説明

アジミライドジヒドロクロリド組成物

本発明は、(E)−1−[[[5−(4−クロロフェニル)−2−フラニル]メチレン]アミノ]−3−[4−(4−メチル−1−ピペラジニル)ブチル]−2,4−イミダゾリジンジオンジヒドロクロリドの溶媒和物及び種々多形性形態、並びにそれらの医薬組成物を目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(E)−1−[[[5−(4−クロロフェニル)−2−フラニル]メチレン]アミノ]−3−[4−(4−メチル−1−ピペラジニル)ブチル]−2,4−イミダゾリジンジオンジヒドロクロリドの溶媒和物及び多形体、並びに医薬品におけるかかる化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アジミライド((E)−1−[[[5−(4−クロロフェニル)−2−フラニル]メチレン]アミノ]−3−[4−(4−メチル−1−ピペラジニル)ブチル]−2,4−イミダゾリジンジオンジヒドロクロリド)は、心不整脈治療に有用な化合物である。新規クラスIII抗不整脈薬であるアジミライドは、遅延整流カリウム電流の緩除活性化成分及び急速活性化成分の両方を遮断し、急速活性化成分のみを遮断するソタロール及びドフェチリドなどの従来のカリウムチャネルブロッカーとは区別される。アジミライドは、基質的心疾患を伴う患者及び伴わない患者における、心房細動、心房粗動、及び発作性上室性頻拍症の再発までの時間を延長する目的で開発されている。
【0003】
米国特許第5,462,940号では、アジミライドを含む4−オキソ環式尿素の化合物群が記載されており、その発明のそれら化合物の薬剤として許容される塩及びエステルは、抗不整脈薬及び抗細動薬として有用である。米国特許第6,414,151号及び同第6,420,568号では、様々な医学的疾患の治療に有用な化合物の製造方法が記載されている。このような用途には抗細動薬及び抗不整脈薬としての使用が挙げられるが、これらには限定されない。米国特許第6,414,151号では、1,3−二置換−4−オキソ環式尿素、特にアジミライド(Amilizide)又はその塩類の製造における高収率合成経路が教示される。
【0004】
製薬的に許容できる組成物の製造において有用な製剤を得るための、好適な固体形の最適な選択肢については述べられていない。したがって、当該技術分野において、アジミライド((E)−1−[[[5−(4−クロロフェニル)−2−フラニル]メチレン]アミノ]−3−[4−(4−メチル−1−ピペラジニル)ブチル]−2,4−イミダゾリジンジオンジヒドロクロリド)の最適化した固体形の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,462,940号
【特許文献2】米国特許第6,414,151号
【特許文献3】米国特許第6,420,568号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者らは、アジミライドの2種の溶媒和物及び1種の無水物が、製薬的に許容できる組成物の製造に特に有利であることを見出した。異なる結晶形(すなわち「多形体」)を用い、アジミライドの最終医薬品を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(E)−1−[[[5−(4−クロロフェニル)−2−フラニル]メチレン]アミノ]−3−[4−(4−メチル−1−ピペラジニル)ブチル]−2,4−イミダゾリジンジオンのジヒドロクロリド塩のヘミ水和物、無水物、及びイソプロパノール溶媒和物に関する。
【0008】
本発明の一態様には、約0.5%〜約2.5%(w/w)の水分を有するアジミライドヘミ水和物組成物がある。いくつかの実施形態では、組成物は、図1のパターンとほぼ一致することを特徴とするX線回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、図4の固体13C NMRスペクトルにほぼ一致することを特徴とする固体13C NMRスペクトルを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、図7の赤外線スペクトルにほぼ一致することを特徴とする赤外線スペクトルを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、図10のパターンにほぼ一致することを特徴とする熱重量分析曲線を有する。いくつかの実施形態では、組成物は、2θ値で約5.95度、約11.9度、約14.88度、約17.66度、約20.89度、及び約26.03度のX線回折ピークを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、波数約3512及び3450に赤外吸光のピークを有する。好ましい実施形態では、アジミライド組成物は、約0.5%〜約2.5%(w/w)の水分を有し、製薬的に許容できる担体を更に含む。ヒト又はその他動物の心不整脈の治療が必要な場合に、それを治療又は予防する、(a)感染性疾患の治療又は予防が必要なヒト又はその他動物を特定する工程と、(b)ヒト又はその他動物に、約0.5%〜約2.5%(w/w)の水分を有する効果的な量のアジミライド組成物を投与する工程と、を含む方法も存在する。
【0009】
本発明の別の態様には、約0%〜約0.3%(w/w)の残留水分を有するアジミライド無水物組成物がある。いくつかの実施形態では、組成物は、図2のパターンとほぼ一致することを特徴とするX線回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、図5の固体13C NMRスペクトルにほぼ一致することを特徴とする固体13C NMRスペクトルを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、図8の赤外線スペクトルにほぼ一致することを特徴とする赤外線スペクトルを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、図11のパターンにほぼ一致することを特徴とする熱重量分析曲線を有する。いくつかの実施形態では、組成物は、2θ値で約4.96度、約9.25度、約9.92度、約14.9度、約21.17度、及び約24.56度のX線回折ピークを有する。好ましい実施形態では、アジミライド組成物は、約0%〜約0.3%(w/w)の残留水分を有し、製薬的に許容できる担体を更に含む。ヒト又はその他動物の心不整脈の治療が必要な場合に、それを治療又は予防する、(a)感染性疾患の治療又は予防が必要なヒト又はその他動物を特定する工程と、(b)ヒト又はその他動物に、約0%〜約0.3%(w/w)の残留水分を有する効果的な量のアジミライド組成物を投与する工程と、を含む方法も存在する。
【0010】
本発明の別の態様には、約9重量%〜約11重量%のイソプロパノールを有するアジミライドイソプロパノール溶媒和物組成物がある。いくつかの実施形態では、組成物は、図3のパターンとほぼ一致することを特徴とするX線回折パターンを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、図6の固体13C NMRスペクトルにほぼ一致することを特徴とする固体13C NMRスペクトルを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、図9の赤外線スペクトルにほぼ一致することを特徴とする赤外線スペクトルを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、図12のパターンにほぼ一致することを特徴とする熱重量分析曲線を有する。いくつかの実施形態では、組成物は、2θ値で約4.33度、約9.51度、約12.8度、約17.16度、約18.5度、及び約21.53度のX線回折ピークを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、波数約3428及び3390に赤外吸光のピークを有する。好ましい実施形態では、アジミライド組成物は、約9重量%〜約11重量%のイソプロパノールを有し、製薬的に許容できる担体を更に含む。ヒト又はその他動物の心不整脈の治療が必要な場合に、それを治療又は予防する、(a)感染性疾患の治療又は予防が必要なヒト又はその他動物を特定する工程と、(b)ヒト又はその他動物に、約9重量%〜約11重量%のイソプロパノールを有する効果的な量のアジミライド組成物を投与する工程と、を含む方法も存在する。
【0011】
上記は、以下の「発明を実施するための形態」の理解を助けるために本発明の特徴及び技術的利点を幾分概略的に述べたものである。特許請求の範囲の主題をなす本発明の更なる特徴及び利点を以下に述べる。開示される概念及び特定の実施形態は、本発明と同様の目的を実施するうえで他の構成を改変又は設計するための基礎として直ちに利用することが可能である点は当業者には認識されるはずである。こうした同等の構成は、付属の特許請求の範囲に記載される発明の趣旨及び範囲から逸脱しないものであることも当業者に認識されるはずである。発明に特有であると考えられる、発明の構成及び実施方法の双方における新規な特徴は、添付図面と併せて考えることで更なる目的及び利点と共に以下の説明文からより深く理解されるであろう。ただし、各図面はあくまで例示及び説明を目的としたものであって、本発明の範囲を規定することを目的としたものではない点は明確に理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明をより完全に理解するため、添付図面と共に以下の説明文を参照する。
【図1】アジミライドヘミ水和物の代表的なX線回折パターン。
【図2】アジミライド無水物の代表的なX線回折パターン。
【図3】アジミライドイソプロパノール溶媒和物の代表的なX線回折パターン。
【図4】アジミライドヘミ水和物の代表的な固体13C NMRスペクトル。
【図5】アジミライド無水物の代表的な固体13C NMRスペクトル。
【図6】アジミライドイソプロパノール溶媒和物の代表的な固体13C NMRスペクトル。
【図7】アジミライドヘミ水和物の代表的な赤外線スペクトル。
【図8】アジミライド無水物の代表的な赤外線スペクトル。
【図9】アジミライドイソプロパノール溶媒和物の代表的な赤外線スペクトル。
【図10】アジミライドヘミ水和物の代表的な熱重量分析曲線。
【図11】アジミライド無水物の代表的な熱重量分析曲線。
【図12】アジミライドイソプロパノール溶媒和物の代表的な熱重量分析曲線。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用するとき、「a」又は「an」は、1つ又はそれ以上を意味する。特に断らない限り、単数形は複数を含み、複数形は単数を含むものとする。
【0014】
本明細書で用いるとき、「アジミライド」は、(E)−1−[[[5−(4−クロロフェニル)−2−フラニル]メチレン]アミノ]−3−[4−(4−メチル−1−ピペラジニル)ブチル]−2,4−イミダゾリジンジオンのジヒドロクロリド塩類を意味する。これらジヒドロクロリド塩類は、3重量%程度の臭化物を含有してもよく、別の算出方法では、対イオンの10%までを臭化水素酸塩とすることができる。
【0015】
本明細書では、アジミライドの2種の溶媒和物、すなわちヘミ水和物及びイソプロパノール溶媒和物、並びに1種の無水物について記載する。望ましい特性(例えば、溶解度、安定性、処方の容易さ)を備えた製薬的に許容できる固体形の選択には、多くの塩類及び得られた多形体類の評価を必要とする(「薬剤塩類、性質、選択及び用途についてのハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Salts, Properties, Selection and Use)」(P.H.スタール(P. H. Stahl)、C.G.ヴェルムース(C. G. Wermuth)編、ワイリー(Wiley)−VCH、チューリッヒ、2002年)、及び「薬剤固体における多形性(Polymorphism in Pharmaceutical Solids)」(ハリー・G.ブリテン(Harry G. Brittain)編、マーセル・デッカー(Marcell Dekker)、ニューヨーク、1999年)を参照のこと)。
【0016】
固体は、非晶質又は結晶性形態のどちらか一方にて存在する。結晶性形態の場合、分子は3次元格子サイトに配置される。化合物が溶液又はスラリーから晶出する場合、それは異なった空間格子配列を持って晶出するが、これは、「多形体(polymorph)」と個別に称される異なった結晶形を有する「多形性(polymorphism)」と称される性質である。与えられた物質の異なった多形性形態は、1種類以上の物理的性質、例えば溶解度及び溶解速度、真密度、結晶形、圧密挙動、流動性、及び/又は固体安定性の観点からお互いに異なっていてもよい。
【0017】
結晶化
製造規模での結晶化は、溶液を操作して、関心のある化合物の溶解限度を超えるようにすることにより達成される。これは種々の方法により達成され得るが、例えば、化合物を比較的高温で溶解させ、次に溶液を飽和限界未満まで冷却することによって達成され得る。あるいは、液体体積は、沸騰、周囲気圧蒸発、真空乾燥又はいくつかの他の手段によって減少させてもよい。関心のある化合物の溶解度は、逆溶剤又は化合物が低下した溶解度を示す溶媒又はこのような溶媒の混合物を添加することによって減少させてもよい。別の選択肢は、pHを調節して溶解度を低下させてもよい。結晶化の詳細な説明は、「結晶化(Crystallization)」(第3版、J.W.ミュレンズ(Mullens)著、バターワース−ハイネマン社(Butterworth-Heineman Ltd)、1993年、ISBN 0750611294)」を参照のこと。
【0018】
結晶化と同時に、塩形成が所望される場合、適切な酸又は塩基の添加は、所望の塩の直接結晶化をもたらす(塩が反応媒体中にて出発物質より難溶性である場合)。同様に、媒体中での合成反応が完了し、最終所望形態が反応物より難溶性であれば、最終生成物の直接結晶化が可能となり得る。
【0019】
結晶化の最適化は、結晶化媒体を所望形態の結晶でシーディングすることを含んでもよい。加えて、多くの結晶化プロセスは、上記手法の組み合わせを使用する。例では、関心のある化合物を溶媒中にて高温で溶解させ、続いて系を飽和レベルよりわずかに下回る適量に、逆溶剤をコントロールしながら添加する。この時点で、所望の形態のシードを添加してもよく、かつシードはそのままにして、系を冷却して結晶化させる。
【0020】
製剤処方及び使用方法
本発明はまた、心不整脈の治療又は予防方法も提供する。本発明の塩類又は多形体類は、心不整脈など様々な心臓血管疾患の治療又は予防目的で投与される。
【0021】
医薬組成物は、(a)安全かつ効果的な量の本発明の塩又は多形体、及び(b)製薬的に許容できる担体を含んでよい。本明細書において、用語「治療」とは、本発明の化合物の投与でホスト(宿主)内の疾病又は疾患が緩和されることを意味する。
【0022】
したがって、「治療」という用語は、特に、宿主が病気にかかりやすいが、病気と診断されてはいないときに、宿主内で生じる疾患を予防すること、疾患を阻害すること、及び/又は疾患を緩和若しくは逆行させることを含む。本発明の方法が疾患を予防することを目的とする限り、「予防」という用語は疾病状態を完全に阻止する必要はないと理解される。(「ウェブスター大学生用辞典第9版(Webster's Ninth Collegiate Dictionary)」を参照のこと。)むしろ、本明細書で使用するとき、予防という用語は、疾病が発症する前に本発明の化合物を投与できるように、当業者が疾患にかかりやすい集団を識別する能力を含む。この用語は、疾病状態を完全に回避することを意味するものではない。本発明のスクリーニング方法により同定される化合物は、他の化合物と併用して投与することができる。
【0023】
同定された化合物の安全性及び治療効果は、インビトロ又はインビボ技術を用いる標準的な方法により測定されてもよい。十分な治療指標を示す化合物類が好ましい場合があるが、場合によっては、不十分な治療指標の化合物類もまた有用である。インビトロ又はインビボ毒物学及び薬理学的技術から得たデータが、投与量の範囲を処方するために用いられてもよい。化合物の効果は更に、動物モデル又は患者の臨床試験のいずれかで評価されてもよい。
【0024】
本発明の化合物の「安全かつ効果的な量」は、「認容可能な副作用(毒性、刺激性、又はアレルギー性反応など)を伴う、心不整脈治療に効果的」な量である。具体的な「安全かつ効果的な量」は、処置されている特定の条件、患者の健康状態、処置期間、併用療法(もしあれば)の性質、使用される具体的な剤形、採用賦形剤、及び当該組成物のために望ましい用法などの因子によって異なり得る。例えば、毎日投与されるアジミライドの安全かつ効果的な量は、経口投与の場合、5〜500mg、好ましくは25〜250mg、及びより好ましくは50〜175mgの範囲とすることができる。
【0025】
本明細書で使用するとき、「製薬的に許容できる担体」とは、薬剤の投与と適合性のある、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含むことを意図する。薬剤的活性物質に対するかかる媒質及び剤の使用は、当該技術分野において既知である。任意の従来の媒質又は試剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、このような媒質を本発明の組成物類内で使用してもよい。補助的な化合物類もまた、組成物中に組み込んでよい。本発明の医薬組成物は、目的とする投与経路に適合するように配合される。投与経路の例としては、非経口(例えば、静脈内、皮内、皮下、筋肉内)、経口、吸入、経皮(局所)、経粘膜、及び直腸投与が挙げられる。非経口、皮内、若しくは皮下適用に使用される溶液又は懸濁液としては、次の構成成分:注射用の水、食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒のような無菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムのような酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート剤;アセテート、シトレート、又はホスフェートのような緩衝剤;並びに塩化ナトリウム又はデキストロースのような張度調節用の剤を挙げることが可能である。pHを、好適な酸類又は塩基類によって調節してもよい。非経口製剤は、ガラス又はプラスチックで製造されたアンプル、使い捨て注射器、又は複数回投与バイアル内に入れてもよい。
【0026】
本発明の製剤処方は、製薬的に許容できる担体、及び/又は水性若しくは非水性媒質に溶解及び/又は分散される効果的な量の本発明の組成物を含む。
【0027】
製薬的に及び/又は薬理学的に許容できるという表現は、動物に適切に投与したときに、有害反応、アレルギー性反応、及び/又はその他不適当な反応を生じない分子的実体及び/又は組成物を意味する。
【0028】
本明細書で使用するとき、製薬的に許容できる担体には、任意及び/若しくは全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤及び/若しくは抗真菌剤、等張剤及び/若しくは吸収遅延剤、並びに/又はそのようなものを含む。薬剤的活性物質に対するかかる媒質及び/又は剤の使用は、当該技術分野において周知である。任意の従来の媒質及び/又は剤が活性成分と不適合である場合を除いて、治療用組成物における使用が企図される。補足的活性成分もまた組成物に組み込むことができる。投与にあたり、製剤は、規制当局の基準で要求される無菌性、発熱性、一般安全性、及び/又は純度の規格を満たさなくてはならない。
【0029】
生物由来物質は、必要に応じて、不要な低分子量分子を除去するべく大規模に透析する、及び/又はより容易に所望の賦形剤へと処方されるよう凍結乾燥する必要がある。活性化合物は、通常、非経口的投与用、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、病巣内、及び/又は、更に腹腔内経路による注入用に処方されてもよい。活性成分及び/又は有効成分としての本発明の組成物を効果的な量で含有する水性組成物の製剤は、本開示の見地から当業者に知られるようになる。典型的には、そのような組成物を注射可能液(溶液及び/若しくは懸濁液のいずれか)として調製すること、注入前に液体を添加して溶液及び/若しくは懸濁液の調製に用いるのに好適な固形をまた調製すること、並びに/又は調製物をまた乳化することもできる。
【0030】
注射可能な用途に好適な医薬品形状として、無菌水溶液及び/若しくは分散液;ゴマ油、ピーナッツ油、及び/若しくは含水プロピレングリコールを含む処方;並びに/又は無菌の注射可能溶液及び/若しくは分散液の即時調製用無菌粉末が挙げられる。全ての場合において、剤形は無菌でなければならず、及び/又は容易に注入可能である程度に流動的でなければならない。それは、製造及び/若しくは保管条件下で安定でなければならず、並びに/又は細菌及び/若しくは真菌のような微生物の混入作用に対して保護されなければならない。
【0031】
遊離塩基及び/又は薬理学的に許容できる塩である本発明の組成物の溶液を、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中に調製できる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及び/又はこれらの混合物中に、及び/又は油中に分散液を調製することもできる。保存及び/又は使用における一般的な条件下では、これらの製剤は微生物の増殖を防ぐため防腐剤を含有する。
【0032】
本発明の組成物を、中性型及び/又は塩型の組成物中に処方することができる。薬剤として許容される塩として、タンパク質の遊離アミノ基と形成される、並びに/又は、例えば、塩酸及び/若しくはリン酸などの無機酸類、並びに/又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸、及び/若しくは同様の酸などの有機酸類と形成される酸付加塩が挙げられる。遊離カルボキシル基と形成される塩を、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、及び/若しくは水酸化第二鉄などの無機塩基類、並びに/又はイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン、及び/若しくは同様の塩基などの有機塩基類から発生させることもできる。
【0033】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び/又は液体ポリエチレングリコール、及び/又は同様のもの)、これらの好適な混合物、並びに/又は植物油を含有する溶媒及び/若しくは分散媒とすることもできる。例えば、レシチンのようなコーティング剤を使用することにより、分散液の場合には必要な粒径を維持することにより、及び/又は界面活性剤を使用することにより、適切な流動性を維持することができる。微生物の活動の予防は、種々の抗菌剤及び/又は抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、及び/又は同種の物質によって、もたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖類及び/又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注入可能な組成物の持続的吸収は、組成物中に、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを使用することによりもたらされ得る。
【0034】
無菌の注射可能溶液は、必要な量の活性化合物を、その他の種々の上記成分と共に適切な溶媒に組み込み、必要に応じて、続いて濾過滅菌することにより調製される。一般に分散液は、種々の無菌活性成分を、塩基性分散媒、及び/又は上に列挙したものから必要なその他の成分を含有する無菌賦形剤中に組み込むことにより調製される。無菌の注射可能溶液の調製用無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、その既に濾過済み無菌溶液から、任意の所望の追加成分に加えて活性成分の粉末を得る、真空乾燥及び/又は凍結乾燥技術である。直接注入のための、より及び/又は高度に濃縮された溶液の調製も企図されるが、この場合はDMSOを溶媒として用いて、小腫瘍の領域に対する高濃度活性物質の極めて急速な浸透と送達をもたらすことが想定される。
【0035】
処方されると、溶液は、投与製剤に対応する方法で、及び/又は治療的に有効な量で、投与される。製剤は、上述した注射可能溶液の種類などの様々な剤形で容易に投与されるが、薬物放出カプセル及び/又は同種のものもまた用いることができる。
【0036】
水溶液の非経口的投与において、例えば、溶液は必要に応じて適切に緩衝化される必要があり、並びに/又はまず希釈液を十分な生理食塩水及び/若しくはグルコースで等張化する。これら特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、及び/又は、腹腔内投与に特に好適である。これに関連し、使用可能な無菌水性媒質は、本開示の見地から当業者に知られるようになる。例えば、1回分の用量を1mLの等張NaCl溶液に溶解し、及び/又は1000mLの皮下注入液に添加し、及び/又は目的の注入部位に注入することができる(例えば、「レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」第15版、1035〜1038ページ及び/又は1570〜1580ページを参照のこと)。治療される被験者の状態により、用量は必然的にいくらか変動する。いずれにしろ投与担当者は、個々の被験者に対し適切な投与量を決定する。
【0037】
静脈内及び/又は筋肉内注射などの非経口的投与用に処方された化合物に加え、その他の製薬的に許容できる剤形として、例えば、錠剤及び/又は経口投与用のその他の固体、リポソーム製剤、持続放出カプセル、及び/又はクリームを含むその他の任意の現在使用される剤形が挙げられる。
【0038】
本発明において、鼻腔用溶液及び/又はスプレー、エアゾール及び/又は吸入剤もまた用いてもよい。通常、鼻腔用溶液は、液滴及び/又はスプレーで鼻腔に投与されるよう設計された水溶液である。鼻腔用溶液は、多くの点で鼻汁と類似するように、通常の繊毛作用を維持するように調製される。したがって、水性鼻腔用溶液は、通常、等張化及び/又はわずかに緩衝化され、pH5.5〜6.5に維持される。更に、眼科用製剤に用いられるものと類似する抗菌性防腐剤、及び/又は必要に応じて適切な薬剤安定剤を処方中に含めてもよい。
【0039】
その他の投与手段に好適な更なる処方として、膣坐剤及び/又は膣ペッサリーが挙げられる。肛門ペッサリー及び/又は肛門坐剤も使用できる。坐剤は、様々な重量及び/又は形状の固体剤形で、通常、直腸、膣、及び/又は尿道に挿入して投薬される挿入後、坐剤は軟化し、融解し、及び/又は体腔液に溶解する。一般に、坐剤には、従来の結合剤及び/又は担体、例えばポリアルキレングリコール及び/又はトリグリセリドを含んでよく、このような坐剤は、活性成分を0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲で含有する混合物から作られる。
【0040】
経口製剤には、通常用いられる賦形剤、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム、及び/又は同種のものが含まれる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、持続放出性製剤、及び/又は粉末の形状を取る。ある範囲の実施形態では、経口医薬組成物は不活性希釈剤及び/若しくは吸収可能な食用担体を含み、並びに/又はそれらをハード及び/若しくはソフトゼラチンカプセルに封入してもよく、並びに/又はそれらを錠剤に圧縮してもよく、並びに/又はそれらを日常食の食品中に直接組み込んでもよい。治療的経口投与において、活性化合物を賦形剤と共に組み込んでもよく、並びに/又は摂取可能な錠剤、バッカル錠(buccal tables)、トローチ剤、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ剤、オブラート剤、及び/若しくは同種の形状で用いてもよい。このような組成物及び/又は製剤は、少なくとも0.1%の活性化合物を含有しなくてはならない。組成物及び/若しくは製剤の割合は、当然ながら可変であり、並びに/又は便利であるのは、単位重量の約2〜約75%、及び/若しくは好ましくは25〜60%である。このような治療的に有用な組成物における活性化合物量は、好適な用量が得られる程度の量である。
【0041】
また、錠剤、トローチ剤、丸薬、カプセル及び/又は同種の剤形には以下を含んでもよい:トラガカントガム、アカシア、コーンスターチ、及び/若しくはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸、及び/若しくは同種のものなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;並びに/又はスクロース、ラクトース、及び/若しくはサッカリンなどの甘味剤を添加してもよい、並びに/又はペパーミント、冬緑油、及び/若しくはチェリーフレーバなどの着香剤。投与単位の形状がカプセルのとき、上記の材料に加え液体担体を含有してもよい。その他の様々な材料がコーティング剤として存在してもよく、及び/又はそうでなければ投与単位の物理的形状を変更する場合がある。例えば、錠剤、丸薬、及び/又はカプセルを、セラック、糖、及び/又はその両方でコーティングしてもよい。エリキシルシロップ剤は、活性化合物、甘味剤としてのスクロース、防腐剤としてのメチルパラベン及び/若しくはプロピルパラベン、染料、並びに/又はチェリーフレーバ及び/若しくはオレンジフレーバなどの着香剤を含有してもよい。
【0042】
上述した医薬品例は単に例示であり、包括的なものではない。本発明の組成物は、ほとんどの一般的な医薬品に適用できる。
【0043】
注射用途に適した医薬組成物としては、無菌水溶液(水溶性の場合)、又は無菌の注射可能溶液若しくは分散体の即時調製用の分散体及び無菌粉末が挙げられる。静脈内投与の場合、好適な担体としては、生理食塩水、クレモフォアEL(Cremophor EL)(商標)(BASF、ニュージャージー州パーシッパニー)、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。組成物は、容易に注射できる限り、無菌かつ流体であってもよい。それは、製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、バクテリア及び菌類などの微生物の汚染作用を受けないように保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコール)、並びにこれらの好適な混合物を含有する、溶媒又は分散媒であってもよい。流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散体の場合には必要な粒径の維持によって、また界面活性剤の使用によって、維持されてもよい。微生物増殖の予防は、各種抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールによって行われてもよい。等張剤類としては、例えば、糖類、マンニトールやソルビトールなどの多価アルコール類、及び塩化ナトリウムを挙げてもよい。吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物に含めることによって、注射可能組成物の長期にわたる吸収を実現してもよい。
【0044】
無菌の注射可能溶液は、アジミライドを必要量にて、上で列挙した成分の1つを又は組み合わせにて適切な溶媒中に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製してもよい。分散媒は、アジミライドを塩基性分散媒及び他の成分を含有し得る無菌賦形剤中に組み込むことによって調製してもよい。無菌の注射可能溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法としては、予め滅菌濾過されたそれらの溶液から、化合物に加えて任意の追加的所望成分の粉末を得る、真空乾燥及び凍結乾燥が挙げられる。
【0045】
口腔用組成物は、不活性希釈剤又は食用担体を含んでもよい。それらは、ゼラチンカプセルに封入しても、又は圧し固めて錠剤にしてもよい。経口投与の場合、剤を、胃を通り抜けられるように腸溶性の形態に収めても、又は既知の方法によって消化管の特定の領域で放出されるように更にコーティング若しくは混合してもよい。治療的な経口投与の目的では、化合物を、賦形剤と共に組み込んでもよく、錠剤、トローチ、又はカプセルの形態で使用してもよい。薬学的に適合性のある結合剤及び/又は補助剤物質を、組成物の一部として含めてもよい。錠剤、丸薬、カプセル、トローチ剤などは、次の成分あるいは同様の性質の化合物のいずれかを含有してもよい:微結晶セルロース、トラガカントガム、若しくはゼラチンのような結合剤;デンプン若しくはラクトースのような賦形剤;アルギン酸、プリモゲル(Primogel)(商標)、若しくはコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素のような流動促進剤;スクロース若しくはサッカリンのような甘味剤;又はペパーミント、サリチル酸メチル、若しくはオレンジフレーバのような着香剤。
【0046】
吸入による投与の場合、化合物は、好適な噴射剤、例えば二酸化炭素のようなガスを含有する加圧容器若しくはディスペンサ、又はネブライザからの、エアゾールスプレーの形態で供給されてもよい。
【0047】
全身投与はまた、経粘膜又は経皮的手段によるものであってもよい。経粘膜又は経皮的投与の場合、通過すべきバリアに適した浸透剤を処方物内で使用してもよい。かかる浸透剤は、一般に当該技術分野において既知であり、例えば、経粘膜投与の場合、洗浄剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻内噴霧又は坐剤を用いて達成することができる。経皮的投与の場合、化合物類は、当該技術分野において一般に知られているように、軟膏、膏薬、ゲル、又はクリームへと処方してもよい。
【0048】
化合物はまた、坐剤(例えば、カカオバター及び他のグリセリドのような従来の坐剤基剤を含む)又は直腸送達のための停留浣腸の形態で調製してもよい。
【0049】
一実施形態では、化合物類は、インプラント及びマイクロカプセル化デリバリーシステムを含め、制御放出製剤のように、化合物が身体から急速に排泄されるのを防ぐ担体と共に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸のような、生分解性、生体適合性ポリマー類が用いられてもよい。かかる製剤の調製方法は、当業者には明白である。リポソーム懸濁液もまた製薬的に許容できる担体として使用してもよい。
【0050】
投与を容易にするために、また投薬量を一様にするために、口腔用又は非経口組成物を投薬単位形態に配合することが有利な場合がある。本明細書で使用するとき、「投薬単位形態」は、治療すべき被験体にとって1回投薬量として適している物理的に別個の単位を指しており、各単位が、医薬品担体と関連して所望の治療効果を生み出すように計算された、所定の分量の化合物を含有する。本発明の投薬単位形態についての仕様は、化合物の特徴及び達成すべき特定の治療効果、並びに動物の治療のためのこのような化合物を調製する当該技術分野に固有の限界によって決定付けられてもよく、またそれらによって左右されてもよい。
【実施例】
【0051】
実施例1:アジミライドヘミ水和物の調製
アジミライド1.7グラム(無水物を基準として)と4.5mLの水を、アジミライドが溶解するまで加熱する。推奨される加熱目標温度は60〜80℃である。溶解後、任意に溶液を熱時濾過し、不溶性不純物を除く。反応温度を50℃付近に維持しながら、温アセトン13mLをゆっくりと加える。この工程において、温度及び低い添加速度を維持することにより、逆溶剤の添加による結晶化を最小化する。次いで、溶液を冷却し、素早く結晶化を誘起する。必要に応じ、冷却ランプで仕上げる前に、結晶を20〜30℃で熟成させる。25℃〜−5℃の範囲内の温度に冷却する。必要に応じ、単離前に、スラリーを25℃〜−5℃の範囲内の低温で撹拌することにより、熟成させる。濾過、及び少量のアセトンでリンスし、単離する。ぬれた状態のケークを室温又は微温(50℃まで)で乾燥させる。一部の例では、乾燥の補助に真空が有用である場合がある。
【0052】
実施例2:アジミライドヘミ水和物の調製
アジミライド1.7グラム(無水物を基準として)と5.0mLの水を、アジミライドが溶解するまで加熱する。溶解するための推奨される加熱目標温度は60〜80℃である。溶解後、任意に溶液を熱時濾過し、不溶性不純物を除く。反応温度を50℃付近に維持しながら、温メタノール14mLを加える。この工程において、温度及び低い添加速度を維持することにより、逆溶剤の添加による結晶化を最小化する。次いで、溶液を冷却し、素早く結晶化を誘起する。必要に応じ、約25℃で結晶を熟成させ、ヘミ水和物の相純度を確実にする。所望により、単離前に低温まで冷却する。濾過、及び少量の90%メタノールでリンスし、単離する。ぬれた状態のケークを室温又は微温(40℃まで)で乾燥させる。一部の例では、乾燥の補助に真空が有用である場合がある。
【0053】
実施例3:ヘミ水和物からのアジミライド無水物の調製
少なくとも100mLの乾燥メタノール中で、アジミライドヘミ水和物1グラムをスラリーにする。室温〜60℃の範囲内の温度で撹拌又は振とうする。乾燥環境でパージするか、又は水分吸収を防ぐ。変換が完了するまで、固体を撹拌又は振とうする。開始時の粒径及び温度により、数時間から数日の時間が要求される。変換が2〜3週間で完了しない場合、メタノール源が乾燥していることを確認する。必要であれば、一部変換された固体を濾過し、一定量の新たな乾燥メタノール中に再懸濁する。変換完了後、濾過する。真空下又は非真空下において、60℃までの微温で乾燥させる。
【0054】
実施例4:アジミライド無水物の調製
アジミライド1.7グラム(無水物を基準として)と5.1mLの水を、アジミライドが溶解するまで加熱する。溶解するための推奨される加熱目標温度は60〜80℃である。溶解後、任意に溶液を熱時濾過し、不溶性不純物を除いてもよい。メタノール26mLを加え、温度を60℃に維持する。必要に応じ、約60℃で結晶を熟成させ、無水物の相純度を確実にする。熱時濾過、及び少量のメタノールでリンスし、単離する。ぬれた状態のケークを室温又は微温(60℃まで)で乾燥させる。一部の例では、乾燥の補助に真空が有用である場合がある。
【0055】
実施例5:イソプロパノール溶媒和物からのアジミライド無水物の調製
アジミライドのイソプロパノール形を、相対湿度85%、20〜25℃に暴露する。物質が無水物相に変換するまで、85%RHの条件下で維持する。変換が48時間以内に完了しない場合、サンプル床全体を暴露する湿度の上昇、変換している溶媒和物から脱ガスされるイソプロパノールの除去、などの選択肢を検討する。
【0056】
実施例6:ヘミ水和物からのイソプロパノール溶媒和物の調製
50mLの乾燥イソプロパノール中のアジミライドヘミ水和物4グラムを、固体がイソプロパノール溶媒和物に変換するまで、約60℃で振とう又は撹拌する。出発物質として、無水物ではなくヘミ水和物を用いる。出発物質、実際の温度、及び撹拌によって、変換には数日又は数週間必要な場合がある。
【0057】
実施例7:多形体類の分析
前述した方法を使用して得てもよい各種多形体類は、後述の技術を使用することを更に特徴とすることが可能である。
【0058】
注意深く調製したヘミ水和物で観察される含水率は、典型的には1%〜2%の範囲であり、1.4〜1.8%が最も一般的に観察される。ヘミ水和物の理論上の含水量は、1.67%である。含水量を減らすために、へミ水和物を乾燥させてもよく、完全水和物質の分光法及びXRDシグニチャを依然として維持してもよい。無水物で観察される残留水分量は、検出されないか、約0.3%までの範囲である。イソプロパノール溶媒和物のイソプロパノール含量は、典型的には8%〜12%の範囲であり、9.5〜10.5%が最も一般的に観察される。モノイソプロパノール溶媒和物の理論上の溶媒量は、10.2%である。
【0059】
X線回折分析:ブルーカー(Bruker)D5000X線回折計を使用して、試料に対してX線粉末回折を実施する。D5000に2.2kW・CuアノードX線チューブ、アントンパール(Anton Parr)TTK−1低温ステージ、及び高速位置高感度検出器(PSD)を装着する。CuK放射線(=1.5418オングストローム)を使用して、粉末パターンを得る。二重フォイルのニッケルフィルタをX線受け取り経路内に置いて、Kβ−放射線を除去する。材料を取り付け、フロントローディング・サンプルホルダー上にて分析する。3.5から40(2θ)の範囲にわたって、0.02ステップサイズ、各ステップについて0.2秒で走査する。ヘミ水和物、無水塩、及びイソプロピルアルコール溶媒和物のX線回折パターンを、それぞれ図1、2、及び3に提供する。
【0060】
固体核磁気共鳴(SSNMR)分析:全てのデータは、7mm CPMASプローブ(5kHzでスピン)を装備したバリアン(Varian)社製300ユニティ・イノヴァ(Unity Inova)スペクトロメーターで記録される。13Cスペクトルを、交差分極マジックアングルスピニング(CP/MAS)TOSS(全サイドバンド抑制)装置にて記録する。試料は粉末にせずに、そのまま7mm窒化ケイ素ローター内に充填する。ヘミ水和物、無水塩、及びイソプロピルアルコール溶媒和物の13C NMRスペクトルを、それぞれ図4、5、及び6に提供する。
【0061】
赤外(IR)分析:バイオ・ラッド(BioRad)FTS−3000 FTIR分光計を用いて試料を分析する。機器のパラメーターとして、4,000cm-1〜1350cm-1の範囲を含め、4cm-1の測定分解能を用いて、16回スキャンを行う。フルオロルーブ・マル(fluorolube mull)を各試料用に調製し、分析用KBrディスクに置いた。試料収集の前に、清潔なKBrディスクのバックグラウンドを記録した。ヘミ水和物、無水塩、及びイソプロピルアルコール溶媒和物の赤外線スペクトルを、それぞれ図7、8、及び9に提供する。
【0062】
熱重量分析(TGA)で溶媒和レベルを測定した。パーキンエルマー(Perkin-Elmer)TGA−7を用い、水及び溶媒の分析を行う。試料(5〜12mg)を乾燥窒素下にて開放アルミニウム試料鍋に入れ、スキャン速度5℃/分にて実施する。ヘミ水和物、無水塩、及びイソプロピルアルコール溶媒和物のTGA曲線を、それぞれ図10、11、及び12に提供する。
【0063】
実施例8:様々な塩溶媒和物の特性
ヘミ水和物
評価した溶媒系では、ヘミ水和物は、無水物及びIPA溶媒和物よりも、化学プロセス濾過及びリンスにより適した粒径及び形状を生じた。大型の板状結晶は、一般にヘミ水和物から得られるが、他の2つの形態は、処理により、より密接に詰まった、より小型の、針状、棒状、又は極めて細い細長い板状を生じ、濾過及び流動をより困難にした。
【0064】
ヘミ水和物の見かけ上の水への溶解度は、室温で約170mg/mLであり、無水物(160mg/mL)で見られるよりも、より高い溶解度とより速い溶解速度をもたらす。
【0065】
ヘミ水和物の含水量は、室温、12%〜85%RHの範囲の相対湿度にわたり安定であるが、乾燥下で化合物から水分が放出される場合がある。このRH範囲内におけるヘミ水和物の含水量の安定性により、変動する湿度条件下で活性物質の重量ベースが変わらないため、粉末として直接固体剤形に組み込むのに特に最適となる。極端に乾燥すると、ヘミ水和物の結晶は破壊する。したがって、この形態では、乾燥を非機械的手段として用い、粒径を小さくできる。
【0066】
無水物
無水物は、水を含有しないため、特に水に弱い製剤において、ヘミ水和物よりも有利な場合がある。ヘミ水和物と同程度の溶解度はないが、USPの溶解度の定義によると、依然として水に溶けやすい(160mg/mL)。無水物は吸湿性はなく、室温、相対湿度85%において、4週間まで水を吸収しないことが証明されている。
【0067】
イソプロパノール溶媒和物
イソプロパノール溶媒和物は、3つの形態のうち一番高い見かけ上の水への溶解度、220mg/mLを提供し、極めて速い溶解、又は高い溶解度が望まれるときに有利である。無水物及びヘミ水和物とは異なり、イソプロパノール溶媒和物は湿度への暴露に対し安定でなく、相対湿度85%において、数日から数週間で無水物に変換される。
【0068】
総合すると、アジミライドの3種の異なる固体形が利用できることから、結晶化による精製を試みるプロセス化学者にとって、利点がもたらされる。各形態は、明確に異なる溶媒系から単離される。これらの系において、異なる溶解度を示す不純物が予測できる。また、不純物との共結晶化について、異なる性質を示す様々な結晶形が予測される。3種の異なる固体形が利用できることから、プロセス化学者に対し、問題の不純物を最も取り除くことができる形態から単離するという選択肢がもたらされる。また、アジミライドの3種の異なる固体形が利用できることから、製造プロセスにふさわしい最も好適な物理的取り扱い特性を選択できる製品の配合者に、利点をもたらす。
【0069】
実施例9:アジミライドジヒドロクロリドフィルムでコーティングされた錠剤
75mg及び125mgのアジミライドを含有する錠剤を、以下の方法で調製する。
【0070】
【表1】

【0071】
特に示されない限り、分量、百分率、部分、及び比率を含む量は、全て「約」という言葉により修飾されると理解され、量は有効数字を示すことを意図しない。
【0072】
特に指定される場合を除き、冠詞「a」、「an」及び「the」は「1以上」を意味する。
【0073】
「発明を実施するための形態」で引用した全ての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを容認するものと解釈されるべきではない。この文書における用語のいずれかの意味又は定義が、参考として組み込まれる文献における用語のいずれかの意味又は定義と対立する範囲については、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義を適用するものとする。
【0074】
本発明の特定の実施形態が説明及び記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行い得ることが当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるかようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲でカバーするものとする。
【0075】
以上、本発明及びその利点を詳細に述べたが、付属の特許請求の範囲によって規定される発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換及び改変を行うことが可能であることは理解されなければならない。更に、本願の範囲は明細書に述べられた物質の組成及び方法の特定の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば本発明の開示から直ちに認識されるように、既存の、あるいは将来開発されるであろう、本明細書中に述べた対応する実施形態と実質上同等の機能を行うか、あるいは実質上同等の結果を実現する物質の組成、方法、又は工程は、本発明に基づいて利用することが可能である。したがって、付属の特許請求の範囲はその範囲内にこうしたプロセス、物質の組成、方法、又は工程を包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.5%〜約2.5%(w/w)の水分を有するアジミライド組成物。
【請求項2】
前記組成物が、図1のパターンと実質的に一致することを特徴とするX線回折パターンを有する、請求項1に記載のアジミライド組成物。
【請求項3】
前記組成物が、図4の固体13C NMRスペクトルと実質的に一致することを特徴とする固体13C NMRスペクトルを有する、請求項1に記載のアジミライド組成物。
【請求項4】
前記組成物が、図7の赤外線スペクトルと実質的に一致することを特徴とする赤外線スペクトルを有する、請求項1に記載のアジミライド組成物。
【請求項5】
前記組成物が、図10のパターンと実質的に一致することを特徴とする熱重量分析曲線を有する、請求項1に記載のアジミライド組成物。
【請求項6】
前記組成物が、2θ値で約5.95度、約11.9度、約14.88度、約17.66度、約20.89度、及び約26.03度のX線回折ピークを有する、請求項1に記載のアジミライド組成物。
【請求項7】
前記組成物が、波数約3512及び3450に赤外吸光のピークを有する、請求項1に記載のアジミライド組成物。
【請求項8】
製薬的に許容できる担体を更に含む、請求項1に記載のアジミライド組成物。
【請求項9】
ヒト又はその他の動物の心不整脈の治療が必要な場合に、それを治療又は予防する方法であって、
(a)感染性疾患の治療又は予防が必要なヒト又はその他の動物を特定する工程と、
(b)ヒト又はその他の動物に、約0.5%〜約2.5%(w/w)の水分を有する有効量のアジミライド組成物を投与する工程と、
を含む方法。
【請求項10】
約0%〜約0.3%(w/w)の残留水分を有するアジミライド組成物。
【請求項11】
前記組成物が、図2のパターンと実質的に一致することを特徴とするX線回折パターンを有する、請求項10に記載のアジミライド組成物。
【請求項12】
前記組成物が、図5の固体13C NMRスペクトルと実質的に一致することを特徴とする固体13C NMRスペクトルを有する、請求項10に記載のアジミライド組成物。
【請求項13】
前記組成物が、図8の赤外線スペクトルと実質的に一致することを特徴とする赤外線スペクトルを有する、請求項10に記載のアジミライド組成物。
【請求項14】
前記組成物が、図11のパターンと実質的に一致することを特徴とする熱重量分析曲線を有する、請求項10に記載のアジミライド組成物。
【請求項15】
前記組成物が、2θ値で約4.96度、約9.25度、約9.92度、約14.9度、約21.17度、及び約24.56度のX線回折ピークを有する、請求項10に記載のアジミライド組成物。
【請求項16】
製薬的に許容できる担体を更に含む、請求項10に記載のアジミライド組成物。
【請求項17】
ヒト又はその他の動物の心不整脈の治療が必要な場合に、それを治療又は予防する方法であって、
(a)感染性疾患の治療又は予防が必要なヒト又はその他の動物を特定する工程と、
(b)ヒト又はその他の動物に、約0%〜約0.3%(w/w)の残留水分を有する有効量のアジミライド組成物を投与する工程と、
を含む方法。
【請求項18】
約9重量%〜約11重量%のイソプロパノールを有するアジミライド組成物。
【請求項19】
前記組成物が、図3のパターンと実質的に一致することを特徴とするX線回折パターンを有する、請求項18に記載のアジミライド組成物。
【請求項20】
前記組成物が、図6の固体13C NMRスペクトルと実質的に一致することを特徴とする固体13C NMRスペクトルを有する、請求項18に記載のアジミライド組成物。
【請求項21】
前記組成物が、図9の赤外線スペクトルと実質的に一致することを特徴とする赤外線スペクトルを有する、請求項18に記載のアジミライド組成物。
【請求項22】
前記組成物が、図12のパターンと実質的に一致することを特徴とする熱重量分析曲線を有する、請求項18に記載のアジミライド組成物。
【請求項23】
前記組成物が、2θ値で約4.33度、約9.51度、約12.8度、約17.16度、約18.5度、及び約21.53度のX線回折ピークを有する、請求項18に記載のアジミライド組成物。
【請求項24】
前記組成物が、波数約3428及び3390に赤外吸光のピークを有する、請求項18に記載のアジミライド組成物。
【請求項25】
製薬的に許容できる担体を更に含む、請求項18に記載のアジミライド組成物。
【請求項26】
ヒト又はその他の動物の心不整脈の治療が必要な場合に、それを治療又は予防する方法であって、
(a)感染性疾患の治療又は予防が必要なヒト又はその他の動物を特定する工程と、
(b)ヒト又はその他動物に、約9重量%〜約11重量%のイソプロパノールを有する有効量のアジミライド組成物を投与する工程と、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−513264(P2010−513264A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540950(P2009−540950)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/IB2007/055037
【国際公開番号】WO2008/072190
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】