説明

アシルグリセロール並びにその窒素−及び硫黄含有類似物の治療上の使用

本発明は、アシルグリセロール、並びにその窒素−及び硫黄含有類似体の治療上の使用、特に脳虚血の治療における使用に関する。本発明は、更に、該誘導体の調製方法、新規化合物、特にアシルグリセロール、その窒素−及び硫黄含有類似体、並びにその調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アシルグリセロール、並びにその窒素−及び硫黄含有類似体の治療上の使用、特に脳虚血の治療における使用に関する。本発明は、更に、該誘導体の調製方法、新規化合物、特にアシルグリセロール、その窒素−及び硫黄含有類似体、並びにその調製方法に関する。
【0002】
本発明の化合物は、有利な抗酸化剤及び抗炎症医薬特性を有する。本発明は、また、該化合物及びそれを含む医薬組成物を使用する治療的処置の方法を記載する。特に、本発明の化合物は、発作の予防又は治療に有用である。
【0003】
フランスでは、脳血管性疾患(年間150,000件の新規症例)は、死因の第3位であり、成人における身体障害の主要原因である。虚血性及び出血性発作は、全ての脳血管性発作において、それぞれ80%及び20%を占める。脳虚血性発作は、脳血管性疾患の死亡率及び罹患率を減少させるために取り組まれなければならない、重要な治療上の問題である。虚血の急性期の治療ばかりでなく、虚血の予防において進歩があった。したがって、危険因子を同定し管理することは、この病理の治療において必須であることを留意することが重要である。
【0004】
薬剤に基づく脳虚血の治療は、異なる戦略に基づく。第1の戦略は、危険因子(高血圧、高コレステロール血症、糖尿病、心房細動など)の予防、又は特に抗血小板薬又は抗凝血薬の助けを借りる血栓症の予防により、脳虚血発作の発症を予防することを含む(Adams 2002)。
【0005】
第2の戦略は、虚血の急性期を治療して、その長期の影響を減衰させることを含む(Lutsep 及び Clark 2001)。
【0006】
脳虚血の病態生理学は、下記のように記載されることができる:ニューロンが壊死している虚血性病巣と無傷の神経組織との間の中間領域である虚血性境界域は、病態生理学的カスケードの部位であり、これは、再灌流が起きないか又は神経保護が不十分である場合、数日間かけて神経細胞死を起こす。最初の現象は、最初の数時間以内に起こり、多量のグルタミン酸を放出し、神経細胞脱分極及び細胞性浮腫を起こす。細胞内へのカルシウムの流入は、ミトコンドリアの損傷を誘導し、それはフリーラジカルを放出し、酵素を誘導して神経細胞膜の分解を促進する。カルシウム流入及びフリーラジカル産生は、次に、NF−κBのような特定の転写因子を活性化する。該活性化は、内皮接着タンパク質の誘導、虚血病巣の多核好中球浸潤、ミクログリア活性化、酸化窒素(NO)II型シンターゼ又はII型シクロオキシゲナーゼのような酵素の誘導のような炎症過程を誘導する。これらの炎症過程は、細胞に毒性のあるNO又はプロスタノイドの放出を起こす。ともにこれらの過程は、結果として非可逆的病変を誘導するアポトーシスの現象となる(Dirnagl, Iadecolaら, 1999)。
【0007】
予防的神経保護の概念は、虚血抵抗性を示す動物モデルにおける実験データに基づく。事実、脳虚血を実験的に誘導する前に異なる手順を適用すると、後者の重篤度が減衰される。種々の刺激が脳虚抵抗性を誘導することができ、前条件付け(遷延虚血に先立つ短期虚血)、熱ストレス、低用量の細菌性リポ多糖類の投与である(Bordet, Deplanqueら, 2000)。
【0008】
該刺激は、抵抗性機構を誘導し、それは保護機構を誘発する信号を活性化する。異なる誘発機構が同定されており、サイトカイン、炎症性経路、フリーラジカル、NO、ATP−依存性カリウムチャンネル、アデノシンである。初期現象の発生と虚血抵抗性との間で観察される遅滞時間は、タンパク質合成の必要性に由来する。多様な種類のタンパク質が虚血抵抗性を誘導することを示しており、熱ショックタンパク質、抗酸化酵素及び抗アポトーシス性タンパク質である(Nandagopal, Dawsonら, 2001)。
【0009】
したがって、アテローム動脈硬化、糖尿病、肥満などのような脳血管性発作の危険因子の進展を防止することができ、予防的神経保護ばかりでなく、脳虚血の急性期における積極的な神経保護を提供することができる化合物の真の必要性がある。
【0010】
PPAR(α、β、γ)は、ホルモン活性化核内受容体ファミリーに属する。これらのリガンドによる結合で活性化される場合、これらはレチノイド−X−受容体(RXR)とヘテロ二量体化され、標的遺伝子のプロモーター配列に位置する「ペルオキシソーム増殖因子応答要素」(PPRE)と結合する。したがってPPARのPPREへの結合は、標的遺伝子の発現を誘導する(Fruchart, Staelsら, 2001)。
【0011】
PPARは、多種多様な器官に分布されており、これらはPPARβを除いて全てある程度の組織特異性を示すが、その発現は遍在すると思われる。PPARαの発現は、肝臓及び腸管腔において特に多く、PPARγは、主に脂肪組織及び脾臓に発現する。3つのサブタイプ(α、β、γ)は、中枢神経系に発現する。オリゴデンドロサイト及びアストロサイトのような細胞は、とりわけPPARαサブタイプを発現する(Kainu, Wikstromら, 1994)。
【0012】
PPARの標的遺伝子は、脂質及び糖の代謝を制御する。しかし、最近の発見は、PPARが他の生物学的過程に関与していることを示唆している。それらのリガンドによるPPARの活性化は、遺伝子の転写活性における変化を誘導し、それは、炎症性過程、抗酸化酵素、血管形成、細胞の増殖及び分化、アポトーシス、iNOS、MMPase及びTIMPの活性を調節する(Smith, Dipretaら, 2001) (Clark 2002)。
【0013】
フリーラジカルは、アレルギー、腫瘍のイニシエーション及びプロモーション、循環器疾患(アテローム性動脈硬化、虚血)、遺伝的及び代謝的障害(糖尿病)、感染性及び変性疾患(プリオンなど)及び眼の疾患を含む極めて広範囲の病理において役割を果たす(Mates, Perez-Gomez1ら, 1999)。
【0014】
活性酸素種(ROS)は、正常な細胞機能中に産生される。ROSは、ヒドロキシルラジカル(OH)、スーパーオキシドアニオン(O2-)、過酸化水素(H22)及び酸化窒素(NO)を含む。該種は非常に不安定であり、それらの高い化学反応性のため、細胞の生物学的機能にとって脅威となる。それらは、脂質の過酸化、特定の酵素の酸化、及びタンパク質の分解をもたらす極めて広範囲に及ぶタンパク質の酸化を誘導する。脂質の過酸化に対する保護は、過酸化生成物がDNAの損傷を引き起こしうるため、好気性生物において必須のプロセスである。したがって、天然の抗酸化剤防御によるラジカル種の産生、処理及び除去の間の平衡の調節解除又は変更によって、細胞又は生物に有害であるプロセスが確立される。
【0015】
ROSは、酵素成分と非酵素成分を含む抗酸化剤系を介して処理される。酵素系は、下記の性質を有する幾つかの酵素から構成される:
【0016】
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は、スーパーオキシドラジカルを過酸化物に変換することにより破壊する。次に過酸化物を別の酵素系に作用させる。低濃度のSODは好気的呼吸により連続して産生される。ヒトにおいて3種のSODが同定されており、それぞれ補助因子としてCu、Zn、Fe、Mn又はNiを含有する。3つの形態のヒトSODが下記のように分布され、細胞基質Cu−Zn SOD、ミトコンドリアMn−SO及び細胞外SODである。
【0017】
カタラーゼは、過酸化水素(H22)を水とO2に変換するのに非常に効率的である。過酸化水素は、好気性生物において酵素的に異化される。カタラーゼは、また、種々のヒドロペルオキシド(ROOH)の還元に触媒作用を及ぼす。
【0018】
グルタチオンペルオキシダーゼは、セレンを補助因子として使用し、グルタチオンを使用してヒドロペルオキシド(ROOH及びH22)の還元に触媒作用を及ぼし、それにより酸化損傷から細胞を保護する。
【0019】
細胞の非酵素的抗酸化剤防御は、食事中に合成されるか又は供給される分子を含む。
【0020】
抗酸化剤分子は、異なる細胞区画に存在する。例えば、解毒酵素はフリーラジカルを除去し、細胞の寿命にとって必須である。3つの最も重要な種類の抗酸化剤化合物は、カロチノイド、ビタミンC及びビタミンEである(Gilgun-Sherki, Melamedら, 2001)。
【0021】
脳虚血及びその結果として起こる影響により誘導されるアポトーシスの現象を回避するため、本発明者たちは、前記の危険因子の進展を防止することができ、予防的神経保護活性を行うばかりでなく、脳虚血の急性期における積極的な神経保護を提供することができる新規化合物を開発した。
【0022】
発明者たちは、また、PPAR活性化剤、抗酸化剤及び抗炎症の特性を同時に示す本発明の化合物を示し、したがって該化合物は、脳虚血における重要な治療的又は予防的潜在能力を有する。
【0023】
したがって本発明は、脳虚血の予防的又は治療的処置に有用な、有利な薬理学的性質を示す化合物のファミリーを提案する。本発明は、また、該誘導体の製造方法を提供する。
【0024】
本発明の化合物は、一般式(I):
【0025】
【化2】

【0026】
〔式中、
Gは、酸素原子、硫黄原子又はN−R4基を表し、
R4は、水素原子、又は飽和若しくはそうでない、場合により置換されている、1〜5個の炭素原子を含む、直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、
R1、R2及びR3は、同一であるか又は異なって、水素原子、CO−R基、又は式:CO−(CH22n+1−X−R′に対応する基を表し(ここで、R1、R2及びR3基の少なくとも1個は、式:CO−(CH22n+1−X−R′に対応する基である)、
Rは、飽和又はそうではない、場合により置換されている、その主鎖が1〜25個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐のアルキル基であり、
Xは、硫黄原子、セレン原子、SO基又はSO2基であり、
nは、0〜11の間に含まれる整数であり、
R′は、飽和又はそうではない、場合により置換されている、その主鎖が2〜23個の炭素原子、好ましくは10〜23個の炭素原子及び場合により酸素原子、硫黄原子、セレン原子、SO基及びSO2基からなる群より選択される1個以上のヘテロ基を含む、直鎖又は分岐のアルキル基である〕により表される。
【0027】
本発明の一般式(I)により表される化合物において、R基は、同一であるか又は異なって、好ましくは、飽和又は不飽和の、置換されているか又はされていない、その主鎖が、1〜20個の炭素原子、さらにより好ましくは7〜17個の炭素原子、またさらに好ましくは14〜17個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐のアルキル基を表す。本発明の一般式(I)により表される化合物において、R基は、また、同一であるか又は異なって、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル又はヘキシル基のような、1〜6個の炭素原子を含む低級アルキルを表すことができる。
【0028】
本発明の特別の態様において、式(I)により表される化合物は、置換基R1、R2及びR3のうちの1又は2個がCOCH3基であることを特徴とする。
【0029】
本発明の一般式(I)により表される化合物において、R′基は、同一であるか又は異なって、好ましくは、飽和又は不飽和の、置換されているか又はされていない、その主鎖が、12〜23個の炭素原子、さらに好ましくは13〜20個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐のアルキル基を表す。有利には、R′は、飽和又は不飽和の、置換されているか又はされていない、その主鎖が、14〜17個の炭素原子、よりさらに有利には14個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐のアルキル基を表す。
【0030】
R又はR′の飽和長鎖アルキル基の具体的な例は、特にC715、C1021、C1123、C1225、C1327、C1429、C1531、C1633、C1735基である。R又はR′の不飽和長鎖アルキル基の具体的な例は、特にC1425、C1427、C1529、C1729、C1731、C1733、C1929、C1931、C2131、C2135、C2137、C2139、C2345基、又はエイコサペンタン酸(EPA)C20:5(5,8,11,14,17)及びドコサヘキサン酸(DHA)C22:6(4,7,10,13,16,19)のアルキル鎖である。
【0031】
分岐長鎖アルキル基の例は、特に(CH2n′−CH(CH3)C25、(CH=C(CH3)−(CH22n″−CH=C(CH32又は(CH22x+1−C(CH32−(CH2n″′−CH3基〔xは、1〜11と等しいか又はその間に含まれる整数であり、n′は、1〜22と等しいか又はその間に含まれる整数であり、n″は、1〜5と等しいか又はその間に含まれる整数であり、n″′は、0〜22と等しいか又はその間に含まれる整数であり、そして(2x+n″′)は、22以下、好ましくは20以下である〕である。
【0032】
アルキル基R又はR′は、また、環状基を含んでもよい。環状基の例は、特にシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルである。
【0033】
前記で示されるように、アルキル基R又はR′は、同一であるか又は異なって、場合により1個以上の置換基で置換されていることができる。置換基は、好ましくはハロゲン原子(ヨウ素、塩素、フッ素、臭素)及び−OH、=O、−NO2、−NH2、−CN、−CH2−OH、−O−CH3、−CH2OCH3、CF3及びCOOZ基(Zは、水素原子又は好ましくは1〜6個の炭素原子を含むアルキル基である)からなる群より選択される。
【0034】
本発明は、また、該化合物の光学及び幾何異性体、そのラセミ体、塩、水和物、並びにこれらの混合物に関する。
【0035】
式(Ia)により表される化合物は、R1、R2又はR3基のうちのただ1個が水素原子を表す、本発明の式(I)に対応する化合物である。
【0036】
式(Ib)により表される化合物は、R1、R2又はR3基のうちの2個が水素原子を表す、本発明の式(I)に対応する化合物である。
【0037】
本発明の特別の態様によると、R1及びR3は、同一であるか又は異なって、水素原子又はとりわけCO−R基を表す。
【0038】
本発明は、また、式(I)により表される化合物のプロドラッグを包含し、それは、被検者に投与された後、式(I)により表される化合物に変換される、及び/又は式(I)により表される化合物と同様の治療上の活性を示す、式(I)により表される化合物の代謝産物に変換される。
【0039】
本発明は、また、脳虚血又は脳出血性発作のような脳血管病変を治療する医薬組成物の調製のための、式(I)により表される化合物の使用に関する。
【0040】
本発明は、また、上記で定義された一般式(I)により表される化合物を、可能であれば別の治療活性剤と共に、薬学的に許容されうる支持体中に含む医薬組成物に関わる。特に、該組成物は、脳虚血又は脳出血性発作のような脳血管病変を治療することが意図される。
【0041】
本発明の一般式(I)により表される化合物において、CO−(CH22n+1−X−R′基では、Xは、好ましくは硫黄又はセレン原子、有利には硫黄原子を表す。
【0042】
更に、CO−(CH22n+1−X−R′基において、nは、好ましくは0〜3の間に含まれ、とりわけ0〜2の間に含まれ、特に0と等しい。
【0043】
本発明の一般式(I)により表される化合物において、R′は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、SO基及びSO2基からなる群より選択される、1個以上、好ましくは0、1又は2個、より好ましくは0又は1個のヘテロ基を含んでもよい。
【0044】
本発明のCO−(CH22n+1−X−R′基の特定の例は、CO−CH2−S−C1429基である。
【0045】
この点について、本発明は、CO−CH2−S−C1429基を含む式(I)により表される新規化合物を開発した。したがって本発明は、その目的として、
1,3−ジテトラデシルチオアセチル−2−パルミトイルグリセロール;
1,3−ジアセチル−2−テトラデシルチオアセチルグリセロール;
1,3−ジオクタノイル−2−テトラデシルチオアセチルグリセロール;
1,3−ジウンデカノイル−2−テトラデシルチオアセチルグリセロール;及び
1,3−ジテトラデシルチオアセトキシ−2−(2−テトラデシルチオ)メチルカルボニルチオ−プロパン
から選択される式(I)により表される化合物を有する。
【0046】
本発明の精神において好ましい他の化合物は、R1、R2及びR3基の少なくとも1個が、CO−(CH22n+1−X−R′基(ここで、Xは、硫黄若しくはセレン原子、好ましくは硫黄原子を表し、そして/又はR′は、13〜17個の炭素原子、好ましくは14〜16個、さらにより好ましくは14個の炭素原子を含む、飽和及び直鎖のアルキル基である)を表す、上記の一般式(I)により表される化合物である。
【0047】
この点において、本発明の特定の化合物は、R2が式:CO−(CH22n+1−X−R′(式中、Xは、硫黄又はセレン原子、好ましくは硫黄原子を表し、そして/又はR′は、上記で定義された基である)を有する基であるものである。
【0048】
本発明の他の特定の化合物は、G基が有利には酸素原子又はN−R4基、好ましくは酸素原子を表す一般式(I)により表される化合物である。更に、GがN−R4であるとき、R4は、好ましくは水素原子又はメチル基を表す。該化合物において、R2は有利には、上記で定義されたCO−(CH22n+1−X−R′基を表す。
【0049】
別の態様において、本発明の特定の化合物は、G基が硫黄原子を表す一般式(I)により表される化合物である。
【0050】
本発明の他の特定の化合物は、R1、R2及びR3基のうちの2個が、同一であるか又は異なって、上記で定義されたCO−(CH22n+1−X−R′基(ここで、Xは、硫黄又はセレン原子、好ましくは硫黄原子を表す)であるものである。
【0051】
本発明の他の好ましい化合物は、R1、R2及びR3が、同一であるか又は異なって、好ましくは同一で、上記で定義されたCO−(CH22n+1−X−R′基(ここで、Xは、硫黄又はセレン原子、好ましくは硫黄原子を表し、そして/又はR′は、13〜17個の炭素原子、好ましくは14〜17個、さらにより好ましくは14個の炭素原子を含む、飽和及び直鎖のアルキル基であり、ここでnは、好ましくは0〜3に間に含まれ、特に0と等しい)を表す、一般式(I)により表される化合物である。より詳細には、他の好ましい化合物は、R1、R2及びR3がCO−CH2−S−C1429基である、一般式(I)により表される化合物である。
【0052】
本発明の好ましい化合物の例は、図1A及び1Bで提示される。
【0053】
本発明の別の目的は、上記記載の式(I)により表される少なくとも1個の化合、特に下記:
1,3−ジテトラデシルチオアセチル−2−パルミトイルグリセロール;
1,3−ジアセチル−2−テトラデシルチオアセチルグリセロール;
1,3−ジオクタノイル−2−テトラデシルチオアセチルグリセロール;
1,3−ジウンデカノイル−2−テトラデシルチオアセチルグリセロール;及び
1,3−ジテトラデシルチオアセトキシ−2−(2−テトラデシルチオ)メチルカルボニルチオ−プロパン
から選択される式(I)を有する少なくとも1個の化合物を、薬学的に許容されうる支持体中に含むあらゆる医薬組成物に関する。
【0054】
有利には、脳血管性の病理、より詳細には脳虚血又は脳血管性発作の治療又は予防のための医薬組成物である。事実、驚くべき事に、式(I)で表される化合物は、同時に、PPAR活性化剤、抗酸化剤、及び抗炎症性特性を示し、かつ脳虚血において予防的及び治療的神経保護活性を示すことが見出された。
【0055】
本発明は、また、ヒト又は動物の治療又は予防方法の実施が意図される医薬組成物の調製における、上記で定義された化合物の使用に関する。
【0056】
本発明は、更に、脳血管病変、より詳細には脳虚血を治療する方法であって、被検者に、特にヒトに式(I)により表される化合物又は上記で定義された医薬組成物の有効用量を投与することを含む方法に関する。
【0057】
有利には、使用される式(I)により表される化合物は、上記と同義のものである。
【0058】
本発明の医薬組成物は、有利には、1つ以上の薬学的に許容されうる賦形剤又はビヒクルを含む。例としては、当業者に既知である、薬学的に適合されうる生理的な等張性の緩衝されている食塩水などが挙げられる。本組成物は、分散剤、可溶化剤、安定剤、界面活性剤、防腐剤などから選択される、1つ以上の作用物質又はビヒクルを含んでいてもよい。製剤(液体及び/又は注射用及び/又は固体)に使用してよい作用物質又はビヒクルは、特に、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリソルベート80、マンニトール、ゼラチン、乳糖、植物油などが含まれる。組成物は、可能であれば、持続性及び/又は遅延性放出を可能にする医薬剤形又は装置により、注射用懸濁剤、ゲル剤、油剤、錠剤、坐剤、散剤、ゼラチンカプセル剤、カプセル剤、エアゾールなどとして配合されうる。この種類の処方には、セルロース、カーボネート又はデンプンのような作用物質が有利に使用される。
【0059】
本発明の化合物又は組成物は、異なる方法及び異なる剤形で投与されてよい。例えば、これらは、経口経路により、非経口的に、吸入により、あるいは例えば、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、動脈内経路などのような注射により、全身的に投与してよい。注射には、本化合物は一般に、液体懸濁剤の剤形に調製され、これはシリンジにより、又は例えば点滴により注入してよい。この点に関して、本化合物は一般に、当業者には知られている、薬学的に適合されうる生理的な等張性の緩衝された食塩水などに溶解される。例えば、本組成物は、分散剤、可溶化剤、乳化剤、安定剤、界面活性剤、防腐剤、緩衝剤などから選択される、1つ以上の作用物質又はビヒクルを含んでいてもよい。液体及び/又は注射用処方に使用することができる作用物質又はビヒクルは、特に、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリソルベート80、マンニトール、ゼラチン、乳糖、植物油、リポソームなどを含んでもよい。
【0060】
したがって本組成物は、ゲル剤、油剤、錠剤、坐剤、粉剤、ゼラチンカプセル剤、カプセル剤、エアゾールなどの剤形で、可能であれば徐放及び/又は遅延放出を可能にする医薬剤形又は装置により投与してよい。この種類の処方には、セルロース、カーボネート又はデンプンのような作用物質が有利に使用される。
【0061】
本化合物は、使用される作用物質又はビヒクルが、好ましくは水、ゼラチン、ゴム、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、油、ポリアルキレングリコールなどからなる群より選択される場合には、経口投与してもよい。
【0062】
非経口投与には、本化合物は、特に水、油又はポリアルキレングリコールを含む、好ましくは液剤、懸濁剤又は乳剤の剤形で投与されるが、ここには保存料、安定剤、乳化剤などの他に、浸透圧を調整するための塩、緩衝剤などを加えることもできる。
【0063】
注入速度及び/又は注入用量は、患者、病理、投与の様式などに応じて当業者により調整されてよいことが理解される。典型的には、本化合物は、1用量当たり1μg〜2g、好ましくは1用量当たり0.1mg〜1gの範囲の用量で投与される。用量は、場合に応じて、1日に1回又は1日に数回投与してもよい。更には、本発明の組成物は、また、他の活性物質又は活性剤を含んでいてもよい。
【0064】
本発明は、また、式(I)により表される上記化合物の製造方法に関する。
【0065】
本発明の化合物は、当業者に既知の化学反応の組合せを利用して、市販の製品から調製してもよい。本発明は、また、上記で定義された化合物の製造方法に関する。
【0066】
本発明の第1の方法では、式(I)〔式中、Gは、酸素又は硫黄原子であり、R1、R2及びR3は、同一であるか又は異なって、CO−R基又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕により表される化合物は、式(I)〔式中、Gは、それぞれ酸素又は硫黄原子であり、R2は、水素原子であり、そしてR1及びR3は、同一であるか又は異なって、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕を有する化合物、及び式:A°−CO−A〔式中、Aは、例えば、OH、Cl、O−CO−A°及びOR″(R″は、アルキル基である)からなる群より選択される反応性基であり、そしてA°は、R基又は(CH22n+1−X−R′基である〕を有する化合物から、可能であれば、当業者に既知のカップリング剤又は活性化剤の存在下で得られる。
【0067】
本発明の式(I)〔式中、Gは、酸素原子であり、R2は、水素原子であり、そしてR1及びR3は、同一であるか又は異なって、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕により表される化合物は、異なる方法で得てもよい。
【0068】
第1の実施態様では、グリセロール分子を、式:A°−CO−A1〔式中、A1は、例えば、OH、Cl及びOR″(R″は、アルキル基である)からなる群より選択される反応性基であり、そしてA°は、R基又は(CH22n+1−X−R′基である〕を有する化合物と、可能であれば当業者に既知のカップリング剤又は活性化剤の存在下で反応させる。該反応により、いわゆる対称化合物(ここで、R1及びR3は、同じ意味を有する)が合成できる。該反応は、例えば、(Feuge, Grosら, 1953), (Gangadhar, Subbaraoら, 1989), (Han, Choら, 1999) 又は (Robinson 1960)で記載されているプロトコールを適用することにより実施してもよい。
【0069】
本発明の式(I)〔式中、Gは、酸素原子であり、R2は、水素原子であり、そしてR1及びR3は、同一であるか又は異なって、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕により表される化合物は、また、本発明の式(I)〔式中、Gは、酸素原子であり、R2及びR3は、水素原子を表し、そしてR1は、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基である〕を有する化合物(この式(I)の特定の形の化合物は、式IVにより表される化合物と称される)、及び式:A°−CO−A2〔式中、A2は、例えば、OH及びClからなる群より選択される反応性基であり、そしてA°は、R基又は(CH22n+1−X−R′基である〕を有する化合物から、可能であれば、当業者に既知のカップリング剤又は活性化剤の存在下で得てもよい。該反応は、例えば、(Daubert, Spieglら, 1943)、(Feuge 及び Lovegren 1956)、(Katoch, Trivediら, 1999)、(Strawn, Martellら, 1989)又は(Strawn, Martellら, 1989)において記載されているプロトコールに従って有利に実施される。
【0070】
上記で記載された式IVに対応する化合物は、以下を含む方法により調製してよい:
【0071】
a)一般式(II):
【0072】
【化3】

【0073】
により表される化合物を、式:A°−CO−A2〔式中、A2は、例えば、OH及びClからなる群より選択される反応性基であり、そしてA°は、R基又は(CH22n+1−X−R′基である〕を有する化合物と、可能であれば、当業者に既知のカップリング剤又は活性化剤の存在下で反応させることにより、一般式(III):
【0074】
【化4】

【0075】
〔式中、R1は、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕により表される化合物を得ること;及び
【0076】
b)化合物(III)を、酸(酢酸、トリフルオロ酢酸、ホウ酸、硫酸など)により脱保護することによって、上記で定義された一般式(IV)に対応する化合物を得ること。
【0077】
本発明の別の特定の方法により、式(I)〔式中、Gは、酸素原子であり、R3は、水素原子であり、そしてR1及びR2は、同一であるか又は異なって、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕により表される化合物は、本発明の式(I)〔式中、Gは、酸素原子であり、R2及びR3は、水素原子を表し、そしてR1は、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基である〕を有する化合物(化合物IV)から、以下の工程により得てもよい:
【0078】
a)化合物(IV)を、化合物PxE(ここで、Pxは、保護基であり;そしてEは、例えば、OH及びハロゲンからなる群より選択される反応性基である)と反応させることにより、一般式(V)〔式中、R1は、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基である〕を有する化合物を得る工程。有利には、本反応は、GaffneyとReese (1997) に記載された方法を適用することにより実行してよい(ここで、PxEは、化合物9−フェニルキサンテン−9−オール又は9−クロロ−9−フェニルキサンテンを表すことができる)。
【0079】
【化5】

【0080】
b)式(V)を有する化合物を、式:A°−CO−A2〔式中、A2は、例えば、OH及びClからなる群より選択される反応性基であり、そしてA°は、R基又は(CH22n+1−X−R′基である〕を有する化合物と、可能であれば、当業者に既知のカップリング剤又は活性化剤の存在下で反応させることにより、一般式(VI)〔式中、R1及びR2は、同一であるか又は異なって、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表し、そしてPxは、保護基である〕に対応する化合物を得る工程。
【0081】
【化6】

【0082】
c)化合物(VI)を当業者に既知の従来の方法で脱保護することにより、一般式(I)〔式中、Gは、酸素原子であり、R3は、水素原子であり、そしてR1及びR2は、同一であるか又は異なって、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕により表される化合物を得る工程。
【0083】
別の特定の発明の方法によると、一般式(I)〔式中、Gは、酸素原子であり、R1及びR3は、水素原子を表し、そしてR2は、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕により表される化合物は、以下を含む方法により得られる:
【0084】
a)式(VII):
【0085】
【化7】

【0086】
により表される化合物を、式:A°−CO−A2〔式中、A2は、例えば、OH及びClからなる群より選択される反応性基であり、そしてA°は、R基又は(CH22n+1−X−R′基である〕を有する化合物と、可能であれば、当業者に既知のカップリング剤又は活性化剤の存在下で反応させることにより、一般式(VIII):
【0087】
【化8】

【0088】
〔式中、R2は、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕により表される化合物を得ること;及び
【0089】
b)式(VIII)により表される化合物を酸性媒体中で、又は接触水素化により脱保護することによって、一般式(I)〔式中、Gは、酸素原子であり、R1及びR3は、水素原子を表し、そしてR2は、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕を有する化合物を得ること。
【0090】
有利には、上記の工程は、(Bodai, Novakら, 1999)、(Paris, Garmaiseら, 1980)、(Scriba 1993) 又は (Seltzman, Flemingら, 2000) で記載されているプロトコールに従って実施してよい。
【0091】
本発明の式(I)〔式中、Gは、硫黄原子であり、R2は、水素原子であり、そしてR1及びR3は、同一であるか又は異なって、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕により表される化合物は、式(IX)により表される化合物から、以下の方法により得てもよい:
【0092】
【化9】

【0093】
a)化合物(IX)を、式:A°−CO−A3〔式中、A3は、例えば、OH、O−CO−A°及びClからなる群より選択される反応性基であり、そしてA°は、R基又は(CH22n+1−X−R′基である〕を有する第1の化合物と反応させ、次に式:A°−CO−A3〔式中、第1の化合物とは独立に、A3は、例えば、OH、O−CO−A°及びClからなる群より選択される反応性基であり、そしてA°は、R基又は(CH22n+1−X−R′基である〕を有する第2の化合物と、可能であれば、当業者に既知のカップリング剤又は活性化剤の存在下で反応させること。
【0094】
b)酢酸水銀によりチオール基を脱保護すること。
【0095】
該方法は、有利には、(Aveta, Brandtら, 1986)で記載されたプロトコールに従って実施される。
【0096】
本発明の式(I)〔式中、Gは、硫黄原子であり、R2及びR3は、水素原子であり、そしてR1は、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕により表される化合物は、式(IX)により表される化合物から、以下の方法により得てもよい:
【0097】
a)化合物(IX)を、式:A°−CO−A3〔式中、A3は、例えば、OH、O−CO−A°及びClからなる群より選択される反応性基であり、そしてA°は、R基又は(CH22n+1−X−R′基である〕を有する第1の化合物と化学量論量で、可能であれば、当業者に既知のカップリング剤又は活性化剤の存在下で反応させること。
【0098】
b)酢酸水銀によりチオール基を脱保護すること。
【0099】
式(IX)により表される化合物は、以下を含む方法により調製してもよい:
【0100】
a)2−ハロゲノマロン酸ジメチルをトリチルチオールと反応させることにより、式Xにより表される化合物を得ること。
【0101】
【化10】

【0102】
b)アセテート官能基を当業者に既知の還元剤で還元すること。
【0103】
本発明の式(I)〔式中、Gは、硫黄原子であり、そしてR1、R2及びR3は、同一であるか又は異なって、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′を表す〕により表される化合物は、また、下記の方法で得てもよい(ダイアグラム1も参照すること):
【0104】
a)式Vを有する化合物を、式:LG−E〔式中、Eは、ハロゲンを表し、そしてLGは、例えば、メシル、トシルなどからなる群より選択される反応性基である〕の化合物と反応させて、一般式XI〔式中、Pxは、保護基を表す〕により表される化合物を得ること。
【0105】
b)式XIを有する化合物を、式:Ac−S-+〔式中、Acは、短アシル基、好ましくはアセチル基を表し、そしてBは、例えば、ナトリウム又はカリウム、好ましくはカリウムからなる群より選択される対イオンである〕の化合物と反応させて、式XIIにより表される化合物を得ること。該反応は、有利には、(Gronowitz, Herslofら, 1978)で記載されたプロトコールを適用して実施される。
【0106】
c)化合物(XII)の硫黄原子を当業者に既知の条件で脱保護して、一般式(XIII)により表される化合物を得ること。
【0107】
d)一般式(XIII)により表される化合物を、式:A°−CO−A2〔式中、A2は、例えば、OH及びClからなる群より選択される反応性基であり、そしてA°は、R基又は(CH22n+1−X−R′基である〕を有する化合物と、可能であれば、当業者に既知のカップリング剤又は活性化剤の存在下で反応させて、一般式(XIV)〔式中、R1及びR2は、同一であるか又は異なって、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕により表される化合物を得ること。
【0108】
e)式(XIV)の化合物を当業者に既知の従来の条件で脱保護して、本発明の式(I)〔式中、(i)Gは、硫黄原子であり、(ii)R3は、水素原子であり、そして(iii)R1及びR2は、同一であるか又は異なって、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕により表される化合物を得ること。
【0109】
f)本発明の式(I)〔式中、Gは、硫黄原子であり、そしてR1、R2及びR3は、同一であるか又は異なって、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕により表される化合物を、本発明の式(I)〔式中、(i)Gは、硫黄原子であり、(ii)R3は、水素原子であり、そして(iii)R1及びR2は、同一であるか又は異なって、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕を有する化合物(特に、上記工程e)で得られる化合物)と、式:A°−CO−A2〔式中、A2は、例えば、OH及びClからなる群より選択される反応性基であり、そしてA°は、R基又は(CH22n+1−X−R′基である〕を有する化合物とを、可能であれば、当業者に既知のカップリング剤又は活性化剤の存在下で反応させて得ること。
【0110】
【化11】

【0111】
別の実施態様によると、本発明の式(I)〔式中、Gは、硫黄原子であり、そしてR1、R2及びR3は、同一であるか又は異なって、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕により表される化合物は、下記の方法で得てもよい:
【0112】
a)本発明の一般式(I)〔式中、(i)Gは、酸素原子であり、(ii)R2は、水素原子を表し、そして(iii)R1及びR3は、同一であるか又は異なって、上記で定義されたCO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕により表される化合物を、ヨウ素と、当業者に既知の活性化剤の存在下で反応させて、式(XV)〔式中、R1及びR3は、同一であるか又は異なって、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕を有する化合物を得ること。
【0113】
【化12】

【0114】
b)式(XV)を有する化合物を、チオカルボン酸と、当業者に既知のカップリング剤又は活性化剤の存在下で反応させること。
【0115】
式(I)〔式中、Gは、N−R4基であり、そして式中、R1、R2及びR3は、同一であるか又は異なって、CO−R基又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表す〕により表される化合物は、式(I)〔式中、Gは、N−R4基であり、R1及びR3は、水素原子であり、R2は、CO−R基又はCO−(CH22n+1−X−R′基である〕を有する化合物(化合物XVI)から、以下の方法により得られる:
【0116】
化合物XVIを、式:A°−CO−A2〔式中、A2は、例えば、OH及びClからなる群より選択される反応性基であり、そしてA°は、R基又は(CH22n+1−X−R′基である〕を有する第1の化合物と反応させ、次に式:A°−CO−A2〔式中、第1の化合物とは独立に、A2は、例えば、OH及びClからなる群より選択される反応性基であり、そしてA°は、R基又は(CH22n+1−X−R′基である〕を有する第2の化合物と、可能であれば、当業者に既知のカップリング剤又は活性化剤の存在下で反応させること。
【0117】
該方法は、有利には、(Terradas 1993)で記載されたプロトコールに従って実施される。
【0118】
本発明の式(I)〔式中、Gは、N−R4基であり、そして式中、R1及びR2は、CO−R又はCO−(CH22n+1−X−R′基を表し、そしてR3は、水素原子である〕により表される化合物は、化合物XIIと式:A°−CO−A2〔式中、A2は、例えば、OH及びClからなる群より選択される反応性基であり、そしてA°は、R基又は(CH22n+1−X−R′基である〕を有する化合物とを化学量論量で、可能であれば、当業者に既知のカップリング剤又は活性化剤の存在下で反応させることにより得てもよい。
【0119】
本発明の式(I)〔式中、Gは、NH基であり、R1及びR3は、水素原子であり、R2は、CO−R基又はCO−(CH22n+1−X−R′基である〕により表される化合物(化合物XVIa)は、異なる方法で得てもよい。
【0120】
第1の方法では、2−アミノプロパン−1,3−ジオールの分子を、式:A°−CO−A〔式中、Aは、例えば、OH、O−CO−A°、OR″及びClからなる群より選択される反応性基であり、そしてA°は、R基又は(CH22n+1−X−R′基である〕を有する化合物と、可能であれば、当業者に既知のカップリング剤又は活性化剤の存在下で反応させる。
【0121】
該反応は、例えば、(Shaban 1977), (Kurfurst, Roigら, 1993)、(Harada, Morieら, 1996)、(Khanolkar, Abadjiら, 1996)、(Daniher 及び Bashkin 1998) 及び (Putnam 及び Bashkin 2000)で記載されたプロトコールを適用して実施してよい。
【0122】
本発明の式(I)〔式中、Gは、NH基であり、R1及びR3は、水素原子であり、R2は、CO−R基又はCO−(CH22n+1−X−R′基である〕により表される化合物(化合物XVIa)は、また、以下の方法により得てもよい:
【0123】
a)式(XVII)により表される化合物を、式:A°−CO−A〔式中、Aは、例えば、OH、O−CO−A°、OR″及びClからなる群より選択される反応性基であり、そしてA°は、R基又は(CH22n+1−X−R′基である〕を有する化合物と、可能であれば、当業者に既知のカップリング剤又は活性化剤の存在下で反応させることによって、一般式(XVIII):
【0124】
【化13】

【0125】
により表される化合物を得ること。
【0126】
【化14】

【0127】
b)化合物(XVIII)を脱保護すること。
【0128】
該方法は、有利には、(Harada, Morieら, 1996)で記載されたプロトコールに従って実施される。
【0129】
本発明の式(I)〔式中、Gは、N−R4基(ここで、R4は、水素原子ではない)であり、R1及びR3は、水素原子であり、R2は、CO−R基又はCO−(CH22n+1−X−R′基である〕により表される化合物(化合物XVIb)は、以下の方法により得てもよい:
【0130】
a)式(XVII)を有する化合物を、式:A°−CO−A〔式中、Aは、例えば、OH、O−CO−A°、OR″及びClからなる群より選択される反応性基であり、そしてA°は、R基又は(CH22n+1−X−R′基である〕を有する化合物と、可能であれば、当業者に既知のカップリング剤又は活性化剤の存在下で反応させることによって、一般式(XVIII):
【0131】
【化15】

【0132】
により表される化合物を得ること。
【0133】
【化16】

【0134】
b)化合物(XVIII)を、R4−A4型(ここで、A4は、Cl又はBrからなる群より選択される反応性基である)の化合物と、塩基性媒体中で反応させること。
【0135】
c)化合物(XVIII)を脱保護すること。
【0136】
本発明の実行可能性、実現性及び他の利点は、以下の実施例において更に詳述されるが、これらの実施例は、説明の目的で与えられるものであり、限定を目的とするものではない。
【0137】
実施例:
文書のより容易な理解のために、活性の測定及び評価に関わる実施例で使用される本発明の化合物は、次にのように省略され、例えば「Ex4g」は、その調製が実施例4gで記載されている本発明の化合物を示す。
【0138】
0.2mm厚のMERCKシリカゲル60F254で被覆されたプレートで薄層クロマトグラフィー(TLC)を実施した。保持因子はRfと省略される。
粒径40〜63μm(Merck参照番号9385−5000)を有するシリカゲル60でカラムクロマトグラフィーを実施した。
キャピラリー法によりBuchiB540装置で融点(MP)を測定した。赤外線(IR)スペクトルをBruker Fourier変換スペクトロメーター(Vector 22)で記録した。
Bruker AC300スペクトロメーター(300MHz)で核磁気共鳴(NMR)スペクトルを記録した。各信号は、その化学シフト、強度、多重度(注:一重項はs、広帯一重項はsl、二重項はd、分離二重項はdd、三重項はt、分離三重項はtd、五重項はquint及び多重項はm)、及びその結合定数(J)により同定された。
Perkin Elmer Sciex API 1(ESI−MS:エレクトロスプレーイオン化質量分析(ElectroSpray lonization Mass Spectrometry))又はApplied Biosystems Voyager DE-STR製のMALDI-TOF型(マトリックス補助レーザー脱着/イオン化−飛行時間(Matrix-Assisted Laser Desorption/lonization - Time Of Flight))により質量スペクトル(MS)を測定した。
【0139】
実施例1:脂肪酸誘導体の調製
実施例1a:テトラデシルチオ酢酸の調製
水酸化カリウム(34.30g、0.611mol)、メルカプト酢酸(20.9ml、0.294mol)及び1−ブロモテトラデカン(50ml、0.184mol)をこの順序でメタノール(400ml)に加えた。この混合物を室温で一晩撹拌した。次に水(800ml)に溶解した濃塩酸溶液(60ml)を反応混合物に加えた。テトラデシルチオ酢酸が沈殿した。この混合物を室温で一晩撹拌した。次に沈殿物を濾過し、水で5回洗浄して、デシケーター中で乾燥した。この生成物をメタノール中で再結晶した。
【0140】
【表1】

【0141】
実施例1b:4−(ドデシルチオ)ブタン酸の調製
ドデカンチオール(2.01g、10mmol)及びブロモ酪酸エチル(1.971g、10mmol)を不活性雰囲気下、室温で撹拌した。エタノール50mlに溶解した水酸化カリウム(1.36g、21mmol)をゆっくりと加えた。反応混合物を還流下で3時間加熱した。エタノールを真空下で留去した。残渣を水にとって、酸性にした。形成された沈殿物を濾過し、水で洗浄し、乾燥した。
【0142】
【表2】

【0143】
実施例1c:6−(デシルチオ)ヘキサン酸の調製
デカンチオール(4.57g、25mmol)及び4−ブロモ酪酸(5g、25mmol)を不活性雰囲気下、室温で撹拌した。エタノール50mlに溶解した水酸化カリウムをゆっくりと加えた。反応混合物を3時間還流した。エタノールを真空下で留去した。残渣を水にとって、酸性にした。形成された沈殿物を濾過し、水で洗浄し、乾燥した。
【0144】
【表3】

【0145】
実施例1d:テトラデシルセレノ酢酸の調製
二セレン化テトラデシルの調製
セレン(1.19g、15mmol)を不活性雰囲気下、THF/水の1:1混合物(50ml)に加えた。氷浴中で反応混合物を冷却後、四水素化ホウ素ナトリウム(1.325g、35mmol)をゆっくりと加えた。セレンの第2部(1.19g、15mmol)を加えた。反応混合物を室温で15分間撹拌し、次に還流下で加熱することにより、全ての試薬を溶解した。テトラヒドロフラン25mlに溶解したブロモテトラデカン(9ml、30mmol)を加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌し、次にジクロロメタンで抽出した。有機相を合わせて、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、蒸発乾固した。生成物を、更に精製することなく使用した。
【0146】
【表4】

【0147】
テトラデシルセレノ酢酸の調製
不活性雰囲気で、二セレン化ジテトラデシル(8.5g、17mmol)をテトラヒドロフラン/水(150ml/50ml)の混合物に溶解して、氷浴中で冷却した。四水素化ホウ素ナトリウム(2.9g、61mmol)をゆっくりと加え(溶液が白くなる)、続いてテトラヒドロフラン/水の混合物(25ml/25ml)に溶解したブロモ酢酸(8.5g、61mmol)を加えた。反応混合物を室温で6時間撹拌した。次に反応混合物をエーテルで抽出して、水相を酸性にした。得られた沈殿物を濾過し、水で数回洗浄し、乾燥した。
【0148】
【表5】

【0149】
実施例1e:テトラデシルスルホキシ酢酸の調製
テトラデシルチオ酢酸(実施例1a)(5g、17.4mmol)をメタノール/ジクロロメタン(160ml/80ml)の混合物に溶解した。反応混合物を撹拌し、氷浴中で冷却し、次に水(160ml)に溶解したオキソン(Oxone)(登録商標)(12.8g、21mmol)をゆっくりと加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌した。溶媒を真空下で留去した。残った水相に形成された沈殿物を水切りし、水で数回洗浄し、乾燥した。
【0150】
【表6】

【0151】
実施例1f:6−(デシルスルホキシ)ヘキサン酸の調製
本生成物は、6−(デシルチオ)ヘキサン酸(実施例1c)から上述の手順(実施例1e)に従って調製した。
【0152】
【表7】

【0153】
実施例1g:テトラデシルスルホニル酢酸の調製
テトラデシルチオ酢酸(実施例1a)(5g、17.4mmol)をメタノール/ジクロロメタン(160ml/80ml)の混合物に溶解した。反応混合物を撹拌し、氷浴中で冷却し、次に水(160ml)に溶解したオキソン(Oxone)(登録商標)(21.8g、35mmol)をゆっくりと加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌した。溶媒を真空下で留去した。残った水相に形成された沈殿物を水切りし、水で数回洗浄し、乾燥した。
【0154】
【表8】

【0155】
実施例1h:6−(デシルスルホニル)ヘキサン酸の調製
本生成物は、6−(デシルチオ)ヘキサン酸(実施例1c)から上述の手順(実施例1g)に従って調製した。
【0156】
【表9】

【0157】
実施例1i:ドコシルチオ酢酸の調製
本生成物は、メルカプト酢酸及びブロモドコサンから上述の手順(実施例1a)に従って得た。
【0158】
【表10】

【0159】
実施例2:モノアシルグリセロールの調製
実施例2a:1−テトラデシルチオアセチルグリセロールの調製
1−テトラデシルチオアセチル−2,3−イソプロピリデングリセロールの調製
氷浴に浸したフラスコ中で、テトラデシルチオ酢酸(実施例1a)(4g、13.86mmol)をテトラヒドロフラン(100ml)に溶解し、次にEDCl(2.658g、13.86mmol)、ジメチルアミノピリジン(1.694g、13.86mmol)及びソルケタール(1.72ml、13.86mmol)をこの順序で加えた。反応混合物を室温で4日間撹拌した。溶媒を真空下で留去した。残渣をジクロロメタンにとって、1N塩酸水溶液、次に10%重炭酸ナトリウム水溶液、そして最後に飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空下で留去した。残留油状物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/シクロヘキサン 1:9)により精製した。生成物を、黄色の油状物として得た。
【0160】
【表11】

【0161】
1−テトラデシルチオアセチルグリセロールの調製
1−テトラデシルチオアセチル−2,3−イソプロピリデングリセロール(4.163g、10.356mmol)を酢酸(60ml)に溶解し、室温で撹拌した。11日間の反応後、反応混合物を水に希釈し、次に酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、次に硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を留去した。得られた白色の粉末をヘプタン中で再結晶した。
【0162】
【表12】

【0163】
実施例2b:1−パルミトイルグリセロールの調製
この化合物は、ソルケタール及びパルミチン酸から出発して上述の手順(実施例2a)に従って合成した。
【0164】
1−パルミトイル−(2,3−イソプロピリデン)グリセロール
【0165】
【表13】

【0166】
1−パルミトイルグリセロール
【0167】
【表14】

【0168】
実施例2c:2−テトラデシルチオアセチルグリセロールの調製
1,3−ベンジリデングリセロールの調製
グリセロール(30g、0.326mol)、ベンズアルデヒド(34.5g、0.326mol)及びp−トルエンスルホン酸(50mg)をトルエン350mlに溶解して、デーン・シュターク(Dean-Stark)装置で18時間還流した。反応混合物を乾燥した。残留生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン/酢酸エチル 8:2〜7:3)により精製し、再結晶した。
【0169】
【表15】

【0170】
2−テトラデシルチオアセチル−1,3−ベンジリデングリセロールの調製
氷浴に浸したフラスコ中で、テトラデシルチオ酢酸(実施例1a)(0.800g、2.774mmol)をテトラヒドロフラン(75ml)に溶解し、続いてEDCl(0.532g、2.774mmol)、ジメチルアミノピリジン(0.339g、2.774mmol)及び1,3−ベンジリデングリセロール(0.5g、2.774mmol)をこの順序で加えた。混合物を室温で16時間撹拌した。溶媒を留去した。残渣をジクロロメタンにとって、1N塩酸、次に10%炭酸カリウム溶液、そして最後に飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、乾燥した。残渣を石油エーテルにとった。形成された沈殿物を濾過し、次にシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル−シクロヘキサン 2:8)により精製して、目的化合物を白色の粉末として生成した。
【0171】
【表16】

【0172】
2−テトラデシルチオアセチルグリセロールの調製
2−テトラデシルチオアセチル−1,3−ベンジリデングリセロール(0.576g、1.278mmol)をジオキサンとホウ酸トリエチルの50:50(V/V)混合物に溶解し、続いてホウ酸(0.317g、5.112mmol)を加えた。反応混合物を100℃で4時間加熱した。ホウ酸2当量(0.158g、2.556mmol)を加え、続いて反応の5.5時間後及び7時間後に2当量を加えた。反応24時間後、ホウ酸トリエチルを留去した。残渣を酢酸エチルにとって、水で洗浄した。水相を重炭酸ナトリウムで中和し、次にジクロロメタンで抽出した。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、乾燥した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル−シクロヘキサン 5:5)により精製した。
【0173】
【表17】

【0174】
実施例3:1,3−ジアシルグリセロールの調製
実施例3a:1,3−ジパルミトイルグリセロールの調製
グリセロール(10g、0.109mol、1当量)、パルミチン酸(55.69g、0.217mol、2当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(44.77g、0.217mol、2当量)及びジメチルアミノピリジン(26.51g、0.217mol、2当量)をジクロロメタンに溶解した。反応混合物を室温で48時間撹拌した。形成されたジシクロヘキシル尿素を濾過し、ジクロロメタンで数回洗浄した。濾液を乾燥した。残留生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)により精製した。
【0175】
【表18】

【0176】
実施例3b:1,3−ジリノレイルグリセロールの調製
この化合物は、グリセロール及びリノール酸から上述の手順(実施例3a)に従って得た。生成物を、無色の油状物として得た。
【0177】
【表19】

【0178】
実施例3c:1,3−ジステアリルグリセロールの調製
この化合物は、グリセロール及びステアリン酸から上述の手順(実施例3a)に従って得た。生成物を、白色の粉末として得た。
【0179】
【表20】

【0180】
実施例3d:1,3−ジオレイルグリセロールの調製
この化合物は、グリセロール及びオレイン酸から上述の手順(実施例3a)に従って得た。生成物を、無色の油状物として得た。
【0181】
【表21】

【0182】
実施例3e:1,3−ジテトラデカノイルグリセロールの調製
この化合物は、グリセロール及びテトラデカン酸から上述の手順(実施例3a)に従って得た。生成物を、白色の粉末として得た。
【0183】
【表22】

【0184】
実施例3f:1,3−ジテトラデシルチオアセチルグリセロールの調製
この化合物は、グリセロール及びテトラデシルチオ酢酸(実施例1a)から上述の手順(実施例3a)に従って得た。生成物を、白色の粉末として得た。
【0185】
【表23】

【0186】
実施例3g:1−オレイル−3−パルミトイルグリセロールの調製
1−パルミチン酸グリセロール(実施例2b)(5.516g、0.017mol)をジクロロメタン(500ml)に溶解した。次にジシクロヘキシルカルボジイミド(5.165g、0.025mol)、ジメチルアミノピリジン(3.058g、0.025mol)及びオレイン酸(4.714g、0.017mol)を加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌した。ジシクロヘキシル尿素沈殿物を濾過し、ジクロロメタンで洗浄して、真空下で濾液を留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)により精製すして、目的化合物を白色の固体として得た。
【0187】
【表24】

【0188】
実施例3h:1,3−ジアセチルグリセロールの調製
グリセロール(30g、0.326mol)をジクロロメタン(300ml)に加え、続いてピリジン(79ml、0.977mol)を加え、次に無水酢酸(61.5ml、0.651mol)を滴加した。反応混合物を室温で48時間撹拌した。混合物をジクロロメタンにとった。有機相を、1N塩酸で、次に10%重炭酸ナトリウムで、次に飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、蒸発乾固して無色の油状物を得て、それを更に精製しないで使用した。
収率:34%
IR:νCOエステル1742cm-1
【0189】
実施例3i:1,3−ジオクタノイルグリセロールの調製
この化合物は、グリセロール及びオクタン酸から上述の手順(実施例3a)に従って得た。生成物を、無色の油状物として得た。
【0190】
【表25】

【0191】
実施例3j:1,3−ジウンデカノイルグリセロールの調製
この化合物は、グリセロール及びウンデカン酸から上述の手順(実施例3a)に従って得た。生成物を、白色の粉末として得た。
【0192】
【表26】

【0193】
実施例4:1,2,3−トリアシルグリセロールの調製
実施例4a:1,2,3−トリテトラデシルチオアセチルグリセロールの調製
グリセロール(1g、10.86mmol)をジクロロメタン(200ml)に溶解した。次にジシクロヘキシルカルボジイミド(7.84g、38.01mol)、ジメチルアミノピリジン(4.64g、38.01mmol)及びテトラデシルチオ酢酸(実施例1a)(9.40g、32.58mmol)を加えた。この混合物を室温で撹拌した。48時間の反応後、ジシクロヘキシル尿素沈殿物を濾過し、ジクロロメタンで洗浄し、濾液を留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/シクロヘキサン 4:6)により精製した。1,2,3−トリテトラデシルチオアセチルグリセロールを、白色の粉末として得た。
【0194】
【表27】

【0195】
実施例4b:1,2,3−トリ−(4−ドデシルチオ)ブタノイルグリセロールの調製
この化合物は、4−(ドデシルチオ)ブタン酸(実施例1b)及びグリセロールから上述の手順(実施例4a)に従って得た。
【0196】
【表28】

【0197】
実施例4c:1,2,3−トリ−(6−デシルチオ)ヘキサノイルグリセロールの調製
この化合物は、6−(デシルチオ)ヘキサン酸(実施例1c)及びグリセロールから上述の手順(実施例4a)に従って得た。
【0198】
【表29】

【0199】
実施例4d:1,2,3−トリテトラデシルスルホキシアセチルグリセロールの調製
この化合物は、テトラデシルスルホキシ酢酸(実施例1e)及びグリセロールから上述の手順(実施例4a)に従って得た。
【0200】
【表30】

【0201】
実施例4e:1,2,3−トリ−(テトラデシルスルホニル)アセチルグリセロールの調製
この化合物は、テトラデシルスルホニル酢酸(実施例1g)及びグリセロールから上述の手順(実施例4a)に従って得た。
【0202】
【表31】

【0203】
実施例4f:1,2,3−トリ−テトラデシルセレノアセチルグリセロールの調製
この化合物は、テトラデシルセレノ酢酸(実施例1d)及びグリセロールから上述の手順(実施例4a)に従って得た。
【0204】
【表32】

【0205】
実施例4g:1,3−ジパルミトイル−2−テトラデシルチオアセチルグリセロールの調製
1,3−ジパルミトイルグリセロール(実施例3a)(5.64g、9.9mmol、1当量)、テトラデシルチオ酢酸(実施例1a)(5.74g、19.8mmol、2当量)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(4.1g、19.8mmol、2当量)及びジメチルアミノピリジン(2.42g、19.8mmol、2当量)をジクロロメタンに溶解した。反応混合物を室温で3日間撹拌した。形成されたジシクロヘキシル尿素を濾過し、ジクロロメタンで数回洗浄した。濾液を乾燥した。残留生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/シクロヘキサン 4:6)により精製した。
【0206】
【表33】

【0207】
実施例4h:1,3−ジリノレイル−2−テトラデシルチオアセチルグリセロールの調製
この化合物は、1,3−ジリノレイルグリセロール(実施例3b)及びテトラデシルチオ酢酸(実施例1a)から上述の手順(実施例4g)に従って得た。生成物を、無色の粘性油状物として得た。
【0208】
【表34】

【0209】
実施例4i:1,3−ジステアリル−2−テトラデシルチオアセチルグリセロールの調製
この化合物は、1,3−ジステアリルグリセロール(化合物3c)及びテトラデシルチオ酢酸(化合物1a)から上述の手順(実施例4g)に従って得た。
【0210】
【表35】

【0211】
実施例4j:1,3−オレオイル−2−テトラデシルチオアセチルグリセロールの調製
この化合物は、1,3−ジオレオイルグリセロール(化合物3d)及びテトラデシルチオ酢酸(化合物1a)から上述の手順(実施例4g)に従って得た。生成物を、無色の粘性油状物として得た。
【0212】
【表36】

【0213】
実施例4k:1,3−ジテトラデカノイル−2−テトラデシルチオアセチルグリセロールの調製
この化合物は、1,3−ジテトラデカノイルグリセロール(化合物3e)及びテトラデシルチオ酢酸(化合物1a)から上述の手順(実施例4g)に従って得た。
【0214】
【表37】

【0215】
実施例4l:1−パルミトイル−2,3−ジテトラデシルチオアセチルグリセロールの調製
1−パルミチン酸グリセロール(実施例2b)(4.804g、14mol)をジクロロメタン(300ml)に溶解した。次にジシクロヘキシルカルボジイミド(7.498g、36mmol)、ジメチルアミノピリジン(4.439g、0.036mol)及びテトラデシルチオ酢酸(実施例1a)(8.386g、29mmol)を加えた。反応混合物を室温で48時間撹拌した。ジシクロヘキシル尿素沈殿物を濾過し、ジクロロメタンで洗浄した。濾液を乾燥した。残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/シクロヘキサン 4:6)により精製して、目的化合物を白色の粉末として得た。
【0216】
【表38】

【0217】
実施例4m:1−オレイル−3−パルミトイル−2−テトラデシルチオアセチルグリセロールの調製
1−オレイル−3−パルミトイルグリセロール(実施例3g)(2g、3mmol)をジクロロメタン(150ml)に溶解した。次にジシクロヘキシルカルボジイミド(1.040g、5mmol)、ジメチルアミノピリジン(0.616g、5mmol)及びテトラデシルチオ酢酸(実施例1a)(1.455g、5mmol)を加えた。混合物を室温で24時間撹拌した。ジシクロヘキシル尿素沈殿物を濾過し、ジクロロメタンで洗浄し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/シクロヘキサン 4:6)により精製して、目的化合物を油状物として得た。
【0218】
【表39】

【0219】
実施例4n:1,3−ジパルミトイル−2−ドコシルチオアセチルグリセロールの調製
この化合物は、1,3−ジパルミトイルグリセロール(実施例3a)及びドコシルチオ酢酸(実施例1i)から上述の手順(実施例4g)に従って得た。
【0220】
【表40】

【0221】
実施例4o:1,3−ジテトラデシルチオアセチル−2−パルミトイルグリセロールの調製
この化合物は、1,3−ジテトラデシルチオアセチルグリセロール(実施例3f)及びパルミチン酸から上述の手順(実施例4g)に従って得た。
【0222】
【表41】

【0223】
実施例4p:1,3−ジアセチル−2−テトラデシルチオアセチルグリセロールの調製
この化合物は、1,3−ジアセチルグリセロール(実施例3h)及びテトラデシルチオ酢酸(実施例1a)から上述の手順(実施例4g)に従って得た。
【0224】
【表42】

【0225】
実施例4q:1,3−ジオクタノイル−2−テトラデシルチオアセチルグリセロールの調製
この化合物は、1,3−ジオクタノイルグリセロール(実施例3i)及びテトラデシルチオ酢酸(実施例1a)から上述の手順(実施例4g)に従って得た。
【0226】
【表43】

【0227】
実施例4r:1,3−ッジウンデカノイル−2−テトラデシルチオアセチルグリセロールの調製
この化合物は、1,3−ジウンデカノイルグリセロール(実施例3j)及びテトラデシルチオ酢酸(実施例1a)から上述の手順(実施例4g)に従って得た。
【0228】
【表44】

【0229】
実施例5:2−アミノグリセロール誘導体の調製
実施例5a:2−テトラデシルチオアセトアミドプロパン−1,3−ジオールの調製
テトラデシルチオ酢酸(実施例1a)(2.878g、10mmol)及び2−アミノ−1,3−プロパンジオール(1g、11mmol)をフラスコに入れて、190℃で1時間加熱した。室温まで冷却後、媒体をクロロホルムにとって、水で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、次に留去して、黄土色の固体残渣を形成した。この残渣をジエチルエーテル中で12時間撹拌した。生成物を、濾過により、白色の粉末の形態で単離した。
【0230】
【表45】

【0231】
実施例5b:2−テトラデシルチオアセトアミド−1,3−ジテトラデシルチオアセチルオキシプロパンの調製
2−テトラデシルチオアセトアミドプロパン−1,3−ジオール(実施例5a)(1g、2.77mmol)をジクロロメタン(180ml)に溶解した。次にジシクロヘキシルカルボジイミド(1.427g、6.91mmol)、ジメチルアミノピリジン(0.845g、6.91mmol)及びテトラデシルチオ酢酸(実施例1a)(1.995g、6.91mmol)をこの順序で加えた。反応混合物を室温で48時間撹拌した。ジシクロヘキシル尿素沈殿物を濾過し、ジクロロメタンで洗浄し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/シクロヘキサン 7:3)により精製した。目的化合物を、白色の粉末として得た。
【0232】
【表46】

【0233】
実施例6:2−チオグリセロール誘導体の調製
実施例6a:2−(テトラデシルチオ)チオ酢酸の調製
S−トリフェニルメチル2−(テトラデシルチオ)チオアセテートの調製
トリフェニルメチルチオール(9.58g、35mmol)をジクロロメタンに溶解し、次にジシクロヘキシルカルボジイミド(7.15g、35mmol)、ジメチルアミノピリジン(4.24g、35mmol)及びテトラデシルチオ酢酸(実施例1a)(10g、35mmol)を加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌した。ジシクロヘキシルカルボジイミドを濾過し、ジクロロメタンで洗浄した。濾液を乾燥した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/シクロヘキサン 1:9)により精製した。
【0234】
【表47】

【0235】
2−(テトラデシルチオ)チオ酢酸の調製
S−トリフェニルメチル2−(テトラデシルチオ)チオアセテート(4.715g、9mmol)をジクロロメタン(150ml)中の酢酸水銀(5.495g、17mmol)の懸濁液に、冷却中で加えた。反応混合物を18時間撹拌した。混合物をセライト(登録商標)で濾過し、高温ジクロロメタンで洗浄した。濾液を留去して、粉末状の残渣を得て、それを無水エタノールにとって、濾過した。濾液を濃縮すると、黄色の油状物を得て、それを更に精製しないで使用した。
Rf(ジクロロメタン/メタノール 9:1):0.58
【0236】
実施例6b:2−ヨード−1,3−ジテトラデシルチオアセトキシプロパンの調製
1,3−ジテトラデシルチオアセチルグリセロール(実施例3f)(2g、3mmol)をトルエン(180ml)に溶解し、次にイミダゾール(0.538g、8mmol)、トリフェニルホスフィン(2.072g、8mmol)及びヨウ素(1.604g、6mmol)を加えた。反応混合物を室温で撹拌し、反応の進行を、薄層クロマトグラフィーで追跡した。20時間の反応の後、亜硫酸ナトリウムで飽和された溶液を、媒体が完全に平衡するまで加えた。媒体を沈降させ、水相をトルエンで抽出した。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を留去した。得られた残渣(4.4g)をPuriflashカラム(溶離液:ジクロロメタン/シクロヘキサン 1:9、次に3:7)のクロマトグラフィーにより精製した。
【0237】
【表48】

【0238】
実施例6c:1,3−ジテトラデシルチオアセトキシ−2−(2−テトラデシルチオ)メチルカルボニルチオプロパンの調製
2−ヨード−1,3−ジテトラデシルチオアセトキシプロパン(実施例6b)(200mg、0.27mmol)及び2−(テトラデシルチオ)チオール酢酸(実施例6a)(82mg、0.27mmol)を蒸留テトラヒドロフラン(30ml)に溶解した。反応混合物を氷浴で冷却し、その後水素化ナトリウム(22mg、0.54mmol)を加えた。この混合物を室温で撹拌した。48時間後、水素化ナトリウムを加水分解し、テトラヒドロフランを留去した。媒体を酢酸エチルで抽出し、有機相を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、留去した。得られた黄色の油状残渣(164mg)を、ショートシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/シクロヘキサン 5:5)により精製して、目的化合物を黄色の油状物として得た。
【0239】
【表49】

【0240】
実施例7:インビトロ実験のための本発明の化合物の調製方法
下記実施例で記載されるインビトロ実験を実施するために、本発明の化合物を下記で記載されるように乳剤の形態で調製した。
【0241】
Spoonerらにより記載されたように(Spooner, Clarkら, 1988)、本発明の化合物及びホスファチジルコリン(PC)を含む乳剤を調製した。本発明の化合物をPCと4:1(m/m)比でクロロホルム中で混合し、この混合物を窒素下で乾燥し、次に一晩真空留去し、得られた粉末を、0.01M EDTAを含む0.16M KClにとって、この脂質粒子を超音波により37℃で30分間分散させた。このようにして形成されたリポソームを次に超遠心分離(XL80超遠心分離機、Beckman Coulter, Villepinte, France)により25,000rpmで45分間分離することにより、100nmを超えてキロミクロンに近い大きさを有するリポソームを回収した。陰性対照として使用するために、PCだけからなるリポソームを同時に調製した。
本発明の化合物におけるリポソームの組成は、酵素比色トリグリセリド測定法キットを用いて推定した。この測定法は、脂質較正物質のCFAS、参照番号759350(Boehringer Mannheim GmbH, Germany)で作製した標準曲線に対して実行した。この標準曲線は、16〜500μg/mlの範囲の濃度を包含した。滴定プレート(96ウェル)上に1ウェルにつき各試料希釈液又は較正標準液100μlを滴下した。次にトリグリセリド試薬、参照番号701912(Boehringer Mannheim GmbH, Germany)200μlを各ウェルに加え、プレート全体を37℃で30分間インキュベートした。光学密度(OD)は、分光光度計で492nmで読みとった。各試料におけるトリグリセリド濃度は、一次関数:y=ax+b〔式中、yは、ODを表し、そしてxは、トリグリセリド濃度を表す〕としてプロットした標準曲線から計算した。
【0242】
このようにして調製された、本発明の化合物を含有するリポソームを、実施例9、10及び11に記載されているインビトロ実験で使用した。
【0243】
実施例8:本発明の化合物の抗酸化特性の評価
A−銅又はアゾビス(2−アミノプロパン)二塩酸塩(AAPH)により誘導されたLDL酸化に対する保護
LDLの酸化は、アテローム動脈硬化の発症及び進展において主要な役割を演じる、重要な変性である(Jurgens, Hoffら, 1987)。以下のプロトコールにより、化合物の抗酸化特性を証明することができる。他に記載がなければ、全ての試薬はシグマ(Sigma)(St Quentin, France)製である。
LDLは、Lebeauらで記載された(Lebeau, Furmanら, 2000)ように調製した。試験化合物の溶液は、最終濃度が、1%(V/V)の総エタノール濃度で0.1〜100μMの範囲になるように、エタノール中10〜2Mで調製し、PBSで希釈した。
【0244】
酸化の前に、透析によりLDL調製物からEDTAを除去した。次に、16.6μM CuSO4又は2mM AAPH 100μlを、LDL(125μgタンパク質/ml)800μl及び試験化合物溶液100μlに加えることにより、酸化反応を30℃で行った。追跡すべき種であるジエンの形成は、銅(又はAAPH)の存在下又は不在下、本化合物により処理した試料中の234nmの光学密度により測定した。234nmの光学密度は、10分毎に8時間、サーモスタット付き分光光度計(Kontron Uvikon 930)で測定した。分析は三重に行った。対照試料に対して遅滞期潜伏時間をシフトするならば、化合物は抗酸化活性を有すると考えた。発明者たちは、本発明の化合物が、LDL酸化(銅により誘導)を遅延させることを証明したが、このことは、本発明の化合物が、固有の抗酸化活性を有することを示している。図2は、本発明の化合物により得られた結果の一例を表す。
図2aは、LDLと本発明の試験化合物とのインキュベーションが、共役ジエンの形成を遅延させたこと示す。LDLを10-4Mの本発明の化合物Ex4g(上記の実施例4gで記載された本発明の化合物)と共にインキュベートしたときに282分に達した共役ジエン形成の遅延期と比較すると、遅延期は銅単独では104分であった。本発明の化合物Ex4aも、また、遅延期を270分まで伸ばした。該2個の化合物は、それぞれ170及び160%の遅延期の増加を誘導した。化合物Ex4h、4q、4o及び2aは、それぞれ43、54、37及び67%の遅延期の増加を誘導した。この共役ジエン形成の遅延は、抗酸化剤の特徴である。本発明の化合物Ex4g及び4aは、最も顕著な固有の抗酸化特性をもつ化合物であった。
図2aは、銅の存在下での本発明の化合物とLDLとのインキュベーションが、共役ジエンの形成速度を遅らせたことを示す。この速度は、銅単独では3nmol/分/mg LDLであり、そして10-4Mで化合物Ex4aを用いると1nmol/分/mg LDLに減少し、これは酸化速度の66%の減速に相当する。本発明の化合物Ex4h及びEx4gも、LDL酸化速度を遅くし、この場合は、それぞれ2.5及び1.8nmol/分/mg LDLであった。本発明の化合物Ex4q、4o及び2aを用いるLDLのインキュベーションは、LDL酸化速度を有意に変えなかった。
本発明の化合物Ex4a、4g及び4hは、固有の抗酸化特性を有し、また、銅誘導LDL酸化の速度の減速を促した。
図2cは、LDLと銅とのインキュベーションにより、LDL 1mg当たり496nmolの共役ジエンが形成されたことを示す。化合物Ex4a(10−4M)とのインキュベーションにより、形成された共役ジエンの最大量の60%の減少となった。化合物Ex4g及び4h(10-4M)も、共役ジエンの形成を抑制した。該化合物とLDLとのインキュベーションにより、形成された共役ジエンの最大量の、それぞれ31及び24%の減少となった。
【0245】
B−脂質過酸化反応に対して本発明の化合物により与えられる保護の評価:
試験した本発明の化合物は、その調製が上記の実施例に記載されている化合物である。
LDL酸化は、TBARS法により測定した。
【0246】
上述のものと同じ原理により、LDLをCuSO4の存在下で酸化させて、脂質の過酸化を以下のように評価した:
TBARSは、分光光度法により測定し、脂質ヒドロペルオキシド化は、ヨウ化物のヨウ素への脂質過酸化物依存性酸化を利用して測定した。結果は、マロンジアルデヒド(MDA)のnmolとして、又はnmolヒドロペルオキシド/mgタンパク質として表される。
結合ジエン形成の抑制を測定することにより上記で得られた結果は、LDL脂質過酸化を測定する実験により確認した。また本発明の化合物によって、銅(酸化剤)により誘導された脂質の過酸化に対するLDLの効率的な保護ができた。
【0247】
実施例9:細胞培養物に及ぼす本発明の抗酸化特性の測定
A−培養プロトコール:
ニューロン、ニューロブラストーマ(ヒト)及びPC12細胞(ラット)がこの種の試験に使用した細胞株であった。PC12細胞は、ラットのクロム親和性細胞種から調製し、Greene 及び Tischler により特徴づけられた(Greene 及び Tischler, 1976)。これらの細胞は、通常、神経細胞の分化、信号伝達及び神経細胞死の試験に使用される。PC12細胞を前述された(Farinelli, Parkら, 1996)ように、10%ウマ血清及び5%ウシ胎仔血清を補足した完全なRPMI培地(Invitrogen)中で増殖した。
内皮及び平滑筋細胞の初代培養物も使用した。細胞はプロモセル(Promocell)(Promocell GmBH, Heidelberg)から得て、供給業者の指示書に従って培養した。
細胞を5〜300μMの範囲の異なる用量の化合物で24時間処理した。次に細胞を回収し、標的遺伝子の発現の増加を定量PCRで評価した。
【0248】
B−mRNA測定:
mRNAは、本発明の化合物で処理したか、又はしなかった細胞培養物から抽出した。抽出は、Absolutely RNA RT-PCR ミニプレップキット(Stratagene, France)の試薬で供給業者により指示されたとおりに実行した。次にmRNAは、分光法により測定して、Light Cycler System (Roche, France) Light Cycler Fast Start DNA Master Sybr Green Iキット(Roche)を用いる、定量RT−PCRにより定量した。抗酸化酵素スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ及びグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)をコードする遺伝子に特異的なプライマー対をプローブとして使用した。□−アクチン及びシクロフィリンに特異的なプライマー対を対照プローブとして使用した。
【0249】
定量RT−PCRで測定した抗酸化酵素遺伝子のmRNA発現の増加は、細胞が本発明の化合物で処理されたとき、使用した異なる細胞の種類で実証された。
【0250】
C−酸化ストレスの制御:
培養細胞における酸化種の測定:
化合物の抗酸化特性も、蛍光標識を用いて評価し、その酸化は、蛍光信号の出現により追跡した。発光した蛍光信号の強度の減少は、化合物で処理された細胞において下記の方法で測定した:上記のように培養されたPC12細胞(ブラック96ウェルプレート、透明底、Falcon)を、血清無含有培地で、用量を増加させるH22(0.25mM〜1mM)と共に2及び24時間インキュベートした。インキュベーションの後、培地を除去し、細胞をPBS中の10μMジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート溶液(DCFDA、Molecular Probes, Eugene, USA)と共に37℃、5%CO2雰囲気で30分間インキュベートした。次に細胞をPBSですすいだ。酸化標識により発光している蛍光を、蛍光計(Tecan Ultra 384)により、励起波長495nm及び発光波長535nmで測定した。結果は、酸化対照に対する保護の百分率として表す。
蛍光強度は、未処理細胞よりも本発明の化合物とインキュベートした細胞において低かった。これらの所見は、本発明の化合物が、酸化ストレスに曝された細胞において酸化種の産生の抑制を促進することを示す。予め述べた抗酸化特性も、培養された細胞における抗ラジカル保護の誘導に有効である。
【0251】
D−脂質の過酸化の測定:
異なる細胞株(上記の細胞モデル)及び初代細胞培養物を前記のように処理した。処理の後、細胞上清を回収し、細胞を溶解し、タンパク質濃度の測定のために回収した。脂質の過酸化を下記のように検出した:脂質の過酸化は、マロンジアルデヒド(MDA)のようなアルデヒドの脂質過酸化と反応する、チオバルビツール酸(TBA)を用いて測定した。処理の後、細胞上清を収集し(900μl)、ブチル化ヒドロキシトルエン90μlを加えた(Morliere, Moysanら, 1991)。15%トリクロロ酢酸を含有する0.25M炭酸カリウム中のTBAの0.375%溶液1ミリリットルもこの反応媒体に加えた。この混合物を80℃で15分間加熱し、氷上で冷却して、有機相をブタノールで抽出した。有機相は、シマヅ1501分光蛍光計(島津製作所、京都、日本)で、分光蛍光法(λex=515nm及びλem=550nm)により分析した。TBARSを、テトラ−エトキシプロパンを標準として使用してMDA当量として表した。結果を、タンパク質濃度に対して標準化した。
本発明の化合物で処理された細胞において観察された脂質の過酸化の減少は、前記の結果を確認する。
本発明の化合物は、有利には、酸化ストレスの影響を遅延及び/又は抑制する、固有の抗酸化特性を示す。発明者たちは、また、本発明の化合物が、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現を誘導することができることも示す。これらの本発明の化合物の特定の特徴は、細胞が酸化ストレスと有効に戦うことを可能にし、したがってフリーラジカル誘発損傷から保護することを可能にする。
【0252】
実施例10:本発明の化合物によるインビトロでのPPAR活性の評価
異常脂肪血症及び糖尿病の治療に外来で広く使用されている2つの主な医薬分類であるフィブラート系及びグリタゾン系(glitazones)により活性化される、PPARサブファミリーの核内受容体は、脂質及びブドウ糖のホメオスタシスにおいて重要な役割を演じる。下記の実験データは、本発明の化合物がPPARαをインビトロで活性化することを示す。
【0253】
PPAR活性化を、酵母菌gal4転写因子のDNA結合ドメイン及び異なるPPARのリガンド結合ドメインから構成されるキメラの転写活性を測定することにより、RK13線維芽細胞の細胞株又は血液細胞HepG2においてインビトロで試験した。下記の例は、HepG2細胞で示す。
【0254】
A−培養プロトコール:
HepG2細胞は、ECACC(Porton Down, UK)から得て、10%(V/V)ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリン(Gibco, Paisley, UK)及び2mM L−グルタミン(Gibco, Paisley, UK)を補足したDMEM培地で増殖させた。培地は2日毎に取り換えた。細胞は、空気95%/CO2 5%の加湿した雰囲気中、37℃で保持した。
【0255】
B−トランスフェクションに使用したプラスミドの記載:
プラスミドpG5TkpGL3、pRL−CMV、pGal4−hPPARα、pGal4−hPPARγ及びpGal4−fは、Raspeらにより記載された(Raspe、Madsenら, 1999)。pGal4−mPPARα及びpGal4−hPPARβ作成体は、マウスPPARα及びヒトPPARβ核内受容体のDEFドメインに対応するPCR増幅DNA断片をそれぞれpGal4−fベクター中にクローン化することにより得た。
【0256】
C−トランスフェクション:
HepG2細胞を24ウエル培養皿に5×104細胞/ウエルで接種し、前述のプロトコール(Raspe, Madsen ら, 1999)に従って、レポータープラスミドpG5TkpGL3(50ng/ウエル)、発現ベクターpGal4−f、pGal4−mPPARα、pGal4−hPPARα、pGal4−hPPARγ、pGal4−hPPARβ(100ng/ウエル)及びトランスフェクション効率制御ベクターpRL−CMV(1ng/ウエル)で2時間トランスフェクトし、次に試験化合物で36時間インキュベートした。実験の終了時に、細胞を溶解し(Gibco, Paisley, UK)、ルシフェラーゼ活性を、供給者の使用説明書に従って、Dual-Luciferase(商標)Reporter Assay Systemキット(Promega, Madison, WI, USA)により測定した。次に、供給業者による指示によりBio-Rad Protein Assay(Bio-Rad, Munich, Germany)で細胞抽出物中のタンパク含有量を求めた。
【0257】
発明者は、本発明の化合物で処理され、pGal4−hPPARαプラスミドでトランスフェクトされた細胞のルシフェラーゼ活性が増加したことを示す。該ルシフェラーゼ活性誘導は、本発明の化合物がPPAR□の活性化剤であることを示す。図3は、本発明の化合物により得られた結果の例を示す。
図3:Gal4−/PPARαプラスミドでトランスフェクトされたHepG2細胞を、異なる濃度の本発明の化合物(5、15、50及び100μM)と共に24時間、並びに異なる濃度のビヒクル(PC)と共にインキュベートした。結果は、異なる処理の後での誘導係数(未処理細胞と比較した発光信号)として表す。誘導係数が高いほど、PPAR□アゴニスト活性が強力である。結果は、本発明の化合物Ex2aが100μMで最大62倍の発光信号の誘導を生じ、50μMでは41、15μMでは31、5μMでは17であったことを示す。本発明の化合物Ex4aは、また、100μMで41、50μMで30、15μMで18、5μMで9である誘導係数の用量依存的増加を示した。本発明の化合物Ex4pは、また、発光信号の増加を誘導し、PPARα核内受容体に対する活性が明らかとなった。化合物Ex4pの誘導係数は、100μMで35、50μMで44、15μMで36、5μMで24であった。一方、細胞をビヒクル(PCリポソーム)と共にインキュベートした場合、有意な誘導は観察されなかった。
これらの結果は、試験された本発明の化合物が有意なPPAR□リガンド活性を示し、したがってそれらの転写活性を可能にすることを示す。
【0258】
実施例11:本発明の化合物の抗炎症特性の評価
炎症反応は、脳虚血のような多くの神経疾患において観察される。炎症は、また、神経変性の重要な因子である。発作では、グリア細胞の最初の反応の1つは、サイトカイン及びフリーラジカルを放出することである。このサイトカイン及びフリーラジカルの放出により、脳における炎症性反応を生じ、これが神経細胞死を引き起こす可能性がある(Rothwell 1997)。
【0259】
細胞株及び初代細胞を、上記のように培養した。
リポ多糖類(LPS)細菌性内毒素(Escherichia coli 0111 :B4)(Sigma, France)を蒸留水で再構成し、4℃で保存した。細胞をLPS 1μg/mlで24時間処理した。他の因子からの干渉を避けるため、培地を完全に交換した。
TNF−αは、ストレス(例えば、酸化ストレス)に対する炎症反応における重要な因子である。LPSの用量の増加による刺激に応答するTNF−α分泌を評価するため、刺激を受けた細胞の培地を除去し、TNF−αをELISA−TNF−αキット(Immunotech, France)により測定した。試料を50倍に希釈して、標準曲線(Chang, Hudsonら, 2000)の範囲内にした。
化合物の抗炎症特性を下記のように特徴付けした:
細胞培地を完全に交換し、細胞を試験化合物と共に2時間インキュベートし、その後、LPSを最終濃度1μg/mlで培地に加えた。24時間のインキュベーションの後、細胞上清を回収し、直接処理しない場合は、−80℃で保存した。細胞を溶解し、タンパク質を、供給業者の指示書によりBio-Rad Protein Assayキット(Bio-Rad, Munich, Germany)で定量した。
【0260】
試験化合物による処理で誘導されたTNF−α分泌の減少の測定値は、pg/ml/μgタンパク質として、かつ対照に対する百分率として表される。これらの結果は、本発明の化合物が、抗炎症特性を有することを示す。
【0261】
実施例12:脳虚血−再灌流モデルにおける本発明の化合物の神経保護作用の評価
A−予防モデル:
1−動物の処置
1.1動物及び化合物の投与
体重200〜350gのウィスターラットをこの実験に使用した。
動物を、12時間の明/暗サイクル、20℃±3℃の温度で維持した。水及び食餌は適宜に入手可能であった。食物摂取量及び体重増加を記録した。
【0262】
中大脳動脈の閉塞により誘導される虚血の前に、動物を、ビヒクル(0.5%カルボキシセルロース(CMC)及び0.1%ツイーン)に懸濁した本発明の化合物(600mg/kg/日)を用いるか、又はビヒクルのみを用いる胃管栄養法により14日間処置した。
使用したカルボキシメチルセルロースは、中間粘度のカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩である(Ref. C4888, Sigma-Aldrich, France)。使用されたツイーンは、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートである(Tween 80, Ref. P8074, Sigma-Aldrich, France)。
【0263】
1.2中大脳動脈の腔内閉塞による虚血誘導−再灌流:
動物を抱水クローラル300mg/kgの腹腔内注入により麻酔した。直腸プローブを挿入し、体温を37℃±0.5℃に維持した。試験を通して、血圧を監視した。
【0264】
外科用顕微鏡下で、頸の中央部の切開により右頸動脈を露出した。翼突口蓋動脈をその起点で結紮し、動脈切開を外頸動脈で行って、ナイロン製のモノフィラメントを挿入できるようにし、それを、総頸動脈まで穏やか進め、次に内頸動脈内に進めて、中大脳動脈の起点を閉塞するようにした。1時間後にフィラメントを抜いて再灌流を可能にした。
【0265】
2−脳梗塞量の測定:
再灌流の24時間後、本発明の化合物で予め処置したか、又は処置していない動物を、ペントバルビタールの過剰投与により麻酔をかけた。
【0266】
脳を急速に凍結し、薄切りにした。切片をクレシルバイオレットで染色した。脳切片の未染色の帯域は、梗塞により損傷を受けたと考えた。領域(梗塞及び2つの半球)を測定し、梗塞及び2つの半球の量を計算し、修正梗塞量を次の式:(修正梗塞量=梗塞量−(右半球の量−左半球の量))により決定して、脳浮腫を補償した。
本発明の化合物で処置した動物の脳切片の分析によって、未処置の動物と比較して、梗塞量の著しい減少が明らかとなった。虚血の前に、本発明の化合物を動物に投与すると(予防効果)、これらは神経保護を誘導することができた。
【0267】
図4a及び4bは、本発明の化合物により得られた結果の一例を示す。
図4aの例は、修正梗塞量の合計(後虚血病巣サイズ)が186mm3であったことを示す。動物を、虚血誘導の前に、化合物Ex4a(実施例4aで記載された本発明の化合物)を用いて300mg/kg/日を1日に2回、経口により14日間処置した場合、病巣の大きさが対照動物の病巣の大きさに対して22%(145mm3)減少した。
未修正梗塞量を描写している図4bの結果は、梗塞全体で観察された本発明の化合物EX4aの治療的及び神経保護的特徴が、皮質梗塞のレベルでは神経保護作用(病巣の22%減少)があるが、線条体梗塞のレベルでは作用がない(病巣の有意な減少がない)ことからなることを示している。
【0268】
3−抗酸化酵素活性の測定:
ラットの脳を冷凍し、粉砕し、粉末まで小さくし、次に食塩水に再懸濁した。次に、下記の著者により記載されているように、異なる酵素活性を測定した:スーパーオキシドジスムターゼ(Flohe 及び Otting 1984);グルタチオンペルオキシダーゼ(Paglia 及び Valentine 1967);グルタチオンレダクターゼ(Spooner, Delidesら, 1981);グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(Habig 及び Jakoby 1981);カタラーゼ(Aebi 1984)。
該異なる酵素活性は、本発明の化合物で処置された動物の脳調製物において増加された。
【0269】
B−治療的又は急性期処置モデル:
1−中大脳動脈の腔内閉塞による虚血誘導/再灌流:
前記のような動物をこの実験に使用した。動物を抱水クローラル300mg/kgの腹腔内注入により麻酔した。直腸プローブを挿入し、体温を37℃±0.5℃に維持した。試験を通して、血圧を監視した。
【0270】
外科用顕微鏡下で、頸の中央部の切開により右頸動脈を露出した。翼突口蓋動脈をその起点で結紮し、動脈切開を外頸動脈で行って、ナイロン製のモノフィラメントを挿入できるようにし、それを、総頸動脈まで穏やか進め、次に内頸動脈内に進めて、中大脳動脈の起点を閉塞するようにした。1時間後にフィラメントを抜いて再灌流を可能にした。
【0271】
2−動物の処置:
最初に虚血−再灌流に付した動物を、再灌流の後、本発明の化合物を用いて経口(前記のようなCMC−ツイーンビビクル)により1回以上(600mg/kg/日又は300mg/kg/日を1日二回)処置した。
【0272】
3−脳梗塞量の測定:
再灌流の24、48又は72時間後、化合物で予め処置したか、又は処置していない動物を、ペントバルビタールの過剰投与により麻酔をかけた。
脳を急速に凍結し、薄切りにした。切片をクレシルバイオレットで染色した。脳切片の未染色の帯域は、梗塞により損傷を受けたと考えた。領域(梗塞及び2つの半球)を測定し、梗塞及び2つの半球の量を計算し、修正梗塞量を次の式:(修正梗塞量=梗塞量−(右半球の量−左半球の量))により決定して、脳浮腫を補償した。
治療的処置の場合(急性期の処置)、本発明の化合物で処置された動物は、未処置の動物よりも脳損傷が少なかった。事実、虚血−再灌流の後、本発明の化合物を1回以上投与した場合、梗塞量は少なかった。図4c〜4fは、本発明の化合物により得られた結果の一例を示す。
図4cの結果は、虚血の後、本発明の化合物Ex4a(600mg/kg/日)で24時間処置された動物が、対照動物よりも27%小さい病巣を発症した(梗塞量:処置動物132mm3対対照180mm3)ことを示す。
未修正梗塞量を描写している図4dの結果は、梗塞全体で観察された本発明の化合物EX4aの治療的及び神経保護的特徴が、皮質梗塞のレベルでは神経保護作用(病巣の25%減少)があるが、線条体梗塞のレベルでは作用がない(病巣の有意な減少がない)ことからなることを示している。
図4eの結果は、虚血の後、本発明の化合物Ex4a(600mg/kg/日)で72時間処置された動物が、対照動物よりも40%小さい病巣を発症した(修正梗塞量:処置動物110mm3対対照180mm3)ことを示す。
未修正梗塞量を描写している図4fの結果は、梗塞全体で観察された本発明の化合物EX4aの治療的及び神経保護的特徴が、皮質梗塞のレベルでは神経保護作用(病巣の32%減少)があるが、線条体梗塞のレベルでは(病巣の23%減少)であることからなることを示している。
【0273】
異なる実験モデルにおける本発明の化合物の使用は、該化合物が固有の抗酸化活性を示し、酸化ストレスの作用を遅延かつ減少することができ、更に、抗酸化酵素をコードする遺伝子の発現も誘導し、その抗酸化特性と一緒になって、フリーラジカルからの保護を強化することを示す。加えて、本発明の化合物は、抗炎症活性を示し、PPAR□求核受容体を活性化することができる。
最後に、本発明の化合物の動物虚血−再灌流モデルにおける使用は、保護的であり、治療的でもある処置の両方の有益な神経保護作用を明らかにした。
【0274】
【表50】

【0275】
【表51】







【図面の簡単な説明】
【0276】
【図1A】本発明のアシルグリセロールの構造である(実施例2a、2c、4a〜r)。
【図1B】本発明の特定の化合物の構造である(実施例5a〜b、6〜c)。
【図2】銅(Cu)によるLDL酸化に対する本発明の化合物の抗酸化特性の評価である。aは、経時的な又は遅延期における共役ジエン形成である。bは、ジエン形成の速度である。cは、形成された共役ジエンの最大量である。
【図3】Gal4/PPARαトランス活性化系における本発明の化合物のPPARαアゴニスト特性の評価である。
【図4−1】本発明の化合物の神経保護作用の評価である。aは、予防的神経保護作用である。bは、脳の異なる領域における予防的神経保護作用である。cは、治療的作用である(急性期24時間)。dは、脳の異なる領域における治療的作用である(急性期24時間)。
【図4−2】本発明の化合物の神経保護作用の評価である。eは、治療的神経保護作用である(急性期72時間)。fは、脳の異なる領域における治療的神経保護作用である(急性期72時間)。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳血管病変を処置する医薬組成物の調製のための化合物の使用であって、化合物が下記の一般式(I):
【化1】


〔式中、
Gは、酸素原子、硫黄原子又はN−R4基を表し、
R4は、水素原子、又は飽和若しくはそうでない、場合により置換されている、1〜5個の炭素原子を含む、直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、
R1、R2及びR3は、同一であるか又は異なって、水素原子、CO−R基、又は式:CO−(CH22n+1−X−R′に対応する基を表し(ここで、R1、R2及びR3基の少なくとも1個は、式:CO−(CH22n+1−X−R′に対応する基である)、
Rは、飽和又はそうではない、場合により置換されている、その主鎖が1〜25個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐のアルキル基であり、
Xは、硫黄原子、セレン原子、SO基又はSO2基であり、
nは、0〜11の間に含まれる整数であり、
R′は、飽和又はそうではない、場合により置換されている、その主鎖が2〜23個、好ましくは10〜23個の炭素原子及び可能であれば酸素原子、硫黄原子、セレン原子、SO基及びSO2基からなる群より選択される1個以上のヘテロ基を含む、直鎖又は分岐のアルキル基である〕により表される化合物の使用。
【請求項2】
脳血管病変が脳虚血又は出血性発作である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
R基が、同一であるか又は異なって、飽和又は不飽和の、置換されているか又はされていない、その主鎖が、1〜20個の炭素原子、好ましくは7〜17個の炭素原子、さらにより好ましくは14〜17個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐のアルキル基を表すことを特徴とする、請求項1及び2のいずれか1項に記載の使用。
【請求項4】
R′基が、同一であるか又は異なって、飽和又は不飽和の、置換されているか又はされていない、その主鎖が、12〜23個の炭素原子、さらにより好ましくは13〜20個の炭素原子、有利には14〜17個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐のアルキル基を表すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
R基が、同一であるか又は異なって、C715、C1021、C1123、C1225、C1327、C1429、C1633、C1735、C1531、C1427、C1425、C1529、C1729、C1731、C1733、C1929、C1931、C2131、C2135、C2137、C2139、C2345、エイコサペンタン酸(EPA)C20:5(5,8,11,14,17)及びドコサヘキサン酸(DHA)C22:6(4,7,10,13,16,19)のアルキル鎖、(CH2n′−CH(CH3)C25、(CH=C(CH3)(CH22n″−CH=C(CH32及び(CH22x+1−C(CH32−(CH2n″′−CH3〔xは、1〜11と等しいか、又はその間に含まれる整数であり、n′は、1〜22と等しいか、又はその間に含まれる整数であり、n″は、1〜5と等しいか、又はその間に含まれる整数であり、n″′は、0〜22と等しいか、又はその間に含まれる整数であり、そして(2x+n″′)は、22以下、好ましくは20以下である〕からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
R′基が、同一であるか又は異なって、C715、C1021、C1123、C1225、C1327、C1429、C1633、C1735、C1531、C20:5(5,8,11,14,17)、C22:6(4,7,10,13,16,19)、C1427、C1425、C1529、C1729、C1731、C1733、C1929、C1931、C2131、C2135、C2137、C2139、C2345、(CH2n′−CH(CH3)C25、(CH=C(CH3)(CH22n″−CH=C(CH32及び(CH22x+1−C(CH32−(CH2n″′−CH3〔xは、1〜11と等しいか、又はその間に含まれる整数であり、n′は、1〜22と等しいか、又はその間に含まれる整数であり、n″は、1〜5と等しいか、又はその間に含まれる整数であり、n″′は、0〜22と等しいか、又はその間に含まれる整数であり、そして(2x+n″′)は、22以下、好ましくは20以下である〕からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
R基が、同一であるか又は異なって、1〜6個の炭素原子を含む低級アルキル基を表すことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
R′基が、同一であるか又は異なって、14個の炭素原子を含む、飽和した直鎖のアルキル基であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
アルキル基が、ハロゲン原子(ヨウ素、塩素、フッ素、臭素)及びOH、=O、NO2、NH2、CN、CH2−OH、O−CH3、CH2OCH3、CF3及びCOOZ基(ここで、Zは、水素原子又は1〜6個の炭素原子を含むアルキル基である)からなる群より選択される、同一であるか又は異なる1個以上の置換基により置換されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
Xが、硫黄又はセレン原子、好ましくは硫黄原子であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
G基が、酸素原子又はN−R4基を表し、そしてGが、N−R4であるとき、R4は、好ましくは水素原子又はメチル基を表すことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
CO−(CH22n+1−X−R′基において、nが、0〜3の間に含まれ、とりわけ0〜2の間に含まれ、特に0と等しいことを特徴とする、前請求項1〜11のいずれか1項記載の使用。
【請求項13】
R1、R2及びR3基のうちの少なくとも1個が、CO−(CH22n+1−X−R′基(ここで、Xは、セレン原子若しくは好ましくは硫黄原子を表し、そして/又はR′は、13〜17個の炭素原子、好ましくは14〜16個、さらにより好ましくは14個の炭素原子を含む、飽和した直鎖のアルキル基である)を表す、請求項1〜12のいずれか1項記載の式(I)の使用。
【請求項14】
R2が、式:CO−(CH22n+1−X−R′(好ましくは式中、Xは、セレン原子若しくは好ましくは硫黄原子を表し、そして/又はR′は、13〜17個の炭素原子を含む飽和した直鎖のアルキル基であり、より好ましくは式中、nは、0と等しい)に対応する基、特に式:CO−CH2−S−C1429を有する基であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項記載の使用。
【請求項15】
R1及びR3が、同一であるか又は異なって、水素原子又はCO−R基を表すことを特徴とする、請求項14記載の使用。
【請求項16】
R1及びR3が、同一であるか又は異なって、CO−R基を表すことを特徴とする、請求項15記載の使用。
【請求項17】
R1、R2及びR3基のうちの2個が、同一であるか又は異って、CO−(CH22n+1−X−R′基(好ましくは式中、Xは、セレン原子若しくは好ましくは硫黄原子を表し、そして/又はR′は、13〜17個の炭素原子を含む飽和した直鎖のアルキル基であり、より好ましくは式中、nは、0と等しい)であり、特にCO−CH2−S−C1429基であることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項記載の使用。
【請求項18】
R1、R2及びR3が、同一であるか又は異なって、好ましくは同一であって、CO−(CH22n+1−X−R′基(好ましくは式中、Xは、セレン原子若しくは好ましくは硫黄原子を表し、そして/又はR′は、13〜17個の炭素原子を含む飽和した直鎖のアルキル基であり、より好ましくは式中、nは、0〜3の間に含まれ、特に0と等しい)であることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項記載の使用。
【請求項19】
R1、R2及びR3が、CO−CH2−S−C1429基を表すことを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項記載の使用。
【請求項20】
置換基R1、R2又はR3のうちの1又は2個が、COCH3基であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項記載の使用。
【請求項21】
G基が硫黄原子を表すことを特徴とする、請求項1〜10及び12〜20のいずれか1項記載の使用。
【請求項22】
1,3−ジテトラデシルチオアセチル−2−パルミトイルグリセロール;
1,3−ジアセチル−2−テトラデシルチオアセチルグリセロール;
1,3−ジオクタノイル−2−テトラデシルチオアセチルグリセロール;
1,3−ジウンデカノイル−2−テトラデシルチオアセチルグリセロール;及び
1,3−ジテトラデシルチオアセトキシ−2−(2−テトラデシルチオ)メチルカルボニルチオ−プロパン
からなる群より選択される、請求項1で定義された式(I)により表される化合物。
【請求項23】
請求項22で同定された一般式(I)により表される少なくとも1個の化合物を、薬学的に許容されうるビヒクル中に含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項24】
脳血管病変、より詳細には、脳虚血又は発作の処置を意図する、請求項1〜23記載の医薬組成物。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4−1】
image rotate

【図4−2】
image rotate


【公表番号】特表2006−517954(P2006−517954A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502128(P2006−502128)
【出願日】平成16年2月2日(2004.2.2)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000229
【国際公開番号】WO2004/069241
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(503067111)
【氏名又は名称原語表記】GENFIT
【Fターム(参考)】