説明

アポトーシスプロモーターの安定化された脂質処方物

経口で送達可能な医薬組成物は、Bcl−2ファミリータンパク質阻害化合物、例えばABT−263、重カルコゲン酸化防止剤および実質的に非水性の脂質担体を含み、前記化合物および前記酸化防止剤は担体中の溶液である。この組成物は、1つまたは複数の抗アポトーシスBcl−2ファミリータンパク質の過剰発現を特徴とする疾患、例えばがんの治療のためにそれを必要とする対象に経口投与するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年4月30日出願の米国仮出願番号第61/174,299号および2009年12月22日出願の米国仮出願番号第61/289,254号に関する優先権の特典を請求するものである。
【0002】
本出願に関連する主題を含む以下の共出願された米国出願:2009年4月30日出願の米国仮出願番号第61/174,245号に関する優先権の特典を請求する「Lipid formulation of apoptosis promoter」という名称の米国仮出願番号第12/号;2009年4月30日出願の米国仮出願番号第61/174,274号に関する優先権の特典を請求する「Salt of ABT−263 and solid−state forms thereof」という名称の米国仮出願番号第12/号;ならびに上記に参照した米国仮出願番号第61/174,299号および同第61/289,254号ならびに2009年4月30日出願の同第61/174,318号、2009年6月8日出願の同第61/185,105号、2009年6月8日出願の同第61/185,130号、2009年6月18日出願の同第61/218,281号および同第2009年12月22日出願の同第61/289,289号に関する優先権の特典を請求する「Formulation for oral administration of apoptosis promoter」という名称の米国仮出願番号第12/号に対する相互参照を行うものである。
【0003】
上記出願のそれぞれの開示全体を参照により本明細書に組み込む。
【0004】
本発明は、アポトーシス促進物質を含む医薬組成物および抗アポトーシスBcl−2ファミリータンパク質の過剰発現を特徴とする疾患を治療するためのその使用方法に関する。より具体的には、本発明は、アポトーシス促進物質の改善された経口生物学的利用能および化学的安定性を示すそうした組成物、およびそうした組成物をそれを必要とする対象に投与するための経口投薬レジメンに関する。
【背景技術】
【0005】
アポトーシスの回避はがんの特徴である(Hanahan & Weinberg(2000年)Cell 100:57−70頁)。がん細胞は、正常細胞にアポトーシスをもたらす可能性のあるDNA損傷、がん遺伝子の活性化、異常な細胞周期の進行および厳しい微小環境などの細胞ストレスによる間断ない攻撃を克服しなければならない。がん細胞がそれによってアポトーシスを回避する主な手段の1つは、Bcl−2ファミリーの抗アポトーシスタンパク質の上方調節である。
【0006】
Bcl−2タンパク質のBH3結合溝を占有する化合物は、例えばBrunckoら(2007年)J.Med.Chem.50:641−662頁によって記載されている。これらの化合物には、別名ABT−737として知られている、次式:
【0007】
【化1】

を有するN−(4−(4−((4’−クロロ−(1,1’−ビフェニル)−2−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)−4−(((1R)−3−(ジメチルアミノ)−1−((フェニルスルファニル)メチル)プロピル)アミノ)−3−ニトロベンゼン−スルホンアミドが含まれる。
【0008】
ABT−737はBcl−2ファミリー(特にBcl−2、Bcl−XおよびBcl−w)のタンパク質と高い親和力(<1nM)で結合する。これは、小細胞肺がん(SCLC)およびリンパ性悪性疾患に対して単剤活性を示し、他の化学療法剤のアポトーシス促進効果を強化する。ABT−737および関連化合物ならびにそうした化合物の作製方法はBrunckoらの米国特許出願公開第2007/0072860号に開示されている。
【0009】
最近になって、Bcl−2ファミリータンパク質に対して高い結合親和性を有する一連の他の化合物が特定されている。これらの化合物およびそれらを作製する方法は、Brunckoらの米国特許出願公開第2007/0027135号(以下、「’135公開」とする。)に開示されており(その全体を参照により本明細書に組み込む。)、これらは、その式(以下の式I)からABT−737と構造的に関連していると見ることができる。
【0010】
式Iの化合物
【0011】
【化2】

において:
はクロロまたはフルオロであり;
(1)Xはアゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、1,4−オキサゼパン−4−イル、ピロリジン−1−イル、N(CH、N(CH)(CH(CH)、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプラン−1−イルまたは2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イルであり;R
【0012】
【化3】

(式中、XはCH、C(CHまたはCHCHであり;
およびXはどちらも水素でありまたはどちらもメチルであり;
はフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である;または
(2)Xはアゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、ピロリジン−1−イル、N(CH)(CH(CH)または7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプラン−1−イルであり;R
【0013】
【化4】

(式中、X、XおよびXは上記の通りである。)
である;または
(3)Xはモルホリン−4−イルまたはN(CHであり;R
【0014】
【化5】

(式中、Xは上記の通りである。)
である。
【0015】
’135公開は、従来知られているBcl−2ファミリータンパク質の阻害剤は経口投与後、強力な細胞効力または高い全身暴露性を有し得るが、それらはその両方の特性を有してはいないと述べている。化合物の細胞効力の典型的な尺度は、50%の細胞効果を誘発する濃度(EC50)である。化合物の経口投与後の全身暴露の典型的な尺度は、化合物血漿濃度対経口投与からの時間をグラフ化して得られる曲線下面積(AUC)である。’135公開において言及されている、従来知られている化合物は低いAUC/EC50比を有しており、これは、経口的に有効でないことを意味している。これに対して、式Iの化合物は、経口投与後の細胞効力と全身暴露に関して高い特性を示し、従来知られている化合物のそれより大幅に高いAUC/EC50比がもたらされると述べられている。
【0016】
’135公開において「実施例1」と特定されている1つの化合物は、別名ABT−263として知られているN−(4−(4−((2−(4−クロロフェニル)−5,5−ジメチル−1−シクロヘキサ−1−エン−1−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)−4−(((1R)−3−(モルホリン−4−イル)−1−((フェニルスルファニル)メチル)プロピル)アミノ−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)ベンゼンスルホンアミドである。この化合物は974.6g/モルの分子量を有し、次式:
【0017】
【化6】

を有する。
【0018】
ABT−263は、Bcl−2およびBcl−Xと高い親和力(<1nM)で結合し、Bcl−wに対しても同様の高い親和力を有すると考えられている。そのAUC/EC50比は’135公開において56と報告されており、ABT−737について報告されているもの(4.5)より1桁以上大きい値である。’135公開によれば、AUCを測定するために、各化合物が、PEG−400(平均分子量約400のポリエチレングリコール)中に10%DMSO(ジメチルスルホキシド)のビヒクル中の2mg/ml溶液として、強制経口投与により単回用量5mg/kgでラットに投与されている。
【0019】
経口生物学的利用能(例えば、静脈内投与後のAUCの割合としての、経口投与後のAUCで表される。)は、’135公開では報告されていないが、それから、経口生物学的利用能はABT−737についてより、ABT−263についての方が実質的に大きいと結論づけることができる。しかし、経口生物学的利用能がさらに改善されれば有利である。低い経口生物学的利用能に挑戦するための様々な溶液が、当業界で提案されている。例えば、Lacyらの米国特許第5,645,856号は、インビボでの油の脂肪分解に対する親水性界面活性剤の阻害効果を実質的に低減する、(a)油、(b)親水性界面活性剤および(c)親油性界面活性剤を含む疎水性薬物であって、そうした脂肪分解がその薬物の生物学的利用能を促進する因子であるとされる薬物を処方することを提案している。挙げられている多くの部類の親水性界面活性剤の中にはレシチンなどのリン脂質がある。
【0020】
Chen & Patelの米国特許第6,267,985号は、とりわけ、(a)トリグリセリド、(b)そのうちの1つが親水性である少なくとも2つの界面活性剤を含む担体および(c)トリグリセリド、担体またはこれらの両方の中に可溶化され得る治療薬を含む医薬組成物を対象としている。そこでは、トリグリセリドと界面活性剤は、その組成物が規定の条件下で水溶液と混合されたとききれいな水性分散液を提供する量で存在しなければならないと指定されている。例示的構成要素の別個の広範なリストの中では、トリグリセリドとして「グリセリルトリカプリレート/カプレート」および界面活性剤としてホスファチジルコリンを含むリン脂質が挙げられている。
【0021】
Patel & Chenの米国特許第6,451,339号は、そうした組成物におけるトリグリセリドの存在の不都合さに言及しており、トリグリセリドを実質的に含まないが同じようにきれいな水性分散液を提供する類似の組成物を別途提案している。
【0022】
Patel & Chenの米国特許第6,309,663号は、親水性治療薬の生体吸収性(bioabsorption)を高めるとされる界面活性剤の組合せを含む医薬組成物を提案している。ホスファチジルコリンなどのリン脂質が、例示的な界面活性剤の中に再び挙げられている。
【0023】
Fanaraらの米国特許第6,464,987号は、活性物質、重量で3%から55%のリン脂質、重量で16%から72%の溶媒および重量で4%から52%の脂肪酸を含む流体状医薬組成物を提案している。いくつかの場合、Phosal 50PG(商標)(主にホスファチジルコリンおよびプロピレングリコールを含む)をPhosal 53MCT(商標)(主にホスファチジルコリンおよび中鎖トリグリセリドを含む)と一緒に含む組成物が具体的に例示されている。そうした組成物は、水相の存在下で瞬時にゲル化する特性を有しており、活性物質の制御放出が可能であるとされている。
【0024】
Leonardらの米国特許第5,538,737号は、水溶性薬物塩がエマルジョンの水相中に溶解しており、その油相が油と乳化剤を含む、油中水型エマルジョンを含むカプセル剤を提案している。挙げられている油の中には中鎖トリグリセリドがあり;挙げられている乳化剤の中にはホスファチジルコリンなどのリン脂質がある。その報告によれば、ホスファチジルコリンおよび中鎖トリグリセリドを含むPhosal 53MCT(商標)が、その様々な実施例にしたがって用いられている。
【0025】
Waranis & Leonardの米国特許第5,536,729号は、リン脂質溶液を含む担体中に約0.1から約50mg/mlの濃度でラパマイシンを含む経口処方物を提案している。そこでは、好ましい処方物を、リン脂質溶液としてPhosal 50PG(商標)を用いて作製できると述べられている。挙げられている代替のリン脂質溶液はPhosal 50MCT(商標)である。
【0026】
Harrisonらの米国特許第5,559,121号は、N,N−ジメチルアセトアミドおよびリン脂質溶液を含む担体中に約0.1から約100mg/mlの濃度でラパマイシンを含む経口処方物を提案している。より好ましい実施形態の例は、Phosal 50PG(商標)を用いて調製することが示されている。挙げられている代替のリン脂質溶液はPhosal 50MCT(商標)である。
【0027】
Lipariらの米国特許出願公開第2007/0104780号は、低水溶性を有する小分子薬物(そこでは、塩の場合は対イオンを除いて、約750g/モル以下、一般に約500g/モル以下の分子量を有するものと規定されている。)を、少なくとも1つのリン脂質および薬学的に許容される可溶化剤を含む実質的に非水性の担体中の溶液として処方できることを開示している。水相と混合すると、その溶液は、非ゲル化性のほぼ不透明な分散液を形成すると記されている。例として、Phosal 53MCT(商標)および他の構成要素を含むN−(4−(3−アミノ−1H−インダゾール−4−イル)フェニル)−N’−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)尿素(タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤ABT−869)の処方物が記載されている。
【0028】
特に溶液中で処方した場合、酸化反応は、薬剤の重要な分解経路を代表するものである。酸化の機序に関しては大量の情報を入手することができるが、具体的な薬物についての研究は比較的実施されていない。Hovorka & Schoneich(2001年)J.Pharm.Sci.90:253−269頁は、薬学的に関係するデータのこうした欠如は、酸化性薬物の処方物の製造と投与の間の薬物の酸化に関する予測能力の不足をもたらしており、その結果処方物における酸化防止剤の情報が不足した概ね経験的な利用をもたらしていると述べている。
【0029】
酸化は、酸素分子による基質の無触媒自動酸化、光分解開始、溶血性熱分裂および金属触媒反応を含むいくつかの経路によって発生する可能性がある。種々の官能基は、酸化に対して特定の感受性を示す。具体的には、チオエーテルは、イオウ原子に対するα位での水素引き抜き、またはα−ペルオキシルラジカルの直接付加、またはスルフィドをスルフィン、スルホンもしくはスルホキシドに変換する一電子移動プロセスによって分解する可能性がある(Hovorka & Schoneich、上記)。
【0030】
式Iの化合物の(フェニルスルファニル)メチル基は、例えば、酸素または超酸化物、過酸化水素もしくはヒドロキシルラジカルなどの反応性酸素種などの存在下で酸化の影響を受けやすいチオエーテル結合を有するとみられる。上記に参照した’135公開は、式Iの化合物を投与するのに有用であるとされる添加剤の広範なリストに酸化防止剤を含んでいる。
【0031】
改善された治療法が必要とされる特定のタイプの疾患は非ホジキンリンパ腫(NHL)である。NHLは米国において6番目にまん延しているタイプの新規ながんであり、主に60−70歳の患者において発生する。NHLは単一疾患ではなく、関連する疾患のファミリーであり、これらは、臨床的特質および組織学を含むいくつかの特徴をもとに分類される。
【0032】
分類の1つの方法は、異なる組織学的サブタイプを、疾患の自然経過、すなわちその疾患が緩徐進行性であるまたは侵襲性であるかどうかをもとにして2つの主カテゴリーに分ける方法である。一般に、緩徐進行性サブタイプは徐々に成長し、通常治療不能であるのに対し、侵襲性サブタイプは急速に成長し、治療できる可能性がある。濾胞性リンパ腫は、最も一般的な緩徐進行性サブタイプであり、びまん性大細胞型リンパ腫は、最も一般的な侵襲性サブタイプを構成する。がんタンパク質Bcl−2は、非ホジキンB細胞リンパ腫において最初に記載されている。
【0033】
濾胞性リンパ腫の治療は一般に、生物学に基づくまたは併用による化学療法からなる。リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾン(R−CHOP)との併用療法は、リツキシマブ、シクロホスファミド、ビンクリスチンおよびプレドニゾン(RCVP)との併用療法と同様に慣用的に用いられる。リツキシマブ(B細胞の表面上に均一に発現するリンタンパク質、CD20を標的とする。)またはフルダラビンとの単剤治療も用いられる。化学療法レジメンにリツキシマブを加えると、応答率を改善し無増悪生存率を高めることができる。
【0034】
放射免疫治療薬、高用量化学療法および幹細胞移植を、不応性または再発性の非ホジキンリンパ腫を治療するために用いることができる。現在、治癒をもたらす承認された治療レジメンはなく、最近の指針では、一次セッティングにおいても、患者を臨床試験との関連で治療することが推奨されている。
【0035】
侵襲性大B細胞リンパ腫を有する患者の一次治療は通常、リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾン(R−CHOP)または投与量が調節されたエトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシンおよびリツキシマブ(DA−EPOCH−R)からなる。
【0036】
大部分のリンパ腫は、最初はこれらの治療のいずれか1つに応答するが、通常腫瘍は再発し、結局不応性となる。患者が受けるレジメンの数が増えるにしたがって、その疾患はより化学療法耐性となる。一次治療に対する平均応答は約75%であり、二次治療に対する平均応答は約60%であり、三次治療に対する平均応答は約50%であり、四次治療に対する平均応答は約約35−40%である。多重の再発性セッティングにおいて単剤で20%に近づく応答率は肯定的と見なされ、さらなる試験を支持するものとなる。
【0037】
現在の化学療法剤は、様々な機序でアポトーシスを誘発することによってその抗腫瘍応答を引き出す。しかし、多くの腫瘍は最終的にこれらの薬剤に対して耐性を示すことになる。Bcl−2およびBcl−Xは、インビトロでの、つい最近ではインビボでの短期生存アッセイにおいて化学療法耐性を付与することが分かっている。これは、Bcl−2およびBcl−Xの機能を抑制することを目的とした改善された治療法を開発することができれば、そうした化学療法耐性を首尾よく克服することができることを示唆している。
【0038】
Bcl−2およびBcl−XなどのBcl−2ファミリータンパク質を標的とするアポトーシス促進薬物は、治療効果のある範囲の濃度で維持するために連続的な、例えば毎日の血漿濃度の補充を提供するレジメンにしたがって投与するのが最もよい。これは、毎日の非経口、例えば静脈内(i.v.)または腹腔内(i.p.)投与によって達成することができる。しかし、毎日の非経口投与は、臨床的状況、特に通院患者においては実際的でないことが多い。例えばがん患者における化学療法薬としてのアポトーシス促進物質の臨床的有用性を増進させるために、良好な経口生物学的利用能を有する剤形が非常に望ましい。そうした剤形およびその経口投与のためのレジメンは、非ホジキンリンパ腫を含む多くのタイプのがんの治療における重要な進歩を代表するものであり、他の化学療法薬との併用療法がより簡単にできるようにすることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0072860号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0027135号明細書
【特許文献3】米国特許第5,645,856号明細書
【特許文献4】米国特許第6,267,985号明細書
【特許文献5】米国特許第6,451,339号明細書
【特許文献6】米国特許第6,309,663号明細書
【特許文献7】米国特許第6,464,987号明細書
【特許文献8】米国特許第5,538,737号明細書
【特許文献9】米国特許第5,536,729号明細書
【特許文献10】米国特許第5,559,121号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2007/0104780号明細書
【非特許文献】
【0040】
【非特許文献1】Hanahan & Weinberg(2000年)Cell 100:57−70頁
【非特許文献2】Brunckoら(2007年)J.Med.Chem.50:641−662頁
【非特許文献3】Hovorka & Schoneich(2001年)J.Pharm.Sci.90:253−269頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
特に式Iの化合物の(フェニルスルファニル)メチル基のイオウ原子での酸化的分解の速度が減少し、許容できる剤形の貯蔵安定性および保存寿命を可能にするような剤形を調製することはさらに望ましいことである。
【課題を解決するための手段】
【0042】
(発明の要旨)
脂質担体系中の溶液中で処方すると、大気酸素との接触が実質的に排除された条件下でも、ABT−263は貯蔵により実質的な酸化的分解を示すことが分かっている。ABT−263の場合の酸化反応はスルホキシドの生成を含む。この分解生成物を提供する反応は以下の通り表すことができる:
【0043】
【化7】

【0044】
すべての酸化防止剤が、許容できる程度にこの酸化的分解を抑制するのに効果的であるわけではないことがさらに分かっている。より具体的には、「重カルコゲン酸化防止剤」すなわち「HCA」として本明細書で示す酸化防止剤の部類は、当技術分野でより広範に用いられている酸化防止剤と比較して、この関連で、優れた性能を示すことが分かっている。カルコゲンは、酸素、イオウ、セレンおよびテルルを含む周期律表の第16族(以前は第VIA族として知られていた)の元素である。本明細書では「重カルコゲン」は、具体的にはイオウおよびセレンを含む酸素より重い原子量を有するカルコゲンを意味する。「重カルコゲン酸化防止剤」すなわち「HCA」は、1つもしくは複数の酸化性イオウまたはセレン、特にイオウ原子を含む酸化防止特性を有する化合物である。
【0045】
脂質担体中の酸化防止上有効な量の薬学的に許容されるHCAと一緒に、ABT−263または式Iの化合物の溶液処方物を調製することは、適切なHCAを選択するだけでいいということではない。担体系は、治療上有用な濃度で薬物を溶液中に保持できるだけでなく、酸化防止上有効な量のHCAも保持できるように選択しなければならない。
【0046】
したがって、(a)式Iの化合物:
【0047】
【化8】

[(式中、
はクロロまたはフルオロであり;
(1)Xはアゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、1,4−オキサゼパン−4−イル、ピロリジン−1−イル、N(CH、N(CH)(CH(CH)、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−イルまたは2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イルであり;R
【0048】
【化9】

(式中、
はCH、C(CHまたはCHCHであり;
およびXはどちらも水素でありまたはどちらもメチルであり;
はフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である;または
(2)Xはアゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、ピロリジン−1−イル、N(CH)(CH(CH)または7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−イルであり;R
【0049】
【化10】

(式中、X、XおよびXは上記の通りである。)
である;または
(3)Xはモルホリン−4−イルまたはN(CHであり;R
【0050】
【化11】

(式中、Xは上記の通りである。)
である。)]
または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物;(b)薬学的に許容される重カルコゲン酸化防止剤;および(c)1つまたは複数の脂質を含む実質的に非水性の薬学的に許容される担体を含む経口で送達可能な医薬組成物であって;前記化合物および酸化防止剤がその担体中に溶解している組成物を提供する。
【0051】
(a)化合物N−(4−(4−((2−(4−クロロフェニル)−5,5−ジメチル−1−シクロヘキサ−1−エン−1−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)−4−(((1R)−3−(モルホリン−4−イル)−1−((フェニルスルファニル)メチル)プロピル)アミノ−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)ベンゼンスルホンアミド(ABT−263)またはその塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物;(b)薬学的に許容される重カルコゲン酸化防止剤;および(c)1つもしくは複数の脂質を含む実質的に非水性の薬学的に許容される担体を含む経口で送達可能な医薬組成物であって;前記化合物および酸化防止剤がその担体中に溶解している組成物をさらに提供する。さらに具体的な実施形態では、その化合物はABT−263遊離塩基またはABT−263ビス塩酸塩(ABT−263ビスHCl)である。
【0052】
いくつかの実施形態では、HCAは式IIの酸化防止化合物:
【0053】
【化12】

(式中、nは0、1または2であり;
はSまたはSeであり;
はNHR、OHまたはHであり、Rはアルキルまたはアルキルカルボニルであり;
はCOORまたはCHOHであり、RはHまたはアルキルであり;
はHまたはアルキルであり;
アルキル基は、カルボキシル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノおよびアルキルカルボニルアミノからなる群から独立に選択される1つもしくは複数の置換基で、場合によって置換されている。)、薬学的に許容されるこの塩、または式中、YはSであり、RはHである場合、その−S−S−二量体もしくはそうした二量体の薬学的に許容される塩
である。
【0054】
他の実施形態では、そのHCAは式IIIの酸化防止化合物:
【0055】
【化13】

(式中、
YはS、SeまたはS−Sであり;
およびRは水素、アルキルおよび(CHから独立に選択され、nは0−10であり、Rはアリールカルボニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、カルボキシルまたはCHR−置換アルキルであり、RおよびRは独立にCO、CHOH、水素またはNHR10であり、Rは水素、アルキル、置換アルキルまたはアリールアルキルであり、R10は水素、アルキル、アルキルカルボニルまたはアルコキシカルボニルである。)
である。
【0056】
さらに他の実施形態では、HCAは低脂溶性化合物であり、したがって水性ストック溶液としてのHCAの導入の結果として、そうした実施形態による担体は水を含む。水が多く存在し過ぎると脂質をベースとした溶液の物理的安定性に悪影響を及ぼす恐れがあり、また、スルホキシド生成の速度を増大させて、酸化防止剤添加の利益を打ち消す恐れもある。したがって一般に、そうした実施形態による担体は約1重量%以下の水を含む(そうした担体は依然として「実質的に非水性」であると本明細書では規定される。)。適切な低脂溶性化合物には、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩およびチオ硫酸塩が含まれる。
【0057】
ABT−263またはこの塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物から本質的になるAPI(活性な薬剤構成要素)を少なくともリン脂質および可溶化剤中に溶解して脂質溶液を得るステップと、
場合によって、非リン脂質界面活性剤を可溶化剤または脂質溶液と混合するステップと、
低脂溶性酸化防止剤を水に溶解して水性ストック溶液を調製するステップと、
水性ストック溶液を脂質溶液と混合して経口で送達可能な医薬組成物を提供するステップと
を含むすぐ上で説明したような組成物を調製する方法をさらに提供する。
【0058】
抗アポトーシスBcl−2ファミリータンパク質のアポトーシス機能不全および/または過剰発現を特徴とする疾患を有する対象に治療有効量の上記組成物を経口で投与することを含む、前記疾患を治療する方法をさらに提供する。そうした疾患の例には、がんを含む多くの腫瘍性疾患が含まれる。本方法によって治療できるがんの種類の具体的な例は、非ホジキンリンパ腫である。本方法によって治療できるがんの種類の具体的な他の例は、慢性リンパ球性白血病である。本方法によって治療できるがんの種類の具体的なさらに他の例は、例えば小児患者における急性リンパ性白血病である。
【0059】
ヒトがん患者、例えば非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病または急性リンパ性白血病を有する患者の血流中で、ABT−263および/または1つもしくは複数のその代謝産物の治療上有効な血漿濃度を維持するための方法であって、薬学的に許容される重カルコゲン酸化防止剤ならびにリン脂質成分および薬学的に許容される可溶化成分を含む実質的に非水性の薬学的に許容される担体を含む実質的に非水性の担体中の溶液中に、ABT−263または薬学的に許容されるこの塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物(例えばABT−263遊離塩基またはABT−263ビスHCl)を含む薬物−担体系を含む医薬組成物を、約3時間−約7日間の平均投薬間隔で、1日当たり約50から約500mgABT−263に相当する投薬量で対象に投与することを含み、そのABT−263またはこの塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物およびその酸化防止剤が担体中の溶液中にある方法をさらに提供する。
【0060】
上記に提供したもののより具体的な態様を含む本発明の他の実施形態は、以下に示す詳細な説明において見出される、またはそれから明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施例8で説明する三成分「IPT」脂質系におけるABT−263遊離塩基溶液の概略的な相図である。図の陰影部分は最適処方物組成の領域を表す。
【図2】実施例8で説明する三成分「IST」脂質系におけるABT−263遊離塩基溶液の概略的な相図である。図の陰影部分は最適処方物組成の領域を表す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本明細書では「薬物−担体系」は、この中に均一に分布した少なくとも1つの薬物を有する担体を含む。本発明の組成物において、その薬物(式Iの化合物またはこの塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物)および本明細書で説明する酸化防止剤は担体中の溶液であり、いくつかの実施形態では、その薬物−担体系は本質的に組成物全体を構成する。他の実施形態では、薬物−担体系は経口投与に適したカプセル剤皮中にカプセル化される;そうした実施形態では、組成物は薬物−担体系およびカプセル剤皮を含む。
【0063】
担体および薬物−担体系は一般に液体であるが、いくつかの実施形態では、担体および/または薬物−担体系は固体または半固体であってよい。例えば、例示的には、薬物−担体系は、担体の融点または流動点を超える温度で薬物および酸化防止剤を担体中に溶解し、得られた溶液を融点または流動点より低い温度に冷却して固体の薬物−担体系を提供することによって調製することができる。それに代わってまたはそれに加えて担体は、本明細書で説明するような薬物および酸化防止剤の溶液をその中かまたはその上に吸着する固体基材を含むことができる。
【0064】
本発明の組成物は「経口で送達可能」である、すなわち経口投与に適合している。しかし、そうした組成物は、これらに限定されないが、非経口、舌下、頬側、鼻腔内、肺内、局所、経皮、皮内、眼球、耳内、経直腸、経膣、胃内、頭蓋内、滑液嚢内および関節内経路を含む他の投与経路により、薬物を、それを必要とする対象に送達するのに有用であり得る。
【0065】
本明細書では「経口投与」および「経口で投与する」という用語は、対象への口から(p.o.)の投与、すなわち、例えば適切な量の水または他の飲料用液体の助けを受けて組成物が直ちに飲み込まれる投与を指す。「経口投与」は、口腔内投与、例えば舌下もしくは頬側投与、または組成物の直接の飲み込みを伴わない歯周組織などの口腔内組織への局所投与とは区別される。
【0066】
本明細書で有用であるその塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩および代謝産物を含む治療上活性な化合物は一般に、水への低い溶解度、例えば約100μg/ml未満、大抵の場合約30μg/ml未満の溶解度を有する。本発明は、水に本質的に不溶性である、すなわち約10μg/ml未満の溶解度を有する薬物に対して特に有利であり得る。多くの化合物の水溶解度はpH依存性であり;そうした化合物の場合、本明細書で関心のある溶解度は、生理学的に関係のあるpH、例えば約1から約8のpHにおいてであることを理解されよう。したがって、種々の実施形態において、その薬物は、約1から約8の範囲のpHのうちの少なくとも一点において約100μg/ml未満、例えば約30μg/ml未満または約10μg/ml未満の水への溶解度を有する。例示的には、ABT−263はpH2で4μg/ml未満の水への溶解度を有する。
【0067】
一実施形態では、組成物は、上記規定の式Iの化合物またはそうした化合物の薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物を含む。
【0068】
他の実施形態では、その化合物は、Xがフルオロである式Iを有する。
【0069】
さらに他の実施形態では、その化合物は、Xがモルホリン−4−イルである式Iを有する。
【0070】
さらに他の実施形態では、その化合物は、R
【0071】
【化14】

(式中、XはO、CH、C(CHまたはCHCHであり;XおよびXはどちらも水素であるまたはどちらもメチルであり;Xはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である式Iを有する。この実施形態による例では、XはCHまたは(CHであってよい、ならびに/またはXおよびXのそれぞれはメチルであってよい、ならびに/またはXはクロロであってよい。
【0072】
さらに他の実施形態では、その化合物は、R
【0073】
【化15】

(式中、XはO、CH、C(CHまたはCHCHであり;XおよびXはどちらも水素であるまたはどちらもメチルであり;Xはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である式Iを有する。この実施形態による例では、XはCHまたはC(CHであってよい、ならびに/またはXおよびXのそれぞれはメチルであってよい、ならびに/またはXはクロロであってよい。
【0074】
さらに他の実施形態では、その化合物は、Xがフルオロであり、Xがモルホリン−4−イルである式Iを有する。
【0075】
さらに他の実施形態では、その化合物は、Xがフルオロであり、R
【0076】
【化16】

(式中、XはO、CH、C(CHまたはCHCHであり;XおよびXはどちらも水素であるまたはどちらもメチルであり;Xはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である式Iを有する。この実施形態による例では、XはCHまたはC(CHであってよい、ならびに/またはXおよびXのそれぞれはメチルであってよい、ならびに/またはXはクロロであってよい。
【0077】
さらに他の実施形態では、その化合物は、Xがモルホリン−4−イルであり、R
【0078】
【化17】

(式中、XはO、CH、C(CHまたはCHCHであり;XおよびXはどちらも水素であるまたはどちらもメチルであり;Xはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である式Iを有する。この実施形態による例では、XはCHまたは(CHであってよい、ならびに/またはXおよびXのそれぞれはメチルであってよい、ならびに/またはXはクロロであってよい。
【0079】
さらに他の実施形態では、その化合物は、Xがフルオロであり、Xがモルホリン−4−イルであり、R
【0080】
【化18】

(式中、XはO、CH、C(CHまたはCHCHであり;XおよびXはどちらも水素であるまたはどちらもメチルであり;Xはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である式Iを有する。この実施形態による例では、XはCHまたはC(CHであってよい、ならびに/またはXおよびXのそれぞれはメチルであってよい、ならびに/またはXはクロロであってよい。
【0081】
式Iの化合物は、R型またはS型の立体配置で非相称的に置換された炭素原子を含むことができ;そうした化合物は、ラセミ化合物として存在するまたは一方の立体配置が他方より過剰に、例えば少なくとも約85:15の鏡像異性体比で存在することができる。化合物は、実質的に鏡像異性体的に純粋であってよい、例えば、少なくとも約95:5、またはいくつかの場合、少なくとも約98:2もしくは少なくとも約99:1の鏡像異性体比を有してよい。
【0082】
式Iの化合物は、それに代わってまたはそれに加えてZ型もしくはE型の立体配置で炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含むことができる。「Z」という用語は、より大きい置換基がその二重結合の同じ側にある立体配置を意味し、「E」という用語は、より大きい置換基がその二重結合の反対側にある立体配置を意味する。または、化合物はZ型とE型の異性体の混合物として存在することができる。
【0083】
式Iの化合物は、それに代わってまたはそれに加えて、プロトンが1つの原子から他の原子へ移動する互変異性体またはその平衡混合物として存在することができる。互変異性体の例には、ケト−エノール、フェノール−ケト、オキシム−ニトロソ、ニトロ−アシ、イミン−エナミンなどが含まれる。
【0084】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、単独またはその化合物の塩もしくはプロドラッグの形態と一緒に、その親化合物の形態で組成物中に存在する。
【0085】
式Iの化合物は、酸付加塩、塩基付加塩または両性イオンを形成することができる。式Iの化合物の塩は、その化合物の単離またはそれに続く精製の際に作製することができる。酸付加塩は、式Iの化合物と酸の反応によって得られるものである。例えば、式Iの化合物の酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリセロリン酸塩、グルタミン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、パラ−トルエンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩を含む塩を、本発明の組成物において使用することができる。化合物と、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムなどのカチオンの重炭酸塩、炭酸塩、水酸化物またはリン酸塩の反応によって得られるものを含む塩基付加塩も同様に使用することができる。
【0086】
式Iの化合物は通常1個を超えるプロトン化可能な窒素原子を有しており、したがって、化合物の1当量当たり1当量を超える、例えば約1.2から約2、約1.5から約2または約1.8から約2当量の酸と酸付加塩を形成することができる。
【0087】
ABT−263も同様に酸付加塩、塩基付加塩または両性イオンを形成することができる。ABT−263の塩は、その化合物の単離またはそれに続く精製の際に作製することができる。ABT−263と酸の反応によって得られる酸付加塩には、上記に挙げたものが含まれる。上記に挙げたものを含む塩基付加塩も同様に使用することができる。ABT−263は少なくとも2個のプロトン化可能な窒素原子を有しており、したがって、化合物の1当量当たり1当量を超える、例えば約1.2から約2、約1.5から約2または約1.8から約2当量の酸と酸付加塩を形成することができる。
【0088】
例としてABT−263の場合、例えばビス塩酸塩(ビスHCl)およびビス臭化水素酸(ビス−HBr)塩を含むビス塩を形成させることができる。
【0089】
例えば、1047.5g/モルの分子量を有し、次式
【0090】
【化19】

で表されるABT−263ビスHClは、様々な方法、例えば以下に概要を示すことができる方法で調製することができる。
【0091】
ABT−263遊離塩基は、上記に引用した’135公開(その開示全体を参照により本明細書に組み込む。)の実施例1に例示されているようにして調製される。適切な重量のABT−263遊離塩基を酢酸エチルに溶解する。塩酸のエタノール中の溶液を、モルABT−263当たり少なくとも2モルHClと、得られるABT−263ビスHCl塩を結晶化させるのに十分な量(少なくとも約20倍の体積)のEtOHとを提供する量で(例えば80gのEtOH中に約4.3kgのHCl)、ABT−263溶液に加える。溶液を撹拌しながら約45℃に加熱し、種晶をEtOH中のスラリーとして加える。約6時間後、得られたスラリーを約1時間かけて約20℃に冷却し、その温度で約36時間混合する。スラリーをろ過して結晶性固体を回収する。この固体はABT−263ビスHClのエタノール溶媒和物である。この固体を真空下および窒素雰囲気下で緩やかに撹拌しながら約8日間かけて乾燥して、白色の脱溶媒和したABT−263ビスHCl結晶を得る。この物質は、本発明のABT−263ビスHCl処方物を調製するのに適している。
【0092】
「遊離塩基」という用語は、厳密に言えば、その親化合物は両性イオン的であり、したがって常に真の塩基として挙動するわけではないことを認識した上で、本明細書では便宜上親化合物を指すものとして使用する。
【0093】
上記したように、ABT−263遊離塩基は、上記に引用した’135公開の実施例1に記載されているような方法で調製することができる。この方法の生成物は非晶質のガラス状固体である。例えば凍結乾燥法または沈殿技術によって、この生成物から粉末を調製することができる。そうした粉末を、本発明のカプセル剤の調製におけるAPIとして使用することができるが、一般に結晶形態のABT−263遊離塩基をAPIとして使用することが好ましいことが分かっている。そうした結晶形態は溶媒和物および溶媒フリーの結晶形態を含む。
【0094】
ABT−263遊離塩基の溶媒和物は以下に説明するようにして調製することができる。出発産物は、’135公開にしたがって調製された非晶質形態を含む任意の固体形態のABT−263遊離塩基であってよい。
【0095】
測定量のABT−263遊離塩基(示したように、任意の固体形態を使用することができる。)を、これらに限定されないが、2−プロパノール、1−プロパノール、酢酸エチル/エタノール1:3 v/v、酢酸メチル/ヘキサン1:1 v/v、クロロホルム、メタノール、1,4−ジオキサン/ヘキサン1:2 v/v、トルエンおよびベンゼンを含むいくつかの溶媒または溶媒混合物のいずれかに懸濁させる。得られた懸濁液を、光から保護しながら室温で撹拌する。それぞれの場合において、ABT−263遊離塩基の溶媒和を可能にするのに十分な期間の後、結晶を遠心分離ろ過により収穫する。得られた溶媒和物を、例えば屈曲位置高感度検出器および平行ビーム光学系を備えたG3000回折計(Inel Corp.、Artenay、France)を用いて、粉末X線回折(PXRD)により特性評価する。回折計は、銅陽極管(1.5kW高精度焦点)を用いて40kVおよび30mAで動作させる。入射ビームゲルマニウム単色光分光器によって単色光を得る。回折計を、減衰直接ビームを用いて1°間隔で較正する。較正は、ケイ素粉末線位置参照標準(NIST640c)を用いてチェックする。計器はSymphonixソフトウェア(Inel Corp.、Artenay,France)を用いてコンピューター制御し、データはJadeソフトウェア(バージョン6.5、Materials Data、Inc.,Livermore、CA)を用いて解析する。試料をアルミ製試料ホルダー上に載せ、スライドガラスで平らにする。
【0096】
例えば空気乾燥によって酢酸エチル/エタノール溶媒和物を脱溶媒和すると、溶媒フリーの結晶形態のABT−263遊離塩基が得られる。形態IのABT−263遊離塩基のPXRDピークを表1に列挙する。そこに実質的に示したようなピークを有するPXRDパターンは、結晶性ABT−263遊離塩基、より具体的には形態IのABT−263遊離塩基を特定するのに用いることができる。本明細書の関連で「実質的に示したような」という語句は、指定された位置から約0.2°2θを超えてシフトしていないピークを有することを意味する。
【0097】
【表1】

【0098】
1−プロパノール、2−プロパノール、メタノール、ベンゼン、トルエン、ジオキサン/ヘキサン、酢酸メチル/ヘキサンおよびクロロホルム溶媒和物を含む大部分の溶媒和物の脱溶媒和は、酢酸エチル/エタノール溶媒和物の脱溶媒和によって得られる結晶形態と同じであることがPXRDで示される溶媒フリーの結晶形態のABT−263遊離塩基を提供する。
【0099】
ピリジンおよびアニソール溶媒和物の脱溶媒和は、酢酸エチル/エタノール溶媒和物の脱溶媒和によって得られる形態と異なることがPXRDで示される溶媒フリーの結晶形態のABT−263遊離塩基を提供する。ピリジンまたはアニソール溶媒和物の脱溶媒和によって得られる結晶形態を形態IIと指定する。形態IIのABT−263遊離塩基のPXRDスキャンを図2に示す。形態IIのABT−263遊離塩基のPXRDピークを表2に列挙する。実質的にそこに示したようなピークを有するPXRDパターンは、結晶性ABT−263遊離塩基、より具体的には形態IIのABT−263遊離塩基を特定するのに用いることができる。
【0100】
【表2】

【0101】
形態IのABT−263遊離塩基に特に特徴的な、具体的には形態Iと形態IIの違いを見分けるPXRDピークは、それぞれの場合±0.2°2θで、6.21、6.72、12.17、18.03および20.10°2θでのピークを含む。一実施形態では、形態IのABT−263遊離塩基は、少なくとも、これらの位置のいずれか1つまたは複数でのピークを特徴とする。他の実施形態では、形態IのABT−263遊離塩基は、少なくとも、これらの位置のそれぞれでのピークを特徴とする。さらに他の実施形態では、形態IのABT−263遊離塩基は、表1に示す位置のそれぞれでのピークを特徴とする。
【0102】
形態IIのABT−263遊離塩基に特に特徴的な、具体的には形態IIと形態Iの違いを見分けるPXRDピークは、それぞれの場合±0.2°2θで、5.79、8.60、12.76、15.00および20.56°2θでのピークを含む。一実施形態では、形態IIのABT−263遊離塩基は、少なくとも、これらの位置のいずれか1つまたは複数でのピークを特徴とする。他の実施形態では、形態IIのABT−263遊離塩基は、少なくとも、これらの位置のそれぞれでのピークを特徴とする。さらに他の実施形態では、形態IIのABT−263遊離塩基は、表2に示す位置のそれぞれでのピークを特徴とする。
【0103】
溶媒和形態を含む結晶形態のABT−263遊離塩基のいずれも、本発明のカプセル剤の調製のためのAPIとして有用であり得る。しかし、この目的には形態Iおよび形態IIなどの溶媒フリーの形態が一般に好ましい。
【0104】
式Iの化合物およびそうした化合物の調製方法は、上記に引用した’135公開および/または上記に引用した米国特許出願公開第2007/0072860号に開示されている。それぞれを全体として参照により本明細書に組み込む。本明細書で使用する置換基についての用語は、これらの公開特許と厳密に同じように規定される。
【0105】
−NH、−C(O)OH、−OHまたは−SH部分を有する式Iの化合物は、代謝過程においてインビボで取り外されて遊離−NH、−C(O)OH、−OHまたは−SH部分を有する親化合物を放出できるプロドラッグ形成部分がそれと結合していてよい。プロドラッグの塩も用いることができる。
【0106】
理論に拘泥するわけではないが、式Iの化合物の治療効能は、少なくとも一部は、例えばタンパク質のBH3結合溝を占有することによってタンパク質の抗アポトーシス作用を阻害する仕方で、Bcl−2、Bcl−XまたはBcl−wなどのBcl−2ファミリータンパク質と結合する能力に起因していると考えられる。一般に、Bcl−2ファミリータンパク質に対して高い結合親和力を有する、例えば約5nM以下、好ましくは約1nM以下のKを有する化合物を選択するのが望ましいことが分かっている。
【0107】
’135公開に開示されている特定の任意の化合物を含む本明細書で提供する組成物は明らかに、本発明の実施形態として考慮される。
【0108】
より具体的な実施形態では、その組成物は、N−(4−(4−((2−(4−クロロフェニル)−5,5−ジメチル−1−シクロヘキサ−1−エン−1−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)−4−(((1R)−3−(モルホリン−4−イル)−1−((フェニルスルファニル)メチル)プロピル)アミノ−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)ベンゼンスルホンアミド(ABT−263)またはこの塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物を含む。さらに具体的な実施形態では、組成物はABT−263親化合物(すなわち、遊離塩基)またはこの塩、プロドラッグもしくはプロドラッグの塩を含む。さらに具体的な実施形態では、組成物はABT−263遊離塩基またはこの塩、例えばビス塩を含む。さらに具体的な実施形態では、組成物はABT−263遊離塩基またはABT−263ビスHClを含む。
【0109】
薬物(すなわち、式Iの化合物またはこの塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物)は、その組成物が適切なレジメンにしたがってそれを必要とする対象に投与されたとき、治療上効果的であり得る量で組成物中に存在する。投与量は本明細書では、文脈から別段の必要がない限り、親化合物相当量で表される。一般に、適当な頻度、例えば日に2回から週に1回で投与できる単位用量(単回で投与される量)は、対象の化合物に応じて約10から約1,000mgである。投与頻度が日に1回だけ(q.d.)である場合、単位用量と1日量は同じである。例として、例えば薬物がABT−263である場合、単位用量は一般に約25から約1,000mg、より典型的には約50から約500mg、例えば約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450または約500mgである。組成物が薬物−担体系を包むカプセル剤皮を含む場合、単位用量は、単一のカプセルまたは数個(small plurality)のカプセル、最も一般的には1から約10個のカプセルで送達することができる。
【0110】
単位用量が多くなればなるほど、比較的高い濃度の薬物を溶液にすることができる担体を選択することがより望ましい。一般に、薬物−担体系中の薬物の濃度は少なくとも約10mg/ml、例えば約10から約500mg/mlであるが、特定のケースでは、それより低い濃度およびそれより高い濃度が許容されるまたはそれを達成することができる。例として、例えば薬物がABT−263である場合、種々の実施形態において、薬物濃度は少なくとも約10mg/ml、例えば約10から約400mg/mlまたは少なくとも約20mg/ml、例えば約20から約200mg/ml、例えば約20、約25、約30、約40、約50、約75、約100、約125、約150もしくは約200mg/mlである。
【0111】
本発明の組成物では、薬物は担体の「溶液中」にある。これは、例えば懸濁液の形態で分散されていてもいなくても、実質的に薬物のすべてが溶液中にある、すなわち、わずかな部分、例えばわずか約2%またはわずか約1%の薬物が固体(例えば、結晶)形態であることを意味すると理解されよう。実際的な表現では、これは、薬物を通常、担体中への溶解限度以下の濃度で処方しなければならないことを意味する。溶解限度は温度に依存する可能性があり、したがって適切な濃度の選択にあたっては、通常の貯蔵、輸送および使用において、組成物がそれに曝される温度の範囲を考慮に入れなければならないことを理解されよう。
【0112】
薬物だけでなく、酸化防止剤も担体中の上記規定の「溶液中」にある。酸化防止剤が低脂溶性であり、水溶液中の担体または薬物−担体系に導入しなければならない場合、相分離を回避するために、界面活性剤、より具体的には非リン脂質界面活性剤が必要である。
【0113】
「酸化防止剤」または「酸化防止剤」の特性を有する化合物は、別の化学品またはそれ自体の酸化を防止、抑制、減少または遅延させる化合物である。酸化防止剤は、例えば、処方物中の式Iの化合物の酸化を防止、抑制、減少または遅延させることによって、本明細書で説明する脂質処方物の安定性および保存寿命を改善することができる。
【0114】
安定性または保存寿命の増進は、例えば、処方物中でのスルホキシドの出現または増加速度を監視することによって評価することができる。スルホキシドの全量は、サンプリングと分析の繰り返しによって監視することができる。あるいは、試料を式Iの化合物、すなわち次式
【0115】
【化20】

(式中、X、XおよびRは上記に示した通りである。)
を有する化合物のスルホキシド分解生成物;または次式
【0116】
【化21】

を有するABT−263のスルホキシド分解生成物についてより具体的に分析することができる。本明細書でのスルホキシド分解生成物への参照は、スルホキシド基のイオウ原子立体中心についての両方のジアステレオマーを含むと理解されよう。
【0117】
本明細書での酸化防止剤の「酸化防止上の有効量」は、酸化防止剤を含む処方物において、酸化防止剤を含まないこと以外は同じ処方物と比較して、
(a)分解生成物、例えば上記スルホキシド分解生成物の生成または蓄積の実質的な減少(例えば少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%または少なくとも約90%の減少)、および/または、
(b)分解生成物が閾値に達するまでにかかる時間の実質的な延長(例えば少なくとも約30、少なくとも約60、少なくとも約90または少なくとも約180日間)
を提供する量である。(a)分解生成物の生成または蓄積の減少、または、(b)処方物において分解生成物が閾値に達するまでにかかる時間の延長の度合いを測定するための貯蔵安定性試験は、適切な任意の温度または温度範囲で実施することができる。例示的には、約5℃での試験は冷凍条件下での貯蔵安定性を示すことができ、約20−25℃での試験は通常の周囲条件下での貯蔵安定性を示すことができ、約30℃以上の温度での試験は促進老化試験において有用であり得る。分解生成物の適切な任意の閾値を、例えば、存在する式Iの化合物の初期量の約0.2%から約2%の範囲で終点として選択することができる。
【0118】
種々の例示的実施形態において、酸化防止剤は、紫外線に対して不透明である密封容器中、周囲条件下(例えば、約20−25℃)で貯蔵した場合、例えば、下記の貯蔵期間の最後の時点に存在するスルホキシド分解生成物の量を測定することによって、処方物中での薬物の酸化的分解を、
(a)少なくとも約3ヵ月間で約1%未満;
(b)少なくとも約6ヵ月間で約1%未満;
(c)少なくとも約1年間で約1%未満;
(d)少なくとも約3ヵ月間で約0.5%未満;
(e)少なくとも約6ヵ月間で約0.5%未満;または
(f)少なくとも約1年間で約0.5%未満;
に保持するのに効果的な量で含まれる。
【0119】
医薬組成物で用いられる酸化防止剤は最も一般的には、三重項もしくは一重項酸素、超酸化物、過酸化物および遊離のヒドロキシルラジカルなどの酸化性種の発生を抑制する薬剤、またはそうした酸化性種が発生したときそれらを捕捉する薬剤である。これらの部類の中で通常使用される酸化防止剤の例には、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、パルミチン酸レチニル、トコフェロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸およびパルミチン酸アスコルビルが含まれる。しかし、本発明者らは、少なくともいくつかの通常使用される酸化防止剤は、本明細書で説明するカプセル化液体処方物中での過剰のスルホキシド生成からABT−263を保護するのに効果がないことを見出した。
【0120】
例えば、本明細書で「IPT−253」(20%Imwitor742(商標)、50%Phosal 53MCT(商標)、30%Tween(商標)80)と称する媒体中のABT−263遊離塩基の15重量%溶液に0.2重量%で加えられたBHAは、表3に示すように、上部空間の窒素パージなしの40℃での4週間安定性試験において、スルホキシド生成に対して効果がないことが分かった。この試験の詳細を本明細書の実施例7に示す。
【0121】
【表3】

【0122】
これに対して、効果的であることが分かった酸化防止剤は重カルコゲン酸化防止剤である。理論に拘泥するわけではないが、これは、酸化性種によって優先的に攻撃され、それによって過度の分解から薬物を保護する競合的基材すなわち「犠牲的」酸化防止剤として主に機能すると考えられる。
【0123】
いくつかの実施形態では、そのHCAは1つまたは複数の式IIの酸化防止化合物:
【0124】
【化22】

(式中、
nは0、1または2であり;
はSまたはSeであり;
はNHR、OHまたはHであり、Rはアルキルまたはアルキルカルボニルであり;
はCOORまたはCHOHであり、RはHまたはアルキルであり;
はHまたはアルキルであり;
アルキル基は、カルボキシル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノおよびアルキルカルボニルアミノからなる群から独立に選択される1つまたは複数の置換基で、場合によって置換されている。)、薬学的に許容されるこれらの塩、または式中、YはSであり、RはHである場合、それらの−S−S−二量体もしくはそうした二量体の薬学的に許容される塩
を含む。
【0125】
他の実施形態では、HCAは式IIIの酸化防止化合物:
【0126】
【化23】

(式中、
YはS、SeまたはS−Sであり;
およびRはH、アルキルおよび(CHから独立に選択され、nは0−10であり、Rはアリールカルボニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、カルボキシルまたはCHR−置換アルキルであり、RおよびRは独立にCO、CHOH、水素またはNHR10であり、RはH、アルキル、置換アルキルまたはアリールアルキルであり、R10は水素、アルキル、アルキルカルボニルまたはアルコキシカルボニルである。)
である。
【0127】
式IIまたは式IIIによる置換基の部分を形成する「アルキル」置換基または「アルキル」もしくは「アルコキシ」基は、1から約18個の炭素原子を有するものであり、直鎖または分岐鎖からなっていてよい。
【0128】
式IIIによる置換基の部分を形成する「アリール」基は、1つもしくは複数のヒドロキシ、アルコキシまたはアルキル基で置換されていないまたは置換されているフェニル基である。
【0129】
いくつかの実施形態では、式IIのRはC1−4アルキル(例えば、メチルもしくはエチル)または(C1−4アルキル)カルボニル(例えば、アセチル)である。
【0130】
いくつかの実施形態では、式IIのRは、HまたはC1−18アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル(例えば、n−プロピルもしくはイソプロピル)、ブチル(例えば、n−ブチル、イソブチルもしくはt−ブチル)、オクチル(例えば、n−オクチルもしくは2−エチルヘキシル)、ドデシル(例えば、ラウリル)、トリデシル、テトラデシル、ヘキサデシルまたはオクタデシル(例えば、ステアリル)である。
【0131】
は一般にHまたはC1−4アルキル(例えば、メチルもしくはエチル)である。
【0132】
HCAは、例えば、アルキルエステルもしくはN−アシル誘導体などの天然または合成のアミノ酸もしくはこの誘導体またはそうしたアミノ酸もしくは誘導体の塩であってよい。アミノ酸またはこの誘導体が自然源から誘導される場合、それは一般にL立体配置であるが、D異性体およびD,L異性体混合物は、必要なら、置換されていてよいことを理解されたい。
【0133】
本明細書で有用なHCAの非限定的な例には、β−アルキルメルカプトケトン、システイン、シスチン、ホモシステイン、メチオニン、チオジグリコール酸、チオジプロピオン酸、チオグリセロール、セレノシステイン、セレノメチオニンならびにこれらの塩、エステル、アミドおよびチオエーテル、ならびにこれらの組合せが含まれる。より具体的には、1つまたは複数のHCAを、N−アセチルシステイン、N−アセチルシステインブチルエステル、N−アセチルシステインドデシルエステル、N−アセチル−システインエチルエステル、N−アセチルシステインメチルエステル、N−アセチルシステインオクチルエステル、N−アセチル−システインプロピルエステル、N−アセチルシステインステアリルエステル、N−アセチルシステインテトラデシルエステル、N−アセチルシステイントリデシルエステル、N−アセチルメチオニン、N−アセチルメチオニンブチルエステル、N−アセチルメチオニンドデシルエステル、N−アセチルメチオニンエチルエステル、N−アセチルメチオニンメチルエステル、N−アセチルメチオニンオクチルエステル、N−アセチルメチオニンプロピルエステル、N−アセチルメチオニンステアリルエステル、N−アセチルメチオニンテトラデシルエステル、N−アセチルメチオニントリデシルエステル、N−アセチル−セレノシステイン、N−アセチルセレノシステインブチルエステル、N−アセチルセレノシステインドデシルエステル、N−アセチルセレノシステインエチルエステル、N−アセチルセレノシステインメチルエステル、N−アセチルセレノ−システインオクチルエステル、N−アセチルセレノシステインプロピルエステル、N−アセチルセレノシステインステアリルエステル、N−アセチルセレノシステインテトラデシルエステル、N−アセチルセレノシステイントリデシルエステル、N−アセチルセレノ−メチオニン、N−アセチルセレノメチオニンブチルエステル、N−アセチルセレノメチオニンドデシルエステル、N−アセチルセレノメチオニンエチルエステル、N−アセチルセレノメチオニンメチルエステル、N−アセチル−セレノメチオニンオクチルエステル、N−アセチルセレノメチオニンプロピルエステル、N−アセチルセレノ−メチオニンステアリルエステル、N−アセチルセレノメチオニンテトラデシルエステル、N−アセチルセレノ−メチオニントリデシルエステル、システイン、システインブチルエステル、システインドデシルエステル、システインエチルエステル、システインメチルエステル、システインオクチルエステル、システインプロピルエステル、システインステアリルエステル、システインテトラデシルエステル、システイントリデシルエステル、シスチン、シスチンジブチルエステル、シスチンジ(ドデシル)エステル、シスチンジエチルエステル、シスチンジメチルエステル、シスチンジオクチルエステル、シスチンジプロピルエステル、シスチンジステアリルエステル、シスチンジ(テトラデシル)エステル、シスチンジ(トリデシル)エステル、N,N−ジアセチルシスチン、N,N−ジアセチルシスチンジブチルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジエチルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジ(ドデシル)エステル、N,N−ジアセチルシスチンジメチルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジオクチルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジプロピルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジステアリルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジ(テトラデシル)エステル、N,N−ジアセチルシスチンジ(トリデシル)エステル、ジブチルチオジグリコレート、ジブチルチオジプロピオネート、ジ(ドデシル)チオジグリコレート、ジ(ドデシル)チオジプロピオネート、ジエチルチオジグリコレート、ジエチルチオジプロピオネート、ジメチルチオジグリコレート、ジメチルチオジプロピオネート、ジオクチルチオジグリコレート、ジオクチルチオジプロピオネート、ジプロピルチオジグリコレート、ジプロピルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジグリコレート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジ(テトラデシル)チオジグリコレート、ジ(テトラデシル)チオジプロピオネート、ホモシステイン、ホモシステインブチルエステル、ホモシステインドデシルエステル、ホモシステインエチルエステル、ホモシステインメチルエステル、ホモシステインオクチルエステル、ホモシステインプロピルエステル、ホモシステインステアリルエステル、ホモシステインテトラデシルエステル、ホモシステイントリデシルエステル、メチオニン、メチオニンブチルエステル、メチオニンドデシルエステル、メチオニンエチルエステル、メチオニンメチルエステル、メチオニンオクチルエステル、メチオニンプロピルエステル、メチオニンステアリルエステル、メチオニンテトラデシルエステル、メチオニントリデシルエステル、S−メチルシステイン、S−メチル−システインブチルエステル、S−メチルシステインドデシルエステル、S−メチルシステインエチルエステル、S−メチル−システインメチルエステル、S−メチルシステインオクチルエステル、S−メチルシステインプロピルエステル、S−メチル−システインステアリルエステル、S−メチルシステインテトラデシルエステル、S−メチルシステイントリデシルエステル、セレノシステイン、セレノシステインブチルエステル、セレノシステインドデシルエステル、セレノシステインエチルエステル、セレノシステインメチルエステル、セレノシステインオクチルエステル、セレノシステインプロピルエステル、セレノシステインステアリルエステル、セレノシステインテトラデシルエステル、セレノシステイントリデシルエステル、セレノメチオニン、セレノメチオニンブチルエステル、セレノメチオニンドデシルエステル、セレノ−メチオニンエチルエステル、セレノメチオニンメチルエステル、セレノメチオニンオクチルエステル、セレノ−メチオニンプロピルエステル、セレノメチオニンステアリルエステル、セレノメチオニンテトラデシルエステル、セレノメチオニントリデシルエステル、チオジグリコール酸、チオジプロピオン酸、チオグリセロール、これらの異性体およびこれらの異性体の混合物から選択することができる。
【0134】
HCA化合物の塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリセロリン酸塩、グルタミン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、パラ−トルエンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩などの酸付加塩であってよい。特定の実施形態では、上記に個別に挙げた化合物の1つの塩酸塩は、酸化防止上有効な量で組成物中に存在する。
【0135】
理論に拘泥するわけではないが、一般に、上記に例示したものなどの重カルコゲン酸化防止剤は、それら自体がより簡単に酸化可能であり、したがって薬物化合物より優先的に酸化されることによって、活性化合物を保護すると考えられる。一般に、薬物化合物に対して許容できる程度の保護を提供するこの作用様式のためには、式IIまたは式IIIの酸化防止剤は、相当な量、例えば薬物化合物に対して少なくとも約1:10のモル比で存在しなければならない。いくつかの実施形態では、薬物化合物に対する酸化防止剤のモル比は約1:10から約2:1、例えば約1:5から約1.5:1である。モル比は、約1:1、すなわち約8:10から約10:8のときに最も良好な結果が得られることがある。
【0136】
処方物における比較的高い酸化防止剤濃度のためのこの一般的な要件は、酸化防止剤の選択と他の処方物成分の選択の両方に対して制約をもたらすことになる。具体的には、活性薬剤だけでなく、酸化防止上の有効量の酸化防止剤も溶解させることができる担体系を選択しなければならない。当業者は、本明細書での開示をもとにした慣行的な溶解度試験によって、単一の脂質材料または2つ以上のそうした材料の混合物を含むことができる適切な脂質担体を選択することができる。
【0137】
式IIまたは式IIIのイオウ含有酸化防止剤の酸化防止効能にもかかわらず、本発明者らは、ABT−263をこの遊離塩基の形態で使用した場合、約1:1のモル比で、そうした酸化防止剤は、貯蔵すると濁ってくる溶液をもたらす傾向があることを見出した。そのビスHCl塩の形態でABT−263を含む溶液については、この傾向はない、または少なくとも余り目立つものではない。
【0138】
しかし、さらに他の予想外の発見では、表6(以下の実施例3を参照されたい)に示すように脂質溶液中で処方した場合(しかし酸化防止剤は存在しない)、ABT−263遊離塩基は、スルホキシド生成に対して、ABT−263ビスHClほど影響を受けないことが分かった。溶液A中の溶媒系はPhosal 53MCT(商標)/エタノール、9:1 v/vであり;溶液B中の溶媒系はLabrafil M1944CS(商標)/オレイン酸/ポリソルベート、重量で80、30%/40%/30%(GattefosseのLabrafil M1944CS(商標)はポリオキシエチレングリセリルモノオレエートを含む。)である。上部空間の窒素パージなしの40℃での3週間の試験を実施した。
【0139】
その遊離塩基でABT−263が、スルホキシド生成に対して、塩形態ほど影響を受けないという予想外の発見を生かすために、本発明者らは、異なる部類のイオウ含有酸化防止剤、すなわち亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩およびチオ硫酸塩の部類の無機酸化防止剤に目を向けた。厄介なことには、これらの酸化防止剤は低脂溶性であり、水溶液中の担体または薬物−担体系に導入されなければならない。水の存在はABT−263溶液中でのスルホキシド生成を促進するため、その水を最小限にするのが非常に効果的である。本発明の一実施形態では、加えられる水の量を制限するために、低脂溶性酸化防止剤を、ABT−263の濃度のモル当量を提供する濃度よりずっと低い濃度で加える。
【0140】
亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩またはチオ硫酸塩酸化防止剤などの低脂溶性酸化防止剤を使用する場合、薬物−担体系中に、約1重量%を超えない、例えば重量で約0.2%から約0.8%の量の水を含有させる。そうした少量の水に導入させることができるそうした酸化防止剤の量は一般に、薬物−担体系の約0.2重量%を超えず、例えば重量で約0.02%から約0.2%または約0.05%から約0.15%の量である。
【0141】
処方物に加える水の量を最少化するために、例えば少なくとも約10重量%の酸化防止剤を含む比較的濃縮された水性ストック溶液の形態で酸化防止剤を提供することが望ましい。しかし、過度に濃厚なストック溶液(例えば、約20%以上)を使用すると、処方物中に望ましくない固体沈殿物をもたらす恐れがあることが分かっている。ストック溶液中の酸化防止剤の適切な濃度は一般に、重量で約10%から約18%、例示的には約15%である。
【0142】
亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩およびチオ硫酸塩のナトリウムおよびカリウム塩、特にメタ重亜硫酸ナトリウムおよびメタ重亜硫酸カリウムは本実施形態による有用な酸化防止剤である。
【0143】
スルホキシド生成をさらに最少化させるために、EDTAまたはこの塩(例えば、ジナトリウムEDTAまたはカルシウムジナトリウムEDTA)などのキレート剤を、場合によって、例えば薬物−担体系の重量で約0.002%から約0.02%の量で加える。EDTAは、酸化防止剤と同じような仕方で水性ストック溶液として加えることができる。酸化防止剤およびEDTAは、望むなら、同じストック溶液の成分として加えることができる。キレート剤は、酸化的分解を促進させることができる金属イオンを封鎖する。
【0144】
驚くべきことに、本明細書で考える非常に低い酸化防止剤濃度(一般に、低脂溶性酸化防止剤と本実施形態によるABT−263のモル比は約1:20以下である。)で、本明細書で実施例12に例示するように、スルホキシド生成は、許容される限界内に留まることが分かった。
【0145】
スルホキシド生成は、低い過酸化物価を有する処方物構成要素を選択することによって、さらに最少化することができる。過酸化物価は、十分確立された薬剤用添加剤の特性であり、これは、一般に(本明細書でも)、kg添加剤当たりの過酸化物のミリグラム当量(meq/kg)に相当する単位で表される。いくつかの添加剤は本質的に低い過酸化物価を有するが、他の、例えばオレイル部分および/またはポリオキシエチレン鎖などの不飽和脂肪酸を有するものは過酸化物の供給源となる可能性がある。例えば、ポリソルベート80の場合、約5以下、例えば約2以下の過酸化物価を有するポリソルベート80の供給源を選択することが好ましい。適切な供給源には、どちらもCrodaから入手することができるCrillet4HP(商標)およびSuper−Refined Tween80(商標)が含まれる。
【0146】
担体は「実質的に非水性」である、すなわち、水分を含まない、または、実際的な意味で、組成物の性能または特性に本質的に悪影響を及ぼさない程度に十分少ない量しか水分を含まない。一般に、担体は0から約5重量%未満の水分を含む。本明細書で有用な特定の構成要素は少量の水分を、分子または超分子構造の上またはこの中に結合することができ、存在する場合、そうした結合水は、本明細書で規定する担体の「実質的に非水性」の特徴に影響を及ぼさないことを理解されよう。さらに、上記で示したように、低脂溶性酸化防止剤の使用では少量の水(薬物−担体系の約1重量%以下)を加えることが必要であり、やはり、これは本明細書で規定する担体の「実質的に非水性」の特性に影響を及ぼさない。
【0147】
いくつかの実施形態では、担体は1つまたは複数のグリセリド物質を含む。適切なグリセリド物質には、これらに限定されないが、中鎖から長鎖のモノ−、ジ−およびトリグリセリドが含まれる。本明細書では「中鎖」という用語は、例えばCからC10鎖を含む約6個以上から約12個未満の炭素原子を個別に有するヒドロカルビル鎖を指す。したがって、カプリリルおよびカプリル鎖、例えばカプリル酸/カプリン酸モノ−、ジ−および/またはトリグリセリドを含むグリセリド物質は、本明細書での「中鎖」グリセリド物質の例である。本明細書では「長鎖」という用語は、例えばラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリル、オレイル、リノレイルおよびリノレニル鎖を含む少なくとも約12、例えば約12から約18個の炭素原子を有するヒドロカルビル鎖を指す。グリセリド物質中の中鎖から長鎖のヒドロカルビル基は飽和されていても、モノまたはポリ不飽和であってよい。
【0148】
一実施形態では、担体は、中鎖および/または長鎖トリグリセリド物質を含む。中鎖トリグリセリド物質の適切な例は、例えばAbitec Corp.のCaptex355EP(商標)およびこれと実質的に同等の産物などのカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド産物である。長鎖トリグリセリドの適切な例には、任意の薬学的に許容される植物油、例えばキャノーラ油、ココナツオイル、コーンオイル、綿実油、アマニ油、オリーブ油、ヤシ油、ピーナッツ油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油およびひまわり油およびこれらの油の混合物が含まれる。動物、特に、例えば魚油を含む海産動物由来の油も使用することができる。
【0149】
(a)治療有効量の式Iの化合物と(b)酸化防止上の有効量の重カルコゲン酸化防止剤の両方を可溶化するのに特に有用であることが分かっている担体系は、2つの必須成分:リン脂質およびこのリン脂質のための薬学的に許容される可溶化剤を含む。本明細書におけるある(またはその)リン脂質、可溶化剤または他の処方物構成要素への単数での参照は、複数;したがって、2つ以上のリン脂質または2つ以上の可溶化剤の組合せ、例えば混合物を本明細書では明らかに考慮することを理解されよう。可溶化剤、または可溶化剤とリン脂質の組合せも薬物および酸化防止剤を可溶化するが、場合によって担体中に存在する界面活性剤またはアルコール、例えばエタノールなどの他の担体構成要素は、状況によっては薬物および酸化防止剤の可溶化を増進させることができる。
【0150】
薬学的に許容される任意のリン脂質またはリン脂質の混合物を使用することができる。一般に、そうしたリン脂質は、加水分解してリン酸、脂肪酸、アルコールおよび窒素含有塩基をもたらすリン酸エステルである。薬学的に許容されるリン脂質には、これらに限定されないが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンおよびホスファチジルエタノールアミンが含まれる。一実施形態では、組成物は、例えば天然レシチンから誘導されるホスファチジルコリンを含む。卵黄などの動物源を含む任意のレシチン供給源を用いることができるが、一般に植物源が好ましい。大豆は、本発明で使用するホスファチジルコリンを供給できるレシチンの特に豊富な供給源である。
【0151】
例示的には、リン脂質の適切な量は、担体の重量の約15%から約75%、例えば約30%から約60%であるが、特定の状況では、それより多い量やそれより少ない量を用いることができる。
【0152】
可溶化剤の成分として有用な構成要素は特に限定されないが、それは、ある程度具体的な薬物および酸化防止剤、ならびにそれぞれおよびリン脂質の所望濃度に依存することになる。一実施形態では、可溶化剤は、1つまたは複数のグリコール、1つまたは複数のグリコリドおよび/または1つまたは複数のグリセリド物質を含む。
【0153】
グリコールは、非カプセル化処方物のためまたは軟質カプセル剤皮を使用する場合だけに一般に適しており、硬質ゼラチン剤皮などの硬質剤皮と適合しない傾向がある。適切なグリコールには、約200から約1,000g/モルの分子量を有するプロピレングリコールおよびポリエチレングリコール(PEG)、例えば約400g/モルの平均分子量を有するPEG−400が含まれる。そうしたグリコールは、比較的高い薬物の溶解度を提供することができるが、例えば、グリコールは、超酸化物、過酸化物および/または遊離のヒドロキシルラジカルを生成する傾向があるため、そうしたグリコールを含む担体中の溶液の場合、薬物が酸化的分解する可能性が高まる恐れがある。担体のグリコール含有量が高くなればなるほど、化学的に不安定な薬物の分解の傾向が大きくなる。したがって、一実施形態では、1つまたは複数のグリコールは、担体の少なくとも重量で約1%、しかし約50%未満、例えば約30%未満、約20%未満、約15%未満または約10%未満の合計グリコール量で存在する。他の実施形態では、担体はグリコールを実質的に含まない。
【0154】
グリコリドは、1つもしくは複数の有機酸、例えば中鎖から長鎖の脂肪酸でエステル化されたプロピレングリコールまたはPEGなどのグリコールである。適切な例には、例えばAbitec Corp.からのそれぞれCapmul PG−8(商標)、Capmul PG−12(商標)およびCapmul PG−2L(商標)ならびにこれらと実質的に同等の産物などのプロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウレートおよびプロピレングリコールジラウレート産物が含まれる。
【0155】
リン脂質と一緒に用いるのに適したグリセリド物質には、これらに限定されないが、上記したものなどが含まれる。1つまたは複数のグリセリド物質が可溶化剤の主成分として存在する場合、グリセリドの適切な合計量は、担体の他の成分と一緒に、リン脂質を可溶化するのに効果的であり、薬物および酸化防止剤を溶液中に保持するのに有効な量である。例えば、中鎖および/または長鎖モノ−、ジ−およびトリグリセリド、より典型的には中鎖モノ−、ジ−およびトリグリセリドなどのグリセリド物質は、担体の重量で約5%から約70%、例えば約15%から約60%または約25%から約50%の合計グリセリド量で存在することができるが、特定の状況では、それより多い量およびそれより少ない量を用いることができる。一実施形態では、カプセル化された液体は、重量で約7%から約30%、例えば約10%から約25%の中鎖トリグリセリド、ならびに重量で約7%から約30%、例えば約10%から約25%の中鎖モノおよびジグリセリドを含む。
【0156】
望むなら、グリコール、グリコリドまたはグリセリド物質以外の他の可溶化剤を含めることができる。そうした薬剤、例えばジメチルホルムアミド(DMF)およびN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)などのN置換アミド溶媒は、特定の場合、薬物の担体中の溶解限度を増大させ、それによって薬物ローディングを増大させる助けとすることができる。しかし、本明細書で有用な担体は一般に、そうした追加の薬剤なしで、本明細書で興味のある小分子薬物の十分な溶解性を提供する。
【0157】
リン脂質を可溶化するのに十分な量のグリコール、グリコリドまたはグリセリド物質が存在する場合でも、得られる担体溶液および/または薬物−担体系は粘性であり、取り扱うのが困難であるまたは取り扱うのに不便である可能性がある。そうした場合、担体中に、許容できる程度に低い粘度を提供するのに有効な量の粘度低下剤を含めるのが望ましいことが分かっている。そうした薬剤の例は、アルコール、特にエタノールである。これは、実質的に水分を含まない形態、例えば99%のエタノール、脱水アルコールUSPまたは無水エタノールで導入することが好ましい。しかし、過度に高いエタノール濃度は一般に避けるべきである。これは、例えば薬物−担体系をゼラチンカプセルで投与する場合、特に当てはまる。それは、高いエタノール濃度によってカプセルの機械的破損がもたらされる傾向があるからである。一般に、適切なエタノール量は担体の重量の0%から約25%、例えば約1%から約20%または約3%から約15%である。プロピレングリコールまたはPEGなどのグリコールならびに中鎖モノおよびジグリセリド(例えばカプリル酸/カプリン酸モノおよびジグリセリド)も粘度を低下させる助けとなる。そこでは薬物−担体系を、硬質ゼラチンカプセルなどの硬質カプセル中にカプセル化することになる。中鎖モノおよびジグリセリドがこの関連で特に有用である。
【0158】
場合によって、担体は薬学的に許容される非リン脂質界面活性剤をさらに含む。当業者は、本明細書の情報をもとにして、本発明の組成物で使用するための適切な界面活性剤を選択することができよう。そうした界面活性剤は、例えば、消化管の水性環境中でカプセルから放出されたときのカプセル化液体の分散性を高めることを含む様々な機能を提供することができる。したがって、一実施形態では、非リン脂質界面活性剤は、実際の胃腸液または模擬的な胃腸液中におけるカプセル内容物の分散および/または乳化を増進させる分散剤および/または乳化剤である。例として、ポリソルベート(ポリオキシエチレンソルビタンエステル)、例えばポリソルベート80(例えば、UniqemaからTween80(商標)として市販されている。)などの界面活性剤を、担体の重量の0%から約30%、例えば約7%から約30%または約10%から約25%の量で含むことができる。いくつかの実施形態では、そうした界面活性剤は、担体の重量の0%から約5%、例えば0%から約2%または0%から約1%の量で含まれる。
【0159】
好都合なことに、本発明の組成物において使用するための適切なリン脂質+可溶化剤の組合せを含む予めブレンドされた産物を入手することができる。予めブレンドされたリン脂質+可溶化剤産物は、本発明の組成物の調製のし易さを向上させるのに有利である。
【0160】
予めブレンドされたリン脂質+可溶化剤産物の例はPhospholipid GmbH、Germanyから市販されているPhosal 50PG(商標)である。これは、重量で50%以上のホスファチジルコリン、せいぜい6%のリソホスファチジルコリン、約35%のプロピレングリコール、約3%のひまわり油からのモノおよびジグリセリド、約2%の大豆脂肪酸、約2%のエタノールならびに約0.2%のパルミチン酸アスコルビルを含む。
【0161】
他の例は、やはりPhospholipid GmbHから市販されているPhosal 53MCT(商標)である。これは、重量で53%以上のホスファチジルコリン、せいぜい6%のリソホスファチジルコリン、約29%の中鎖トリグリセリド、3−6%(一般に約5%)のエタノール、約3%のひまわり油からのモノおよびジグリセリド、約2%のオレイン酸ならびに約0.2%パルミチン酸アスコルビル(参照組成物)を含む。上記組成物または実質的にそれと同等な組成物を有する産物は本明細書では、Phosal 53MCT(商標)という銘柄であっても他のものであってもよいが、通常「ホスファチジルコリン+中鎖トリグリセリド53/29」と称する。本発明の関連で「実質的に同等な組成物」を有する産物というのは、その構成要素リスト中の参照組成物および構成要素の相対量と十分に類似した組成を有していて、本明細書での産物の利用に関する特性において実際的な差を示さないことを意味する。
【0162】
さらに他の例は、Lipoid GmbHから市販されているLipoid S75(商標)である。これは、重量で可溶化系中に70%以上のホスファチジルコリンを含む。これを、中鎖トリグリセリドと、例えば30/70の重量/重量混合物でさらにブレンドして、重量で20%以上のホスファチジルコリン、2−4%ホスファチジルエタノールアミン、せいぜい1.5%リソホスファチジルコリンおよび67−73%中鎖トリグリセリドを含む産物(「Lipoid S75(商標)MCT」)を提供することができる。
【0163】
さらに他の例は、やはりPhospholipid GmbHから市販されているPhosal 50SA+(商標)である。これは、重量でサフラワー油および他の構成要素を含む可溶化系中に50%以上のホスファチジルコリンおよびせいぜい6%リソホスファチジルコリンを含む。
【0164】
これらの予めブレンドされた産物のそれぞれのホスファチジルコリン成分は、大豆レシチンから誘導される。実質的に同等な組成の産物を他の供給業者から得ることができる。
【0165】
Phosal 50PG(商標)、Phosal 53MCT(商標)、Lipoid S75(商標)MCTまたはPhosal 50SA+(商標)などの予めブレンドされた産物は、いくつかの実施形態では、担体系全体(本明細書で提供する酸化防止剤以外)を実質的に構成する。他の実施形態では、追加の構成要素、例えば中鎖モノおよび/もしくはジグリセリド、エタノール(予めブレンドされた産物中に存在していてもよいものに追加して)、ポリソルベート80などの非リン脂質界面活性剤、ポリエチレングリコールならびに/または他の構成要素が存在する。そうした追加の構成要素は、存在する場合、一般にわずかな量しか含まれない。例として、ホスファチジルコリン+中鎖トリグリセリド53/29は、担体の重量の約50%から100%、例えば約80%から100%の量で担体中に含めることができる。
【0166】
Phosal 50PG(商標)およびPhosal 53MCT(商標)を含むいくつかの予めブレンドされた産物は、本明細書での重カルコゲン酸化防止剤の規定に当てはまらない酸化防止剤である少量のパルミチン酸アスコルビルを含む。パルミチン酸アスコルビルまたは他の非重カルコゲン酸化防止剤の存在は一般に有害ではないが、望むなら、そうした酸化防止剤を含まない予めブレンドされた産物を、本明細書での担体として使用することができる。
【0167】
本発明のいくつかの実施形態では、薬物−担体系は水相中に分散可能であって、非ゲル化性の実質的に不透明な液体分散液を形成する。当業者はこの特性を、例えば、環境温度で撹拌しながら1部の薬物−担体系を約20部の水に加え、ゲル化挙動および得られた分散液の透明性を評価することによって容易に試験することができる。本明細書で示したような相対量で構成要素を有する組成物は一般に、そうした試験に合格する、すなわちゲル化せず、実質的に透明性のない液体分散液を生成することが分かる。「非ゲル化」の実施形態では、その組成物は、ゲル化促進有効量でゲル化促進物質を含まない。ゲル化の挙動を望む場合、そうした薬剤を加えることができる。「実質的に透明性がない」分散液は、水相を、実質的な量のリン脂質成分を有する本発明の組成物と混合することによって形成されると考えられる。しかし、明確にするために、実質的に非水性である本発明の組成物自体は、通常きれいで透明であることを強調しておきたい。この関連で、水性環境に置いたとき、リン脂質は二層および多層状の凝集体を形成する傾向があり、そうした凝集体は一般に、透過光を散乱させるのに十分大きく、それによって不透明な、例えば濁った分散液が得られることを記しておく。ホスファチジルコリン+中鎖トリグリセリド53/29の場合、例えば、水性環境中の分散液は一般に、多層状凝集体だけでなく、粗い水中油型エマルジョンも形成する。多層状凝集体の存在は、偏光の存在下での顕微鏡検査によってしばしば確認することができ、そうした凝集体は複屈折を示す傾向があり、例えば特徴的な「マルタ十字」パターンを発生する。
【0168】
理論に拘泥するわけではないが、水相と混合したときの本発明の組成物の薬物−担体系の挙動は、対象に経口投与された後、その組成物が胃腸液とどのように相互作用するかを示していると考えられる。ゲルの生成は、制御放出による薬物の局所送達に有用であり得るが、ゲル化は、胃腸からの効率的な吸収には悪影響を及ぼすと考えられる。このため、水相と混合したとき薬物−担体系がゲル化しない上記した本発明の実施形態が一般に好ましい。さらに、やはり理論に拘泥するわけではないが、薬物−担体系を水相と混合したとき形成される分散液の不透明性によって証明されるような胃腸液における二層および多層状の凝集体の形成は、経口投与する場合、本発明の特定の組成物の相対的に高い生物学的利用能を提供する重要な要素となり得ると考えられる。
【0169】
薬物がABT−263である例では、担体構成要素およびこの量は、約25℃で少なくとも約10mg/ml、例えば少なくとも約20mg/mlの担体中の薬物溶解度を提供するように選択される。
【0170】
場合によって、本発明の組成物はキレート剤をさらに含む。場合によっては、エチレンジアミン四酢酸(EDTAまたはエデト酸塩)、カルベジロール、クエン酸およびこれらの塩、クエン酸コリン、酒石酸およびこれらの塩などのキレート剤は、処方物の貯蔵安定性をさらに改善することができる。理論に拘泥するわけではないが、キレート剤は、薬物化合物の酸化的分解の触媒作用をする、またはそれを促進する金属イオンを封鎖することによって、酸化防止剤の有効性を増進させることができると考えられる。
【0171】
一実施形態では、EDTAまたはこの塩(例えば、ジナトリウムEDTAまたはカルシウムジナトリウムEDTA)は、場合によって、例えば薬物−担体系の重量で約0.002%から約0.02%の量で加える。EDTAは、低脂溶性酸化防止剤と同じような仕方で水性ストック溶液として加えることができる。酸化防止剤およびEDTAは、望むなら、同じストック溶液の成分として加えることができる。
【0172】
驚くべきことに、本明細書で考えるメタ重亜硫酸ナトリウムなどの低脂溶性酸化防止剤の非常に低い濃度(一般に、そうした酸化防止剤と本実施形態によるABT−263のモル比は約1:20以下である。)で、本明細書で実施例12に例示するように、スルホキシド生成は、許容される限界内に留まることが分かった。
【0173】
例示的には、本実施形態による薬物−担体系は:
重量で約5%から約20%のABT−263遊離塩基、
重量で約15%から約60%のホスファチジルコリン、
重量で約7%から約30%の中鎖トリグリセリド、
重量で約7%から約30%の中鎖モノおよびジグリセリド、
約7%から約30%のポリソルベート80界面活性剤、
重量で約0.02%から約0.2%のメタ重亜硫酸ナトリウムまたはメタ重亜硫酸カリウム、
約0.003%から約0.01%のEDTAまたはこの塩および
約0.2%から約0.8%の水を含む。
【0174】
それらが処方物の貯蔵安定性、安全性または治療の有効性に許容されない程度に悪影響を及ぼさない限り、場合によって他の添加剤が処方物中に存在してよい。しかし、特定の実施形態では、薬物−担体系は、すぐ上に挙げた構成要素から本質的になる。
【0175】
カプセル化処方物のため、カプセル剤皮は、硬質または軟質ゼラチンを含む任意の薬学的に許容される材料でできていてよい。カプセル剤皮サイズは、カプセル化される液体の量に適したように選択される。例えば、最大で約600mgの液体をカプセル化するのにサイズ0のカプセル剤皮を使用することができ、最大で約900mgの液体ではサイズ00のカプセル剤皮を使用することができる。
【0176】
本発明のプロトタイプカプセル剤は:
約50mgのABT−263遊離塩基、
約150mgのホスファチジルコリン、
約75mgの中鎖トリグリセリド、
約90mgの中鎖モノおよびジグリセリド、
約90mgのポリソルベート80界面活性剤、
約0.25mgのメタ重亜硫酸ナトリウムまたはメタ重亜硫酸カリウム、
約0.025mgのEDTAまたはこの塩および
約2.5mgの水
を含む溶液がその中にカプセル化されているサイズ0の硬質ゼラチンカプセル剤皮を含む。
【0177】
すぐ上のプロトタイプカプセル剤の説明における「約」という用語は、示された量が、製薬業界において受け入れられる通常の製造上の許容範囲内で変動する可能性があることを意味すると理解されよう。
【0178】
本発明の薬物−担体系は一般に液体であるが、場合によって、その中またはその上に吸着された薬物溶液を有する固体または半固体の基材を含むことができる。そうした基材の例には、ラクトース、デンプン、二酸化ケイ素等およびポリアクリレート、高分子量PEGまたはセルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのポリマーなどの粒子状賦形剤が含まれる。固体溶液が望ましい場合、ワックスなどの高融点構成要素を含めることができる。固体薬物−担体系は、場合によって、カプセル化する、または望むなら錠剤の形態で送達することができる。いくつかの実施形態では、薬物−担体系は、薬物送達デバイス上に吸着させる、またはその中に含浸させることができる。
【0179】
特定の実施形態では、処方物構成要素およびこの量は、経口で投与したとき、薬物の標準溶液、例えばPEG−400中の10%DMSOからなる担体中の溶液と比較して高い生体吸収性を提供するように選択される。そうした高い生体吸収性は、例えばAUC、例えばAUC0−24またはAUC0−∞で測定して、より高いCmaxまたは高い生物学的利用能の1つもしくは複数を有する薬物動態(PK)プロファイルによって証明することができる。例示すると、生物学的利用能は、例えば経口投与とi.v.投与との差を考慮に入れて、試験組成物の経口送達についてのAUCを、適切な溶媒中の薬物の静脈内(i.v.)送達についてのAUCのパーセンテージとして算出するパラメーターFを用いてパーセンテージで表すことができる。
【0180】
生物学的利用能は、ヒトまたは適切な任意のモデル種におけるPK試験で判定することができる。この目的には、イヌモデルが一般に適している。種々の例示的実施形態において、薬物がABT−263である場合、本発明の組成物は、イヌモデルで約2.5から約10mg/kgの単回用量で絶食または非絶食の動物に投与したとき、少なくとも約30%、少なくとも約35%または少なくとも約40%、最大で約50%またはそれを超える経口生物学的利用能を示す。
【0181】
本発明は、本明細書に包含されるまたは記載されている組成物を調製するために用いられる方法に限定されない。適切な任意の製薬方法を用いることができる。例として、本発明の組成物は、挙げられている構成要素を単純に混合して薬物−担体系を生成することを含む方法によって調製することができる。その添加の順番は重要でない。しかし、リン脂質成分をその固体状態、例えば大豆レシチンの形態で使用する場合、リン脂質を可溶化剤成分またはこの一部でまず可溶化することが一般に好ましいという点に留意されたい。続いて、もしあれば、担体の他の構成要素、薬物および酸化防止剤を適度に撹拌しながら単純に混合することによって加えることができる。上記したように、リン脂質および可溶化剤を含む予めブレンドされた産物の使用は、その組成物の調製を簡略にすることができる。場合によって、薬物−担体系を、カプセル充填用のプレミックスとして使用することができる。カプセルの関連において本明細書で用いる「充填(する)」という用語は、所望の量の組成物をカプセル剤皮中に入れることを意味するが、カプセル中の全空間がその組成物で必ず占有されることを意味するととるべきではない。
【0182】
薬物−担体系が、メタ重亜硫酸ナトリウムまたはメタ重亜硫酸カリウムなどの低脂溶性イオウ含有酸化防止剤を含む場合、その方法を調節すべきである。そうした薬物−担体系を調製するための方法の例には、以下のステップが含まれる。
【0183】
ABT−263遊離塩基または薬学的に許容されるこの塩(例えば、ABT−263ビスHCl)から本質的になるAPIを、リン脂質および少なくとも一部の可溶化剤を含む媒体中に溶解してABT−263の脂質溶液を得る。上記したように、リン脂質および可溶化剤を含む予めブレンドされた産物を、APIを溶解させるための媒体として使用することができる。
【0184】
ABT−263をその遊離塩基の形態で処方する場合、ABT−263遊離塩基のいかなる固体形態もAPIとして役に立つことができる。しかし、一般に、結晶形態、例えば溶媒和結晶形態または非溶媒和結晶形態のABT−263遊離塩基をAPIとして使用するのが好ましいことが分かっている。本方法の特定の実施形態では、本明細書で説明するような形態Iまたは形態IIの結晶性ABT−263などの非溶媒和結晶形態をAPIとして使用する。
【0185】
非リン脂質界面活性剤および場合によって可溶化剤の残りを、可溶化剤(APIの溶解に先行する、もしくはそれと同時に)または脂質溶液(APIの溶解後に)と混合する。上記したように、非リン脂質界面活性剤は例示的にはポリソルベート80などのポリソルベートである。可溶化剤の残りは、ABT−263を溶解するのにリン脂質と一緒に用いた可溶化剤の部分と同じ材料であってよいが、またそれとは異なる材料であってもよい。例えば、ABT−863を溶解するためにリン脂質と一緒に用いられる可溶化剤の部分は1つまたは複数の中鎖トリグリセリドを含むことができ、この段階で混合される可溶化剤の残りは、1つまたは複数の中鎖モノおよび/またはジグリセリド、例えばImwitor742(商標)などのカプリル酸/カプリン酸モノおよびジグリセリド産物を含むことができる。
【0186】
別途、低脂溶性イオウ含有酸化防止剤を水に溶解して水性ストック溶液を調製する。重量で約10%から約18%の濃度のストック溶液は、先に説明したように、適していることが概ね分かる。
【0187】
次いで、通常、非リン脂質界面活性剤を加えた後に、水性ストック溶液を脂質溶液と混合してカプセル化用の溶液を提供する。
【0188】
場合によって、得られた溶液を、公知の任意のカプセル化法でカプセル剤皮中にカプセル化する。
【0189】
本明細書で概略的にまたは特異性をもって説明する組成物を含む本明細書に包含される組成物は、式Iの化合物または薬学的に許容されるこの塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物である薬物を、対象に経口送達するのに有用である。したがって、そうした薬物を対象に送達するための本発明の方法は、上記したような組成物を経口投与することを含む。
【0190】
対象は、ヒトであってもヒト以外(例えば、家畜、動物園の動物、作業用動物もしくはペットまたはモデルとして用いられる実験動物)であってもよいが、重要な実施形態では、対象は、例えば、抗アポトーシスBcl−2ファミリータンパク質のアポトーシス機能不全および/または過剰発現を特徴とする疾患を治療するためにその薬物を必要とするヒト患者である。ヒト対象は、男性であっても女性であってもよく、またいかなる年齢であってもよい。患者は一般に成人であるが、本発明の方法は、小児患者における白血病、例えば急性リンパ性白血病などの小児がんを治療するのに有用であり得る。
【0191】
組成物は通常、治療上有効な1日量の薬物を提供する量で投与される。本明細書では「1日量」という用語は、投与頻度に関係なく、1日当たりに投与される薬物量を意味する。例えば、対象が、150mgの単位用量を日に2回投与される場合、その1日量は300mgである。「1日量」という用語の使用は、指定された投薬量が必ず1日に1回で投与されることを意味するものではないことを理解されよう。しかし、特定の実施形態では、投薬頻度は日に1回(q.d.)であり、この実施形態では、1日量と単位用量は同じことである。
【0192】
治療有効用量を構成するものは、具体的な化合物、対象(対象の種および体重を含む)、治療される疾患(例えば、特定の種類のがん)、疾患の段階および/または重症度、個々の対象の化合物忍容性、化合物が単剤療法で投与されるまたは1つもしくは複数の他の薬物、例えばがんの治療のための他の化学療法薬と併用されるかどうかならびに他の因子に依存する。したがって、1日量は広い範囲内、例えば約10から約1,000mgで変えることができる。特定の状況では、それより多いまたは少ない1日量でも妥当である。本明細書で「治療有効」用量という表示は、本明細書では、単回用量で投与しただけで薬物が治療的に有効であることを必ずしも求めるものではなく;一般に治療効能は、組成物が、適切な投与頻度および投与期間を含むレジメンにしたがって繰り返し投与されることに依ることを理解されよう。選択される1日量は、がんを治療することに関して利益を提供するのに十分であるが、それが、許容できないまたは忍容できない程度に不都合な副作用を引き起こす程多くはないことが非常に好ましい。適切な治療有効用量は、上記したものなどの要素を考慮に入れて、本明細書での開示および本明細書で引用した技術をもとにして過度の実験を用いることなく、専門医が選択することができる。医師は、例えばがん患者に、比較的少ない1日量を用いた治療のコースで開始し、数日間または数週間にわたって用量を漸増して不都合な副作用のリスクを軽減させることができる。
【0193】
例として、ABT−263の適切な用量は一般に、約3時間から約7日間、例えば約8時間から約3日間または約12時間から約2日間の平均投薬間隔で投与して、約25から約1,000mg/日、より典型的には約50から約500mg/日または約200から約400mg/日、例えば約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450または約500mg/日である。大抵の場合、日に1回(q.d.)の投与レジメンが適切である。
【0194】
本明細書では「平均投薬間隔」は、ある時間のスパン、例えば1日または1週間のスパンを、その時間スパンにわたって投与される単位用量の回数で除したものと規定される。例えば、薬物を午前8時頃、正午頃および午後6時頃日に3回投与する場合、その平均投薬間隔は8時間(24時間の時間スパンを3で除して)である。薬物を錠剤またはカプセルなどの離散した剤形として処方する場合、一度に投与される複数個(例えば、2から約10個)の剤形を、平均投薬間隔を規定するための単位用量と考える。
【0195】
いくつかの実施形態では、薬物化合物がABT−263遊離塩基またはABT−263ビスHClの形態のABT−263である場合、1日の投薬量および投薬間隔は、ABT−263の血漿濃度を約0.5から約10μg/mlの範囲に維持するように選択することができる。したがって、そうした実施形態によるABT−263治療の過程の間、定常状態ピーク血漿濃度(Cmax)は一般に約10μg/mlを超えないようにし、定常状態トラフ血漿濃度(Cmin)は一般に約0.5μg/mlを下回らないようにしなければならない。上記した範囲内で、定常状態で約5以下、例えば約3以下のCmax/Cmin比を提供するのに効果的な1日の投薬量および平均投薬間隔を選択ことが望ましいことがさらに分かっている。投薬間隔がより長くなると、より大きいCmax/Cmin比が得られる傾向があることを理解されよう。例として、本発明の方法によれば、定常状態で、約3から約8μg/mlのABT−263Cmaxおよび約1から約5μg/mlのCminを目標とすることができる。CmaxとCminの定常状態値は、例えば、これらに限定されないが、米国食品医薬品局(FDA)などの監督官庁に受け入れられるものを含む標準プロトコルにしたがって実施される、ヒトPK試験で確立することができる。
【0196】
組成物が、カプセル化されていない液体の形態である場合、その組成物をそのまま(neat)飲み込むことができるが、その組成物を、適切な飲み込み可能な液体中にまず希釈すれば、一般に投与はより好都合で快適なものとなる。適切な液体賦形剤には、これらに限定されないが、水、ミルク、果汁(例えば、リンゴジュース、ブドウジュース、オレンジジュース等)、炭酸飲料、経腸栄養剤(enteral nutrition formula)、栄養飲料、茶またはコーヒーなどの任意の水性飲料が含まれる。液体賦形剤を用いる場合、十分撹拌しながら(例えば、振とうおよび/または撹拌により)、組成物を賦形剤と混合して組成物を賦形剤中に完全に分散させ、その後、飲み込む前に賦形剤から組成物が分離しないように直ちに投与しなければならない。望むなら、賦形剤は、スラッシュまたはスムージーなどの部分凍結したスラリーの形態であってよい。例えば約1から約100または約5から約50の好都合な任意の賦形剤体積部当たりの組成物体積部の希釈割合を用いることができる。
【0197】
組成物がカプセルの形態の場合、一般に、飲み込みの過程を助けるための水または他の飲み込み可能な液体の支援を受けて、1個から数個のカプセルをまとめて飲み込むことができる。適切なカプセル剤皮材料には、これらに限定されないが、ゼラチン(硬質ゼラチンカプセルまたは軟質弾性ゼラチンカプセルの形態で)、デンプン、カラギーナンおよびHPMCが含まれる。薬物−担体系が液体である場合、一般に軟質弾性ゼラチンカプセルが好ましい。
【0198】
本発明によるABT−263を投与するために、例として、薬物はABT−263遊離塩基またはABT−263ビスHClの形態で医薬組成物中に存在する。上記により完全に規定したような本発明の任意のABT−263組成物を用いることができる。
【0199】
本発明の組成物は一般に食物効果(food effect)をわずかしか示さないので、本実施形態による投与は、食物を用いても用いないでも、すなわち非絶食条件下であっても絶食条件下であってもよい。一般に、本発明の組成物は、非絶食患者に投与することが好ましい。
【0200】
本発明の組成物は、単剤療法で、または例えば他の化学療法薬もしくは電離放射線との併用療法で使用するのに適している。本発明の具体的な利点は、1日1回のレジメンで他の経口投与薬物治療を受けている患者に好都合なレジメンである、1日1回の経口投与を可能にすることである。経口投与は、患者自身または患者の自宅の介護者によって容易に実施することができる。これはまた、病院または居住看護施設における患者のための好都合な投与経路でもある。
【0201】
併用療法の例は、本発明の組成物、例えばABT−263を、ボルテゾミド、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、デキサメタゾン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、フルダラビン、ヒドロキシドキソルビシン、イリノテカン、パクリタキセル、ラパマイシン、リツキシマブ、ビンクリスチンなどの1つまたは複数と一緒に含むそうした組成物を、例えばCHOP(シクロホスファミド+ヒドロキシドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾン)、RCVP(リツキシマブ+シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾン)、R−CHOP(リツキシマブ+CHOP)またはDA−EPOCH−R(投与量が調節されたエトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシンおよびリツキシマブ)などの多剤療法と併せて投与することを含む。
【0202】
本発明の組成物、例えばABT−263を含むそうした組成物は、これらに限定されないが、血管形成阻害剤、抗増殖剤、他のアポトーシスプロモーター(例えば、Bcl−xL、Bcl−wおよびBfl−1阻害剤)、細胞死受容体経路の活性化因子、BiTE(二重特異性T細胞結びつけ)抗体、二重可変ドメイン結合タンパク質(DVD)、アポトーシスタンパク質(IAP)の阻害剤、ミクロRNA、マイトジェン活性化細胞外シグナル調節キナーゼ阻害剤、多価結合タンパク質、ポリADP(アデノシン二リン酸)−リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤、阻害的低分子リボ核酸(siRNA)、キナーゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、ポロ様キナーゼ阻害剤、bcr−ablキナーゼ阻害剤、成長因子阻害剤、COX−2阻害剤、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、抗分裂剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、インターカレート抗生物質(intercalating antibiotics)、白金含有化学療法剤、成長因子阻害剤、電離放射線、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物反応修飾物質、免疫薬、抗体、ホルモン療法、レチノイド、デルトイド、植物性アルカロイド、プロテアソーム阻害剤、HSP−90阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、プリン類似薬、ピリミジン類似体、MEK阻害剤、CDK阻害剤、ErbB2受容体阻害剤、mTOR阻害剤ならびに他の抗腫瘍剤を含む1つまたは複数の治療薬との併用療法で投与することができる。
【0203】
血管形成阻害剤には、これらに限定されないが、EGFR阻害剤、PDGFR阻害剤、VEGFR阻害剤、TIE2阻害剤、IGFlR阻害剤、マトリクスメタロプロテイナーゼ2(MMP−2)阻害剤、マトリクスメタロプロテイナーゼ9(MMP−9)阻害剤およびトロンボスポンジン類似体が含まれる。
【0204】
EGFR阻害剤の例には、これらに限定されないが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、セツキシマブ、EMD−7200、ABX−EGF、HR3、IgA抗体、TP−38(IVAX)、EGFR融合タンパク質、EGF−ワクチン、抗EGFRイムノリポソームおよびラパチニブが含まれる。
【0205】
PDGFR阻害剤の例には、これらに限定されないが、CP−673451およびCP−868596が含まれる。
【0206】
VEGFR阻害剤の例には、これらに限定されないが、ベバシズマブ、スニチニブ、ソラフェニブ、CP−547632、アキシチニブ、バンデタニブ、AEE788、AZD−2171、VEGFトラップ、バタラニブ、ペガプタニブ、IM862、パゾパニブ、ABT−869およびアンジオザイムが含まれる。
【0207】
ABT−263または本明細書の式Iの化合物以外のBcl−2ファミリータンパク質阻害剤には、これらに限定されないが、AT−101((−)ゴシポール)、Genasense(商標)Bcl−2を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド(G3139またはオブリメルセン)、IPI−194、IPI−565、ABT−737、GX−070(オバトクラックス)などが含まれる。
【0208】
細胞死受容体経路の活性化因子には、これらに限定されないが、TRAIL、抗体または細胞死受容体(例えば、DR4およびDR5)を標的とする他の薬剤、例えばアポマブ、コナツムマブ、ETR2−ST01、GDC0145(レクサツムマブ)、HGS−1029、LBY−135、PRO−1762およびトラスツズマブが含まれる。
【0209】
トロンボスポンジン類似体の例には、これらに限定されないが、TSP−1、ABT−510、ABT−567およびABT−898が含まれる。
【0210】
オーロラキナーゼ阻害剤の例にはこれらに限定されないが、VX−680、AZD−1152およびMLN−8054が含まれる。
【0211】
ポロ様キナーゼ阻害剤の例には、これに限定されないがBI−2536が含まれる。
【0212】
bcr−ablキナーゼ阻害剤の例には、これらに限定されないが、イマチニブおよびダサチニブが含まれる。
【0213】
白金含有薬剤の例には、これらに限定されないが、シスプラチン、カルボプラチン、エプタプラチン、ロバプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチンおよびサトラプラチンが含まれる。
【0214】
mTOR阻害剤の例には、これらに限定されないが、CCI−779、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、RAD001およびAP−23573が含まれる。
【0215】
HSP−90阻害剤の例には、これらに限定されないが、ゲルダナマイシン、ラディシコール、17−AAG、KOS−953、17−DMAG、CNF−101、CNF−1010、17−AAG−nab、NCS−683664、エフングマブ、CNF−2024、PU3、PU24FC1、VER−49009、IPI−504、SNX−2112およびSTA−9090が含まれる。
【0216】
HDAC阻害剤の例には、これらに限定されないが、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、MS−275、バルプロ酸、TSA、LAQ−824、トラポキシンおよびデプシペプチドが含まれる。
【0217】
MEK阻害剤の例には、これらに限定されないが、PD−325901、ARRY−142886、ARRY−438162およびPD−98059が含まれる。
【0218】
CDK阻害剤の例には、これらに限定されないが、フラボピリドール、MCS−5A、CVT−2584、セリシクリブZK−304709、PHA−690509、BMI−1040、GPC−286199、BMS−387032、PD−332991およびAZD−5438が含まれる。
【0219】
COX−2阻害剤の例には、これらに限定されないが、セレコクシブ、パレコキシブ、デラコキシブ、ABT−963、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、BMS−347070、RS57067、NS−398、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、SD−8381、4−メチル−2−(3,4−ジメチルフェニル)−1−(4−スルファモイルフェニル)−1H−ピロール、T−614、JTE−522、S−2474、SVT−2016、CT−3およびSC−58125が含まれる。
【0220】
NSAIDの例には、これらに限定されないが、サルサラート、ジフルニサル、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブメトン、ピロキシカム、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、エトドラク、ケトロラクおよびオキサプロジンが含まれる。
【0221】
ErbB2受容体阻害剤の例には、これらに限定されないが、CP−724714、カネルチニブ、トラスツズマブ、ペツズマブ、TAK−165、イオナファミブ、GW−282974、EKB−569、PI−166、dHER2、APC−8024、抗HER/2neu二重特異性抗体B7.her2IgG3ならびにHER2三官能性二重特異性抗体mAB AR−209およびmAB2B−1が含まれる。
【0222】
アルキル化剤の例には、これらに限定されないが、ナイトロジェンマスタードN−オキシド、シクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、ブスルファン、ミトブロニトール、カルボコン、チオテパ、ラニムスチン、ニムスチン、Cloretazine(商標)(ラロムスチン)、AMD−473、アルトレタミン、AP−5280、アパジコン、ブロスタリシン、ベンダムスチン、カルムスチン、エストラムスチン、ホテムスチン、グルホスファミド、KW−2170、マホスファミド、ミトラクトール、ロムスチン、トレオスルファン、ダカルバジンおよびテモゾロマイドが含まれる。
【0223】
代謝拮抗物質の例には、これらに限定されないが、メトトレキサート、6−メルカプトプリンリボシド、メルカプトプリン、単独かまたはロイコボリンと併用した5−フルオロウラシル(5−FU)、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、シタラビン、シタラビンオクホスファート、エノシタビン、S−1、ペメトレキセド、ゲムシタビン、フルダラビン、5−アザシチジン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、デシタビン、エフロルニチン、エテニルシチジン(ethenylcytidine)、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素、TS−1、メルファラン、ネララビン、ノラトレキシド、ペメトレキセド二ナトリウム、ペントスタチン、ペリトレキソール、ラルチトレキセド、トリアピン、トリメトレキサート、ビダラビン、ミコフェノール酸、オクホスファート、ペントスタチン、チアゾフリン、リバビリン、EICAR、ヒドロキシ尿素およびデフェロキサミンが含まれる。
【0224】
抗生物質の例には、これらに限定されないが、インターカレート抗生物質、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アムルビシン、アナマイシン、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(リポソームドキソルビシンを含む)、エルサミトルシン、エピルビシン、グラルビシン、イダルビシン、マイトマイシンC、ネモルビシン、ネオカルチノスタチン、ペプロマイシン、ピラルビシン、レベッカマイシン、スチマラマー、ストレプトゾシン、バルルビシン、ジノスタチンおよびこれらの組合せが含まれる。
【0225】
トポイソメラーゼ阻害剤の例には、これらに限定されないが、アクラルビシン、アモナフィド、ベロテカン、カンプトセシン、10−ヒドロキシカンプトセシン、9−アミノ−カンプトセシン、アムサクリン、デクスラゾキサン、ジフロモテカン、イリノテカンHCl、エドテカリン、エピルビシン、エトポシド、エキサテカン、ベカテカリン、ギマテカン、ラルトテカン、オラテシン、BN−80915、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピクサントロン、ルビテカン、ソブゾキサン、SN−38、タフルポシドおよびトポテカンが含まれる。
【0226】
抗体の例にはこれらに限定されないが、リツキシマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、トラスツズマブ、CD40特異的抗体およびIGF IR−特異的抗体、chTNT−1/B、デノスマブ、エドレコロマブ、WX G250、ザノリムマブ、リンツズマブならびにチシリムマブが含まれる。
【0227】
ホルモン療法の例には、これらに限定されないが、炭酸セベラマー、リロスタン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、モドラスタン、エキセメスタン、酢酸ロイプロリド、ブセレリン、セトロレリクス、デスロレリン、ヒストレリン、アナストロゾール、フォスレリン、ゴセレリン、デガレリクス、ドキセルカルシフェロール、ファドロゾール、フォルメスタン、タモキシフェン、アルゾキシフェン、ビカルタミド、アバレリックス、トリプトレリン、フィナステライド、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、トリロスタン、ラソフォキシフェン、レトロゾール、フルタミド、メゲストロール、ミフェプリストン、ニルタミド、デキサメタゾン、プレドニゾンおよび他のグルココルチコイドが含まれる。
【0228】
レチノイドまたはデルトイドの例には、これらに限定されないが、セオカルシトール、レキサカルシトール、フェンレチニド、アリレチノイン、トレチノイン、ベキサロテンおよびLGD−1550が含まれる。
【0229】
植物性アルカロイドの例には、これらに限定されないが、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビンが含まれる。
【0230】
プロテアソーム阻害剤の例には、これらに限定されないが、ボルテゾミブ、MG−132、NPI−0052およびPR−171が含まれる。
【0231】
免疫薬の例には、これらに限定されないが、インターフェロンおよび他の多くの免疫増強剤が含まれる。インターフェロンには、インターフェロンα、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンβ、インターフェロンγ−1a、インターフェロンγ−1b、インターフェロンγ−n1およびこれらの組合せが含まれる。他の薬剤には、フィルグラスチム、レンチナン、シゾフィラン、BCG生菌(BCG live)、ウベニメクス、WF−10(テトラクロロデカオキシドすなわちTCDO)、アルデスロイキン、アレムツズマブ、BAM−002、ダカルバジン、ダクリズマブ、デニロイキン、ゲムツズマブオゾガマイシン、イブリツモマブ、イミキモド、レノグラスチム、メラノーマワクチン、モルグラモスチム、サルガラモスチム、タソネルミン、テクロイキン、チマラシン、トシツモマブ、Lorus Pharmaceuticalsの免疫治療薬Virulizin(商標)、Z−100(丸山ワクチン(specific substance of Maruyama)すなわちSSM)、Zevalin(商標)(90Y−イブリツモマブチウキセタン)、エピラツズマブ、ミツモマブ、オレゴボマブ、ペムツモマブ、Provenge(商標)(シプロイセル−T)、テセロイキン、Therocys(商標)(Bacillus Calmette−Guerin)、細胞傷害性リンパ球抗原4(CTLA4)抗体およびMDX−010などのCTLA4を遮断できる薬剤が含まれる。
【0232】
生物反応修飾物質の例は、組織細胞の生存、成長または分化などの生体の防御機序または生物学的応答を修飾してそれらが抗腫瘍活性をもつように仕向ける薬剤である。そうした薬剤には、これらに限定されないが、クレスチン、レンチナン、シゾフラン、ピシバニール、PF−3512676およびウベニメクスが含まれる。
【0233】
ピリミジン類似体の例には、これらに限定されないが、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、ドキシフルリジン、ラルチトレキセド、シタラビン、シトシンアラビノシド、フルダラビン、トリアセチルウリジン、トロキサシタビンおよびゲムシタビンが含まれる。
【0234】
プリン類似薬の例には、これらに限定されないが、メルカプトプリンおよびチオグアニンが含まれる。
【0235】
抗分裂剤の例には、これらに限定されないが、N−(2−((4−ヒドロキシフェニル)アミノ)ピリジン−3−イル)−4−メトキシベンゼンスルホンアミド、パクリタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、エポチロンD、PNU−100940、バタブリン、イクサベピロン、パツピロン、XRP−9881、ビンフルニンおよびZK−EPO(合成エポチロン)が含まれる。
【0236】
放射線治療の例には、これらに限定されないが、外照射治療(XBRT)、遠隔照射治療、近接照射治療、密封線源放射線治療および非密封線源放射線治療が含まれる。
【0237】
BiTE抗体は、2つの細胞に同時に結合することによって、T細胞ががん細胞を攻撃するようにする二重特異性抗体である。次いで、T細胞は標的がん細胞を攻撃する。BiTE抗体の例には、これらに限定されないが、アデカツムマブ(Micromet MT201)、ブリナツモマブ(Micromet MT103)などが含まれる。理論に拘泥するわけではないが、それによってT細胞が標的がん細胞のアポトーシスを引き出す機序の1つは、パーフォリンおよびグランザイムBを含む細胞傷害性顆粒成分のエクソサイトーシスによるものである。この関連で、Bcl−2は、パーフォリンとグランザイムBの両方によるアポトーシスの誘発を弱めることが分かっている。これらのデータは、がん細胞を標的とした場合、Bcl−の阻害はT細胞によって引き出される細胞傷害効果を増進させることができることを示唆している(Suttonら(1997年)J.Immunol.158:5783−5790頁)。
【0238】
SiRNAは、内在性RNA塩基または化学修飾ヌクレオチドを有する分子である。その修飾は細胞活性を消失させることはなく、むしろ高い安定性および/または高い細胞効能を付与する。化学修飾の例には、ホスホロチオエート基、2’−デオキシヌクレオチド、2’−OCH含有リボヌクレオチド、2’−F−リボヌクレオチド、2’−メトキシエチルリボヌクレオチド、これらの組合せなどが含まれる。siRNAは、様々な長さ(例えば、10−200bp)および構造(例えば、ヘアピン、一本鎖/二本鎖、バルジ、切れ目/ギャップ、ミスマッチ)を有することができ、細胞中で処理されて活性な遺伝子発現抑制を提供する。二本鎖siRNA(dsRNA)は、それぞれ鎖(平滑断端)または非対称末端(オーバーハング)上に同数のヌクレオチドを有することができる。1−2個のヌクレオチドのオーバーハングはセンス鎖および/またはアンチセンス鎖上に存在することができ、また所与の鎖の5’−および/または3’−末端上に存在することもできる。例えば、Mcl−1を標的とするsiRNAは、ABT−263の活性を増進させることが分かっている(Tseら(2008年)Cancer Res.68:3421−3428頁およびこの参照文献)。
【0239】
多価結合タンパク質は、2つ以上の抗原結合部位を含む結合タンパク質である。多価結合タンパク質は、3つ以上の抗原結合部位をもつように操作され、一般に天然に存在しない抗体である。「多特異性結合タンパク質」という用語は、2つ以上の関係するまたは関係しない標的を結合できる結合タンパク質を意味する。二重可変ドメイン(DVD)結合タンパク質は、2つ以上の抗原結合部位を含む四価または多価の結合タンパク質である。そうしたDVDは、単一特異性(すなわち、1つの抗原を結合することができる。)または多特異性(すなわち、2つ以上の抗原を結合することができる。)であってよい。2つの重鎖DVDポリペプチドおよび2つの軽鎖DVDポリペプチドを含むDVD結合タンパク質はDVD Igと称される。DVD Igの各半分は、重鎖DVDポリペプチド、軽鎖DVDポリペプチドおよび2つの抗原結合部位を含む。各結合部位は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、抗原結合部位当たり合計6つのCDRが抗原結合に関与している。
【0240】
PARP阻害剤には、これらに限定されないが、ABT−888、オラパリブ、KU−59436、AZD−2281、AG−014699、BSI−201、BGP−15、INO−1001、ONO−2231などが含まれる。
【0241】
本発明の組成物は、追加的または代替的に、ABT−100、N−アセチルコルヒノール−O−ホスフェート、アシトレチン、AE−941、アグリコンプロトパナキサジオール、アルグラビン、三酸化ヒ素、AS04アジュバント吸着HPVワクチン、L−アスパラギナーゼ、アタメスタン、アトラセンタン、AVE−8062、ボセンタン、カンフォスファミド、Canvaxin(商標)、カツマキソマブ、CeaVac(商標)、セルモロイキン、コンブレスタチンA4P、コンツスジェンラデノベク、Cotara(商標)、シプロテロン、デオキシコホルマイシン、デクスラゾキサン、N,N−ジエチル−2−(4−(フェニルメチル)フェノキシ)エタナミン、5,6−ジメチルキサンテノン−4−酢酸、ドコサヘキサエン酸/パクリタキセル、ディスコデルモリド、エファプロキシラル、エンザスタウリン、エポチロンB、エチニルウラシル、エクシスリンド、ファリマレブ、Gastrimmune(商標)、GMKワクチン、GV AX(商標)、ハロフジノン、ヒスタミン、ヒドロキシカルバミド、イバンドロン酸、イブリツモマブチウキセタン、IL−13−PE38、イナリマレブ、インターロイキン4、KSB−311、ランレオチド、レナリドミド、ロナファーニブ、ロバスタチン、5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸塩、ミファムルチド、ミルテホシン、モテクサフィン、オブリメルセン、OncoVAX(商標)、Osidem(商標)、パクリタキセルアルブミン安定化小粒子製剤、パクリタキセルポリグルメクス、パミドロネート、パニツムマブ、ペグインターフェロンα、ペグアスパルガーゼ、フェノキソジオール、ポリ(I)−ポリ(C12U)、プロカルバジン、ランピルナーゼ、レビマスタット、組み換え四価HPVワクチン、スクアラミン、スタウロスポリン、STn−KLHワクチン、T4エンドヌクラーゼV、タザロテン、6,6’,7,12−テトラメトキシ−2,2’−ジメチル−1β−ベルバマン、サリドマイド、TNFerade(商標)、131I−トシツモマブ、トラベクテジン、トリアゾン、腫瘍壊死因子、Ukrain(商標)、ワクシニア−MUC−1ワクチン、L−バリン−L−ボロプロリン、Vitaxin(商標)、ビテスペン、ゾレドロン酸およびゾルビシンから選択される1つまたは複数の抗腫瘍剤と併用療法で投与することができる。
【0242】
一実施形態では、本発明の組成物、例えばABT−263を含む組成物を、その間に抗アポトーシスBcl−2タンパク質、抗アポトーシスBcl−Xタンパク質および抗アポトーシスBcl−wタンパク質の1つまたは複数を過剰発現する疾患を治療するために、それを必要とする対象に治療有効量で投与する。
【0243】
他の実施形態では、本発明の組成物、例えばABT−263を含む組成物を、異常な細胞増殖および/または調節不全アポトーシスの疾患を治療するために、それを必要とする対象に治療有効量で投与する。
【0244】
そうした疾患の例には、これらに限定されないが、がん、中皮腫、膀胱がん、膵臓がん、皮膚がん、頭部または頸部のがん、皮膚もしくは眼球内のメラノーマ、卵巣がん、乳がん、子宮がん、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、骨がん、結腸がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん、胃腸(胃、結腸直腸および/または十二指腸)がん、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ性白血病、食道がん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、精巣がん、肝細胞(肝臓および/または胆管)がん、原発性もしくは続発性中枢神経系腫瘍、原発性もしくは続発性脳腫瘍、ホジキン病、慢性もしくは急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、T細胞もしくはB細胞由来のリンパ性悪性疾患、メラノーマ、多発性骨髄腫、口腔がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、小細胞肺がん、腎臓および/または尿管のがん、腎細胞癌、腎盂の癌腫、中枢神経系の新生物、原発性中枢神経系リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、下垂体腺腫、副腎皮質がん、胆嚢がん、脾臓のがん、胆管癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫またはこれらの組合せが含まれる。
【0245】
より具体的な実施形態では、本発明の組成物、例えばABT−263を含む組成物を、膀胱がん、脳腫瘍、乳がん、骨髄がん、子宮頸がん、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ性白血病、結腸直腸がん、食道がん、肝細胞がん、リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、T細胞もしくはB細胞由来のリンパ性悪性疾患、メラノーマ、骨髄性白血病、骨髄腫、口腔がん、卵巣がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、小細胞肺がんまたは脾臓がんを治療するために、それを必要とする対象に治療有効量で投与する。
【0246】
これらの実施形態のいずれかによれば、その組成物を、単剤療法または1つもしくは複数の追加の治療薬との併用療法で投与する。
【0247】
例えば、対象における中皮腫、膀胱がん、膵臓がん、皮膚がん、頭部または頸部のがん、皮膚もしくは眼球内のメラノーマ、卵巣がん、乳がん、子宮がん、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、骨がん、結腸がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん、胃腸(胃、結腸直腸および/または十二指腸)がん、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ性白血病、食道がん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、精巣がん、肝細胞(肝臓および/または胆管)がん、原発性もしくは続発性中枢神経系腫瘍、原発性もしくは続発性脳腫瘍、ホジキン病、慢性もしくは急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、T細胞もしくはB細胞由来のリンパ性悪性疾患、メラノーマ、多発性骨髄腫、口腔がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、小細胞肺がん、腎臓および/または尿管のがん、腎細胞癌、腎盂の癌腫、中枢神経系の新生物、原発性中枢神経系リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、下垂体腺腫、副腎皮質がん、胆嚢がん、脾臓のがん、胆管癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫またはこれらの組合せを治療する方法は、治療有効量の(a)本発明の組成物、例えばABT−263を含む組成物および(b)エトポシド、ビンクリスチン、CHOP、リツキシマブ、ラパマイシン、R−CHOP、RCVP、DA−EPOCH−Rまたはボルテゾミブの1つもしくは複数をその対象に投与することを含む。
【0248】
特定の実施形態では、B細胞リンパ腫または非ホジキンリンパ腫などのリンパ性悪性疾患を治療するために、本発明の組成物、例えばABT−263を含む組成物を、単剤療法または治療有効量のエトポシド、ビンクリスチン、CHOP、リツキシマブ、ラパマイシン、R−CHOP、RCVP、DA−EPOCH−Rまたはボルテゾミブとの併用療法でそれを必要とする対象に治療有効量で投与する。
【0249】
他の特定の実施形態では、慢性リンパ球性白血病または急性リンパ性白血病を治療するために、本発明の組成物、例えばABT−263を含む組成物を、単剤療法かまたは治療有効量のエトポシド、ビンクリスチン、CHOP、リツキシマブ、ラパマイシン、R−CHOP、RCVP、DA−EPOCH−Rまたはボルテゾミブとの併用療法でそれを必要とする対象に治療有効量で投与する。
【0250】
本発明は、対象に、リン脂質成分および薬学的に許容される可溶化成分を含む実質的に非水性の担体の溶液中にABT−263または薬学的に許容されるこの塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物を含む薬物−担体系を含む医薬組成物を、約3時間から約7日間の平均投薬間隔で、1日当たり約50から約500mgABT−263に相当する投薬量で投与することを含む、ヒトがん患者の血流中で、ABT−263および/または1つまたは複数のその代謝産物の治療上有効な血漿濃度を保持するための方法、も提供する。
【0251】
治療上有効な血漿濃度を構成するものは、とりわけ、患者が罹っている具体的ながん、そのがんの段階、重症度および悪性度ならびに求められる結果(例えば、安定化、腫瘍増殖の低減、腫瘍の縮小、転移のリスク低下等)に依存する。血漿濃度はがんを治療することに関して利益を提供するのに十分であるが、それが、許容できないまたは忍容できない程度に不都合な副作用を引き起こす程多くはないことが非常に好ましい。
【0252】
がん全般および特に非ホジキンリンパ腫などのリンパ性悪性疾患の治療のため、ABT−263の血漿濃度は、大抵の場合約0.5から約10μg/mlの範囲に維持すべきである。したがって、ABT−263治療の過程で、定常状態Cmaxは一般に約10μg/mlを超えず、定常状態Cminは一般に約0.5μg/mlを下回らないようにしなければならない。上記に示した範囲内で、定常状態で約5以下、例えば約3以下のCmax/Cmin比を提供するのに効果的な1日投薬量および平均投薬間隔を選択するのが望ましいこともさらに分かる。投薬間隔が長くなると、より高いCmax/Cmin比がもたらされる傾向があることを理解されよう。例として、本発明の方法により、定常状態で、約3から約8μg/mlのABT−263Cmaxおよび約1から約5μg/mlのCminを目標とすることができる。
【0253】
本実施形態によれば、治療上有効なABT−263の血漿中濃度を維持するのに効果的な1日投薬量は約50から約500mgである。大抵の場合、適切な1日投薬量は約200から約400mgである。例示的には、1日投薬量は例えば約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450または約500mgであってよい。
【0254】
本実施形態によれば、治療上有効なABT−263の血漿中濃度を維持するのに効果的な平均投薬間隔は約3時間から約7日間である。大抵の場合、適切な平均投薬間隔は約8時間から約3日間または約12時間から約2日間である。1日1回の(q.d.)投与レジメンがしばしば適している。
【0255】
本発明の実施形態のため、ABT−263は、例示的には、ABT−263遊離塩基またはABT−263ビス−HClの形態で医薬組成物中に存在する。上記により完全に規定したような本発明の任意のABT−263組成物を用いることができる。
【0256】
他の実施形態と同様に、本実施形態による投与は、食物を用いても用いないでも、すなわち非絶食条件下であっても絶食条件下であってもよい。一般に、本発明の組成物は、非絶食患者に投与することが好ましい。
【0257】
本発明に関連する他の情報は、がん研究オンライン(Cancer Research Online)(cancerres.aacrjournals.org/)で入手できる最近公開されたTseらの論文(2008年)Cancer Res.68:3421−3428頁およびこの補足データから得ることができる。この論文およびその補足データの全体を参照により本明細書に組み込む。
【実施例】
【0258】
以下の実施例は、本発明の例示または本発明によって克服される課題の例示であるが、これを限定的なものと解釈すべきではない。プロトタイプ処方物の調製に不都合なまたはそのために選択されなかった特定の実施形態の特性評価は、そうした実施形態が全く無効なものであるまたは本発明の範囲外であることを必ずしも意味するものではない。当業者は、本明細書での全開示をもとにして、本明細書で次善のものとして示されている構成要素を用いても、許容される処方物を調製することができる。
【0259】
(実施例1)
脂質溶媒中のABT−263親およびビスHCl塩の溶解度
ABT−263親(遊離塩基、結晶形態I)およびABT−263ビスHCl塩の溶解度を、周囲条件下、様々な脂質溶媒および溶媒混合物で試験した。上記に特定されていない限り、この試験における市販の溶媒は以下の通りである(入手可能であれば、実質的に同等な他のメーカーの製品で置き換えることができる。):
SasolのMiglyol 810(商標):カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド;
AbitecのCapmul MCM(商標):グリセリルカプリレート/カプレート;
AbitecのCaptex300(商標):カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド;
GattefosseのLabrafil M2125CS(商標):ポリオキシエチレングリセリルリノレート;
UniqemaのTween20(商標):ポリソルベート20;
GattefosseのLabrasol(商標):ポリオキシエチレングリセリルカプリレート/カプレート;
Cremophor RH40(商標):ポリオキシエチレン(40)水添ヒマシ油。
「PE−91」はPhosal 53MCT(商標)+エタノール、9:1(体積)である。「LOT−343」はLabrafil M1944CS(商標)+オレイン酸+Tween80(商標)、30:40:30(重量)である。
【0260】
溶解度データを表4に示す。表4においてアスタリスク()で示しているいくつかの場合、最初溶解度は高かったが、静置している間に沈殿が生じた。
【0261】
【表4】

【0262】
(実施例2)
三成分添加剤系のABT−263親およびビスHCl塩との混和性
2つの溶媒および界面活性剤からなる三成分系を、20重量%ABT−263遊離塩基または10重量%ABT−263ビスHCl塩を用いて、混和性および薬物溶解性について評価した。評価した溶媒には、Labrafil M1944CS(商標)、Imwitor742(商標)、オレイン酸、Capmul PG−8(商標)、Capmul PG−12(商標)、Lauroglycol90(商標)(Gattefosseから市販されているプロピレングリコールモノラウレート)およびPhosal 53MCT(商標)が含まれる。評価した界面活性剤には、Tween80(商標)、Cremophor RH40(商標)、Gelucire 44/14(商標)(Gattefosseから市販されているポリオキシエチレングリセリルラウレート)およびLabrasol(商標)が含まれる。データを表5に示す。
【0263】
【表5】


【0264】
10−20%Gelucire44/14(商標)を含む試験したすべての三成分添加剤系は非混和性を示した。20%を超えるCremophorRH40(商標)を含む試験した大部分の系も非混和性を示した。添加剤が混和性であったのは、試験した濃度で可溶性であった遊離塩基またはビスHCl塩の形態のABT−263の特定の系においてのみであった。
【0265】
ホスファチジルコリンをベースとした添加剤を含む他の三成分系のデータを実施例8、表10および表11に示す。
【0266】
(実施例3)
脂質溶液中におけるABT−263遊離塩基およびビスHCl塩の化学的安定性
ビスHCl塩でのABT−263の脂質溶液と遊離塩基形態でのそれとを並べた比較を可能にするために、予備的安定性試験を実施した。ABT−263を、2つの別々の組の脂質ビヒクル、Phosal 53MCT(商標)/エタノール(9:1(体積);「PE−91」)およびLabrafil M1944CS(商標)/オレイン酸/Tween80(商標)(30:40:30(重量);「LOT−343」)に溶解した。酸化防止剤は添加せず、上部空間での窒素パージも行わなかった。試料を40℃で、最大で3週間熟成した後(ストレス条件)、全スルホキシドの分析により、遊離塩基は、試験した溶液中のビスHCl塩より大幅に安定であることが示された(表6)。合計分解物レベルも同様の傾向を示した(データは示されていない)。分解物レベルの増大は色の変化を伴った。ビスHCl塩溶液は熟成すると顕著な色の暗色化を示したが、遊離塩基溶液は色の変化をほとんど示さなかった。
【0267】
【表6】

【0268】
(実施例4)
種々の脂質溶液におけるABT−263遊離塩基の化学的安定性
種々の脂質添加剤中の溶液でのABT−263遊離塩基の化学的安定性を、酸化防止剤または窒素パージを用いず、40℃での2週間のストレス試験を実施して評価した。結果を表7に示す。
【0269】
【表7】

【0270】
上記試験から以下のようにまとめることができる。
・Phosal 53MCT(商標)またはLipoid S75(商標)MCTなどのホスファチジルコリンをベースとした脂質添加剤において、スルホキシドの増大はほとんど見られない、またはわずかしか見られなかった。
・Imwitor742(商標)、Capmul PG−8(商標)およびオレイン酸(超精製グレード)において、スルホキシドの増大はほとんど見られない、またはわずかしか見られなかった。
・ Tween80(商標)においては中程度のスルホキシドの増大が見られた。より高純度グレードのポリソルベート80(Crillet4HP(商標))を使用した場合、分解は緩慢となった。
・ Labrafil M1944CS(商標)およびPlurol Oleique CC497(商標)はどちらもABT−263の著しい分解を伴った。これらの添加剤はどちらもその構造中にオレイン酸を含んでおり、オレイン酸の不飽和の特徴は酸化反応を促進することが知られている。これが、これらの添加剤中における薬物の化学的不安定性の理由である。
【0271】
(実施例5)
三成分脂質溶液系におけるABT−263遊離塩基の化学的安定性
ABT−263は、実施例4の2週間のストレス試験で、超精製オレイン酸中で安定であるようであるが、多成分ビヒクルを用いた続く試験によって、オレイン酸を含む薬物溶液は静置すると色が変化することが分かった。比較貯蔵試験を、Imwitor742(商標)/オレイン酸/Tween80(商標)(30:40:30(重量);「IOT−343」)およびImwitor742(商標)/Phosal 53MCT(商標)/Tween80(商標)(40:40:20(重量);「IPT−442」)中のABT−263の溶液を用いて周囲温度で実施した。IOT−343ビヒクル自体は無色であり、10重量%でABT−263遊離塩基をそのビヒクルに加えても非常に淡い黄色になるだけであったが、貯蔵すると得られたABT−263溶液の色は著しく暗色化した。これは、最初は黄色に着色したビヒクルであったが貯蔵してもわずかに暗色化しただけであったIPT−442溶液中の10重量%でのABT−263遊離塩基の溶液と対照をなすものであった。周囲条件で3ヵ月間貯蔵した後の2つの薬物溶液についてのHPLC分析により、色の変化が分解と相関することが確認された(合計スルホキシドレベルは、IOT−343の系で1.3%であり、IPT−442の系で0.5%であった。)。したがって、オレイン酸を、ABT−263液体充填カプセル処方物のために使用する脂質添加剤から排除した。
【0272】
異なる三成分脂質の組合せを用いたABT−263遊離塩基脂質溶液についてのさらなるストレス試験により、Labrafil M1944CS(商標)は、ABT−263の有意の酸化的分解を伴うことが示された。表8に示す3週間ストレス試験による結果が示すように、Labrafil M1944CS(商標)を含む処方物は、酸化防止剤または窒素パージなしで、40℃で貯蔵して有意のスルホキシド増大を示した。他方、オレイン酸もLabrafil M1944CS(商標)も含まないABT−263のImwitor742(商標)/Phosal 53MCT(商標)/Tween80(商標)(20:50:30(重量);「IPT−253」)溶液は、試験した他の処方物、すなわちLabrafil M1944CS(商標)/オレイン酸/Tween80(商標)(30:40:30(重量);「LOT−343」)およびLabrafil M1944CS(商標)/Imwitor742(商標)/Tween80(商標)(40:30:30(重量);「LIT−433」)と比べてずっと高い化学的安定性を示した。したがって、Labrafil M1944CS(商標)とオレイン酸の両方を、ABT−263液体充填カプセル処方物のために使用する脂質添加剤から排除した。
【0273】
【表8】

【0274】
(実施例6)
脂質溶液系におけるABT−263遊離塩基の酸化防止剤試験
酸化的分解の抑制における様々な酸化防止剤の有効性を、2つの異なる脂質溶液系:(1)Lipoid S75(商標)MCTおよび(2)三成分脂質系(LIT−433;上記を参照されたい)中に100mg/gでABT−263遊離塩基を含む脂質溶液で評価した。後者の脂質溶液系を、酸化防止スクリーニングとして、短時間で大幅に分解を促進する系として意図的に選択した。窒素パージを用いた40℃での2週間のストレス試験の間のスルホキシド生成を表9に示す。
【0275】
【表9】

【0276】
ABT−263遊離塩基は、LIT−433ビヒクル系中より、Lipoid S75(商標)MCTビヒクル中でずっと少ない程度でしか分解しなかった。チオグリセロールは、両方のビヒクル系において薬物酸化の効果的な抑制をもたらした。LIT−433ビヒクル系では、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、メタ重亜硫酸ナトリウムおよびチオ硫酸ナトリウムは、試験した濃度である程度酸化的分解を抑制したが、α−トコフェロールは効果がなかった。メタ重亜硫酸ナトリウムおよびチオ硫酸ナトリウムの濃度は、ABT−263に対してモル当量を提供する濃度よりずっと低いことに留意されたい。用いたような低濃度でも、これらの酸化防止剤への水の添加は濁った溶液をもたらした。パルミチン酸アスコルビル、BHAおよびBHTの濃度は、酸化防止剤のために通常用いられる濃度よりずっと高かった。
【0277】
(実施例7)
三成分脂質溶液系におけるABT−263遊離塩基のための酸化防止剤としてのBHA
その好ましい親油特性および脂質系における酸化防止剤としての幅広い用途のため、BHAの酸化防止的有効性を、ABT−263を150mg/gで含む2つの追加の三成分ビヒクル系、IPT−253およびLIT−433において、BHAについて、より一般的な濃度で試験した。試験を、窒素パージを行わない40℃でのストレス条件で実施した。表10に示すように、両方の系において、0.2w/w%のBHAを加えても、スルホキシド生成の抑制は全くもたらされなかった。BHAおよびBHTなどのフリーラジカル捕捉剤タイプの酸化防止剤は、脂質溶液において酸化的分解からABT−263を保護するのには役に立たないようであると結論づけた。
【0278】
【表10】

【0279】
(実施例8)
ABT−263遊離塩基のためのリン脂質溶液系
上記試験に基づいて、ホスファチジルコリンを含有する添加剤Phosal 53MCT(商標)およびLipoid S75(商標)MCTは、ABT−263遊離塩基に対して良好な化学的安定性および薬物溶解性を提供すると結論づけた。しかし、これらの予めブレンドされた添加剤は、高い粘度(Phosal 53MCT(商標))または不十分な薬物溶解性(Lipoid S75(商標)MCT)のいずれかのため、ABT−263液体充填カプセル剤用にビヒクルとして単独で使用するのには適していない。ビヒクル中での薬物溶解性を増進させるためには、ポリソルベート80を使用することができる。脂質溶液の粘度を低下させるためには、Capmul PG−8(商標)またはImwitor742(商標)などの添加剤を使用することができる。どちらもABT−263と化学的に相溶性であることが分かっている。FDA承認の製剤での従来の経験を基づけば、Imwitor742(商標)はCapmul PG−8(商標)より好ましかった。
【0280】
結果として、プロトタイプ液体充填カプセル剤の開発において、Phosal 53MCT(商標)、Lipoid S75(商標)MCT、ポリソルベート80(Crillet4HP(商標)および超精製Tween80(商標)などのより高純度の形態が好ましい。)およびImwitor742(商標)などの添加剤に注目点が集中している。
【0281】
Imwitor742(商標)/Phosal 53MCT(商標)/Tween80(商標)(「IPT」と略記)系またはImwitor742(商標)/Lipoid S75(商標)MCT/Tween80(商標)(「IST」と略記)系を様々な添加剤比で含む2つの三成分脂質ビヒクル系を、プロトタイプカプセル処方物のためのスクリーニングにおいて検討した。三成分ブレンド中のImwitor742(商標)のレベルを40%以下に限定し、ポリソルベート80のレベルを20%以下に限定した。「IPT」または「IST」に続く3桁の添え字は、それぞれの場合最後のゼロを除いて、3つの添加剤構成要素のそれぞれの割合を指す。
【0282】
プロトタイプ処方物の選択は、IPTおよびIST系についてそれぞれ表11および表12にまとめたように、ビヒクル混和性、ビヒクル中でのABT−263遊離塩基の溶解性、得られた溶液の粘度(点滴器から放出されたときの糸引きの度合い(severity of stringing)で判断して)および薬物溶液の自己分散特性(10重量%の薬物ローディングで)をもとにした。IPTおよびIST系の概略的な相図(図1および図2)は選択の過程をさらに例示している。
【0283】
表11および表12ならびに図1および図2の相図から分かるように、IPT系は概ね、対応するIST系より良好なビヒクル混和性、薬物溶解性および分散性を提供している。IPT−262およびIST−262(後でIST−172で置き換えられる。)を、以下の論拠をもとにしてプロトタイプビヒクル系として選択した。
【0284】
ホスファチジルコリンをベースとした溶媒(例えば、Phosal 53MCT(商標)またはLipoid S75(商標)MCTの形態で)は、カプセル処方物の化学的安定性(および生物学的利用能−以下を参照されたい。)の両方を確実にするのに必要である。そうした溶媒の量は、経口製品で用いられるレシチンの低い毒性と高い忍容性のため、実質的に無制限である。
【0285】
ポリソルベート80(特に高純度グレード)は、ビヒクル中での薬物溶解性を促進して脂質処方物の自己分散性を増進させるのに必要である。ABT−263の典型的な1日量(例えば、200−250mg)とポリソルベート80の最大1日量(418mg)をもとにして、10%の薬物ローディングでのプロトタイプ処方物のために、ポリソルベート80のレベルをビヒクル中で20%以下に限定するのは妥当である。より高いレベルのポリソルベート80は、化学的安定性を考慮するとやはり好ましくない。
【0286】
IPT系では、Imwitor742(商標)は、最終薬物溶液の粘度を、機械によるカプセル充填を可能にするレベルに低下させるために必要である。IST系では、Lipoid S75(商標)MCTとポリソルベート80はどんな比率でも混和しないので、Imwitor742(商標)はビヒクル系の混和性を増進させるためにやはり必要である。しかし、Imwitor742(商標)の量は、両方のプロトタイプ系において20%以下に限定される。
【0287】
表12から、IST−172系は低いビヒクル混和性を示すことが分かる。しかし、ABT−263遊離塩基を加えると系全体の混和性が許容できるものとなり;したがって、IST−172処方物がカプセル化用に許容できるプロトタイプ液体となることが分かった。
【0288】
【表11】

【0289】
【表12】

【0290】
(実施例9)
ABT−263遊離塩基のリン脂質をベースとした溶液のための酸化防止剤の選択
最初の酸化防止剤スクリーニング(実施例6参照)をもとにして、促進安定性試験を、2つのプロトタイプ処方物について、酸化防止剤としてのメタ重亜硫酸ナトリウム(NaMTBS)またはチオグリセロールを0.01%EDTAと一緒に用いてさらに実施した。
【0291】
10%ABT−263遊離塩基および0.01%EDTA(エデト酸カルシウム2ナトリウムとして)を含むIPT−262およびIST−262の溶液へのそのままの(neat)NaMTBSの溶解性を評価した。周囲環境条件下で5日間回転混合させた後、0.05w/w%(またはABT−263に対して約2%モル濃度)しかないNaMTBS固体濃度でも、すべての液において固体が残留した。
【0292】
NaMTBSの低い脂質溶解性のため、それを脂質溶液中へ導入する代替の方法は、NaMTBSの濃厚水性ストック溶液を脂質溶液に加えることによるものである。例えば、Phosal 53MCT(商標)/エタノール9:1 v/v中の50mg/ml遊離塩基溶液を、9.67mg/ml(またはABT−263に対して100%モル濃度)の最終NaMTBS濃度まで15%w/v NaMTBS溶液でスパイクすると透明な溶液が得られた。しかし、NaMTBSの最終濃度が、15%w/vストック溶液を用いて150%の相対モル濃度まで増大すると脂質溶液は濁ってきた。20%を超える濃度でストック溶液を用いても溶液の濁りがもたらされた。これは、過剰量の水とNaMTBSの両方が濁った溶液をもたらした可能性があることを示している。
【0293】
(実施例10)
酸化防止剤を含むリン脂質をベースとした処方物におけるスルホキシド生成
表13に示すように、2週間の促進安定性試験(ストレス条件:40℃で窒素パージあり)による結果は、チオグリセロールが、両方のプロトタイプ処方物において、スルホキシド生成を抑制するのにNaMTBSほど効果的ではないことを示している。
【0294】
しかし、この試験結果は、NaMTBSと共に加えられた水が薬物溶液の化学的安定性に悪影響を及ぼす恐れがあることも示しており、これは、ABT−263の形態(遊離塩基もしくはビスHCl塩)または使用されるビヒクル系に関係なくそれに当てはまることを示している(表14;40℃、窒素パージありでの2週間試験を参照されたい。)。この理由のため、0.05%(w/w)NaMTBSの最終濃度を選択し、濁りを避けるために、MTBSストック溶液の濃度も約15%w/v未満に保持しなければならない。
【0295】
【表13】

【0296】
【表14】

【0297】
(実施例11)
プロトタイプ液体充填カプセル剤のインビボでの薬物動態
2つの100mg/g ABT−263遊離塩基の液体充填カプセルプロトタイプ処方物を、イヌに投与して(単回投与、非絶食条件)、そのインビボでの薬物動態を、0.01%EDTAを含むPhosal 53MCT(商標)/エタノール9:1 v/v中のABT−263遊離塩基およびビスHCl塩の50mg/ml経口液剤と比べて評価した。
【0298】
各処方物を、6匹のイヌの群において50mg/イヌの用量で評価した。処方物A(IPT−262)およびB(IST−262)を同じ群のイヌに連続して投与し、処方物CおよびDを別の群のイヌに連続して投与した。投与前にイヌを終夜絶食させたが、食料は投与の30分前に与えた。各試験が終わった時点で、親薬物の血漿濃度をHPLC−MS/MSにより測定した。結果を表15に示す。
【0299】
血漿中の処方物Aのピーク濃度(Cmax)は処方物Bのそれより若干低いが、処方物AのAUCは処方物Bのそれより大きく、これは明らかに、遅い吸収のためである。処方物Bは、投与後2−3時間でより一定しているがより小さいTmaxを示している。液体充填カプセル処方物Aは、経口液剤(処方物CおよびD)のそれに匹敵する血漿Cmax、AUCおよび生物学的利用能(F%)をもたらした。これらの結果をもとにして、IPT−262プロトタイプ(処方物A)を、ヒト臨床試験用の液体充填カプセル処方物として選択した。
【0300】
【表15】

【0301】
(実施例12)
NaMTBSを用いた場合と用いない場合のプロトタイプ処方物の貯蔵安定性
予備的な物理的および化学的安定性結果を、2つの実験室規模のバッチのプロトタイプABT−263液体充填カプセル処方物について得た。2つのバッチ間の違いは、酸化防止剤(メタ重亜硫酸ナトリウム)が存在するかしないかだけである。2つのバッチの組成物を表16に示す。
【0302】
【表16】

【0303】
表16に示す組成物を有する液体をサイズ0の硬質ゼラチンカプセル中にカプセル化し、カプセルを化学的安定性試験のためにブリスターパッケージに入れた。様々な条件下で1ヵ月貯蔵した後のデータを表17に示す。表17に示した水分含有量は分析により測定したものであり、表16に示すように、NaMTBSおよびエデト酸カルシウム2ナトリウムと共に加えられた水の量と直接関係はない。
【0304】
【表17】

【0305】
表17から、酸化防止剤のメタ重亜硫酸ナトリウムを添加すると、特に40℃および75%RHのストレス貯蔵条件下で、合計スルホキシドの生成が大幅に抑制されることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式Iの化合物:
【化1】

{式中、Xはクロロまたはフルオロであり;
(1)Xはアゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、1,4−オキサゼパン−4−イル、ピロリジン−1−イル、N(CH、N(CH)(CH(CH)、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−イルまたは2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イルであり;Rは、
【化2】

(式中、XはCH、C(CHまたはCHCHであり;
およびXはどちらも水素またはどちらもメチルであり;
はフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である;または
(2)Xはアゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、ピロリジン−1−イル、N(CH)(CH(CH)または7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−イルであり;Rは、
【化3】

(式中、X、XおよびXは上記の通りである。)
である;または
(3)Xはモルホリン−4−イルまたはN(CHであり;Rは、
【化4】

(式中、Xは上記の通りである。)
である。}
または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物;(b)薬学的に許容される重カルコゲン酸化防止剤;および(c)実質的に非水性の薬学的に許容される脂質担体を含む経口で送達可能な医薬組成物であって、前記化合物および酸化防止剤が前記脂質担体中に溶解している医薬組成物。
【請求項2】
式Iの化合物において、Xがフルオロである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式Iの化合物において、Xがモルホリン−4−イルである、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
式Iの化合物において、Rが、
【化5】

(式中、XはO、CH、(CHまたはCHCHであり;
およびXはどちらも水素またはどちらもメチルであり;および
はフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
式Iの化合物において、Rが、
【化6】

(式中、XはO、CH、C(CHまたはCHCHであり;
およびXはどちらも水素またはどちらもメチルであり;
はフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
式Iの化合物において、XがCHまたはC(CHであり、ならびに/またはXおよびXのそれぞれがメチルであり、ならびに/またはXがクロロである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
式Iの化合物が、ABT−263(N−(4−(4−((2−(4−クロロフェニル)−5,5−ジメチル−1−シクロヘキサ−1−エン−1−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)−4−(((1R)−3−(モルホリン−4−イル)−1−((フェニルスルファニル)メチル)プロピル)アミノ−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)ベンゼンスルホンアミド)またはこの塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記化合物がABT−263遊離塩基またはABT−263ビスHClである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
化合物が遊離塩基相当物として約10から約500mg/mlの量で存在する、請求項7または請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
酸化防止剤が、1つまたは複数の式IIの酸化防止化合物:
【化7】

(式中、nは0、1または2であり;
はSまたはSeであり;
はNHR、OHまたはHであり、Rはアルキルまたはアルキルカルボニルであり;
はCOORまたはCHOHであり、RはHまたはアルキルであり;
はHまたはアルキルであり;
アルキル基は、カルボキシル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノおよびアルキルカルボニルアミノからなる群から独立に選択される1つもしくは複数の置換基で、場合によって置換されている。)、薬学的に許容されるこれらの塩、または式中、YはSであり、RはHである場合、それらの−S−S−二量体もしくは前記二量体の薬学的に許容される塩
を含む、請求項1から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
酸化防止剤が、N−アセチルシステイン、N−アセチルシステインブチルエステル、N−アセチルシステインドデシルエステル、N−アセチルシステインエチルエステル、N−アセチルシステインメチルエステル、N−アセチルシステインオクチルエステル、N−アセチルシステインプロピルエステル、N−アセチルシステインステアリルエステル、N−アセチルシステインテトラデシルエステル、N−アセチルシステイントリデシルエステル、N−アセチルメチオニン、N−アセチルメチオニンブチルエステル、N−アセチルメチオニンドデシルエステル、N−アセチルメチオニンエチルエステル、N−アセチルメチオニンメチルエステル、N−アセチルメチオニンオクチルエステル、N−アセチルメチオニンプロピルエステル、N−アセチルメチオニンステアリルエステル、N−アセチル−メチオニンテトラデシルエステル、N−アセチルメチオニントリデシルエステル、N−アセチルセレノシステイン、N−アセチルセレノシステインブチルエステル、N−アセチルセレノシステインドデシルエステル、N−アセチル−セレノシステインエチルエステル、N−アセチルセレノシステインメチルエステル、N−アセチルセレノシステインオクチルエステル、N−アセチルセレノシステインプロピルエステル、N−アセチルセレノシステインステアリルエステル、N−アセチルセレノシステインテトラデシルエステル、N−アセチルセレノシステイントリデシルエステル、N−アセチル−セレノメチオニン、N−アセチルセレノメチオニンブチルエステル、N−アセチルセレノメチオニンドデシルエステル、N−アセチルセレノメチオニンエチルエステル、N−アセチルセレノメチオニンメチルエステル、N−アセチルセレノメチオニンオクチルエステル、N−アセチルセレノメチオニンプロピルエステル、N−アセチルセレノメチオニンステアリルエステル、N−アセチルセレノメチオニンテトラデシルエステル、N−アセチルセレノメチオニントリデシルエステル、システイン、システインブチルエステル、システインドデシルエステル、システインエチルエステル、システインメチルエステル、システインオクチルエステル、システインプロピルエステル、システインステアリルエステル、システインテトラデシルエステル、システイントリデシルエステル、シスチン、シスチンジブチルエステル、シスチンジ(ドデシル)エステル、シスチンジエチルエステル、シスチンジメチルエステル、シスチンジオクチルエステル、シスチンジプロピルエステル、シスチンジステアリルエステル、シスチンジ(テトラデシル)エステル、シスチンジ(トリデシル)エステル、N,N−ジアセチルシスチン、N,N−ジアセチルシスチンジブチルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジエチルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジ(ドデシル)エステル、N,N−ジアセチルシスチンジメチルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジオクチルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジプロピルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジステアリルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジ(テトラデシル)エステル、N,N−ジアセチルシスチンジ(トリデシル)エステル、ジブチルチオジグリコレート、ジブチルチオジプロピオネート、ジ(ドデシル)チオジグリコレート、ジ(ドデシル)チオジプロピオネート、ジエチルチオジグリコレート、ジエチルチオジプロピオネート、ジメチルチオジグリコレート、ジメチルチオジプロピオネート、ジオクチルチオジグリコレート、ジオクチルチオジプロピオネート、ジプロピルチオジグリコレート、ジプロピルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジグリコレート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジ(テトラデシル)チオジグリコレート、ジ(テトラデシル)チオジプロピオネート、ホモシステイン、ホモシステインブチルエステル、ホモシステインドデシルエステル、ホモシステインエチルエステル、ホモシステインメチルエステル、ホモシステインオクチルエステル、ホモシステインプロピルエステル、ホモシステインステアリルエステル、ホモシステインテトラデシルエステル、ホモシステイントリデシルエステル、メチオニン、メチオニンブチルエステル、メチオニンドデシルエステル、メチオニンエチルエステル、メチオニンメチルエステル、メチオニンオクチルエステル、メチオニンプロピルエステル、メチオニンステアリルエステル、メチオニンテトラデシルエステル、メチオニントリデシルエステル、S−メチルシステイン、S−メチルシステインブチルエステル、S−メチルシステインドデシルエステル、S−メチルシステインエチルエステル、S−メチルシステインメチルエステル、S−メチルシステインオクチルエステル、S−メチルシステインプロピルエステル、S−メチルシステインステアリルエステル、S−メチルシステインテトラデシルエステル、S−メチルシステイントリデシルエステル、セレノシステイン、セレノシステインブチルエステル、セレノシステインドデシルエステル、セレノシステインエチルエステル、セレノシステインメチルエステル、セレノシステインオクチルエステル、セレノシステインプロピルエステル、セレノシステインステアリルエステル、セレノシステインテトラデシルエステル、セレノシステイントリデシルエステル、セレノメチオニン、セレノメチオニンブチルエステル、セレノメチオニンドデシルエステル、セレノメチオニンエチルエステル、セレノメチオニンメチルエステル、セレノメチオニンオクチルエステル、セレノメチオニンプロピルエステル、セレノメチオニンステアリルエステル、セレノメチオニンテトラデシルエステル、セレノメチオニントリデシルエステル、チオジグリコール酸、チオジプロピオン酸、チオグリセロール、これらの異性体およびこれらの異性体の混合物ならびにこれらの塩からなる群から選択される1つまたは複数の化合物を含む、請求項1から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
酸化防止剤が、式Iの化合物に対して約1:10から約2:1のモル比で存在する、請求項1から11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
酸化防止剤が、式Iの化合物に対して約8:10から約10:8のモル比で存在する、請求項1から11のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
担体がリン脂質および可溶化成分を含む、請求項1から13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
リン脂質がホスファチジルコリンを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
担体の可溶化成分が、1つまたは複数のグリコール、グリコシドおよび/またはグリセリド物質を含む、請求項14または請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
可溶化剤が1つまたは複数の中鎖トリグリセリドを含む、請求項14または請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
可溶化剤が、1つまたは複数の中鎖モノおよび/またはジグリセリドをさらに含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
非リン脂質界面活性剤をさらに含む、請求項14から18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
非リン脂質界面活性剤が1つまたは複数のポリソルベートを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
1つまたは複数のポリソルベートが約5未満の過酸化物価を有する、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
酸化防止剤が低脂溶性であり、組成物が、水性ストック溶液として、酸化防止剤の導入に十分な最大で約1重量%の水を含む、請求項1から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
低脂溶性酸化防止剤が組成物の重量で約0.02%から約0.2%の量で存在する、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
低脂溶性酸化防止剤が、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩、チオ硫酸塩およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項22または請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
低脂溶性酸化防止剤が、メタ重亜硫酸ナトリウムまたはメタ重亜硫酸カリウムを含む、請求項22または請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
薬学的に許容されるキレート剤をさらに含む、請求項1から25のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
キレート剤がEDTAまたはこの塩を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
重量で約5%から約20%のABT−263遊離塩基、重量で約15%から約60%のホスファチジルコリン、重量で約7%から約30%の中鎖トリグリセリド、重量で約7%から約30%の中鎖モノおよびジグリセリド、約7%から約30%のポリソルベート80界面活性剤、重量で約0.02%から約0.2%のメタ重亜硫酸ナトリウムまたはメタ重亜硫酸カリウム、約0.003%から約0.01%のEDTAまたはこの塩および約0.2%から約0.8%の水を含む溶液の形態の医薬組成物。
【請求項29】
前記溶液がその中にカプセル化されているカプセル剤皮をさらに含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
溶液が、重量で約5%から約20%のABT−263遊離塩基、重量で約15%から約60%のホスファチジルコリン、重量で約7%から約30%の中鎖トリグリセリド、重量で約7%から約30%の中鎖モノおよびジグリセリド、約7%から約30%のポリソルベート80界面活性剤、重量で約0.02%から約0.2%のメタ重亜硫酸ナトリウムまたはメタ重亜硫酸カリウム、約0.003%から約0.01%のEDTAまたはこの塩および約0.2%から約0.8%の水から本質的になる、請求項28または請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
約50mgABT−263遊離塩基、約150mgホスファチジルコリン、約75mg中鎖トリグリセリド、約90mg中鎖モノおよびジグリセリド、約90mgポリソルベート80界面活性剤、約0.25mgのメタ重亜硫酸ナトリウムまたはメタ重亜硫酸カリウム、約0.025mgEDTAまたはこの塩および約2.5mg水を含む溶液がその中にカプセル化されているサイズ0の硬質ゼラチンカプセル剤皮を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
請求項1から31のいずれかに記載の組成物の、抗アポトーシスBcl−2ファミリータンパク質のアポトーシス機能不全および/または過剰発現を特徴とする疾患を有する対象に治療有効量の前記組成物を経口投与することによって、前記疾患を治療するための使用。
【請求項33】
疾患が腫瘍性疾患である、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
腫瘍性疾患が、がん、中皮腫、膀胱がん、膵臓がん、皮膚がん、頭部または頸部のがん、皮膚もしくは眼球内のメラノーマ、卵巣がん、乳がん、子宮がん、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、骨がん、結腸がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん、胃腸(胃、結腸直腸および/または十二指腸)がん、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ性白血病、食道がん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、精巣がん、肝細胞(肝臓および/または胆管)がん、原発性もしくは続発性中枢神経系腫瘍、原発性もしくは続発性脳腫瘍、ホジキン病、慢性もしくは急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、T細胞もしくはB細胞由来のリンパ性悪性疾患、メラノーマ、多発性骨髄腫、口腔がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、小細胞肺がん、腎臓および/または尿管のがん、腎細胞癌、腎盂の癌腫、中枢神経系の新生物、原発性中枢神経系リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、下垂体腺腫、副腎皮質がん、胆嚢がん、脾臓のがん、胆管癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
腫瘍性疾患がリンパ性悪性疾患である、請求項33に記載の使用。
【請求項36】
リンパ性悪性疾患が非ホジキンリンパ腫である、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
腫瘍性疾患が慢性リンパ球性白血病または急性リンパ性白血病である、請求項33に記載の使用。
【請求項38】
投与される組成物が、ABT−263遊離塩基またはABT−263ビスHClを含む、請求項32から37のいずれかに記載の使用。
【請求項39】
組成物が、約3時間から約7日間の平均治療間隔でABT−263遊離塩基相当物として1日当たり約50から約500mgの用量で投与される、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
組成物が、1日1回、ABT−263遊離塩基相当物として1日当たり約200から約400mgの用量で投与される、請求項38に記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−525435(P2012−525435A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508759(P2012−508759)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/033075
【国際公開番号】WO2010/127193
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】