説明

アスパラギン酸プロテアーゼを含む液体組成物

本発明は、(i)アスパラギン酸プロテアーゼ;並びに(ii)無機塩および/または多価アルコールを含む液体組成物であって;ソルベート、ベンゾエートおよびパラ−ヒドロキシベンゾエートのアルキルエステルの合計濃度が0.010mol/l未満であり;1ml中の標準プレートカウントが<100であり;1ml中の酵母数が<10であり;かつ1ml中のカビ数が<10である組成物を提供する。この組成物は、チーズ製造における凝固剤として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、アスパラギン酸プロテアーゼを含む液体組成物に関する。
【0002】
チーズの製造に、アスパラギン酸プロテアーゼの使用が含まれることはよく知られている。アスパラギン酸プロテアーゼはミルクを凝集させ、固形のカードを生成する。それはさらにチーズに加工される
【0003】
アスパラギン酸プロテアーゼは、動物、例えば子牛、駱駝およびアザラシの胃から得ることができる。それは、また、微生物、例えばリゾムコル属(Rhizomucor)、クリフォネクトリア属(Cryphonectria)、またはアスペルギルス属(Aspergillus)もしくはクリベロミセス属(Kluyveromyces)などの宿主株によって生産することができる。
【0004】
チーズ製造業では、アスパラギン酸プロテアーゼを含む液体組成物がしばしば使用される。そのような液体組成物は、通常、所望の安定性を得るために、ある種の添加剤を含有する。酵素安定性と微生物安定性は区別される。酵素安定性は、酵素の活性が低下する速度に関する尺度である。微生物安定性は、微生物が組成物中で増殖し成長する速度に関する尺度である。
【0005】
組成物の微生物特性は、明確に定義された標準手順を用いて標準プレートカウント、酵母の数およびカビの数によって表すことができる。例えば、1ml中の標準プレートカウントを≦100、1ml中の酵母数を≦10、そして、1ml中のカビ数を≦10にすることができる。組成物は使用の前に保存されることが多いので、長期間の保存、例えば、少なくとも3ヵ月に亘って保存する場合には、プレートカウント、酵母数およびカビ数をある境界値未満、例えば前記の値に維持することが望ましい。
【0006】
必要な微生物安定性を得るために、保存料としてソルベートまたはベンゾエートを使用することはよく知られている。パラベン(パラ−ヒドロキシベンゾエートのアルキルエステル)も使用される。
【0007】
例えば、米国特許第3763010号明細書には、アスパラギン酸プロテアーゼ、並びにソルビン酸カリウムおよび安息香酸ナトリウムを含む組成物が開示されている。国際公開第9015865A号パンフレットおよび国際公開第9529999A号パンフレットには、アスパラギン酸プロテアーゼを含有する組成物中に安息香酸ナトリウムを使用することが開示されている。アスパラギン酸プロテアーゼと3〜5g/l(0.02〜0.035mol/l)の安息香酸ナトリウムとを含む市販の組成物が知られている。
【0008】
しかしながら、ソルベート、ベンゾエートおよびパラベンを含まないかまたはより少量しか含まない製品が要望されている。
【0009】
本発明の目的は、ソルベート、ベンゾエートおよびパラベンを含まずとも良好な微生物安定性を有する組成物を提供することにある。
【0010】
本発明は、それらの化合物を含まないか、または、含んだとしてもその量が従来技術で知られるより少ない場合でも、驚くほど高い微生物安定性を有することができる組成物を提供する。さらに、この組成物は驚くほど高い酵素安定性を有することができる。本発明の組成物は、予想を超える長い保存期間を有することができる。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、(i)アスパラギン酸プロテアーゼ;並びに(ii)無機塩および/または多価アルコールを含む液体組成物であって;
ソルベート、ベンゾエートおよびパラ−ヒドロキシベンゾエートのアルキルエステルの合計濃度が0.010mol/l未満であり;
1ml中の標準プレートカウントが≦100であり;
1ml中の酵母数が≦10であり;かつ
1ml中のカビ数が≦10である
組成物が提供される。
【0012】
当然のことながら、ソルベートの濃度にはソルビン酸もソルビン酸の塩も含まれる。ベンゾエートの濃度には安息香酸も安息香酸の塩も含まれる。パラ−ヒドロキシベンゾエートのアルキルエステルは、塩の形態であっても塩の形態でなくてもよい。したがって、本明細書中で使用する場合、ソルベート、ベンゾエートおよびパラ−ヒドロキシベンゾエートのアルキルエステルの合計濃度は、組成物中のソルビン酸、ソルビン酸塩、安息香酸、安息香酸塩、パラ−ヒドロキシベンゾエートのアルキルエステルおよびパラ−ヒドロキシベンゾエートのアルキルエステルの塩の合計濃度をいう。ソルビン酸塩の例としては、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムおよびソルビン酸カルシウムが挙げられる。安息香酸塩の例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウムおよび安息香酸カルシウムが挙げられる。パラ−ヒドロキシベンゾエートのアルキルエステルの例としては、メチル−p−ヒドロキシベンゾエート、エチル−p−ヒドロキシベンゾエートおよびプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートが挙げられる。パラ−ヒドロキシベンゾエートのアルキルエステル塩の例としては、メチル−p−ヒドロキシベンゾエートのナトリウム塩、エチル−p−ヒドロキシベンゾエートのナトリウム塩およびプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートのナトリウム塩が挙げられる。
【0013】
本明細書中で使用する場合、標準プレートカウントは、ISO 4833:1991(E)(微生物学−微生物の計数のための一般的ガイダンス−30℃におけるコロニー計数技法)に準拠して測定される。
【0014】
酵母数は、ISO 7954:1987(E)(微生物学−酵母およびカビの計数のための一般的ガイダンス−25℃におけるコロニー計数技法)に準拠して測定される。
【0015】
カビ数は、ISO 7954:1987(E)(微生物学−酵母およびカビの計数のための一般的ガイダンス−25℃におけるコロニー計数技法)に準拠して測定される。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、アスパラギン酸プロテアーゼと、ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、プロピオン酸塩、リンゴ酸塩またはフマル酸塩から選択される化合物とを含む液体組成物が提供される。これらの化合物は微生物安定性に寄与する。当然のことながら、これらの化合物は対応する有機酸(ギ酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、リンゴ酸およびフマル酸)のアニオンであり、これらの化合物は、有機酸またはその塩として組成物に補足的に添加され得る。塩としては、例えばカリウム塩、ナトリウム塩またはカルシウム塩が挙げられる。
【0017】
有機酸および/またはその塩は、任意の適切な濃度で使用することができる。好ましい一実施形態では、ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、プロピオン酸塩、リンゴ酸塩もしくはフマル酸塩、またはこれらの組み合わせの組成物中の濃度は、少なくとも0.02mol/l、例えば少なくとも0.05mol/l、例えば少なくとも0.1mol/l、例えば少なくとも0.2mol/lである。当然のことながら、これらの化合物の少なくとも1種を、ここで定義した好ましい濃度で存在させることができる。また、これらの化合物の2種以上の組み合わせを、ここで定義した好ましい濃度で存在させることも可能である。組み合わせを使用する場合、濃度はこれらの化合物の合計濃度である。濃度に特定の上限はない。ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、プロピオン酸塩、リンゴ酸塩もしくはフマル酸塩、またはこれらの組み合わせの濃度は、2mol/l未満、例えば、1mol/l未満とすることができる。
【0018】
好ましい一実施形態では、組成物は酢酸塩を含む。組成物は、少なくとも0.02mol/lの酢酸塩、例えば少なくとも0.05mol/l、例えば少なくとも0.1mol/l、例えば少なくとも0.2mol/lの酢酸塩を含むことが好ましい。酢酸塩の濃度に特定の上限はない。組成物は、例えば、2mol/l未満、例えば1mol/l未満の酢酸塩を含むことができる。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、(i)アスパラギン酸プロテアーゼと、(ii)無機塩と、(iii)多価アルコールとを含む液体組成物が提供される。
【0020】
本発明の第4の態様によれば、アスパラギン酸プロテアーゼと無機塩とを含む液体組成物であって、無機塩の濃度が、180g/l未満、好ましくは170g/l未満、より好ましくは160g/l未満である組成物が提供される。当然のことながら、組成物は1種以上の無機塩を含むことができる。無機塩濃度の好ましい上限値は、組成物中の無機塩類の合計濃度である。
【0021】
本発明の第5の態様によれば、アスパラギン酸プロテアーゼと多価アルコールとを含む液体組成物であって、0.83未満、例えば0.80未満の水分活性を有する組成物が提供される。
【0022】
本発明の第6の態様によれば、アスパラギン酸プロテアーゼとグリセロールとを含む液体組成物が提供される。
【0023】
本発明の第7の態様によれば、アスパラギン酸プロテアーゼを含む液体組成物であって、少なくとも0.80、例えば少なくとも0.85の水分活性を有する組成物が提供される。
【0024】
本発明の第8の態様によれば、アスパラギン酸プロテアーゼを含む液体組成物であって、4〜7のpHを有する組成物が提供される。
【0025】
本発明の第9の態様によれば、アスパラギン酸プロテアーゼを含む液体組成物を調製する方法であって:
(a)発酵ブロスを用意する工程であって、前記発酵ブロスが(i)プロテアーゼを生産した微生物と(ii)プロテアーゼを含む上澄み液とを含有する工程;
(b)固液分離により、発酵ブロスから上澄み液を分離する工程;
(c)分離された上澄み液を精製して精製溶液を得る工程;
(d)場合により精製溶液へ1種以上の添加剤を添加する工程であって、前記1種以上の添加剤の少なくとも1種が、無機塩、多価アルコール、または、ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、プロピオン酸塩、リンゴ酸塩もしくはフマル酸塩から選択される化合物である工程;および
(e)場合により前記1種以上の添加剤を含有する精製溶液をろ過する工程;
を含む方法が提供される。
【0026】
本発明の第10の態様によれば、第9の態様の方法により得られる組成物が提供される。
【0027】
好ましい実施形態を後に記載するが、それらは本発明のあらゆる態様において適用可能である。さらに、当然のことながら、本発明は、本発明の種々の態様および/または好ましい特徴の任意の組み合わせをさらに含む。
【0028】
本発明においては、ベンゾエート、ソルベートまたはパラ−ヒドロキシベンゾエートの使用が必要でないか、あるいは、より少量のベンゾエート、ソルベートまたはパラ−ヒドロキシベンゾエートが使用される。好ましい一実施形態では、本発明の組成物は、ベンゾエートを0.010mol/l未満、好ましくは0.005mol/l未満、好ましくは0.002mol/l未満、好ましくは0.001mol/l未満、好ましくは0.0005mol/l未満、好ましくは0.0001mol/l未満、好ましくは0.00005mol/l未満、好ましくは0.00001mol/l未満、好ましくは検出不可能な量含む。さらに別の好ましい一実施形態では、本発明の組成物中のソルベート、ベンゾエートおよびパラ−ヒドロキシベンゾエートのアルキルエステルの合計濃度は、0.010mol/l未満、好ましくは0.005mol/l未満、好ましくは0.002mol/l未満、好ましくは0.001mol/l未満、好ましくは0.0005mol/l未満、好ましくは0.0001mol/l未満、好ましくは0.00005mol/l未満、好ましくは0.00001mol/l未満、好ましくは検出不可能な量である。発酵後の微生物の殺菌のためにベンゾエート、ソルベートおよびパラヒドロキシベンゾエートを使用し得ることが知られている。したがって、そのような殺菌工程の結果として、組成物中に少量のこれらの化合物が存在し得る。
【0029】
本発明の別の一実施態様では、本発明の組成物中の合計保存料濃度は、0.010mol/l未満、好ましくは0.005mol/l未満、好ましくは0.002mol/l未満、好ましくは0.001mol/l未満、好ましくは0.0005mol/l未満、好ましくは0.0001mol/l未満、好ましくは0.00005mol/l未満、好ましくは0.00001mol/l未満、好ましくは検出不可能な量である。保存料という用語は当業者にはよく理解されており、本明細書中で使用する場合、微生物の成長を阻害し、かつ/または、胞子の発芽を抑制し、かつ/または、増殖性細胞および/または胞子を殺す化合物をいう。本発明では、この保存料の定義には、多価アルコールも無機塩も包含されない。
【0030】
液体組成物は、水性組成物、例えば水溶液であることが好ましい。本明細書中で使用する場合、水性組成物または水溶液は、水、例えば少なくとも20重量%の水、例えば少なくとも40%の水を含む任意の組成物または溶液を包含する。
【0031】
好ましい一実施態様では、本発明の組成物は、水分活性が0.95未満、例えば0.92未満、例えば0.9未満、例えば0.85未満、例えば0.8未満である。本明細書中で使用する場合、水分活性は25℃で測定される値をいう。比較的低い水分活性であっても、所望の微生物安定性の達成に寄与することができる。無機塩および/または多価アルコールの添加により、水分活性に影響を与えることができる。水分活性は0.7超、例えば0.8超、例えば0.83超もしくは0.85超または0.86超であってよい。驚くべきことに、水分活性がこれらの値より高いと、予想を超える高い微生物安定性が得られることがわかった。好ましい一実施態様では水分活性は0.85〜0.95である。
【0032】
好ましい一実施態様では、本発明の組成物は無機塩を含む。無機塩は、組成物の水分活性を低下させることができる。任意の適切な無機塩が使用可能である。無機塩は、例えば、(CH、NH、K、Na、Ca2+およびBa2+からなる群から選択されるカチオンと、SO2−、Cl、Br、NO、ClOおよびSCNからなる群より選択されるアニオンとを含む塩であってよい。好ましい無機塩はNaCl、KCl、NaSOまたは(NHSOである。組成物は1種以上の無機塩を含有することができる。
【0033】
好ましい一実施態様では、組成物は、少なくとも80g/l、好ましくは少なくとも100g/l、より好ましくは少なくとも120g/l、より好ましくは少なくとも140g/lの無機塩または無機塩の組み合わせを含む。塩濃度の上昇は、組成物の水分活性を増大させる効果があり、所望の微生物安定性を達成する助けとなる。当然のことながら、少なくとも1種の無機塩をここで定義するような好ましい濃度で含有させることができる。また、無機塩の組み合わせもここで定義するような好ましい濃度で含有させることができる。無機塩の組み合わせを用いる場合、濃度は無機塩の合計濃度をいう。好ましい一実施態様では、組成物は、少なくとも80g/l、好ましくは少なくとも100g/l、より好ましくは少なくとも120g/l、より好ましくは少なくとも140g/lのNaClを含む。
【0034】
好ましい一実施態様では、組成物中の無機塩の濃度は、200g/l未満、好ましくは190g/l未満、好ましくは180g/l未満、好ましくは170g/l未満、例えば160g/l未満である。好ましい一実施態様では、組成物は、200g/l未満、好ましくは190g/l未満、好ましくは180g/l未満、好ましくは170g/l未満、例えば160g/l未満のNaClを含む。無機塩の濃度を低下させると、酵素安定性を増大させることができる。本発明では、比較的低濃度の無機塩を使用することができ、それは高微生物安定性と高酵素安定性の組み合わせを達成する助けとなる。当然のことながら、組成物は1種以上の無機塩を含有することができる。無機塩の濃度の好ましい上限値は、組成物中の無機塩類の合計濃度である。
【0035】
好ましい一実施態様では、組成物は多価アルコールを含む。多価アルコールは組成物の水分活性を低下させることができる。水分活性の低下は、所望の微生物安定性を達成する助けとなる。任意の適切な多価アルコールが使用可能である。多価アルコールは、例えば、エチレングリコール(エタンジオール)、プロピレングリコール(プロパンジオール)、グリセロール、エリトリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトールであってよい。多価アルコールは、グリセロール、ソルビトールまたはプロパンジオールであることが好ましく、グリセロールまたはプロパンジオールであることがより好ましい。組成物は1種以上の多価アルコールを含有することができる。
【0036】
好ましい一実施態様では、組成物は、少なくとも40g/l、好ましくは少なくとも80g/lの多価アルコールまたは多価アルコールの組み合わせを含む。当然のことながら、少なくとも1種の多価アルコールをここで定義するような好ましい濃度で含有させることができる。また、多価アルコール類の組み合わせもここで定義するような好ましい濃度で含有させることができる。多価アルコールの組み合わせを用いる場合、濃度は無機塩の合計濃度をいう。
【0037】
本発明の一実施態様では、組成物中の多価アルコールの濃度は、300g/l未満、例えば200g/l未満、例えば150g/l未満である。しかしながら、より低い濃度、例えば100g/l未満、例えば50g/l未満、例えば10g/l未満の濃度を用いてもよく、0g/lの濃度でもよい。これらの上限は、組成物中の多価アルコール類の合計濃度である。
【0038】
一実施態様では、組成物は90〜120g/lの多価アルコールまたは多価アルコール類の組み合わせ、および、好ましくは140〜180g/lのNaClを含む。
【0039】
組成物は任意の適切なpHを有することができる。好ましい一実施態様では、組成物は7未満、好ましくは6未満のpHを有する。pHは、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも4、好ましくは少なくとも5である。pHは、例えば4.8〜5.5であってよい。
【0040】
好ましい一実施態様では、組成物は還元剤、好ましくはメチオニンを含む。好ましくは、組成物は少なくとも1g/l、好ましくは少なくとも2g/l、より好ましくは少なくとも5g/lで、例えば100g/l未満、例えば30g/l未満のメチオニンを含む。
【0041】
好ましい一実施態様では、酵素活性は組成物1ml当たり少なくとも100IMCUであり、好ましくは組成物1ml当たり少なくとも200IMCUであり、好ましくは組成物1ml当たり少なくとも500IMCUである。酵素活性には特定の上限はない。酵素活性は、組成物1ml当たり5000IMCU未満、例えば1ml当たり2000IMCU未満、例えば組成物1ml当たり1000IMCU未満であってよい。IMCUは、国際凝乳単位(International Milk Clotting Unit)であり、国際酪農連盟(International Dairy Federation)(IDF)、指令第176:1996により定義されている。
【0042】
好ましい一実施態様では、本発明の組成物の1ml中の標準プレートカウントは≦100である。1ml中の酵母数は≦10が好ましい。1ml中のカビ数は≦10が好ましい。
【0043】
本発明の組成物は、予想以上に高い微生物安定性を有する。本発明の一実施態様では、本組成物を密閉容器中、温度4℃の暗所に保存した場合、少なくとも4ヶ月間、好ましくは少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも9ヶ月間、好ましくは少なくとも12ヶ月間、好ましくは少なくとも18ヶ月間、好ましくは少なくとも24ヶ月間、1ml中の標準プレートカウントが≦100、1ml中の酵母数が≦10、1ml中のカビ数が≦10に維持される。
【0044】
本発明の一実施態様では、本組成物を密閉容器中、温度30℃の暗所に保存した場合、少なくとも4ヶ月間、好ましくは少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも9ヶ月間、好ましくは少なくとも12ヶ月間、好ましくは少なくとも18ヶ月間、好ましくは少なくとも24ヶ月間、1ml中の標準プレートカウントが≦100、1ml中の酵母数が≦10、1ml中のカビ数が≦10に維持される。
【0045】
本発明の一実施態様では、本組成物を密閉容器中、温度4℃の暗所に保存した場合、少なくとも4ヶ月間、好ましくは少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも9ヶ月間、好ましくは少なくとも12ヶ月間、好ましくは少なくとも18ヶ月間、好ましくは少なくとも24ヶ月間に、酵素活性は最大で5%減少する。
【0046】
本発明の一実施態様では、本組成物を密閉容器中、温度30℃の暗所に保存した場合、少なくとも4ヶ月間、好ましくは少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも9ヶ月間、好ましくは少なくとも12ヶ月間、好ましくは少なくとも18ヶ月間、好ましくは少なくとも24ヶ月間に、酵素活性は最大で5%減少する。
【0047】
これらの試験用の密閉容器として、瓶を使用することができる。瓶は充填前に殺菌され、ねじで密閉される。容積50mlの瓶を使用することができ、それらに試験用の組成物20mlを充填する。
【0048】
組成物は、任意の適切なアスパラギン酸プロテアーゼを含むことができる。アスパラギン酸プロテアーゼは、凝乳酵素であることが好ましい。凝乳酵素は、カッパ−カゼインの105番目のフェニルアラニン残基と106番目のメチオニン残基との間のペプチド結合またはその隣の結合に対し特異性を有するという特徴がある。
【0049】
アスパラギン酸プロテアーゼは、動物由来であってもよい。アスパラギン酸プロテアーゼは微生物によって産生されることが好ましい(微生物産生アルパラギン酸プロテアーゼ)。
【0050】
微生物としては、例えば、リゾムコル属(Rhizomucor)、例えばリゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)またはリゾムコル・プシルス(Rhizomucor pussilus)、あるいはクリフォネクトリア属(Cryphonectria)、例えばクリフォネクトリア・パラシチカ(Cryphonectria parasitica)が挙げられる。微生物は、また、アスペルギルス属(Aspergillus)、トリコデルマ属(Trichoderma)、ペニシリウム属(Penicillium)、フサリウム属(Fusarium)、フミコラ属(Humicola)またはクリベロミセス属(Kluyveromyces)から選択することができる。これらの微生物は、例えば、宿主株として使用することができる。好ましい一実施態様では、微生物は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、クリベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)またはエシェリキア・コリ(Escherichia coli)である。
【0051】
本発明の一実施態様では、アスパラギン酸プロテアーゼはリゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼである。用語「リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼ」は、リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)中で相同的に産生されたアスパラギン酸プロテアーゼを包含する。発酵による酵素の製造方法は、米国特許第3,988,207号明細書に記載されている。用語「リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼ」は、また、組換え型リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼ、例えば、リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼをコードするDNAで形質転換された宿主生物(例えば、リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)以外)中で産生されたリゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼを包含する。宿主生物中で組換え型リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼを製造する方法は、EP−A−700253に記載されている。
【0052】
本発明の別の一実施態様では、アスパラギン酸プロテアーゼはキモシンである。キモシンは、例えば、子牛、駱駝またはアザラシの胃から抽出することができる。本発明の好ましい一実施態様では、キモシンは、細菌、例えばエシェリキア・コリ(Escherichia coli)、酵母、例えばクリベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、または、糸状菌、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)におけるDNA組換え技術などによって、微生物により産生される。
【0053】
本発明の組成物は、任意の適切な密閉容器に入れられる。したがって、本発明はさらに、本発明の組成物を含有する密閉および/または封止容器を提供する。
【0054】
本発明の組成物は、アスパラギン酸プロテアーゼを含む液体組成物の調製方法であって、
(a)発酵ブロスを用意する工程であって、前記発酵ブロスが(i)プロテアーゼを生産した微生物と(ii)プロテアーゼを含む上澄み液とを含有する工程;
(b)固液分離により、発酵ブロスから上澄み液を分離する工程;
(c)分離された上澄み液を精製して精製溶液を得る工程;
(d)場合により精製溶液へ1種以上の添加剤を添加する工程であって、前記1種以上の添加剤の少なくとも1種が、無機塩、多価アルコール、または、ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、プロピオン酸塩、リンゴ酸塩もしくはフマル酸塩から選択される化合物である工程;および
(e)場合により前記1種以上の添加剤を含有する精製溶液をろ過する工程;
を含む方法により、調製することができる。
【0055】
工程(a)は、任意の適切な方法で行うことができ、プロテアーゼの産生に適した条件下で微生物を培養し、その結果、微生物とプロテアーゼを含有する上澄み液とを含む発酵ブロスを得る工程を含むことができる。適切な方法は、例えばEP−A−1365019に記載されている。
【0056】
工程(b)は、任意の適切な方法で行うことができるが、遠心分離および/またはろ過を含むことが好ましい。工程(b)は、メンブランフィルタープレスまたはポリッシュフィルターを用いてろ過する工程を含むことができる。
【0057】
工程(c)機能は、他の成分に対し酵素の濃度を増加させる任意の工程を含むことができる。工程(c)は、クロマトグラフィまたは限外ろ過を含むことが好ましい。クロマトグラフィを行う好ましい方法は、国際公開第03100048A号パンフレットおよび国際公開第0250253A号パンフレットに記載されており、それらの内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0058】
工程(d)は、精製溶液へ1種以上の添加剤を添加する工程であって、前記1種以上の添加剤の少なくとも1種が、無機塩、多価アルコール、または、ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、プロピオン酸塩、リンゴ酸塩もしくはフマル酸塩から選択される化合物である工程を含む。他の添加剤も添加することができる。ベンゾエート、ソルベートまたはパラ−ヒドロキシベンゾエートのアルキルエステルから選択される化合物は、精製溶液に添加しないことが好ましい。
【0059】
工程(e)は、仕上げろ過または無菌ろ過を含むことが好ましい。仕上げろ過は、それ自体よく知られている。工程(e)の仕上げろ過は、微量の不溶粒子、例えば細胞の破片、および/または、汚染微生物を除去する作用を有する。仕上げフィルターは、通常、比較的小さなフィルター孔径(マイクロメートル領域)および厚さが薄い活性フィルター層(ミリメートルからセンチメートル領域)を有する。
【0060】
(e)で得られるろ液は次の特性:1ml中の標準プレートカウント≦100、1ml中の酵母数≦10、1ml中のカビ数≦10を有することが好ましい。
【0061】
(e)で得られるろ液と接触する装置は、その装置がろ液と接触する前に蒸気と接触させることが好ましい。これによって汚染が避けられる。
【0062】
本発明の方法の一実施態様では、(a)、(b)、(c)、(d)または(e)の工程の1つ以上の工程が、10℃未満、好ましくは5℃未満の温度で行われる。
【0063】
好ましい一実施態様では、(e)で得られるろ液中におけるソルベート、ベンゾエートおよびパラ−ヒドロキシベンゾエートのアルキルエステルの合計濃度は、0.010mol/l未満、好ましくは0.005mol/l未満、好ましくは0.002mol/l未満、好ましくは0.001mol/l未満、好ましくは0.0005mol/l未満、好ましくは0.0001mol/l未満、好ましくは0.00005mol/l未満、好ましくは0.00001mol/l未満、好ましくは検出不可能な量である。
【0064】
本発明は、さらに、本発明の組成物の、チーズ製造における凝固剤としての使用を提供する。
【0065】
本発明は、さらに、(i)ミルクに本発明の組成物を添加して凝集させ、カードを得る工程;および(ii)カードをチーズに加工する工程を含むチーズの製造方法を提供する。
【0066】
以下、次の実施例を参照して本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
[実施例]
[実施例1〜5]
EP−A−1365019に記載のようにして、リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)を培養した。発酵の終わりに、ブロスの冷却、殺菌、およびメンブランフィルタープレスおよび仕上げろ過による液体からの分離を行った。次に、国際公開第03/100048号パンフレットに記載のようにクロマトグラフィにより凝乳プロテアーゼを精製した。凝乳プロテアーゼを含むカラム溶出液に、NaCl、酢酸ナトリウム、メチオニン(10g/l)および必要に応じて安息香酸ナトリウムを添加し、かつ、pHを調節して調合した(表1参照)。汚染が避けられる条件(バットおよび配管の蒸気処理を含む)を特に選択した。
【0068】
【表1】

【0069】
水分活性は、サーモコンスタンター(Thermoconstanter)TH200(ノバシナ(Novasina)、アクセール・リミテッド(Axair Ltd)、スイス(Swizerland))を用いて25℃で測定し、11、33、53、75、90および98%の相対湿度の6種の較正用塩を、製造業者から供給されたままの状態で使用して較正した。
【0070】
[安定性試験]
サンプル(20ml)をねじ蓋密閉式の瓶に入れ、30℃に予め設定しておいたインキュベータ内に保存した。種々の時間間隔(0、1、2、4週、2、8ヶ月)で、ISO 4833:1991(E)(微生物学−微生物の計数のための一般的ガイダンス−30℃におけるコロニー計数技法)に準拠して標準プレートカウントを測定し、また、ISO 7954:1987(E)(微生物学−酵母およびカビ計数のための一般的ガイダンス−25℃におけるコロニー計数技法)に準拠して酵母数およびカビ数を測定した。これらの測定(NaClを含まない培地を用いて行った)に加え、同じ方法ではあるが、5%のNaClを含む培地を使用した点が異なる方法でも測定を行った。
【0071】
細菌、酵母およびカビのコロニーカウントは、NaClを含むプレートであろうが、NaClを含まないプレートであろうが、全てのサンプルで、1ml当たり<10であった。
【0072】
この安定性試験は、サンプルが30℃で少なくとも8ヶ月間保存された場合、安息香酸塩を含まない全ての処方で、1ml中の標準プレートカウントが≦100に維持され、1ml中の酵母が≦10に維持され、かつ1ml中のカビが≦10に維持されることを示している。サンプルが4℃で少なくとも12ヶ月間保存された場合、1ml中の標準プレートカウントは≦100に維持され、1ml中の酵母は≦10に維持され、1ml中のカビは≦10に維持される。
【0073】
[チャレンジ試験]
リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)由来凝乳プロテアーゼの5種類の処方を、ゼロトレランスの細菌、酵母およびカビから選択した微生物を計数するチャレンジ試験に供した。全ての処方が微生物に対して良好な抵抗を示すことがわかった。
【0074】
この保存期間中の凝乳プロテアーゼの酵素活性の低下は、処方1、2および3においては、IMCU(国際酪農連盟(IDF)、指令第176:1996で定義された国際凝乳単位)の値で、1ヶ月当たり0.5%未満であった。処方4および5では、より大きく低下した。
【0075】
[実施例6〜9]
実施例1〜5と同様にして、リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼを生成した。生成物を表2に示すように処方した。初期酵素活性は760IMCU/mlであった。
【0076】
【表2】

【0077】
[安定性試験]
サンプル(50ml)をねじ蓋密閉式の瓶に入れ、20℃に設定したインキュベータ内に保存した。種々の時間間隔(0、1、2、4週、その後は4週間毎に8ヶ月まで)で、実施例1〜5と同様にして標準プレートカウントを測定した。これらの測定(NaClを含まない培地を用いて行った)に加え、同じ方法ではあるが、10%のNaClを含む培地を使用した点が異なる方法でも測定を行った。培地に10%NaClを含まない場合の標準プレートカウントは、開始から全保存期間に亘って1ml当たり<10のコロニー形成単位を示したが、酢酸塩および安息香酸塩を含まない処方8および9では、保存2週間後にこの値に達し、その後は全保存期間に亘って一定値を維持した。培地に10%NaClを含む場合の標準プレートカウントは、全ての処方で、開始から保存期間の終了まで、1ml当たり<10のコロニー形成単位を示した。
【0078】
この安定性試験は、安息香酸塩が存在しない場合でも、酢酸塩が良好な微生物安定性を付与することを示している。
【0079】
[チャレンジ試験]
表2に示したリゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)由来アスパラギン酸プロテアーゼの4種類の処方に、ゼロトレランスの微生物(好塩性マイクロコッカス(Micrococcus)、トルロプシス・カンジダ(Torulopsis candida)およびハンセヌラ・アノマラ(Hansenula anomala))の混合物を、1ml当たり約2E+3のコロニー形成単位加えた。サンプルをねじ蓋密閉式の瓶に入れ、20℃に設定したインキュベータ内に保存した。実施例6および7の処方(安息香酸塩または酢酸塩を含有)は、安息香酸塩も酢酸塩も含有しない実施例8と比べ、微生物に対する抵抗性に優れていることがわかった。実施例9の処方は微生物に対して良好な抵抗性を有することがわかったが、酢酸塩の使用により、より低濃度の塩の使用が可能となり、酵素安定性を高めることができることがわかった。
【0080】
総合すると、安定性およびチャレンジ試験は、安息香酸塩の非存在下でも、酢酸塩が優れた保存効果を発揮することを示している。
【0081】
[実施例10〜11]
実施例1〜5と同様にして、リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼを製造した。生成物を表3に示すように処方し、10g/lのメチオニンを含有させた。pHの調節および各種化合物の添加後、処方物を再度仕上げろ過に供した。仕上げろ過の前に、ろ過物が接触するバットおよび配管に蒸気処理を行った。その後、ろ過物を20リットルのドラムに入れ、密閉した。
【0082】
【表3】

【0083】
[安定性試験]
サンプルを20lの密閉ドラムに入れ、5℃または20℃に設定したインキュベータ内に保存した。処方10の1個のドラムと処方11の3個のドラムとを、この安定性試験に使用した。これらのサンプルの微生物安定性を、標準プレートカウントにより、8ヶ月まで一定の間隔で定期的にチェックした。実施例1〜5と同様の方法で、標準プレートカウントまたは酵母およびカビ数を測定したところ、全ての容器で、5℃でも20℃でも、細菌、酵母またはカビの増殖は観察されなかった。
【0084】
安息香酸塩を含まないこれらの処方の微生物安定性は、8ヶ月の保存期間を通して良好であった。
【0085】
[チャレンジ試験]
各処方のサンプル(50ml)に、ゼロトレランスの微生物(好塩性マイクロコッカス(Micrococcus)、トルロプシス・カンジダ(Torulopsis candida)およびハンセヌラ・アノマラ(Hansenula anomala))の混合物を、1ml当たり約2E+3のコロニー形成単位加えた。これらのサンプルを、ねじぶた式の瓶に入れ、20℃に設定したインキュベータ内に保存した。両処方ともに、微生物に対して良好な抵抗性を示した。
【0086】
安定性およびチャレンジの両試験は、酢酸塩を含むが安息香酸塩は含まない処方が、優れた保存効果を有していることを示している。
【0087】
[実施例12〜15]
EP0301670に記載のようにして、遺伝子組み換えクリベロミセス属(Kluyveromyces)宿主菌株の発酵法によりキモシンのサンプルを得た。発酵後、微生物を殺し、pH2の処理によりキモシンを活性化させ、その後、ろ過および透析ろ過によりブロスからキモシンを回収した。キモシンを表4に示すように処方した。汚染が避けられる条件(バットおよび配管の蒸気処理を含む)を特に選択した。初期酵素活性は645IMCU/mlであった。
【0088】
【表4】

【0089】
[安定性試験]
4種の処方の標準プレートカウントは1ml当たり<100コロニー形成単位であり、酵母およびカビ数は1ml当たり<10コロニー形成単位である。
【0090】
[チャレンジ試験]
サンプル(50ml)に、ゼロトレランスの微生物(好塩性マイクロコッカス(Micrococcus)、トルロプシス・カンジダ(Torulopsis candida)およびハンセヌラ・アノマラ(Hansenula anomala))の混合物を、1ml当たり約2E+3のコロニー形成単位加えた。サンプルをねじ蓋密閉式の瓶に入れ、20℃に設定したインキュベータ内に保存した。
【0091】
実施例12、14、15の処方(安息香酸塩またはプロパンジオールを含有)は、安息香酸塩もプロパンジオールも含有しない実施例13の処方と比べ、微生物に対する抵抗性が良好であることがわかった。
【0092】
この実験は、プロパンジオールを含み、安息香酸塩を含まない処方が、良好な微生物安定性と微生物に対する明らかな抵抗性とを有していることを明確に示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アスパラギン酸プロテアーゼ;並びに
(ii)無機塩および/または多価アルコール
を含む液体組成物であって;
ソルベート、ベンゾエートおよびパラ−ヒドロキシベンゾエートのアルキルエステルの合計濃度が0.010mol/l未満であり;
1ml中の標準プレートカウントが≦100であり;
1ml中の酵母数が≦10であり;かつ
1ml中のカビ数が≦10である
液体組成物。
【請求項2】
アスパラギン酸プロテアーゼと、ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、プロピオン酸塩、リンゴ酸塩またはフマル酸塩から選択される化合物とを含む請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、プロピオン酸塩、リンゴ酸塩もしくはフマル酸塩またはそれらの組み合わせの濃度が少なくとも0.05mol/lである請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
酢酸塩を含む請求項2または請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
酢酸塩の濃度が少なくとも0.05mol/lである請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
(i)アスパラギン酸プロテアーゼ、(ii)無機塩、および(iii)多価アルコールを含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項7】
少なくとも80g/lの無機塩または無機塩の組み合わせ;および
少なくとも40g/lの多価アルコールまたは多価アルコールの組み合わせ
を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項35〜43のいずれか一項に記載の方法により得られる請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項9】
ベンゾエートの濃度が0.010mol/l未満である請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ソルベート、ベンゾエートおよびパラヒドロキシベンゾエートのアルキルエステルの合計濃度が0.010mol/l未満である請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
水分活性が0.95未満である請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
水分活性が0.85〜0.95である請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
無機塩を含む請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記無機塩がNaCl、KCl、NaSOまたは(NHSOである請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも80g/lの無機塩または無機塩の組み合わせを含む請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも80g/lのNaClを含む請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
無機塩の濃度が180g/l未満である請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
180g/l未満のNaClを含む請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
多価アルコールを含む請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記多価アルコールがプロピレングリコール、グリセロールまたはソルビトールである請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
少なくとも40g/lの多価アルコールまたは多価アルコールの組み合わせを含む請求項1〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
pHが4〜6である請求項1〜21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
メチオニンをさらに含む請求項1〜22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
アスパラギン酸プロテアーゼが凝乳酵素である請求項1〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
酵素活性が1ml当たり少なくとも100IMCUである請求項1〜24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
アスパラギン酸プロテアーゼが微生物により産生されたものである請求項1〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
微生物がリゾムコル属(Rhizomucor)である請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
微生物がクリフォネクトリア属(Cryphonectria)である請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
微生物がアスペルギルス属(Aspergillus)、クリベロミセス属(Kluyveromyces)、またはエシェリキア・コリ(Escherichia coli)である請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
アスパラギン酸プロテアーゼがキモシンである請求項1〜29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
アスパラギン酸プロテアーゼがリゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼである請求項1〜29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
組成物を密閉容器中、温度4℃の暗所に保存した場合、少なくとも6ヶ月間、1ml中の標準プレートカウントが≦100、1ml中の酵母数が≦10、1ml中のカビ数が≦10に維持される請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
組成物を密閉容器中、温度4℃の暗所に保存した場合、少なくとも6ヶ月間に、酵素活性が最大で5%減少する請求項1〜32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
請求項1〜33のいずれか一項に記載の組成物を含む密閉容器。
【請求項35】
アスパラギン酸プロテアーゼを含む液体組成物の調製方法であって、
(a)発酵ブロスを用意する工程であって、前記発酵ブロスが(i)プロテアーゼを産生した微生物と(ii)プロテアーゼを含む上澄み液とを含有する工程;
(b)固液分離により、発酵ブロスから上澄み液を分離する工程;
(c)分離された上澄み液を精製して精製溶液を得る工程;
(d)精製溶液へ1種以上の添加剤を添加する工程であって、前記1種以上の添加剤の少なくとも1種が、無機塩、多価アルコール、または、ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、プロピオン酸塩、リンゴ酸塩もしくはフマル酸塩から選択される化合物である工程;および
(e)前記1種以上の添加剤を含有する精製溶液をろ過する工程
を含む方法。
【請求項36】
(e)が仕上げろ過または無菌ろ過による請求項35に記載の方法。
【請求項37】
(e)で得られるろ液と接触する装置は、その装置がろ液と接触する前に蒸気と接触する請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
(c)は、クロマトグラフィまたは限外ろ過を含む請求項35〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
(b)は、メンブランフィルタープレスまたはポリッシュフィルターを用いてろ過する工程を含む請求項35〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
(a)、(b)、(c)、(d)または(e)の工程の1つ以上の工程が、10℃未満、好ましくは5℃未満の温度で行われる請求項35〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
(e)で得られるろ液が、次の特性:1ml中の標準プレートカウント≦100、1ml中の酵母数≦10、1ml中のカビ数≦10、を有する請求項35〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
ベンゾエート、ソルベートまたはパラ−ヒドロキシベンゾエートのアルキルエステルから選択される化合物が精製溶液に添加されない請求項35〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
(e)で得られるろ液中のソルベート、ベンゾエートおよびパラ−ヒドロキシベンゾエートのアルキルエステルの合計濃度が0.010mol/l未満である請求項35〜42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
請求項1〜33のいずれか一項に記載の組成物の、チーズ製造における凝固剤としての使用。
【請求項45】
(i)ミルクに請求項1〜33のいずれか一項に記載の組成物を添加してミルクを凝集させ、カードを得る工程;および(ii)カードをチーズに加工する工程を含むチーズの製造方法。

【公表番号】特表2009−533036(P2009−533036A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504749(P2009−504749)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053556
【国際公開番号】WO2007/118838
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】