説明

アニリン誘導体およびその製造方法

【課題】有害生物防除作用に卓効を示すアミド誘導体を効率的に製造することを可能にするアニリン誘導体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるアニリン誘導体を、一般式(2)で表される化合物および一般式(3)で表される化合物を反応させて製造する。



(式中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Yは、水素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、Y、YおよびYは水素原子を示す。XおよびXはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニリン誘導体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有害生物防除作用を有するアミド誘導体として種々の化合物が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。また、該アミド誘導体に類似するアミド誘導体の中間体となりうるアニリン誘導体が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/21488号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/73165号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2006/137376号パンフレット
【特許文献4】特開2004−161768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、有害生物防除作用に卓効を示すアミド誘導体を効率的に製造することを可能にする中間体であるアニリン誘導体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、国際公開第2005/21488パンフレット、国際公開第2005/73165号パンフレット、国際公開第2006/137376号パンフレットに記載されるアミド誘導体の新規な製造方法を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、かかるアミド誘導体を製造する上での有用な中間体を見出し本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
<1> 下記一般式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
(一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Yは、水素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、YおよびYは水素原子を示す。Xは塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示す。)で表されるアニリン誘導体。
<2> 前記一般式(1)におけるXが臭素原子である前記<1>に記載のアニリン誘導体。
<3> 下記一般式(2)
【0008】
【化2】

【0009】
(一般式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Yは水素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、Y、YおよびYは水素原子を示す。)で表される化合物と、下記一般式(3)
【0010】
【化3】

【0011】
(一般式(3)中、XおよびXはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示す。)で表される化合物と、を反応させることを含む、下記一般式(1)
【0012】
【化4】

【0013】
(一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Yは水素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、YおよびYは水素原子を示す。Xは塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示す。)で表されるアニリン誘導体の製造方法。
<4> 前記一般式(1)および一般式(3)におけるXおよびXが、臭素原子である前記<3>に記載のアニリン誘導体の製造方法。
<5> 下記一般式(2a)
【0014】
【化2】

【0015】
(一般式(2a)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Y1aは水素原子を示し、Yは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、Y、YおよびYは水素原子を示す。)で表される化合物と、下記一般式(3)
【0016】
【化3】

【0017】
(一般式(3)中、XおよびXはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示す。)で表される化合物
とを反応させることを含む、下記一般式(1a)
【0018】
【化4】

【0019】
(一般式(1a)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Y1aは水素原子を示し、Yは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、YおよびYは水素原子を示す。Xは塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示す。)で表されるアニリン誘導体の製造方法。
<6> 前記一般式(1a)および一般式(3)におけるXおよびXが、臭素原子である前記<5>に記載のアニリン誘導体の製造方法。
<7> 下記一般式(1a)
【0020】
【化5】

【0021】
(一般式(1a)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Y1aは水素原子を示し、Yは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、YおよびYは水素原子を示す。Xは塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示す。)で表される化合物と、ハロゲン化剤とを反応させることを含む、下記一般式(1b)
【0022】
【化6】

【0023】
(一般式(1b)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Y1bは塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、YおよびYは水素原子を示す。Xは塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示す。)で表されるアニリン誘導体の製造方法。
<8> 前記一般式(1a)および一般式(1b)におけるXが、臭素原子である前記<7>に記載のアニリン誘導体の製造方法。
<9> 下記一般式(2b)
【0024】
【化7】

【0025】
(一般式(2b)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Y1bは、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、Y、YおよびYは水素原子を示す。)で表される化合物と、下記一般式(3)
【0026】
【化8】

【0027】
(一般式(3)中、XおよびXはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示す。)で表される化合物
とを反応させることを含む、下記一般式(1b)
【0028】
【化9】

【0029】
(一般式(1b)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示し、Y1bは、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、YおよびYは水素原子を示す。Xは塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示す。)で表されるアニリン誘導体の製造方法。
<10>前記一般式(1b)および一般式(3)におけるXおよびXが、臭素原子である前記<9>に記載のアニリン誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、有害生物防除作用に卓効を示すアミド誘導体を効率的に製造することを可能にするアニリン誘導体およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一般式において使用される文言はその定義においてそれぞれ以下に説明されるような意味を有する。
「Ca−Cb(a、bは1以上の整数を表す)」との表記、例えば、「C1−C3」とは炭素原子数が1〜3個であることを意味し、「C2−C6」とは炭素原子数が2〜6個であることを意味する。
「n−」とはノルマルを意味し、「i−」はイソを意味し、「s−」はセカンダリーを意味し、「t−」はターシャリーを意味する。
【0032】
「炭素数1〜6のアルキル基」とは例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、4−メチル−2−ペンチル、n−ヘキシル、3−メチル−n−ペンチル等の直鎖状または分岐状の炭素原子数が1〜6のアルキル基を表す。
【0033】
置換されていてもよいフェニル基における置換基としては例えば、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基、C1−C6ハロアルキル基、C3−C9シクロアルキル基、C3−C9ハロシクロアルキル基、C2−C6アルケニル基、C2−C6ハロアルケニル基、C2−C6アルキニル基、C2−C6ハロアルキニル基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6ハロアルコキシ基、C1−C6アルキルチオ基、C1−C6ハロアルキルチオ基、C1−C6アルキルスルフィニル基、C1−C6ハロアルキルスルフィニル基、C1−C6アルキルスルホニル基、C1−C6ハロアルキルスルホニル基、C2−C7アルキルカルボニル基、C2−C7ハロアルキルカルボニル基、C2−C7アルキルカルボニルオキシ基、C2−C7ハロアルキルカルボニルオキシ基、C1−C6アルキルスルホニルオキシ基、C1−C6ハロアルキルスルホニルオキシ基、C2−C7アルコキシカルボニル基、C2−C7ハロアルコキシカルボニル基、C2−C7アルキルカルボニルアミノ基、C2−C7ハロアルキルカルボニルアミノ基、C2−C7アルコキシカルボニルアミノ基、C2−C7ハロアルコキシカルボニルアミノ基、C2−C7アルキルアミノカルボニル基、C2−C7ハロアルキルアミノカルボニル基、C1−C6アルキルアミノ基、C1−C6ハロアルキルアミノ基、C2−C6アルケニルアミノ基、C2−C6ハロアルケニルアミノ基、C2−C6アルキニルアミノ基、C2−C6ハロアルキニルアミノ基、C3−C9シクロアルキルアミノ基、C3−C9ハロシクロアルキルアミノ基、C3−C7アルケニルアミノカルボニル基、C3−C7ハロアルケニルアミノカルボニル基、C3−C7アルキニルアミノカルボニル基、C3−C7ハロアルキニルアミノカルボニル基、C4−C10シクロアルキルアミノカルボニル基、C4−C10ハロシクロアルキルアミノカルボニル基、アミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ペンタフルオロスルファニル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいベンジル基、置換基を有していてもよいフェニルカルボニル基、置換基を有していてもよいフェニルアミノ基、および、置換基を有していてもよいフェニルカルボニルアミノ基から選択される置換基であり、置換基が2以上ある場合には、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
尚、本発明において前記各置換基は、可能な場合にはさらに置換基を有していてもよく、その置換基の例としては、前記置換されていてもよいフェニル基における置換基と同様である。
【0034】
本発明のアニリン誘導体は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0035】
【化10】

【0036】
一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。
は、水素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、YおよびYは水素原子を示す。Xは塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示す。
【0037】
本発明における一般式(1)等で表される化合物は、その構造式中に1個または複数個の不斉炭素原子または不斉中心を含む場合があり、2種以上の光学異性体が存在する場合もあるが、本発明は各々の光学異性体およびそれらが任意の割合で含まれる混合物をも全て包含するものである。
また、本発明における一般式(1)等で表される化合物は、その構造式中に、炭素−炭素二重結合に由来する2種以上の幾何異性体が存在する場合もあるが、各々の幾何異性体が任意の割合で含まれる混合物をも全て包含する。
【0038】
本発明の一般式(1)で表されるアニリン誘導体中の置換基等の好ましい置換基又は原子の組合せは以下のとおりである。
およびRとして好ましくは、水素原子であり、Yとして好ましくは、水素原子、臭素原子、またはヨウ素原子であり、Yとして好ましくは、トリフルオロメチル基である。Xとして好ましくは臭素原子またはヨウ素原子であり、より好ましくは臭素原子である。
また、RおよびRが水素原子であって、Yが、水素原子、臭素原子、またはヨウ素原子であって、Yがトリフルオロメチル基であって、Xが臭素原子またはヨウ素原子であることが好ましく、RおよびRが水素原子であって、Yが、水素原子、臭素原子、またはヨウ素原子であって、Yがトリフルオロメチル基であって、Xが臭素原子であることがより好ましい。
前記一般式(1)で表されるアニリン誘導体が、かかる態様であることにより、さらに有害生物防除作用に優れるアミド誘導体を、より効率的に製造することができる。
【0039】
以下に本発明のアニリン誘導体の製造方法、さらに、該製造方法に好適に用いることができる製造中間体となる化合物およびその製造方法を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の製造方法1から製造方法3に示される一般式においては、R、R、Y、Y、Y、Y、およびXは、前記一般式(1)におけるR、R、Y、Y、Y、Y、およびXとそれぞれ同じものを示す。またYは水素原子を示し、Xは、Xと独立に、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。
【0040】
またRは、置換されていてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されていてもよいフェニルオキシカルボニル基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基、置換されていてもよいフェニルスルホニル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、または置換されていてもよいベンゾイル基を示す。
【0041】
前記置換されていてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されていてもよいフェニルオキシカルボニル基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基、置換されていてもよいフェニルスルホニル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、および置換されていてもよいベンゾイル基における置換基としては、前記置換されていてもよいフェニル基における置換基と同様である。
【0042】
また前記置換されていてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基、および置換されていてもよいアルキルカルボニル基におけるアルキル基は、前記炭素数1〜6のアルキル基と同様であることが好ましい。
【0043】
LGはハロゲン原子、ヒドロキシル基、アシルオキシ基等の脱離能を有する官能基を示す。
さらに「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。
【0044】
<製造方法1>
本発明の一般式(1)で表されるアニリン誘導体の製造方法は、下記反応式(1)で表される。かかる構成であることにより、一般式(1)で表されるアニリン誘導体を効率よく製造することができる。
【0045】
【化11】

【0046】
1−(i):一般式(2)+一般式(3)→ 一般式(1)
一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物を反応させることにより一般式(1)で表されるアニリン誘導体を製造することができる。
本反応は溶媒中で行われるが、溶媒としては例えば、水、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの場合によりハロゲン化された芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などの場合によりハロゲン化された脂肪族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、t−ブチルメチルエーテルなどの鎖状または環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、テトラメチレンスルホンなどのスルホン類、アセトニトリルなどのニトリル類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの不活性溶剤を示すことができる。これらの溶媒は単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0047】
また、水と有機溶剤の多相反応媒体中でも実施することができ、多相反応媒体のための有機溶剤は、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの場合によりハロゲン化された芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などの場合によりハロゲン化された脂肪族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、t−ブチルメチルエーテルなどの鎖状または環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、シクロヘキサノン、ブタノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類を示すことができる。
【0048】
多相反応媒体中で反応させる際は、相間移動触媒の存在下で実施することが有利であり、相間移動触媒としては例えば、18−クラウン−6、12−クラウン−4、ジベンゾ−18−クラウン−6−、ジベンゾ−12−クラウン−4−などのクラウンエーテル類、クリプタンド[2.2.2]などのクリプタンド類、ポダンド類、ポリグリコールエーテル、テトラ−n−ブチルアンモニウムヨージド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド、トリ−n−ブチルメチルホスホニウムブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムハイドロゲンスルフェート、トリメチル−C13/C15−アルキルアンモニウムクロリド、トリメチル−C13/C15−アルキルアンモニウムブロミド、ジベンジルジメチルアンモニウムメチルスルフェート、ジメチル−C12/C14−アルキルベンジルアンモニウムクロリド、ジメチル−C12/C14−アルキルベンジルアンモニウムブロミド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、テトラキスジエチルアミノホスホニウムクロリド、テトラキスジエチルアミノホスホニウムブロミド、テトラキスジエチルアミノホスホニウムヨージド、トリス−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アミン、および下記式(I)で表される化合物を示すことができる。
【0049】
(カチオン)(アニオン) 式(I)
【0050】
式(I)中、(カチオン)は置換された第四級アンモニウム又は、ホスホニウムカチオンであり、かつ(アニオン)は有機酸もしくは無機塩のアニオンである。
【0051】
本反応は、好ましくは還元剤の存在下でおよび/又は400nm以下の波長を有する光の存在下で実施される。
適当な還元剤としては、平均の形式的な酸化状態が+III、+IV、および+Vの硫黄化合物、および標準還元電位0V以下を有する金属との混合物での硫黄化合物である。具体的には例えば、亜ジチオン酸ナトリウム、亜ジチオン酸カリウムなどのアルカリ金属亜ジチオン酸塩、又は二酸化硫黄を示すことができる。
適当な金属としては、例えば、マンガン、亜鉛、アルミニウムである。
400nm以下の波長を有する光を発生する光源としては、通常用いられるUV灯を特に制限なく用いることができ、特に高圧水銀灯を挙げることができる。
【0052】
本反応は、塩基の存在下に実施することが好ましい。適当な塩基としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ土類金属又はアルカリ金属の水酸化物、酢酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩類、酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウムなどのアンモニウム塩類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルグアニジン、N,N−ジメチルアニリン、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、N−メチルピペリジン、ピペリジンなどのアミン類、ピリジン、2−、3−、および4−N,N−ジメチルアミノピリジンなどの芳香族窒素化合物を示すことができる。
【0053】
一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物とのモル比は0.7〜1.8である。
また反応温度は、反応圧下で−10℃から使用する溶剤の還流温度の範囲で適宜選択すればよい。反応圧は、0.5〜100バールの範囲で適宜選択すればよい。
さらに反応時間は、数分から96時間の範囲で適宜選択すればよい。
【0054】
本発明における一般式(1b)で表されるアニリン誘導体の製造方法は、下記反応式(2)で表されることが好ましい。下記反応式(2)の詳細は、既述の反応式(1)と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0055】

【0056】
1bは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。
【0057】
また本発明における一般式(1a)で表されるアニリン誘導体の製造方法は、下記反応式(3)で表されることもまた好ましい。下記反応式(3)の詳細は、既述の反応式(1)と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0058】
【化12】

【0059】
1aは水素原子を示す。
【0060】
1−(ii):一般式(1a)→ 一般式(1b)
また、前記一般式(1a)で表されるアニリン誘導体と、ハロゲン化剤とを反応させることにより、前記一般式(1b)で表されるアニリン誘導体を、効率よく製造することができる。
前記一般式(1a)で表されるアニリン誘導体と、ハロゲン化剤とを反応させる方法としては、例えば、実験化学講座19の424〜427、466〜467ページに記載の方法を挙げることができる。前記ハロゲン化剤として具体的には例えば、塩素、臭素、ヨウ素、塩化スルフリル、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、一塩化ヨウ素、1,3−ジヨード−5,5,−ジメチルヒダントインなどを示すことができる。
【0061】
<製造方法2>
本発明における一般式(1b)で表されるアニリン誘導体から、以下に示すようにして一般式(4)で表されるアニリン誘導体を製造することができる。
【0062】
【化13】

【0063】
1bは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。
2−(i):一般式(1b)→ 一般式(4)
一般式(1b)で表されるアニリン誘導体を適当な溶媒中、または無溶媒で、適当なフッ素化剤と反応させることにより、一般式(4)で表されるアニリン誘導体を製造することができる。
【0064】
溶媒としては、本反応の進行を著しく阻害しないものであればよく、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなどの鎖状または環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどのケトン類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶媒を示すことができ、これらの溶媒は単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0065】
フッ素化剤としては1,1,2,2−テトラフルオロエチルジエチルアミン、2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチルジエチルアミン、トリフルオロジフェニルホスホラン、ジフルオロトリフェニルホスホラン、フルオロ蟻酸エステル類、四フッ化硫黄、フッ化カリウム、フッ化水素カリウム、フッ化セシウム、フッ化ルビジウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化アンチモン(III)、フッ化アンチモン(V)、フッ化亜鉛、フッ化コバルト、フッ化鉛、フッ化銅、フッ化水銀(II)、フッ化銀、フルオロホウ酸銀、フッ化タリウム(I)、フッ化モリブデン(VI)、フッ化ヒ素(III)、フッ化臭素、四フッ化セレン、トリス(ジメチルアミノ)スルホニウムジフルオロトリメチルシリカート、ソジウムヘキサフルオロシリカート、フッ化第四級アンモニウム類、(2−クロロエチル)ジエチルアミン、三フッ化ジエチルアミノ硫黄、三フッ化モルホリノ硫黄、四フッ化ケイ素、フッ化水素、フッ化水素酸、フッ化水素ピリジン錯体、フッ化水素トリエチルアミン錯体、フッ化水素塩類、ビス(2−メトキシエチル)アミノサルファートリフルオリド、2,2−ジフルオロ−1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、五フッ化ヨウ素、トリス(ジエチルアミノ)ホスホニウム−2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−シクロブタンイリド、トリエチルアンモニウムヘキサフルオロシクロブタンイリド、ヘキサフルオロプロペンなどを示すことができる。これらのフッ素化剤は単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
これらのフッ素化剤は一般式(1b)で表される化合物に対して1から10倍モル当量の範囲、または溶媒として適宜選択して使用すればよい。
【0066】
添加剤を用いても良く、添加剤としては、例えば、18−クラウン−6などのクラウンエーテル類、テトラフェニルホスホニウム塩などの相間移動触媒類、フッ化カルシウム、塩化カルシウムなどの無基塩類、酸化水銀などの金属酸化物類、イオン交換樹脂などを示すことができ、これらの添加剤は反応系中に添加するだけでなく、フッ素化剤の前処理剤としても使用することができる。
反応温度は−80℃から使用する溶媒の還流温度の範囲で適宜選択すればよい。また反応時間は、数分から96時間の範囲で適宜選択すればよい。
【0067】
<製造方法3>
本発明において一般式(1)で表されるアニリン誘導体のうち、RおよびRが水素原子である下記一般式(5)で表されるアニリン誘導体から、以下に示すようにして一般式(6)で表されるアニリン誘導体を製造することができる。
【0068】
【化14】

【0069】
3−(i):一般式(5)+一般式(7)→ 一般式(8)
一般式(7)で表される脱離基を有する化合物と、一般式(5)で表される化合物を適当な溶媒中もしくは無溶媒で反応させることにより、一般式(8)で表される化合物を製造することができる。本工程では適当な塩基を用いることもできる。
【0070】
溶媒としては、本反応の進行を著しく阻害しないものであればよい。例えば、水、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなどの鎖状または環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、アセトニトリルなどのニトリル類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの不活性溶媒を示すことができる。これらの溶媒は単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0071】
また、塩基としては、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどの有機塩基類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属類、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩類、リン酸一水素二カリウム、リン酸三ナトリウムなどのリン酸塩類、水素化ナトリウムなどの水素化アルカリ金属塩類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属アルコラート類、リチウムジイソプロピルアミドなどのリチウムアミド類などを示すことができる。
これらの塩基は、一般式(7)で表される化合物に対して0.01〜5倍モル当量の範囲で適宜選択して使用すればよい。
【0072】
反応温度は、−20℃から使用する溶媒の還流温度の範囲で適宜選択すればよい。また反応時間は、数分から96時間の範囲で適宜選択すればよい。
【0073】
一般式(7)で表される化合物の中で、カルボン酸ハライド誘導体もしくはスルホン酸ハライド誘導体は、カルボン酸もしくはスルホン酸からハロゲン化剤を使用する常法により容易に製造することができる。ハロゲン化剤としては、例えば、塩化チオニル、臭化チオニル、オキシ塩化リン、オキザリルクロリド、三塩化リンなどのハロゲン化剤を示すことができる。
【0074】
一方、ハロゲン化剤を使用せずにカルボン酸誘導体もしくはスルホン酸誘導体と一般式(5)で表される化合物から一般式(8)で表される化合物を製造することが可能である。その方法としては、例えば、Chem.Ber.Vol.103、788ページ(1970年)に記載の方法を挙げることができる。具体的には、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールなどの添加剤を適宜使用し、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドなどの縮合剤を用いる方法を示すことができる。この場合に使用される他の縮合剤としては、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1,1’−カルボニルビス−1H−イミダゾールなどを示すことができる。
【0075】
また、一般式(8)で表される化合物を製造する他の方法としては、クロロギ酸エステル類を用いた混合酸無水物法を示すこともできる。例えば、J.Am.Chem.Soc.Vol.89、5012ページ(1967年)に記載の方法を挙げることができ、一般式(8)で表される化合物を製造することが可能である。この場合使用されるクロロギ酸エステル類としてはクロロギ酸イソブチル、クロロギ酸イソプロピルなどを示すことができ、クロロギ酸エステル類の他には、塩化ジエチルアセチル、塩化トリメチルアセチルなどを示すことができる。
【0076】
縮合剤を用いる方法、混合酸無水物法共に、前記文献記載の溶媒、反応温度、反応時間に限定されることは無い。溶媒としては適宜反応の進行を著しく阻害しない不活性溶媒を使用すればよい。また反応温度、反応時間についても、反応の進行に応じて、適宜選択すればよい。
【0077】
3−(ii):一般式(8)→ 一般式(9)
一般式(8)で表される化合物を適当な溶媒中、または無溶媒で、適当なフッ素化剤と反応させることにより、一般式(9)で表される化合物を製造することができる。
その溶媒としては、2−(i)に例示したものを用いることができる。また、フッ素化剤についても、2−(i)に例示したものを用いることができる。反応温度、反応時間などについても、2−(i)の例示に従うことができる。
【0078】
3−(iii):一般式(9)→ 一般式(6)
例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(John Wiley and Sons Inc.)の218〜287ページに記載の方法に従うことにより、一般式(9)で表される化合物から一般式(6)で表されるアニリン誘導体を製造することができる。
反応溶媒などの条件は文献記載のものに限定されることは無く、適宜反応の進行を著しく阻害しない不活性溶媒を使用すればよい。また反応温度、反応時間についても、反応の進行に応じて、適宜選択すればよい。
【0079】
3−(iv):一般式(9)→ 一般式(10)
例えば、実験化学講座19(第4版、丸善)の424〜427、466〜467ページに記載の方法に従い、一般式(9)で表される化合物とハロゲン化剤を反応させることにより一般式(10)で表される化合物を製造することができる。ハロゲン化剤としては例えば、1−(ii)に例示したものを用いることができる。
【0080】
3−(v):一般式(10)→ 一般式(6)
例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(John Wiley and Sons Inc.)の218〜287ページに記載の方法に従うことにより、一般式(10)で表される化合物から一般式(6)で表されるアニリン誘導体を製造することができる。
反応溶媒などの条件は文献記載のものに限定されることは無く、適宜反応の進行を著しく阻害しない不活性溶媒を使用すればよい。また反応温度、反応時間についても、反応の進行に応じて、適宜選択すればよい。
【0081】
前記に示した全ての製造方法において、目的物は、反応終了後、反応系から常法に従って単離すればよいが、必要に応じて、再結晶、カラムクロマトグラフィー、蒸留などの操作を行い精製することができる。また、反応系から目的物を単離せずに次の反応工程に供することも可能である。
本発明により得られる一般式(1)で表されるアニリン誘導体は、有害生物防除作用に卓効を示すアミド誘導体の製造方法において極めて有用な製造中間体である。
【実施例】
【0082】
次の実施例により本発明の代表的な実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。H−NMRの化学シフト値は、特に記載がない限り、テトラメチルシランを内部基準物質として使用した値である。また、特記しない限り「%」は質量基準である。
【0083】
<実施例1>
2−トリフルオロメチル−4−(1−ブロモ−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル)アニリンの製造
【0084】
【化15】

【0085】
2−(トリフルオロメチル)アニリン5.00g(31.0mmol)、硫酸水素テトラブチルアンモニウム0.590g(1.74mmol)、80%ハイドロサルファイトナトリウム1.35g(6.20mmol)を酢酸エチル75.0ml、水75.0mlの混合溶液に装入した後、10%炭酸ナトリウム水溶液でpH5に調整した。反応液を10%炭酸ナトリウム水溶液でpH5に調整しながら、1,2−ジブロモ−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン17.3g(55.8mmol)の酢酸エチル17.5ml溶液を30分かけて滴下した後、80%ハイドロサルファイトナトリウム0.680g(3.10mmol)を30分ごとに7回分割添加した。分割添加後、反応液を室温で5時間攪拌した。分液後、有機層を1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をイオン交換樹脂で処理することにより2−(トリフルオロメチル)アニリンを除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;へキサン)で精製することにより、標記化合物を製造した。
H−NMR(CDCl,ppm)δ4.48(2H,broad−s),6.80(1H,d,J=8.8Hz),7.50(1H,d,J=8.8Hz),7.64(1H,s).
【0086】
<実施例2>
2−ヨード−6−トリフルオロメチル−4−(1−ブロモ−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル)アニリンの製造
【0087】
【化16】

【0088】
実施例1で得られた2−トリフルオロメチル−4−(1−ブロモ−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル)アニリン1.21g(3.10mmol)のエタノール溶液10mlに濃硫酸0.320g(3.26mmol)を加えた後、N−ヨードスクシイミド1.05g(4.65mmol)を加え60℃で2時間攪拌した。反応液にN−ヨードスクシイミド0.350g(1.55mmol)を3回追加装入しながら同温度で9時間攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、水、酢酸エチルを加え、有機層を水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;へキサン)で精製することにより、標記化合物1.41g(収率88%)を製造した。
H−NMR(CDCl,ppm)δ5.03(2H,broad−s),7.64(1H,s),7.99(1H,s).
19F−NMR(CDCl,ppm)δ−57.1(1F),−59.6(1F),−64.0(3F),−72.9(3F),−171.2(1F).
【0089】
<参考例1>
2−フルオロ−3−(4−フルオロ−N−メチルベンズアミド)−N−(2−ヨード−4−(1−ブロモ−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル)−6−(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミドの製造
【0090】
【化17】

【0091】
(参考例1−1)
2−クロロ−3−ニトロ安息香酸メチルの製造
【0092】
【化18】

【0093】
2−クロロ−3−ニトロ安息香酸544g(2.70mol)をメタノール3425mlに懸濁し、濃硫酸109mlを装入し、6時間加熱還流した。室温に冷却した後、溶媒を減圧留去し、得られた残渣を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に装入した。析出した固体を濾過し水洗した。得られた固体を酢酸エチルに溶かし、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣をn−ヘキサンで洗浄することにより、標記化合物543g(収率93%)を製造した。
H−NMR(CDCl,ppm)δ3.98(3H,s),7.46−7.50(1H,m),7.83−7.86(1H,m),7.94−7.98(1H,m).
【0094】
(参考例1−2)
2−フルオロ−3−ニトロ安息香酸メチルの製造
【0095】
【化19】

【0096】
窒素気流下で撹拌機付きフラスコにフッ化セシウム499g(3.19mol)を装入し、撹拌下で110℃にて1時間撹拌した。この中に参考例1−1で得られた2−クロロ−3−ニトロ安息香酸メチル229g(1.06mol)、N,N−ジメチルホルムアミド2000mlを装入し、140℃で1時間撹拌した。室温に放冷後、反応液を濾過し、溶媒を減圧留去して得られた残渣を水中に注ぎ、しばらく撹拌した後、析出した固体を濾取し、減圧下乾燥することにより、標記化合物160g(収率76%)を製造した。
H−NMR(CDCl,ppm)δ3.99(3H,s),7.36−7.40(1H,m),8.14−8.25(2H,m).
【0097】
(参考例1−3)
3−アミノ−2−フルオロ安息香酸メチル塩酸塩の製造
【0098】
【化20】

【0099】
参考例1−2で得られた2−フルオロ−3−ニトロ安息香酸メチルエステル9.10g(0.0460mol)、10%塩酸/メタノール25ml、メタノール60ml、5%パラジウム/炭素(50%wet品)2.70gを装入し、室温で水素添加を行なった。反応終了後、触媒を濾過し、溶媒を減圧留去して得られた残渣をジイソプロピルエーテルで洗いだすことにより、標記化合物8.01g(収率85%)を製造した。
H−NMR(DMSO−d,ppm)δ3.86(3H,s),7.21−7.25(1H,m),7.27(3H,broad−s),7.42−7.53(2H,m).
【0100】
(参考例1−4)
2−フルオロ−3−(4−フルオロベンズアミド)安息香酸メチルの製造
【0101】
【化21】

【0102】
参考例1−3で得られた3−アミノ−2−フルオロ安息香酸メチル塩酸塩44.6g(0.213mol)を塩化メチレン446mlに懸濁し、ピリジン39.1g(0.489mol)を滴下した。この反応液中に冷却下、p−フルオロ安息香酸クロリド38.2g(0.234mol)を滴下し、室温で1晩撹拌した。反応終了後、反応液を1N塩酸水溶液、飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣をn−ヘキサン/酢酸エチル=4/1で洗浄することにより、標記化合物61.9g(収率97%)を製造した。
H−NMR(CDCl,ppm)δ3.95(3H,s), 7.17−7.27(3H, m), 7.66−7.70(1H,m), 7.89−7.94(2H,m), 8.11(1H,broad−s), 8.63−8.68(1H,m).
【0103】
(参考例1−5)
2−フルオロ−3−(4−フルオロ−N−メチルベンズアミド)安息香酸メチルの製造
【0104】
【化22】

【0105】
参考例1−4で得られた2−フルオロ−3−(4−フルオロベンズアミド)安息香酸メチル59.0g(0.203mol)をアセトニトリル1180mlに溶解し、ジメチル硫酸39.1g(0.304mol)、水酸化カリウム16.0g(0.243mol)を順次装入した後、60℃で30分間撹拌した。室温に冷却した後、溶媒を減圧留去して得られた残渣に酢酸エチル、n−ヘキサンを加え、水で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた残渣をn−ヘキサンで洗浄することにより標記化合物61.8g(収率76%)を製造した。
H−NMR(CDCl,ppm)δ3.42(3H,s),3.88(3H,s),6.86−6.90(2H,m),7.09−7.13(1H,m),7.32−7.38(3H,m),7.78−7.82(1H,m).
【0106】
(参考例1−6)
2−フルオロ−3−(4−フルオロ−N−メチルベンズアミド)安息香酸の製造
【0107】
【化23】

【0108】
参考例1−5で得られた2−フルオロ−3−(4−フルオロ−N−メチルベンズアミド)安息香酸メチル38.5g(0.126mol)をメタノール192mlに加え、65℃で溶解した。ここに水酸化ナトリウム7.28g(0.177mol)の水溶液192mlを加え、同温度で1時間攪拌した。反応後、メタノールを減圧留去して得られた水溶液にジクロロメタンと水を加え抽出、分液した。水層を更にジクロロメタンで洗浄、分液した後、水層を6N塩酸で酸性にすることにより結晶を得た。得られた結晶を水洗、乾燥させることにより、標記化合物36.7g(収率96%)を製造した。
H−NMR(CDCl,ppm)δ3.45(3H,s), 6.87−6.91(2H, m), 7.10-7.18(1H,m), 7.30−7.37(3H, m), 7.87−7.92(1H,m). カルボン酸のプロトン検出されず。
【0109】
(参考例1−7)
2−フルオロ−3−(4−フルオロ−N−メチルベンズアミド)−N−(2−ヨード−4−(1−ブロモ−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル)−6−(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミドの製造
【0110】
【化24】

【0111】
参考例1−6で得られた2−フルオロ−3−(4−フルオロ−N−メチルベンズアミド)安息香酸0.230g(0.770mmol)、塩化チオニル0.460g(3.85mmol)を脱水トルエン5mlに溶解し、90℃で1時間撹拌した。トルエンを減圧留去した後、得られた残渣を脱水1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン1mlに溶解し、実施例2で得られた2−ヨード−6−トリフルオロメチル−4−(1−ブロモ−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル)アニリン0.300g(0.580mmol)、トリエチルアミン0.110g(1.04mmol)、N,N−ジメチルアミノピリジン0.0900g(0.700mmol)の脱水1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン1ml溶液に加え、室温で30分攪拌した後、70℃で7時間攪拌した。室温に冷却後、反応液に水、酢酸エチルを加え、有機層を1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾液を減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;へキサン:酢酸エチル=4:1)で精製することにより、標記化合物0.230g(収率50%)を製造した。
H−NMR(CDCl,ppm)δ3.50(3H,s),6.88−6.93(2H,m),7.28−7.35(3H,m),7.46(1H,t,J=7.3Hz),7.93(1H,s),8.01−8.08(2H,m),8.34(1H,s).
【0112】
前記一般式(1)で表されるアニリン誘導体を中間体として用いて製造されたアミド誘導体である2−フルオロ−3−(4−フルオロ−N−メチルベンズアミド)−N−(2−ヨード−4−(1−ブロモ−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル)−6−(トリフルオロメチル)フェニル)ベンズアミドは、有害生物防除作用に卓効を示した。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】


(一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Yは水素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、YおよびYは水素原子を示す。Xは臭素原子を示す。)で表されるアニリン誘導体。
【請求項2】
下記一般式(2)
【化2】


(一般式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Yは水素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、Y、YおよびYは水素原子を示す。)で表される化合物と、下記一般式(3)
【化3】


(一般式(3)中、XおよびXは臭素原子を示す。)で表される化合物
とを反応させることを含む、下記一般式(1)
【化4】


(一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Yは水素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、YおよびYは水素原子を示す。Xは臭素原子を示す。)で表されるアニリン誘導体の製造方法。
【請求項3】
下記一般式(2a)
【化2】


(一般式(2a)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Y1aは水素原子を示し、Yはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、Y、YおよびYは水素原子を示す。)で表される化合物と、下記一般式(3)
【化3】


(一般式(3)中、XおよびXは臭素原子を示す。)で表される化合物とを反応させることを含む、下記一般式(1a)
【化4】


(一般式(1a)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Y1aは水素原子を示し、Yはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、YおよびYは水素原子を示す。Xは、臭素原子を示す。)で表されるアニリン誘導体の製造方法。
【請求項4】
下記一般式(1a)
【化5】


(一般式(1a)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Y1aは水素原子を示し、Yはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、YおよびYは水素原子を示す。Xは臭素原子を示す。)で表される化合物と、ハロゲン化剤とを反応させることを含む、下記一般式(1b)
【化6】


(一般式(1b)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Y1bは、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、YおよびYは水素原子を示す。Xは臭素原子を示す。)で表されるアニリン誘導体の製造方法。
【請求項5】
下記一般式(2b)
【化7】


(一般式(2b)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Y1bは塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、Y、YおよびYは水素原子を示す。)で表される化合物と、下記一般式(3)
【化8】


(一般式(3)中、XおよびXは臭素原子を示す。)で表される化合物とを反応させることを含む、下記一般式(1b)
【化9】


(一般式(1b)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはC(=O)Rで表わされる基(Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示す。Y1bは、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を示し、Yは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、またはトリフルオロメトキシ基を示し、YおよびYは水素原子を示す。Xは臭素原子を示す。)で表されるアニリン誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2011−153115(P2011−153115A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17404(P2010−17404)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(303020956)三井化学アグロ株式会社 (70)
【Fターム(参考)】