説明

アセチルサリチル酸およびテアニンの水溶性共結晶を用いた静脈内用配合物

所定量のアセチルサリチル酸と、前記所定量のアセチルサリチル酸と会合する所定量のテアニンエナンチオマーとを含む水溶性のアスピリン−テアニン共結晶組成物。本発明の組成物は、以下の工程を含む方法によって作製され得る:(i)所定量のアセチルサリチル酸を提供する工程;(ii)所定量のテアニンエナンチオマーを前記所定量のアセチルサリチル酸に加えて、前記所定量のアセチルサリチル酸および前記テアニンエナンチオマーを含む混合物を形成する工程;(iii)前記混合物を湿らす工程;および、(iv)前記混合物を、乾燥した結晶集団を製造するために十分な長さの時間にわたってすり砕く工程。本発明の水溶性共結晶組成物は静脈内投与(好ましくは、ヒトへの静脈内投与)のために好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性のpHを有し、かつ、これまでに知られているアスピリンの水溶性配合物と比較して、高まった安定性および生物活性を提供する、アセチルサリチル酸およびテアニンの水溶性の共結晶製造物を使用する、アセチルサリチル酸を投与する新規な方法、より具体的には、新規な静脈内用配合物に関連する。
【背景技術】
【0002】
冠状動脈疾患が先進国における死亡の主な原因である。合衆国では、心臓発作がおよそ20秒毎に発生する。シクロオキシゲナーゼのアスピリン阻害がこれまで、急性冠状動脈症候群および急性心筋梗塞を呈する患者において有益であることが示されている。研究者は、砕かれた乳児用アスピリンの324mg、可溶性アスピリン(alka−seltzer)の325mg、および、完全に圧縮された非腸溶性被覆アスピリンの324mgについてのメジアン血小板阻害時間がそれぞれ、7.5分、7.5分および10.0分であったことを見出した。Schwertnerら、「血小板凝集時間および血漿中のサリチル酸濃度に対する種々のアスピリン配合物の影響」、Thromb Res、2006、118(4):529〜34。Epub、2005年11月18日。だが、7.5分以内に、個体はいくつかの潜在的に致死的な不整脈の1つ(例えば、心室頻脈、心室細動または完全心ブロックなど)で死亡し得る。新規な静脈内用アスピリン配合物を早期に投与すれば、数秒のうちに患者に利益をもたらし始めることができ、これに対して、従来型アスピリンの完全な利益は、大きな後遺症、合併症または死亡が生じるまでは効果が現れないかもしれない。急性心筋梗塞を呈する人では、静脈内アスピリンが早期の血小板凝集阻害のための好ましい経路である。アメリカ心臓協会の2007年の全国STEMI統計によれば、全国の急性期治療病院の75%が、STEMI(ST上昇型心筋梗塞)患者のための救命PCI(経皮的冠状動脈インターベンション)を行うことができない。そのようなものとして、急性心筋梗塞を呈する患者における改善された薬物動態学および薬力学を有する新規な静脈内アスピリンが明らかに、満たされることなく求められている。
【0003】
アスピリンは、プロスタノイド生合成、特に、トロンボキサンA2ならびにプロスタグランジンPGE2およびPGI2の生合成を阻害する。アスピリンは、血小板のシクロオキシゲナーゼ1(COX−1)を、529位のアミノ酸(セリン)のアセチル化、それにより、COX−1の触媒作用部位へのアラキドン酸の接近を立体障害により妨げることにより不可逆的に阻害する。COX−1を阻害することによって、血小板は、そうでない場合にはトロンボキサンA2に変換されると思われるが、血小板凝集(凝固カスケードにおける初期段階)を引き起こすプロスタグランジンH2を合成することができない。
【0004】
炎症プロセスの制御が生体分子機構のカスケードによって調節される。これらの機構が、2つの経路を介して、すなわち、プロスタグランジン類の形成をもたらすシクロオキシゲナーゼ経路と、ロイコトリエン類の形成をもたらすリポキシゲナーゼ経路とを介して生じる。アスピリンのような非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)はシクロオキシゲナーゼ経路を介して機能する。3つの主要なヒトリポオキシゲナーゼが存在する。それらは、アラキドン酸分子における二重結合の位置が異なる。これらのヒトリポキシゲナーゼには、5−リポキシゲナーゼ、12−リポキシゲナーゼおよび15−リポキシゲナーゼが含まれ、これらは、アラキドン酸のC−5位、C−12位およびC−15位における酸素の挿入をそれぞれ触媒する。得られるロイコトリエンおよびリポキシンは、様々なヒト疾患(例えば、喘息、アテローム性動脈硬化、乾癬および炎症性腸疾患など)に関連するシグナル伝達分子をもたらす。ロイコトリエン類およびリポキシン類が、様々なガンにおいて、非常に重要なシグナル伝達分子として関わっている。15−HLOが、結腸直腸ガンにおける重要な生物学的媒介因子であることがこれまでに示されており、一方、12−HLOが、膵臓ガン、乳ガンおよび前立腺ガンに関与する。5−HLOが前立腺ガンではアップレギュレーションされ、その阻害は細胞増殖を完全に停止させ、アポトーシスを誘導する。
【0005】
タイルノールが合衆国および他の西洋諸国におけるほとんどの薬物過剰服用を占めている。タイルノール(アセトアミノフェン)、スタチン類(コレステロール低下薬物)、抗レトロウイルス剤(HIVおよびAIDSのために服用される)およびアルコールの肝毒性が広く知られている。エール大学の研究者が今日では、アセトアミノフェンが肝臓損傷をマウスにおいて引き起こす機構への新しい洞察を提供しており、アスピリンがアセトミノフェンのこれらの毒性影響からの実質的な保護をもたらすことを明らかにしている。Wajahat Z.Mehal、マウスにおけるアセトアミノフェン誘導肝毒性はTlr9およびNalp3インフラマソームに依存する、Journal of Clinical Investigation、2009年1月26日。
【0006】
現在、静脈内用アスピリンは合衆国では使用について承認されていない。水におけるアスピリンの不良な溶解性、ならびに、サリチル酸および酢酸への血漿中でのその迅速な加水分解が、その静脈内使用を制限している。
【0007】
様々な試みが、許容され得る溶解性を有するアスピリン製剤を製造するためにこれまで行われているが、どれも、完全に満足できることは判明していない。
【0008】
例えば、(英国において流通する)Disprinと同様に、Bayer社のアスピリンを水に導入すると、水における溶解が不完全であることを示す濁った懸濁物の形成がもたらされる。Aspro Clear(これはオーストラリアおよびニュージーランドにおいて流通し、欧州全域で上市される)は、錠剤が泡立った後3分間以上、水における、濁りのないスノーグローブ(snow globe)効果を与える。
【0009】
アセチルサリチル酸リシン(これは、例えば、AspegicおよびAspisolとして販売される)が静脈内投与のために好適であることが広く知られている。静脈内投与のためのリシンの好適性は、塩基性アミノ酸とのアセチルサリチル酸の塩が形成され、この塩形態が、改善された溶解性を示すことに起因する。しかしながら、アセチルサリチル酸リシンは合衆国における使用についてFDAによって承認されていない。例えば、FDA報告書2006〜2008:Aspegic副作用報告#5076936−8(薬物投与後、患者が心肺停止および心室細動を発症し、死亡した);FDA報告書2006〜2008:Aspegic副作用報告#5379074−X(薬物投与後、患者が狭心症を経験し、回復した)を参照のこと。
【0010】
米国特許第5,665,388号および同第5,723,453号(Phykitt)は、本質的にナトリウムを含まない可溶性のアルカリ性アスピリン化合物を開示する。しかしながら、これらの参考文献に開示される配合物はいくつかの欠点に悩まされる。1つの欠点は、それらにおいて開示されるように、重炭酸塩の使用は、患者によって摂取されたときにガス形成を生じさせることである。別の欠点が、それらにおいて開示される組成物の比較的高いpH(すなわち、8.0を超えるpH)が薬物物質の急速な加水分解および不安定性をもたらし、したがって、短くなった貯蔵寿命をもたらすことである。
【0011】
米国特許第5,157,030号および同第5,776,431号(Galat)に開示される配合物の多くが2つの別個の組成物(混合物「A」および混合物「B」)として形成され、このことは、製造、包装および使用の観点から不都合である。そのうえ、これらの参考文献における配合物は混和され、その後、水にそのまま加えられる。混和された生成物が安定であることは何ら示されていない。さらに、これらのGalat特許に従って配合される組成物は、水に実質的に完全に溶解するために2分〜3分を要する。
【0012】
米国特許出願公開第2006/0292225号(Felix)に開示される方法に従って配合される組成物は、撹拌することを伴って水に完全に溶解するために15秒〜30秒を要する。
【0013】
テアニンは、アスピリンと同様に、健康によい効果を有することが知られている。テアニンは、チャノキ(Camellia sinensis)から得られる通常の茶葉およびキノコ(Xerocomus badius)に見出されるが、それら以外では自然界では稀である。予備的研究では、L−テアニンが脳におけるアルファ波生成を促進させることが示唆される。それにより、覚醒している、注意活発なリラックスした身体的および精神的な状態が達成される。このことは、ストレス管理におけるテアニンの有効性を明らかにする。L−テアニンは嗜眠状態を引き起こさず、また、人の運動技能を損なわない。L−テアニンは、カフェインの負の副作用に対して拮抗的に働くこと、脳におけるドーパミンおよびセロトニンの濃度を増大させること、カフェインの使用にしばしば付随する高血圧および睡眠障害を軽減することにおいて効果的であること、ならびに、月経前症候群の症状を減少させることが示されている。実験室の研究では、テアニンが、GABA(γ−アミノ酪酸)、すなわち、脳における重要な阻害性神経伝達物質のレベルを増大させることによってこれらの効果を生じさせることが示されている。
【0014】
テアニンが免疫系を支え、血漿中の総コレステロール、コレステロールエステルおよび超低密度リポタンパク質コレステロールを低下させ得ることが報告されている。
【0015】
アルコール代謝および肝臓毒性に対するテアニンの効果に関する研究では、テアニンがアルコール性肝臓傷害に対して効果的であることが示されている。
【0016】
テアニンはまた、ニューロンを過剰なグルタメートから保護する潜在能力を有する。グルタメートは、いくつかの疾患状態(例えば、筋萎縮性側索硬化症および脳血管性認知症)により、また、卒中または物理的傷害とともに生じるような脳傷害により過剰な量で放出され得る不可欠な脳の化学物質である。テアニンは、細胞へのグルタミン進入をテアニンおよびグルタミンの立体化学的構造における類似性のために阻止することによってこの損傷から保護し得る。
【0017】
アミノ酸のグルタミンおよびグルタミン酸の直接的代謝産物、テアニンは、グルタミンの窒素のそのエチル−N−アルキル化によって異なるものにされる。アミノ酸スカフォールドグルタミンおよびその代謝産物のグルタミン酸が、テアニンの輸送に関して重要な役割を担う全体的なアルファアミノ酸コア構造を提供し、一方、グルタミンのエチル−N−アルキル化がその輸送および薬理学的性質の両方を提供する。グルタミンの構造およびグルタミン酸の構造と、テアニンとの類似性は、それらの電荷が類似するならば、テアニンが、グルタミンおよびグルタミン酸のすべての生理学的反応についての基質競合剤および生成物競合剤であることを可能にする。したがって、グルタミンまたはグルタミン酸が代謝産物である場合は常に、テアニンは、標的活性への活性化、阻害または付加を行うことができる。このことが、テアニンの効果がこれ程までに広がっている理由である。テアニンは、薬理学的活性に関してグルタミン模倣体である。グルタミンは窒素取り込みのためのATPの著しい消費体であり、このことにより、テアニンの抗ガン活性および抗HIV活性の一部が説明されるかもしれない。N固定が阻害されるならば、細胞またはウイルスの構造成長もまた阻害される。
【0018】
アミノ酸のグルタミンおよびグルタミン酸は、テアニンと共通する分子的要素を有する。共通する分子的要素のいくつかの例が、pI(等電点)、極性、ヒドロパシー指数、および、テアニンに対する代謝産物標的としてのそれらの役割を支える要素である。これらの重なる分子的性質は、テアニンがグルタミンまたはグルタミン酸のアナログとして機能することを可能にする。これらの性質は、生理学的条件下でのテアニンの静電的プロファイルおよび、関連するコアアミノ酸(グルタミンおよびグルタミン酸)と共通する原子を含むその全体的な構造的幾何学に関連する。グルタミンおよびグルタミン酸の一致した原子配置および相対的な静電的構造は、それらがテアニンに対する標的として役立つことを可能にする。標的にはまた、それらが効果的に結合する酵素、タンパク質、受容体または他の高分子が含まれる。グルタミン酸の場合、C5またはγ−カルボキシルまでの等配電子的(isosteric)構造を構成する原子が、テアニンと同じ配置である。グルタミンの場合、グルタミンの等配電子(isosteric)原子および等電子(isoelectronic)原子が、水素がグルタミンのカルボキサミド窒素においてエチル(−C)によって置換されているテアニンの原子と等しい。
【0019】
グルタチオンは、薬物および化学物質に対する肝臓の第一線防御である。グルタチオンが、薬物および化学物質に対抗してガン細胞によって使用される。ガン細胞はグルタチオンを使用して、ドキソルビシンを解毒し、この薬物を細胞外に送り届ける。テアニンは、グルタメートに対するその構造的類似性のためにこのプロセスを妨害することができる。グルタミン酸、または、グルタメートは、グルタチオン(薬物解毒因子)の構成成分の1つである。テアニンはグルタミン酸に似ているので、ガン細胞はテアニンを取り込み、誤って使用して、グルタチオンを作製する。しかし、ガン細胞がテアニンを用いて作製するグルタチオンは、本来のグルタチオンのようには解毒しない。代わりに、このテアニン型グルタチオンはガン細胞の解毒能力を阻止するようである。
【0020】
さらに、ドキソルビシンのガン殺傷効果を、健康な組織を傷つけることなく高めることに加えて、テアニンはまた、ドキソルビシンが健康な組織に入らないようにする。ドキソルビシンを使用することの欠点の1つが心臓に対するその毒性であるので、このことは、大きな加わった利益である。ガン化学療法に対する補助剤としてのテアニンの潜在能力が、テアニン(緑茶における主要アミノ酸)がドキソルビシン(DOX)の抗腫瘍活性を高め、DOX誘導の副作用における増大を伴わないことを確認した研究者のサズカ・ヤスユキによって提案された。サズカは、テアニンの作用が、グルタメート輸送体の阻害によるグルタメート取り込みにおける低下、ならびに、グルタチオンの還元および細胞からのDOXエクスポートのためであると仮定した。テアニンは、DOXの抗腫瘍活性だけでなく、シスプラチンおよびイリノテカン(CPT−11)の抗腫瘍活性もまた高める。本質的に、サズカは、テアニンが、グルタメート輸送体機構およびグルタチオン輸送体機構を阻止することによってガン細胞からのドキソルビシン(アドリアマイシン)のエクスポートを阻止し得ることを見出した;ガン細胞内における薬物の上昇したレベルが腫瘍を強く阻害する。Sadzuka Yら、「アドリアマイシンの抗腫瘍活性に対する、新規な生化学的調節剤としてのテアニンの効果」、Cancer Letters、1996、105(2):203〜209;Sadzuka Yら、「緑茶によるガン化学療法の調節」、Clinical Cancer Research、1998、4(1):153〜156;Sadzuka Yら、「ドキソルビシン誘導の抗腫瘍活性および多剤耐性逆転に対する茶成分の効力」、Toxicology Letters、2000、114(1−3):155〜162;Sadzuka Yら、「イダルビシン誘導の抗腫瘍活性および骨髄抑制のテアニン(茶の成分)による改善」、Cancer Letters、2000、158(2):119〜24;Sadzuka Yら、「グルタメート輸送体の阻害によるドキソルビシンの活性の強化」、Toxicology Letters、2001、123(2−3):159〜67;Sadzuka Yら、「ドキソルビシンの抗腫瘍活性に対するジヒドロカイニン酸の効果」、Cancer Letters、2002、179(2):157〜163。
【0021】
様々な治療化合物、例えば、アスピリンなどは、結晶形態において最も安定であるが、不良な水溶性および遅い溶解速度を示し得る。これらの特性は、活性な医薬成分(API)のバイオアベイラビリティーを低下させ、それにより、吸収を遅らせる傾向を与える。
【0022】
共結晶は、2つ以上の分子が周囲条件下で固体の結晶形態において分子レベルで(結合するのではなく)会合する多成分結晶である。共結晶は、APIの化学的特性および/または物理的特性を、共有結合の作製または破壊を必要とすることなく改変する機会を与えるので、製薬業界にとって魅力的である。医薬用共結晶において、APIの分子構造は変化しない。このことは、新しい形態の合理化された規制承認のための重要な意味合いを有する。まさにそれらの本質により、API、すなわち、外部水素結合部分を含有する分子は共結晶を形成しやすい。医薬用共結晶は、改善された物理的特性(例えば、溶解性、安定性、吸湿性および溶解速度など)を有する形態のAPIを与える。物理的特性は分子構造に単に依存するだけではない。物理的特性はまた、超分子化学および結晶構造に対するその影響に大きく依存する。超分子合成および結晶工学の概念を医薬用共結晶の開発に適用することにより、薬物開発および薬物送達に関連する多くの機会が提供される。
【0023】
したがって、これまでに知られている水溶性の鎮痛組成物と比較して、高まった安定性および生物活性を有し、かつ、アスピリンおよびテアニンの両方の健康によい効果を送達する水溶性のアスピリン−テアニン共結晶組成物が求められている。
【0024】
本発明はこれらの医学的要求および他の医学的要求を満たし、先行技術において見出される欠点を克服する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】米国特許第5,665,388号
【特許文献2】米国特許第5,723,453号
【特許文献3】米国特許第5,157,030号
【特許文献4】米国特許第5,776,431号
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/0292225号
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】Schwertnerら、「血小板凝集時間および血漿中のサリチル酸濃度に対する種々のアスピリン配合物の影響」、Thromb Res、2006、118(4):529〜34。Epub、2005年11月18日
【非特許文献2】Wajahat Z.Mehal、マウスにおけるアセトアミノフェン誘導肝毒性はTlr9およびNalp3インフラマソームに依存する、Journal of Clinical Investigation、2009年1月26日
【非特許文献3】Sadzuka Yら、「アドリアマイシンの抗腫瘍活性に対する、新規な生化学的調節剤としてのテアニンの効果」、Cancer Letters、1996、105(2):203〜209
【非特許文献4】Sadzuka Yら、「緑茶によるガン化学療法の調節」、Clinical Cancer Research、1998、4(1):153〜156
【非特許文献5】Sadzuka Yら、「ドキソルビシン誘導の抗腫瘍活性および多剤耐性逆転に対する茶成分の効力」、Toxicology Letters、2000、114(1−3):155〜162
【非特許文献6】Sadzuka Yら、「イダルビシン誘導の抗腫瘍活性および骨髄抑制のテアニン(茶の成分)による改善」、Cancer Letters、2000、158(2):119〜24
【非特許文献7】Sadzuka Yら、「グルタミン酸輸送体の阻害によるドキソルビシンの活性の強化」、Toxicology Letters、2001、123(2−3):159〜67
【非特許文献8】Sadzuka Yら、「ドキソルビシンの抗腫瘍活性に対するジヒドロカイニン酸の効果」、Cancer Letters、2002、179(2):157〜163
【発明の概要】
【0027】
したがって、結晶性構造を有し、かつ、これまでに知られている水溶性の鎮痛組成物と比較して、高まった安定性および生物活性を有する水溶性のアスピリン−テアニン共結晶組成物を提供することが、本発明の目的の1つである。
【0028】
本発明のさらなる目的が、上記の特徴を有し、かつ、迅速に水に溶解し得る水溶性のアスピリン−テアニン共結晶組成物を提供することである。
【0029】
なおさらに、本発明のさらなる目的が、上記の特徴を有し、かつ、抗炎症治療のために要求される比較的大きい投薬量で使用することができる水溶性のアスピリン−テアニン共結晶組成物を提供することである。
【0030】
中性のpHを有し、高まった安定性および生物活性を提供し、かつ、様々な疾患および医学的状態を治療するために好適である水溶性のアスピリン−テアニン共結晶組成物をヒトにおいて静脈内投与する方法を提供することが、本発明の目的の1つである。
【0031】
本発明のさらに別の目的が、上記の特徴を有し、かつ、血流へのアセチルサリチル酸の迅速な送達を可能にする、静脈内投与のために好適な水性のアスピリン−テアニン共結晶配合物を提供することである。
【0032】
なおさらに、本発明のさらなる目的が、上記の特徴を有し、かつ、従来の経口アスピリンにより生じ得る胃腸の不調および/またはびらん、出血、あるいは、胃腸管の穿孔を引き起こすことなく長期間にわたって使用することができる、静脈内投与のために好適な水性のアスピリン−テアニン共結晶配合物を提供することである。
【0033】
本発明の別の目的が、上記の特徴を有し、かつ、血流への治療量のテアニンの送達を可能にする、静脈内投与のために好適な水性のアスピリン−テアニン共結晶配合物を提供することである。
【0034】
本発明のこれらの目的および他の目的が、所定量のアセチルサリチル酸と、前記所定量のアセチルサリチル酸と会合する所定量のテアニンエナンチオマーとを含む水溶性のアスピリン−テアニン共結晶組成物を提供することによって本発明の1つの実施形態に従って達成され、前記共結晶組成物は、前記所定量のアセチルサリチル酸および前記所定量のテアニンエナンチオマーを物理的に一緒にして混合物にし、この混合物を所定量の湿潤化剤により湿らし、この組合せ物を、乾燥した結晶集団を製造するために十分な長さの期間にわたってすり砕くことによって形成される。いくつかの実施形態において、用いられる湿潤化剤はメタノールである
【0035】
本発明による実施形態による配合物は、有効成分全体が、高まった安定性および生物活性を有する十分に定義される易流動性の結晶性固体であることにより、アスピリンを加水分解から保護する。この固体は、水への溶解度が約10mg/mLであり、透明なアスピリン溶液を混合後すぐにもたらす。
【0036】
本発明の実施形態による組成物は、とりわけ、従来のアスピリンと比較したとき(従来のアスピリンはほんの非常にわずかにしか可溶性でなく、1部の溶質あたり約1,000部〜10,000部の水を要求する)、水に非常に可溶性であり、1部の溶質あたり約1部未満の水を要求する。
【0037】
本発明の1つの実施形態によれば、水溶性のアスピリン−テアニン共結晶組成物を作製する方法は、(i)所定量のアセチルサリチル酸を提供し;所定量のテアニンエナンチオマーを前記所定量のアセチルサリチル酸に加えて、前記所定量のアセチルサリチル酸およびテアニンの前記エナンチオマーを含む混合物を形成する工程;(ii)前記混合物を湿らす工程;および、(iii)前記混合物を、乾燥した結晶集団を製造するために十分な長さの時間にわたってすり砕く工程を含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、メタノールが、混合物を湿らす工程で用いられる。これらの実施形態のいくつかにおいて、乾燥した結晶集団は少なくとも約9.0mg/mLの水への溶解度を有する。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態において、アセチルサリチル酸の前記所定量は、前記所定量のアセチルサリチル酸および前記所定量のテアニンエナンチオマーの前記混合物の約5重量%〜95重量%の範囲に含まれる。他の実施形態において、アセチルサリチル酸の前記所定量は、前記所定量のアセチルサリチル酸および前記所定量のテアニンエナンチオマーの前記混合物の約15重量%〜85重量%の範囲に含まれる。さらなる実施形態において、アセチルサリチル酸の前記所定量は前記所定量のアセチルサリチル酸および前記所定量のテアニンエナンチオマーの前記混合物の約50重量%である。
【0039】
これらの実施形態のいくつかにおいて、テアニンエナンチオマーはL型である。他の実施形態において、テアニンエナンチオマーはD型である。さらなる実施形態において、テアニンエナンチオマーはDL型である。
【0040】
これらの実施形態のいくつかにおいて、得られるアスピリン−テアニン共結晶組成物は、アスピリン−テアニン共結晶溶液を形成するために溶媒に溶解される。これらの実施形態のいくつかにおいて、溶媒は水である。これらの実施形態のいくつかにおいて、得られるアスピリン−テアニン共結晶溶液は、生理学的であるpHを有する。これらの実施形態のいくつかにおいて、得られるアスピリン−テアニン共結晶溶液はpHを約7.35〜約7.45の範囲に有する。これらの実施形態のいくつかにおいて、得られるアスピリン−テアニン共結晶溶液は、約7.4であるpHを有する。
【0041】
本発明の別の実施形態によれば、水溶性のアスピリン−テアニン共結晶組成物を作製する方法は、(i)所定量のアセチルサリチル酸を提供する工程;(ii)所定量のテアニンのエナンチオマーを前記所定量のアセチルサリチル酸に加えて、前記所定量のアセチルサリチル酸およびテアニンの前記エナンチオマーを含む混合物を形成する工程;(iii)前記組合せ物を所定量の溶媒に溶解して、溶液を形成する工程;および、(iv)前記溶液を、乾燥した結晶集団を製造するために十分な長さの時間にわたって乾燥する工程を含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、乾燥した結晶集団は少なくとも約9.4mg/mLの水への溶解度を有する。これらの実施形態のいくつかにおいて、水が溶媒として用いられる。これらの実施形態のいくつかにおいて、乾燥する工程がローターリーエバポレーションプロセスによって行われる。
【0042】
これらの実施形態のいくつかにおいて、テアニンエナンチオマーはL型である。これらの実施形態のいくつかにおいて、テアニンエナンチオマーはD型である。これらの実施形態のさらなるものにおいて、テアニンエナンチオマーはDL型である。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態において、テアニンエナンチオマーはその上にさらに炭水化物官能基を含む。これらの実施形態において、炭水化物官能基はL−立体配置またはD−立体配置であり得る。これらの実施形態において、用いられる炭水化物は、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖類または多糖類であり得る。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態において、テアニンエナンチオマーはその上にさらにアミノ酸官能基を含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、アミノ酸官能基はジペプチドである。
【0045】
本発明を特徴づける新規性の様々な特徴が、本開示に添付され、かつ、本開示の一部を形成する請求項において具体的に指摘される。本発明、その使用によって得られるその実施上の利点および特定の目的をより良く理解するために、本発明の好ましい実施形態を例示する添付されている図面および記述物が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に従ってアセチルサリチル酸およびL−テアニンによって形成される結晶性の共結晶製造物の、2つの倍率で撮影された顕微鏡写真を示す。
【図2】本発明の実施形態に従ってアセチルサリチル酸およびL−テアニンによって形成される共結晶の示差走査熱量測定法サーモグラムである。
【図3】本発明の実施形態に従ってアセチルサリチル酸およびL−テアニンによって形成される共結晶のX線粉末回折パターンである。
【図4】本発明の実施形態に従ってアセチルサリチル酸およびL−テアニンによって形成される共結晶の赤外吸収スペクトルである。
【図5】本発明の実施形態に従ってアセチルサリチル酸およびL−テアニンによって形成される共結晶のラマンスペクトルである。
【図6】アセチルサリチル酸およびD−テアニンによって形成される結晶性の共結晶製造物の、2つの倍率で撮影された顕微鏡写真を示す。
【図7】本発明の実施形態に従ってアセチルサリチル酸およびD−テアニンによって形成される共結晶の示差走査熱量測定法サーモグラムである。
【図8】本発明の実施形態に従ってアセチルサリチル酸およびD−テアニンによって形成される共結晶のX線粉末回折パターンである。
【図9】本発明の実施形態に従ってアセチルサリチル酸およびD−テアニンによって形成される共結晶の赤外吸収スペクトルである。
【図10】本発明の実施形態に従ってアセチルサリチル酸およびD−テアニンによって形成される共結晶のラマンスペクトルである。
【図11】アセチルサリチル酸およびDL−テアニンによって形成される結晶性の共結晶製造物の、2つの倍率で撮影された顕微鏡写真を示す。
【図12】本発明の実施形態に従ってアセチルサリチル酸およびDL−テアニンによって形成される共結晶の示差走査熱量測定法サーモグラムである。
【図13】本発明の実施形態に従ってアセチルサリチル酸およびDL−テアニンによって形成される共結晶のX線粉末回折パターンである。
【図14】本発明の実施形態に従ってアセチルサリチル酸およびDL−テアニンによって形成される共結晶の赤外吸収スペクトルである。
【図15】本発明の実施形態に従ってアセチルサリチル酸およびDL−テアニンによって形成される共結晶のラマンスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、先行技術によって未解決のままにされている必要性を、様々な媒体により個体に容易に投与することができる、アセチルサリチル酸およびL−テアニンによって形成される可溶性の共結晶を合成するための方法を提供することによって満たす。
【0048】
本発明の実施形態では、L−テアニン(稀なアミノ酸)が用いられる。L−テアニンは水溶性の白色の結晶性粉末であり、3081−61−6のChemical Abstracts Service(CAS)登録番号およびGRAS区分(GRAS通知番号:GRN000209)を有する。L−テアニンは、実験式C14、174.20の分子量、および、2−アミノ−4−(エチルカルバモイル)酪酸の系統名を有する。テアニンは、5−N−エチルグルタミンであるので、(水素置換)CH2−CH3(エチル)基によってグルタミンとは異なる。N−エチルはその活性な性質をテアニンに与える。
【0049】
本発明の実施形態には、テアニン(5−N−エチル−グルタミン)とのアセチルサリチル酸の共結晶が含まれる。さらに、本発明の実施形態による組成物に含有されるテアニンは、L型、D型、DL型のいずれかであり得る。
【0050】
本発明の実施形態には、アミノ酸スカフォールドグルタミンおよび/またはグルタミン酸が含まれ得る。
【0051】
本発明による実施形態において利用されるエナンチオマーの限定されない例には、テアニンのD−エナンチオマー、D−Glu(NHEt)−OH、2 Rエナンチオマー;テアニンのL−エナンチオマー、L−Glu(NHEt)−OH、2 Rエナンチオマー;テアニンのDL−エナンチオマー、DL−Glu(NHEt)−OH、2 Rエナンチオマー;テアニンのD−エナンチオマー、D−Gln(Et)−OH、2Rエナンチオマー;テアニンのL−エナンチオマー、L−Gln(Et)−OH、2Rエナンチオマー;およびテアニンのDL−エナンチオマー、DL−Gln(Et)−OH、2Rエナンチオマーが含まれる。本発明の実施形態による組成物における、テアニンのD−エナンチオマー、D−Glu(NHEt)−OH、2 Rエナンチオマー、および、D−Gln(Et)−OH、2Rエナンチオマー;テアニンのL−エナンチオマー、L−Glu(NHEt)−OH、2 Rエナンチオマー、および、L−Gln(Et)−OH、2Rエナンチオマー;ならびに、テアニンのDL−エナンチオマー、DL−Glu(NHEt)−OH、2Rエナンチオマー、および、DL−Gln(Et)−OH、2Rエナンチオマーの純度百分率は、99+%;99+% 2 Rエナンチオマーである。99+%;99+% ee%(2R)におけるD−エナンチオマーは、最初の尺度が全体的な化学的純度(hplc)であり、2番目の尺度が、「パーセントエナンチオマー過剰率」として知られているee%(2R)である。ee%は、それらのジアステレオマー誘導体の比率によって定義される[%R−%S/%R]100に等しいキラル純度の尺度である。純度百分率は、どのようなテアニンまたはそのどのようなエナンチオマーのD−立体配置またはL−立体配置のいずれにおいても90%から99.99%にまで及び得る。
【0052】
本発明の実施形態には、アセチルサリチル酸と、L−テアニンのアルファ変異体との共結晶組成物、アセチルサリチル酸と、D−テアニンのアルファ変異体との共結晶組成物、および、アセチルサリチル酸と、DL−テアニンのアルファ変異体との共結晶組成物が含まれ得る。
【0053】
本発明による実施形態において使用されるアルファ変化体の限定されない例には、L−ノルテアニン、D−ノルテアニン、DL−ノルテアニン、L−ホモテアニン、D−ホモテアニン、DL−ホモテアニン、L−ビスホモテアニン、D−ビスホモテアニンおよびDL−ビスホモテアニン、すなわち、テアニンのそれぞれのC−1同族アナログ、C+1同族アナログおよびC+2同族アナログが含まれ得る。
【0054】
本発明の実施形態によれば、テアニンのL−アルファアミノ酸、D−アルファアミノ酸、DL−アルファアミノ酸、ならびに、それらの側鎖炭素同族体(ノル同族体、ホモ同族体およびビス同族体)はR官能基を有することができ、この場合、R1は、線状アルキル基、環状アルキル基または分岐アルキル基およびそれらの誘導体;線状アルケニル基、環状アルケニル基または分岐アルケニル基およびそれらの誘導体;ならびに芳香族基およびその誘導体を含有することができる。本発明の実施形態において、芳香族基はアリール基であり得る。
【0055】
本発明の実施形態によれば、テアニンのベータアミノ酸の単一エナンチオマー(SおよびR)およびラセミ形態(S,R−混合物)はR官能基を有することができ、この場合、R1は、線状アルキル基、環状アルキル基または分岐アルキル基およびそれらの誘導体;線状アルケニル基、環状アルケニル基または分岐アルケニル基およびそれらの誘導体;ならびに芳香族基およびその誘導体を含有することができる。本発明の実施形態において、芳香族基はアリール基であり得る。
【0056】
本発明の実施形態には、アセチルサリチル酸と、N−置換されたR1官能基[C4またはガンマ−CH2−C(O)−NR1]が、テアニンのアナログ型のすべてを構成する線状アルキル基、環状アルキル基または分岐アルキル基およびそれらの誘導体;線状アルケニル基、環状アルケニル基または分岐アルケニル基およびそれらの誘導体;ならびに芳香族基およびその誘導体を含有し得るテアニンのアルファアミノ酸およびベータアミノ酸のエナンチオマー、L−異性体およびD−異性体、D,L−ラセミ混合物、S−異性体およびR−異性体、S,R−ラセミ混合物、すべての回転異性体、互変異性体、塩形態、ならびに、水和物との共結晶組成物が含まれ得る。本発明の実施形態において、芳香族基はアリール基であり得る。
【0057】
水溶液は、水が溶解媒体または溶媒であり、かつ、コロイド状固体を本質的に含まない溶液である。溶解された結晶は真溶液を形成し、透析でのように半透膜を通り抜けることができ、これに対して、コロイドは半透膜を通り抜けることができない。本発明の実施形態による組成物は、水に溶解されるとき、真溶液を形成し、半透膜を通り抜けることができ、透析において使用することができる。本発明の実施形態において使用することができる水溶液の例には、純水、および、下記のものが含まれる:D5W、D10W、D50、D5 0.3%NS、D5 0.45%NS、0.45%NS、D5 0.9%NS、0.9%NS、3%NaCl、D5RL、LR、NaHCOおよびキシリトールの各溶液。
【0058】
本発明の実施形態によるアセチルサリチル酸−テアニン共結晶組成物を水に溶解することによって形成される溶液はコロイド状粒子を含有しておらず、したがって、コロイド状分散物に特徴的な強いチンダル効果を示さない。
【0059】
用語「好適な」は、この用語が本明細書中で使用される場合、溶液が、不都合な副作用を引き起こすことなく、ヒトに静脈内投与され得るという事実を一般には示すことを理解されるべきである。
【0060】
患者に投与されるアセチルサリチル酸の効果的な量(すなわち、治療されている疾患または状態に関して有益な効果を有する量)は、性別、年齢、体重、体液状態、治療されている疾患または状態の重篤度、肝臓酵素機能、および、サリチラートの腎臓排出(これは尿のpHおよびサリチラート類のタンパク質結合に結果的には依存し、濃度依存的である)によって影響される。
【0061】
用語「炭水化物」は、この用語が本明細書中で使用される場合、(CHO)の一般式(式中、nは3以上の任意の数字である)を有する、多数のヒドロキシル基により置換されるアルデヒド類またはケトン類である単純な有機化合物を一般には示す。
【0062】
単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖類、多糖類、ジペプチド類およびこれらの組合せを、本発明の実施形態によるアセチルサリチル酸−テアニン共結晶組成物とともに使用することができ、具体的には、下記の実施例1〜実施例8において適用される工程に従って形成されるそのような共結晶とともに使用することができる。
【0063】
本発明の実施形態による組成物は、三糖のテアンデロース(G6−α−グルコシルスクロース)(ハチミツにおいて特異的に見出される物質)を含有することができる。
【0064】
本発明の実施形態において使用することができる他の天然糖類の限定されない例には、アベクオース、アロース、アルロース、アルトロース、アピオース、アラビノース、ビートオリゴ糖類、ビフルコース、デオキシリボース、デキストロース(D−グルコース)、エルロース、エリトロース、エリトルロース、フルクトース(レブロース)、フコース、フクロース、ガラクトース、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオースなど、グロース、ハマメロース、イヌロビオース、イヌロトリオース、イヌロテトラオース、イソマルトース、イソマルトトリオース、イソマルトテトラオース、イソマルトペンタオース、イソマルツロース(パラチノース)、ケストース、コージビオース、ラクトース、ラクツロース、ラミナリビオース、リキソース、マンノース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオースなど、マルツロース、メレジトース、メリビオース、メトース、ニゲロース、ニストース、パノース、パラトース、プリメベロース、プシコース、ラフィノース、ラムノース、リボース、リブロース、ルチノース、ソルビノース、ソルボース、ダイズオリゴ糖類、スタキオース、スクロース、タガトース、タロース、テアンデロース、トレオース、トレハロース、ツラノース、キシロビオース、キシロトリオースなど、キシロースまたはキシルロースが含まれ、これらのすべてが本発明の実施形態による組成物においてアセチルサリチル酸ととともに使用することができる。本発明の実施形態において使用される炭水化物はそれらのそれぞれのD−立体配置またはL−立体配置のものであり得る。
【0065】
特定の実施形態において、使用することができる糖アルコール類の限定されない例には、アリトール、アラビトール、エリトリトール、ガラクチトール、グリセロール、グリコール、イジトール、イノシトール、イソマルト、ラクチトール、マルトテトラオール、マルトトリオール、マンニトール、リビトール、ソルビトール、タリトール、トレイトールおよびキシリトールが含まれる。本発明による実施形態において使用される糖アルコール類はそれらのそれぞれのD−立体配置またはL−立体配置のものであり得る。これらの糖アルコール類は、低い血糖指数を有するという利点を有する。例えば、マンニトールは、増大した頭蓋内圧を処置するために使用されている。下記のクリスタロイドを本発明の実施形態による配合物において使用することができる:D5W、D10W、D50、D5 0.3%NS、D5 0.45%NS、0.45%NS、D5 0.9%NS、0.9%NS、3%NaCl、D5RL、LR、NaHCOおよびキシリトールの各溶液。
【0066】
本発明の実施形態による配合物は水溶液に完全に溶解させることができ、非経口経路により投与することができる。下記の注入液を本発明の実施形態による配合物において使用することができる:D5W、D10W、D50、D5 0.3%NS、D5 0.45%NS、0.45%NS、D5 0.9%NS、0.9%NS、3%NaCl、D5RL、LR、NaHCOおよびキシリトールの各溶液。
【0067】
次に、本発明が実施例によってさらに詳しく記載されるが、本発明の範囲をこれらの実施例だけに限定することは意図されない。下記は、本発明による水溶性のアセチルサリチル酸組成物の例示的な配合物である。
【実施例1】
【0068】
本発明の共結晶製造物を、352mgのアセチルサリチル酸および340mgのL−テアニンを量り、これらの固体をめのう乳鉢に移すことによって調製した。これらの固体を500μLのメタノールにより湿らし、乾燥した結晶集団が得られるまで乳棒を使って手ですり砕いた。この製造物を、示差走査熱量測定法(「DSC」;図2を参照のこと)、X線粉末回折(「XRPD」;図3を参照のこと)、減衰全反射サンプリングによるフーリエ変換赤外分光法(「FTIR−ATR」;図4を参照のこと)、および、拡散反射サンプリングによるラマン分光法(「RAM−DR」;図5を参照のこと)を使用して特徴づけた。加えて、117mgの共結晶製造物は13mLの水に溶解し、そして水への溶解度がおよそ9mg/mLになることが見出された。
【実施例2】
【0069】
実施例1において形成される水溶液を蒸発皿に注ぎ、完全に乾燥させた。固体製造物のDSCサーモグラムが図2に反映され、XRPDパターンが図3に反映され、FTIR−ATRスペクトルが図4に反映され、RAM−DRスペクトルが図5に反映される。
【実施例3】
【0070】
1.721gのアセチルサリチル酸および1.667gのL−テアニンを量り、大きいガラス乳鉢に移した。これらの固体を20mLのメタノールにより湿らし、乾燥した結晶集団が得られるまで乳棒を使って手ですり砕いた。固体製造物のDSCサーモグラムが図2に反映され、XRPDパターンが図3に反映され、FTIR−ATRスペクトルが図4に反映され、RAM−DRスペクトルが図5に反映される。752mgの共結晶製造物は80mLの水に溶解し、そして水への溶解度が9.4mg/mLになることが見出された。
【0071】
水溶液のアリコートを、(a)pH7.4のトロメタミン緩衝液、(b)0.9%生理的食塩水溶液、(c)7.5%重炭酸ナトリウム溶液、(d)5%注射用デキストロースおよび(e)50%注射用デキストロースにより1:1(v/v)で別々に希釈した。これらの溶液は、6日の期間にわたって物理的に未変化のままであることが認められた。このことは、共結晶製造物のこれらの注入溶液のそれぞれとの相溶性を示している。
【実施例4】
【0072】
435mgのアセチルサリチル酸および424mgのL−テアニンを200mLの丸底フラスコに計り取り、100mLの水に溶解した。その後、得られた透明な溶液を、乾燥した結晶集団が得られるまでロータリーエバポレーションを使用して乾燥した。この固体製造物のDSCサーモグラムが図2に反映され、XRPDパターンが図3に反映され、FTIR−ATRスペクトルが図4に反映され、RAM−DRスペクトルが図5に反映される。752mgの共結晶製造物は80mLの水に溶解し、そして水への溶解度が9.4mg/mLになることが見出された。
【実施例5】
【0073】
本発明の共結晶製造物を、353mgのアセチルサリチル酸および341mgのD−テアニンを量り、これらの固体をめのう乳鉢に移すことによって調製した。これらの固体を500μLのメタノールにより湿らし、乾燥した結晶集団が得られるまで乳棒を使って手ですり砕いた。この共結晶製造物の代表的な顕微鏡写真が図6に示される。この製造物を、示差走査熱量測定法(DSC;図7を参照のこと)、X線粉末回折(XRPD;図8を参照のこと)、減衰全反射サンプリングによるフーリエ変換赤外分光法(FTIR−ATR;図9を参照のこと)、および、拡散反射サンプリングによるラマン分光法(RAM−DR;図10を参照のこと)を使用して特徴づけた。加えて、68mgの共結晶製造物は7.5mLの水に溶解し、そして水への溶解度がおよそ9mg/mLになることが見出された。
【実施例6】
【0074】
363mgのアセチルサリチル酸および354mgのD−テアニンを150mLのビーカーに計り取り、100mLの水に溶解した。その後、得られた透明な溶液を、乾燥した結晶集団が得られるまでロータリーエバポレーションを使用して乾燥した。この固体製造物のDSCサーモグラムが図7に反映され、XRPDパターンが図8に反映され、FTIR−ATRスペクトルが図9に反映され、RAM−DRスペクトルが図10に反映される。
【実施例7】
【0075】
本発明の共結晶製造物を、368mgのアセチルサリチル酸、179mgのL−テアニンおよび178mgのD−テアニンを量り、これらの固体をめのう乳鉢に移すことによって調製した。これらの固体を500μLのメタノールにより湿らし、乾燥した結晶集団が得られるまで乳棒により手で粉砕した。この共結晶製造物の代表的な顕微鏡写真が図11に示される。この製造物を、示差走査熱量測定法(DSC;図12を参照のこと)、X線粉末回折(XRPD;図13を参照のこと)、減衰全反射サンプリングによるフーリエ変換赤外分光法(FTIR−ATR;図14を参照のこと)、および、拡散反射サンプリングによるラマン分光法(RAM−DR;図15を参照のこと)を使用して特徴づけた。加えて、67mgの共結晶製造物は9.5mLの水に溶解し、そして水への溶解度がおよそ7mg/mLになることが見出された。
【実施例8】
【0076】
358mgのアセチルサリチル酸、175mgのL−テアニンおよび174mgのD−テアニンを150mLのビーカーに計り取り、100mLの水に溶解した。その後、得られた透明な溶液を、乾燥した結晶集団が得られるまでロータリーエバポレーションを使用して乾燥した。この製造物のDSCサーモグラムが図12に反映され、XRPDパターンが図13に反映され、FTIR−ATRスペクトルが図14に反映され、RAM−DRスペクトルが図15に反映される。
【0077】
固体の粒子が水に分散されるが、溶解されないとき、チンダル効果が観測される。そのような効果が、Bayer社アスピリン、DisprinおよびAspro Clearの分散物において強く観測される。そのような強い効果が、水において、または、本発明の実施形態による共結晶組成物が水に溶解されるときには何ら観測されない。コロイドは、サイズが1nm〜1000nmの範囲にある粒子であり、チンダル効果が、レーザービームが非溶解粒子のコロイド状分散物の中を通過することによって散乱されるときに生じる。そのような分散物については、コロイド状分散物の中を通過する目に見える経路が輝くことを観測することができる。真溶液(例えば、水、または、水に溶解された本発明の実施形態による組成物など)はコロイド状粒子を含有せず、したがって、コロイド状分散物に特徴的な強いチンダル効果を示さない。下記において詳述されるが、これらの発見は、前記の実施例と同様に、本発明の実施形態による組成物が水に溶解して、真溶液を形成すること、そして、単に、コロイド状分散物を形成するように分散しているというわけではないことを明らかにする。
【0078】
チンダル実験1:アスピリン:(L)−テアニン共結晶製造物とDisprinとの比較
300mgのアスピリン:(L)−テアニン共結晶製造物を1つのビーカーにおいて150mlの水に溶解し、1錠の325mg錠剤のDisprinを別のビーカーにおいて150mlの水に分散させた。514nmのレーザービームを最初にアスピリン:(L)−テアニン共結晶溶液に通し、その後、Disprinの分散物に通した。強いチンダル効果がDisprinの水性分散物において観測されたが、水に溶解された本発明による組成物に関しては観測されなかった。
【0079】
チンダル効果実験を行った後に残留する不溶性物質の程度に関する調査を行った。ビーカーにおける分散物を、いかなる不溶固体も中心部に集めるために撹拌した。不溶固体の集積がDisprinのビーカーの底に形成されたが、水晶のように澄んだ溶液を呈したアスピリン(L)−テアニン共結晶製造物を含有するビーカーでは形成されなかった。
【0080】
チンダル実験2:アスピリン:(L)−テアニン共結晶製造物とAspro Clearとの比較
300mgのアスピリン:(L)−テアニン共結晶製造物を1つのビーカーにおいて150mlの水に溶解し、1錠の300mg錠剤のAspro Clearを別のビーカーにおいて150mlの水に分散させた。514nmのレーザービームを最初にアスピリン:(L)−テアニン共結晶溶液に通し、その後、Aspro Clearの分散物に通した。強いチンダル効果が、Aspro Clearの水性分散物において観測されたが、水に溶解された本発明による組成物に関しては観測されなかった。
【0081】
チンダル効果実験を行った後に残留する不溶性物質の程度に関する調査を行った。ビーカーにおける分散物を、いかなる不溶固体も中心部に集めるために撹拌した。不溶固体の集積が、Aspro Clearのビーカーの底に形成されたが、水晶のように澄んだ溶液を呈したアスピリン:(L)−テアニン共結晶製造物を含有するビーカーでは形成されなかった。
【0082】
チンダル効果実験3:アスピリン:(L)−テアニン共結晶製造物とBayer社アスピリンとの比較
300mgのアスピリン:(L)−テアニン共結晶製造物を1つのビーカーにおいて150mlの水に溶解し、1錠の325mg錠剤のBayer社アスピリンを別のビーカーにおいて150mlの水に分散させた。514nmのレーザービームを最初にアスピリン:(L)−テアニン共結晶溶液に通し、その後、Bayer社アスピリンの分散物に通した。強いチンダル効果がBayer社アスピリンの水性分散物において観測されたが、水に溶解された本発明による組成物に関しては観測されなかった。
【0083】
チンダル効果実験を行った後に残留する不溶性物質の程度に関する調査を行った。ビーカーにおける分散物を、いかなる不溶固体も中心部に集めるために撹拌した。不溶固体の集積がBayer社アスピリンのビーカーの底に形成されたが、水晶のように澄んだ溶液を呈したアスピリン:(L)−テアニン共結晶製造物を含有するビーカーでは形成されなかった。
【0084】
チンダル効果実験4:アスピリン:(L)−テアニン共結晶製造物と水との比較
300mgのアスピリン:(L)−テアニン共結晶製造物を1つのビーカーにおいて150mlの水に溶解し、150mlの水だけを別のビーカーに入れた。514nmのレーザービームを最初にアスピリン:(L)−テアニン共結晶溶液に通し、その後、水に通した。強いチンダル効果が水に関して観測されず、また、水に溶解された本発明による組成物に関して観測されなかった。水およびアスピリン:(L)−テアニン共結晶製造物はともに、水晶のように澄んだ溶液を示し、互いに区別することができなかった。
【0085】
チンダル効果実験を行った後に残留する不溶性物質の程度に関する調査を行った。溶解されたアスピリン:(L)−テアニン共結晶製造物を含有するビーカーにおける分散物を、いかなる不溶固体も中心部に集めるために撹拌した。不溶固体が、アスピリン:(L)−テアニン共結晶製造物を含むビーカーの底において何ら観測されなかった。水およびアスピリン:(L)−テアニン共結晶製造物はともに、水晶のように澄んだ溶液をもたらし、互いに区別することができなかった。
【0086】
チンダル効果実験5:アスピリン:(D)−テアニン共結晶製造物とDisprinとの比較
300mgのアスピリン:(D)−テアニン共結晶製造物を1つのビーカーにおいて150mlの水に溶解し、1錠の325mg錠剤のDisprinを別のビーカーにおいて150mlの水に分散させた。514nmのレーザービームを最初にアスピリン:(D)−テアニン共結晶溶液に通し、その後、Disprinの分散物に通した。強いチンダル効果がDisprinの水性分散物において観測されたが、水に溶解された本発明による組成物に関しては観測されなかった。
【0087】
チンダル効果実験を行った後に残留する不溶性物質の程度に関する調査を行った。ビーカーにおける分散物を、いかなる不溶固体も中心部に集めるために撹拌した。不溶固体の集積がDisprinのビーカーの底に形成されたが、水晶のように澄んだ溶液を呈したアスピリン:(D)−テアニン共結晶製造物を含有するビーカーでは形成されなかった。
【0088】
チンダル効果実験6:アスピリン:(D)−テアニン共結晶製造物とAspro Clearとの比較
300mgのアスピリン:(D)−テアニン共結晶製造物を1つのビーカーにおいて150mlの水に溶解し、1錠の300mg錠剤のAspro Clearを別のビーカーにおいて150mlの水に分散させた。514nmのレーザービームを最初にアスピリン:(D)−テアニン共結晶溶液に通し、その後、Aspro Clearの分散物に通した。強いチンダル効果が、Aspro Clearの水性分散物において観測されたが、水に溶解された本発明による組成物に関しては観測されなかった。
【0089】
チンダル効果実験を行った後に残留する不溶性物質の程度に関する調査を行った。ビーカーにおける分散物を、いかなる不溶固体も中心部に集めるために撹拌した。不溶固体の集積が、Aspro Clearのビーカーの底に形成されたが、水晶のように澄んだ溶液を呈したアスピリン:(D)−テアニン共結晶製造物を含有するビーカーでは形成されなかった。
【0090】
チンダル効果実験7:アスピリン:(D)−テアニン共結晶製造物とBayer社アスピリンとの比較
300mgのアスピリン:(D)−テアニン共結晶製造物を1つのビーカーにおいて150mlの水に溶解し、1錠の325mg錠剤のBayer社アスピリンを別のビーカーにおいて150mlの水に分散させた。514nmのレーザービームを最初にアスピリン:(D)−テアニン共結晶溶液に通し、その後、Bayer社アスピリンの分散物に通した。強いチンダル効果がBayer社アスピリンの水性分散物において観測されたが、水に溶解された本発明による組成物に関しては観測されなかった。
【0091】
チンダル効果実験を行った後に残留する不溶性物質の程度に関する調査を行った。ビーカーにおける分散物を、いかなる不溶固体も中心部に集めるために撹拌した。不溶固体の集積がBayer社アスピリンのビーカーの底に形成されたが、水晶のように澄んだ溶液を呈したアスピリン:(D)−テアニン共結晶製造物を含有するビーカーでは形成されなかった。
【0092】
チンダル効果実験8:アスピリン:(D)−テアニン共結晶製造物と水との比較
300mgのアスピリン:(D)−テアニン共結晶製造物を1つのビーカーにおいて150mlの水に溶解し、150mlの水だけを別のビーカーに入れた。514nmのレーザービームを最初にアスピリン:(D)−テアニン共結晶溶液に通し、その後、水に通した。強いチンダル効果が水に関して観測されず、また、水に溶解された本発明による組成物に関して観測されなかった。水およびアスピリン:(D)−テアニン共結晶製造物はともに、水晶のように澄んだ溶液をもたらし、互いに区別することができなかった。
【0093】
チンダル効果実験を行った後に残留する不溶性物質の程度に関する調査を行った。溶解されたアスピリン:(D)−テアニン共結晶製造物を含有するビーカーにおける分散物を、いかなる不溶固体も中心部に集めるために撹拌した。不溶固体が、アスピリン:(D)−テアニン共結晶製造物を含むビーカーの底において何ら観測されなかった。水およびアスピリン:(D)−テアニン共結晶製造物はともに、水晶のように澄んだ溶液をもたらし、互いに区別することができなかった。
【0094】
チンダル効果実験9:アスピリン:(DL)−テアニン共結晶製造物とDispirinとの比較
300mgのアスピリン:(DL)−テアニン共結晶製造物を1つのビーカーにおいて150mlの水に溶解し、1錠の325mg錠剤のDisprinを別のビーカーにおいて150mlの水に分散させた。514nmのレーザービームを最初にアスピリン:(DL)−テアニン共結晶溶液に通し、その後、Disprinの分散物に通した。強いチンダル効果がDisprinの水性分散物において観測されたが、水に溶解された本発明による組成物に関しては観測されなかった。
【0095】
チンダル効果実験を行った後に残留する不溶性物質の程度に関する調査を行った。ビーカーにおける分散物を、いかなる不溶固体も中心部に集めるために撹拌した。不溶固体の集積がDisprinのビーカーの底に形成されたが、水晶のように澄んだ溶液を呈したアスピリン:(DL)−テアニン共結晶製造物を含有するビーカーでは形成されなかった。
【0096】
チンダル効果実験10:アスピリン:(DL)−テアニン共結晶製造物とAspro Clearとの比較
300mgのアスピリン:(DL)−テアニン共結晶製造物を1つのビーカーにおいて150mlの水に溶解し、1錠の300mg錠剤のAspro Clearを別のビーカーにおいて150mlの水に分散させた。514nmのレーザービームを最初にアスピリン:(DL)−テアニン共結晶溶液に通し、その後、Aspro Clearの分散物に通した。強いチンダル効果が、Aspro Clearの水性分散物において観測されたが、水に溶解された本発明による組成物に関しては観測されなかった。
【0097】
チンダル効果実験を行った後に残留する不溶性物質の程度に関する調査を行った。ビーカーにおける分散物を、いかなる不溶固体も中心部に集めるために撹拌した。不溶固体の集積が、Aspro Clearのビーカーの底に形成されたが、水晶のように澄んだ溶液を呈したアスピリン:(DL)−テアニン共結晶製造物を含有するビーカーでは形成されなかった。
【0098】
チンダル効果実験11:アスピリン:(DL)−テアニン共結晶製造物とBayer社アスピリンとの比較
300mgのアスピリン:(DL)−テアニン共結晶製造物を1つのビーカーにおいて150mlの水に溶解し、1錠の325mg錠剤のBayer社アスピリンを別のビーカーにおいて150mlの水に分散させた。514nmのレーザービームを最初にアスピリン:(DL)−テアニン共結晶溶液に通し、その後、Bayer社アスピリンの分散物に通した。強いチンダル効果がBayer社アスピリンの水性分散物において観測されたが、水に溶解された本発明による組成物に関しては観測されなかった。
【0099】
チンダル効果実験を行った後に残留する不溶性物質の程度に関する調査を行った。ビーカーにおける分散物を、いかなる不溶固体も中心部に集めるために撹拌した。不溶固体の集積がBayer社アスピリンのビーカーの底に形成されたが、水晶のように澄んだ溶液を呈したアスピリン(DL)−テアニン共結晶製造物を含有するビーカーでは形成されなかった。
【0100】
チンダル効果実験12:アスピリン:(DL)−テアニン共結晶製造物と水との比較
300mgのアスピリン:(DL)−テアニン共結晶製造物を1つのビーカーにおいて150mlの水に溶解し、150mlの水だけを別のビーカーに入れた。514nmのレーザービームを最初にアスピリン:(DL)−テアニン共結晶溶液に通し、その後、水に通した。強いチンダル効果が水に関して観測されず、また、水に溶解された本発明による組成物に関して観測されなかった。水およびアスピリン:(DL)−テアニン共結晶製造物はともに、水晶のように澄んだ溶液をもたらし、互いに区別することができなかった。
【0101】
チンダル効果実験を行った後に残留する不溶性物質の程度に関する調査を行った。溶解されたアスピリン:(DL)−テアニン共結晶製造物を含有するビーカーにおける分散物を、いかなる不溶固体も中心部に集めるために撹拌した。不溶固体が、アスピリン:(DL)−テアニン共結晶製造物を含むビーカーの底において何ら観測されなかった。水およびアスピリン:(DL)−テアニン共結晶製造物はともに、水晶のように澄んだ溶液をもたらし、互いに区別することができなかった。
【0102】
本発明の実施形態による組成物を使用して調製される誘導体を、静脈内経路、筋肉内経路、皮内経路、皮下経路、腹腔内経路、関節内経路、舌下経路、結膜下経路および硝子体内経路により、または、点眼剤の形態で、または、経口的に、局所的に、直腸に、点鼻噴霧システム、吸入システムおよびナノ粒子送達システムにより投与することができる。
【0103】
本発明の実施形態による医薬組成物は、経口用固体(錠剤、経口崩壊性錠剤、発泡性錠剤、カプセル)、経口用液体、硬ゼラチンカプセルまたは軟ゼラチンカプセル(迅速溶解型、制御放出型、改変放出型)、シロップ、懸濁物、顆粒、ウェーハ(フィルム)、ペレット、ドロップ、粉末剤、咀嚼剤、坐薬、軟膏、溶液、プレミックスまたは再構成される非経口/注射用の粉末剤または顆粒、ローション、ゲル、クリーム、フォーム、ならびに、ナノエマルションとして調製することができる。
【0104】
本発明の実施形態による医薬組成物は、リポキシゲナーゼ阻害剤薬剤、天然のリポキシゲナーゼ阻害剤、抗高血圧薬剤、抗高脂血症薬剤、抗高血圧/抗高脂血症薬剤、抗トリグリセリド薬剤、抗片頭痛薬剤、血液改変剤薬剤(とりわけ、血栓溶解剤および血小板凝集阻害剤薬剤)、抗新生物剤、抗精神病薬剤、抗不安剤、抗てんかん剤、抗パーキンソン病薬剤、抗糖尿病薬剤、抗炎症性薬剤(例えば、コルチコステロイドなど)、NSAIDを除く解熱剤(NSAIDは、アスピリンと併用されるとき、アスピリンの効果を取り消す)、NSAIDを除く抗リウマチ薬剤、月経前症候群に関連する症状を処置するための、NSAIDを除く薬剤、抗不整脈剤、ジギタリス配糖体、抗狭心症薬剤(硝酸塩、抗血小板剤、ベータ遮断剤、カルシウムチャネル遮断剤およびラノラジン)、鎮痛剤、筋骨格弛緩剤、抗感染剤(とりわけ、抗生物質)、非経口栄養剤、マグネシウム、コエンザイムQ10、サルコシン、アミノ酸、ビタミン(ビタミンKを除く)、ならびに、過剰量のグルタメートに関連する疾患(例えば、限定はされないが、筋萎縮性側索硬化症、脳血管性認知症)、および、非出血性発作または物理的傷害とともに生じるような脳傷害に関連する疾患を治療するために使用される薬剤と併用することができる。テアニンを伴う本発明の医薬組成物はこれらの薬剤に限定されない。
【0105】
本発明の実施形態による静脈内配合物は、なかでも、心筋虚血、心筋梗塞、脳虚血、脳卒中、アテローム性動脈硬化、網膜虚血、リウマチ様関節炎、変形性関節炎、炎症性腸疾患およびある種のタイプのガンを治療するための併用されるリポキシゲナーゼ/シクロオキシゲナーゼ阻害剤である新しい化合物を含む。
【0106】
本発明の実施形態は、下記のもの(これらに限定されない)を含む他の潜在的な臨床適用を有する:心臓血管的(急性冠状動脈症候群の治療、急性心筋梗塞の治療、血管再生手順における補助的治療:経皮的経管式冠状動脈形成術、冠状動脈バイパス移植、頸動脈内膜切除術およびステント埋め込み);神経学的(急性虚血性発作の治療);嚥下困難(どのような病因にも由来するもの);リウマチ学的(リウマチ様関節炎、強直性脊椎炎、脊椎関節症、ループス(ろうそう)エリテマトーデスの胸膜炎および関節炎、乾癬性関節炎、線維筋痛症、ライター症候群、変形性関節炎、ライム関節炎ならびに淋菌性関節炎);抗炎症性(精巣上体炎、ボルンホルム病(コクサッキーウイルス心筋炎)、急性心膜炎、ドレスラー症候群、急性リウマチ熱、ロスリバー熱);疼痛管理(海洋性毒物注入、例えば、クラゲ、ウニ、ヒトデ、カツオノエボシ、アナサンゴモドキ、イソギンチャク、ミノカサゴ、オニダルマオコゼおよびアカエイなどに由来するもの);オズグッド・シュラッター病、特発性(原発性)先端紅痛症、火傷、急性腎仙痛、三叉神経痛、骨痛(類骨骨種、パジェット病、鎌状赤血球貧血)、脊柱管狭窄症、転移性疾患、難治性頭痛、神経根障害および他の慢性疼痛症候群;患者管理鎮痛法(PCA)のためのモルヒネに対するアジュバントとして;眼科的(網膜虚血および網膜閉塞);救急使用(救急車、病院の救急治療室および特別集中治療室、医院、飛行機旅行、荒野などにおいて);挿管患者、ならびに、クローン病および潰瘍性大腸炎を除く、重度に腸機能が損なわれた患者に関して;悪性高熱を除く、高悪性度の体温のための解熱剤として;麻酔後の震えを防止するために;動脈管開存症の閉鎖のために;家族性円柱腫症のために;血管形成の阻害のために;ナイアシン潮紅の阻害のために;凍傷の治療のための血栓溶解治療に対するアジュバントとして;希少疾患の治療(川崎病、リーデル甲状腺炎、成人発症スチル病、キクチ−フジモト病、限局性筋炎、ウェーバー・クリスチャン病および癒着性クモ膜炎を含む);薬物、アルコール、薬草、毒素、化学物質、肥満関連肝臓疾患および放射線誘導肝臓疾患からの肝毒性影響に対する実質的保護;ならびに、抗HIV効果を提供するために。
【0107】
本発明の実施形態は、タイルノール、スタチン類、抗レトロウイルス剤、アルコールおよび他の薬物、毒素、薬草、ならびに、肝毒性を誘導し得る化学物質からの肝毒性影響;肥満関連肝臓疾患;および放射線誘導肝臓疾患(これらに限定されない)を含めて、広範囲の様々な医学的状態に対する実質的な保護を提供するために使用することができる。
【0108】
本発明の実施形態による共結晶は、選択された治療または防止の活性な医薬成分の1つまたは複数の物理的特性(例えば、溶解性、安定性および溶解速度など)を改善するために使用することができる。
【0109】
本発明の特定の実施形態が、本発明の原理の適用を例示するために詳細に示され、記載されているが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく、他の方法で具体化され得ることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むことを特徴とする、水溶性のアスピリン−テアニン共結晶組成物の作製方法:
所定量のアセチルサリチル酸を提供する工程;
所定量のテアニンエナンチオマーを前記所定量のアセチルサリチル酸に加えて、前記所定量のアセチルサリチル酸および前記テアニンエナンチオマーを含む混合物を形成する工程;
前記混合物を湿らす工程;および
前記混合物を、乾燥した結晶集団を製造するために十分な長さの時間にわたってすり砕く工程。
【請求項2】
前記所定量のアセチルサリチル酸が、前記所定量のアセチルサリチル酸および前記所定量のテアニンエナンチオマーの前記混合物の約50重量%を構成することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乾燥した結晶集団が少なくとも約9.0mg/mLの水への溶解度を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
糖アルコールを前記混合物に加える工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記テアニンエナンチオマーがその上にさらに炭水化物官能基を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記テアニンエナンチオマーがその上にさらにアミノ酸官能基を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記テアニンエナンチオマーがその上にさらに、グルタミンおよびグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸スカフォールドを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記テアニンエナンチオマーが、L−テアニン、D−テアニンおよびDL−テアニンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載される方法に従って形成されることを特徴とする、水溶性のアスピリン−テアニン共結晶組成物。
【請求項10】
以下の工程を含むことを特徴とする、水溶性のアスピリン−テアニン共結晶組成物の作製方法:
所定量のアセチルサリチル酸を提供する工程;
所定量のテアニンエナンチオマーを前記所定量のアセチルサリチル酸に加えて、前記所定量のアセチルサリチル酸および前記テアニンエナンチオマーを含む混合物を形成する工程;
前記混合物を所定量の第1の溶媒に溶解して、溶液を形成する工程;および
前記溶液を、乾燥した結晶集団を製造するために十分な長さの時間にわたって乾燥する工程。
【請求項11】
前記所定量のアセチルサリチル酸が、前記所定量のアセチルサリチル酸および前記所定量のテアニンエナンチオマーの前記混合物の約50重量%を構成することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記乾燥した結晶集団が少なくとも約9.4mg/mLの水への溶解度を有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
糖アルコールを前記溶液に加える工程をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記テアニンエナンチオマーがその上にさらに、L−立体配置またはD−立体配置を有する炭水化物官能基を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
請求項10に記載される方法に従って形成されることを特徴とする、水溶性のアスピリン−テアニン共結晶組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−526105(P2012−526105A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509772(P2012−509772)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/048275
【国際公開番号】WO2010/128977
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(511269358)ゼアプリン ファーマシューティカルズ, インコーポレーテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】THEAPRIN PHARMACEUTICALS, INC.
【住所又は居所原語表記】150 Motor Parkway, Suite 401, Hauppauge, New York 11788, United States of America
【Fターム(参考)】