説明

アダマンタチル(メタ)アクリレート類の製造方法

【課題】アダマンタン骨格を有し、光学特性などに優れた樹脂に使用するモノマーなどとして有用なアダマンタチル(メタ)アクリレート類について、カラム精製などを利用しない、工業生産に適した効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】化合物と(メタ)アクリル酸ハライドまたは無水(メタ)アクリル酸との反応から、三種の化合物の混合物を得て、反応溶液から水/極性有機溶媒との混合溶媒によって二種の化合物を抽出し、然る後に、その二種の化合物を含む水/極性有機溶媒溶液から、非極性有機溶媒によって目的化合物を逆抽出することによってアダマンタチル(メタ)アクリレート類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アダマンタン骨格を有し、光学特性や耐熱性、酸解離性などに優れた、架橋型樹脂、光ファイバーや光導波路、光ディスク基板、フォトレジストなどの光学材料およびその原料、医薬・農薬中間体、その他各種工業製品などとして有用な新規なアダマンタチル(メタ)アクリレート類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アダマンタンは、剛直な構造を有し、また対称性が高く、その誘導体は特異な機能を示すことから、高機能樹脂材料や医薬中間体、光学材料(特許文献1、2参照)、フォトレジスト(特許文献3参照)などに有用であることが知られている。
【特許文献1】特公平1−53633号公報
【特許文献2】特開平6−305044号公報
【特許文献3】特開平4−39665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
その中で、特開2006−016379に記載の化合物は、通常、原料のアダマンタンジアルコール類を(メタ)アクリルエステル化して得られるが、反応生成物が、原料、モノエステル体、ジエステル体の混合物となるため、その分離精製が容易ではない。分離精製には、シリカゲルカラム精製などの吸着を利用する方法や、蒸留、晶析などの公知の方法が利用できるが、工業的に利用するのは困難であった。
【0004】
まず、カラム精製では、容易に分離精製できるが、工業的に製造する場合には少量しか生産できないことと、製造コストが増大するなどのデメリットがある。また、蒸留精製については、化合物の沸点が高いため、工業的な蒸留方法では気化させること自体が困難である。そのため、晶析が工業的に可能な唯一の精製方法であるが、目的の化合物の純度が低いと結晶化がきわめて困難な性質があるため、目的の化合物を晶析で取出す前に、十分に副生成物と分離しておくことが必要である。そのため、工業生産に適した製造方法を確立することが必要であった。
【0005】
本発明の目的は、アダマンタン骨格を有し、光学特性などに優れた樹脂に使用するモノマーなどとして有用なアダマンタチル(メタ)アクリレート類について、カラム精製などを利用しない、工業生産に適した効率的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、式(1)で表される化合物と(メタ)アクリル酸ハライドまたは無水(メタ)アクリル酸との反応から、式(2)〜(4)で表される化合物の混合物を得て、反応溶液から水と極性有機溶媒との混合溶媒によって式(2)〜(3)で表される化合物を抽出し、然る後に、式(2)〜(3)で表される化合物を含む水/極性有機溶媒溶液から、非極性有機溶媒によって式(3)で表される化合物を逆抽出することによって、式(2)〜(4)で表される化合物を分離することが可能であることを見出した。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【0007】
本発明における式(3)〜式(4)で表される化合物およびそれを原料とする機能性樹脂組成物は、疎水性の脂環式骨格を有し、架橋型樹脂、光ファイバーや光導波路、光ディスク基板、フォトレジストなどの光学材料およびその原料、医薬・農薬中間体、その他各種工業製品などに使用されるが、特に、酸解離性のエステル基を有し、その酸解離性基の解離前後での極性変化が大きく溶解コントラストが大きいため、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーあるいはFエキシマレーザー、X線、EUV、電子線リソグラフィ用フォトレジスト用モノマーとして有用である。その中でも、従来のArFレジストポリマーに組み込むと、微細化した際のコントラストが良好となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アダマンタン骨格を有し、光学特性や耐熱性、酸解離性などに優れた、架橋型樹脂、光ファイバーや光導波路、光ディスク基板、フォトレジストなどの光学材料およびその原料、医薬・農薬中間体、その他各種工業製品などとして有用なアダマンタチル(メタ)アクリレート類の効率的な製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
式(1)で表されるアダマンタン類と(メタ)アクリル酸ハライドまたは無水(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により、式(2)〜(4)で表される化合物の混合物が得られる。
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【0011】
式(1)で表されるアダマンタン類は、通常、2つの水酸基を有した化合物を使用することができる(YおよびYはともに水素原子)。また、水酸基を、リチウムやナトリウムなどのアルカリ金属など、ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、臭化エチルマグネシウムなどのグリニヤール試薬などにより、アルコラート状態にした後にエステル化反応を行っても良い(YおよびYは同一または異なって、水素原子、Li、Na、MgBr、MgCl、MgIなど)。また、1,3−アダマンタンジカルボン酸類と有機金属化合物との反応の後にこのような状態になるので、そのままエステル化反応を行うこともできる。
【0012】
(メタ)アクリル酸化合物として、(メタ)アクリル酸ハライドおよび無水(メタ)アクリル酸化合物の使用が好ましい。(メタ)アクリル酸ハライドとして、具体例としては、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリドが挙げられる。無水(メタ)アクリル酸としては、無水メタクリル酸、無水アクリル酸、メタクリル酸とアクリル酸の無水物が挙げられる。使用量は、原料に対して0.5〜10当量(必要なアクリルロイルオキシ基分を1当量とする)、好ましくは0.7〜3当量である。それより少ないと収率が低下し、それより多いと経済的ではない。
【0013】
式(1)で表されるアダマンタン類と(メタ)アクリル酸ハライドまたは無水(メタ)アクリル酸とを速やかに高収率で反応させるには、塩基化合物を添加することが好ましい。塩基化合物を添加することにより反応が速やかに進行し、目的物質を高収率で得ることができる。添加する塩基化合物としては、アミン化合物が望ましい。例として、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−iso−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−iso−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジフェニルアミン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,5−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−5、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどの脂肪族アミン類、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、トルイジン、アニシジン、クロロアニリン、ブロモアニリン、ニトロアニリン、アミノ安息香酸などのアニリン類、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなどのピリジン類、ピロール類、キノリン類、ピペリジン類などの含窒素複素環式化合物類などが挙げられる。さらにナトリウムメトキシド、リチウムメトキシドなどの金属アルコキシド類、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化トリメチル−n−プロピルアンモニウムなどの水酸化第四アンモニウム類、硫酸エチルアンモニウム、硝酸トリメチルアンモニウム、塩化アニリニウムなどのアミンの硫酸塩、硝酸塩、塩化物など、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩基、臭化エチルマグネシウムなどのグリニヤール試薬なども使用することができる。
【0014】
使用量は、通常原料に対して10当量以下が好ましい。それ以上多くても添加効果は向上しない。ただし、液体の塩基化合物は、それ自体が溶媒の役割を果たしても良いので、使用量については限定しない。塩基化合物の添加方法としては、特に制限はない。(メタ)アクリル酸化合物を添加する前に予め仕込んでおいてもよいし、また(メタ)アクリル酸化合物を仕込んだ後に加えてもよい。また、(メタ)アクリル酸化合物と同時に滴下しながら加えることも出来る。その際、反応温度が異常昇温しないように制御すると副反応の進行が抑えられるので望ましい。
【0015】
溶媒として、原料および目的物質の溶解性が高いものが望ましい。そのようなものとして、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、プソイドクメンなどの芳香族化合物類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の炭素数6〜10の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の炭素数6〜10の脂環族炭化水素、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物、ギ酸エチル、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピルなどのエステル化合物、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類などが挙げられる。また、前記の塩基化合物を溶媒として使用しても良い。これらの溶媒は単独でも2種以上の溶媒を混合した系でも使用できる。溶媒は、原料1重量部に対して、0.1〜20重量部好ましくは1〜10重量部の割合で使用する。
【0016】
反応温度としては通常、−70℃〜200℃、好ましくは−50℃〜80℃が良い。−70℃より低いと反応速度が低下し、200℃より高いと反応の制御が困難になったり副反応が進行して収率が低下する。本発明のエステル化での反応時間は通常、0.5〜1000時間、好ましくは1〜100時間である。反応時間は反応温度、エステル化の方法などに依存し、所望の収率などに応じて決定されるので、上記の範囲に限定されるものではない。
【0017】
エステル化工程の際、重合禁止剤を添加しても良い。重合禁止剤としては一般的なものならば特に規定はなく、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、N−ニトロソ−N−(1−ナフチル)ヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソ−N−メチルアニリン、ニトロソナフトール、p−ニトロソフェノール、N,N’−ジメチル−p−ニトロソアニリンなどのニトロソ化合物、フェノチアジン、メチレンブルー、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどの含硫黄化合物、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、4−ヒドロキシジフェニルアミン、アミノフェノールなどのアミン類、ヒドロキシキノリン、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p−ベンゾキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテルなどのキノン類、メトキシフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、カテコール、3−s−ブチルカテコール、2,2−メチレンビス−(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)などのフェノール類、N−ヒドロキシフタルイミドなどのイミド類、シクロヘキサンオキシム、p−キノンジオキシムなどのオキシム類、ジアルキルチオジプロピネートなどが挙げられる。添加量としては、(メタ)アクリル酸化合物に対して、0.001重量%〜10重量%、好ましくは0.01重量%〜1重量%である。
【0018】
反応終了後においては、反応液を水洗処理することにより、過剰の(メタ)アクリル酸化合物類、酸や塩基などの添加物が除去される。このとき、洗浄水中に塩化ナトリウムや炭酸水素ナトリウム等、適当な無機塩が含まれていてもよい。また、未反応の(メタ)アクリル酸化合物類をアルカリ洗浄により除去する。アルカリ洗浄には、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム溶液、アンモニア水などが挙げられるが、用いるアルカリ成分に特に制限はない。また、塩基や金属不純物を除去するために、酸洗浄しても良い。酸洗浄には、塩酸水溶液、硫酸水溶液、リン酸水溶液などの無機酸およびシュウ酸水溶液などの有機酸が挙げられる。また、洗浄に際し、式(2)〜(4)で表される化合物の物性に応じて、反応液に有機溶媒を添加してもよい。添加する有機溶媒は、反応と同一のものを使用することもできるし、異なったものを使用することもできる。
【0019】
式(2)の化合物の物性によっては、反応終了後や洗浄後に一部析出することがある。反応終了後に析出した場合は、ろ過して分離しても良い。また、式(2)の化合物が溶解する溶媒を添加して洗浄処理を続けても良い。洗浄後に析出した場合には、ろ過して分離しても良いし、後述する抽出操作に使用する溶媒に溶解させても良い。
【0020】
洗浄後の有機層には、式(2)〜(4)の混合物が含まれている。まずは、式(2)〜(3)の化合物と、式(4)の化合物を溶剤抽出によって分離する。抽出する溶媒としては、水/極性有機溶媒(水と極性有機溶媒との混合溶媒)を使用することが望ましい。式(2)〜(4)が含まれる有機層を希釈している溶媒によっては、水/極性有機溶媒と分離しないことがある。その場合には、予め希釈している溶媒を、蒸留などの公知の方法で除去することが望ましい。極性有機溶媒としては、炭素数1〜3の脂肪族アルコールまたはアセトニトリルが望ましい。また、希釈している溶媒としては炭素数6〜10の脂肪族炭化水素または環状脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、プソイドクメンなどの芳香族化合物が望ましい。極性有機溶媒の炭素数がそれ以上大きいと、溶液が分液しない。
【0021】
使用する水/極性有機溶媒の混合比率は、水を1に対して極性有機溶媒を2〜10重量倍、好ましくは3〜7重量倍に調製して使用する。極性有機溶媒の比率が、それより小さいと式(2)〜(3)の化合物の抽出効率が悪くなる。また、極性有機溶媒の比率が、それより大きいと、式(4)の化合物まで抽出されてきたり、溶液が分液しなくなる。水/極性有機溶媒の使用量は、式(2)〜(4)の化合物を含む溶液の量を1に対して、0.2〜10重量倍、好ましくは0.5〜4重量倍、より好ましくは0.8〜2重量倍を添加する。水/極性有機溶媒の使用量がそれより少ないと、抽出効率が悪くなるし、また水/極性有機溶媒の使用量がそれより多いと、式(4)の化合物まで抽出してくるようになる。抽出回数は、抽出効率にも依存するので特に制限はないが、通常は1〜6回実施することが望ましい。
【0022】
水/極性有機溶媒で抽出操作を行った後の有機層には、式(4)の化合物が高純度で含まれている。この有機層を活性炭処理、ろ過、濃縮、晶析などの分離操作や、これらを組み合わせた分離操作を行うことによって、式(4)の化合物が容易に分離精製できる。
【0023】
次に、式(2)〜(3)の混合物が含まれている水/極性有機溶媒から、溶剤抽出によって式(2)の化合物と式(3)の化合物を分離する。水/極性有機溶媒に非極性有機溶媒を加えることによって、水/極性有機溶媒に式(2)の化合物を、非極性有機溶媒に式(3)の化合物を逆抽出する。非極性有機溶媒としては、炭素数6〜10の脂肪族炭化水素または環状脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、プソイドクメンなどの芳香族化合物が望ましい。
【0024】
本抽出操作をするにあたり、水を添加したり、極性有機溶媒を留去したりすることによって水/極性有機溶媒の極性を変えてもよい。この操作を加えることにより、式(2)と式(3)の化合物の分離が良くなる。
【0025】
逆抽出する非極性有機溶媒の使用量は、式(2)〜(3)の混合物が含まれている水/極性有機溶媒溶液に対して、0.2〜10重量倍、好ましくは0.5〜4重量倍、より好ましくは0.8〜2重量倍を添加する。逆抽出する非極性有機溶媒の使用量がそれより少ないと、逆抽出効率が悪くなるし、また逆抽出する非極性有機溶媒の使用量がそれより多いと、釜効率が悪くなる。抽出回数は、抽出効率にも依存するので特に制限はないが、通常は1〜4回実施することが望ましい。
【0026】
逆抽出した非極性有機溶媒には、式(3)の化合物が高純度で含まれている。この有機層を活性炭処理、ろ過、濃縮、晶析などの分離操作や、これらを組み合わせた分離操作を行うことによって、式(3)の化合物が容易に分離精製できる。
【0027】
また、逆抽出後の水/極性有機溶媒には、式(2)の化合物が高純度で含まれている。この水/極性有機溶媒層を活性炭処理、ろ過、濃縮、晶析などの分離操作や、これらを組み合わせた分離操作を行うことによって、式(2)の化合物が容易に分離精製できる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の内容をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、下記実施例に何ら制約されるものではない。
【0029】
(実施例1)
攪拌機、温度計、ジムロート冷却器、滴下ロート2つを備えた5ッ口フラスコに1,3−アダマンタンジイソプロパノール126g、1,2−ジクロロエタン1000mLを仕込み、メタクリル酸クロリド105g、トリエチルアミン151gを同時に1時間かけて滴下した。その後、59〜65℃にて4時間攪拌し、反応溶液を室温まで冷却後、水100mLを加えて反応を停止した。未反応の原料が一部析出していたので、5Cろ紙で吸引ろ過して原料25gを分離した。有機層と水層とを分離し、有機層を5%水酸化ナトリウム水溶液800g、イオン交換水250mL、10%硫酸水溶液750g、イオン交換水250mL,イオン交換水250mLで洗浄し、濃縮して粗体138gを得た。粗体にヘキサン320mLを加えたところ、未反応の原料が析出したので、5Cろ紙で吸引濾過して原料15gを得た。
【0030】
ヘキサン溶液に、水64mL、メタノール320mLを加えて十分に攪拌し、分液した。同様の操作を引き続き3回実施した。水/メタノール溶液1374gを565gまで濃縮した。濃縮後の水/メタノール溶液にヘプタン640mLを加えて十分に攪拌し、分液した。さらに濃縮後の水/メタノール溶液にヘプタン640mLを加えて十分に攪拌し、分液した。ヘプタン溶液を合わせて、活性炭を12g加えて1時間攪拌し、5Cろ紙およびメンブランフィルター(0.1μm)でろ過した。ヘプタン層を濃縮した後、0℃で1時間攪拌したところ、2−メタクリルロイルオキシ−2−(3−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)−1−アダマンチル)プロパン43g(原料のモノメタクリレート体)を得た。また、抽出後のヘキサン溶液を濃縮して、メタノールを添加して0℃に冷却したところ、2−メタクリルロイルオキシ−2−(3−(2−メタクリルロイルオキシ−2−プロピル)−1−アダマンチル)プロパン4g(原料のジメタクリレート体)を得た。
【0031】
(実施例2)
攪拌機、温度計、ジムロート冷却器、滴下ロートを備えた4ッ口フラスコに1,3−アダマンタンジイソプロパノール25g、テトラヒドロフラン50mL、ピリジン70.5g、フェノチアジン0.0986gを仕込み、50℃に加熱した。メタクリル酸クロリド10.3gを15分かけて滴下した。その後、温度を50℃に保ったまま4時間攪拌した。反応溶液を氷冷して、イオン交換水50mLを滴下して、反応溶液を10%硫酸水溶液500gに注いだ。さらに、ヘプタン100mL、塩化ナトリウム30g、テトラヒドロフラン250mLを加えて十分に攪拌した後、分液した。有機層を、イオン交換水250mL、5%水酸化ナトリウム水溶液100g、イオン交換水250mLで順次洗浄した。有機層235gを68gまで減圧濃縮し、さらにヘプタン100mLを加えて117gまで再濃縮した。有機層を2時間氷冷した後、析出した原料を5Cろ紙で吸引ろ過し、ヘプタンで100mLリンスした。回収した原料は35%であった。
【0032】
ろ液をHPLC分析したところ、原料/モノエステル体/ジエステル体=2/38/4(仕込み原料基準)含まれていた。ろ液をメタノール50mL/イオン交換水10mLで4回洗浄した。メタノール/イオン交換水溶液を211gまで濃縮して、ヘプタン150mLで2回抽出した。このこき、ヘプタン層をHPLC分析したところ、原料/モノエステル体/ジエステル体=0.4/27/0.3(仕込み原料基準)含まれていた。ヘプタン層を23gまで減圧濃縮して、モノエステルの種結晶を添加したところ結晶が析出した。さらに2時間氷冷した後、5Cろ紙で吸引ろ過したところ、2−メタクリルロイルオキシ−2−(3−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)−1−アダマンチル)プロパン7.4g(原料のモノメタクリレート体)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物と(メタ)アクリル酸ハライドまたは無水(メタ)アクリル酸との反応から、式(2)〜(4)で表される化合物の混合物を得て、反応溶液から水と極性有機溶媒との混合溶媒によって式(2)〜(3)で表される化合物を抽出し、然る後に、式(2)〜(3)で表される化合物を含む水/極性有機溶媒溶液から、非極性有機溶媒によって式(3)で表される化合物を逆抽出することによって、式(2)〜(4)で表される化合物を分離することを特徴とする、式(3)または式(4)で表されるアダマンチル(メタ)アクリレート類の製造方法。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【請求項2】
極性有機溶媒が、炭素数1〜3の脂肪族アルコール化合物またはアセトニトリルである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非極性有機溶媒が、ベンゼンまたはアルキルベンゼン、炭素数6〜10の脂肪族炭化水素化合物または環状脂肪族炭化水素である請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2010−150222(P2010−150222A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332866(P2008−332866)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】