アナターゼ型酸化チタン微粒子及びアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法
【課題】吸収可能な光の自由度が高いアナターゼ型酸化チタン微粒子及びアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によるアナターゼ型酸化チタン微粒子は、3.87eV≦Eg≦4.13eVのバンドギャップEgを有する。このアナターゼ型酸化チタン微粒子は、蒸留水、アンモニア水、硝酸水溶液などの液体中にルチル型酸化チタンからなる原料を載置して、0.25J/cm2以上のレーザーフルエンスを有するパルスレーザー光によるパルスレーザーアブレーションを行うことによって生成される。
【解決手段】本発明によるアナターゼ型酸化チタン微粒子は、3.87eV≦Eg≦4.13eVのバンドギャップEgを有する。このアナターゼ型酸化チタン微粒子は、蒸留水、アンモニア水、硝酸水溶液などの液体中にルチル型酸化チタンからなる原料を載置して、0.25J/cm2以上のレーザーフルエンスを有するパルスレーザー光によるパルスレーザーアブレーションを行うことによって生成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒等に用いられるアナターゼ型酸化チタン微粒子及びアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ガラス製品やプラスチック製品などの表面に形成することによって、汚れをセルフクリーニングすることが可能な光触媒である酸化チタンやその製造方法の研究が盛んに行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
酸化チタンには、ルチル型、アナターゼ型及びブルッカイト型の結晶構造があることが知られている。これらのうち、アナターゼ型酸化チタンは、光触媒として最もよく機能することが知られている。アナターゼ型酸化チタンは、約3.2eVのバンドギャップを有する。従って、従来のアナターゼ型酸化チタンでは、約3.2eV以上の光を吸収することにより光触媒として機能していた。
【特許文献1】特開2006−128079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のアナターゼ型酸化チタンを光触媒として適用する場合、約3.2eV以上の光を吸収しないようにすることができず、吸収可能な光の自由度が低いといった課題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、吸収可能な光の自由度が高いアナターゼ型酸化チタン微粒子及びアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、バンドギャップEgが、
3.87eV≦Eg≦4.13eV
であることを特徴とするアナターゼ型酸化チタン微粒子である。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、液体中のルチル型酸化チタンからなる原料にパルスレーザー光を照射することにより生成されたことを特徴とする請求項1に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子である。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、直径が20nm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子である。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、液体中に載置されたルチル型酸化チタン単結晶からなる原料にパルスレーザー光を照射する工程を備え、前記原料に照射されるレーザーフルエンスfが、
f≧0.25J/cm2
であることを特徴とするアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法である。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、レーザーフルエンスfの大きさに基づいて生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整することを特徴とする請求項4に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法である。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、
log10Y=a×f+b
a,b:定数
に基づいて、パルスレーザー光1パルスで生成されるチタンイオンの量Yを制御することにより、アナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整することを特徴とする請求項5に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法である。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、原料と液体の液面との距離Dに基づいて生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整することを特徴とする請求項4に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法である。
【0013】
また、請求項8に記載の発明は、
log10X=c×D+A
c:定数
A:誤差
に基づいて、単位レーザーフルエンス(=1J/cm2)当たりで生成されるチタンイオンの量Xを制御することにより、アナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整することを特徴とする請求項7に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法である。
【0014】
また、請求項9に記載の発明は、前記液体は、蒸留水であることを特徴とする請求項4〜請求項8のいずれか1項に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法である。
【0015】
また、請求項10に記載の発明は、前記液体は、アンモニア水であることを特徴とする請求項4〜請求項8のいずれか1項に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるアナターゼ型酸化チタン微粒子は3.87eV〜4.13eVのバンドギャップを有する。これにより、3.2eV〜3.87eVの光を吸収させないことができるし、不純物のドープにより3.2eV〜3.87eVの光を吸収させることもできる。これにより、吸収可能な光の自由度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明による一実施形態を説明する。
【0018】
(アナターゼ型酸化チタン微粒子の製造装置)
約3.87eV〜約4.13eVのバンドギャップEgを有するアナターゼ型酸化チタン微粒子を製造するためのパルスレーザーアブレーション(以下、PLA)装置について、図面を参照して説明する。図1は、アナターゼ型酸化チタン微粒子を製造するためのPLA装置の概略図である。
【0019】
図1に示すように、PLA装置1は、パルスレーザー部2と、反射鏡3と、集光レンズ4と、ビーカー5と、制御部6とを備えている。
【0020】
パルスレーザー部2は、約1064nmを基本波長とするパルスレーザー光を1秒当たり10パルス出射可能なNd:YAGレーザーである。ここで、原料Rとなるルチル型酸化チタン単結晶のバンドギャップは、3.0eV(波長:413nm)である。従って、第4高調波である約266nmの波長を有するパルスレーザー光Puを使用する。尚、第2高調波である約532nmの波長を有するレーザー光はルチル型の酸化チタン単結晶を透過することが知られている。パルスレーザー部2は、出射されるパルスレーザー光Puの出力P等が制御部6により制御される。
【0021】
反射鏡3は、パルスレーザー光Puを反射してビーカー5内の原料Rへとパルスレーザー光Puを導くためのものである。集光レンズ4は、原料に照射されるパルスレーザー光Puの照射面積を制御するためのものである。ビーカー5は、ポリプロピレンからなるものである。ビーカー5には、蒸留水等の液体とともにスライスされたルチル型酸化チタン単結晶からなる原料Rが載置される。
【0022】
(酸化チタン微粒子の製造方法)
次に、PLA法による酸化チタン微粒子の製造方法について説明する。
【0023】
まず、数mm、好ましくは約1mmの厚みにスライスしたルチル型酸化チタン単結晶からなる原料Rをビーカー5に満たされた、例えば、約10ml〜約50mlの液体中に載置する。尚、液体としては、蒸留水、アンモニア水、硝酸水溶液等を適用することができる。液体の容量は特に限定されるものではないが、液面から原料Rまでの距離D(単位mm)が約30mm以下になるような容量が好ましい。
【0024】
次に、パルスレーザー光Puを集光レンズ4で集光して原料Rに数十分照射する。ここで、パルスレーザー光1パルス当たりのレーザーフルエンスfとは、パルスレーザー光1パルスの出力からビーカー5の液体に達するまでの損失を削除し、その値を原料上のパルスレーザー光のスポットサイズで割った単位面積当たりのレーザー強度のことである。具体的には、レーザーフルエンスfは、
f=(P×Lm×L)/S
P :出射されるパルスレーザー光1パルスの出力(単位:J)
Lm:反射鏡による損失
L :集光レンズによる損失
S :原料上のパルスレーザー光のスポットサイズ(単位:cm2)
である。ここで、
f≧0.25J/cm2
であることが好ましい。
【0025】
このようにして、約20nm以下の直径を有し、約3.87eV〜約4.13eVのバンドギャップEgを有するアナターゼ型酸化チタン微粒子を液体中に生成する。
【0026】
ここで、液体中に生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量は、パルスレーザー光Puのレーザーフルエンスfや原料Rから液体の液面までの距離D等によって調整する。以下、具体的に述べる。
【0027】
パルスレーザー光Puのレーザーフルエンスfによりアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整する場合、以下の式に基づいて液体中のチタンイオンの量の制御が行われる。
【0028】
log10Y=a×f+b
a、b:定数
ここで、定数a、bを具体的にした一例は、
f≦0.4J/cm2の場合
log10Y=5.15×f−2.87 ・・・(1)
f≧0.4J/cm2の場合
log10Y=2.45×f−1.80 ・・・(2)
である。尚、Yは、パルスレーザー光1パルスで単位体積当たりの液体中に生成されるチタンイオンの量であって、単位はng(ナノグラム)/shotである。このチタンイオンの量が増加すると、生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量も増加する。この関係を用いて、レーザーフルエンスfによりアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整する。
【0029】
また、原料と液体の液面との距離Dによりアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整する場合、以下の式に基づいて、液体中のチタンイオンの量の制御が行われる。
【0030】
log10X=−c×D+A
c:定数
A:誤差
ここで、定数c、誤差Aを具体的にした一例は、
log10X=−0.0345×D+A
(−0.34≦A≦0.05) ・・(3)
である。尚、Xは、パルスレーザー光1パルスによる単位レーザーフルエンス(=1J/cm2)当たりで生成されるチタンイオンの量であって、単位はng・cm2/Jである。このチタンイオンの量が増加すると、生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量も増加する。この関係を用いて、原料と液面との距離Dによりアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整する。
【0031】
上述したように本発明によるアナターゼ型酸化チタン微粒子は、約3.87eV〜約4.13eVのバンドギャップを有する。本来、アナターゼ型酸化チタンは、約3.2eVのバンドギャップを有する。従って、本発明によるアナターゼ型酸化チタン微粒子は、量子サイズ効果によりバンドギャップが大きくなっていることがわかる。これにより、本発明によるアナターゼ型酸化チタン微粒子は、従来のアナターゼ型酸化チタンよりも短波長の光(約3.2eV以上の光)によって光触媒として機能させることができる。また、本発明によるアナターゼ型酸化チタン微粒子は、不純物をドープすることにより約3.2eV〜約3.87eVの光をも吸収して光触媒として機能するので、従来のアナターゼ型酸化チタンよりも光触媒として機能させるための光の自由度を向上させることができる。
【0032】
また、蒸留水中またはアンモニア水中でPLAを行うことにより生成されたアナターゼ型酸化チタン微粒子は、可視光よりも大きいバンドギャップを有するにも関わらず、可視光により光触媒として機能させることができる。特に、アンモニア水中でPLAを行った場合、光触媒としてより良好なアナターゼ型酸化チタン微粒子を得ることができる。
【0033】
また、レーザーフルエンス及び原料と液面との距離により作製されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整できるので、所望の量のアナターゼ型酸化チタン微粒子を容易に得ることができる。
【0034】
次に、上述のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法に関して行った各実験について説明する。
【0035】
(レーザーフルエンスとチタンイオンの量の関係)
まず、パルスレーザー光のレーザーフルエンスf(単位:J/cm2)と生成されるチタンイオンの量との関係を調べた実験について説明する。尚、本実験では、原料上のパルスレーザー光のスポットサイズSをS=3.1mm2とした。スライスされたルチル型酸化チタン単結晶からなる原料をpH1.0の10mlの硝酸水溶液中に載置した状態でPLAを行った。
【0036】
パルスレーザー光の出力Pを約2mJ〜約20mJと変化させて、チタンイオンの量をICP(誘導結合プラズマ)質量分析法により計測した。計測したチタンイオンの量からパルスレーザー光1パルス当たりで生成される単位体積の液体中のチタンイオンの量Yを算出した。結果を図2に示す。図2の縦軸は、パルスレーザー光1パルスで生成される単位体積の液体中のチタンイオンの量Y(ng/ml)を示し、横軸はレーザーフルエンスf(J/cm2)を示す。
【0037】
図2に示すように、チタンイオンを生成するためのレーザーフルエンスfに閾値があることがわかる。具体的には、レーザーフルエンスfを約0.25J/cm2以上に設定することによりチタンイオンを生成可能なことがわかる。ここで、酸化チタンを原料として用いて気体中でパルスレーザー堆積法により酸化チタンを成膜する場合、数J/cm2のレーザーフルエンスが必要なことが幾つか報告されている。これらと比較した場合、本発明によるアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法では、非常に小さいレーザーフルエンスにより酸化チタンの生成を可能としていることがわかる。
【0038】
ここで、図2の縦軸をlog10Yに変換したグラフを図3に示す。図3からわかるように、レーザーフルエンスが約0.4J/cm2となる所を境として、各点がそれぞれ異なる直線上に乗ることがわかる。これらの直線をそれぞれ式にすると式(1)及び式(2)となる。この結果、これらの式(1)及び式(2)に基づいてレーザーフルエンスfによりチタンイオンの量Yを制御可能なことがわかる。この結果、チタンイオンの量Yを制御することにより、生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整可能なことがわかる。
【0039】
(液面から原料までの距離とチタンイオンの量の関係)
次に、液面からルチル型酸化チタンの原料までの距離Dと生成されるチタンイオンの量との関係を調べた実験について説明する。
【0040】
本実験では、液面からルチル型酸化チタン単結晶からなる原料までの距離Dを変化させて、PLAを行い、各距離Dで生成されるチタンイオンの量をICP質量分析法により測定した。尚、本実験で設定された各パラメータは、以下の通りである。
【0041】
レーザー出力P 20mJ
スポットサイズS 3.1mm2
液体の温度 30.7℃
また、原料を載置する液体には、pH1.0の硝酸水溶液を用いた。これらの条件の下でPLAを約40分行った。結果を図4に示す。図4の縦軸は、パルスレーザー光1パルスによる単位レーザーフルエンス(=1J/cm2)当たりで生成されるチタンイオンの量X(ng・cm2/J)を示し、横軸は距離Dを示す。
【0042】
図4に示すように、距離Dが大きくなるに連れて、生成されるチタンイオンの量Xが減少することがわかる。ここで、チタンイオンの量Xを介して生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整するためには、チタンイオンの量Xと距離Dとの関係を式にする必要がある。そこで、図4のグラフの縦軸をlog10Xに変換したグラフを作製した。そのグラフを図5に示す。
【0043】
図5からわかるように、各点が略一直線上に乗ることがわかる。図5に示す直線から導いた式が式(3)である。尚、式(3)内の誤差Aの上限(+0.05)は、温度約30.7℃のpH1.0の硫酸水溶液中でPLAを行ったものから導き、誤差Aの下限(−0.34)は、温度約30.7℃のpH0.0の硝酸水溶液中でPLAを行ったものから導いた。このことから、距離Dによってチタンイオンの量Xを制御することができることがわかる。この結果、チタンイオンの量Xを制御して生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量の調整をできることがわかる。
【0044】
次に、上述のアナターゼ型酸化チタン微粒子に関して行った各実験について説明する。
【0045】
(アナターゼ型酸化チタン微粒子のXRD観測)
まず、蒸留水中のルチル型酸化チタン単結晶からなる原料にPLAを行って生成された微粒子をXRD(X線回折)観測した。結果のX線回折データを図6に示す。図6に示すように、かなり弱いが2θ=25.3°、37.8°、48.0°に回折ピークが観測されている。これらの回折ピークは、それぞれアナターゼ型酸化チタンの(101)面、(004)面、(200)面からの回折と帰属できる。このことから、生成された微粒子が、アナターゼ型酸化チタン微粒子であることがわかる。尚、2θ=20°近傍にある大きなブロードのシグナルは微粒子を載置した基板を構成する石英からのものである。
【0046】
(アナターゼ型酸化チタン微粒子のSTM観測)
上述した製造方法に基づいて、液体中のルチル型酸化チタン単結晶からなる原料にPLAを行うことによりアナターゼ型酸化チタン微粒子を含む液体を生成した。その液体をグラファイトの表面に滴下した後、加熱により溶媒を乾燥させた。その結果、グラファイトの表面上に析出したアナターゼ型酸化チタン微粒子をSTM(scanning tunnel microscopy)により観測した。STMにより観測された画像を図7〜図12に示す。尚、画像中の白い粒状のもの及びそれらの集合がアナターゼ型酸化チタン微粒子である。アナターゼ型酸化チタン微粒子は、グラファイトの表面に溶媒とともに滴下した後、加熱により溶媒を乾燥させた状態でSTM観測を行った。
【0047】
図7及び図8は、蒸留水中の原料にPLAを行って生成されたアナターゼ型酸化チタン微粒子の画像である。図7は、約373Kで溶媒を乾燥させたアナターゼ型酸化チタン微粒子(以下、実施例1)の画像であり、図8は、約573Kで溶媒を乾燥させたアナターゼ型酸化チタン微粒子(以下、実施例2)の画像である。
【0048】
図7の円内に示すように、実施例1では、約4nm程度の直径を有するアナターゼ型酸化チタン微粒子が生成されていることがわかる。また、図8に示すように、実施例2では、約10nm〜約20nmの直径を有するアナターゼ型酸化チタン微粒子が多数形成されていることがわかる。これらにより、蒸留水中でのPLAにより量子サイズ効果を充分に得ることができるアナターゼ型酸化チタン微粒子を生成できることがわかる。
【0049】
図9及び図10は、アンモニア水溶液中の原料にPLAを行って生成されたアナターゼ型酸化チタン微粒子の画像である。図9は、約373Kで溶媒を乾燥させたアナターゼ型酸化チタン微粒子(以下、実施例3)の画像であり、図10は、図9の状態から更に約20分間約373Kで加熱した状態でのアナターゼ型酸化チタン微粒子(以下、実施例4)の拡大図ある。
【0050】
図9に示すように、実施例3では、アナターゼ型酸化チタン微粒子の2つの集合が上部に見られるとともに、ステップに沿ってアナターゼ型酸化チタン微粒子が集合しているのがわかる。また、図10に示すように、実施例4では、アナターゼ型酸化チタン微粒子の直径が約1nm〜約2nm程度になっていることがわかる。これらにより、アンモニア水中でのPLAにより量子サイズ効果を充分に得ることができるアナターゼ型酸化チタン微粒子を生成できることがわかる。
【0051】
図11及び図12は、硝酸水溶液中の原料にPLAを行って作製されたアナターゼ型酸化チタン微粒子の画像である。図11及び図12ともに、約373Kで溶媒を乾燥させたアナターゼ型酸化チタン微粒子(以下、それぞれを実施例5及び実施例6)の画像である。
【0052】
また、図11及び図12に示すように、実施例5及び実施例6では、アナターゼ型酸化チタン微粒子の直径が、アンモニア水中で生成されたアナターゼ型酸化チタン微粒子の直径よりも小さいことがわかる。これらにより、硝酸水溶液中でのPLAにより量子サイズ効果を充分に得ることができるアナターゼ型酸化チタン微粒子を生成できることがわかる。
【0053】
(アナターゼ型酸化チタン微粒子の光学的物性)
次に、本発明によるアナターゼ型酸化チタン微粒子のバンドギャップが大きくなっていることを調べるために行った実験について説明する。本実験では、石英上で溶液を乾燥させたアナターゼ型酸化チタンの全反射スペクトル及び拡散反射スペクトルを測定した。全反射スペクトルは、アナターゼ型酸化チタン微粒子に入射光を垂直に入射させ、垂直方向に反射してくる光をプローブ光として測定したスペクトルである。拡散反射スペクトルは、アナターゼ型酸化チタン微粒子に入射光を垂直に入射させ、垂直方向から45°オフした光をプローブ光として測定したスペクトルである。尚、図13〜図18において、a線を本発明の実施例によるものとする。また、比較するために、図13〜図18にルチル型酸化チタンの反射スペクトルをb線として併せて記載した。図13〜図18の横軸は反射された光の波長(nm)を示す。図13、図15、図17の縦軸は全反射率(%)を示す。図14、図16、図18の縦軸は拡散反射率(%)を示す。
【0054】
まず、蒸留水中でPLAを行うことにより製造したアナターゼ型酸化チタン微粒子(以下、実施例7)の反射スペクトルについて、図13及び図14を参照して説明する。尚、図13が全反射スペクトルを示し、図14が拡散反射スペクトルを示す。
【0055】
図13及び図14に示すように、実施例7によるアナターゼ型酸化チタン微粒子の吸収端の波長は約320nmとなっていることがわかる。これにより、実施例7によるアナターゼ型酸化チタン微粒子では、バンドギャップが本来の約3.2eVから約3.87eVに広がっていることがわかる。
【0056】
次に、アンモニア水中でPLAを行うことにより製造したアナターゼ型酸化チタン微粒子(以下、実施例8)の反射スペクトルについて図15及び図16を参照して説明する。尚、図15が全反射スペクトルを示し、図16が拡散反射スペクトルを示す。
【0057】
図15及び図16に示すように、実施例8によるアナターゼ型酸化チタン微粒子の吸収端の波長は約300nmとなっていることがわかる。これにより、実施例8によるアナターゼ型酸化チタン微粒子では、バンドギャップが約4.13eVに広がっていることがわかる。
【0058】
次に、硝酸水中でPLAを行うことにより製造したアナターゼ型酸化チタン微粒子(以下、実施例9)の反射スペクトルについて図17及び図18を参照して説明する。尚、図17が全反射スペクトルを示し、図18が拡散反射スペクトルを示す。
【0059】
図17及び図18に示すように、実施例9によるアナターゼ型酸化チタン微粒子の吸収端の波長は約320nmとなっていることがわかる。これにより、実施例9によるアナターゼ型酸化チタン微粒子のバンドギャップが約3.87eVに広がっていることがわかる。
【0060】
ここで、上述の各アナターゼ型酸化チタン微粒子の光の反射率及び吸収率について説明する。図13〜図18に示すように、実施例7、実施例8、実施例9による各アナターゼ型酸化チタン微粒子の光の反射率(散乱率)は、それぞれ約35%、約27%、約55%であることがわかる。このことから実施例7、実施例8、実施例9による各アナターゼ型酸化チタン微粒子の光の吸収率は、約65%、約73%、約45%となることがわかる。
【0061】
次に、上述した各実施例7〜実施例9によるアナターゼ型酸化チタン微粒子のPL(フォトルミネッセンス)発光スペクトルを測定した。結果を図19に示す。尚、PL発光スペクトルの測定には、YAGレーザーの第4高調波である266nmの波長の光を用いた。図19の縦軸はPL発光強度を示し、横軸は波長を示す。図19には、実施例7〜実施例9と比較するためにルチル型酸化チタンのPL発光スペクトルを併せて記載した。図19に示すように、PL発光スペクトルは、実施例7、実施例8、実施例9の順に強くなっていることがわかる。
【0062】
次に、光の反射率及びPL発光スペクトルに関する両実験を考察する。ここで、光触媒としての理想的なアナターゼ型酸化チタン微粒子は、光の吸収率が高いことが条件である。なぜなら、吸収された光により、化学反応に寄与する電子−正孔対が生成されるからである。また、別の条件として、PL発光スペクトルが弱いことが条件となる。なぜなら、PL発光スペクトルが弱いことは、アナターゼ型酸化チタン微粒子に吸収された光により励起された電子−正孔対があまり発光に寄与していないからである。即ち、PL発光スペクトルが弱いことは、吸収された光により励起された電子−正孔対の多くが表面での化学反応に寄与していると考えられるからである。
【0063】
これらの点を考慮すると、光の吸収率が最も高く、PL発光スペクトルが2番面に弱いアンモニア溶液中で製造された実施例8によるアナターゼ型酸化チタン微粒子が光触媒としては最も優れていると考えられる。
【0064】
(アナターゼ型酸化チタン微粒子の有機物分解性能)
次に、蒸留水中、アンモニア水中、硝酸水溶液中でPLAすることにより生成されたアナターゼ型酸化チタン微粒子の有機物の分解性能を調べた。まず、本実験ではメチレンブルーを有機物として用いた。メチレンブルーの化学式は以下の通りである。尚、蒸留水中、アンモニア水中、硝酸水溶液中で生成されたアナターゼ型酸化チタン微粒子を、それぞれ実施例10、実施例11、実施例12とする。
【化1】
【0065】
メチレンブルーは、約664nmの波長の光(以下、吸収極大光という)を最も吸収する。また、メチレンブルーの溶液中の濃度は、吸収極大光の吸収(以下、吸光度という)と比例関係にある。本実験では、吸光度の減少を、アナターゼ型酸化チタン微粒子による分解によって減少した溶液中のメチレンブルーの量とした。
【0066】
実施例10〜実施例12によるアナターゼ型酸化チタン微粒子を含む溶液中にメチレンブルーを加え、可視光を照射してメチレンブルーの分解を調べた。尚、照射した可視光は、Hg−Xeランプの光を400nm以下の波長の光を遮光するフィルターを通すことによって生成したものである。結果を図20に示す。図20において、縦軸は吸収極大光の吸光度(無単位)を示し、横軸は時間(hour)を示す。
【0067】
図20に示すように、実施例10及び実施例11によるアナターゼ型酸化チタン微粒子は、時間経過とともに吸光度が小さくなっている。これにより、バンドギャップが3.87eV以上であるにも関わらず、実施例10及び実施例11によるアナターゼ型酸化チタン微粒子が可視光によってメチレンブルーを分解できることがわかる。一方、実施例12によるアナターゼ型酸化チタン微粒子は、吸光度がほとんど減少することがなく、メチレンブルーの分解性能が小さいことがわかる。
【0068】
ここで、アナターゼ型酸化チタン微粒子によるメチレンブルーの分解は1次反応であることが知られている。そこで、
V=log10(Ab0/Ab)
Ab0: 初期のメチレンブルー吸光度
Ab : 各時間におけるメチレンブルーの吸光度
とVを定義する。Vを縦軸とし、横軸を時間(hour)として図20のグラフを変換した。結果を図21に示す。
【0069】
図21に示すように、実施例10によるアナターゼ型酸化チタン微粒子による分解は、略直線となり、1次反応で進行することがわかる。一方、実施例11によるアナターゼ型酸化チタン微粒子による分解は、時間が経過することにより向上していることがわかる。これは、実施例11によるアナターゼ型酸化チタン微粒子に可視光を照射することにより、アナターゼ型酸化チタン微粒子が結晶成長していることによるものと考えられる。
【0070】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】アナターゼ型酸化チタン微粒子を製造するためのPLA装置の概略図である。
【図2】レーザーフルエンスとチタンイオンの量との関係を示すグラフである。
【図3】図2の縦軸をlog10Yに変換したグラフである。
【図4】液面から原料までの距離とチタンイオンの量との関係を示すグラフである。
【図5】図4のグラフの縦軸をlog10Xに変換したグラフである。
【図6】本発明により生成された微粒子のX線回折データである。
【図7】アナターゼ型酸化チタン微粒子をSTM観測した画像である。
【図8】アナターゼ型酸化チタン微粒子をSTM観測した画像である。
【図9】アナターゼ型酸化チタン微粒子をSTM観測した画像である。
【図10】アナターゼ型酸化チタン微粒子をSTM観測した画像である。
【図11】アナターゼ型酸化チタン微粒子をSTM観測した画像である。
【図12】アナターゼ型酸化チタン微粒子をSTM観測した画像である。
【図13】アナターゼ型酸化チタン微粒子の全反射スペクトルである。
【図14】アナターゼ型酸化チタン微粒子の拡散反射スペクトルである。
【図15】アナターゼ型酸化チタン微粒子の全反射スペクトルである。
【図16】アナターゼ型酸化チタン微粒子の拡散反射スペクトルである。
【図17】アナターゼ型酸化チタン微粒子の全反射スペクトルである。
【図18】アナターゼ型酸化チタン微粒子の拡散反射スペクトルである。
【図19】アナターゼ型酸化チタン微粒子のPL発光スペクトルである。
【図20】アナターゼ型酸化チタン微粒子によるメチレンブルーの分解を測定したグラフである。
【図21】図20の縦軸を変換したグラフである。
【符号の説明】
【0072】
1 PLA装置
2 パルスレーザー部
3 反射鏡
4 集光レンズ
5 ビーカー
6 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒等に用いられるアナターゼ型酸化チタン微粒子及びアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ガラス製品やプラスチック製品などの表面に形成することによって、汚れをセルフクリーニングすることが可能な光触媒である酸化チタンやその製造方法の研究が盛んに行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
酸化チタンには、ルチル型、アナターゼ型及びブルッカイト型の結晶構造があることが知られている。これらのうち、アナターゼ型酸化チタンは、光触媒として最もよく機能することが知られている。アナターゼ型酸化チタンは、約3.2eVのバンドギャップを有する。従って、従来のアナターゼ型酸化チタンでは、約3.2eV以上の光を吸収することにより光触媒として機能していた。
【特許文献1】特開2006−128079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のアナターゼ型酸化チタンを光触媒として適用する場合、約3.2eV以上の光を吸収しないようにすることができず、吸収可能な光の自由度が低いといった課題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、吸収可能な光の自由度が高いアナターゼ型酸化チタン微粒子及びアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、バンドギャップEgが、
3.87eV≦Eg≦4.13eV
であることを特徴とするアナターゼ型酸化チタン微粒子である。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、液体中のルチル型酸化チタンからなる原料にパルスレーザー光を照射することにより生成されたことを特徴とする請求項1に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子である。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、直径が20nm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子である。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、液体中に載置されたルチル型酸化チタン単結晶からなる原料にパルスレーザー光を照射する工程を備え、前記原料に照射されるレーザーフルエンスfが、
f≧0.25J/cm2
であることを特徴とするアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法である。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、レーザーフルエンスfの大きさに基づいて生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整することを特徴とする請求項4に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法である。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、
log10Y=a×f+b
a,b:定数
に基づいて、パルスレーザー光1パルスで生成されるチタンイオンの量Yを制御することにより、アナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整することを特徴とする請求項5に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法である。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、原料と液体の液面との距離Dに基づいて生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整することを特徴とする請求項4に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法である。
【0013】
また、請求項8に記載の発明は、
log10X=c×D+A
c:定数
A:誤差
に基づいて、単位レーザーフルエンス(=1J/cm2)当たりで生成されるチタンイオンの量Xを制御することにより、アナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整することを特徴とする請求項7に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法である。
【0014】
また、請求項9に記載の発明は、前記液体は、蒸留水であることを特徴とする請求項4〜請求項8のいずれか1項に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法である。
【0015】
また、請求項10に記載の発明は、前記液体は、アンモニア水であることを特徴とする請求項4〜請求項8のいずれか1項に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるアナターゼ型酸化チタン微粒子は3.87eV〜4.13eVのバンドギャップを有する。これにより、3.2eV〜3.87eVの光を吸収させないことができるし、不純物のドープにより3.2eV〜3.87eVの光を吸収させることもできる。これにより、吸収可能な光の自由度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明による一実施形態を説明する。
【0018】
(アナターゼ型酸化チタン微粒子の製造装置)
約3.87eV〜約4.13eVのバンドギャップEgを有するアナターゼ型酸化チタン微粒子を製造するためのパルスレーザーアブレーション(以下、PLA)装置について、図面を参照して説明する。図1は、アナターゼ型酸化チタン微粒子を製造するためのPLA装置の概略図である。
【0019】
図1に示すように、PLA装置1は、パルスレーザー部2と、反射鏡3と、集光レンズ4と、ビーカー5と、制御部6とを備えている。
【0020】
パルスレーザー部2は、約1064nmを基本波長とするパルスレーザー光を1秒当たり10パルス出射可能なNd:YAGレーザーである。ここで、原料Rとなるルチル型酸化チタン単結晶のバンドギャップは、3.0eV(波長:413nm)である。従って、第4高調波である約266nmの波長を有するパルスレーザー光Puを使用する。尚、第2高調波である約532nmの波長を有するレーザー光はルチル型の酸化チタン単結晶を透過することが知られている。パルスレーザー部2は、出射されるパルスレーザー光Puの出力P等が制御部6により制御される。
【0021】
反射鏡3は、パルスレーザー光Puを反射してビーカー5内の原料Rへとパルスレーザー光Puを導くためのものである。集光レンズ4は、原料に照射されるパルスレーザー光Puの照射面積を制御するためのものである。ビーカー5は、ポリプロピレンからなるものである。ビーカー5には、蒸留水等の液体とともにスライスされたルチル型酸化チタン単結晶からなる原料Rが載置される。
【0022】
(酸化チタン微粒子の製造方法)
次に、PLA法による酸化チタン微粒子の製造方法について説明する。
【0023】
まず、数mm、好ましくは約1mmの厚みにスライスしたルチル型酸化チタン単結晶からなる原料Rをビーカー5に満たされた、例えば、約10ml〜約50mlの液体中に載置する。尚、液体としては、蒸留水、アンモニア水、硝酸水溶液等を適用することができる。液体の容量は特に限定されるものではないが、液面から原料Rまでの距離D(単位mm)が約30mm以下になるような容量が好ましい。
【0024】
次に、パルスレーザー光Puを集光レンズ4で集光して原料Rに数十分照射する。ここで、パルスレーザー光1パルス当たりのレーザーフルエンスfとは、パルスレーザー光1パルスの出力からビーカー5の液体に達するまでの損失を削除し、その値を原料上のパルスレーザー光のスポットサイズで割った単位面積当たりのレーザー強度のことである。具体的には、レーザーフルエンスfは、
f=(P×Lm×L)/S
P :出射されるパルスレーザー光1パルスの出力(単位:J)
Lm:反射鏡による損失
L :集光レンズによる損失
S :原料上のパルスレーザー光のスポットサイズ(単位:cm2)
である。ここで、
f≧0.25J/cm2
であることが好ましい。
【0025】
このようにして、約20nm以下の直径を有し、約3.87eV〜約4.13eVのバンドギャップEgを有するアナターゼ型酸化チタン微粒子を液体中に生成する。
【0026】
ここで、液体中に生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量は、パルスレーザー光Puのレーザーフルエンスfや原料Rから液体の液面までの距離D等によって調整する。以下、具体的に述べる。
【0027】
パルスレーザー光Puのレーザーフルエンスfによりアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整する場合、以下の式に基づいて液体中のチタンイオンの量の制御が行われる。
【0028】
log10Y=a×f+b
a、b:定数
ここで、定数a、bを具体的にした一例は、
f≦0.4J/cm2の場合
log10Y=5.15×f−2.87 ・・・(1)
f≧0.4J/cm2の場合
log10Y=2.45×f−1.80 ・・・(2)
である。尚、Yは、パルスレーザー光1パルスで単位体積当たりの液体中に生成されるチタンイオンの量であって、単位はng(ナノグラム)/shotである。このチタンイオンの量が増加すると、生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量も増加する。この関係を用いて、レーザーフルエンスfによりアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整する。
【0029】
また、原料と液体の液面との距離Dによりアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整する場合、以下の式に基づいて、液体中のチタンイオンの量の制御が行われる。
【0030】
log10X=−c×D+A
c:定数
A:誤差
ここで、定数c、誤差Aを具体的にした一例は、
log10X=−0.0345×D+A
(−0.34≦A≦0.05) ・・(3)
である。尚、Xは、パルスレーザー光1パルスによる単位レーザーフルエンス(=1J/cm2)当たりで生成されるチタンイオンの量であって、単位はng・cm2/Jである。このチタンイオンの量が増加すると、生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量も増加する。この関係を用いて、原料と液面との距離Dによりアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整する。
【0031】
上述したように本発明によるアナターゼ型酸化チタン微粒子は、約3.87eV〜約4.13eVのバンドギャップを有する。本来、アナターゼ型酸化チタンは、約3.2eVのバンドギャップを有する。従って、本発明によるアナターゼ型酸化チタン微粒子は、量子サイズ効果によりバンドギャップが大きくなっていることがわかる。これにより、本発明によるアナターゼ型酸化チタン微粒子は、従来のアナターゼ型酸化チタンよりも短波長の光(約3.2eV以上の光)によって光触媒として機能させることができる。また、本発明によるアナターゼ型酸化チタン微粒子は、不純物をドープすることにより約3.2eV〜約3.87eVの光をも吸収して光触媒として機能するので、従来のアナターゼ型酸化チタンよりも光触媒として機能させるための光の自由度を向上させることができる。
【0032】
また、蒸留水中またはアンモニア水中でPLAを行うことにより生成されたアナターゼ型酸化チタン微粒子は、可視光よりも大きいバンドギャップを有するにも関わらず、可視光により光触媒として機能させることができる。特に、アンモニア水中でPLAを行った場合、光触媒としてより良好なアナターゼ型酸化チタン微粒子を得ることができる。
【0033】
また、レーザーフルエンス及び原料と液面との距離により作製されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整できるので、所望の量のアナターゼ型酸化チタン微粒子を容易に得ることができる。
【0034】
次に、上述のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法に関して行った各実験について説明する。
【0035】
(レーザーフルエンスとチタンイオンの量の関係)
まず、パルスレーザー光のレーザーフルエンスf(単位:J/cm2)と生成されるチタンイオンの量との関係を調べた実験について説明する。尚、本実験では、原料上のパルスレーザー光のスポットサイズSをS=3.1mm2とした。スライスされたルチル型酸化チタン単結晶からなる原料をpH1.0の10mlの硝酸水溶液中に載置した状態でPLAを行った。
【0036】
パルスレーザー光の出力Pを約2mJ〜約20mJと変化させて、チタンイオンの量をICP(誘導結合プラズマ)質量分析法により計測した。計測したチタンイオンの量からパルスレーザー光1パルス当たりで生成される単位体積の液体中のチタンイオンの量Yを算出した。結果を図2に示す。図2の縦軸は、パルスレーザー光1パルスで生成される単位体積の液体中のチタンイオンの量Y(ng/ml)を示し、横軸はレーザーフルエンスf(J/cm2)を示す。
【0037】
図2に示すように、チタンイオンを生成するためのレーザーフルエンスfに閾値があることがわかる。具体的には、レーザーフルエンスfを約0.25J/cm2以上に設定することによりチタンイオンを生成可能なことがわかる。ここで、酸化チタンを原料として用いて気体中でパルスレーザー堆積法により酸化チタンを成膜する場合、数J/cm2のレーザーフルエンスが必要なことが幾つか報告されている。これらと比較した場合、本発明によるアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法では、非常に小さいレーザーフルエンスにより酸化チタンの生成を可能としていることがわかる。
【0038】
ここで、図2の縦軸をlog10Yに変換したグラフを図3に示す。図3からわかるように、レーザーフルエンスが約0.4J/cm2となる所を境として、各点がそれぞれ異なる直線上に乗ることがわかる。これらの直線をそれぞれ式にすると式(1)及び式(2)となる。この結果、これらの式(1)及び式(2)に基づいてレーザーフルエンスfによりチタンイオンの量Yを制御可能なことがわかる。この結果、チタンイオンの量Yを制御することにより、生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整可能なことがわかる。
【0039】
(液面から原料までの距離とチタンイオンの量の関係)
次に、液面からルチル型酸化チタンの原料までの距離Dと生成されるチタンイオンの量との関係を調べた実験について説明する。
【0040】
本実験では、液面からルチル型酸化チタン単結晶からなる原料までの距離Dを変化させて、PLAを行い、各距離Dで生成されるチタンイオンの量をICP質量分析法により測定した。尚、本実験で設定された各パラメータは、以下の通りである。
【0041】
レーザー出力P 20mJ
スポットサイズS 3.1mm2
液体の温度 30.7℃
また、原料を載置する液体には、pH1.0の硝酸水溶液を用いた。これらの条件の下でPLAを約40分行った。結果を図4に示す。図4の縦軸は、パルスレーザー光1パルスによる単位レーザーフルエンス(=1J/cm2)当たりで生成されるチタンイオンの量X(ng・cm2/J)を示し、横軸は距離Dを示す。
【0042】
図4に示すように、距離Dが大きくなるに連れて、生成されるチタンイオンの量Xが減少することがわかる。ここで、チタンイオンの量Xを介して生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整するためには、チタンイオンの量Xと距離Dとの関係を式にする必要がある。そこで、図4のグラフの縦軸をlog10Xに変換したグラフを作製した。そのグラフを図5に示す。
【0043】
図5からわかるように、各点が略一直線上に乗ることがわかる。図5に示す直線から導いた式が式(3)である。尚、式(3)内の誤差Aの上限(+0.05)は、温度約30.7℃のpH1.0の硫酸水溶液中でPLAを行ったものから導き、誤差Aの下限(−0.34)は、温度約30.7℃のpH0.0の硝酸水溶液中でPLAを行ったものから導いた。このことから、距離Dによってチタンイオンの量Xを制御することができることがわかる。この結果、チタンイオンの量Xを制御して生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量の調整をできることがわかる。
【0044】
次に、上述のアナターゼ型酸化チタン微粒子に関して行った各実験について説明する。
【0045】
(アナターゼ型酸化チタン微粒子のXRD観測)
まず、蒸留水中のルチル型酸化チタン単結晶からなる原料にPLAを行って生成された微粒子をXRD(X線回折)観測した。結果のX線回折データを図6に示す。図6に示すように、かなり弱いが2θ=25.3°、37.8°、48.0°に回折ピークが観測されている。これらの回折ピークは、それぞれアナターゼ型酸化チタンの(101)面、(004)面、(200)面からの回折と帰属できる。このことから、生成された微粒子が、アナターゼ型酸化チタン微粒子であることがわかる。尚、2θ=20°近傍にある大きなブロードのシグナルは微粒子を載置した基板を構成する石英からのものである。
【0046】
(アナターゼ型酸化チタン微粒子のSTM観測)
上述した製造方法に基づいて、液体中のルチル型酸化チタン単結晶からなる原料にPLAを行うことによりアナターゼ型酸化チタン微粒子を含む液体を生成した。その液体をグラファイトの表面に滴下した後、加熱により溶媒を乾燥させた。その結果、グラファイトの表面上に析出したアナターゼ型酸化チタン微粒子をSTM(scanning tunnel microscopy)により観測した。STMにより観測された画像を図7〜図12に示す。尚、画像中の白い粒状のもの及びそれらの集合がアナターゼ型酸化チタン微粒子である。アナターゼ型酸化チタン微粒子は、グラファイトの表面に溶媒とともに滴下した後、加熱により溶媒を乾燥させた状態でSTM観測を行った。
【0047】
図7及び図8は、蒸留水中の原料にPLAを行って生成されたアナターゼ型酸化チタン微粒子の画像である。図7は、約373Kで溶媒を乾燥させたアナターゼ型酸化チタン微粒子(以下、実施例1)の画像であり、図8は、約573Kで溶媒を乾燥させたアナターゼ型酸化チタン微粒子(以下、実施例2)の画像である。
【0048】
図7の円内に示すように、実施例1では、約4nm程度の直径を有するアナターゼ型酸化チタン微粒子が生成されていることがわかる。また、図8に示すように、実施例2では、約10nm〜約20nmの直径を有するアナターゼ型酸化チタン微粒子が多数形成されていることがわかる。これらにより、蒸留水中でのPLAにより量子サイズ効果を充分に得ることができるアナターゼ型酸化チタン微粒子を生成できることがわかる。
【0049】
図9及び図10は、アンモニア水溶液中の原料にPLAを行って生成されたアナターゼ型酸化チタン微粒子の画像である。図9は、約373Kで溶媒を乾燥させたアナターゼ型酸化チタン微粒子(以下、実施例3)の画像であり、図10は、図9の状態から更に約20分間約373Kで加熱した状態でのアナターゼ型酸化チタン微粒子(以下、実施例4)の拡大図ある。
【0050】
図9に示すように、実施例3では、アナターゼ型酸化チタン微粒子の2つの集合が上部に見られるとともに、ステップに沿ってアナターゼ型酸化チタン微粒子が集合しているのがわかる。また、図10に示すように、実施例4では、アナターゼ型酸化チタン微粒子の直径が約1nm〜約2nm程度になっていることがわかる。これらにより、アンモニア水中でのPLAにより量子サイズ効果を充分に得ることができるアナターゼ型酸化チタン微粒子を生成できることがわかる。
【0051】
図11及び図12は、硝酸水溶液中の原料にPLAを行って作製されたアナターゼ型酸化チタン微粒子の画像である。図11及び図12ともに、約373Kで溶媒を乾燥させたアナターゼ型酸化チタン微粒子(以下、それぞれを実施例5及び実施例6)の画像である。
【0052】
また、図11及び図12に示すように、実施例5及び実施例6では、アナターゼ型酸化チタン微粒子の直径が、アンモニア水中で生成されたアナターゼ型酸化チタン微粒子の直径よりも小さいことがわかる。これらにより、硝酸水溶液中でのPLAにより量子サイズ効果を充分に得ることができるアナターゼ型酸化チタン微粒子を生成できることがわかる。
【0053】
(アナターゼ型酸化チタン微粒子の光学的物性)
次に、本発明によるアナターゼ型酸化チタン微粒子のバンドギャップが大きくなっていることを調べるために行った実験について説明する。本実験では、石英上で溶液を乾燥させたアナターゼ型酸化チタンの全反射スペクトル及び拡散反射スペクトルを測定した。全反射スペクトルは、アナターゼ型酸化チタン微粒子に入射光を垂直に入射させ、垂直方向に反射してくる光をプローブ光として測定したスペクトルである。拡散反射スペクトルは、アナターゼ型酸化チタン微粒子に入射光を垂直に入射させ、垂直方向から45°オフした光をプローブ光として測定したスペクトルである。尚、図13〜図18において、a線を本発明の実施例によるものとする。また、比較するために、図13〜図18にルチル型酸化チタンの反射スペクトルをb線として併せて記載した。図13〜図18の横軸は反射された光の波長(nm)を示す。図13、図15、図17の縦軸は全反射率(%)を示す。図14、図16、図18の縦軸は拡散反射率(%)を示す。
【0054】
まず、蒸留水中でPLAを行うことにより製造したアナターゼ型酸化チタン微粒子(以下、実施例7)の反射スペクトルについて、図13及び図14を参照して説明する。尚、図13が全反射スペクトルを示し、図14が拡散反射スペクトルを示す。
【0055】
図13及び図14に示すように、実施例7によるアナターゼ型酸化チタン微粒子の吸収端の波長は約320nmとなっていることがわかる。これにより、実施例7によるアナターゼ型酸化チタン微粒子では、バンドギャップが本来の約3.2eVから約3.87eVに広がっていることがわかる。
【0056】
次に、アンモニア水中でPLAを行うことにより製造したアナターゼ型酸化チタン微粒子(以下、実施例8)の反射スペクトルについて図15及び図16を参照して説明する。尚、図15が全反射スペクトルを示し、図16が拡散反射スペクトルを示す。
【0057】
図15及び図16に示すように、実施例8によるアナターゼ型酸化チタン微粒子の吸収端の波長は約300nmとなっていることがわかる。これにより、実施例8によるアナターゼ型酸化チタン微粒子では、バンドギャップが約4.13eVに広がっていることがわかる。
【0058】
次に、硝酸水中でPLAを行うことにより製造したアナターゼ型酸化チタン微粒子(以下、実施例9)の反射スペクトルについて図17及び図18を参照して説明する。尚、図17が全反射スペクトルを示し、図18が拡散反射スペクトルを示す。
【0059】
図17及び図18に示すように、実施例9によるアナターゼ型酸化チタン微粒子の吸収端の波長は約320nmとなっていることがわかる。これにより、実施例9によるアナターゼ型酸化チタン微粒子のバンドギャップが約3.87eVに広がっていることがわかる。
【0060】
ここで、上述の各アナターゼ型酸化チタン微粒子の光の反射率及び吸収率について説明する。図13〜図18に示すように、実施例7、実施例8、実施例9による各アナターゼ型酸化チタン微粒子の光の反射率(散乱率)は、それぞれ約35%、約27%、約55%であることがわかる。このことから実施例7、実施例8、実施例9による各アナターゼ型酸化チタン微粒子の光の吸収率は、約65%、約73%、約45%となることがわかる。
【0061】
次に、上述した各実施例7〜実施例9によるアナターゼ型酸化チタン微粒子のPL(フォトルミネッセンス)発光スペクトルを測定した。結果を図19に示す。尚、PL発光スペクトルの測定には、YAGレーザーの第4高調波である266nmの波長の光を用いた。図19の縦軸はPL発光強度を示し、横軸は波長を示す。図19には、実施例7〜実施例9と比較するためにルチル型酸化チタンのPL発光スペクトルを併せて記載した。図19に示すように、PL発光スペクトルは、実施例7、実施例8、実施例9の順に強くなっていることがわかる。
【0062】
次に、光の反射率及びPL発光スペクトルに関する両実験を考察する。ここで、光触媒としての理想的なアナターゼ型酸化チタン微粒子は、光の吸収率が高いことが条件である。なぜなら、吸収された光により、化学反応に寄与する電子−正孔対が生成されるからである。また、別の条件として、PL発光スペクトルが弱いことが条件となる。なぜなら、PL発光スペクトルが弱いことは、アナターゼ型酸化チタン微粒子に吸収された光により励起された電子−正孔対があまり発光に寄与していないからである。即ち、PL発光スペクトルが弱いことは、吸収された光により励起された電子−正孔対の多くが表面での化学反応に寄与していると考えられるからである。
【0063】
これらの点を考慮すると、光の吸収率が最も高く、PL発光スペクトルが2番面に弱いアンモニア溶液中で製造された実施例8によるアナターゼ型酸化チタン微粒子が光触媒としては最も優れていると考えられる。
【0064】
(アナターゼ型酸化チタン微粒子の有機物分解性能)
次に、蒸留水中、アンモニア水中、硝酸水溶液中でPLAすることにより生成されたアナターゼ型酸化チタン微粒子の有機物の分解性能を調べた。まず、本実験ではメチレンブルーを有機物として用いた。メチレンブルーの化学式は以下の通りである。尚、蒸留水中、アンモニア水中、硝酸水溶液中で生成されたアナターゼ型酸化チタン微粒子を、それぞれ実施例10、実施例11、実施例12とする。
【化1】
【0065】
メチレンブルーは、約664nmの波長の光(以下、吸収極大光という)を最も吸収する。また、メチレンブルーの溶液中の濃度は、吸収極大光の吸収(以下、吸光度という)と比例関係にある。本実験では、吸光度の減少を、アナターゼ型酸化チタン微粒子による分解によって減少した溶液中のメチレンブルーの量とした。
【0066】
実施例10〜実施例12によるアナターゼ型酸化チタン微粒子を含む溶液中にメチレンブルーを加え、可視光を照射してメチレンブルーの分解を調べた。尚、照射した可視光は、Hg−Xeランプの光を400nm以下の波長の光を遮光するフィルターを通すことによって生成したものである。結果を図20に示す。図20において、縦軸は吸収極大光の吸光度(無単位)を示し、横軸は時間(hour)を示す。
【0067】
図20に示すように、実施例10及び実施例11によるアナターゼ型酸化チタン微粒子は、時間経過とともに吸光度が小さくなっている。これにより、バンドギャップが3.87eV以上であるにも関わらず、実施例10及び実施例11によるアナターゼ型酸化チタン微粒子が可視光によってメチレンブルーを分解できることがわかる。一方、実施例12によるアナターゼ型酸化チタン微粒子は、吸光度がほとんど減少することがなく、メチレンブルーの分解性能が小さいことがわかる。
【0068】
ここで、アナターゼ型酸化チタン微粒子によるメチレンブルーの分解は1次反応であることが知られている。そこで、
V=log10(Ab0/Ab)
Ab0: 初期のメチレンブルー吸光度
Ab : 各時間におけるメチレンブルーの吸光度
とVを定義する。Vを縦軸とし、横軸を時間(hour)として図20のグラフを変換した。結果を図21に示す。
【0069】
図21に示すように、実施例10によるアナターゼ型酸化チタン微粒子による分解は、略直線となり、1次反応で進行することがわかる。一方、実施例11によるアナターゼ型酸化チタン微粒子による分解は、時間が経過することにより向上していることがわかる。これは、実施例11によるアナターゼ型酸化チタン微粒子に可視光を照射することにより、アナターゼ型酸化チタン微粒子が結晶成長していることによるものと考えられる。
【0070】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】アナターゼ型酸化チタン微粒子を製造するためのPLA装置の概略図である。
【図2】レーザーフルエンスとチタンイオンの量との関係を示すグラフである。
【図3】図2の縦軸をlog10Yに変換したグラフである。
【図4】液面から原料までの距離とチタンイオンの量との関係を示すグラフである。
【図5】図4のグラフの縦軸をlog10Xに変換したグラフである。
【図6】本発明により生成された微粒子のX線回折データである。
【図7】アナターゼ型酸化チタン微粒子をSTM観測した画像である。
【図8】アナターゼ型酸化チタン微粒子をSTM観測した画像である。
【図9】アナターゼ型酸化チタン微粒子をSTM観測した画像である。
【図10】アナターゼ型酸化チタン微粒子をSTM観測した画像である。
【図11】アナターゼ型酸化チタン微粒子をSTM観測した画像である。
【図12】アナターゼ型酸化チタン微粒子をSTM観測した画像である。
【図13】アナターゼ型酸化チタン微粒子の全反射スペクトルである。
【図14】アナターゼ型酸化チタン微粒子の拡散反射スペクトルである。
【図15】アナターゼ型酸化チタン微粒子の全反射スペクトルである。
【図16】アナターゼ型酸化チタン微粒子の拡散反射スペクトルである。
【図17】アナターゼ型酸化チタン微粒子の全反射スペクトルである。
【図18】アナターゼ型酸化チタン微粒子の拡散反射スペクトルである。
【図19】アナターゼ型酸化チタン微粒子のPL発光スペクトルである。
【図20】アナターゼ型酸化チタン微粒子によるメチレンブルーの分解を測定したグラフである。
【図21】図20の縦軸を変換したグラフである。
【符号の説明】
【0072】
1 PLA装置
2 パルスレーザー部
3 反射鏡
4 集光レンズ
5 ビーカー
6 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンドギャップEgが、
3.87eV≦Eg≦4.13eV
であることを特徴とするアナターゼ型酸化チタン微粒子。
【請求項2】
液体中のルチル型酸化チタンからなる原料にパルスレーザー光を照射することにより生成されたことを特徴とする請求項1に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子。
【請求項3】
直径が20nm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子。
【請求項4】
液体中に載置されたルチル型酸化チタン単結晶からなる原料にパルスレーザー光を照射する工程を備え、
前記原料に照射されるレーザーフルエンスfが、
f≧0.25J/cm2
であることを特徴とするアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項5】
レーザーフルエンスfの大きさに基づいて生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整することを特徴とする請求項4に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項6】
log10Y=a×f+b
a,b:定数
に基づいて、パルスレーザー光1パルスで生成されるチタンイオンの量Yを制御することにより、アナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整することを特徴とする請求項5に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項7】
原料と液体の液面との距離Dに基づいて生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整することを特徴とする請求項4に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項8】
log10X=c×D+A
c:定数
A:誤差
に基づいて、単位レーザーフルエンス(=1J/cm2)当たりで生成されるチタンイオンの量Xを制御することにより、アナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整することを特徴とする請求項7に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記液体は、蒸留水であることを特徴とする請求項4〜請求項8のいずれか1項に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記液体は、アンモニア水であることを特徴とする請求項4〜請求項8のいずれか1項に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項1】
バンドギャップEgが、
3.87eV≦Eg≦4.13eV
であることを特徴とするアナターゼ型酸化チタン微粒子。
【請求項2】
液体中のルチル型酸化チタンからなる原料にパルスレーザー光を照射することにより生成されたことを特徴とする請求項1に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子。
【請求項3】
直径が20nm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子。
【請求項4】
液体中に載置されたルチル型酸化チタン単結晶からなる原料にパルスレーザー光を照射する工程を備え、
前記原料に照射されるレーザーフルエンスfが、
f≧0.25J/cm2
であることを特徴とするアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項5】
レーザーフルエンスfの大きさに基づいて生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整することを特徴とする請求項4に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項6】
log10Y=a×f+b
a,b:定数
に基づいて、パルスレーザー光1パルスで生成されるチタンイオンの量Yを制御することにより、アナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整することを特徴とする請求項5に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項7】
原料と液体の液面との距離Dに基づいて生成されるアナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整することを特徴とする請求項4に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項8】
log10X=c×D+A
c:定数
A:誤差
に基づいて、単位レーザーフルエンス(=1J/cm2)当たりで生成されるチタンイオンの量Xを制御することにより、アナターゼ型酸化チタン微粒子の量を調整することを特徴とする請求項7に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記液体は、蒸留水であることを特徴とする請求項4〜請求項8のいずれか1項に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記液体は、アンモニア水であることを特徴とする請求項4〜請求項8のいずれか1項に記載のアナターゼ型酸化チタン微粒子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−46317(P2009−46317A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210787(P2007−210787)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(504133110)国立大学法人 電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(504133110)国立大学法人 電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】
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