説明

アザシチジン類似体およびその使用

本発明は、以下のような式(I)の化合物またはその薬学的な塩に関し、式中、RはH、RC(O)、RCHOC(O)、またはRCHNHC(O)であり、Rは、交差する断続線がRiを式(I)の分子に連結して形成される結合を示すところであり、RおよびRは、独立してOHまたはHであり、ただしRおよびRは同時にOHではなく、Rは、HC(O)、RCHOC(O)、またはRCHNHC(O)であり、ただしRおよびRは同時にHではなく、Rは、一般式:CH−(CH−(CH=CH−CH−CH=CH−(CH−を有し、kは0〜7の整数であり、mは0〜2の整数であり、nは0〜10の整数である。これらの化合物の製造および使用方法も開示される。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によってその全体が本明細書に援用される2007年9月26日に出願された米国仮特許出願第60/975,437号の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、アザシチジン類似体およびその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
DNAおよびRNAの構成要素として見出される天然ヌクレオシドの誘導体であるヌクレオシド類似体は初期には抗結核阻として評価されていたが、このような化合物は、人間の癌またはウイルス性疾患の臨床治療において有効である。このような化合物は40年以上の間市場において登録されており、現在、約35の製品が日常的に使用されている。以下の表1に示される天然ヌクレオシドは、2種類の窒素塩基、すなわちプリン(アデニンおよびグアニンで例示される)およびピリミジン(チミン、ウラシル、およびシトシンで例示される)と、単糖のリボースまたはデオキシリボースとで構成される。
【0004】
【表1】

【0005】
天然ヌクレオシドは全て、以下の式Aに示されるように、いわゆるβ−D配置で存在する。糖環の窒素塩基およびヒドロキシ−メチル側鎖は、両方とも糖環平面の同じ側(cis)にある。
【化1】

【0006】
抗癌または抗ウイルス活性を有するヌクレオシド誘導体を得るために、窒素塩基および/または単糖のいずれかにおける化学修飾が行われている。例えば、窒素塩基における、ハロゲン原子または他の官能基の付加、追加の窒素原子の挿入、もしくはリボースからアラビノースへの単糖環の立体化学的変化またはデオキシリボースのためのヒドロキシル基の除去によって、潜在的な治療利益を有する製品をもたらすことができる。多くの製品では単糖環は保存されているが、一方で、糖環が鎖に変化されている製品もある。ヌクレオシド類似体は、中位〜優れた水溶解度を有する小分子である。
【0007】
世界的なAIDSの蔓延のためにヌクレオシド類似体の分野に投入された広範な研究および開発努力は、作用のメカニズム、化学修飾による活性プロファイルの変化などの基礎知識および理解を支持し、癌治療の分野にも関連する。
【0008】
ヌクレオシド類似体を含む多くの薬物に関する一般的な弱点は、問題となっている実際の疾患の治療のための活性が低く、特異性が劣ることである。これらの問題のいくつかは原薬自体の固有の活性に関係し、いくつかは特定の耐性メカニズム(患者に固有であるか、あるいは治療中に獲得される、例えば、癌治療における多剤耐性(MDR))に関係し得る。いくつかの問題は、特定のあまり良くない輸送または細胞取り込み、および活性化メカニズムに関係し得る。いくつかの問題は、薬物の急速な不活性化および/または排泄に関係し得る。
【0009】
ヌクレオシド類似体の効力は、大部分は、天然ヌクレオシドを模倣するその能力に依存し、従って、ウイルスおよび/または細胞酵素と相互作用し、核酸の代謝における重要な過程を妨害または阻害する。その抗ウイルスまたは抗癌活性を発揮するために、ヌクレオシド類似体は、ウイルスおよび/または細胞キナーゼの作用によって、その一リン酸および二リン酸を介してその対応する三リン酸に転換されなければならない。原則として、三リン酸は活性剤であるが、いくつかの製品、例えばゲムシタビンについては、二リン酸でも臨床的に有意な効果を発揮し得る。
【0010】
病的、癌性またはウイルス感染の細胞または組織に到達するために、経腸投与または非経口投与の後、ヌクレオシド類似体は有利な薬物動態学的特性を有さなければならない。投与された薬物の急速な排泄に加えて、多くのヌクレオシド類似体は、血流中および組織内の両方において非活性化され得る。例えば、シトシン誘導体は、一リン酸レベルでも、デアミナーゼと呼ばれる種類の酵素の作用により急速に脱アミノ化されて、不活性ウラシル類似体になり得る。多くのヌクレオシド類似体の細胞取り込み、そしてそれにより良好な治療効力は、膜結合型ヌクレオシド輸送タンパク質(濃縮型および拡散型ヌクレオシドトランスポーターと呼ばれる)に強く依存する。従って、このような特異的な取り込みメカニズムに依存しない化合物が探求される。特に抗癌分野におけるさらにもう1つの活性制限因子は、細胞修復メカニズムである。抗癌性ヌクレオシド類似体一リン酸は、細胞DNAに取り込まれる際に、p53タンパク質に関連されるエキソヌクレアーゼ活性のために癌細胞DNAから除去されてはならない。しかしながら、正常細胞のDNAからのヌクレオシド類似体の除去は、薬物の副作用を制限するために有益である。
【0011】
長年にわたって、活性制限特性のいくつかまたは多くをかなりの程度まで克服する多くのヌクレオシド類似体が開発されてきた。一例として、アシクロビル(ACV)は、高い特異性を有する化合物として例示することができる。ACV−一リン酸はウイルスキナーゼによってのみ形成することができ、これは非感染細胞ではACVを活性化できないことを意味する。この事実にもかかわらず、ACVは、特に活性な製品ではない。ヌクレオシド類似体の活性化における頻繁な律速段階を回避するために、ヌクレオシド類似体一リン酸、シドホビルなどのいくつかのホスホン酸塩、さらに一リン酸製品の細胞内形成が開発されている。経口取込みを容易にするため、または体内での有利な薬物動態を確実にするために、ヘプセラなどの特定のプロドラッグが作られている。
【0012】
臨床的有用性の増強を促進するためにヌクレオシド類似体に成された構造変化に加えて、活性を改善するためにさらなる修飾が行われている。脂質部分の付加から得られる修飾ヌクレオシド類似体のいくつかの例がある(米国特許第6,153,594号、同第6,548,486号、同第6,316,425号、および同第6,384,019号、欧州特許出願公開第A−56265号および同A−393920号、ならび国際公開第99/26958号パンフレット)。これは、例えば、エステル、アミド、カルボネート、またはカルバメート結合による脂肪酸の連結によって達成することができる。ヌクレオシド類似体のリン脂質誘導体などのより精巧な製品を作ることができる。Eur J Pharm Sci 11b Suppl 2: 15-27(2000)、欧州特許第545966号、カナダ特許第2468099号、ならびに米国特許第6,372,725号および同第6,670,341号を参照されたい。このような類似体は、DNA、RNA、またはレトロウイルスによって生じる感染症の治療および予防に特に適した抗ウイルス活性を有することが記載されている。これらは、悪性腫瘍の治療にも適している。ヌクレオシド類似体の脂質誘導体は、いくつかの目的を果たすことができる。これらは、デアミナーゼに対する基質ではないプロドラッグと見なすことができ、それにより、血流中での輸送の間、ヌクレオシド類似体は非活性化から保護される。また脂質誘導体は、細胞膜を横切ってより効率的に輸送することもでき、その結果、ヌクレオシド類似体の細胞内濃度が高められる。また脂質誘導体は、腫瘍ターゲティングのために設計された皮膚調製物、経口製品(米国特許第6,576,636号および国際公開第01/18013号パンフレットを参照)、またはリポソームなどの特定の製剤(米国特許第5,223,263号を参照)において使用するためにもより適している。
【0013】
単糖環の保存β−D配置を有するヌクレオシド類似体、または非環状側鎖を有するヌクレオシド類似体に関して、抗ウイルスまたは抗癌活性は、一価不飽和ω−9C18およびC20脂肪酸の脂質誘導体の形成によって最も効率的に改善され得ることが実証されている。Antimicrobial Agents and Chemotherapy, Vol., 53-61(1999)、Cancer Research 59: 2944-2949(1999)、Gene Therapy, 5: 419-426(1998)、Antiviral Research, 45: 157-167(2000)、およびBiochemical Pharmacology, 67: 503-511(2004)を参照されたい。好ましい一価不飽和誘導体は多価不飽和対応物よりも活性であるだけでなく、より結晶性であると共に脂質鎖の酸化に対して化学的に安定である。従って、これらは、化学的および薬学的な製造の観点からより有利な化合物である。また、一価不飽和ω−9C18およびC20脂肪酸は、多数の生物学的に活性な非ヌクレオシド化合物の治療活性の改善に適していることも実証されている(欧州特許第0977725号を参照されたい)。
【0014】
ヌクレオシド類似体の比較的新しいサブグループは、いわゆるaza−C誘導体である。この種類の化合物では、ピリミジン塩基の5位のCH基は、以下の式Bに示されるように窒素原子と交換されている。
【化2】

【0015】
異常なDNAメチル化によって発現停止された腫瘍抑制遺伝子は、これらの新規の化学療法薬による再活性化のための潜在的なターゲットである。DNAメチル化の強力な阻害剤および抗白血病剤のアザシチジンおよび5−アザ−2’−デオキシシチジン誘導体(5−aza−C、5−aza−CdR、デシタビン)は、サイレント腫瘍抑制遺伝子を再活性化することができる。高濃度において、化合物は細胞毒性であるが、より低い濃度では、低メチル化が細胞株の分化をもたらす。化合物は、デオキシシチジンキナーゼによる代謝活性化を必要とし、DNAメチルトランスフェラーゼの阻害を生じる。これらの誘導体の治癒可能性の1つの障害は、シチジンデアミナーゼ(CD)によるインビボでのその急速な不活性化である。水溶液中での不安定性およびその副作用プロファイルも臨床活性を限定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、従来技術におけるこれらのおよびその他の欠点を克服することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の概要
本発明の1つの態様は、式(I)
【化3】


の化合物またはその薬学的な塩に関し、式中、Rは、H、RC(O)、RCHOC(O)、またはRCHNHC(O)であり、Rは、
【化4】


であり、交差する断続線は、Rを式(I)の分子に連結して形成される結合を示し、RおよびRは、独立してOHまたはHであり、ただしRおよびRは同時にOHではなく、Rは、H、RC(O)、RCHOC(O)、またはRCHNHC(O)であり、ただしRおよびRは同時にHではなく、Rは、一般式:
CH−(CH−(CH=CH−CH−CH=CH−(CH−を有し、kは0〜7の整数であり、mは0〜2の整数であり、nは0〜10の整数である。
【0018】
本発明のもう1つの態様は、式(I)の化合物、ならびに薬学的な賦形剤、希釈剤、および/またはキャリアを含む医薬組成物に関する。
【0019】
本発明のさらなる態様は、新生物状態について対象を治療する方法に関する。この方法は、新生物状態を有する対象を選択することと、上記のような式(I)の化合物またはその薬学的な塩を、対象の新生物状態を治療するために有効な条件下で対象に投与することとを含む。
【0020】
本発明のさらなる態様は、炎症状態について対象を治療する方法に関する。この方法は、炎症状態を有する対象を選択することと、上記のような式(I)の化合物またはその薬学的な塩を、対象の炎症状態を治療するために有効な条件下で対象に投与することを含む。
【0021】
緩衝液および血漿中でのAza−Cの不安定性はよく知られている(参照によってその全体が本明細書に援用されるIsraili et al., Cancer Research 36, 1453-1461(1976)、Rudek et al., J Clin Oncol, 23:17, 3906-3911(2005)、Rustum et al., J Chromat, 421: 12, 387-91(1987)、Zhao et al., J Chromat B, 813, 81-88(2004)を参照)。臨床血漿サンプル中で1.50±2.30時間の平均末端半減期が、Aza−Cについて報告されている(参照によってその全体が本明細書に援用されるRudek et al., J Clin Oncol, 23:17, 3906-3911(2005)を参照)。インビトロでは、−60℃でも4.5日貯蔵した後には20%のAza−Cの損失が示され、室温で貯蔵したときには0.5時間以内に10%の損失が示される(参照によってその全体が本明細書に援用されるZhao et al., J Chromat B , 813, 81-88(2004)を参照)。Aza−Cの主な不安定性は、5−アザ−ピリミジン環の急速な(第1段階は可逆的である)開環(その後、ギ酸の脱離を伴う)によるものと考えられる(参照によってその全体が本明細書に援用されるChan et al., J Pharma Sci, 68;7, 807-12(1979)を参照)。その他の分解経路は4位のアミノ基の脱アミノ化およびグリコシド結合の加水分解であると考えられ、D−リボースおよび5−アザシトシンが得られる。意外にも、好ましいAza−C脂質誘導体は、Aza−C自体よりも著しく良好な血漿安定性プロファイルを有することが分かった。化合物は、実験条件下、室温で少なくとも4時間、ブランクのヒト血漿マトリックス中で安定であり(94%以上の初期の残存パーセント)、血漿タンパク質の沈殿後、抽出後の上澄み中に有意な分解産物は観察されなかった。好ましい脂質化合物の血漿安定性は、さらに、37℃で貯蔵した場合にも実験した。脂質側鎖がAza−Cに結合されると、化合物のAza部分の開環または他の分解は著しく低減されることが示される。
【0022】
Aza−Cの急速な分解は、Aza−Cの臨床用途における難点である。Aza−C自体よりも脂質誘導体の血漿安定性を高めると、高くそして持続した脂質誘導体の患者血漿レベルを与えることができる。これにより、Aza−C自体よりも良好な組織/器官/腫瘍分布、ならびに薬物への細胞暴露および薬物の取込みがまず得られ、続いて、Aza−C−5’−エステル結合の細胞内加水分解の後に、より良好なAza−Cへの腫瘍細胞DNA暴露を得ることができる。
【0023】
本発明の実施形態は、アザシチジンおよびデオキシシチジン(例えば、5−アザ−2’−デオキシシチジン)の修飾により、アザシチジンおよびデオキシシチジン(例えば、5−アザ−2’−デオキシシチジン)と比較して驚くほど異なる特性を有する新規の分子を作る。これは、血液悪性腫瘍に限定されるアザシチジンおよびデオキシシチジン(例えば、5−アザ−2’−デオキシシチジン)の抗癌活性を遥かに超える活性を有する一連の化合物を作る。これらの新規の化合物は、乳癌および子宮頸癌を含む広範囲の固形腫瘍に対して抗癌効力を有する。また化合物は治療耐性を有する癌に対しても驚くほど活性であり、従って、現在の治療選択肢が限定されている固形腫瘍において治療上の利点を提供することができる。本発明の実施形態は、選択肢および効力が限定されている癌を治療し、満たされない要求をかなえるための治療用途を有する。
【0024】
これらの化合物は、限られた暴露の後、より早期の活性の発現を示し、そのため、臨床環境においてほんの短い治療期間の後に有効であり得る。これは、親薬物と比較して短く、頻度の少ない治療的暴露および薬物関連毒性の低下につながり得る。これは、治療指数の向上を提供し得る。
【0025】
脂質(エステル、アミド、カルバメートおよびカルボネートを含む)成分の添加による構造の変化はアゾールシチジン環を保存し、従って、エピジェネティックメカニズムにおける分子の効果も保存する。エピジェネティック調節は、癌および炎症における遺伝子発現を変更するための重要なメカニズムを提供する。これらの新規の化合物はアザシチジンよりも低い濃度で活性を有し、従ってより強力である。活性スペクトルが変化されたこれらの化合物は、固形腫瘍および炎症性疾患におけるエピジェネティックターゲットを調節することができる。
【0026】
エピジェネティックメカニズムは、炎症誘発状態(肺、結合組織、胃腸管および脈管構造の炎症状態を含むがこれらに限定されない)において重要である。これらの化合物は、エピジェネティックメカニズムのターゲッティングにより、これらの疾患の原因である炎症過程を低減または逆戻りさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】Aza−cおよび5−アザ−C−5’−ペトロセリン酸の細胞毒活性についての時間プロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
本発明の1つの態様は、式(I)
【化5】


の化合物またはその薬学的な塩に関し、式中、Rは、H、RC(O)、RCHOC(O)、またはRCHNHC(O)であり、Rは、
【化6】


であり、交差する断続線は、Rを式(I)の分子に連結して形成される結合を示し、RおよびRは、独立してOHまたはHであり、ただしRおよびRは同時にOHではなく、Rは、H、RC(O)、RCHOC(O)、またはRCHNHC(O)であり、ただしRおよびRは同時にHではなく、そしてRは、一般式:
CH−(CH−(CH=CH−CH−CH=CH−(CH−を有し、kは0〜7の整数であり、mは0〜2の整数であり、nは0〜10の整数である。
【0029】
好ましい実施形態では、kは4であり、そしてnは10である。特定の実施形態では、Rは、
【化7】


であり、交差する断続線は、Rを式(I)の分子に連結して形成される結合を示す。いくつかの実施形態では、RはHでよい。特定の実施形態では、RはRC(O)であり、kは4であり、mは0であり、nは10であり、RはHであり、RはOHであり、そしてRはHである。
【0030】
本発明のより広範な態様は、式(I)’
【化8】


の化合物またはその薬学的な塩に関し、式中、RはH、RC(O)、RCHOC(O)、またはRCHNHC(O)であり、Rは、
【化9】


であり、交差する断続線は、Rを式(I)’の分子に連結して形成される結合を示し、RおよびRは、独立してOHまたはHであり、ただしRおよびRは同時にOHではなく、Rは、H、RC(O)、RCHOC(O)、またはRCHNHC(O)であり、ただしRおよびRは同時にHではなく、そしてRは、C〜C26アルケニルである。
【0031】
式(I)’の化合物の好ましい実施形態では、kは4であり、そしてnは10である。特定の実施形態では、Rは、
【化10】


であり、交差する断続線は、Rを式(I)’の分子に連結して形成される結合を示す。いくつかの実施形態では、RはHでよい。その他の実施形態では、RはRC(O)であり、kは4であり、mは0であり、nは10であり、RはHであり、そしてRはOHである。特定の実施形態では、RはC〜C26アルケニルである。
【0032】
本発明のもう1つの態様は、式(I)の化合物、ならびに薬学的な賦形剤、希釈剤、および/またはキャリアを含む医薬組成物に関する。
【0033】
本発明の剤は、経口で、非経口、例えば皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内で、鼻腔内点滴注入によって、あるいは粘膜(鼻、咽喉、および気管支などの)への塗布によって投与することができる。これらは単独で投与されても、適切な薬学的キャリアと共に投与されてもよく、錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、または乳剤などの固体または液体形態であり得る。
【0034】
本発明の活性剤は例えば不活性希釈剤または同化可能な食用キャリアと共に経口投与されてもよいし、あるいはハードまたはソフトシェルカプセルに包まれてもよいし、あるいは錠剤に圧縮されてもよいし、あるいは食餌療法の食物に直接加えられてもよい。治療的な経口投与の場合、これらの活性剤は賦形剤と合わせられ、錠剤、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップなどの形態で使用され得る。このような組成物および調製物は、少なくとも0.1%の活性剤を含有しなければならない。これらの組成物中の活性剤の割合は当然ながら変わり得るが、単位重量の約2%〜約60%の間が便利であり得る。このような治療的に有用な組成物中の活性剤の量は、適切な投薬量が得られるようなものである。本発明に従う好ましい組成物は、経口投薬単位が約1〜250mgの間の活性剤を含有するように調製される。
【0035】
錠剤やカプセルなどは、トラガカントガム、アカシア、コーンスターチ、またはゼラチンなどの結合剤、リン酸二カルシウムなどの賦形剤、コーンスターチ、じゃがいもデンプン、アルギン酸などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、およびスクロース、ラクトース、またはサッカリンなどの甘味剤を含有してもよい。投薬単位形態がカプセルの場合、上記の種類の材料に加えて脂肪油などの液体キャリアを含有してもよい。
【0036】
その他の種々の材料はコーティングとして、あるいは投薬単位の物理的な形態を変更するために存在し得る。例えば、錠剤は、セラック、糖、またはその両方でコーティングすることができる。シロップは、活性成分に加えて、甘味剤としてのスクロース、防腐剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、染料、ならびにチェリーまたはオレンジフレーバーなどの風味料を含有し得る。
【0037】
これらの活性剤は非経口投与されてもよい。これらの活性剤の溶液または懸濁液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製することができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、および油中のこれらの混合物において分散液を調製することもできる。実例となる油は石油、動物、植物、または合成起源のものであり、例えばピーナッツ油、大豆油、または鉱油である。一般に、水、生理食塩水、デキストロースおよび関連の糖の水溶液、ならびにプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールは、特に注射可能な溶液のために好ましい液体キャリアである。通常の貯蔵および使用条件下では、これらの調製物は、微生物の成長を防止するために防腐剤を含有する。
【0038】
注射可能な用途に適した医薬品形態には、無菌水溶液または分散液と、注射可能な無菌溶液または分散液の即時調製のための無菌粉末とが含まれる。全ての場合において、形態は無菌でなければならず容易な注射可能性が存在する範囲で流体でなければならない。製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)、これらの適切な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒体であり得る。
【0039】
本発明の剤は、エアロゾルの形態で直接気道に投与されてもよい。エアロゾルとして使用するために、溶液または懸濁液中の本発明の剤は、適切な推進剤、例えばプロパン、ブタン、またはイソブタンのような炭化水素推進剤および従来の補助剤と一緒に、加圧エアロゾル容器内に充填され得る。また本発明の材料は、ネブライザーまたはアトマイザーなどにおいて非加圧形態で投与されてもよい。
【0040】
本発明のさらなる態様は、新生物状態について対象を治療する方法に関する。この方法は、新生物状態を有する対象を選択することと、上記のような式(I)の化合物またはその薬学的な塩を、対象の新生物状態を治療するために有効な条件下で対象に投与することとを含む。
【0041】
特定の実施形態では、新生物状態は癌性疾患である。癌性疾患は、固形腫瘍または血液癌または悪性腫瘍であり得る。癌性疾患は、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、または骨髄異形成症候群であり得る。
【0042】
特定の実施形態では、固形腫瘍は、乳房、卵巣、前立腺、脳、膀胱、および肺組織などの組織の癌であり得る。
【0043】
本発明のさらなる態様は、炎症状態について対象を治療する方法に関する。この方法は、炎症状態を有する対象を選択することと、上記のような式(I)の化合物またはその薬学的な塩を、対象の炎症状態を治療するために有効な条件下で対象に投与することとを含む。
【0044】
特定の実施形態では、炎症状態は、肺、結合組織、胃腸管、または脈管構造の炎症状態である。
【0045】
本明細書において他で定義されない限り、本出願に関連して使用される科学および技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって他に必要とされない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。
【実施例】
【0046】
実施例1−試薬、細胞株、および細胞培養
細胞増殖試薬WST−1は、Roche Applied Science(Manheim, Germany)から入手し、PIおよびAnnexin V-FITCアポトーシスキットはBD Biosciences(Palo Alto, CA)から購入し、5−アザシチジン(5−AzaC)、臭化エチジウム(EB)、アクリジン・オレンジ(AO)、ニトロ・ブルー・テトラゾリウム(NBT)、13−酢酸12−ミリスチン酸ホルボール(TPA)は、Sigma Chemical Co(St.Louis, MO)から購入した。
【0047】
ヒト前骨髄球性白血病細胞株HL60、ヒト組織球性リンパ腫U937、ヒト慢性骨髄性白血病K562、ヒト急性T細胞ジャーカット、乳腺癌MCF−7、膀胱癌5637、前立腺癌DU−145は、American Type Culture Collectionから購入した。ジャーカットを除く全ての細胞株は、37℃で5%COの雰囲気中、10%の熱失活ウシ胎仔血清(FCS)、100U/mlのペニシリン、および100mg/mlのストレプトマイシンを補充したRPMI1640培地(Gibco(Glasgow, UK))中に保持した。ジャーカット細胞は、1.5g/Lの重炭酸ナトリウム、4.5g/Lのグルコース、10mMのピルビン酸ナトリウム、および10%のFCS、100U/mlのペニシリン、および100mg/mlのストレプトマイシンを補充したRPMI1640培地中で培養した。
【0048】
実施例2−細胞毒性アッセイ
5−アザシチジン脂質の細胞毒性は、生存細胞におけるミトコンドリアデヒドロゲナーゼによるテトラゾリウム塩WST−1(4−[3−(4−ロドフェニル)−2−(4−ニトロフェニル)−2H−5−テトラゾリオ]−1,3−ベンゼンジスルホネート)の切断に基づく比色分析アッセイによって決定した。種々の濃度の5−アザシチジン脂質を含むまたは含まない培地中、1×10/ml(HL60細胞)または1.25×10/ml(U937、K562およびジャーカット)の初期濃度で、細胞を96ウェル平底マイクロプレートに播種し、24〜72時間培養した。MCF−7、DU−145、および5637細胞(1×10/ml)をプレーティングし、24時間付着および延展させた。種々の濃度の5−アザシチジン脂質を添加し、さらに24〜72時間培養物を維持した。培養物をWST−1試薬と共に1時間インキュベートした。マイクロプレートリーダー(Bio-Tek Instruments、Elx800)により、650nmの参照波長を用いて450nmでホルマザンの産生を測定した。成長阻害は、未処理の細胞と比較して決定した(%)。IC50値は、CalcuSynソフトウェア(Biosoft)を用いて計算した。
【0049】
実施例3−アポトーシス細胞の定量化
Annexin V-FITCによる染色の後、形態学的基準および蛍光活性化細胞分取(FACS)を用いてアポトーシス細胞を定義した。形態学的分析のために、100μg/mlのAOおよび100μg/mlのEBを含有する1μlの保存液を25μlの細胞懸濁液に添加した。蛍光顕微鏡を用いてアポトーシス細胞およびアポトーシス小体を分析した。合計300の細胞をカウントした後、アポトーシス細胞の割合を計算した。FACS分析のために、2×105〜5×106の細胞をPBSで洗浄し、次に、製造業者により提供されるAnnexin V-FITCアポトーシス検出キットの使用説明書に従って培地結合試薬(medium-binding reagent)中のAnnexin V-FICSおよびヨウ化プロピジウム(PI)によって標識化した。FACSCAN(Becton Dickinson(San Jose, CA))において、FITCおよびPIの蛍光シグナルをそれぞれ518nmおよび620nmで検出した。Annexin V-FITC蛍光の対数をX軸に表示し、PI蛍光の対数をY軸に表示した。CellQuestプログラム(Becton Dickinson)によってデータを分析した。各分析について10,000の細胞事象を記録した。
【0050】
実施例4−細胞周期
遠心分離によって細胞をペレット状にし、PBSで2回洗浄し、70%(v/v)冷エタノール(−20℃)で固定し、4℃で少なくとも24時間貯蔵した。細胞をPBS中で洗浄した。細胞ペレットをPI/RNase染色溶液で染色した。細胞懸濁液を室温で30分間、暗所でインキュベートした。FACSCaliburフローサイトメトリー(Becton Dickinson(Mount View, CA))を用いて、DNA含量を決定した。細胞周期のSub−G1、G、SおよびG/M段階における細胞の割合は、DNAヒストグラム−フィッティングプログラム(Becton Dickinson)により決定した。1つのサンプルにつき最低10,000の事象を記録した。
【0051】
実施例5−Aza−C−5’−ペトロセリン酸エステルの合成
ペトロセリン酸(1.75mmol、494mg)をトルエン(3ml)中に溶解した。DMF(10μl)を添加した後、塩化オキサリル(3.6mmol、457mg)を室温で10分かけて添加した。3時間後、トルエンを真空除去した。
【0052】
Aza−C(1.57mmol、427mg)をDMA(6ml)中に懸濁させ、HCl(EtO中1M、2.0mmol、2.0ml)を添加し、室温で5分後にEtOを真空除去した。得られた濁った溶液を氷水浴中で冷却し、DMA(2ml)中に溶解した酸クロリドを40分かけて添加した。反応混合物を一晩攪拌しながら、温度をゆっくり室温にした。24時間後、約0.1mbarで溶媒を除去した。残渣を飽和NaHCO水およびEtOAc(各々25ml)間で分配させた。水相をさらに3×25mlのEtOAcで抽出した。有機相を合わせ、塩水で洗浄し、そして乾燥させた(MgSO)。溶媒を真空除去した後、フラッシュクロマトグラフィー(SiO、2.5、5、および10%のMeOHを含むCHCl)によって粗生成物(600mg)を精製した。最後に、生成物を約0.25mbarで一晩乾燥させた。収量:210mg(24%)。
【0053】
実施例6−Aza−C−5’−ペトロセライジン酸エステルの合成
ペトロセライジン酸(1.77mmol、500mg)をトルエン(3ml)中に溶解した。DMF(10μl)を添加した後、塩化オキサリル(3.6mmol、457mg)を室温で10分かけて添加した。3時間後、トルエンを真空除去した。
【0054】
Aza−C(1.75mmol、427mg)をDMA(6ml)中に懸濁させ、HCl(EtO中1M、2.0mmol、2.0ml)を添加し、室温で5分後にEtOを真空除去した。得られた濁った溶液を氷水浴中で冷却し、DMA(2ml)中に溶解した酸クロリドを2時間かけて添加した。反応混合物を一晩攪拌しながら、温度をゆっくり室温にし、次に30℃で2時間加熱した。室温まで冷却した後、反応混合物を飽和NaHCO水およびEtOAc(各々25ml)間で分配させた。水相をさらに3×25mlのEtOAcで抽出した。有機相を合わせ、水および塩水で洗浄し、そして乾燥させた(MgSO)。溶媒を真空除去した後、白色粉末としてエステルを得た。収量:500mg。
【0055】
実施例7−ヒトプール血漿における5−アザ−5’−ペトロセリン酸エステルの代謝安定性
5−アザ−C−5’−ペトロセリン酸エステルを、5つの濃度レベル(それぞれ、0.1、1、3、10、および30μM)においてヒトプール血漿中に加えた。37℃において振とうするウォーターバッチ中で混合物をインキュベートした。計画されたインキュベーション時間(0、15、30、60、および120分)に、インキュベーション溶液の一定分量(100μl)を3重(n=3)で抜き取り、0.1%のギ酸(300μl)を含有するアセトニトリルを用いて血漿タンパク質を直ちに沈殿させた。インキュベーションの1つの濃度(1μM)において、アッセイ緩衝液(PBS、pH7.4)中で試験化合物およびAza−Cを用いて負の対照を調製した。遠心分離の後、LC−MS−MS分析のために上澄みを直接導入した。表1を参照されたい。
【表2】

【0056】
実施例8−Aza−Cおよび5−アザ−C−5’−ペトロセリン酸の細胞毒性
Aza−Cおよび5−アザ−C−5’−ペトロセリン酸の細胞毒性は、乳癌細胞株MT−3およびアドリアブラスチン(adriablastin)耐性細胞株MT−3/ADRにおいて決定した。MT−3/ADRは、MDR−1/p−糖タンパク質を過剰発現する。2mMのグルタミンおよび10%のFBSを含むRPMI1640培地中、1つのウェルにつき5×10の細胞で、細胞を96ウェルプレートに播種した。細胞を24時間インキュベートした。試験化合物をDMSOに溶解し、使用の直前に培地中にさらに希釈した。1つの試験濃度につき6ウェルを用いた。細胞を試験化合物と共に24時間インキュベートした。20μlの新たに調製したMTT溶液を各ウェルに添加し、4時間インキュベートした。0.01μMから100μMの範囲の8つの異なる濃度に基づいてグラフで示される成長曲線からIC50値を決定した。結果は、表1に示される。MT−3乳癌細胞株ではAza−Cおよび5−アザ−C−5’−ペトロセリン酸について同様の活性が得られたが、MT−3/ADR耐性細胞株では、Aza−Cの活性が失われた。100μMまでの試験した濃度範囲において活性は観察されなかったが、5−アザ−C−5’−ペトロセリン酸は活性なままであり、耐性細胞株対非耐性MT−3株において同様のIC50値を有した。表2を参照されたい。
【表3】

【0057】
実施例9−Aza−Cおよび5−アザ−C−5’−ペトロセリン酸の抗増殖活性
Aza−Cおよび5−アザ−C−5’−ペトロセリン酸の抗増殖活性は、Hela変異子宮頸癌細胞株において24および72時間暴露して決定した。2mMのグルタミンおよび10%のFBSを含むRPMI1640培地中、1つのウェルにつき5×10の細胞で、細胞を96ウェルプレートに播種した。細胞を24および72時間インキュベートした。試験化合物をDMSOに溶解し、使用の直前に培地中にさらに希釈した。1つの試験濃度につき6ウェルを用いた。MTTアッセイを用いて細胞毒性を決定し、20μlの新たに調製したMTT溶液を各ウェルに添加し、4時間インキュベートした。0.01μMから100μMの範囲の8つの異なる濃度に基づいてグラフで示される成長曲線からIC50値を決定した。2つの化合物について72時間の長時間暴露では同様の細胞毒活性が得られたが、意外にも、5−アザ−C−5’−ペトロセリン酸の細胞毒性効果は、24時間暴露の後に既に存在していた。Aza−Cおよび5−アザ−C−5’−ペトロセリン酸に対して異なる時間プロファイルが観察され、5−アザ−C−5’−ペトロセリン酸については細胞毒性効果が急速に発現される。図1を参照されたい。
【0058】
実施例10−Aza−Cおよび5−アザ−C−5’−ペトロセリン酸について、癌細胞における細胞毒活性に対するヌクレオシドトランスポーター阻害の影響
細胞毒活性に対するヌクレオシドトランスポーター阻害の影響は、Aza−Cおよび5−アザ−C−5’−ペトロセリン酸について、Hela変異子宮頸癌細胞において評価した。拡散型ヌクレオシドトランスポーターhENT1およびhENT2の阻害剤としてジピリダモールを用いた。2mMのグルタミンおよび10%のFBSを含むRPMI1640培地中、1つのウェルにつき5×10の細胞で、細胞を96ウェルプレートに播種した。細胞を24時間プレインキュベートした。試験化合物を添加する30分前にジピリダモール(10μM)を細胞に添加した。試験化合物をDMSOに溶解し、使用の直前に培地中にさらに希釈した。1つの試験濃度につき6ウェルを用いた。細胞を試験化合物と共に72時間インキュベートした。20μlの新たに調製したMTT溶液を各ウェルに添加し、4時間インキュベートした。0.01μMから100μMの範囲の8つの異なる濃度に基づいてグラフで示される成長曲線からIC50値を決定した。結果は、表3に示される。ヌクレオシドトランスポート阻害剤ジピリダモールの添加によりAza−Cの活性は3倍低減され、これにより、Hela細胞におけるAza−Cの流入および流出が、ヌクレオシドトランスポーターhENT1およびhENT2にある程度依存することが示された。5−アザ−C−5’−ペトロセリン酸の細胞毒活性は保持されただけでなく、hENT1およびhENT2ヌクレオシドトランスポーターをジピリダモールの使用により遮断すると10倍に増大された。これは、ヌクレオシドトランスポーターの発現の欠如のためにAza−Cの活性が存在しない患者において特に重要であり得る。表3を参照されたい。
【表4】

【0059】
実施例11−アザシチジンまたは5−アザ−C−5’−ペトロセリン酸による処理後の乳癌細胞株におけるエストロゲン受容体β(ERβ)の遺伝子発現
エストロゲン受容体ベータの遺伝子発現(RNAレベルで決定)は、定量的リアルタイムPCR(TaqMan)によって決定した。MCF−7乳癌細胞をエストロゲン欠乏培地(2%のグルタミンおよび10%のチャコール−デキストラン処理ウシ胎仔血清を含む無フェノールレッドRPMI)中で成長させた。細胞を25cmのフラスコ内に播種し、1μMのアザシチジンまたは5−アザ−C−5’−ペトロセリン酸による処理の前に24時間付着させた。1つの未処理対照を対照として含ませた。化合物の暴露の5日後に細胞を回収し、これらをトリプシン処理(trypsination)により回収し、洗浄し、そして液体窒素中でショック凍結した。
【0060】
約10のショック凍結MCF−7細胞から全RNAを抽出し、RNA濃度および純度を測定し、TaqMan逆転写試薬(N808−0234)を用いてRNAをcDNAに転写した。標準プロトコールおよび予混合したPCR試薬を用いてリアルタイム定量化を実施した。プライマー−プローブミックスはApplied Biosystemsで注文した。ERβ(IDHs00230957_m1)およびハウスキーピング遺伝子ヒドロキシルメチルビランシンターゼHMBS(IDHs00609297_m1)。比較デルタデルタC法を用いて遺伝子発現を計算した。表4に示すように、5−Aza−C−5’−ペトロセリン酸に暴露後のERβの発現の誘発は、アザシチジンに暴露後のわずか2.51倍と比較して4.14倍である。これは、ホルモン感受性を修復できる耐ホルモン性腫瘍において高い関連性を有し得る。表4を参照されたい。
【表5】

【0061】
好ましい実施形態が本明細書において詳細に描写および説明されたが、本発明の趣旨から逸脱することなく種々の修飾、付加、置換などを行うことができ、従って、これらが以下の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲内にあると考えられることは当業者に明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】


(式中、
RはH、RC(O)、RCHOC(O)、またはRCHNHC(O)であり、
は、
【化2】


であり、交差する断続線は、Rを式(I)の分子に連結して形成される結合を示し、
およびRは、独立してOHまたはHであり、ただしRおよびRは同時にOHではなく、
は、H、RC(O)、RCHOC(O)、またはRCHNHC(O)であり、ただしRおよびRは同時にHではなく、
は、一般式:
CH−(CH−(CH=CH−CH−CH=CH−(CH−を有し、
kは0〜7の整数であり、
mは0〜2の整数であり、
nは0〜10の整数である)
の化合物またはその薬学的な塩。
【請求項2】
kが4である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが10である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
が、
【化3】


である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
がHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
RがRC(O)であり、Rが、
【化4】


であり、RがHであり、RがOHであり、RがHであり、kが4であり、mが0であり、nが10である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物、ならびに薬学的な賦形剤、希釈剤、および/またはキャリアを含む医薬組成物。
【請求項8】
新生物状態について対象を治療する方法であって、
新生物状態を有する対象を選択することと、
式:
【化5】


(式中、
RはH、RC(O)、RCHOC(O)、またはRCHNHC(O)であり、
は、
【化6】


であり、交差する断続線は、Rを式(I)の分子に連結して形成される結合を示し、
およびRは、独立してOHまたはHであり、ただしRおよびRは同時にOHではなく、
は、H、RC(O)、RCHOC(O)、またはRCHNHC(O)であり、ただしRおよびRは同時にHではなく、
は、一般式:
CH−(CH−(CH=CH−CH−CH=CH−(CH−を有し、
kは0〜7の整数であり、
mは0〜2の整数であり、
nは0〜10の整数である)
の化合物またはその薬学的な塩を、前記対象において新生物状態を治療するために有効な条件下で前記対象に投与することと
を含む方法。
【請求項9】
前記新生物状態が癌性疾患である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記癌性疾患が、固形腫瘍または血液癌または悪性腫瘍である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記癌性疾患が、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、または骨髄異形成症候群である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記固形腫瘍が、乳房、卵巣、前立腺、脳、膀胱、および肺からなる群から選択される組織の癌である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
kが4である、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
nが10である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】

【化7】


である、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
がHである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
RがRC(O)であり、Rが、
【化8】


であり、RがHであり、RがOHであり、RがHであり、kが4であり、mが0であり、nが10である、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
炎症状態について対象を治療する方法であって、
炎症状態を有する対象を選択することと、
式:
【化9】


(式中、
Rは、H、RC(O)、RCHOC(O)、またはRCHNHC(O)であり、
は、
【化10】


であり、交差する断続線は、Rを式(I)の分子に連結して形成される結合を示し、
およびRは、独立してOHまたはHであり、ただしRおよびRは同時にOHではなく、
は、H、RC(O)、RCHOC(O)、またはRCHNHC(O)であり、ただしRおよびRは同時にHではなく、
は、C〜C26アルケニルであり、ここでRは、一般式:
CH−(CH−(CH=CH−CH−CH=CH−(CH−を有し、
kは0〜7の整数であり、
mは0〜2の整数であり、
nは0〜10の整数である)
の化合物またはその薬学的な塩を、前記対象において炎症状態を治療するために有効な条件下で前記対象に投与することと
を含む方法。
【請求項19】
前記炎症状態が、肺、結合組織、胃腸管、または脈管構造の炎症状態である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
kが4である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
nが10である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
が、
【化11】


である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
がHである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
RがRC(O)であり、Rが、
【化12】



であり、RがHであり、RがOHであり、RがHであり、kが4であり、mが0であり、nが10である、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−540556(P2010−540556A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527140(P2010−527140)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/077673
【国際公開番号】WO2009/042767
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(510076052)
【出願人】(510076063)クラビス ファーマ エーエスエー (1)
【Fターム(参考)】