説明

アポトーシスプロモーターの脂質製剤

経口で送達可能な医薬組成物は、少なくとも1つのリン脂質および薬学的に許容される可溶化剤を含む実質的に非水性の担体中の溶液中にBcl−2ファミリータンパク質阻害化合物、例えばABT−263を有する薬物担体系を含む。この組成物は、1つまたは複数の抗アポトーシスBcl−2ファミリータンパク質の過剰発現を特徴とする疾患、例えばがんの治療のために、それを必要とする対象に経口投与するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年4月30日出願の米国仮出願番号第61/174,245号に関する優先権の特典を請求するものである。
【0002】
本出願に関連する主題を含む以下の共出願された米国出願:2009年4月30日出願の米国仮出願番号第61/174,274号に関する優先権の特典を請求する「Salt of ABT−263 and solid−state forms thereof」という名称の米国仮出願番号第12/ , 号;ならびに2009年4月30日出願の米国仮出願番号第61/174,299号および同第2009年12月22日出願の61/289,254号に関する優先権の特典を請求する「Stabilized lipid formulation of apoptosis promoter」という名称の米国仮出願番号第12/ , 号に対する相互参照を行うものである。
【0003】
上記出願のそれぞれの開示全体を参照により本明細書に組み込む。
【0004】
本発明は、アポトーシス促進物質を含む医薬組成物および抗アポトーシスBcl−2ファミリータンパク質の過剰発現を特徴とする疾患を治療するためのその使用方法に関する。より具体的には、本発明は、アポトーシス促進物質の改善された経口生物学的利用能を示すそうした組成物、およびそうした組成物をそれを必要とする対象に投与するための経口投薬レジメンに関する。
【背景技術】
【0005】
アポトーシスの回避はがんの特徴である(Hanahan & Weinberg(2000年)Cell 100:57−70頁)。がん細胞は、正常細胞にアポトーシスをもたらす可能性のあるDNA損傷、がん遺伝子の活性化、異常な細胞周期の進行および厳しい微小環境などの細胞ストレスによる間断ない攻撃を克服しなければならない。がん細胞がそれによってアポトーシスを回避する主な手段の1つは、Bcl−2ファミリーの抗アポトーシスタンパク質の上方調節である。
【0006】
Bcl−2タンパク質のBH3結合溝を占有する化合物は、例えばBrunckoら(2007年)J.Med.Chem.50:641−662頁によって記載されている。これらの化合物には、別名ABT−737として知られている、次式:
【0007】
【化1】

を有するN−(4−(4−((4’−クロロ−(1,1’−ビフェニル)−2−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)−4−(((1R)−3−(ジメチルアミノ)−1−((フェニルスルファニル)メチル)プロピル)アミノ)−3−ニトロベンゼン−スルホンアミドが含まれる。
【0008】
ABT−737はBcl−2ファミリー(特にBcl−2、Bcl−XおよびBcl−w)のタンパク質と高い親和力(<1nM)で結合する。これは、小細胞肺がん(SCLC)およびリンパ性悪性疾患に対して単剤活性を示し、他の化学療法剤のアポトーシス促進効果を強化する。ABT−737および関連化合物ならびにそうした化合物の作製方法はBrunckoらの米国特許出願公開第2007/0072860号に開示されている。
【0009】
最近になって、Bcl−2ファミリータンパク質に対して高い結合親和性を有する一連の他の化合物が特定されている。これらの化合物およびそれらを作製する方法は、Brunckoらの米国特許出願公開第2007/0027135号(以下、「’135公開」とする)に開示されており(その全体を参照により本明細書に組み込む。)、これらは、その式(以下の式I)からABT−737と構造的に関連していると見ることができる。
【0010】
式Iの化合物
【0011】
【化2】

において:
はクロロまたはフルオロであり;
(1)Xはアゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、1,4−オキサゼパン−4−イル、ピロリジン−1−イル、N(CH、N(CH)(CH(CH)、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプラン−1−イルまたは2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イルであり;R
【0012】
【化3】

(式中、XはCH、C(CHまたはCHCHであり;
およびXはどちらも水素でありまたはどちらもメチルであり;
はフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である;または
(2)Xはアゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、ピロリジン−1−イル、N(CH)(CH(CH)または7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプラン−1−イルであり;R
【0013】
【化4】

(式中、X、XおよびXは上記の通りである。)
である;または
(3)Xはモルホリン−4−イルまたはN(CHであり;R
【0014】
【化5】

(式中、Xは上記の通りである。)
である。
【0015】
’135公開は、従来知られているBcl−2ファミリータンパク質の阻害剤は経口投与後、強力な細胞効力または高い全身暴露性を有し得るが、それらはその両方の特性を有してはいないと述べている。化合物の細胞効力の典型的な尺度は、50%の細胞効果を誘発する濃度(EC50)である。化合物の経口投与後の全身暴露の典型的な尺度は、化合物血漿濃度対経口投与からの時間をグラフ化して得られる曲線下面積(AUC)である。’135公開において言及されている、従来知られている化合物は低いAUC/EC50比を有しており、これは、経口的に有効でないことを意味している。これに対して、式Iの化合物は、経口投与後の細胞効力と全身暴露に関して高い特性を示し、従来知られている化合物のそれより大幅に高いAUC/EC50比がもたらされると述べられている。
【0016】
’135公開において「実施例1」と特定されている1つの化合物は、別名ABT−263として知られているN−(4−(4−((2−(4−クロロフェニル)−5,5−ジメチル−1−シクロヘキサ−1−エン−1−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)−4−(((1R)−3−(モルホリン−4−イル)−1−((フェニルスルファニル)メチル)プロピル)アミノ−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)ベンゼンスルホンアミドである。この化合物は974.6g/モルの分子量を有し、次式:
【0017】
【化6】

を有する。
【0018】
ABT−263は、Bcl−2およびBcl−Xと高い親和力(<1nM)で結合し、Bcl−wに対しても同様の高い親和力を有すると考えられている。そのAUC/EC50比は’135公開において56と報告されており、ABT−737について報告されているもの(4.5)より1桁以上大きい値である。’135公開によれば、AUCを測定するために、各化合物が、PEG−400(平均分子量約400のポリエチレングリコール)中に10%DMSO(ジメチルスルホキシド)の媒体中の2mg/ml溶液として、強制経口投与により単回用量5mg/kgでラットに投与されている。
【0019】
経口生物学的利用能(例えば、静脈内投与後のAUCの割合としての、経口投与後のAUCで表される)は、’135公開では報告されていないが、それから、経口生物学的利用能はABT−737についてより、ABT−263についての方が実質的に大きいと結論づけることができる。しかし、経口生物学的利用能がさらに改善されれば有利である。低い経口生物学的利用能に挑戦するための様々な溶液が、当業界で提案されている。例えば、Lacyらの米国特許第5,645,856号は、インビボでの油の脂肪分解に対する親水性界面活性剤の阻害効果を実質的に低減する、(a)油、(b)親水性界面活性剤および(c)親油性界面活性剤を含む疎水性薬物であって、そうした脂肪分解がその薬物の生物学的利用能を促進する因子であるとされる薬物を処方することを提案している。挙げられている多くの部類の親水性界面活性剤の中にはレシチンなどのリン脂質がある。
【0020】
Chen & Patelの米国特許第6,267,985号は、とりわけ、(a)トリグリセリド、(b)そのうちの1つが親水性である少なくとも2つの界面活性剤を含む担体および(c)トリグリセリド、担体またはこれらの両方の中に可溶化され得る治療薬を含む医薬組成物を対象としている。そこでは、トリグリセリドと界面活性剤は、その組成物が規定の条件下で水溶液と混合されたとききれいな水性分散液を提供する量で存在しなければならないと指定されている。例示的構成要素の別個の広範なリストの中では、トリグリセリドとして「グリセリルトリカプリレート/カプレート」および界面活性剤としてホスファチジルコリンを含むリン脂質が挙げられている。
【0021】
Patel & Chenの米国特許第6,451,339号は、そうした組成物におけるトリグリセリドの存在の不都合さに言及しており、トリグリセリドを実質的に含まないが同じようにきれいな水性分散液を提供する類似の組成物を別途提案している。
【0022】
Patel & Chenの米国特許第6,309,663号は、親水性治療薬の生体吸収性(bioabsorption)を高めるとされる界面活性剤の組合せを含む医薬組成物を提案している。ホスファチジルコリンなどのリン脂質が、例示的な界面活性剤の中に再び挙げられている。
【0023】
Fanaraらの米国特許第6,464,987号は、活性物質、重量で3%から55%のリン脂質、重量で16%から72%の溶媒および重量で4%から52%の脂肪酸を含む流体状医薬組成物を提案している。いくつかの場合、Phosal 50PG(商標)(主にホスファチジルコリンおよびプロピレングリコールを含む)をPhosal 53MCT(商標)(主にホスファチジルコリンおよび中鎖トリグリセリドを含む)と一緒に含む組成物が具体的に例示されている。そうした組成物は、水相の存在下で瞬時にゲル化する特性を有しており、活性物質の制御放出が可能であるとされている。
【0024】
Leonardらの米国特許第5,538,737号は、水溶性薬物塩がエマルジョンの水相中に溶解しており、その油相が油と乳化剤を含む、油中水型エマルジョンを含むカプセル剤を提案している。挙げられている油の中には中鎖トリグリセリドがあり;挙げられている乳化剤の中にはホスファチジルコリンなどのリン脂質がある。その報告によれば、ホスファチジルコリンおよび中鎖トリグリセリドを含むPhosal 53MCT(商標)が、その様々な実施例にしたがって用いられている。
【0025】
Waranis & Leonardの米国特許第5,536,729号は、リン脂質溶液を含む担体中に約0.1から約50mg/mlの濃度でラパマイシンを含む経口製剤を提案している。そこでは、好ましい製剤を、リン脂質溶液としてPhosal 50PG(商標)を用いて作製できると述べられている。挙げられている代替のリン脂質溶液はPhosal 50MCT(商標)である。
【0026】
Harrisonらの米国特許第5,559,121号は、N,N−ジメチルアセトアミドおよびリン脂質溶液を含む担体中に約0.1から約100mg/mlの濃度でラパマイシンを含む経口製剤を提案している。より好ましい実施形態の例は、Phosal 50PG(商標)を用いて調製することが示されている。挙げられている代替のリン脂質溶液はPhosal 50MCT(商標)である。
【0027】
Lipariらの米国特許出願公開第2007/0104780号は、低水溶性を有する小分子薬物(そこでは、塩の場合は対イオンを除いて、約750g/モル以下、一般に約500g/モル以下の分子量を有するものと定義されている。)を、少なくとも1つのリン脂質および薬学的に許容される可溶化剤を含む実質的に非水性の担体中の溶液として処方できることを開示している。水相と混合すると、その溶液は、非ゲル化性のほぼ不透明な分散液を形成すると記されている。例として、Phosal 53MCT(商標)および他の構成要素を含むN−(4−(3−アミノ−1H−インダゾール−4−イル)フェニル)−N’−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)尿素(タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤ABT−869)の製剤が記載されている。
【0028】
改善された治療法が必要とされる特定のタイプの疾患は非ホジキンリンパ腫(NHL)である。NHLは米国において6番目にまん延しているタイプの新規ながんであり、主に60−70歳の患者において発生する。NHLは単一疾患ではなく、関連する疾患のファミリーであり、これらは、臨床的特質および組織学を含むいくつかの特徴をもとに分類される。
【0029】
分類の1つの方法は、異なる組織学的サブタイプを、疾患の自然経過、すなわちその疾患が緩徐進行性であるまたは侵襲性であるかどうかを基にして2つの主カテゴリーに分ける方法である。一般に、緩徐進行性サブタイプは徐々に成長し、通常治療不能であるのに対し、侵襲性サブタイプは急速に成長し、治療できる可能性がある。濾胞性リンパ腫は、最も一般的な緩徐進行性サブタイプであり、びまん性大細胞型リンパ腫は、最も一般的な侵襲性サブタイプを構成する。がんタンパク質Bcl−2は、非ホジキンB細胞リンパ腫において最初に記載されている。
【0030】
濾胞性リンパ腫の治療は一般に、生物学に基づくまたは併用による化学療法からなる。リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾン(R−CHOP)との併用療法は、リツキシマブ、シクロホスファミド、ビンクリスチンおよびプレドニゾン(RCVP)との併用療法と同様に慣用的に用いられる。リツキシマブ(B細胞の表面上に均一に発現するリンタンパク質、CD20を標的とする)またはフルダラビンとの単剤治療も用いられる。化学療法レジメンにリツキシマブを加えると、応答率を改善し無増悪生存率を高めることができる。
【0031】
放射免疫治療薬、高用量化学療法および幹細胞移植を、不応性または再発性の非ホジキンリンパ腫を治療するために用いることができる。現在、治癒をもたらす承認された治療レジメンはなく、最近の指針では、一次セッティングにおいても、患者を臨床試験との関連で治療することが推奨されている。
【0032】
侵襲性大B細胞リンパ腫を有する患者の一次治療は通常、リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾン(R−CHOP)または投与量が調節されたエトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシンおよびリツキシマブ(DA−EPOCH−R)からなる。
【0033】
大部分のリンパ腫は、最初はこれらの治療のいずれか1つに応答するが、通常腫瘍は再発し、結局不応性となる。患者が受けるレジメンの数が増えるにしたがって、その疾患はより化学療法耐性となる。一次治療に対する平均応答は約75%であり、二次治療に対する平均応答は約60%であり、三次治療に対する平均応答は約50%であり、四次治療に対する平均応答は約約35−40%である。多重の再発性セッティングにおいて単剤で20%に近づく応答率は肯定的と見なされ、さらなる試験を支持するものとなる。
【0034】
現在の化学療法剤は、様々な機序でアポトーシスを誘発することによってその抗腫瘍応答を引き出す。しかし、多くの腫瘍は最終的にこれらの薬剤に対して耐性を示すことになる。Bcl−2およびBcl−Xは、インビトロでの、つい最近ではインビボでの短期生存アッセイにおいて化学療法耐性を付与することが分かっている。これは、Bcl−2およびBcl−Xの機能を抑制することを目的とした改善された治療法を開発することができれば、そうした化学療法耐性を首尾よく克服することができることを示唆している。
【0035】
Bcl−2およびBcl−XなどのBcl−2ファミリータンパク質を標的とするアポトーシス促進薬物は、治療効果のある範囲の濃度で維持するために連続的な、例えば毎日の血漿濃度の補充を提供するレジメンにしたがって投与するのが最もよい。これは、毎日の非経口、例えば静脈内(i.v.)または腹腔内(i.p.)投与によって達成することができる。しかし、毎日の非経口投与は、臨床的状況、特に通院患者においては実際的でないことが多い。例えばがん患者における化学療法薬としてのアポトーシス促進物質の臨床的有用性を増進させるために、良好な経口生物学的利用能を有する剤形が非常に望ましい。そうした剤形およびその経口投与のためのレジメンは、非ホジキンリンパ腫を含む多くのタイプのがんの治療における重要な進歩を代表するものであり、他の化学療法薬との併用療法がより簡単にできるようにすることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0072860号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0027135号明細書
【特許文献3】米国特許第5,645,856号明細書
【特許文献4】米国特許第6,267,985号明細書
【特許文献5】米国特許第6,451,339号明細書
【特許文献6】米国特許第6,309,663号明細書
【特許文献7】米国特許第6,464,987号明細書
【特許文献8】米国特許第5,538,737号明細書
【特許文献9】米国特許第5,536,729号明細書
【特許文献10】米国特許第5,559,121号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2007/0104780号明細書
【非特許文献】
【0037】
【非特許文献1】Hanahan & Weinberg(2000年)Cell 100:57−70頁
【非特許文献2】Brunckoら(2007年)J.Med.Chem.50:641−662頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
(発明の要旨)
主要なBcl−2タンパク質ファミリー阻害剤ABT−737の経口生物学的利用能は、それで処方される担体系によって実質的に影響を受けないことが分かっている。この落胆させる結果にもかかわらず、本発明者らはBcl−2タンパク質ファミリー阻害性組成物の探究を継続してきて、リン脂質および可溶化剤を含む脂質担体系で処方すると、ABT−263は、例えば上記’135公開に記載されている組成物と比べて予想外に高い経口生物学的利用能を示すことを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0039】
したがって、リン脂質成分および薬学的に許容される可溶化成分を含む実質的に非水性の担体の溶液中に、式Iの化合物:
【0040】
【化7】

[式中、Xはクロロまたはフルオロであり;
(1)Xはアゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、1,4−オキサゼパン−4−イル、ピロリジン−1−イル、N(CH、N(CH)(CH(CH)、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−イルまたは2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イルであり;Rは、
【0041】
【化8】

(式中、XはCH、C(CHまたはCHCHであり;
およびXはどちらも水素またはどちらもメチルであり;
はフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である;または
(2)Xはアゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、ピロリジン−1−イル、N(CH)(CH(CH)または7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−イルであり;Rは、
【0042】
【化9】

(式中、X、XおよびXは上記の通りである。)
である;または
(3)Xはモルホリン−4−イルまたはN(CHであり;Rは、
【0043】
【化10】

(式中、Xは上記の通りである。)
である。]
または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物を含む薬物担体系を含み、前記担体が0から約25重量%のエタノールを含む経口で送達可能な医薬組成物を提供する。
【0044】
リン脂質成分および薬学的に許容される可溶化成分を含む実質的に非水性の担体の溶液中に化合物N−(4−(4−((2−(4−クロロフェニル)−5,5−ジメチル−1−シクロヘキサ−1−エン−1−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)−4−(((1R)−3−(モルホリン−4−イル)−1−((フェニルスルファニル)メチル)プロピル)アミノ−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)ベンゼンスルホンアミド(ABT−263)またはその塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物を含む薬物担体系を含み、その担体が0から約25重量%のエタノールを含む経口で送達可能な医薬組成物をさらに提供する。より具体的な実施形態では、その化合物はABT−263遊離塩基またはABT−263ビス塩酸塩(ABT−263ビスHCl)である。
【0045】
抗アポトーシスBcl−2ファミリータンパク質のアポトーシス機能不全および/または過剰発現を特徴とする疾患を有する対象に治療有効量の上記組成物を経口で投与することを含む、前記疾患を治療する方法をさらに提供する。そうした疾患の例には、がんを含む多くの腫瘍性疾患が含まれる。本方法によって治療できるがんの種類の具体的な例は、非ホジキンリンパ腫である。本方法によって治療できるがんの種類の具体的な他の例は、慢性リンパ球性白血病である。本方法によって治療できるがんの種類の具体的なさらに他の例は、例えば小児患者における急性リンパ性白血病である。
【0046】
対象に、リン脂質成分および薬学的に許容される可溶化成分を含む実質的に非水性の担体(この担体は0から約25重量%のエタノールを含む。)の溶液中にABT−263または薬学的に許容されるこの塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物(例えばABT−263遊離塩基またはABT−263ビスHCl)を含む薬物担体系を含む医薬組成物を、約3時間から約7日間の平均投薬間隔で、1日当たり約50から約500mgABT−263に相当する投薬量で投与することを含む、ヒトがん患者、例えば非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病または急性リンパ性白血病を有する患者の血流中で、ABT−263および/または1つもしくは複数のこの代謝産物の治療上有効な血漿濃度を維持するための方法をさらに提供する。
【0047】
上記に提供したもののより具体的な態様を含む本発明の他の実施形態は、以下に示す詳細な説明において見出される、またはそれから明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】絶食および非絶食条件下でのヒトの臨床的単回投与薬物動態(PK)データのグラフ表示である。これは、実施例9で説明するような本発明の組成物で投与されたABT−263についてのPKパラメーター、AUC0−24およびCmaxの用量比例性を示している。
【図2】実施例9で説明するような本発明の組成物で投与されたABT−263の単一の315mg投与(絶食および非絶食)に続くヒト臨床試験における、および315mgの毎日投与(非絶食)に続く定常状態でのABT−263血漿濃度のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本明細書では「薬物担体系」は、この中で均一に分布した少なくとも1つの薬物を有する担体を含む。本発明の組成物において、その薬物は担体中の溶液であり、いくつかの実施形態では、その薬物担体系は本質的に組成物全体を構成する。他の実施形態では、薬物担体系は経口投与に適したカプセル剤皮中にカプセル化される;そうした実施形態では、組成物は薬物担体系およびカプセル剤皮を含む。
【0050】
担体および薬物担体系は一般に液体であるが、いくつかの実施形態では、担体および/または薬物担体系は固体または半固体であってよい。例えば、例示的には、薬物担体系は、担体の融点または流動点を超える温度で薬物を担体中に溶解し、得られた溶液を融点または流動点より低い温度に冷却して固体の薬物担体系を提供することによって調製することができる。それに代わってまたはそれに加えて担体は、本明細書で説明するような薬物の溶液をその中かまたはその上に吸着する固体基材を含むことができる。
【0051】
本発明の組成物は「経口で送達可能」である、すなわち経口投与に適合している。しかし、そうした組成物は、これらに限定されないが、非経口、舌下、頬側、鼻腔内、肺内、局所、経皮、皮内、眼球、耳内、経直腸、経膣、胃内、頭蓋内、滑液嚢内および関節内経路を含む他の投与経路により、薬物を、それを必要とする対象に送達するのに有用であり得る。
【0052】
本明細書では「経口投与」および「経口で投与する」という用語は、対象への口から(p.o.)の投与、すなわち、例えば適切な量の水または他の飲料用液体の助けを受けて組成物が直ちに飲み込まれる投与を指す。「経口投与」は、口腔内投与、例えば舌下もしくは頬側投与、または組成物の直接の飲み込みを伴わない歯周組織などの口腔内組織への局所投与とは区別される。
【0053】
本明細書で有用であるその塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩および代謝産物を含む治療上活性な化合物は一般に、水への低い溶解度、例えば約100μg/ml未満、大抵の場合約30μg/ml未満の溶解度を有する。本発明は、水に本質的に不溶性である、すなわち約10μg/ml未満の溶解度を有する薬物に対して特に有利であり得る。多くの化合物の水溶解度はpH依存性であり;そうした化合物の場合、本明細書で関心のある溶解度は、生理学的に関係のあるpH、例えば約1から約8のpHにおいてであることを理解されよう。したがって、種々の実施形態において、その薬物は、約1から約8の範囲のpHのうちの少なくとも一点において約100μg/ml未満、例えば約30μg/ml未満または約10μg/ml未満の水への溶解度を有する。例示的には、ABT−263はpH2で4μg/ml未満の水への溶解度を有する。
【0054】
一実施形態では、組成物は、上記定義の式Iの化合物またはそうした化合物の薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物を含む。
【0055】
他の実施形態では、その化合物は、Xがフルオロである式Iを有する。
【0056】
さらに他の実施形態では、その化合物は、Xがモルホリン−4−イルである式Iを有する。
【0057】
さらに他の実施形態では、その化合物は、R
【0058】
【化11】

(式中、XはO、CH、C(CHまたはCHCHであり;XおよびXはどちらも水素であるまたはどちらもメチルであり;Xはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である式Iを有する。この実施形態による例では、XはCHまたは(CHであってよい、ならびに/またはXおよびXのそれぞれはメチルであってよい、ならびに/またはXはクロロであってよい。
【0059】
さらに他の実施形態では、その化合物は、R
【0060】
【化12】

(式中、XはO、CH、C(CHまたはCHCHであり;XおよびXはどちらも水素であるまたはどちらもメチルであり;Xはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である式Iを有する。この実施形態による例では、XはCHまたはC(CHであってよい、ならびに/またはXおよびXのそれぞれはメチルであってよい、ならびに/またはXはクロロであってよい。
【0061】
さらに他の実施形態では、その化合物は、Xがフルオロであり、Xがモルホリン−4−イルである式Iを有する。
【0062】
さらに他の実施形態では、その化合物は、Xがフルオロであり、R
【0063】
【化13】

(式中、XはO、CH、C(CHまたはCHCHであり;XおよびXはどちらも水素であるまたはどちらもメチルであり;Xはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である式Iを有する。この実施形態による例では、XはCHまたはC(CHであってよい、ならびに/またはXおよびXのそれぞれはメチルであってよい、ならびに/またはXはクロロであってよい。
【0064】
さらに他の実施形態では、その化合物は、Xがモルホリン−4−イルであり、R
【0065】
【化14】

(式中、XはO、CH、C(CHまたはCHCHであり;XおよびXはどちらも水素であるまたはどちらもメチルであり;Xはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である式Iを有する。この実施形態による例では、XはCHまたは(CHであってよい、ならびに/またはXおよびXのそれぞれはメチルであってよい、ならびに/またはXはクロロであってよい。
【0066】
さらに他の実施形態では、その化合物は、Xがフルオロであり、Xがモルホリン−4−イルであり、R
【0067】
【化15】

(式中、XはO、CH、C(CHまたはCHCHであり;XおよびXはどちらも水素であるまたはどちらもメチルであり;Xはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である式Iを有する。この実施形態による例では、XはCHまたはC(CHであってよい、ならびに/またはXおよびXのそれぞれはメチルであってよい、ならびに/またはXはクロロであってよい。
【0068】
式Iの化合物は、R型またはS型の立体配置で非相称的に置換された炭素原子を含むことができ;そうした化合物は、ラセミ化合物として存在するまたは一方の立体配置が他方より過剰に、例えば少なくとも約85:15の鏡像異性体比で存在することができる。化合物は、実質的に鏡像異性体的に純粋であってよい、例えば、少なくとも約95:5、またはいくつかの場合、少なくとも約98:2もしくは少なくとも約99:1の鏡像異性体比を有してよい。
【0069】
式Iの化合物は、それに代わってまたはそれに加えてZ型もしくはE型の立体配置で炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含むことができる。「Z」という用語は、より大きい置換基がその二重結合の同じ側にある立体配置を意味し、「E」という用語は、より大きい置換基がその二重結合の反対側にある立体配置を意味する。または、化合物はZ型とE型の異性体の混合物として存在することができる。
【0070】
式Iの化合物は、それに代わってまたはそれに加えて、プロトンが1つの原子から他の原子へ移動する互変異性体またはその平衡混合物として存在することができる。互変異性体の例には、ケト−エノール、フェノール−ケト、オキシム−ニトロソ、ニトロ−アシ、イミン−エナミンなどが含まれる。
【0071】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、単独またはその化合物の塩もしくはプロドラッグの形態と一緒に、その親化合物の形態で組成物中に存在する。
【0072】
式Iの化合物は、酸付加塩、塩基付加塩または両性イオンを形成することができる。式Iの化合物の塩は、その化合物の単離またはそれに続く精製の際に作製することができる。酸付加塩は、式Iの化合物と酸の反応によって得られるものである。例えば、式Iの化合物の酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリセロリン酸塩、グルタミン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、パラ−トルエンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩を含む塩を、本発明の組成物において使用することができる。化合物と、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムなどのカチオンの重炭酸塩、炭酸塩、水酸化物またはリン酸塩の反応によって得られるものを含む塩基付加塩も同様に使用することができる。
【0073】
式Iの化合物は通常1個を超えるプロトン化可能な窒素原子を有しており、したがって、化合物の1当量当たり1当量を超える、例えば約1.2から約2、約1.5から約2または約1.8から約2当量の酸と酸付加塩を形成することができる。
【0074】
ABT−263も同様に酸付加塩、塩基付加塩または両性イオンを形成することができる。ABT−263の塩は、その化合物の単離またはそれに続く精製の際に作製することができる。ABT−263と酸の反応によって得られる酸付加塩には、上記に挙げたものが含まれる。上記に挙げたものを含む塩基付加塩も同様に使用することができる。ABT−263は少なくとも2個のプロトン化可能な窒素原子を有しており、したがって、化合物の1当量当たり1当量を超える、例えば約1.2から約2、約1.5から約2または約1.8から約2当量の酸と酸付加塩を形成することができる。
【0075】
例としてABT−263の場合、例えばビス塩酸塩(ビスHCl)およびビス臭化水素酸(ビス−HBr)塩を含むビス塩を形成させることができる。
【0076】
例えば、1047.5g/モルの分子量を有し、次式
【0077】
【化16】

で表されるABT−263ビスHClは、様々な方法、例えば以下に概要を示すことができる方法で調製することができる。
【0078】
ABT−263遊離塩基は、上記に引用した米国特許出願公開第2007/0027135号(その開示全体を参照により本明細書に組み込む。)の実施例1に例示されているようにして調製される。適切な重量のABT−263遊離塩基を酢酸エチルに溶解する。塩酸のエタノール中の溶液を、モルABT−263当たり少なくとも2モルHClと、得られるABT−263ビスHCl塩を結晶化させるのに十分な量(少なくとも約20倍の体積)のEtOHとを提供する量で(例えば80gのEtOH中に約4.3kgのHCl)、ABT−263溶液に加える。溶液を撹拌しながら約45℃に加熱し、種晶をEtOH中のスラリーとして加える。約6時間後、得られたスラリーを約1時間かけて約20℃に冷却し、その温度で約36時間混合する。スラリーをろ過して結晶性固体を回収する。この固体はABT−263ビスHClのエタノール溶媒和物である。この固体を真空下および窒素雰囲気下で緩やかに撹拌しながら約8日間かけて乾燥して、白色の脱溶媒和したABT−263ビスHCl結晶を得る。この物質は、本発明のABT−263ビスHCl製剤を調製するのに適している。
【0079】
「遊離塩基」という用語は、厳密に言えば、その親化合物は両性イオン的であり、したがって常に真の塩基として挙動するわけではないことを認識した上で、本明細書では便宜上親化合物を指すものとして使用する。
【0080】
式Iの化合物およびそうした化合物の調製方法は、上記に引用した米国特許出願公開第2007/0027135号および/または上記に引用した米国特許出願公開第2007/0072860号に開示されている。それぞれを全体として参照により本明細書に組み込む。本明細書で使用する置換基についての用語は、これらの公開特許と厳密に同じように定義される。
【0081】
−NH、−C(O)OH、−OHまたは−SH部分を有する式Iの化合物は、代謝過程においてインビボで取り外されて遊離−NH、−C(O)OH、−OHまたは−SH部分を有する親化合物を放出できるプロドラッグ形成部分がそれと結合していてよい。プロドラッグの塩も用いることができる。
【0082】
理論に拘泥するわけではないが、式Iの化合物の治療効能は、少なくとも一部は、例えばタンパク質のBH3結合溝を占有することによってタンパク質の抗アポトーシス作用を阻害する仕方で、Bcl−2、Bcl−XまたはBcl−wなどのBcl−2ファミリータンパク質と結合する能力に起因していると考えられる。一般に、Bcl−2ファミリータンパク質に対して高い結合親和力を有する、例えば約5nM以下、好ましくは約1nM以下のKを有する化合物を選択するのが望ましいことが分かっている。
【0083】
’135公開に開示されている特定の任意の化合物を含む本明細書で提供する組成物は明らかに、本発明の実施形態として考慮される。
【0084】
より具体的な実施形態では、その組成物は、N−(4−(4−((2−(4−クロロフェニル)−5,5−ジメチル−1−シクロヘキサ−1−エン−1−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)−4−(((1R)−3−(モルホリン−4−イル)−1−((フェニルスルファニル)メチル)プロピル)アミノ−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)ベンゼンスルホンアミド(ABT−263)またはこの塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物を含む。さらに具体的な実施形態では、組成物はABT−263親化合物(すなわち、遊離塩基)またはこの塩、プロドラッグもしくはプロドラッグの塩を含む。さらに具体的な実施形態では、組成物はABT−263遊離塩基またはこの塩を含む。さらに具体的な実施形態では、組成物はABT−263遊離塩基またはABT−263ビスHClを含む。
【0085】
薬物(すなわち、式Iの化合物またはこの塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物)は、その組成物が適切なレジメンにしたがってそれを必要とする対象に投与されたとき、治療上効果的であり得る量で組成物中に存在する。投与量は本明細書では、文脈から別段の必要がない限り、親化合物相当量で表される。一般に、適当な頻度、例えば日に2回から週に1回で投与できる単位用量(単回で投与される量)は、対象の化合物に応じて約10から約1,000mgである。投与頻度が日に1回だけ(q.d.)である場合、単位用量と1日量は同じである。例として、例えば薬物がABT−263である場合、単位用量は一般に約25から約1,000mg、より典型的には約50から約500mg、例えば約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450または約500mgである。組成物が薬物担体系を包むカプセル剤皮を含む場合、単位用量は、単一のカプセルまたは複数のカプセル、最も一般的には1から約10個のカプセルで送達することができる。
【0086】
単位用量が多くなればなるほど、比較的高い濃度の薬物を溶液にすることができる担体を選択することがより望ましい。一般に、薬物担体系中の薬物の濃度は少なくとも約10mg/ml、例えば約10から約500mg/mlであるが、特定のケースでは、それより低い濃度およびそれより高い濃度が許容されるまたはそれを達成することができる。例として、例えば薬物がABT−263である場合、種々の実施形態において、薬物濃度は少なくとも約10mg/ml、例えば約10から約400mg/mlまたは少なくとも約20mg/ml、例えば約20から約200mg/ml、例えば約20、約25、約30、約40、約50、約75、約100、約125、約150もしくは約200mg/mlである。
【0087】
本発明の組成物では、薬物は担体の「溶液中」にある。これは、例えば懸濁液の形態で分散されていてもいなくても、実質的に薬物のすべてが溶液中にある、すなわち、わずかな部分、例えばわずか約2%またはわずか約1%の薬物が固体(例えば、結晶)形態であることを意味すると理解されよう。実際的な表現では、これは、薬物を通常、担体中への溶解限度以下の濃度で処方しなければならないことを意味する。溶解限度は温度に依存する可能性があり、したがって適切な濃度の選択にあたっては、通常の貯蔵、輸送および使用において、組成物がそれに曝される温度の範囲を考慮に入れなければならないことを理解されよう。
【0088】
担体は「実質的に非水性」である、すなわち、水分を含まない、または、実際的な意味で、組成物の性能または特性に本質的に悪影響を及ぼさない程度に十分少ない量しか水分を含まない。一般に、担体は0から約5重量%未満の水分を含む。本明細書で有用な特定の構成要素は少量の水分を、分子または超分子構造の上またはこの中に結合することができ、存在する場合、そうした結合水は、本明細書で定義する担体の「実質的に非水性」の特徴に影響を及ぼさないことを理解されよう。
【0089】
上記したように、担体は、2つの必須成分:リン脂質とこのリン脂質のための薬学的に許容される可溶化剤を含む。エタノールは、場合によって、例えば可溶化剤の成分として存在することができるが、存在しても、担体の約25重量%以下の量である。本明細書でのある(またはその)リン脂質、可溶化剤または他の製剤構成要素への単数での参照は、複数、したがって組合せ、例えば2つ以上のリン脂質または2つ以上の可溶化剤の混合物を本明細書では明らかに考慮することを理解されよう。可溶化剤、または可溶化剤とリン脂質の組合せも薬物を可溶化するが、場合によって担体中に存在する界面活性剤またはアルコール、例えばエタノールなどの他の担体構成要素は、状況によって、薬物の可溶化を増進させることができる。
【0090】
薬学的に許容される任意のリン脂質またはリン脂質の混合物を使用することができる。一般に、そうしたリン脂質は、加水分解してリン酸、脂肪酸、アルコールおよび窒素含有塩基をもたらすリン酸エステルである。薬学的に許容されるリン脂質には、これらに限定されないが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンおよびホスファチジルエタノールアミンが含まれる。一実施形態では、組成物は、例えば天然レシチンから誘導されるホスファチジルコリンを含む。卵黄などの動物源を含む任意のレシチン供給源を用いることができるが、一般に植物源が好ましい。大豆は、本発明で使用するホスファチジルコリンを供給できるレシチンの特に豊富な供給源である。
【0091】
例示的には、リン脂質の適切な量は、担体の重量の約15%から約75%、例えば約30%から約60%であるが、特定の状況では、それより多い量やそれより少ない量を用いることができる。
【0092】
可溶化剤の成分として有用な構成要素は特に限定されないが、それは、ある程度具体的な薬物および酸化防止剤、ならびにそれぞれおよびリン脂質の所望濃度に依存することになる。一実施形態では、可溶化剤は、1つまたは複数のグリコール、1つまたは複数のグリコリドおよび/または1つまたは複数のグリセリド物質を含む。
【0093】
適切なグリコールには、約200から約1,000g/モルの分子量を有するプロピレングリコールおよびポリエチレングリコール(PEG)、例えば約400g/モルの平均分子量を有するPEG−400が含まれる。そうしたグリコールは、比較的高い薬物の溶解度を提供できるが、いくつかの場合、薬物、特に加水分解性、加溶媒分解性または酸化不安定性の傾向を有する薬物は、そうしたグリコールを含む担体中の溶液の場合、ある程度化学分解を示す恐れがある。これは、薬物溶液の経時的な色変化から明らかである。担体のグリコール含有量が高くなればなるほど、化学的に不安定な薬物の分解の傾向が大きくなる。したがって、一実施形態では、1つまたは複数のグリコールは、担体の少なくとも重量で約1%、しかし約50%未満、例えば約30%未満、約20%未満、約15%未満または約10%未満の合計グリコール量で存在する。他の実施形態では、担体はグリコールを実質的に含まない。
【0094】
グリコリドは、1つもしくは複数の有機酸、例えば中鎖から長鎖の脂肪酸でエステル化されたプロピレングリコールまたはPEGなどのグリコールである。適切な例には、例えばAbitec Corp.からのそれぞれCapmul PG−8(商標)、Capmul PG−12(商標)およびCapmul PG−2L(商標)ならびにこれらと実質的に同等の産物などのプロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウレートおよびプロピレングリコールジラウレート産物が含まれる。
【0095】
適切なグリセリド物質には、これらに限定されないが、中鎖から長鎖のモノ−、ジ−およびトリグリセリドが含まれる。本明細書では「中鎖」という用語は、例えばCからC10鎖を含む約6個以上から約12個未満の炭素原子を個別に有するヒドロカルビル鎖を指す。したがって、カプリリルおよびカプリル鎖、例えばカプリル酸/カプリン酸モノ−、ジ−および/またはトリグリセリドを含むグリセリド物質は、本明細書での「中鎖」グリセリド物質の例である。本明細書では「長鎖」という用語は、例えばラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリル、オレイル、リノレイルおよびリノレニル鎖を含む少なくとも約12、例えば約12から約18個の炭素原子を有するヒドロカルビル鎖を指す。グリセリド物質中の中鎖から長鎖のヒドロカルビル基は飽和されていても、モノまたはポリ不飽和であってよい。
【0096】
一実施形態では、担体は、可溶化剤の主成分として、中鎖および/または長鎖トリグリセリド物質を含む。中鎖トリグリセリド物質の適切な例は、例えばAbitec Corp.のCaptex355EP(商標)およびこれと実質的に同等の産物などのカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド産物である。長鎖トリグリセリドの適切な例には、任意の薬学的に許容される植物油、例えばキャノーラ油、ココナツオイル、コーンオイル、綿実油、アマニ油、オリーブ油、ヤシ油、ピーナッツ油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油およびひまわり油およびこれらの油の混合物が含まれる。動物、特に、例えば魚油を含む海産動物由来の油も使用することができる。
【0097】
1つまたは複数のグリセリド物質が可溶化剤の主成分として存在する場合、グリセリドの適切な合計量は、担体の他の成分と一緒に、リン脂質を可溶化するのに有効な量であり、薬物を溶液中に保持するのに効果的な量である。例えば、中鎖および/または長鎖トリグリセリドなどのグリセリド物質は、担体の重量の約5%から約70%、例えば約15%から約60%または約25%から約50%の合計グリセリド量で存在することができるが、特定の状況では、それより多い量やそれより少ない量を用いることができる。一実施形態では、カプセル化された液体は、重量で約7%から約30%、例えば約10%から約25%の中鎖トリグリセリド、ならびに重量で約7%から約30%、例えば約10%から約25%の中鎖モノおよびジグリセリドを含む。
【0098】
望むなら、グリコールまたはグリセリド物質以外の他の可溶化剤を含めることができる。そうした薬剤、例えばジメチルホルムアミド(DMF)およびN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)などのN置換アミド溶媒は、特定の場合、薬物の担体中の溶解限度を増大させ、それによって薬物ローディングを増大させる助けとすることができる。しかし、本明細書で有用な担体は一般に、そうした追加の薬剤なしで、本明細書で興味のある小分子薬物の十分な溶解性を提供する。
【0099】
リン脂質を可溶化するのに十分な量のグリコール、グリコリドまたはグリセリド物質が存在する場合でも、得られる担体溶液および/または薬物担体系は粘性であり、取り扱うのが困難であるまたは取り扱うのに不便である可能性がある。そうした場合、担体中に、許容できる程度に低い粘度を提供するのに有効な量の粘度低下剤を含めるのが望ましいことが分かっている。そうした薬剤の例は、アルコール、特にエタノールである。これは、実質的に水分を含まない形態、例えば99%のエタノール、脱水アルコールUSPまたは無水エタノールで導入することが好ましい。しかし、過度に高いエタノール濃度は一般に避けるべきである。これは、例えば薬物担体系をゼラチンカプセルで投与する場合、特にあてはまる。それは、高いエタノール濃度によってカプセルの機械的破損がもたらされる傾向があるからである。一般に、適切なエタノール量は担体の重量の0%から約25%、例えば約1%から約20%または約3%から約15%である。プロピレングリコールまたはPEGなどのグリコールならびに中鎖モノおよびジグリセリド(例えばカプリル酸/カプリン酸モノおよびジグリセリド)も粘度を低下させる助けとなる。そこでは薬物担体系を、硬質ゼラチンカプセルなどの硬質カプセル中にカプセル化することになる。中鎖モノおよびジグリセリドがこの関連で特に有用である。
【0100】
場合によって、担体は薬学的に許容される非リン脂質界面活性剤をさらに含む。当業者は、本明細書の情報をもとにして、本発明の組成物で使用するための適切な界面活性剤を選択することができよう。そうした界面活性剤は、例えば、消化管の水性環境中でカプセルから放出されたときのカプセル化液体の分散性を高めることを含む様々な機能を提供することができる。したがって、一実施形態では、非リン脂質界面活性剤は、実際の胃腸液または模擬的な胃腸液中におけるカプセル内容物の分散および/または乳化を増進させる分散剤および/または乳化剤である。例として、ポリソルベート(ポリオキシエチレンソルビタンエステル)、例えばポリソルベート80(例えば、UniqemaからTween80(商標)として市販されている)などの界面活性剤を、担体の重量の0%から約30%、例えば約7%から約30%または約10%から約25%の量で含むことができる。いくつかの実施形態では、そうした界面活性剤は、担体の重量の0%から約5%、例えば0%から約2%または0%から約1%の量で含まれる。
【0101】
場合によって、例えば、酸化防止剤、防腐剤、着色剤、香味剤およびこれらの組合せなどの慣用的な製剤構成要素から選択される他の構成要素を担体中に存在させることができる。上記したように、担体は、場合によって、その中またはその上に吸着された薬物溶液を有する固体または半固体基材を含むことができる。そうした基材の例には、ラクトース、デンプン、二酸化ケイ素等およびポリアクリレート、高分子量PEGまたはセルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのポリマーなどの粒子状賦形剤が含まれる。固体溶液が望ましい場合、ワックスなどの高融点構成要素を含めることができる。固体薬物担体系は、場合によって、カプセル化する、または望むなら錠剤の形態で送達することができる。いくつかの実施形態では、薬物担体系は、薬物送達デバイス上に吸着させる、またはその中に含浸させることができる。
【0102】
好都合なことに、本発明の組成物において使用するための適切なリン脂質+可溶化剤の組合せを含む予めブレンドされた産物を入手することができる。そうした産物を含む組成物は本発明に包含されるが、そうした組成物に限定しようとするものではないことを強調しておきたい。予めブレンドされたリン脂質+可溶化剤産物は、本発明の組成物の調製のし易さを向上させるのに有利である。
【0103】
予めブレンドされたリン脂質+可溶化剤産物の例はPhospholipid GmbH、Germanyから市販されているPhosal 50PG(商標)である。これは、重量で50%以上のホスファチジルコリン、せいぜい6%のリソホスファチジルコリン、約35%のプロピレングリコール、約3%のひまわり油からのモノおよびジグリセリド、約2%の大豆脂肪酸、約2%のエタノールならびに約0.2%のパルミチン酸アスコルビルを含む。
【0104】
他の例は、やはりPhospholipid GmbHから市販されているPhosal 53MCT(商標)である。これは、重量で53%以上のホスファチジルコリン、せいぜい6%のリソホスファチジルコリン、約29%の中鎖トリグリセリド、3−6%(一般に約5%)のエタノール、約3%のひまわり油からのモノおよびジグリセリド、約2%のオレイン酸ならびに約0.2%パルミチン酸アスコルビル(参照組成物)を含む。上記組成物または実質的にそれと同等な組成物を有する産物は本明細書では、Phosal 53MCT(商標)という銘柄であっても他のものであってもよいが、通常「ホスファチジルコリン+中鎖トリグリセリド53/29」と称する。本発明の関連で「実質的に同等な組成物」を有する産物というのは、その構成要素リスト中の参照組成物および構成要素の相対量と十分に類似した組成を有していて、本明細書での産物の利用に関する特性において実際的な差を示さないことを意味する。
【0105】
さらに他の例は、Lipoid GmbHから市販されているLipoid S75(商標)である。これは、重量で可溶化系中に70%以上のホスファチジルコリンを含む。これを、中鎖トリグリセリドと、例えば30/70の重量/重量混合物でさらにブレンドして、重量で20%以上のホスファチジルコリン、2−4%ホスファチジルエタノールアミン、せいぜい1.5%リソホスファチジルコリンおよび67−73%中鎖トリグリセリドを含む産物(「Lipoid S75(商標)MCT」)を提供することができる。
【0106】
さらに他の例は、やはりPhospholipid GmbHから市販されているPhosal 50SA+(商標)である。これは、重量でサフラワー油および他の構成要素を含む可溶化系中に50%以上のホスファチジルコリンおよびせいぜい6%リソホスファチジルコリンを含む。
【0107】
これらの予めブレンドされた産物のそれぞれのホスファチジルコリン成分は、大豆レシチンから誘導される。実質的に同等な組成の産物を他の供給業者から得ることができる。
【0108】
Phosal 50PG(商標)、Phosal 53MCT(商標)、Lipoid S75(商標)MCTまたはPhosal 50SA+(商標)などの予めブレンドされた産物は、いくつかの実施形態では、担体系全体(本明細書で提供する酸化防止剤以外)を実質的に構成する。他の実施形態では、追加の構成要素、例えば中鎖モノおよび/もしくはジグリセリド、エタノール(予めブレンドされた産物中に存在していてもよいものに追加して)、ポリソルベート80などの非リン脂質界面活性剤、ポリエチレングリコールならびに/または他の構成要素が存在する。そうした追加の構成要素は、存在する場合、一般にわずかな量しか含まれない。例として、ホスファチジルコリン+中鎖トリグリセリド53/29は、担体の重量の約50%から100%、例えば約80%から100%の量で担体中に含めることができる。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態では、薬物担体系は水相中に分散可能であって、非ゲル化性の実質的に不透明な液体分散液を形成する。当業者はこの特性を、例えば、環境温度で撹拌しながら1部の薬物担体系を約20部の水に加え、ゲル化挙動および得られた分散液の透明性を評価することによって容易に試験することができる。本明細書で示したような相対量で構成要素を有する組成物は一般に、そうした試験に合格する、すなわちゲル化せず、実質的に透明性のない液体分散液を生成することが分かる。「非ゲル化」の実施形態では、その組成物は、ゲル化促進有効量でゲル化促進物質を含まない。ゲル化の挙動を望む場合、そうした薬剤を加えることができる。「実質的に透明性がない」分散液は、水相を、実質的な量のリン脂質成分を有する本発明の組成物と混合することによって形成されると考えられる。しかし、明確にするために、実質的に非水性である本発明の組成物自体は、通常きれいで透明であることを強調しておきたい。この関連で、水性環境に置いたとき、リン脂質は二層および多層状の凝集体を形成する傾向があり、そうした凝集体は一般に、透過光を散乱させるのに十分大きく、それによって不透明な、例えば濁った分散液が得られることを記しておく。ホスファチジルコリン+中鎖トリグリセリド53/29の場合、例えば、水性環境中の分散液は一般に、多層状凝集体だけでなく、粗い水中油型エマルジョンも形成する。多層状凝集体の存在は、偏光の存在下での顕微鏡検査によってしばしば確認することができ、そうした凝集体は複屈折を示す傾向があり、例えば特徴的な「マルタ十字」パターンを発生する。
【0110】
理論に拘泥するわけではないが、水相と混合したときの本発明の組成物の薬物担体系の挙動は、対象に経口投与された後、その組成物が胃腸液とどのように相互作用するかを示していると考えられる。ゲルの生成は、制御放出による薬物の局所送達に有用であり得るが、ゲル化は、胃腸からの効率的な吸収には悪影響を及ぼすと考えられる。このため、水相と混合したとき薬物担体系がゲル化しない上記した本発明の実施形態が一般に好ましい。さらに、やはり理論に拘泥するわけではないが、薬物担体系を水相と混合したとき形成される分散液の不透明性によって証明されるような胃腸液における二層および多層状の凝集体の形成は、経口投与する場合、本発明の特定の組成物の相対的に高い生物学的利用能を提供する重要な要素となり得ると考えられる。
【0111】
薬物がABT−263である例では、担体構成要素およびこの量は、約25℃で少なくとも約10mg/ml、例えば少なくとも約20mg/mlの担体中の薬物溶解度を提供するように選択される。
【0112】
本明細書で「製剤C」と称する本発明の特定の組成物は、90%ホスファチジルコリン+中鎖トリグリセリド53/29および10%脱水アルコールUSP(米国薬局方で示されている基準に適合している。)からなる担体液体中の、25mg/mlの遊離塩基相当濃度での溶液中のABT−263ビスHClからなる。
【0113】
特定の実施形態では、担体構成要素およびこの量は、経口で投与したとき、薬物の標準溶液、例えばPEG−400中の10%DMSOからなる担体中の溶液と比較して高い生体吸収性を提供するように選択される。そうした高い生体吸収性は、例えばAUC、例えばAUC0−24またはAUC0−∞で測定して、より高いCmaxまたは高い生物学的利用能の1つもしくは複数を有する薬物動態(PK)プロファイルによって証明することができる。例示すると、生物学的利用能は、例えば経口投与とi.v.投与との差を考慮に入れて、試験組成物の経口送達についてのAUCを、適切な溶媒中の薬物の静脈内(i.v.)送達についてのAUCのパーセンテージとして算出するパラメーターFを用いてパーセンテージで表すことができる。
【0114】
生物学的利用能は、ヒトまたは適切な任意のモデル種におけるPK試験で判定することができる。この目的には、以下の実施例3に例示されているようなイヌモデルが一般に適している。種々の例示的実施形態において、薬物がABT−263である場合、本発明の組成物は、イヌモデルで約2.5から約10mg/kgの単回用量で絶食または非絶食の動物に投与したとき、少なくとも約30%、少なくとも約35%または少なくとも約40%、最大で約50%またはそれを超える経口生物学的利用能を示す。
【0115】
1つの例では、組成物は、(a)約25℃で少なくとも約20mg/mlのABT−263の溶解度;および(b)イヌモデルにおいて組成物を経口投与したとき、少なくとも約30%の生物学的利用能を示すPKプロファイルを提供するように選択されたABT−263および構成要素を含む担体ならびにこれらの量を含む。
【0116】
他の例では、組成物は、(a)約25℃で少なくとも約25mg/mlのABT−263の溶解度;および(b)イヌモデルにおいて組成物を経口投与したとき、少なくとも約40%の生物学的利用能を示すPKプロファイルを提供するように選択されたABT−263および構成要素を含む担体ならびにこれらの量を含む。
【0117】
上記に引用した米国特許出願公開第2007/0027135号に記載されているPEG−400中の10%DMSOの溶液のそれより、大幅に高い、例えば少なくとも約1.5×または少なくとも約2×高い、例えばABT−263の生物学的利用能を提供する本発明の可能性は、特に、処方を変更しても、ABT−737などのBcl−2タンパク質ファミリー阻害剤の前の世代の生物学的利用能に対して明らかにほとんど影響を及ぼさないという事実を考慮すると、大きな実際的価値のある予想外の利益である。以下の実施例3に例示されるように、90%ホスファチジルコリン+中鎖トリグリセリド53/29および10%のエタノールで処方されたABT−737のラットモデルにおける生物学的利用能はわずか3.3%であり、試験した他の製剤のそれとそれほど変わらなかった。
【0118】
本発明は、本明細書に包含されるまたは記載されている組成物を調製するために用いられる方法に限定されない。適切な任意の製薬方法を用いることができる。例として、本発明の組成物は、挙げられている構成要素を単純に混合して薬物担体系を生成することを含む方法によって調製することができる。その添加の順番は重要でない。しかし、リン脂質成分をその固体状態、例えば大豆レシチンの形態で使用する場合、リン脂質を可溶化剤成分またはこの一部でまず可溶化することが一般に好ましいという点に留意されたい。続いて、もしあれば、担体の他の構成要素および薬物を適度に撹拌しながら単純に混合することによって加えることができる。上記したように、リン脂質および可溶化剤を含む予めブレンドされた産物の使用は、その組成物の調製を簡略にすることができる。そうした産物(この場合ホスファチジルコリン+中鎖トリグリセリド53/29である)を用いる例示的な方法は、以下の実施例1に示されている。場合によって、以下の実施例2に例示するように、薬物担体系を、カプセル充填用のプレミックスとして使用することができる。カプセルの関連において本明細書で用いる「充填(する)」という用語は、所望の量の組成物をカプセル剤皮中に入れることを意味するが、カプセル中の全空間がその組成物で必ず占有されることを意味するととるべきではない。
【0119】
本明細書で概略的にまたは特異性をもって説明する組成物を含む本明細書に包含される組成物は、式Iの化合物または薬学的に許容されるこの塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物である薬物を、対象に経口送達するのに有用である。したがって、そうした薬物を対象に送達するための本発明の方法は、上記したような組成物を経口投与することを含む。
【0120】
対象は、ヒトであってもヒト以外(例えば、家畜、動物園の動物、作業用動物もしくはコンパニオンアニマルまたはモデルとして用いられる実験動物)であってもよいが、重要な実施形態では、対象は、例えば、抗アポトーシスBcl−2ファミリータンパク質のアポトーシス機能不全および/または過剰発現を特徴とする疾患を治療するためにその薬物を必要とするヒト患者である。ヒト対象は、男性であっても女性であってもよく、またいかなる年齢であってもよい。患者は一般に成人であるが、本発明の方法は、小児患者における白血病、例えば急性リンパ性白血病などの小児がんを治療するのに有用であり得る。
【0121】
組成物は通常、治療上有効な1日量の薬物を提供する量で投与される。本明細書では「1日量」という用語は、投与頻度に関係なく、1日当たりに投与される薬物量を意味する。例えば、対象が、150mgの単位用量を日に2回投与される場合、その1日量は300mgである。「1日量」という用語の使用は、指定された投薬量が必ず1日に1回で投与されることを意味するものではないことを理解されよう。しかし、特定の実施形態では、投薬頻度は日に1回(q.d.)であり、この実施形態では、1日量と単位用量は同じことである。
【0122】
治療有効用量を構成するものは、具体的な化合物、対象(対象の種および体重を含む)、治療される疾患(例えば、特定の種類のがん)、疾患の段階および/または重症度、個々の対象の化合物忍容性、化合物が単剤療法で投与されるまたは1つもしくは複数の他の薬物、例えばがんの治療のための他の化学療法薬と併用されるかどうかならびに他の因子に依存する。したがって、1日量は広い範囲内、例えば約10から約1,000mgで変えることができる。特定の状況では、それより多いまたは少ない1日量でも妥当である。本明細書で「治療有効」用量という表示は、本明細書では、単回用量で投与しただけで薬物が治療的に有効であることを必ずしも求めるものではなく;一般に治療効能は、組成物が、適切な投与頻度および投与期間を含むレジメンにしたがって繰り返し投与されることに依ることを理解されよう。選択される1日量は、がんを治療することに関して利益を提供するのに十分であるが、それが、許容できないまたは忍容できない程度に不都合な副作用を引き起こす程多くはないことが非常に好ましい。適切な治療有効用量は、上記したものなどの要素を考慮に入れて、本明細書での開示および本明細書で引用した技術をもとにして過度の実験を用いることなく、専門医が選択することができる。医師は、例えばがん患者に、比較的少ない1日量を用いた治療のコースで開始し、数日間または数週間にわたって用量を漸増して不都合な副作用のリスクを軽減させることができる。
【0123】
例として、ABT−263の適切な用量は一般に、約3時間から約7日間、例えば約8時間から約3日間または約12時間から約2日間の平均投薬間隔で投与して、約25から約1,000mg/日、より典型的には約50から約500mg/日または約200から約400mg/日、例えば約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450または約500mg/日である。大抵の場合、日に1回(q.d.)の投与レジメンが適切である。
【0124】
本明細書では「平均投薬間隔」は、ある時間のスパン、例えば1日または1週間のスパンを、その時間スパンにわたって投与される単位用量の回数で除したものと定義される。例えば、薬物を午前8時頃、正午頃および午後6時頃日に3回投与する場合、その平均投薬間隔は8時間(24時間の時間スパンを3で除して)である。薬物を錠剤またはカプセルなどの離散した剤形として処方する場合、一度に投与される複数個(例えば、2から約10個)の剤形を、平均投薬間隔を定義するための単位用量と考える。
【0125】
いくつかの実施形態では、薬物化合物がABT−263遊離塩基またはABT−263ビスHClの形態のABT−263である場合、1日の投薬量および投薬間隔は、ABT−263の血漿濃度を約0.5から約10μg/mlの範囲に維持するように選択することができる。したがって、そうした実施形態によるABT−263治療の過程の間、定常状態ピーク血漿濃度(Cmax)は一般に約10μg/mlを超えないようにし、定常状態トラフ血漿濃度(Cmin)は一般に約0.5μg/mlを下回らないようにしなければならない。上記した範囲内で、定常状態で約5以下、例えば約3以下のCmax/Cmin比を提供するのに効果的な1日の投薬量および平均投薬間隔を選択ことが望ましいことがさらに分かっている。投薬間隔がより長くなると、より大きいCmax/Cmin比が得られる傾向があることを理解されよう。例として、本発明の方法によれば、定常状態で、約3から約8μg/mlのABT−263Cmaxおよび約1から約5μg/mlのCminを目標とすることができる。CmaxとCminの定常状態値は、例えば、これらに限定されないが、米国食品医薬品局(FDA)などの監督官庁に受け入れられるものを含む標準プロトコルにしたがって実施される、ヒトPK試験で確立することができる。
【0126】
組成物が、カプセル化されていない液体の形態である場合、その組成物をそのまま(neat)飲み込むことができるが、その組成物を、適切な飲み込み可能な液体中にまず希釈すれば、一般に投与はより好都合で快適なものとなる。適切な液体賦形剤には、これらに限定されないが、水、ミルク、果汁(例えば、リンゴジュース、ブドウジュース、オレンジジュース等)、炭酸飲料、経腸栄養剤(enteral nutrition formula)、栄養飲料、茶またはコーヒーなどの任意の水性飲料が含まれる。液体賦形剤を用いる場合、十分撹拌しながら(例えば、振とうおよび/または撹拌により)、組成物を賦形剤と混合して組成物を賦形剤中に完全に分散させ、その後、飲み込む前に賦形剤から組成物が分離しないように直ちに投与しなければならない。望むなら、賦形剤は、スラッシュまたはスムージーなどの部分凍結したスラリーの形態であってよい。例えば約1から約100または約5から約50の好都合な任意の賦形剤体積部当たりの組成物体積部の希釈割合を用いることができる。
【0127】
組成物がカプセルの形態の場合、一般に、飲み込みの過程を助けるための水または他の飲み込み可能な液体の支援を受けて、1個から数個(small plurality)のカプセルをまとめて飲み込むことができる。適切なカプセル剤皮材料には、これらに限定されないが、ゼラチン(硬質ゼラチンカプセルまたは軟質弾性ゼラチンカプセルの形態で)、デンプン、カラギーナンおよびHPMCが含まれる。薬物担体系が液体である場合、一般に軟質弾性ゼラチンカプセルが好ましい。
【0128】
本発明によるABT−263を投与するために、例として、薬物はABT−263遊離塩基またはABT−263ビスHClの形態で医薬組成物中に存在する。上記により完全に定義したような本発明の任意のABT−263組成物を用いることができる。本発明の1つの態様では、投与する組成物は、上記した製剤Cである、または製剤Cと実質的に生物学的に同等である本発明の組成物である。
【0129】
本明細書では「実質的に生物学的に同等である」という用語は、絶食または非絶食条件下でのヒトPKの単回投与または多回投与試験において、実質的に等しいピーク血漿濃度(Cmax)および投与の時間から0から24時間(AUC0−24)または0から無限大(AUC0−∞)で計算した血漿濃度−時間曲線下の面積で測定した実質的に等しい曝露を示すことを意味する。実質的な生物学的同等性について比較しようとする組成物は、ABT−263の場合、遊離塩基相当物として表して、同じ用量(単数または複数)で投与しなければならない。比較するために多回投与試験を用いる場合、それは用いられたCmaxおよびAUCの定常状態値である。本発明の関連では、参照組成物(例えば、上記した製剤C)における対応パラメーターの80%以上で125%以下である場合、試験組成物のCmaxまたはAUCは「実質的に等しい」。
【0130】
本発明の組成物は一般に食物効果(food effect)をわずかしか示さないので、本実施形態による投与は、食物を用いても用いないでも、すなわち非絶食条件下であっても絶食条件下であってもよい。一般に、本発明の組成物は、非絶食患者に投与することが好ましい。
【0131】
本発明の組成物は、単剤療法で、または例えば他の化学療法薬もしくは電離放射線との併用療法で使用するのに適している。本発明の具体的な利点は、1日1回のレジメンで他の経口投与薬物治療を受けている患者に好都合なレジメンである、1日1回の経口投与を可能にすることである。経口投与は、患者自身または患者の自宅の介護者によって容易に実施することができる。これはまた、病院または居住看護施設における患者のための好都合な投与経路でもある。
【0132】
併用療法の例は、本発明の組成物、例えばABT−263を、ボルテゾミド、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、デキサメタゾン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、フルダラビン、ヒドロキシドキソルビシン、イリノテカン、パクリタキセル、ラパマイシン、リツキシマブ、ビンクリスチンなどの1つまたは複数と一緒に含むそうした組成物を、例えばCHOP(シクロホスファミド+ヒドロキシドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾン)、RCVP(リツキシマブ+シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾン)、R−CHOP(リツキシマブ+CHOP)またはDA−EPOCH−R(投与量が調節されたエトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシンおよびリツキシマブ)などの多剤療法と併せて投与することを含む。
【0133】
本発明の組成物、例えばABT−263を含むそうした組成物は、これらに限定されないが、血管形成阻害剤、抗増殖剤、他のアポトーシスプロモーター(例えば、Bcl−xL、Bcl−wおよびBfl−1阻害剤)、細胞死受容体経路の活性化因子、BiTE(二重特異性T細胞結びつけ)抗体、二重可変ドメイン結合タンパク質(DVD)、アポトーシスタンパク質(IAP)の阻害剤、ミクロRNA、マイトジェン活性化細胞外シグナル調節キナーゼ阻害剤、多価結合タンパク質、ポリADP(アデノシン二リン酸)−リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤、阻害的低分子リボ核酸(siRNA)、キナーゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、ポロ様キナーゼ阻害剤、bcr−ablキナーゼ阻害剤、成長因子阻害剤、COX−2阻害剤、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、抗分裂剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、インターカレート抗生物質(intercalating antibiotics)、白金含有化学療法剤、成長因子阻害剤、電離放射線、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、生物反応修飾物質、免疫薬、抗体、ホルモン療法、レチノイド、デルトイド、植物性アルカロイド、プロテアソーム阻害剤、HSP−90阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、プリン類似薬、ピリミジン類似体、MEK阻害剤、CDK阻害剤、ErbB2受容体阻害剤、mTOR阻害剤ならびに他の抗腫瘍剤を含む1つまたは複数の治療薬との併用療法で投与することができる。
【0134】
血管形成阻害剤には、これらに限定されないが、EGFR阻害剤、PDGFR阻害剤、VEGFR阻害剤、TIE2阻害剤、IGFlR阻害剤、マトリクスメタロプロテイナーゼ2(MMP−2)阻害剤、マトリクスメタロプロテイナーゼ9(MMP−9)阻害剤およびトロンボスポンジン類似体が含まれる。
【0135】
EGFR阻害剤の例には、これらに限定されないが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、セツキシマブ、EMD−7200、ABX−EGF、HR3、IgA抗体、TP−38(IVAX)、EGFR融合タンパク質、EGF−ワクチン、抗EGFRイムノリポソームおよびラパチニブが含まれる。
【0136】
PDGFR阻害剤の例には、これらに限定されないが、CP−673451およびCP−868596が含まれる。
【0137】
VEGFR阻害剤の例には、これらに限定されないが、ベバシズマブ、スニチニブ、ソラフェニブ、CP−547632、アキシチニブ、バンデタニブ、AEE788、AZD−2171、VEGFトラップ、バタラニブ、ペガプタニブ、IM862、パゾパニブ、ABT−869およびアンジオザイムが含まれる。
【0138】
ABT−263または本明細書の式Iの化合物以外のBcl−2ファミリータンパク質阻害剤には、これらに限定されないが、AT−101((−)ゴシポール)、Genasense(商標)Bcl−2を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド(G3139またはオブリメルセン)、IPI−194、IPI−565、ABT−737、GX−070(オバトクラックス)などが含まれる。
【0139】
細胞死受容体経路の活性化因子には、これらに限定されないが、TRAIL、抗体または細胞死受容体(例えば、DR4およびDR5)を標的とする他の薬剤、例えばアポマブ、コナツムマブ、ETR2−ST01、GDC0145(レクサツムマブ)、HGS−1029、LBY−135、PRO−1762およびトラスツズマブが含まれる。
【0140】
トロンボスポンジン類似体の例には、これらに限定されないが、TSP−1、ABT−510、ABT−567およびABT−898が含まれる。
【0141】
オーロラキナーゼ阻害剤の例にはこれらに限定されないが、VX−680、AZD−1152およびMLN−8054が含まれる。
【0142】
ポロ様キナーゼ阻害剤の例には、これに限定されないがBI−2536が含まれる。
【0143】
bcr−ablキナーゼ阻害剤の例には、これらに限定されないが、イマチニブおよびダサチニブが含まれる。
【0144】
白金含有薬剤の例には、これらに限定されないが、シスプラチン、カルボプラチン、エプタプラチン、ロバプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチンおよびサトラプラチンが含まれる。
【0145】
mTOR阻害剤の例には、これらに限定されないが、CCI−779、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、RAD001およびAP−23573が含まれる。
【0146】
HSP−90阻害剤の例には、これらに限定されないが、ゲルダナマイシン、ラディシコール、17−AAG、KOS−953、17−DMAG、CNF−101、CNF−1010、17−AAG−nab、NCS−683664、エフングマブ、CNF−2024、PU3、PU24FC1、VER−49009、IPI−504、SNX−2112およびSTA−9090が含まれる。
【0147】
HDAC阻害剤の例には、これらに限定されないが、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、MS−275、バルプロ酸、TSA、LAQ−824、トラポキシンおよびデプシペプチドが含まれる。
【0148】
MEK阻害剤の例には、これらに限定されないが、PD−325901、ARRY−142886、ARRY−438162およびPD−98059が含まれる。
【0149】
CDK阻害剤の例には、これらに限定されないが、フラボピリドール、MCS−5A、CVT−2584、セリシクリブZK−304709、PHA−690509、BMI−1040、GPC−286199、BMS−387032、PD−332991およびAZD−5438が含まれる。
【0150】
COX−2阻害剤の例には、これらに限定されないが、セレコクシブ、パレコキシブ、デラコキシブ、ABT−963、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、BMS−347070、RS57067、NS−398、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、SD−8381、4−メチル−2−(3,4−ジメチルフェニル)−1−(4−スルファモイルフェニル)−1H−ピロール、T−614、JTE−522、S−2474、SVT−2016、CT−3およびSC−58125が含まれる。
【0151】
NSAIDの例には、これらに限定されないが、サルサラート、ジフルニサル、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブメトン、ピロキシカム、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、エトドラク、ケトロラクおよびオキサプロジンが含まれる。
【0152】
ErbB2受容体阻害剤の例には、これらに限定されないが、CP−724714、カネルチニブ、トラスツズマブ、ペツズマブ、TAK−165、イオナファミブ、GW−282974、EKB−569、PI−166、dHER2、APC−8024、抗HER/2neu二重特異性抗体B7.her2IgG3ならびにHER2三官能性二重特異性抗体mAB AR−209およびmAB2B−1が含まれる。
【0153】
アルキル化剤の例には、これらに限定されないが、ナイトロジェンマスタードN−オキシド、シクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、ブスルファン、ミトブロニトール、カルボコン、チオテパ、ラニムスチン、ニムスチン、Cloretazine(商標)(ラロムスチン)、AMD−473、アルトレタミン、AP−5280、アパジコン、ブロスタリシン、ベンダムスチン、カルムスチン、エストラムスチン、ホテムスチン、グルホスファミド、KW−2170、マホスファミド、ミトラクトール、ロムスチン、トレオスルファン、ダカルバジンおよびテモゾロマイドが含まれる。
【0154】
代謝拮抗物質の例には、これらに限定されないが、メトトレキサート、6−メルカプトプリンリボシド、メルカプトプリン、単独かまたはロイコボリンと併用した5−フルオロウラシル(5−FU)、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、シタラビン、シタラビンオクホスファート、エノシタビン、S−1、ペメトレキセド、ゲムシタビン、フルダラビン、5−アザシチジン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、デシタビン、エフロルニチン、エテニルシチジン(ethenylcytidine)、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素、TS−1、メルファラン、ネララビン、ノラトレキシド、ペメトレキセド・二ナトリウム、ペントスタチン、ペリトレキソール、ラルチトレキセド、トリアピン、トリメトレキサート、ビダラビン、ミコフェノール酸、オクホスファート、ペントスタチン、チアゾフリン、リバビリン、EICAR、ヒドロキシ尿素およびデフェロキサミンが含まれる。
【0155】
抗生物質の例には、これらに限定されないが、インターカレート抗生物質、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アムルビシン、アナマイシン、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(リポソームドキソルビシンを含む)、エルサミトルシン、エピルビシン、グラルビシン、イダルビシン、マイトマイシンC、ネモルビシン、ネオカルチノスタチン、ペプロマイシン、ピラルビシン、レベッカマイシン、スチマラマー、ストレプトゾシン、バルルビシン、ジノスタチンおよびこれらの組合せが含まれる。
【0156】
トポイソメラーゼ阻害剤の例には、これらに限定されないが、アクラルビシン、アモナフィド、ベロテカン、カンプトセシン、10−ヒドロキシカンプトセシン、9−アミノ−カンプトセシン、アムサクリン、デクスラゾキサン、ジフロモテカン、イリノテカンHCl、エドテカリン、エピルビシン、エトポシド、エキサテカン、ベカテカリン、ギマテカン、ラルトテカン、オラテシン、BN−80915、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピクサントロン、ルビテカン、ソブゾキサン、SN−38、タフルポシドおよびトポテカンが含まれる。
【0157】
抗体の例にはこれらに限定されないが、リツキシマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、トラスツズマブ、CD40特異的抗体およびIGF IR−特異的抗体、chTNT−1/B、デノスマブ、エドレコロマブ、WX G250、ザノリムマブ、リンツズマブならびにチシリムマブが含まれる。
【0158】
ホルモン療法の例には、これらに限定されないが、炭酸セベラマー、リロスタン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、モドラスタン、エキセメスタン、酢酸ロイプロリド、ブセレリン、セトロレリクス、デスロレリン、ヒストレリン、アナストロゾール、フォスレリン、ゴセレリン、デガレリクス、ドキセルカルシフェロール、ファドロゾール、フォルメスタン、タモキシフェン、アルゾキシフェン、ビカルタミド、アバレリックス、トリプトレリン、フィナステライド、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、トリロスタン、ラソフォキシフェン、レトロゾール、フルタミド、メゲストロール、ミフェプリストン、ニルタミド、デキサメタゾン、プレドニゾンおよび他のグルココルチコイドが含まれる。
【0159】
レチノイドまたはデルトイドの例には、これらに限定されないが、セオカルシトール、レキサカルシトール、フェンレチニド、アリレチノイン、トレチノイン、ベキサロテンおよびLGD−1550が含まれる。
【0160】
植物性アルカロイドの例には、これらに限定されないが、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビンが含まれる。
【0161】
プロテアソーム阻害剤の例には、これらに限定されないが、ボルテゾミブ、MG−132、NPI−0052およびPR−171が含まれる。
【0162】
免疫薬の例には、これらに限定されないが、インターフェロンおよび他の多くの免疫増強剤が含まれる。インターフェロンには、インターフェロンα、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンβ、インターフェロンγ−1a、インターフェロンγ−1b、インターフェロンγ−n1およびこれらの組合せが含まれる。他の薬剤には、フィルグラスチム、レンチナン、シゾフィラン、BCG生菌(BCG live)、ウベニメクス、WF−10(テトラクロロデカオキシドすなわちTCDO)、アルデスロイキン、アレムツズマブ、BAM−002、ダカルバジン、ダクリズマブ、デニロイキン、ゲムツズマブオゾガマイシン、イブリツモマブ、イミキモド、レノグラスチム、メラノーマワクチン、モルグラモスチム、サルガラモスチム、タソネルミン、テクロイキン、チマラシン、トシツモマブ、Lorus Pharmaceuticalsの免疫治療薬Virulizin(商標)、Z−100(丸山ワクチン(specific substance of Maruyama)すなわちSSM)、Zevalin(商標)(90Y−イブリツモマブチウキセタン)、エピラツズマブ、ミツモマブ、オレゴボマブ、ペムツモマブ、Provenge(商標)(シプロイセル−T)、テセロイキン、Therocys(商標)(Bacillus Calmette−Guerin)、細胞傷害性リンパ球抗原4(CTLA4)抗体およびMDX−010などのCTLA4を遮断できる薬剤が含まれる。
【0163】
生物反応修飾物質の例は、組織細胞の生存、成長または分化などの生体の防御機序または生物学的応答を修飾してそれらが抗腫瘍活性をもつように仕向ける薬剤である。そうした薬剤には、これらに限定されないが、クレスチン、レンチナン、シゾフラン、ピシバニール、PF−3512676およびウベニメクスが含まれる。
【0164】
ピリミジン類似体の例には、これらに限定されないが、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、ドキシフルリジン、ラルチトレキセド、シタラビン、シトシンアラビノシド、フルダラビン、トリアセチルウリジン、トロキサシタビンおよびゲムシタビンが含まれる。
【0165】
プリン類似薬の例には、これらに限定されないが、メルカプトプリンおよびチオグアニンが含まれる。
【0166】
抗分裂剤の例には、これらに限定されないが、N−(2−((4−ヒドロキシフェニル)アミノ)ピリジン−3−イル)−4−メトキシベンゼンスルホンアミド、パクリタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、エポチロンD、PNU−100940、バタブリン、イクサベピロン、パツピロン、XRP−9881、ビンフルニンおよびZK−EPO(合成エポチロン)が含まれる。
【0167】
放射線治療の例には、これらに限定されないが、外照射治療(XBRT)、遠隔照射治療、近接照射治療、密封線源放射線治療および非密封線源放射線治療が含まれる。
【0168】
BiTE抗体は、2つの細胞に同時に結合することによって、T細胞ががん細胞を攻撃するようにする二重特異性抗体である。次いで、T細胞は標的がん細胞を攻撃する。BiTE抗体の例には、これらに限定されないが、アデカツムマブ(Micromet MT201)、ブリナツモマブ(Micromet MT103)などが含まれる。理論に拘泥するわけではないが、それによってT細胞が標的がん細胞のアポトーシスを引き出す機序の1つは、パーフォリンおよびグランザイムBを含む細胞傷害性顆粒成分のエクソサイトーシスによるものである。この関連で、Bcl−2は、パーフォリンとグランザイムBの両方によるアポトーシスの誘発を弱めることが分かっている。これらのデータは、がん細胞を標的とした場合、Bcl−の阻害はT細胞によって引き出される細胞傷害効果を増進させることができることを示唆している(Suttonら(1997年)J.Immunol.158:5783−5790頁)。
【0169】
SiRNAは、内在性RNA塩基または化学修飾ヌクレオチドを有する分子である。その修飾は細胞活性を消失させることはなく、むしろ高い安定性および/または高い細胞効能を付与する。化学修飾の例には、ホスホロチオエート基、2’−デオキシヌクレオチド、2’−OCH含有リボヌクレオチド、2’−F−リボヌクレオチド、2’−メトキシエチルリボヌクレオチド、これらの組合せなどが含まれる。siRNAは、様々な長さ(例えば、10−200bp)および構造(例えば、ヘアピン、一本鎖/二本鎖、バルジ、切れ目/ギャップ、ミスマッチ)を有することができ、細胞中で処理されて活性な遺伝子発現抑制を提供する。二本鎖siRNA(dsRNA)は、それぞれ鎖(平滑断端)または非対称末端(オーバーハング)上に同数のヌクレオチドを有することができる。1−2個のヌクレオチドのオーバーハングはセンス鎖および/またはアンチセンス鎖上に存在することができ、また所与の鎖の5’−および/または3’−末端上に存在することもできる。例えば、Mcl−1を標的とするsiRNAは、ABT−263の活性を増進させることが分かっている(Tseら(2008年)Cancer Res.68:3421−3428頁およびこの参照文献)。
【0170】
多価結合タンパク質は、2つ以上の抗原結合部位を含む結合タンパク質である。多価結合タンパク質は、3つ以上の抗原結合部位をもつように操作され、一般に天然に存在しない抗体である。「多特異性結合タンパク質」という用語は、2つ以上の関係するまたは関係しない標的を結合できる結合タンパク質を意味する。二重可変ドメイン(DVD)結合タンパク質は、2つ以上の抗原結合部位を含む四価または多価の結合タンパク質である。そうしたDVDは、単一特異性(すなわち、1つの抗原を結合することができる)または多特異性(すなわち、2つ以上の抗原を結合することができる)であってよい。2つの重鎖DVDポリペプチドおよび2つの軽鎖DVDポリペプチドを含むDVD結合タンパク質はDVD Igと称される。DVD Igの各半分は、重鎖DVDポリペプチド、軽鎖DVDポリペプチドおよび2つの抗原結合部位を含む。各結合部位は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、抗原結合部位当たり合計6つのCDRが抗原結合に関与している。
【0171】
PARP阻害剤には、これらに限定されないが、ABT−888、オラパリブ、KU−59436、AZD−2281、AG−014699、BSI−201、BGP−15、INO−1001、ONO−2231などが含まれる。
【0172】
本発明の組成物、例えばABT−263を含む組成物などは、追加的または代替的に、ABT−100、N−アセチルコルヒノール−O−ホスフェート、アシトレチン、AE−941、アグリコンプロトパナキサジオール、アルグラビン、三酸化ヒ素、AS04アジュバント吸着HPVワクチン、L−アスパラギナーゼ、アタメスタン、アトラセンタン、AVE−8062、ボセンタン、カンフォスファミド、Canvaxin(商標)、カツマキソマブ、CeaVac(商標)、セルモロイキン、コンブレスタチンA4P、コンツスジェンラデノベク、Cotara(商標)、シプロテロン、デオキシコホルマイシン、デクスラゾキサン、N,N−ジエチル−2−(4−(フェニルメチル)フェノキシ)エタナミン、5,6−ジメチルキサンテノン−4−酢酸、ドコサヘキサエン酸/パクリタキセル、ディスコデルモリド、エファプロキシラル、エンザスタウリン、エポチロンB、エチニルウラシル、エクシスリンド、ファリマレブ、Gastrimmune(商標)、GMKワクチン、GV AX(商標)、ハロフジノン、ヒスタミン、ヒドロキシカルバミド、イバンドロン酸、イブリツモマブチウキセタン、IL−13−PE38、イナリマレブ、インターロイキン4、KSB−311、ランレオチド、レナリドミド、ロナファーニブ、ロバスタチン、5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸塩、ミファムルチド、ミルテホシン、モテクサフィン、オブリメルセン、OncoVAX(商標)、Osidem(商標)、パクリタキセル・アルブミン安定化小粒子製剤、パクリタキセルポリグルメクス、パミドロネート、パニツムマブ、ペグインターフェロンα、ペグアスパルガーゼ、フェノキソジオール、ポリ(I)−ポリ(C12U)、プロカルバジン、ランピルナーゼ、レビマスタット、組み換え四価HPVワクチン、スクアラミン、スタウロスポリン、STn−KLHワクチン、T4エンドヌクラーゼV、タザロテン、6,6’,7,12−テトラメトキシ−2,2’−ジメチル−1β−ベルバマン、サリドマイド、TNFerade(商標)、131I−トシツモマブ、トラベクテジン、トリアゾン、腫瘍壊死因子、Ukrain(商標)、ワクシニア−MUC−1ワクチン、L−バリン−L−ボロプロリン、Vitaxin(商標)、ビテスペン、ゾレドロン酸およびゾルビシンから選択される1つまたは複数の抗腫瘍剤と併用療法で投与することができる。
【0173】
一実施形態では、本発明の組成物、例えばABT−263を含む組成物を、その間に抗アポトーシスBcl−2タンパク質、抗アポトーシスBcl−Xタンパク質および抗アポトーシスBcl−wタンパク質の1つまたは複数を過剰発現する疾患を治療するために、それを必要とする対象に治療有効量で投与する。
【0174】
他の実施形態では、本発明の組成物、例えばABT−263を含む組成物を、異常な細胞増殖および/または調節不全アポトーシスの疾患を治療するために、それを必要とする対象に治療有効量で投与する。
【0175】
そうした疾患の例には、これらに限定されないが、がん、中皮腫、膀胱がん、膵臓がん、皮膚がん、頭部または頸部のがん、皮膚もしくは眼球内のメラノーマ、卵巣がん、乳がん、子宮がん、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、骨がん、結腸がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん、胃腸(胃、結腸直腸および/または十二指腸)がん、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ性白血病、食道がん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、精巣がん、肝細胞(肝臓および/または胆管)がん、原発性もしくは続発性中枢神経系腫瘍、原発性もしくは続発性脳腫瘍、ホジキン病、慢性もしくは急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、T細胞もしくはB細胞由来のリンパ性悪性疾患、メラノーマ、多発性骨髄腫、口腔がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、小細胞肺がん、腎臓および/または尿管のがん、腎細胞癌、腎盂の癌腫、中枢神経系の新生物、原発性中枢神経系リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、下垂体腺腫、副腎皮質がん、胆嚢がん、脾臓のがん、胆管癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫またはこれらの組合せが含まれる。
【0176】
より具体的な実施形態では、本発明の組成物、例えばABT−263を含む組成物を、膀胱がん、脳腫瘍、乳がん、骨髄がん、子宮頸がん、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ性白血病、結腸直腸がん、食道がん、肝細胞がん、リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、T細胞もしくはB細胞由来のリンパ性悪性疾患、メラノーマ、骨髄性白血病、骨髄腫、口腔がん、卵巣がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、小細胞肺がんまたは脾臓がんを治療するために、それを必要とする対象に治療有効量で投与する。
【0177】
これらの実施形態のいずれかによれば、その組成物を、単剤療法または1つもしくは複数の追加の治療薬との併用療法で投与することができる。
【0178】
例えば、対象における中皮腫、膀胱がん、膵臓がん、皮膚がん、頭部または頸部のがん、皮膚もしくは眼球内のメラノーマ、卵巣がん、乳がん、子宮がん、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、骨がん、結腸がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん、胃腸(胃、結腸直腸および/または十二指腸)がん、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ性白血病、食道がん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、精巣がん、肝細胞(肝臓および/または胆管)がん、原発性もしくは続発性中枢神経系腫瘍、原発性もしくは続発性脳腫瘍、ホジキン病、慢性もしくは急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、T細胞もしくはB細胞由来のリンパ性悪性疾患、メラノーマ、多発性骨髄腫、口腔がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、小細胞肺がん、腎臓および/または尿管のがん、腎細胞癌、腎盂の癌腫、中枢神経系の新生物、原発性中枢神経系リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、下垂体腺腫、副腎皮質がん、胆嚢がん、脾臓のがん、胆管癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫またはこれらの組合せを治療する方法は、治療有効量の(a)本発明の組成物、例えばABT−263を含む組成物および(b)エトポシド、ビンクリスチン、CHOP、リツキシマブ、ラパマイシン、R−CHOP、RCVP、DA−EPOCH−Rまたはボルテゾミブの1つもしくは複数をその対象に投与することを含む。
【0179】
特定の実施形態では、B細胞リンパ腫または非ホジキンリンパ腫などのリンパ性悪性疾患を治療するために、本発明の組成物、例えばABT−263を含む組成物を、単剤療法または治療有効量のエトポシド、ビンクリスチン、CHOP、リツキシマブ、ラパマイシン、R−CHOP、RCVP、DA−EPOCH−Rまたはボルテゾミブとの併用療法でそれを必要とする対象に治療有効量で投与する。
【0180】
他の特定の実施形態では、慢性リンパ球性白血病または急性リンパ性白血病を治療するために、本発明の組成物、例えばABT−263を含む組成物を、単剤療法かまたは治療有効量のエトポシド、ビンクリスチン、CHOP、リツキシマブ、ラパマイシン、R−CHOP、RCVP、DA−EPOCH−Rまたはボルテゾミブとの併用療法でそれを必要とする対象に治療有効量で投与する。
【0181】
本発明は、対象に、リン脂質成分および薬学的に許容される可溶化成分を含む実質的に非水性の担体の溶液中にABT−263または薬学的に許容されるこの塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物を含む薬物担体系を含む医薬組成物を、約3時間から約7日間の平均投薬間隔で、1日当たり約50から約500mgABT−263に相当する投薬量で投与することを含む、ヒトがん患者の血流中で、ABT−263および/または1つまたは複数のその代謝産物の治療上有効な血漿濃度を保持するための方法、も提供する。
【0182】
治療上有効な血漿濃度を構成するものは、とりわけ、患者が罹っている具体的ながん、そのがんの段階、重症度および悪性度ならびに求められる結果(例えば、安定化、腫瘍増殖の低減、腫瘍の縮小、転移のリスク低下等)に依存する。血漿濃度はがんを治療することに関して利益を提供するのに十分であるが、それが、許容できないまたは忍容できない程度に不都合な副作用を引き起こす程多くはないことが非常に好ましい。
【0183】
がん全般および特に非ホジキンリンパ腫などのリンパ性悪性疾患の治療のため、ABT−263の血漿濃度は、大抵の場合約0.5から約10μg/mlの範囲に維持すべきである。したがって、ABT−263治療の過程で、定常状態Cmaxは一般に約10μg/mlを超えず、定常状態Cminは一般に約0.5μg/mlを下回らないようにしなければならない。上記に示した範囲内で、定常状態で約5以下、例えば約3以下のCmax/Cmin比を提供するのに効果的な1日投薬量および平均投薬間隔を選択するのが望ましいこともさらに分かる。投薬間隔が長くなると、より高いCmax/Cmin比がもたらされる傾向があることを理解されよう。例として、本発明の方法により、定常状態で、約3から約8μg/mlのABT−263Cmaxおよび約1から約5μg/mlのCminを目標とすることができる。
【0184】
本実施形態によれば、治療上有効なABT−263の血漿中濃度を維持するのに効果的な1日投薬量は約50から約500mgである。大抵の場合、適切な1日投薬量は約200から約400mgである。例示的には、1日投薬量は例えば約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450または約500mgであってよい。
【0185】
本実施形態によれば、治療上有効なABT−263の血漿中濃度を維持するのに効果的な平均投薬間隔は約3時間から約7日間である。大抵の場合、適切な平均投薬間隔は約8時間から約3日間または約12時間から約2日間である。1日1回の(q.d.)投与レジメンがしばしば適している。
【0186】
本発明の実施形態のため、ABT−263は、例示的には、ABT−263遊離塩基またはABT−263ビス−HClの形態で医薬組成物中に存在する。上記により完全に定義したような本発明の任意のABT−263組成物を用いることができる。本発明の1つの態様では、投与する組成物は、(a)90重量%のリン脂質/中鎖トリグリセリド53/29および10重量%の脱水アルコールUSPからなる担体中のABT−263ビスHClの25mg/ml溶液から本質的になる、またはそれからなるプロトタイプ製剤、または、(b)プロトタイプ製剤に対して本明細書で定義したように実質的に生物学的に同等である本発明の組成物である。
【0187】
他の実施形態と同様に、本実施形態による投与は、食物を用いても用いないでも、すなわち非絶食条件下であっても絶食条件下であってもよい。一般に、本発明の組成物は、非絶食患者に投与することが好ましい。
【0188】
本発明に関連する他の情報は、がん研究オンライン(Cancer Research Online)(cancerres.aacrjournals.org/)で入手できる最近公開されたTseらの論文(2008年)Cancer Res.68:3421−3428頁およびこの補足データから得ることができる。この論文およびその補足データの全体を参照により本明細書に組み込む。
【0189】
(実施例)
以下の実施例は単なる例示に過ぎず、本開示を限定するものではまったくない。実施例で用いる市販の構成要素は、他の供給業者からのそれに匹敵する構成要素で置き換えることができる。Phosal 50PG(商標)、Phosal 53MCT(商標)またはPhosal 50SA+(商標)などの予めブレンドされた産物が以下に示されている場合、望むなら、予めブレンドされた産物の形態でなく、その成分を個別に加えることができる。Phosal 50PG(商標)、Phosal 53MCT(商標)およびPhosal 50SA+(商標)のそれぞれの組成は上記に示されている。実施例において使用する他の市販の構成要素には:
Abitec Corp.のCapmul PG−8(商標):プロピレングリコールモノカプリレート;
BASFのCremophor EL(商標):ポリオキシル35キャスターオイル;
Sasol GmbHのImwitor380(商標):グリセリルココエート/シトレート/ラクテート;
GattefosseのLabrasol(商標):カプリロカプリルポリオキシグリセリド;
UniqemaのTween20(商標):ポリソルベート20界面活性剤;
UniqemaのTween80(商標):ポリソルベート80界面活性剤
が含まれる。
【0190】
別段の明確な表示のない限り、実施例において与えられる濃度および用量を含むすべてのABT−263量は、遊離塩基相当用量として表される。ABT−263がビスHCl塩として投与される場合、1.076mgのABT−263ビスHClは1mgのABT−263遊離塩基相当物を提供する。
【実施例1】
【0191】
例示的な液体医薬組成物の調製
アルコール、脱水USP(エタノール)を、30mlの琥珀色の瓶中の粉末形態のABT−263遊離塩基に加えてその粉末を分散させる。次いで、Phosal 53MCT(商標)を、撹拌しながら、ABT−263が完全に溶解するまで加える。ABT−263、エタノールおよびPhosal 53MCT(商標)の量は、Phosal 53MCT(商標)/エタノール10:1担体中に25mg/mlの濃度でABT−263の溶液が得られるように選択する。
【0192】
代替法として、ABT−263遊離塩基の代わりにABT−263ビスHClを使用することができる。0.25gのABT−263遊離塩基相当物をもたらすABT−263ビスHClの量は0.269gである。
【実施例2】
【0193】
例示的なカプセル化医薬組成物の調製
実施例1で調製した溶液を、カプセル化医薬組成物調製用のプレミックスとして使用する。軟質の弾性ゼラチンカプセルを個別に1mlのプレミックスで充填し、カプセル当たり25mgのABT−263を得る。カプセルには、注射器/注射針の組合せを用いて充填し、続いて熱融着させる。
【実施例3】
【0194】
ラットでのABT−737製剤のPK試験
ABT−737溶液製剤の単回投与薬物動態を、SDラット(Charles River;n=3)に5mg/kgの経口用量を強制投与した後、評価した。連続したヘパリン添加血液試料を、投与前ならびに投与後0.25、0.5、1、1.5、2、3、4、6、8および24時間で各動物の尾静脈から得た。血漿を遠心分離(約4℃、13,000rpmで4分間)により分離し、ABT−737を、アセトニトリルを用いてタンパク質沈殿法により単離した。
【0195】
0.7ml/分の流量でアセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸移動相(体積で50:50)を用いた50×3mm Keystone Betasil CN(商標)5μmカラムにより、ABT−737および内部標準を互いに、および共抽出された汚染物質から分離した。分析を、加熱噴霧装置インターフェースを備えたSciex API3000(商標)生体分子質量分析器で実施した。ABT−737および内部標準のピーク面積をSciex MacQuan(商標)ソフトウェアを用いて決定した。各試料の血漿薬物濃度を、スパイクした血漿標準品のピーク面積比(親/内部標準)対濃度の最小二乗線形回帰分析(非計量で)により算出した。血漿濃度データを、WinNonlin3(Pharsight)を用いた多重指数関数曲線適合法にかけた。
【0196】
投与後0からt時間(最後に血漿濃度を測定した時間)での血漿濃度−時間曲線下の面積(AUC0−t)を、血漿濃度−時間プロファイルについて線形台形公式を用いて算出した。最終測定血漿濃度(C)を最終消失速度定数(β)で除して決定された無限大まで外挿した残りの面積を、AUC0−tに加えて総曲線下面積(AUC0−∞)を得た。生物学的利用能を、軽いエーテル麻酔下でゆっくりとしたボーラス投与により頸静脈に投与した、i.v.(静脈内)投薬により得られた対応値で除した経口投薬量から用量正規化AUC0−∞として算出した。
【0197】
データ(3匹の動物からの平均)を表1に示す。これらのデータは本発明の例示ではないが、比較するために含めている。ABT−737は次式を有する化合物である。
【0198】
【化17】

これは、式Iに極めて類似しているが、それと一致するものではない。
【0199】
【表1】

【0200】
化合物をその中に入れて投与される担体に関係なく、ラットでのABT−737の生物学的利用能は極めて低い。
【実施例4】
【0201】
ラットでのABT−263遊離塩基製剤のPK試験
ABT−263(遊離塩基)溶液製剤の単回投与薬物動態を、絶食させたSDラット(Charles River;n=3)に5mg/kgの経口用量を強制投与した後、評価した。連続したヘパリン添加血液試料を、投与前ならびに投与後0.25、0.5、1、1.5、2、3、4、6、8および24時間で各動物の尾静脈から得た。血漿を遠心分離(約4℃、13,000rpmで4分間)により分離し、ABT−263を、アセトニトリルを用いてタンパク質沈殿法により単離した。血漿中のABT−263濃度を決定し、PKパラメーターを、実施例3のABT−737と同様にして算出した。
【0202】
データ(3匹の動物からの平均)を表2に示す。PEG400/DMSO製剤(上記に引用した米国特許出願公開第2007/0027135号に報告されている製剤と類似している)からのデータは本発明の例示ではないが、比較するために含めている。
【0203】
【表2】

ラットでのABT−263組成物の生物学的利用能は、ABT−737組成物(実施例3)のそれよりずっと高かった。担体としてPEG400、Phosal 50PGおよびDMSOの60:30:10混合物を有する組成物は、このラットモデルで、担体としてPEG400とDMSOの90:10混合物を有する先に報告されている組成物より高い生物学的利用能を示した。
【実施例5】
【0204】
イヌにおけるABT−263遊離塩基製剤のPK試験
ABT−263(遊離塩基)溶液製剤の単回投与薬物動態を、絶食ビーグル犬(n=3)に2.5、5または10mg/kgの経口用量を強制投与し、次いで10mlの水を投与した後、評価した。連続したヘパリン添加血液試料を、投与前ならびに投与後0.25、0.5、1、1.5、2、3、4、6、9、12、15および24時間で各動物の頸静脈から得た。血漿を遠心分離(約4℃、2,000rpmで10分間)により分離し、ABT−263を、アセトニトリルを用いてタンパク質沈殿法により単離した。血漿中のABT−263濃度を決定し、PKパラメーターを、実施例3と同様にして算出した。生物学的利用能を、ゆっくりとしたボーラス投与により橈側皮静脈に投与した、i.v.(静脈内)投薬により得られた対応値で除した経口投薬量から用量正規化AUC0−∞として算出した。
【0205】
データ(3匹の動物からの平均)を表3に示す。PEG400/DMSO製剤(上記に引用した米国特許出願公開第2007/0027135号に報告されている製剤と類似している)からのデータは本発明の例示ではないが、比較するために含めている。
【0206】
【表3】

絶食条件下で、このイヌモデルにおけるABT−263の生物学的利用能は、PEG400/Phosal 50PG(商標)/DMSO(60:30:10)担体で投与した場合、PEG400/DMSO(90:10)担体で投与した場合より、同用量で、少なくとも2×高い。
【実施例6】
【0207】
イヌにおけるABT−263遊離塩基製剤の食物効果PK試験
食物効果を評価するため、本発明のABT−263(遊離塩基)溶液製剤の単回投与薬物動態を、絶食および非絶食ビーグル犬(n=3)に10mg/kgの経口用量を強制投与し、次いで10mlの水を投与した後、評価した。血液試料を取り、血漿を分離させ、ABT−263を単離し、血漿中のABT−263濃度を決定し、PKパラメーターを実施例5と同様にして算出した。
【0208】
データ(3匹の動物からの平均)を表4に示す。
【0209】
【表4】

PEG400/Phosal 50PG(商標)/DMSO(60:30:10)担体中で投与した場合、ABT−263の生物学的利用能は、このイヌ試験において肯定的な食物効果を示し、非絶食動物は、絶食動物より高い生物学的利用能を示した。しかし、絶食動物でも、生物学的利用能は>30%であった。ABT−263を非絶食対象に投与することの利益は、生物学的利用能の適度の改善だけでなく、対象間(subject-to-subject)での変動性の減少にあると考えられる。
【実施例7】
【0210】
イヌにおけるABT−263遊離塩基製剤のPK試験
ABT−263(遊離塩基)溶液製剤の単回投与薬物動態を、非絶食ビーグル犬(n=3)に50mg/イヌ経口用量を、約100mg/mlのABT−263を含む液体充填カプセルの形態で経口投与した後、評価した。さらに1つの製剤を非絶食ビーグル犬(n=4)において20mg/kg経口用量で試験した。血液試料を取り、血漿を分離させ、ABT−263を単離し、血漿中のABT−263濃度を決定し、PKパラメーターを実施例5と同様にして算出した。
【0211】
データ(3または4匹の動物からの平均)を表5に示す。
【0212】
【表5】

Phosal 50PG(商標)またはPhosal 53MCT(商標)を含む担体を有する本発明の組成物は、このイヌモデルにおいて、異なる担体を有する比較組成物より実質的に高いABT−263生物学的利用能を示した。
【実施例8】
【0213】
イヌにおけるABT−263ビスHCl製剤のPK試験
ABT−263ビス−HCl溶液製剤の単回投与薬物動態を、非絶食ビーグル犬(n=3)に46.5または50mg/イヌ経口用量を、約100mg/mlのABT−263を含む液体充填カプセルの形態で経口投与した後、評価した。血液試料を取り、血漿を分離させ、ABT−263を単離し、血漿中のABT−263濃度を決定し、PKパラメーターを実施例5と同様にして算出した。
【0214】
データ(3匹の動物からの平均)を表6に示す。
【0215】
【表6】

Phosal 53MCT(商標)を含む担体を有する本発明の組成物はこの試験で、すべて、許容できるABT−263生物学的利用能を示した。
【実施例9】
【0216】
ABT−263ビスHCl製剤の第1相臨床PK試験
無作為化、プラセボ対照、多施設、並行群試験を、約40名のヒト対象において用量を漸増させて、とりわけ、本発明のABT−263製剤の経口生物学的利用能に対する食物効果を含むPKプロファイルを評価するために実施した。試験した製剤は、Phosal 53MCT(商標)と脱水アルコールUSP(エタノール)の90:10混合液中に25mg/mlの濃度で溶解したABT−263ビスHCl粉末から調製した本明細書で定義の製剤Cであった。製剤は経口投与直前、またはその少し前(約1ヵ月以内)に調製した。
【0217】
対象は、参加への以下の試験対象基準のすべてに適合した:
・約18歳以上;
・WHO分類スキームで規定されているリンパ性悪性疾患の組織学的に実証された診断;
・リンパ性悪性疾患のための少なくとも1つの先行化学治療処置レジメンを受けており、対象の疾患が不応性であるまたは対象がその治療に続く進行性疾患を経験している;
・70歳を超えている場合、最初の試験薬物投与の前28日間以内で、硬膜下または硬膜外の血腫に対して陰性である実証された脳撮像(MRIまたはCT)を有している;
・ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)パフォーマンススコア<1(以下の表7を参照されたい。);
・SSRI抗うつ剤を投与されている場合、最初の試験薬物投与の前少なくとも21日間、安定した投与を受けている;
・骨髄ANC(絶対好中球数)≧1,000/μl、血小板数≧100,000/mmおよびヘモグロビンレベル≧9.0g/dl;
・血清中クレアチニン≦2.0mg/dlまたは計算クレアチニンクリアランス≧50;
・アミノトランスフェラーゼ(ASTおよびALT)≦3×ULN(正常値の上位レベル)およびビリルビン≦1.5×ULN(ジルベール症候群を有する対象はビリルビン>1.5×ULNを有してよい。);
・1.2×ULNを超えない凝固(aPTTおよびPT);
・女性の場合、外科的に不妊処置を受けている、閉経後少なくとも1年間たっている、妊娠検査結果が陰性でなければならない;および
・精管切除していない男性の場合、避妊に習熟していなければならない。
【0218】
薬物に対する対象の応答に応じて、試験は複数サイクル行った。第1のサイクルでは、製剤Cを、−3日目(サイクル1の1日目に3日先行する単一の日)および1日目−14日目に投与し、次いで薬物なしの日が7日間続いて24日のサイクル(サイクル1のみ)を完了する。すべての対象に、−3日目に絶食条件下で、1日目に非絶食条件下(標準的な朝食後)で製剤Cを投与し、製剤CのPKプロファイルに対する食物効果を試験した。製剤Cの単回投与PKを評価するため、第1サイクルの最初の投与の後、72時間薬物は投与しなかった。すべての後続のサイクルで、ABT−263を連続14日間投与し、次いで薬物なしの日を7日間続けた(21日のサイクル)。第1サイクルの−3日目および1日目以外、対象は、ABT−263を1日1回(q.d.)約30分間、朝食後経口で自己投与して、脂肪から約30%カロリーで、約520Kcalを得た。
【0219】
製剤C投与は10mgABT−263で開始し、各集団のうちの少なくとも3対象について最大忍容量(MTD)へ増大させた。1つのグレード3の毒性または2つのグレード2の毒性が発生するまで用量を倍増させ、次いで用量を25−40%の増分で増大させた。血小板濃度を監視し、精査して用量漸増判断の情報を提供した。
【0220】
各集団の最初の対象が2週間の投与を完了したら、次の対象を参加させた。所与の集団の割り当てられたすべての対象が用量制限毒性(DLT)の経験なしでサイクルを完了したら、次の用量レベルへの増大へと進んだ。任意の用量レベル内で1対象がDLTを経験したら、全6対象をその用量レベルで参加させた。
【0221】
体重、口腔体温、血圧および脈拍を含む健康診断を、スクリーニング、サイクル1の−3日目、続く各サイクルの1日目(または72時間内で先行して)および最終来院で実施した。症状に指向した健康診断を、最初の2サイクルを通して毎週実施し、また必要な場合いつでも実施した。ECOGパフォーマンスステータス(表7)を、スクリーニング、サイクル1の−3日目、導入1日目、最初の2サイクルを通して毎週、続く各サイクル1日目(または72時間内で先行して)、最終来院および安全フォローアップ来院で評価した。
【0222】
【表7】

血液および血漿の試料を、採取、処理および貯蔵の間に直射日光から保護した。投与以外は、血液採取のタイミングを予定された他の試験活動より優先した。血液採取の順番は、先行する投与に対して時間間隔がすべての対象について同じになるように時間通りに維持した。
【0223】
血液試料を、サイクル1の−3日目、投与前(0時間)ならびに投与後0.5、1、2、3、4、6、8、24、48および72(1日目、投与前試料)時間;1日目、投与後0.5、1、2、3、4、6、8および24(2日目、投与前試料)時間;14日目、投与前(0時間)ならびに投与後0.5、1、2、3、4、6および8時間で、3mlのカリウムEDTAを含む真空採血管中に静脈穿刺により採取した。追加の血液試料を、サイクル2からサイクル6を通して14日目の0時間(投与前)で採取した。十分な血液を採取して各試料から約1mlの血漿を得た。対象当たり合計27の血液試料(約81ml)を、サイクル1の際の薬物動態分析用に採取し、サイクル6まで、サイクル当たり、対象当たり1つの追加の血液試料を採取した。
【0224】
最大観察血漿濃度(Cmax)、Cmaxまでの時間(ピーク時間、Tmax)、終末相の消失速度定数(f)、終末消失半減期(t1/2)、サイクル1の−3日目、サイクル1の1日目およびサイクル1の14日目(適用できるときは常に)での投与についての時間0から最終測定可能時間までの濃度(AUC0−t)、例えば時間0から24時間(AUC0−24)および時間0から無限大(AUC0−∞)の血漿濃度−時間曲線下面積(AUC)を含むABT−263の薬物動態パラメーターについての値を、ノンコンパートメント法を用いて測定した。
【0225】
図1に示すように、この試験において、単回投与でのヒトPKパラメーターCmaxおよびAUC0−24は、少なくとも315mg用量までほぼ用量比例的であることが分かった。これは、絶食(−3日目)条件下とおよび非絶食(1日目)条件下でもそうであった。CmaxおよびAUC0−24における絶食条件と非絶食条件の差は小さく、これは、製剤Cの経口投与の後、ABT−263吸収に対してわずかに肯定的な食物効果しかないことを示している。
【0226】
図2に示すように、Tmaxは、絶食条件と非絶食条件の両方で約8時間であった。315mg/日で毎日投与すると、定常状態(14日目)でのABT−263の血漿濃度は、約3μg/ml(トラフ)および約5.5μg/ml(ピーク)であった。
【0227】
ABT−263用量範囲での単回投与絶食、単回投与非絶食および定常状態非絶食(それぞれ−3日目、1日目および14日目)についてのPKパラメーターを以下の表8、9および10に示す。
【0228】
製剤Cで経口投与されるABT−263の治療有効1日量は、大部分の患者について約200から約400mgであり、約4から約7μg/mlの定常状態Cmaxをもたらすと考えられる。
【0229】
【表8】

【0230】
【表9】

【0231】
【表10】

【実施例10】
【0232】
健康なヒト対象におけるABT−263製剤の臨床PK試験
第1相単回用量の非盲検試験を、出産の可能性のない(外科的に不妊処置を受けているかまたは閉経後の)健康な女性対象(n=12)において、25mgのABT−263遊離塩基相当物の単回用量で、本発明のABT−263溶液製剤のPKプロファイルを評価するための3期間、無作為化、クロスオーバーデザインにしたがって実施した。
【0233】
ABT−263遊離塩基を、Phosal 53MCT(商標)と脱水アルコールUSP(エタノール)の90:10v/v混合液からなる担体中に、25mg/mlまたは50mg/ml(それぞれ製剤B1およびB2)の濃度になるように溶解した。製剤B1およびB2の中の担体は、ABT−263遊離塩基(上記実施例9を参照されたい。)でなくABT−263ビスHClを含む製剤Cで用いたものと同じであることを記しておく。製剤B1およびB2の経口生物学的利用能を、製剤Cのそれと比較した。
【0234】
混合していないABT−263遊離塩基またはABT−263ビスHCl粉末を、光から保護しながら15−25℃で貯蔵した。製剤を、経口投与直前、またはその少し前(約1ヵ月以内)に所要濃度で、適切な粉末を担体中に溶解して調製した。その調製がなされたら、調製して直ちに投与するのでない限り、製剤を光から保護しながら2−8℃で貯蔵した。
【0235】
合計12名の対象を、無作為に同数でシーケンスI、IIおよびIII(表11を参照されたい。)に割り当てた。各シーケンスは3つの期間からなった。対象を試験場所に閉じ込め、期間1のABT−263の投与1日前(−1日目)に始まり、期間3の最後にすべての試験手順が完了して終わるまでの最低17日間監督した。
【0236】
【表11】

血液試料を、0時間(投与前)および2、4、6、8、10、12、14、16、24、30、48および72時間(投与後)で各期間の間に、カリウムEDTAを含む真空採血管中に静脈穿刺により採取した。十分な血液を採取して各試料から約1.5mlの血漿を得た。
【0237】
血液試料を、採取して1時間以内に、冷凍遠心器(2−8℃)を用いて遠心分離にかけて血漿を分離した。得られた血漿試料をプラスチック製ピペットでラベル付きのスクリューキャップ付きのポリプロピレン管に移し、採取後1時間以内に−20℃またはそれ以下に凍結させ、分析するときまで凍結させておいた。採取から分析までは最大で32日間の経過日数であった。
【0238】
ABT−263の血漿濃度を、タンデム質量分光検出を用いた有効な液体クロマトグラフィー法により測定した。各対象について3つすべての製剤を同じ分析稼働で分析した。製剤C、B1およびB2についてのPKパラメーターを以下の表12に示す。
【0239】
25mg/mlのABT−263遊離塩基製剤(製剤B1)のCmaxおよびAUC0−∞は、製剤Cの値のそれぞれ約106%および101%であった。50mg/mlのABT−263遊離塩基製剤(製剤B2)のCmaxおよびAUC0−∞は、製剤Cの値のそれぞれ約95%および98%であった。
【0240】
【表12】

【実施例11】
【0241】
ヒトがん患者におけるABT−263製剤の臨床PK試験
クロスオーバー試験を、本発明のABT−263製剤(上記実施例10で用いたのと同様の製剤CおよびB1)のPKプロファイルを評価するために、12名のヒトがん患者において250mgのABT−263遊離塩基相当物の単回用量で実施した。製剤は経口投与直前、またはその少し前(約1ヵ月以内)に調製した。
【0242】
合計13名の対象をシーケンスIおよびII(表13を参照されたい。)に参加させ、そのうちの12名が両方の期間を完了した。1名は期間1のみを完了し、これを分析から除いた。血液試料を、製剤投与前(0時間)ならびに投与後2、4、6、8、10、12、24、30および48時間で静脈穿刺により採取した。
【0243】
【表13】

製剤CおよびB1のPKパラメーターを以下の表14に示す。9名の対象は、ABT−263遊離塩基溶液(製剤B1)およびABT−263ビスHCl溶液(製剤C)の類似した生物学的利用能を示した。残りの3名の対象は、製剤B1の比較的高い生物学的利用能を示した。これらの患者のCmaxおよびAUC値はそれでも他の患者で見られる曝露の範囲内である。
【0244】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン脂質成分および薬学的に許容される可溶化成分を含む実質的に非水性の担体の溶液中に、式Iの化合物:
【化1】

[式中、Xはクロロまたはフルオロであり;
(1)Xはアゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、1,4−オキサゼパン−4−イル、ピロリジン−1−イル、N(CH、N(CH)(CH(CH)、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−イルまたは2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イルであり;Rは、
【化2】

(式中、XはCH、C(CHまたはCHCHであり;
およびXはどちらも水素またはどちらもメチルであり;および
はフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である;または
(2)Xはアゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、ピロリジン−1−イル、N(CH)(CH(CH)または7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−イルであり;Rは、
【化3】

(式中、X、XおよびXは上記の通りである。)
である;または
(3)Xはモルホリン−4−イルまたはN(CHであり;Rは、
【化4】

(式中、Xは上記の通りである。)
である。]
または薬学的に許容されるその塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物を含む薬物担体系を含み、前記担体が0から約25重量%のエタノールを含む経口で送達可能な医薬組成物。
【請求項2】
式Iの化合物において、Xがフルオロである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式Iの化合物において、Xがモルホリン−4−イルである、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
式Iの化合物において、Rが、
【化5】

(式中、XはO、CH、(CHまたはCHCHであり;
およびXはどちらも水素またはどちらもメチルであり;および
はフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
式Iの化合物において、Rが、
【化6】

(式中、XはO、CH、C(CHまたはCHCHであり;
およびXはどちらも水素またはどちらもメチルであり;
はフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)
である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
式Iの化合物において、XがCHまたはC(CHであり、ならびに/またはXおよびXのそれぞれがメチルであり、ならびに/またはXがクロロである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
式Iの化合物が、ABT−263またはこの塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記化合物がABT−263遊離塩基またはABT−263ビスHClである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
薬物担体系が液体である、請求項1から8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
化合物が遊離塩基相当物として約10から約500mg/mlの量で存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
担体のリン脂質成分がホスファチジルコリンを含む、請求項9または請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
担体の可溶化成分が、1つもしくは複数のグリコール、グリコリドおよび/またはグリセリド物質を含む、請求項9から11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
担体の可溶化成分が1つまたは複数の中鎖トリグリセリドを含む、請求項9から11のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
担体が、重量で約15%から約75%のホスファチジルコリン、重量で約5%から約70%の1つまたは複数のグリセリド物質、0%から約25%のエタノールおよび0%から約5%の界面活性剤を含む、請求項9または請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
担体が重量で約3%から約15%のエタノールを含む、請求項9から14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
ABT−263遊離塩基またはABT−263ビスHClが、遊離塩基相当物として約20から約200mg/mlの量で存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項17】
担体を、約2.5から約10mg/kgの単回用量として絶食または非絶食イヌモデルで投与したとき少なくとも約30%のABT−263の経口生物学的利用能を提供するように選択する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
(a)(i)約90%の、約53重量%ホスファチジルコリンおよび約29重量%中鎖トリグリセリドを含む産物、ならびに(ii)約10%のエタノールを含む担体中の溶液中に約25mg/mlの遊離塩基相当量でABT−263ビスHClを含むプロトタイプ製剤;または
(b)前記プロトタイプ製剤と経口で実質的に生物学的に同等である製剤
である、請求項7に記載の組成物。
【請求項19】
(a)(i)約90%の、約53重量%ホスファチジルコリンおよび約29重量%中鎖トリグリセリドを含む産物、ならびに(ii)約10%のエタノールを含む担体中の溶液中に約25から約50mg/mlの量のABT−263遊離塩基を含むプロトタイプ製剤;または
(b)前記プロトタイプ製剤と経口で実質的に生物学的に同等である製剤
である、請求項7に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1から19のいずれかに記載の組成物の、抗アポトーシスBcl−2ファミリータンパク質のアポトーシス機能不全および/または過剰発現を特徴とする疾患を有する対象に治療有効量の前記組成物を経口投与することによって、前記疾患を治療するための使用。
【請求項21】
疾患が腫瘍性疾患である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
腫瘍性疾患が、がん、中皮腫、膀胱がん、膵臓がん、皮膚がん、頭部または頸部のがん、皮膚もしくは眼球内のメラノーマ、卵巣がん、乳がん、子宮がん、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、骨がん、結腸がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん、胃腸(胃、結腸直腸および/または十二指腸)がん、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ性白血病、食道がん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、精巣がん、肝細胞(肝臓および/または胆管)がん、原発性もしくは続発性中枢神経系腫瘍、原発性もしくは続発性脳腫瘍、ホジキン病、慢性もしくは急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、T細胞もしくはB細胞由来のリンパ性悪性疾患、メラノーマ、多発性骨髄腫、口腔がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、小細胞肺がん、腎臓および/または尿管のがん、腎細胞癌、腎盂の癌腫、中枢神経系の新生物、原発性中枢神経系リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、下垂体腺腫、副腎皮質がん、胆嚢がん、脾臓のがん、胆管癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
腫瘍性疾患がリンパ性悪性疾患である、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
リンパ性悪性疾患が非ホジキンリンパ腫である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
腫瘍性疾患が慢性リンパ球性白血病または急性リンパ性白血病である、請求項21に記載の使用。
【請求項26】
投与される組成物が、ABT−263またはこの塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物を含む、請求項20から25のいずれかに記載の使用。
【請求項27】
投与される組成物が、ABT−263遊離塩基またはABT−263ビスHClを含む、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
組成物が、約3時間から約7日間の平均治療間隔でABT−263遊離塩基相当物として1日当たり約50から約500mgの用量で投与される、請求項26または請求項27に記載の使用。
【請求項29】
組成物が、1日1回、ABT−263遊離塩基相当物として1日当たり約200から約400mgの用量で投与される、請求項26から28のいずれかに記載の使用。
【請求項30】
投与される組成物が、
(a)(i)約90%の、約53重量%ホスファチジルコリンおよび約29重量%中鎖トリグリセリドを含む産物、ならびに(ii)約10%のエタノールを含む担体中の溶液中に約25mg/mlの遊離塩基相当量でABT−263ビスHClを含むプロトタイプ製剤;または
(b)前記プロトタイプ製剤と経口で実質的に生物学的に同等である製剤である、請求項26に記載の使用。
【請求項31】
投与される組成物が、
(a)(i)約90%の、約53重量%ホスファチジルコリンおよび約29重量%中鎖トリグリセリドを含む産物、ならびに(ii)約10%のエタノールを含む担体中の溶液中に約25から約50mg/mlの量のABT−263遊離塩基を含むプロトタイプ製剤;または
(b)前記プロトタイプ製剤と経口で実質的に生物学的に同等である製剤である、請求項26に記載の使用。
【請求項32】
リン脂質成分および薬学的に許容される可溶化成分を含む実質的に非水性の担体の溶液中に、ABT−263または薬学的に許容されるこの塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物を含む薬物担体系を含む医薬組成物を、約3時間から約7日間の平均投薬間隔でABT−263遊離塩基相当物として1日当たり約50から約500mgの投薬量でヒト対象に投与することによって、前記対象の血流中でABT−263および/または1つもしくは複数のこの代謝産物の治療上有効な血漿濃度を維持するための前記医薬組成物の使用。
【請求項33】
維持される血漿濃度が、定常状態で、約3から約8μg/mlのABT−263のピークおよび約1から約5μg/mlのABT−263のトラフを示す、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
組成物が1日1回、ABT−263遊離塩基相当物として1日当たり約200から約400mgの用量で投与され、前記組成物が、
(a)(i)約90%の、約53重量%ホスファチジルコリンおよび約29重量%中鎖トリグリセリドを含む産物、ならびに(ii)約10%のエタノールを含む担体中の溶液中に約25mg/mlの遊離塩基相当量でABT−263ビスHClを含むプロトタイプ製剤;または
(b)前記プロトタイプ製剤と経口で実質的に生物学的に同等である製剤
である、請求項32または請求項33に記載の使用。
【請求項35】
組成物が1日1回、ABT−263遊離塩基相当物として1日当たり約200から約400mgの用量で投与され、前記組成物が、
(a)(i)約90%の、約53重量%ホスファチジルコリンおよび約29重量%中鎖トリグリセリドを含む産物、ならびに(ii)約10%のエタノールを含む担体中の溶液中に約25から約50mg/mlの量でABT−263遊離塩基を含むプロトタイプ製剤;または
(b)前記プロトタイプ製剤と経口で実質的に生物学的に同等である製剤
を含む、請求項32または請求項33に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−525434(P2012−525434A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508758(P2012−508758)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/033074
【国際公開番号】WO2010/127192
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】