メタクリル酸エステル系重合体の樹脂組成物中の含有量は、85質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0024】
本発明で用いられるアクリル系樹脂組成物層(I)として、アクリル系ゴム粒子を含有する組成物を用いてもよい。アクリル系ゴム粒子は、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を有する粒子であり、該弾性重合体のみからなる単層構造のもの、該弾性重合体の層を有する多層構造のものなどがある。また、アクリル系ゴム粒子としては、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体が炭素−炭素二重結合を有するものであり、後架橋したものであってもよい。このアクリル酸エステルを主体とする弾性重合体は、典型的には、アクリル酸エステル40質量%以上99.99質量%未満とその他の単量体0.01質量%以上60質量%未満との共重合体である。多官能性単量体を49.99質量%以下の範囲で含んでいてもよい。ここで、「アクリル酸エステルを主体とする」とは、全成分の中で、アクリル酸エステルが質量比で最も多い成分という意味である。
【0025】
上記アクリル酸エステルとしては、アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は1〜8が好ましく、4〜8がより好ましい。アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。上記その他の単量体としては、例えば、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン;スチレン等の芳香族ビニル;アクリロニトリル等のニトリルが挙げられる。また、多官能性単量体としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコールやジ(メタ)アクリル酸ブタンジオールなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸アリル等の(メタ)アクリル酸アルケニルエステル;ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物などが挙げられる。
【0026】
アクリル系ゴム粒子が多層構造の場合、2層構造のものであってもよいし、3層以上の構造のものであってもよい。2層構造の場合、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を内層とし、メタクリル酸エステルを主体とする重合体を外層とするものが例として挙げられる。また、3層構造の場合には、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを主体とする重合体が内層、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体が中間層、メタクリル酸エステルを主体とする重合体を外層とするものが挙げられる。得られるアクリル系樹脂組成物層(I)の柔軟性や製膜性の観点からは、アクリル系ゴム粒子は単層構造又は2層構造のものが好ましく、表面硬度向上の観点からは、アクリル系ゴム粒子は3層以上の構造のものが好ましい。
【0027】
上記アクリル系ゴム粒子のうち、単層構造または多層構造のアクリル系ゴム粒子は、例えば、アクリル酸エステル、その他の単量体、および必要に応じて多官能性重合体を、公知の方法により溶液重合、乳化重合、懸濁重合または塊状重合することにより得られる。中でも、乳化重合の場合、重合温度は通常一0〜100℃の範囲である。使用する乳化剤としては、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、及びステアリン酸ナトリウム等の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩;ロジン酸カリウム等のロジン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルアリルスルホン酸等が挙げられる。乳化重合で使用する重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が一般的である。ラジカル重合開始剤としては、例えば過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物を単独で用いることができる。また、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機ハイドロパーオキサイド類と、遷移金属塩等の還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤も使用できる。2層以上の多層構造を有するアクリル系ゴム粒子については、公知の乳化重合法に従って所定の単量体混合物の所定量を順次重合させることにより、所定の重合体層を、粒子の中心部から外部に向かって段階的に形成させることで得られる(例えば、特許文献11参照)。
【0028】
上記アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体が炭素−炭素二重結合を有し、後架橋したアクリル系ゴム粒子は、該弾性重合体を単量体に溶解して重合中に架橋させる方法や、弾性重合体を溶融混練中に架橋させる方法により製造することができる。
【0029】
上記アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体が炭素−炭素二重結合を有する場合、その重合体は、例えば、アクリル酸エステル、その他の単量体、および必要に応じて多官能性重合体を、ラジカル重合やアニオン重合して得られる。その他の単量体としては、炭素−炭素二重結合を含有させるため、二重結合を二つ以上有する多官能単量体が好ましく、例えば上記した多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アルケニルエステル、芳香族ジビニル化合物、共役ジエンなどが挙げられ、中でも共役ジエンが好ましい。
また、重合方法としては、アニオン重合が、炭素−炭素二重結合をより効率的に含有させることができるため好ましい。共重合の形態は、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合のいずれでもよいが、ブロック共重合が好ましい。
【0030】
本発明において、アクリル系樹脂組成物層(I)を構成するアクリル系樹脂組成物がアクリル系ゴム粒子を含有する場合、その含有量は、アクリル系樹脂組成物層(I)の引張弾性率が本発明で規定する範囲内となれば特に限定されないが、典型的には、30質量%〜100質量%が好ましく、40質量%〜100質量%がより好ましく、50質量%〜100質量%がさらに好ましい。アクリル系ゴム粒子の含有量が上記範囲内であれば、アクリル系樹脂組成物層(I)のフレキシブル性と、アクリル系樹脂組成物の溶融流動性、加工性、引張破断強さを両立できる。
【0031】
上記アクリル系ゴム粒子を含有する組成物は、さらにメタクリル酸エステル系重合体を含有していてもよい。その場合の配合方法としては、アクリル系ゴム粒子をメタクリル酸エステル系重合体に配合する方法や、重合反応性基を有するアクリル系ゴム粒子(あるいはその前駆体となる重合体)をメタクリル酸エステル系単量体に混合して重合と同時にゴム成分を架橋、微分散化する方法により得る方法が挙げられる。
【0032】
アクリル系樹脂組成物層(I)を構成するアクリル系樹脂組成物として、メタクリル酸エステル系重合体と可塑剤との組成物を用いる場合、使用される可塑剤は、例えば、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)等のフタル酸エステル系可塑剤;ポリサイザーW230−S(大日本インキ(株)製)等のポリエステル系可塑剤;アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)等のクエン酸エステル系可塑剤などが挙げられる。上記可塑剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0033】
上記メタクリル酸エステル系重合体と可塑剤との組成物中のメタクリル酸エステル系重合体の含有量は、本発明で使用するアクリル系樹脂組成物層(I)の引張弾性率が上記範囲となるように調整すれば良いが、40〜95質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましく、70〜85質量%がさらに好ましい。
【0034】
また、可塑剤の含有量は、5質量%〜60質量%が好ましく、10質量%〜40質量%がより好ましく、15%質量%〜30質量%がさらに好ましい。可塑剤の含有量が上記の範囲より大きい場合は、引張強さが低下し、本発明で使用するアクリル系樹脂組成物をペレット形状とすることが困難となり、取り扱い性に劣る傾向にある。可塑剤の含有量が上記の範囲より小さい場合は、アクリル系樹脂組成物層(I)のフレキシブル性が不十分となる。
【0035】
可塑剤のメタクリル酸エステル系重合体への配合方法は特に限定されないが、メタクリル酸エステル系モノマーに溶解させ重合させてもよく、メタクリル酸エステル系重合体と溶融混練してもよい。可塑剤をメタクリル酸エステル系モノマーに溶解させ重合させる場合、重合反応と同時に架橋反応を行って耐熱性を高めてもよい。
【0036】
本発明で使用するアクリル系樹脂組成物は、アクリル系樹脂組成物層(I)の透明性や引張弾性率に影響しない範囲で他の重合体を含有してもよい。かかる他の重合体としては、本発明で使用するアクリル系重合体と相容性の良い材料が好ましく、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ乳酸、ロジン酸エステル、ポリα−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0037】
本発明で使用する樹脂組成物層(II)は、 上記アクリル系樹脂組成物層(I)との引張弾性率の比が2以上500以下、好ましくは3以上300以下である。ここで、本発明において引張弾性率の比とは、樹脂組成物層(II)の引張弾性率の値をアクリル系樹脂組成物層(I)の引張弾性率の値で除したもの(樹脂組成物層(II)の引張弾性率/アクリル系樹脂組成物層(I)の引張弾性率)をいう。本発明の樹脂組成物層(II)の引張弾性率比が上記範囲より小さい場合は、本発明のアクリル系複層体の表面性や剛性の改良効果が不十分であるため、耐表面傷付き性および耐衝撃性に劣る。引張弾性率比が上記の範囲より大きい場合は、本発明のアクリル系複層体を構成するアクリル系樹脂組成物層(I)と樹脂組成物層(II)との引張弾性率の差が大きくなりすぎるため、ロール巻取り時に樹脂組成物層(II)に割れやクラックが発生し、層間の剥れが生じる。
【0038】
ここで上記樹脂組成物層(II)の引張弾性率は、ISO527−3に記載の方法に準拠して、23℃で、引張速度300mm/minの条件で測定した値である。
【0039】
本発明で使用する樹脂組成物層(II)の引張弾性率は、耐表面傷つき性向上の観点から、1200MPa以上3000MPa以下であることが好ましく、1500MPa以上2500MPa以下であることがより好ましい。
【0040】
本発明で使用する樹脂組成物層(II)は、上記のアクリル系樹脂組成物層(I)の透明性や導光性能を活かすため、透明な樹脂またはその組成物からなることが好ましい。ここで、透明とは、JISK7136の方法に準じて測定したヘイズが3.0%以下、JISK7361−1の方法に準じて測定した全光線透過率が85%以上であることを意味する。かかる要件を満たすものとしては、例えば、メタクリル酸エステル系重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、スチレン系樹脂、ポリ乳酸、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−共役ジエンブロック共重合体およびその水素添加物(SEBS、SEEPS、SEPSなど)系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂およびこれらを含む樹脂組成物などが挙げられる。これらの樹脂は1種類を単独で使用してもよく、複数種を併用して使用してもよい。これらの樹脂の中でも、本発明で使用するアクリル系樹脂組成物層(I)との接着性の観点から、メタクリル酸エステル系重合体またはその組成物、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−共役ジエンブロック共重合体およびその水素添加物(SEBS、SEEPS、SEPSなど)、熱可塑性ポリウレタン系樹脂が好ましく、さらに耐候性、光学特性の観点からは、メタクリル酸エステル系重合体またはその組成物、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリフッ化ビニル(PVDF)、ポリフッ化ビニリデンがより好ましい。
【0041】
また、メタクリル酸エステル系重合体またはその組成物、ポリ乳酸およびポリビニルブチラールは、本発明で使用するアクリル系樹脂組成物層(I)を構成するアクリル系樹脂組成物との相容性に優れるため、アクリル系複層体の製造時に生成する端部(規定幅に裁断した後の耳と呼ばれる部分で、アクリル系樹脂組成物層(I)および樹脂組成物(II)の両方が含まれる)などをまとめて回収し、再利用することができ、製造コスト、資源の有効利用の観点からも優れる。特に、再利用時の熱劣化防止などの観点からメタクリル酸エステル系重合体の組成物が最も好ましい。
【0042】
上記メタクリル酸エステル系重合体の組成物とは、前述したメタクリル酸エステル系重合体を含有する組成物であり、アクリル系樹脂組成物層(I)との引張弾性率の比が上記範囲であれば特には限定されない。樹脂組成物層(II)の引張弾性率の調整が容易である点、アクリル系樹脂組成物層(I)との屈折率差が小さい点から、前記アクリル系樹脂組成物層(I)で用いるアクリル系樹脂組成物と同様の組成物のうち、アクリル系ブロック共重合体又はアクリル系グラフト共重合体及びその組成物、メタクリル酸エステル系重合体とアクリル系ゴム粒子との組成物、メタクリル酸エステル系重合体と可塑剤との組成物を、組成比などを適宜調整して使用してもよい。
この場合、組成物中のメタクリル酸エステル系重合体の含有量は、50〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましい。
【0043】
また、上記した透明な樹脂のうち、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフッ化ビニル(PVDF)、ポリフッ化ビニリデンは、吸水時や高湿高温下の寸法変化を抑えることができる。特にポリカーボネート樹脂は、光学透明性、吸水や熱による寸法安定性、衝撃性に優れ、且つ、樹脂コストが低いことから、寸法安定性が求められる用途では最も好ましい。
【0044】
本発明のアクリル系複層体は、上記アクリル系樹脂組成物層(I)の主面の両面に樹脂組成物層(II)を1層ずつ備える複層体、および樹脂組成物層(II)の主面の両面にアクリル系樹脂組成物層(I)を1層ずつ備える複層体から選ばれる。
【0045】
本発明のアクリル系複層体を構成する層の層数は3以上である。2層の場合は上層と下層の物性差が生じ、熱または吸水の影響を受けて複層体が反るなどの欠点を生じる。本発明のアクリル系複層体の層数の上限は特には限定されず、3〜7層程度の複層体でもよく、数十〜数100層のマルチレイヤー複層体であっても良い。
【0046】
上記樹脂組成物層(II)とアクリル系樹脂組成物層(I)との屈折率差は0.05以下、さらには0.03以下であることが好ましい。屈折率差が上記の範囲より大きい場合は、アクリル系複層体を導光部材などの光学部材として用いた場合に、層間の反射によるロスが大きくなり、導光距離や発光の色相などに劣る。
【0047】
上記の屈折率差に調整する方法は特に限定されないが、アクリル系樹脂組成物層(I)および樹脂組成物層(II)のいずれか又は両方の構成する重合体の単量体を選択して調整する方法や、屈折率調整剤を使用して調整する方法が挙げられる。かかる屈折率調整剤としては、例えば、芳香族有機リン化合物、シリカ含有複合酸化物球状微粒子、ロジン、水素化ロジン、不均化ロジンなどのロジン類、スチレン系樹脂やαメチルスチレン系樹脂などを挙げることができる。中でもロジン類が好ましく、耐光劣化や着色、不純物による気泡の発生を抑える観点から、蒸留、再結晶、抽出等の操作により精製処理された不均化または水素化ロジン類がさらに好ましい。上記ロジン類の具体例としては、パインクリスタルKE−100、パインクリスタルKE−311、パインクリスタルKE−359、パインクリスタルKE−604、パインクリスタルD−6250(いずれも荒川化学工業株式会社製)が挙げられる。
上記屈折率調整剤を含有させる場合、その含有量は、屈折率に応じて調整できるが、耐光劣化や着色を抑える観点から、1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。
【0048】
上記樹脂組成物層(II)とアクリル系樹脂組成物層(I)には、必要に応じて、光拡散剤、フィラー、紫外線吸収剤、蛍光剤、ブルーイング剤、帯電防止剤など配合した組成物を用いてもよい。
【0049】
本発明のアクリル系複層体の全体の厚みに対するアクリル系樹脂組成物層(I)の合計の厚み比率(アクリル系樹脂組成物層(I)の層比率)は、0.05以上0.95未満が好ましく、0.1以上0.9未満がより好ましい。アクリル系樹脂組成物層(I)の層比率が上記の範囲内にあると、本発明のアクリル系複層体は、フレキシブル性および耐衝撃性に優れ、且つ、寸法安定性および耐熱収縮性にも優れる。剛性、寸法安定性および耐熱収縮性をより求められる用途においては、アクリル系樹脂組成物層(I)の層比率が0.05以上0.5未満であることが好ましく、0.1以上0.3未満であることがより好ましい。フレキシブル性および耐衝撃性をより求められる用途においては、アクリル系樹脂組成物層(I)の層比率が0.5以上0.95未満であることが好ましく、0.7以上0.9以下であることがより好ましい。
【0050】
本発明のアクリル系複層体の全体の厚みに対する樹脂組成物層(II)の合計の厚み比率(樹脂組成物層(II)の層比率)は、0.05以上0.95未満が好ましく、0.1以上0.9未満がより好ましい。樹脂組成物層(II)の層比率が上記の範囲内にあると、本発明のアクリル系複層体は、寸法安定性および耐熱収縮性に優れ、且つ、フレキシブル性および耐衝撃性にも優れたものとなる。剛性、寸法安定性、耐熱収縮性をより求められる用途においては、樹脂組成物層(II)の層比率が0.5以上0.95未満であることが好ましく、0.7以上0.9以下であることがより好ましい。フレキシブル性、耐衝撃性をより求められる用途においては、樹脂組成物層(II)の層比率が0.05以上0.5未満であることが好ましく、0.1以上0.3未満であることがより好ましい。
【0051】
本発明のアクリル系複層体が、樹脂組成物層(II)の主面の両面にアクリル系樹脂組成物層(I)を1層ずつ備える複層体で、かつアクリル系複層体の最外層がアクリル系樹脂組成物層(I)である場合、該アクリル系複層体は、寸法安定性に優れ、且つ、耐衝撃性およびフレキシブル性にも優れたものとなる。アクリル系樹脂組成物層(I)が最外層の場合、アクリル系樹脂組成物層(I)の層比率が0.5以上0.95未満、より好ましくは0.7以上0.9未満の場合、アクリル系樹脂組成物層(I)の柔軟性やフレキシブル性を損なうことなく、上記の樹脂組成物層(II)の効果を発現することができる。また、該アクリル系複層体は、柔軟性に優れ、割れにくいため、ロール形状とすることが可能であり、運搬性、成形加工性に優れる。
【0052】
また、特に、アクリル系樹脂組成物層(I)の引張弾性率が1〜100MPaの場合には、表面粘着性と優れた透明性などを活かし、フラットパネルディスプレイなどの光学両面粘着シートやクッション材として有用である。この場合、樹脂組成物層(II)には、表示面の均一性を保つため光学的な歪みが小さい、具体的にはレタデーションが10nm以下、好ましくは5nm以下である樹脂組成物層(II)を使用することが好ましい。レタデーションが上記範囲内であると、表示画面の品位が好ましいものとなる。上記の樹脂組成物層(II)を構成する樹脂としては、上記メタクリル酸エステル系重合体の組成物またはポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0053】
さらに本発明のアクリル系複層体は、用途に応じて光学位相差を付与し、光学位相差機能付き透明粘着シートとして用いることができる。例えば、斜め延伸加工などにより、1/4λ位相差を付与した樹脂組成物層(II)を用いた場合、3D表示画面に有用である。
【0054】
本発明のアクリル系複層体がアクリル系樹脂組成物層(I)の主面の両面に樹脂組成物層(II)を1層ずつ備える複層体で、且つ、該アクリル系複層体の最外層が樹脂組成物層(II)である場合、寸法安定性や耐衝撃性に優れ、且つ、剛性や耐表面傷付き性、耐表面防汚性などに優れたものとなる。また、表面平滑性に優れ、表面に剛性を有しながらフレキシブル性を有するため、金属弾性ロール等を用いてアクリル系複層体を製造することも可能である。アクリル系樹脂組成物層(I)の層比率の範囲は特には限定されないが、アクリル系樹脂組成物層(I)の層比率が0.1以上0.5未満の場合、本発明のアクリル系複層体は、樹脂組成物層(II)が破壊された時にその破片が飛散しない「アクリル系強化ガラス」として有用である。一方、アクリル系樹脂組成物層(I)の層比率が0.5以上0.9未満の範囲である場合は、柔軟でありながら表面の傷付き性に優れる「ハードコート軟質アクリルシート」として有用である。
【0055】
本発明のアクリル系複層体を得るための製造方法としては、フィードブロックまたはマルチマニホールドダイなどを用い、さらにTダイ押出成形機またはインフレーション成形機などの製膜装置を使用した溶融押出し方法が挙げられる。マルチマニホールドダイを用いる方法は、具体的には、例えば、マルチマニホールドTダイを使用して多層溶融押出成形し、得られる積層シート状物の少なくとも片面、好ましくは両面をロール又はベルトに接触させて製膜することができる。上記のマルチマニホールドTダイを用いる方法は、表面性状の良好なアクリル系複層体が得られる点で好ましい。これらのロール表面又はベルト表面は、シート表面への平滑性付与の為に、その表面が鏡面となっているものが好ましいが、光学パターンを表面賦形したロール又はベルトを使用して光学パターン付き複層体として製造しても良い。
【0056】
本発明のアクリル系複層体の形状は限定されないが、シート形状、フィルム形状、ロッド形状、チューブ形状、ファイバー形状などが挙げられる。
【0057】
本発明のアクリル系複層体がシートまたはフィルム形状である場合、その厚みは特には限定されないが、0.01〜10mmが好ましく、0.05〜5mmがより好ましく、0.1〜3mmがさらに好ましい。
【0058】
本発明のアクリル系複層体がシートまたはフィルム形状である場合、各種用途に適用する前段階での形態は特に限定されないが、枚葉に重ね合わせた形態や、ロール状に巻き取った形態などが挙げられる。本発明のアクリル系複層体は柔軟性に優れるため容易にロール状に巻き取った形態にすることができ、ロール状であると、連続的な加工が可能である、運搬の効率がよいなど生産性向上の観点から好ましい。
【0059】
本発明のアクリル系複層体は、さらに、他の層と積層して用いることができる。積層する層としては、例えば、アルミニウム、酸化亜鉛、銀、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズなどの金属膜:カーボンナノチューブ;各種塗料;ハードコート層などを挙げることができる。
【0060】
本発明のアクリル系複層体は、各種成形体、例えば、自動車の内装や家庭電器製品の外装、表示部材の透明基板等に対する貼合用シートとして好適に用いられる。その際、アクリル系複層体の少なくとも一方の面には装飾を施すこともでき、その方法としては、例えば、印刷により絵柄を付与する方法や、蒸着法により金属又は金属酸化物からなる薄膜を形成させて金属光沢を付与する方法等が挙げられる。シートの貼合の方法は、射出成形同時貼合法が好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、実施例および比較例中の各種物性は以下の方法により測定または評価した。
【0062】
(1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)
アクリル系ブロック共重合体およびアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以下GPCと略記する)により標準ポリスチレン換算分子量として求めた。
・装置:東ソー株式会社製GPC装置「HLC−8020」
・分離カラム:東ソー株式会社製の「TSKgel GMHXL」、「G4000HXL」および「G5000HXL」を直列に連結
・溶離剤:テトラヒドロフラン
・溶離剤流量:1.0ml/分
・カラム温度:40℃
・ 検出方法:示差屈折率(RI)
【0063】
(2) アクリル系ブロック共重合体中のPMMA含量(メタクリル酸メチル単位の含有量、質量%)
1H−NMR測定によって求めた。
【0064】
(3)引張弾性率
以下の表1に示したアクリル系樹脂組成物層(I)又は樹脂組成物層(II)を構成する原料樹脂(以下、原料樹脂と称する)および実施例4で得られたアクリル系複層体の引張弾性率を測定した。測定試料は、原料樹脂についてはプレス成形機により各樹脂の適正な温度で成形した厚み1mmのシートを、アクリル系複層体はTダイ押出成形機によりシリンダー温度およびダイス温度220℃で多層溶融押出成形した表2〜表4に記載の厚みからなる複層体を使用し、ISO527−3に記載の方法に準拠して、測定温度23℃で、引張速度300mm/minの条件で測定した。
【0065】
(4)原料樹脂の表面硬度
原料樹脂の表面硬度は、デュロメータ硬さ試験を行い、A型硬度計ならびにD型硬度計(高分子計器株式会社製)を用いて、JISK6253に準じて測定した。
【0066】
(5)原料樹脂の屈折率
原料樹脂の屈折率は、プレス成形機により成形した厚み0.2mmのシートより試料を切り出し、測定温度25℃でVブロック法により測定した。測定波長はd線587.6nmである。
【0067】
(6)アクリル系複層体の各層の平均厚みとアクリル系樹脂組成物層(I)の層比率
以下の実施例または比較例で得られたアクリル系複層体の断面を切出し、その断面を光学顕微鏡にて拡大し反射光を用いて各層の厚みを測定した。平均厚みは、任意の3箇所の厚みを測定して平均した値とした。アクリル系樹脂組成物層(I)の層比率は、以下の式(A)により算出した。
式(A):アクリル系樹脂組成物層(I)の層比率=アクリル系樹脂組成物層(I)の厚み/アクリル系複層体全体の厚み
【0068】
(7)アクリル系複層体の引張弾性率比
(3)で測定した原料樹脂の引張弾性率を用いて、アクリル系樹脂組成物層(I)の引張弾性率に対する樹脂組成物層(II)の弾性率の比を以下の式(B)により算出した。
式(B):引張弾性率比=樹脂組成物層(II)の引張弾性率/アクリル系樹脂組成物層(I)の引張弾性率
【0069】
(8)アクリル系複層体の表面鉛筆硬度
以下の実施例または比較例で得られたアクリル系複層体を用いて、温度23℃で、JISK5600−5−4に準じて表面鉛筆硬度を測定した。
【0070】
(9)アクリル系複層体のロール加工性
以下の実施例または比較例で得られたアクリル系複層体を、ロール状に巻き取ったときの状態およびロール状に巻き取った複層体を巻き出したときの状態を目視により評価し、これをロール加工性の指標とした。
○:ロール状態に巻き取ったとき及びロール状態で保管したときに複層体表面及び端部にクラックや割れが発生しない。かつ、ロール状態から複層体を巻き出すときに複層体同士の膠着がなくシート表面及び端部にクラックや割れが発生しない。
×:ロール状態に巻き取ったとき又はロール状態で保管したときに、複層体表面又は端部にクラックや割れが発生する。また、ロール状態から複層体を巻き出すときに、複層体同士の膠着により、複層体表面に剥離マーク欠点が発生する状態か複層体表面又は端部にクラックや割れが発生する。
【0071】
(10)アクリル系複層体の落球衝撃試験
以下の実施例または比較例で得られたアクリル系複層体を用いて、縦50mm、横50mmの試験片を切出し、23℃で、重さ50gの鋼球(直径23mm)を、400mmの高さから落下させる落球衝撃試験方法により評価した。
○:シートが割れないか、割れても破片が飛散しない
×:シートが割れ、破片が飛散する
【0072】
(11)アクリル系複層体の熱収縮率
以下の実施例または比較例で得られたアクリル系複層体を用いて、縦100mm、横100mmの試験片を切出し、85℃、24時間後の熱収縮率をJISK7133に準拠し、以下の式(C)により算出した。
式(C):アクリル系複層体の熱収縮率=〔(試験前の辺寸法(装置流れ方向)−加熱後の辺寸法)/試験前の辺寸法(装置流れ方向)〕×100
【0073】
[実施例で用いた原料]
以下に、実施例および比較例で用いた原料樹脂の詳細を示す。また、表1にそれらを用いて測定した物性値を示す。
・原料樹脂(1):アクリル系ブロック共重合体
イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムの存在下、sec−ブチルリチウムを重合開始剤として用い、トルエン中で各ブロックに相当するモノマー(メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル)を逐次添加してリビングアニオン重合し、用いたアルミニウム分、リチウム分を除去後、脱揮2軸押出機によりアクリル系トリブロック共重合体を得た。
得られたアクリル系ブロック共重合体の構造は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(PMMA)−アクリル酸n−ブチル重合体ブロック(PnBA)−メタクリル酸メチル重合体ブロック(PMMA)のトリブロック共重合体であり、PMMA含量44質量%、重量平均分子量63000、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)1.15、引張弾性率200MPa、表面硬度(A)86、屈折率1.48であった。
・原料樹脂(2):アクリル系ブロック共重合体
原料樹脂(1)と同様にしてリビングアニオン重合を行い、以下のアクリル系トリブロック共重合体を得た。
得られたアクリル系ブロック共重合体の構造は、PMMA−PnBA−PMMAのトリブロック共重合体であり、PMMA含量32質量%、重量平均分子量62000、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)1.19、引張弾性率20MPa、表面硬度(A)65、屈折率1.47であった。
・原料樹脂(3):アクリル系トリブロック共重合体樹脂組成物
上記原料樹脂(1)(アクリル系ブロック共重合体)10質量部に対し、市販のメタクリル酸エステル系重合体:『パラペットGF:株式会社クラレ製』5質量部を二軸押出機を用いて210℃で混練した。
得られたアクリル系トリブロック共重合体樹脂組成物は、引張弾性率300MPa、表面硬度(A)93、屈折率1.48であった。
・原料樹脂(4):アクリル系トリブロック共重合体樹脂組成物
上記原料樹脂(1)(アクリル系ブロック共重合体)10質量部に対し、市販のメタクリル酸エステル系重合体:『パラペットGF:株式会社クラレ製』15質量部を二軸押出機を用いて210℃で混練した。
得られたアクリル系トリブロック共重合体樹脂組成物は、引張弾性率900MPa、表面硬度(A)98、屈折率1.48であった。
・原料樹脂(5):多層構造架橋ゴム粒子樹脂
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを水相乳化剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウムを重合開始剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸ナトリウムをモノマー相乳化剤として用い、アクリル酸n−ブチル30質量部、メタクリル酸メチル14質量部、スチレン6質量部、およびメタクリル酸アリル0.2質量部を乳化重合し、第一層を形成した。次いで、アクリル酸n−ブチル20質量部、メタクリル酸メチル10質量部、スチレン4質量部およびメタクリル酸アリル0.1質量部を滴下重合し、第二層を形成した。さらに、メタクリル酸メチル24質量部、アクリル酸メチル1.3質量部およびn−オクチルメルカプタン0.25質量部滴下重合し、第三層を形成した。得られたラテックスを−30℃に24時間冷却して凍結凝集させた後、凝集物を融解させ取り出した。50℃で2日間減圧乾燥して、粉末状の3層型の多層構造架橋ゴム粒子を得た。
得られた多層構造架橋ゴム粒子は、引張弾性率5MPa、表面硬度(A)70、屈折率1.49であった。
・原料樹脂(6):多層構造架橋ゴム粒子樹脂とメタクリル酸エステル系重合体との組成物
上記原料樹脂(5)(多層構造架橋ゴム粒子)20質量部に対し、市販のメタクリル酸エステル系重合体:『パラペットGF:株式会社クラレ製』80質量部を二軸押出機を用いて、230℃で混練した。
得られた組成物は、引張弾性率2300MPa、表面硬度(D)75、屈折率1.49であった。
・原材料樹脂(7):アクリル樹脂
『パラペットGF:株式会社クラレ製』。引張弾性率3300MPa、表面硬度(D)80、屈折率1.49。
・原材料樹脂(8):ポリカーボネート樹脂
『パンライトK−1300Y:帝人化成株式会社製』。引張弾性率2400MPa、表面硬度(D)70、屈折率1.59。
【0074】
【表1】

【0075】
[実施例1〜6、比較例1〜4]
上記の原料樹脂を、φ40mmの単軸押出機(メイン押出機)、およびφ22mmの単軸押出機(サブ押出機)を用いて、フィードブロック方式にて、中間層材料の両面に表層材料が配された3層構成になるように、Tダイ押出成形機によりシリンダー温度およびダイス温度220℃で押出し、次いでポリシングロールに片面が接するようにして冷却し、シート状の複層体を作製した。得られた複層体から試験片を採取し、各層の平均厚み、引張弾性率比、表面鉛筆硬度、ロール加工性、落球衝撃性、熱収縮率を測定または評価した。得られた結果を表2〜表4に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
上記表2の結果から、実施例1〜3で得られたアクリル系複層体は、耐表面傷付き性とロール加工性のバランスが優れるのに対し、比較例1および2は、複層体表面の膠着によりロールから複層体を巻き出す際に複層体表面に離型マーク欠点(シート同士の膠着が強いとジッピング等が発生し、表面に痕が残る状態)が発生し、比較例3は、アクリル系樹脂組成物層(I)の引張弾性率に対する樹脂組成物層(II)の引張弾性率の比が500より大きいため、ロール状複層体の保管時に割れやクラックなどの欠点が発生した。また、表3より、実施例4で得られたアクリル系複層体を用いる場合には、中間層であるアクリル系樹脂組成物層(I)がクッション材となるため、耐衝撃性が向上し、最外層の樹脂組成物層(II)の飛散防止効果に優れる。さらに、表4より、実施例5および6で得られたアクリル系複層体は、中間層である樹脂組成物層(II)の効果により、寸法安定性が優れるのに対し、比較例4は、アクリル系樹脂層(I)単層であるため熱収縮率が大きくなる。なお、本実施例・比較例において熱収縮率は全て正の値であり、負の値(フィルムが膨張してしまう)となることはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のアクリル系複層体は、優れた寸法安定性、耐熱収縮性、耐衝撃性、耐割れ性およびフレキシブル性を有し、且つ、層間剥離やフィルムの割れがなくロール状として使用することができ、さらに耐表面傷つき性に優れる。このため、各種成形体、例えば、自動車の内装や家庭電器製品の外装、表示部材の透明基板等に対する貼合用シートなどとして好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引張弾性率が1〜1000MPaであるアクリル系樹脂組成物層(I)と、該アクリル系樹脂組成物層(I)との引張弾性率の比が2以上500以下である樹脂組成物層(II)とを備え、アクリル系樹脂組成物層(I)の主面の両面に樹脂組成物層(II)を1層ずつ備える複層体および樹脂組成物層(II)の主面の両面にアクリル系樹脂組成物層(I)を1層ずつ備える複層体から選ばれるアクリル系複層体。
【請求項2】
前記アクリル系樹脂組成物層(I)が、アクリル系ブロック共重合体または該アクリル系ブロック共重合体を含有する樹脂組成物のいずれかからなる請求項1に記載のアクリル系複層体。
【請求項3】
前記樹脂組成物層(II)が、メタクリル酸エステル系重合体組成物又はポリカーボネート樹脂組成物から選ばれる樹脂組成物からなる、請求項1又は2に記載のアクリル系複層体。
【請求項4】
アクリル系樹脂組成物層(I)と樹脂組成物層(II)を構成する各々の樹脂組成物の屈折率差が0.05以下である請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル系複層体。
【請求項5】
アクリル系複層体全体の厚みに対するアクリル系樹脂組成物層(I)の合計の厚み比率(層比率)が、0.5以上0.95未満の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載のアクリル系複層体。
【請求項6】
アクリル系複層体全体の厚みに対するアクリル系樹脂組成物層(I)の合計の厚み比率(層比率)が、0.05以上0.5未満の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載のアクリル系複層体。
【請求項7】
樹脂組成物層(II)の主面の両面に1層以上ずつアクリル系樹脂組成物層(I)を備え、アクリル系複層体の最外層がアクリル系樹脂組成物層(I)である請求項1〜6のいずれかに記載のアクリル系複層体。
【請求項8】
アクリル系樹脂組成物層(I)の主面の両面に1層以上ずつ樹脂組成物層(II)を備え、アクリル系複層体の最外層が樹脂組成物層(II)である請求項1〜6のいずれかに記載のアクリル系複層体。

【公開番号】特開2012−213912(P2012−213912A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80636(P2011−80636)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】