説明

アクリル酸ポリオールの酵素的合成

本発明は、アクリル酸ポリオールの酵素的合成を実施するための方法、高分子アクリル酸ポリオールの製造方法、この方法によって得ることが可能なポリマー、並びに、放射線硬化性及び熱硬化性塗料を製造するためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル酸ポリオールの酵素的合成方法に関し、また、高分子アクリル酸ポリオールの調製方法にも関する。本発明は、該方法により得ることができるポリマー、並びに、放射線硬化性及び/又は熱硬化性塗料(coating material)を調製するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸ポリオールは、さまざまな方法で得ることができる。アクリル酸ポリオールは、アクリル酸をポリオールとの直接的エステル化反応に付すか又はアクリル酸エステルをポリオールとのエステル交換反応に付すことにより得られる。この反応は、酸触媒下、100℃を超える温度で行う。高温であることにより、大量の重合防止剤を添加することが必要である。得られる生成物混合物は、複雑であり、多くの場合、黒ずんだ色をしている。不純物は、化学量論的量を超える量のアクリル酸を加えて行う込み入ったアルカリ洗浄により生成物の溶液から除去されるが、そうでなければ、生成物中に残存する。この洗浄手順は、多くの時間と多くの費用を要する。なぜなら部分的にエステル化された生成物が特に、その生成物の親水性が比較的高いことにより抽出速度が遅く、収率低下を生じさせるからである。高級ポリオールの場合の組成は、アクリル酸が大過剰に存在することにより、よりアクリル化された生成物へとシフトする。そのような生成物は熱硬化性系では望ましくない。なぜなら、そのような生成物は膜内から溶け出し、その表面に拡散し、それらの使用にとっては極めてマイナスな形で、熱のみで硬化する膜における軟化成分として表面を粘着性にするからである(V1を参照されたい)。
【0003】
アクリル酸ポリオールを得るための別の方法は、オキシラン類とアクリル酸の開環付加反応によるものである。これらの生成物は、一般に、広範囲な副産物を特徴とするが、それは、出発物質が、アルコール類とエピクロロヒドリンの反応に由来することによる。即ち、位置非選択的な反応に起因して塩素含有量が極めて高いからである。
【0004】
生体触媒的合成に関する限り、今日まで、本質的に異なっている2種類の経路が採用されてきた。第一の調製経路では、活性化されたアクリル酸誘導体を使用する。特に知られているものは、この種類の生体触媒的合成において、(メタ)アクリル酸ビニルを使用するもの(例えば, Derangoら, Biotechnol Lett. 1994, 16, 241-246);(メタ)アクリル酸のブタンジオールモノオキシムエステルを使用するもの(Athawale及びManjrekar, J. Mol. Cat. B Enzym. 2000, 10, 551-554)、又は、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチルを使用するもの(Potierら, Tetrahedron Lett. 2000, 41, 3597-3600)である。しかしながら、それらは、製造コストが高いので、この種類の活性化アクリル酸誘導体は、アクリル酸ポリオールを経済的に合成するためには、関心がない。
【0005】
アルコールアクリレートも同様に、アクリル酸を種々のアルコールとの酵素的エステル化反応に付すか、又は、アクリル酸アルキルを種々のアルコールとの酵素的エステル交換反応に付すことにより、生体触媒的に調製することもできる。
【0006】
例えば、JP-A-59220196には、アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)から得られた粗酵素抽出物を用いて、水性リン酸バッファー中で、アクリル酸をジオール類でエステル化することが記述されており、また、不飽和脂肪アルコールは、アクリル酸メチル又はアクリル酸エチルを用いて、酵素的にエステル交換することができる(Warwelら, Biotechnol Lett. 1996, 10, 283-286)。リパーゼにより触媒されるアクリル酸メチルと2-エチルヘキサノールのエステル交換反応は、Nurokら(J. Mol. Cat. B Enzym. 1999, 7, 273-282)により記述されている。環状及び開鎖アルカンジオールとアクリル酸エチルとの酵素的エステル交換反応は、Chromobacterium viscosumから得られたリパーゼを用いて行われる(Hajjarら, Biotechnol. Lett. 1990, 12, 825-830)。US-A-5,240,835(Genencor International Inc., 1989)には、Corynebacterium oxydansから得られた生体触媒による、触媒を用いたアクリル酸アルキルとアルコール類のエステル交換反応が記述されている。一例として、該文書では、96倍モル過剰のアクリル酸エチルを2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールと反応させている。30℃で3日後に得られた収率は、僅か21%にすぎない。Torら(Enzym. Microb. Technol. 1990, 12, 299-304)は、(メタ)アクリル酸メチル又は(メタ)アクリル酸エチルを用いて、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール及びグリセロールをエステル化した。該反応は、グルタルアルデヒドとポリアクリルアミド-ヒドラジドで処理しておいたブタ肝臓エステラーゼ(PLE)で触媒した。該酵素のこの特定の前処理は、基質水溶液に対して該酵素を安定化させるために必要であった。グリセロールは、20mMの基質濃度でエステル化し、該溶液は、30容積%の50mMリン酸バッファーを含んでいた(cf. 同様に, IL 090820, 1989)。EP-A-999229(Goldschmidt AG, 1999)には、リパーゼが触媒する、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アルキルとポリオキシアルキレン類(例えば、ポリエチレングリコール)のエステル交換反応が記述されている。適するポリオキシアルキレン類は、4〜200、好ましくは、8〜120のオキシアルキレン単位を含んでいる。
【0007】
糖アクリレートを酵素的に合成する方法は、以前のDE-A-10156352.3.に記述されている。
【0008】
しかしながら、多価(3個以上のヒドロキシル基)アルコール類、特に、脂肪族の環状又は非環状の多価アルコール類のアクリル酸エステルの生体触媒的合成は、これまで記述されていない。特に、アクリル化(acrylicization)のレベルが低い脂肪族ポリオール類(即ち、不完全にアクリル化されたポリオール類)の酵素的調製については、従来技術では知られていない。
【0009】
これらの化合物は、二重硬化システムでの使用に関して、特に興味深い。三次元物体にコーティングを施す場合、陰影領域における硬化は不完全であるので、放射線硬化性塗料の極めて肯定的な機械的特性と熱的硬化の付加的なオプションを組み合わせることは望ましいであろう。目的は、種々のサブストレート上の、非常に傷が付きにくく、無臭で且つ粘着性を有さない表面である。従来のエステル化反応は、完全にアクリル化されているか又は全くアクリル化されていない生成物(これらは、熱のみか又は放射線のみのいずれかによる硬化の後で、まだ、抽出可能である)の高レベルのフラクションを生成するので、上記目的は、現在の製品を用いて達成するのは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、脂肪族多価アルコールのアクリル酸エステルを調製するための方法を開発することである。該合成は、特に、アクリル化の程度が低い生成物(例えば、モノアクリル酸ポリオール及びジアクリル酸ポリオールなど)の良好な収率で実施することが可能でありながら、同時に、完全にエステル化された生成物を得ることが可能であるべきである。特に、生成物の水性後処理/抽出は行うべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、プロセス条件を巧みに選択することにより、特に、有機媒体中で実施することにより、上記目的が達成されるということを見いだした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、第一に、アクリル酸ポリオールを酵素的に合成する方法を提供し、ここで、該方法では、アクリレート基を転移させる酵素の存在下、脂肪族ポリオールとアクリル酸化合物又はそのアルキルエステルを、バルクで反応させるか又は有機溶媒含有液体反応媒体中で反応させ、反応終了後、必要に応じて、形成されたアクリル酸ポリオールを該反応混合物から単離する。
【0013】
本発明の目的に関して、「脂肪族アクリル酸ポリオール」は、1ヶ所のみアクリル化されているか、又は、複数の箇所がアクリル化されている。
【0014】
本発明の方法を実施する場合、得られる反応生成物は、アクリル化ポリオールの総量を基準にして、好ましくは、アクリル化の程度が低いポリオールを、約20〜100mol%、さらに好ましくは、40〜99mol%、特に、50〜95mol%又は60〜90mol%のモル分率で含んでいる。
【0015】
本発明の目的に関して、「アクリル化の程度が低いポリオール」では、該反応の前のアクリル化可能なヒドロキシル基(A)と該反応の後で残っているアクリル化可能なヒドロキシル基(B)の比B/Aは、1未満、例えば、0.1〜0.9であるか、又は、0.2〜0.66である。
【0016】
本発明による反応生成物は、好ましくは、さらに、生成物混合物を形成し、ここで、該生成物混合物においては、該反応終了後の完全にアクリル化されているポリオールと全くアクリル化されていないポリオールの合計量が、いずれの場合も反応混合物の総重量から存在している全ての溶媒及び/又は低分子量添加剤の重量を引いたものを基準にして、20重量%未満、特に、10重量%未満である。
【0017】
本発明の特定の一実施形態では、完全にアクリル化されている化合物を反応混合物に添加してエステル化反応を平衡させることにより、本発明の反応生成物を得ることができる。
【0018】
本発明により達成される変換率(少なくとも1つのエステル基を有しているアクリル酸ポリオールエステルのモル分率)は、いずれの場合も用いたポリオールのモル数を基準にして、20mol%以上、例えば、20〜100mol%、40〜99mol%、50〜95mol%、又は、75〜95mol%である。
【0019】
該液体有機反応媒体は、初期水分含有量が約10容積%以下であり得、好ましくは、実質的に無水である。該反応は、バルクで行うことができるか、又は、有利である場合は、適切な有機溶媒を添加した後で行うことが可能である。
【0020】
使用する有機溶媒としては、好ましくは、モノオール類、例えば、C1〜C6アルカノール、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、t-ブタノール及びt-アミルアルコール、ピリジン、ポリ-C1〜C4アルキレングリコールジ-C1〜C4アルキルエーテル類、特に、ポリエチレングリコールジ-C1〜C4アルキルエーテル類、例えば、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル 500、炭酸C1〜C4アルキレン、特に、炭酸プロピレン、酢酸C1〜C6アルキル、特に、酢酸t-ブチル、MTBE、アセトン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、THF、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、ヘキサン、並びに、それらの単相混合物又は多相混合物から選択されるものなどを挙げることができる。
【0021】
本発明の方法では、アクリル酸化合物とポリオールは、一般に、約100:1〜1:1、例えば、30:1〜3:1の範囲、又は、10:1〜5:1の範囲のモル比で使用する。
【0022】
ポリオールの初期濃度は、例えば、約0.1〜20mol/L、特に、0.15〜10mol/Lの範囲である。
【0023】
ポリオールは、好ましくは、少なくとも3個の炭素原子と少なくとも3個の(エステル化可能な)ヒドロキシル基を有する、光学的に純粋な形態にあるか又は立体異性体混合物としての、直鎖又は分枝鎖又は炭素環式の飽和又は不飽和の炭化水素化合物から選択される。不飽和炭化水素は、1個以上、好ましくは、1、2又は3個のC-C二重結合を有し得る。そのようなポリオールの混合物も、同様に、使用することができる。
【0024】
該ポリオールは、特に、3〜30個の炭素原子と3〜10個のヒドロキシル基を有する直鎖又は分枝鎖の飽和炭化水素である。
【0025】
使用可能なポリオールの好ましい例としては、以下のものを挙げることができる:グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、ポリグリセロール、低分子量化合物、部分的若しくは完全に加水分解されているポリ酢酸ビニル、1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペンタエリトリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、D-エリトリトール、L-エリトリトール、メソエリトリトール、D-アラビトール、L-アラビトール、アドニトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、及び、イノシトール類、並びに、それらの混合物及び誘導体。「誘導体」は、特に、例えば、C1〜C6アルキルエーテル類、例えば、メチルエーテル類、C1〜C4アルキレンエーテル類、例えば、エチレングリコールエーテル類若しくはプロピレングリコールエーテル類、又は、飽和若しくは不飽和C1〜C20カルボン酸のエステル類などを意味する。本発明で使用されるポリオール類及びその誘導体は、特に、4個以上のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレン基(例えば、EP-A-0999229で使用されるポリオキシアルキレン)を含まない。好ましいポリオール類及びその誘導体は、ポリオキシアルキレン単位を含まない。
【0026】
本発明で使用される「アクリル酸化合物」は、好ましくは、アクリル酸、その無水物、低級アルキル置換アクリル酸(即ち、C1〜C6アルキルで置換されているアクリル酸)、それらのC1〜C20アルキルエステル、又は、ジアクリル酸エチレングリコール、及び、これらの化合物の混合物から選択する。好ましいC1〜C6アルキル基は、特に、メチル基又はエチル基である。好ましいC1〜C20アルキル基の例としては、メチル、エチル、i-プロピル、n-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル又はi-ペンチルなどを挙げることができ、さらに、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル及びn-オクタデシルなども挙げることができ、また、それらの1ヶ所が分枝しているか若しくは複数箇所が分枝している類似体なども挙げることができる。好ましくは、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体を使用する。
【0027】
上記アクリル酸化合物(例えば、アクリル酸及びメタクリル酸)の適切な誘導体は、飽和及び不飽和の環状又は非環状のC1〜C10モノアルコール類とのエステル、特に、該アクリル酸化合物のメチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル及び2-エチルヘキシルエステルである。本発明によるC1〜C10モノアルコール類は、好ましくは、上記で定義したC1〜C6アルキル基若しくは10個までの炭素原子を有するそれらの長鎖(場合により分枝していてもよい)同族体、又は、C4-C6シクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル若しくはシクロヘキシルなどを含んでおり、ここで、該C4-C6シクロアルキル基は、適切な場合には、1〜3個の炭素原子を有する1個以上のアルキル基で置換されていてもよい。
【0028】
特に別途規定されていない限り、本発明によるC1〜C6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-アミル又はt-アミルを表し、また、直鎖又は分枝鎖のヘキシルも表す。C3-C6アルキルは、特に、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-アミル又はt-アミルを表し、また、直鎖又は分枝鎖のヘキシルも表す。C1〜C4アルキレンは、好ましくは、メチレン、エチレン、プロピレン、1-ブチレン又は2-ブチレンを表す。
【0029】
本発明で使用する酵素は、遊離形態又は固定化形態にある、ヒドロラーゼ、好ましくは、エステラーゼ(E.C. 3.1.-.-)、例えば、特に、リパーゼ(E.C. 3.1.1.3)、グリコシラーゼ(E.C. 3.2.-.-)及びプロテアーゼ(E.C. 3.4.-.-)から選択される。特に適する酵素は、Novozyme 435(カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica) Bから得られたリパーゼ)、又は、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)、カンジダ属(Candida sp.)、シュードモナス(Pseudomonas sp.)若しくはブタ膵臓から得られたリパーゼである。該反応媒体の酵素含有量は、使用するポリオールを基準にして、特に、約0.1〜10重量%の範囲である。本発明の反応では、該酵素は、純粋な形態で使用することが可能であるか又は支持(固定化)された状態で使用することができる。
【0030】
本発明の方法は、好ましくは、反応温度が0℃〜約100℃(特に、20℃〜80℃)の範囲となるようにして実施する。反応時間は、一般に、約3〜72時間の範囲である。
【0031】
該エステル交換反応の間に得られる任意のアルコール(一般に、一価アルコール、例えば、メタノール又はエタノール)又は該エステル化反応の間に生成される反応水は、必要に応じて、適切な方法で連続的又は段階的に反応平衡から除くことができる。この目的のために適切なものは、好ましくは、モレキュラーシーブ(例えば、約3〜10Åの範囲の細孔径)、又は、蒸留による分離、適切な半透膜による分離若しくはパーベーパレーションによる分離である。
【0032】
反応バッチを混合するために、任意の望ましい方法を用いることが可能である。特別な撹拌装置は必要ではない。反応媒体は単相又は多相であることが可能であり、反応体は、適切な場合にはモレキュラーシーブと一緒に、溶液状、懸濁液状又は乳濁液状で該反応媒体に導入する。反応の開始に当たり、該反応媒体を酵素調製物と混合することができる。反応が起こっている間、温度は望ましいレベルとする。
【0033】
あるいは、循環させるのが適切な場合には、該反応は、固定された形態の該酵素を固定床反応器に充填し、反応バッチを該固定化酵素の上にポンプで送り込むようにして実施することができる。反応により生じた水及び/又は反応により生じたアルコールは、同様に、該反応混合物から、連続的又は段階的に除去することができる。
【0034】
本発明の方法は、慣習的なバイオリアクター内で、バッチ式、反連続式又は連続式で実施することができる。適切なレジメ及びバイオリアクターは、熟練技術者にはよく知られており、文献(例えば、Rompp Chemie Lexikon, 9th edition, Thieme Verlag, 見出し語「Bioreactor」, 又は, Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th edition, volume B4, page 381 ff.)に記述されている。前記文献は、参照により本明細書に組み入れる。熟練技術者は、該反応器の操作及びプロセスのレジメを、所望のエステル化反応の特定の要件に適合させることができる。
【0035】
反応が終了した後、所望のアクリル酸ポリオールは、例えばクロマトグラフィー精製により、反応混合物から単離することが可能であり、その後、所望のポリマー又はコポリマーを調製するために使用することができる。
【0036】
本発明は、さらに、高分子アクリル酸ポリオールを調製する方法も提供し、ここで、該方法では、少なくとも1種のアクリル酸ポリオールを上記のように調製し、必要に応じて反応混合物から分離し、必要に応じてさらなるコモノマーと一緒に重合させる。
【0037】
適切なさらなる成分は、以下のものである:本発明により別に調製された本発明のタイプのアクリル酸ポリオール又は重合可能なモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、それらのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩及びそれらのエステル、C1〜C25カルボン酸のO-ビニルエステル、C1〜C25カルボン酸のN-ビニルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルオキサゾリドン、N-ビニルイミダゾール、4級化N-ビニルイミダゾール、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、スチレン。適するC1〜C25カルボン酸の例は、飽和酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、i-酪酸、n-吉草酸、i-吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸(cerotinic acid)及びメリシン酸である。
【0038】
上記ポリマーの調製は、例えば、文献(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Sixth Edition, 2000, Electronic Release, 見出し語:Polymerisation Process)に概説されている方法と同様の方法で行う。該(共)重合は、好ましくは、溶液重合、懸濁重合、沈澱重合若しくは乳化重合の形態でのフリーラジカル付加重合として行うか、又は、バルクでの重合(即ち、溶媒を用いない重合)により行う。
【0039】
本発明は、さらに、高分子アクリル酸ポリオールを調製する方法を提供し、ここで、該方法では、少なくとも1種のアクリル酸ポリオールを上記のように調製し、必要に応じて不完全にエステル化されたアクリル酸ポリオールを反応混合物から分離し、必要に応じてさらなるコモノマーと一緒に重合させる。
【0040】
適するコモノマーの例としては、以下のものを挙げることができる:別に調製された本発明のタイプのアクリル酸ポリオール又は重合可能なモノマー、例えば、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドなど。
【0041】
そのようなポリマーの調製は、例えば、US-6,359,101、DE-19817676、DE-19913260、US-6,429,342、US-6,077,979及びUS-5,545,601と同様に、アルカリ性エステル開裂を伴うことなく、金属触媒を用いて行う。
【0042】
本発明は、さらに、塗料、及び、特に、放射線硬化性組成物、例えば、特に、放射線硬化性塗料を調製するための、本発明のアクリル酸ポリオールの使用を提供する。これは、アクリル酸ポリオール、例えば、アクリル酸グリセリル、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、又は、アクリル酸ペンタエリトリトールなどを、それらのモノアクリレート、ジアクリレート又はポリアクリレート(及び/又は、それらの混合物)の形態で、例えば二重硬化システム内の放射線硬化性塗料のためのホモポリマー又はコポリマーとして使用することにより行う。そのようなシステムは、例えば、WO-A-98/00456に記述されている。前記特許文献は、特に、参照により本明細書に組み入れる。
【0043】
本発明の方法により得ることができるアクリル酸ポリオール(A)の他に、本発明の放射線硬化性組成物は、以下の成分を含有し得る:
(B) 共重合可能な2つ以上のエチレン性不飽和基を有する、(A)以外の少なくとも1種の重合可能な化合物;
(C) 必要に応じて、反応性希釈剤;
(D) 必要に応じて、光開始剤;
及び
(E) 必要に応じて、付加的な、典型的な塗料用添加剤。
【0044】
適する成分(B)としては、共重合可能な2つ以上のエチレン性不飽和基を有する、放射線硬化性のフリーラジカル重合可能な化合物などを挙げることができる。
【0045】
化合物(B)は、好ましくは、ビニルエーテル又は(メタ)アクリレート化合物、さらに好ましくは、いずれの場合も、該アクリレート化合物、即ち、アクリル酸の誘導体。好ましいビニルエーテル及び(メタ)アクリレート化合物(B)は、20個以下の、さらに好ましくは、10個以下の、極めて好ましくは、6個以下の、例えば、2、3、4又は5個の共重合可能なエチレン性不飽和二重結合を含んでいる。
【0046】
特に好ましい化合物(B)は、エチレン性不飽和二重結合の含有量が、0.1〜0.7mol/100g、極めて好ましくは、0.2〜0.6mol/100gであるものである。
【0047】
特に別途示されていない限り、化合物(B)の数平均分子量Mは、好ましくは、15000未満、さらに好ましくは、300〜12000、極めて好ましくは、400〜5000、特に、500〜3000g/mol(ポリスチレンを標準として使用し、テトラヒドロフランを溶離剤として使用する、ゲル浸透クロマトグラフィーにより求めたもの)である。
【0048】
化合物(B)の例としては、以下のものを挙げることができる:(メタ)アクリレート化合物、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、特に、アクリル酸エステル;さらに、一価アルコール又は多価アルコール(特に、ヒドロキシル基以外に官能基を全く含んでいないか、含んでいるとしてもエーテル基であるもの)のビニルエーテル類。一価アルコールの例は、特に、メタノール、エタノール、n-プロパノール及びi-プロパノールである。上記多価アルコールの例は、二官能性アルコール類、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、及び高度に縮合しているそれらの対応物、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなど;1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、アルコキシル化フェノール化合物、例えば、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ビスフェノール類、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、三官能性及び高級多官能性アルコール類、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリトリトール、ソルビトール、マンニトール、並びに、対応するアルコキシル化アルコール類、特に、エトキシル化及び/又はプロポキシル化アルコール類などである。
【0049】
該アルコキシル化生成物は、慣習的に、上記アルコールを、アルキレンオキシド、特に、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドと反応させることにより得ることができる。ヒドロキシル基1つ当たりのアルコキシル化の程度は、好ましくは、0〜10である。即ち、1molのヒドロキシル基は、10molまでのアルキレンオキシドでアルコキシル化されていることが可能である。
【0050】
さらにまた、適する(メタ)アクリレート化合物としては、ポリエステル(メタ)アクリレート類などがあり、これは、ポリエステロールのビニルエーテル又は(メタ)アクリル酸エステルであり、また、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート又はメラミン(メタ)アクリレートである。
【0051】
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリイソシアネートを、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及び、必要に応じて、鎖延長剤(例えば、ジオール類、ポリオール類、ジアミン類、ポリアミン類、ジチオール類又はポリチオール類など)と反応させることにより得ることができる。
【0052】
該ウレタン(メタ)アクリレートは、好ましくは、500〜20000、特に、750〜10000、さらに好ましくは、750〜3000g/molの数平均分子量M(ポリスチレンを標準として使用するゲル浸透クロマトグラフィーにより求めたもの)を有する。
【0053】
該ウレタン(メタ)アクリレートは、好ましくは、 ウレタン(メタ)アクリレート1000g当たり、1〜5mol、さらに好ましくは、2〜4molの(メタ)アクリル酸基を含んでいる。
【0054】
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシドを(メタ)アクリル酸と反応させることにより得ることができる。適するエポキシドの例としては、エポキシ化オレフィン類又はエポキシ化グリシジルエーテル類、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、又は、脂肪族グリシジルエーテル類、例えば、ブタンジオールジグリシジルエーテル類などを挙げることができる。
【0055】
メラミン(メタ)アクリレートは、メラミンを(メタ)アクリル酸又はそのエステルと反応させることにより得ることができる。
【0056】
該エポキシ(メタ)アクリレート及びメラミン(メタ)アクリレートは、好ましくは、500〜20000、さらに好ましくは、750〜10000g/mol、極めて好ましくは、750〜3000g/molの数平均分子量Mを有し、(メタ)アクリル酸基の量は、エポキシ(メタ)アクリレート又はメラミン(メタ)アクリレート1000g当たり、好ましくは、1〜5、さらに好ましくは、2〜4(ポリスチレンを標準として使用し、テトラヒドロフランを溶離剤として使用する、ゲル浸透クロマトグラフィーにより求めたもの)である。
【0057】
同様に適しているのは、平均して、好ましくは、1〜5、特に、2〜4、さらに好ましくは、2〜3個の(メタ)アクリル酸基、極めて好ましくは、2つの(メタ)アクリル酸基を含んでいるカーボネート(メタ)アクリレートである。
【0058】
該カーボネート(メタ)アクリレートの数平均分子量Mは、好ましくは、3000g/mol未満、さらに好ましくは、1500g/mol未満、極めて好ましくは、800g/mol未満(ポリスチレンを標準として使用し、テトラヒドロフランを溶媒として使用する、ゲル浸透クロマトグラフィーにより求めたもの)である。
【0059】
該カーボネート(メタ)アクリレートは、簡単な方法で得ることができる。多価アルコール、好ましくは、二価アルコール(ジオール類、例えば、ヘキサンジオール)を用いて炭酸エステルをエステル交換反応に付し、次いで、遊離OH基を(メタ)アクリル酸でエステル化するか、又は、例えばEP-A-92269に記述されているように、(メタ)アクリル酸エステルを用いたエステル交換反応に付すことにより、得ることができる。それらは、さらにまた、ホスゲン及び尿素誘導体を、多価アルコール(例えば、二価アルコール)と反応させることによっても得ることができる。
【0060】
適する反応性希釈剤(成分(C))には、共重合可能なエチレン性不飽和基を1つだけ有する、放射線硬化性の、フリーラジカル重合可能な化合物又はカチオン重合可能な化合物などがある。
【0061】
例としては、(メタ)アクリル酸C1〜C20アルキル、20個以下の炭素原子を有するビニル芳香族化合物、20個以下の炭素原子を含んでいるカルボン酸のビニルエステル類、エチレン性不飽和ニトリル類、1〜10個の炭素原子を含んでいるアルコールのビニルエーテル類、α,β-不飽和カルボン酸及びそれらの無水物、並びに、2〜8個の炭素原子と1若しくは2個の二重結合を有する脂肪族炭化水素類などを挙げることができる。
【0062】
好ましい(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、C1〜C10アルキル基を有するもの、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸エチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルなどである。
【0063】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの混合物も、同様に、特に適している。
【0064】
1〜20個の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステルは、例えば、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び酢酸ビニルなどである。
【0065】
α,β-不飽和カルボン酸及びそれらの無水物は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸又は無水マレイン酸などであり、好ましくは、アクリル酸である。
【0066】
適するビニル芳香族化合物としては、例えば、ビニルトルエン、α-ブチルスチレン、4-n-ブチルスチレン及び4-n-デシルスチレンなどを挙げることができ、好ましくは、スチレンを挙げることができる。
【0067】
ニトリル類の例は、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルである。
【0068】
適するビニルエーテル類の例は、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルヘキシルエーテル及びビニルオクチルエーテルなどである。
【0069】
2〜8個の炭素原子と1又は2個のオレフィン性二重結合を有する非芳香族炭化水素としては、ブタジエン及びイソプレンなどを挙げることができ、さらに、エチレン、プロピレン及びイソブチレンなども挙げることができる。
【0070】
さらにまた、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルカプロラクタムを使用することも可能である。
【0071】
光開始剤(D)としては、熟練技術者に公知の光開始剤を使用することが可能であり、その例は、文献(「Advances in Polymer Science」, Volume 14, Springer Berlin 1974; K.K. Dietliker,Chemistry and Technology of UV- and EB-Formulation for Coatings,Inks and Paints,Volume 3; Photoinitiators for Free Radical and Cationic Polymerization, P.K.T. Oldring (Ed.), SITA Technology Ltd, London)において特定されているものである。
【0072】
考慮し得る例としては、例えばEP-A-7508、EP-A-57474、DE-A-19618720、EP-A-495751又はEP-A-615980に記述されているモノ若しくはビスアシルホスフィンオキシド Irgacure 819 (ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド)、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin(登録商標) TPO)、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチル、ベンゾフェノン類、ヒドロキシアセトフェノン類、フェニルグリオキシル酸及びその誘導体、又は、これら光開始剤の混合物などを挙げることができる。例としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アセトナフトキノン、メチルエチルケトン、バレロフェノン、ヘキサノフェノン、α-フェニルブチロフェノン、p-モルホリノプロピオフェノン、ジベンゾスベロン、4-モルホリノベンゾフェノン、4-モルホリノデオキシベンゾイン、p-ジアセチルベンゼン、4-アミノベンゾフェノン、4'-メトキシアセトフェノン、β-メチルアントラキノン、t-ブチルアントラキノン、アントラキノンカルボン酸エステル、ベンズアルデヒド、α-テトラロン、9-アセチルフェナントレン、2-アセチルフェナントレン、10-チオキサンテノン、3-アセチルフェナントレン、3-アセチルインドール、9-フルオレノン、1-インダノン、1,3,4-トリアセチルベンゼン、チオキサンテン-9-オン、キサンテン-9-オン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジ-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、クロロキサンテノン、ベンゾインテトラヒドロピラニルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、7H-ベンゾインメチルエーテル、ベンズ[de]アントラセン-7-オン、1-ナフトアルデヒド、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、ミヒラーケトン、1-アセトナフトン、2-アセトナフトン、1-ベンゾイルシクロヘキサン-1-オール、2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシアセトフェノン、アセトフェノンジメチルケタール、o-メトキシベンゾフェノン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、ベンズ[a]アントラセン-7,12-ジオン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンジルケタール類、例えば、ベンジルジメチルケタール、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、アントラキノン類、例えば、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、及び、2,3-ブタンジオンなどを挙げることができる。
【0073】
DE-A-19826712、DE-A-19913353又はWO98/33761に記載されているようなフェニルグリオキサル酸エステルタイプの非黄色又は僅かに黄色がかった光開始剤も適している。
【0074】
具体的に挙げられている光開始剤の内で、ホスフィンオキシド類、α-ヒドロキシケトン類及びベンゾフェノン類が好ましい。
【0075】
特に、異なった光開始剤の混合物を使用することも可能である。
【0076】
該光開始剤は、単独でも使用できるし、又は、光重合促進剤、例えば、安息香酸又はアミン又は類似したタイプの光重合促進剤と組み合わせて使用することも可能である。
【0077】
付加的な、典型的な塗料用添加剤(E)として、例えば、抗酸化剤、酸化防止剤、安定化剤、活性化剤(促進剤)、充填材、顔料、染料、液化剤(devolatilizer)、光沢剤(luster agent)、静電気防止剤、難燃剤、増粘剤、チキソトロープ剤、レベリング助剤、結合剤、消泡剤、香料、界面活性剤、粘度調節剤、可塑剤、可塑化剤(plastifying agent)、粘着付与樹脂(粘着付与剤)、キレート化剤又は相容化剤(compatibilizer)などを使用することができる。
【0078】
熱による後硬化のための促進剤として、例えば、オクタン酸スズ、オクタン酸亜鉛、ジラウリン酸ジブチルスズ、又は、ジアザ[2.2.2]ビシクロオクタンなどを使用することができる。
【0079】
さらに、1種以上の光化学的及び/又は熱的に活性化可能な開始剤、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化ジベンゾイル、過酸化シクロヘキサノン、過酸化ジ-t-ブチル、アゾビス-イソブチロニトリル、シクロヘキシルスルホニルアセチルペルオキシド、過炭酸ジ-イソプロピル、過オクタン酸t-ブチル又はベンズピナコールなどを添加することが可能であり、また、例えば、80℃での半減期が100時間を超える熱的に活性化可能な開始剤、例えば、過酸化ジ-t-ブチル、クメンヒドロペルオキシド、過酸化ジクミル、過安息香酸t-ブチル、シリル化ピナコール類(これらは、例えば、Wackerから商品名「ADDID 600」で市販されている)、又は、ヒドロキシル含有アミンN-オキシド類、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシルなども添加することが可能である。適する開始剤のさらなる例は、文献(「Polymer Handbook」, 2nd edition, Wiley & Sons, New York)に記述されている。
【0080】
適する増粘剤及びフリーラジカル(共)重合で得られた(コ)ポリマーとしては、慣習的な有機及び無機の増粘剤、例えば、ヒドロキシメチルセルロース又はベントナイト類を挙げることができる。
【0081】
使用可能なキレート形成剤(chelate former)の例としては、エチレンジアミン酢酸及びその塩などを挙げることができ、また、β-ジケトン類も挙げることができる。
【0082】
適する充填材としては、シリケート類、例えば、四塩化ケイ素の加水分解により得ることができるシリケート類、例えば、Degussa製Aerosil(登録商標)、シリカ質土類(siliceous earth)、タルク、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどを挙げることができる。
【0083】
適する安定化剤としては、典型的な紫外線吸収剤、例えば、オキシアニリド類(oxanilides)、トリアジン類及びベンゾトリアゾール(後者は、Ciba Spezialitatenchemieから、Tinuvin(登録商標)グレードのものを入手可能である)、並びに、ベンゾフェノン類などを挙げることができる。これらは、単独で使用することが可能であるか、又は、適切なフリーラジカル捕捉剤と一緒に使用することが可能である。フリーラジカル捕捉剤の例は、立体障害アミン類、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,6-ジ-t-ブチルピペリジン又はその誘導体、例えば、ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートなどである。安定化剤は、一般に、該製剤中に存在する固体成分を基準にして、0.1〜5.0重量%の量で使用する。
【0084】
適する安定化剤の例としては、さらに、N-オキシル類、例えば、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-アセトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4,4',4''-トリス(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-N-オキシル)ホスファイト若しくは3-オキソ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-N-オキシル、フェノール類及びナフトール類、例えば、p-アミノフェノール、p-ニトロソフェノール、2-t-ブチルフェノール、4-t-ブチルフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、2-メチル-4-t-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-t-ブチルフェノール (2,6-t-ブチル-p-クレゾール)若しくは4-t-ブチル-2,6-ジメチルフェノール、キノン類、例えば、ヒドロキノン若しくはヒドロキノンモノメチルエーテル、芳香族アミン類、例えば、N,N-ジフェニルアミン、N-ニトロソジフェニルアミン、フェニレンジアミン類、例えば、N,N'-ジアルキル-パラ-フェニレンジアミン(ここで、アルキル基は、同一であるか又は異なっている直鎖又は分枝鎖であり、独立して、1〜4個の炭素原子からなる)、ヒドロキシルアミン類、例えば、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、尿素誘導体、例えば、尿素若しくはチオ尿素、リン化合物、例えば、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイト若しくはトリエチルホスファイト、又は、硫黄化合物、例えば、ジフェニルスルフィド若しくはフェノチアジンなども挙げることができる。
【0085】
放射線硬化性組成物の典型的な組成は、例えば、
(A) 20〜100重量%、好ましくは、40〜90重量%、さらに好ましくは、50〜90重量%、特に、60〜80重量%;
(B) 0〜60重量%、好ましくは、5〜50重量%、さらに好ましくは、10〜40重量%、特に、10〜30重量%;
(C) 0〜50重量%、好ましくは、5〜40重量%、さらに好ましくは、6〜30重量%、特に、10〜30重量%;
(D) 0〜20重量%、好ましくは、0.5〜15重量%、さらに好ましくは、1〜10重量%、特に、2〜5重量%;
及び
(E) 0〜50重量%、好ましくは、2〜40重量%、さらに好ましくは、3〜30重量%、特に、5〜20重量%;
であるが、但し、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)を合わせて100重量%である。
【0086】
本発明の塗料組成物(coating composition)によるサブストレートのコーティングは、熟練技術者には公知の慣習的な方法により行うが、コーティングに際して、コーティングする対象のサブストレートに所望の厚さで少なくとも1種の塗料組成物を塗布し、該塗料組成物中に存在している全ての揮発成分を、適切な場合には加熱して、除去する。この操作は、必要に応じて、1回以上繰り返すことができる。サブストレートへの塗布は、公知方法で、例えば、スプレー、トラウェル、ナイフコーティング、ブラッシング、ローリング、ローラーコーティング、カスティング、ラミネーティング、バックモールディング(backmolding)又は共押出しなどにより行うことができる。コーティング膜厚は、一般に、約3〜1000g/m2、好ましくは、10〜200g/m2である。
【0087】
さらに、サブストレートにコーティングする方法が開示されており、該方法では、本発明の塗料組成物をサブストレートに塗布し、適切な場合には乾燥させ、酸素含有雰囲気下、又は、好ましくは不活性ガス下で、電子線又は紫外線光で硬化させ、適切な場合には、乾燥温度のレベル以下の温度で熱処理し、その後、160℃までの温度、好ましくは、60℃〜160℃の温度で熱処理する。
【0088】
サブストレートにコーティングする方法は、さらにまた、塗料組成物を塗布した後、最初に、160℃までの温度、好ましくは、60℃〜160℃の温度で熱処理し、次いで、酸素下、好ましくは、不活性ガス下で、電子線又は紫外線光を用いて硬化させるようにして行うこともできる。
【0089】
サブストレート上に形成された膜の硬化は、必要に応じて、熱的手段のみによって行うことも可能である。しかしながら、一般には、コーティングは、高エネルギー放射に晒すことによる硬化と熱的な硬化の両方によって硬化させる。
【0090】
熱による硬化に加えて、又は、熱による硬化に代えて、NIR放射によっても、硬化させることが可能である。NIR放射は、本明細書では、760nm〜2.5×10-7m、好ましくは、900〜1500nmの波長範囲における電磁放射を意味する。
【0091】
必要に応じて、該塗料組成物の2以上のコーティングを次々に覆うように施す場合、各コーティング操作の後に、熱による硬化、NIRによる硬化及び/又は放射線による硬化を実施し得る。
【0092】
放射線による硬化に適する放射線源の例としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯及び高圧水銀灯などを挙げることができ、また、蛍光灯、パルス放射体(pulsed emitter)、ハロゲン化金属ランプ、フラッシュ装置(electronic flash device)(これは、光開始剤を用いないで放射により硬化させるのを可能とする)、又は、エキシマ放射体(excimer emitter)などを挙げることができる。放射線による硬化は、高エネルギー放射、即ち、紫外線放射又は日光、好ましくは、λ=200〜700nmの波長範囲の光、さらに好ましくは、λ=200〜500nmの波長範囲の光、極めて好ましくは、λ=250〜400nmの波長範囲の光に晒すか、又は、高エネルギー電子(電子線;150〜300keV)に晒すことにより行う。使用する放射線源の例としては、高圧水銀灯、レーザー、パルスランプ(フラッシュライト)、ハロゲンランプ又はエキシマ放射体などを挙げることができる。紫外線による硬化の場合、架橋させるのに通常充分な放射線の線量は、80〜3000mJ/cm2の範囲である。
【0093】
当然のことながら、硬化に関して2種以上の放射線源(例えば、2〜4種の放射線源)を使用することも可能である。そのような放射線源は、それぞれ異なった波長範囲の放射線を発してもよい。
【0094】
適切な場合には、照射は、酸素の非存在下で、例えば、不活性ガス雰囲気下で行うことができる。適する不活性ガスとしては、好ましくは、窒素、希ガス、二酸化炭素又は燃焼ガスなどを挙げることができる。さらにまた、照射は、透明な媒質で覆われている塗料組成物を用いて実施することも可能である。透明な媒質の例としては、ポリマーフィルム、ガラス又は液体(例えば、水)などを挙げることができる。DE-A1-19957900に記述されている方法で照射するのが特に好ましい。
【0095】
本発明は、さらに、サブストレートをコーティングする方法を提供し、ここで、該方法では、
(i) サブストレートを上記塗料組成物でコーティングし;
(ii) 光開始剤(C)が実質的にフリーラジカルを全く形成しない条件下で、該塗料の揮発性成分を除去して膜を形成させ;
(iii) 必要に応じて、ステップ(ii)で形成された膜を高エネルギー放射線に晒し(その場合、該膜は予備硬化される)、次いで、必要に応じて、予備硬化された膜で覆われている物品を機械で加工するか、又は、予備硬化された膜の表面を別のサブストレートと接触させ;
及び
(iv) 熱又はNIR放射により、該膜の硬化を完結させる。
【0096】
上記ステップ(iv)とステップ(iii)は、逆の順番で行うことも可能である。即ち、該膜を、最初に熱又はNIR放射により硬化させ、次いで、高エネルギー放射線で硬化させることができる。
【0097】
さらにまた、本発明により、本発明の塗料組成物でコーティングされたサブストレートが提供される。
【実施例】
【0098】
以下の実施例を参照して、本発明について説明する。
【0099】
一般詳細
(A) ガスクロマトグラフィー
グリセロール及びトリメチロールプロパンとアクリレートとの反応生成物は、Varian製のキャピラリーカラム CP-Sil 19(14%シアノプロピルフェニル, 86%ジメチルポリシロキサン)でのガスクロマトグラフィーにより分離した。ソルビトール及びエリトリトールとアクリレートとの反応生成物のGC分析については、50μLの反応溶液を、20℃で10分間、950μLのSylon HTP(Supelco製)で処理した後、キャピラリーカラム CP-Sil 5(100%ジメチルポリシロキサン, Varian製)で分析した。
【0100】
(B) 「総抽出可能物」の測定
熱的に硬化させた塗料の総抽出可能物のフラクションを、熱的に硬化させた塗料のタブレットをアセトンで抽出することにより測定する。
【0101】
(a) 塗料のタブレットの調製及び試験
試験用の塗料(光開始剤非含有)を新たに調製し、秤量する(5g)。該塗料のタブレットを、乾燥キャビネット内で、60℃で24時間硬化させる。硬化後、該膜を二等分する。各半分を秤量する(化学天秤, 一方のビーカーは抽出用であり他方のビーカーは比較用としてアセトンを含有していない)。一方のビーカー(Ac)に、100gのアセトンを入れる。両方のビーカーに蓋をして、23℃/55%相対湿度で24時間保存する。
【0102】
保存後、(Ac)ビーカーからアセトンを注ぎ出す(タブレットの全ての断片を残すようにナイロン製の篩に通す)。全てのビーカーを、蓋をはずして80℃で2時間乾燥させ、冷却後、再度秤量する。
【0103】
(b) 計算
【数1】

【0104】
(c) ブランクサンプル
各測定に加えて試験したブランクサンプル(1/2のタブレット, 空気中で24時間)を用いて、乾燥の過程で失われる全ての物質を検出する。経験に基づくと、全てのブランクサンプルは、乾燥に際して0.2%〜0.5%減損する。この減損分を抽出サンプルの減損分から減じる。
【0105】
実施例1: MTBE中におけるTMPとアクリル酸メチルの反応
0.1mol(13.4g)のトリメチロールプロパン(TMP)と1.0mol(86.1g)のアクリル酸メチルと200mLのMTBEと20gの5Åモレキュラーシーブと2.0gのNovozym 435(Candida antarctica Bから得られたリパーゼ)の混合物を、還流下に、24時間撹拌した。濾過により酵素を除去し、ロータリーエバポレータで減圧下にMTBEを除去し、22gの粗生成物(透明な黄色がかった液体)を得た。
【0106】
サンプルを取り、シリル化し、GCで分析した。GC分析による該生成物の組成は以下のとおりであった:16%TMP, 60%TMPモノアクリレート, 21%TMPジアクリレート, <1%TMPトリアクリレート。
【0107】
実施例2: アセトン中のグリセロールとアクリル酸メチルの反応(モレキュラーシーブなし)
125mmol(11.5g)のグリセロールと1.25mol(107.6g)のアクリル酸メチルと250mLのアセトンと2.5gのNovozym 435(Candida antarctica Bから得られたリパーゼ)の混合物を、40℃で2日間振盪した。濾過により酵素を除去し(この酵素は再使用可能である)、ロータリーエバポレータで減圧下にアセトンを除去した。これにより、27gの粗生成物(透明な黄色がかった液体)を得た。
【0108】
サンプルを取り、シリル化し、GCで分析した。GC分析による該生成物の組成は以下のとおりであった:6%グリセロール, 54%グリセロールモノアクリレート, 37%グリセロールジアクリレート, <1%グリセロールトリアクリレート。
【0109】
熱又は紫外線による硬化後の総抽出可能物:<5重量%。
【0110】
実施例3: TMPとアクリル酸メチルの反応
(a) 0.5mol(67g)のTMPと5mol(430.5g)のアクリル酸メチルと100gのモレキュラーシーブ(5Å)と10gのNovozym 435(Candida antarctica Bから得られたリパーゼ)の混合物を60℃で72時間撹拌した。濾過により酵素を除去し、濾液を蒸留により低揮発性成分から分離した。これにより、142gのTMPTA(透明な無色液体)を得た。
【0111】
サンプルを取り、シリル化した。GC分析によると、99%を超えるTMPが反応していた。即ち、殆ど完全に、トリアクリレートが形成された。
【0112】
紫外線による硬化後の総抽出可能物:<5重量%。
【0113】
(b) 0.5mol(67g)のTMPと5mol(430.5g)のアクリル酸メチルと100gのモレキュラーシーブ(5Å)と10gのNovozym 435(Candida antarctica Bから得られたリパーゼ)の混合物を40℃で24時間撹拌した。濾過により酵素を除去し、濾液を蒸留により低揮発性成分から分離した。これにより、104gの生成物(透明な無色液体)を得た。
【0114】
サンプルを取り、シリル化した。GC分析による該生成物の組成は以下のとおりであった:2%TMP, 22%TMPモノアクリレート, 72%TMPジアクリレート, <3%TMPトリアクリレート。
【0115】
熱又は紫外線による硬化後の総抽出可能物:<5重量%。
【0116】
実施例4: TMPとアクリル酸の反応(比較実施例1)
0.5mol(67g)のTMPと0.5重量%のH2SO4と1.8mol(99g)のアクリル酸の混合物をシクロヘキサンに溶解させ、生じた反応水を除去して、50%又は66%までの変換率とした。バッチは、いずれの場合も、蒸留により精製して、酸価40とした。これにより、108g又は120gの生成物(透明な黄色がかった液体)を得た。
【0117】
サンプルを取り、シリル化した。GC分析による該生成物の組成は以下のとおりであった:
変換率[50%]:15%TMP, 45%TMPモノアクリレート, 23%TMPジアクリレート, 17%TMPトリアクリレート。
【0118】
熱による硬化後の総抽出可能物:33重量%(酢酸ブチル, 室温)。
【0119】
紫外線による硬化後の総抽出可能物:47重量%(酢酸ブチル, 室温)。
【0120】
変換率[67%]:2%TMP, 15%TMPモノアクリレート, 25%TMPジアクリレート, 59%TMPトリアクリレート。
【0121】
熱による硬化後の総抽出可能物:64重量%(酢酸ブチル, 室温)。
【0122】
紫外線による硬化後の総抽出可能物:27重量%(酢酸ブチル, 室温)。
【0123】
実施例5: t-ブタノール中におけるグリセロールとアクリル酸エチルの反応
5mmol(0.46g)のグリセロールと50mmol(5.0g)のアクリル酸エチルと10mLのt-ブタノールと1gのモレキュラーシーブ(5Å)と0.1g of Novozym 435(Candida antarctica Bから得られたリパーゼ)の混合物を20℃で3日間振盪した。
【0124】
サンプルを取り、シリル化し、GCで分析した。GC分析による該生成物の組成は以下のとおりであった:5重量%グリセロール, 42重量%グリセロールモノアクリレート, 53重量%グリセロールジアクリレート, <1重量%グリセロールトリアクリレート。
【0125】
実施例6: グリセロールとアクリル酸メチルの反応
125mmol(11.5g)のグリセロールと1.25mol(107.6g)のアクリル酸メチルと250mLのアセトンと2.5gのNovozym 435(Candida antarctica Bから得られたリパーゼ)の混合物を40℃で2日間振盪した。濾過により酵素を除去した(この酵素は再使用可能である)。ロータリーエバポレータで減圧下にアセトンを除去した。これにより、19.4gの粗生成物(透明な黄色がかった液体)を得た。
【0126】
サンプルを取り、シリル化し、GCで分析した。GC分析による該生成物の組成は以下のとおりであった:15重量%グリセロール, 37重量%グリセロールモノアクリレート, 46重量%グリセロールジアクリレート, <1重量%グリセロールトリアクリレート。
【0127】
実施例7: アセトン中におけるグリセロールとアクリル酸メチルの反応
0.5mol(46.3g)のグリセロールと5mol(430.5g)のアクリル酸メチルと500mLのアセトンと100gのモレキュラーシーブ(5Å)と10.0gのNovozym 435(Candida antarctica Bから得られたリパーゼ)の混合物を20℃で72時間撹拌した。濾過により酵素を除去し(この酵素は再使用可能である)、減圧下に濾液を濃縮した。これにより、80.9gの粗生成物(透明な無色の液体)を得た。
【0128】
サンプルを取り、シリル化した。GC分析による該生成物の組成は以下のとおりであった:8重量%グリセロール, 48重量%グリセロールモノアクリレート, 41重量%グリセロールジアクリレート, 3重量%グリセロールトリアクリレート。
【0129】
実施例8: グリセロールとメタクリル酸メチルの反応(溶媒又はモレキュラーシーブなし)
5mmol(0.46g)のグリセロールと50mmol(5.0g)のメタクリル酸メチルと0.1gのNovozym 435(Candida antarctica Bから得られたリパーゼ)の混合物を20℃で24時間振盪した。
【0130】
サンプルを取り、シリル化した。GC分析による該生成物の組成は以下のとおりであった:15重量%グリセロール, 55重量%グリセロールモノメタクリレート, 30重量%グリセロールジメタクリレート, <1重量%グリセロールトリメタクリレート。
【0131】
実施例9: t-ブタノール中におけるエリトリトールとアクリル酸メチルの反応
50mmolのエリトリトール(6.1g)と500mmolのアクリル酸メチルと300mLのt-ブタノールと1.0gの固定化リパーゼ(Candida antarcticaから得られたもの)(Novozym 435)を40℃で72時間撹拌した。濾過により酵素を除去し、ロータリーエバポレータで減圧下に40℃で余分なアクリル酸メチルと溶媒を除去した。
【0132】
これにより、14.1gの標的生成物を得たが、これは、GC分析によると、以下のものを含んでいた:21重量%エリトリトール, 49重量%エリトリトールモノアクリレート, 29重量%エリトリトールジアクリレート, <0.2重量%エリトリトールトリアクリレート。
【0133】
実施例10: t-ブタノール中におけるソルビトールとアクリル酸メチルの反応
上に還流冷却器が載せてある四つ口丸底フラスコ内で、63.8gのソルビトール(0.35mol)と301.3gのアクリル酸メチル(3.5mol)と2100mLのt-ブタノールと7.0gの凍結乾燥させたリパーゼ(Burkholderia sp.から得られたもの)を40℃で72時間撹拌した。この混合物を、次いで、吸引漏斗(シリカゲル層を有するD3)を用いて濾過してリパーゼと未溶解のソルビトールを除去し、ロータリーエバポレータで減圧下に40℃で余分なアクリル酸メチルと溶媒を除去した。これにより、83.3gの生成物を得た。
【0134】
GC分析の結果は以下のとおりであった:45重量%ソルビトールモノアクリレート, 42重量%ソルビトールジアクリレート, 3重量%ソルビトールトリアクリレート, 10重量%ソルビトール。
【0135】
実施例11:粗ワニスコートの調製
(a) 熱による硬化
16重量%のそれぞれ実施例3(b)と実施例2の反応生成物の混合物、50重量%のBasonat HI 100、34重量%のポリオール、及び、3.5重量%のIrgacure(登録商標)184(Ciba Specialty Chemicals)と0.5重量%のLucirin TPO(登録商標)(BASF AG)の混合物を、1重量%のDBTLを添加してある酢酸ブチルに溶解させ、得られた溶液を、60℃で16時間、熱硬化に付した。これにより、無色の膜が得られたが、これは、30分後には、粘着性を有さなかった。16時間後、この膜は冷却した。この膜を、室温で24時間、アセトンで抽出し、次いで、乾燥させた。
【0136】
(b) 紫外線による硬化
該塗料組成物を、ランプとサブストレートの距離12cm、ベルトスピード5m/分で、無ドープ高圧水銀灯(undoped high-pressure mercury lamp)(出力 120W/cm)に5回晒した。無ドープ高圧水銀灯に晒した後のコート厚は、約50μmであった。
【0137】
振り子減衰(pendulum damping)は、DIN 53157に準じて測定して、それぞれ、118及び110であった。振り子減衰は、コーティングの硬度の尺度である。結果は、振り子のスイングで示される。この場合、高い値は、硬度が高いことを表す。エリクセンカッピング(Erichsen cupping)は、DIN 53156に準じて測定して、それぞれ、4.6及び7.0であった。エリクセンカッピングは、撓み性と伸縮性の尺度である。結果は、ミリメートル(mm)で示される。高い値は、高い撓み性を表す。碁盤目による接着は、DIN 53151に準じて測定し、評点として記録した。低い値は高い接着性を表す。これは、いずれの場合も、0/5の評価であった。
【0138】
比較実施例1[50%]に関しては、得られた値は以下のとおりである:
振り子減衰:32;
エリクセンカッピング:8.9;
接着性:1/5。
【0139】
従って、本発明のアクリル酸ポリオールを使用して、著しく改善された特性プロフィールを有するポリマーコーティングを製造することが可能であることは明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸ポリオールを酵素的に合成する方法であって、アクリレート基を転移させる酵素の存在下、脂肪族ポリオールとアクリル酸化合物又はそのアルキルエステルを、バルクで反応させるか又は有機溶媒含有液体反応媒体中で反応させ、反応終了後、必要に応じて、形成されたアクリル酸ポリオールを該反応混合物から単離する、前記方法。
【請求項2】
前記液体反応媒体の初期水分含有量が約10容積%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アクリル酸化合物とポリオールを約100:1〜1:1のモル比で使用する、請求項1又は2の何れかに記載の方法。
【請求項4】
前記アクリル酸化合物が、アクリル酸、低級アルキル置換アクリル酸、及びそれら化合物のアルキルエステル、並びにそれらの混合物から選択される、請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記ポリオールが、少なくとも3個の炭素原子と少なくとも3個の(エステル化可能な)ヒドロキシル基を有する光学的に純粋な形態にあるか又は立体異性体混合物としての直鎖又は分枝鎖又は炭素環式の飽和又は不飽和の炭化水素化合物から選択されるか、又は、異なったポリオールの混合物である、請求項1〜4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記ポリオールが、3〜30個の炭素原子と3〜10個のヒドロキシル基を有する直鎖又は分枝鎖又は環状の飽和炭化水素から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記反応媒体に完全にアクリル化されたアクリル酸ポリオール(ここで、該アクリル酸ポリオールは、請求項1〜6の何れかで定義されているアクリル酸化合物とポリオールのエステルである)を添加する、請求項1〜6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
前記ポリオールが、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペンタエリトリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、D-エリトリトール、L-エリトリトール、メソエリトリトール、D-アラビトール、L-アラビトール、アドニトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール及びイノシトール類、並びに、それらの混合物、並びに、それらのアルコキシレート類(好ましくは、エトキシレート及び/又はプロポキシレート)から選択される、請求項1〜7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
前記酵素が、遊離形態又は固定化形態にあるヒドロラーゼ、好ましくは、エステラーゼ(E.C. 3.1.-.-)、例えば、特に、リパーゼ(E.C. 3.1.1.3)、グリコシラーゼ(E.C. 3.2.-.-)及びプロテアーゼ(E.C. 3.4.-.-)から選択される、請求項1〜8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
前記有機溶媒が、C1〜C6アルカノール、ピリジン、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル、アルキレンカーボネート、C1〜C6アルキルアルカンカルボン酸エステル、アセトン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、THF、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、及び、それらの混合物から選択される、請求項1〜9の何れかに記載の方法。
【請求項11】
前記反応媒体の前記酵素の含有量が、使用する前記ポリオールに基づいて、約0.01〜10重量%の範囲である、請求項1〜10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
反応温度が0℃〜約100℃の範囲である、請求項1〜11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
前記反応媒体が単相又は多相であり、該反応体が、溶液状、懸濁液状又は乳濁液状で存在している、請求項1〜12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
該エステル交換の間に生成されたアルコール、又は、該エステル化の間に生成された反応水を、反応平衡から除去する、請求項1〜13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
高分子アクリル酸ポリオールを調製する方法であって、少なくとも1種のアクリル酸ポリオールを、請求項1〜14の何れかに記載の方法で調製し、必要に応じて反応混合物から分離し、必要に応じてさらなるコモノマーと一緒に重合させる、前記方法。
【請求項16】
実質的にモノアクリル酸ポリオールを含んでいる反応生成物を少なくとも1種のコモノマーと反応させて線状コポリマーを形成させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項15及び16の何れかに記載の方法で得ることができる高分子アクリル酸ポリオール。
【請求項18】
請求項1〜14の何れかに記載の方法で得ることができるアクリル酸ポリオール。
【請求項19】
アルコール官能性とアクリレート官能性の両方を有している化合物を、アクリル酸ポリオールの総モル数に基づいて約60〜100mol%の量で含有している、請求項18に記載のアクリル酸ポリオール。
【請求項20】
塗料、例えば、特に、放射線硬化性及び/又は熱硬化性の塗料を調製するための、請求項17に記載の高分子アクリル酸ポリオールの使用。
【請求項21】
前記塗料が、総抽出可能フラクションを、特に熱による硬化後に、20重量%以下しか含まない、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
熱による硬化のみを行った後、前記塗料が粘着性を有さない、請求項20又は21に記載の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸ポリオールを酵素的に合成する方法であって、ヒドロラーゼから選択され、アクリレート基を転移させる酵素の存在下、脂肪族ポリオールとアクリル酸化合物又はそのアルキルエステルを、バルクで反応させるか又は有機溶媒含有液体反応媒体中で反応させ、反応終了後、必要に応じて、形成されたアクリル酸ポリオールを該反応混合物から単離する、前記方法。
【請求項2】
前記液体反応媒体の初期水分含有量が約10容積%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アクリル酸化合物とポリオールを約100:1〜1:1のモル比で使用する、請求項1又は2の何れかに記載の方法。
【請求項4】
前記アクリル酸化合物が、アクリル酸、C1〜C6-アルキル置換アクリル酸、及びそれら化合物のアルキルエステル、並びにそれらの混合物から選択される、請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記ポリオールが、少なくとも3個の炭素原子と少なくとも3個の(エステル化可能な)ヒドロキシル基を有する光学的に純粋な形態にあるか又は立体異性体混合物としての直鎖又は分枝鎖又は炭素環式の飽和又は不飽和の炭化水素化合物から選択されるか、又は、異なったポリオールの混合物である、請求項1〜4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記ポリオールが、3〜30個の炭素原子と3〜10個のヒドロキシル基を有する直鎖又は分枝鎖又は環状の飽和炭化水素から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記反応媒体に完全にアクリル化されたアクリル酸ポリオール(ここで、該アクリル酸ポリオールは、請求項1〜6の何れかで定義されているアクリル酸化合物とポリオールのエステルである)を添加する、請求項1〜6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
前記ポリオールが、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペンタエリトリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、D-エリトリトール、L-エリトリトール、メソエリトリトール、D-アラビトール、L-アラビトール、アドニトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール及びイノシトール類、並びに、それらの混合物、並びに、それらのアルコキシレート類(好ましくは、エトキシレート及び/又はプロポキシレート)から選択される、請求項1〜7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
ヒドロラーゼが、エステラーゼ(E.C. 3.1.-.-)である、請求項1〜8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
エステラーゼが、遊離形態又は固定化形態にあるリパーゼ(E.C. 3.1.1.3)、グリコシラーゼ(E.C. 3.2.-.-)及びプロテアーゼ(E.C. 3.4.-.-)から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記有機溶媒が、C1〜C6アルカノール、ピリジン、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル、アルキレンカーボネート、C1〜C6アルキルアルカンカルボン酸エステル、アセトン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、THF、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、及び、それらの混合物から選択される、請求項1〜10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
前記反応媒体の前記酵素の含有量が、使用する前記ポリオールに基づいて、約0.01〜10重量%の範囲である、請求項1〜11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
反応温度が0℃〜約100℃の範囲である、請求項1〜12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
前記反応媒体が単相又は多相であり、該反応体が、溶液状、懸濁液状又は乳濁液状で存在している、請求項1〜13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
該エステル交換の間に生成されたアルコール、又は、該エステル化の間に生成された反応水を、反応平衡から除去する、請求項1〜14の何れかに記載の方法。
【請求項16】
高分子アクリル酸ポリオールを調製する方法であって、少なくとも1種のアクリル酸ポリオールを、請求項1〜15の何れかに記載の方法で調製し、必要に応じて反応混合物から分離し、必要に応じてさらなるコモノマーと一緒に重合させる、前記方法。
【請求項17】
実質的にモノアクリル酸ポリオールを含んでいる反応生成物を少なくとも1種のコモノマーと反応させて線状コポリマーを形成させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項16及び17の何れかに記載の方法で得ることができる高分子アクリル酸ポリオール。
【請求項19】
請求項1〜15の何れかに記載の方法で得ることができる、アクリル酸ポリオールを含む反応生成物
【請求項20】
アルコール官能性とアクリレート官能性の両方を有している化合物を、アクリル酸ポリオールの総モル数に基づいて約60〜100mol%の量で含有している、請求項19に記載の反応生成物
【請求項21】
塗料、例えば、特に、放射線硬化性及び/又は熱硬化性の塗料を調製するための、請求項18に記載の高分子アクリル酸ポリオール又は請求項19もしくは20に記載の反応生成物の使用。
【請求項22】
前記塗料が、総抽出可能フラクションを、特に熱による硬化後に、20重量%以下しか含まない、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
熱による硬化のみを行った後、前記塗料が粘着性を有さない、請求項21又は22に記載の使用。

【公表番号】特表2006−506993(P2006−506993A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554415(P2004−554415)
【出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013106
【国際公開番号】WO2004/048585
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【Fターム(参考)】