説明

アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤由来の臭いの消臭方法

【課題】アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤の高温条件下で長期間保存した場合における固形製剤由来の不快な臭いの消臭手段を提供すること。
【解決手段】アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤と乾燥剤を密閉系で保存することを特徴とする、固形製剤由来の臭いの消臭方法、並びに、アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤並びに乾燥剤が密閉系に含まれてなることを特徴とする、固形製剤由来の臭いが消臭された包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤を高温で長期間保存した場合に生じる臭いの消臭方法、及び固形製剤を高温で長期間保存した場合に生じる臭いが消臭された包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
アデノシン5´‐三リン酸は高エネルギーリン酸結合を有する化合物であり、アデノシン5´‐二リン酸とリン酸に加水分解される際に大量のエネルギーを放出する。生体内においては、アデノシン5´‐三リン酸は主として反応のエネルギー供給源として利用されているほか、リン酸供与体として代謝反応に関与している。
【0003】
アデノシン5´‐三リン酸の医薬品としての利用に関しては、例えば頭部外傷後遺症、心不全、調節性眼精疲労における調節機能の安定化、消化管機能低下のみられる慢性胃炎等に対する治療剤としての利用が知られている。また、筋トルクを増大させ、筋疲労を低減するために有効な量のアデノシン三リン酸(ATP)を含有する組成物も知られている(特許文献1)。さらに、疲労回復のための医薬であって、アデノシン5´‐三リン酸又は生理学的に許容されるその塩と少なくとも2種以上のビタミンB類とを同時に又は時間を変えて投与するための組合せを含む医薬も知られている(特許文献2)。このように、アデノシン5´‐三リン酸は医薬品の有効成分として多岐に渡る疾患の予防・治療や、症状の改善等に有用であり、品質に優れるアデノシン5´‐三リン酸を含有する製剤の提供は、医薬品産業に大きく貢献するものである。
【特許文献1】特表2004−535417号公報
【特許文献2】国際公開第WO2006/126663号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、品質に優れるアデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤の研究開発を鋭意行ってきた。そしてこれらの保存性について検討してきたところ、これらの固形製剤は室温で保存した場合においては特に問題なく長期に渡り保存できるものの、高温で長期間保存した場合には製剤に経時的に不快な臭いが発生することを独自に見出した。この不快な臭いは、生臭いような臭いであって、経口摂取に抵抗感を生じさせるような臭いである。このような不快な臭いは、商品価値を大きく低減させることになる。その一方で、このような臭いが発生した製品となってしまったかどうかは目視で知ることはできず、製品を開封してみなければわからない。販売前の製品を開封して検査することは事実上不可能であるから、不快な臭いを有しない製品(包装体)となっていることを、積極的に担保する手段が求められる。このような手段として、例えば室温以下の低温で保存する方法があるが、流通経路の全てに渡って常時室温以下の低温にて保存するのでは、流通上、保管上や、使用上の制約や不便が大きい。
【0005】
したがって、本発明は、アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤を高温で長期間保存した場合に生じ得る不快な臭いを消臭する方法を提供することを課題とする。
【0006】
さらに、本発明は、アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤を含む包装体であって、高温で長期間保存した場合であっても、不快な臭いが消臭された包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤を密閉系で保存し、且つその密閉系に後述する乾燥剤を封入すると、高温で長期間保存した場合においても固形製剤由来の不快な臭いが消臭された固形製剤を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、次の[1]〜[2]にある。
[1] アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤と乾燥剤を密閉系で保存することを特徴とする、固形製剤由来の臭いの消臭方法(method)。
[2] アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤並びに乾燥剤が含まれてなることを特徴とする、包装体。
【0009】
また、本発明は、次の[3]から[7]にもある。
[3] アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤並びに乾燥剤が密閉系に含まれてなることを特徴とする、固形製剤由来の臭いが消臭された包装体。
[4] アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤とともに密閉系に封入して保存するための、乾燥剤を含有する消臭剤。
[5] 乾燥剤が、シリカゲル、シリカアルミナゲル(アロフェン)、天然ゼオライト、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)、塩化カルシウム、生石灰(酸化カルシウム)、ベントナイトクレイ(モンモリロナイト)からなる群より選択された1種又は2種以上である、[1]に記載の方法。
[6] 乾燥剤が、シリカゲル、シリカアルミナゲル(アロフェン)、天然ゼオライト、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)、塩化カルシウム、生石灰(酸化カルシウム)、ベントナイトクレイ(モンモリロナイト)からなる群より選択された1種又は2種以上である、[2]又は[3]に記載の包装体。
[7] 乾燥剤が、シリカゲル、シリカアルミナゲル(アロフェン)、天然ゼオライト、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)、塩化カルシウム、生石灰(酸化カルシウム)、ベントナイトクレイ(モンモリロナイト)からなる群より選択された1種又は2種以上である、[4]に記載の消臭剤。
【0010】
また、本発明は、次の[8]〜[12]にもある。
[8] アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤由来の臭いの消臭のための、
シリカゲル、シリカアルミナゲル(アロフェン)、天然ゼオライト、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)、塩化カルシウム、生石灰(酸化カルシウム)、ベントナイトクレイ(モンモリロナイト)からなる群より選択された1種又は2種以上の乾燥剤の使用(use)。
[9] アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤と乾燥剤を密閉系に封入して、固形製剤由来の臭いが消臭された包装体を製造する方法(mothod)。
[10] アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤とともに密閉系に封入して、固形製剤由来の臭いが消臭された包装体を製造するための、乾燥剤の使用(use)。
[11] アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤と乾燥剤を密閉系に封入して、固形製剤由来の臭いを消臭して保存する方法(method)。
[12] アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤とともに密閉系に封入して、固形製剤由来の臭いを消臭して保存するための、乾燥剤を含有する保存剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高温で長期間保存した場合においてもアデノシン5´‐三リン酸を含む固形製剤由来の臭いが消臭された、商品価値に優れるアデノシン5´‐三リン酸含有固形製剤を提供することができる。すなわち、本発明によれば、もし輸送及び保管時に長期間に渡る高温保存を経てしまったとしても、アデノシン5´‐三リン酸を含む固形製剤を含む包装体は、不快な臭いを有することなく、製品としての価値は、様々な流通や保管の条件下でも維持され、さらに使用上の利便性も大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤と乾燥剤とを密閉系で保存することによる固形製剤由来の臭いを消臭する方法、およびアデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤並びに乾燥剤が含まれてなることを特徴とする、固形製剤由来の臭いが消臭された包装体に関する。
【0013】
本発明において、「アデノシン5´‐三リン酸」には、アデノシン5´‐三リン酸そのもののほか、その製薬上許容される塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等)も含まれ、これらの1種又は2種以上を組合わせて使用しうる。本発明の固形製剤に含まれるアデノシン5´‐三リン酸やその製薬上許容される塩としては市販のものを使用することができる。本発明の固形製剤中に含まれるアデノシン5´‐三リン酸の含有量は、特に制限されず、対象とする疾患・症状、剤形等により適宜設定できるが、薬理効果の観点から、固形製剤全質量に対してアデノシン5´‐三リン酸のフリー体換算で合計1〜80質量%が好ましく、1.5〜75質量%が更に好ましく、2〜70質量%が特に好ましい。
【0014】
本発明における「乾燥剤」は、医薬品、食品等に通常使われる乾燥剤であればよく、例えばシリカゲル、シリカアルミナゲル(アロフェン)、天然ゼオライト、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)、塩化カルシウム、生石灰(酸化カルシウム)、ベントナイトクレイ(モンモリロナイト)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組合わせて用いることができる。なお、乾燥剤は一般に水分子に対する吸着剤であることは知られているが、本発明におけるような、アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤を高温で長期間保存した場合に生じる不快な臭いを消臭する作用についてはこれまでに全く報告がない。好ましい乾燥剤として、シリカゲル、シリカアルミナゲル(アロフェン)、天然ゼオライト、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)、ベントナイトクレイ(モンモリロナイト)から選択された1種又は2種以上を挙げることができる。また、より好ましい乾燥剤として、シリカゲル、シリカアルミナゲル(アロフェン)、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)から選択された1種又は2種以上を挙げることができる。また、更に好ましい乾燥剤として、シリカゲル、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)から選択された1種又は2種以上を挙げることができる。特に好ましい乾燥剤として、シリカゲルを挙げることができる。また、乾燥剤の量は特に制限されるものではないが、アデノシン5´‐三リン酸1質量部に対して0.01〜30質量部、好ましくは0.03〜20質量部、より好ましくは0.05〜15質量部用いればよい。
【0015】
本発明にかかる固形製剤は、アデノシン5´‐三リン酸以外の成分を、その配合目的に応じて適宜配合することができる。このような成分としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB類、その他の水溶性ビタミン、ビタミンD、ビタミンE、ビタミン様物質、ミネラル、カフェイン、アミノ酸、肝臓障害用薬、生薬、その他の薬物等を挙げることができる。すなわち、本発明にかかる固形製剤は、アデノシン5´‐三リン酸以外の成分として、ビタミンA、ビタミンB類、その他の水溶性ビタミン、ビタミンD、ビタミンE、ビタミン様物質、ミネラル、カフェイン系薬物、アミノ酸、肝臓障害用薬、生薬からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含んでいても良い。
【0016】
ビタミンAとしては、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、ビタミンA油、肝油、強肝油等が挙げられる。
【0017】
ビタミンB類としては、塩酸チアミン、硝酸チアミン、硝酸ビスチアミン、チアミンジスルフィド、チアミンジセチル硫酸エステル塩、塩酸ジセチアミン、塩酸フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、フルスルチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビン、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メコバラミン等が挙げられる。
【0018】
その他の水溶性ビタミンとしては、アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸ナトリウム、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、パンテチン、ビオチン、葉酸等が挙げられる。
【0019】
ビタミンDとしては、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等が挙げられる。
【0020】
ビタミンEとしては、コハク酸d‐α‐トコフェロール、コハク酸dl‐α‐トコフェロール、コハク酸dl‐α‐トコフェロールカルシウム、酢酸d‐α‐トコフェロール、酢酸dl‐α‐トコフェロール、d‐α‐トコフェロール、dl‐α‐トコフェロール等が挙げられる。
【0021】
ビタミン様物質としては、イノシトール、イノシトールヘキサニコチネート、オロチン酸、オロチン酸コリン、ガンマ−オリザノール、チオクト酸、チオクト酸アミド、塩化カルニチン、ユビデカレノン、重酒石酸コリン、ルチン等が挙げられる。
【0022】
ミネラルとしては、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、グルコン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、クエン酸鉄アンモニウム、フマル酸第一鉄、硫酸鉄、コンドロイチン硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0023】
カフェイン系薬物としては、カフェイン、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン、アミノフィリン、ジプロフィリン、プロキシフィリン等が挙げられる。
【0024】
アミノ酸としては、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸ナトリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、L−塩酸システイン、L−システイン、アミノ酢酸、L−イソロイシン、塩酸アルギニン、塩酸リジン、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸ナトリウム、L−トレオニン、L−バリン、L−ヒスチジン塩酸塩、L−ロイシン、DL−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、タウリン等が挙げられる。
【0025】
肝臓障害用薬としては、ウルソデスオキシコール酸、デヒドロコール酸、グルクロノラクトン、グルクロン酸、グルクロン酸アミド、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ナトリウム、アミノエチルスルホン酸、ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン、メチルメチオニンスルホニウムクロライド、肝臓加水分解物、ヨークレシチン等が挙げられる。
【0026】
生薬としては、アキョウ、アセンヤク、イカリソウエキス、イカリソウ乾燥エキス、ウイキョウ、エゾウコギ、オウギ、オウセイ、オウレン、カシュウ、ガジュツ、神麹、ガラナ、カンゾウ、キキョウ、キョウカツ、キョウニン、クコシ、ケイヒ、ゴオウ、コウジン、コショウ、コハク、五八霜末、サイカク、サイコ、サフラン、サンザシ、サンヤク、ジオウ、シャカンゾウ、シャクヤク、ジャコウ、シュクシャ、ショウキョウ、ジョテイシ、ジンコウ、シンジュ、セイヨウサンザシ、センキュウ、センソ、ソウジュツ、動物胆成分(ユウタン、牛胆汁エキス)、ダイオウ、大豆黄巻、タイソウ、チョウジ、沈香末、チンピ、テンマ、トウキ、トシシ、トチュウ、ニクジュヨウ、ニンジン、ニンニク、バクモンドウ、ハンゲ、ハンピ、ビャクジュツ、ブクリョウ、ボウフウ、ホミカエキス、ボレイ、マオウ、マシニン、ムイラプアマ、モッコウ、ヤクチ、ヨクイニン、リュウノウ、リョウガンニク、レイヨウカク、ローヤルゼリー、ロクジョウ等が挙げられる。
【0027】
その他の薬物としては、ニンニク加工物(オキソアミヂンなど)などが挙げられる。
【0028】
本発明にかかる固形製剤は、製剤添加物として、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、光沢化剤等をさらに含んでいても良い。
【0029】
賦形剤としては、乳糖、デンプン類、結晶セルロース、蔗糖、マンニトール、又は軽質無水ケイ酸等が挙げられる。結合剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、又はプルラン等が挙げられる。崩壊剤としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、トウモロコシ澱粉等が挙げられる。滑沢剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク等が挙げられる。着色剤としては、タール色素、又は三二酸化鉄等が挙げられる。矯味剤としてはステビア、アスパルテーム、l−メントール、d−ボルネオール、又は香料等が挙げられる。光沢化剤としては、蜜ロウ、カルナウバロウ、鯨ロウ、レシチン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックスなどのワックス等が挙げられる。
【0030】
また、本発明にかかる固形製剤は、糖衣やフィルムコーティング等により被覆されていても良い。コーティング剤としては、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート等を用いることができる。なお、フィルムを形成させる際に、クエン酸トリエチル、トリアセチン、ポリエチレングリコール等の可塑剤、タルク、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、法定色素、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素等の粉体やラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート等の界面活性剤を配合することもできる。
【0031】
本発明にかかる固形製剤の剤形としては例えば、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、錠剤、散剤等が挙げられる。本発明においては錠剤、特にフィルムコーティング錠が好ましい。
【0032】
本発明にかかる固形製剤は常法に従って製造することができる。例えば剤形が錠剤である場合、アデノシン5´‐三リン酸及び各種薬物や通常用いられる各種製剤添加物を用いて日本薬局方製剤総則等の常法に基づき、混合または造粒し、得られた混合物または造粒物と、所望により滑沢剤を混合した後に打錠することで、本発明にかかる固形製剤を製造することができる。さらに固形製剤をフィルムコーティングする場合には、コーティング液を塗布又は噴霧する等の一般的な方法でコーティングを行なうことができる。特に、噴霧コーティング方法を採用することが簡便で好ましい。
【0033】
本発明によれば、密閉系に乾燥剤とともに封入した形態で、アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤を保存することにより、アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤由来の不快な臭いを消臭することができる。密閉系で固形製剤を保存するためには、密閉可能な容器(包装)を用いればよい。本発明において、「アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤並びに乾燥剤が密閉系に含まれてなる包装体」とは、固形製剤及び乾燥剤が密閉可能な容器(包装)に封入されて密閉されてなるものを意味する。本発明で使用される容器(包装)としては、固形製剤の包装(容器)として使用して密閉可能なものであれば特に制限はなく、例えば、瓶、缶、箱、袋等の形態のものを挙げることができ、例えば、ガラス、樹脂、金属等を材料としたものを挙げることができ、これらの材料を複合構造や多層構造としたものも好適に使用可能である。本発明の包装体としては、例えば、固形製剤及び乾燥剤を収納したアルミ缶、ブリキ缶、ガラス瓶又はプラスチックボトル、あるいはPTP包装又はストリップ包装した固形製剤と乾燥剤を適当なシートを用いてピロー包装やスティック包装したもの等を挙げることができる。
【0034】
本発明において密閉された包装(容器)の内部には、アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤並びに乾燥剤が含まれているが、本発明による不快な臭いの消臭作用を妨げないものであれば、公知の保存剤をさらに封入することもできる。
【0035】
本発明の固形製剤は、アデノシン5´‐三リン酸に期待される薬効の発現を目的として使用することができる。例えば、頭部外傷後遺症、心不全、又は消化管機能低下を伴う慢性胃炎の予防及び/又は治療のための医薬として、あるいは調節性眼精疲労における調節機能の安定化のための医薬として使用することができる。さらに、例えば国際公開第WO2006/126663号パンフレットに開示されているように疲労回復のための医薬として使用することもできる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
[製造例1]
アデノシン5´‐三リン酸二ナトリウム600g、乳糖500g、結晶セルロース4015g、ヒドロキシプロピルセルロース240g、カルメロース600gを混合し、これに50%エタノール1000gを加え、造粒、乾燥、整粒し、これにステアリン酸マグネシウム45gを加え打錠用顆粒とした。この打錠用顆粒を圧縮成形し、1錠200mg(φ8mm)の素錠を得た。
この素錠に、精製水2400g、メタクリル酸コポリマーLD410g、タルク123g、クエン酸トリエチル61.6g、酸化チタン5.4gを溶解、分散したフィルムコーティング液を通気型コーティング機(ドリアコータDRC−650DS型 株式会社パウレック)を用いてフィルムコーティングし、1錠220mgの固形製剤(フィルムコーティング錠)とした。
【0038】
[実施例1]
製造例1で得た固形製剤50個を5号規格ビンへ充填し、さらに錠剤型シリカゲル(新越化成工業社製 シリカゲル)1.5gをビン内へ添付し、密栓を施して包装体とした。
[比較例1]
製造例1で得た固形製剤50個を5号規格ビンへ充填し、密栓を施して包装体とした。
【0039】
[試験例1]
実施例1及び比較例1で得られた包装体を40℃で6箇月間保存した後に、そのビン内部に、固形製剤由来の生臭い臭いを有する状態となっているかどうかについて、評価を行なった。臭いは、製造直後と40℃−6箇月保存後について、6名のパネラーによる官能試験にて評価を行なった。評価基準としては以下の4段階の基準を用い、それぞれの評価を下したパネラーの人数を記録した。
1:不快な臭いが強く臭う。
2:不快な臭いがやや臭う。
3:ほとんど臭わない。
4:全く臭わない。
この結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例1では、製造直後から40℃−6箇月後に至るまで、6人のパネラー全員が「4:全く臭わない」と評価をした。すなわち、実施例1では、高温保存による臭いの変化は特に生じなかった。比較例1では、製造直後には6人全員が全く臭わないとの評価をしたが、40℃−6箇月保存後には、5人のパネラーが「1:不快な臭いが強く臭う」と評価し、1人のパネラーが「2:不快な臭いがやや臭う」と評価し、「3:ほとんど臭わない」又は「4:全く臭わない」と評価したパネラーはいなかった。すなわち、比較例1では高温の長期保存によって、不快な臭いが認められた。この不快な臭いは、ビンのフタを開封して、その内部の気体を入れ替えても、フタをして一定時間経過後にその臭いを評価してみると、繰り返し何度でも同様に不快な臭いが感じられた。したがって、密封したビンの内部に一時的に臭気が蓄積されていただけではなく、固体製剤そのものに何らかの変化が生じていたものと考えられる。
【0042】
[製造例]
アデノシン5´‐三リン酸二ナトリウム600g、チアミンジスルフィド240g、塩酸ピリドキシン240g、リボフラビン15g、シアノコバラミン0.6g、ヒドロキシプロピルセルロース240g、硬化油300g、結晶セルロース3719.4g、カルメロース600gを混合し、これにエタノール1000gを加え、造粒、乾燥、整粒し、これにステアリン酸マグネシウム45gを加え打錠用顆粒とした。この打錠用顆粒を圧縮成形し、1錠200mg(φ8mm)の素錠を得た。
この素錠に、精製水2400g、メタクリル酸コポリマーLD410.1g、タルク123g、クエン酸トリエチル61.5g、酸化チタン5.4g、黄色三二酸化鉄0.9gを溶解、分散したフィルムコーティング液を通気型コーティング機(ドリアコータDRC−650DS型 株式会社パウレック)を用いてフィルムコーティングし、1錠220mgのフィルムコーティング錠とした。上記固形製剤90個を10号規格ビンに充填し、さらに錠剤型シリカゲル(新越化成工業社製 シリカゲル)2gを添付し密栓を施し本発明の固形製剤の包装体を得た。
この固形製剤の包装体は、40℃−6箇月保存した後にも不快な臭いは認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、アデノシン5´‐三リン酸を含有し、高温・長期保存条件下でも不快な臭いが抑制された商品価値の高い固形製剤を提供するものである。アデノシン5´‐三リン酸を含有する医薬は、多岐に渡る疾患の予防・治療や、症状の改善等に有用であり、本発明はこのような有用な医薬を安定に提供することを可能とする。本発明による固形製剤を使用すれば、高温で長期間の保存や使用が可能となり、医薬品産業において極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤と乾燥剤を密閉系で保存することを特徴とする、固形製剤由来の臭いの消臭方法。
【請求項2】
アデノシン5´‐三リン酸を含有する固形製剤並びに乾燥剤が密閉系に含まれてなることを特徴とする、固形製剤由来の臭いが消臭された包装体。

【公開番号】特開2009−155238(P2009−155238A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333548(P2007−333548)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】