アシストグリップ
【課題】表面に溝部が形成されている場合において、グリップ本体の表面に水圧転写により塗膜層を形成する際、水圧転写不良の発生を防止できるアシストグリップを提供する。
【解決手段】グリップ本体3には、表面に溝部33が形成され、表面全体に水圧転写による塗膜層7が形成されている。また、グリップ本体3の長手方向両端部分には、取付部材5を収容する取付凹部31が溝部33と連通するように形成されている。上記塗膜層7は、グリップ本体3を取付凹部31と溝部33との連通部分としての開放口33aが上を向くようにして水中に没入させ、溝部33と塗膜13との間にあるエアを上記開放口33aに導き、該開放口33aから取付凹部31を経て上記エアが大気中に確実に排出されるようにして、水面w1に浮かんでいる塗膜13を上記グリップ本体3の表面に水圧転写することで適正に形成される。
【解決手段】グリップ本体3には、表面に溝部33が形成され、表面全体に水圧転写による塗膜層7が形成されている。また、グリップ本体3の長手方向両端部分には、取付部材5を収容する取付凹部31が溝部33と連通するように形成されている。上記塗膜層7は、グリップ本体3を取付凹部31と溝部33との連通部分としての開放口33aが上を向くようにして水中に没入させ、溝部33と塗膜13との間にあるエアを上記開放口33aに導き、該開放口33aから取付凹部31を経て上記エアが大気中に確実に排出されるようにして、水面w1に浮かんでいる塗膜13を上記グリップ本体3の表面に水圧転写することで適正に形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内部に設けられ、乗降時や車体が揺れた時に乗員が把持するアシストグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に開示されているように、自動車内部のルーフ側部に装着されるアシストグリップが知られている。該アシストグリップは、長手方向両端が同じ方向に湾曲して略コ字状をなすグリップ本体と、該グリップ本体をルーフ側部に取り付ける取付部材とを備えており、上記グリップ本体は、ルーフ側部に取り付けられた取付部材に回動可能に軸支されている。そして、不使用時には、グリップ本体は付勢部材によりルーフ側部に沿う状態に回動し、その状態で維持されるようになっており、使用時には、乗員は付勢部材の付勢力に抗してグリップ本体を回動させて、該グリップ本体をルーフ側部から突出する状態にして使用するようになっている。
【0003】
また、特許文献2に開示されているように、部材の表面に水圧転写により塗膜層を形成して部材を加飾する方法が知られている。この水圧転写の要領は、水溶性フィルムに塗膜が形成された転写フィルムを塗膜が上面になるように水面に浮かべて上記水溶性フィルムを溶解させ、水面に浮かんでいる塗膜に部材の表面を押し当てて部材を水中に没入させることにより、没入時に受ける水圧で部材の表面に塗膜を転写して塗膜層を形成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−205998号公報(段落0011欄、図11)
【特許文献2】特開2008−254290号公報(段落0024欄、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のようなアシストグリップに特許文献2の如く水圧転写により加飾を施す場合、意匠性を高める等の理由によりアシストグリップの表面に溝部が形成されていると、アシストグリップを水中に没入した際に、溝部と塗膜との間に入り込んだエアは外部に抜けにくく、エアを閉じこめたまま塗膜層が形成されてしまい、転写不良による見栄えの悪い不良品となってしまう。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アシストグリップ本体の表面に溝部が形成されている場合において、水圧転写不良の発生を防止できるアシストグリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、水圧転写時にグリップ本体表面の溝部にエアが閉じ込められないようにしたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、表面に溝部が形成され、且つ、表面全体に水圧転写による塗膜層が形成されたグリップ本体と、該グリップ本体の長手方向両端部分に設けられ、該グリップ本体を車体に取り付ける取付部材とを備えたアシストグリップにおいて、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明では、上記グリップ本体には、エア逃がし部が上記溝部に連通するように形成され、上記塗膜層は、上記グリップ本体をエア逃がし部と溝部との連通部分が上を向くようにして水中に没入させ、水面に浮かんでいる塗膜を上記グリップ本体の表面に水圧転写することで形成されることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、上記グリップ本体は、その長手方向に延びる把持部と、該把持部の両端に一体に形成され上記取付部材が設けられる脚部とを備え、上記脚部には、上記取付部材を収容する取付凹部が形成されて、該取付凹部により上記エア逃がし部が構成されていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、第1の発明において、上記グリップ本体は、その長手方向に延びる把持部と、該把持部の両端に一体に形成され上記取付部材が設けられる脚部とを備え、上記把持部の内部には、グリップ本体の長手方向に延びる中空部が形成され、該中空部は連通孔を介して上記溝部に連通していて、該中空部により上記エア逃がし部が構成されていることを特徴とする。
【0012】
第4の発明では、第2の発明において、上記把持部の内部には、グリップ本体の長手方向に延びる中空部が形成され、該中空部は、連通孔を介して上記溝部に連通するとともに貫通孔を介して上記取付凹部に連通していることを特徴とする。
【0013】
第5の発明では、第3の発明において、上記脚部には、上記取付部材を収容する取付凹部が形成され、上記中空部は、貫通孔を介して上記取付凹部に連通していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明では、水圧転写時に溝部と塗膜との間にあるエアが、水圧によってグリップ本体に押し付けられた塗膜により没入方向とは反対側に押され、エア逃がし部と溝部との上向き連通部分を経てエア逃がし部に排出されるようになる。したがって、水圧転写時に溝部と塗膜との間にエアが閉じ込められず、塗膜層を適正に形成することができる。
【0015】
第2の発明では、アシストグリップを車体に取り付ける際に取付部材が収容される取付凹部は、大気に開放されているため、水圧転写時に溝部と塗膜との間にあるエアが該取付凹部に排出されるので、エア逃がし部をグリップ本体に別途追加形成する必要がなく、シンプルな構造のアシストグリップを安価に提供できる。
【0016】
第3の発明では、例えば、アシストグリップの軽量化を目的として形成された中空部は容積が比較的大きく、このような中空部に水圧転写時に溝部と塗膜との間にあるエアを連通孔を経て容易に排出することができるので、第2の発明のように、溝部を取付凹部に連通させる必要がなく、例えばグリップ本体の把持部周面に溝部を形成するような場合に効果的である。
【0017】
第4の発明では、水圧転写時に溝部と塗膜との間にあるエアは連通孔、中空部及び貫通孔を経て取付凹部から大気中に確実に排出されるようになるので、例えば中空部の容積を小さくしても水圧転写時の塗膜層を適正に形成することができ、中空部の容積を小さくしてグリップ本体の把持部の剛性を高く保ちたいような場合に効果的である。
【0018】
第5の発明では、水圧転写時に溝部と塗膜との間にあるエアを連通孔、中空部及び貫通孔を経て取付凹部に排出するので、溝部と塗膜との間のエアがさらに容易に抜け易くなり、転写不良を確実になくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態1に係るアシストグリップの斜視図であり、図1(a)は、不使用時の状態を示した図であり、図1(b)は、使用時の状態を示した図である。
【図2】図2(a)は、図1のグリップ本体を背面側から見た斜視図であり、図2(b)は、図2(a)のD部を拡大した図である。
【図3】図2におけるグリップ本体に水圧転写する工程図であり、図3(a)は、グリップ本体を横倒しにした場合の正面図であり、図3(b)は、図3(a)の側面図である。
【図4】図3の水圧転写工程からさらに工程が進行した水圧転写工程図であり、図4(a)は、図3(b)のA−A線断面図であり、図4(b)は、塗膜が図4(a)のグリップ本体表面に転写されている途中の状態を示し、図4(c)は、塗膜が図4(b)のグリップ本体表面全体に転写された状態を示す。
【図5】本発明の実施形態2における図1(a)相当図である。
【図6】本発明の実施形態2における図2相当図である。
【図7】図6(a)におけるB−B線断面図である。
【図8】本発明の実施形態2における図3相当図である。
【図9】本発明の実施形態2における図4相当図であり、図9(a)は、図8のC−C線断面図であり、図9(b)は、塗膜が図9(a)のグリップ本体表面に転写されている途中の状態を示し、図9(c)は、塗膜が図9(b)のグリップ本体表面全体に転写された状態を示す。
【図10】本発明の実施形態3における図1(a)相当図である。
【図11】本発明の実施形態3における図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
図1及び図2は、本発明の実施形態1に係るアシストグリップ1を示す。該アシストグリップ1は、長手方向両端部分が同じ方向に湾曲して略コ字状をなす樹脂製のグリップ本体3と、該グリップ本体3の長手方向両端部分に設けられ、該グリップ本体3を車体に取り付ける当該グリップ本体3と別体の樹脂製取付部材5とを備えている。上記グリップ本体3は、取付部材5に回動可能に軸支されるとともに、乗員の不使用時は、図1(a)に示すように、図示しない捻りバネ等の付勢手段により車室内側壁に沿う状態に格納維持され、乗員の使用時は、図1(b)に示すように、付勢部材の付勢力に抗して上記グリップ本体3を取付部材5に対して略90度回動させて使用するようになっている。
【0021】
上記グリップ本体3は、図3及び図4に示すように、グリップ本体3の表面に水圧転写によって塗膜層7が形成されたものであり、長手方向に延びる把持部3aと、該把持部3aの両端に一体に形成され上記取付部材5が設けられる脚部3bとを備えている。該脚部3bの背面32側には、該背面32側が開放し上記取付部材5を収容する取付凹部31が形成され、該取付凹部31に対応する脚部3bの表面には、断面凹状に窪むとともに上記グリップ本体3の外周に沿って環状に延びる溝部33が形成されている。上記溝部33は脚部3bの把持部3a寄りの取付凹部31に開放口33aを介して連通している。この実施形態1では、上記取付凹部31は上記グリップ本体3に上記塗膜層7を形成する工程におけるエア逃がし部として機能する。
【0022】
上記取付凹部31は、上記背面32側が開放し、グリップ本体3の長手方向幅が脚部3bの端縁部から把持部3aに向かうにつれて次第に狭くなる断面凹状をなし、上記取付凹部31の反把持部3a側端縁部は開口している。上記取付凹部31を形成する外側の側壁には、グリップ本体3の長手方向に貫通する軸孔31aが形成される一方、内側の側壁には、グリップ本体3の長手方向に窪んで取付凹部31内面側が開放する軸受凹部31bが軸心を上記軸孔31aの軸心と一致するように形成されている。そして、取付部材5に設けられた図示しない支持ピンが上記軸孔31aに挿通されるとともに上記軸受凹部31bに嵌合支持されることにより、グリップ本体3が取付部材5に対して回動可能に軸支されるようになっている。
【0023】
次に、上記グリップ本体3の表面に水圧転写により塗膜層7を形成する要領について説明する。ここでまず、図3及び図4に示す水圧転写時にグリップ本体3を水Wに没入させるためにグリップ本体3を保持する治具Gを用意する。上記治具Gは、取付凹部31に嵌合するように該取付凹部31に対応した外形のブロック形状をなしており、グリップ本体3の上記溝部33に対応する治具Gの両側面には、上下方向略中央部分、詳しくは上記開放口33aより若干下側から断面凹状に窪んで上方に延びる治具側溝部G1が形成されている。これにより、上記治具側溝部G1は、上記治具Gを取付凹部31に嵌合させたときに開放口33aを介して溝部33と連通するようになっている。
【0024】
そして、グリップ本体3を上記治具Gに取り付ける要領は、図3に示すように、グリップ本体3の両端の取付凹部31にグリップ本体3の背面32側から治具Gを嵌合して取り付ける。尚、この取付状態で、グリップ本体3が治具Gから脱落しないように、グリップ本体3の上記取付凹部31に係合する係合手段(図示せず)が治具Gに設けられている。ここで、上記治具Gは、グリップ本体3を水面w1に没入させる際にグリップ本体3表面と塗膜13との間にエアを滞留させないように、グリップ本体3の長手方向の一方が他方よりも若干下側に位置し、且つ、把持部3aの方が脚部3bよりも若干下側に位置するようにグリップ本体3を水面w1に対して傾けた状態で水面w1上に配置するように構成されている。
【0025】
次に、このようにして上記治具Gに取り付けたグリップ本体3の表面に水圧転写により上記塗膜層7を形成する要領について説明する。図3に示すように、水圧転写時にグリップ本体3を没入する水Wの水面w1には、PVA(ポリビニルアルコール)等の水溶性材料からなる水溶性フィルム15に非水溶性の塗膜13が形成された転写フィルム11を塗膜13が上を向くようにして浮かべられている。この状態で、上記塗膜13に図示しないスプレー装置を用いてキシレンや他の溶剤等の活性剤を吹き付ける。しばらくすると、水溶性フィルム15が水Wに完全に溶解するとともに上記活性剤により活性化されて接着性を有する塗膜13のみが水面w1に浮かんでいる状態となる(図4(a)参照)。
【0026】
しかる後、治具G(グリップ本体3)を図4(a)の位置からを下方にゆっくりと移動させ、図4(b)に示すように、水面w1に浮かんでいる塗膜13に上記グリップ本体3の表面を押し当て、図4(c)に示すように、グリップ本体3全体を水中へ完全に没入させる。このグリップ本体3を水中に没入させる過程で、塗膜13が水圧によりグリップ本体3の表面に押し付けられて密着することで水圧転写され、グリップ本体3の表面に塗膜層7が形成される。
【0027】
この際、水圧転写時に、図4に示すように、グリップ本体3を取付凹部31と溝部33との連通部分としての開放口33aが上を向くようにして水中に没入させ塗膜層7を形成するので、溝部33と塗膜13との間にあるエアが、水圧によってグリップ本体3に押し付けられた塗膜13により没入方向とは反対側、すなわち上方に押され水面に近い場所に移動して上記開放口33aを経て取付凹部31に排出される。このとき、取付凹部31には治具Gが嵌合しており、該治具Gの治具側溝部G1が溝部33に連通しているので、上記取付凹部31に排出されるエアは治具側溝部G1を通過して大気中に排出される。したがって、水圧転写時に溝部33と塗膜13との間にエアが閉じ込められず、塗膜層7を適正に形成することができる。
【0028】
次に、図4(c)の状態から水圧がグリップ本体3の表面全体に均等に掛かるようにグリップ本体3を水平姿勢にして水中から引き上げ、洗浄・乾燥させることにより塗膜層7が形成されたグリップ本体3を得ることができる。
【0029】
このように、この実施形態1によれば、グリップ本体3の脚部3b表面に該脚部3bを取り巻くように溝部33が形成されていても、水圧転写不良の発生を防止でき、さらには、アシストグリップ1を車体に取り付ける際に取付部材5が収容される取付凹部31は、大気に開放されているため、水圧転写時に溝部33と塗膜13との間にあるエアが該取付凹部31に排出されるので、エア逃がし部をグリップ本体3に別途追加形成する必要がなく、シンプルな構造のアシストグリップ1を安価に提供できる。
【0030】
尚、上記治具Gに形成した治具側溝部G1は、治具Gの側面と取付凹部31の側面との間に隙間を有するように構成されている場合には、溝部33の開放口33aからのエアは、取付凹部31内に流入して、上記隙間から大気中に排出されるため、形成しなくてもよい。
《発明の実施形態2》
図5は、本発明の実施形態2に係るアシストグリップ1を示すものである。この実施形態2では、グリップ本体3の表面に形成された溝部33の位置と、グリップ本体3の内部に中空部37が形成されている点と、治具Gに治具側溝部G1が形成されていない点とが実施形態1と異なっていて、他の部分は同じであるため、以下、この異なる部分のみを詳細に説明する。
【0031】
まず、実施形態2におけるグリップ本体3の溝部33は、グリップ本体3の把持部3aの両端近傍に、該把持部3aの外周に沿って環状に一対形成されている。
【0032】
また、実施形態2のグリップ本体3は、図6及び図7に示すように、樹脂材のガスインジェクション成形により成形され、その成形時に把持部3a内部に注入されたガスにより中空部37が形成されるようになっており、該中空部37は、一対の取付凹部31のうち一方の取付凹部31と、ガスインジェクション成形時にガスを注入する際に形成された貫通孔37bで連通している。上記中空部37は、グリップ本体3の表面に水圧転写により塗膜層7を形成する際のエア逃がし部として機能する。そして、上記一対の溝部33における把持部3aの背面32側には、上記中空部37に連通する連通孔37aが貫通して形成されている。
【0033】
次に、上記グリップ本体3の表面に水圧転写により塗膜層7を形成する要領について説明する。この実施形態2において実施形態1の水圧転写の要領と異なっている点を以下に説明する。
【0034】
図8及び図9に示すように、グリップ本体3は、上記連通孔37aが上方を向くように治具Gに取り付けられ、図9(a)の状態から水面w1に浮いた塗膜13に向けてグリップ本体3を下方にゆっくりと移動させると、塗膜13が水圧によりグリップ本体3の表面に押し当てられる。このとき、図9(b)に示すように、溝部33と塗膜13との間にあるエアは水圧によってグリップ本体3に押し付けられた塗膜13により没入方向とは反対側の上方に押されて水面に近い連通孔37aの位置に移動し、把持部3a内部に形成された中空部37に連通孔37aを経て排出される。そして、中空部37は貫通孔37bを介して取付凹部31に連通し、中空部37に排出されたエアは貫通孔37bを経て取付凹部31に排出される。そして、グリップ本体3をさらに下方へ移動させると水圧が高くなり、図9(c)に示すように、連通孔37aに対向する塗膜13は内外圧の差から中空部37側に窪む。このように、連通孔37aの部分では、塗膜13(塗膜層7)が窪んで形成されるが、この部分は、溝部33の底面であり目立ち難く、また、グリップ本体3の背面32側に位置しており、この部分以外は塗膜層7が適正に形成されているため、グリップ本体3の外観が損なわれることがない。
【0035】
尚、この実施形態2のアシストグリップ1では、アシストグリップ1の軽量化を目的として形成された中空部37は容積が比較的大きいため、このような中空部37に水圧転写時に溝部33と塗膜13との間にある微量のエアは、連通孔37aを経て容易に排出することができるので、中空部37と取付凹部31とを連通する貫通孔37bは必ずしも形成しなくてもよい。
【0036】
したがって、実施形態2では、実施形態1のように、溝部33を取付凹部31に直接連通させる必要がなく、グリップ本体3の把持部3a周面に溝部33を形成するような場合に効果的である。
【0037】
また、水圧転写時に溝部33と塗膜13との間にあるエアを連通孔37aから、中空部37に排出するので、転写不良を確実になくすことができる。
【0038】
さらには、中空部37が貫通孔37bを介して取付凹部31に連通しているので、中空部37の容積を小さくしても水圧転写時に溝部33と塗膜13との間にあるエアが取付凹部31から大気中に確実に排出されるようになり、水圧転写時の塗膜層7を適正に形成することができ、中空部37の容積を小さくしてグリップ本体3の把持部3aの剛性を高くすることができる。この場合、治具Gと取付凹部31との間に若干の隙間を形成して、貫通孔37bから取付凹部31内に流入するエアを大気中に排出できるようにすることは、当然ながら必要である。
《発明の実施形態3》
図10は、本発明の実施形態3に係るアシストグリップ1を示すものである。この実施形態3では、グリップ本体3の表面に形成された溝部33の形状位置及び形状が実施形態1と異なっているだけで、他の部分は同じであるため、以下、異なる部分のみを詳細に説明する。
【0039】
実施形態3の溝部33は、グリップ本体3の表側表面に把持部3a及びその両端の脚部3bに亘って連続してコ字状に形成されている。そして、上記溝部33の両端部分は、図11に示すように、取付凹部31に開放口33aを介して連通している。
【0040】
実施形態3におけるグリップ本体3への塗膜13の水圧転写要領は、実施形態1と同じであるため詳細な説明は省略する。
【0041】
したがって、実施形態3のグリップ本体3では、溝部33の形成位置及び形状を実施形態1と変更しても実施形態1と同様に、水圧転写時に溝部33と塗膜13との間にエアが閉じこめられず、塗膜層7を適正に形成することができる。
【0042】
尚、実施形態1〜3では、グリップ本体3及び取付部材5を樹脂材により成形しているが、上記材質以外のもの、たとえばアルミニウムを用いて成形してもよい。
【0043】
また、実施形態2では、中空部37をガスインジェクション成形により成形しているが、ブロー成形により成形してもよい。
【0044】
また、グリップ本体3の表面に形成する溝部33は、実施形態1〜3に形成した各溝部33の組み合わせ形状であってもよく、その他の形状であってもよい。
【0045】
さらに、実施形態1〜3では、グリップ本体3と取付部材5とを別体とし、グリップ本体3を回動可能とした格納式アシストグリップ1について本発明を適用したが、本発明は、グリップ本体をねじ等の取付部材により直接車体に回動不能に取り付ける非格納式(固定式)アシストグリップに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、例えば、自動車内部に設けられ、乗員が乗降時や車体が揺れた時に把持するアシストグリップに適している。
【符号の説明】
【0047】
1 アシストグリップ
3 グリップ本体
3a 把持部
3b 脚部
5 取付部材
7 塗膜層
13 塗膜
31 取付凹部(エア逃がし部)
33 溝部
37 中空部(エア逃がし部)
37a 連通孔
37b 貫通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内部に設けられ、乗降時や車体が揺れた時に乗員が把持するアシストグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に開示されているように、自動車内部のルーフ側部に装着されるアシストグリップが知られている。該アシストグリップは、長手方向両端が同じ方向に湾曲して略コ字状をなすグリップ本体と、該グリップ本体をルーフ側部に取り付ける取付部材とを備えており、上記グリップ本体は、ルーフ側部に取り付けられた取付部材に回動可能に軸支されている。そして、不使用時には、グリップ本体は付勢部材によりルーフ側部に沿う状態に回動し、その状態で維持されるようになっており、使用時には、乗員は付勢部材の付勢力に抗してグリップ本体を回動させて、該グリップ本体をルーフ側部から突出する状態にして使用するようになっている。
【0003】
また、特許文献2に開示されているように、部材の表面に水圧転写により塗膜層を形成して部材を加飾する方法が知られている。この水圧転写の要領は、水溶性フィルムに塗膜が形成された転写フィルムを塗膜が上面になるように水面に浮かべて上記水溶性フィルムを溶解させ、水面に浮かんでいる塗膜に部材の表面を押し当てて部材を水中に没入させることにより、没入時に受ける水圧で部材の表面に塗膜を転写して塗膜層を形成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−205998号公報(段落0011欄、図11)
【特許文献2】特開2008−254290号公報(段落0024欄、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のようなアシストグリップに特許文献2の如く水圧転写により加飾を施す場合、意匠性を高める等の理由によりアシストグリップの表面に溝部が形成されていると、アシストグリップを水中に没入した際に、溝部と塗膜との間に入り込んだエアは外部に抜けにくく、エアを閉じこめたまま塗膜層が形成されてしまい、転写不良による見栄えの悪い不良品となってしまう。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アシストグリップ本体の表面に溝部が形成されている場合において、水圧転写不良の発生を防止できるアシストグリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、水圧転写時にグリップ本体表面の溝部にエアが閉じ込められないようにしたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、表面に溝部が形成され、且つ、表面全体に水圧転写による塗膜層が形成されたグリップ本体と、該グリップ本体の長手方向両端部分に設けられ、該グリップ本体を車体に取り付ける取付部材とを備えたアシストグリップにおいて、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明では、上記グリップ本体には、エア逃がし部が上記溝部に連通するように形成され、上記塗膜層は、上記グリップ本体をエア逃がし部と溝部との連通部分が上を向くようにして水中に没入させ、水面に浮かんでいる塗膜を上記グリップ本体の表面に水圧転写することで形成されることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、上記グリップ本体は、その長手方向に延びる把持部と、該把持部の両端に一体に形成され上記取付部材が設けられる脚部とを備え、上記脚部には、上記取付部材を収容する取付凹部が形成されて、該取付凹部により上記エア逃がし部が構成されていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、第1の発明において、上記グリップ本体は、その長手方向に延びる把持部と、該把持部の両端に一体に形成され上記取付部材が設けられる脚部とを備え、上記把持部の内部には、グリップ本体の長手方向に延びる中空部が形成され、該中空部は連通孔を介して上記溝部に連通していて、該中空部により上記エア逃がし部が構成されていることを特徴とする。
【0012】
第4の発明では、第2の発明において、上記把持部の内部には、グリップ本体の長手方向に延びる中空部が形成され、該中空部は、連通孔を介して上記溝部に連通するとともに貫通孔を介して上記取付凹部に連通していることを特徴とする。
【0013】
第5の発明では、第3の発明において、上記脚部には、上記取付部材を収容する取付凹部が形成され、上記中空部は、貫通孔を介して上記取付凹部に連通していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明では、水圧転写時に溝部と塗膜との間にあるエアが、水圧によってグリップ本体に押し付けられた塗膜により没入方向とは反対側に押され、エア逃がし部と溝部との上向き連通部分を経てエア逃がし部に排出されるようになる。したがって、水圧転写時に溝部と塗膜との間にエアが閉じ込められず、塗膜層を適正に形成することができる。
【0015】
第2の発明では、アシストグリップを車体に取り付ける際に取付部材が収容される取付凹部は、大気に開放されているため、水圧転写時に溝部と塗膜との間にあるエアが該取付凹部に排出されるので、エア逃がし部をグリップ本体に別途追加形成する必要がなく、シンプルな構造のアシストグリップを安価に提供できる。
【0016】
第3の発明では、例えば、アシストグリップの軽量化を目的として形成された中空部は容積が比較的大きく、このような中空部に水圧転写時に溝部と塗膜との間にあるエアを連通孔を経て容易に排出することができるので、第2の発明のように、溝部を取付凹部に連通させる必要がなく、例えばグリップ本体の把持部周面に溝部を形成するような場合に効果的である。
【0017】
第4の発明では、水圧転写時に溝部と塗膜との間にあるエアは連通孔、中空部及び貫通孔を経て取付凹部から大気中に確実に排出されるようになるので、例えば中空部の容積を小さくしても水圧転写時の塗膜層を適正に形成することができ、中空部の容積を小さくしてグリップ本体の把持部の剛性を高く保ちたいような場合に効果的である。
【0018】
第5の発明では、水圧転写時に溝部と塗膜との間にあるエアを連通孔、中空部及び貫通孔を経て取付凹部に排出するので、溝部と塗膜との間のエアがさらに容易に抜け易くなり、転写不良を確実になくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態1に係るアシストグリップの斜視図であり、図1(a)は、不使用時の状態を示した図であり、図1(b)は、使用時の状態を示した図である。
【図2】図2(a)は、図1のグリップ本体を背面側から見た斜視図であり、図2(b)は、図2(a)のD部を拡大した図である。
【図3】図2におけるグリップ本体に水圧転写する工程図であり、図3(a)は、グリップ本体を横倒しにした場合の正面図であり、図3(b)は、図3(a)の側面図である。
【図4】図3の水圧転写工程からさらに工程が進行した水圧転写工程図であり、図4(a)は、図3(b)のA−A線断面図であり、図4(b)は、塗膜が図4(a)のグリップ本体表面に転写されている途中の状態を示し、図4(c)は、塗膜が図4(b)のグリップ本体表面全体に転写された状態を示す。
【図5】本発明の実施形態2における図1(a)相当図である。
【図6】本発明の実施形態2における図2相当図である。
【図7】図6(a)におけるB−B線断面図である。
【図8】本発明の実施形態2における図3相当図である。
【図9】本発明の実施形態2における図4相当図であり、図9(a)は、図8のC−C線断面図であり、図9(b)は、塗膜が図9(a)のグリップ本体表面に転写されている途中の状態を示し、図9(c)は、塗膜が図9(b)のグリップ本体表面全体に転写された状態を示す。
【図10】本発明の実施形態3における図1(a)相当図である。
【図11】本発明の実施形態3における図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
図1及び図2は、本発明の実施形態1に係るアシストグリップ1を示す。該アシストグリップ1は、長手方向両端部分が同じ方向に湾曲して略コ字状をなす樹脂製のグリップ本体3と、該グリップ本体3の長手方向両端部分に設けられ、該グリップ本体3を車体に取り付ける当該グリップ本体3と別体の樹脂製取付部材5とを備えている。上記グリップ本体3は、取付部材5に回動可能に軸支されるとともに、乗員の不使用時は、図1(a)に示すように、図示しない捻りバネ等の付勢手段により車室内側壁に沿う状態に格納維持され、乗員の使用時は、図1(b)に示すように、付勢部材の付勢力に抗して上記グリップ本体3を取付部材5に対して略90度回動させて使用するようになっている。
【0021】
上記グリップ本体3は、図3及び図4に示すように、グリップ本体3の表面に水圧転写によって塗膜層7が形成されたものであり、長手方向に延びる把持部3aと、該把持部3aの両端に一体に形成され上記取付部材5が設けられる脚部3bとを備えている。該脚部3bの背面32側には、該背面32側が開放し上記取付部材5を収容する取付凹部31が形成され、該取付凹部31に対応する脚部3bの表面には、断面凹状に窪むとともに上記グリップ本体3の外周に沿って環状に延びる溝部33が形成されている。上記溝部33は脚部3bの把持部3a寄りの取付凹部31に開放口33aを介して連通している。この実施形態1では、上記取付凹部31は上記グリップ本体3に上記塗膜層7を形成する工程におけるエア逃がし部として機能する。
【0022】
上記取付凹部31は、上記背面32側が開放し、グリップ本体3の長手方向幅が脚部3bの端縁部から把持部3aに向かうにつれて次第に狭くなる断面凹状をなし、上記取付凹部31の反把持部3a側端縁部は開口している。上記取付凹部31を形成する外側の側壁には、グリップ本体3の長手方向に貫通する軸孔31aが形成される一方、内側の側壁には、グリップ本体3の長手方向に窪んで取付凹部31内面側が開放する軸受凹部31bが軸心を上記軸孔31aの軸心と一致するように形成されている。そして、取付部材5に設けられた図示しない支持ピンが上記軸孔31aに挿通されるとともに上記軸受凹部31bに嵌合支持されることにより、グリップ本体3が取付部材5に対して回動可能に軸支されるようになっている。
【0023】
次に、上記グリップ本体3の表面に水圧転写により塗膜層7を形成する要領について説明する。ここでまず、図3及び図4に示す水圧転写時にグリップ本体3を水Wに没入させるためにグリップ本体3を保持する治具Gを用意する。上記治具Gは、取付凹部31に嵌合するように該取付凹部31に対応した外形のブロック形状をなしており、グリップ本体3の上記溝部33に対応する治具Gの両側面には、上下方向略中央部分、詳しくは上記開放口33aより若干下側から断面凹状に窪んで上方に延びる治具側溝部G1が形成されている。これにより、上記治具側溝部G1は、上記治具Gを取付凹部31に嵌合させたときに開放口33aを介して溝部33と連通するようになっている。
【0024】
そして、グリップ本体3を上記治具Gに取り付ける要領は、図3に示すように、グリップ本体3の両端の取付凹部31にグリップ本体3の背面32側から治具Gを嵌合して取り付ける。尚、この取付状態で、グリップ本体3が治具Gから脱落しないように、グリップ本体3の上記取付凹部31に係合する係合手段(図示せず)が治具Gに設けられている。ここで、上記治具Gは、グリップ本体3を水面w1に没入させる際にグリップ本体3表面と塗膜13との間にエアを滞留させないように、グリップ本体3の長手方向の一方が他方よりも若干下側に位置し、且つ、把持部3aの方が脚部3bよりも若干下側に位置するようにグリップ本体3を水面w1に対して傾けた状態で水面w1上に配置するように構成されている。
【0025】
次に、このようにして上記治具Gに取り付けたグリップ本体3の表面に水圧転写により上記塗膜層7を形成する要領について説明する。図3に示すように、水圧転写時にグリップ本体3を没入する水Wの水面w1には、PVA(ポリビニルアルコール)等の水溶性材料からなる水溶性フィルム15に非水溶性の塗膜13が形成された転写フィルム11を塗膜13が上を向くようにして浮かべられている。この状態で、上記塗膜13に図示しないスプレー装置を用いてキシレンや他の溶剤等の活性剤を吹き付ける。しばらくすると、水溶性フィルム15が水Wに完全に溶解するとともに上記活性剤により活性化されて接着性を有する塗膜13のみが水面w1に浮かんでいる状態となる(図4(a)参照)。
【0026】
しかる後、治具G(グリップ本体3)を図4(a)の位置からを下方にゆっくりと移動させ、図4(b)に示すように、水面w1に浮かんでいる塗膜13に上記グリップ本体3の表面を押し当て、図4(c)に示すように、グリップ本体3全体を水中へ完全に没入させる。このグリップ本体3を水中に没入させる過程で、塗膜13が水圧によりグリップ本体3の表面に押し付けられて密着することで水圧転写され、グリップ本体3の表面に塗膜層7が形成される。
【0027】
この際、水圧転写時に、図4に示すように、グリップ本体3を取付凹部31と溝部33との連通部分としての開放口33aが上を向くようにして水中に没入させ塗膜層7を形成するので、溝部33と塗膜13との間にあるエアが、水圧によってグリップ本体3に押し付けられた塗膜13により没入方向とは反対側、すなわち上方に押され水面に近い場所に移動して上記開放口33aを経て取付凹部31に排出される。このとき、取付凹部31には治具Gが嵌合しており、該治具Gの治具側溝部G1が溝部33に連通しているので、上記取付凹部31に排出されるエアは治具側溝部G1を通過して大気中に排出される。したがって、水圧転写時に溝部33と塗膜13との間にエアが閉じ込められず、塗膜層7を適正に形成することができる。
【0028】
次に、図4(c)の状態から水圧がグリップ本体3の表面全体に均等に掛かるようにグリップ本体3を水平姿勢にして水中から引き上げ、洗浄・乾燥させることにより塗膜層7が形成されたグリップ本体3を得ることができる。
【0029】
このように、この実施形態1によれば、グリップ本体3の脚部3b表面に該脚部3bを取り巻くように溝部33が形成されていても、水圧転写不良の発生を防止でき、さらには、アシストグリップ1を車体に取り付ける際に取付部材5が収容される取付凹部31は、大気に開放されているため、水圧転写時に溝部33と塗膜13との間にあるエアが該取付凹部31に排出されるので、エア逃がし部をグリップ本体3に別途追加形成する必要がなく、シンプルな構造のアシストグリップ1を安価に提供できる。
【0030】
尚、上記治具Gに形成した治具側溝部G1は、治具Gの側面と取付凹部31の側面との間に隙間を有するように構成されている場合には、溝部33の開放口33aからのエアは、取付凹部31内に流入して、上記隙間から大気中に排出されるため、形成しなくてもよい。
《発明の実施形態2》
図5は、本発明の実施形態2に係るアシストグリップ1を示すものである。この実施形態2では、グリップ本体3の表面に形成された溝部33の位置と、グリップ本体3の内部に中空部37が形成されている点と、治具Gに治具側溝部G1が形成されていない点とが実施形態1と異なっていて、他の部分は同じであるため、以下、この異なる部分のみを詳細に説明する。
【0031】
まず、実施形態2におけるグリップ本体3の溝部33は、グリップ本体3の把持部3aの両端近傍に、該把持部3aの外周に沿って環状に一対形成されている。
【0032】
また、実施形態2のグリップ本体3は、図6及び図7に示すように、樹脂材のガスインジェクション成形により成形され、その成形時に把持部3a内部に注入されたガスにより中空部37が形成されるようになっており、該中空部37は、一対の取付凹部31のうち一方の取付凹部31と、ガスインジェクション成形時にガスを注入する際に形成された貫通孔37bで連通している。上記中空部37は、グリップ本体3の表面に水圧転写により塗膜層7を形成する際のエア逃がし部として機能する。そして、上記一対の溝部33における把持部3aの背面32側には、上記中空部37に連通する連通孔37aが貫通して形成されている。
【0033】
次に、上記グリップ本体3の表面に水圧転写により塗膜層7を形成する要領について説明する。この実施形態2において実施形態1の水圧転写の要領と異なっている点を以下に説明する。
【0034】
図8及び図9に示すように、グリップ本体3は、上記連通孔37aが上方を向くように治具Gに取り付けられ、図9(a)の状態から水面w1に浮いた塗膜13に向けてグリップ本体3を下方にゆっくりと移動させると、塗膜13が水圧によりグリップ本体3の表面に押し当てられる。このとき、図9(b)に示すように、溝部33と塗膜13との間にあるエアは水圧によってグリップ本体3に押し付けられた塗膜13により没入方向とは反対側の上方に押されて水面に近い連通孔37aの位置に移動し、把持部3a内部に形成された中空部37に連通孔37aを経て排出される。そして、中空部37は貫通孔37bを介して取付凹部31に連通し、中空部37に排出されたエアは貫通孔37bを経て取付凹部31に排出される。そして、グリップ本体3をさらに下方へ移動させると水圧が高くなり、図9(c)に示すように、連通孔37aに対向する塗膜13は内外圧の差から中空部37側に窪む。このように、連通孔37aの部分では、塗膜13(塗膜層7)が窪んで形成されるが、この部分は、溝部33の底面であり目立ち難く、また、グリップ本体3の背面32側に位置しており、この部分以外は塗膜層7が適正に形成されているため、グリップ本体3の外観が損なわれることがない。
【0035】
尚、この実施形態2のアシストグリップ1では、アシストグリップ1の軽量化を目的として形成された中空部37は容積が比較的大きいため、このような中空部37に水圧転写時に溝部33と塗膜13との間にある微量のエアは、連通孔37aを経て容易に排出することができるので、中空部37と取付凹部31とを連通する貫通孔37bは必ずしも形成しなくてもよい。
【0036】
したがって、実施形態2では、実施形態1のように、溝部33を取付凹部31に直接連通させる必要がなく、グリップ本体3の把持部3a周面に溝部33を形成するような場合に効果的である。
【0037】
また、水圧転写時に溝部33と塗膜13との間にあるエアを連通孔37aから、中空部37に排出するので、転写不良を確実になくすことができる。
【0038】
さらには、中空部37が貫通孔37bを介して取付凹部31に連通しているので、中空部37の容積を小さくしても水圧転写時に溝部33と塗膜13との間にあるエアが取付凹部31から大気中に確実に排出されるようになり、水圧転写時の塗膜層7を適正に形成することができ、中空部37の容積を小さくしてグリップ本体3の把持部3aの剛性を高くすることができる。この場合、治具Gと取付凹部31との間に若干の隙間を形成して、貫通孔37bから取付凹部31内に流入するエアを大気中に排出できるようにすることは、当然ながら必要である。
《発明の実施形態3》
図10は、本発明の実施形態3に係るアシストグリップ1を示すものである。この実施形態3では、グリップ本体3の表面に形成された溝部33の形状位置及び形状が実施形態1と異なっているだけで、他の部分は同じであるため、以下、異なる部分のみを詳細に説明する。
【0039】
実施形態3の溝部33は、グリップ本体3の表側表面に把持部3a及びその両端の脚部3bに亘って連続してコ字状に形成されている。そして、上記溝部33の両端部分は、図11に示すように、取付凹部31に開放口33aを介して連通している。
【0040】
実施形態3におけるグリップ本体3への塗膜13の水圧転写要領は、実施形態1と同じであるため詳細な説明は省略する。
【0041】
したがって、実施形態3のグリップ本体3では、溝部33の形成位置及び形状を実施形態1と変更しても実施形態1と同様に、水圧転写時に溝部33と塗膜13との間にエアが閉じこめられず、塗膜層7を適正に形成することができる。
【0042】
尚、実施形態1〜3では、グリップ本体3及び取付部材5を樹脂材により成形しているが、上記材質以外のもの、たとえばアルミニウムを用いて成形してもよい。
【0043】
また、実施形態2では、中空部37をガスインジェクション成形により成形しているが、ブロー成形により成形してもよい。
【0044】
また、グリップ本体3の表面に形成する溝部33は、実施形態1〜3に形成した各溝部33の組み合わせ形状であってもよく、その他の形状であってもよい。
【0045】
さらに、実施形態1〜3では、グリップ本体3と取付部材5とを別体とし、グリップ本体3を回動可能とした格納式アシストグリップ1について本発明を適用したが、本発明は、グリップ本体をねじ等の取付部材により直接車体に回動不能に取り付ける非格納式(固定式)アシストグリップに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、例えば、自動車内部に設けられ、乗員が乗降時や車体が揺れた時に把持するアシストグリップに適している。
【符号の説明】
【0047】
1 アシストグリップ
3 グリップ本体
3a 把持部
3b 脚部
5 取付部材
7 塗膜層
13 塗膜
31 取付凹部(エア逃がし部)
33 溝部
37 中空部(エア逃がし部)
37a 連通孔
37b 貫通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に溝部が形成され、且つ、表面全体に水圧転写による塗膜層が形成されたグリップ本体と、該グリップ本体の長手方向両端部分に設けられ、該グリップ本体を車体に取り付ける取付部材とを備えたアシストグリップであって、
上記グリップ本体には、エア逃がし部が上記溝部に連通するように形成され、
上記塗膜層は、上記グリップ本体をエア逃がし部と溝部との連通部分が上を向くようにして水中に没入させ、水面に浮かんでいる塗膜を上記グリップ本体の表面に水圧転写することで形成されることを特徴とするアシストグリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のアシストグリップにおいて、
上記グリップ本体は、その長手方向に延びる把持部と、該把持部の両端に一体に形成され上記取付部材が設けられる脚部とを備え、
上記脚部には、上記取付部材を収容する取付凹部が形成されて、該取付凹部により上記エア逃がし部が構成されていることを特徴とするアシストグリップ。
【請求項3】
請求項1に記載のアシストグリップにおいて、
上記グリップ本体は、その長手方向に延びる把持部と、該把持部の両端に一体に形成され上記取付部材が設けられる脚部とを備え、
上記把持部の内部には、グリップ本体の長手方向に延びる中空部が形成され、該中空部は連通孔を介して上記溝部に連通していて、該中空部により上記エア逃がし部が構成されていることを特徴とするアシストグリップ。
【請求項4】
請求項2に記載のアシストグリップにおいて、
上記把持部の内部には、グリップ本体の長手方向に延びる中空部が形成され、該中空部は、連通孔を介して上記溝部に連通するとともに貫通孔を介して上記取付凹部に連通していることを特徴とするアシストグリップ。
【請求項5】
請求項3に記載のアシストグリップにおいて、
上記脚部には、上記取付部材を収容する取付凹部が形成され、
上記中空部は、貫通孔を介して上記取付凹部に連通していることを特徴とするアシストグリップ。
【請求項1】
表面に溝部が形成され、且つ、表面全体に水圧転写による塗膜層が形成されたグリップ本体と、該グリップ本体の長手方向両端部分に設けられ、該グリップ本体を車体に取り付ける取付部材とを備えたアシストグリップであって、
上記グリップ本体には、エア逃がし部が上記溝部に連通するように形成され、
上記塗膜層は、上記グリップ本体をエア逃がし部と溝部との連通部分が上を向くようにして水中に没入させ、水面に浮かんでいる塗膜を上記グリップ本体の表面に水圧転写することで形成されることを特徴とするアシストグリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のアシストグリップにおいて、
上記グリップ本体は、その長手方向に延びる把持部と、該把持部の両端に一体に形成され上記取付部材が設けられる脚部とを備え、
上記脚部には、上記取付部材を収容する取付凹部が形成されて、該取付凹部により上記エア逃がし部が構成されていることを特徴とするアシストグリップ。
【請求項3】
請求項1に記載のアシストグリップにおいて、
上記グリップ本体は、その長手方向に延びる把持部と、該把持部の両端に一体に形成され上記取付部材が設けられる脚部とを備え、
上記把持部の内部には、グリップ本体の長手方向に延びる中空部が形成され、該中空部は連通孔を介して上記溝部に連通していて、該中空部により上記エア逃がし部が構成されていることを特徴とするアシストグリップ。
【請求項4】
請求項2に記載のアシストグリップにおいて、
上記把持部の内部には、グリップ本体の長手方向に延びる中空部が形成され、該中空部は、連通孔を介して上記溝部に連通するとともに貫通孔を介して上記取付凹部に連通していることを特徴とするアシストグリップ。
【請求項5】
請求項3に記載のアシストグリップにおいて、
上記脚部には、上記取付部材を収容する取付凹部が形成され、
上記中空部は、貫通孔を介して上記取付凹部に連通していることを特徴とするアシストグリップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−136650(P2011−136650A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298124(P2009−298124)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】
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