アコースティック・エミッション検出器
【課題】簡略な構造で効果的にアコースティック・エミッションを検出できるアコースティック・エミッション検出器を提供する。
【解決手段】アコースティック・エミッション検出器は,アコースティック・エミッションにより振動する受波板と,前記受波板に光を送出する発光素子と前記受波板からの反射光を電気信号に変換する受光素子とが結合してなる複数の光送受ユニットと,前記複数の光送受ユニットの受光素子の出力を加算する加算部と,を具備し,前記複数の光送受ユニットの発光素子が前記受波板の中心近傍に配置される。
【解決手段】アコースティック・エミッション検出器は,アコースティック・エミッションにより振動する受波板と,前記受波板に光を送出する発光素子と前記受波板からの反射光を電気信号に変換する受光素子とが結合してなる複数の光送受ユニットと,前記複数の光送受ユニットの受光素子の出力を加算する加算部と,を具備し,前記複数の光送受ユニットの発光素子が前記受波板の中心近傍に配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,アコースティック・エミッションを検出するアコースティック・エミッション検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物における損傷や経年劣化のモニタリングを目的として,AE(Acoustic Emission)を検知できる光ファイバドップラセンサ(FOD:Fiber Optic Doppler)が,用いられる(特許文献1参照)。
光ファイバドップラセンサは,光ファイバの一部を被測定物に固着させ,周波数f0の光波を入力する。光ファイバを通過する光波に生じるドップラ効果による変調fdを測定することで,AE(Acoustic Emission)を検知する。
この従来のAEセンサは,部品点数が多く,高価であり,センサのサイズが例えば,円板状では20mm,球状では40mmとなり,実用上問題となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−283469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は,簡略な構造で効果的にアコースティック・エミッションを検出できるアコースティック・エミッション検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係るアコースティック・エミッション検出器は,アコースティック・エミッションにより振動する受波板と,前記受波板に光を送出する発光素子と前記受波板からの反射光を電気信号に変換する受光素子とが結合してなる複数の光送受ユニットと,前記複数の光送受ユニットの受光素子の出力を加算する加算部と,を具備し,前記複数の光送受ユニットの発光素子が前記受波板の中心近傍に配置される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば,簡略な構造で効果的にアコースティック・エミッションを検出できるアコースティック・エミッション検出器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係るAEセンサ100の模式図である。
【図2】フォトリフレクタ21の詳細を表す上面図である。
【図3】AEセンサ100でのフォトリフレクタ21の配置を表す上面図である。
【図4】第2実施形態に係るAEセンサ200の模式図である。
【図5】AEセンサ200でのフォトリフレクタ21の配置を表す上面図である。
【図6】第2実施形態の変形例に係るAEセンサ300でのフォトリフレクタ21の配置を表す上面図である。
【図7】第3実施形態に係るAEセンサ400でのフォトリフレクタ21の配置を表す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下,図面を参照して,本実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は,第1の実施形態に係るAEセンサ100の模式図である。AEセンサ100は,アコースティック・エミッションを検出するアコースティック・エミッション検出器である。アコースティック・エミッションは,固体が塑性変形や破壊する際に,固体内にひずみの形で蓄えられていたエネルギーが弾性波(音波)の形で放出される現象である。AEセンサ100は,アコースティック・エミッションにより発生した音波を検出する。
【0009】
AEセンサ100は,ケース11,受波板12,フォトリフレクタ21a,21b,オペアンプ31,信号処理器32を有する。
ケース11は,例えば,略円筒形状を有し,受波板12,フォトリフレクタ21a,21b,オペアンプ31,信号処理器32等をその内部に保持する。
【0010】
受波板12は,アコースティック・エミッションにより振動する振動板である。受波板12は,略円板形状であり,ケース11の端部に固定(例えば,溶接)される。その結果,受波板12は,ケース11の内径r0においてアコースティック・エミッションに対応して振動する(振動領域)。受波板12の中心近傍において,受波板12の振動の振幅が大きい。後述のように,受波板12の振動領域の径r0に対して,r1/r0=0.2以下となる径r1の領域Aを受波板12の中心近傍とする。
【0011】
フォトリフレクタ21aおよび21bはそれぞれ,受波板12に光を送出する発光素子と受波板12からの反射光を電気信号に変換する受光素子とが結合してなる複数の光送受ユニットである。フォトリフレクタ21aおよび21bは,受波板12に対向するように,図示しない保持部材で保持される。
【0012】
フォトリフレクタ21aおよび21bは,図2に示すように,例えば,縦:1.0mm×横:1.4mm×高さ:0.6mmの寸法を有し,LED(Light Emitting Diode)25とPT(フォトトランジスタ(Photo Transistor))26を結合領域27で結合して構成される。LED25は,受波板12に光を送出する発光素子である。PT26は,受波板12からの反射光を電気信号に変換する受光素子である。PT26に替えて,フォトダイオードを用いることも可能であるが,フォトダイオードよりもフォトトランジスタの方が高感度であることから,本実施形態ではフォトトランジスタを用いている。
【0013】
フォトリフレクタ21aおよび21bのLED25の発光部(特に,発光部の中心251)から受波板12に光が照射される。受波板12はLED25からの光を反射する。受波板12よりの反射光は,フォトリフレクタ21aおよび21bのPT26の受光部(特に,受光部の中心261)で受光され,電気信号に変換される。このとき,受波板12の微小変動に対応して,フォトリフレクタ21aおよび21bのPT26での受信信号が変化する。
【0014】
なお,フォトリフレクタ21aのLED25から出射された光を21bのPT26で受光しても良く,フォトリフレクタ21bのLED25から出射された光を21aのPT26で受光しても良い。
【0015】
オペアンプ31は,抵抗Ra,Rb,Rkに接続されて,加算・増幅回路を構成する。この加算・増幅回路は,複数の光送受ユニットの受光素子の出力を加算する加算部として機能する。フォトリフレクタ21aおよび21bのPT26の2つの出力を加算することで,SN比の向上が図れる。加算・増幅回路は,AEセンサ100に内蔵されるプリアンプとしても機能する。
【0016】
信号処理器32は,加算・増幅回路から出力される信号の出力を調整する増幅器である。信号処理器32からの出力(複数のPT26の出力の加算・増幅した出力)の交流成分が受波板12の振動を反映した信号成分である。この交流成分の検出により,受波板12の振動,ひいてはアコースティック・エミッションの検出が可能となる。
【0017】
図3に,フォトリフレクタ21aとフォトリフレクタ21bの配置を示す。この図は,信号処理器32側からAEセンサ100を見た図となっており,見易さのために,オペアンプ31,信号処理器32を除外した状態を表している。
【0018】
フォトリフレクタ21a,21bのLED25は,受波板12の中心近傍(領域A内)に位置するように配置されている。受波板12の中心近傍は,図3に示す領域Aに対応し,既述の受波板12の振動領域の径r0に対して径r1の領域である。具体的には,r1/r0=0.2以下となる半径r1の領域Aである。
【0019】
フォトリフレクタ21a,21bのLED25は,受波板12の中心側に,PT26は,受波板12の中心より外側に,配置される。振動の振幅が大きい受波板12の中心に光を照射することが受波板12の微小振動(アコースティック・エミッション)の検出に効果的である。
【0020】
以上のように,LED25を受波板12の中心近傍(領域A内)に配置し,受波板12から反射された光を受光する2つのPT26の出力を加算している。即ち,LED25を受波板12の中心近傍に配置することで,受波板12の振動に起因するLED25からの光量の変動が大きくなる。また,フォトリフレクタ21a,21bからの出力を加算,SN比が向上する。この結果,小型で安価でかつより外乱に強いAEセンサを実現することが容易となる。
【0021】
(第2の実施の形態)
図4は,第2の実施形態のAEセンサ200の構成図である。AEセンサ200は,ケース11,受波板12,フォトリフレクタ21a〜21c,オペアンプ31,信号処理器32を有する。即ち,AEセンサ200は,3つのフォトリフレクタ21a〜21cを用いている。第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し,重複する説明は省略する。
【0022】
オペアンプ31は,抵抗Ra〜Rc,Rkに接続されて,加算・増幅回路を構成する。この加算・増幅回路は,フォトリフレクタ21a〜21cのPT26の3つの出力を加算し,SN比の向上が図れる。加算・増幅回路は,AEセンサ200に内蔵されるプリアンプとしても機能する。
【0023】
フォトリフレクタ21a〜21cは,受波板12に対向するように,図示しない保持部材で保持される。
図5に,フォトリフレクタ21a〜21cの配置を示す。この図は,信号処理器32側からAEセンサ200を見た図となっており,見易さのために,オペアンプ31,信号処理器32を除外した状態を表している。
【0024】
フォトリフレクタ21a〜21cのLED25の発光部の中心251が受波板12の中心Cから等距離に位置するように同心円(半径r2)上に三角状に並べて配置される。また,フォトリフレクタ21a〜21cのPT26の受光部の中心261が受波板12の中心Cから等距離に位置するように同心円(半径r3)上に三角状に並べて配置される。
【0025】
なお,発光部の中心251,受光部の中心261の配置には,例えば,半径の20%程度の幅が許容される。即ち,半径r1/r0=0.2以下となる半径r1の領域Aに,LED25およびPT26を配置すればよい。
【0026】
また,図6は第2の実施形態の変形例に係るAEセンサ300でのフォトリフレクタ21a〜21eの配置を示す図であり,5つのフォトリフレクタ21a〜21eを用いている。フォトリフレクタ21a〜21eが五角状に並べて配置される。
フォトリフレクタ21a〜21eのLED25の発光部の中心251が受波板12の中心Cから等距離に位置するように同心円(半径r2)上に五角状に並べて配置される。また,フォトリフレクタ21a〜21eのPT26の受光部の中心261が受波板12の中心Cから等距離に位置するように同心円(半径r3)上に五角状に並べて配置される。
【0027】
なお,この変形例においても,発光部の中心251,受光部の中心261の配置には,例えば,半径の20%程度の幅が許容される。即ち,半径r1/r0=0.2以下となる半径r1の領域Aに,LED25およびPT26を配置すればよい。
【0028】
以上のように,LED25の発光(部)の中心251を受波板12の中心から略等距離に配置し,受波板12から反射された光を受光する3つまたは5つのPT26の出力を加算している。即ち,LED25を受波板12の中心近傍に配置することで,受波板12の振動に起因するLED25からの光量の変動が大きくなる。また,フォトリフレクタ21a〜21c,または21a〜21eからの出力を加算,SN比が向上する。この結果,小型で安価でかつより外乱に強いAEセンサを実現することが容易となる。
【0029】
(第3の実施の形態)
図7は,第3の実施形態のAEセンサ400の構成図である。AEセンサ400は,ケース11,受波板12,フォトリフレクタ21a〜21c,オペアンプ31,信号処理器32を有する。第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し,重複する説明は省略する。
【0030】
フォトリフレクタ21a〜21cのLED25の発光部の中心251が受波板12の中心Cから等距離に位置するように同心円(半径r2)上に並べて配置される。一方,フォトリフレクタ21a〜21cのPT26の受光部の中心261は受波板12の中心Cから等距離に位置するように同心円(半径r3)上に並べて配置される。
【0031】
なお,発光部の中心251,受光部の中心261の配置には,例えば,半径の20%程度の幅が許容される。即ち,半径r1/r0=0.2以下となる半径r1の領域Aに,LED25およびPT26を配置すればよい。
【0032】
ここでは,同心円(半径r2)上でのLED25の発光部の中心251の間隔,同心円(半径r3)上でのPT26の受光部の中心261の間隔は一定ではない(不等間隔)。即ち,受波板12の中心Cに対する,LED25またはPT26のなす角度は一定ではない。
【0033】
以上のように,LED25の発光(部)の中心251を受波板12の中心から略等距離に配置し,受波板12から反射された光を受光する3つのPT26の出力を加算している。即ち,LED25を受波板12の中心近傍に配置することで,受波板12の振動に起因するLED25からの光量の変動が大きくなる。また,フォトリフレクタ21a〜21cからの出力を加算,SN比が向上する。この結果,小型で安価でかつより外乱に強いAEセンサを実現することが容易となる。
また,LED25等を不等間隔に配置することにより,受波板12の振動が不均一なモードの場合などの感度を向上することができる。
【0034】
(その他の実施形態)
本実施形態は上記の実施形態に限られず拡張,変更可能であり,拡張,変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
100 AEセンサ
11 ケース
12 受波板
21(21a-21e) フォトリフレクタ
25 LED
251 発光(部)の中心
26 PT
261 受光(部)の中心
27 結合領域
31 オペアンプ
32 信号処理器
【技術分野】
【0001】
本発明は,アコースティック・エミッションを検出するアコースティック・エミッション検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物における損傷や経年劣化のモニタリングを目的として,AE(Acoustic Emission)を検知できる光ファイバドップラセンサ(FOD:Fiber Optic Doppler)が,用いられる(特許文献1参照)。
光ファイバドップラセンサは,光ファイバの一部を被測定物に固着させ,周波数f0の光波を入力する。光ファイバを通過する光波に生じるドップラ効果による変調fdを測定することで,AE(Acoustic Emission)を検知する。
この従来のAEセンサは,部品点数が多く,高価であり,センサのサイズが例えば,円板状では20mm,球状では40mmとなり,実用上問題となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−283469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は,簡略な構造で効果的にアコースティック・エミッションを検出できるアコースティック・エミッション検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係るアコースティック・エミッション検出器は,アコースティック・エミッションにより振動する受波板と,前記受波板に光を送出する発光素子と前記受波板からの反射光を電気信号に変換する受光素子とが結合してなる複数の光送受ユニットと,前記複数の光送受ユニットの受光素子の出力を加算する加算部と,を具備し,前記複数の光送受ユニットの発光素子が前記受波板の中心近傍に配置される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば,簡略な構造で効果的にアコースティック・エミッションを検出できるアコースティック・エミッション検出器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係るAEセンサ100の模式図である。
【図2】フォトリフレクタ21の詳細を表す上面図である。
【図3】AEセンサ100でのフォトリフレクタ21の配置を表す上面図である。
【図4】第2実施形態に係るAEセンサ200の模式図である。
【図5】AEセンサ200でのフォトリフレクタ21の配置を表す上面図である。
【図6】第2実施形態の変形例に係るAEセンサ300でのフォトリフレクタ21の配置を表す上面図である。
【図7】第3実施形態に係るAEセンサ400でのフォトリフレクタ21の配置を表す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下,図面を参照して,本実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は,第1の実施形態に係るAEセンサ100の模式図である。AEセンサ100は,アコースティック・エミッションを検出するアコースティック・エミッション検出器である。アコースティック・エミッションは,固体が塑性変形や破壊する際に,固体内にひずみの形で蓄えられていたエネルギーが弾性波(音波)の形で放出される現象である。AEセンサ100は,アコースティック・エミッションにより発生した音波を検出する。
【0009】
AEセンサ100は,ケース11,受波板12,フォトリフレクタ21a,21b,オペアンプ31,信号処理器32を有する。
ケース11は,例えば,略円筒形状を有し,受波板12,フォトリフレクタ21a,21b,オペアンプ31,信号処理器32等をその内部に保持する。
【0010】
受波板12は,アコースティック・エミッションにより振動する振動板である。受波板12は,略円板形状であり,ケース11の端部に固定(例えば,溶接)される。その結果,受波板12は,ケース11の内径r0においてアコースティック・エミッションに対応して振動する(振動領域)。受波板12の中心近傍において,受波板12の振動の振幅が大きい。後述のように,受波板12の振動領域の径r0に対して,r1/r0=0.2以下となる径r1の領域Aを受波板12の中心近傍とする。
【0011】
フォトリフレクタ21aおよび21bはそれぞれ,受波板12に光を送出する発光素子と受波板12からの反射光を電気信号に変換する受光素子とが結合してなる複数の光送受ユニットである。フォトリフレクタ21aおよび21bは,受波板12に対向するように,図示しない保持部材で保持される。
【0012】
フォトリフレクタ21aおよび21bは,図2に示すように,例えば,縦:1.0mm×横:1.4mm×高さ:0.6mmの寸法を有し,LED(Light Emitting Diode)25とPT(フォトトランジスタ(Photo Transistor))26を結合領域27で結合して構成される。LED25は,受波板12に光を送出する発光素子である。PT26は,受波板12からの反射光を電気信号に変換する受光素子である。PT26に替えて,フォトダイオードを用いることも可能であるが,フォトダイオードよりもフォトトランジスタの方が高感度であることから,本実施形態ではフォトトランジスタを用いている。
【0013】
フォトリフレクタ21aおよび21bのLED25の発光部(特に,発光部の中心251)から受波板12に光が照射される。受波板12はLED25からの光を反射する。受波板12よりの反射光は,フォトリフレクタ21aおよび21bのPT26の受光部(特に,受光部の中心261)で受光され,電気信号に変換される。このとき,受波板12の微小変動に対応して,フォトリフレクタ21aおよび21bのPT26での受信信号が変化する。
【0014】
なお,フォトリフレクタ21aのLED25から出射された光を21bのPT26で受光しても良く,フォトリフレクタ21bのLED25から出射された光を21aのPT26で受光しても良い。
【0015】
オペアンプ31は,抵抗Ra,Rb,Rkに接続されて,加算・増幅回路を構成する。この加算・増幅回路は,複数の光送受ユニットの受光素子の出力を加算する加算部として機能する。フォトリフレクタ21aおよび21bのPT26の2つの出力を加算することで,SN比の向上が図れる。加算・増幅回路は,AEセンサ100に内蔵されるプリアンプとしても機能する。
【0016】
信号処理器32は,加算・増幅回路から出力される信号の出力を調整する増幅器である。信号処理器32からの出力(複数のPT26の出力の加算・増幅した出力)の交流成分が受波板12の振動を反映した信号成分である。この交流成分の検出により,受波板12の振動,ひいてはアコースティック・エミッションの検出が可能となる。
【0017】
図3に,フォトリフレクタ21aとフォトリフレクタ21bの配置を示す。この図は,信号処理器32側からAEセンサ100を見た図となっており,見易さのために,オペアンプ31,信号処理器32を除外した状態を表している。
【0018】
フォトリフレクタ21a,21bのLED25は,受波板12の中心近傍(領域A内)に位置するように配置されている。受波板12の中心近傍は,図3に示す領域Aに対応し,既述の受波板12の振動領域の径r0に対して径r1の領域である。具体的には,r1/r0=0.2以下となる半径r1の領域Aである。
【0019】
フォトリフレクタ21a,21bのLED25は,受波板12の中心側に,PT26は,受波板12の中心より外側に,配置される。振動の振幅が大きい受波板12の中心に光を照射することが受波板12の微小振動(アコースティック・エミッション)の検出に効果的である。
【0020】
以上のように,LED25を受波板12の中心近傍(領域A内)に配置し,受波板12から反射された光を受光する2つのPT26の出力を加算している。即ち,LED25を受波板12の中心近傍に配置することで,受波板12の振動に起因するLED25からの光量の変動が大きくなる。また,フォトリフレクタ21a,21bからの出力を加算,SN比が向上する。この結果,小型で安価でかつより外乱に強いAEセンサを実現することが容易となる。
【0021】
(第2の実施の形態)
図4は,第2の実施形態のAEセンサ200の構成図である。AEセンサ200は,ケース11,受波板12,フォトリフレクタ21a〜21c,オペアンプ31,信号処理器32を有する。即ち,AEセンサ200は,3つのフォトリフレクタ21a〜21cを用いている。第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し,重複する説明は省略する。
【0022】
オペアンプ31は,抵抗Ra〜Rc,Rkに接続されて,加算・増幅回路を構成する。この加算・増幅回路は,フォトリフレクタ21a〜21cのPT26の3つの出力を加算し,SN比の向上が図れる。加算・増幅回路は,AEセンサ200に内蔵されるプリアンプとしても機能する。
【0023】
フォトリフレクタ21a〜21cは,受波板12に対向するように,図示しない保持部材で保持される。
図5に,フォトリフレクタ21a〜21cの配置を示す。この図は,信号処理器32側からAEセンサ200を見た図となっており,見易さのために,オペアンプ31,信号処理器32を除外した状態を表している。
【0024】
フォトリフレクタ21a〜21cのLED25の発光部の中心251が受波板12の中心Cから等距離に位置するように同心円(半径r2)上に三角状に並べて配置される。また,フォトリフレクタ21a〜21cのPT26の受光部の中心261が受波板12の中心Cから等距離に位置するように同心円(半径r3)上に三角状に並べて配置される。
【0025】
なお,発光部の中心251,受光部の中心261の配置には,例えば,半径の20%程度の幅が許容される。即ち,半径r1/r0=0.2以下となる半径r1の領域Aに,LED25およびPT26を配置すればよい。
【0026】
また,図6は第2の実施形態の変形例に係るAEセンサ300でのフォトリフレクタ21a〜21eの配置を示す図であり,5つのフォトリフレクタ21a〜21eを用いている。フォトリフレクタ21a〜21eが五角状に並べて配置される。
フォトリフレクタ21a〜21eのLED25の発光部の中心251が受波板12の中心Cから等距離に位置するように同心円(半径r2)上に五角状に並べて配置される。また,フォトリフレクタ21a〜21eのPT26の受光部の中心261が受波板12の中心Cから等距離に位置するように同心円(半径r3)上に五角状に並べて配置される。
【0027】
なお,この変形例においても,発光部の中心251,受光部の中心261の配置には,例えば,半径の20%程度の幅が許容される。即ち,半径r1/r0=0.2以下となる半径r1の領域Aに,LED25およびPT26を配置すればよい。
【0028】
以上のように,LED25の発光(部)の中心251を受波板12の中心から略等距離に配置し,受波板12から反射された光を受光する3つまたは5つのPT26の出力を加算している。即ち,LED25を受波板12の中心近傍に配置することで,受波板12の振動に起因するLED25からの光量の変動が大きくなる。また,フォトリフレクタ21a〜21c,または21a〜21eからの出力を加算,SN比が向上する。この結果,小型で安価でかつより外乱に強いAEセンサを実現することが容易となる。
【0029】
(第3の実施の形態)
図7は,第3の実施形態のAEセンサ400の構成図である。AEセンサ400は,ケース11,受波板12,フォトリフレクタ21a〜21c,オペアンプ31,信号処理器32を有する。第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し,重複する説明は省略する。
【0030】
フォトリフレクタ21a〜21cのLED25の発光部の中心251が受波板12の中心Cから等距離に位置するように同心円(半径r2)上に並べて配置される。一方,フォトリフレクタ21a〜21cのPT26の受光部の中心261は受波板12の中心Cから等距離に位置するように同心円(半径r3)上に並べて配置される。
【0031】
なお,発光部の中心251,受光部の中心261の配置には,例えば,半径の20%程度の幅が許容される。即ち,半径r1/r0=0.2以下となる半径r1の領域Aに,LED25およびPT26を配置すればよい。
【0032】
ここでは,同心円(半径r2)上でのLED25の発光部の中心251の間隔,同心円(半径r3)上でのPT26の受光部の中心261の間隔は一定ではない(不等間隔)。即ち,受波板12の中心Cに対する,LED25またはPT26のなす角度は一定ではない。
【0033】
以上のように,LED25の発光(部)の中心251を受波板12の中心から略等距離に配置し,受波板12から反射された光を受光する3つのPT26の出力を加算している。即ち,LED25を受波板12の中心近傍に配置することで,受波板12の振動に起因するLED25からの光量の変動が大きくなる。また,フォトリフレクタ21a〜21cからの出力を加算,SN比が向上する。この結果,小型で安価でかつより外乱に強いAEセンサを実現することが容易となる。
また,LED25等を不等間隔に配置することにより,受波板12の振動が不均一なモードの場合などの感度を向上することができる。
【0034】
(その他の実施形態)
本実施形態は上記の実施形態に限られず拡張,変更可能であり,拡張,変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
100 AEセンサ
11 ケース
12 受波板
21(21a-21e) フォトリフレクタ
25 LED
251 発光(部)の中心
26 PT
261 受光(部)の中心
27 結合領域
31 オペアンプ
32 信号処理器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アコースティック・エミッションにより振動する受波板と,
前記受波板に光を送出する発光素子と前記受波板からの反射光を電気信号に変換する受光素子とが結合してなる複数の光送受ユニットと,
前記複数の光送受ユニットの受光素子の出力を加算する加算部と,を具備し,
前記複数の光送受ユニットの発光素子が前記受波板の中心近傍に配置される
ことを特徴とするアコースティック・エミッション検出器。
【請求項2】
前記複数の光送受ユニットの個数が3以上であり,
前記複数の光送受ユニットの発光素子の発光部が第1の円弧上に配置される
ことを特徴とする請求項1記載のアコースティック・エミッション検出器。
【請求項3】
前記複数の光送受ユニットの発光素子の発光部が,前記受波板の中心から略等距離に配置される
ことを特徴とする請求項2記載のアコースティック・エミッション検出器。
【請求項4】
前記複数の光送受ユニットの受光素子の受光部が,前記第1の円弧より径の大きい第2の円弧上に配置される
ことを特徴とする請求項2または3に記載のアコースティック・エミッション検出器。
【請求項1】
アコースティック・エミッションにより振動する受波板と,
前記受波板に光を送出する発光素子と前記受波板からの反射光を電気信号に変換する受光素子とが結合してなる複数の光送受ユニットと,
前記複数の光送受ユニットの受光素子の出力を加算する加算部と,を具備し,
前記複数の光送受ユニットの発光素子が前記受波板の中心近傍に配置される
ことを特徴とするアコースティック・エミッション検出器。
【請求項2】
前記複数の光送受ユニットの個数が3以上であり,
前記複数の光送受ユニットの発光素子の発光部が第1の円弧上に配置される
ことを特徴とする請求項1記載のアコースティック・エミッション検出器。
【請求項3】
前記複数の光送受ユニットの発光素子の発光部が,前記受波板の中心から略等距離に配置される
ことを特徴とする請求項2記載のアコースティック・エミッション検出器。
【請求項4】
前記複数の光送受ユニットの受光素子の受光部が,前記第1の円弧より径の大きい第2の円弧上に配置される
ことを特徴とする請求項2または3に記載のアコースティック・エミッション検出器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2012−163435(P2012−163435A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24032(P2011−24032)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(395002434)東芝変電機器テクノロジー株式会社 (59)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(395002434)東芝変電機器テクノロジー株式会社 (59)
【Fターム(参考)】
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