説明

アスベストを含む被覆層の剥ぎ取り物の無害化方法

【課題】
これから剥ぎ取りを行う、あるいはすでに剥ぎ取られた、アスベストを含有する吹き付け被覆層を、アスベストの飛散を防止しつつ処理して、減容・無害化を効率的に行い、最終処分、さらに有効利用しやすくする方法を提供する。
【解決手段】
アスベストを含む吹き付け被覆層も剥ぎ取り前、あるいは剥ぎ取り後に、シリコーン樹脂の乳化液、酸化鉄や、酸素と結合したカルシウムを含む粉を加えて、加圧、減容して成型物を得る。この成型物をマイクロ波加熱して、アスベスト繊維を効率的に無害化し、最終処分をしやすくする。また、これを破砕してセメントを混合して固めることでブロックなどとして有効利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベストを含む吹き付け被覆層が剥ぎ取られたものを、無害化して最終処分あるいは再利用をしやすくするための処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスベストは,断熱性、吸音性など工業的に優れた特性を持っているために、建築関係では、保温、吸音用などに吹き付け材として広く採用されてきた。しかし、最近になって、アスベストに起因すると思われる肺ガン・中皮腫患者が増加して大きな社会問題になっている。
これまで使われたアスベスト含有吹き付け物には、吸音・結露防止用にはアスべスト約70%、耐火被覆用にはアスべスト約60%、それ以外のアスベスト含有吹き付け材としては、アスベスト30%以下あるいは5%以下などがある。アスベスト以外のものは、成分的にはアスベスト同様、SiOやMgOが主体であるが、繊維径がアスベストに比べて大きいバーミキュライト、ロックウールなどで、その毒性は小さい。
現在はアスベスト含有量が0.1%以上のものは使用禁止されている。しかし、すでに施工されているものについては、アスベストの飛散を完全に防止するか、あるいはアスベスト含有物を取り除き安定化することが望まれている。後者の場合、水などで湿潤してアスベスト片の飛散を防止しながら剥ぎ取り作業を行い、袋などに詰めることが行われているが、その運搬、およびそれをどのように最終処分するかに課題が残されている。たとえば旧厚生省令では耐水性シートで二重に梱包して、土中や水中への流出防止等を施した管理型処分場に埋めることが規定されているが、管理型処分場の余力が少なくなってきて、それも行いにくくなってきている。したがって、アスベストを含む層を剥ぎ取ったものを安全かつ効率的に処理して最終処分場できる方法が求められている。
【0003】
特許文献1には、アスベスト繊維を加熱して無害化する方法として、セメント系スレートに対して、マイクロ波を利用する方法が示されている。しかし、この方法は処理可能な対象物が限定されており、被覆層の剥ぎ取り物に適用しようとしてもマイクロ波で十分な加熱を行うことができない。
【特許文献1】特開2005−279589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アスベストを含む被覆層の剥ぎ取り物の処理にマイクロ波加熱法を適用して効率的にアスベストを無害化して、最終処分あるいは資源としての再利用をしやすくする方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための具体的手段の第1は、アスベストを含む被覆層の処理を
(1).シリコーン樹脂を乳化した液体を吹き付けなどによって供給し、アスベストを含む被覆層を浸潤してから剥ぎ取る工程
(2).(1)で得られたものに鉄分などを加えて加圧、減容する工程
(3).(2)で得られたものを、マイクロ波加熱する工程
の工程で行うに際して、(1)と(2)で加える酸化鉄の量を合わせて、処理対象物の重量100に対し、鉄分として5.5以上にすることを特徴とするアスベストを含む被覆層の剥ぎ取り物を無害化する方法。
【0006】
手段の第2は、0006の(1)の工程を、
(1−2)すでに剥ぎ取られたアスベストを含む層に、シリコーン樹脂を乳化した液体を加える工程
に置き換えることである。
【0007】
手段の第3は、0006、あるいは0007の工程において、(1)および(2)、あるいは(1−2)および(2)で加えられる酸化鉄の量を、処理対象物の重量100に対し、鉄分として1.5以上にするとともに、その鉄分量Aと、(2)で加える酸素と結合したカルシウムを含む化合物のカルシウム分として重量Bが、 3×A+B≧12 の関係を満足することである。
【0008】
手段の第4は、0006,0007あるいは0008の(3)の工程のあとに、下記の(4−1)を加えることである。
(4−1)マイクロ波加熱後の成型物をシリコーン樹脂で被覆する工程
【0009】
手段の第5は、0006,0007あるいは0008の方法のあとに、下記の(4−2)の工程を加えることである。
(4−2)マイクロ波加熱後のものを破砕して、セメントを混合して成型・固化させる工程
【発明の効果】
【0010】
0006、0008で述べた方法によって、アスベストを含む被覆層について、剥ぎ取りから最終処分までの工程を安全かつ効率的に行うことができる。さらに、これに0009あるいは0010で述べた工程を加えることによって、資源としての再利用できるようになる。
【0011】
0007、0008で述べた方法によって、すでに剥ぎ取られた状態のアスベストを含む被覆層について、最終処分までの工程を安全かつ効率的に行うことができる。さらに、これに0009あるいは0010で述べた工程を加えることによって、資源として再利用もできるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の方法の全体システムを図1に示す。本発明は、アスベストを含む吹き付け被覆層、あるいはそれがすでに剥ぎ取られた状態のものを処理の対象にして、マイクロ波加熱を適用して効率的にアスベスト繊維を無害化し、最終処分をしやすくする(たとえば安定型処分場への埋め立てを可能にする)、あるいは無害化処理後のものを資源として有効利用するための方法である。
【0013】
アスベスト繊維は細かい針状になっているのが人体に対して悪影響を及ぼす原因である。この形状が針状から粒状に変化すれば、全体が溶融しなくても無害化できる。そのためには十分な加熱を行えばよいが、その条件は成分と温度に依存する。加熱をガス燃焼あるいは別の発熱体を用いて行う方法では、被加熱物は外部から加熱されることになり、本来、断熱機能を有している処理対象物では、効率的な加熱を行うという点では不利である。それに対してマイクロ波加熱は、被加熱物自体を発熱させるので断熱性を有しているものも効率的に加熱できる可能性がある。ただし、その発熱特性はその物質によって大きく変化する。本発明が対象とするような吹き付け被覆層では、主成分が珪素酸化物とマグネシア酸化物であって、マイクロ波による発熱がしにくく、また、空隙が多い場合には、たとえ発熱特性の良好な物質を加えてその部分を発熱させても処理対象物に伝熱しにくいので、アスベストを無害化できるような加熱を行うことができない。マイクロ波の周波数を上げれば、どのような物質に対しても加熱を促進することは不可能ではないが、電気効率や電波の影響について別の問題も生じるので、工業的に利用可能な2.45GHz程度で、アスベスト無害化に対する必要条件を満足できることが望ましい。これに対して、本発明では、処理対象物に酸化鉄や、酸化と結びついた形のカルシウム分(CaCOやCaO)を加えること、および処理対象物全体の見かけ比重を上げることを組み合わせた方法を採用する。
【0014】
まず、酸化鉄はマイクロ波のよる発熱性が大きいこと、および高温では珪素酸化物やマグネシウム酸化物と反応して融点を下げることができ、アスベスト繊維の無害化、すなわち繊維組織の粒状化を促進することができる。図2に、処理対象物に酸化鉄を加え、さらに見かけ比重を1.5以上の成型物にした時の、酸化鉄添加量とアスベスト繊維の無害達成率の関係を示す。ここで言うアスベスト繊維の無害化達成率というのは、処理後のものを顕微鏡で観察して、視野の中に直径が1ミクロン以上の繊維組織が見られる割合をp(100視野観察して該当するような繊維組織が観察された数)とした時、(100−p)であらわされる。このような繊維状組織から粒状組織への変化は、繊維組織の径が小さいものほど、表面エネルギーが大きいので進行しやすい。したがって、1ミクロンの繊維組織が残っていないということは、それ以下の径のものは残留していないことを意味し、人体には悪影響がないということになる。図2から、被覆層重量を100とした時、添加量は酸化鉄中の鉄分として5.5以上でアスベスト繊維の無害化を達成できることがわかる。
この酸化鉄の添加の方法としては次の2つがある。
(1)被覆層を剥ぎ取る時のアスベスト繊維飛散防止のために吹きつけるシリコーン樹脂乳化液に着色剤として加えたものを利用する。この酸化鉄分としては、ベンガラ(Fe2O3)、鉄黒(Fe3O4)がある。なお、着色剤を加えることにより、シリコーン樹脂乳化液による被覆層の湿潤状況を肉眼的に把握することが可能になり、アスベスト飛散防止の作業を確実に行わせるという効果もある。その場合、アスベスト含有被覆層を構成するアスベスト繊維の間隙を移動する必要があるから、その粒子径は小さいことが好ましく、例えば直径が0.5ミクロン以下のものを例示することができる。
(2)被覆層を剥ぎ取った後に加える。
この場合には、着色剤のように微粉砕したものである必要はなく、また、酸化鉄以外の
成分を伴っていてもよい。
なお、(1)と(2)を併用することも可能である。
【0015】
また、酸化鉄の1部を、酸素と結びついたカルシウム分、例えば、炭酸カルシウムの鉱石や貝殻などの破砕紛、あるいは石灰分を珪素酸化物などと混合して焼成した粉状物に置き換えたもの(この中のカルシウム分の存在形態はCaOであらわせる)でも同様の効果を得ることができる。図3に示すように、酸化鉄の量を、処理対象物の重量100に対し、鉄分として1.5以上にするとともに、その鉄分量Aと、酸素と結合したカルシウムを含む化合物のカルシウム分として重量Bが、 3.0×A+B≧16.5 を満足することによってアスベスト繊維の無害化が達成できる。なお、この結果は、0015と同じく、成型物のみかけ比重を1.5以上として得られたものである。
【0016】
アスベスト繊維無害化のためには0015、0016で述べた成分条件を満足するとともに、繊維間の距離を小さくすること、すなわち成型物のみかけ比重をある値以上であることが必要である。その1例を図4に示す。見かけ比重としては1.2以上、すなわち剥ぎ取り物の見掛け比重を0.25とすれば、圧縮によって、容積を1/5以下に減容する必要がある。
【0017】
アスベストを含む被覆層の剥ぎ取り時のアスベスト繊維の飛散防止のため、また、見かけ比重の小さい剥ぎ取り物を圧縮して、0017のような見かけ比重を有する成型物を得るために、図1のAおよびBでシリコーン樹脂の乳化液が用いられる。また、図1のFでは、焼成後の成型物の表面のざらつきをなくするための被覆材としてもシリコーン樹脂の乳化液が用いられる
本発明で用いられるシリコーン樹脂とは、オルガノクロロシラン類を加水分解し重合して得られる三次元網目構造を有するポリマーであり、一般式としてRSiO4−nと表すことができる。通常、RSiO1/2単位、SiO単位、RSiO単位、およびRSiO3/2単位から選択される単位の組み合わせからなるものであることが好ましい。なお、ここでRとしては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、シクロへキシル基などのシクロアルキル基、またはフェニル基などから選択される1種または2種以上の炭素数1〜6の1価炭化水素基を挙げることができる。制限はされないが、全体の80%モル以上がメチル基であるシリコーン樹脂を好適に用いることができる。
シリコーン樹脂には、通常オイル型、オイルコンパウンド型、溶液型、エマルジョン型、自己乳化型などがある。制限されないが、本発明で用いられるシリコーン樹脂は、好ましくは水と併用することができるエマルジョン型(O/W型エマルジョン)および自己乳化型である。特に好ましくはエマルジョン型であり、中でも架橋反応により硬化し、シリコーン皮膜を形成する反応性のエマルジョン型シリコーン樹脂が好適に使用できる。
ここで反応性のシリコーン樹脂(エマルジョン型)は、シリコーン樹脂のベースポリマーおよび架橋ポリマーに触媒や乳化剤を加え、上記ポリマーを水などに乳化分散させたものである。当該乳化液の中でベースポリマーと架橋ポリマーはそれぞれマイクロカプセルの状態で存在しており、アスベスト含有被覆層などのアスベスト含有物に対して良好な濡れ性を発揮して速やかに浸透浸潤するが、水が蒸散してマイクロカプセルが壊れると、架橋反応が生じて固化が進行して繊維表面に皮膜が形成される。商業的に入手できる反応性のシリコーン樹脂(エマルジョン型)としては、制限されないが、信越化学工業株式会社のPolon MF-20(商品名)、Polon MF-23(商品名)、Polon MF-56(商品名)、Polon MK-206(商品名)、Polon MWS(商品名)、KM2002T(商品名)、およびKM2002L-1(商品名)などを例示することができる。
シリコーン樹脂を主成分とする本発明のアスベスト処理液は、当該シリコーン樹脂の性質に基づいて、アスベスト含有被覆層またはアスベスト含有物に速やかに浸透浸潤して、かつ被覆層内またはアスベスト含有物内で粘着剤としての性質を発揮してアスベスト繊維を他の繊維と結びつけることができる。また水が蒸散して乾燥すると(または必要に応じて加熱すると)、上記するようにマイクロカプセルが壊れること等によって架橋反応が生じて硬化し、アスベスト繊維をシリコーン樹脂内に安定して包み込み保持することができる。また、シリコーン樹脂は、他の樹脂類に比べて、温度を上げても安定な区間が長く、最終的にシリカになるため、アスベスト含有被覆層と馴染みがよいという利点もある。
シリコーン樹脂は、アスベスト含有被覆層またはアスベスト含有物への浸透および浸潤性、アスベスト繊維に対する皮膜形成性、ならびに加熱(焼成または溶融を含む)した時のガス発生の状況などを配慮して選択することができる。ここで、シリコーン樹脂の浸透および浸潤性ならびに皮膜形成性は、アスベスト処理に求められるアスベスト飛散防止効果をもたらす要因となる。なお、当該アスベスト飛散防止効果には、アスベスト繊維の表面に満遍なく湿潤して当該繊維を包み込み、かつ他の繊維と結び付けることによって、アスベスト含有被覆層を剥離除去する際にアスベストの破砕片の発生を抑制する効果がある。またシリコーン樹脂が固化した後は、シリコーン樹脂の柔軟性によってアスベストの破砕片の発生を防止する効果がある。シリコーン樹脂の選択にはこれらの効果が考慮される。
なお、かかるアスベスト飛散防止効果があり、また加熱時に問題となるガスの発生がないシリコーン樹脂であれば、変性シリコーン樹脂であってもよい。変性シリコーン樹脂としては、アルキッド変性シリコーン樹脂、ポリエステル変性シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、およびフェノール変性シリコーン樹脂を挙げることができる。
アスベスト飛散防止効果の点から好ましいシリコーン樹脂としては、トスシール、シリコーン系、変形シリコーン系、ポリサルファイド系、ポリウレタン系を挙げることができる。但し、クロロブレン系や塩化ビニール系のシリコーン樹脂は、加熱時に問題となるガスを発生するおそれがあるため、好ましくない。
アスベスト含有被覆層またはアスベスト含有物の処理には、アスベスト処理液として上記するシリコーン樹脂、好ましくはエマルジョン型のシリコーン樹脂、より好ましくは反応性のエマルジョン型のシリコーン樹脂を使用し、水およびそれに必要に応じて化学成分を加えて、シリコーン樹脂を乳化し、処理液の濃度調整および粘度調整を行う。処理液の粘度が低すぎるとアスベスト含有被覆層またはアスベスト含有物に供給した際に、浸透および浸潤はしやすいものの歩留まりが悪く垂れやすい傾向があり、また逆に粘度が高すぎるとアスベスト含有被覆層またはアスベスト含有物に供給した際に、浸透および浸潤しにくいという問題がある。
処理液中のシリコーン樹脂分と水などの乳化剤の配合割合は、アスベスト含有被覆層やアスベスト含有物の硬化促進効果や硬化強度と、アスベスト含有被覆層やアスベスト含有物へのアスベスト処理液の浸透および浸潤効果の両面から適宜設定することができる。具体的には、例えば、水の配合比率を高めるとアスベスト含有被覆層などに速やかに浸透および浸潤する一方で、水の配合比率が高くなるとアスベスト含有被覆層などの固化時間が遅延し、固化強度が低減する傾向にある。
処理液の粘度は、2〜10mPa・sの範囲、好ましくは2〜8mPa・s、より好ましくは3〜6mPa・s、さらに好ましくは3.5〜5mPa・sの範囲になるように〔測定条件:温度25℃、B型粘度計(東京計器社製)、30rpm回転数で1分間測定〕、適宜設定調整されるのが好ましい。
【0018】
図1のAにおいては、撤去しようとするアスベストを含む被覆層の表面にシリコーン樹脂の乳化液を吹き付ける。乳化液の中のシリコーン樹脂分の割合は10〜50重量%の間のものが選ばれる残りは水などの乳化剤である。用いるシリコーン樹脂乳化液の量は、被覆層の厚さに依存するが、被覆層が30mmの場合、アスベスト吹き付け層1mあたり2〜7リットルが適当である。これによってアスベストを含む層の繊維を湿潤し、剥ぎ取り時の飛散を防止することができる。なお、これに酸化鉄からなる着色剤を添加すること、およびその効果は0015で述べた通りである。この吹き付け後、10分くらいでシリコーン樹脂の乳化液の湿潤が進むので、それ以降、人力あるいは機械を用いて剥ぎ取り作業が行われる。
図1のDにおいては、剥ぎ取られたものに、酸化鉄や酸素と結びついたカルシウム分の含有量が0015、0016で述べた条件を満足するように、粉状の酸化鉄、炭酸カルシウム、あるいは酸化カルシウムを含む焼成物が添加される。この作業は図5に示すホッパー1内で行うことができる。
【0019】
アスベストを含む被覆層がすでに、シリコーン樹脂を用いない方法で剥ぎ取られていて、アスベスト繊維が飛散しないように袋に収められた状態である場合、図1のEに示すようにシリコーン樹脂の乳化液と、酸化鉄や酸素と結びついたカルシウム分の含有量が0015、0016で述べた条件を満足するように添加される。シリコーン樹脂の乳化液の添加は、処理対象物が収められた袋の中で行うことが、ハンドリング時のアスベスト繊維の飛散を防止する観点から望ましい。一方、酸化鉄や酸素と結びついたカルシウム分の添加、混合は、袋の中でも、あるいは図5に示すホッパー内で行うことができる。
【0020】
図1のA、DあるいはEの処理をされたものは、図1のBにおいて、図5に示すような装置を用いて加圧、減容される。ホッパー1に貯められた処理対象物2は、供給装置3をへて圧縮装置4に送られ圧縮、成型される。供給装置3は回転羽根5を持ち、その回転によって切り出し量を調整できる。圧縮装置4は型枠6と、圧縮具7とからなる。これによって得られる成型物の大きさは、たとえば100mm×100mm×(25〜55)mmである。金属で作られた型枠6の中に、処理対象物2を入れて、プレスのような圧縮具7によって圧縮成型される。上記の成型物の場合、2tの力を加えると、本発明に必要な見かけ比重1.2以上にすることができる。できれば,5t程度の力を加えて、見かけ比重1.5以上にすることが望ましい。圧縮、成型されたものは自然乾燥、あるいは熱風などを吹きつけて強制乾燥されるとシリコーン樹脂の固化が進行する。これによって、ハンドリングや輸送時のアスベストの飛散を防止できる。
圧縮成型の際に、絞りだされた液は、溜め9に貯められる。これは、システム内で、たとえば図1のEに戻され、再利用される。あるいは、乾燥してシリコーン樹脂を硬化させて、アスベスト繊維の飛散がなく固形物として最終処分場に埋め立てることができる。
【0021】
図1のCにおいては、成型物をマイクロ波で加熱して、アスベスト繊維を粒状組織に変えて無害化する。図6はマイクロ波加熱装置を示す。圧縮成型物8、マイクロ波加熱空間10にプッシャー11を用いて押し込んで、マイクロ波遮断扉12を閉めて、マイクロ波発振器13とマイクロ波攪拌機14によってマイクロ波をかけて装入物の加熱を行うマイクロ波加熱波は、2.45GHz以上であればよい。加熱。処理物の温度を光高温計15で検出し、その値が1100℃、できれば1200℃になってから、30分以上の加熱を行う。この条件を満足すれば、マイクロ波の発振をとめ、マイクロ波遮断扉11を開いて、焼成処理物16を取り出す。
【0022】
マイクロ波加熱によって得られた焼成処理物を処分、あるいは利用するには次ぎのような方法がある。
(1)焼成処理物を運搬して埋め立て処分する。最終処分場として、管理型を用いなければならないか、安定型が利用できるかは、法的にはその時点での法解釈に依存するが、技術的には1ミクロン以下の繊維組織が消滅していることから、安定型が利用できる状態になっている。
(2)焼成処理物は、表面がざらついている場合には、表面にシリコーン樹脂皮膜を形成することができる。この処理を施しても有効利用先がなく、最終処分地に埋め立てる場合に、運搬などのハンドリング時の表面がこすれて粉が発生するのを防ぐことができるという効果があり、安定型処分場に埋め立てられる可能性が増す。一方、成型物として用途
としては、寸法精度が要求されない土木用基礎材としての利用が可能である。シリコーン樹脂は、0017に述べたものの中から選ぶと、通常の樹脂のように紫外線による劣化がなくて安定しており、この皮膜を形成することによって、剥離を防止することができる。
(3)各種のブロックなどのように寸法精度が要求される場合には、マイクロ波加熱処理物を再破砕してセメントを加えて混練して、所定の形状のものにして硬化させる方法が取られる。この場合、必要によっては他のセラミックス成分〔陶器類等〕のは破砕屑を加えて、混錬して固めることができる。セメントの添加量は5〜20重量%でよい。
【0023】
なお、本発明には下記の態様が含まれる。
(1)アスベストを含む層の見かけ容積100に対して、シリコーン樹脂を乳化した液体で容積20以上、吹き付けなどによって供給し、アスベストを含む層をシリコーン樹脂で浸潤することを特徴とするアスベスト飛散防止方法。
(2)アスベストを含む層の水平断面400cmあたり1ヶ所以上、先端の径が小さくなった管状の器具を用いてシリコーン樹脂を乳化した液体を、アスベストを含む層の内部に注入して、アスベストを含む層をシリコーン樹脂で浸潤することを特徴とするアスベスト飛散防止方法。
(3)(1)または(2)の方法で、アスベストを含む層をシリコーン樹脂で浸潤した後、アスベストを含む層の剥ぎ取り作業を行うことを特徴とするアスベスト飛散防止方法。
(4)(3)の方法で剥ぎ取ったアスベストを含む層を、1450℃以上まで加熱して安定化することを特徴とするアスベスト飛散防止方法。
(5)(1)または(2)の方法で、アスベストを含む層をシリコーン樹脂で浸潤した後、80℃以上に加熱することを特徴とするアスベスト飛散防止方法。
(6)(5)において、加熱の方法が熱風を、先端および側面に孔が開いた、先端にいくほど径が小さくなった管を通じて、アスベストを含む層の内部に吹き込むことを特徴とするアスベスト飛散防止方法。
(7)(1)または(2)の方法において、シリコーン樹脂を乳化した液体に、重量比率で1〜30重量%のセメントを混合した液体を用いることを特徴とする(4)または(5)記載のアスベスト飛散防止方法。
(8)アスベストを含む層に、先端の径が小さくなった管状の器具を用いてシリコーン樹脂の液体を注入した後、アスベストを含む層の見かけ容積100に対して。シリコーン樹脂を乳化した液体を容積20以上、吹き付けなどによって供給し、アスベストを含む層をシリコーン樹脂で浸潤することを特徴とするアスベスト飛散防止方法。
(9)アスベストを含む層に、液体を吹き付けなどによって供給し、アスベスト飛散防止のために浸潤する際、該液体に着色剤を混合することによって、浸潤の状況を目視できるようにしたことを特徴とするアスベストを含むものの無害化処理方法。
(10)(9)において、該液体がシリコーン樹脂を乳化したものであることを特徴とするアスベストを含むものの無害化処理方法。
(11)(9)の方法を実施するために用いる液体であって、シリコーン樹脂重量100に対して、その乳化に必要なものを重量で50以上、500以下、さらに着色剤を加えたことを特徴とするアスベスト含有物の無害化処理用品。
(12)着色剤が、炭素、金属化合物あるいは有機化合物のいずれかであることを特徴とする(9)または(10)に記載するアスベストを含むものの無害化処理方法。
(13)着色剤が、炭素、金属化合物あるいは有機化合物のいずれかであることを特徴とする(7)に記載するアスベスト含有物の無害化処理用品。
(14)アスベストを含む層の剥ぎ取りを行う場合に、シリコーン樹脂を乳化した液体に着色剤を加えたものを吹き付けなどによって供給し、浸潤の状態を目視によって観察し、確実に浸潤するための条件を把握した後、着色剤を添加した該液体を用いることを条件に以後の浸潤作業を行うことを特徴とするアスベストを含むものの無害化処理方法。
(15)アスベストを含む層の剥ぎ取りを行う場合に、シリコーン樹脂を乳化した液体に着色剤を加えたものを吹き付けなどによって供給し、浸潤の状態を目視によって観察し、確実に浸潤するための条件を把握した後、着色剤なしで、他は同じ条件で以後の浸潤作業を行うことを特徴とするアスベストを含むものの無害化処理方法。
(16)アスベストを含む層に、シリコーン樹脂を乳化した液体を吹き付けなどによって供給し、アスベストを含む層を浸潤した後、剥ぎ取ったものを60℃以下の温度でプレスなどを用いて加圧し、ついで80℃以上、350℃以下の温度に加熱して硬化することを特徴とするアスベストを含むものの減容・無害化方法。
(17)剥ぎ取られたアスベストを含む層に、シリコーン樹脂を乳化した液体を加えて湿潤した後、60℃以下の温度でプレスなどを用いて加圧し、ついで80℃以上、350℃以下の温度に加熱して硬化することを特徴とするアスベストを含むものの減容・無害化方法。
(18)アスベストを含む層に、シリコーン樹脂を乳化した液体を吹き付けなどによって供給し、アスベストを含む層を浸潤した後、剥ぎ取ったものを60℃以下の温度でプレスなどを用いて加圧し、ついで400℃以上、1200℃以下の温度に加熱して焼成することを特徴とするアスベストを含むものの減容・無害化方法。
(19)アスベストを含む層を剥ぎ取ったものに、シリコーン樹脂を乳化した液体を加えて湿潤した後、60℃以下の温度で加圧し、ついで400℃以上、1200℃以下の温度に加熱して焼成することを特徴とするアスベストを含むものの減容・無害化方法。
(20)アスベストを含む層に、シリコーン樹脂を乳化した液体を吹き付けなどによって供給し、アスベストを含む層を浸潤した後、剥ぎ取ったものを60℃以下の温度でプレスなどを用いて加圧し、ついで1250℃以上に加熱して溶融することを特徴とするアスベストを含むものの減容.無害化方法。
(21)アスベストを含む層を剥ぎ取ったものに、シリコーン樹脂を乳化した液体を加えて湿潤した後、60℃以下の温度で加圧し、ついで1250℃以上に加熱して溶融することを特徴とするアスベストを含むものの減容・無害化方法。
(22)(16)〜(21)において、プレスなどを用いての加圧時に液体として分離されたものを、アスベストを含む層あるいは剥ぎ取られた層を湿潤するのに用いることを特徴とするアスベストを含むものの減容・無害化方法
(23)アスベストを含む層あるいはその破片に、シリコーン樹脂を乳化したものを含む液体を供給・浸透・浸潤させて、アスベストなどの繊維表面に、シリコーン樹脂の液体あるいは固体の皮膜を形成することを特徴とするアスベストを含むものの無害化処理方法。
(24)(23)でアスベストを含む層あるいはその破片に供給される液体が、シリコーン樹脂の乳化液と、水に粘度調整剤を加えた液体とを混合したものであることを特徴とするアスベストを含むものの無害化処理方法。
(25)(23)でアスベストを含む層あるいはその破片に供給される液体が、シリコーン樹脂の乳化液と、水に粘度調整剤と着色剤を加えた液体とを混合したものであることを特徴とするアスベストを含むものの無害化処理方法。
(26)(24)あるいは(25)を実施するために用いる液体であって、水と粘度調整剤--、あるいは水と粘度調整剤および着色剤を含むことを特徴とするアスベストを含む層を無害化するための用品。
(27)(23)〜(26)において、アスベストを含む層へのシリコーン樹脂を乳化したものを含む液体の浸透を均等化するために、吹き付けなどによる該液体の供給を2回あるいは3回以上に分けて行うことを特徴とするアスベストを含むものの無害化処理方法。
(28)(23)〜(25)において、アスベストを含む層へのシリコーン樹脂を乳化したものを含む液体の浸透を均等化するために、該液体を粘度が異なる2つのものに分け、最初に粘度が大きいものを供給し、ついでそれより粘度が小さいものを供給することを特徴とするアスベストを含むものの無害化処理方法。
(29)(23)〜(24)において、シリコーン樹脂の硬化が進んでから、アスベストを含む層の剥ぎ取りを行うことを特徴とするアスベストを含むものの無害化処理方法。
(30)(23)〜(25)において、シリコーン樹脂の硬化が起こる前に、アスベストを含む層の剥ぎ取りを行い、引き続いて、それを機械的に圧縮してから、シリコーン樹脂の硬化を行わせることを特徴とするアスベストを含むものの無害化処理方法。
(31)シリコーン樹脂を用いることなく剥ぎ取られた状態にあるアスベストを含む破片に、シリコーン樹脂の乳化液と(26)の液を混合した液体を供給・浸透・湿潤させて、シリコーン樹脂の硬化が起こる前に、機械的に圧縮してから、シリコーン樹脂の硬化を行わせることを特徴とするアスベストを含むものの無害化処理方法。
(32)(30)あるいは(31)を実施するためのものであって、剥ぎ取られた破片を収納し、そこから所要量を切り出すための供給部、該破片を圧縮成型し、成型された物を取り出すための圧縮・成型・取り出し部、および圧縮によってしみだしてきた液体を集める液体回収部からなることを特徴とするアスベストを含むものの無害化のために用いる装置。
(33)(30)あるいは(31)を実施するために用いるものであって、剥ぎ取られた破片を収納し、そこから所要量を切り出すための供給部、該破片を圧縮成型し、成型された物を取り出すための圧縮・成型・取り出し部、および圧縮によってしみだしてきた液体を集めるための液体回収部からなり、圧縮・成型・取り出し部が60℃以上、300℃以下に加熱されていることを特徴とするアスベストを含むものの無害化のために用いる装置。
(34)(30)あるいは(31)において、機械的に圧縮されたときに液体として分離されたものを、(23)あるいは(31)でアスベストを含む層あるいは剥ぎ取られた破片に供給・浸透・湿潤するのに再利用することを特徴とするアスベストを含むものの無害化処理方法
【実施例1】
【0024】
駐車場の鉄骨に吹き付けられていたアスベストを30重量%の割合で含む厚さ30mmのロックウール吹き付け層(アスベストを含む被覆層)について、まず、アスベストを含む被覆層に、その体積(100容積%)の50容積%に相当する量のポリウレタン系シリコーン樹脂(商品名Polo MF-56、信越化学(株)製)の乳化液を吹き付けた。このシリコーン樹脂乳化液中のシリコーン樹脂の割合は25重量%で、さらに乳化液の中に着色剤としてベンガラを3.5重量%混入して、吹き付けによる湿潤状況の肉眼判定に利用した。この吹き付け後、60〜185分後に人力で剥離作業を行った。剥離作業時に、作業者近傍から採取した空気中のアスベスト繊維の含量を測定したところ、空気1リットルあたりに含まれる5ミクロン以上のアスベスト繊維数は、2本以下であった。
剥ぎ取られたもの(見掛け比重0.25)に、図5に示すホッパー1内でアスベストを
含む被覆層の重量を100とした時、鉄鉱石の粉砕微粉を、鉄分として6.0の割合で加えて圧縮して、100mm×100mm×(25〜50)mmの成型物を得た。その見かけ比重は1.7であった。この成型物を自然乾燥したものを、図6に示すようなマイクロ波加熱室に入れて、2.45GHzのマイクロ波をあてて、表面を光温度計で測温して1200℃になってから35分保持してから取り出した。これを冷却後、管理型最終処分場に埋め立てた。なお、焼成処理物の試料を顕微鏡観察して径が1ミクロン以下の繊維状組織が認められないことを確認した
【実施例2】
【0025】
ボイラー室の壁、天井に吹き付けられていたアスベストを40重量%の割合で含む厚さ35mmのバーミキュライト吹き付け層(アスベストを含む被覆層)について、まず、その体積(100容積%)の35容積%に相当する量のポリウレタン系シリコーン樹脂(商品名Polo MF-56、信越化学(株)製)の乳化液を吹き付けた。このシリコーン樹脂乳化液中のシリコーン樹脂の割合は、15重量%で、さらに乳化液の中に着色剤としてベンガラを、2.5重量%混入して、吹き付けによる湿潤状況の肉眼判定に利用した。この吹き付け後、120〜220分後に人力で剥離作業を行った。剥離作業時に、作業者近傍から採取した空気中のアスベスト繊維の含量を測定したところ、空気1リットルあたりに含まれる5ミクロン以上のアスベスト繊維数は、1本以下であった。
剥ぎ取られたもの(見掛け比重0.31)に、図5に示すホッパー内でアスベストを含
む被覆層の重量を100とした時、鉄鉱石を粉砕した微粉を、鉄分として7.5加えて圧縮し、100mm×100mm×(25〜50)mmの成型物を得た(見かけ比重は1.8)。これを図6に示すようなマイクロ波加熱室に入れて、2.45GHzのマイクロ波をあてて、表面を光温度計で測温して1200℃になってから40分保持してから取り出した。これを冷却後、ポリウレタン系シリコーン樹脂(商品名Polo MF-56、信越化学(株)製)の乳化液(シリコーン樹脂乳化液中の、シリコーン樹脂の割合は46重量%)に2mの深さまで付け表面に引き上げる操作をしてから引き上げて自然乾燥して皮膜を形成した。この成型物は撥水性を有している。これを試験的に土木基礎の埋め立てに用い、土木基礎に埋め立てられたものは、半年ごとに状況をチェックし、3年たっても変化がないことを確認した。残りは、最終処分場の埋め立てに用いた。
【実施例3】
【0026】
ボイラー室の壁、天井に吹き付けられたアスベストを20重量%の割合で含む厚さ45mmのロックウール吹き付け層(アスベストを含む被覆層)について、その体積(100容積%)の45容積%に相当する量のポリウレタン系シリコーン樹脂(商品名Polo MF-56、信越化学(株)製)の乳化液を吹き付けた。このシリコーン樹脂乳化液中のシリコーン樹脂の割合は20重量%で、さらに乳化液の中に着色剤としてベンガラを、3.2重量%混入して、吹き付けによる湿潤状況の肉眼判定に利用した。この吹き付け後、120〜220分後に人力で剥離作業を行った。剥離作業時に、作業者近傍から採取した空気中のアスベスト繊維の含量を測定したところ、空気1リットルあたりに含まれる5ミクロン以上のアスベスト繊維数は、1本以下であった。
剥ぎ取られたもの(見掛け比重0.28)に、図5に示すホッパー内でアスベストを含
む被覆層の重量を100とした時、鉄鉱石を粉砕した微粉を、鉄分として、2.5、炭酸カルシウム鉱石を微粉砕したものを11.5の割合で加えて圧縮して、100mm×100mm×(25〜50)mmの成型物を得た(見かけ比重は1.6〜1.7)。これを図6に示すようなマイクロ波加熱室に入れて、2.45GHzのマイクロ波をあてて、表面を光温度計で測温して1150℃になってから50分保持してから取り出した。これを冷却後、粉砕し、その重量100に対してポルトランドセメントを8の割合で加えて混連して、120mm×230mm×45mmのブロックを作り、花壇の仕切りに用いた。
【実施例4】
【0027】
すでに剥ぎ取られてビニール袋に入れて仮保管されていたアスベストを含む被覆層(主体はアスベストを45重量%含むロックウール)に、袋の中でその重量100に対して35の割合でシリコーン樹脂の乳化液を加えた。シリコーン樹脂の乳化液は、ポリウレタン系シリコーン樹脂(商品名Polo MF-56、信越化学(株)製)を25重量%含むものである。これを、図5に示すホッパー1内でアスベストを含む被覆層の重量を100とした時、鉄鉱石を粉砕した微粉を、鉄分として7.5の割合で加え圧縮して、100mm×100mm×(25〜50)mmの成型物を得た.その見かけ比重は1.5〜1.6であった。
これを図6に示すようなマイクロ波加熱室に入れて、2.45GHzのマイクロ波をあ
てて、表面を光温度計で測温して1200℃になってから35分保持してから取り出した。これを冷却後、管理型最終処分場に埋め立てた。なお、試料を採取して、顕微鏡観察して径が1ミクロン以下の繊維状組織が認められないことを確認した。
【実施例5】
【0028】
すでに剥ぎ取られてビニール袋に入れて仮保管されていたアスベストを含む被覆層(主体はアスベストを30重量%含むバーミュキュライト)に、袋の中に、その重量100に対して25の割合でシリコーン樹脂の乳化液を加えた。シリコーン樹脂の乳化液は、ポリウレタン系シリコーン樹脂(商品名Polo MF-56、信越化学(株)製)を21重量%含むものである。これを、図5に示すホッパー内でアスベストを含む被覆層の重量を100とした時、鉄鉱石を粉砕した微粉を、鉄分として、2.1、貝殻の微粉砕物を、カルシウム分として、14.1加えて圧縮して、100cm×100cm×(25〜50)mmの成型物を得た(見かけ比重は1.8)。これを図6に示すようなマイクロ波加熱室に入れて、2.45GHzのマイクロ波をあてて、表面を光温度計で測温して1200℃になってから35分保持してから取り出した。この焼成処理物から、試料を採取して、顕微鏡観察して径が1ミクロン以下の繊維状組織が認められないことを確認した。この焼成処理物を粉砕して、その重量100に対して、ポルトランドセメントを11の割合で加えて、ブロックを作り、庭の通路の敷石に使用した。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の方法は、これから剥ぎ取りを行うアスベストを含む層についても、また、すでに剥ぎ取られているアスベストを含む層についても適用できる減容、無害化の方策である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のシステムを示す
【図2】酸化鉄の添加量(鉄分として重量)が、アスベスト繊維の無害達成率に及ぼす影響を示す。
【図3】酸化鉄の添加量(鉄分として重量)と、酸素と結びついたカルシウム分の添加量(カルシウムとして重量)が、アスベスト繊維の無害達成に及ぼす影響を示す。
【図4】アスベスト繊維の無害達成率におよぼす成型物の見かけ比重の影響を示す。
【図5】はぎ取られた被覆層の加圧、減容装置の1例を示す。
【図6】減容された成型物をマイクロ波加熱する装置の1例を示す。
【符号の説明】
【0031】
1.ホッパー
2.処理対象物
3.供給装置
4.圧縮装置
5.回転羽根
6.型枠
7.圧縮具
8.圧縮成型物
9.しぼり出された液の溜め
10.マイクロ波加熱室
11.可動式マイクロ波遮断壁
12.プッシャー
13.マイクロ波発振器
14.マイクロ波攪拌機
15.光高温計
16.焼成処理物
17.断熱、マイクロ波遮壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスベストを含む被覆層の処理を次ぎの工程;
(1).シリコーン樹脂を乳化した液体を吹き付けなどによって供給し、アスベストを含む被覆層を浸潤してから剥ぎ取る工程
(2).(1)で得られたものに鉄分などを加えて加圧、減容する工程
(3).(2)で得られたものを、マイクロ波加熱する工程
で行うに際して、(1)と(2)で加える酸化鉄の量を合わせて、処理対象物の重量100に対し、鉄分として5.5以上にすることを特徴とするアスベストを含む被覆層の剥ぎ取り物を無害化する方法。
【請求項2】
請求項1の(1)の工程が、下記に(1−2)の工程に置き換わったことを特徴とする
アスベストを含む被覆層の剥ぎ取り物の無害化方法。
(1−2)すでに剥ぎ取られたアスベストを含む層に、シリコーン樹脂を乳化した液体を加える工程。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2の工程において、(1)および(2)、あるいは(1−2)および(2)で加えられる酸化鉄の量を、処理対象物の重量100に対し、鉄分として1.5以上にするとともに、その鉄分量Aと、(2)で加える酸素と結合したカルシウムを含む化合物のカルシウム分として重量Bが、 3.0×A+B≧16.5 の関係を満足することを特徴とするスベストを含む被覆層の剥ぎ取り物を無害化する方法。
【請求項4】
請求項1、2あるいは3のあとに、下記の(4−1)の工程が加わったことを特徴とするアスベストを含む被覆層の剥ぎ取り物の無害化方法。
(4−1)マイクロ波加熱後の成型物をシリコーン樹脂で被覆する工程
【請求項5】
請求項1、2あるいは3のあとに、下記の(4−2)が加わったことを特徴とするアスベストを含む被覆層の剥ぎ取り物の無害化方法。
(4−2)マイクロ波加熱後のものを破砕して、セメントを混合して成型・固化させる工程

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−200550(P2008−200550A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325326(P2006−325326)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(300057492)
【Fターム(参考)】