説明

アノードの垂直性矯正方法及び装置

【課題】アノードの垂直性の矯正の自動化を図り、垂直性の矯正に要する時間を短縮できるようにしたアノードの垂直性矯正方法及び装置を提供する。
【解決手段】金属(銅)の電解精製に用いられるアノードの垂直性を矯正するアノードの垂直性矯正装置1は、アノードの垂直性に関するデータを測定する垂直性測定装置30、及びアノードの耳部2eが載置された耳受け部15をプレスすることにより電解槽に懸垂支持される耳部2eの裏面の角度を矯正する耳垂直プレス機10を備える。制御部40は、垂直性測定装置30による測定データに基づいて耳受け部15の角度を駆動機構20のパルスモータ21を駆動し、レバーアーム16を介して耳受け部15を回動させることにより、耳部2eは垂直性が矯正される角度になるように調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解精製用アノードの垂直性矯正方法及び装置に関し、さらに詳しくは、電解精製に供されるアノードの垂直性の矯正を自動化し、矯正のための作業の負担軽減及び電解精製中に発生するショートを防止するためのアノードの垂直性矯正方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非鉄金属の電解精製、例えば銅の電解精製では、精製炉において粗銅を酸化、還元して得られた純度約99.5%の粗銅を板状体に鋳造した銅板を陽極とし(以下、単に「アノード」という。)、パーマネントカソード法(Permanent Cathode法、以下「PC法」という。)の場合はステンレス製の薄板を、コンベンショナル法(種板法)の場合は高純度の銅からなる薄板状の種板を陰極(カソード)としてそれぞれを交互に電解槽内に貯えられた電解液内に浸漬し、電圧を印加することでカソード(ステンレス製の陰極板表面又は種板)の表面に銅を電着させ、PC法の場合は後工程で電着した電気銅をステンレス製の薄板から剥ぎ取ることにより製品とし、種板の場合はそのままの状態で製品として出荷している。
【0003】
電解精製における陽極板であるアノードと陰極板であるステンレス製カソード板又は種板とは、電解精製効率を上げるために、両者はかなり接近して電解層内に配列される。そのため、両者の垂直性の悪さはショートにつながり、生産性を大きく阻害する要因となる。特に、アノードの場合には、本体部が平らであっても耳部が正しく形成されていないとアノードを懸垂状態としたときの垂直性が悪くなり、電解精製時にショートを発生させることにつながる。従って、アノードは事前にプレス加工を施し、垂直性を改善させた上で電解精製に供している。
【0004】
アノードのプレス加工に関し、特許文献1では、随時任意に選んだ複数のアノードに対し、垂直性を左右する耳プレス変数である懸垂方向の耳受角度および板厚方向の耳受け位置のいずれか一方または両方の値を変えてプレス矯正した後垂直性を評価し、その結果を基に耳プレス変数を調整する電解用陽極板の矯正方法を開示している。また、特許文献2では、アノードの耳下部を曲面もしくは平面に削りだすことで電解槽に装入された際の垂直性維持するアノード作製方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−89891号公報
【特許文献2】特開2000−96280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のアノードの垂直性矯正方法は、作業者が実測等によってアノードの垂直性に関するデータを取得し、また、過去に得られた参考値を基に試行錯誤を繰り返しながらプレス機を手動で調整して耳プレスを行うことによりアノードの垂直性の矯正を行うものであった。また、測定データは日毎にまとめた平均値を使用しているため、プレス機の調整は早くともデータ取得日の翌日になり、垂直性の矯正に反映されるまでに時間を要していた。このため、アノードの垂直性の矯正に時間を要すると共に垂直性の精度を高めることが容易でないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、手動による作業を極力排除することで、アノードの垂直性の矯正の自動化を図ると共に、垂直性の矯正に要する時間を短縮し、且つ、各アノードごとに個別に調整することができるようにしたアノードの垂直性矯正方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、金属の電解精製に用いられるアノードの垂直性を矯正するアノードの垂直性矯正方法において、アノードの垂直性に関するデータを測定する垂直性測定工程と、アノードの耳部を載置する耳受け部を有し、当該耳受け部に載置されたアノードの耳部をプレスすることにより電解槽に懸垂支持される耳部の裏面の角度を矯正するプレス機の耳受け部にアノードの耳部を載置する工程と、垂直性測定工程で測定したデータに基づいてアノードの垂直性が正しく矯正されるように耳受け部の角度を調整する工程とを備えてなることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の銅電解用アノードの矯正方法において、耳受け部は、平面状の耳受け面と、円筒状の可動部と、を備えて形成されると共に、駆動機構は、耳受け部の円筒状の可動部をその中心軸を中心にして回動可能に連結されたレバーアームと、レバーアームを駆動するモータとを備え、垂直性測定装置によって測定されたデータに基づいて耳受け部の円筒状の可動部を回動させることにより耳受け面の傾斜角度の調整を行うことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、金属の電解精製に用いられるアノードの垂直性を矯正するアノードの垂直性矯正装置において、アノードの垂直性に関するデータを測定する垂直性測定装置と、アノードの耳部を載置する耳受け部を有し、当該耳受け部に載置されたアノードの耳部をプレスすることにより電解槽に懸垂支持される耳部の裏面の角度を矯正するプレス機とを備え、耳受け部の角度を垂直性測定装置によって測定したデータに基づいて垂直性が正しく矯正される角度となるように調整する駆動機構とを備えてなることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載のアノードの垂直性矯正装置において、耳受け部は、平面状の耳受け面と、円筒状の可動部と、を備えて形成されると共に、駆動機構は、耳受け部の円筒状の可動部をその中心軸を中心にして回動可能に連結されたレバーアームと、レバーアームを駆動するモータとを備え、垂直性測定装置によって測定されたデータに基づいて耳受け部の円筒状の可動部を回動させることにより耳受け面の傾斜角度の調整を行うことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために請求項5に記載の本発明は、請求項3又は4に記載のアノードの垂直性矯正装置において、モータは、パルスモータであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るアノードの垂直性矯正方法及び装置によれば、アノードの垂直性を測定し、そのデータに基づいてアノードの垂直性の矯正を行うことにより、アノードの垂直性の矯正の自動化を図り、矯正に要する時間を短縮できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るアノードの垂直性矯正装置の好ましい一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1に示すアノードの垂直性矯正装置の正面図である。
【図3】(a)は耳受け部の可動部及び軸受けの拡大図、(b)は隙間を示す側面図である。
【図4】受金型の他の構成を示す図である。
【図5】垂直性測定装置の測定位置における正面図である。
【図6】垂直性測定装置の待機位置における正面図である。
【図7】垂直性測定装置が適用された搬送ラインを示す図である。
【図8】垂直性測定装置の側面図である。
【図9】垂直性測定装置の平面図である。
【図10】距離測定手段の構成を示す斜視図である。
【図11】アノードの距離測定位置を示す図である。
【図12】本発明に係るアノードの垂直性矯正装置の動作を説明するフローチャートである。
【図13】本発明に係る垂直性検査の工程を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[アノードの垂直性矯正装置の構成]
以下、本発明に係るアノードの垂直性矯正装置(以下、「垂直性矯正装置」という。)及びアノードの垂直性矯正方法について、好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係るアノードの垂直性矯正装置の好ましい一実施形態を示す側面図、図2は図1に示すアノードの垂直性矯正装置の正面図である。図示された垂直性矯正装置1は、概略として、粗銅を鋳造することによって形成された電解精製用の陽極板となるアノード2(図11参照)に対し、その耳部2eを矯正する耳垂直プレス機(プレス機)10と、耳垂直プレス機10の円筒形の耳受け部15を回動させる駆動機構20と、アノード2の垂直性を検出する垂直性測定装置30と、垂直性測定装置30(図5参照)が取得したデータに基づいて駆動機構20を制御する制御装置40とを備えて構成されている。
【0016】
図3は耳受け部の詳細を示し、(a)は軸受けの正面断面図、(b)は軸の側面断面図である。図3(a),(b)に示すように耳受け部15は軸18(15aは回動中心)を有し、その一端にはレバーアーム16の一端が固定されている。また、軸18は軸受19A,19Bによって軸支されているが、図3(a),(b)に示すように軸受19A,19Bは軸18に対して上下方向に僅かに空間が生じるように高さgの隙間190が設けられている。
【0017】
ここで、隙間190を有した軸受19A,19Bを設ける理由について説明する。レバーアーム16が回動する際、その軸18に対する支点は、その周囲(上下左右)から保持される必要がある。耳部2eをプレス時の垂直荷重は受金型14に設けられている半円断面を有する溝状の凹面14aが受けている。そして、受金型14はレバーアーム16が回転する際、耳受け部15及び軸18に対して下方向に対する保持機能は有しているが上方向に対する保持機能は有しない。そこで、隙間190を有する軸受19A,19Bを軸18に取り付けて軸18が上下に動けるようにし、耳受け部15が正常に回動できるようにしている。また、耳垂直プレス機10の長期使用により受金型14の凹面14aが摩耗しても軸受19A,19Bを下方向に可動させることができる。
【0018】
なお、軸受19A,19Bを有しない構成も可能である。この場合、図3(a)に示す受金型14に対し、その上面を耳受け部15の回動中心15aの位置よりも高さhを増やして図4に示すようにし、凹面14aが受け部15の軸受として機能するようにすればよい。
【0019】
耳垂直プレス機10は、図1及び図2に示すように、概略として、本体11と、この本体11に設けられて油圧により上下動するシリンダ12と、シリンダ12の下部に取り付けられてアノード2の耳部2eを押圧する受金型13と、この受金型13に対向させて耳部2eの下側に配設される受金型14と、上面が平坦とされ、全体が回動可能に受金型14の上部に設けられた上記耳受け部15と、この耳受け部15に一端が固定されると共に他端が駆動機構20の駆動源であるモータ(ここでは、パルスモータ21)の出力軸に連結されたレバーアーム16と、アノード2の耳部2eの付け根部の下側を支えるガイド部材17とを備えている。
【0020】
駆動機構20は、制御装置40によって回転状態(回転数、駆動時間及び回転方向等)が制御される上記パルスモータ21と、レバーアーム16の他端が回動自在に係着され、パルスモータ21の上記回転状態に応じて上記レバーアーム16の他端を上下動させると共に、レバーアーム16を介して耳受け部15を回動させて受金型14の耳受け面(上面)の傾斜角度を調整するレバー駆動板22とを備えている。駆動機構20は、例えば、本体11に取り付けられている。
【0021】
制御装置40は、後述する垂直性測定装置30からのデータを処理して駆動機構20のパルスモータ21を駆動するもので、例えば、CPU、半導体メモリ、その他の回路、入出力デバイス等を備えたいわゆるマイクロコンピュータを主体に構成されており、予め用意されたプログラムに基づいて後述する図12に示すような処理を実行する。
【0022】
図5及び図6は測定位置及び待機位置における垂直性測定装置の正面図、図5は垂直性測定装置の側面図、図8は垂直性測定装置の側面図である。垂直性測定装置30は、概略として、距離測定手段50と、垂直性検出手段60と、排除手段70とを備えて構成されている。ここで、垂直性測定装置30の構成を説明する前に、この垂直性測定装置30を備えた搬送ラインの全体の概要について図5を参照して説明する。アノード2は搬送コンベア3によって耳部2eが掛止されて懸垂状態で水平方向に搬送される。搬送コンベア3によって水平方向(図における左側方向)に搬送されたアノード2は、ついで図示しない昇降コンベアによって垂直方向の上方に向かって搬送される。そして、アノード2が垂直方向に搬送される際のアノード2の本体部2cに対面する位置にアノードの垂直性測定装置30の距離測定手段50が配置されている。距離測定手段50は後述する4つの距離測定センサ51を有しており、この距離測定センサ51によってアノード2の表面までの4点の距離が測定される。
【0023】
垂直性検出手段60は、距離測定センサ51によるアノード2の表面までの距離の測定結果に基づいてアノード2の垂直性を検出すると共に、測定したアノード2の垂直性が良好であるか不良であるかを判定し、その結果を排除手段70へ通知する機能を備えている。排除手段70は、垂直性検出手段60による判定の結果に基づいて、垂直性が不良と判断されたアノード2aをリジェクトコンベア71へ移載し、垂直性が良好と判断されたアノード2bを搬送コンベア72へ移載する。そして、垂直性が良好であるアノード2bはそのまま電解精製に供される。これにより、図示しない電解槽内に浸漬されるアノードとカソードとのショートが回避され、アノードの垂直性不良による電流効率の低下が防止できる。
【0024】
上述した垂直性測定装置30の構成について図8〜図11を参照して具体的に説明する。図5及び図6に示すように、垂直性測定装置30は床面G上に立設されたフレーム31を有し、このフレーム31上に距離測定手段50を水平方向に移動させる水平移動機構32と、さらに距離測定手段50を垂直方向に移動させる垂直移動機構33とを備えて構成されている。距離測定手段50は、図8〜図11に示すようにアノード2の本体部2の形状に即した平面形状を有する測定板52を備え、測定板52はエアシリンダ33bによって上下方向に移動可能なように支持体33aに支持されている。測定板52の表面の4ヶ所には距離測定センサ51が配置されている。この支持体33a及びエアシリンダ33bは距離測定手段50を上下方向に移動可能とする垂直移動機構33を構成している。一方、水平移動機構32は、転動面間にボール又はローラーなどの転動体を介在させた直動機構によって支持体33a及びこの支持体33aに支持された測定板52からなる部分、すなわち距離測定手段50を水平移動させるもので、少ない摩擦抵抗によって距離測定手段50を精密に移動させることができるようになっている。
【0025】
また、4つの距離測定センサ51は、共に発光素子及び受光素子を備えたセンサヘッドを有し、出射されるレーザビームはスポットビームではなく一定の拡がりを有するラインビーム又はエリアビームが用いられる。レーザビームを一定の拡がりを有するラインビーム又はエリアビームとすることで平均化効果により、アノード2の表面の凹凸の影響を受けることなく安定した測定が可能となる。
【0026】
上述したように、水平移動機構32及び垂直移動機構33によって距離測定手段50をアノード2の表面と正対してその距離を測定するための測定位置(図5に示す位置)と、この測定位置から離れた位置の待機位置(図6に示す位置)との間を移動させることとしたのは、アノード2を垂直方向の上方へ搬送する昇降コンベア4による搬送中のアノード2が万一落下したような場合や距離測定手段50のメンテナンスを行うような場合等の作業性を考慮したためである。
【0027】
[垂直性矯正装置の動作]
次に、上述した垂直性矯正装置1の動作について各図を参照して説明する。図11はアノードの距離測定位置を示す平面図である。また、図12は垂直性矯正装置1の動作を示すフローチャートであり、図13は垂直性測定装置の動作を示すフローチャートである。まず、図5に示すように、垂直性の測定の対象となるアノード2は搬送コンベア3によって測定位置へ搬入され、距離測定手段50に正対(対面)するように位置決めされる。上記垂直性測定装置は、アノード搬送装置が稼動すると同時に動作するシステムとなっており、自動的に垂直性の測定が行われるシステムとなっている。ついで、作業者は制御装置40を操作して垂直性測定装置30を動作させ、アノード2の垂直性の測定を開始する(S201)。
【0028】
垂直性測定装置30では、図7及び図10に示した距離測定手段50による垂直性の検出を行う。距離測定手段50の測定板52を測定位置に位置させた状態において、アノード2が図8及び図9に示す測定板52に対面する位置に到達すると、4つの距離測定センサ51のそれぞれによりアノード2までの距離が測定される。その測定位置は、図11に示すアノード2の本体部2cの左右の2ヶ所についてそれぞれ上下の2点(即ち計4ヶ所)である。そして、4つの距離測定センサ51で測定されたアノード2の表面までの距離の測定データが垂直性検出手段60に送られ、左右の2ヶ所における上下の測定距離の差に基づいて垂直性が判断される。すなわち、アノード2の本体部2cの図11に示すR2とR1との差およびL1とL2との差が算出される。例えば、R2とR1との差およびL1とL2の差のいずれか一方でも±7mmを越えるような場合、すなわち、−7mm≦(R2−R1)≦7mmかつ−7mm≦(L2−L1)≦7mmの場合に垂直性不良とする。このように、左右の2ヶ所について測定を行うこととしたので、検出精度が向上すると共にアノード2の歪みも検知することができる。なお、この演算は垂直性検出手段60に代えて、制御装置40で行ってもよい。この場合、排除手段70への通知は垂直性検出手段60に代えて制御装置40が行うことになる。
【0029】
ここで、垂直性測定装置30の動作を図13のフローチャートを参照して説明する。まず、粗銅を鋳造することによって形成されたアノード2は、垂直良好のアノード2aと判定されるように事前に平面性の矯正が施されている。このアノード2は、搬送コンベア3によって耳部2eが掛止されて懸垂状態で水平方向に搬送されてくる(S301)。搬送コンベア3の端部近傍まで搬送されてきたアノード2は今度は昇降コンベア4によって上方に向かって垂直方向に搬送される(ステップS302)。そして、垂直方向に搬送されるアノード2が所定の位置に来たときにアノード2の本体部2cと正対する位置から垂直性測定装置30の距離測定手段50に設けられた4つの距離測定センサ51によってアノード2の表面までの距離が4点(R1、R2、L1及びL2)において測定される(S303)。距離測定センサ51による測定は、上述したように、アノード2の本体部2cの左右の2ヶ所についてそれぞれ上下の2点、計4ヶ所について測定を行う。
【0030】
4つの距離測定センサ51によって測定されたアノード2の表面までの距離の測定データは垂直性検出手段60に送られ、この垂直性検出手段60によって左右の2ヶ所における上下の測定距離の差に基づく垂直性が判断される(S304)。そして、垂直性検出手段60の垂直性の判定結果に基づいて排除手段70は、垂直性が不良(垂直不良)のアノード2aをリジェクトコンベア71へ移載し、また、垂直性が良好(垂直良好)であると判断されたアノード2bは搬送コンベア72へ移載する選別が行われる(S202)。
【0031】
リジェクトコンベア71へ移載された垂直不良のアノード2aは、直接に又は他のコンベアにより或いは人手によって図1及び図2に示す耳垂直プレス機10へ搬入され、ガイド部材17に係着して位置決めされた後(S203)、垂直性の矯正が行われる。制御装置40は、メモリ等に保存されている垂直不良のアノード2aのそれぞれに対する垂直性のデータに基づいて、制御装置40は駆動機構20のパルスモータ21を駆動する(S204)。パルスモータ21が駆動されることによりレバー駆動板22が図1に示すように上昇又は下降し、これに伴ってレバーアーム16が図1に示す実線又は破線のように動き、これに連動して受金型14上に設けられている耳受け部15が回動し、アノード2aの垂直性が矯正されるように耳受け部15の角度が調整される。その後、制御装置40は耳垂直プレス機10のシリンダ12を降下させ、これに伴ってアノード2aの耳部2eの上面を押圧するように受金型13を降下させ、耳部2eの垂直性を矯正する(S205)。1枚のアノード2aに対する垂直性の矯正が終了すると(S206)、次のアノード2aに対する垂直性の矯正が実施される(S207:Yes)。矯正対象の次のアノード2aが無くなった場合(S207:No)、耳垂直プレス機10による処理は終了する。
【0032】
なお、上記実施形態において、図5に示した排除手段70、リジェクトコンベア71及び搬送コンベア72を設けず、垂直性測定装置30の測定結果に基づいてアノード2aとアノード2bを作業者が手動により仕分けしてもよい。
【0033】
[実施形態の効果]
本実施形態に係るアノードの垂直性矯正装置によれば、垂直性測定装置30によりアノードの垂直性を測定してそのそれぞれに対する垂直性のデータを取得して垂直不良のアノード2aを判別し、これに対して耳垂直プレス機10により垂直性の矯正を実施するようにしたので、アノード2の垂直性の矯正の自動化が図れ、しかも矯正に要する時間を短縮できるという効果がある。
更に、隙間190を有する軸受19A,19Bによって軸18を軸支することにより、受金型14の凹面14aが摩耗した場合でも耳受け部15を支障なく回動させることができるという効果がある。
【0034】
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1 垂直性矯正装置
2 アノード
2a 垂直不良のアノード
2b 垂直良好のアノード
2c 本体部
2e 耳部
3 搬送コンベア
4 昇降コンベア
10 耳垂直プレス機
11 本体
12 シリンダ
13 受金型
14 受金型
14a 凹面
15 耳受け部
15a 回動中心
16 レバーアーム
17 ガイド部材
18 軸
19A 軸受
19B 軸受20 駆動機構
21 パルスモータ
22 レバー駆動板
30 垂直性測定装置
31 フレーム
32 水平移動機構
33 垂直移動機構
33a 支持体
33b エアシリンダ
40 制御装置
50 距離測定手段
51 距離測定センサ
52 測定板
60 垂直性検出手段
70 排除手段
71 リジェクトコンベア
72 搬送コンベア
190 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の電解精製に用いられるアノードの垂直性を矯正するアノードの垂直性矯正方法において、
アノードの垂直性に関するデータを測定する垂直性測定工程と、
前記アノードの耳部を載置する耳受け部を有し、当該耳受け部に載置された前記アノードの耳部をプレスすることにより電解槽に懸垂支持される前記耳部の裏面の角度を矯正するプレス機の前記耳受け部に前記アノードの耳部を載置する工程と、
前記垂直性測定工程で測定したデータに基づいて前記アノードの垂直性が正しく矯正されるように前記耳受け部の角度を調整する工程と、
を備えてなることを特徴とするアノードの垂直性矯正方法。
【請求項2】
請求項1に記載の銅電解用アノードの矯正方法において、
前記耳受け部は、平面状の耳受け面と、円筒状の可動部と、を備えて形成されると共に、
前記駆動機構は、前記耳受け部の円筒状の可動部をその中心軸を中心にして回動可能に連結されたレバーアームと、前記レバーアームを駆動するモータと、を備え、
前記垂直性測定装置によって測定された前記データに基づいて前記耳受け部の円筒状の可動部を回動させることにより前記耳受け面の傾斜角度の調整を行うことを特徴とするアノードの垂直性矯正方法。
【請求項3】
金属の電解精製に用いられるアノードの垂直性を矯正するアノードの垂直性矯正装置において、
アノードの垂直性に関するデータを測定する垂直性測定装置と、
前記アノードの耳部を載置する耳受け部を有し、当該耳受け部に載置された前記アノードの耳部をプレスすることにより電解槽に懸垂支持される前記耳部の裏面の角度を矯正するプレス機と、を備え、
前記耳受け部の角度を前記垂直性測定装置によって測定したデータに基づいて前記垂直性が正しく矯正される角度となるように調整する駆動機構と、
を備えてなることを特徴とするアノードの垂直性矯正装置。
【請求項4】
請求項3に記載のアノードの垂直性矯正装置において、
前記耳受け部は、平面状の耳受け面と、円筒状の可動部と、を備えて形成されると共に、
前記駆動機構は、前記耳受け部の円筒状の可動部をその中心軸を中心にして回動可能に連結されたレバーアームと、前記レバーアームを駆動するモータと、を備え、
前記垂直性測定装置によって測定された前記データに基づいて前記耳受け部の円筒状の可動部を回動させることにより前記耳受け面の傾斜角度の調整を行うことを特徴とするアノードの垂直性矯正装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のアノードの垂直性矯正装置において、
前記モータは、パルスモータであることを特徴とするアノードの垂直性矯正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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