アブレーションおよび可視化装置
アブレーションおよび可視化装置(10)がシャフト(12)と、シャフトの遠位端部(14)に結合された少なくとも1つのアブレーション素子(18)と、シャフトに遠位端部に近接して結合されたスコープ(28)とを含む。スコープは、光ファイバ内視鏡、赤外線センサ、または超音波センサであってよく、スコープによって収集された画像を表示するための出力装置に結合してもよい。スコープは、少なくとも1つのアパチャ(30)を含み、アパチャ(30)は可動式であってもよい。レンズまたはフィルタなどの光学素子(39)がアパチャの上方に位置付けられていてもよい。スコープは、アブレーション素子に対して側方に、またはアブレーション素子と実質的に平行であり、かつその平面から離隔された平面内に位置付けられてもよい。スコープは、アパチャがアブレーション素子の遠位側または近位側に位置付けられた状態で位置付けられていてもよい。スコープは、シャフトにスライド可能または回転可能に結合してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本発明は、2006年6月23日出願の米国特許仮出願第60/815,880号(’880出願)の恩典を主張する。本出願はまた、現在係属中の2006年12月21日出願の米国特許非仮出願第11/642,923号(’923出願)の優先権も主張する。’880出願と’923出願はともに、本明細書で充分に説明した場合と同じように、参照によって本明細書の一部とする。
【0002】
本出願は、2006年6月23日に全て出願された米国仮特許出願第60/815,852、米国仮特許出願第60/815,853号、米国仮特許出願第60/815,881号、および仮特許出願第60/815,882号に関連している。以上の出願の全てを、それらを本明細書で充分に説明した場合と同じように、参照によって本明細書の一部とする。
【0003】
本発明は、心房細動の治療に関する。特に、本発明は、心外膜マッピング中およびアブレーション処置中に標的組織を可視化する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
心房細動は、心筋(心筋層)における電気的活動の乱れから生じることがよく知られている。心房細動の治療のために、外科的メイズ手術が開発されている。これは、予め選択されたパターンで心房心筋に一連の外科的切開部を作り出して、瘢痕組織によって境界を形成して生存組織による伝導性ルートを作り出すことを伴う。
【0005】
メイズ手術の外科的切開の代替方法として、心臓の経壁アブレーションを使用してもよい。このようなアブレーションは、動脈または静脈を通して導入した血管内装置(カテーテルなど)を使用することによって心室の中から行う場合や(心内膜アブレーション)、患者の胸部の中に導入した装置を使用することによって心臓の外側から行う場合がある(心外膜アブレーション)。極低温アブレーション、高周波(RF)アブレーション、レーザ・アブレーション、超音波アブレーション、およびマイクロ波アブレーションを始め、これらに限定されることなく様々なアブレーション技法を使用することができる。アブレーション装置を使用して、長い経壁損傷部、即ち心筋の充分な厚みにわたって延在する損傷部を作り出して電気伝導を阻止し、これによって心房心筋内に伝導性ルートの境界を形成している。外科的切開に代わって経壁アブレーションを使用することの最大の利点はおそらく、最初に心肺バイパス(CPB)を確立せずにアブレーション処置を行うことが可能となることである。
【0006】
アブレーションを使用する場合も、外科的切開を使用する場合も、メイズ手術およびその変形手術を行う際には、肺静脈を周囲の心筋から隔離する経壁切開部または経壁損傷部を設けることが最も有効であると一般に考えられている。肺静脈は、心臓の後部側の左心房壁と接合して、肺を心臓の左心房に繋げている。このような処置は、抗不整脈薬の投与なしで57%から70%の成功をもたらすことが分かっている。しかしこれらの処置は、損傷部の回復、不整脈の非肺静脈の病巣、またはさらなる組織改良の必要性を原因とする20%から60%の再発率とも関連している。
【0007】
過去の外科的アプローチとカテーテルに基づいたアプローチとによって、完全なブロックが達成された際には、左心房(LA)の直線的な損傷部が心房細動の治療で功を奏することが証明されている。このような技法の一つに、僧帽弁狭部における直線的なアブレーションがあり、これは、側方僧帽弁輪から左下肺静脈(LIPV)口に延在するものとして定義される。研究により、僧帽弁狭部のカテーテル・アブレーションと肺静脈(PV)隔離との組み合わせが、確実に明らかな伝導ブロックを形成し、この組み合わせが発作性心房細動に対する高い治癒率に関係していることが示されている。
【0008】
これらの位置に正確な損傷部を作り出すことは、いくつかの理由で、心内膜アブレーションを行う医師に対して大きな障害を提示している。第一に、メイズ手術において作り出される損傷部の多くは、右心房の中から作り出すことが可能であるが、肺静脈の損傷部は左心房内で作り出さねばならず、別個の心房アクセス・ポイントまたは右心房からの中隔横断穿刺のいずれかが必要になる。第二に、細長い軟性の血管内アブレーション装置は、肺静脈損傷部を形成するのに必要な複雑な構造形状の中に入れることが困難である。また、アブレーション装置を、鼓動している心臓の壁に対して適切に位置付けて維持しておくことも困難である。さらに、心臓内の生体構造および血管内装置の可視化がしばしば不十分であって、血管内装置の正確な位置を知ることが困難なことがあり、これによって損傷部の位置を誤ってしまう可能性がある。
【0009】
心房細動の治療のための経壁損傷部を作り出すのに有用な心外膜アブレーション装置および方法が、Vaskaらの米国特許第7,052,493号(「Vaska」)およびSliwaらの米国特許第6,971,394号(「Sliwa」)に記載されており、これらの両方を、本明細書で充分に説明した場合と同じように、参照によって明確に本明細書の一部とする。Sliwaは、胸部切開によって、次いで心膜貫通によってアブレーション装置を配置することによって、肺静脈に隣接した心臓壁内に経壁損傷部を形成して、アブレーション装置が心臓の心外膜面と接触するように配設されるようにする方法について述べている。このアブレーション装置は、カテーテルの作動端部の付近に、留め部、分岐部、または切欠きなどの位置決め装置であって、カテーテルの作動端部を肺静脈に隣接して位置付けるように、1つまたは複数の肺静脈または近傍の他の解剖学的構造物、(例えば心膜翻転部位、下大静脈、上大静脈、大動脈、左心耳、または右心耳)と係合するように構成された装置を含む。
【0010】
心外膜面上でアブレーション素子を正確に配置することが、PV隔離と僧帽弁狭部のアブレーションとの有効性にとって極めて重要である。心臓以外の組織の解剖学的関係も極めて重要な考慮事項である。例えば食道は、後部左心房の近くにあることから、アブレーション処置中の食道の損傷を防止するように細心の注意を払わなければならない。これは心房細動に対するカテーテル・アブレーションに後続した合併症として心房食道瘻が報告されていることによる。しかし、非可視の位置決め装置に頼るには、極めて高度な医師のスキルおよび経験が必要であり、このような精確な配置の妨げとなる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】アブレーションおよび可視化装置を示す図である。
【0019】
【図2】図1で示したアブレーションおよび可視化装置の遠位端部の拡大図である。
【0020】
【図3】側方かつ遠位の構成で位置付けられたスコープを備えたアブレーションおよび可視化装置の遠位端部を示す図である。
【0021】
【図4】これも側方かつ遠位の構成で位置付けられたスコープを示す図である。
【0022】
【図5】側方の構成でシャフトにスライド可能に結合されたスコープを備えたアブレーションおよび可視化装置の遠位端部を表す図である。
【0023】
【図6】複数の観察用アパチャを有するスコープを備えたアブレーションおよび可視化装置の遠位端部を示す図である。
【0024】
【図7】移動可能な観察用アパチャを有するスコープを備えたアブレーションおよび可視化装置の遠位端部を示す図である。
【0025】
【図8】アブレーションおよび可視化装置の遠位端部と透明のキャップとの分解図である。
【0026】
【図9】スコープを側方位置に結合する透明のキャップを備えたアブレーションおよび可視化装置の遠位端部の上面図である。
【0027】
【図10】図9の等角図である。
【0028】
【図11】図9の側面図である。
【0029】
【図12】スコープを直交位置で結合するように透明のキャップを利用したアブレーションおよび可視化装置の遠位端部の等角図である。
【0030】
【図13】図12の側面図である。
【0031】
【図14】図12の等角底面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1は、本発明の第1実施形態によるアブレーションおよび可視化装置10を示している。アブレーションおよび可視化装置10は一般的に、遠位端部14(図2に拡大図で示している)と近位端部16とを有するシャフト12を含む。
【0033】
少なくとも1つのアブレーション素子18が遠位端部14上に設けられている。ここに示した装置10の実施形態は、2つのアブレーション素子18を含んでいるが、当業者であれば、アブレーション素子18の正確な数は、アブレーションおよび可視化装置10の個々の用途によって変化してもよいと理解されるであろう。さらに、アブレーション素子18は、超音波アブレーション素子、RFアブレーション素子、またはレーザ・アブレーション素子などの任意の適切な素子であってもよいことも理解されるであろう。これらのアブレーション素子18は、互いに対して固定してもよく、あるいはそれらの相対的な配向または位置を調節できるように柔軟にまたは融通の利くように相互連結してもよい。装置10の一部の実施形態では、アブレーション素子18は実質的にハウジング20の中に封入されている。
【0034】
シャフト12は比較的硬質であることが好ましく、遠位端部14はシャフト12に対して様々な位置に連節可能であって、使用者が、患者の体内への装置10の導入角度と標的面の配向に対してアブレーション素子18を調節できるようになっていることが好ましい。したがって、遠位端部14は、使用者によって変形された際に変形形状を保持する積層コイル22を組み込んでもよい。積層コイル22は、鞘の中に封入されていてもよい。しかし、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、遠位端部14を任意の方法で連節可能にしてもよいことは理解されるべきである。さらに、比較的硬質のシャフト12ではなく可動型シャフト12を使用することも本発明の範囲内であると見なされる。
【0035】
ハンドル24は、シャフト12の近位端部16に含まれていてもよい。装置10は、コネクタ26を近位端部16に含んでいてもよい。コネクタ26は、装置10を流体送達および採取機構、吸入システム、制御システム、データ収集システム、アブレーション・エネルギー送達システム、およびそれらの任意の組み合わせで結合するように構成してもよい。ハンドル24は、装置10がコネクタ26を介して結合された任意のシステムのためのアクチュエータまたは他の制御機構(例えばアブレーション・エネルギー・システムを作動または停止するスイッチ)を含んでもよい。コネクタ26は、装置10がアブレーション・システムに一度連結されると、約6時間などの限定された時間量だけ使用できるようにするEEPROMを含むことが好ましい。
【0036】
スコープ28は遠位端部14で、またはその付近でシャフト12に取り付けられているか、または一体化されている。スコープ28は、アパチャ30を介して患者の体内から画像を収集する。その画像は、その後モニタまたはディスプレイに出力してもよい。この画像で、解剖学的状況と装置10の相対的な配向との両方を視覚的に確認できる。したがって医師は、アブレーション素子18を適切に位置付けてアブレーション損傷部を作り出す際の視覚的補助として、その画像を利用することが可能である。さらにその画像は、医師が、アブレーション処置中に食道組織などの非標的組織を識別し、その位置を特定し、避けることによって周囲器官および周囲組織に付随的損傷を与える可能性を大幅に軽減する助けとなる。
【0037】
本発明の一部の実施形態において、スコープ28は、画像を光ファイバ32でディスプレイ装置(図示せず)に送信する光ファイバ内視鏡である。光ファイバ32をアパチャ30に直接連結してもよい。しかし、例えば超音波センサおよび赤外線センサを含んだ他のスコープ28も企図するものであることは理解されるべきである。したがって、「スコープ」という用語は、装置が外科的用途に適したように充分小型である限り、画像を取り込み、送信することが可能な全ての画像取込み装置、可視化装置、カメラ、センサ、および他の類似の装置を包含することを目的としている。「アパチャ」という用語は、そのような全ての装置の末端部を包含することを目的とし、「画像」という用語は、その形態(可視光、赤外線エネルギーなど)または出力にかかわらずスコープ28によって収集され、または取り込まれた全ての画像を包含することを目的としている。
【0038】
スコープ28は、装置10の個々の特定の用途に応じていくつかの構成で位置付けてもよい。図1および2は、アブレーション素子18に対して側方に位置付けられたスコープ28を示している。即ちスコープ28は、アブレーション装置18と実質的に同一平面に位置付けられている。さらに、スコープ28は、アパチャ30をアブレーション素子18の近位側に位置する状態で位置付けられている(即ちアパチャ30はハンドル24側に位置付けられている)。したがってアブレーション素子18の少なくとも一部分がスコープ28の視野内にあってもよく、これによって装置10の使用者に、装置10と、アブレーションするべき組織と、任意の周囲の非標的組織または解剖学的構造物との間の空間的関係を決定するための基準点がもたらされる。この構成は、アクセスが極端に制限されていて、使用者が、僧帽弁輪線などのアブレーション標的位置を識別することを望む場合、特に望ましい。
【0039】
装置10の他の実施形態を図3および4で示している。スコープ28がここでもアブレーション素子18に対して側方に位置付けられている。しかし、スコープ28は、図1および2で示した実施形態よりもさらに遠位に位置付けられている。この構成は、使用者が、肺静脈などの構造物の付近に、またはそれに対して損傷部が作り出されることを望む場合、特に望ましい。図3および4は、最も遠位のアブレーション素子18と実質的に平行に位置付けられたアパチャ30を示しているが、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、アパチャ30を最も遠位のアブレーション素子18よりもさらに遠位においても等しく適切に位置付けることが可能である。
【0040】
図5で示した装置10のさらに他の実施形態では、スコープ28はカラー(collar)33を介してシャフト12にスライド可能に結合されている。図5で示した実施形態では、スコープ28はアブレーション素子18に対して側方に位置付けられている。カラー33は、スコープ28をシャフト12に沿った2つ以上の点に位置付けることができるように、スコープ28がシャフト12に対して遠位方向および近位方向にスライドするのを可能にする。例えば、スコープ28を図5に実線で示したように近位にまず位置付け、これを、アブレーションするべき組織と近傍の解剖学的特徴物とに対する装置10の空間的関係に対する基準としてもよい。次いで医師は、スコープ28をカラー33を介して遠位方向に、ここに点線で示した位置へと前進させて、装置10に対して遠位に位置する特徴物の観察状況を向上させて、例えばアブレーション素子18が僧帽弁狭部の上方に位置付けられていることを検証することができる。したがって図5で示した実施形態では、スコープ28を、アパチャ30をアブレーション素子18の遠位側及び近位側に位置付けられるように調整することが可能である。さらに、カラー33を、シャフト12に回転可能に結合させて、スコープ28をシャフト28を中心に回転させ、アブレーション素子18の平面と平行であり、かつその平面から離隔された複数の平面内に位置付けてもよい。
【0041】
図6は、スコープ28が複数のアパチャ30を含む装置10の実施形態を示している。アパチャ30は様々な方向に向けてよく、これによって医師にアブレーション素子18の正面、上方、側面の視野が追加的に与えられる。さらに、図6は装置10の頂部に取り付けられたスコープ28を示している。即ちスコープ28は、アブレーション素子18に対して側方ではなく、アブレーション素子18の平面と実質的に平行であり、かつその平面から離隔された平面内に位置付けられている。アパチャ30によって取り込まれた画像は、例えば分割画面式または多重モニタ式の構成で並べて表示してもよい。代替方法として、医師は、必要に応じてアパチャ30の間で切り替えて、出力用のアパチャ30を1つ選出してもよい。
【0042】
装置10のさらに他の実施形態を図7で表している。図7では、スコープ28は、アブレーション素子18の平面と実質的に平行であり、かつその平面から離隔された平面内に位置付けられている。スコープ28は単一の、可動式アパチャ30を含む。可動式アパチャ30の使用によって、医者は、処置中に視野を所望の方向に向け、視野を調整することが可能になる。アパチャ30を、玉継ぎ手などの旋回アセンブリ上に取り付けてよく、あるいは他のやり方で連節してもよい。可動式アパチャ30の制御を、ハンドル24に組み込まれた1つまたは複数のアクチュエータを介して行ってもよい。
【0043】
図8は、遠位端部14が透明なキャップ34を受け取るように構成された装置10の実施形態を示している。キャップ34はスコープ28を装置10の遠位端部14に結合する機構、例えば開口部36を提供している。キャップ34を使用すると、スコープ28を迅速かつ簡単に結合および分離することができる。これによって、例えば低侵襲的処置を使用するかどうか依存して、スコープ28を備えた装置10または備えていない装置10のいずれを利用するかという選択肢が医師に与えられる。キャップ34は、アブレーション処置の間にスコープ28を装置10に加える選択肢も医師に与える。
【0044】
さらにキャップ34は、装置10の遠位端部14に容易に着脱できるように設計され、かつそのことを目的としている。図9〜14で示したように、スコープ28のアブレーション素子18に対する所望位置に応じて、様々な異なったキャップ34を利用することができる。例えば、1つのキャップ34を、スコープ28をアブレーション素子18に対して側方に位置付けるように構成してもよく(図9〜11)、第2のキャップ34を、スコープ28をアブレーション素子18に対して直交するように位置付けるように構成してもよい(図12〜14)。したがって、医師は、アブレーション処置を開始する前にアブレーション素子18に対するスコープ28の特定の構成を選択し、かつ必要に応じて、処置中にその構成を変更する融通性を有する。
【0045】
キャップ34はまた、アブレーション素子18を超えた遠位方向の視野が必要な場合、そのように延在することができる。その結果、スコープ28の正面に追加的に得られた透明な空間は、例えば移動させなければスコープ28の視野を覆い隠すことになる血液を移動させることによって、標的組織付近の他の解剖学的本体に対する追加の見通しを医師に与えることができる。キャップ34はさらに、アパチャ30が、スコープ28に付着したり、これを阻止したり、またはこれに損傷を与える可能性のある材料と接触しないように保護する。代替方法として、図2で示したものなどのスコープ28上の張出し部(overhang)37がアパチャ30を保護してもよい。
【0046】
装置10はさらに、スコープ28によって取り込まれた視野または画像を縮小する、拡大する、フィルタリングする、または他のやり方で変更するために、レンズまたはフィルタなどの光学素子39を含んでもよい。例えばスコープ28の視野を拡大するために魚眼レンズを利用することもできる。代替的に、スコープ28の視野を変更するために、図7の可動式アパチャ30の実施形態を効果的に模擬した可動式ミラーを利用することもできる。任意で、図8および9で示したように、1つまたは複数の光学素子39がキャップ34に組み込まれている。
【0047】
アブレーションおよび可視化装置10を使用して、PV隔離アブレーション損傷部と隣接した僧帽弁狭部のアブレーション損傷部を作り出してもよい。装置10は、切開部を通して患者の体内へと通される。装置10を、これにスコープ28を予め取り付けて導入してもよいし、あるいは導入後にスコープ28を遠位端部14に取り付けてもよい。
【0048】
スコープ28によって取り込まれ、収集された画像はディスプレイ上に出力される。必要に応じて、医師はアパチャ30を移動させて、スコープ28の視野を変更することができる。医師はディスプレイ上に出力された視覚情報を利用して、患者の体内で装置10を操縦して、付近の解剖学的構造物と非標的組織とを避けながら、患者の心臓の心外膜面上にアブレーション素子18を適切に位置付けて、僧帽弁狭部のアブレーションを作り出す。医師はまた、ディスプレイを利用して、アブレーション素子18が、PV隔離アブレーション損傷部と隣接した僧帽弁狭部の損傷部を作り出すように位置付けられていることを確認することもできる。PV隔離アブレーション損傷部は、米国特許第7,052,493号で開示されたものなど、肺静脈のまわりを包み込むベルト・タイプのアブレーション装置を使用することによって作り出してもよい。この米国特許第7,052,493号の全体を、本明細書で充分に説明した場合と同じように、参照によって本明細書の一部とする。しかし、当業者であれば、任意の適切な装置を利用して、PV隔離アブレーション損傷部を作り出してもよいことを理解するであろう。
【0049】
アブレーション素子18が一度適切に位置付けられると、医師はこれを作動してアブレーションのエネルギーを心臓組織に送達し、ディスプレイを利用して、処置中に拍動している心臓の適切な位置に装置10を維持することが可能である。また、このディスプレイを利用して、処置の終わりにアブレーションが完了したことを視覚的に確認することもできる。
【0050】
アブレーション素子18は少なくとも一次元に集束された超音波エネルギーを送達することが好ましい。特に、アブレーション素子18は、約2mmから約20mmの、より好ましくは約2mmから約12mmの、最も好ましくは約8mmの焦点距離を有する集束超音波を送達することが好ましい。別の述べ方をすると、焦点は、装置10の底(または接触)面からここで述べた範囲内の焦点軸(FA)に沿って離隔されている。集束超音波はまた、FAに対して約10度から約170度、より好ましくは約30度から約90度、最も好ましくは約60度の角度を形成する。圧電変換器が利用されることが好ましい。変換器は、エンクロージャとエンクロージャの上に嵌る頂部とを有するハウジングの中に取り付けられることが好ましい。エンクロージャは、エンクロージャの両側に、変換器の湾曲にほぼ一致している湾曲したリップを有してもよい。変換器は、約0.43インチの長さ、約0.35インチの幅、および約0.017インチの厚みを有していることが好ましい。変換器は、上述の好ましい焦点距離と一致した曲率半径(R)を有している。変換器は、上述の好ましい角度範囲内で焦点(F)と角度(A)を形成している。
【0051】
収束超音波エネルギーを使用することの利点は、エネルギーを組織の中に集中させることが可能であることである。集束超音波を使用することの他の利点は、エネルギーが焦点に到達した後に発散し、これによって標的組織を超えた組織に損傷を与える可能性を、平行な超音波エネルギーと比べて軽減することである。心外膜組織を平行な超音波でアブレーションする際、標的組織によって吸収されない平行な超音波エネルギーは心室を通過し、超音波エネルギーが心室の他方側の心内膜面に到達したとき、比較的小さな面積に集中したままとなってしまう。本発明では、超音波エネルギーが焦点を超えて発散し、より大きな面積に拡がることによって他の構造物に損傷を与える可能性を軽減する。
【0052】
収束超音波エネルギーは湾曲した変換器で生成されることが好ましいが、集束超音波エネルギーは任意の適切な構造物で作り出してもよい。例えば、音響レンズ化を使用して集束超音波を提供してもよい。音響レンズは、平坦な圧電素子および整合層と使用することができる。さらに、超音波エネルギーは組織に向けて直接放射されることが好ましいが、本発明の範囲から逸脱せずに、表面から反射させて組織に向けてもよい。
【0053】
このエネルギーを、エネルギーの少なくとも約90%などの超音波エネルギーを、本明細書で述べた、長軸またはFAに沿って見た際の好ましい角度範囲および曲率半径内に、集束または集中させるように配向された、いくつかの小型変換器によって生成してもよい。例えば、多重素子の音響位相化されたアレイを使用して、1つまたは複数のセルから音響ビーム操縦能力を提供してもよい。当業者であれば、多重整合層、集束音響レンズ、および非集束音響窓なども使用することができることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲から逸脱せずに、ここで述べていない他の方法を含むいくつかの異なったやり方で集束エネルギーを作り出してもよい。
【0054】
本発明の他の態様では、アブレーション・エネルギーの周波数、アブレーション・エネルギーの電力、組織に対する焦点の位置、および/またはアブレーション時間など、装置10の少なくとも1つの特徴を変化させながら、装置10が2つの異なった期間動作される。例えば、装置10を、制御されたやり方で周波数を時間経過とともに変化させて作動させて組織をアブレーションしてもよい。特に、装置10は、組織へのエネルギーの送達を制御することによって経壁損傷部作り出すように作動されることが好ましい。組織をアブレーションする際に周波数を変化させることが好ましいが、当然ながら、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、装置10を単一の周波数で作動させることができる。
【0055】
本発明の第1の処理方法では、変換器は約2MHzから約7MHz、好ましくは約3.5MHzの周波数で、約80ワットから約150ワット、好ましくは約130ワットの電力で、短いバーストで作動する。例えば、変換器を約0.01秒から約2.0秒間、好ましくは約1.2秒間作動してもよい。変換器は、作動と作動の間で、約2秒から約90秒間、より好ましくは約5秒から約80秒間、最も好ましくは約45秒間非活動状態である。このやり方で、制御された量の蓄積エネルギーを短いバーストで組織に送達して、焦点およびその付近の組織を加熱すると同時に遠方表面での血液冷却の影響を最小限に抑えることが可能である。この周波数でのアブレーションを、約0.5キロジュールから約3キロジュールなどの制御された量のエネルギーが送達されるまで継続してもよい。比較的短いバーストでのこの周波数での治療は、焦点での局部的な加熱を生成する。最初の周波数では、エネルギーは、より高い周波数で吸収されるほど急速には組織内に吸収されず、焦点に到達する前の超音波エネルギーの組織内への吸収によって焦点での加熱が大きな影響を受けることはない。
【0056】
最初の周波数での治療に続いて、変換器はより長い期間、好ましくは約1秒から約4秒間、より好ましくは約2秒間、焦点と変換器の間の組織をアブレーションするように作動される。この治療中の周波数も、好ましくは約2MHzから約14MHz、より好ましくは約3HMzから約7MHz、最も好ましくは約6MHzである。変換器は、約0.7秒から4秒間、約20ワットから約80ワット、好ましくは約60ワットの電力で作動される。変換器は、作動と作動の間で、約3秒から約60秒の間、好ましくは約40秒間非活動状態である。このやり方で、制御された量のエネルギーを送達して、焦点と変換器の間の組織を加熱することが可能である。この周波数での治療は、約750ジュールなど制御された量の総エネルギーが送達されるまで継続してもよい。
【0057】
最終的な治療として、超音波変換器はより高い周波数で作動して付近表面を加熱し、アブレーションする。変換器は、好ましくは約3HMzから約16MHzの間の周波数、好ましくは約6MHzの周波数で作動する。変換器は、上述の治療方法の周波数で超音波エネルギーが組織によって急速に吸収されて、付近表面が急速に加熱されてしまうことから、上述の治療方法よりも低い電力で作動される。一つの好ましい方法では、変換器は約2ワットから約20ワット、より好ましくは約15ワットで作動される。変換器は、約20秒から約80秒、好ましくは約40秒などの、組織をアブレーションするのに充分な継続時間分作動されることが好ましい。付近表面の温度は約70℃から約85℃に到達する場合が多い。
【0058】
上述の治療のそれぞれを、それ自体で使用しても、あるいは他の治療と組み合わせて使用してもよい。さらに、変換器の寸法、電力、周波数、作動時間、および焦点距離の組み合わせを全て、組織への超音波エネルギーの望ましい送達を生成するために変化させてもよい。以上のように、好ましい実施形態を、特徴の1つまたは複数を調整することによって調整してよく、したがって、本発明の精神および範囲から逸脱せずにこれらの変数を変更することができる。上述の一連の治療は一般に、第2の治療でおいてより表面近傍にエネルギーを供給し、第3の治療で、さらに表面近傍にエネルギーを供給する(即ちこの治療手順では、連続的な治療において表面深部から表面近傍へと組織をアブレーションしていく)。
【0059】
エネルギーを組織内の異なった深さに送達するために、超音波エネルギーの焦点を組織に対して移動させてもよい。アブレーション素子18が作動している間に焦点を移動させてよく、あるいはアブレーション素子18の作動と作動の間に焦点を移動させてもよい。経壁損傷部を作り出すためには、周波数の変更を伴わないで超音波エネルギーの焦点を移動させるだけでもよく、あるいは上述のように周波数の変更と併せて焦点を移動してもよい。焦点は、位相化されたアレイまたは可変音響レンズなどの任意の他のやり方で移動させてもよい。
【0060】
この発明の、ある程度の特異性を伴ったいくつかの実施形態を上に述べたが、当業者であれば、この発明の精神または範囲から逸脱せずに、ここに開示した実施形態に対して多数の変更を行うことが可能であろう。例えば、図6は、アブレーション素子18の遠位側に位置付けられたスコープ28を表しているが、当業者であれば、スコープ28を等しく適切に、アブレーション素子18の近位側(即ちハンドル24により近く)に位置付けることも可能であると理解するだろう。さらに、例えば、アブレーション素子18の遠位側に位置付けられた多数の連節されたアパチャ30を備えたスコープ28を設けることによって、あるいはアブレーション素子18の両側で側方に位置付けられた単一のスコープ28を設けることによって、個々の実施形態と関連付けてここで述べた様々な特徴を組み合わせてもよいことも当業者は理解するであろう。
【0061】
さらに、本装置を、心房細動の治療、特に僧帽弁狭部のアブレーションを作り出す際の標的組織の可視化と関連付けて述べたが、言うまでもなく、本明細書で開示した装置および方法は、他のアブレーション処置における標的組織の可視化についても同等に有益である。例えば、僧帽弁狭部のアブレーション損傷部を作り出すのではなく、本明細書で開示した装置をPV隔離アブレーション損傷部内の間隙を埋めるために使用してもよい。本装置は、他の電気生理学的条件の治療で使用してもよい。
【0062】
方向を示す全ての言葉(例えば上方、下方、上向き、下向き、左、右、左向き、右向き、頂、底、上、下、垂直、水平、時計方向、および反時計方向など)は、読者が本発明を理解しやすいように識別目的で使用したに過ぎず、特に位置、配向、または使用に関して本発明に制限を加えるものではない。接合を示す言葉(例えば取付け、結合、連結等)は、広範囲に解釈するべきものであり、素子同士の連結間の中間部材と、素子同士の相対的な動きとを含んでもよい。以上のように、接合を示すここでの言葉は、2つの素子が直接連結され、互いに固定された関係にあることを必ずしも暗示するものではない。
【0063】
以上の記述に含まれた、または添付の図面に示された全ての事項が、例証するためのものに過ぎず、制限を加えるものではないと解釈されることを、本明細書の目的としている。添付の請求項で規定した本発明の精神から逸脱せずに、詳細または構造の変更を行うことができる。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本発明は、2006年6月23日出願の米国特許仮出願第60/815,880号(’880出願)の恩典を主張する。本出願はまた、現在係属中の2006年12月21日出願の米国特許非仮出願第11/642,923号(’923出願)の優先権も主張する。’880出願と’923出願はともに、本明細書で充分に説明した場合と同じように、参照によって本明細書の一部とする。
【0002】
本出願は、2006年6月23日に全て出願された米国仮特許出願第60/815,852、米国仮特許出願第60/815,853号、米国仮特許出願第60/815,881号、および仮特許出願第60/815,882号に関連している。以上の出願の全てを、それらを本明細書で充分に説明した場合と同じように、参照によって本明細書の一部とする。
【0003】
本発明は、心房細動の治療に関する。特に、本発明は、心外膜マッピング中およびアブレーション処置中に標的組織を可視化する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
心房細動は、心筋(心筋層)における電気的活動の乱れから生じることがよく知られている。心房細動の治療のために、外科的メイズ手術が開発されている。これは、予め選択されたパターンで心房心筋に一連の外科的切開部を作り出して、瘢痕組織によって境界を形成して生存組織による伝導性ルートを作り出すことを伴う。
【0005】
メイズ手術の外科的切開の代替方法として、心臓の経壁アブレーションを使用してもよい。このようなアブレーションは、動脈または静脈を通して導入した血管内装置(カテーテルなど)を使用することによって心室の中から行う場合や(心内膜アブレーション)、患者の胸部の中に導入した装置を使用することによって心臓の外側から行う場合がある(心外膜アブレーション)。極低温アブレーション、高周波(RF)アブレーション、レーザ・アブレーション、超音波アブレーション、およびマイクロ波アブレーションを始め、これらに限定されることなく様々なアブレーション技法を使用することができる。アブレーション装置を使用して、長い経壁損傷部、即ち心筋の充分な厚みにわたって延在する損傷部を作り出して電気伝導を阻止し、これによって心房心筋内に伝導性ルートの境界を形成している。外科的切開に代わって経壁アブレーションを使用することの最大の利点はおそらく、最初に心肺バイパス(CPB)を確立せずにアブレーション処置を行うことが可能となることである。
【0006】
アブレーションを使用する場合も、外科的切開を使用する場合も、メイズ手術およびその変形手術を行う際には、肺静脈を周囲の心筋から隔離する経壁切開部または経壁損傷部を設けることが最も有効であると一般に考えられている。肺静脈は、心臓の後部側の左心房壁と接合して、肺を心臓の左心房に繋げている。このような処置は、抗不整脈薬の投与なしで57%から70%の成功をもたらすことが分かっている。しかしこれらの処置は、損傷部の回復、不整脈の非肺静脈の病巣、またはさらなる組織改良の必要性を原因とする20%から60%の再発率とも関連している。
【0007】
過去の外科的アプローチとカテーテルに基づいたアプローチとによって、完全なブロックが達成された際には、左心房(LA)の直線的な損傷部が心房細動の治療で功を奏することが証明されている。このような技法の一つに、僧帽弁狭部における直線的なアブレーションがあり、これは、側方僧帽弁輪から左下肺静脈(LIPV)口に延在するものとして定義される。研究により、僧帽弁狭部のカテーテル・アブレーションと肺静脈(PV)隔離との組み合わせが、確実に明らかな伝導ブロックを形成し、この組み合わせが発作性心房細動に対する高い治癒率に関係していることが示されている。
【0008】
これらの位置に正確な損傷部を作り出すことは、いくつかの理由で、心内膜アブレーションを行う医師に対して大きな障害を提示している。第一に、メイズ手術において作り出される損傷部の多くは、右心房の中から作り出すことが可能であるが、肺静脈の損傷部は左心房内で作り出さねばならず、別個の心房アクセス・ポイントまたは右心房からの中隔横断穿刺のいずれかが必要になる。第二に、細長い軟性の血管内アブレーション装置は、肺静脈損傷部を形成するのに必要な複雑な構造形状の中に入れることが困難である。また、アブレーション装置を、鼓動している心臓の壁に対して適切に位置付けて維持しておくことも困難である。さらに、心臓内の生体構造および血管内装置の可視化がしばしば不十分であって、血管内装置の正確な位置を知ることが困難なことがあり、これによって損傷部の位置を誤ってしまう可能性がある。
【0009】
心房細動の治療のための経壁損傷部を作り出すのに有用な心外膜アブレーション装置および方法が、Vaskaらの米国特許第7,052,493号(「Vaska」)およびSliwaらの米国特許第6,971,394号(「Sliwa」)に記載されており、これらの両方を、本明細書で充分に説明した場合と同じように、参照によって明確に本明細書の一部とする。Sliwaは、胸部切開によって、次いで心膜貫通によってアブレーション装置を配置することによって、肺静脈に隣接した心臓壁内に経壁損傷部を形成して、アブレーション装置が心臓の心外膜面と接触するように配設されるようにする方法について述べている。このアブレーション装置は、カテーテルの作動端部の付近に、留め部、分岐部、または切欠きなどの位置決め装置であって、カテーテルの作動端部を肺静脈に隣接して位置付けるように、1つまたは複数の肺静脈または近傍の他の解剖学的構造物、(例えば心膜翻転部位、下大静脈、上大静脈、大動脈、左心耳、または右心耳)と係合するように構成された装置を含む。
【0010】
心外膜面上でアブレーション素子を正確に配置することが、PV隔離と僧帽弁狭部のアブレーションとの有効性にとって極めて重要である。心臓以外の組織の解剖学的関係も極めて重要な考慮事項である。例えば食道は、後部左心房の近くにあることから、アブレーション処置中の食道の損傷を防止するように細心の注意を払わなければならない。これは心房細動に対するカテーテル・アブレーションに後続した合併症として心房食道瘻が報告されていることによる。しかし、非可視の位置決め装置に頼るには、極めて高度な医師のスキルおよび経験が必要であり、このような精確な配置の妨げとなる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】アブレーションおよび可視化装置を示す図である。
【0019】
【図2】図1で示したアブレーションおよび可視化装置の遠位端部の拡大図である。
【0020】
【図3】側方かつ遠位の構成で位置付けられたスコープを備えたアブレーションおよび可視化装置の遠位端部を示す図である。
【0021】
【図4】これも側方かつ遠位の構成で位置付けられたスコープを示す図である。
【0022】
【図5】側方の構成でシャフトにスライド可能に結合されたスコープを備えたアブレーションおよび可視化装置の遠位端部を表す図である。
【0023】
【図6】複数の観察用アパチャを有するスコープを備えたアブレーションおよび可視化装置の遠位端部を示す図である。
【0024】
【図7】移動可能な観察用アパチャを有するスコープを備えたアブレーションおよび可視化装置の遠位端部を示す図である。
【0025】
【図8】アブレーションおよび可視化装置の遠位端部と透明のキャップとの分解図である。
【0026】
【図9】スコープを側方位置に結合する透明のキャップを備えたアブレーションおよび可視化装置の遠位端部の上面図である。
【0027】
【図10】図9の等角図である。
【0028】
【図11】図9の側面図である。
【0029】
【図12】スコープを直交位置で結合するように透明のキャップを利用したアブレーションおよび可視化装置の遠位端部の等角図である。
【0030】
【図13】図12の側面図である。
【0031】
【図14】図12の等角底面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1は、本発明の第1実施形態によるアブレーションおよび可視化装置10を示している。アブレーションおよび可視化装置10は一般的に、遠位端部14(図2に拡大図で示している)と近位端部16とを有するシャフト12を含む。
【0033】
少なくとも1つのアブレーション素子18が遠位端部14上に設けられている。ここに示した装置10の実施形態は、2つのアブレーション素子18を含んでいるが、当業者であれば、アブレーション素子18の正確な数は、アブレーションおよび可視化装置10の個々の用途によって変化してもよいと理解されるであろう。さらに、アブレーション素子18は、超音波アブレーション素子、RFアブレーション素子、またはレーザ・アブレーション素子などの任意の適切な素子であってもよいことも理解されるであろう。これらのアブレーション素子18は、互いに対して固定してもよく、あるいはそれらの相対的な配向または位置を調節できるように柔軟にまたは融通の利くように相互連結してもよい。装置10の一部の実施形態では、アブレーション素子18は実質的にハウジング20の中に封入されている。
【0034】
シャフト12は比較的硬質であることが好ましく、遠位端部14はシャフト12に対して様々な位置に連節可能であって、使用者が、患者の体内への装置10の導入角度と標的面の配向に対してアブレーション素子18を調節できるようになっていることが好ましい。したがって、遠位端部14は、使用者によって変形された際に変形形状を保持する積層コイル22を組み込んでもよい。積層コイル22は、鞘の中に封入されていてもよい。しかし、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、遠位端部14を任意の方法で連節可能にしてもよいことは理解されるべきである。さらに、比較的硬質のシャフト12ではなく可動型シャフト12を使用することも本発明の範囲内であると見なされる。
【0035】
ハンドル24は、シャフト12の近位端部16に含まれていてもよい。装置10は、コネクタ26を近位端部16に含んでいてもよい。コネクタ26は、装置10を流体送達および採取機構、吸入システム、制御システム、データ収集システム、アブレーション・エネルギー送達システム、およびそれらの任意の組み合わせで結合するように構成してもよい。ハンドル24は、装置10がコネクタ26を介して結合された任意のシステムのためのアクチュエータまたは他の制御機構(例えばアブレーション・エネルギー・システムを作動または停止するスイッチ)を含んでもよい。コネクタ26は、装置10がアブレーション・システムに一度連結されると、約6時間などの限定された時間量だけ使用できるようにするEEPROMを含むことが好ましい。
【0036】
スコープ28は遠位端部14で、またはその付近でシャフト12に取り付けられているか、または一体化されている。スコープ28は、アパチャ30を介して患者の体内から画像を収集する。その画像は、その後モニタまたはディスプレイに出力してもよい。この画像で、解剖学的状況と装置10の相対的な配向との両方を視覚的に確認できる。したがって医師は、アブレーション素子18を適切に位置付けてアブレーション損傷部を作り出す際の視覚的補助として、その画像を利用することが可能である。さらにその画像は、医師が、アブレーション処置中に食道組織などの非標的組織を識別し、その位置を特定し、避けることによって周囲器官および周囲組織に付随的損傷を与える可能性を大幅に軽減する助けとなる。
【0037】
本発明の一部の実施形態において、スコープ28は、画像を光ファイバ32でディスプレイ装置(図示せず)に送信する光ファイバ内視鏡である。光ファイバ32をアパチャ30に直接連結してもよい。しかし、例えば超音波センサおよび赤外線センサを含んだ他のスコープ28も企図するものであることは理解されるべきである。したがって、「スコープ」という用語は、装置が外科的用途に適したように充分小型である限り、画像を取り込み、送信することが可能な全ての画像取込み装置、可視化装置、カメラ、センサ、および他の類似の装置を包含することを目的としている。「アパチャ」という用語は、そのような全ての装置の末端部を包含することを目的とし、「画像」という用語は、その形態(可視光、赤外線エネルギーなど)または出力にかかわらずスコープ28によって収集され、または取り込まれた全ての画像を包含することを目的としている。
【0038】
スコープ28は、装置10の個々の特定の用途に応じていくつかの構成で位置付けてもよい。図1および2は、アブレーション素子18に対して側方に位置付けられたスコープ28を示している。即ちスコープ28は、アブレーション装置18と実質的に同一平面に位置付けられている。さらに、スコープ28は、アパチャ30をアブレーション素子18の近位側に位置する状態で位置付けられている(即ちアパチャ30はハンドル24側に位置付けられている)。したがってアブレーション素子18の少なくとも一部分がスコープ28の視野内にあってもよく、これによって装置10の使用者に、装置10と、アブレーションするべき組織と、任意の周囲の非標的組織または解剖学的構造物との間の空間的関係を決定するための基準点がもたらされる。この構成は、アクセスが極端に制限されていて、使用者が、僧帽弁輪線などのアブレーション標的位置を識別することを望む場合、特に望ましい。
【0039】
装置10の他の実施形態を図3および4で示している。スコープ28がここでもアブレーション素子18に対して側方に位置付けられている。しかし、スコープ28は、図1および2で示した実施形態よりもさらに遠位に位置付けられている。この構成は、使用者が、肺静脈などの構造物の付近に、またはそれに対して損傷部が作り出されることを望む場合、特に望ましい。図3および4は、最も遠位のアブレーション素子18と実質的に平行に位置付けられたアパチャ30を示しているが、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、アパチャ30を最も遠位のアブレーション素子18よりもさらに遠位においても等しく適切に位置付けることが可能である。
【0040】
図5で示した装置10のさらに他の実施形態では、スコープ28はカラー(collar)33を介してシャフト12にスライド可能に結合されている。図5で示した実施形態では、スコープ28はアブレーション素子18に対して側方に位置付けられている。カラー33は、スコープ28をシャフト12に沿った2つ以上の点に位置付けることができるように、スコープ28がシャフト12に対して遠位方向および近位方向にスライドするのを可能にする。例えば、スコープ28を図5に実線で示したように近位にまず位置付け、これを、アブレーションするべき組織と近傍の解剖学的特徴物とに対する装置10の空間的関係に対する基準としてもよい。次いで医師は、スコープ28をカラー33を介して遠位方向に、ここに点線で示した位置へと前進させて、装置10に対して遠位に位置する特徴物の観察状況を向上させて、例えばアブレーション素子18が僧帽弁狭部の上方に位置付けられていることを検証することができる。したがって図5で示した実施形態では、スコープ28を、アパチャ30をアブレーション素子18の遠位側及び近位側に位置付けられるように調整することが可能である。さらに、カラー33を、シャフト12に回転可能に結合させて、スコープ28をシャフト28を中心に回転させ、アブレーション素子18の平面と平行であり、かつその平面から離隔された複数の平面内に位置付けてもよい。
【0041】
図6は、スコープ28が複数のアパチャ30を含む装置10の実施形態を示している。アパチャ30は様々な方向に向けてよく、これによって医師にアブレーション素子18の正面、上方、側面の視野が追加的に与えられる。さらに、図6は装置10の頂部に取り付けられたスコープ28を示している。即ちスコープ28は、アブレーション素子18に対して側方ではなく、アブレーション素子18の平面と実質的に平行であり、かつその平面から離隔された平面内に位置付けられている。アパチャ30によって取り込まれた画像は、例えば分割画面式または多重モニタ式の構成で並べて表示してもよい。代替方法として、医師は、必要に応じてアパチャ30の間で切り替えて、出力用のアパチャ30を1つ選出してもよい。
【0042】
装置10のさらに他の実施形態を図7で表している。図7では、スコープ28は、アブレーション素子18の平面と実質的に平行であり、かつその平面から離隔された平面内に位置付けられている。スコープ28は単一の、可動式アパチャ30を含む。可動式アパチャ30の使用によって、医者は、処置中に視野を所望の方向に向け、視野を調整することが可能になる。アパチャ30を、玉継ぎ手などの旋回アセンブリ上に取り付けてよく、あるいは他のやり方で連節してもよい。可動式アパチャ30の制御を、ハンドル24に組み込まれた1つまたは複数のアクチュエータを介して行ってもよい。
【0043】
図8は、遠位端部14が透明なキャップ34を受け取るように構成された装置10の実施形態を示している。キャップ34はスコープ28を装置10の遠位端部14に結合する機構、例えば開口部36を提供している。キャップ34を使用すると、スコープ28を迅速かつ簡単に結合および分離することができる。これによって、例えば低侵襲的処置を使用するかどうか依存して、スコープ28を備えた装置10または備えていない装置10のいずれを利用するかという選択肢が医師に与えられる。キャップ34は、アブレーション処置の間にスコープ28を装置10に加える選択肢も医師に与える。
【0044】
さらにキャップ34は、装置10の遠位端部14に容易に着脱できるように設計され、かつそのことを目的としている。図9〜14で示したように、スコープ28のアブレーション素子18に対する所望位置に応じて、様々な異なったキャップ34を利用することができる。例えば、1つのキャップ34を、スコープ28をアブレーション素子18に対して側方に位置付けるように構成してもよく(図9〜11)、第2のキャップ34を、スコープ28をアブレーション素子18に対して直交するように位置付けるように構成してもよい(図12〜14)。したがって、医師は、アブレーション処置を開始する前にアブレーション素子18に対するスコープ28の特定の構成を選択し、かつ必要に応じて、処置中にその構成を変更する融通性を有する。
【0045】
キャップ34はまた、アブレーション素子18を超えた遠位方向の視野が必要な場合、そのように延在することができる。その結果、スコープ28の正面に追加的に得られた透明な空間は、例えば移動させなければスコープ28の視野を覆い隠すことになる血液を移動させることによって、標的組織付近の他の解剖学的本体に対する追加の見通しを医師に与えることができる。キャップ34はさらに、アパチャ30が、スコープ28に付着したり、これを阻止したり、またはこれに損傷を与える可能性のある材料と接触しないように保護する。代替方法として、図2で示したものなどのスコープ28上の張出し部(overhang)37がアパチャ30を保護してもよい。
【0046】
装置10はさらに、スコープ28によって取り込まれた視野または画像を縮小する、拡大する、フィルタリングする、または他のやり方で変更するために、レンズまたはフィルタなどの光学素子39を含んでもよい。例えばスコープ28の視野を拡大するために魚眼レンズを利用することもできる。代替的に、スコープ28の視野を変更するために、図7の可動式アパチャ30の実施形態を効果的に模擬した可動式ミラーを利用することもできる。任意で、図8および9で示したように、1つまたは複数の光学素子39がキャップ34に組み込まれている。
【0047】
アブレーションおよび可視化装置10を使用して、PV隔離アブレーション損傷部と隣接した僧帽弁狭部のアブレーション損傷部を作り出してもよい。装置10は、切開部を通して患者の体内へと通される。装置10を、これにスコープ28を予め取り付けて導入してもよいし、あるいは導入後にスコープ28を遠位端部14に取り付けてもよい。
【0048】
スコープ28によって取り込まれ、収集された画像はディスプレイ上に出力される。必要に応じて、医師はアパチャ30を移動させて、スコープ28の視野を変更することができる。医師はディスプレイ上に出力された視覚情報を利用して、患者の体内で装置10を操縦して、付近の解剖学的構造物と非標的組織とを避けながら、患者の心臓の心外膜面上にアブレーション素子18を適切に位置付けて、僧帽弁狭部のアブレーションを作り出す。医師はまた、ディスプレイを利用して、アブレーション素子18が、PV隔離アブレーション損傷部と隣接した僧帽弁狭部の損傷部を作り出すように位置付けられていることを確認することもできる。PV隔離アブレーション損傷部は、米国特許第7,052,493号で開示されたものなど、肺静脈のまわりを包み込むベルト・タイプのアブレーション装置を使用することによって作り出してもよい。この米国特許第7,052,493号の全体を、本明細書で充分に説明した場合と同じように、参照によって本明細書の一部とする。しかし、当業者であれば、任意の適切な装置を利用して、PV隔離アブレーション損傷部を作り出してもよいことを理解するであろう。
【0049】
アブレーション素子18が一度適切に位置付けられると、医師はこれを作動してアブレーションのエネルギーを心臓組織に送達し、ディスプレイを利用して、処置中に拍動している心臓の適切な位置に装置10を維持することが可能である。また、このディスプレイを利用して、処置の終わりにアブレーションが完了したことを視覚的に確認することもできる。
【0050】
アブレーション素子18は少なくとも一次元に集束された超音波エネルギーを送達することが好ましい。特に、アブレーション素子18は、約2mmから約20mmの、より好ましくは約2mmから約12mmの、最も好ましくは約8mmの焦点距離を有する集束超音波を送達することが好ましい。別の述べ方をすると、焦点は、装置10の底(または接触)面からここで述べた範囲内の焦点軸(FA)に沿って離隔されている。集束超音波はまた、FAに対して約10度から約170度、より好ましくは約30度から約90度、最も好ましくは約60度の角度を形成する。圧電変換器が利用されることが好ましい。変換器は、エンクロージャとエンクロージャの上に嵌る頂部とを有するハウジングの中に取り付けられることが好ましい。エンクロージャは、エンクロージャの両側に、変換器の湾曲にほぼ一致している湾曲したリップを有してもよい。変換器は、約0.43インチの長さ、約0.35インチの幅、および約0.017インチの厚みを有していることが好ましい。変換器は、上述の好ましい焦点距離と一致した曲率半径(R)を有している。変換器は、上述の好ましい角度範囲内で焦点(F)と角度(A)を形成している。
【0051】
収束超音波エネルギーを使用することの利点は、エネルギーを組織の中に集中させることが可能であることである。集束超音波を使用することの他の利点は、エネルギーが焦点に到達した後に発散し、これによって標的組織を超えた組織に損傷を与える可能性を、平行な超音波エネルギーと比べて軽減することである。心外膜組織を平行な超音波でアブレーションする際、標的組織によって吸収されない平行な超音波エネルギーは心室を通過し、超音波エネルギーが心室の他方側の心内膜面に到達したとき、比較的小さな面積に集中したままとなってしまう。本発明では、超音波エネルギーが焦点を超えて発散し、より大きな面積に拡がることによって他の構造物に損傷を与える可能性を軽減する。
【0052】
収束超音波エネルギーは湾曲した変換器で生成されることが好ましいが、集束超音波エネルギーは任意の適切な構造物で作り出してもよい。例えば、音響レンズ化を使用して集束超音波を提供してもよい。音響レンズは、平坦な圧電素子および整合層と使用することができる。さらに、超音波エネルギーは組織に向けて直接放射されることが好ましいが、本発明の範囲から逸脱せずに、表面から反射させて組織に向けてもよい。
【0053】
このエネルギーを、エネルギーの少なくとも約90%などの超音波エネルギーを、本明細書で述べた、長軸またはFAに沿って見た際の好ましい角度範囲および曲率半径内に、集束または集中させるように配向された、いくつかの小型変換器によって生成してもよい。例えば、多重素子の音響位相化されたアレイを使用して、1つまたは複数のセルから音響ビーム操縦能力を提供してもよい。当業者であれば、多重整合層、集束音響レンズ、および非集束音響窓なども使用することができることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲から逸脱せずに、ここで述べていない他の方法を含むいくつかの異なったやり方で集束エネルギーを作り出してもよい。
【0054】
本発明の他の態様では、アブレーション・エネルギーの周波数、アブレーション・エネルギーの電力、組織に対する焦点の位置、および/またはアブレーション時間など、装置10の少なくとも1つの特徴を変化させながら、装置10が2つの異なった期間動作される。例えば、装置10を、制御されたやり方で周波数を時間経過とともに変化させて作動させて組織をアブレーションしてもよい。特に、装置10は、組織へのエネルギーの送達を制御することによって経壁損傷部作り出すように作動されることが好ましい。組織をアブレーションする際に周波数を変化させることが好ましいが、当然ながら、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、装置10を単一の周波数で作動させることができる。
【0055】
本発明の第1の処理方法では、変換器は約2MHzから約7MHz、好ましくは約3.5MHzの周波数で、約80ワットから約150ワット、好ましくは約130ワットの電力で、短いバーストで作動する。例えば、変換器を約0.01秒から約2.0秒間、好ましくは約1.2秒間作動してもよい。変換器は、作動と作動の間で、約2秒から約90秒間、より好ましくは約5秒から約80秒間、最も好ましくは約45秒間非活動状態である。このやり方で、制御された量の蓄積エネルギーを短いバーストで組織に送達して、焦点およびその付近の組織を加熱すると同時に遠方表面での血液冷却の影響を最小限に抑えることが可能である。この周波数でのアブレーションを、約0.5キロジュールから約3キロジュールなどの制御された量のエネルギーが送達されるまで継続してもよい。比較的短いバーストでのこの周波数での治療は、焦点での局部的な加熱を生成する。最初の周波数では、エネルギーは、より高い周波数で吸収されるほど急速には組織内に吸収されず、焦点に到達する前の超音波エネルギーの組織内への吸収によって焦点での加熱が大きな影響を受けることはない。
【0056】
最初の周波数での治療に続いて、変換器はより長い期間、好ましくは約1秒から約4秒間、より好ましくは約2秒間、焦点と変換器の間の組織をアブレーションするように作動される。この治療中の周波数も、好ましくは約2MHzから約14MHz、より好ましくは約3HMzから約7MHz、最も好ましくは約6MHzである。変換器は、約0.7秒から4秒間、約20ワットから約80ワット、好ましくは約60ワットの電力で作動される。変換器は、作動と作動の間で、約3秒から約60秒の間、好ましくは約40秒間非活動状態である。このやり方で、制御された量のエネルギーを送達して、焦点と変換器の間の組織を加熱することが可能である。この周波数での治療は、約750ジュールなど制御された量の総エネルギーが送達されるまで継続してもよい。
【0057】
最終的な治療として、超音波変換器はより高い周波数で作動して付近表面を加熱し、アブレーションする。変換器は、好ましくは約3HMzから約16MHzの間の周波数、好ましくは約6MHzの周波数で作動する。変換器は、上述の治療方法の周波数で超音波エネルギーが組織によって急速に吸収されて、付近表面が急速に加熱されてしまうことから、上述の治療方法よりも低い電力で作動される。一つの好ましい方法では、変換器は約2ワットから約20ワット、より好ましくは約15ワットで作動される。変換器は、約20秒から約80秒、好ましくは約40秒などの、組織をアブレーションするのに充分な継続時間分作動されることが好ましい。付近表面の温度は約70℃から約85℃に到達する場合が多い。
【0058】
上述の治療のそれぞれを、それ自体で使用しても、あるいは他の治療と組み合わせて使用してもよい。さらに、変換器の寸法、電力、周波数、作動時間、および焦点距離の組み合わせを全て、組織への超音波エネルギーの望ましい送達を生成するために変化させてもよい。以上のように、好ましい実施形態を、特徴の1つまたは複数を調整することによって調整してよく、したがって、本発明の精神および範囲から逸脱せずにこれらの変数を変更することができる。上述の一連の治療は一般に、第2の治療でおいてより表面近傍にエネルギーを供給し、第3の治療で、さらに表面近傍にエネルギーを供給する(即ちこの治療手順では、連続的な治療において表面深部から表面近傍へと組織をアブレーションしていく)。
【0059】
エネルギーを組織内の異なった深さに送達するために、超音波エネルギーの焦点を組織に対して移動させてもよい。アブレーション素子18が作動している間に焦点を移動させてよく、あるいはアブレーション素子18の作動と作動の間に焦点を移動させてもよい。経壁損傷部を作り出すためには、周波数の変更を伴わないで超音波エネルギーの焦点を移動させるだけでもよく、あるいは上述のように周波数の変更と併せて焦点を移動してもよい。焦点は、位相化されたアレイまたは可変音響レンズなどの任意の他のやり方で移動させてもよい。
【0060】
この発明の、ある程度の特異性を伴ったいくつかの実施形態を上に述べたが、当業者であれば、この発明の精神または範囲から逸脱せずに、ここに開示した実施形態に対して多数の変更を行うことが可能であろう。例えば、図6は、アブレーション素子18の遠位側に位置付けられたスコープ28を表しているが、当業者であれば、スコープ28を等しく適切に、アブレーション素子18の近位側(即ちハンドル24により近く)に位置付けることも可能であると理解するだろう。さらに、例えば、アブレーション素子18の遠位側に位置付けられた多数の連節されたアパチャ30を備えたスコープ28を設けることによって、あるいはアブレーション素子18の両側で側方に位置付けられた単一のスコープ28を設けることによって、個々の実施形態と関連付けてここで述べた様々な特徴を組み合わせてもよいことも当業者は理解するであろう。
【0061】
さらに、本装置を、心房細動の治療、特に僧帽弁狭部のアブレーションを作り出す際の標的組織の可視化と関連付けて述べたが、言うまでもなく、本明細書で開示した装置および方法は、他のアブレーション処置における標的組織の可視化についても同等に有益である。例えば、僧帽弁狭部のアブレーション損傷部を作り出すのではなく、本明細書で開示した装置をPV隔離アブレーション損傷部内の間隙を埋めるために使用してもよい。本装置は、他の電気生理学的条件の治療で使用してもよい。
【0062】
方向を示す全ての言葉(例えば上方、下方、上向き、下向き、左、右、左向き、右向き、頂、底、上、下、垂直、水平、時計方向、および反時計方向など)は、読者が本発明を理解しやすいように識別目的で使用したに過ぎず、特に位置、配向、または使用に関して本発明に制限を加えるものではない。接合を示す言葉(例えば取付け、結合、連結等)は、広範囲に解釈するべきものであり、素子同士の連結間の中間部材と、素子同士の相対的な動きとを含んでもよい。以上のように、接合を示すここでの言葉は、2つの素子が直接連結され、互いに固定された関係にあることを必ずしも暗示するものではない。
【0063】
以上の記述に含まれた、または添付の図面に示された全ての事項が、例証するためのものに過ぎず、制限を加えるものではないと解釈されることを、本明細書の目的としている。添付の請求項で規定した本発明の精神から逸脱せずに、詳細または構造の変更を行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端部を有するシャフトと、
前記シャフトの前記遠位端部に結合された少なくとも1つのアブレーション素子と、
前記シャフトに前記遠位端部に近接して結合された、少なくとも1つの画像収集用アパチャを含むスコープと、
を備える、組織をアブレーションする装置。
【請求項2】
前記スコープは、前記少なくとも1つのアブレーション素子に対して側方に位置付けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スコープは、前記少なくとも1つのアブレーション素子が位置する平面と実質的に平行であり、かつその平面から離隔された平面内に位置付けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記スコープは、前記少なくとも1つのアパチャを前記少なくとも1つのアブレーション素子に対して近位に位置付けた状態で、前記シャフトに結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記スコープは、前記少なくとも1つのアパチャを前記少なくとも1つのアブレーション素子に対して遠位に位置付けられた状態で、前記シャフトに結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記スコープは、前記スコープの視野が前記少なくとも1つのアブレーション素子の少なくとも一部分を含むように、前記シャフトに結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記スコープは、前記スコープを前記シャフトに沿った2つ以上の位置に位置付けることが可能に、カラーを介して前記シャフトにスライド可能に結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記スコープは、前記スコープを前記少なくとも1つのアブレーション素子が位置する平面と実質的に平行であり、かつその平面から離隔された複数の平面に位置付けることが可能なように、カラーを介して前記シャフトに回転可能に結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記スコープは前記シャフトに一体化されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記スコープは複数の画像収集用アパチャを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記画像収集用アパチャは可動式画像収集用アパチャを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記シャフトの前記遠位端部に結合されたキャップであって、前記キャップを介して前記スコープが前記シャフトに結合されている、キャップをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記スコープは前記キャップに取り外し可能に結合されている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記キャップは前記シャフトの前記遠位端部に取り外し可能に結合されている、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記キャップは実質的に透明である、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記キャップは、前記スコープの前記少なくとも1つの画像収集用アパチャの上に位置付けられた少なくとも1つの光学素子を備える、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記スコープの前記少なくとも1つの画像収集用アパチャの上方に位置付けられた少なくとも1つの光学素子をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記スコープは光ファイバ内視鏡を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記スコープは赤外線センサを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記スコープは超音波センサを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記スコープは、前記スコープによって前記画像収集用アパチャから収集された画像を視覚的に表示するように構成された出力装置に結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
遠位端部と近位端部とを有するシャフトと、
前記シャフトの前記遠位端部上に位置する少なくとも2つのアブレーション素子と、
前記シャフトの前記遠位端部に結合された、少なくとも1つの画像収集用アパチャを含むスコープと、
を備える、アブレーションおよび可視化装置。
【請求項23】
前記スコープの視野を変更する、前記画像収集用アパチャの上方に位置付けられた光学素子をさらに備える、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記光学素子はレンズを備える、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記光学素子はフィルタを備える、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記スコープは前記シャフトの前記遠位端部に直接結合されている、請求項22に記載の装置。
【請求項27】
前記シャフトの前記遠位端部に結合された実質的に透明なキャップであって、前記キャップに前記スコープが結合されているキャップをさらに備える、請求項22に記載の装置。
【請求項28】
前記スコープは、前記シャフトの前記遠位端部と一体化されている、請求項22に記載の装置。
【請求項29】
前記少なくとも1つの画像収集用アパチャは旋回アセンブリを介して移動可能である、請求項22に記載の装置。
【請求項1】
遠位端部を有するシャフトと、
前記シャフトの前記遠位端部に結合された少なくとも1つのアブレーション素子と、
前記シャフトに前記遠位端部に近接して結合された、少なくとも1つの画像収集用アパチャを含むスコープと、
を備える、組織をアブレーションする装置。
【請求項2】
前記スコープは、前記少なくとも1つのアブレーション素子に対して側方に位置付けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スコープは、前記少なくとも1つのアブレーション素子が位置する平面と実質的に平行であり、かつその平面から離隔された平面内に位置付けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記スコープは、前記少なくとも1つのアパチャを前記少なくとも1つのアブレーション素子に対して近位に位置付けた状態で、前記シャフトに結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記スコープは、前記少なくとも1つのアパチャを前記少なくとも1つのアブレーション素子に対して遠位に位置付けられた状態で、前記シャフトに結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記スコープは、前記スコープの視野が前記少なくとも1つのアブレーション素子の少なくとも一部分を含むように、前記シャフトに結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記スコープは、前記スコープを前記シャフトに沿った2つ以上の位置に位置付けることが可能に、カラーを介して前記シャフトにスライド可能に結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記スコープは、前記スコープを前記少なくとも1つのアブレーション素子が位置する平面と実質的に平行であり、かつその平面から離隔された複数の平面に位置付けることが可能なように、カラーを介して前記シャフトに回転可能に結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記スコープは前記シャフトに一体化されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記スコープは複数の画像収集用アパチャを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記画像収集用アパチャは可動式画像収集用アパチャを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記シャフトの前記遠位端部に結合されたキャップであって、前記キャップを介して前記スコープが前記シャフトに結合されている、キャップをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記スコープは前記キャップに取り外し可能に結合されている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記キャップは前記シャフトの前記遠位端部に取り外し可能に結合されている、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記キャップは実質的に透明である、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記キャップは、前記スコープの前記少なくとも1つの画像収集用アパチャの上に位置付けられた少なくとも1つの光学素子を備える、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記スコープの前記少なくとも1つの画像収集用アパチャの上方に位置付けられた少なくとも1つの光学素子をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記スコープは光ファイバ内視鏡を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記スコープは赤外線センサを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記スコープは超音波センサを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記スコープは、前記スコープによって前記画像収集用アパチャから収集された画像を視覚的に表示するように構成された出力装置に結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
遠位端部と近位端部とを有するシャフトと、
前記シャフトの前記遠位端部上に位置する少なくとも2つのアブレーション素子と、
前記シャフトの前記遠位端部に結合された、少なくとも1つの画像収集用アパチャを含むスコープと、
を備える、アブレーションおよび可視化装置。
【請求項23】
前記スコープの視野を変更する、前記画像収集用アパチャの上方に位置付けられた光学素子をさらに備える、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記光学素子はレンズを備える、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記光学素子はフィルタを備える、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記スコープは前記シャフトの前記遠位端部に直接結合されている、請求項22に記載の装置。
【請求項27】
前記シャフトの前記遠位端部に結合された実質的に透明なキャップであって、前記キャップに前記スコープが結合されているキャップをさらに備える、請求項22に記載の装置。
【請求項28】
前記スコープは、前記シャフトの前記遠位端部と一体化されている、請求項22に記載の装置。
【請求項29】
前記少なくとも1つの画像収集用アパチャは旋回アセンブリを介して移動可能である、請求項22に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2009−540962(P2009−540962A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516723(P2009−516723)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/071771
【国際公開番号】WO2007/149975
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(506257180)セント・ジュード・メディカル・エイトリアル・フィブリレーション・ディヴィジョン・インコーポレーテッド (57)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/071771
【国際公開番号】WO2007/149975
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(506257180)セント・ジュード・メディカル・エイトリアル・フィブリレーション・ディヴィジョン・インコーポレーテッド (57)
【Fターム(参考)】
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