説明

アダパレンとシクロデキストリンとの分子複合体を調製するための方法

本発明は、圧力下で高密度な流体、具体的には、圧力下で高密度なCO2の流体の技術を用いてアダパレンとシクロデキストリンとの分子複合体を調製するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学および薬学の分野に属し、圧力下で、特にCO2の圧力下で、高密度な流体の技術を用いて可溶性分子複合体を調製するための方法に関する。具体的には、本発明は、圧力下で高密度な流体の技術を用いてアダパレンとシクロデキストリンとの分子複合体を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
付加価値が高い新しい医薬品分子は、事例の40%において、水溶性であるまたは水溶性が低く、これらのバイオアベイラビリティーに弊害をもたらす。
【0003】
医薬品、化粧品および栄養補助食品の分野において、圧力下の媒体中での、コーティングする基質における活性物質の分子複合体の形成に関するいくつかの特許出願、特許および刊行物がある。しかし、記載される方法の大部分は、バイオアベイラビリティーを改善させる目的に関するものではなく、むしろ基質上で活性物質の吸着に関するものである。
【0004】
Van Heesら(Application of supercritical carbon dioxide for tAze preparation of a Piroxicam-ss-cyclodextrin inclusion compound、Pharmaceutical Research、vol.16、N 12、1999年)は、これらの刊行物において、超臨界CO2を用いて(3-シクロデキストリン中へのピロキシカムの包接のための方法を記載している。ピロキシカムは水に対する溶解性が低いため、P-シクロデキストリン中へのその包接により、その水溶性を高めることが可能であるべきである。この方法は、ピロキシカムおよび(3-シクロデキストリンの混合物を、静的なモードで静置した反応器に置くことにある。除圧後、得られた混合物は、DSC(示差走査熱量測定)、アセトニトリルにおける溶解性の測定およびピロキシカム単独の溶解性との比較および分光法によって特徴付ける前にすり合わされ、ホモジナイズされる。
【0005】
DSC分析により、ピロキシカムのp-シクロデキストリンとの複合体形成に関して結論を出すことが可能である。
【0006】
出願WO2006/070093は、水性媒体中でシクロデキストリンまたはそれらの誘導体で可溶化したアダパレンを含む組成物を記載している。したがって、組成物は、アダパレンとシクロデキストリンとの物理的な混合物を含む。
【0007】
出願WO2004/096284は、1種または複数のホスト分子中に、具体的には鎮痛薬、解熱薬、抗生物質および抗炎症薬に含まれる、水性媒体中で溶解性が低い1種または複数の活性物質を含む可溶性分子複合体を調製するための方法を記載する。前記方法は、1種または複数の活性物質を1種または複数のホスト分子と接触させるステップ(a)と、1種または複数の拡散剤の存在下で、ステップ(a)で得られた混合物と、静的なモードで、圧力下で高密度な流体を接触させることによる、分子の拡散ステップを実施するステップ(b)と、こうして形成された分子複合体を回収するステップ(c)とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2006/070093
【特許文献2】WO2004/096284
【特許文献3】EP 0 199 636
【特許文献4】WO03/043604
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Van Heesら(Application of supercritical carbon dioxide for tAze preparation of a Piroxicam-ss-cyclodextrin inclusion compound、Pharmaceutical Research、vol. 16、N 12、1999年)
【非特許文献2】Fromming KH、Szejtli J:「Cyclodextrins in pharmacy」、Kluwer Academic Publishers、Dortrecht、1994年
【非特許文献3】Dr J.Szejtli(Encyclopedia of Supramolecular Chemistryにおける「Cyclodextrins」、出版社Marcel Dekker、2004年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
驚くべきことに、本発明の本発明者らは、静的なモードで圧力下で高密度な流体を用いた分子の拡散のステップを含み、超臨界流体を用いたその後の洗浄ステップを必要としない方法が、活性物質の包接の程度を、具体的には、媒体に加えた拡散剤の量に従ってかなり改善することを発見した。
【0011】
実際、実施例で実証される通り、本方法は、アダパレンおよびシクロデキストリンを含む分子複合体を得ることを可能にし、その溶解性は、アダパレンおよびシクロデキストリンとの物理的な混合物と比較して大いに改善される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、1種または複数のホスト分子に含まれる、水性媒体中で溶解性が低い活性物質、具体的には、アダパレンを含む可溶性分子複合体を調製するための方法であって、以下のステップ:
(a)1種または複数の活性物質を1種または複数のホスト分子と接触させるステップと、
(b)1種または複数の拡散剤の存在下で、ステップ(a)で得られた混合物と、静的なモードで、圧力下で高密度な流体を接触させることによる、分子の拡散ステップを実施するステップと、
(c)こうして形成された分子複合体を回収するステップとで限定的に構成されることを特徴とする方法に関する。
【0013】
上記の方法は、有利には40℃から60℃の間の温度で、好ましくは、真空下で複合体を乾燥する追加のステップd)を含むことができる。
【0014】
本発明は、圧力下で高密度な流体の技術を用いてアダパレンとシクロデキストリンとの分子複合体を調製するための方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、熟成中に複合体形成したシクロデキストリンの効果と溶解媒体に添加されたシクロデキストリンの効果とを識別するために、様々な比の複合体を超臨界CO2を用いて調製し(モル比1:2;1:4;1:6;1:8;1:10)、アダパレンの溶解の程度を調べた図である。
【図2】図2は、比率1:2、1:4および1:6バッチについての溶解プロファイルを、80g/lのシクロデキストリンの全濃度を維持するために、過剰にシクロデキストリンを含む溶液でも行った実験結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の目的のために、「圧力下で高密度な流体」という用語は、その臨界値を超える温度または圧力で用いられる任意の流体を意味するものとする。有利には、これは、純粋なCO2または当業者によって従来どおり用いられる有機溶媒との混合物としてのCO2である。
【0017】
本発明の目的のために、「水性媒体中で溶解性が低い活性物質」という表現は、水性媒体中で溶解性が低いまたは不溶性であり、特に、少なくとも20mg/ml未満の溶解性を有する任意の活性物質を意味するものとする。
【0018】
RARおよび/またはRXR受容体を結合するその能力のため、アダパレンは、6-(3-(1-アダマンチル)-4-メトキシフェニル)-2-ナフトエ酸(アダパレン)およびそのメチルエステルとして公知のベンゾナフタレンレチノイドファミリーに由来する化合物として特許出願EP 0 199 636に記載されている。
【0019】
具体的には、アダパレン、またその塩は好ましい。
【0020】
「アダパレン塩」という用語は、薬学的に許容される塩基、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびアンモニア水などの無機塩基、またはリシン、アルギニンまたはN-メチルグルカミンなどの有機塩基で形成される塩を意味するものとする。
【0021】
「アダパレン塩」という用語はまた、ジオクチルアミンおよびステアリルアミンなどの脂肪アミンで形成される塩を意味するものとする。
【0022】
アダパレンの好ましい濃度は、組成物の全重量に対して0.0001から20重量%の間である。
【0023】
好ましくは、本発明による組成物は、組成物の全重量に対してアダパレン0.001から5重量%の間、有利には0.01から1重量%の間、優先的に0.01から0.5重量%の間、好ましくはアダパレン0.1から0.4重量%の間、よりさらに優先的にアダパレン0.3重量%を含む。
【0024】
本発明の目的のために、「ホスト分子(host molecule)」という用語は、活性物質を捕捉することができる任意の物質を意味するものとする。有利には、ホスト分子は、多糖類および単糖類、具体的には、シクロデキストリンおよびそれらの混合物で構成される群から選択される。
【0025】
本発明に用いられるシクロデキストリンは、文献において公知のものである。
【0026】
シクロデキストリン(CD)は、親油性の中心空洞および親水性の外面を有する(α-1,4)α-D-グルコピラノース単位からなる環状オリゴ糖である(Fromming KH、Szejtli J:「Cyclodextrins in pharmacy」、Kluwer Academic Publishers、Dortrecht、1994年)。
【0027】
シクロデキストリンは、外側の親水性部分および内側の疎水性部分を有する「かご」様構造の形成によって分子の溶解性を高めることが知られている。したがって、シクロデキストリンは、空洞の内側で、分子全体、より一般的には、分子の親油性部分を受け入れることにより、多くの薬物との包接複合体を形成することができる。
【0028】
最も豊富な天然シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンおよびγ-シクロデキストリンである。
【0029】
(シャルディンガーのα-デキストリン、シクロマルトヘキサオース、シクロヘキサグルカン、シクロヘキサアミロース、α-CD、ACD、C6Aとしても公知である)α-シクロデキストリンは、6つのグルコピラノース単位を含む。(シャルディンガーのβ-デキストリン、シクロマルトヘプタオース、シクロヘプタグルカン、シクロヘプタアミロース、β-CD、BCD、C7Aとしても公知である)β-シクロデキストリンは、7つのグルコピラノース単位を含み、(シャルディンガーのγ-デキストリン、シクロマルトオクタオース、シクロオクタグルカン、シクロオクタアミロース、γ-CD、GCD、C8Aとしても公知である)γ-シクロデキストリンは、8つのグルコピラノース単位を含む。
【0030】
CDのこれらの3つのタイプのうち、β-シクロデキストリンは、その空洞のサイズ、その利用可能性、その特性、およびその低コストにより最も有用な複合体形成医薬剤であるようである。
【0031】
Dr J.Szejtli(Encyclopedia of Supramolecular Chemistryにおける「Cyclodextrins」、出版社Marcel Dekker、2004年)によれば、シクロデキストリンは、有利であるが、シクロデキストリンの医薬品のある種のタイプへの適用を制限する限定因子をも示す。さらに、すべての製品が、シクロデキストリンとの複合体形成に適当であると限らない。多くの製品は、複合体形成することができない、あるいは複合体形成は、本質的な利点をもたらさない。無機化合物は、シクロデキストリンとの複合体形成に一般に不適当である。
【0032】
シクロデキストリン誘導体は、本発明において用いることもできる。シクロデキストリンでは、それぞれのグルコピラノース単位は、これらの官能基およびこれらの反応性に関して異なる3つの遊離のヒドロキシル基を有する。
【0033】
有利には、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、またメチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンまたはスルホブチルシクロデキストリンなどのシクロデキストリン誘導体の問題である。
【0034】
本発明の好ましい一実施形態において、メチル-β-シクロデキストリンは、特に、CRISMEBとして公知のもの、優先的には、RAMEBとして公知のランダム化メチル-β-シクロデキストリンが選択される。
【0035】
活性薬剤とシクロデキストリンとのモル比は、1:1から1:10のオーダーである。好ましい一実施形態において、モル比は、1:2または1:4または1:6または1:8、さもなければ1:10である。
【0036】
本発明の目的のために、「拡散剤」という用語は、活性物質のホスト分子との相互作用を促進する任意の溶媒を意味するものである。
【0037】
有利には、この拡散剤は、アルコール、ケトン、エーテル、エステルおよび界面活性剤を含むまたは含まない水、およびそれらの混合物で構成される群から選択される。さらにより有利には、それは水である。
【0038】
本発明の目的のために、「静的なモード」という用語は、すべての反応物が同時に一緒にもたらされる反応または方法を意味するものであり、反応は静置されて行われる。例えば、本発明のステップ(b)では、活性物質、水および超臨界CO2は、オートクレーブに置かれ、数時間静置して反応させる。生成物の質量は、反応中変化しない。逆に、動的なモードでは、反応物は、反応または生成が進展するにつれておよびそれらが進展した場合、もたらされる。
【0039】
動的なモードの場合では、液体の循環または撹拌がしばしばある。生成物の質量は、生成中変化する。
【0040】
活性物質およびホスト分子は、圧力下で高密度な流体および拡散剤が公正に選択された割合で注入される容器に、固体もしくは液体の形態で投入される。圧力および温度条件、また処理の期間は、活性物質およびホスト分子の性質に従って、任意の適当な方法によって定義される。
【0041】
有利には、本発明による方法の分子の拡散ステップ(b)は、撹拌しながら行われる。
【0042】
拡散剤は、1から25重量%の間、好ましくは8から20重量%の間の量で、連続的にまたはバッチ式で加えることができる。優先的には、天然シクロデキストリンの場合、その量は、10から15%の間であり;RAMEBもしくはHBCDタイプのシクロデキストリンでは8から15%の間であり;シクロデキストリン誘導体では12から15%の間である。
【0043】
ステップ(b)における分子の拡散に必要な時間は、任意の適当な方法によって決定される。このステップ(b)は、溶解の満足できる速度を得るために、望まれるだけ何回でも繰り返すことができる。有利には、ステップ(b)は、およそ2から16時間の間持続する。
【0044】
ステップ(b)の圧力および温度条件は、分子の拡散を促進するように選択される。有利には、超臨界流体の圧力は、5MPaから40MPaの間であり、温度は、0℃から120℃の間である。本発明の好ましい一実施形態において、ステップb)の温度条件は、60℃から90℃の間であり、優先的に60℃から85℃の間である。
【0045】
有利には、本発明による方法のステップ(b)は、高圧下で密閉された反応器中で行われる。
【0046】
本発明の一代替実施形態では、方法は、シクロデキストリンが過剰に加えられる追加のステップ(b')を含む。好ましい一実施形態では、過剰なシクロデキストリンは、本方法の終了時に、24g/lから98g/lのオーダー、好ましくは60g/lから85g/lの間のシクロデキストリンの全濃度を得るように加えられる。
【0047】
方法は、バッチ式または参照として本出願に含まれる特許出願WO03/043604に記載されている通り実施することができる。有利には、本発明による方法は、バッチ式で行われる。
【0048】
本発明はまた、1種または複数のホスト分子中に含まれる、アダパレンタイプの、水性媒体中で溶解性が低い少なくとも1種の活性物質を含む可溶性分子複合体であって、本発明による方法によって得ることができることを特徴とする可溶性分子複合体に関する。
【0049】
拡散剤の存在下で圧力下で高密度な媒体中で分子の拡散のステップを実施することにより、活性物質の粒子のホスト分子との強力な相互作用が可能になり、それによって、本発明による方法によっておよそ100を乗じる、水性媒体中で溶解を促進する。
【0050】
本発明はまた、治療するための、方法によって得られた複合体の使用に関する。具体的には、細胞分化および増殖の分野でアダパレンの活性が際立つことを考慮すると、本発明の複合体は、以下の治療分野において特に適している。すなわち、
1)分化および増殖に関する角質化障害に伴う皮膚科学的な状態を治療する場合、具体的には、尋常性ざ瘡、面皰性ざ瘡、多型ざ瘡、酒さ性ざ瘡、結節性嚢胞性ざ瘡、集簇性ざ瘡、老人性ざ瘡、太陽によるざ瘡、薬物性ざ瘡または職業性ざ瘡などの二次性ざ瘡、化膿性汗腺炎を治療する場合、
2)角質化障害の他のタイプ、具体的には魚鱗癬、魚鱗癬様状態、ダリエー病、掌蹠角化症、白板症および白板症様状態、ならびに皮膚または粘膜(口腔)苔癬を治療する場合、
3)炎症性および/または免疫アレルギー性成分による角質化障害に伴う他の皮膚科学的な状態、具体的には皮膚、粘膜または爪(ungula)に関わらず乾癬のすべての形態、さらには乾癬性関節炎、あるいは湿疹などの皮膚アトピーまたは呼吸器アトピーあるいは歯肉肥大を治療する場合;化合物は、毛包炎などの角質化障害を示さないある種の炎症性状態に用いることもできる。
4)良性もしくは悪性に関わらず、ウイルス起源であるか否かに関わらず、尋常性疣贅、扁平疣贅、伝染性軟属腫、および疣贅状表皮発育異常症、口腔もしくは鮮紅乳頭腫および紫外線照射によって誘発され得る増殖などの真皮のもしくは表皮の増殖を治療する場合、具体的には日光角化症の場合、
5)光誘導性または経時的に関わらず、皮膚老化を修復するまたはそれと戦う場合、または色素沈着、または経時的なもしくは光線性の老化に伴う任意の病的な状態を軽減する場合、
6)予防的にまたは治癒的に瘢痕形成障害、皮膚潰瘍を治療する場合、妊娠線を予防するまたは修復する場合、あるいは瘢痕形成を促進する場合、
7)ざ瘡の高脂漏または単純性脂漏などの皮脂の機能障害と戦う場合、
8)足白癬および癜風などの、真菌起源の任意の皮膚状態の治療において、
9)免疫学的成分による皮膚科学的な状態の治療において、
10)UV照射への曝露によって引き起こされる皮膚障害の治療において、および
11)毛包を取り囲む組織の炎症もしくは感染に伴う、特に、微生物のコロニー形成または感染、具体的には膿痂疹、脂漏性皮膚炎、毛包炎または鬚毛瘡によって引き起こされる、または任意の他の細菌もしくは真菌剤に関与する皮膚科学的な状態の治療においてである。
【0051】
好ましくは、本発明による複合体は、尋常性ざ瘡の予防的または治癒的な治療に特に適している。
【0052】
以下の方法の実施例は、限定されない適用として提供される。
【実施例1】
【0053】
アダパレン(活性物質)および様々なタイプのシクロデキストリン(ホスト分子)を含む複合体を得ること
この実施例の目的は、活性成分の水溶解性を高めるために超臨界CO2を用いてアダパレンのシクロデキストリンとの複合体形成を検証することである。
【0054】
複合体形成の収率を、遊離のままである活性成分に対する熱ピークの減少(または消失)を測定することによって評価する。
【0055】
使用される材料
【0056】
【表1】

【0057】
操作条件
操作条件を、デフォルトによって固定する。
-シクロデキストリン数モル当量でアダパレン1モル。
-天然シクロデキストリンが20%の含有量、グラフトされたシクロデキストリンが10%の含有量になるように水を添加。
-60℃および150バールで2時間熟成。
-真空下で50℃で終夜乾燥。
【0058】
分析方法
活性成分の含有量および溶解速度論を、以下に記載した方法に従って実施した。
a)アッセイ方法
HPLCクロマトグラフ条件
・カラム:Symmetry C18 250×4.6mm 5μm
・移動相:430倍容のアセトニトリル
360倍容のテトラヒドロフラン
水210
0.2倍容のトリフルオロ酢酸
・HPLC装置:WATERS 2690/2487
・流速:1ml/分
・波長:270nm
・検出感度:2 AUFS
・インジェクション容積:10μl
・オーブン温度:25℃
・分析時間:15分
【0059】
溶液の調製:
試験しようとする溶液:
正確に検量したアダパレン200mg当量を、25mlのフラスコに投入する。溶解をHPLC用ジメチルホルムアミド(DMF)で行い、溶液をHPLC用ジメチルホルムアミド(DMF)で一定容積にメスアップする。溶液1.0mlを20mlのフラスコに取り除く。DMF5mlを加え、混合物を、移動相で一定容積にメスアップする。
【0060】
対照溶液:
SM:対照のアダパレン100mgを、100mlのフラスコに投入する。溶解をテトラヒドロフラン(THF)で行い、溶液をテトラヒドロフラン(THF)で一定容積にメスアップする。
【0061】
範囲C1:移動相中でSMを1/1000に希釈(0.001mg/ml)。
C2:移動相中でSMを1/100に希釈(0.010mg/ml)。
C3:移動相中でSMを1/50に希釈(0.020mg/ml)。
C4:移動相中でSMを1/20に希釈(0.050mg/ml)。
C5:移動相中でSMを1/10に希釈(0.100mg/ml)。
【0062】
試験の実施:
それぞれの対照溶液10μlをインジェクトする。
【0063】
濃度に対するアダパレンピークの表面積の線形回帰を行う。相関係数は、0.995を超えるべきである。
【0064】
試験当たり、2種類の調製を実施する。
【0065】
試験しようとする溶液20μlをインジェクトする。試験しようとするそれぞれの溶液におけるアダパレンピークの領域を測定する。mg/mlとしての濃度Xは、対照の回帰線に従って推定される。百分率(w/w)として表現されるアダパレン含有量を、次式によって提供する。
百分率(w/w)としての[アダパレン]=X×500×100/Ts
Ts:試験しようとする物質のmgとしての試験サンプル。
【0066】
b)3g/lおよび25℃での溶解の速度論
クロマトグラフの条件および対照溶液の濃度は、アッセイのものと同一である。
装置:
・撹拌:15ポジションベンチ
・恒温槽:Prolabo PR 531プローブで検証済みの25℃+/-2℃
・秤量:Sartorius A200秤
・希釈:Eppendorf Research 1000、Eppendorf Research 5000、Gilson M1000マイクロピペット
・超純水場:ELGA
【0067】
操作条件:
アダパレン150mgと同等の試験サンプルを、100mlのErlenmeyerフラスコに投入する。水50mlを加える。混合物を、25℃+/-2℃で水浴で400rpmでまたはポジション4で磁気的に撹拌する。2mlサンプルを、磁気的に撹拌しながら、15、30、60、120および1140分で抜き取る。これらの抜き取られたサンプルを、0.45μmのGelman GHP Acrodiscポリプロピレンフィルターでろ過する。溶液は、透明でなくてはならない。抜き出したサンプルを移動相中で「a」倍によって希釈することによって、対照1および対照5の表面積間に含まれる表面積のアダパレンピークを有することができる。
【0068】
試験の実施
それぞれの対照溶液10μlをインジェクトする。濃度に対するアダパレンピークの表面積の線形回帰を行う。
【0069】
相関係数は、0.995を超えるべきである。
【0070】
試験しようとする溶液10μlをインジェクトする。
【0071】
試験しようとするそれぞれの溶液中のアダパレンピークの領域を測定する。
【0072】
μg/mlとしての濃度Xは、対照の回帰線に従ってそこから推定される。
【0073】
1ml当たりで可溶化したアダパレンのμgとしての濃度を次式で計算する。
μg/mlとしての[アダパレン]=X×a
【0074】
時間の関数としてμg/mlでの溶解した量の変動をグラフで表す。
【0075】
溶解の終了時、外観に直ちに留意し、溶液のpHを直ちに測定する。
【0076】
結果および試験の経過
水性媒体中のアダパレンの見かけの溶解性を検証するため、3つの試験を、様々なシクロデキストリンでおよび拡散剤としてのエタノールを用いて行った。
-α-シクロデキストリン(6グルコース単位)
-メチル-β-シクロデキストリンCRISMEB
-メチル-β-シクロデキストリンRAMEB/エタノール
【0077】
これらのサンプルを分析したが、結果を以下のTable II(表2)に整理する。表中では、以下を示す。
-様々な「シクロデキストリン/モル比」系、
-参照サンプル、
-熟成後の活性成分の重量による含有量、
-15、30、60および120分での、熟成後(太字)のアダパレンのおよび対応する物理的混合物(イタリック体)についての水性溶解の結果。
-120分後の、熟成後(太字)の粉末についてのおよび対応する物理的混合物(イタリック体)についての溶解媒体のpH。
【0078】
【表2】

【0079】
本実施例は、シクロデキストリンの少なくとも2つのタイプとのアダパレンの複合体形成を示し、メチル-β-シクロデキストリン(RAMEBタイプ)とのアダパレンの複合体形成の場合において大いに改善された溶解性を示す。
【実施例2】
【0080】
アダパレンおよびメチル-β-シクロデキストリンを含む複合体の安定化
本実施例の目的は、複合体の溶解プロファイルを試験しながら、方法のモル比および温度パラメータを変えることによって実施例1において得られた複合体の安定性を示すことである。
【0081】
シクロデキストリンの濃度を高めることの利点を確認し、熟成中に複合体形成したシクロデキストリンの効果と溶解媒体に添加されたシクロデキストリンの効果とを識別するために、様々な比の複合体を超臨界CO2を用いて調製した(モル比1:2;1:4;1:6;1:8;1:10)。
【0082】
さらに、この試験系について、熟成温度は、60℃の代わりに85℃であった。続いて、溶解速度論を15分、7日、30日および48日目に行った(table III(表3))。
【0083】
これらの値を、図1のグラフの形態で報告する。熟成温度およびシクロデキストリン比を高めると、プロファイルが一般に減少していても、より高い見かけの溶解性を得ることが可能であることが留意される。
【0084】
【表3】

【0085】
熟成中にモル比を増加すると、溶解媒体中に続いて存在するM-βシクロデキストリンの濃度を高めることになる。これらの2つの効果をはっきりと切り離すために、比率1:2、1:4および1:6バッチについての溶解プロファイルを、80g/lのシクロデキストリンの全濃度を維持するために、過剰にシクロデキストリンを含む溶液でも行った(図2)。
【0086】
図2のグラフにおいて、破線の曲線は、組成が厳密に同一である溶液に対応する(C-アダパレン=3g/l、C-シクロデキストリン=80g/l)。これらの曲線の数値を、以下のtable IV(表4)に示す。
【0087】
【表4】

【0088】
熟成中に複合体形成したシクロデキストリンは、アダパレンの見かけの溶解性を高めるのに寄与したのに対して、単に媒体に加えたシクロデキストリンは、複合体形成した形態への平衡の状態を維持することによりアダパレン溶液の安定性を改善すると結論づけられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種または複数のホスト分子に含まれる、水性媒体中で溶解性が低い少なくとも1種の活性物質を含む可溶性分子複合体を調製するための方法であって、以下のステップ:
(a)1種または複数の活性物質を、1種または複数のホスト分子と接触させるステップと、
(b)1種または複数の拡散剤の存在下で、ステップ(a)で得られた混合物と、静的なモードで、圧力下で高密度な流体を接触させることによる、分子の拡散ステップを実施するステップと、
(c)こうして形成された分子複合体を回収するステップ
とで構成されていることを特徴とし、活性物質が、アダパレンまたはその塩の1つであることを特徴とする方法。
【請求項2】
有利には、40℃から60℃の間の温度で、好ましくは真空下で複合体を乾燥する追加のステップd)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
圧力下で高密度な流体がCO2であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ホスト分子が、多糖類および単糖類からなる群、好ましくは、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
シクロデキストリンが、γ-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンおよび誘導体であるメチル-β-シクロデキストリンおよびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンから選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
拡散剤が、アルコール、ケトン、エーテル、エステルおよび界面活性剤を含むまたは含まない水、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
拡散剤が水であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
分子の拡散ステップ(b)が撹拌しながら行われることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
シクロデキストリンが過剰に加えられるステップ(b')を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
拡散剤が、1から25重量%の間、好ましくは8重量%から15重量%の間の量で、連続的にまたはバッチ式で加えられることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
アダパレン/シクロデキストリンモル比が、1/1から1/10の間、有利には1/1から1/6の間、好ましくは1/2から1/4の間であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
超臨界流体の圧力が、5MPaから40MPaの間であり、温度が、0°から120℃の間、優先的に60℃から90℃の間であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
アダパレンの水性可溶化のための方法であって、以下のステップ:
a)アダパレンおよびシクロデキストリンの包接複合体を提供するステップ、
b)水溶液中でステップa)の複合体を可溶化するステップ、
c)b)で得られた溶液に過剰のシクロデキストリンを加えるステップ
を含む方法。
【請求項14】
ステップc)が、50から120g/lの間;好ましくは、70から90g/lの間の溶液中での全シクロデキストリン濃度を得ることを可能にするシクロデキストリンの添加からなることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1種または複数のホスト分子中に含まれる、水性媒体中で溶解性が低い活性物質を含む可溶性分子複合体であって、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって得ることができることを特徴とする、可溶性分子複合体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−523400(P2012−523400A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504059(P2012−504059)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050682
【国際公開番号】WO2010/116099
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】