説明

アジスロマイシン水和物含有製剤

【課題】有効成分としてアジスロマイシン水和物を含有し、速やかすぎる錠剤の崩壊を抑制し、口腔内での錠剤の崩壊を遅延させ、アジスロマイシン水和物に由来する苦味による不快感を低減した錠剤の提供を目的とする。
【解決手段】アジスロマイシン水和物57.64〜62.88質量%、リン酸水素カルシウム及び/または無水リン酸水素カルシウムをベースとする賦形剤29.0〜33.0質量%、ポリビニルアルコール及び/またはコポリビドンをベースとする結合剤0.5〜1.5質量%、クロスカルメロースナトリウムをベースとする崩壊剤2.0〜4.0%、並びにヒドロキシプロピルメチルセルロースとタルクと酸化チタンとマクロゴールからなるコーティング剤2.0〜3.0質量%を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、15員環マクロライド系抗生物質であるアジスロマイシン水和物含有製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アジスロマイシンは15員環マクロライド系抗生物質であり、強い苦味を有する薬物である。
アジスロマイシンを含有する製剤は世界各国で販売されており、日本でも販売されている。
アジスロマイシン含有製剤の場合、アジスロマイシンに由来する苦味を抑えるため、フィルムコーティングが施されている。
例えば、日本での市販錠剤に使用されている添加物は、無水リン酸水素カルシウム、部分アルファー化デンプン、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、乳糖、酸化チタン、トリアセチンである(ファイザー製薬株式会社製、ジスロマック錠250mgの添付文書第10版及び特開平7−300420号公報)。
この錠剤は、フィルムコーティングが施されているため、口腔内に入れてもしばらくは苦味を感じないが、錠剤が長さ13.6mm、幅6.9mm、厚み5.6mmという大型の製剤であるため、非常に飲み込みづらい。そのため錠剤をなかなか飲み込めず、その間に口腔内で錠剤のフィルムが溶けてしまい、アジスロマイシンに由来する苦味による不快感を感じることがある。
特に、初期の溶出性が速やかすぎるため、フィルムが溶けてしまった後はひどく苦味を感じやすいと言う問題点があった。
【0003】
【特許文献1】特開平7−300420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、有効成分としてアジスロマイシン水和物を含有し、速やかすぎる錠剤の崩壊を抑制し、口腔内での錠剤の崩壊を遅延させ、アジスロマイシン水和物に由来する苦味による不快感を低減した錠剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、製剤中の崩壊剤添加量を2.0〜4.0質量%とし、結合剤添加量を0.5〜1.5質量%とすることにより、速やかすぎる錠剤の崩壊を抑制した核錠を作り上げた。
ところで十分な量のフィルムをコーティングしたり、水に不溶性のフィルムをコーティングすることにより、口腔内で全く苦味を感じさせないことは可能である。
しかしそのようなコーティングにした場合、薬局方外規格に定められたアジスロマイシン水和物錠の溶出試験規格に適合しなくなる。
そこで本発明は速やかな溶出性を確保しつつ、口腔内での錠剤の崩壊を抑えるために、アジスロマイシン水和物57.64〜62.88質量%、リン酸水素カルシウム及び/または無水リン酸水素カルシウムをベースとする賦形剤29.0〜33.0質量%、ポリビニルアルコール及び/またはコポリビドンをベースとする結合剤0.5〜1.5質量%、クロスカルメロースナトリウムをベースとする崩壊剤2.0〜4.0質量%、並びにヒドロキシプロピルメチルセルロースとタルクと酸化チタンとマクロゴールからなるコーティング剤2.0〜3.0質量%を含有することを特徴とする。
特にコーティング剤を構成する配合割合がコーティング剤の全質量に基づき、マクロゴール6〜12質量%、酸化チタン15〜25質量%、タルク25〜35質量%、残部がヒドロキシプロピルメチルセルロースであるのが好ましく、製造方法はアジスロマイシン水和物57.64〜62.88質量%、リン酸水素カルシウム及び無水リン酸水素カルシウムをベースとする賦形剤29.0〜33.0質量%、ポリビニルアルコール(部分けん化物)0.5〜1.5質量%、クロスカルメロースナトリウム2.0〜4.0質量%とを混合し、その混合物に水を加えて顆粒化しうる組成物を形成し、該混合物を顆粒化し、その顆粒を乾燥及び整粒し、次いでステアリン酸マグネシウム及びラウリル硫酸ナトリウムをベースとする滑沢剤2.0〜3.0質量%を加えて混合し、これを打錠し、得られた錠剤にヒドロキシプロピルメチルセルロースとタルクと酸化チタンとマクロゴールと精製水から成るコーティング液をスプレーしてコーティングすることを特徴とする。
ここで、アジスロマイシン水和物57.64〜62.88質量%は、アジスロマイシンとして55.0〜60.0質量%に該当し、いずれの配合割合も製剤化した錠剤に対する値である。
また、アジスロマイシン水和物含有製剤に対して、初期の速すぎる錠剤の崩壊を抑制しつつ、薬局方外規格に定められた溶出試験規格を充足させるために、製剤中の崩壊剤添加量及び結合剤添加量を鋭意検討の上調査した結果、従来のコーティング基材を用いると、無包装状態、40℃、75%RHの環境下で経時的なコーティングフィルムの剥離不具合が発生した。
そこで、コーティングフィルムの溶解時間を概ね一定に制御しつつ、アジスロマイシン水和物含有核錠に対して耐剥離性を改善するために検討した結果、コーティング剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースとマクロゴールの組み合わせにタルクと酸化チタンを配合するのがよく、しかもヒドロキシプロピルメチルセルロースの配合割合が通常よりも低い方がよいという従来にない新たな知見が得られた。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製剤は先発品である市販錠250mgと比較した場合、速やかすぎる錠剤の崩壊が抑制されており、口腔内での錠剤の崩壊を遅延させ、アジスロマイシン水和物に由来する苦味による不快感を低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明に係る方法として具体的に製剤化し、市販製剤とを比較評価したので以下説明する。
なお本発明はこれらの実施例の特定の細部に限定されるものではない。
アジスロマイシン水和物(平均粒子径約3μm)786部、無水リン酸水素カルシウム(協和化学工業製)348部、リン酸水素カルシウム(協和化学工業製)54部、クロスカルメロースナトリウム(Ac−Do−Sol、FMC)39.9部、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールGL−05S、日本合成化学製)14.1部をベンチニーダーPNV−5(入江商会製)に投入し、2分間攪拌混合した(56rpm)。
そこへ精製水552部を加え、56rpmで8分間運転して攪拌練合した。
湿った状態の練合物を流動層乾燥機MP−01(パウレック製)に投入し、80℃の温風を給気しながら排気温度が28℃になるまで乾燥した。
得られた半乾燥物を30meshの篩で篩い分け、篩上の物をコーミル(パウレック製)で整粒し、その後30mesh通過品と共に再びMP−01に戻して、排気温度が40℃になるまで乾燥した。
得られた乾燥物は22meshの篩で整粒し、この整粒物414部にステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製)10部、ラウリル硫酸ナトリウム(花王製)1部を加えて混合し、打錠用顆粒を得た。
この打錠用顆粒をロータリー打錠機アクエリアス(菊水製作所製)で打錠して、質量425mg、長さ13.5mm、幅6.8mm、厚み5.5mmの未コート錠(核錠)を製造した。
精製水62.7部にタルク(クラウンタルク、松村産業製)3部、酸化チタン(A−HR、フロイント産業製)2部を分散させ、さらにヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5RW、信越化学工業製)4部及びマクロゴール6000(第一工業製薬製)1部を加えて溶解させたコーティング液を調製し、先に得た核錠にハイコーターLABO30型(フロイント産業)を用いて定法に従いコーティングを施し(1錠あたり固形分量として10mgをコーティング)、コーティング錠を得た。
なおこのコーティング錠には微量のカルナウバロウ(ポリシングワックス103,フロイント産業製)をふりかけ、ハイコーターLABO内で艶出しをおこなった。
表1に製剤例をまとめて示す。
【表1】

(試験例)
実施例1の錠剤、及び市販製剤である市販錠250mgを溶出試験に供した。
試験液としてはpH6.5の緩衝液を900ml使用し、パドル法75rpmで実施した(薬局方外規格に定められたアジスロマイシン水和物錠の溶出試験規格に準拠)。
溶出試験結果を表2及び図1のグラフに示す。溶出率は試験液に浸漬から5分後、10分後、15分後の値を示す。
錠剤にコーティングされたフィルムが溶解する時間(核錠が露出し始める時間)は実施例1の錠剤も市販錠250mgも同様に約35秒であるが、実施例1の錠剤は市販錠250mgに比べて初期の溶出が抑えられていた。
実施例1の錠剤は溶出規格(30分で85%以上溶出)に適合する製剤であり、製剤的に問題は見られなかった。
また、コーティング剤の中の成分割合を耐剥離性と溶解性の観点から検討した結果、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが約50%以下で、概ねヒドロキシプロピルメチルセルロース:タルク:酸化チタン:マクロゴール=4:3:2:1の割合がよかった。
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】溶出性試験結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジスロマイシン水和物57.64〜62.88質量%、リン酸水素カルシウム及び/または無水リン酸水素カルシウムをベースとする賦形剤29.0〜33.0質量%、ポリビニルアルコール及び/またはコポリビドンをベースとする結合剤0.5〜1.5質量%、クロスカルメロースナトリウムをベースとする崩壊剤2.0〜4.0質量%、並びにヒドロキシプロピルメチルセルロースとタルクと酸化チタンとマクロゴールからなるコーティング剤2.0〜3.0質量%を含有することを特徴とする医薬製剤。
【請求項2】
コーティング剤を構成する配合割合がコーティング剤の全質量に基づき、マクロゴール6〜12質量%、酸化チタン15〜25質量%、タルク25〜35質量%、残部がヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを特徴とする請求項1記載の医薬製剤。
【請求項3】
アジスロマイシン水和物57.64〜62.88質量%、リン酸水素カルシウム及び無水リン酸水素カルシウムをベースとする賦形剤29.0〜33.0質量%、ポリビニルアルコール(部分けん化物)0.5〜1.5質量%、クロスカルメロースナトリウム2.0〜4.0質量%とを混合し、その混合物に水を加えて顆粒化しうる組成物を形成し、該混合物を顆粒化し、その顆粒を乾燥及び整粒し、次いでステアリン酸マグネシウム及びラウリル硫酸ナトリウムをベースとする滑沢剤2.0〜3.0質量%を加えて混合し、これを打錠し、得られた錠剤にヒドロキシプロピルメチルセルロースとタルクと酸化チタンとマクロゴールと精製水から成るコーティング液をスプレーしてコーティングすることを特徴とする医薬製剤の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−31380(P2007−31380A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218891(P2005−218891)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(592073695)日医工株式会社 (21)
【Fターム(参考)】