説明

アニオン界面活性剤組成物の製造方法

【課題】アルキルエーテルサルフェートと流動化剤;アルキレンエーテルグリコール硫酸エステル塩を含むアニオン界面活性剤組成物の提供。
【解決手段】(A)RO(A1O)mH(Rは炭素数9〜24の直鎖、分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、mは平均値で0〜100)、カルボニル価が2μmol/g以下の化合物と、HO(A2O)nH(式中、A2は炭素数2〜4のアルキレン基、nは平均値で0.1〜100)を、0〜50℃で混合し、(B)(A)工程の混合物を三酸化硫黄ガスで硫酸化し、(C)アルカリ金属化合物、アンモニア水で中和して、RO(A1O)mSO31(式中、M1はアルカリ金属、NH4)、ZO(A2O)nSO32(M2はアルカリ金属、NH4、Zは水素原子、SO33(式中、M3はアルカリ金属、NH4、水素原子)、A2及びnは前記と同じ)で表される化合物および水を含むアニオン界面活性剤組成物の製造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニオン界面活性剤組成物の製造方法の改良に関する。詳しくは、色相が良好で該界面活性剤水溶液の液体洗浄剤への配合の自由度を狭める食塩などの無機塩の含有量が少ないアニオン界面活性剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高級アルコールのアルキレンオキシド付加体(オキシアルキレンアルキルエーテル)の硫酸化により得られるアルキルエーテルサルフェートは、皮膚に対する刺激が少なく、液体洗浄剤、例えば、シャンプー、医薬、化粧品用のアニオン界面活性剤として広く使用されている。
【0003】
アルキルエーテルサルフェートは、通常、水を含有するペースト状又は液状組成物として製造されるが、その有効成分濃度は、取り扱い性、製造装置の効率、製品輸送のコスト、流動性などを考慮して出来るだけ高濃度に設定されている。アルキルエーテルサルフェート組成物の流動性は、原料高級アルコールの化学構造、オキシアルキレン基の繰返し数、未反応オキシアルキレンアルキルエーテルの量、副生アルキレンエーテルグリコール及び無機塩類等の含有量などに影響され、同一有効成分濃度においてもその流動性は著しく異なる。例えば、ドラムからアルキルエーテルサルフェート組成物の抜き出しが困難になる程流動性が低下することがあることも知られている。したがって、アルキルエーテルサルフェートの濃度を下げることなくこれを高濃度で含む組成物の流動性を改善できれば、生産効率が向上すると共に輸送コストが減少し、工業的に極めて有利である。
【0004】
アルキルエーテルサルフェート組成物の流動性を向上させる方法としては、例えば(1)高級アルコールのアルキレンオキシド付加体であるオキシアルキレンアルキルエーテルに、分子量が600以上、好ましくは1000以上の低級ポリアルキレンエーテルグリコールを加え、この混合物を硫酸化、中和処理することにより、界面活性剤であるオキシアルキレンアルキルエーテルサルフェートと、粘度調整剤である低級ポリアルキレンエーテルグリコールジ硫酸エステルのモノ及び/又はジ塩を含む界面活性剤濃厚水溶液を得る方法(例えば、特許文献1参照)、(2)オキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルの中和工程時又は中和後に平均分子量300〜6000のポリエチレングリコールを、該硫酸化物に対して0.1〜25重量%の割合で添加する低粘度界面活性剤の製造方法(例えば、特許文献2参照)などが開示されている。
【0005】
前記(1)の方法は、別途製造した特定の分子量を有するポリアルキルエーテルグリコールをオキシアルキレンアルキルエーテルに添加し、この混合物を硫酸化、中和することにより、オキシアルキレンアルキルエーテルサルフェートと、低級ポリアルキレンエーテルグリコールジ硫酸エステルのモノ及び/又はジ塩を同時に生成させる方法である。しかし、前記特許文献1には、オキシアルキレンアルキルエーテルに、低級ポリアルキレンエーテルグリコールを添加する際の条件については、なんら記載がない。
【0006】
本発明者らの検討によると、オキシアルキレンアルキルエーテルを高温で長時間保存したり、オキシアルキレンアルキルエーテルに低級ポリアルキレンエーテルグリコールを混合する際の温度が高過ぎたり、混合物を調製後硫酸化までに高温度で長時間保持したりすると、オキシアルキレンアルキルエーテルのカルボニル価が高くなり、そのようなオキシアルキレンアルキルエーテルを硫酸化して得られるアルキルエーテルサルフェート組成物の色相は悪くなることが分かった。また、硫酸化の条件が不適切であると、カルボニル価が低い場合であっても、得られるアルキルエーテルサルフェート組成物の色相は悪くなることが分かった。
【0007】
また、特許文献1の実施例によると、硫酸化にクロルスルホン酸が使用されている。クロルスルホン酸を使用した場合、最終的に得られる界面活性剤水溶液中に、アルカリ金属の塩化物が存在することになり、このものは、該界面活性剤水溶液の液体洗浄剤への配合の自由度を狭める原因となる。
【0008】
前記(2)の方法で用いているポリエチレングリコールは、界面活性剤水溶液の流動性を向上させる効果が、前記(1)で用いている粘度調整剤に比べて低く、満足し得る方法でない。
【0009】
【特許文献1】特開昭56−36596号公報
【特許文献2】特開昭50−116383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、アルキルエーテルサルフェート及びその流動化剤として有効なアルキレンエーテルグリコール硫酸エステルの塩を少なくとも1種含む、流動性および色相が良好で、該界面活性剤水溶液の液体洗浄剤への配合の自由度を狭める食塩などの無機塩の含有量が少ない高濃度アニオン界面活性剤組成物を、生産性よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、カルボニル価が一定値以下のオキシアルキレンアルキルエーテルとアルキレンエーテルグリコールとを特定の温度で混合し、この混合物を三酸化硫黄ガスで硫酸化し、次いで中和処理することにより、前記目的を達成し得ることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、
(A)式(1):
RO(A1O)mH (1)
(式中、Rは炭素数9〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、mは平均値で0〜100の数を示す)
で表され、カルボニル価が2μmol/g以下の化合物の1種以上と、式(2):
HO(A2O)nH (2)
(式中、A2は炭素数2〜4のアルキレン基、nは平均値で1〜100の数を示す)
で表される化合物の1種以上とを、0〜50℃の温度で混合する工程、
(B)前記(A)工程で得られた混合物を三酸化硫黄ガスで硫酸化する工程、及び
(C)次いで、塩基性アルカリ金属化合物又はアンモニア水で中和処理する工程を含む、
少なくとも、式(3):
RO(A1O)mSO31 (3)
(式中、M1はアルカリ金属またはNH4を示し、R、A1およびmは前記と同じ)
で表される化合物を1種以上、式(4):
ZO(A2O)nSO32 (4)
(式中、M2はアルカリ金属またはNH4を示し、Zは水素原子又はSO33(式中、M3はアルカリ金属、NH4又は水素原子を示す)を示し、A2及びnは前記と同じ)
で表される化合物を1種以上、および水とを含むアニオン界面活性剤組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、オキシアルキレンアルキルエーテルとアルキレンエーテルグリコールとを1回の操作で硫酸化することにより、高級アルコールのアルキレンオキシド付加体のサルフェート(アルキルエーテルサルフェート)及びその流動化剤として有効なアルキレンエーテルグリコール硫酸エステルの塩を少なくとも1種含む高濃度アニオン界面活性剤組成物を製造することができる。また、三酸化硫黄ガスで硫酸化するため、該界面活性剤水溶液の液体洗浄剤への配合の自由度を狭める食塩などの無機塩の含有量が少ない。さらに、カルボニル価が一定値以下のオキシアルキレンアルキルエーテルと、アルキレンエーテルグリコールとの混合をカルボニル価が増大しないような条件で混合し、硫酸化するので色相が良好な高濃度アニオン界面活性剤組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のアニオン界面活性剤組成物の製造方法は、(A)高級アルコールのアルキレンオキシド付加体(オキシアルキレンアルキルエーテル、以下、AEと略称)とアルキレンエーテルグリコール(以下、AEGと略称)とを混合する工程、(B)前記(A)工程で得られた混合物を硫酸化する工程、及び(C)次いで、中和処理する工程を含む。
【0015】
前記(A)工程においては、式(1):
RO(A1O)mH (1)
(式中、Rは炭素数9〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、mは平均値で0〜100の数を示す)
で表され、カルボニル価が2μmol/g以下のAEの1種以上と、式(2):
HO(A2O)nH (2)
(式中、A2は炭素数2〜4のアルキレン基、nは平均値で0.1〜100の数を示す)
で表されるAEGの1種以上とを、0〜50℃の温度で混合する。
【0016】
式(1)において、Rが炭素数9〜24の範囲にあれば、得られるアルキルエーテルサルフェート(ES)の界面活性能及び水に対する溶解性のバランスが良好である。好ましい炭素数は10〜20である。Rが示すアルキル基及びアルケニル基は、直鎖、分岐鎖のいずれであってもよく、具体的には、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基、オレイル基(各置換基は、その異性体を含む)などが挙げられる。
【0017】
1で示される炭素数2〜4のアルキレン基は、直鎖、分岐鎖状のいずれであってもよく、例えばエチレン基、プロピレン基、1−メチルトリメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などを挙げることができるが、これらの中でエチレン基及びプロピレン基が好適である。
【0018】
mは、平均値で0〜100の数であり、好ましくは0.1〜100、より好ましくは0.5〜10である。
【0019】
式(2)において、A2で示される炭素数2〜4のアルキレン基は、直鎖、分岐鎖状のいずれであってもよく、例えばエチレン基、プロピレン基、1−メチルトリメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などを挙げることができるが、これらの中でエチレン基及びプロピレン基が好適である。A2は、式(1)のA1と同一であっても異なっていてもよい。
【0020】
nは、平均値で1〜100の数であり、好ましくは2〜50、より好ましくは3〜23である。
【0021】
式(1)で表されるAEは、式(5):
ROH (5)
(式中、Rは前記と同じ)
で表される1種以上のアルコールに、触媒の存在下、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを接触させることにより、得ることができる。式(5)で表されるアルコールとしては、ヤシ油、パーム油、パーム核油、大豆油、ひまわり油、菜種油、牛脂などから誘導される天然アルコール、さらにはオキソ法、チーグラー法及びパラフィン直接酸化法などによって得られる合成アルコールを用いることができる。本発明においては、この天然アルコールや合成アルコールは、分留による単一の炭素数のアルコールであってもよく、炭素数が異なる混合アルコールであってもよい。
【0022】
前記触媒としては、アルコールにアルキレンオキシドを付加する反応において用いられている公知の触媒、例えばアルカリ金属の水酸化物が好ましく用いられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどを例示することができ、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムがより好ましい。触媒は、式(5)のアルコールに対し、通常500〜2000ppm程度の割合で用いるのが好ましい。また、触媒は、一般に水溶液として反応系に加える。次いで、通常減圧などの手段により脱水処理したのち、炭素数2〜4のアルキレンオキシド、具体的にはエチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドの中から選ばれる少なくとも一種、好ましくはエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを接触させることにより、式(1)で表されるAEが得られる。
【0023】
アルキレンオキシドの使用量は、式(1)におけるmの値が所望の値になるように選ばれるが、式(5)のアルコール1モルに対して、0.1〜100モルが好ましく、0.5〜10モルがより好ましい。反応温度は、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜180℃であり、反応圧力は、好ましくは0.1〜4MPa、より好ましくは0.2〜1.5MPaである。アルキレンオキシドの接触はアルキレンオキシドの付加反応を妨げない不活性ガス、例えば、窒素ガスなどを併用してもよい。
【0024】
式(2)で表されるAEGの製造方法に特に制限はなく、従来公知の製造方法で得られたものを用いることができる。
【0025】
式(1)のAEは、高温で保存するとカルボニル価が増大し、得られるアニオン界面活性剤組成物の色相が悪化する。従って、AE製造後の保存条件を、例えば、0〜30℃で6ヶ月以内に、0〜50℃で12時間以内に制限することによってカルボニル価を2.0μmol/g以下、好ましくは0.5μmol/g以下に抑えたAEを使用する。カルボニル価は、ASTM E 411に記載の方法で測定した値である。
【0026】
上記範囲のカルボニル価を有する式(1)のAEと式(2)のAEGとを、0〜50℃で、好ましくは撹拌下混合して、AE/AEGの均一混合物を調製する。混合温度が前記範囲にあれば、適度の液粘度を有し、混合操作が容易であると共に、カルボニル価の上昇を抑制することができる。混合温度は、好ましくは0〜30℃であり、より好ましくは15〜25℃である
【0027】
AEとAEGの混合割合は、AE総量の100質量部に対し、AEG総量が、好ましくは0.5〜10質量部の範囲である。AEG総量が前記範囲にあれば、最終的に得られるアニオン界面活性剤組成物の界面活性能及び流動性が良好となる。AEG総量は、より好ましくは1〜10質量部であり、特に好ましくは1〜5質量部である。
【0028】
硫酸化処理に供するAE/AEG混合物のカルボニル価は、アニオン界面活性剤組成物の色相悪化を防止する上で、2μmol/g以下であるのが好ましく、0.5μmol/g以下であるのがより好ましい。したがって、AE/AEG混合物を調製した後、硫酸化までの間、AE/AEG混合物のカルボニル価が、上記範囲内であるように、温度及び時間を、例えば0〜30℃、6ヶ月以内に選定するのが好ましい。
【0029】
(B)工程においては、前記(A)工程で得たAE/AEG混合物を、三酸化硫黄ガスで硫酸化する。この三酸化硫黄ガスによる硫酸化の方法に特に制限はなく、常法にしたがって行うことができる。例えば、空気や窒素などの不活性ガスで希釈した、好ましくは濃度1〜30容量%、より好ましくは1〜20容量%の三酸化硫黄ガスをAE/AEG混合物に混合し、AEとAEGの硫酸化を行う。三酸化硫黄の濃度が1〜30容量%の範囲であればガス容積が大きすぎることなく、また反応が過剰になるのを抑制することができる。
【0030】
三酸化硫黄の使用量は、通常、化学量論量×(0.95〜1.05)の範囲である。該三酸化硫黄の使用量が上記範囲であれば、起泡性を有しない未反応AE、AEGモノ硫酸エステルの量が少なく、かつ副生物である有臭成分(例えば低級アルデヒド、低級ケトン、環状エーテルなど)の生成量も少ない。好ましい量は、化学量論量×(0.97〜1.01)の範囲である。
【0031】
反応装置に特に制限はないが、例えば槽型反応装置や薄膜式反応装置などを用いることができる。薄膜式反応装置としては、例えば流下薄膜式反応装置、上昇薄膜型反応装置及び管型気液混合相流反応装置などを用いることができる。製造効率の観点からは、薄膜式反応装置による連続式を適用することが好ましい。この薄膜式反応装置の中でも、反応効率及び着色などの観点から、流下薄膜式反応装置が好ましい。薄膜式反応装置を用いた場合の反応時間は、10〜300秒間程度である。
【0032】
硫酸化温度は、好ましくは15〜70℃、より好ましくは40〜60℃である。15℃以上であれば流動性低下による局部的な反応過剰を抑制することができ、また70℃以下にあれば生成物の分解を抑制することができる。
【0033】
上記のようにして得られた硫酸化物を含む混合物は、気/液分離を施し、次の(C)工程において中和処理される。中和処理は、例えば、塩基性アルカリ金属化合物の水溶液、好ましくは20〜50質量%水溶液、又はアンモニア水、好ましくは10〜50質量%のアンモニア水を用いて行う。前記塩基性アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどが例示され、水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウムが好ましい。
【0034】
中和温度は、好ましくは20〜80℃、より好ましくは20〜60℃である。中和方式としては、例えば回分式中和、連続式中和などがあり、特に外部冷却装置を備えた連続循環中和方式が、中和温度を一定温度に保持し得る点からも好適に採用することができる。また、このようにして連続中和処理したのち、必要に応じ、回分操作又は連続操作で、さらにpHを微調整することもできる。
【0035】
このようにして、少なくとも、式(3):
RO(A1O)mSO31 (3)
(式中、M1はアルカリ金属またはNH4を示し、R、A1及びmは前記と同じ)
で表されるアルキルエーテルサルフェート(ES)を1種以上、式(4):
ZO3SO(A2O)nSO32 (4)
(式中、M2はアルカリ金属またはNH4を示し、Zは水素原子又はSO33(式中、M3はアルカリ金属、NH4又は水素原子を示す)を示し、A2及びnは前記と同じ)
で表されるアルキレンエーテルグリコール硫酸エステルの塩(AEGS)を1種以上、および水を含むアニオン界面活性剤組成物が得られる。
なお、前記アニオン界面活性剤組成物には、未中和の硫酸化オキシアルキレンアルキルエーテル:RO(A1O)mSO3H、及び/又は、未中和の硫酸化アルキレンエーテルグリコール:HO(A2O)nSO3H、HO3SO(A2O)nSO3H(式中、R、A、m及びnは前記と同じ)が残存していてもよい。
【0036】
式(3)で表されるES、式(4)で表されるAEGSと水の質量%の比(ES、AEGS及び水の合計量に対する質量%比)は、55〜90:1〜20:5〜40が好ましく、65〜75:1〜5:10〜35がより好ましい。
【0037】
本発明の方法により製造されたアニオン界面活性剤組成物は、式(3)で表されるESを高濃度で含有していても、流動化剤として作用する式(4)で表されるAEGSが共存しているので、流動性が良好で取扱い性がよい。また、硫酸化剤として三酸化硫黄ガスを使用するので、食塩などの無機塩の生成が少ない。また、AE及びAE/AEG混合物のカルボニル価が低く抑えられ、硫酸化の条件が適切であるので色相の良好な組成物が得られる。さらに、硫酸化をガスを使用して低温で行うので、AE、AEGなどの分解を抑制することができる。
【0038】
本発明の方法で得られたアニオン界面活性剤組成物は、液体洗浄剤組成物に好適に用いることができる。この場合、該液体洗浄剤組成物には、必要に応じて色素、香料、可溶化剤、ビルダーなどの補助剤を適宜加えることができる。さらに、洗浄力や泡立ちを調整する目的で、他のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、アミド型非イオン界面活性剤などを添加することができる。液体洗浄剤組成物は、例えば、シャンプー、ボディシャンプー、台所用洗剤、リキッドソープなどに用いられる。
【0039】
実施例
20℃の水浴上で、炭素数12/14高級アルコールエトキシレート(酸化エチレンの平均付加モル数2.0)100質量部に対して、平均分子量300のポリエチレングリコールを3質量部添加し、よく撹拌した。得られた混合物のカルボニル価(COV)は0.6であった。混合物を薄膜式硫酸化設備を用いて、SO3ガスで硫酸化後(硫酸化設備の冷却水温度53℃、30秒間)、26質量%水酸化ナトリウム水溶液中に投入し、20〜50℃で中和を行い、減圧下で気泡を除去し、表1に示す分析値を有するアニオン界面活性剤水溶液が得られた。
ここで得られたアニオン界面活性剤水溶液の流動性を以下に示す方法で評価した。すなわち鉛直に立てた内径10mmの円柱状のガラス管に試料水溶液を15mL仕込み、上部に詮をして8℃で充分静置した。静置後、栓をはずして試料の下端が10cm移動するのに要した時間を流動性の指標とした。
【0040】
比較例
70℃の水浴上で、炭素数12/14高級アルコールエトキシレート(酸化エチレンの平均付加モル数2.0)100質量部に対して、平均分子量300のポリエチレングリコールを3質量部添加し、よく撹拌した。得られた混合物のCOVは2.2であった。実施例と同様にして、混合物を薄膜式硫酸化設備を用いて、SO3ガスで硫酸化後、水酸化ナトリウム水溶液中に投入し、中和を行い、減圧下で気泡を除去し、表1に示す分析値を有するアニオン界面活性剤水溶液が得られた。
【0041】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(1):
RO(A1O)mH (1)
(式中、Rは炭素数9〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、A1は炭素数2〜4のアルキレン基、mは平均値で0〜100の数を示す)
で表され、カルボニル価が2μmol/g以下の化合物の1種以上と、式(2):
HO(A2O)nH (2)
(式中、A2は炭素数2〜4のアルキレン基、nは平均値で1〜100の数を示す)
で表される化合物の1種以上とを、0〜50℃の温度で混合する工程、
(B)前記(A)工程で得られた混合物を三酸化硫黄ガスで硫酸化する工程、及び
(C)次いで、塩基性アルカリ金属化合物又はアンモニア水で中和処理する工程を含む、
少なくとも、式(3):
RO(A1O)mSO31 (3)
(式中、M1はアルカリ金属またはNH4を示し、R、A1およびmは前記と同じ)
で表される化合物を1種以上、式(4):
ZO(A2O)nSO32 (4)
(式中、M2はアルカリ金属またはNH4を示し、Zは水素原子又はSO33(式中、M3はアルカリ金属、NH4又は水素原子を示す)を示し、A2及びnは前記と同じ)
で表される化合物を1種以上、および水とを含むアニオン界面活性剤組成物の製造方法。
【請求項2】
式(3)の化合物、式(4)の化合物及び水の合計に対する式(3)の化合物、式(4)の化合物及び水の質量%の比が、55〜90:1〜20:5〜40である請求項1に記載のアニオン界面活性剤組成物の製造方法。


【公開番号】特開2006−117770(P2006−117770A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306017(P2004−306017)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】