説明

アスピレータバルブ装置

【課題】コンパクトでシンプルな構成でバルブ機能とアスピレータ機能を併せ持ち、作業時における操作性も良好なアスピレータバルブ装置を提供する。
【解決手段】流入側流路11と流出側流路21とが開口部22を通じて垂直に連通するバルブ本体2と、先端部近傍の外周面が弁体45を構成するニードル状の中空管41を有する進退移動自在な弁体部材40を備え、弁体45と開口部22周囲の弁座23とを離間させて形成された隙間によるノズル部60を設けた状態で、液体流入口10から流入しノズル部60を通過した高流速の液体に、中空管41の内部を通じて外部より気体を巻き込んで流出側流路21のテーパ管路26を通過させ、この気体と混合した液体を液体流出口20より吐出させることで外部からの気体を中空管より吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスピレータ機能およびバルブ機能を併せ持つアスピレータバルブ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、化学や生物学の実験等においては、手軽に減圧状態を得るためにアスピレータが用いられている。このアスピレータは、主に次の2つの構成のものが用いられている。
【0003】
第1に、真直ぐな先細りの管を液体が流れ、先端部より勢いよく気相溜めのノズル口内に吹き出して気体を巻き込み液体への気体の混合を可能にする構成である。なお、気体の吸入側には液体の逆流を防止する逆止弁が設けられている。
【0004】
第2に、液体が真直ぐな管を流れ、その管に対して垂直な方向に取り付けられた外部(外気)と連通する中空管より気体を巻き込んで液体への気体の混合を可能にする構成である。この場合も気体の吸入側には液体の逆流を防止する逆止弁が設けられている。
【0005】
この他、燃料回収や社内温度検知等に用いるアスピレータ等も知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−156093号公報
【特許文献2】特開2004−322721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術においては、バルブ機能を併せ持つアスピレータは提案されていない。また、従来のアスピレータは液体の流路が真直ぐであるのが通常であるが、使用状況によっては液体の流路が入口と出口とで垂直に曲がっていることが適している場合もある。
【0008】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、コンパクトでシンプルな構成でバルブ機能とアスピレータ機能を併せ持ち、作業時における操作性も良好なアスピレータバルブ装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアスピレータバルブ装置は、バルブ本体および弁体部材を備え、バルブ本体は、液体流入口に連通する流入側流路と、液体流出口に連通する流出側流路とが内部に設けられ、流出側流路は、流入側流路に対して流路方向が垂直であり、液体流出口とは反対側の端部に流入側流路と連通する開口部が設けられるとともに、この開口部から液体流出口に向かって拡径するテーパ管路が設けられ、弁体部材は、先端部近傍の外周面が弁体を構成するニードル状の中空管を備え、中空管の途中に液体の逆流を防止する逆止弁が設けられ、流出側流路の開口部に対して液体流出口の反対側より流出側流路の流路方向に沿ってバルブ本体との螺合により進退自在に設けられるとともに、開口部を開閉できるように開口部周囲の弁座に対して弁体が接離可能に構成され、弁体部材の弁体とバルブ本体の弁座とを離間させて形成された隙間によるノズル部を設けた状態で、液体流入口から流入しノズル部を通過した高流速の液体に、弁体部材の中空管の内部を通じて外部より気体を巻き込んで流出側流路のテーパ管路を通過させ、この気体と混合した液体を液体流出口より吐出させることで外部からの気体を中空管より吸引するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアスピレータバルブ装置によれば、コンパクトでシンプルな構成でバルブ機能とアスピレータ機能を併せ持ち、作業時における操作性も良好である。また、液体の流路が入口側と出口側とで垂直に曲がっているので、従来のような入口側から出口側まで流路が真直ぐなアスピレータとは異なる態様での使用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のアスピレータバルブ装置の実施形態を示す断面図である。
【図2】図1のアスピレータバルブ装置の正面図である。
【図3】図1のアスピレータバルブ装置の上面図である。
【図4】図1のアスピレータバルブ装置の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1〜図4に示す本実施形態のアスピレータバルブ装置1は、液体の流れの中に気体を巻き込むことができるアスピレータ機能と、液体の流れを止めることができるバルブ機能とを併せ持った装置である。
【0013】
図1に示すように、このアスピレータバルブ装置1は、液体の流路を内部に有するバルブ本体2と、ニードル状の弁体部材40とを備えている。
【0014】
バルブ本体2は、それぞれ金属製の躯体3および固定部材4を備えている。躯体3は、液体流入口10に連通する流入側流路11と、液体流出口20に連通する流出側流路21とが内部に設けられている。
【0015】
流出側流路21は、流入側流路11に対して流路方向が垂直であり、これらは逆L字型の流路を形成している。このように、本実施形態のアスピレータバルブ装置1は、気体を巻き込む構造が従来のアスピレータとは異なり、液体の流入方向と液体の流出方向とが直角となるように構成されている。
【0016】
流出側流路21は、液体流出口20とは反対側の端部に流入側流路11と連通する開口部22が設けられている。そして開口部22から液体流出口20に向かって円錐状に拡径するテーパ管路26が設けられている。このテーパ管路26は、アスピレータとして使用する際にいわゆるベンチュリ管と同様の作用をする。
【0017】
弁体部材40は、ニードル状の中空管41を備え、この中空管41の先端部近傍の外周面が弁体45を構成している。中空管41は、上端部42から下端部43まで貫通し、上端部42より導入した外部からの気体を下端部43より液体の流れに巻き込むようにしている。
【0018】
中空管41の途中には、液体の逆流を防止する逆止弁50が設けられている。逆止弁50は、例えば、従来のアスピレータと同様の構成のものを用いることができる。本実施形態では、逆止弁50は、樹脂材料からなる可動部材51および受止部材52、53から構成されている。可動部材51は、常時は下方の受止部材53に着座し、可動部材51と受止部材53との隙間より外部からの気体を導入できるようになっている。下端部43より液体が逆流した場合には、可動部材51は液流によって上方に移動し受止部材52に当接する。これにより中空管41は閉塞し、液体の上端部42からの流出を防止することができる。
【0019】
弁体部材40は、流出側流路21の開口部22に対して液体流出口20の反対側より流出側流路21の流路方向に沿ってバルブ本体2との螺合により進退自在に設けられている。すなわち弁体部材40は、中空管41の外周部に設けられた螺合部44により、バルブ本体2の固定部材4の螺合部31と螺合している。そしてこれらの間は固定部材4の螺合部31の途中に設けられたパッキン部材70により封止され液体の漏洩を防止している。
【0020】
なお、固定部材4は、螺合部30により、躯体3の螺合部13と螺合して固定され、これらの間はパッキン部材71により封止され液体の漏洩を防止している。
【0021】
また、弁体部材40には、中空管41の上部側にハンドル部47が設けられ、作業者は手による把持と回転操作等により弁体部材40の進退移動によるアスピレータ機能による気体吸引の微調整やバルブ機能による液体流れの停止を容易に行うことができる。
【0022】
そして弁体部材40は、開口部22を開閉できるように開口部22周囲の弁座23に対して弁体45が接離可能に構成されている。アスピレータとして用いる場合には、弁体部材40の弁体45とバルブ本体2の弁座23とを離間させて形成された隙間によるノズル部60を設ける。
【0023】
本実施形態では、弁体部材40は、先端部近傍の外周面において、水平面に対してある程度の角度を有するテーパ面45と、それよりも大きい角度を有するテーパ面46とが連続的に形成されている。テーパ面45は、バルブ本体2の弁座23に対する弁体45を構成する。バルブ本体2の開口部22には、テーパ管路26とは逆向きに縮径する円錐状のテーパ面24が形成され、弁体部材40のテーパ面46は、バルブ本体2の開口部22のテーパ面24との間で微小幅の環状の隙間を構成し、この隙間によりノズル部60を形成することができる。このノズル部60の幅は、弁体部材40の進退移動により調整することができる。
【0024】
このように、弁体部材40は、弁体45により開口部22の周囲の弁座23に接離可能に構成されている。そして弁体部材40と弁座23とを僅かに離間させた際にノズル部60が形成される。なお、弁体部材40は、ねじ込みによって最終的には開口部22を塞ぎ、ゲートとして作用することができる。すなわち弁体部材40がノズル部60を塞いだとき、液体の流れは止まり、バルブの役目を果たす。
【0025】
本実施形態では、バルブ本体2の長さを約80mm、液体流入口11と液体流出口21の口径を約25mm、躯体3の流出側流路21の周囲の外径を約40mm、テーパ管路26の最大径を32mm、テーパ管路26の流路方向の長さを約25mm、開口部22のテーパ面24における最小径を8mm、最大径を10mmとしている。
【0026】
次に、以上の構成を備えた本実施形態のアスピレータバルブ装置1によるアスピレータ機能について説明する。
【0027】
このアスピレータバルブ装置1は、その使用時には、例えば、液体流入口11および液体流入口21に設けた螺合部12、25により配管に接続することができる。このような配管を通じて水道水等の液体を液体流入口11から流入させる。
【0028】
必要によりハンドル部47により弁体部材40を進退移動させて弁体部材40の弁体45とバルブ本体2の弁座23との間にノズル部60を設けた状態で、液体流入口11から流入しノズル部60を通過した高流速の液体に、弁体部材40の中空管41の内部を通じて外部より空気等の気体を巻き込んで流出側流路21のテーパ管路26を通過させ、この気体と混合した液体を液体流出口20より吐出させる。
【0029】
弁体45がノズル部60に接近しノズル部60の隙間が小さくなると、液体の流速は早くなり勢いよくテーパ管路26へと吐出される。このとき、ノズル部60を通過する液体の流速が大きいほど、外部(外気)と連通している中空管41の上端部42から多くの気体を巻き込むことができ、液体への気体の混合を可能にする。
【0030】
液体への気体の巻き込み(混合)量は、ノズル部60の隙間の大きさ、液体がノズル部60を通過する流速、および中空管41の内径等に依存して決まる。
【0031】
このように、本発明のアスピレータバルブ装置によれば、コンパクトでシンプルな構成でバルブ機能とアスピレータ機能を併せ持ち、作業時における弁体部材40による微調整等の操作性も良好である。例えば、アスピレータとして用いる場合には気体吸引量をハンドル部47による操作で微調整することができ、液体の流れを即時に遮断することもできる。また、液体の流路が入口側と出口側とで垂直に曲がっているので、従来のような入口側から出口側まで流路が真直ぐなアスピレータとは異なる態様での使用も可能である。
【0032】
以上に、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。例えば、流入側流路11形状は、必ずしも対称的な流管の形状でなくてもよく、各種の形状とすることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 アスピレータバルブ装置
2 バルブ本体
3 躯体
4 固定部材
10 液体流入口
11 流入側流路
12 螺合部
13 螺合部
20 液体流出口
21 流出側流路
22 開口部
23 弁座
24 テーパ面
25 螺合部
26 テーパ管路
30 螺合部
31 螺合部
40 弁体部材
41 中空管
42 上端部
43 下端部
44 螺合部
45 弁体(テーパ面)
46 テーパ面
47 ハンドル部
50 逆止弁
51 可動部材
52 受止部材
53 受止部材
60 ノズル部
70 パッキン部材
71 パッキン部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ本体および弁体部材を備え、
バルブ本体は、液体流入口に連通する流入側流路と、液体流出口に連通する流出側流路とが内部に設けられ、
流出側流路は、流入側流路に対して流路方向が垂直であり、液体流出口とは反対側の端部に流入側流路と連通する開口部が設けられるとともに、この開口部から液体流出口に向かって拡径するテーパ管路が設けられ、
弁体部材は、先端部近傍の外周面が弁体を構成するニードル状の中空管を備え、中空管の途中に液体の逆流を防止する逆止弁が設けられ、流出側流路の開口部に対して液体流出口の反対側より流出側流路の流路方向に沿ってバルブ本体との螺合により進退自在に設けられるとともに、開口部を開閉できるように開口部周囲の弁座に対して弁体が接離可能に構成され、
弁体部材の弁体とバルブ本体の弁座とを離間させて形成された隙間によるノズル部を設けた状態で、液体流入口から流入しノズル部を通過した高流速の液体に、弁体部材の中空管の内部を通じて外部より気体を巻き込んで流出側流路のテーパ管路を通過させ、この気体と混合した液体を液体流出口より吐出させることで外部からの気体を中空管より吸引するようにしたことを特徴とするアスピレータバルブ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−145046(P2012−145046A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4302(P2011−4302)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(507206309)エウレカ・ラボ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】