説明

アドホック通信機能を有する無線アクセスポイント

【課題】 有線LAN側の通信状態の異常を検知した場合に、アドホック通信手段により他無線アクセスポイントとの間でパケットデータを中継する。
【解決手段】 異常検知部17が有線LAN5側の通信状態の異常を検知した場合に、アドホックモード通信制御部14は、自無線アクセスポイント1に帰属している無線LAN端末から受信したパケットデータを、有線LAN5を介さないアドホック通信手段により他無線アクセスポイントへ中継し、他無線アクセスポイントから受信した自無線アクセスポイントに帰属している無線LAN端末宛のパケットデータを当該無線LAN端末へ中継する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有線LAN(Local Area Network)に接続され、自無線アクセスポイントに帰属している無線LAN端末と前記有線LANと無線LAN端末との間で、データを中継する無線アクセスポイントに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANシステムにおいて、無線LAN端末は、無線アクセスポイントを介して有線LANと接続するIEEE802.11に準拠するインフラストラクチャモード(以下、インフラモードと略す)による通信方式が一般的であった。
【0003】
このインフラモードによる通信方式の場合、無線LAN端末間で通信する場合も、無線アクセスポイントおよび有線LANを介してデータを授受するので、有線LAN側に異常があった場合、または有線LAN側のトラヒックが逼迫している場合、通信が出来ない、またはスループットが低下するという欠点があった。
【0004】
この欠点を改善する技術として、有線LAN側のトラヒック状況に応じて、IEEE802.11で規定されている無線LAN規格の内、無線アクセスポイントの介在なしに無線LAN端末間で直接通信するアドホックモードによる無線通信を活用する技術がある(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、各無線LAN端末はインフラモードとアドホックモードの両方の通信方式に対応し、適宜、両モードを切替える必要がある。このため、無線LAN端末は、インフラモードとアドホックモードの両方の通信方式に対応した高機能な端末に限定され、インフラモードしか有さない一般的な無線LAN端末には効果が無いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−277919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、有線LAN側に異常またはトラヒックの逼迫が発生した場合に、無線LAN端末とはインフラモードによる無線通信を実行しつつ、他の無線アクセスポイントとはアドホックモードによる無線通信を実行できる無線アクセスポイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の発明は、有線LANに接続され前記有線LANと無線LAN端末との間でデータを中継する無線アクセスポイントにおいて、前記有線LAN側の通信状態の異常を検知する異常検知手段と、他無線アクセスポイントと前記有線LANを介さないアドホックモードによる無線通信を実行するアドホック通信手段と、を有し、前記異常検知手段が前記有線LAN側の通信状態の異常を検知した場合に、自無線アクセスポイントに帰属している無線LAN端末から受信したパケットデータを前記アドホック通信手段により他無線アクセスポイントへ中継し、他無線アクセスポイントから受信したパケットデータが自無線アクセスポイントに帰属している無線LAN端末宛であったならば当該パケットデータを当該無線LAN端末へ中継し、他無線アクセスポイントから受信したパケットデータが自無線アクセスポイントに帰属している無線LAN端末宛でないならば前記パケットデータの送信元以外の他無線アクセスポイントへ当該パケットデータを中継することを特徴とする。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明の無線アクセスポイントにおいて、VoIP通信に係る送信元または送信先のIPアドレスを内線番号と対応付けて登録するIPアドレス登録手段と、VoIP通信に係る呼制御を実行する呼制御手段をさらに有し、前記異常検知手段が前記有線LAN側の通信状態の異常を検知している状態で、自無線アクセスポイントに帰属している無線LAN端末からVoIP通信の呼制御に係るパケットデータを受信した場合に、前記呼制御手段は前記無線LAN端末との間でVoIP通信に係る呼制御を実行し、前記IPアドレス登録手段を参照して通信相手の内線番号に対応するIPアドレスを前記無線LAN端末に通知することを特徴とするアドホック通信機能を有する。
【0010】
さらに、第3の発明は、第2の発明の無線アクセスポイントにおいて、前記異常検知手段が前記有線LAN側の通信状態の異常を検知している状態で、自無線アクセスポイントに帰属している無線LAN端末からVoIP通信の呼制御に係るパケットデータを受信した場合に、前記IPアドレス登録手段に登録されている送信元または送信先に係るパケットデータを優先して中継することを特徴とする。
【0011】
さらに、第4の発明は、第1から3の発明のいずれかの無線アクセスポイントにおいて、前記異常検知手段は、前記有線LANに接続された所定の装置へ応答を要求するキープアライブコマンドを定期的に送信し、前記装置から前記キープアライブコマンドに対する応答を一定時間内に受信しない場合に異常と判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、有線LAN側に異常またはトラヒックの逼迫が発生した場合に、インフラモードしか有さない一般の無線LAN端末であっても、当該有線LANを迂回して中継できる無線アクセスポイントを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】・・・全体構成図
【図2】・・・本発明による無線アクセスポイントの内部ブロック構成図
【図3】・・・本発明による無線アクセスポイントの動作フローチャート
【符号の説明】
【0014】
1・・・本発明による無線アクセスポイント
2・・・無線LAN電話端末
3・・・無線アクセスポイントの電波到達範囲
4・・・無線LAN電話端末と無線アクセスポイント間の無線電波
5・・・有線LAN
6・・・ゲートウェイ/ルータ
7・・・WAN
8・・・SIPサーバ
9・・・無線アクセスポイントと無線アクセスポイント間の無線電波
11・・・中継制御部
12・・・有線LAN通信部
13・・・インフラモード通信制御部
14・・・アドホックモード通信制御部
15・・・無線通信部
16・・・アンテナ
17・・・異常検知部
18・・・SIP呼制御部
19・・・IPアドレス登録部
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態として、VoIP(Voice over IP)通信に係るSIP(Session Initiation Protocol)対応の無線LAN電話端末を収容する無線アクセスポイントを例に、図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本装置の全体構成図であって、1は本発明による無線アクセスポイント(以下、本装置と略す)、2は無線LAN電話端末、3は無線アクセスポイント1の電波到達範囲、4は無線LAN電話端末2と無線アクセスポイント1間の無線電波、5は有線LAN、6はゲートウェイ/ルータ、7はWAN(Wide Area Network)、8はSIPサーバ、9は無線アクセスポイント1aと無線アクセスポイント1b間の無線電波である。
【0017】
本装置1aは無線LAN電話端末2aを収容し、有線LAN5に接続されている。同様に、本装置1bは無線LAN電話端末2bを収容し、有線LAN5に接続されている。ここで、無線電波4による無線通信は、例えばIEEE802.11で規定されている無線LAN規格の内、無線アクセスポイントが介在するインフラモードによる無線通信規格に準拠している。
【0018】
例えば、無線LAN電話端末2aから無線LAN電話端末2bへ発信する場合、またはゲートウェイ/ルータ6を介してWAN側へ発信する場合、本装置1aは、無線電波4aおよび有線LAN5を介して、無線LAN電話端末2aとSIPサーバ8との間の呼制御データを中継し、本装置1bは、無線電波4bおよび有線LAN5を介して、無線LAN電話端末2bとSIPサーバ8との間の呼制御データを中継する。そして、SIP呼制御が確立し通話中になると、本装置1aおよび本装置1bは、有線LAN5を介して、無線LAN電話端末2aと無線LAN電話端末2bまたはWAN7との間の音声データをRTP(Real−time Transport Protocol)パケットで相互に中継する。
【0019】
即ち、本装置1は、有線LAN5側に異常またはスループットが非常に低下するような事態が発生していない正常な状態では、一般的な無線アクセスポイントとして、インフラモードによる無線通信で、無線LAN電話端末2と有線LAN5との間でデータを中継する。
【0020】
しかし、有線LAN5側に異常またはトラヒックの逼迫等の、有線LAN5を介した通信が出来ないまたはスループットが非常に低下するような事態が発生した場合、またはLAN全体の通信状況を監視制御するLAN制御装置(図示せず)から有線LAN5を迂回する指示があった場合、本装置1は有線LAN5を介したデータ中継を停止する。
【0021】
そして、本装置1aと本装置1bは、直接、無線電波9による無線通信で、各無線LAN電話端末2からのデータを相互に中継する。ここで、無線電波9による無線通信は、例えばIEEE802.11で規定されている無線LAN規格の内、無線アクセスポイントの介在なしに無線LAN端末間で直接通信するアドホックモードによる無線通信規格に準拠している。
【0022】
なお、本装置1aと本装置1bは、IPアドレスを持っており、お互いの電波到達範囲3の内に存在していると共に、相互通信する際は、送信先をIPアドレスで直接指定するアドホックモードによる無線通信を実行する無線LAN端末として動作する。
【0023】
図2は、本装置1の内部ブロック構成図であって、11は中継制御部、12は有線LAN通信部、13はインフラモード通信制御部、14はアドホックモード通信制御部、15は無線通信部、16はアンテナ、17は異常検知部、18はSIP呼制御部、19はIPアドレス登録部である。
【0024】
中継制御部11は、有線LAN通信部12を介して有線LAN5とデータを授受すると共に、インフラモード通信制御部13またはアドホックモード通信制御部14のいずれかを選択して、無線通信部15とデータを授受する。そして、有線LAN通信部12および無線通信部15との間で授受したデータを相互に中継する。
【0025】
インフラモード通信制御部13は、無線LAN電話端末2とのインフラモードによる通信を無線通信部15に実行させる制御手段であり、通常はこのインフラモードによる通信が稼動している。
【0026】
アドホックモード通信制御部14は、他の無線アクセスポイントとのアドホックモードによる通信を無線通信部15に実行させる制御手段であり、有線LAN5側に異常が発生した場合等で、中継制御部11により起動される。
【0027】
無線通信部15は、インフラモードまたはアドホックモードによる無線通信手段であり、インフラモード通信制御部13またはアドホックモード通信制御部14を介して、中継制御部11からのデータを無線信号に変換して送信し、受信した無線信号を元のデータに復元して中継制御部11に送る。
【0028】
異常検知部17は、有線LAN5側の異常を監視し、異常を検知した場合に、異常を中継制御部11へ通知する手段である。異常検知部17が有線LAN5側の異常を監視する具体的な手段は、例えば、有線LAN5に接続されたSIPサーバ8へ応答を要求するキープアライブコマンドを定期的に送信し、SIPサーバ8から送信したキープアライブコマンドに対する応答信号の受信を監視し、一定時間内に応答信号を受信したか否かを監視する。そして、一定時間内に応答信号を受信しない場合は、SIPサーバ8または有線LAN5に異常が発生していると判定するようにすればよい。
【0029】
SIP呼制御部18は、無線LAN電話端末2との間でSIPプロトコルに係る呼制御を実行する手段であり、アドホックモードが起動されている場合に稼動し、SIPサーバ8が実行すべき処理を代行する。
【0030】
IPアドレス登録部19は、本装置1のIPアドレスおよび通信相手のIPアドレスを登録しておく手段であり、登録されているIPアドレスは、SIP呼制御部18が無線LAN電話端末2との間でSIPプロトコルに係る呼制御を実行する際に必要となる。具体的には、SIPサーバ8と同様に、内線番号をIPアドレスに変換し、通信相手の内線番号に対応するIPアドレスを無線LAN電話端末2に通知する際に、SIP呼制御部18は、このIPアドレス登録部19を参照する。
【0031】
また、IPアドレス登録部19は、有線LAN5を介した通信が出来ない、またはスループットが非常に低下するような事態が発生し、有線LAN5より帯域が狭い無線電波9を使用した、アドホックモードによる無線通信でパケットデータを中継する際に、優先して中継すべきパケットデータの優先すべき送信元または送信先のIPアドレスを登録しておく手段でもある。即ち、受信したパケットデータの送信元または送信先が、IPアドレス登録部19に優先すべき送信元または送信先として登録されていた場合、中継処理部11は、そのパケットデータを優先的に中継する。
【0032】
なお、IPアドレス登録部19に登録された全てのIPアドレスを優先とはせず、優先すべき送信元または送信先であることを示す優先情報(ビットまたはフラグ)が登録されていた場合に、優先して中継するようにしてもよい。
【0033】
図3は、本装置1の動作フローチャートである。以下、フローチャートを用いて、本装置1の動作を詳しく説明する。
【0034】
まず、有線LAN5を介した通信が出来ない、またはスループットが非常に低下するような事態が発生していない、通常の状態における本装置1の動作フローについて説明する。
【0035】
本フローは、電源が投入された状態でスタートする(S300)。中継制御部11は、電源が投入されるとインフラモードによる無線通信を起動し、異常検知部17がLAN側の異常を検知しているか否か、またはLAN制御装置等からのアドホックモードへの移行を指示するコマンドを受信したか否かを監視し、LAN側に異常が無く(S310,NO)またはアドホックモードへの移行を指示するコマンドも受信しない場合(S311,NO)、S320のYES、S321のNO、S322のNO、S323およびS330のNOを経由して、S340へ進む。
【0036】
そして、有線LAN5を経由する通常のデータ中継を実行するために、本装置1に帰属している無線LAN電話端末2および有線LAN5からのパケットデータの受信を監視する(S340,S350)。
【0037】
無線LAN電話端末2からインフラモードによる無線通信でパケットデータを受信した場合は(S340,YES)、S341をNO側に抜けてS342へ進み、受信したデータを有線LAN5へ中継し(S342)、S310に戻る。なお、S342において、受信したデータを、本装置1に帰属している他の無線LAN電話端末2同士で折り返し中継することも可能だが、本発明の本筋ではないので、図では省略している。
【0038】
有線LAN5からパケットデータを受信し(S350,YES)、受信したデータが本装置1に帰属している無線LAN電話端末2宛てだった場合は(S351,YES)、受信したパケットデータをインフラモードによる無線通信で、無線LAN電話端末2へ中継し(S352)、S310に戻る。なお、S350でNOなら何もしないでS310に戻る。
【0039】
次に、有線LAN5を介した通信が出来ない、またはスループットが非常に低下するような異常事態が発生した状態における、本装置1の動作フローについて説明する。
【0040】
LAN側の異常を異常検知部17が検知した場合(S310,YES)またはLAN制御装置等からアドホックモードへの移行を指示するコマンドを受信した場合(S311,YES)、中継制御部11は、有線LAN5を経由するパケットデータの中継を停止し、アドホックモードによる無線通信を制御するアドホックモード通信制御部14を起動する(S312)。
【0041】
このアドホックモードによる無線通信が起動されると、無線通信部15は、無線LAN電話端末2とのインフラモードによる無線通信を継続しつつ、他の無線アクセスポイントとの間でアドホックモードによる無線通信を実行する。
【0042】
異常状態が継続している間(S320,NO)、他の無線アクセスポイントからのアドホックモードによる無線通信でパケットデータを受信したか否か(S330)、無線LAN電話端末2からインフラモードによる無線通信でパケットデータを受信したか否か(S340)を監視し、他の無線アクセスポイントからパケットデータを受信してなく(S330,NO)、無線LAN電話端末2からもパケットデータを受信していない場合(S340,NO)、S350のNOに抜け、何もしないでS310に戻る。
【0043】
他の無線アクセスポイントからアドホックモードによる無線通信でパケットデータを受信した場合(S330,YES)、受信したパケットデータが優先データか否かを判定し、優先データでなければ(S331,NO)、中継を拒否し(S332)、S310に戻る。
【0044】
ここで、優先データか否かの判定は、当該パケットデータの送信元または送信先がIPアドレス登録部19に登録されている宛先か否かにより判定する。なお、S332において、中継を拒否する際に、拒否理由を付して当該パケットデータの送信元へ中継不可を通知するようにしてもよい。
【0045】
受信したパケットデータが優先データであった場合(S331,YES)、本装置1に帰属する無線LAN電話端末2宛てのデータか否かを判定し(S333)、本装置1に帰属する無線LAN電話端末2宛てでなければ(S333,NO)、当該データをそのまま他の無線アクセスポイントへ、アドホックモードによる無線通信で中継し(S334)、S310に戻る。このS334によるデータ中継により、複数の本装置1を経由する、離れた無線LAN電話端末2間の通信が可能となる。
【0046】
本装置1に帰属する無線LAN電話端末2宛てであった場合(S333,YES)、受信したパケットデータがSIP呼制御に係るデータ(例えばInvite)であるか否かを判定し、SIP呼制御に係らないデータであれば(S335,NO)、S337へ進む。SIP呼制御に係るデータであれば(S335,YES)、SIP呼制御に係る処理を実行してから(S336)、S337へ進む。
【0047】
ここで、SIP呼制御に係る処理(S336)において、発信元および発信先の内線番号はIPアドレスに変換され、さらに、その変換されたIPアドレスは通信相手のIPアドレスとして発信元および発信先の双方に通知される。そして、発信元および発信先の無線LAN端末2は、通知された通信相手のIPアドレスを使用して両端末間で通話音声データをRTPパケットで相互に通信する。なお、それ以外のSIP呼制御に係る処理は、本発明の本筋ではないので詳細な説明を省く。
【0048】
S337では、受信したSIP呼制御に係るデータ(メッセージとも言う)に対する、S336で処理したSIP応答メッセージ(例えば200OK)、またはSIP呼制御に係らない受信パケットデータ(例えば、音声データのRTPパケット)を、本装置1に帰属する無線LAN電話端末2へ中継し、S310に戻る。
【0049】
アドホックモードが起動された状態で、インフラモードによる無線通信でパケットデータを無線LAN電話端末2から受信した場合(S340,YES)、S341をYES側に抜けてS343へ進み、中継制御部11は、受信したパケットデータが優先データか否かを判定する(S343)。優先データでなければ(S343,NO)、中継を拒否し(S344)、S310に戻る。
【0050】
ここで、優先データか否かの判定(S343)および中継拒否(S344)の内容は、S331およびS332で説明した内容と同じであり、説明を繰り返さない。
【0051】
受信したパケットデータが優先データで(S343,YES)、SIP呼制御に係るデータでなければ(S345,NO)、S347へそのまま進み、SIP呼制御に係るデータ(例えばInvite)であった場合(S345,YES)、SIP呼制御に係る処理を実行し、SIP応答メッセージを生成してから(S346)、S347へ進む。
【0052】
S347では、S346で処理して生成したSIP応答メッセージ(例えば200OK)、または受信したパケットデータのまま(例えば、音声データのRTP音声パケット)、本装置1の電波到達範囲3内に存在する他の無線アクセスポイント(例えば、本装置1aに対する本装置1b)へ、アドホックモードによる無線通信でデータを中継し、S310に戻る。
【0053】
以上説明した通り、S330〜S337およびS340〜S347のフローにより、他の無線アクセスポイントに帰属している所定の無線LAN電話端末2と本装置1に帰属している無線LAN電話端末2との間のデータ中継を、有線LAN5を介さないで相互に中継している。
【0054】
これにより、有線LAN側に異常またはトラヒックの逼迫が発生した場合であっても、無線アクセスポイント(本装置1)間のアドホックモードによる無線通信を活用し、本装置1に帰属する無線LAN端末同士の発着信および通話が可能となる。
【0055】
なお、S336およびS346におけるSIP呼制御処理は、SIPサーバ8が実行すべき処理を、本装置1のSIP呼制御部18が代行するものであり、また、S337における無線LAN電話端末2と本装置1との間のデータ中継はインフラモードによる無線通信のままである。従って、無線LAN電話端末2は、アドホックモードによる無線通信機能を有さない、一般的な無線LAN電話端末でよい。
【0056】
次に、アドホックモードから有線LAN5を介した通信を再開し、通常のインフラモードに復帰するフローについて説明する。S312でアドホックモードを起動した後、中継制御部11は、異常検知部17が検知するLAN側の正常性を監視する(S320)。
【0057】
LAN側が正常な状態であることを検知し(S320,YES)、S311のYESにおいてアドホックモードへの移行を指示したLAN制御装置等からのコマンドをキャンセルする、インフラモード復帰を指示するコマンドを受信した場合(S321,YES)、またはアドホックモードが強制的に起動された状態でない場合(S322,NO)、アドホックモードを停止する(S323)。
【0058】
これにより、先に説明した、S342およびS352による、有線LAN5を介するインフラモードによるデータ中継を再開する。
【0059】
なお、S322における、アドホックモードが強制的に起動された状態とは、S311でLAN制御装置等から受信したアドホックモードへの移行を指示するコマンドが有効な状態が継続している場合である。
【0060】
以上説明した通り、本発明によれば、有線LAN側に異常またはトラヒックの逼迫が発生した場合に、インフラモードしか有さない一般の無線LAN端末であっても、当該有線LANを迂回してデータ中継できる無線アクセスポイントを提供できる。
【0061】
しかも、アドホックモードによる無線通信に必要となる通信元または通信先のIPアドレスの登録手段を、異常時におけるパケットデータの優先中継処理に利用できるので、通常より帯域が狭い、またはスループットが低い、アドホックモードによる無線通信を有効に活用できる。
【0062】
また、LAN制御装置等からの有線LAN5を迂回する指示に応じて、本装置1は有線LAN5を介したデータ中継を停止し、アドホックモードによる中継に切り替えるので、例えば、有線LAN側のメンテナンスの際にも、無線LAN端末間の通信が可能となり便利である。
【0063】
ところで、以上の実施形態において、SIP対応の無線LAN電話端末を収容する無線アクセスポイントを例に、本装置1を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、無線LAN電話端末の呼制御プロトコルは、SIP以外であってもよいし(例えば、H323等)、無線LAN端末は、電話端末以外に、一般的なデータ端末であってもよい(例えば、携帯型のパーソナルコンピュータ等)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有線LANに接続され前記有線LANと無線LAN端末との間でデータを中継する無線アクセスポイントにおいて、
前記有線LAN側の通信状態の異常を検知する異常検知手段と、他無線アクセスポイントと前記有線LANを介さないアドホックモードによる無線通信を実行するアドホック通信手段と、を有し、
前記異常検知手段が前記有線LAN側の通信状態の異常を検知した場合に、
自無線アクセスポイントに帰属している無線LAN端末から受信したパケットデータを前記アドホック通信手段により他無線アクセスポイントへ中継し、他無線アクセスポイントから受信したパケットデータが自無線アクセスポイントに帰属している無線LAN端末宛であったならば当該パケットデータを当該無線LAN端末へ中継し、他無線アクセスポイントから受信したパケットデータが自無線アクセスポイントに帰属している無線LAN端末宛でないならば前記パケットデータの送信元以外の他無線アクセスポイントへ当該パケットデータを中継することを特徴とするアドホック通信機能を有する無線アクセスポイント。
【請求項2】
請求項1に記載の無線アクセスポイントにおいて、
VoIP通信に係る送信元または送信先のIPアドレスを内線番号と対応付けて登録するIPアドレス登録手段と、VoIP通信に係る呼制御を実行する呼制御手段をさらに有し、
前記異常検知手段が前記有線LAN側の通信状態の異常を検知している状態で、自無線アクセスポイントに帰属している無線LAN端末からVoIP通信の呼制御に係るパケットデータを受信した場合に、
前記呼制御手段は前記無線LAN端末との間でVoIP通信に係る呼制御を実行し、前記IPアドレス登録手段を参照して通信相手の内線番号に対応するIPアドレスを前記無線LAN端末に通知することを特徴とするアドホック通信機能を有する無線アクセスポイント。
【請求項3】
請求項2に記載の無線アクセスポイントにおいて、
前記異常検知手段が前記有線LAN側の通信状態の異常を検知している状態で、自無線アクセスポイントに帰属している無線LAN端末からVoIP通信の呼制御に係るパケットデータを受信した場合に、
前記IPアドレス登録手段に登録されている送信元または送信先に係るパケットデータを優先して中継することを特徴とするアドホック通信機能を有する無線アクセスポイント。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の無線アクセスポイントにおいて、
前記異常検知手段は、前記有線LANに接続された所定の装置へ応答を要求するキープアライブコマンドを定期的に送信し、前記装置から前記キープアライブコマンドに対する応答を一定時間内に受信しない場合に異常と判定することを特徴とするアドホック通信機能を有する無線アクセスポイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−234285(P2011−234285A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105193(P2010−105193)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000134707)株式会社ナカヨ通信機 (522)
【Fターム(参考)】