説明

アセトアミノフェン、ラニチジン、ストリキニーネおよびデナトニウムのpヒトT2R受容体、ならびにヒト苦味調節剤を同定するための関連アッセイ

本発明は、T2R味受容体ファミリー中の特定のヒト味受容体が、特定の苦味リガンド、すなわちアセトアミノフェン、ラニチジン、ストリキニーネおよびデナトニウムに応答するという発見に関する。本発明はさらに、これらの味受容体の活性化を調節し、そしてT2Rに関連する苦味を修飾する(遮断する)ため、食品、飲料および医薬品における添加剤として使用可能なリガンドを同定するためのアッセイにおける、これらの受容体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2005年2月8日に出願された米国仮出願第60/650,555号に優先権を請求する。本出願はまた、2002年7月10日に出願されたUS第10/191,058号および2001年4月5日に出願されたUS第09/825,882号にも関する。これらの仮出願および非仮出願はすべて、その全体が本明細書に援用される。これらの出願は、ヒト苦味受容体(hT2R)の同定およびこれらの特定のhT2Rを活性化するリガンドの同定に関する。
発明の分野
本発明は、苦味知覚に関与する、T2Rファミリー中の先に報告されたヒトGタンパク質共役型受容体(GPCR)のいくつかを活性化する、苦味化合物の解明に関する。具体的には、本発明は、hT2R8、hT2R54およびhT2R75が、苦味リガンド、ラニチジンに特異的に応答し;hT2R54が、ある使用者には苦い後味を誘発しうる非ステロイド性抗炎症剤であるアセトアミノフェンに特異的に応答し;hT2R8、hT2R10、hT2R13、hT2R54、hT2R61およびhT2R75が、苦味リガンド、安息香酸デナトニウムに特異的に応答し、そしてhT2R8、hT2R9、hT2R10、hT2R54およびhT2R75が、苦味毒素、ストリキニーネに特異的に応答するという発見を含む。
【0002】
これらの発見に基づいて、これらのヒト味受容体、その断片または変異体またはキメラは、そのオルソログ、スプライス変異体、一塩基多型(SNPS)、および遺伝的に操作された突然変異体を含めて、ストリキニーネ、アセトアミノフェン、ラニチジン、およびデナトニウム、ならびに構造的に関連する化合物およびこれらの受容体を活性化する他の化合物の苦味を調節する(好ましくは遮断する)化合物を同定するためのアッセイ、好ましくは細胞に基づくハイスループット・アッセイにおいて、有用である。これらのアッセイを用いて同定される化合物を、食品、飲料または医薬品における添加剤として用いて、その味を改善してもよい。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
ヒトが認識しうる基本的な味の様式の1つは苦味である。苦味の生理学は、ごく最近まで非常にわずかしか理解されていなかった。最近の研究によって味の生物学が明らかになり始めた(Lindemann, Nature(2001))。現在、多くの苦味化合物が細胞表面受容体と相互作用することによって、苦味を生じると考えられている。これらの受容体は、細胞内Gタンパク質と相互作用する7回膜貫通ドメイン受容体のファミリーに属する。
【0004】
本発明の約5年前、T2Rと称される、GPCRの新規ファミリーが、ヒトおよびげっ歯類で同定された(Adlerら, Cell 100(6):693−702(2000); Chandrashekarら, Cell 100(6):703−711(2000); Matsunami H, Montmayeur J P, Buck L B. Nature 404(6778):601−4(2000))。T2R遺伝子ファミリーが発見されたすぐ後に、T2Rは、苦味化合物に対する応答を仲介する、少なくともげっ歯類およびヒトにおいて発現される味受容体クラスを構成することを示唆する、多くの証拠が生じた。例えば、T2R遺伝子が、舌および口蓋上皮の味受容体細胞サブセットで、特異的に発現していることが見出された。次に、ヒトT2Rの1つの遺伝子(hT2R1)が、ヒトにおいて、苦味化合物、6−n−プロピル−2−チオウラシルに対する感受性と連鎖する染色体遺伝子座に位置することが発見された(Adlerら(同上)(2000))。第三に、マウスT2Rの1つ(mT2R5)が、マウスにおいて、苦味化合物シクロヘキシミドに対する感受性と連鎖する染色体遺伝子座に位置することが発見された。また、T2R遺伝子ファミリーが発見され、そして苦味伝達においてその役割が予期されることが報告されたすぐ後で、マウスT2R、特にmT2R5が、味細胞において特異的に発現され、そして苦味刺激伝達に関連付けられるGタンパク質、ガストデューシンを活性化可能であることも示された(Wongら, Nature 381:796−800(1996))。mT2R5によるガストデューシン活性化は、シクロヘキシミドに応答した際のみに起こる(Chandrashekarら(同上)(2000))。したがって、マウスでは、mT2Rファミリーが苦味応答を仲介し、一方、ヒトでは、hT2Rファミリーが苦味応答を仲介すると提唱された。Chandrasekharのこの同じ参考文献において、ヒトT2Rの1つ、hT2R4が、デナトニウムによって特異的に活性化されることが示された(Chandrashekarら(同上)2000)。しかし、この研究において用いられたデナトニウムの有効濃度(1.5mM)は異常に高く、すなわちヒトに対するデナトニウムの報告される苦味閾値より、10倍高かった(Saroli, Naturwissenschaften 71:428−429(1984))。したがって、Chandrashekarは、いずれのhT2Rにも、特定の苦味リガンドを納得できるようにはマッチさせなかった。
【0005】
また、以前から、各hT2Rが多数の苦味リガンドに結合可能であるとも仮定されてきた。この仮説は、hT2Rファミリーが、約40の別個の遺伝子からなる一方、ヒトが、何百もの異なる化合物を苦いと認識しうるという事実に基づく。hT2Rの配列が先に報告されており、そしてどちらもその全体が本明細書に援用される、Zukerら(WO 01/18050 A2(2001))およびAdlerら(WO 01/77676 A1(2001))による公開されたPCT出願において開示されている。この出願の譲受人であるSenomyxによって出願されたこのAdler PCT出願は、本出願が関連するhT2R遺伝子配列および対応するポリペプチド、ならびに他のhT2R遺伝子およびポリペプチドを開示する。このAdler PCT出願は、これらの異なるhT2R配列が、苦味受容体をコードすることを正しく同定し、そしてこれらのhT2R遺伝子の推定上の標的として、ヒトにおいて苦味を活性化する典型的な苦味リガンドを列挙する。しかし、先のこのSenomyx出願は、特定の苦味リガンドおよび特定のヒト苦味受容体を用いる、本明細書の実験例に例示する機能アッセイであって、hT2R8、hT2R9、hT2R10、hT2R13、hT2R54、hT2R61およびhT2R75の特定の苦味リガンド結合特異性を確立する、前記機能アッセイを含有しない。
【0006】
初期には、T2R機能を研究する困難の1つは、これらの受容体が培養哺乳動物細胞株で容易に発現されないことであった。T2R発現を改善するため、よく発現されるGPCRであるロドプシン由来のN末端配列をT2R配列に付着させた(Chandrashekarら(同上)(2000))。このN末端タグはまた、入手可能な抗体があるため、タンパク質発現を容易に監視することも可能にした。ロドプシン・タグを取り込むと、哺乳動物細胞株においていくつかのT2Rの発現が改善されたが、その多くはなお、機能研究に十分なほど多くは発現されなかった。異なるアプローチにおいて、昆虫Sf9細胞において、mT2R5が成功裡に発現され、そして生化学的GTPγS結合アッセイを用いた機能研究に用いられた(Chandrashekarら(同上)(2000))。
【0007】
本明細書に援用される、本出願者らの先の特許出願、US第10/191,058号において、本出願者らは、哺乳動物細胞(HEK−293細胞株)において、特定のhT2Rを発現し、そして3つの異なるヒトT2R、hT2R4、hT2R44およびhT2R61を特異的に活性化する苦味リガンドを同定する、細胞に基づくアッセイを行った。
【0008】
しかし、報告されたことにかかわらず、そしてヒトT2Rメンバーがヒトにおいて苦味を制御することを理解すると、他のヒトT2R受容体を活性化する特定のリガンドを同定する必要性が存在する。異なるヒトT2Rの結合特性をよりよく理解すると、所望の味調節特性を有する、すなわちヒトが消費する食品、飲料または医薬品において、特定の苦味化合物の味を遮断するかまたは阻害する化合物を選択する際の、T2Rの使用がより容易になるであろうため、こうした理解が非常に有益であろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の概要
この目的に向け、本発明は、T2Rファミリーのいくつかの味受容体、特にhT2R8、hT2R54およびhT2R75が、苦味化合物、ラニチジンによって特異的に活性化され、hT2R54が、ある使用者には苦い後味を誘発することが知られる鎮痛化合物、アセトアミノフェンによって特異的に活性化され;hT2R8、hT2R10、hT2R13、hT2R54、hT2R61およびhT2R75が、周知の苦味リガンド安息香酸デナトニウムによって特異的に活性化され、そしてhT2R8、hT2R9、hT2R10、hT2R54およびhT2R75が、苦味毒素、ストリキニーネによって特異的に活性化されるという発見に関する。
【0010】
これらの発見は、特定の苦味リガンドの存在下および非存在下で、特定のT2Rを発現する細胞を用いてT2Rの活性を測定する、細胞に基づくアッセイを用いて行われた。特に、以下にはるかに詳細に記載するように、細胞内カルシウム濃度の変化を検出する、細胞に基づくアッセイにおいて、上に同定する特定のT2Rを表面上に発現し、そしてキメラGタンパク質を発現するHEK細胞株を用い、そして該細胞株が、特定の苦味化合物(ラニチジン、安息香酸デナトニウム、ストリキニーネおよびアセトアミノフェン)によって特異的に活性化される一方、類似の条件下で、他のhT2Rが活性化されないことが見出された。
【0011】
したがって、本発明は、ラニチジン、安息香酸デナトニウム、ストリキニーネおよびアセトアミノフェン、ならびに関連するおよび他の苦味化合物による、これらの受容体の活性化を遮断する化合物を同定するアッセイ、好ましくはハイスループット・アッセイにおける、これらのヒト味受容体の使用を含む。
【0012】
本発明はまた、味試験において、これらの化合物が苦味を遮断するのを確認することを含む方法も含む。また、本発明は、苦味、例えば医薬品におけるアセトアミノフェンと関連する苦味を阻害するため、食品、飲料および薬剤における、同定された化合物の使用を含む。
発明の目的
hT2R8、hT2R54、またはhT2R75、あるいはその断片、変異体、オルソログ、またはキメラの活性化であって、ラニチジン、またはこれらの受容体の少なくとも1つを活性化する、ラニチジンに構造的に関連する化合物による前記活性化を調節する、好ましくは遮断する化合物を同定するのが、本発明の目的である。
【0013】
hT2R54、あるいはその断片、変異体、オルソログ、またはキメラの活性化であって、アセトアミノフェン、またはhT2R54を活性化する、アセトアミノフェンに構造的に関連する化合物による前記活性化を調節する、好ましくは遮断する化合物を同定するのが、本発明の別の目的である。
【0014】
hT2R8、hT2R10、hT2R13、hT2R54、hT2R61、またはhT2R75の活性化であって、デナトニウム、またはこれらの受容体の少なくとも1つを特異的に活性化する、デナトニウムに構造的に関連する化合物による前記活性化を調節する、好ましくは遮断する化合物を同定するのが、本発明の別の目的である。
【0015】
hT2R8、hT2R9、hT2R10、hT2R54、またはhT2R75の活性化であって、ストリキニーネ、または前記受容体の少なくとも1つを特異的に活性化する、ストリキニーネに構造的に関連する化合物による前記活性化を調節する、好ましくは遮断する化合物を同定するのが、本発明の別の特定の目的である。
【0016】
hT2R8、hT2R54、またはhT2R75、あるいはその断片、変異体、オルソログ、突然変異体またはキメラを含むかまたは発現する(安定にまたは一過性に)細胞または細胞膜を、アッセイにおいて用いて、ラニチジンまたは構造的に関連する化合物による、前記受容体の少なくとも1つの活性化を調節する、好ましくは遮断する化合物を同定するのが、本発明の別の特定の目的である。
【0017】
hT2R54、あるいはその断片、変異体、オルソログ、突然変異体またはキメラを含むかまたは発現する(安定にまたは一過性に)細胞または膜を、アッセイにおいて用いて、アセトアミノフェンまたは構造的に関連する化合物による、前記受容体の活性化を調節する、好ましくは遮断する化合物を同定するのが、本発明の別の特定の目的である。
【0018】
hT2R8、h2R10、hT2R13、hT2R54、hT2R61、またはhT2R75、あるいはその断片、変異体、オルソログ、突然変異体またはキメラを含むかまたは発現する(安定にまたは一過性に)細胞または膜を、アッセイにおいて用いて、デナトニウムまたは構造的に関連する化合物による、前記受容体の活性化を調節する、好ましくは遮断する化合物を同定するのが、本発明の別の特定の目的である。
【0019】
hT2R8、hT2R9、hT2R10、hT2R54、またはhT2R75、あるいはその断片、変異体、オルソログ、突然変異体またはキメラを含むかまたは発現する(安定にまたは一過性に)細胞または膜を、アッセイにおいて用いて、ストリキニーネまたは構造的に関連する化合物による、前記受容体の少なくとも1つの活性化を調節する、好ましくは遮断する化合物を同定するのが、本発明のさらに別の特定の目的である。
【0020】
ラニチジン、アセトアミノフェン、デナトニウム、またはストリキニーネによる、前述のヒト味受容体の1つの活性化を調節する化合物を検出するため、細胞内カルシウムの変化を検出する、細胞に基づくアッセイにおいて、共役するGタンパク質、例えばGα15、Gα16、ガストデューシンまたはそのキメラを発現する細胞、好ましくは哺乳類、両生類または昆虫細胞、例えばHEK293T細胞を用いるのが、本発明のさらにさらなる特定の目的である。
【0021】
同定された化合物が、味試験、好ましくはヒト味試験において、例えば、ラニチジン、アセトアミノフェン、デナトニウム、またはストリキニーネによって誘発される、苦味を調節する、好ましくは遮断することを確認するのが、本発明の別の目的である。
【0022】
これらの味受容体を特異的に活性化する化合物によって誘導される苦味を調節する、好ましくは遮断するため、本明細書記載のアッセイにおいて同定された化合物を、組成物中の添加剤として利用するのが、本発明の別の目的である。本発明の好ましい目的は、hT2R54を阻害する化合物を使用して、アセトアミノフェン含有医薬品、特に小児科医薬品の苦味を遮断することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
発明の詳細な説明
本発明を具体的に説明する前に、以下の定義を提供する。
用語「T2R」ファミリーには:(1)以下に、そして本明細書に援用されるZuker(同上)(2001)およびAdler(同上)(2001)の出願に開示されるT2Rに、約25アミノ酸、最適には50〜100アミノ酸のウィンドウに渡って、約30〜40%アミノ酸配列同一性、より具体的には約40、50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98、または99%アミノ酸配列同一性を有するか;(2)以下に開示するT2R配列、およびその保存的に修飾された変異体からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫原に対して作製された抗体に特異的に結合するか;(3)以下に開示するT2R DNA配列、およびその保存的に修飾された変異体からなる群より選択される配列に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、特異的にハイブリダイズする(少なくとも約100、場合によって少なくとも約500〜1000ヌクレオチドのサイズで)か;(4)以下に開示するT2Rアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列に、少なくとも約40%同一である配列を含むか、あるいは(5)記載するT2R配列に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で特異的にハイブリダイズするプライマーによって増幅される、多型変異体、アレル、突然変異体および相同体が含まれる。
【0024】
特に、これらの「T2R」には、苦味リガンド、すなわち、以下に記載するようなラニチジン、アセトアミノフェン、デナトニウム、および/またはストリキニーネに特異的に結合する、本出願に提供する核酸配列およびアミノ酸配列を有するhT2R8、hT2R9、hT2R10、hT1R13、hT2R54、hT2R61およびhT2R75と称される味受容体GPCR、ならびに前記GPCRの変異体、アレル、突然変異体、オルソログおよびキメラが含まれる。
【0025】
T2R遺伝子が、タンパク質レベルおよびDNAレベルの両方で、実質的な配列相違を示す一方、今日までに単離されたT2Rはすべて、どちらも、その全体が本明細書に援用される、Adlerら(WO 01/77676 A1(2001))およびZukerらWO 01/18050 A2に先に同定されたT2Rコンセンサス配列に、同一であるか、または少なくとも70〜75%の配列同一性を所持する、特定の領域中のあるコンセンサス配列を含有することが見出されてきている。
【0026】
形態的に、特定の化学感受性GPCRは、「N末端ドメイン」、「細胞外ドメイン」、7つの膜貫通領域、および対応する細胞質ループおよび細胞外ループを含む「膜貫通ドメイン」、「細胞質領域」、ならびに「C末端領域」を有する(例えば、Hoonら, Cell, 96:541−51(1999); Buck & Axel, Cell, 65:175−87(1991)を参照されたい)。これらの領域は、当業者に知られる方法、例えば疎水性ドメインおよび親水性ドメインを同定する配列分析プログラムを用いて、構造的に同定可能である(例えば、Stryer, Biochemistry, (第3版 1988)を参照されたい; dot.imgen.bcm.tmc.eduで見出されるものなど、インターネットに基づくいくつかの配列分析プログラムのいずれかもまた、参照されたい)。これらの領域は、キメラタンパク質を作製するため、そして本発明のin vitroアッセイ、例えばリガンド結合アッセイのため、有用である。
【0027】
「細胞外ドメイン」は、したがって、細胞膜から突き出し、そして細胞の細胞外面に暴露されている、T2Rポリペプチドのドメインを指す。こうした領域には、細胞の細胞外面に暴露される「N末端ドメイン」、ならびに細胞の細胞外面に暴露される膜貫通ドメインの細胞外ループ、すなわち、膜貫通領域2および3、膜貫通領域4および5、ならびに膜貫通領域6および7の間の細胞外ループが含まれるであろう。「N末端ドメイン」は、N末端から出発し、そして膜貫通領域の始点に近い領域まで渡る。これらの細胞外領域は、溶解相および固相の両方で、in vitroリガンド結合アッセイに有用である。さらに、以下に記載する膜貫通領域はまた、細胞外領域と組み合わされるか、または単独であるかのいずれかで、リガンド結合に関与することも可能であり、そしてしたがって、in vitroリガンド結合アッセイにもまた有用である。
【0028】
7つの膜貫通「領域」を含む「膜貫通ドメイン」は、形質膜内にあるT2Rポリペプチドのドメインを指し、そしてまた、膜貫通「領域」とも称される、対応する細胞質(細胞内)および細胞外ループも含んでもよい。Kyte & Doolittle, J. Mol. Biol., 157:105−32(1982))、またはStryer、上記に記載されるような標準法を用いて、7つの膜貫通領域、ならびに細胞外ループおよび細胞質ループを同定してもよい。
【0029】
「細胞質ドメイン」は、細胞内部に面するT2Rタンパク質のドメイン、例えば「C末端ドメイン」ならびに膜貫通ドメインの細胞内ループ、例えば膜貫通領域1および2、膜貫通領域3および4、ならびに膜貫通領域5および6間の細胞内ループを指す。「C末端ドメイン」は、最後の膜貫通領域の端からタンパク質のC末端までに渡り、そして通常、細胞質内に位置する領域を指す。
【0030】
用語「7回膜貫通型受容体」は、形質膜を7回横断する7つの領域を有する膜貫通タンパク質のスーパーファミリーに属するポリペプチドを意味する(したがって、7つの領域は、「膜貫通」または「TM」ドメイン、TM I〜TM VIIと称される)。嗅覚および特定の味受容体のファミリーは、各々、このスーパーファミリーに属する。7回膜貫通型受容体ポリペプチドは、以下にさらに詳細に論じるように、類似でそして特徴的な、一次、二次および三次構造を有する。
【0031】
用語「リガンド結合領域」は、膜貫通ドメインII〜VII(TM II〜VII)を実質的に取り込む、化学感受性受容体または味受容体に由来する配列を指す。該領域は、リガンド、そしてより詳細には、味誘発化合物に結合可能でありうる。
【0032】
用語「形質膜転位置ドメイン」または単に「転位置ドメイン」は、典型的な転位置ドメイン(5− MNGTEGPNFYVPFSNKTGVV;配列番号1)に機能的に同等なポリペプチドドメインを意味する。これらのペプチドドメインは、ポリペプチドコード配列のアミノ末端内に取り込まれると、高い効率で、ハイブリッド(「融合」)タンパク質を、細胞形質膜へと「介添えする」かまたは「転位置させる」。この特定の「転位置ドメイン」は、最初は、7回膜貫通型受容体であるヒト・ロドプシン受容体ポリペプチドのアミノ末端から得られた。別の転位置ドメインは、ウシ・ロドプシン配列に由来しており、そしてこれもまた、転位置を促進するのに有用である。ロドプシン由来配列は、7回膜貫通融合タンパク質を形質膜に転位置させるのに特に効率的である。
【0033】
「機能的同等性」は、新規に翻訳されたタンパク質を形質膜に転位置させる際のドメインの能力および効率が、類似の条件下で、典型的な配列番号1と同程度に効率的であることを意味する;本明細書に記載するように、相対的効率を測定し(定量的な意味で)、そして比較してもよい。長さ20アミノ酸の転位置ドメインである配列番号1と同じ効率で、細胞(哺乳動物、ゼノパス等)において、新たに合成されたポリペプチドを形質膜に転位置させる際の効率に関して、日常的にスクリーニングすることによって、本発明の範囲内に属するドメインを決定してもよい。
【0034】
句「機能的効果」には、T2Rファミリーメンバーが仲介する味伝達を調節する化合物を試験するためのアッセイに関連して、間接的にまたは直接、受容体の影響下にある、任意のパラメーター、例えば機能的、物理的および化学的効果の決定が含まれる。これには、in vitro、in vivoおよびex vivoでの、リガンド結合、イオン流動の変化、膜電位、電流フロー、転写、Gタンパク質結合、GPCRリン酸化または脱リン酸化、シグナル伝達、受容体−リガンド相互作用、二次メッセンジャー濃度(例えばcAMP、cGMP、IP3、または細胞内Ca2+)が含まれ、そしてまた、神経伝達物質またはホルモン放出の増加または減少などの、他の生理学的効果も含まれる。
【0035】
「機能的効果を決定する」によって、間接的にまたは直接、T2Rファミリーメンバーの影響下にあるパラメーター、例えば機能的、物理的および化学的効果を、増加させるかまたは減少させる化合物に関するアッセイを意味する。当業者に知られる任意の手段によって、こうした機能的効果を測定してもよく、例えば、分光特性(例えば蛍光、吸光度、屈折率)、流体力学特性(例えば形状)、クロマトグラフィー特性、または溶解特性、パッチクランプ法、電圧感受性色素、全細胞電流、放射性同位体流出、誘導性マーカー、卵母細胞T2R遺伝子発現の変化;組織培養細胞T2R発現;T2R遺伝子の転写活性化;リガンド結合アッセイ;電圧、膜電位およびコンダクタンス変化;イオン流動アッセイ;cAMP、cGMP、およびイノシトール三リン酸(IP3)などの細胞内二次メッセンジャーの変化;細胞内カルシウムレベルの変化;神経伝達物質放出等がある。
【0036】
T2Rタンパク質受容体の「阻害剤」、「活性化剤」および「調節剤」は、交換可能に用いられ、これらは、味伝達に関するin vitroおよびin vivoアッセイを用いて同定される、阻害分子、活性化分子、または調節分子、例えばリガンド、アゴニスト、アンタゴニスト、ならびにその相同体および模倣体を指す。阻害剤は、例えば、結合し、部分的にまたは完全に刺激を遮断し、活性化を減少させ、防止し、遅延させ、不活性化し、脱感作するか、または味伝達を下方制御する化合物、例えばアンタゴニストである。活性化剤は、例えば、結合し、刺激し、増加させ、開放し、活性化し、促進し、活性化を増進し、感作するか、または味伝達を上方制御する化合物、例えばアゴニストである。調節剤には、例えば、受容体と:活性化剤または阻害剤と結合する細胞外タンパク質(例えばエブネリン(ebnerin)および疎水性キャリアーファミリーの他のメンバー);Gタンパク質;キナーゼ(例えばロドプシン・キナーゼ、ならびに受容体の脱活性化および脱感作に関与するベータ・アドレナリン受容体キナーゼの相同体);ならびにやはり受容体を脱活性化し、そして脱感作するアレスチンとの相互作用を改変する化合物が含まれる。調節剤には、T2Rファミリーメンバーの遺伝的に修飾された型、例えば活性が改変された型、ならびに天然存在および合成リガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、小さい化学分子等が含まれる。
【0037】
阻害剤および活性化剤に関するこうしたアッセイには、例えばT2Rファミリーメンバーを細胞または細胞膜において発現させ、例えば苦味化合物を調節する化合物の存在下または非存在下で、推定上の調節剤化合物を適用し、そして次いで、上述のように、味伝達に対する機能的効果を決定することが含まれる。潜在的な活性化剤、阻害剤、または調節剤で処理した、T2Rファミリーメンバーを含む試料またはアッセイを、該阻害剤、活性化剤、または調節剤を伴わない対照試料と比較して、調節の度合いを調べる。対照試料(調節剤で未処理)には、100%の相対的T2R活性値を割り当てる。T2Rの阻害は、対照に比較したT2R活性値が、約80%、場合によって50%または25〜0%である場合、達成されている。T2Rの活性化は、対照に比較したT2R活性値が、110%、場合によって150%、場合によって200〜500%、または1000〜3000%以上の場合、達成されている。
【0038】
用語「精製された」、「実質的に精製された」、および「単離された」は、本明細書において、本発明の化合物が天然状態で通常会合している、他の似ていない化合物を含まない状態を指す。好ましくは、「精製された」、「実質的に精製された」、および「単離された」は、組成物が、重量にして、所定の試料集団の少なくとも0.5%、1%、5%、10%、または20%、そして最も好ましくは少なくとも50%または75%を構成することを意味する。1つの好ましい態様において、これらの用語は、重量にして、所定の試料集団の少なくとも95%を構成する、本発明の化合物を指す。本明細書において、用語「精製された」、「実質的に精製された」、および「単離された」核酸またはタンパク質はまた、核酸またはタンパク質を指す場合、哺乳動物、特にヒトの体内で、天然に存在するのとは異なる精製または濃度の状態も指す。(1)会合している他の構造または化合物からの精製、あるいは(2)哺乳動物、特にヒトの体内で、通常は会合していない構造または化合物との会合を含む、哺乳動物、特にヒトの体内で、天然に存在するより高い精製または濃度の度合いはいずれも、「単離された」の意味の範囲内にある。当業者に知られる多様な方法およびプロセスにしたがって、本明細書記載の核酸またはタンパク質、あるいは核酸またはタンパク質クラスを単離してもよいし、あるいはそうでなければ、天然には通常会合していない構造または化合物と会合させてもよい。
【0039】
本明細書において、用語「単離された」は、核酸またはポリペプチドを指す場合、哺乳動物、特にヒトの体内で、天然に存在するのとは異なる精製または濃度の状態を指す。(1)天然に存在する、会合している他の構造または化合物からの精製、あるいは(2)体内で、通常は会合していない構造または化合物との会合を含む、体内で、天然に存在するより高い精製または濃度の度合いはいずれも、本明細書において「単離された」の意味の範囲内にある。当業者に知られる多様な方法およびプロセスにしたがって、本明細書記載の核酸またはポリペプチドを単離してもよいし、あるいはそうでなければ、天然には通常会合していない構造または化合物と会合させてもよい。
【0040】
本明細書において、用語「増幅する」および「増幅」は、以下に詳細に記載するように、組換えまたは天然発現核酸を生成するかまたは検出するための任意の適切な増幅方法論の使用を指す。例えば、本発明は、in vivoまたはin vitroで、本発明の天然発現(例えばゲノムまたはmRNA)または組換え(例えばcDNA)核酸(例えば本発明の味誘発化合物が結合する配列)を増幅する(例えばポリメラーゼ連鎖反応、PCRによる)ための方法および試薬(例えば特異的オリゴヌクレオチド・プライマー対)を提供する。
【0041】
用語「発現ベクター」は、原核、酵母、真菌、植物、昆虫または哺乳動物細胞を含む、任意の細胞において、恒常的にまたは誘導性に、in vitroまたはin vivoで本発明の核酸配列を発現する目的の、任意の組換え発現系を指す。該用語には、直鎖または環状発現系が含まれる。該用語には、エピソーム中にとどまるかまたは宿主細胞ゲノム内に組入れられる発現系が含まれる。発現系は、自己複製能を持ってもまた持たなくてもよく、すなわち細胞において一過性の発現のみを駆動してもよい。該用語には、組換え核酸の転写に必要な最小限の要素のみを含有する組換え発現「カセット」が含まれる。
【0042】
用語「ライブラリー」は、異なる核酸またはポリペプチド分子の混合物である調製物を意味し、例えば、縮重プライマー対での核酸の増幅によって生成された、組換え生成の、感覚、特に味受容体リガンド結合領域のライブラリー、または増幅されたリガンド結合領域を取り込んだ単離ベクター・コレクション、または味受容体をコードする少なくとも1つのベクターで、各々、ランダムにトランスフェクションされた細胞の混合物がある。
【0043】
用語「核酸」または「核酸配列」は、一本鎖または二本鎖型いずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド・オリゴヌクレオチドを指す。該用語は、天然ヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸、すなわちオリゴヌクレオチドを含む。該用語はまた、合成主鎖を持つ核酸様構造も含む。
【0044】
別に示さない限り、特定の核酸配列はまた、暗黙のうちに、その保存的に修飾された変異体(例えば縮重コドン置換)および相補配列、ならびに明確に示す配列も含む。具体的には、例えば1以上の選択されるコドンの第三の位が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することによって、縮重コドン置換を達成してもよい(Batzerら, Nucleic Acid Res., 19:5081(1991); Ohtsukaら, J. Biol. Chem., 260:2605−08(1985); Rossoliniら, Mol. Cell. Probes, 8:91−98(1994))。用語、核酸は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと交換可能に用いられる。
【0045】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において交換可能に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。該用語は、1以上のアミノ酸残基が、対応する天然存在アミノ酸の人工的化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然存在アミノ酸ポリマーおよび非天然存在アミノ酸ポリマーにあてはまる。
【0046】
本明細書記載の「転位置ドメイン」、「リガンド結合領域」、およびキメラ受容体組成物はまた、典型的な配列に実質的に対応する構造および活性を持つ、「類似体」または「保存的変異体」および「模倣体」(「ペプチド模倣体」)も含む。したがって、用語「保存的変異体」または「類似体」または「模倣体」は、変化(単数または複数)が、本明細書に定義するような、ポリペプチド(保存的変異体)の構造および/または活性を実質的に改変しないような、修飾アミノ酸配列を有する、ポリペプチドを指す。これらには、アミノ酸配列の保存的修飾変異、すなわちタンパク質活性に決定的でない残基のアミノ酸置換、付加または欠失、あるいは決定的なアミノ酸の置換であっても、構造および/または活性を実質的に改変しないような、類似の特性(例えば酸性、塩基性、正荷電または負荷電、極性または非極性など)を有する残基でのアミノ酸の置換が含まれる。
【0047】
より具体的には、「保存的に修飾された変異体」は、アミノ酸配列および核酸配列両方にあてはまる。特定の核酸配列に関しては、保存的に修飾された変異体は、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指すか、あるいは核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列を指す。遺伝暗号の縮重のため、多数の機能的に同一の核酸が、任意の所定のタンパク質をコードする。
【0048】
例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、コドンによってアラニンが特定されるすべての位で、コードされるポリペプチドを改変することなく、記載する、対応するコドンのいずれに、該コドンを改変することも可能である。
【0049】
こうした核酸変異は、保存的修飾変異の1種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする本明細書のすべての核酸配列はまた、核酸のすべてのありうるサイレント変異も記載する。当業者は、核酸中の各コドン(通常はメチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンに対する唯一のコドンであるTGCを除く)を修飾して、機能的に同一の分子を生じうることを認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異が、記載される配列各々において、暗黙である。
【0050】
機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表が当該技術分野に周知である。例えば、保存的置換を選択する1つの典型的な指針には(元来の残基の後に典型的な残基):ala/glyまたはser;arg/lys;asn/glnまたはhis;asp/glu;cys/ser;gin/asn;gly/asp;gly/alaまたはpro;his/asnまたはgln;ile/leuまたはval;leu/ileまたはval;lys/argまたはglnまたはglu;met/leuまたはtyrまたはile;phe/metまたはleuまたはtyr;ser/thr;thr/ser;trp/tyr;tyr/trpまたはphe;val/ileまたはleuが含まれる。別の典型的な指針は、各々、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する、以下の6つの群を用いる:1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(I);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)バリン(V);および6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);(例えば、Creighton, Proteins, W.H. Freeman and Company(1984); SchultzおよびSchimer, Principles of Protein Structure, Springer−Verlag(1979)もまた参照されたい)。当業者は、上に同定する置換が、唯一のありうる保存的置換ではないことを認識するであろう。例えば、いくつかの目的のため、正であるかまたは負であるかにかかわらず、すべての荷電アミノ酸を互いに保存的置換として見なしてもよい。さらに、コードされる配列中の単一のアミノ酸または少ない割合のアミノ酸を改変するか、付加するかまたは欠失させる、個々の置換、欠失または付加もまた、「保存的修飾変異」と見なすことも可能である。
【0051】
用語「模倣体」および「ペプチド模倣体」は、ポリペプチドの実質的に同じ構造的および/または機能的特性、例えば本発明の転位置ドメイン、リガンド結合領域、またはキメラ・レポーターを有する合成化学物質を指す。模倣体は、アミノ酸の合成非天然類似体で完全に構成されてもよいし、または部分的に天然ペプチドアミノ酸であり、そして部分的にアミノ酸の非天然類似体であるキメラ分子であってもよい。模倣体はまた、置換がやはり模倣体の構造および/または活性を実質的に改変しない限り、いかなる量の天然アミノ酸保存的置換を取り込んでもよい。
【0052】
保存的変異体である本発明のポリペプチドと同様、日常的な実験は、模倣体が本発明の範囲内であるかどうか、すなわちその構造および/または機能が実質的に改変されていないことを決定するであろう。ポリペプチド模倣体組成物は、典型的には3つの構造群:a)天然アミド結合(「ペプチド結合」)連結以外の残基連結群;b)天然存在アミノ酸残基の代わりの非天然残基;あるいはc)二次構造模倣を誘導する、すなわち二次構造、例えばベータ・ターン、ガンマ・ターン、ベータ・シート、アルファらせんコンホメーション等を誘導するかまたは安定化する残基から、非天然構造構成要素の任意の組み合わせを含有してもよい。ポリペプチドは、天然ペプチド結合以外の化学的手段によって、残基のすべてまたはいくつかが連結されている場合、模倣体と特徴付け可能である。個々のペプチド模倣残基は、ペプチド結合、他の化学結合またはカップリング手段、例えばグルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、二重官能性マレイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)またはN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)によって連結可能である。伝統的なアミド結合(「ペプチド結合」)の代替物となりうる連結基には、例えば、ケトメチレン(例えば、−−C(.=.O)−−NH−−の代わりの−−C(.=.O)−−CH)、アミノメチレン(CHNH)、エチレン、オレフィン(CH=CH)、エーテル(CHO)、チオエーテル(CH−−S)、テトラゾール(CN)、チアゾール、レトロアミド、チオアミド、またはエステル(例えば、Spatola, Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins, Vol. 7, 267−357, Marcell Dekker, Peptide Backbone Modifications, NY(1983)を参照されたい)が含まれる。天然存在アミノ酸残基の代わりに、すべてまたはいくつかの非天然残基を含有することによって、ポリペプチドを模倣体と特徴付けることもまた可能であり;非天然残基は、科学的文献および特許文献によく記載される。
【0053】
「標識」または「検出可能部分」は、分光、光化学、生化学、免疫化学、または化学的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識には、32P、蛍光色素、電子密度試薬、酵素(例えばELISAにおいて通常用いられるようなもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、あるいはハプテン、および例えばペプチドに放射標識を取り込むことによって検出可能にすることが可能であるか、またはペプチドと特異的に反応性である抗体を検出するのに使用可能なタンパク質が含まれる。
【0054】
「標識核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド」は、プローブに結合した標識の存在を検出することによって、プローブの存在が検出可能であるように、リンカーまたは化学結合を通じて共有的、あるいはイオン結合、ファンデルワールス結合、静電結合、または水素結合を通じて非共有的のいずれかで、標識に結合しているものである。
【0055】
本明細書において、「核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド」は、1以上の種類の化学結合を通じて、通常、相補的塩基対形成を通じて、通常、水素結合形成を通じて、相補配列の標的核酸に結合可能な核酸と定義される。本明細書において、プローブには、天然(すなわち、A、G、C、またはT)または修飾塩基(7−デアザグアノシン、イノシン等)が含まれてもよい。さらに、ハイブリダイゼーションに干渉しない限り、ホスホジエステル結合以外の連結によって、プローブ中の塩基を連結してもよい。したがって、例えば、プローブは、構成塩基がホスホジエステル連結でなくペプチド結合によって連結される、ペプチド核酸であってもよい。当業者は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに応じて、プローブが、プローブ配列と完全な相補性を欠く標的配列に結合可能であることを理解するであろう。場合によって、プローブを直接、同位体、発色団、発光団(lumiphore)、発色原で標識するか、あるいは後でストレプトアビジン複合体を結合させてもよいビオチンなどで、間接的に標識する。プローブの存在または非存在に関してアッセイすることによって、選択配列または下位配列の存在または非存在を検出してもよい。
【0056】
用語「異種」は、核酸の部分に関して用いた場合、核酸が、天然には互いに対して同じ関係で見出されない2以上の下位配列を含むことを示す。例えば、機能する新たな核酸を作製するように配置される、関連しない遺伝子由来の2以上の配列、例えば、1つの供給源由来のプロモーターおよび別の供給源由来のコード領域を有する核酸が、典型的には、組換え的に産生される。同様に、異種タンパク質は、該タンパク質が、天然には互いに対して同じ関係で見出されない2以上の下位配列を含むことを示す(例えば融合タンパク質)。
【0057】
「プロモーター」は、核酸の転写を指示する核酸配列のアレイと定義される。本明細書において、プロモーターには、転写開始部位近傍の必須核酸配列、例えばポリメラーゼ11型プロモーターの場合、TATA要素が含まれる。プロモーターにはまた、場合によって、遠位エンハンサーまたはリプレッサー要素が含まれ、こうした要素は、転写開始部位から数千塩基対も離れて位置することも可能である。「恒常的」プロモーターは、大部分の環境条件および発生条件下で活性であるプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、環境制御または発生制御下で活性であるプロモーターである。用語「機能可能であるように連結される」は、核酸発現調節配列(プロモーター、または転写因子結合部位のアレイ)および第二の核酸配列間の機能する連結を指し、ここで発現調節配列は、第二の配列に対応する核酸の転写を指示する。
【0058】
本明細書において、「組換え」は、in vitroで合成されるかまたは別の方式で操作されるポリヌクレオチド(例えば「組換えポリヌクレオチド」)、組換えポリヌクレオチドを用いて、細胞または他の生物学的系において、遺伝子産物を産生する方法、あるいは組換えポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド(「組換えタンパク質」)を指す。「組換え手段」はまた、例えば本発明の転位置ドメインおよび本発明のプライマーを用いて増幅される核酸配列を含む融合タンパク質の誘導性発現または恒常的発現のための、発現カセットまたはベクターへの、異なる供給源由来の多様なコード領域もしくはドメインまたはプロモーター配列を有する核酸の連結を含む。
【0059】
句「選択的に(または特異的に)ハイブリダイズする」は、複合混合物(例えば総細胞またはライブラリーDNAまたはRNA)に配列が存在する場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、特定のヌクレオチド配列のみに対する、分子の結合、二重鎖化、またはハイブリダイゼーションを指す。
【0060】
句「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、プローブが、典型的には核酸の複合混合物において、標的下位配列にハイブリダイズするが、他の配列にはハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、そして異なる環境では異なるであろう。より長い配列は、より高い温度で、特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範囲の指針が、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridisation with Nucleic Probes, “Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays”(1993)に見られる。一般的に、ストリンジェントな条件は、定義されるイオン強度、pHで、特定の配列に関する熱融点(Tm)より約5〜10℃低いように選択される。Tmは、(定義されるイオン強度、pH、および核酸濃度下で)平衡状態で、標的に相補的なプローブの50%が、標的配列にハイブリダイズする(標的配列が過剰に存在するため、Tmでは、平衡状態で、プローブの50%が占有される)温度である。ストリンジェントな条件は、pH7.0〜8.3で、塩濃度が約1.0Mナトリウムイオン未満、典型的には0.01〜1.0Mナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、そして温度が、短いプローブ(例えば10〜50ヌクレオチド)に関しては少なくとも約30℃、そして長いプローブ(例えば50より長いヌクレオチド)に関しては少なくとも約60℃であるものであろう。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドなどの脱安定化剤の添加でも達成可能である。選択的または特異的ハイブリダイゼーションのため、陽性シグナルは、バックグラウンドの少なくとも2倍であり、場合によってバックグラウンド・ハイブリダイゼーションの10倍である。典型的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、以下のとおりであってもよい:50%ホルムアミド、5xSSC、および1%SDS、42℃でインキュベーション、または5xSSC、1%SDS、65℃でインキュベーション、0.2xSSCおよび0.1%SDS、65℃の洗浄。こうしたハイブリダイゼーションおよび洗浄工程を、例えば1、2、5、10、15、30、60分;またはそれより長い期間行ってもよい。
【0061】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それでも、これらがコードするポリペプチドが実質的に関連しているならば、実質的に関連している。これは、例えば、遺伝暗号によって許可される最大のコドン縮重を用いて、核酸のコピーが生成される場合に起こる。こうした場合、核酸は、典型的には、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。典型的な「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」には、40%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSの緩衝液中、37℃でのハイブリダイゼーション、および1xSSC中、45℃での洗浄が含まれる。こうしたハイブリダイゼーションおよび洗浄工程を、例えば、1、2、5、10、15、30、60分、またはそれより長い期間行ってもよい。陽性ハイブリダイゼーションは、バックグラウンドの少なくとも2倍である。一般の当業者は、別のハイブリダイゼーション条件および洗浄条件を利用して、類似のストリンジェンシーの条件を提供しうることを容易に認識するであろう。
【0062】
「抗体」は、抗原に特異的に結合し、そして抗原を特異的に認識する、免疫グロブリン遺伝子由来のフレームワーク領域またはその断片を含むポリペプチドを指す。認識される免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、およびミュー定常領域遺伝子、ならびに多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、カッパまたはラムダいずれかとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンとして分類され、これらは次に、それぞれ、免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを明示する。
【0063】
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、2つの同一の対のポリペプチド鎖で構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識の原因となる、約100〜110またはそれより多いアミノ酸の可変領域を定義する。用語、可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)は、それぞれ、これらの軽鎖および重鎖を指す。
【0064】
「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なるもしくは改変されたクラス、エフェクター機能および/もしくは種の定常領域、またはキメラ抗体に新たな特性を与える、完全に異なる分子、例えば酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬剤等に連結されるように、定常領域またはその一部が、改変されているか、置換されているか、または交換されているか;あるいは(b)可変領域またはその一部が、異なるまたは改変された抗原特異性を有する可変領域で改変されているか、置換されているかまたは交換されている、抗体分子である。
【0065】
「抗T2R」抗体は、T2R遺伝子、cDNA、またはその下位配列によってコードされるポリペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片である。
用語「イムノアッセイ」は、抗原に特異的に結合する抗体を用いるアッセイである。イムノアッセイは、特定の抗体の特異的結合特性を使用して、抗原を単離し、標的とし、そして/または定量化することによって特徴付けられる。
【0066】
句、抗体に「特異的に(または選択的に)結合する」または「特異的に(または選択的に)免疫反応性である」は、タンパク質またはペプチドを指す場合、タンパク質および他の生物製剤の不均質集団において、タンパク質の存在を決定する結合反応を指す。したがって、指定されたイムノアッセイ条件下で、特定される抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍で、特定のタンパク質に結合し、そして試料に存在する他のタンパク質には、有意な量では実質的に結合しない。こうした条件下での抗体への特異的結合は、特定のタンパク質に対する特異性に関して選択された抗体を必要としうる。
【0067】
例えば、ラット、マウス、またはヒトなどの特定の種から、T2Rファミリーメンバーに対して作製されたポリクローナル抗体を選択して、T2Rポリペプチドまたはその免疫原性部分と特異的に免疫反応性であり、そしてT2Rポリペプチドのオルソログまたは多型変異体およびアレルを除く、他のタンパク質とは免疫反応性でない、ポリクローナル抗体のみを得ることも可能である。他の種由来のT2R分子または他のT2R分子と交差反応する抗体を減じることによって、この選択を達成してもよい。また、T2R GPCRファミリーメンバーのみを認識し、他のファミリー由来のGPCRを認識しない抗体を選択してもよい。多様なイムノアッセイ形式を用いて、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択してもよい。例えば、固相ELISAイムノアッセイを日常的に用いて、タンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択する(イムノアッセイ形式、および特異的免疫反応性を決定するのに使用可能な条件の説明に関しては、例えばHarlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual(1988)を参照されたい)。典型的には、特異的反応または選択的反応は、バックグラウンド・シグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、そしてより典型的には、バックグラウンドの10〜100倍より高いであろう。
【0068】
句「選択的に会合する」は、上に定義するように、核酸が、別の核酸と「選択的にハイブリダイズする」能力、または上に定義するように、抗体が、タンパク質と「選択的に(または特異的に)結合する」能力を指す。
【0069】
用語「発現ベクター」は、in vitroまたはin vivoで、恒常的にまたは誘導性に、原核、酵母、真菌、植物、昆虫または哺乳動物細胞を含む任意の細胞において、本発明の核酸配列を発現する目的のための、任意の組換え発現系を指す。該用語には、直鎖または環状発現系が含まれる。該用語には、エピソーム中にとどまるかまたは宿主細胞ゲノム内に組込まれる発現系が含まれる。発現系は、自己複製能を持ってもまた持たなくてもよく、すなわち細胞において一過性の発現のみを駆動してもよい。該用語には、組換え核酸の転写に必要な最小限の要素のみを含有する組換え発現「カセット」が含まれる。
【0070】
「宿主細胞」によって、発現ベクターを含有し、そして発現ベクターの複製または発現を支持する細胞を意味する。宿主細胞は、大腸菌(E. coli)などの原核細胞、あるいは酵母、昆虫、両生類、または哺乳類細胞などの真核細胞、例えばCHO、HeLa、HEK−293等、例えば培養細胞、外植片およびin vivoの細胞であってもよい。
【0071】
前述のものに基づいて、本発明は、苦味化合物、すなわちラニチジン、アセトアミノフェン、デナトニウム、ストリキニーネまたは構造的に関連する化合物による、先に同定されたヒト苦味受容体の特異的活性化を調節する、好ましくは遮断する化合物を同定するためのアッセイを提供する。特に、本発明は、ラニチジンまたは構造的に関連する化合物に対する、hT2R8、hT2R54またはhT2R75の活性化;アセトアミノフェンまたは構造的に関連する化合物に対する、hT2R54の活性化;安息香酸デナトニウムまたは構造的に関連する化合物に対する、hT2R8、hT2R10、hT2R13、hT2R54、hT2R61またはhT2R75の活性化;あるいはストリキニーネまたは構造的に関連する化合物に対する、hT2R8、hT2R9、hT2R10、hT2R54、またはhT2R75の活性化を調節する(例えば遮断する)化合物を同定するための、細胞に基づくアッセイを提供する。これらの化合物が、ヒト被験体におけるこれらの味受容体と関連する苦味を調節するであろうと予期される。これを味試験において確認してもよい。
【0072】
上述の味受容体が、苦味リガンド、すなわち、アセトアミノフェン、安息香酸デナトニウム、ストリキニーネおよびラニチジンに特異的に応答することは、他の刊行物とともに、本譲受人によって出願された特許出願、例えばどちらもその全体が本明細書に援用される、U.S.第10/191,058号および第09/825,882号に報告される、HEK293発現系およびカルシウム画像化法を用いて決定された。より具体的には、本発明者らは、特定のhT2Rとともに、カルボキシ44アミノ酸残基をガストデューシンのもので置換することによって修飾した、Gα14 Gタンパク質配列を含むキメラGタンパク質(G16 gust 44)でHEK293細胞をトランスフェクションし、そしてカルシウム画像化法によって、特定の苦味リガンドに対するこれらの細胞の応答を記録した。
【0073】
図1に示すように、hT2R8、hT2R54、およびhT2R75が、10μM濃度のラニチジンに応答したが、同じ濃度のスクロースには応答しないことが見出された。したがって、これらの細胞、またはこれらの受容体を機能するように発現する他の細胞をアッセイに用いて、ラニチジン活性化を調節する、好ましくはこれらの受容体のラニチジン活性化を遮断する化合物を同定することも可能である。
【0074】
また、図2に示すように、hT2R8およびhT2R54が、用量依存性方式で、78μMの味検出閾値で特異的に応答することが観察された(n=4)。
さらに、図3に示すように、これらの同じカルシウム画像化実験を用いて、hT2R54が、10μMのアセトアミノフェンに特異的に応答するが、同じ濃度のDPBSまたはサリシンには応答しないことが観察された。
【0075】
この結果を、デナトニウムおよびアセトアミノフェンに対するhT2R54の用量応答を評価する実験において確認した(ここでアセトアミノフェンに関する苦味閾値は、ヒトでは1.25μMであり、そしてデナトニウムに関するEC50は0.38μMであり、そしてアセトアミノフェンに関するEC50は1.83μMである)。これらの結果は、hT2R54を機能するように発現する細胞をアッセイで用いて、苦味を調節するリガンド、特にアセトアミノフェン、デナトニウムまたは構造的に関連する化合物によって誘発される苦味を調節する化合物を同定することも可能であることを確認した。これは、例えば子供向けのものを含めて、薬剤におけるアセトアミノフェンの広い利用を考慮すると重要な発見であり、そして関連する苦味を遮断する化合物の同定は、こうした化合物のおいしさを改善し、そして経口型での利用を増進するであろう。
【0076】
さらに、図5に示すように、類似のカルシウム画像化実験によって、hT2R10、hT2R8、hT2R61、hT2R54、hT2R75、およびhT1R13が、安息香酸デナトニウムに特異的に応答することが明らかになった。図6に含有される実験によって、hT2R8が、用量特異的方式で、デナトニウムに応答することが確認された(0.45mMのEC50および24mMの味検出閾値)。
【0077】
これらの結果は、hT2R8、hT2R10、hT1R13、hT2R54、hT2R61またはhT2R75味受容体のいずれか1つを機能するように発現する細胞をアッセイで用いて、hT2R8、hT2R10、hT1R13、hT2R54、hT2R61またはhT2R75に関連する苦味、例えばデナトニウムまたは構造的に関連する化合物によって誘発される苦味を調節するリガンドを同定することも可能であることを示す。
【0078】
最後に、同じカルシウム画像化実験を用いて得られる、図7に含有される結果は、hT2R8、hT2R10、hT1R13、hT2R54、hT2R61およびhT2R75が、各々、ストリキニーネに特異的に応答することを明らかにした。
【0079】
これらに基づいて、hT2R8、hT2R9、hT2R10、hT1R13、hT2R54、hT2R61またはhT2R75味受容体の少なくとも1つを機能するように発現する細胞をアッセイで用いて、hT2R8、hT2R9、hT2R10、hT1R13、hT2R54、hT2R61およびhT2R75のいずれか1つと関連する苦味、特にデナトニウム、アセトアミノフェン、ラニチジン、ストリキニーネまたは構造的に関連する化合物によって誘発される苦味を調節する化合物を同定することも可能である。
【0080】
好ましくは、これらのアッセイは、以下に同定するアミノ酸配列の1つを有するhT2RをコードするDNAを発現する試験細胞を利用するであろう。しかし、これらの苦味受容体の機能特性を保持する、すなわちいくつかの苦味化合物に応答する、これらの受容体ポリペプチドの断片、オルソログ、変異体またはキメラもまた、これらのアッセイにおいて有用であろうことが予期される。こうした変異体の例には、スプライス変異体、一塩基多型、アレル変異体、および組換えもしくは化学的手段によって産生されたか、または天然存在である突然変異が含まれる。これらの受容体の活性化を阻害する化合物を同定するための、本発明のアッセイおよび本発明での使用が意図されるアッセイにおいて用いられる、T2Rの単離および発現手段を、以下に示す。
【0081】
T2Rの単離および発現
本発明のT2R、あるいはその断片または変異体の単離および発現は、本出願に開示するT2R核酸配列に基づいて構築されたプローブまたはプライマーを用いて、よく確立されたクローニング法によって、達成可能である。本明細書に開示する配列、およびコンピュータに基づく既知の検索技術、例えばBLAST配列検索を用いて、ヒトまたは他の種のゲノム・データベースから、関連T2R配列を同定することもまた可能である。特定の態様において、本明細書に開示する偽遺伝子を用いて、機能するアレルまたは関連遺伝子を同定することも可能である。
【0082】
次いで、発現ベクターを用いて、これらの配列の機能的発現のため、宿主細胞を感染させるかまたはトランスフェクションしてもよい。これらの遺伝子およびベクターをin vitroまたはin vivoで作製し、そして発現させてもよい。当業者は、本発明のベクター内の遺伝子および核酸の発現または活性を調節することによって(例えばプロモーター、エンハンサー等)、核酸発現を改変し、そして調節するために、望ましい表現型を得ることも可能であることを認識するであろう。発現または活性を増加させるかまたは減少させるために記載される既知の方法のいずれを用いてもよい。当該技術分野に知られるいかなる方法またはプロトコルと組み合わせて本発明を実施してもよく、こうした方法またはプロトコルは、科学的文献および特許文献によく記載されている。
【0083】
あるいは、例えば、Carruthers, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 47:411−18(1982); Adams, Am. Chem. Soc., 105:661(1983); Belousov, Nucleic Acids Res. 25:3440−3444(1997); Frenkel, Free Radic. Biol. Med. 19:373−380(1995); Blommers, Biochemistry 33:7886−7896(1994); Narang, Meth. Enzymol. 68:90(1979); Brown, Meth. Enzymol. 68:109(1979); Beaucage, Tetra. Lett. 22:1859(1981);米国特許第4,458,066号に記載されるように、周知の化学合成技術によって、in vitroで、これらの核酸を合成してもよい。次いで、相補鎖を合成し、そして適切な条件下で鎖を一緒にアニーリングすることによって、または適切なプライマー配列とともにDNAポリメラーゼを用いて、相補鎖を付加することによって、二本鎖DNA断片を得てもよい。
【0084】
核酸の操作のため、例えば配列中に突然変異を生成し、サブクローニングし、プローブを標識し、配列決定し、ハイブリダイゼーションするなどのための技術は、科学的文献および特許文献中によく記載されている。例えば、Sambrook監修, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第2版), Vol. 1−3, Cold Spring Harbor Laboratory(1989); Ausubel監修, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York(1997); Tijssen監修, Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology: Hybridization With Nucleic Acid Probes, Part I, Theory and Nucleic Acid Preparation, Elsevier, N.Y.(1993)を参照されたい。
【0085】
当業者に周知のいくつかの一般的な手段のいずれによって、核酸、ベクター、キャプシド、ポリペプチド等を分析し、そして定量化してもよい。これらには、例えば、NMR、分光光度法、放射線写真撮影、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、および超分散(hyperdiffusion)クロマトグラフィー、多様な免疫学的方法、例えば液体またはゲル沈降反応、免疫分散、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、サザン分析、ノーザン分析、ドットブロット分析、ゲル電気泳動(例えばSDS−PAGE)、RT−PCR、定量的PCR、他の核酸あるいは標的またはシグナル増幅法、放射標識、シンチレーション計測、およびアフィニティークロマトグラフィーなどの分析生化学法が含まれる。
【0086】
オリゴヌクレオチド・プライマーを用いて、T2Rリガンド結合領域をコードする核酸を増幅してもよい。また、増幅技術を用いて、本明細書記載の核酸をクローニングするかまたは定量的に測定してもよい。増幅法もまた当該技術分野に周知であり、そして例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Innis監修, PCR Protocols, a Guide to Methods and Applications, Academic Press, N.Y.(1990); Innis監修, PCR Strategies, Academic Press, Inc., N.Y.(1995));リガーゼ連鎖反応(LCR)(Wu, Genomics, 4:560(1989); Landegren, Science, 241:1077(1988); Barringer, Gene, 89:117(1990));転写増幅(Kwoh, PNAS, 86:1173(1989));自己維持配列複製(Guatelli, PNAS, 87:1874(1990));Qベータ・レプリカーゼ増幅(Smith, J. Clin. Microbiol., 35:1477−91(1997));自動化Q−ベータ・レプリカーゼ増幅アッセイ(Burg, Mol. Cell. Probes, 10:257−71(1996));および他のRNAポリメラーゼ仲介技術(例えば、NASBA、Cangene、オンタリオ州ミシサーガ)が含まれる。Berger, Methods Enzymol., 152:307−16(1987); Sambrook; Ausubel;米国特許第4,683,195号および第4,683,202号; Sooknanan, Biotechnology, 13:563−64(1995)もまた参照されたい。
【0087】
増幅したら、望ましい場合、個々にまたライブラリーとしてのいずれかの核酸を、当該技術分野に知られる方法にしたがって、日常的な分子生物学的方法を用いて、任意の多様なベクター内にクローニングしてもよい;in vitroで増幅した核酸をクローニングするための方法が、例えば米国特許第5,426,039号に記載される。増幅された配列のクローニングを容易にするため、PCRプライマー対内に、制限酵素部位を「構築して」もよい。例えば、本発明の典型的なプライマー対内に、PstIおよびBspE1部位を設計した。これらの特定の制限部位は、連結した際、7回膜貫通受容体「ドナー」コード配列に関して「インフレーム」である配列を有し、このコード配列内に制限部位がスプライスされる(リガンド結合領域コード配列が7回膜貫通ポリペプチドの内部であり、したがって、制限酵素スプライス部位下流の構築物が翻訳されることが望ましい場合、インフレームでない(out of frame)結果は回避すべきである;挿入されるリガンド結合領域が、膜貫通VII領域の実質的に大部分を構成する場合、これは不要でありうる)。「ドナー」7回膜貫通受容体の元来の配列を保持するように、プライマーを設計してもよい。あるいは、プライマーは、保存的置換(例えば疎水性残基に対する疎水性残基、上記考察を参照されたい)または機能的に良性の置換(例えば形質膜挿入を防止せず、ペプチダーゼによる切断を引き起こさず、受容体の異常なフォールディングを引き起こさない等)であるアミノ酸残基をコードしてもよい。
【0088】
T2Rタンパク質のリガンド結合領域を選択的に増幅するように、プライマー対を設計してもよい。これらの結合領域は、異なるリガンドに関して多様であることもあり;したがって、1つのリガンドに対する最小結合領域でありうるものは、第二の潜在的なリガンドには、あまりにも限定的でありうることもある。したがって、異なるドメイン構造を含む異なるサイズの結合領域を増幅してもよく;例えば、7回膜貫通T2Rの膜貫通(TM)ドメインII〜VII、III〜VII、III〜VIまたはII〜VI、あるいはその変形(例えば、特定のドメインの下位配列のみ、ドメインの順をごちゃ混ぜにする等)が含まれてもよい。
【0089】
多くの7回膜貫通T2Rタンパク質のドメイン構造および配列が知られるため、当業者は、縮重増幅プライマー対を設計するモデル配列として、ドメイン隣接配列および内部ドメイン配列を容易に選択可能である。例えば、プライマー対を用いたPCR増幅によって、ドメイン領域II〜VIIをコードする核酸配列を生成してもよい。膜貫通ドメインI(TM I)配列を含む核酸を増幅するため、上述のT2Rファミリー・コンセンサス配列1のアミノ酸配列をコードする核酸から、縮重プライマーを設計してもよい。こうした縮重プライマーを用いて、TM I〜TM III、TM I〜TM IV、TM I〜TM V、TM I〜TM VIまたはTM I〜TM VIIを取り込む結合領域を生成してもよい。本明細書に提供する他のT2Rファミリー・コンセンサス配列に基づいて、他の縮重プライマーを設計してもよい。こうした縮重プライマーを用いて、TM III〜TM IV、TM III〜TM V、TM III〜TM VIまたはTM III〜TM VIIを取り込む結合領域を生成してもよい。
【0090】
縮重プライマー対を設計する実例が当該技術分野に周知である。例えば、コンセンサス−縮重ハイブリッド・オリゴヌクレオチド・プライマー(COnsensus−DEgenerate Hybrid Oligonucleotide Primer)(CODEHOP)戦略コンピュータ・プログラムにアクセス可能であり、そして既知の味受容体リガンド結合領域として、関連するタンパク質配列セットで開始して、ハイブリッド・プライマー予測のためのBlockMaker多数配列並列サイトから、該プログラムに直接リンクしてもよい(例えば、Rose, Nucleic Acids Res., 26:1628−35(1998);Singh, Biotechniques, 24:318−19(1998)を参照されたい)。
【0091】
オリゴヌクレオチド・プライマー対を合成する手段が、当該技術分野に周知である。「天然」塩基対または合成塩基対を用いてもよい。例えば、人工的核酸塩基の使用によって、プライマー配列を操作し、そしてより複雑な増幅産物混合物を生じる、多用途のアプローチが提供される。人工的核酸塩基の多様なファミリーは、内部結合回転を通じて、多数の水素結合配向を担うことが可能であり、縮重分子認識のための手段を提供する。これらの類似体をPCRプライマーの単一の位に取り込むことによって、増幅産物の複雑なライブラリーの生成が可能になる。例えばHoops, Nucleic Acids Res., 25:4866−71(1997)を参照されたい。非極性分子を用いて、天然DNA塩基の形状を模倣することもまた可能である。アデニンを模倣する非水素結合形状は、チミンを模倣する非極性形状に対して、効率的にそして選択的に複製可能である(例えばMorales, Nat. Struct. Biol., 5:950−54(1998)を参照されたい)。例えば、2つの縮重塩基は、ピリミジン塩基、6H,8H−3,4−ジヒドロピリミド[4,5−c][1,2]オキサジン−7−オンまたはプリン塩基、N6−メトキシ−2,6−ジアミノプリンであることも可能である(例えば、Hill, PNAS, 95:4258−63(1998)を参照されたい)。本発明の典型的な縮重プライマーは、核酸塩基類似体、5’−ジメトキシトリチル−N−ベンゾイル−2’−デオキシ−シチジン,3’−[(2−シアノエチル)−−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホロアミダイト(配列中の用語「P」、上記を参照されたい)を取り込む。このピリミジン類似体は、AおよびG残基を含むプリンと水素結合する。
【0092】
本明細書に開示する味受容体に、実質的に同一である、多型変異体、アレル、および種間相同体を、上述の核酸プローブを用いて、単離してもよい。あるいは、T2Rポリペプチドに対して作製され、また、T2R相同体も認識し、そして該相同体にも選択的に結合する、抗血清または精製抗体を用いて、発現された相同体を免疫学的に検出することによって、発現ライブラリーを用いて、T2Rポリペプチドおよびその多型変異体、アレル、および種間相同体をクローニングしてもよい。
【0093】
適切な(完全または縮重)プライマー対を用いた、適切な核酸配列の増幅(例えばPCR)によって、味受容体のリガンド結合領域をコードする核酸を生成してもよい。増幅される核酸は、任意の細胞または組織由来のゲノムDNA、あるいは味受容体発現細胞由来のmRNAまたはcDNAであってもよい。
【0094】
1つの態様において、転位置配列に融合されたT2Rをコードする核酸を含むハイブリッド・タンパク質コード配列を構築してもよい。やはり提供するのは、転位置モチーフ、および化学感受性受容体の他のファミリー、特に味受容体の味誘発化合物結合領域を含む、ハイブリッドT2Rである。これらの核酸配列を、転写または翻訳調節要素、例えば転写および翻訳開始配列、プロモーターおよびエンハンサー、転写および翻訳ターミネーター、ポリアデニル化配列、およびDNAをRNAに転写するのに有用な他の配列に、機能可能であるように連結してもよい。組換え発現カセット、ベクター、およびトランスジェニックの構築において、プロモーター断片を使用して、すべての望ましい細胞または組織において、望ましい核酸の発現を導いてもよい。
【0095】
別の態様において、融合タンパク質には、C末端またはN末端転位置配列が含まれてもよい。さらに、融合タンパク質は、例えばタンパク質検出、精製、または他の適用のため、さらなる要素を含んでもよい。検出および精製促進ドメインには、例えばポリヒスチジン・トラクト、ヒスチジン−トリプトファン・モジュール、または固定された金属上での精製を可能にする他のドメインなどの、金属キレートペプチド;マルトース結合タンパク質;固定された免疫グロブリン上での精製を可能にするプロテインAドメイン;またはFLAGS伸張/アフィニティー精製系(Immunex社、ワシントン州シアトル)において利用されるドメインが含まれる。
【0096】
転位置ドメイン(効率的な形質膜発現のため)および残りの新規に翻訳されるポリペプチドの間に、因子Xa(例えば、Ottavi, Biochimie, 80:289−93(1998))、サブチリシン・プロテアーゼ認識モチーフ(例えば、Polyak, Protein Eng., 10:615−19(1997)を参照されたい);エンテロキナーゼ(Invitrogen、カリフォルニア州サンディエゴ)などの切断可能リンカー配列等を含むと、精製を容易にするのに有用でありうる。例えば、1つの構築物に、6つのヒスチジン残基に連結された、核酸配列をコードするポリペプチド、それに続くチオレドキシン、エンテロキナーゼ切断部位(例えば、Williams, Biochemistry, 34:1787−97(1995)を参照されたい)、およびC末端転位置ドメインが含まれてもよい。ヒスチジン残基は、検出および精製を容易にし、一方、エンテロキナーゼ切断部位は、融合タンパク質の残りから、所望のタンパク質(単数または複数)を精製するための手段を提供する。融合タンパク質をコードするベクターおよび融合タンパク質の適用に関連する技術が、科学的文献および特許文献によく記載されている(例えば、Kroll, DNA Cell. Biol,. 12:441−53(1993)を参照されたい)。
【0097】
発現ベクターは、リガンド結合領域コード配列を含む、個々の発現ベクターまたは発現ベクター・ライブラリーのいずれかとして、科学的文献および特許文献によく記載される多様な慣用的技術によって、ゲノム内または細胞質内または細胞の核内に導入され、そして発現されてもよい。例えば、Roberts, Nature, 328:731(1987); Berger 上記; Schneider, Protein Exper. Purif., 6435:10(1995); Sambrook; Tijssen; Ausubelを参照されたい。生物学的試薬および実験装置の製造者の製品情報もまた、既知の生物学的方法に関する情報を提供する。ベクターを天然供給源から単離しても、ATCCまたはGenBankライブラリーなどの供給源から得ても、あるいは合成または組換え法によって調製してもよい。
【0098】
細胞において、安定にまたは一過性に発現される(例えばエピソーム発現系)、発現カセット、ベクターまたはウイルス中で、核酸を発現してもよい。発現カセットおよびベクター内に選択マーカーを取り込んで、形質転換細胞および配列に、選択可能表現系を与えてもよい。例えば、選択マーカーは、宿主ゲノムへの組込みが不要であるように、エピソーム維持および複製のための配列をコードしてもよい。例えば、マーカーは、抗生物質耐性(例えばクロラムフェニコール、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、ハイグロマイシン)または除草剤耐性(例えばクロロスルフロンまたはBasta)をコードして、所望のDNA配列で形質転換された細胞の選択を可能にしてもよい(例えば、Blondelet−Rouault, Gene, 190:315−17(1997); Aubrecht, J. Pharmacol. Exp. Ther., 281:992−97(1997)を参照されたい)。ネオマイシンまたはハイグロマイシンのような物質に対する耐性を与える選択可能マーカー遺伝子は、組織培養中でのみ利用可能であるため、in vitroおよびin vivoで、化学耐性遺伝子もまた、選択可能マーカーとして用いられる。
【0099】
キメラ核酸配列は、任意の7回膜貫通ポリペプチド内に、T2Rリガンド結合領域をコードしてもよい。7回膜貫通型受容体ポリペプチドは、類似の一次配列、ならびに二次および三次構造を有するため、配列分析によって、構造ドメイン(例えば細胞外ドメイン、TMドメイン、細胞質ドメインなど)を容易に同定可能である。例えば、相同性モデリング、フーリエ解析およびらせん周期性検出は、7回膜貫通型受容体配列を持つ7つのドメインを同定し、そして性質決定することも可能である。高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを用いて、分析する配列の疎水性および可変性のプロフィールを性質決定する主な周期を評価してもよい。周期検出増進およびアルファらせん周期性指標は、例えば、Donnelly, Protein Sci., 2:55−70(1993)によるように、行ってもよい。他の並列およびモデリング・アルゴリズムが当該技術分野に周知である(例えば、Peitsch, Receptors Channels, 4:161−64(1996); Kyte & Doolittle, J. Md. Biol., 157:105−32(1982);およびCronet, Protein Eng., 6:59−64(1993)を参照されたい)。
【0100】
本発明にはまた、明記する核酸およびアミノ酸配列を有する核酸分子およびポリペプチドだけでなく、その断片、特に例えば40、60、80、100、150、200、または250ヌクレオチド、あるいはそれより長い断片、ならびに例えば10、20、30、50、70、100、または150アミノ酸、あるいはそれより長いポリペプチド断片も含まれる。場合によって、核酸断片は、T2Rファミリーメンバーに対して作製された抗体に結合することが可能な抗原性ポリペプチドをコードしてもよい。さらに、本発明のタンパク質断片は、場合によって、T2Rファミリーメンバーに対して作製された抗体に結合することが可能な抗原性断片であってもよい。
【0101】
やはり意図されるのは、別のGPCR、好ましくは7回膜貫通型スーパーファミリーのメンバーのすべてまたは一部に相当するさらなるアミノ酸とカップリングした、本明細書記載のT2Rポリペプチドの少なくとも1つの少なくとも10、20、30、50、70、100、または150アミノ酸を含む、キメラタンパク質である。本受容体および別のGPCRから、これらのキメラを作製してもよいし、または2以上の本発明の受容体を組み合わせることによって作製してもよい。1つの態様において、キメラの1つの部分は、本発明のT2Rポリペプチドの膜貫通ドメインに相当するか、または該ドメインに由来する。別の態様において、キメラの1つの部分は、本明細書記載のT2Rポリペプチドの膜貫通領域の1以上に相当するか、または該領域に由来し、そして残りの単数または複数の部分は、別のGPCRに由来してもよい。キメラ受容体は当該技術分野に周知であり、そしてこれらを生成する技術、ならびにこれに取り込むためのGタンパク質共役型受容体のドメインまたは断片の選択および境界もまた、周知である。したがって、こうしたキメラ受容体を生成するため、当業者のこの知識を容易に用いることも可能である。こうしたキメラ受容体の使用は、例えば、先行技術のアッセイ系に用いられる周知の受容体などの別の受容体に特徴的なシグナル伝達と共役させて、本明細書に具体的に開示する受容体の1つに特徴的な味選択性を提供することも可能である。
【0102】
例えば、リガンド結合領域、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞質ドメイン、N末端ドメイン、C末端ドメイン、またはその任意の組み合わせなどの領域を、異種タンパク質に共有連結してもよい。例えば、T2R膜貫通領域を、異種GPCR膜貫通ドメインに連結してもよいし、または異種GPCR細胞外ドメインを、T2R膜貫通領域に連結してもよい。選択される他の異種タンパク質には、例えば緑色蛍光タンパク質、ベータ−gal、グルタミン酸受容体、およびロドプシンN末端が含まれてもよい。
【0103】
本発明の範囲内には、本発明のT2R、断片、または変異体を発現するための宿主細胞がある。本発明のT2R、断片、または変異体をコードするcDNAなどの、クローニングされた遺伝子または核酸の発現を高レベルで得るために、当業者は、典型的には、転写を支持する強いプロモーター、転写/翻訳ターミネーター、およびタンパク質をコードする核酸の場合は、翻訳開始のためのリボソーム結合部位を含有する発現ベクター内に、関心対象の核酸配列をサブクローニングする。適切な細菌プロモーターが当該技術分野に周知であり、そして例えば、Sambrookらに記載される。しかし、細菌または真核発現系を用いてもよい。
【0104】
宿主細胞に外来(foreign)ヌクレオチド配列を導入するため、周知の方法のいずれを用いてもよい。これらには、リン酸カルシウム・トランスフェクション、ポリブレン、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム、マイクロインジェクション、形質ベクター(plasma vector)、ウイルスベクター、およびクローニングしたゲノムDNA、cDNA、合成DNAまたは他の外来遺伝物質を宿主細胞内に導入するための他の周知の方法(例えばSambrookらを参照されたい)のいずれの使用も含まれる。用いる特定の遺伝子操作法が、少なくとも1つの核酸分子を、関心対象のT2R、断片、または変異体を発現可能な宿主細胞に導入するのに成功することが可能でありさえすればよい。
【0105】
発現ベクターを細胞内に導入した後、トランスフェクションした細胞を、関心対象の受容体、断片、または変異体の発現を支持する条件下で培養し、次いで、標準的技術を用いて、培養から回収する。こうした技術の例が当該技術分野に周知である。例えば、本開示と一致する方式で援用される、WO 00/06593を参照されたい。
本発明にしたがってT2Rの活性を調節する化合物を検出するためのアッセイ
in vitroおよびin vivoの両方で、試験化合物が、本発明のT2Rポリペプチドに特異的に結合するかどうかを決定するための方法および組成物を以下に記載する。細胞生理の多くの側面を監視して、天然存在またはキメラT2Rへのリガンド結合の効果を評価してもよい。T2Rポリペプチドを発現している、損なわれていない(intact)細胞に対して、透過処理した細胞に対して、または標準法によって産生された膜分画に対して、これらのアッセイを行ってもよい。
【0106】
味受容体は、味誘発化合物と結合し、そして化学刺激の電気シグナルへの伝達を開始する。活性化されたかまたは阻害されたGタンパク質が、順番に、標的酵素、チャネル、および他のエフェクター・タンパク質の特性を改変するであろう。いくつかの例は、視覚系におけるトランスデューシンによるGMPホスホジエステラーゼの活性化、刺激性Gタンパク質によるアデニル酸シクラーゼの活性化、Gqおよび他の同族Gタンパク質によるホスホリパーゼCの活性化、ならびにGiおよび他のGタンパク質による多様なチャネルの調節である。ホスホリパーゼCによるジアシルグリセロールおよびIP3の生成、そしてそれに続くIP3によるカルシウム可動化などの下流の結果もまた、調べてもよい。
【0107】
アッセイのT2Rタンパク質またはポリペプチドは、典型的には、配列番号3、5、7、9、11、13、または15に含有される配列を有するポリペプチド、あるいはその断片または保存的に修飾された変異体から選択されるであろう。
【0108】
あるいは、アッセイのT2Rタンパク質またはポリペプチドは、真核宿主細胞由来であってもよく、そして配列番号3、5、7、9、11、13、または15にアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、あるいは保存的に修飾されたその変異体を含んでもよい。一般的に、アミノ酸配列同一性は、少なくとも30%、好ましくは30〜40%、より具体的には50〜60、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%であろう。場合によって、アッセイのT2Rタンパク質またはポリペプチドは、細胞外ドメイン、膜貫通領域、細胞質ドメイン、リガンド結合ドメインなどのT2Rポリペプチドの領域を含んでもよい。場合によって、T2Rポリペプチドまたはその部分を、異種タンパク質に共有連結して、本明細書記載のアッセイで用いるキメラタンパク質を生成してもよい。
【0109】
組換えまたは天然存在いずれかの、上述のようなT2Rタンパク質またはポリペプチドを用いて、T2R活性の調節剤を試験してもよい。組換えまたは天然存在いずれかの、T2Rタンパク質またはポリペプチドを単離し、細胞において発現し、細胞由来の膜において発現し、組織または動物において発現してもよい。例えば、舌切片、舌から解離させた細胞、形質転換細胞、または膜を用いてもよい。本明細書記載のin vitroまたはin vivoアッセイの1つを用いて、調節を試験してもよい。
調節剤の検出
in vitroおよびin vivoの両方で、試験化合物が、本発明のT2R受容体に特異的に結合するかどうかを決定するための組成物および方法を以下に記載する。細胞生理の多くの側面を監視して、本発明のT2Rポリペプチドへのリガンド結合の効果を評価してもよい。化学感受性受容体を発現している、損なわれていない細胞に対して、透過処理した細胞に対して、または標準法によって産生された膜分画に対して、あるいはde novo合成されたタンパク質を用いてin vitroで、これらのアッセイを行ってもよい。
【0110】
in vivoで、味受容体は、味調節化合物に結合し、そして化学刺激の電気シグナルへの伝達を開始する。活性化されたかまたは阻害されたGタンパク質が、順番に、標的酵素、チャネル、および他のエフェクター・タンパク質の特性を改変するであろう。いくつかの例は、視覚系におけるトランスデューシンによるcGMPホスホジエステラーゼの活性化、刺激性Gタンパク質によるアデニル酸シクラーゼの活性化、Gqおよび他の同族Gタンパク質によるホスホリパーゼCの活性化、ならびにGiおよび他のGタンパク質による多様なチャネルの調節である。ホスホリパーゼCによるジアシルグリセロールおよびIP3の生成、そしてそれに続くIP3によるカルシウム可動化などの下流の結果もまた、調べてもよい。
【0111】
あるいは、アッセイのT2Rタンパク質またはポリペプチドは、真核宿主細胞由来であってもよく、そして本明細書に開示するT2Rポリペプチドにアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸下位配列、あるいはその断片または保存的に修飾された変異体を含んでもよい。一般的に、アミノ酸配列同一性は、少なくとも35〜50%、または場合によって、75%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%であろう。場合によって、アッセイのT2Rタンパク質またはポリペプチドは、細胞外ドメイン、膜貫通領域、膜貫通ドメイン、細胞質ドメイン、リガンド結合ドメインなどのT2Rタンパク質のドメインを含んでもよい。さらに、上述のように、T2Rタンパク質またはそのドメインを、異種タンパク質に共有連結して、本明細書記載のアッセイで用いるキメラタンパク質を生成してもよい。
【0112】
組換えまたは天然存在いずれかの、上述のようなT2Rタンパク質またはポリペプチドを用いて、T2R受容体活性の調節剤を試験する。組換えまたは天然存在いずれかの、T2Rタンパク質またはポリペプチドを単離し、細胞において発現し、細胞由来の膜において発現し、組織または動物において発現してもよい。例えば、舌切片、舌から解離させた細胞、形質転換細胞、または膜を用いてもよい。本明細書記載のin vitroまたはin vivoアッセイの1つを用いて、調節を試験してもよい。
【0113】
1. in vitro結合アッセイ
また、本発明のT2Rポリペプチドを用いて、溶解状態または固形状態反応で、in vitroで味伝達を調べてもよい。特定の態様において、T2Rリガンド結合ドメインを、溶解状態または固形状態反応で、in vitroで用いて、リガンド結合に関してアッセイしてもよい。
【0114】
膜貫通ドメインの細胞外ループなど、細胞外ドメインのさらなる部分と一緒に、N末端によって、リガンド結合ドメインを形成してもよい。
代謝調節型グルタミン酸受容体などの他のGPCRを用いる、in vitro結合アッセイが用いられてきた(例えばHanおよびHampson, J. Biol. Chem. 274:10008−10013(1999)を参照されたい)。これらのアッセイは、放射活性的にまたは蛍光的に標識したリガンドを置換し、本来の(intrinsic)蛍光の変化またはタンパク質分解感受性の変化などを測定することを伴いうる。
【0115】
本発明にしたがって、T2Rポリペプチドに対するリガンド結合を、溶液において、場合によって固相に付着した二重膜において、脂質単層において、または小胞において、試験してもよい。例えば、分光特性(例えば蛍光、吸光度、屈折率)、流体力学特性(例えば形状)、クロマトグラフィー特性、または溶解特性を用いて、調節剤の結合を試験してもよい。
【0116】
本発明の好ましい態様において、[35S]GTPγS結合アッセイを用いる。上述のように、GPCRの活性化に際して、Gタンパク質複合体のGαサブユニットが刺激されて、結合したGDPがGTPに交換される。推定上のリガンドの存在下で、添加した放射標識[35S]GTPγSの、Gタンパク質に対する結合を測定する生化学的アッセイにおいて、リガンドが仲介する、Gタンパク質交換活性の刺激を測定してもよい。典型的には、関心対象の化学感受性受容体を含有する膜を、Gタンパク質と混合する。潜在的な阻害剤および/または活性化剤、ならびに[35S]GTPγSをアッセイに添加し、そしてGタンパク質への[35S]GTPγSの結合を測定する。液体シンチレーション計測によって、またはシンチレーション近接アッセイ(SPA)を含む、当該技術分野に知られる任意の他の手段によって、結合を測定してもよい。他のアッセイ形式において、蛍光的に標識されたGTPγSを利用してもよい。
【0117】
2.蛍光偏光アッセイ
別の態様において、蛍光偏光(「FP」)に基づくアッセイを用いて、リガンド結合を検出し、そして監視してもよい。蛍光偏光は、平衡結合、核酸ハイブリダイゼーション、および酵素活性を測定するための多用途の実験技術である。蛍光偏光アッセイは、遠心分離、ろ過、クロマトグラフィー、沈降、または電気泳動などの分離工程を必要としない点で均質である。これらのアッセイは、溶液中で直接、リアルタイムで行われ、そして固定された相を必要としない。偏光の測定は迅速であり、そして試料を破壊しないため、偏光値を、反復して、そして試薬を添加した後で、測定することも可能である。一般的に、この技術を用いて、低ピコモルからマイクロモルレベルのフルオロフォアの偏光値を測定可能である。このセクションは、試料においてどのように蛍光偏光を使用可能であるか、および本発明のT2Rポリペプチドへのリガンドの結合を測定する定量的方法を記載する。
【0118】
蛍光標識分子を、平面偏光で励起すると、分子回転に反比例して、ある度合いの偏光を有する光を放出する。巨大な蛍光標識分子は、励起状態中、比較的静止したままであり(フルオレセインの場合、4ナノ秒)、そして光の偏光は、励起および発光間で、比較的一定のままである。小さい蛍光標識分子は、励起状態中、迅速に回転し、そして偏光は、励起および発光間で有意に変化する。したがって、小分子は、低い偏光値を有し、そして巨大分子は高い偏光値を有する。例えば、一本鎖フルオレセイン標識オリゴヌクレオチドは、比較的低い偏光値を有するが、相補鎖にハイブリダイズすると、より高い偏光値を有する。FPを用いて、本発明の化学感受性受容体を活性化しうるかまたは阻害しうる、味誘発化合物結合を検出し、そして監視する場合、蛍光標識味誘発化合物または自己蛍光味誘発化合物を用いてもよい。
【0119】
蛍光偏光(P)は:1P=Int−Int Int+Intと定義される。
ここで、.PI.は、励起光平面と平行な発光の強度であり、そしてInt垂直は、励起光平面と垂直な発光の強度である。光強度の比であるPは、無次元の数である。例えば、これらのアッセイと関連して、Beacon and Beacon 2000系を用いてもよい。こうした系は、典型的には、ミリ偏光単位(1偏光単位=1000mP単位)で偏光を表す。
【0120】
分子回転およびサイズの間の関係は、Perrin方程式によって記載され、そしてこの等式の完全な説明を提供する、Jolley, M. E.(1991)Journal of Analytical Toxicology, pp. 236−240を参照されたい。要約すると、Perrin方程式は、分子がおよそ68.5度の角度を回転するのに要する時間である回転緩和時間に、偏光が正比例することを示す。回転緩和時間は、以下の等式によって、粘度(eta)、絶対温度(T)、分子体積(V)、および気体定数(R)に関連する:2回転緩和時間=3VRT。
【0121】
回転緩和時間は、小分子(例えばフルオレセイン)では小さく(およそ1ナノ秒)、そして巨大分子(例えば免疫グロブリン)では大きい(およそ100ナノ秒)。粘度および温度が一定に維持される場合、回転緩和時間、そしてしたがって偏光は、分子体積に直接関連する。分子体積の変化は、他の分子との相互作用、蛍光標識分子の解離、重合、分解、ハイブリダイゼーション、またはコンホメーション変化のためでありうる。例えば、プロテアーゼ、DNアーゼ、およびRNアーゼによる、巨大フルオレセイン標識ポリマーの酵素的切断を測定するため、蛍光偏光が用いられてきている。蛍光偏光はまた、タンパク質/タンパク質相互作用、抗体/抗原結合、およびタンパク質/DNA結合の平衡結合を測定するのにも用いられてきている。
【0122】
A.固形状態および溶解性ハイスループット・アッセイ
さらに別の態様において、本発明は、T2Rポリペプチド;あるいはT2Rポリペプチドを発現している細胞または組織を用いた溶解性アッセイを提供する。別の態様において、本発明は、ハイスループット形式でのin vitroアッセイに基づく固相を提供し、ここでT2Rポリペプチド、あるいはT2Rポリペプチドを発現している細胞または組織を固相支持体または味刺激化合物に付着させ、そしてT2R受容体と接触させ、そして適切なタグまたはT2R受容体に対して作製された抗体を用いて、結合を検出する。
【0123】
本発明のハイスループット・アッセイにおいて、1日で、最大数千の異なる調節剤またはリガンドをスクリーニングすることが可能である。特に、マイクロタイタープレートの各ウェルを用いて、選択される潜在的な調節剤に対して、別個のアッセイを行うことも可能であるし、あるいは濃度またはインキュベーション時間の効果を観察しようとする場合、5〜10ウェルごとを単一の調節剤で試験してもよい。したがって、単一の標準的マイクロタイタープレートは、約100(例えば96)の調節剤をアッセイ可能である。1536ウェルのプレートを用いる場合、単一のプレートは、約1000〜約1500の異なる化合物を容易にアッセイ可能である。各プレートウェルにおいて、多数の化合物をアッセイすることもまた可能である。1日数枚の異なるプレートをアッセイすることが可能であり;本発明の統合系を用いると、最大約6,000〜20,000の異なる化合物に関するアッセイスクリーニングが可能である。より最近、試薬操作に対するマイクロ流体アプローチが開発されてきている。
【0124】
関心対象の分子を固形状態構成要素に、直接または間接的に、共有連結または非共有連結を介して、例えばタグを介して、結合させてもよい。タグは、多様な構成要素のいずれであってもよい。一般的に、タグに結合する分子(例えばタグ結合剤)を固体支持体に固定し、そしてタグ付けされた関心対象の分子(例えば関心対象の味伝達分子)を、タグおよびタグ結合剤の相互作用によって、固体支持体に付着させる。
【0125】
文献によく記載される既知の分子相互作用に基づいて、いくつかのタグおよびタグ結合剤を用いてもよい。例えば、タグが天然結合剤、例えばビオチン、プロテインA、またはプロテインGを有する場合、適切なタグ結合剤(アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、免疫グロブリンのFc領域など)と組み合わせて用いてもよい。ビオチンなどの天然結合剤を伴う分子に対する抗体もまた、広く入手可能であり、そして適切なタグ結合剤である(SIGMA Immunochemicals 1998年カタログ、SIGMA、ミズーリ州セントルイスを参照されたい)。
【0126】
同様に、いかなるハプテン性または抗原性化合物を、適切な抗体と組み合わせて用いて、タグ/タグ結合剤対を形成してもよい。数千の特異的抗体が、商業的に入手可能であり、そして多くのさらなる抗体が文献に記載されている。例えば、1つの一般的な形態において、タグが第一の抗体であり、そしてタグ結合剤は、この第一の抗体を認識する第二の抗体である。抗体−抗原相互作用に加えて、受容体−リガンド相互作用もまた、タグおよびタグ結合剤対として適切である。例えば、細胞膜受容体のアゴニストおよびアンタゴニスト(例えばトランスフェリン、c−kit、ウイルス受容体リガンド、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、インターロイキン受容体、免疫グロブリン受容体および抗体、カドヘリン・ファミリー、インテグリン・ファミリー、セレクチン・ファミリー等の細胞受容体−リガンド相互作用;例えば、Pigott & Power, The Adhesion Molecule Facts Book I(1993)を参照されたい)。同様に、毒素および毒液、ウイルス・エピトープ、ホルモン(例えばオピエート、ステロイドなど)、細胞内受容体(例えば、ステロイド、甲状腺ホルモン、レチノイドおよびビタミンDを含む、多様な小分子;ペプチドの効果を仲介する)、薬剤、レクチン、糖、核酸(直鎖または環状ポリマー立体配置の両方)、オリゴ糖、タンパク質、リン脂質および抗体はすべて、多様な細胞受容体と相互作用可能である。
【0127】
ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ尿素、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリアリーレンスルフィド、ポリシロキサン、ポリイミド、およびポリアセテートなどの合成ポリマーもまた、適切なタグまたはタグ結合剤を形成可能である。本開示を再検討した際に、当業者に明らかであろうように、多くの他のタグ/タグ結合剤対もまた、本明細書記載のアッセイ系において有用である。
【0128】
ペプチド、ポリエーテル等の一般的なリンカーもまた、タグとして働くことも可能であり、そしてこれらには、約5〜200アミノ酸の間のポリgly配列などのポリペプチド配列が含まれる。こうした柔軟なリンカーが、当業者に知られる。例えば、ポリ(エチレングリコール)リンカーがShearwater Polymers Inc.、アラバマ州ハンツビルから入手可能である。これらのリンカーは、場合によって、アミド連結、スルフィドリル連結、または異種官能性(heterofunctional)連結を有する。
【0129】
現在利用可能な多様な方法のいずれかを用いて、タグ結合剤を固体支持体に固定する。一般的に、固体支持体のすべてまたは部分を化学的試薬に曝露し、該試薬が、タグ結合剤の部分と反応性である化学基を表面に固定することによって、固体支持体が誘導体化されるかまたは官能化される。例えば、より長い鎖部分に付着させるのに適した基には、アミン、ヒドロキシル、チオール、およびカルボキシル基が含まれるであろう。アミノアルキルシランおよびヒドロキシアルキルシランを用いて、ガラス表面などの多様な表面を官能化してもよい。こうした固相バイオポリマー・アレイの構築が、文献によく記載されている。例えば、Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149−2154(1963)(例えばペプチドの、固相合成を記載する); Geysenら, J. Immun. Meth., 102:259−274(1987)(ピン上の固相構成要素の合成を記載する); Frank & Doring, Tetrahedron, 44:60316040(1988)(セルロース・ディスク上の、多様なペプチド配列の合成を記載する); Fodorら, Science, 251:767−777(1991); Sheldonら, Clinical Chemistry, 39(4):718−719(1993);およびKozalら, Nature Medicine, 2(7):753759(1996)を参照されたい(すべて、固体支持体に固定されたバイオポリマーのアレイを記載する)。タグ結合剤を支持体に固定するための非化学的アプローチには、熱、UV照射による架橋等の他の一般的な方法が含まれる。
【0130】
3.細胞に基づくアッセイ
1つの好ましい態様において、T2Rタンパク質を、非修飾型で、あるいは成熟および分泌系を通じたターゲティングを容易にする異種シャペロン配列を含む、または好ましくは含まない、キメラ、変異体または一部切除(truncated)受容体としてのいずれかで、真核細胞において、発現させる。こうしたT2Rポリペプチドは、任意の真核細胞、例えばHEK−293細胞において発現可能である。好ましくは、細胞は、キメラ受容体を細胞内シグナル伝達経路に共役可能であるか、またはホスホリパーゼCなどのシグナル伝達タンパク質に共役可能である、機能するGタンパク質、例えばGα15を含む。任意の標準的方法を用いて、例えば細胞において、FURA−2依存性蛍光を検出することにより、細胞内カルシウムの変化を検出することによって、こうした細胞におけるT2R受容体の活性化を検出してもよい。こうしたアッセイは、本出願に提示される実験的知見に基づく。
【0131】
活性化されたGPCR受容体はしばしば、受容体のC末端テールを(そしておそらく他の部位もまた)リン酸化するキナーゼの基質である。したがって、活性化剤は、放射標識ATPから受容体への32Pの移動を促進するであろうし、これをシンチレーションカウンターでアッセイしてもよい。C末端テールのリン酸化は、アレスチン様タンパク質の結合を促進するであろうし、そしてGタンパク質の結合に干渉するであろう。GPCRシグナル伝達、およびシグナル伝達をアッセイする方法の一般的な概説に関しては、例えばMethods in Enzymology, 第237巻および第238巻(1994)ならびに第96巻(1983); Bourneら, Nature, 10:349:117−27(1991); Bourneら, Nature, 348:125−32(1990); Pitcherら, Annu. Rev. Biochem., 67:653−92(1998)を参照されたい。
【0132】
推定上のT2R調節剤で処理したT2Rポリペプチドの応答を、未処理対照試料または既知の「陽性」対照を含有する試料の応答と比較することによって、T2R調節をアッセイしてもよい。こうした推定上のT2R調節剤には、T2Rポリペプチド活性を阻害するかまたは活性化するかいずれの分子が含まれてもよい。1つの態様において、T2Rを活性化する化合物で処理した対照試料に、100の相対的T2R活性値を割り当てる。対照試料に対するT2R活性値が、約90%、場合によって50%、場合によって25〜0%のとき、T2Rポリペプチドの阻害が達成されている。対照に対するT2R活性値が、110%、場合によって150%、200〜500%、または1000〜2000%のとき、T2Rポリペプチドの活性化が達成されている。
【0133】
T2Rポリペプチドを発現している細胞または膜のイオン分極(すなわち電位)の変化を決定することによって、イオン流動の変化を評価してもよい。細胞分極における変化を決定する1つの手段は、電圧固定技術およびパッチクランプ技術で、電流の変化を測定する(したがって分極の変化を測定する)ことによる(例えば、「細胞付着」様式、「インサイド−アウト」様式、および「全細胞」様式、例えばAckermanら, New Engl. J Med., 336:1575−1595(1997)を参照されたい)。標準法を用いて、全細胞電流を好適に決定する。他の既知のアッセイには:電圧感受性色素を用いた、放射標識イオン流動アッセイおよび蛍光アッセイが含まれる(例えば、Vestergarrd−Bogindら, J. Membrane Biol., 88:67−75(1988); Gonzales & Tsien, Chem. Biol., 4:269−277(1997); Danielら, J. Pharmacol. Meth., 25: 185−193(1991); Holevinskyら, J. Membrane Biology, 137:59−70(1994)を参照されたい)。
【0134】
上述のパラメーターのいずれを調べることによって、ポリペプチドの機能に対する試験化合物の効果を測定してもよい。GPCR活性に影響を及ぼす任意の適切な生理学的変化を用いて、本発明のポリペプチドに対する試験化合物の影響を評価してもよい。損なわれていない細胞または動物を用いて、機能上の結果を決定する場合、伝達因子放出、ホルモン放出、既知のおよび性質決定されていない遺伝子マーカー両方に対する転写変化(例えばノーザンブロット)、細胞増殖またはpH変化などの細胞代謝における変化、およびCa2+、IP3、cGMP、またはcAMPなどの細胞内二次メッセンジャーにおける変化などの多様な効果もまた、測定可能である。
【0135】
GPCRに関する好ましいアッセイには、受容体活性を報告する、イオンまたは電圧感受性色素が装填されている細胞が含まれる。こうした受容体の活性を決定するためのアッセイはまた、試験する化合物の活性を評価するための対照として、他のGタンパク質共役型受容体の既知のアゴニストおよびアンタゴニストを用いてもよい。調節化合物(例えばアゴニスト、アンタゴニスト)を同定するためのアッセイでは、イオン感受性または膜電圧蛍光指標を用いて、それぞれ、細胞質イオンレベルまたは膜電圧の変化を監視するであろう。使用可能なイオン感受性指標および電圧プローブには、Molecular Probes 1997年カタログに開示されているものがある。Gタンパク質共役型受容体に関しては、選択したアッセイで、Gα15およびGα16などの無差別な(promiscuous)Gタンパク質が使用可能である(Wilkieら, Proc. Nat’l Acad. Sci., 88:10049−10053(1991))。
【0136】
受容体活性化は、続く細胞内事象、例えば二次メッセンジャーの増加を開始する。いくつかのGタンパク質共役型受容体の活性化は、ホスホリパーゼCが仲介するホスファチジルイノシトールの加水分解を通じて、イノシトール三リン酸(IP3)の形成を刺激する(Berridge & Irvine, Nature, 312:315−21(1984))。IP3は次に、細胞内カルシウムイオン貯蔵の放出を刺激する。したがって、細胞質カルシウムイオンレベルの変化、またはIP3などの二次メッセンジャーレベルの変化を用いて、Gタンパク質共役型受容体機能を評価してもよい。こうしたGタンパク質共役型受容体を発現している細胞は、細胞内貯蔵からのカルシウムの放出および形質膜イオンチャネルを介した細胞外カルシウム進入の両方が寄与する結果として、細胞質カルシウムレベル増加を示しうる。
【0137】
好ましい態様において、受容体をホスホリパーゼCシグナル伝達経路に結び付ける、無差別なGタンパク質を用いて、異種細胞においてT2R遺伝子を発現させることによって、T2Rポリペプチド活性を測定する(Offermanns & Simon, J. Biol. Chem., 270:15175−15180(1995)を参照されたい)。場合によって、細胞株はHEK−293(通常はT2R遺伝子を発現しない)であり、そして無差別なGタンパク質はGα15(Offermanns & Simon、上記)である。T2Rポリペプチドと会合する分子の投与を介した、T2Rシグナル伝達経路の調節に応答して変化する、細胞内Ca2+レベルの変化を測定することによって、味伝達の調節をアッセイする。場合によって、蛍光Ca2+指標色素および蛍光画像化を用いて、Ca2+レベルの変化を測定する。
【0138】
別の態様において、本明細書に援用される米国特許第5,436,128号にしたがって、ホスファチジルイノシトール(PI)加水分解を分析してもよい。簡潔には、アッセイは、3H−ミオイノシトールで細胞を48時間以上標識することを伴う。標識細胞を試験化合物で1時間処理する。処理した細胞を溶解し、そしてクロロホルム−メタノール−水で抽出し、その後、イオン交換クロマトグラフィーによってイノシトールリン酸を分離し、そしてシンチレーション計測によって定量化する。緩衝液対照の存在下でのcpmに対する、アゴニストの存在下でのcpmの比を計算することによって、倍刺激を決定する。同様に、緩衝液対照(アゴニストを含有してもまたしなくてもよい)の存在下でのcpmに対する、アンタゴニストの存在下でのcpmの比を計算することによって、倍阻害を決定する。
【0139】
他の受容体アッセイは、細胞内環状ヌクレオチド、例えばcAMPまたはcGMPのレベルを決定することを伴いうる。受容体の活性化が、環状ヌクレオチドレベルの減少を生じる場合、アッセイにおいて、細胞に受容体活性化化合物を添加する前に、細胞内環状ヌクレオチドレベルを増加させる剤、例えばフォルスコリンに、細胞を曝露することが好ましい可能性もある。1つの態様において、イムノアッセイを用いて、細胞内cAMPまたはcGMPの変化を測定してもよい。Offermanns & Simon, J. Bio. Chem., 270:15175−15180(1995)に記載される方法を用いて、cAMPレベルを決定してもよい。また、Felley−Boscoら, Am. J. Resp. Cell and Mol. Biol., 11:159−164(1994)に記載される方法を用いて、cGMPのレベルを決定してもよい。さらに、cAMPおよび/またはcGMPを測定するためのアッセイキットが、本明細書に援用される、米国特許第4,115,538号に記載される。
【0140】
別の態様において、転写レベルを測定して、シグナル伝達に対する試験化合物の効果を評価してもよい。関心対象のT2Rポリペプチドを含有する宿主細胞を、試験化合物と十分な時間接触させて、いかなる相互作用も達成し、そして次いで、遺伝子発現のレベルを測定する。時間経過に渡って実験を行い、そして時間の関数として転写レベルを測定することによるなどで、こうした相互作用を達成する時間の量を実験的に決定してもよい。適切であることが当業者に知られるいかなる方法を用いることによって、転写の量を測定してもよい。例えば、ノーザンブロットを用いて、関心対象のタンパク質のmRNA発現を検出してもよいし、またはイムノアッセイを用いて、そのポリペプチド産物を同定してもよい。あるいは、レポーター遺伝子を用いた、転写に基づくアッセイを、本明細書に援用される米国特許第5,436,128号に記載されるように用いてもよい。レポーター遺伝子は、例えばクロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、ベータ−ラクタマーゼおよびアルカリ・ホスファターゼであってもよい。さらに、緑色蛍光タンパク質などの二次レポーターへの付着を介して、関心対象のタンパク質を間接的なレポーターとして用いてもよい(例えば、Mistili & Spector, Nature Biotechnology, 15:961−964(1997)を参照されたい)。
【0141】
次いで、転写の量を、試験化合物の非存在下での同じ細胞における転写の量に比較するか、または関心対象のT2Rポリペプチド(単数または複数)を欠く実質的に同一の細胞における転写の量と比較するかいずれかを行ってもよい。実質的に同一の細胞は、組換え細胞を調製したものと同じ細胞であるが、異種DNAの導入によって修飾されていない細胞に由来してもよい。転写の量のいかなる相違も、試験化合物が、何らかの方式で、関心対象のT2Rポリペプチドの活性を改変したことを示す。
【0142】
4.化学感受性受容体を発現しているトランスジェニック非ヒト動物
本発明の1以上の味受容体配列を発現している非ヒト動物もまた、受容体アッセイに用いてもよい。化学感受性受容体またはそのリガンド結合領域をコードする核酸で安定にまたは一過性にトランスフェクションされた非ヒト動物を、試験化合物と接触させ、そして該動物が、試験化合物の受容体ポリペプチド複合体への特異的結合により、反応するかどうかを決定することによって、こうした発現を用いて、試験化合物がin vivoで哺乳動物の味膜貫通受容体複合体に特異的に結合するかどうかを決定してもよい。
【0143】
本発明のベクターにトランスフェクションされたかまたは感染した動物は、特定のまたは一組の受容体に結合可能な味刺激を同定し、そして性質決定するアッセイに、特に有用である。ヒト味受容体配列を発現する、ベクターに感染したこうした動物を、味刺激、および例えば細胞生理に対する(例えば味ニューロンに対する)、CNSに対する、または行動に対する該刺激の効果のin vivoスクリーニングに用いてもよい。
【0144】
核酸およびベクターを、個々にまたはライブラリーとしてのいずれかで、感染させ/発現する手段が、当該技術分野に周知である。多様な手段によって、多様な個々の細胞、臓器、または全動物パラメーターを測定してもよい。感染性病原体、例えばアデノウイルス発現ベクターでの送達によって、本発明のT2R配列を、例えば動物味組織で発現させてもよい。
【0145】
内因性味受容体遺伝子は、機能的であり続けることも可能であり、そして野生型(天然)活性がなお存在してもよい。味受容体活性すべてが、導入された外因性ハイブリッド受容体によることが望ましい、他の状況においては、ノックアウト系統の使用が好ましい。非ヒトトランスジェニック動物、特にトランスジェニックマウスの構築のための方法、ならびに形質転換細胞を生成するための組換え構築物の選択および調製が、当該技術分野に周知である。
【0146】
「ノックアウト」細胞および動物の構築は、抑制しようとする遺伝子のDNA配列のある部分を中断するように働く新規DNA配列を、ゲノム内に導入することによって、哺乳動物細胞において、特定の遺伝子の発現レベルを減少させるかまたは完全に無効にすることが可能であるという前提に基づく。また、「遺伝子トラップ挿入」を用いて、宿主遺伝子を破壊してもよく、そしてマウス胚性幹(ES)細胞を用いて、ノックアウト・トランスジェニック動物を産生してもよい(例えば、Holzschu, Transgenic Res 6:97−106(1997)を参照されたい)。外因性配列の挿入は、典型的には、相補性核酸配列間の相同組換えによる。外因性配列は、エクソン性、イントロン性もしくは転写制御配列、または標的遺伝子の発現レベルに影響を及ぼすことが可能な任意のゲノム配列;あるいはその組み合わせなど、修飾しようとする標的遺伝子のある部分である。多能性胚性幹細胞における相同組換えを介した遺伝子ターゲティングは、関心対象のゲノム配列を正確に修飾することを可能にする。ノックアウト動物を生成し、該動物に関してスクリーニングし、該動物を繁殖させるいかなる技術を用いてもよく、例えば、Bijvoet, Hum. Mol. Genet. 7:53−62(1998); Meredith, J. Mol. Med. 75:208−216(1997); Tojo, Cytotechnology 19:161−165(1995); Mudgett, Methods Mol. Biol. 48:167−184(1995); Longo, Transgenic Res. 6:321−328(1997);米国特許第5,616,491号;第5,464,764号;第5,631,153号;第5,487,992号;第5,627,059号;第5,272,071号; WO 91/09955; WO 93/09222; WO 96/29411; WO 95/31560; WO 91/12650を参照されたい。
【0147】
また、「ノックアウト」ヒト細胞およびその子孫を産生する試薬として、本発明の核酸を用いてもよい。同様にまた、マウスにおいて、「ノックイン」を産生するための試薬として、本発明の核酸を用いてもよい。ヒトまたはラットT2R遺伝子配列は、マウスゲノムにおけるオルソログT2Rを置換可能である。この方式で、ヒトまたはラットT2Rを発現しているマウスを産生する。次いで、このマウスを用いて、ヒトまたはラットT2Rの機能を分析し、そしてこうしたT2Rのリガンドを同定してもよい。
調節剤
T2Rファミリーメンバーの調節剤として試験する化合物は、任意の小さい化学物質、あるいはタンパク質、糖、核酸または脂質などの生物学的実体であってもよい。あるいは、調節剤は、T2Rファミリーメンバーの遺伝子改変型であってもよい。典型的には、試験化合物は、小さい化学分子およびペプチドであってもよい。本発明のアッセイにおいて、本質的にいかなる化学物質を潜在的な調節剤またはリガンドとして用いてもよいが、最もしばしば、水性または有機性(特にDMSOに基づく)溶液中に溶解可能な化合物を用いる。アッセイ工程を自動化し、そして任意の好適な供給源から、典型的には平行して行われるアッセイに化合物を提供することによって、大きな化学ライブラリーをスクリーニングするように、アッセイを設計してもよい(例えば、ロボットアッセイにおけるマイクロタイタープレート上のマイクロタイター形式で)。Sigma(ミズーリ州セントルイス)、Aldrich(ミズーリ州セントルイス)、Sigma−Aldrich(ミズーリ州セントルイス)、Fluka Chemika−Biochemica Analytika(スイス・ブーフス)等を含む、化学物質の多くの供給者があることが認識されるであろう。
【0148】
1つの態様において、ハイスループット・スクリーニング法は、多数の潜在的な療法化合物(潜在的な調節剤またはリガンド化合物)を含有するコンビナトリアル化学ライブラリーまたはペプチドライブラリーを提供することを伴う。次いで、本明細書に記載するように、こうした「コンビナトリアル化学ライブラリー」または「リガンドライブラリー」を1以上のアッセイにおいてスクリーニングして、望ましい特徴的な活性を示す、ライブラリーメンバー(特定の化学種またはサブクラス)を同定する。こうして同定された化合物は、慣用的な「リード化合物」として働きうるし、あるいはそれ自体、潜在的なまたは実際の消費者製品として使用可能である。
【0149】
コンビナトリアル化学ライブラリーは、化学合成または生物学的合成のいずれかによって、試薬などのいくつかの化学的「構築ブロック」を組み合わせることによって生成される、多様な化学物質のコレクションである。例えば、所定の化合物長(すなわちポリペプチド化合物中のアミノ酸数)に関してありうるすべての方式で、化学的構築ブロック(アミノ酸)の組を組み合わせることによって、ポリペプチドライブラリーなどの直鎖コンビナトリアル化学ライブラリーを形成する。化学的構築ブロックのこうしたコンビナトリアル混合を通じて、何百万の化学物質が合成可能である。
【0150】
コンビナトリアル化学ライブラリーの調製およびスクリーニングが、当業者に周知である。こうしたコンビナトリアル化学ライブラリーには、限定されるわけではないが、ペプチドライブラリー(例えば、米国特許第5,010,175号、Furka, Int. J. Pept. Prot. Res., 37:487−93(1991)およびHoughtonら, Nature, 354:84−88(1991)を参照されたい)。化学的多様性ライブラリーを生成するための他の化学もまた、使用可能である。こうした化学には、限定されるわけではないが:ペプトイド(例えば、WO 91/19735)、コードされるペプチド(例えば、WO 93/20242)、ランダム・バイオオリゴマー(例えば、WO 92/00091)、ベンゾジアゼピン(例えば、米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチドなどのダイバーソマー(Hobbsら, PNAS., 90:6909−13(1993))、ビニル性ポリペプチド(Hagiharaら, J. Amer. Chem. Soc., 114:6568(1992))、グルコース足場を持つ非ペプチド性ペプチド模倣体(Hirschmannら, J. Amer. Chem. Soc., 114:9217−18(1992))、小化合物ライブラリーの類似の有機合成(Chenら, J. Amer. Chem. Soc., 116:2661(1994))、オリゴカルバメート(Choら, Science, 261:1303(1993))、ペプチジルホスホネート(Campbellら, J. Org. Chem., 59:658(1994))、核酸ライブラリー(Ausubel、Berger、およびSambrook、すべて上記)、ペプチド核酸ライブラリー(米国特許第5,539,083号)、抗体ライブラリー(Vaughnら, Nature Biotechnology, 14(3):309−14(1996)およびPCT/US96/10287)、炭水化物ライブラリー(Liangら, Science, 274:1520−22(1996)および米国特許第5,593,853号)、小有機分子ライブラリー(ベンゾジアゼピン、Baum, C&EN, 1月18日, 33ページ(1993);チアゾリジノンおよびメタチアザノン、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735号および第5,519,134号;モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン、第5,288,514号等が含まれる。
【0151】
コンビナトリアルライブラリーの調製のためのデバイスは、商業的に入手可能である(例えば、357 MPS、390 MPS(Advanced Chem. Tech、ケンタッキー州ルイスビル)、Symphony(Rainin、マサチューセッツ州ウォバーン)、433A(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティー)、9050 Plus(Millipore、マサチューセッツ州ベッドフォード)を参照されたい)。さらに、多くのコンビナトリアルライブラリーは、それ自体、商業的に入手可能である(例えば、ComGenex、ニュージャージー州プリンストン; Tripos, Inc.、モンタナ州セントルイス; 3D Pharmaceuticals、ペンシルバニア州エクストン; Martek Biosciences;メリーランド州コロンビア等を参照されたい)。
【0152】
本発明の1つの側面において、T2R調節剤を、任意の食品製品、菓子類、薬剤組成物、またはその成分で使用して、それによって、製品、組成物、または成分の味を所望の方式で調節してもよい。例えば、苦味の感覚を増進するT2R調節剤を添加して、製品または組成物に苦味を提供してもよいし、一方、苦味の感覚を遮断するT2R調節剤を添加して、製品または組成物の苦味を遮断してもよい。
本発明によって同定される化合物の使用
本発明にしたがって同定される化合物を、食品、飲料または医薬品に添加して、苦味化合物、例えばラニチジン、アセトアミノフェン、デナトニウム、および/またはストリキニーネあるいは構造的に関連する化合物および他の苦味化合物によるhT2R8、hT2R9、hT2R10、hT1R13、hT2R54、hT2R61および/またはhT2R75の活性化によって誘発される苦味を調節し、好ましくは遮断してもよい。例えば、アセトアミノフェンまたは関連化合物によるhT2R54の活性化を遮断する化合物を医薬品の添加剤として用いて、アセトアミノフェンに関連する苦味を遮断してもよい。例えば、アセトアミノフェンを含有する小児科医薬品調製物にこれらの化合物を添加するか、または苦味を阻害するのに有効な量で添加してもよい。
【0153】
hT2R8またはhT2R54、hT2R75の活性化を遮断する化合物を、食品、飲料または医薬品で用いて、ラニチジン、またはこれらの受容体を活性化する他の苦味化合物、例えば構造的に関連する化合物の苦味を遮断してもよい。特に、開示されるアッセイを用いて同定された化合物が、任意のラニチジン含有組成物に関連する苦味を阻害するため、該組成物に含まれてもよいことが予期される。
【0154】
また、hT2R8、hT2R10、hT2R13、hT2R54、hT2R61、またはhT2R75のデナトニウムの活性化を阻害する化合物は、食品、飲料または医薬品調製物において、添加剤として有用であり、これらの受容体の活性化に起因しうる苦味を遮断する。デナトニウムは、非常に強力な苦味化合物であるため、これらの受容体を阻害する化合物は、多様な苦味化合物の苦味を有効に阻害するはずである。これは、デナトニウムが、いくつかの異なる苦味受容体を活性化するという事実、そして、デナトニウム誘導体もまた、T2Rを活性化することがさらに知られるという事実によって証拠付けられる。同様に、hT2R8、hT2R9、hT2R10、hT2R54、および/またはhT2R75の活性化を遮断するアッセイにおいて同定された化合物は、こうした受容体を活性化する化合物、例えばストリキニーネまたは関連化合物と関連する苦味を遮断するため、食品、飲料および医薬品中の添加剤として潜在的に用いられるはずである。好ましくは、細胞に基づく本T2Rのアッセイで同定される化合物の味調節特性は、味試験、例えばヒト味試験において、確認されるであろう。
キット
T2R遺伝子およびその相同体は、味受容体細胞を同定するための、法医学および父子鑑定のための、そして味伝達を検査するための有用なツールである。T2R核酸に特異的にハイブリダイズするT2Rファミリーメンバー特異的試薬、例えばT2Rプローブおよびプライマー、ならびにT2Rタンパク質に特異的に結合するT2R特異的試薬、例えばT2R抗体を用いて、味細胞発現および味伝達制御を調べる。
【0155】
試料中のT2RファミリーメンバーのDNAおよびRNAの存在に関する核酸アッセイには、サザン分析、ノーザン分析、ドットブロット、RNアーゼ保護、S1分析、PCRなどの増幅技術、およびin situハイブリダイゼーションなどの、当業者に知られる多くの技術が含まれる。in situハイブリダイゼーションにおいて、例えば、細胞内でハイブリダイゼーションに利用可能である一方、続く解釈および分析のため、細胞形態を保持するように、標的核酸を細胞環境から遊離させる。以下の論文は、in situハイブリダイゼーションの技術分野の概観を提供する: Singerら, Biotechniques, 4:230250(1986); Haaseら, Methods in Virology, vol. VII, 189−226(1984);およびNamesら監修, Nucleic Acid Hybridization: A Practical Approach(1987)。さらに、上述の多様なイムノアッセイ技術を用いて、T2Rタンパク質を検出してもよい。試験試料を典型的には陽性対照(例えば組換えT2Rタンパク質を発現している試料)および陰性対照の両方と比較する。
【0156】
本発明はまた、T2Rファミリーメンバーの調節剤をスクリーニングするためのキットも提供する。容易に入手可能な材料および試薬から、こうしたキットを調製してもよい。例えば、こうしたキットは、以下の材料の任意の1以上を含んでもよい:T2R核酸またはタンパク質、反応試験管、およびT2R活性を試験するための使用説明書。場合によって、キットは、機能するT2Rポリペプチドを含有する。キットの意図される使用者および使用者の特定の必要性に応じ、本発明にしたがって、非常に多様なキットおよび構成要素を調製してもよい。
【0157】
ここで、本発明を一般的に説明したが、例示のために提供し、そして限定を意図しない、以下の実施例を参照することによって、本発明はより容易に理解されるであろう。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示する典型的な態様に、多様な修飾および変化を作製可能であることが理解される。
【実施例】
【0158】
実施例
実施例1
本実施例では、本発明者らは、苦味化合物であるラニチジンが、本出願に含有されるDNA配列を有するヒト苦味受容体、hT2R8、hT2R54、およびhT2R75を特異的に活性化することを示す。
【0159】
細胞内カルシウム濃度の変化を検出する、細胞に基づくアッセイにおいて、ラニチジンによるこれらの受容体の活性化を測定する。簡潔には、ラージT細胞抗原およびキメラGタンパク質(G16gust44)を安定して発現しているヒト胚性腎細胞を、リン酸Ca2+または脂質に基づく系のいずれかによって、特定のhT2R54核酸配列を含有するプラスミドで一過性にトランスフェクションする。一過性にトランスフェクションした細胞を、24ウェル培養プレート中に植え付け、そして機能的発現が、全部で48時間進行するのを可能にする。次いで、細胞をカルシウムに特異的な蛍光色素(Fluo−4またはFura−2;Molecular probes)と一緒にインキュベーションし、これによって、細胞内部のカルシウム濃度の変化を検出するための、迅速、単純でそして信頼性がある、蛍光に基づく方法が提供される。細胞にラニチジンを添加すると、シグナル伝達カスケードが誘発され、該カスケードが、PLCの活性化およびそれに続く細胞内カルシウム濃度の増加を導く。カルシウム濃度のこの増加が、細胞内部のカルシウム色素の蛍光特性を変化させる。蛍光顕微鏡および特別な設計のソフトウェア(Imaging Workbench、Axon)を用いて、これらの変化を監視する。このアプローチを用いて、ラニチジンが、10mMで、hT2R8、hT2R54、およびhT2R75の各々を発現している細胞を特異的に活性化する(細胞内カルシウム濃度を増加させる)が、これらの細胞がスクロースには応答しないことが観察された。
【0160】
実施例2
高レベルのhT2R8またはhT2R54を細胞表面上に安定して発現しているHEK−G16gust44株をハイスループット・スクリーニングアッセイに用いる。この構築基盤で、アッセイの18〜24時間前に、96ウェルまたは384ウェル培養プレート中に細胞を植え付ける。次いで、蛍光カルシウム感受性色素(Molecular Devices)と細胞をインキュベーションし、そして刺激し、そして標準的蛍光強度プレート読取装置(FLIPRまたはVIPR)中で読み取る。このアプローチを用いて、本発明者らは、hT2R8およびhT2R54に対するラニチジンの効果をさらに性質決定することが可能であった。本発明者らは、ラニチジンが、典型的な用量−反応関係で、hT2R8およびhT2R54を活性化することを見出した(図2を参照されたい)。
【0161】
実施例3
本実施例において、本発明者らは、苦味化合物であるアセトアミノフェンが、本出願の配列番号10に含有されるDNA配列を有するヒト苦味受容体、hT2R54を特異的に活性化することを示す。
【0162】
細胞内カルシウム濃度の変化を検出する、細胞に基づくアッセイにおいて、アセトアミノフェンによるこれらの受容体の活性化を測定する。簡潔には、ラージT細胞抗原およびキメラGタンパク質(G16gust44)を安定して発現しているヒト胚性腎細胞を、リン酸Ca2+または脂質に基づく系のいずれかによって、hT2R54核酸配列を含有するプラスミドで一過性にトランスフェクションする。一過性にトランスフェクションした細胞を、24ウェル培養プレート中に植え付け、そして機能的発現が、全部で48時間進行するのを可能にする。次いで、細胞をカルシウムに特異的な蛍光色素(Fluo−4またはFura−2;Molecular probes)と一緒にインキュベーションし、これによって、細胞内部のカルシウム濃度の変化を検出するための、迅速、単純でそして信頼性がある、蛍光に基づく方法が提供される。細胞にラニチジンを添加すると、シグナル伝達カスケードが誘発され、該カスケードが、PLCの活性化およびそれに続く細胞内カルシウム濃度の増加を導く。カルシウム濃度のこの増加が、細胞内部のカルシウム色素の蛍光特性を変化させる。蛍光顕微鏡および特別な設計のソフトウェア(Imaging Workbench、Axon)を用いて、これらの変化を監視する。このアプローチを用いて、アセトアミノフェンが、hT2R54を発現している細胞を特異的に活性化する(細胞内カルシウム濃度を増加させる)ことが観察された(図3を参照されたい)。
【0163】
実施例4
高レベルのhT2R54を細胞表面上に安定して発現しているHEK−G16gust44細胞株をハイスループット・スクリーニングアッセイに用いる。この構築基盤で、アッセイの18〜24時間前に、96ウェルまたは384ウェル培養プレート中に細胞を植え付ける。次いで、蛍光カルシウム感受性色素(Molecular Devices)と細胞をインキュベーションし、そして刺激し、そして標準的蛍光強度プレート読取装置(FLIPRまたはVIPR)中で読み取る。このアプローチを用いて、本発明者らは、hT2R54に対するアセトアミノフェンの効果をさらに性質決定することが可能であった。本発明者らは、典型的な用量−反応関係で、アセトアミノフェンがhT2R54を活性化し、そしてデナトニウムが活性化することを見出した(図4を参照されたい)。
【0164】
実施例5
本実施例において、本発明者らは、強力な苦味化合物である安息香酸デナトニウムが、本出願に含有されるDNA配列を有するヒト苦味受容体、hT2R8、hT2R10、hT2R13、hT2R54、hT2R61およびhT2R75を特異的に活性化することを示す。
【0165】
細胞内カルシウム濃度の変化を検出する、細胞に基づくアッセイにおいて、安息香酸デナトニウムによるこれらの受容体の活性化を測定する。簡潔には、ラージT細胞抗原およびキメラGタンパク質(G16gust44)を安定して発現しているヒト胚性腎細胞を、リン酸Ca2+または脂質に基づく系のいずれかによって、特定のhT2R核酸配列を含有するプラスミドで一過性にトランスフェクションする。一過性にトランスフェクションした細胞を、24ウェル培養プレート中に植え付け、そして機能的発現が、全部で48時間進行するのを可能にする。次いで、細胞をカルシウムに特異的な蛍光色素(Fluo−4またはFura−2;Molecular probes)と一緒にインキュベーションし、これによって、細胞内部のカルシウム濃度の変化を検出するための、迅速、単純でそして信頼性がある、蛍光に基づく方法が提供される。細胞に安息香酸デナトニウムを添加すると、シグナル伝達カスケードが誘発され、該カスケードが、PLCの活性化およびそれに続く細胞内カルシウム濃度の増加を導く。カルシウム濃度のこの増加が、細胞内部のカルシウム色素の蛍光特性を変化させる。蛍光顕微鏡および特別な設計のソフトウェア(Imaging Workbench、Axon)を用いて、これらの変化を監視する。このアプローチを用いて、安息香酸デナトニウムが、hT2R8、hT2R10、hT2R13、hT2R54、hT2R61およびhT2R75の各々を発現している細胞を特異的に活性化する(細胞内カルシウム濃度を増加させる)ことが観察された(図5を参照されたい)。
【0166】
実施例6
高レベルのhT2R8を細胞表面上に安定して発現しているHEK−G16gust44株をハイスループット・スクリーニングアッセイに用いる。この構築基盤で、アッセイの18〜24時間前に、96ウェルまたは384ウェル培養プレート中に細胞を植え付ける。次いで、蛍光カルシウム感受性色素(Molecular Devices)と細胞をインキュベーションし、そして刺激し、そして標準的蛍光強度プレート読取装置(FLIPRまたはVIPR)中で読み取る。このアプローチを用いて、安息香酸デナトニウムが、典型的な用量−反応関係で、hT2R8を活性化することが見出される(図6を参照されたい)。
【0167】
実施例7
本実施例において、本発明者らは、強力な苦味化合物であるストリキニーネが、本出願に含有されるDNA配列を有するヒト苦味受容体、hT2R8、hT2R9、hT2R10、hT2R54、およびhT2R75を特異的に活性化することを示す。
【0168】
細胞内カルシウム濃度の変化を検出する、細胞に基づくアッセイにおいて、ストリキニーネによるこれらの受容体の活性化を測定する。簡潔には、ラージT細胞抗原およびキメラGタンパク質(G16gust44)を安定して発現しているヒト胚性腎細胞を、リン酸Ca2+または脂質に基づく系のいずれかによって、特定のhT2R核酸配列を含有するプラスミドで一過性にトランスフェクションする。一過性にトランスフェクションした細胞を、24ウェル培養プレート中に植え付け、そして機能的発現が、全部で48時間進行するのを可能にする。次いで、細胞をカルシウムに特異的な蛍光色素(Fluo−4またはFura−2;Molecular probes)と一緒にインキュベーションし、これによって、細胞内部のカルシウム濃度の変化を検出するための、迅速、単純でそして信頼性がある、蛍光に基づく方法が提供される。細胞にストリキニーネを添加すると、シグナル伝達カスケードが誘発され、該カスケードが、PLCの活性化およびそれに続く細胞内カルシウム濃度の増加を導く。カルシウム濃度のこの増加が、細胞内部のカルシウム色素の蛍光特性を変化させる。蛍光顕微鏡および特別な設計のソフトウェア(Imaging Workbench、Axon)を用いて、これらの変化を監視する。このアプローチを用いて、ストリキニーネが、hT2R8、hT2R9、hT2R10、hT2R54、およびhT2R75の各々を発現している細胞を特異的に活性化する(細胞内カルシウム濃度を増加させる)ことが観察された。
【0169】
【化1−1】

【0170】
【化1−2】

【0171】
【化1−3】

【0172】
【化1−4】

【0173】
前述の詳細な説明は、本発明のいくつかの態様を記載してきたが、上記説明が例示のみであり、そして開示する発明を限定しないことを理解すべきである。本発明は、請求項のみによって限定されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】図1は、hT2R8、hT2R54およびhT2R75が、10μMのラニチジンに応答するが、同じ濃度のスクロースに応答しないことを示す、カルシウム画像化実験の結果を含有する。
【図2】図2は、ラニチジンに対するhT2R8およびhT2R54の用量反応を示す。
【図3】図3は、hT2R54が、10μMのアセトアミノフェンに特異的に応答するが、同じ濃度のDPBSまたはサリシンに応答しないことを示す、カルシウム画像化実験の結果を含有する。
【図4】図4は、アセトアミノフェンおよびデナトニウムに対するhT2R54の用量反応を示す。
【図5】図5は、hT2R10、hT2R8、hT2R61、hT2R54、hT2R75およびhT2R13が、安息香酸デナトニウムに特異的に応答することを示す、カルシウム画像化実験の結果を含有する。
【図6】図6は、デナトニウムに対するhT2R8の用量反応を示す。
【図7】図7は、hT2R8、hT2R9、hT2R10、hT2R54およびhT2R75が、ストリキニーネに特異的に応答することを明らかにする、カルシウム画像化実験の結果を含有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
hT2R8、hT2R54、およびhT2R75からなる群より選択される、ラニチジンに特異的に応答するヒト苦味受容体を調節する化合物を同定するためのアッセイであって:
i.ラニチジンまたは構造的に関連する化合物によって活性化されるhT2R8、hT2R54、hT2R75あるいはその断片、変異体、オルソログ、突然変異体またはキメラの活性化を誘導するラニチジンまたは構造的に関連する化合物に対する効果に関して、化合物をスクリーニングして、そして
ii.ラニチジンまたは構造的に関連する化合物による前記受容体の活性化に対する効果に基づいて、前記化合物が、hT2R8、hT2R54、および/またはhT2R75に関連する苦味を調節するかどうかを決定する
ことを含む、前記アッセイ。
【請求項2】
前記hT2R8が
i.配列番号3に含有されるアミノ酸配列、
ii.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号2に含有される配列にハイブリダイズする核酸配列によってコードされるもの、または
iii.配列番号3に含有されるポリペプチドに、少なくとも90%の配列同一性を所持するアミノ酸配列を有するもの
より選択される、請求項1のアッセイ。
【請求項3】
前記hT2R54が
i.配列番号11に含有されるアミノ酸配列、
ii.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号10に含有される配列にハイブリダイズする核酸配列によってコードされるもの、または
iii.配列番号11に含有されるポリペプチドに、少なくとも90%の配列同一性を所持するアミノ酸配列を有するもの
より選択される、請求項1のアッセイ。
【請求項4】
前記hT2R75が
i.配列番号15に含有されるアミノ酸配列;
ii.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号14に含有される配列にハイブリダイズする核酸配列によってコードされるもの;または
iii.配列番号15に含有されるポリペプチドに、少なくとも90%の配列同一性を所持するアミノ酸配列を有するもの
より選択される、請求項1のアッセイ。
【請求項5】
前記味受容体が、細胞膜上に発現される、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項6】
前記味受容体が、単離細胞膜上に発現される、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項7】
前記味受容体が、損なわれていない(intact)細胞上に発現される、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項8】
前記味受容体が、真核細胞上に発現される、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項9】
前記味受容体が、両生類、哺乳類または昆虫細胞によって発現される、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項10】
前記味受容体が、HEK293、BHK、COS、HEK293T、CHOおよびゼノパス(Xenopus)卵母細胞より選択される細胞上に発現される、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項11】
蛍光定量アッセイである、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項12】
結合アッセイである、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項13】
細胞内イオン濃度に対するその効果をアッセイすることによって、前記化合物に対する効果を検出する、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項14】
細胞内ナトリウムまたはカルシウムに対する前記化合物の効果を検出する、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項15】
細胞膜電位に対する前記化合物の効果を検出する、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項16】
前記味受容体の転写に対する前記化合物の効果を検出する、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項17】
ラニチジンと前記味受容体の相互作用を遮断する能力に基づいて、前記化合物を選択する、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項18】
細胞内cAMP、cGMPまたはIP3に対する前記化合物の効果を検出する、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項19】
前記味受容体が、前記味受容体の細胞外ドメインまたは膜貫通領域を含む、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項20】
前記アッセイが、カルシウム特異的蛍光色素を用いて、カルシウムの変化を検出する、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項21】
前記アッセイが、Fluo−3、Fluo−4およびFura−2より選択される色素を用いて、細胞内カルシウムの変化を検出する、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項22】
前記味受容体が溶液中にある、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項23】
分光特性、流体力学特性または溶解度の変化を検出する結合アッセイである、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項24】
Gタンパク質と前記味受容体の複合体化に対する前記化合物の効果を検出する、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項25】
トランスデューシン、ガストデューシン、Gα15、およびGα16より選択されるGタンパク質と前記味受容体の複合体化に対する前記化合物の効果を検出する、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項26】
蛍光偏光アッセイである、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項27】
前記味受容体が固相支持体に付着している、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項28】
ハイスループット・アッセイである、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項29】
味受容体がHEK293細胞によって発現される、請求項1〜4のいずれか1項のアッセイ。
【請求項30】
アセトアミノフェンに特異的に応答する苦味受容体であって、hT2R54である前記味受容体を調節する化合物を同定するためのアッセイであって:
i.アセトアミノフェンまたは構造的に関連する化合物によって活性化されるhT2R54あるいはその断片、変異体、オルソログ、突然変異体またはキメラの活性化を誘導するアセトアミノフェンまたは構造的に関連する化合物に対する効果に関して、化合物をスクリーニングして;そして
ii.アセトアミノフェンまたは構造的に関連する化合物による前記受容体の活性化に対する効果に基づいて、前記化合物が、hT2R54を調節するかどうかを決定する
ことを含む、前記アッセイ。
【請求項31】
前記hT2R54が
i.配列番号11に含有されるポリペプチド、
ii.配列番号10に含有される核酸配列に特異的にハイブリダイズする核酸配列によってコードされるポリペプチド;および
iii.配列番号11に含有されるポリペプチドに、少なくとも90%の配列同一性を所持するポリペプチド
からなる群より選択される、請求項30のアッセイ。
【請求項32】
前記味受容体が、単離細胞膜上に発現される、請求項30または31のアッセイ。
【請求項33】
前記味受容体が、損なわれていない細胞上に発現される、請求項30または31のいずれか1項のアッセイ。
【請求項34】
前記味受容体が、真核細胞上に発現される、請求項30または31のいずれか1項のアッセイ。
【請求項35】
前記味受容体が、両生類、哺乳類または昆虫細胞上に発現される、請求項30または31のアッセイ。
【請求項36】
前記味受容体が、HEK293、BHK、COS、HEK293T、CHOおよびゼノパス卵母細胞より選択される細胞上に発現される、請求項30または31のアッセイ。
【請求項37】
蛍光定量アッセイである、請求項30または31のアッセイ。
【請求項38】
結合アッセイである、請求項30または31のアッセイ。
【請求項39】
細胞内イオン濃度に対するその効果をアッセイすることによって、前記化合物に対する効果を検出する、請求項30または31のアッセイ。
【請求項40】
細胞内ナトリウムまたはカルシウムに対する前記化合物の効果を検出する、請求項30または31のアッセイ。
【請求項41】
細胞膜電位に対する前記化合物の効果を検出する、請求項30または31のアッセイ。
【請求項42】
前記味受容体の転写に対する前記化合物の効果を検出する、請求項30または31のアッセイ。
【請求項43】
アセトアミノフェンと前記味受容体の相互作用を遮断する能力に基づいて、前記化合物を選択する、請求項30または31のアッセイ。
【請求項44】
細胞内cAMP、cGMPまたはIP3に対する前記化合物の効果を検出する、請求項30または31のアッセイ。
【請求項45】
前記味受容体が、前記味受容体の細胞外ドメインまたは膜貫通領域を含む、請求項30または31のアッセイ。
【請求項46】
前記アッセイが、カルシウム特異的蛍光色素を用いて、カルシウムの変化を検出する、請求項30または31のアッセイ。
【請求項47】
前記アッセイが、Fluo−3、Fluo−4およびFura−2より選択される色素を用いて、細胞内カルシウムの変化を検出する、請求項30または31のアッセイ。
【請求項48】
前記味受容体が溶液中にある、請求項30または31のアッセイ。
【請求項49】
分光特性、流体力学特性または溶解度の変化を検出する結合アッセイである、請求項30または31のアッセイ。
【請求項50】
Gタンパク質と前記味受容体の複合体化に対する前記化合物の効果を検出する、請求項30または31のアッセイ。
【請求項51】
トランスデューシン、ガストデューシン、Gα15、およびGα16より選択されるGタンパク質と前記味受容体の複合体化に対する前記化合物の効果を検出する、請求項30または31のアッセイ。
【請求項52】
蛍光偏光アッセイである、請求項30または31のアッセイ。
【請求項53】
前記味受容体が固相支持体に付着している、請求項30または31のアッセイ。
【請求項54】
ハイスループット・アッセイである、請求項30または31のアッセイ。
【請求項55】
味受容体がHEK293細胞によって発現される、請求項30または31のアッセイ。
【請求項56】
hT2R8、hT2R10、hT1R13、hT2R54、hT2R61およびhT2R75からなる群より選択される、安息香酸デナトニウムに特異的に応答する苦味受容体を調節する化合物を同定するためのアッセイであって:
i.安息香酸デナトニウムまたは構造的に関連する化合物によって活性化されるhT2R8、hT2R10、hT1R13、hT2R54、hT2R61およびhT2R75あるいはその断片、変異体、オルソログ、突然変異体またはキメラの活性化を誘導する安息香酸デナトニウムまたは構造的に関連する化合物に対する効果に関して、化合物をスクリーニングして;そして
ii.安息香酸デナトニウムまたは構造的に関連する化合物による前記受容体の活性化に対する効果に基づいて、前記化合物が、hT2R8、hT2R10、hT1R13、hT2R54、hT2R61およびhT2R75を調節するかどうかを決定する
ことを含む、前記アッセイ。
【請求項57】
前記hT2R8が
i.配列番号3に含有されるアミノ酸配列、
ii.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号2に含有される配列にハイブリダイズする核酸配列によってコードされるもの、または
iii.配列番号3に含有されるポリペプチドに、少なくとも90%の配列同一性を所持するアミノ酸配列を有するもの
より選択される、請求項56のアッセイ。
【請求項58】
前記hT2R10が
i.配列番号4に含有されるアミノ酸配列、
ii.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号6に含有される配列にハイブリダイズする核酸配列によってコードされるもの、または
iii.配列番号4に含有されるポリペプチドに、少なくとも90%の配列同一性を所持するアミノ酸配列を有するもの
より選択される、請求項56のアッセイ。
【請求項59】
前記hT2R13が
i.配列番号9に含有されるアミノ酸配列、
ii.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号8に含有される配列にハイブリダイズする核酸配列によってコードされるもの、または
iii.配列番号9に含有されるポリペプチドに、少なくとも90%の配列同一性を所持するアミノ酸配列を有するもの
より選択される、請求項56のアッセイ。
【請求項60】
前記hT2R54が
i.配列番号11に含有されるアミノ酸配列、
ii.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号10に含有される配列にハイブリダイズする核酸配列によってコードされるもの、または
iii.配列番号11に含有されるポリペプチドに、少なくとも90%の配列同一性を所持するアミノ酸配列を有するもの
より選択される、請求項56のアッセイ。
【請求項61】
前記hT2R61が
i.配列番号13に含有されるアミノ酸配列、
ii.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号12に含有される配列にハイブリダイズする核酸配列によってコードされるもの、または
iii.配列番号13に含有されるポリペプチドに、少なくとも90%の配列同一性を所持するアミノ酸配列を有するもの
より選択される、請求項1のアッセイ。
【請求項62】
前記hT2R75が
i.配列番号15に含有されるアミノ酸配列、
ii.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号14に含有される配列にハイブリダイズする核酸配列によってコードされるもの、または
iii.配列番号15に含有されるポリペプチドに、少なくとも90%の配列同一性を所持するアミノ酸配列を有するもの
より選択される、請求項56のアッセイ。
【請求項63】
前記味受容体が、細胞膜として発現される、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項64】
前記味受容体が、単離細胞膜として発現される、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項65】
前記味受容体が、損なわれていない細胞として発現される、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項66】
前記味受容体が、真核細胞として発現される、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項67】
前記味受容体が、両生類、哺乳類または昆虫細胞によって発現される、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項68】
前記味受容体が、HEK293、BHK、COS、HEK293T、CHOおよびゼノパス卵母細胞より選択される細胞によって発現される、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項69】
蛍光定量アッセイである、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項70】
結合アッセイである、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項71】
細胞内イオン濃度に対するその効果をアッセイすることによって、前記化合物に対する効果を検出する、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項72】
細胞内ナトリウムまたはカルシウムに対する前記化合物の効果を検出する、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項73】
細胞膜電位に対する前記化合物の効果を検出する、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項74】
前記味受容体の転写に対する前記化合物の効果を検出する、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項75】
デナトニウムと前記味受容体の相互作用を遮断する能力に基づいて、前記化合物を選択する、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項76】
細胞内cAMP、cGMPまたはIP3に対する前記化合物の効果を検出する、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項77】
前記味受容体が、前記味受容体の細胞外ドメインまたは膜貫通領域を含む、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項78】
前記アッセイが、カルシウム特異的蛍光色素を用いて、カルシウムの変化を検出する、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項79】
前記アッセイが、Fluo−3、Fluo−4およびFura−2より選択される色素を用いて、細胞内カルシウムの変化を検出する、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項80】
前記味受容体が溶液中にある、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項81】
分光特性、流体力学特性または溶解度の変化を検出する結合アッセイである、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項82】
Gタンパク質と前記味受容体の複合体化に対する前記化合物の効果を検出する、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項83】
トランスデューシン、ガストデューシン、Gα15、およびGα16より選択されるGタンパク質と前記味受容体の複合体化に対する前記化合物の効果を検出する、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項84】
蛍光偏光アッセイである、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項85】
前記味受容体が固相支持体に付着している、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項86】
ハイスループット・アッセイである、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項87】
味受容体がHEK293細胞によって発現される、請求項56〜62のいずれか1項のアッセイ。
【請求項88】
hT2R8、hT2R9、hT1R10、hT2R54、およびhT2R75からなる群より選択される、ストリキニーネに特異的に応答するヒト味受容体を調節する化合物を同定するためのアッセイであって:
i.ストリキニーネまたは構造的に関連する化合物によって活性化されるhT2R8、hT2R9、hT1R10、hT2R54、およびhT2R75あるいはその断片、変異体、オルソログ、突然変異体またはキメラの活性化を誘導する安息香酸デナトニウムまたは構造的に関連する化合物に対する効果に関して、化合物をスクリーニングして;そして
ii.ストリキニーネまたは構造的に関連する化合物による前記受容体の活性化に対する効果に基づいて、前記化合物が、hT2R8、hT2R9、hT1R10、hT2R54、およびhT2R75に関連する苦味を調節するかどうかを決定する
ことを含む、前記アッセイ。
【請求項89】
前記hT2R8が
i.配列番号3に含有されるアミノ酸配列、
ii.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号2に含有される配列にハイブリダイズする核酸配列によってコードされるもの、または
iii.配列番号3に含有されるポリペプチドに、少なくとも90%の配列同一性を所持するアミノ酸配列を有するもの
より選択される、請求項88のアッセイ。
【請求項90】
前記hT2R9が
i.配列番号5に含有されるアミノ酸配列、
ii.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号4に含有される配列にハイブリダイズする核酸配列によってコードされるもの、または
iii.配列番号5に含有されるポリペプチドに、少なくとも90%の配列同一性を所持するアミノ酸配列を有するもの
より選択される、請求項88のアッセイ。
【請求項91】
前記hT2R10が
i.配列番号4に含有されるアミノ酸配列、
ii.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号6に含有される配列にハイブリダイズする核酸配列によってコードされるもの、または
iii.配列番号7に含有されるポリペプチドに、少なくとも90%の配列同一性を所持するアミノ酸配列を有するもの
より選択される、請求項1のアッセイ。
【請求項92】
前記hT2R54が
i.配列番号11に含有されるアミノ酸配列、
ii.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号10に含有される配列にハイブリダイズする核酸配列によってコードされるもの、または
iii.配列番号11に含有されるポリペプチドに、少なくとも90%の配列同一性を所持するアミノ酸配列を有するもの
より選択される、請求項88のアッセイ。
【請求項93】
前記hT2R75が
i.配列番号15に含有されるアミノ酸配列、
ii.ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号14に含有される配列にハイブリダイズする核酸配列によってコードされるもの、または
iii.配列番号15に含有されるポリペプチドに、少なくとも90%の配列同一性を所持するアミノ酸配列を有するもの
より選択される、請求項88のアッセイ。
【請求項94】
前記味受容体が、細胞膜上に発現される、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項95】
前記味受容体が、単離細胞膜上に発現される、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項96】
前記味受容体が、損なわれていない細胞上に発現される、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項97】
前記味受容体が、真核細胞上に発現される、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項98】
前記味受容体が、両生類、哺乳類または昆虫細胞によって発現される、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項99】
前記味受容体が、HEK293、BHK、COS、HEK293T、CHOおよびゼノパス卵母細胞より選択される細胞によって発現される、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項100】
蛍光定量アッセイである、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項101】
結合アッセイである、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項102】
細胞内イオン濃度に対するその効果をアッセイすることによって、前記化合物に対する効果を検出する、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項103】
細胞内ナトリウムまたはカルシウムに対する前記化合物の効果を検出する、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項104】
細胞膜電位に対する前記化合物の効果を検出する、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項105】
前記味受容体の転写に対する前記化合物の効果を検出する、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項106】
ラニチジンと前記味受容体の相互作用を遮断する能力に基づいて、前記化合物を選択する、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項107】
細胞内cAMP、cGMPまたはIP3に対する前記化合物の効果を検出する、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項108】
前記味受容体が、前記味受容体の細胞外ドメインまたは膜貫通領域を含む、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項109】
前記アッセイが、カルシウム特異的蛍光色素を用いて、カルシウムの変化を検出する、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項110】
前記アッセイが、Fluo−3、Fluo−4およびFura−2より選択される色素を用いて、細胞内カルシウムの変化を検出する、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項111】
前記味受容体が溶液中にある、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項112】
分光特性、流体力学特性または溶解度の変化を検出する結合アッセイである、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項113】
Gタンパク質と前記味受容体の複合体化に対する前記化合物の効果を検出する、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項114】
トランスデューシン、ガストデューシン、Gα15、およびGα16より選択されるGタンパク質と前記味受容体の複合体化に対する前記化合物の効果を検出する、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項115】
蛍光偏光アッセイである、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項116】
前記味受容体が固相支持体に付着している、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項117】
ハイスループット・アッセイである、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。
【請求項118】
味受容体がHEK293細胞によって発現される、請求項88〜93のいずれか1項のアッセイ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2008−537473(P2008−537473A)
【公表日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555113(P2007−555113)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/002509
【国際公開番号】WO2006/086150
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507267920)セノミクス・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】