説明

アスベスト含有材料を処理するための非イオン性発泡組成物および非イオン性発泡組成物を使用する方法

水、少なくとも約30重量%の酸成分、少なくとも約0.1重量%のフッ化物イオン源、および単独で、あるいは更なる非イオン性発泡剤と共に非イオン性アルキルポリグリコシドから構成される安定な泡を形成する量の発泡剤系を含んでなる、クリソタイル・アスベスト含有材料を非アスベスト材料に変質するための組成物が開示されている。泡の形の本発明の組成物を用いて、アスベスト含有材料を非アスベスト材料に変質させる方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベストが石膏含有セメント質複合体の構成成分である間に、このアスベスト(例えば、クリソタイル・アスベスト)を非アスベスト材料に蒸解するための方法および組成物、特に支持構造物に結合している複合材料中に存在するクリソタイル・アスベストを施工した場所で蒸解処理するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クリソタイル・アスベスト(温石綿アスベスト)は、共有結合により共有された酸素により相互に結合しているシリカと酸化/水酸化マグネシウムの交互層からなる蛇紋石・アスベスト繊維様材料である。
【0003】
クリソタイル・アスベストは、少なくとも一部、入手しやすいことおよび耐火性と熱特性が独特であることのために、例えば耐火性屋根用こけら板、吸音石膏ボード、耐火性および断熱性コーティング組成物などを含む、種々の建築製品において商業的に使用されてきた。本発明による処理に適切であることが判明した耐火性コーティング組成物の形成においては、少量のクリソタイル・アスベストを石膏(例えば、硫酸カルシウム半水和物)と、場合によっては他の材料、例えばバーミキュライトなどを含んでなる硬化性結合材料と混合した。次に、硬化コーティングが形成される構造物にこの組成物を塗布した。例えば、このような組成物は、多階の建物で多く使用され、そこではこの石膏含有組成物を付着性コーティングとして鋼桁、床支持板、コンクリートデッキなどに塗布して、火災の場合にこのような建物の損傷および更には崩壊の防止の助けになる耐火性と高温断熱性をもたらす。
【0004】
近年、アスベストは米国で規制された材料として分類されてきた。連邦、州および地方政府機関は、アスベスト含有建物材料の使用および処分を扱う規制を発布した。米国環境保護局(「EPA」)は、1パーセント(1%)以上のアスベストを含有し、そしてこのような材料の特別な取り扱いを必要とする材料としてアスベスト含有材料(「ACM」)を定義した。種々の規制手順により、除去あるいは取り壊し作業時に作業者がアスベスト繊維を吸入しないようにするための種々の防護対策が採用されている。このような防護対策の例は、作業者が認可済の呼吸マスクまたは呼吸装置、並びに防護服の着用を必要とすること、建物中でアスベスト含有材料を除去するいかなる区域も建物の残りの区域から隔離あるいは囲われていることを必要とすること、そしてHEPAフィルターを備えた特別な装置の使用によりこの囲われた作業区域が負圧に保たれて、空気中に浮遊するアスベスト繊維がこの作業区域から飛散することを防止することを必要とすることを含む。作業区域のこのような隔離は、この方法の高価で、時間のかかる部分である。
【0005】
一般に、アスベスト含有建材を取り扱うための先行技術の方法はいくつかのアプローチを採用してきた。一つのアプローチは、建築製品で使用する前にアスベスト繊維を化学的に変えることであった。このアプローチは、例えば(特許文献1)および(特許文献2)、並びに(特許文献3)で議論されている。(特許文献3)は、鉄が有害な構成成分であるという前提に基づいて、アスベストのヒドロキサム酸および鉄キレート剤を処理して、このアスベスト中に存在する鉄を除去することを教示している。(特許文献1)と(特許文献2)においては、アスベスト繊維をマンガン、クロム、コバルト、鉄、銅またはアルミニウムあるいはこれらの混合物の弱塩基/強酸あるいは強塩基/弱酸の塩の水溶液と接触させて、このアスベスト繊維を金属−ミセル生成物に転化することが教示されている。一般に、特許文献1、2において考えられた方法は、適切な塩の水溶液中のアスベスト繊維のスラリーを製造し、このスラリー中でアスベスト繊維を金属−ミセル繊維に転化し、そして所望の繊維含有最終生成物を以降の製造で使用するためにこの金属−ミセル繊維をこのスラリーから回収することにより行われる。
【0006】
もう一つのアプローチは、この材料をカプセル化して、アスベスト繊維が空気浮遊性とならないようにすることにより、予め形成されたアスベスト含有建材を処理することである。樹脂のカプセル化コーティング材料は、通常、スプレー、はけ塗りまたはこて塗りにより塗布される。カプセル化方法を使用する場合カプセル化対象の建材に物理的に損傷を与えないように、注意をしなければならない。カプセル化は封じ込め方法であり、このようにこのカプセル化されたアスベスト材料はこの建物の寿命の間施工した場所に残存する。
【0007】
多数の除去技術が提案され、そして各々はその利点と難点を有する。例えば、乾いた未処理のアスベスト含有材料を単純に削り落とすか、チップとし、そして削り落とした屑を集めて廃棄することが提案された。この技術は、乾式除去とも呼ばれるが、空気浮遊性アスベスト粒子の放出に対する防護対策を準備していないので、規制当局により許容されないと一般に考えられる。
【0008】
単純な乾式除去の問題を克服するために、排気フィルター系を組み込んで、外部環境への汚染を防止することにより、そして捕集されたアスベスト含有材料を貯蔵し、廃棄するための密閉容器を使用することにより、乾式真空法が試みられた。この乾式真空法の難点の一つは、乾燥した建材とそれを被覆した下地の表面の間の結合がこの装置の真空性能よりも強い場合があることである。これらの場合には、削り落とし、またはチップ化によりこのアスベスト含有材料の少なくとも一部を除去することが必要であり、これは上述の乾式除去法と同一の制約を有する。
【0009】
湿式除去法は、種々の乾式除去技術に関連する問題を低減するための手段として開発された。湿式除去は、一般に、建材を水または水−界面活性剤溶液により濡らして、それを軟化し、それによって除去を容易にすることを含む。湿式除去は乾式除去にまさる改善を明らかに示す。しかしながら、水はゆっくりと浸透し、大部分の建材を完全に濡らさず、そして処理対象の表面を流下する傾向があるために、軟化薬剤としての水の使用は、全く満足であるとはかぎらない。
【0010】
過去何年かにわたって、湿式除去技術は、更に有効な湿潤および/または軟化組成物を工夫することにより改善されてきた。このような改善された湿式除去技術に関する最近の米国特許は、例えば(特許文献4)、(特許文献5)、および(特許文献6)を含む。
【0011】
特許文献4は、2液の湿潤剤系を用いて、砕けやすい絶縁材料を濡らして、そして下地の基材から除去するための技術を開示している。この系の第1の構成成分は、カチオン性あるいは非イオン性の界面活性剤とブレンドされたアルカリ金属ケイ酸塩水性分散液を含んでなり、そして第2の構成成分は、アクリルラテックスと第1の液中のアルカリ金属ケイ酸塩と反応性である反応試剤の混合物を含んでなる。この2液を別々に貯蔵し、そして使用直前に混合して、その中に含有される個別のアスベスト繊維をカプセル化しながら、この建材の除去を容易にする剥離組成物を形成する。除去された材料はアスベスト含有材料として取り扱われなければならない。
【0012】
特許文献5は、基材からアスベスト含有材料を除去するための湿式法を例示する。この特許は、このアスベスト含有材料にセルロースポリマーを含有する組成物を塗布し、このセルロースポリマー含有組成物にアスベスト含有材料に浸透し、濡らす時間を与え、下地の基材から濡れた材料を機械的力により除去し、そして廃棄するために除去された材料を捕集することを開示している。
【0013】
特許文献6は、アスベスト繊維を部分的に転化する間に、この材料を条件付けする目的で別々のフッ化物イオン源、例えばフッ化水素酸のアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩を含有し得る酸の希薄水溶液をこの建材に塗布して、その除去を助けることにより、アスベスト繊維含有建材を除去する概念を中心としている。この建材は、この希薄酸溶液により処理した後、更なる処理および/または廃棄のために好ましくは除去される。特許文献6は、除去後、アスベスト材料がすべて破壊されるまで、好ましくは加熱および攪拌しながら、この材料を酸溶液浴の中に浸漬することにより、この濡れた建材を蒸解することができると更に考えている。
【0014】
いくつかの問題がこの湿式除去技術と関連する。この処理溶液は、慣用的にスプレーまたはブラシ塗布によりこの建材に塗布される。これらの塗布技術は磨耗性を有し、この建材の表面の少なくとも一部を除去し、一部のアスベスト繊維を空気浮遊性とせしめることもある。更には、このような塗布は、パス基準当り少量のこの活性材料のみしか送達することができない。パス塗布当り更に多くの量を塗布する試みは、単に、建材が塗布時間内に吸収することができる量よりも過剰な量の流下を生じるだけである。このように、材料を全体的に濡らす試みすら達成するのが困難であり、そして限定された量を少なくとも多数回塗布することを必要とする。最終的に、アスベスト含有材料に液体を塗布する慣用の手段は用量を制御する方法をもたらさない。
【0015】
更に最近になって、建物構造物の部分として保持されている間に、処理材料が非アスベスト含有材料に変質するように、アスベスト含有建材を処理する能力のあるいくつかの組成物が開示された。これらの組成物は、(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)、(特許文献10)、および(特許文献11)に開示されている。これらの特許の教示は引用により全体で本明細書に組み込まれる。
【0016】
この最近開示された蒸解処理組成物は、施工した場所にある間にアスベスト含有材料を非アスベスト材料に転化するための手段を提供するが、一部のアスベスト繊維を空気浮遊性とせしめる処理対象の建材を除去しないように、アスベスト含有材料にこのような組成物を塗布する方式について懸念がなお残る。(特許文献11)、(特許文献12)、および(特許文献13)は、酸性蒸解処理組成物と特定の比のカチオン性および非イオン性の官能基を有する発泡剤から構成される発泡組成物を塗布することを示唆している。これらの発泡組成物は、アスベスト含有建材に蒸解処理組成物を「ソフト」に塗布する手段を提供する。しかしながら、これらはある欠点を有する。すなわち、これらは、高圧装置を使用しながら、多相スタチックエアレーターにより塗布される発泡組成物を必要とする。これらは、工業的に許容可能な量の発泡剤を使用する場合、泡からの高度の排水を示し得る。
【0017】
クリソタイル・アスベスト含有材料を非規制の材料に効果的かつ効率的な方法で変質させることが可能な組成物を塗布する手段を有することが望ましい。
【特許文献1】米国特許第4,328,197号(Flowersへの)明細書
【特許文献2】米国特許第4,401,636号(Flowersへの)明細書
【特許文献3】米国特許第4,474,742号(Graceffaらへの)明細書
【特許文献4】米国特許第4,347,150号(Arpinへの)明細書
【特許文献5】米国特許第4,693,755号(Erzingerへの)明細書
【特許文献6】米国特許第5,258,562号(Mirickらへの)明細書
【特許文献7】米国特許第5,753,031号明細書
【特許文献8】米国特許第5,753,033号明細書
【特許文献9】米国特許第5,753,034号明細書
【特許文献10】米国特許第5,754,035号明細書
【特許文献11】米国特許第5,741,358号明細書
【特許文献12】米国特許第5,753,032号明細書
【特許文献13】米国特許第5,743,841号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、この建材が建物環境の一部として残り、そして下地の基材上に支持された状態にある間に、アスベスト、特にクリソタイル・アスベストを含有する多孔質無機建材を処理して、この建材を非アスベスト材料(すなわち、1重量%未満のアスベストを含有する材料)に変質させるための改善された組成物および方法を提供することである。
【0019】
別な目的は、低減されたエアレーター構成要素を有する低圧装置を用いて塗布可能であり、そして建物構造物の部分である間に、低い排水性を呈することが可能である安定な発泡した処理組成物を提供するのに充分な量で酸安定性発泡剤系を含有する酸処理組成物によって、石膏、クリソタイル・アスベストおよび場合によっては、他の構成成分、例えばバーミキュライトなどの多孔質骨材粒子状物質を含有する建材を処理対象の建材に付着させ、そして浸み込ませながら処理して、この建材を非規制の材料に変質させることである。これにより、この系はこの酸処理組成物を有効な方法で塗布する方式を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、これらおよび他の目的と利点は、アスベスト材料(例えば、クリソタイル・アスベスト)を非アスベスト材料に変質させるための本発明の組成物および方法により達成される。この組成物は、(i)水、少量のフッ化物イオン源(好ましくはテトラフルオロボレートあるいはヘキサフルオロシリケートの塩)と共に無機酸、無機酸塩またはこれらの混合物を含む高濃度の酸構成成分、または別法としては、(ii)少なくとも1つのテトラフルオロボレートあるいはヘキサフルオロシリケートの塩またはこれらの混合物を高濃度で有する水溶液の独特な組み合わせを含んでなる。この組成物は、非イオン性アルキルポリグリコシドを単独であるいは他の非イオン性薬剤との組み合わせで含んでなる酸安定性の発泡剤系を更に含有する。本発明の組成物は、処理対象の材料中でクリソタイル・アスベストの1重量部当り約8〜20重量部の処理組成物を吸収する安定な泡の形でクリソタイル・アスベスト含有材料、特にクリソタイル・アスベスト含有建材に塗布される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、アスベスト繊維を含有する多孔質無機セメント質材料を処理して、この建材を非アスベスト材料に変質させるように意図されている。本発明は、耐火性および耐熱性を付与するために建物に構造構成成分、例えば鋼梁、デッキ等にコーティングとして以前に塗布された石膏ベースの建材中に含有されるクリソタイル・アスベスト繊維を蒸解するのに特に有用である。しかし、本発明の組成物を使用して、建材の一部として含有される種々のアスベスト鉱物を蒸解し、非アスベスト生成物に変質させてもよい。本発明は、クリソタイル・アスベスト含有材料を用いて記述されるものとする。
【0022】
本発明は、安定な泡の形の水溶液または分散液である処理組成物を提供する。予期されなかったこととして、本明細書に述べる発泡剤系は、セメント質建材の一部として施工した場所にある間にクリソタイル・アスベストを蒸解し、低圧装置を用いて塗布し、塗布したままで前記建材に付着し、泡の完全性の喪失および建物環境への水性系の実質的な損失を起こさずにセメント質建材にこの水性系を送達、移動することができる薬剤を有する多量の水性系を支持する能力のあることが判明した。
【0023】
本明細書中下記で、および上記の引用した特許で述べるように、この水性系は、(i)高濃度の酸構成成分(すなわち、無機酸、無機酸塩またはこれらの混合物)、および比較的低濃度のフッ化物イオン源(例えば、テトラフルオロボレートあるいはヘキサフルオロシリケートの塩)、あるいは別法としては(ii)高濃度のテトラフルオロボレートあるいはヘキサフルオロシリケートの塩またはこれらの混合物を含んでなってもよい。
【0024】
本明細書中で下記に充分に述べるように、主題の組成物は、単独、あるいは他の非イオン性薬剤と組み合わせてこの処理組成物を酸安定性の泡の形で保持する能力のある量で下記に述べる少なくとも1つの非イオン性薬剤から構成される独特な発泡剤系を含有する。
【0025】
本発明の泡は高無機酸含量を有する水性系を送達してもよい。このような系においては、この酸成分は、いかなる強無機酸、または無機酸塩、またはこれらの混合物からも選択可能である。この酸構成成分は、約2.5までの、好ましくは約2.2までのpKaを有しなければならない。更には、この酸成分は、水に高溶解性であって、本発明の組成物を形成しなければならない。好ましい無機酸は、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸およびこのような酸の混合物を含む。最も好ましい酸はリン酸である。この酸構成成分としてリン酸を使用する場合には、これを全酸含量の約20重量%までの少量の他の無機酸と組み合わせて使用することができる。加えて、少量(酸含量の約5重量%までの、好ましくは約2重量%までの)を有機酸の形とすることができる。好ましい無機酸塩は半酸塩、例えばアンモニウムおよびアルカリ金属の重硫酸塩である。好ましい塩はこの半酸(half acid)のアンモニウム塩である。
【0026】
この酸成分は、本発明の組成物中で処理組成物の重量基準で少なくとも約30重量%の、この水性系中のこの酸の飽和点までの高濃度で使用される。この酸成分は、処理組成物の全重量基準で約30%〜約45重量%で存在することが好ましい。
【0027】
この酸性水性処理組成物は、少なくとも1つのフッ物イオン源、通常、この水性処理組成物に本明細書中で下記に述べる量で可溶であるフッ素含有塩を更に含有してもよい。本発明の処理組成物中で使用してもよいフッ素含有塩は、例えば、アンモニア、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のフッ化物、フッ化水素塩、フルオロボレート、およびフルオロシリケートを含む。このような塩の混合物も使用してもよい。好ましいフッ素含有塩は、アンモニウム、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属のフルオロボレートあるいはフルオロシリケート、例えばアンモニウムテトラフルオロシリケート、アンモニウムヘキサフルオロシリケート、ナトリウムテトラフルオロボレート、ナトリウムヘキサフルオロシリケート、カリウムテトラフルオロボレートまたはカリウムヘキサフルオロシリケートである。予期しないこととして、好ましいフルオロボレートおよびフルオロシリケートの塩を使用することにより、本発明の処理組成物を貯蔵し、使用して、OSHA標準により例示されるような、工業的な用途に許容できない量で有害なフッ化水素ガスを発生させずに、建物環境中の施工した場所にある間にクリソタイル・アスベスト含有建材を非アスベスト材料に変質させることができることが判明した。このように、テトラフルオロボレートおよび/またはヘキサフルオロシリケートのこのような塩は、使用時に大量のフッ化水素ガスを迅速に発生、放出し、そのために危険な作業区域を生み出す傾向のある、単純なフッ化物の塩、例えばフッ化ナトリウム、フッ化アンモニウムまたはフッ化水素アンモニウムを含有するアスベスト処理組成物よりも好ましい。
【0028】
本発明の処理組成物中でフッ化物イオン源を場合によっては使用する場合には、この量は酸構成成分の濃度に比べて極めて少ない。このように、フッ化物イオン源の濃度は、この処理組成物の全重量基準で約4重量%まで、好ましくは約2重量%まででなければならず、約0.1重量%〜約4重量%の、例えば約0.5重量%〜約2重量%の濃度が最も好ましい。
【0029】
別法として、本発明を使用して、水とテトラフルオロボレートあるいはヘキサフルオロシリケートの塩から形成される水性蒸解処理組成物を送達することができる。この塩は、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属あるいはアンモニウム塩の形になっている。この塩は、通常、この水溶液の少なくとも約10重量パーセントで存在する。この塩溶液は、場合によっては、更には少量の、例えばこの水性系の全重量基準で約7重量パーセントまでの、好ましくは約5重量パーセントまでの、そして最も好ましくは約2重量パーセントまでの量の無機酸を有してもよい。主題の塩から構成されるこの水性蒸解処理組成物は、その教示を引用により本明細書に組み込んでいる、特許文献9に完全に開示されている。
【0030】
上述の蒸解処理構成成分に加えて、本発明の処理組成物は、少なくとも1つのアルキルポリグリコシドから構成される酸安定性発泡系を含有しなければならない。単独で、あるいは他の非イオン性薬剤との組み合わせでこの非イオン性薬剤を使用して、本発明の改善された高酸性処理組成物を提供することができる。本明細書中で下記に述べる非イオン性薬剤は、低圧装置を用いて前記送達を提供し、そして長時間にわたって水性蒸解処理系の低排水度を呈する、水溶液の蒸解処理薬剤をセメント質材料の中に送達することのできる安定な発泡組成物を効果的に形成することが判明した。
【0031】
本発明の処理組成物における使用に選択される発泡剤系は、この処理組成物にいくつかの重要な性質を付与することができなければならない。例えば、この選択される発泡剤系によって、処理組成物が低圧条件下で安定な泡を形成可能とならなければならない。例えば、塗布した泡の形成に使用される本発明の組み合わされた液体薬剤は、低圧装置(約120psi以下、例えば約100あるいは更には90psiを発生し、そしてそれに耐える能力のある)を用いて送達が可能である。この泡を生成させるガス(例えば、空気)は、約60あるいは更には50psiの圧力を発生する能力のある低圧ポンプ系により送達可能である。これらの圧力は、野外運転に便利な軽量かつ容易に移動可能な装置を用いて発生可能である。比較として、特許文献13に述べられている泡系は、多相エアレーターと500〜約1000psiの送達圧力を必要とする。
【0032】
この明細書と請求の範囲で使用するとき、用語「安定な泡」は、高酸性環境中に存在することのできる比較的緻密な泡(少なくとも約0.05〜0.4g/cc、好ましくは約0.05〜0.15g/ccの密度)と定義するような意味である。更には、この発泡剤系は、建材の向き(例えば、水平、垂直、床、天井)の如何にかかわらずセメント質建材などに付着することのできる泡を形成する能力がなければならない。なお更には、この発泡剤系は、放出の間一体性を維持する能力がなければならず、そしてセメント質建材の細孔の中に入る水性系を提供して(例えば、この泡は、やり直し排水無しで浸透を可能とするのに充分な時間、例えば塗布後、少なくとも1分間、好ましくは少なくとも約2分間、そして最も好ましくは少なくとも約10分間存在する能力がなければならない)、環境への著しい排水を起こさずに水性処理組成物に建材の中に入る充分な時間を提供する。
【0033】
上記の要求はつりあいおもり力を有することは容易に判り、それゆえ本発明で説明する発泡組成物を得ることができることは予測されない。
【0034】
この発泡剤系は、また、高凝集性および付着性を有する発泡した処理組成物を提供しなければならない。言い換えれば、この発泡した処理組成物は、半固体(擬似塑性)のレオロジー的性質と充分な接着強度を持つ物体として自己保持し、そして処理対象のアスベスト含有材料に比較的厚い泡の層の形で付着するのに充分な接着強度を有しなければならない。このように、本発明による泡処理組成物は、垂直の建物構造物または反転した建物構造物、例えばI−梁の上にほとんど流下を伴わずに配設される建材に約0.5〜約2インチの厚さの泡層として付着するのに充分な付着強度を有しなければならない。
【0035】
本発明の発泡した処理組成物の高い凝集性および付着性によって、比較的大量の処理組成物を1回の塗布で塗布することができる。言い換えれば、本発明の発泡した処理組成物を使用して、アスベスト含有建材、例えば建物中の構造梁の上に配設された厚い耐火コーティング材料を処理する場合には、この組成物を1回の塗布で比較的厚い、例えば1〜2インチ厚の泡層として、あるいは数回のパスのみにより塗布すればよく、これは長時間建材との接触状態を保つことができる。これは、流下を回避しながら必要量の処理組成物を処理対象の材料の中に浸み込ませるために、建材上に多数回の少量塗布で通常スプレーするか、さもなければ塗布しなければならない水溶液または分散液の形の処理組成物を使用するよりも顕著な改善を示す。
【0036】
本発明の泡処理組成物により得られる高凝集強度および高接着強度に加えて、本発明の発泡剤系は、処理対象の建材の中に容易に吸収され得る生成発泡組成物を提供する。このように、本発明の発泡剤系は、表面張力を少なくとも30ダイン/cm、好ましくは少なくとも約40ダイン/cmに維持しながら、処理対象の建材に対する処理組成物の接触角を低下させる能力がある。このように、本発明の発泡した処理組成物は、重力の影響下での泡からの液体排水よりも速く建材を濡らし、その中に浸み込む能力がある。この建材の内部および予期しない部分に存在するクリソタイル・アスベスト、並びに露出表面、あるいはその近傍に存在するクリソタイル・アスベストがこの酸処理組成物と接触して、それによりこのアスベスト含有材料を非規制の材料に転化させるように、いかなる著しい排水または流下も起こさずに建材の中にこの処理組成物が浸み込むことを必要とする限り、このことは重要である。
【0037】
与えられた泡処理組成物が与えられた建材の中に浸み込むのに要する時間がこの泡の許容可能な安定性に対する下限を設定することを認識するであろう。言い換えれば、速く濡らす泡は遅く濡らす泡ほどには安定である必要はない。特定の泡処理組成物の所要の安定性は、その精確な配合、並びに特定の処理対象の建材に依存して変わることを更に認識するであろう。しかしながら、実際、本発明による泡処理組成物は、この処理組成物がこの組成物を塗布した露出表面に隣接する処理された材料の厚さの少なくとも一部の中に吸収されるのに充分な時間である、少なくとも約1分間、好ましくは少なくとも約2分間存在するのに充分安定であることが判明した。次に、この組成物は厚さの残りを経時的に移動する。
【0038】
本発明の処理組成物が2以下のpHを有するために、本発明の処理組成物で使用するのに好適である発泡剤系は、極めて低いpH条件で安定でなければならない。従って、中性あるいは若干酸性のpH条件で発泡組成物を生成するのに有用である多数の薬剤は、このような低いpH条件の下で官能性を失うか、あるいはなんらかの形で分解し、それゆえ本発明で使用するのに好適でないことがある。本発明の発泡剤は、本発明で考慮される処理組成物の低いpH条件で安定であることが判明した。このように、この発泡剤をこの処理組成物の他の構成成分と混合して、貯蔵安定性のある組成物を形成させてもよい。別法として、泡形成および建材への塗布の直前にこの発泡系をこの処理組成物に添加することができる。
【0039】
予期しないこととして、本発明で使用するための特に好適な発泡剤系が発泡性および濡れ性の組み合わせを提供することが判明した。このように、好ましい発泡剤系は、本明細書中で下記に述べる特定の実質的に非イオン性の薬剤の一つまたは組み合わせを含んでなる。この薬剤または特定の処理組成物と共に使用される非イオン性官能基を有する薬剤の相対量は、この処理組成物の構成成分並びにこの泡を製造するのに使用される特定の装置に依存し、そして少数のテストランにより決定可能である。上述のように、本発明の発泡剤系は、容易に入手でき、かつ運搬可能な低圧装置を用いて送達可能な所望の泡の性質を有する処理組成物を提供する。通常、本発明の発泡剤系を含有する処理組成物は、120psi未満の、好ましくは100psi未満の全ポンプ圧力で、また多くの場合90psi未満で塗布可能である。
【0040】
本発明の発泡剤系は、非イオン性アルキルポリグリコシドの少なくとも一つまたは混合物から構成される。これらのアルキルグリコシドは、また、アルキル基がC〜C16アルキル基とこれらの混合物から選択される、アルキル(+β)モノあるいはオリゴグリコピラノシドとも呼ばれる。このグリコシド部分は、単一の単位(モノ−)または約10個までの複数の単位(オリゴ−)であってもよい。これらの薬剤は、一般式
【0041】
【化1】

【0042】
(ここで、Rは直鎖あるいは分岐鎖の構造を有してもよい、C−C16アルキル基、例えばオクチル、ノニル、デシル、ヘンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシルまたはオクタデシルであり、そしてxは1〜10の整数を表す)
により表され得る。
【0043】
本発明で使用されるアルキルポリグリコシドは、その教示を引用により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,512,666号;第5,633,359号;第5,449,763号;第5,859,218号および第5,266,690号により述べられている方法により形成可能である。更には、これらの薬剤は、Henkelの商品名Glucopon(登録商標)の下で水溶液として市販されている。
【0044】
本発明による典型的な処理組成物に対しては、この発泡剤系は、通常、この全組成物の約0.5〜5重量パーセント、例えば約1.5〜2.5重量%を含んでなる。このアルキルポリグリコシドは、主題の蒸解処理組成物中にこの全組成物基準で0.5重量パーセント〜5重量パーセント、好ましくは1重量パーセント〜4重量パーセントで存在しなければならない。単独の発泡剤として使用する場合には、このアルキルポリグリコシド薬剤は、この蒸解処理組成物の1〜3.5重量パーセント、更に好ましくは2〜3.2重量パーセントで存在することが好ましい。
【0045】
本発明の酸性の蒸解処理組成物の部分として使用される発泡系を特定の他の非イオン性発泡剤と組み合わせて使用してもよい。好ましい更なる非イオン性薬剤は非イオン性ポリアルコキシ化合物である。好適な更なる非イオン性薬剤は、非イオン性薬剤の1分子当り少なくとも約10個の官能基単位(AO、ここでAはC−C炭化水素である)を有する化合物、例えば、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー(例えば、BASFによりPluronicまたはTetronicの名称の下で販売されているもの)、ポリアルキレンオキシドホモポリマー、例えばポリエチレングリコールなど、アルコールエトキシレート(例えば、Union CarbideによりTergitolの名称の下で販売されているもの)、またはアルキルベンゼンエトキシレート(例えば、Union CarbideによりTritonの名称の下で販売されているもの)を含む。加えて、エトキシル化シリコーン(例えば、WitcoによりSilwetの名称の下で販売されているもの)は、本発明の発泡剤系で使用した場合良好な性能を与えることが判明した。
【0046】
上述のアルキルポリグリコシドと共に使用するのに好適な更なる非イオン性発泡剤は、少量のカチオン性あるいはアニオン性官能基をその分子構造内に含有してもよい。このタイプの材料は、例えば、複数のアルキレンオキシド基を有する分子中に単一のカチオン性基を含有する牛脂アミンエトキシレート(例えば、官能性アミン基の各モルに対してほぼ50モルのアルキレンオキシド官能基(エチレンオキシド)を有する実質的に非イオン性の薬剤である、Rhone−PoulencのRhodameen IT−50)を含む。この更なる発泡剤中の少量のカチオン性あるいはアニオン性の基の存在は、このような薬剤の非イオン性を妨害しない限り許容し得る。このように、この生成する泡薬剤系は、1:100以上の、好ましくは1:110以上の、そして更に好ましくは1:120以上のモル比で非イオン性基に対するカチオン性/アニオン性の基を有してもよい。
【0047】
このアルキルポリグリコシドを上述のように更なる非イオン性発泡剤と共に使用する場合、このポリグリコシドは、この全組成物基準で0.5〜3重量パーセント、好ましくは0.5〜1.5そして最も好ましくは0.75〜l.25重量パーセントで存在してもよい。この更なる薬剤は、通常、この組成物の全重量基準で0.5〜2、好ましくは0.5〜1.25そして最も好ましくは0.75〜1.2重量パーセントで存在する。
【0048】
本発明の発泡系は、単独で、あるいは更には上述の更なる非イオン性薬剤と共にアルキルポリグリコシドの一つまたは混合物から構成されてもよい。薬剤の好ましい組み合わせは、アルキルポリグリコシドと存在する少量のカチオン性基を有するポリオキシアルキレン化合物との混合物から構成される。このような組み合わせは、Henkelから市販されているGlucoponの商品、例えばRの平均値が9〜12、例えば約10.3である比率でC、C10、C12、C14およびC16のR単位を有するGlucopon 425TとRhone−Poulencから市販されているRhodameenの商品、例えばRhodameen T−50との組み合わせにより例示されてもよい。これらの組み合わせは、この全処理組成物の重量基準で0.5〜2の、例えば1重量パーセントのアミン含有非イオン性ポリアルキレンオキシドと共にこの全処理組成物の重量基準で0.5〜2.5の、例えば1.2重量パーセントのこのポリグリコシドを有する。
【0049】
処理対象の材料中のクリソタイル・アスベストの1重量部当り約8〜20重量部の、好ましくは9〜15重量部のこの水性処理組成物を塗布するように、いかなる方法によっても本発明の処理組成物をクリソタイル・アスベスト含有セメント質コーティングに容易に塗布することができる。塗布される量は、材料中に始めに存在するクリソタイル・アスベストの量、この処理組成物中の酸濃度および処理対象の材料の厚さと吸収能に依存する。この精確な量は小規模の塗布と試験により容易に決定可能である。
【0050】
建物または処理区域の更なる占有を計画している場合には、この処理組成物は、好ましくは、処理対象の材料を取り付け、そして/またはその近傍にある金属性基材材料(例えば、鋼梁、亜鉛メッキした波型デッキ、鋼管など)の腐食を防止する薬剤を含有しなければならない。本発明の酸性処理組成物の一部である場合、特定の材料が広範な範囲の金属用の腐食防止剤で有用であることが判明した。これらの薬剤、およびクリソタイル・アスベストを蒸解して、非アスベスト材料を形成する酸性処理組成物、例えば本明細書中で述べる組成物の中へのこれらの組み込みおよびこのアスベスト含有セメント質材料を非規制の材料に変質するための利用は、その教示を引用により全体で本明細書に組み込んでいる、「アスベストを除去するための組成物および方法」と題する特許文献11に完全に述べられている。
【0051】
本発明の方法は、例えば、偏光光学顕微鏡、X線回折、または他の慣用の方法により測定した場合、あったとしても極めて少ないクリソタイル・アスベストを含有する材料にクリソタイル・アスベスト含有材料を変質させる。この生成した処理された材料は、その全体構造中に1パーセント(1%)未満の、通常2分の1パーセント(0.5%)未満のクリソタイル・アスベストを含有する。このように、本発明の組成物により処理される材料は、非規制のアスベストを含まない材料の米国政府標準に合致し、通常の手段により安全に取り扱われてもよい生成物を生じる。更には、予期しないこととして、本発明の組成物および方法は、セメント質材料の劣化を生ずることなくこの変質をもたらし、それによって、この材料を施工した場所に残し、そして始めに設置した目的の耐火性などの機能を果たすことを継続させることができることが判明した。
【0052】
少数の(5−15)エアレーターをワンド中に有するワンドアプリケーターを用いて、この塗布を行うことができる。約120psi未満の、例えば小さい慣用のポンプにより発生される低圧を用いて、この処理組成物をこのワンドにより容易にポンプ送液することができる。この水性処理組成物は、ポンプからアプリケーターワンドまで可撓性ホース経由で流れ、これによって塗布を行う個人が処理組成物を収めたドラムを移動せずに、広い面積にわたってこの組成物を容易に塗布することができる。
【0053】
施工した場所にある間、およびこのセメント質材料の一部である間に、このセメント質材料中に含有されるクリソタイル・アスベストは、実質的に完全に蒸解して、非規制の生成物をもたらす。通常、少なくとも約85パーセントの、好ましくは少なくとも約90パーセントのこのクリソタイル繊維は、本発明の組成物および方法により蒸解されて、セメント質材料を劣化させずに非規制で安全な生成物をもたらし、それによりこの材料の除去を必要とせず、又このセメント質コーティング材料の性質を低下させることもない。
【0054】
本発明によりクリソタイル・アスベスト繊維の蒸解処理を行うのに必要なことは、クリソタイル繊維を含有する材料に本発明の発泡した処理組成物を塗布することだけである。アスベスト含有建材、例えば桁、梁および床支持板の上に被覆された耐火材料の場合には、好ましくはそれが建物環境中の施工した場所にある間に、この発泡した処理組成物をアスベスト含有材料上に直接にスプレーすることにより、このことを行うことができる。この発泡した処理組成物は、通常、建材の中に浸透し、そしてその中に含有されるアスベスト繊維に接触するので、アスベスト繊維を露出するためにアスベスト含有材料をかき回すことは不必要である。更には、この発泡組成物は、この建材を処理する非磨耗性の擬似カプセル化手段を提供する。
【0055】
アプリケーターワンドのノズルに少数(5−15)のエアレーターを備えた慣用の低圧(約120までの、好ましくは約90psiまでの)装置を用いて、本発明の改善された発泡可能な処理組成物を塗布することができる。生成泡は、極めて低い排水性(アスベスト含有材料からでる泡からの液体蒸解処理組成物の放出)と共に良好な保持力を呈する、濃厚な特性を有する。このように、更に多くの活性な蒸解処理組成物は、この発泡した組成物を塗布したアスベスト含有材料の多孔質構造の中に放出されることができる。
【0056】
本発明の発泡した処理組成物は、セメント質建材の重量基準で約100〜200重量%の、好ましくは約125〜約175重量%の主題の組成物の合計塗布量を可能とする方法で石膏含有セメント質建材に塗布されなければならない。この精確な量は、処理される建材のクリソタイル・アスベストの濃度に依存する。
【0057】
フッ化物イオン源と発泡剤系が触媒的に存在すると共に、本発明の処理組成物中の酸濃度が高いために、建物環境中の施工した場所にある間に建材上に発泡した処理組成物を1回塗布することにより所望のアスベストの変質が得られることもある。しかしながら、或る場合には、好ましくはいかなる中間乾燥段階も無くクリソタイル・アスベストの所望の程度の蒸解処理が行われるまで、連続塗布を行うことが必要であるか、あるいは望ましいこともある。
【0058】
この発泡した処理組成物をこの材料に塗布する好ましい方法は、この建材の主要自由表面上に直接にこの組成物を塗布することによるものである。処理対象の材料は建物構成要素上のコーティングの形になっているので、通常、1つの主要表面が露出され、主題の組成物の塗布を受けることができる。発泡した水性処理組成物の塗布は、接触時間の延長と変質が起こっている間の処理対象の材料の擬似カプセル化をもたらす。
【0059】
クリソタイル・アスベスト含有材料を本発明により施工した場所で変質させる場合、生成する非アスベスト材料の物理的な一体性と下地の基材への付着性は、施工した場所に残してアスベスト含有材料を始めに設置した時の耐火性または他の機能を果たさせるようなものであることが判明した。この材料中に残存するいかなる酸も中和するために、温和なアルカリ性溶液、例えば重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、水酸化マグネシウムなどでスプレーすることなどにより、この生成する材料を引き続き処理してもよい。
【0060】
施工した場所で本発明の処理組成物により処理して、その中に含有されるいかなるアスベストも非アスベスト材料に変質させた建材は、物理的な一体性と下地の基材との付着性を本質的に維持することが判明したが、この材料または基材との付着性を強化することが必要であるか、あるいは望ましい場合がある。発泡した処理組成物によりこの建材を始めに濡らす前か、あるいは上述のようにこの建材を処理および/または中和した後に、この材料にポリマー結合剤を塗布することにより、これを行うことができる。本発明の方法は、建物中のアスベスト処理に適用されるように、通常、いかなる障害物、例えば内部間仕切り、天井および柱の被覆も除去して、処理対象のアスベスト含有材料を露出させる段階を含む。これによって、この材料をサンプリングし、試験して、組成および他の関連する特性を求めることができ、本発明による最適なアスベスト処理組成物と処理手順の選択を容易にする。次に、施工した場所にあるアスベスト含有材料に上述の量で発泡した処理組成物を直接に塗布して、非規制の材料をもたらす。この生成する材料を中和剤により更に処理してもよい。
【0061】
次の実施例は、本発明を制約せずに、添付したクレームにより規定した本発明を説明するように意図されたものである。すべての部およびパーセントは特記しない限り重量によるものである。
【実施例】
【0062】
実施例1
32.5重量パーセントのリン酸、1.6重量パーセントのアンモニウムヘキサフルオロシリケートおよび0.05重量パーセントのジエチルチオ尿素(腐食防止剤)を含有するアスベスト処理組成物の水性マスターバッチを形成した。このマスターバッチのそれぞれの部分に、(a)3重量パーセントのl0.3の平均アルキル鎖を有する非イオン性のC、C10、C12、C14およびC16アルキルポリグリコシドの混合物のマスターバッチ試料(試料A);(b)試料Aを形成するのに使用された1.2重量パーセントのアルキルポリグリコシドの混合物と1モル当り50のエチレンオキシド単位を有する牛脂アミンエトキシレートからなる1重量パーセントの非イオン性薬剤との混合物(試料B);および比較の目的で、(c)試料Bで使用された4重量パーセントの非イオン性牛脂アミンエトキシレートと0.3重量パーセントのカチオン性ドデシルアミドプロピルベタインの混合物(特許文献13に開示された混合物)(実施例C)の発泡剤を添加した。
【0063】
得られた混合物の各々を一連のエアレーター要素(Koch Engineering Co.の1.252cm.SMV スタチック混合要素)からポンプ送液することにより、各混合物から泡を形成した。
【0064】
2:1比の空気圧縮ピストンポンプを用いて、試料AおよびBをポンプ送液した。この液体流量は、90〜100psiの圧力を維持しながら、1分間当り4.7リットルであった。この液体をエアレーター要素の直前で空気注入した。15エアレーター要素から40〜55psiで0.05m/分(1.7cfm)の容積で空気を供給した。生成する泡生成物は77gm/1〜114gm/lの範囲の密度を有していた。
【0065】
10:1比の空気圧縮ピストンポンプを用いて、試料Cをポンプ送液した。この液体流量は500psiの圧力で1分間当り4.7リットルであった。混合要素の直前で90psi、0.05m/分(1.7cfm)の容積でこの液体流れを空気注入した。好適な泡を生成させるためには、上述の30エアレーター要素を高圧下で使用して、この構成成分を混合することが必要であった。生成する泡は94gm/l〜114gm/lの密度を有していた。試料Cは、上記の試料AおよびBに対して使用した低圧および少量の要素下では良好な泡を与えなかった。
【0066】
この泡の各々を予め自重を測ったブフナー漏斗の中にスプレーした。この泡を入れた漏斗を直ちに秤量して、試験対象の泡の密度を求めた。各漏斗を自重を測ったエルレンマイヤーフラスコにかぶせて置き、そして15分間排水した。次に、このフラスコを秤量して、各試料から排水した液体の量を求めた。
【0067】
各々の場合、この試料は実質的に排水を数分間示さなかった。各試料は、これらの試験条件下で15分間後約50重量パーセントの排水性を有していた。
【0068】
試料AおよびBは、先行技術の試料Cのそれの試験条件下で等しい排水性を呈する泡生成物を提供することが可能であった。この試料を約1.9〜2.5cmの厚さを有する多孔質アスベスト含有材料に塗布した場合、試料AおよびBは試料Cと同じようによくこの材料の中に吸収し、そしてこの材料の厚さにわたって処理材料をもたらすことが観察された。
【0069】
結果を下記の表1と図1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例2
(a)2.2重量パーセント(試料D)および1.2重量パーセント(試料E)の用量の上記の実施例1に述べたアルキルポリグリコシドのみ;(b)上記の実施例1に述べたアルキルポリグリコシドと牛脂アミンエトキシレートの組み合わせ(試料F);(c)1.2重量パーセントのこのベタインと1重量パーセントのこの牛脂アミンエトキシレートとの比較の組み合わせ(試料G)および(d)1重量パーセントの牛脂アミンエトキシレートの比較の試料(試料H)を用いて、上記の実施例1に述べたマスター処理組成物を使用して、泡試料を形成した。
【0072】
この泡の各々を長時間高せん断力の方式にかけた。ブレンダーを使用して、せん断力を与え、そして30秒の間隔で5秒間の休止期間を間に置いて加えた。この5秒の休止期間の各々の終わりに、泡高さをミリメートルで測定した。第1、第2、第3および第4の期間に3,400rpmで;第5の期間に4,250rpmで;第6の期間に8,550rpmで;第7の期間に13,600rpmで;第8の期間に16,400rpmで;そして第9および第10の期間に19,250rpmでせん断を加えた。
【0073】
この結果は、本発明の非イオン性泡系により安定な泡(高い泡高さ)を得ることができることを示す。単独あるいは別の非イオン性発泡剤との組み合わせでのアルキルポリグリコシドの使用は、良好な泡安定性をもたらす。別の非イオン性泡薬剤(本明細書では、牛脂アミンエトキシレートにより例示される)のみの使用は、劣った安定性を呈する。最後に、本発明の組み合わせ(試料F)は、安定性の点で特許文献13の例示のカチオン性/非イオン性系(試料G)に匹敵する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は種々の密度での試験試料の排水の程度を示すグラフである。この図1は、特許文献13に述べられているカチオン性および非イオン性の発泡剤の組み合わせの比較試験試料を含む。
【図2】図2は特許文献13で述べられているようなカチオン性および非イオン性の発泡剤の比較試料を含む、多数の試料についての経時的な泡の高さ(密度に逆の関係を持つ)のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)水、(ii)無機酸、無機酸塩またはこれらの混合物を含んでなる少なくとも約30重量%の酸成分、(iii)約0.1〜約4重量%のフッ化物イオン源および(iv)式
【化1】

(ここで、RはC〜C16のアルキル基を表し、そしてxは1〜10の整数を表す)
により表される少なくとも1つの非イオン性ポリアルキルグリコシドを単独であるいは更に第2の非イオン性薬剤と共に含んでなる安定な泡を生成する量の発泡剤系を混和することにより誘導される組成物を用意すること;
(b)段階(a)からの組成物を発泡させること;
(c)前記ACMクリソタイル・アスベスト含有建材に得られた発泡組成物を塗布すること;
(d)前記発泡組成物を前記建材上に残し、浸透させ、そして前記建材中に含有されるクリソタイル・アスベストと接触させること;
(e)前記建材中に含有されるクリソタイル・アスベストの量を生成した材料の1重量%未満まで低下させるのに充分な時間前記組成物を前記クリソタイル・アスベストと接触した状態に置くこと;そして
(f)前記生成材料を前記建物の基材上に残すこと
を含んでなる、建物中の基材上に設置されたクリソタイル・アスベスト含有多孔質建材(ACM)を処理する方法。
【請求項2】
(a)(i)水、(ii)少なくとも約10重量パーセントの少なくとも1つのアンモニア、アルカリ金属、アルカリ土類金属のテトラフルオロボレートあるいはヘキサフルオロシリケートの塩または前記塩混合物、(iii)約7重量パーセントまでの無機酸、無機酸塩またはこれらの混合物、および(iv)式
【化2】

(ここで、RはC〜C16のアルキル基を表し、そしてxは1〜10の整数を表す)
により表される少なくとも1つの非イオン性ポリアルキルグリコシドを単独であるいは更に第2の非イオン性薬剤と共に含んでなる安定な泡生成量の発泡剤系
を混和することにより誘導される混和物組成物を用意すること;
(b)段階(a)からの組成物を発泡させること;
(c)前記ACMクリソタイル・アスベスト含有建材に得られた発泡組成物を塗布すること;
(d)前記発泡組成物を前記建材上に残し、浸透させ、そしてその中に含有されるクリソタイル・アスベストと接触させること;
(e)前記建材中に含有されるクリソタイル・アスベストの量を前記生成材料の1重量%未満まで低下させるのに充分な時間、前記組成物を前記クリソタイル・アスベストと接触した状態に置くこと;そして
(f)前記生成材料を前記建物の基材上に残すこと
を含んでなる、建物中の基材上に設置されたクリソタイル・アスベスト含有多孔質建材(ACM)を処理する方法。
【請求項3】
前記建材が建物構成要素基材上のコーティングの形の石膏含有セメント質建材である請求項1あるいは2に記載の方法。
【請求項4】
前記発泡剤系が少なくとも1つのポリアルキルグリコシドおよび1分子当り少なくとも約10個のアルコキシ基を有するポリアルコキシ化合物から選択される少なくとも1つの非イオン性薬剤の混合物を含んでなる請求項1あるいは2に記載の方法。
【請求項5】
前記発泡剤系が本質的に少なくとも1つのポリアルキルグリコシドからなる請求項1あるいは2に記載の方法。
【請求項6】
前記アルキルポリグリコシドが(a)の組成物の0.5〜3重量パーセントで存在し、そして前記第2の非イオン性発泡剤が(a)の組成物の0.5〜2重量パーセントで存在する請求項1あるいは2に記載の方法。
【請求項7】
前記酸成分が約30〜約45重量パーセントの濃度で存在するリン酸を含んでなり、そしてフッ化物イオン源が前記組成物の全重量基準で約0.5〜約2重量パーセントの濃度で存在する、アンモニウムあるいはアルカリ金属のフルオロシリケートまたはフルオロボレートを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
フッ化物源がアルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアンモニアのフルオロシリケートまたはフルオロボレートの塩から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(a)水、(b)アンモニア、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の少なくとも1つのヘキサフルオロシリケート塩またはこれらの混合物、および(c)前記組成物の重量基準で約7重量%までの無機酸、無機酸塩またはこれらの混合物を混和することにより前記組成物が誘導され、ここで、前記ヘキサフルオロシリケートは前記組成物の少なくとも約10重量パーセントで存在する請求項2に記載の方法。
【請求項10】
(a)水、(b)アンモニア、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の少なくとも1つのテトラフルオロボレート塩またはこれらの混合物、および(c)前記組成物の重量基準で約7重量%までの無機酸、無機酸塩またはこれらの混合物を混和することにより前記組成物が誘導され、ここで、前記テトラフルオロボレートは前記組成物の少なくとも約10重量パーセントで存在する請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記泡生成系が組成物の約0.75〜1.25重量パーセントのアルキルポリグリコシドと約0.75〜1.2重量パーセントの第2の非イオン性発泡剤を含んでなる請求項1あるいは2に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリグリコシドのアルキル鎖が約9〜12の平均アルキル鎖長を有するC、C10、C12、C14およびC16の混合物である請求項1あるいは2に記載の方法。
【請求項13】
第2の非イオン性発泡剤が存在し、そして前記薬剤が1モル当り40〜60個のアルキレンオキシド基を有する牛脂アミンエトキシレートである請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(a)(i)水、(ii)無機酸、無機酸塩またはこれらの混合物を含んでなる、少なくとも約30重量%の酸成分、(iii)約0.1〜約4重量%のフッ化物イオン源および(iv)式
【化3】

(ここで、RはC〜C16のアルキル基を表し、そしてxは1〜10の整数を表す)
により表される少なくとも1つの非イオン性ポリアルキルグリコシドを単独であるいは更に第2の非イオン性薬剤と共に含んでなる安定な泡生成量の発泡剤系の混和物を含んでなる、建物中の基材上に設置されたクリソタイル・アスベスト含有多孔質建材(ACM)を処理するための組成物。
【請求項15】
(a)(i)水、(ii)少なくとも約10重量パーセントの少なくとも1つのアンモニア、アルカリ金属、アルカリ土類金属のテトラフルオロボレートまたはヘキサフルオロシリケートの塩、または前記塩の混合物、(iii)約7重量パーセント迄の無機酸、無機酸塩、またはこれらの混合物、および(iv)式
【化4】

(ここで、RはC〜C16のアルキル基を表し、そしてxは1〜10の整数を表す)
により表される少なくとも1つの非イオン性ポリアルキルグリコシドを単独であるいは更に第2の非イオン性薬剤と共に含んでなる安定な泡を生成する量の発泡剤系を含んでなる混和物、を含んでなる、建物中の基材上に設置されたクリソタイル・アスベスト含有多孔質建材(ACM)を処理するための組成物。
【請求項16】
前記発泡剤系が少なくとも1つのポリアルキルグリコシドおよび1分子当り少なくとも約10個のアルコキシ基を有するポリアルコキシ化合物から選択される少なくとも1つの非イオン性薬剤の混合物を含んでなる請求項14あるいは15に記載の組成物。
【請求項17】
前記発泡剤系が本質的に少なくとも1つのポリアルキルグリコシドからなる請求項14あるいは15に記載の組成物。
【請求項18】
前記アルキルポリグリコシドが(a)の組成物の0.5〜3重量パーセントで存在し、そして前記第2の非イオン性発泡剤が(a)の組成物の0.5〜2重量パーセントで存在する請求項14あるいは15に記載の組成物。
【請求項19】
前記酸成分が約30〜約45重量パーセントの濃度で存在するリン酸を含んでなり、そしてフッ化物イオン源が前記組成物の全重量基準で約0.5〜約2重量パーセントの濃度で存在する、アンモニウムもしくはアルカリ金属のフルオロシリケートまたはフルオロボレートを含んでなる請求項14に記載の組成物。
【請求項20】
フッ化物源がアルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアンモニアのフルオロシリケートまたはフルオロボレートの塩から選択される請求項14に記載の組成物。
【請求項21】
(a)水、(b)少なくとも1つのアンモニア、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のヘキサフルオロシリケート塩またはこれらの混合物、および(c)前記組成物の重量基準で約7重量%までの無機酸、無機酸塩またはこれらの混合物を混和することにより前記組成物が誘導され、ここで、前記ヘキサフルオロシリケートが前記組成物の少なくとも約10重量パーセントで存在する請求項15に記載の組成物。
【請求項22】
(a)水、(b)少なくとも1つのアンモニア、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のテトラフルオロボレート塩またはこれらの混合物、および(c)前記組成物の重量基準で約7重量%までの無機酸、無機酸塩またはこれらの混合物を混和することにより前記組成物が誘導され、ここで、前記テトラフルオロボレートが前記組成物の少なくとも約10重量パーセントで存在する請求項15に記載の組成物。
【請求項23】
前記泡生成系が約0.75〜1.25重量パーセントの前記アルキルポリグリコシドの組成物と約0.75〜1.2重量パーセントの第2の非イオン性発泡剤の組成物を含んでなる請求項14あるいは15に記載の組成物。
【請求項24】
前記ポリグリコシドのアルキル鎖が約10.3の平均アルキル鎖長のC、C10、C12、C14およびC16の混合物である請求項14あるいは15に記載の組成物。
【請求項25】
第2の非イオン性発泡剤が存在し、そして前記薬剤が1モル当り40〜60個のアルキレンオキシド基を有する牛脂アミンエトキシレートである請求項24に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−502068(P2006−502068A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−563977(P2003−563977)
【出願日】平成14年1月25日(2002.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2002/002118
【国際公開番号】WO2003/064349
【国際公開日】平成15年8月7日(2003.8.7)
【出願人】(399016927)ダブリュー・アール・グレイス・アンド・カンパニー−コネチカット (63)
【Fターム(参考)】