説明

アダマンタン誘導体、その製造方法及び半導体用レジスト材料

【課題】重合性がよく、酸による分解能が高いアダマンタン誘導体を提供する。
【解決手段】下記式(I)で表されるアダマンタン誘導体。


(式中、Zは同一の炭素に連結基を有する、置換もしくは無置換の環を有する基であり、Zは置換もしくは無置換の環状炭化水素基であり、Z及びZの少なくとも一方はアダマンタン骨格を有する基である。
Xは重合性基、ハロゲン原子又は水酸基であり、R及びRはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。RとRは連結して環を形成してもよい。
Aはヘテロ原子、置換もしくは無置換の炭化水素基、又はカルボニル基である。m及びnは、それぞれ0以上の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアダマンタン誘導体、その製造方法及びそれを含有する半導体用レジスト材料等に関する。さらに詳しくは、高い耐熱性を有し、特にフォトレジストリソグラフィー分野における感光性樹脂等の機能性樹脂モノマー、ポリマーとして有用な脂環式構造を有する新規重合性モノマー、及びそれらの中間体、及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ArFエキシマレーザーによるフォトリソグラフィー技術を応用した半導体製造において、感光性レジストには、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートのような脂環式骨格を持った重合性化合物を共重合したポリマーが用いられている(特許文献1参照)。
半導体製造技術の進歩に伴い、回路の微細化が著しく進んだ結果、LER,LWRと呼ばれるパターン表面の粗さ(ラフネス)やうねりといった平滑性が問題となってきた。さらには、近年の液浸露光による方法では、液浸媒体に起因するレジストパターンの欠陥等、現像不良も散見されており、これらの早期解決が望まれている。
【0003】
これまでに機能性モノマーとして多くの基材が開発されている。例えば、酸によりその一部が脱離してアルカリ可溶性機能を発現する酸脱離性のモノマーとして、2−イソプロピル−2−アダマンチルメタクリレート等が挙げられる(特許文献2参照。)。この基材は、酸による分解能が高く、感光性レジストに使用されている。しかしながら、重合性が低いという問題があった。そのため、他の重合性基を有する化合物との共重合体を合成する際、所望の共重合比の重合体を得るためには、2−イソプロピル−2−アダマンチルメタクリレートの仕込み量を多くする必要があるため、製造工程や製造費用の面で問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−39665号公報
【特許文献2】特開2010−032994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、重合性がよく、酸による分解能が高いアダマンタン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下のアダマンタン誘導体が提供される。
1.下記式(I)で表されるアダマンタン誘導体。
【化1】

[(式中、Zは同一の炭素に連結基を有する、置換もしくは無置換の環を有する基であり、Zは置換もしくは無置換の環状炭化水素基であり、Z及びZの少なくとも一方はアダマンタン骨格を有する基である。
Xは下記式(1)〜(3)で表される重合性基、ハロゲン原子又は水酸基であり、R及びRはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。RとRは連結して環を形成してもよい。
Aはヘテロ原子、置換もしくは無置換の炭化水素基、又はカルボニル基である。
m及びnは、それぞれ0以上の整数を表す。)
【化2】

(式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であり、Rは炭素数1〜5の炭化水素基である。*は式(I)における結合手を示す。)]
2.前記Zが、下記式(Z1−1)〜(Z1−10)で表される基のいずれかであり、前記Zが、下記式(Z2−1)〜(Z2−5)で表される基のいずれかである、1記載のアダマンタン誘導体。
【化3】

(式中、Rは水酸基、フッ素原子、置換もしくは無置換の炭化水素基であり、pは0〜7の整数である。*は式(I)における結合手を示す。)
3.前記Zが式(Z2−1)で表される基である2に記載のアダマンタン誘導体。
4.前記Zが式(Z1−1)、pが2である(Z1−2)又は式(Z1−3)で表される基である2に記載のアダマンタン誘導体。
5.前記Zが式(Z1−1)又は式(Z1−3)で表される基であり、前記Zが式(Z2−1)で表される基である、2に記載のアダマンタン誘導体。
6.前記nが1であり、前記Aがカルボニル基である1〜5のいずれかに記載のアダマンタン誘導体。
7.前記Xが前記式(1)〜(3)で表される重合性基のいずれかである1〜6のいずれかに記載のアダマンタン誘導体。
8.前記Xが水酸基である1〜6のいずれかに記載のアダマンタン誘導体。
9.前記mが1以上であり、前記Xがハロゲン原子である1〜6のいずれかに記載のアダマンタン誘導体。
10.環を有するエポキシ類と、カルボン酸又は水酸基を有する環状炭化水素を反応させる工程を含む、8に記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
11.上記8に記載のアダマンタン誘導体と、グリコール酸ハライド類とを反応させる工程を含む、9に記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
12.上記8又は9に記載のアダマンタン誘導体と、重合性基を有する化合物を反応させる工程を含む、7に記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
13.上記1〜7のいずれかに記載のアダマンタン誘導体を重合して得られる重合体。
14.上記13に記載の重合体を含有する半導体用レジスト材料。
15.上記8又は9に記載のアダマンタン誘導体を含有する光酸発生剤。
16.上記14に記載の半導体用レジスト材料を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を露光する工程と、前記レジスト膜をアルカリ現像してレジストパターンを形成する工程と、を含むレジストパターン形成方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、酸による分解能が高くかつ、重合性がよいアダマンタン誘導体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】レジスト膜の紫外線の露光量と膜厚の関係を示す図である。
【図2】モノマーの転化率を測定したグラフである。
【図3】モノマーの酸分解率を測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のアダマンタン誘導体は、下記式(I)で表される。
【化4】

【0010】
式(I)において、Zは同一の炭素に連結基を有する、置換もしくは無置換の環(複素環や環状炭化水素等)を有する基である。「同一の炭素に連結基を有する」とは、Zと隣接元素との2つの結合が1つの炭素上にあることを意味する。
としては、アダマンタン環、シクロヘキサン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、フラン環等を有する基が挙げられる。
は本発明の効果を損なわない範囲で置換基を有していてもよい。例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等の炭化水素基、水酸基、フッ素原子等が挙げられる。
【0011】
としては、酸の作用により分解が進行する機能の付与が可能となる環状もしくは、炭化水素基の中でもメチレン基を有する、下記式(Z1−1)〜(Z1−10)で表される基のいずれかが好ましい。
【化5】

(式中、Rは水酸基、フッ素原子、置換もしくは無置換の炭化水素基であり、pは0〜7の整数である。*は式(I)における結合手を示す。)
【0012】
が示す置換もしくは無置換の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0013】
樹脂の一部として導入した場合、耐熱性が付与できることから、Zは、アダマンタン環又はシクロヘキサン環を有する基であることが好ましい。例えば、上記式(Z1−1)、pが2である(Z1−2)又は式(Z1−3)が好ましい。特に、アダマンタン環を有する式(Z1−1)又は式(Z1−3)で表される基が好ましい。
【0014】
は置換もしくは無置換の環状炭化水素基である。
の環状炭化水素としては、アダマンタン環、シクロヘキサン環、シクロブタン環、シクロペンタン環等を有する基が挙げられる。
置換基としては、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定はない。例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等の炭化水素基、水酸基、フッ素原子等が挙げられる。
【0015】
としては、樹脂の一部として導入した場合、耐熱性が付与できることから、下記式(Z2−1)〜(Z2−5)で表される基のいずれかが好ましい。
【化6】

(式中、Rは水酸基、フッ素原子、置換もしくは無置換の炭化水素基であり、pは0〜7の整数である。*は式(I)における結合手を示す。)
【0016】
樹脂の一部として導入した場合、より耐熱性が付与できることから、Zは、アダマンタン環又はシクロヘキサン環を有する基であることが好ましく、特に、アダマンタン環を有するもの、例えば、上記式(Z2−1)が好ましい。
【0017】
尚、本発明のアダマンタン誘導体は、Z及びZの少なくとも一方がアダマンタン骨格を有する基である。
【0018】
Xは下記式(1)〜(3)で表される重合性基、ハロゲン原子又は水酸基である。
【化7】

(式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であり、Rは炭素数1〜5の炭化水素基である。)
【0019】
上記Rの炭素数1〜5の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0020】
上記式(1)〜(3)で表される重合性基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、α−トリフルオロメチルアクリロイル基、α−フルオロアクリロイル基、グリシジル基、(3−メチルオキセタン−3−イル)メチル基、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル基、(3−プロピルオキセタン−3−イル)メチル基、(3−ブチルオキセタン−3−イル)メチル基等が挙げられる。
一般的な重合条件に適応でき、かつ高範囲な条件に対応できることから、好ましくは、アクリロイル基、メタクリロイル基、グリシジル基、(3−メチルオキセタン−3−イル)メチル基であり、特に好ましくは、アクリロイル基、メタクリロイル基又はグリシジル基である。
【0021】
及びRはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。尚、RとRは連結して環(例えば、シクロヘキサンやシクロペンタン)を形成してもよい。
炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。好ましくは、メチル基やエチル基である。
【0022】
Aはヘテロ原子、置換もしくは無置換の炭化水素基、又はカルボニル基である。
ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子等が挙げられる。
置換もしくは無置換の炭化水素基としては、メチレン等のアルキレン鎖等がが挙げられる。
Aはカルボニル基であることが好ましい。
【0023】
m及びnは、それぞれ0以上の整数を表す。m及びnは、それぞれ0〜2が好ましい。
【0024】
本発明のアダマンタン誘導体の製造方法について、上記式(I)のXの種類によって合成経路を変える必要がある。
Xが上記式(1)〜(3)で表わされる重合性基の場合は、後述するXが水酸基又はハロゲン原子の化合物を中間体として使用する。
【0025】
Xが水酸基であるアダマンタン誘導体について、式(I)のmが0の化合物は、環(炭化水素環や複素環等)を有するエポキシ類と、カルボン酸又は水酸基を有する環状炭化水素を反応させることで製造できる。反応としては、公知のエポキシ開環反応が採用できる。
【0026】
脂環式エポキシ類としては、以下のものが挙げられる。尚、これらのエポキシ類は、市販もしくは、市販されている対応するカルボニル化合物を一般的なエポキシ化反応により得ることができる。一般的なエポキシ化反応としては、C.A.G.M.Weijers,et al.,Org.Biomol.Chem.,2007,5,3106.などを参照できる。
【化8】

【0027】
好ましくは、アダマンタン−2−スピロ−オキシラン又はシクロヘキシル−スピロ−オキシランである。
【0028】
カルボン酸又は水酸基を有する環状炭化水素としては、以下のものが挙げられる。
【0029】
【化9】

【0030】
好ましくは、アダマンチルカルボン酸又はシクロヘキシルカルボン酸である。
【0031】
反応温度は0〜200℃が好ましく、特に、20〜150℃が好ましい。温度が低すぎる場合、反応速度が低下し、反応時間が長くなる。温度が高すぎる場合、着色が激しくなる。
圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPaが好ましく、特に、常圧〜1MPaが好ましい。圧力が高すぎる場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。
反応時間は、1分〜24時間が好ましく、特に、1時間〜15時間が好ましい。
触媒としては、ナトリウムアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ピリジン、ルチジン、ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、ナトリウム、カリウム、セシウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、酸化銀、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、テトラメチルクロライド、テトラエチルブロマイド等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。
好ましくは、ジメチルアミノピリジン、DBN、DBU、テトラエチルブロマイド等である。
溶媒は必須ではないが、使用する場合はアダマンタン誘導体の溶解度が0.5wt%以上、望ましくは10wt%以上の溶媒を用いる。溶媒量はアダマンタン類の濃度が0.5wt%以上、望ましくは10%wt以上となる量とする。アダマンタン類が懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。
溶媒しては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、DMF、DMAc、DMSO、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。これを単独又は組み合わせて使用してもよい。好ましくは、DMF又はDMSOである。
【0032】
精製方法は、必要に応じて、蒸留、晶析、カラム分離等が可能であり、生成物の性状と不純物の種類により選択できる。
【0033】
Xが水酸基であるアダマンタン誘導体について、式(I)のmが1以上の化合物は、上述した式(I)においてmが0で末端基が水酸基であるアダマンタン誘導体とグリコール酸類とを反応させることで得ることができる。具体的な反応としては、公知のエステル化反応でよい。例えば、共沸脱水法や塩基条件下でのエステル化法が挙げられる。
【0034】
グリコール酸類としては、以下のものが挙げられる。
【化10】

【0035】
好ましくは、グリコール酸、乳酸又は2−ヒドロキシイソ酪酸である。
【0036】
共沸脱水法の場合、反応温度は50〜200℃が好ましく、特に100〜180℃が好ましい。温度が低すぎる場合、反応速度が低下し、反応時間が長くなる。一方、温度が高すぎる場合、副反応が起きたり着色が激しくなる。
圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPaが好ましく、特に、常圧〜1MPaが好ましい。圧力が高すぎる場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。
触媒については、一般的な酸触媒を用いることができる。例えば、硫酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。
使用量は、グリコール酸に対して0.01mol%〜20mol%が好ましく、特に0.05〜10mol%が好ましい。
溶媒は、アダマンタン類の溶解度が0.5wt%以上、望ましくは5wt%以上のものを用いる。溶媒量はアダマンタン類の濃度が0.5wt%以上、望ましくは5%wt以上となる量である。この時、アダマンタン類が懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。
具体的には、ノナン、デカン、ウンデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
必要により、重合禁止剤としてヒドロキノン、メトキノン、フェノチアジン、メトキシフェノチアジン等を添加してもよい。使用量はグリコール酸に対して、10〜10000wtppmが好ましく、特に、50〜5000wtppmが好ましい。
【0037】
塩基条件下でのエステル化法による場合、反応温度は0〜200℃が好ましく、特に、50〜150℃が好ましい。温度が低すぎる場合、反応速度が低下し、反応時間が長くなる。温度が高すぎる場合、着色が激しくなる。
圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPaが好ましく、特に、常圧〜1MPaが好ましい。圧力が高すぎる場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。
反応時間は1分〜24時間が好ましく、特に、1時間〜10時間が好ましい。
【0038】
塩基性触媒としては、ナトリウムアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酸化銀、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド等が挙げられる。
溶媒としては、アダマンタン類の溶解度が0.5wt%以上、好ましくは5wt%以上の溶媒を用いる。溶媒量はアダマンタン類の濃度が0.5wt%以上、望ましくは5wt%以上となる量である。この時、アダマンタン類が懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。
具体的には、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、DMF、DMAc、DMSO、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。ハロゲノアルキル基含有環状エーテル化合物を溶媒兼用として用いてもよい。
【0039】
精製方法としては、蒸留、晶析、カラム分離等が可能であり、生成物の性状と不純物の種類により選択できる。
【0040】
Xがハロゲン原子である化合物は、上述した式(I)においてmが0で末端基が水酸基であるアダマンタン誘導体とグリコール酸ハライド類とを反応させることで得ることができる。反応としては、公知のエステル化反応が使用できる。
【0041】
グリコール酸ハライド類としては、以下のものが挙げられる。
【化11】

【0042】
好ましくは、クロロアセチルクロリド、ブロモアセチルブロミド又はブロモアセチルクロリドである。
【0043】
反応温度は−50〜100℃が好ましく、特に、0〜50℃が好ましい。温度が低すぎる場合、特別な装置が必要となり、産業上有用でない。温度が高すぎる場合、副反応が起きたり着色が激しくなる。
圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPaが好ましく、特に、常圧〜1MPaが好ましい。圧力が高すぎる場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。
反応により発生する酸の捕捉剤として、塩基を使用する。塩基としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の有機アミンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム等の無機塩基を使用することができる。アダマンタン誘導体に対する塩基の使用割合は、塩基/アダマンタン誘導体(モル比)が0.5〜20程度が好ましく、特に1〜10が好ましい。
溶媒としては、アダマンタン類の溶解度が0.5wt%以上、好ましくは5wt%以上となるものを用いる。溶媒量はアダマンタン類の濃度が0.5wt%以上、好ましくは5wt%以上となる量である。アダマンタン類が懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。
具体的には、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、DMF、NMP、DMAc、DMSO、ジエチルエーテル、THF、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられる。
必要により、重合禁止剤としてヒドロキノン、メトキノン、フェノチアジン、メトキシフェノチアジン等を添加してもよい。使用量はアダマンタン誘導体に対して、10〜10000wtppm、好ましくは50〜5000wtppmである。
精製方法は、蒸留、晶析、カラム分離等が可能であり、生成物の性状と不純物の種類により選択できる。
【0044】
Xが上記式(1)〜(3)で表わされる重合性基の場合は、上述したXが水酸基又はハロゲン原子の化合物と、重合性基を有する化合物とを反応させることにより得ることができる。反応としては、公知のエステル化又はグリシジルエーテル化反応が使用できる。
【0045】
エステル化反応の場合、共沸脱水法、酸クロリド法又は酸無水物法等を用いればよい。これにより、Xが上記式(1)で表わされる重合性基を導入したアダマンタン誘導体が製造できる。
エステルを形成する重合性基の具体的化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、α−フルオロアクリル酸、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、α−トリフルオロメチルアクリル酸クロリド、α−フルオロアクリル酸クロリド等が挙げられる。
【0046】
共沸脱水法の場合、反応温度は50〜200℃が好ましく、特に、100〜180℃が好ましい。温度が低すぎる場合、反応速度が低下し、反応時間が長くなる。温度が高すぎる場合、副反応が起きたり着色が激しくなる。
圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPaが好ましく、特に、常圧〜1MPaが好ましい。圧力が高すぎる場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。
触媒は、一般的な酸触媒を用いることができる。例えば、硫酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。使用量は中間体であるアダマンタン誘導体に対して0.01mol%〜20mol%が好ましく、特に、0.05〜10mol%が好ましい。
溶媒は、溶媒としては、アダマンタン類の溶解度が0.5wt%以上、好ましくは5wt%以上となるものを用いる。溶媒量はアダマンタン類の濃度が0.5wt%以上、好ましくは5wt%以上となる量である。アダマンタン類が懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。具体的には、ノナン、デカン、ウンデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
必要により、重合禁止剤としてヒドロキノン、メトキノン、フェノチアジン、メトキシフェノチアジン等を添加してもよい。使用量はアダマンタン誘導体(中間体)に対して、10〜10000wtppm、好ましくは50〜5000wtppmである。
【0047】
酸クロリド法の場合、反応温度は−50〜100℃が好ましく、特に、0〜50℃が好ましい。温度が低すぎる場合、特別な装置が必要となり、産業上有用でない。温度が高すぎる場合、副反応が起きたり着色が激しくなる。
圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPaが好ましく、特に、常圧〜1MPaが好ましい。圧力が高すぎる場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。
反応により発生する酸の捕捉剤として、塩基を使用する。塩基としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の有機アミンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム等の無機塩基を使用することができる。アダマンタン誘導体に対する塩基の使用割合は、塩基/アダマンタン誘導体(モル比)が0.5〜20程度が好ましく、特に1〜10が好ましい。
溶媒としては、アダマンタン類の溶解度が0.5wt%以上、好ましくは5wt%以上となるものを用いる。溶媒量はアダマンタン類の濃度が0.5wt%以上、好ましくは5wt%以上となる量である。アダマンタン類が懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。
具体的には、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、DMF、NMP、DMAc、DMSO、ジエチルエーテル、THF、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられる。
必要により、重合禁止剤としてヒドロキノン、メトキノン、フェノチアジン、メトキシフェノチアジン等を添加してもよい。使用量はアダマンタン誘導体(中間体)に対して、10〜10000wtppm、好ましくは50〜5000wtppmである。
【0048】
精製方法は、蒸留、晶析、カラム分離等が可能であり、生成物の性状と不純物の種類により選択できる。
【0049】
グリシジルエーテル化反応の場合、Xが上記式(2)又は(3)で表わされる重合性基を導入したアダマンタン誘導体が製造できる。
グリシジルエーテルを形成する具体的化合物としては、例えば、下記式(4)又は(5)で表されるハロゲノアルキル基含有環状エーテル化合物が挙げられる。
【化12】

(X:Cl,Br,I,F又はOH) (R:炭素数1〜4の炭化水素基)
【0050】
具体的な化合物として、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、3−クロロメチル−3−メチルオキセタン又は3−クロロメチル−3−エチルオキセタン等がある。
【0051】
上述したXが水酸基又はハロゲン原子の化合物と、ハロゲノアルキル基含有環状エーテル化合物とを、塩基性触媒存在下で反応させることにより、Xが上記式(2)又は(3)で表わされる重合性基を導入したアダマンタン誘導体が製造できる。
【0052】
グリシジルエーテル化反応の場合、反応温度は0〜200℃が好ましく、特に、50〜150℃が好ましい。温度が低すぎる場合、反応速度が低下し、反応時間が長くなる。温度が高すぎる場合、着色が激しくなる。
圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPaが好ましく、特に、常圧〜1MPaが好ましい。圧力が高すぎる場合は、安全上、問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。
反応時間は1分〜24時間が好ましく、特に、1時間〜10時間が好ましい。
塩基性触媒としては、ナトリウムアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酸化銀、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド等が挙げられる。
溶媒としては、アダマンタン類の溶解度が0.5wt%以上、好ましくは5wt%以上となるものを用いる。溶媒量はアダマンタン類の濃度が0.5wt%以上、好ましくは5wt%以上となる量である。アダマンタン類が懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。
具体的には、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、DMF、DMAc、DMSO、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。ハロゲノアルキル基含有環状エーテル化合物を溶媒兼用として用いてもよい。
精製方法は、蒸留、晶析、カラム分離等が可能であり、生成物の性状と不純物の種類により選択できる。
【0053】
本発明のアダマンタン誘導体は重合性がよいため、共重合体が重合しやすい。また、本発明のアダマンタン誘導体に由来する構造単位を有する重合体をレジスト材料として用いた場合、酸による分解能が高い。さらに、酸分解した場合には、脱離基が嵩高いため、コントラストが大きくなる。
【0054】
本発明のアダマンタン誘導体に由来する構造単位を有する重合体は、上述した本発明のアダマンタン誘導体を公知の方法で重合させることにより製造できる。重合は、本発明のアダマンタン誘導体を1種単独で重合させてもよく、複数種を共重合させてもよい。また、アダマンタン誘導体とその他の単量体を共重合させてもよい。
重合法については、特に限定されず、例えば、溶液重合(沸点重合、沸点未満重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の公知の重合方法を用いることができる。重合後の反応液中に残存している高沸点の未反応モノマー量が少ないほど好ましく、重合時あるいは重合終了後、必要に応じて未反応モノマーを除去する操作を施すことが好ましい。
【0055】
重合法のうち、一般には溶媒中でラジカル重合開始剤を用いた重合反応が好ましい。重合開始剤としては特に限定はないが、パーオキサイド系重合開始剤、アゾ系重合開始剤等が用いられ得る。
パーオキサイド系重合開始剤としてはパーオキシカーボネート、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル(ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド)等の有機過酸化物が挙げられる。また、アゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル等のアゾ化合物等が挙げられる。
重合開始剤は重合温度に応じて選択され、1種又は2種以上の重合開始剤を用いてもよい。
重合終了後に、未反応のアダマンタン誘導体や他のモノマーを、製造した重合体から除去する方法は種々あるが、操作性や経済的な視点から、ポリマーに対する貧溶媒を用いて洗浄する方法が好ましい。貧溶媒の中でも、沸点が低いものが好ましく、代表的にはメタノール、エタノール、n−ヘキサン、n−ヘプタン等が挙げられる。
【0056】
本発明のアダマンタン誘導体を使用して得られる重合体は、必要により、PAG(光酸発生剤)や有機アミン等のクエンチャー等を添加した溶液状態で、半導体用レジスト材料(フォトレジスト)として利用できる。このフォトレジストは、溶解性、相溶性、ディフェクト低減、ラフネス改善等の優れた特性が期待される。さらに、コントラストが大きくなることにより、解像度が改善される。
【0057】
光酸発生剤としては、露光により効率よく酸を生成する慣用の化合物、例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩(例えば、ジフェニルヨードヘキサフルオロホスフェート等)、スルホニウム塩(例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート等)、スルホン酸エステル[例えば、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、1,2,3−トリスルホニルオキシメチルベンゼン、1,3−ジニトロ−2−(4−フェニルスルホニルオキシメチル)ベンゼン、1−フェニル−1−(4−メチルフェニルスルホニルオキシメチル)−1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルメタン等]、オキサチアゾール誘導体、s−トリアジン誘導体、ジスルホン誘導体(ジフェニルジスルホン等)、イミド化合物、オキシムスルホネート、ジアゾナフトキノン、ベンゾイントレート等が挙げられる。これらの光酸発生剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0058】
また、本発明のアダマンタン誘導体のうち、式(I)のXが水酸基又はハロゲン原子であるものは、光酸発生剤として使用できる。
【0059】
光酸発生剤の使用量は、光照射により生成する酸の強度や本発明のアダマンタン誘導体に由来する構造単位の含有量等に応じて適宜選択できる。例えば、重合体100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは1〜25重量部、さらに好ましくは2〜20重量部程度である。
【0060】
半導体用レジスト材料は、アルカリ可溶性樹脂(例えば、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、カルボキシル基含有樹脂等)等のアルカリ可溶成分、着色剤(例えば、染料等)、有機溶媒(例えば、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類、カルビトール類、グリコールエーテルエステル類、これらの混合溶媒等)等を含んでもよい。
半導体用レジスト材料は、本発明の重合体と光酸発生剤、及び必要に応じて前記有機溶媒等を混合し、必要に応じて夾雑物をフィルター等の慣用の固体分離手段により除去することにより調製できる。この半導体用レジスト材料を支持体上に塗布し、乾燥した後、所定のマスクを介して、塗膜(レジスト膜)に光線を露光して(又は、さらに露光後ベークを行い)潜像パターンを形成し、次いで現像することにより、微細なパターンを高い精度で形成できる。
【0061】
支持体としては、各種基材又は基板、具体的には、シリコンウエハ、金属、プラスチック、ガラス、セラミック等が挙げられる。フォトレジスト用樹脂組成物の塗布は、スピンコータ、ディップコータ、ローラコータ等の慣用の塗布手段を用いて行うことができる。塗膜の厚みは、例えば0.1〜20μm、好ましくは0.3〜2μm程度である。
【0062】
露光には、種々の波長の光線、例えば、紫外線、X線等が利用でき、半導体レジスト用では、通常、g線、i線、エキシマレーザー(例えば、XeCl、KrF、KrCl、ArF、ArCl等)等が使用される。露光エネルギーは、例えば1〜1000mJ/cm、好ましくは10〜500mJ/cm程度である。
光照射により光酸発生剤から酸が生成し、この酸により重合体の環状部分が速やかに脱離して、可溶化に寄与するカルボキシル基が生成する。そのため、水又はアルカリ現像液による現像により、所定のパターンを精度よく形成できる。
【0063】
本発明の重合体を使用したレジスト材料は、種々の用途、例えば、回路形成材料(半導体製造用レジスト、プリント配線板等)、画像形成材料(印刷版材、レリーフ像等)等に利用できる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明について実施例及び比較例を示してより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
尚、物性の測定方法は以下の通りである。
・核磁気共鳴分光法(NMR)
溶媒としてクロロホルム−dを使用し、JNM−ECA500(日本電子株式会社製)で測定した。
・ガスクロマトグラフ−質量分析(GC−MS)
EI(株式会社島津製作所製 GCMS−QP2010)を用いて測定した。
【0065】
実施例1
(2−ヒドロキシ−2−アダマンチル)メチルアダマンタンカルボキシレートを合成した。
撹拌羽根、還流冷却管、温度指示計及びAir導入管を取付けた200mLの4ツ口フラスコに、アダマンタン−2−スピロオキシラン[20g]、エチルシクロヘキサン[100mL]、アダマンタンカルボン酸[24g]、DBU[3.7g]をそれぞれ加え、130度で5時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却した後、へプタン[150mL]を加え、100度まで攪拌し、不要溶解物をろ別し、ろ液を氷浴下、1時間攪拌した。生成した固体をろ別し、得られた固体を減圧下乾燥させることで(2−ヒドロキシ−2−アダマンチル)メチルアダマンタンカルボキシレートを得た[収量29g,収率70%]。
NMR及びGC−MSにより、回収物が下記式の化合物であることを確認した。測定結果を以下に示す。
【0066】
【化13】

【0067】
H−NMR(500MHz)δ(ppm):1.51−2.08(m,30H,H−c〜g,i,j,n〜v),2.25−2.80(m,2H,H−b,h),4.25(s,2H,H−k)
13C−NMR(125MHz)δ(ppm):27.14(C−d or f),27.53(C−d or f),27.97(C−o),32.59(C−p),34.45(C−i or g),34.78(C−i or g),36.51(C−h),38.17(C−n),39.03(C−e),41.12(C−m),68.83(C−a),74.31(C−k),177.75(C−l)
・GC−MS
344(M+,0.03%),151(100%),135(3%)
【0068】
実施例2
(2−(メタクリルロイルオキシ)−2−アダマンチル)メチルアダマンタンカルボキシレートを下記の反応により合成した。
撹拌羽根、還流冷却管、温度指示計及びAir導入管を取付けた2Lの4ツ口フラスコに、実施例1で合成した(2−ヒドロキシ−2−アダマンチル)メチルアダマンタンカルボキシレート[152g]、N,N−ジメチルホルムアミド[380mL]、p−メトキシフェノール[540mg]、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)[74mL]、ジメチルアミノピリジン[53.8g]をそれぞれ加え、Airバブリングしながら130度まで加熱した。次いで、無水メタクリル酸[518mL]を滴下しながら加えた。その後、130度で2時間反応させた。
反応溶液を室温まで冷却した後、飽和食塩水[1140mL]加え、10分間攪拌を行なった後、生成した固体をろ別した。得られた固体を2Lのナスフラスコに移し、メタノール[540g]を加え、室温で1時間攪拌した。固体をろ別し、得られた固体をメタノール[300g]で洗浄した後、減圧乾燥させた。乾燥した固体に、トルエン1700gで溶解させ、シリカゲル[34g]と活性炭[34g]を加え、室温で1時間攪拌した後、シリカゲル及び活性炭をろ別、得られた溶液の溶媒を留去、減圧下乾燥させることで目的物を得た[収量126.4g,収率70%]。
NMR及びGC−MSにより、(2−(メタクリルロイルオキシ)−2−アダマンチル)メチルアダマンタンカルボキシレート(下記式)であることを確認した。測定結果を以下に示す。
【0069】
【化14】

【0070】
H−NMR(500MHz)δ(ppm):1.5−2.1(m,30H,H−a,f〜l,n,q〜z),2.48−2.51(m,2H,H−e,m),4.85(s,2H,H−o),5.55(s,1H,H−b1),6.11(s,1H,H−b2)
13C−NMR(125MHz)δ(ppm):18.35(C−a),26.93(C−k or h),27.00(C−k or h),28.05(C−s),31.99(C−e or i or l or g),32.03(C−e or i or l or g),32.06(C−e or i or l or g),32.66(C−p),34.09(C−e or i or l or g),36.56(C−m),38.06(C−r),39.10(C−j),41.59(C−g),62.94(C−o),85.23(C−n),125.50(C−b),136.24(C−c),167.02 (C−d), 176.34 (C−p)
・GC−MS
326(2%),233(34%),135(55%),69(100%)
【0071】
実施例3
(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)メチルアダマンタンカルボキシレートを合成した。
上記実施例1のアダマンタン−2−スピロ−オキシランを、シクロヘキシル−スピロ−オキシランに変更した以外は実施例1と同様にした[収量28.8g,収率81%]。
NMR及びGC−MSにより、回収物が下記式の化合物であることを確認した。測定結果を以下に示す。
【0072】
【化15】

【0073】
H−NMR(500MHz)δ(ppm):1.57−1.89(m,25H,H−b〜f,j〜l),4.18(s,2H,H−g)
13C−NMR(125MHz)δ(ppm):19.88(C−b),25.13(C−c or d),27.41(C−c or d),31.24(C−k),39.41(C−j or l),43.45(C−j or l),37.52(C−i),61.55(C−k),69.03(C−a),173.24(C−h)
・GC−MS
292(M+,0.1%),99(100%),135(11%)
【0074】
実施例4
(1−(メタクリルロイルオキシ)シクロヘキシル)メチルアダマンタンカルボキシレートを合成した。
上記実施例2の(2−ヒドロキシ−2−アダマンチル)メチルアダマンタンカルボキシレートを、実施例3で合成した(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)メチルアダマンタンカルボキシレートに変更した以外は実施例2と同様とした[収量130.4g,収率82%]。
NMR及びGC−MSにより、回収物が下記式の化合物であることを確認した。測定結果を以下に示す。
【0075】
【化16】

【0076】
H−NMR(500MHz)δ(ppm):1.5−2.1(m,28H,H−a,f〜j,n〜p),4.62(s,2H,H−k),5.57(s,1H,H−b1),6.10(s,1H,H−b2)
13C−NMR(125MHz)δ(ppm):18.36(C−a),19.88(C−f),25.13(C−g or h),27.41(C−g or h),30.77(C−o),38.78(C−m or n or p),38.99(C−m or n or p),42.12(C−m or n or p),62.78(C−k),84.33(C−e),126.37(C−b),137.01(C−c),166.78(C−d),176.50(C−l)
・GC−MS
342(4%),291(7%),135(71%),69(100%)
【0077】
実施例5[メタアクリル系重合体の合成]
メチルイソブチルケトンに、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル/モノマーA(実施例1)/モノマーB/モノマーCを重量比で0.1/1.0/1.0/1.0で仕込み、加熱還流下、2時間撹拌した。その後、反応液を大量のメタノールと水の混合溶媒に注いで沈殿させる動作を3回行い精製した。
その結果、モノマーA:モノマーB:モノマーCの共重合組成(mol)が29:42:29であり、重量平均分子量(Mw)が9189、分散度(Mw/Mn)が2.34の共重合体P1を得た。
【0078】
【化17】

【0079】
実施例6[レジスト材料の調製]
実施例5記載の共重合体(P1)に対し、光酸発生剤としてトリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネートを5wt%加え、これらが10wt%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで溶解し、レジスト材料R1を調製した。
シリコンウエハ上に、調製したレジスト材料を塗布し、110℃で、60秒間ベークを行い、レジスト膜を形成した。こうして得られたウエハーを波長248nmの光により、異なる露光量で数点オープン露光した。露光直後に110℃で、60秒間加熱した後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で60秒間現像した。
【0080】
露光量に対する膜厚の変化を図1に示す。
このように、本発明のレジスト材料では露光量により膜厚変化を起こし、感光性樹脂としての機能を有することを確認できた。
【0081】
実施例7[重合体の製造]
実施例1で製造したモノマーA[(2−(メタクリルロイルオキシ)−2−アダマンチル)メチルアダマンタンカルボキシレート]を単独で重合させた。
撹拌羽根、還流冷却管、温度指示計及び窒素導入管を取付けた50mLの4ツ口フラスコに、メチルエチルケトン[20mL]を加え、窒素バブリングを1時間行った。その後、(2−(メタクリルロイルオキシ)−2−アダマンチル)メチルアダマンタンカルボキシレート[2g]と2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル[57.6mg]を加え、85℃のオイルバスにつけ、反応を開始し、モノマーAの転化率を測定した。図2にモノマーの転化率を測定したグラフを示す。
【0082】
比較例1
実施例7のモノマーAを下記に示すモノマーD(2−メチル−2アダマンチルメタクリレート)に変えた他は、実施例7と同様にして重合し、モノマーDの転化率を測定した。結果を図2に示す。
【化18】

【0083】
比較例2
実施例7のモノマーAを下記に示すモノマーE(2−イソプロピル−2アダマンチルメタクリレート)に変えた他は、実施例7と同様にして重合し、モノマーEの転化率を測定した。結果を図2に示す。
【化19】

【0084】
評価例1
実施例1で製造したモノマーAの酸分解性を評価した。
NMRチューブに、(2−(メタクリルロイルオキシ)−2−アダマンチル)メチルアダマンタンカルボキシレート[49.6mg]、d−DMSO[0.3mL]、CDCl[0.3mL]、トリフルオロメタンスルホン酸[5μL]を加え、100℃に加熱しながら、モノマーAの酸分解性を確認した。モノマーAと下記化合物αをNMRで観測しながら、モノマーAの分解率を測定した。図3にモノマーの分解率を測定したグラフを示す。
【化20】

【0085】
評価例2
モノマーE(2−イソプロピル−2アダマンチルメタクリレート)の酸分解性を評価例1と同様に評価した。
結果を図3に示す。
【0086】
図2に示した結果から、本発明のアダマンタン誘導体は重合性が高いことが確認できる。
また、図3に示した結果から、本発明のアダマンタン誘導体は酸分解性が高いことが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のアダマンタン誘導体は、重合性モノマーとして使用でき、本モノマーを構成単位として有する重合体は、半導体用レジスト材料等として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるアダマンタン誘導体。
【化21】

[(式中、Zは同一の炭素に連結基を有する、置換もしくは無置換の環を有する基であり、Zは置換もしくは無置換の環状炭化水素基であり、Z及びZの少なくとも一方はアダマンタン骨格を有する基である。
Xは下記式(1)〜(3)で表される重合性基、ハロゲン原子又は水酸基であり、R及びRはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。RとRは連結して環を形成してもよい。
Aはヘテロ原子、置換もしくは無置換の炭化水素基、又はカルボニル基である。
m及びnは、それぞれ0以上の整数を表す。)
【化22】

(式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であり、Rは炭素数1〜5の炭化水素基である。*は式(I)における結合手を示す。)]
【請求項2】
前記Zが、下記式(Z1−1)〜(Z1−10)で表される基のいずれかであり、
前記Zが、下記式(Z2−1)〜(Z2−5)で表される基のいずれかである、請求項1に記載のアダマンタン誘導体。
【化23】

(式中、Rは水酸基、フッ素原子、置換もしくは無置換の炭化水素基であり、pは0〜7の整数である。*は式(I)における結合手を示す。)
【請求項3】
前記Zが式(Z2−1)で表される基である請求項2に記載のアダマンタン誘導体。
【請求項4】
前記Zが式(Z1−1)、pが2である(Z1−2)又は式(Z1−3)で表される基である請求項2に記載のアダマンタン誘導体。
【請求項5】
前記Zが式(Z1−1)又は式(Z1−3)で表される基であり、
前記Zが式(Z2−1)で表される基である、請求項2に記載のアダマンタン誘導体。
【請求項6】
前記nが1であり、前記Aがカルボニル基である請求項1〜5のいずれかに記載のアダマンタン誘導体。
【請求項7】
前記Xが前記式(1)〜(3)で表される重合性基のいずれかである請求項1〜6のいずれかに記載のアダマンタン誘導体。
【請求項8】
前記Xが水酸基である請求項1〜6のいずれかに記載のアダマンタン誘導体。
【請求項9】
前記mが1以上であり、前記Xがハロゲン原子である請求項1〜6のいずれかに記載のアダマンタン誘導体。
【請求項10】
環を有するエポキシ類と、カルボン酸又は水酸基を有する環状炭化水素を反応させる工程を含む、請求項8に記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載のアダマンタン誘導体と、グリコール酸ハライド類とを反応させる工程を含む、請求項9に記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
【請求項12】
請求項8又は9に記載のアダマンタン誘導体と、重合性基を有する化合物を反応させる工程を含む、請求項7に記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれかに記載のアダマンタン誘導体を重合して得られる重合体。
【請求項14】
請求項13に記載の重合体を含有する半導体用レジスト材料。
【請求項15】
請求項8又は9に記載のアダマンタン誘導体を含有する光酸発生剤。
【請求項16】
請求項14に記載の半導体用レジスト材料を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光する工程と、
前記レジスト膜をアルカリ現像してレジストパターンを形成する工程と、を含むレジストパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−1494(P2012−1494A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138307(P2010−138307)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】