説明

アゾール化合物を用いたビニリデン末端基を含むポリオレフィンの製造方法

【課題】ビニリデン末端基を豊富に含むポリオレフィンの製造方法を提供する。
【解決手段】疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを、好適なアゾール失活化剤及びその置換誘導体と接触させることにより、疑似リビングカルボカチオン末端ポリマーからビニリデン末端基を含むポリオレフィンが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニリデン末端基を豊富に含むポリオレフィンの製造方法に関するものである。特には、本発明は、疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを、好適なアゾール化合物及びその置換誘導体から選ばれた失活化剤と接触させることにより、疑似リビングカルボカチオン末端ポリマーからビニリデン末端基を含むポリオレフィンを製造することに関する。
【背景技術】
【0002】
単一の「エキソ−オレフィン」、「1,1−二置換」オレフィン又は「メチルビニリデン」末端基を含む一官能性開始剤を用いて製造された線状ポリオレフィンは、特定の末端官能基を含む重合体を製造するための有用な前駆体である。多官能性開始剤を用いて製造された重合体は、多数のエキソ−オレフィン末端基を有することになる。特定の末端基を含む重合体は潤滑油添加剤として有用である。ヘテロ原子を含む官能化重合体の一例としてポリイソブテニルコハク酸無水物があり、オレフィンを末端基とするポリイソブチレンと無水マレイン酸との反応により生成する。末端官能基は、更なる反応を進めることができる重合体を合成するためにも望ましいものである。
【0003】
従来のイオン重合は、アニオン重合またはカチオン重合であると言える。アニオン重合は、塩基の存在下でカルボアニオンにより進行し、電子吸引基を持つ単量体に好都合である。カチオン重合は、酸の存在下でカルベニウムイオンとも呼ばれるカルボカチオンにより進行し、電子供与基を持つ単量体に好都合である。
【0004】
従来の重合系と同様に、リビング重合系もアニオン重合またはカチオン重合のいずれかである。従来の重合とリビング重合の相違は、理想的なリビング重合が連鎖移動反応も連鎖停止反応も無しで進行することにある。リビング重合系は、単量体と開始剤の供給比を制御することで重合度を制御でき、また二種以上の異なる単量体の逐次添加によってブロック共重合体を生成させる能力が生じるから、商業的に非常に重要である。単量体を使い尽くすまで重合は続くが、重合体は将来何時でも追加の単量体を付加する能力を保持している。当該分野では多数のそのような系がよく知られている。
【0005】
更に発展したものが、従来の単量体を用いる疑似リビングカチオン重合系である。疑似リビング重合は、ある一定条件、例えば無水の試薬を用いると最もよく達成できる。疑似リビングカチオン重合は、連鎖移動反応の速度はゼロに近いが連鎖停止反応が存在する、ただし可逆的であるという点で、真のリビング重合とは異なっている。疑似リビングカチオン重合の重要な一例が、イソブチレンの疑似リビングカチオン重合である。
【0006】
一般に、イソブチレンの疑似リビングカチオン重合によって狭い分子量分布が生じて、「tert−クロリド」末端基とも呼ばれる2−クロロ−2−メチルプロピル末端基を含む一種類の主要な重合体生成物が生じる。ある一定条件下では、少量のオレフィン異性体が生成することもある。一方、従来のBF3を用いたイソブチレンの重合では二種類の主要なオレフィン異性体が生成する。高反応性エキソ−オレフィン異性体が最も量が多く、比較的非反応性の2−メチル−1−プロペニル異性体も生成する。2−メチル−1−プロペニル異性体は、「三置換」異性体または「エンドオレフィン」異性体とも呼ばれる。さらに、従来のイソブチレンの重合では、一般的な疑似リビング重合よりも分子量分布又は多分散性指数が大きい重合体が生じる。
【0007】
エキソ−オレフィン異性体単独のものの製造はこれまで、従来の重合条件では達成されなかった。
【0008】
エキソ−オレフィン末端基だけを含むポリイソブチレンを製造するには二つの確立された方法がある。一つの方法は、tert−クロリドを末端基とするポリイソブチレンから、重合後反応でカリウムtert−ブトキシドを用いて化学的にハロゲン化水素を取り去ることを含んでいる(特許文献1)。もう一つの方法は、疑似リビングイソブチレンをメタリルトリメチルシランでその場で失活させて、活性なリビングカルベニウムイオンをエキソ−オレフィン末端基に変換することを含んでいる。例えば、非特許文献1及び非特許文献2に記載がある。
【0009】
上記の方法を使用して多官能性開始剤を用いて、一以上のエキソ−オレフィン末端基を含むポリイソブチレン重合体を製造することができる。ポリイソブチレン重合体を含むポリオレフィンの製造は当該分野ではよく知られている。多数の特許文献に、エキソ−オレフィン末端基を含むポリイソブチレン重合体の製造方法が記述されているが、本発明の置換アゾール化合物を用いて疑似リビングカチオン重合系を失活させることを利用する方法については全く記述が無い。
【0010】
【特許文献1】米国特許第4342849号明細書
【非特許文献1】ロス(Roth)及びH.メイヤー(H. Mayr)著、「マクロモレキュルズ(Macromolecules)」、1996年、第29号、p.6104、
【非特許文献2】ニールセン、L.V.(Nielsen, L.V.)、ニールセン、R.R.(Nielsen, R.R.)、ガオ、B.(Gao, B.)、コップス、J.(Kops, J.)、イワン、B.(Ivan, B.)著、「ポリマー(Polymer)」、1997年、第38(10)号、p.2529
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ビニリデン末端基を豊富に含むポリオレフィンの製造方法に関する。特には、本発明は、疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを、好適なアゾール化合物及びその置換誘導体から選ばれた失活化剤と接触させることにより、疑似リビングカルボカチオン末端ポリマーからビニリデン末端基を含むポリオレフィンを製造することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は一部では、ビニリデン末端基を含むポリオレフィンの製造方法に関するものであり、この方法は下記の工程からなる:
a)疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを供給する工程、
b)工程a)のポリマーを、下記I式に従う置換アゾール失活化剤化合物と接触させる工程:
【0013】
【化1】

【0014】
式中、R1およびR2は独立に、水素、炭素原子数1〜20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、あるいは炭素原子数約7〜30のアラルキルであるか;あるいはR1およびR2は共同して、非置換であるか、あるいは炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、炭素原子数約7〜約30のアラルキル、炭素原子数約1〜6のアルコキシ、炭素原子数約1〜6のアルキルチオエーテル、ハロ(ハロゲン)、または式−NR***(ただし、R*およびR**は独立に、炭素原子数約4〜10のアルキル、炭素原子数約4〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約10のアリール、炭素原子数約7〜約10のアルカリール、炭素原子数約7〜約10のアラルキルである)を有するアミノから独立に選ばれた1乃至4個の置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6〜10の縮合芳香環を形成しており;
Rは、水素、炭素原子数1〜20のアルキル、炭素原子数約3〜7のシクロアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、あるいは炭素原子数約7〜30のアラルキルであるが、ただし、Rが水素である場合には、R2は炭素原子数少なくとも3の分枝アルキル、アリール、シクロアルキル、アルカリールまたはアラルキルであって、またRがメチルである場合には、R1およびR2は独立に、炭素原子数1〜20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、及び炭素原子数約7〜30のアラルキルから選ばれ;
そして
Xは、酸素または硫黄である。
【0015】
本発明の製造方法では、接触工程を好適な条件で行って、失活化剤が、ポリオレフィンの反応性鎖末端と相互作用して反応性鎖末端からのプロトンの除去を促進することができるようにし、それによりビニリデン末端基を生成させる。よって、好適な失活反応系の条件(温度、ルイス酸、溶媒)を選択することで、所望のビニリデンを末端基とする重合体への変換を最適化できる。変換は、同一条件で失活化剤無しの制御と比較して、10モル%より高いことが好ましく、より好ましくは25モル%、より好ましくは50モル%、更に好ましくは75乃至90モル%、そして更には最大100モル%である。
【0016】
I式の化合物において、R1またはR2のうちの一方は水素であってよいが、好ましくはR1が水素であるように選ばれる。窒素ヘテロ原子の周りの立体障害度は、Rが水素であるときには、R2は炭素原子数が少なくとも3の分枝アルキル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチル等であるようにすることが一般には好ましい。
【0017】
一つの態様では、R1およびR2は共同して、炭素原子数1〜約10のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約10のアリール、炭素原子数約7〜約10のアルカリール、あるいは炭素原子数約7〜約10のアラルキルから独立に選ばれた1乃至4個の置換基で置換されている、炭素原子数6〜10の縮合芳香環を形成している。別の態様では、R1とR2のうちの少なくとも一方はアルキルであり、好ましくは両方がアルキルである。ある態様では、Xは酸素であるように選ばれ、別の態様ではXは硫黄である。
【0018】
別の態様では、Rは、炭素原子数2〜20のアルキル、炭素原子数約3〜7のシクロアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、あるいは炭素原子数約7〜30のアラルキルである。
【0019】
本発明の別の態様は、次の工程からなるビニリデン基末端重合体の製造方法に関する:a)疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを供給する工程、そして工程a)のポリマーを、下記II式に従うアゾール失活化剤化合物と接触させる工程:
【0020】
【化2】

【0021】
式中、Rは、炭素原子数2〜20のアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、または炭素原子数約7〜30のアラルキルであり;そして
Xは、酸素または硫黄である。
【0022】
II式に従う化合物において、特に好ましいRはアリール、アルカリールまたはアラルキルであり、2−フェニルベンゾオキサゾールまたは2−フェニルベンゾチアゾールが特に好ましい。
【0023】
疑似リビングカルボカチオン末端ポリマーは、ルイス酸と溶媒との存在下でかつ好適な疑似リビング重合反応条件下で、少なくとも一種のカチオン重合可能なオレフィン単量体を開始剤と接触させ、そののち失活化剤を添加することにより、生成させることができる。この種の反応により、最終的なビニリデン含有ポリオレフィンをその場で生成させることが可能になる。別の好適な疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーは、ルイス酸と溶媒との存在下で、かつ好適な疑似リビング重合反応条件下で、ポリオレフィン鎖末端、普通はハライドをイオン化することにより生成させることができる。
【0024】
開始剤は一官能性であっても二官能性であっても、あるいは多官能性であってもよく、そして各種のオレフィン単量体を用いることができる。
【0025】
別の態様は、本発明は、次の工程からなるビニリデン基末端重合体の製造方法に関する:疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを供給する工程、そのポリマーを下記I式に従う化合物である置換アゾール失活化剤と接触させる工程:
【0026】
【化3】

【0027】
式中、R1およびR2は独立に、炭素原子数1〜20のアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、あるいは炭素原子数約7〜30のアラルキルであるか;またはR1およびR2は共同して、炭素原子数6〜10の縮合芳香環を形成している;
Rは、炭素原子数2〜20のアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、あるいは炭素原子数約7〜30のアラルキルであり;
そして
Xは、酸素または硫黄である。
【0028】
別の態様では、ビニリデン基末端重合体の分子量分布(Mw/Mn)が約1.01乃至約3.0、より好ましくは約1.1乃至約2.0、更に好ましくは1.5未満となるように、疑似リビング重合系をうまく制御する。
【発明の効果】
【0029】
本発明で用いる失活化剤は、疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンのtert−クロリド鎖末端を、エキソ−オレフィン鎖末端に変換することができる。如何なる理論にもとらわれずに、ポリイソブチレンでは、ポリイソブチレン鎖末端のgem−ジメチル炭素からプロトンを取り去るのに、本発明で用いる失活化剤が選択的に触媒として作用すると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
[定義]
以下の用語は、本明細書で使用するとき、特に断わらない限りは以下の意味を有する:
【0031】
「アルキル」は、本明細書で使用するとき、一般に炭素原子数1〜約20の直鎖及び分枝鎖飽和脂肪族基を意味する。直鎖及び分枝鎖飽和脂肪族基の幾つかの例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチル等がある。「分枝アルキル」は、本明細書で使用するとき、アルキル基が分子の残部に結合している位置を表す炭素原子が、第三級又は第四級炭素原子のいずれかであるアルキル基を意味する。「第三級炭素」は、本明細書で使用するとき、3個の他の炭素原子に結合している炭素原子を意味する。「第四級炭素」は、本明細書で使用するとき、4個の他の炭素原子に結合している炭素原子を意味する。
【0032】
「カルベニウムイオン」又は「カルボカチオン」は、本明細書で使用するとき、3個のsp2結合置換基と空のp軌道を持つ正に荷電した炭素原子を意味する。
【0033】
【化4】

【0034】
「連鎖移動反応」は、本明細書で使用するとき、一つの重合鎖の生長の停止とそれに伴う別の重合鎖の可能な開始を意味する。
【0035】
「共通イオン塩」は、本明細書で使用するとき、生長したカルベニウムイオンと対イオンの対の解離を防ぐために、疑似リビングカチオン重合混合物に任意に添加されるイオン性の塩を意味する。共通イオン塩のアニオンは、生長した鎖末端の対イオンと同じである。共通イオン塩のカチオンは、一般にはテトラ−n−ブチルアンモニウムイオンのような脂肪族第四級アンモニウムカチオンであり、有機媒体への溶解度を付与する。
【0036】
「共通イオン塩前駆体」は、本明細書で使用するとき、疑似リビングカチオン重合混合物に任意に添加されて、ルイス酸とのその場での反応により、生長した鎖末端の対アニオンと同じ対アニオンを発生させるイオン性の塩を意味する。一例として塩化テトラ−n−ブチルアンモニウムがある。
【0037】
「制御された分子量分布」は、本明細書で使用するとき、所望の分子量分布を有するポリオレフィン重合体を意味する。分子量分布又は多分散性指数(PDI)は、本明細書では重合体鎖の質量平均分子量を数平均分子量で割算することにより、Mw/Mnで算出される。
【0038】
「カップリング」は、本明細書で使用するとき、重合体エキソ−オレフィン鎖末端に重合体末端カルベニウムが付加することを意味し、例えば重合体がポリイソブチレンであるときには、これはポリイソブチレンオレフィン鎖末端にポリイソブチレン末端カルベニウムイオンが付加することを意味する。
【0039】
「カップリング生成物」は、本明細書で使用するとき、重合体(エキソ−オレフィン)鎖末端に重合体(末端カルベニウム)イオンが付加した生成物を意味する。カップリング生成物の数平均分子量は、主重合体生成物の数平均分子量のおよそ二倍である。
【0040】
「従来の重合」は、本明細書で使用するとき、オレフィンを含む連鎖反応重合が、連鎖伝達粒子としてイオン、アニオン又はカチオンのいずれかによって進行する重合を意味する。重合は、連鎖開始、連鎖生長、連鎖移動および連鎖停止の工程で進む。
【0041】
「二EAS生成物」は、本明細書で使用するとき、2個の別個の重合体末端カルベニウムイオンが単一の失活化剤分子と反応して共有結合を形成したときに、結果として生じる生成物を意味する。二EAS生成物は、その構造中に失活化剤の残基を含んでいる。
【0042】
「二置換オレフィン」又は「エキソ−オレフィン」又は「メチルビニリデン」は、本明細書で使用するとき、エキソ−オレフィン鎖末端を含むオレフィン重合体鎖を意味し、ポリイソブチレンではその構造は下記に示す通りである。
【0043】
【化5】

【0044】
「EAS生成物」は、本明細書で使用するとき、1個の重合体末端カルベニウムイオンが単一の失活化剤分子と反応して共有結合を形成したときに、結果として生じる生成物を意味する。EAS生成物は、その構造中に失活化剤の残基を含んでいる。
【0045】
「電子供与体」は、本明細書で使用するとき、重合反応に添加されて、ルイス酸と完全に錯体を作る、またはルイス酸と全く錯体を作らないかのいずれかである塩基性及び/又は求核物質を意味する。電子供与体の濃度は、例えば水のようなプロトン性不純物の濃度を上回る。
【0046】
「求電子芳香族置換又はEAS」は、本明細書で使用するとき、EAS生成物が生成する工程を意味する。
【0047】
「gem−ジメチル炭素」は、本明細書で使用するとき、下記の構造で示すように、ポリオレフィン重合体鎖末端のカルベニウムイオン又は塩素が結合した炭素にアルファ位で結合した2個のメチル炭素を意味する。
【0048】
【化6】

【0049】
「炭化水素基」は、本明細書で使用するとき、主として炭素と水素とからなる有機基を意味し、脂肪族、脂環式、芳香族またはそれらの組合せ、例えばアラルキルまたはアルカリールであってよい。そのような炭化水素基は、脂肪族不飽和、すなわちオレフィン又はアセチレン不飽和を含んでいてもよいし、また少量のヘテロ原子、例えば酸素または窒素、または塩素などのハロゲンを含んでいてもよい。
【0050】
「開始剤」は、本明細書で使用するとき、重合を開始して重合体鎖の先端の原子価を満たす化学的部分、もしくはそのような部分を供給する分子を意味する。一官能性開始剤が使用されるなら、鎖末端(CE)濃度は開始剤の濃度に等しい。多官能性開始剤では、開始剤の官能価がxであるときには鎖末端濃度は開始剤濃度のx倍に等しい。
【0051】
「ルイス酸」は、本明細書で使用するとき、一対の電子を受容して共有結合を形成することができる化合物を意味する。
【0052】
「リビング重合」は、本明細書で使用するとき、測定できる連鎖移動反応も連鎖停止反応も無くて進行する重合を意味する。
【0053】
「疑似リビング重合」は、本明細書で使用するとき、可逆的な連鎖停止反応は発生するが、不可逆的な連鎖停止反応と連鎖移動反応の速度はゼロに近いリビング重合を意味する。
【0054】
「失活化剤」は、本明細書で使用するとき、重合反応に添加されて活性ルイス酸の存在下で重合体鎖末端と反応する化学化合物を意味する。失活化剤は反応性鎖末端からプロトンを除去することを促進する。
【0055】
「ポリオレフィン」は、本明細書で使用するとき、一種以上のオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、スチレン、イソブチレン等、の付加重合によって生成する重合体を意味する。
【0056】
「プロトン性不純物」は、本明細書で使用するとき、酸性水素原子をその構造に含む重合反応混合物中の不純物、例えば水を意味する。
【0057】
「位置特異的」は、本明細書で使用するとき、幾つかの可能な異性生成物のうちの一種類を独占的に又はほぼ独占的に与える化学反応を意味する。
【0058】
「停止」は、本明細書で使用するとき、重合工程を停止させる化学反応、またはルイス酸の失活による失活反応を意味する。
【0059】
「停止剤」は、本明細書で使用するとき、重合工程を停止させる、あるいは反応を失活させるが、同時に新たな重合体鎖の生成を開始させない化学化合物を意味する。停止剤として多数のアルコールを使用することができる。
【0060】
「tert−クロリド」は、ポリオレフィン重合体鎖の2−クロロ−2−メチルプロピル末端基を意味する。
【0061】
「ビニリデン」は、下記一般構造を持つ重合体鎖末端を意味する。ただし、Rは、H、アルキル、アリール、アラルキルまたはアルカリールであってよい。
【0062】
【化7】

【0063】
本発明は一部では、ビニリデン基末端重合体を製造する方法であって、a)疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを供給する工程、そしてb)工程a)のポリマーを好適な置換アゾール失活化剤と接触させる工程からなる方法に関する。本発明の失活化剤は、1個以上の窒素原子と酸素又は硫黄ヘテロ原子を含む置換アゾールから選ばれる、ただし、置換基(群)は、疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンからビニリデン基末端重合体を製造するのを置換アゾールが促進できるように選ばれる。アゾール部の選ばれた置換基群は、窒素ヘテロ原子の周りの立体嵩度を増やすので、失活化剤が指定した反応温度でルイス酸と定量的に錯体を作らないように選ばれるが、窒素ヘテロ原子周囲の立体嵩度は、カルベニウムイオンからのプロトン引抜きを妨げるほど大きくてはならない。一般に、好適な置換アゾールは、容易に置換を受け入れられる各位置が1乃至3個の炭化水素基又は置換炭化水素基(前に定義した)で置換されていて、よって例えばベンゾオキサゾールは、縮合環が既に2つの位置を占めているので1個の追加ヘテロ原子置換基を持つことができるが、縮合芳香環には更に炭化水素を置換することができ、またオキザゾールは3個の置換基を持つことができる等。1個の窒素原子と1個の酸素原子を含む好ましい置換アゾール失活化剤は、置換オキサゾール、好ましくは2,4置換、より好ましくは2,4,5置換オキサゾール、および置換ベンゾオキサゾールから選ばれ、一方、1個の窒素原子と1個の硫黄原子を含む置換アゾール失活化剤は、置換チアゾール、好ましくは2,4置換、より好ましくは2,4,5置換チアゾール、および置換ベンゾチアゾールから選ばれる。
【0064】
本発明の失活化剤は、疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンのtert−クロリド鎖末端を、エキソ−オレフィン鎖末端に変換することができる。如何なる理論にもとらわれずに、ポリイソブチレンでは下記に示すように、ポリイソブチレン鎖末端のgem−ジメチル炭素からプロトンを取り去るのに、本発明の失活化剤が選択的に触媒として作用すると考えられる。
【0065】
【化8】

【0066】
米国特許第6969744号明細書に開示されているように、求電子芳香族置換(EAS)メカニズムで疑似リビングカチオン重合を失活させる、非常に似通った構造の失活化剤が先行技術で知られているので、この結果は予測し得ないものであった。最も高いEAS収率を与える化合物は一般に、環の戦略的位置に位置する電子供与基で置換されている。これらの置換基は、例えばポリイソブチレンカルベニウムイオンが、環のオレフィンと反応したときに生じるフリーデル・クラフツ中間体を安定化させると考えられる。
【0067】
本発明に使用される失活化剤は、一官能性のものが使用されようと多官能性のものが使用されようとそれとは無関係に、tert−ハライド鎖末端を含むポリオレフィン重合体をエキソ−オレフィン鎖末端に変換するために用いることができる。この変換速度は、一官能性開始剤でも二官能性開始剤でも同様であると予測される。全鎖末端に基づき高濃度のエキソ−オレフィン鎖末端を含むポリイソブチレン重合体の製造では、温度依存性が観察されている。反応温度を上げると、カップリングを抑えることによりエキソ−オレフィンの収量が増加することが測定されている。カップリングは、1H−NMRスペクトルでは百万分の4.85部ピークのエキソ−オレフィンピークより僅かに上方の領域に4.82に中心があるピークとして見つけられ、またGPCスペクトルでも主ピークに低溶離量の肩として現われる。
【0068】
ある態様では、疑似リビング重合条件の条件および系をそれ以後の失活工程に照らして最適化することができる。如何なる理論にもとらわれることはないが、所望とする脱離反応は、カルベニウムイオンと既に生成したエキソ−オレフィンとの反応によるカップリング生成物の生成と競合していると考えられる。従って、脱離に有利でカップリングに不利な条件が好ましい。高い反応温度が脱離に有利でカップリングに不利であることが分かっている。イソブチレンの疑似リビングカチオン重合では、活性カルベニウムイオンと休止状態のtert−クロリド鎖末端間の平衡が存在する。系の温度が上がると、この平衡は休止状態の鎖末端に益々有利になるが、これは脱離とカップリングの速度を同等程度まで下げることになる。しかし、高温は、失活化剤とルイス酸の間の錯体の平衡を非錯化失活化剤の方にずらすことにもなり、それが脱離を起こさせる薬剤であると思われる。よって、温度の上昇は所望の反応に競合的な利点をもたらす。温度を無制限に上げることはできない。事実、ある種の失活化剤では失活化剤−ルイス酸錯化平衡のエンタルピーは進行方法には非常に強い負であるので、失活化剤は高温でのみ効力があり低温では総じて効力が無い。よって、一般に失活工程は高温で有利に実施される、ただし、温度を無制限に上げることはできない。
【0069】
鎖末端濃度、並びにそれと失活化剤濃度およびルイス酸濃度との関係は重要な変数である。高い鎖末端濃度は、低分子量が目的であるときに必要になるが、オレフィンカップリングに優先的に有利である。その理由は、その工程が重合体鎖では二次的なものだからである。従って、所望の優勢な脱離速度を維持するためには、失活化剤濃度および/または温度を上げるべきである。しかし、これらの変化は両方とも、カルベニウムイオンの濃度を低下させ、よって鎖末端のエキソ−オレフィンへの変換速度を減ずるという望ましくない影響を及ぼす。失活化剤濃度の増加は、おそらくは失活化剤とルイス酸の間の錯体形成によりルイス酸の濃度を減少させ、そしてこれがカルベニウムイオン濃度を減少させることになる。なぜならば、後者はおよそルイス酸濃度の二乗で変化するからである。従って、低分子量を目的とする処方では、高い失活化剤濃度と高いルイス酸濃度で配合するべきで、好ましくは高温で実施する。目的の分子量が何であれカップリングを減らす得策は、追加の希釈剤で反応体全部を希釈することである。
【0070】
充分な濃度の塩基性電子供与体が存在する場合、失活化剤濃度が疑似リビング鎖末端濃度のほんの一部であるときに、エキソ−オレフィン鎖末端への変換の改善が得られることが判明している。このことは、これらの条件下で失活化剤がカルベニウムイオンからプロトンを取り去り、続いてプロトンを電子供与体に移動できることを示唆している。すなわち、失活化剤は脱離の触媒として作用することができ、電子供与体はプロトン受容体として働くことができる。(鎖末端に対して)化学量論濃度以下の失活化剤の使用が、本発明の方法を実施するに当り経済的利点をもたらすことになる。一方、塩基性電子供与体が不在である場合、後者の代わりに共通イオン塩又はその前駆体が存在するとき、鎖末端のエキソ−オレフィンへの完全な変換には化学量論又はそれ以上の濃度の失活化剤が必要になることが判明している。これらの条件下では、失活化剤は触媒とプロトン受容体両方として働くことができる。
【0071】
[エキソ−オレフィン末端基を鎖に含むポリオレフィン重合体の一般的な製造方法]
以下に、本発明のポリオレフィン重合体の代表的な製造方法を記載する。本発明の方法は、バッチ法、連続法、半バッチ法、あるいは当該分野の熟練者には知られている任意の方法で実施することができる。重合反応は一般に、不活性ガス中で実質的に無水の環境で行われる。
【0072】
次のような反応体を反応器に充填する:
1)希釈剤、
2)開始剤、
3)電子供与体、または共通イオン塩又はその前駆体、
4)一種以上の単量体、および
5)ルイス酸、一般にはチタン又はホウ素のハロゲン化物。
【0073】
反応混合物を、約−130℃乃至約10℃の範囲の所望の温度で平衡にさせる。本発明の方法は、任意の所望の圧力で、大気圧、減圧または過圧で行うことができる。重合反応の進行を、反応混合物中に残っている単量体の量の測定によりその場でモニタする。単量体の高度の変換を観察した後、失活化剤を添加する前に失活前の鎖末端組成を測定するためにアリコートを取り出す。アリコートの重合反応を所望の温度で平衡にした適当なアルコールで停止させる。
【0074】
6)一種以上の窒素アゾール失活化剤を、反応混合物に添加して重合反応を失活させる。
【0075】
所望の生成物を得るために反応体の濃度を変えることができるが、エキソ−オレフィン鎖末端を高い収量で得るためにはある一定比の反応体が好ましい。その比を次に記す。
【0076】
単量体と開始剤とのモル比は、約3:1乃至約20000:1の範囲にある。好ましくは、単量体と開始剤とのモル比は約5:1乃至約2000:1の範囲にある。より好ましくは、単量体と開始剤とのモル比は約10:1乃至150:1である。単量体と開始剤とのモル比が、ポリオレフィンの最終的な分子量を制御する。
【0077】
ルイス酸と鎖末端とのモル比は、約0.1:1乃至約2500:1の範囲にある。好ましくは、ルイス酸と鎖末端とのモル比は約2:1乃至約200:1の範囲にある。より好ましくは、ルイス酸と鎖末端とのモル比は約2:1乃至15:1である。
【0078】
ルイス酸と電子供与体とのモル比は、約1.1:1乃至約10000:1の範囲にある。好ましくは、ルイス酸と電子供与体とのモル比は約2:1乃至約100:1の範囲にある。より好ましくは、ルイス酸と電子供与体とのモル比は約4:1乃至30:1である。
【0079】
ルイス酸と失活化剤とのモル比は、約1.1:1乃至約2500:1の範囲にある。好ましくは、ルイス酸と失活化剤とのモル比は約2:1乃至約100:1の範囲にある。より好ましくは、ルイス酸と失活化剤とのモル比は約2:1乃至15:1である。
【0080】
失活化剤と鎖末端とのモル比は、約0.25:1乃至約20:1の範囲にある。好ましくは、失活化剤と鎖末端とのモル比は約0.5:1乃至約5:1の範囲にある。より好ましくは、失活化剤と鎖末端とのモル比は約0.5:1乃至4:1である。
【0081】
ポリオレフィン重合体のエキソ−オレフィン鎖末端の濃度を測定するために、失活化剤を添加したのち様々な時間間隔で反応混合物から追加のアリコートを取り出してもよい。全てのアリコート試料および残った反応混合物で、所望の温度で平衡にした適当なアルコールを用いて重合反応を停止させる。
【0082】
エキソ−オレフィン鎖末端の濃度を、エンド−オレフィン及びtert−クロリド鎖末端の濃度と共に、1H−NMRを使用して定める。EAS生成物、二EAS生成物およびカップリング生成物の量を定性的に求めるために、GPCスペクトルも取る。
【0083】
疑似リビング重合及び/又は失活化剤との接触反応(群)は、バッチ形式でも、あるいは成分が連続的な流れで反応器に送られる半連続又は連続操作でも実施することができ、適切な反応器装置としては、これらに限定されるものではないが、溢れた重合体のスラリ又は溶液が重合体回収のために取り出されるような連続撹拌タンク型反応器装置、または栓流式(plug flow)反応器を挙げることができる。反応器の内容物を撹拌したりかき混ぜて、その一様な反応体分布を達成することが好ましい。不均質な失活化剤は、失活化剤を分散液としてあるいは固定媒体中に調製した固定床及びスラリ反応器を使用して、疑似リビングポリマーと有効に接触させることができる。理論的には栓流式反応器に操作利点があるものの、好ましい反応様式はバッチ法である。一般に、取扱いを容易にするために、また環又は分枝形成に対比して線状又は鎖状重合を誘発するために、液相で反応(群)を実施する。周囲条件で気体状の供給物を使用するならば、供給物を液相に維持するために反応圧力を制御する、および/または供給物を不活性溶媒または液体希釈剤に溶解させることが好ましい。ブタン供給物については、供給物を含む一般的なC4留分は加圧下および/または低温で液体であり、溶媒または希釈剤を要しない。反応を行う温度は重要であり、リビング又は疑似リビング系によっては、反応温度が高過ぎるとカチオン重合のリビング特性を減少させたり、排除することになる。
【0084】
以下に、本発明のポリオレフィン重合体の製造に使用するのに適した化合物を記載する:
【0085】
[希釈剤]
希釈剤はその極性により、生長種のイオン化平衡および交換速度に影響を及ぼし、極性はその誘電率から見積もることができる。一般に、低い誘電率を有する溶媒はイオン対が解離しにくいので好ましい。好適な溶媒としては、これらに限定されるものではないが、凝固点がかなり低くて好ましい重合温度で使用できる低沸点のアルカンおよび一又は多ハロゲン化アルキルが挙げられる。具体的な溶媒としては、アルカン(一般にはC2−C10アルカン、例えばプロパン、ノルマルブタン、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、ノルマルノナンおよびノルマルデカンなどのノルマルアルカン、およびイソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタンおよび2,3−ジメチルブタン等を含む分枝アルカン)、ハロゲン化アルカン、例えばクロロホルム、塩化エチル、塩化n−ブチル、塩化メチレン、塩化メチル、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、塩化n−プロピル、塩化イソプロピル、1,2−ジクロロプロパンまたは1,3−ジクロロプロパン、アルケン及びハロゲン化アルケン(例えば、塩化ビニル、1,1−ジクロロエテンおよび1,2−ジクロロエテン)、二硫化炭素、二酸化硫黄、無水酢酸、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、メチルシクロヘキサン、クロロベンゼン、ニトロ−アルカン(例えば、ニトロプロパン)が挙げられ、カチオン重合に使用できる少数の代表的な液体希釈剤または溶媒も挙げることができる。混合溶媒(例えば、上記に挙げたものの組合せ)も使用することができる。
【0086】
[開始剤]
リビング及び疑似リビングカルボカチオン重合の開始剤化合物は、当該分野ではよく知られている。開始剤は、所望とする生成物に応じて一官能性であっても多官能性であってもよい。所望の重合体が線状であるなら、一官能性及び二官能性開始剤が用いられる。星形重合体を製造するには、開始剤は2個以上の反応性部位を有するべきである。考えられる開始剤化合物は、一般式(X’−CRabnc(ただし、Ra、RbおよびRcは独立に、アルキル基、芳香族基、アルキル芳香族基のうちの少なくとも一種からなり、同じでも異なっていてもよく、そしてX’は、アセテート、エテレート、ヒドロキシル基またはハロゲンである)で表すことができる。Rcの価数はnであり、nは1〜4の整数である。Ra、RbおよびRcは、1〜約20個の炭素原子、好ましくは1〜約8個の炭素原子を含む炭化水素基であることが好ましい。X’はハロゲンであることが好ましく、より好ましくは塩素である。場合によっては、Ra、RbおよびRcの構造を生長種または単量体に似せて選択することが好ましく、例えば、ポリスチレンには1−フェニルエチル誘導体、あるいはポリイソブチレンには2,4,4−トリメチルペンチル誘導体である。好適な化合物としては例えば、ハロゲン化クミル、ジクミル及びトリクミル、特には塩化物、すなわち2−クロロ−2−フェニルプロパン、すなわち塩化クミル;1,4−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、すなわちジ(塩化クミル);1,3,5−トリ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、すなわちトリ(塩化クミル);2,4,4−トリメチル−2−クロロペンタン;2−アセチル−2−フェニルプロパン、すなわち酢酸クミル;2−プロピオニル−2−フェニルプロパン、すなわちプロピオン酸クミル;2−メトキシ−2−フェニルプロパン、すなわちクミルメチルエーテル;1,4−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン、すなわちジ(クミルメチルエーテル);1,3,5−トリ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン、すなわちトリ(クミルメチルエーテル)、および類似化合物を挙げることができる。その他の好適な例は米国特許第4946899号明細書に見い出すことができる。特に好ましい例は、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン(TMPCl)、1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、1,3,5−トリ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、および1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼン(bDCC)である。
【0087】
全反応混合物における鎖末端の濃度は、1リットル当り約0.0001モル乃至1リットル当り約2.0モルの範囲にあってよい。好ましくは、鎖末端の濃度は1リットル当り約0.001モル乃至1リットル当り約1.0モルの範囲にある。より好ましくは、鎖末端の濃度は1リットル当り約0.005モル乃至1リットル当り約0.5モルの範囲にある。
【0088】
[電子供与体]
電子供与体は、従来の重合系をリビング及び/又は疑似リビングカチオン重合系に変換することが明らかになっている。本発明に用いられる電子供与体は、特別な化合物又は化合物の部類にはっきりと限定されるわけではない。例としては、ピリジンおよびアルキルアミン、非プロトン性アミド、スルホキシド、エステル、および金属原子に結合した酸素原子を持つ金属化合物等を挙げることができる。ピリジン化合物としては、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、2−メチルピリジン、およびピリジンが挙げられる。N,N−ジメチルアニリンおよびN,N−ジメチルトルイジンも用いることができる。アミド化合物としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、およびN,N−ジエチルアセトアミドが挙げられる。スルホキシド化合物の例としてはジメチルスルホキシドがある。ジエチルエーテルはエーテル化合物の例であり、そして酢酸メチルおよび酢酸エチルはエステル化合物の例である。リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、トリアミドヘキサメチルホスフェートなどのリン酸エステル化合物も用いることができる。チタン酸テトライソプロピルなどの酸素含有金属化合物も電子供与体として使用できる。
【0089】
全反応混合物における電子供与体の濃度は、1リットル当り約0.001モル乃至1リットル当り約0.1モルの範囲にあってよい。好ましくは、電子供与体の濃度は1リットル当り約0.001モル乃至1リットル当り約0.05モルの範囲にある。より好ましくは、電子供与体の濃度は1リットル当り約0.002モル乃至1リットル当り約0.02モルの範囲にある。
【0090】
[共通イオン塩及び共通イオン塩前駆体]
電子供与体に加えて、もしくはその代わりに、共通イオン塩又は塩前駆体を任意に反応混合物に添加することができる。一般にこれらの塩は、イオン強度を高め、遊離イオンを抑え、そして配位子交換体と有利に相互作用させるために使用される。特に好ましいのは共通イオン塩前駆体、例えば塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−Bu4NCl)である。全反応混合物における共通イオン塩又は塩前駆体の濃度は、1リットル当り約0.0005モル乃至1リットル当り約0.05モルの範囲にあってよい。好ましくは、共通イオン塩又は塩前駆体の濃度は1リットル当り約0.0005モル乃至1リットル当り約0.025モルの範囲にある。より好ましくは、共通イオン塩又は塩前駆体の濃度は1リットル当り約0.001モル乃至1リットル当り約0.007モルの範囲にある。
【0091】
[単量体]
本発明の方法に使用するのに適した単量体は、炭化水素単量体、すなわち水素原子と炭素原子だけを含む化合物、特にはオレフィンおよびジオレフィンであり、通常は炭素原子数約2〜約20のものであるが、好ましくは約4〜約8のものである。この方法は、そのような単量体を重合して、異なってはいても分子量が均一な重合体、例えば約300乃至100万g/モルを越える重合体を生成させるのに用いることができる。そのような重合体は、分子量が約200乃至10000g/モルの低分子量液体又は粘性重合体であっても、あるいは分子量が約100000乃至1000000g/モルかそれ以上の固体ワックス状乃至塑性又は弾性物質であってよい。好適な単量体としては、イソブチレン、スチレン、ベータピネン、イソプレン、ブタジエンなどの化合物、およびこれらの種の置換化合物等を挙げることができる。特に好ましい単量体は、イソブチレン、2−メチル−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、およびベータ−ピネンである。更に好ましい単量体はイソブチレンである。単量体の混合物も使用することができる。全反応混合物における単量体の濃度は、1リットル当り約0.01モル乃至1リットル当り約5.0モルの範囲にあってよい。好ましくは、単量体の濃度は1リットル当り約0.1モル乃至1リットル当り約2.0モルの範囲にある。より好ましいのは、単量体の濃度は1リットル当り約0.3モル乃至1リットル当り約1.0モルの範囲にある。最も好ましい単量体の濃度は1リットル当り0.5モルである。
【0092】
[ルイス酸]
本発明のための触媒として適したルイス酸としては、これらに限定されるものではないが、ハロゲン化チタン及びホウ素、特には四塩化チタンおよび三塩化ホウ素が挙げられる。ハロゲン化チタン、特には四塩化チタンを使用することが好ましい。ルイス酸の強度とその濃度は特定の単量体に対して調整すべきである。さらに、これらルイス酸の強度は求核添加剤を用いて調整することができる。場合によってはこれらルイス酸は補助開始剤とも呼ばれる。開始剤系に存在するルイス酸の量は変えることができる。しかし、ルイス酸の濃度は適切な重合及び失活速度を遂行できるほど充分であることが望ましい。ルイス酸濃度は、生成した重合体を沈殿させるほど高くすべきではない。全反応混合物におけるルイス酸の濃度は、1リットル当り約0.001モル乃至1リットル当り約3.0モルの範囲にあってよい。好ましくは、ルイス酸の濃度は1リットル当り約0.005モル乃至1リットル当り約1.5モルの範囲にある。より好ましくは、ルイス酸の濃度は1リットル当り約0.05モル乃至1リットル当り約1.0モルの範囲にある。
【0093】
[失活化剤]
本発明のポリオレフィンの製造に使用が考えられる失活化剤について、以下に記載する。本発明の失活化剤は、窒素原子と酸素又は硫黄ヘテロ原子を含む置換アゾールから選ばれる、ただし、その置換基(群)は、疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンからビニリデン基末端重合体を製造するのを、置換アゾールが促進することができるように選ばれる。1個の窒素原子と少なくとも1個の酸素又は硫黄ヘテロ原子を含む特に好ましいアゾールは、2,4位および2,4,5位で置換されている。
【0094】
置換アゾールは、1〜3個の炭化水素基又は置換炭化水素基で置換されていてもよい、ただし、「炭化水素」は本明細書で使用するとき、炭素元素と水素元素のみからなる有機化合物又は基をいう。さらに、本発明の縮合環アゾールは任意に、最大4個の炭化水素基又は置換炭化水素基で置換されていてもよい。これら炭化水素部としては、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール部が挙げられる。これらの部としてはまた、他の脂肪族または環状炭化水素基で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール部、例えばアルカリール、アルケナリールおよびアルキナリールも挙げることができる。特に指示しない限り、これらの部は炭素原子1〜20個を含むことが好ましい。ここでいう「置換炭化水素」部は、少なくとも1個の炭素以外の原子で置換された炭化水素部であり、炭素鎖原子が窒素、酸素、ケイ素、リン、ホウ素、硫黄などのヘテロ原子またはハロゲン原子で置換された部も含まれる。置換炭化水素部の例示としては、アルコキシアルキル、アルケニルオキシアルキル、アルキニルオキシアルキル、アリールオキシアルキル、保護ヒドロキシアルキル、ケト、アシル、保護アミノアルキル、アルキルアルキルチオ、アリールアルキルチオ、ケタール、アセタール、アミド、およびエステル等を挙げることができる。置換アゾールは完全に置換されていることが好ましく、複素環の有用な位置が炭化水素又は置換炭化水素基で置換されていることを意味する。
【0095】
1個の窒素原子と1個の酸素原子とを含む置換アゾール失活化剤は、置換オキサゾール、好ましくは2,4,5置換オキサゾール、および置換ベンゾオキサゾールから選ばれる。1個の窒素原子と1個の硫黄原子を含む置換アゾール失活化剤は、置換チアゾール、好ましくは2,4,5置換チアゾール、および置換ベンゾチアゾールから選ばれる。
【0096】
特に好ましい失活化剤は、下記I式の化合物によって表される:
【0097】
【化9】

【0098】
式中、R1およびR2は独立に、水素、炭素原子数1〜20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、あるいは炭素原子数約7〜30のアラルキルであるか;またはR1およびR2は共同して、非置換であるか、あるいは炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、炭素原子数約7〜約30のアラルキル、炭素原子数約1〜6のアルコキシ、炭素原子数約1〜6のアルキルチオエーテル、ハロ(ハロゲン)、または式−NR***(ただし、R*およびR**は独立に、炭素原子数約4〜10のアルキル、炭素原子数約4〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約10のアリール、炭素原子数約7〜約10のアルカリール、炭素原子数約7〜約10のアラルキルである)を有するアミノから独立に選ばれた1乃至4個の置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6〜10の縮合芳香環を形成していてもよく;
Rは、水素、炭素原子数1〜20のアルキル、炭素原子数約3〜7のシクロアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、あるいは炭素原子数約7〜30のアラルキルであるが、Rが水素である場合には、R2は炭素原子数少なくとも3の分枝アルキル、アリール、シクロアルキル、アルカリールまたはアラルキルであるとの条件が付き、またRがメチルであるときには、R1およびR2は独立に、炭素原子数1〜20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、炭素原子数約7〜30のアラルキルから選ばれる; そして
Xは、酸素または硫黄である。
【0099】
別の態様では、R1およびR2は独立に、炭素原子数1〜20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、あるいは炭素原子数約7〜30のアラルキルであるか;またはR1およびR2は共同して、非置換であるか、あるいは炭素原子数1〜約10のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約10のアリール、炭素原子数約7〜約10のアルカリール、炭素原子数約7〜約10のアラルキル、炭素原子数約1〜6のアルコキシ、炭素原子数約1〜6のアルキルチオエーテル、ハロ(ハロゲン)、または式−NR***(ただし、R*およびR**は独立に、炭素原子数約4〜10のアルキル、炭素原子数約4〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約10のアリール、炭素原子数約7〜約10のアルカリール、炭素原子数約7〜約10のアラルキルである)を有するアミノから独立に選ばれた1乃至4個の置換基で置換されていてもよい、炭素原子数6〜10の縮合芳香環を形成していてもよく;
Rは、炭素原子数2〜20のアルキル、炭素原子数約3〜7のシクロアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、あるいは炭素原子数約7〜30のアラルキルであり;そして
Xは、酸素または硫黄である。
【0100】
別の態様では、R1およびR2は独立に、炭素原子数1〜20のアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、あるいは炭素原子数約7〜30のアラルキルであるか;または、R1およびR2は共同して、炭素原子数6〜10の縮合芳香環であり;Rは、炭素原子数2〜20のアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、あるいは炭素原子数約7〜30のアラルキルであり;そして
Xは、酸素または硫黄である。
【0101】
本発明の別の態様では、R1、R2およびRは独立に、炭素原子数3〜18、より好ましくは炭素原子数4〜12のアルキルである。
【0102】
特に好ましいI式の失活化剤は、下記II式の置換ベンゾオキサゾール及び置換ベンゾチアゾールである。
【0103】
【化10】

【0104】
式中、Rは、炭素原子数2〜20、より好ましくは炭素原子数3〜18のアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、あるいは炭素原子数約7〜30のアラルキルであり、そして
Xは、酸素または硫黄である。
【実施例】
【0105】
本発明について以下の実施例により更に説明するが、これら実施例は本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。反対に特に断わらない限り、温度および温度範囲は全て摂氏度系を意味し、「環境温度」又は「室温」は約20乃至25℃を意味する。「パーセント又は%」は質量%を意味する。
【0106】
[実施例1] 一官能性開始剤と2−フェニルベンゾオキサゾールを用いたポリイソブチレンの製造
250ミリリットル容四つ口丸底フラスコに、垂下型機械撹拌器および白金抵抗温度計を備え付けた。この組立装置を、実質的に不活性な雰囲気のグローブボックス内で乾燥窒素ガス中で、−60℃のヘプタン浴に浸漬した。次いで、フラスコに次のような反応体を充填した:
−60℃で平衡にしたヘキサン108ミリリットル、
−60℃で平衡にした塩化メチル72ミリリットル、
室温で平衡にした2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン0.48ミリリットル、
室温で平衡にした2,6−ジメチルピリジン0.23ミリリットル、および
−60℃で平衡にしたイソブチレン16.4ミリリットル。
【0107】
次に、丸底フラスコの内容物を−60℃で平衡にさせた。
【0108】
撹拌を続けながら、次に四塩化チタン1.82ミリリットルをフラスコに充填した。反応を12分間進行させた後、重合溶液20ミリリットルを9本の60ミリリットル試験管の各々に入れ、ねじ込みキャップを付し、ヘプタン浴に浸漬した。
【0109】
各試験管で更に12分間重合を続行させ(反応は全部で24分間)、この時点で9本の試験管のうちの1本をメタノール5ミリリットルで停止させて、2−フェニルベンゾオキサゾール添加前の比較例とした。反応重合物を含む残りの試験管のうちの1本に、2−フェニルベンゾオキサゾール(アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)製)0.109gを添加し、一方、残りの試験管のうちの6本には別の失活化剤を添加した。2−フェニルベンゾオキサゾール失活反応(および別の失活反応)を30分間進めさせ、この時点で失活反応を停止させるためにメタノール5ミリリットルを加えた。次に、最後の重合試験管をメタノール5ミリリットルで停止させて、最終比較例(対照A)とした。失活反応の比較基線とし、また失活化剤無しの場合の構造及び分子量的特徴決定の基準とするために、失活化剤非含有反応物を使用した。
【0110】
[実施例2−5]
2−フェニルベンゾオキサゾールの代わりに別の失活化剤を疑似リビング重合に加えたこと以外は、上記実施例1に記載した方法に従って実施例2−5を実施した。さらに、実施例4及び5は−40℃で行った。対照Bは−40℃で行った反応の最終比較基線を表す。第1表に、実施例1−5の反応体の量を列挙する。
【0111】
[比較例A−J]
上記実施例1に記載した方法に従ってポリブテンを製造したが、2−フェニルベンゾオキサゾール以外の種々の失活化剤を利用した。比較例は、環に窒素と別のヘテロ原子とを含む環状芳香族失活化剤を表わしているが、ビニリデンPIBを−60℃の対照Aよりも、あるいは−40℃の対照Bよりも多くは生じなかった。
【0112】
第1表に、比較例A−Jの反応体の量を列挙する。
【0113】
【表1】

【0114】
1H−NMRデータの収集方法)
バリアン(Varian)(300MHz)分光光度計を使用し、試料濃度CDCl3中で3%乃至5%(質量/質量)を用いて、1H−NMRスペクトルを得た。末端基の分析のために1H−NMRスペクトルを使用した。エキソ−オレフィン、エンド−オレフィン、tert−クロリドおよびカップリングオレフィンの鎖末端の割合を、後続の項に記載するように1H−NMR積分を用いて得た。
【0115】
(GPCデータの収集方法)
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散性指数(PDI)、すなわちMw/Mnを決定するためにGPCデータを使用した。オレフィンカップリング生成物を定性的に検出するためにもGPCを使用した。
【0116】
(ポリイソブチレン生成物の鎖末端の量の割合の計算方法)
ポリイソブチレン試料中のエキソ−オレフィン、エンド−オレフィン及びtert−クロリド鎖末端およびカップリング生成物の割合を、1H−NMR積分を用いて定めた。これら四種で100%の鎖末端を表すと仮定した。場合によっては、1H−NMRスペクトルの定性的検査により、またGPCクロマトグラムで重合体主ピークの低溶離量側に肩が無いのを確認することにより、カップリング生成物は存在しないと思われた。以下に、二つの方法を記す。カップリング生成物が検出されたときは「一般的方法」を使用し、カップリング生成物が存在しないと思われたときは「特別な方法」を使用した。
【0117】
(一般的方法)
エキソ−オレフィンの量の割合を決定するための下記の方程式と類似の方程式を用いて、各種類の鎖末端のモル量の割合を得た。
【0118】

F(exo)=(Aexo)/(Aexo+Aendo+Atert-Cl+2Acoupled) (1)
【0119】
ここで、Aendoは5.15ppmにおける単独オレフィン共鳴の面積であり、Aexoは4.63ppmにおけるエキソ−オレフィン共鳴の面積であり、そしてAtert-Clは下記のようにして算出した。
【0120】

tert-Cl=(A1.65-1.72/6)−Aendo (2)
【0121】
ここで、A1.65-1.72はエンド−オレフィン及びtert−クロリド鎖末端のgem−ジメチルプロトンに関係した入り組んだピークの積分面積である。方程式(1)でカップリング生成物に2の係数が見られるが、その理由はこれら生成物の発生に2個のポリイソブチレン鎖が消費される、という事実にあることに注意されたい。Acoupledは下記のようにして算出した。
【0122】

coupled=(A5.0-4.75−A4.5-4.75)/2 (3)
【0123】
ここで、A5.0-4.75はエキソ−オレフィンプロトンのうちの1個とカップリング生成物の2個の同等なプロトンに関係した入り組んだピークの積分面積であり、そしてA4.5-4.75はもう一方のエキソ−オレフィンプロトンに関係したピークの積分面積である。
【0124】
(特別な方法)
カップリング生成物が定性的に存在しない場合には、エキソ−オレフィンの量の割合を決定するための下記の方程式と類似の方程式を用いて、各種類の鎖末端のモル量の割合を得た。
【0125】

F(exo)=(Aexo)/(Aexo+Aendo+Atert-Cl) (1)
【0126】
ここで、Aendoは5.15ppmにおける単独オレフィン共鳴の面積であり、Aexoは百万分の4.63部と4.85部における2つのエキソ−オレフィン共鳴の平均面積であり、そしてAtert-Clは「一般的方法」に記載したのと同じようにして算出した。
【0127】
下記第2表に、上記の実施例1及び2および比較例A−Jで製造したポリイソブチレン試料について得られた1H−NMRの結果を、全末端基のモル%で記載する。
【0128】
【表2】

【0129】
第2表に示したように、疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを、上記実施例1−5に表示したようなNとO又はSの両方を含む好適な芳香族失活化剤と接触させると、そのようなポリオレフィン重合体はビニリデン末端基が豊富となる。比較例A−Jは、環に窒素と別のヘテロ原子両方を含む環状芳香族失活化剤に相当するが、ビニリデンPIBを対照アリコートより多くは生じなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程からなるビニリデン基末端重合体の製造方法:
a)疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを供給する工程、
b)工程a)のポリマーを、下記I式に従う置換アゾール失活化剤化合物と接触させる工程:
【化1】

(式中、R1およびR2は独立に、水素、炭素原子数1〜20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、炭素原子数約7〜30のアラルキルであるか;またはR1およびR2は共同して、非置換の、あるいは炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、炭素原子数約7〜約30のアラルキル、炭素原子数約1〜6のアルコキシ、炭素原子数約1〜6のアルキルチオエーテル、ハロ(ハロゲン)、あるいは式−NR***(ただし、R*およびR**は独立に、炭素原子数約4〜10のアルキル、炭素原子数約4〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約10のアリール、炭素原子数約7〜約10のアルカリール、あるいは炭素原子数約7〜約10のアラルキルである)を有するアミノから独立に選ばれる1乃至4個の置換基で置換されている、炭素原子数6〜10の縮合芳香環を形成していてもよく;
Rは、水素、炭素原子数1〜20のアルキル、炭素原子数約3〜7のシクロアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、あるいは炭素原子数約7〜30のアラルキルであるが、Rが水素である場合には、R2は炭素原子数少なくとも3の分枝アルキル、アリール、シクロアルキル、アルカリールまたはアラルキルであり、そしてRがメチルである場合には、R1およびR2は互いに独立に、炭素原子数1〜20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、及び炭素原子数約7〜30のアラルキルから選ばれ;そして
Xは、酸素または硫黄である)
【請求項2】
疑似リビングカルボカチオン末端ポリマーを、ルイス酸と溶媒との存在下でかつ好適な疑似リビング重合反応条件下で、少なくとも一種のカチオン重合可能なオレフィン単量体を開始剤と接触させることにより、生成させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
開始剤が一官能性である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
開始剤が、2−クロロ−2−フェニルプロパン、2−アセチル−2−フェニルプロパン、2−プロピオニル−2−フェニルプロパン、2−メトキシ−2−フェニルプロパン、2−エトキシ−2−フェニルプロパン、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−アセチル−2,4,4−トリメチルペンタン、2−プロピオニル−2,4,4−トリメチルペンタン、2−メトキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、および2−エトキシ−2,4,4−トリメチルペンタンからなる群より選ばれる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
開始剤が2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタンである請求項3に記載の方法。
【請求項6】
開始剤が二官能性である請求項2に記載の方法。
【請求項7】
開始剤が、1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、1,3−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン、および5−tert−ブチル−1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンからなる群より選ばれる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
開始剤が5−tert−ブチル−1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
開始剤が多官能性である請求項2に記載の方法。
【請求項10】
開始剤が、1,3,5−トリ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、および1,3,5−トリ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼンからなる群より選ばれる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも一種のカチオン重合可能なオレフィン単量体が、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、および4−メチル−1−ペンテンからなる群より選ばれる請求項2に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも一種のカチオン重合可能なオレフィン単量体がイソブチレンである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
二種類の異なるカチオン重合可能なオレフィン単量体を用いる請求項2に記載の方法。
【請求項14】
ルイス酸が、四ハロゲン化チタン、三ハロゲン化ホウ素、三塩化アルミニウム、四塩化スズ、塩化亜鉛および二塩化エチルアルミニウムからなる群より選ばれる請求項2に記載の方法。
【請求項15】
ルイス酸が、四塩化チタン、四臭化チタンおよび三塩化ホウ素からなる群より選ばれる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ルイス酸が四塩化チタンである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
疑似リビング重合反応条件が、温度範囲が約−130℃から+10℃の間にあるように選ばれる請求項2に記載の方法。
【請求項18】
疑似リビング重合反応条件が、温度範囲が−60℃から−10℃の間にあるように選ばれる請求項17に記載の方法。
【請求項19】
疑似リビング重合反応条件が、温度範囲が−60℃から−20℃の間にあるように選ばれる請求項18に記載の方法。
【請求項20】
疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを、ルイス酸と溶媒との存在下でかつ好適な疑似リビング重合反応条件下でポリオレフィン鎖末端をイオン化することにより、生成させる請求項1に記載の方法。
【請求項21】
疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを、ルイス酸と溶媒との存在下でかつ好適な疑似リビング重合反応条件下で、tert−ハライド鎖末端を含むポリオレフィンをイオン化することにより生成させる請求項20に記載の方法。
【請求項22】
疑似リビングカルボカチオン末端ポリオレフィンポリマーを、ルイス酸と溶媒との存在下でかつ好適な疑似リビング重合反応条件下で、tert−クロリド鎖末端を含むポリオレフィンをイオン化することにより生成させる請求項20に記載の方法。
【請求項23】
1およびR2が共同して、炭素原子数1〜約10のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約10のアリール、炭素原子数約7〜約10のアルカリール、炭素原子数約7〜約10のアラルキルから独立に選ばれる1乃至4個の置換基で置換されている、炭素原子数6〜10の縮合芳香環を形成している請求項1に記載の方法。
【請求項24】
Rが、炭素原子数2〜20のアルキル、炭素原子数約3〜7のシクロアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、あるいは炭素原子数約7〜30のアラルキルである請求項1に記載の方法。
【請求項25】
1またはR2のうちの一方が水素である請求項1に記載の方法。
【請求項26】
1が水素である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
工程b)の失活化剤が下記I式に従う化合物から選ばれる請求項1に記載の方法。
【化2】


(式中、R1およびR2は独立に、炭素原子数1〜20のアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、あるいは炭素原子数約7〜30のアラルキルであるか;またはR1およびR2は共同して、炭素原子数6〜10の縮合芳香環を形成していてもよく;
Rは、炭素原子数2〜20のアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、あるいは炭素原子数約7〜30のアラルキルであり;そして
Xは、酸素または硫黄である)
【請求項28】
1およびR2がアルキルである請求項27に記載の方法。
【請求項29】
Xが酸素である請求項27に記載の方法。
【請求項30】
Xが硫黄である請求項27に記載の方法。
【請求項31】
工程b)の失活化剤が下記II式に従う化合物から選ばれる請求項27に記載の方法。
【化3】


(式中、Rは、炭素原子数2〜20のアルキル、炭素原子数6〜約20のアリール、炭素原子数約7〜30のアルカリール、または炭素原子数約7〜30のアラルキルであり;そして
Xは、酸素または硫黄である)
【請求項32】
Rがアリール、アルカリールまたはアラルキルである請求項31に記載の方法。
【請求項33】
失活化剤が、2−フェニルベンゾオキサゾールまたは2−フェニルベンゾチアゾールのいずれかである請求項32に記載の方法。

【公開番号】特開2007−182574(P2007−182574A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352987(P2006−352987)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【出願人】(504239353)ザ・ユニバーシティー・オブ・サザン・ミシシッピ (9)
【Fターム(参考)】