説明

アスファルトフィニッシャのタンパ洗浄装置

【課題】アスファルトフィニッシャのスクリードプレートとタンパとの隙間からスクリード本体内部へ進入したアスファルトの除去を容易化する。
【解決手段】スクリード装置6の前部のストライクオフプレート9と後部のスクリードプレート10との間に配置されたタンパ11の上方に、洗浄液を散布するノズル14を配置する。ノズルはポンプに接続されており、コック或いはバルブを開くとノズルからタンパ及びその周辺に洗浄液が散布される。タンパとスクリードプレートとの間隙からスクリード装置の内部へ入って堆積したアスファルトは洗浄液により溶解及び洗浄されて外部へ排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アスファルトフィニッシャのタンパ洗浄装置に関するものであり、特に、簡単な操作でタンパへ付着したアスファルトの洗浄及び付着防止を行えるようにしたアスファルトフィニッシャのタンパ洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装工事に用いるアスファルトフィニッシャは、車体の前部のホッパーから車体の後部へアスファルトを落下させるバーコンベヤと、落下したアスファルトを道路の幅方向へ展開するスクリュースプレッダと、敷き広げられたアスファルトを押し固めるスクリード装置を備えている。
【0003】
スクリード装置には、前部のストライクオフプレート又はモールドボードと後部のスクリードプレートとの間にタンパを配置したもの(例えば、特許文献1参照)があり、この構成のスクリード装置は、アスファルトフィニッシャの進行に伴い、上下に運動するタンパがアスファルトを粗く押し固め、スクリードプレートが平坦に押し固めて仕上げる。
【特許文献1】特許第3794931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ストライクオフプレート又はモールドボードと後部のスクリードプレートとの間にタンパを配置したスクリード装置においては、舗装作業の際に、上下へ往復運動するタンパに付着したアスファルトの一部が、タンパとスクリードプレートとの隙間を通してスクリード本体内に侵入して堆積するため、定期的な清掃を必要とする。スクリード本体内に堆積したアスファルトは常温で固化するので、清掃の際はバーナー等で加熱してアスファルトを軟化させて除去しているが、アスファルトが堆積する箇所は機構が入組んでいて作業がしにくく、手間と時間がかかる。
【0005】
また、ストライクオフプレートを取り外して、タンパとスクリードプレートとの間に溜まったアスファルトを取除く処理の仕方もあるが、ストライクオフプレートの脱着に手間と時間がかかり、さらに労力を要する。
【0006】
そこで、タンパの前後に位置するストライクオフプレート又はモールドボード及びスクリードプレートとタンパとの隙間からスクリード本体内部へ進入したアスファルトを簡単に除去できるようにして、清掃の手間を軽減するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記目的を達成するために提案するものであり、請求項1記載の発明は、スクリード装置の前部のストライクオフプレート又はモールドボードと後部のスクリードプレートとの間に上下運動するタンパを備え、タンパによりアスファルト合材を突き固め、後続のスクリードプレートにより平坦に押し固めるアスファルトフィニッシャにおいて、タンパの上方に配置したノズルと、ノズルへ洗浄液を供給するポンプ及び洗浄液タンクと、前記ノズルとポンプとの間に設けたコックまたはバルブを備え、前記コックまたはバルブを開くことにより、タンパへ洗浄液を散布してタンパ及び周辺に付着したアスファルトを洗浄できるようにしたアスファルトフィニッシャのタンパ洗浄装置を提供するものである。
【0008】
上記の構成においては、コックまたはバルブを開くことにより、タンパの上方に配置されているノズルから洗浄液が散布され、タンパ及びその周辺に付着したアスファルトが洗浄液により溶解されて洗浄液とともに地上へ排出される。
【0009】
請求項2記載の発明は、複数の上記ノズルをタンパの上方且つタンパの長手方向に沿って一定間隔で配列したアスファルトフィニッシャのタンパ洗浄装置を提供するものである。
【0010】
上記の構成では、タンパ全体にむらなく洗浄液を散布できる。
【0011】
請求項3記載の発明は、複数の上記ノズルをタンパの長手方向且つタンパの前面上方と背面上方のいずれか、または両方に一定間隔で配列したアスファルトフィニッシャのタンパ洗浄装置を提供するものである。
【0012】
上記の構成は、タンパの前後両面とその周囲のアスファルトが堆積する箇所へ重点的に洗浄剤を散布できる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明は、コックやバルブを開くことにより洗浄液タンクからタンパへ洗浄液が散布されて、タンパやその周辺に付着したアスファルトが溶解して洗浄されるので、これらの付着アスファルトの除去作業にかかる手間が大幅に軽減される。
【0014】
請求項2記載の発明は、複数のノズルをタンパの上方且つタンパの長手方向に沿って一定間隔で配列することにより、タンパ全体へむらなく洗浄液が散布され、タンパ全体を効果的に洗浄できる。
【0015】
請求項3記載の発明は、複数のノズルをタンパの前面上方と背面上方のいずれか、または両方に一定間隔で配列することにより、タンパのアスファルト付着面へ効果的に洗浄液を散布でき、洗浄効果のさらなる向上が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明は、スクリード装置の前部のストライクオフプレート又はモールドボードと後部のスクリードプレートとの間に上下運動するタンパを備え、タンパによりアスファルト合材を突き固め、後続のスクリードプレートにより平坦に押し固めるアスファルトフィニッシャにおいて、タンパの上方に配置したノズルと、ノズルへ洗浄液を供給するポンプ及び洗浄液タンクと、前記ノズルとポンプとの間に設けたコックまたはバルブを備え、前記コックまたはバルブを開くことにより、タンパへ洗浄液を散布してタンパ及び周辺に付着したアスファルトを洗浄できるようにして、タンパとストライクオフプレート又はモールドボード並びにスクリードプレートとの隙間からスクリード本体内部へ進入したアスファルトの除去を容易化するという目的を達成した。
【実施例1】
【0017】
図1はアスファルトフィニッシャ1を示し、車体2に小径の前輪3と大径の後輪4を備えており、前部にアスファルト混合材を収容するホッパー5が配置され、車体2の後部にスクリード装置6が連結されている。車体2の下部には、ホッパー5の内底面から車体2の後端に亘るバーコンベヤ(図示せず)が配置されており、ダンプトラックなどからホッパー5内へ投入されたアスファルト合材は、バーコンベヤにより車体2の後方へ搬送されて路面へ投下され、車体2とスクリード装置6との間に配置されたスクリュースプレッダ(図示せず)により、舗装幅の外縁方向へ展開されてスクリード装置6により平坦に敷き均される。
【0018】
図2はスクリード装置6の部分断面図であり、スクリードフレーム7の前面(図2において左)に配置されたモールドボード8の背面の下部にストライクオフプレート9が配置され、ストライクオフプレート9とその後方のスクリードプレート10との間に上下可動式のタンパ11が配置されている。
【0019】
ストライクオフプレート9、タンパ11、スクリードプレート10は、それぞれスクリード装置6の全幅(図において紙面の表裏方向)とほぼ等しい横幅の部材であり、タンパ11は連結バー12を介して駆動軸13に連結されており、駆動軸13に形成した偏心カム部(図示せず)の作用により、連結バー12及びタンパ11は駆動軸13の回転に連動して上下運動し、路面上のアスファルト合材を突き固める。
【0020】
タンパ11の上方には、タンパ11に付着したアスファルトや、タンパ11とストライクオフプレート9やスクリードプレート10との間隙から進入したアスファルトを洗浄液で洗浄するためのノズル14が配置されている。
【0021】
図3はノズル14の配置を示す平面図であり、タンパ11と平行に配置されたスプレーバー15に複数のノズル14が一定間隔でタンパ11の上面へ向けて配列されている。スプレーバー15は中空パイプ部材であり、フレキシブルホース16を介してポンプ(図示せず)へ接続されている。
【0022】
図4は洗浄液散布機構の回路図であり、洗浄液タンク17及びモータ18によって駆動されるポンプ19は、アスファルトフィニッシャ1の車体2に搭載されていて、ポンプ19と前述したスプレーバー15とを結ぶ管路に電磁弁20が設けられている。
【0023】
電磁弁20とモータ18とを制御するスイッチ21をオンすると、ポンプ19が起動して洗浄液タンク17中の洗浄液を吸い上げるとともに電磁弁20が開いて、スプレーバー15のノズル14から洗浄液が散布される。図3に示したように、ノズル14はタンパ11の長手方向に沿って一定間隔で配列されているので、タンパ11の全体に洗浄液が散布されて、タンパ11に付着したアスファルトは洗浄液により溶解し、タンパ11の前後の間隙を通じて地表へ流れ落ちる。電磁弁20を閉じたとき、或いはスプレーバー15への管路の圧力が所定値以上となったときは、ポンプ19からリターン回路を通じて洗浄液タンク17へ洗浄液が戻る。
【0024】
図5は、電磁弁20とスイッチ21に代えてコック22を設けた例を示し、洗浄液の散布のオンオフをコック22の手動操作によって行うようにしたものである。
【0025】
スイッチ21やコック22の配置位置は車体2の運転席でもよく、スクリード装置6の後部などであってもよい。いずれにしても、舗装作業終了後、或いは舗装作業中でも必要に応じてスイッチ21やコック22を操作してタンパ11の洗浄を行うことにより、タンパ11に付着したアスファルトやスクリード装置6の内部へ進入したアスファルトを簡単に除去できるともに、洗浄液によるアスファルト付着防止効果も期待できる。
【0026】
尚、図2でタンパ11の真上にノズル14を配列した例を示したが、図6に示すように、複数のノズル14をタンパ11の前面上方と背面上方の両方に一定間隔で配列して、タンパ11の前面と背面とに洗浄液を散布するようにしてもよい。
【0027】
また、スクリード装置6は、タンパ11の前にストライクオフプレート9を配置したものに限らず、図7のようにストライクオフプレートを用いず、モールドボード8とスクリードプレート10との間にタンパ11を配置した構成においても本発明のタンパ洗浄装置を適用することができることは言うまでもない。
【0028】
以上、本発明のタンパ洗浄装置の構成を説明したが、タンパ洗浄装置によるアスファルト除去に適した洗浄液の例としては、鉱物油やグリース、アスファルトなどへの親和力が強く、洗浄力が強い柑橘油系工業用液体洗浄剤や、非イオン系活性剤を含む植物油系の付着防止剤や、シリコーン系アスファルト付着防止剤などは洗浄性能がよく環境負荷が低いものとして知られている。
【0029】
尚、この発明は上記の実施形態に限定するものではなく、例えば、スプレーバー15を用いず、ポンプ19からの管路に分岐栓を設け、分岐栓に複数のノズル14のそれぞれをフレキシブルホースで個別に接続するなど、この発明の技術的範囲内において種々の改変が可能であり、この発明がそれらの改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】アスファルトフィニッシャの側面図。
【図2】本発明の実施の一形態を示し、スクリード装置の部分断面図。
【図3】スクリード装置のノズルの配置を示す平面図。
【図4】タンパ洗浄装置の回路図。
【図5】タンパ洗浄装置の他の実施形態の回路図。
【図6】本発明の他の実施形態を示し、スクリード装置の部分断面図。
【図7】本発明の他の実施形態を示し、スクリード装置の部分断面図。
【符号の説明】
【0031】
1 アスファルトフィニッシャ
2 車体
5 ホッパー
6 スクリード装置
7 スクリードフレーム
8 モールドボード
9 ストライクオフプレート
10 スクリードプレート
11 タンパ
12 連結バー
13 駆動軸
14 ノズル
15 スプレーバー
16 フレキシブルホース
17 洗浄液タンク
18 モータ
19 ポンプ
20 電磁弁
21 スイッチ
22 コック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリード装置の前部のストライクオフプレート又はモールドボードと後部のスクリードプレートとの間に上下運動するタンパを備え、タンパによりアスファルト合材を突き固め、後続のスクリードプレートにより平坦に押し固めるアスファルトフィニッシャにおいて、
タンパの上方に配置したノズルと、ノズルへ洗浄液を供給するポンプ及び洗浄液タンクと、前記ノズルとポンプとの間に設けたコックまたはバルブを備え、前記コックまたはバルブを開くことにより、タンパへ洗浄液を散布してタンパ及び周辺に付着したアスファルトを洗浄できるようにしたアスファルトフィニッシャのタンパ洗浄装置。
【請求項2】
複数の上記ノズルをタンパの上方且つタンパの長手方向に沿って一定間隔で配列した請求項1記載のアスファルトフィニッシャのタンパ洗浄装置。
【請求項3】
複数の上記ノズルをタンパの長手方向且つタンパの前面上方と背面上方のいずれか、または両方に一定間隔で配列した請求項1記載のアスファルトフィニッシャのタンパ洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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