説明

アミドの還元によるアミン類の製造方法

【課題】 シランを用いる還元反応により、シリルエーテル、アルコールまたはアミン類を室温で製造できる方法を提供する。
【解決手段】 2〜4個のルテニウム原子にカルボニル基が配位した多核ルテニウムカルボニル錯体を触媒とし、この触媒をあらかじめシランで活性化することにより活性触媒種を作成し、下記の一般式(I)で示される少なくとも1個の水素原子を保有するシランを還元剤として用いて、下記の一般式(V)で示すアミドから、下記の一般式(VI)で示すアミンを製造する方法。
【化1】


【化2】


【化3】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の原料、溶媒、触媒、配位子等に幅広く利用される有用な化合物であるシリルエーテル類、一級アルコール類およびアミン類を、シランを還元剤として用いて製造する方法に関し、特に、アミドの還元によるアミン類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カルボン酸の還元反応による一級アルコールの製造方法、および、アミドの還元反応によるアミンの製造方法としては、リチウムアルミニウムヒドリドや、ボラン等の強力な還元剤を用いる方法(例えば、W.R.Brown、Organic
Reactions、6、470(1941))が、主に用いられてきた。しかしながら、これらの反応では使用する還元剤が禁水性であり、不活性ガス雰囲気下無水条件で取り扱わなければならないほか、分離が困難な多量のアルミニウムあるいはホウ素生成物を副生し、操作性、安全面ならびに経済面で欠点を有している。
【0003】
一方、近年、より取り扱いが容易な還元剤としてシラン類を用いたカルボン酸から1級アルコールの合成法、アミドからアミンの合成法が報告されている。しかし、シランを還元剤とするカルボン酸の還元反応によるアルコールの合成法は、これまでに知られていない。カルボン酸をトリクロロシランとアミンを用いて還元する反応は報告されている(G. S. Li, D. F. Ehler, R. A. Benkeser, Org. Syn. 56, 83 (1977))が、生成物はアルコールではなくアルカンである。
【0004】
遷移金属触媒の存在下で、シランを還元剤として用いるカルボン酸の還元法としては、渕上らの報告(萩原恵美子、上野貴史、渕上高正、日本化学会第79春季年会1H3 12)が公知であるが、100℃という高温を要する上、ジシリルアセタールが生成物であり、その還元生成物であるシリルエーテルは得られていない。
【0005】
シラン類を用いた還元反応によるアミドからアミンの合成法としては、これまでに(1)トリプロピルアミン存在下、トリクロロシランを用いる方法(R. A. Benkeser, G. S. Li, E. C. Mozdzen, J. Organomet. Chem., 178,
21(1979))が公知であるが、芳香族カルボン酸に限定されるほか、水に不安定で容易に有害な塩酸を発生するトリクロロシランと過剰のアミンを用いるなど、操作性、安全性、汎用性に問題がある。
【0006】
遷移金属触媒の存在下で、シランを還元剤として用いるアミドの還元によるアミンの合成法としては、(1)クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ロジウムを触媒として用いる方法(R. Kuwano, M. Takahashi, Y. Ito, Tetrahedron Lett., 39, 1017 (1998))、(2)クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム二量化物およびトリフェニルホスフィンを触媒として用いる方法(紙谷昌弘、道端嗣海、信友麻美、楠井啓介、太田哲男、古川功、第46回有機金属討論会、PB201)、(3)第7〜10族遷移金属触媒を用いる方法(M. Igarashi and T.
Fuchikami, Tetrahedron Lett., 42, 1945 (2001)および特開2001−122833)が公知である。
【0007】
しかしながら、(1)、(2)の方法では使用できるヒドロシラン類がジヒドロシラン、トリヒドロシランに限られ、取り扱いが容易なトリアルキルシランを用いることができない。また、(3)の方法は100℃という高温を必要とするほか、多くの実施例においてアミンやハロゲン化アルキルのような助触媒を必要とし、操作性に問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、シランを還元剤として室温下の温和な条件で1級アルコールやアミンを製造することのできる新しい方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、このたび、特定の触媒を用いることにより室温という温和な条件で、シランを還元剤としてカルボン酸の還元によるシリルエーテルを経由する1級アルコールの製造と、シランを還元剤として用いたアミドの還元によるアミンの製造とが達成できることを見出し、上記の目的を達成したものである。
【0010】
かくして、本発明に従えば、2〜4個のルテニウム原子にカルボニル基が配位した多核ルテニウムカルボニル錯体を主触媒とし、少なくとも1個の水素原子を保有するシランを還元剤として、(1)カルボン酸からシリルエーテルを製造する方法、(2)得られたシリルエーテルを反応後ただちに加水分解することにより、アルコールを製造する方法、および(3)アミドからアミンを製造する方法、が提供される。
【0011】
本発明の方法において使用される触媒として特に優れた多核カルボニル錯体は、上記の(A)、(B)で表されるアセナフチレンまたはアズレンの配位した3核ルテニウムカルボニル錯体である。
【0012】
本発明の方法の好ましい態様においては、還元剤として用いる少なくとも1個の水素原子を有するシランで触媒の多核ルテニウム錯体を活性化する。
なお、本明細書および図面に示す化学構造式においては、慣用的な表現方法に従い炭素原子や水素原子を省略していることがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において触媒として用いられる2〜4個のルテニウム原子にカルボニル基が配位した多核ルテニウムカルボニル錯体の例は図1に示されている。この多核カルボニル錯体は、本発明に従う触媒の活性化法により、反応活性触媒種を生成する。後述の実施例からも明らかなように、この反応活性触媒種は、室温下で、(1)カルボン酸からシリルエーテルを製造し、(2)得られたシリルエーテルを反応後ただちに加水分解することにより、アルコールを製造し、また(3)アミドからアミンを製造することができる。しかしながら、同じく多核ルテニウムカルボニル錯体として従来用いられているRu3(CO)12は、同じような触媒活性化法を用いても、室温で以上のような反応の触媒としては機能しない。
【0014】
本発明において触媒としては、とくにアセナフチレンまたはアズレンが配位した3核ルテニウムカルボニル錯体が、還元反応を効率的に進める点からとくに優れている。このような3核ルテニウムカルボニル錯体が触媒が還元を促進する理由は、アセナフチレンやアズレンが3核ルテニウムカルボニル種とフレキシブルな相互作用をするため、Ru原子が容易に変異してSi原子を導入しやすくなるからと考えられる。少量の溶媒中、シランで処理することにより活性種を発生する理由は、このSi原子の導入をあらかじめカルボン酸やアミドのない状態でおこない、アセナフチレンあるいはアズレン誘導体を配位子とし、Ru−H結合をもつ多核反応活性種を出すことによる。Ru3(CO)12においては、このSi原子の導入を容易にするアセナフチレンやアズレンがないため、室温での反応活性をもたない。
本発明に従う上記の(1)、(2)および(3)の還元反応は、図2に示す反応スキームにより総括的に表すことができる。
【0015】
図2に示す反応スキームの式(1)、(2)および(3)において、(I)は還元剤であるシランを表し、従来知られたものから適宜選択することができる。すなわち、反応式(1)、(2)および(3)のいずれにおいても式(I)中、R1、R2およびR3は互いに同一または別個の各種の官能基または原子から選ばれ、好ましい官能基または原子の例としては、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールアミノ基、ビニル基、シロキシ基、オルガノシロキシ基、オルガノシリル基、複素環基(ピリジル基など)が挙げられる。アルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルキルアミノ基、オルガノシロキシ基、オルガノシリル基などにおける炭素数は特に限定されるものではないが、一般に炭素数1〜18であり、枝分かれや環状構造があってもよい。R1、R2およびR3としてとくに好ましいのは、これらがいずれもメチル基、エチル基などの炭素数1〜4の低級アルキル基の場合である。また、以下に示す分子内に2つのシリル基をもつシラン(R3がオルガノシリル基である場合に相当)も反応に用いることができる。式VIIにおけるnは特に限定されるものではないが、一般に1〜4が好ましい。
【0016】
【化12】

【0017】
図2に示す反応式(1)、(2)および(3)において、(II)はカルボン酸を表し、工業的に容易に入手可能な化合物から選ぶことができるものである。すなわち、式(1)および(2)において式(II)中、Rは既知のカルボン酸を構成するような各種の官能基または原子から選ばれ、このRは反応に関与しない。式(II)のRとして(したがって式(III)および(IV)のRとしても)好ましい官能基または原子の例としては、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールアミノ基、シロキシ基、オルガノシロキシ基、オルガノシリル基、複素環基(ピリジル基など)が挙げられる。アルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルキルアミノ基、オルガノシロキシ基、オルガノシリル基などにおける炭素数は特に限定されるものではないが、一般に炭素数1〜18であり、枝分かれや環状構造があってもよい。
【0018】
図2に示す反応式(3)において、(V)はアミドを表わし工業的に容易に入手可能な化合物から選ぶことができるものである。すなわち、反応式(3)において式(V)中、Rは既知のアミドを構成するような各種の官能基または原子から選ばれ、このRは反応に関与しないものである。式(V)のRとして(したがって式(VI)のRとしても)好ましい官能基または原子の例としては、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールアミノ基、シロキシ基、オルガノシロキシ基、オルガノシリル基、複素環基(ピリジル基など)が挙げられる。アルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルキルアミノ基、オルガノシロキシ基、オルガノシリル基などにおける炭素数は特に限定されるものではないが、一般に炭素数1〜18であり、枝分かれがあってもよい。また、反応式(3)における式(V)中、R4およびR5も、Rとともに既知のアミドを構成するような各種の官能基または官能基から選ぶことができる。R4とR5は互いに同一である場合が多いが、別異であってもよい。式(V)のR4とR5として(したがって、式(VI)のR4とR5としても)好ましい官能基または原子の例としては、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールアミノ基、シロキシ基、オルガノシロキシ基、オルガノシリル基、複素環基(ピリジル基など)が挙げられる。アルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルキルアミノ基、オルガノシロキシ基、オルガノシリル基などにおける炭素数は特に限定されるものではないが、一般に炭素数1〜18であり、枝分かれや環状構造があってもよい。
【0019】
本発明に従えば、このようなカルボン酸あるいはアミドを、特定の触媒の存在下にシランにより還元することにより、対応するシリルエーテルあるいはアミンが得られる。得られたシリルエーテルを還元後ただちに加水分解すれば、カルボン酸からアルコールが得られる。触媒は記述したような多核ルテニウム錯体である。触媒は単独でも作用を示すが、反応の速度を増加させ、生成物の収率をあげるために、本発明に従う触媒の活性化法を用いることが好ましい。
【0020】
本発明に従う活性化法は、触媒を少量の溶媒に溶かし、シランを加えて短時間攪拌するものである。溶媒は、ジオキサンが特に優れているが、一般的にはテトラヒドロピラン、オキセパン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、ベンゼン等の炭化水素系溶媒も用いることができる。反応温度は、0℃から50℃の範囲が用いられるが、特に室温で行なうことが操作性の上でよい。活性化時間は、30分から24時間の任意の時間であるが、特に30分から1時間の時間が良好な結果が得られる。
以下に、本発明の特徴をさらに明らかにするため実施例を示すが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
3−フェニルプロピル−ジメチルエチルシリルエーテルの合成
三方コックを付けた2つ口の30mLナス型フラスコを窒素置換した後、触媒〔(Acenaphthylene)Ru3(CO)7〕を6.0mg(9.3×10-3mmol)と1,4−ジオキサン0.18mL、ジメチルエチルシラン0.47mL(3.5mmol)を加えた。室温で30分間攪拌して触媒を溶解させた後、ジヒドロけい皮酸135mg(0.91mmol)を加えた。溶液を1時間攪拌させた後、1,4−ジオキサンおよび過剰のジメチルエチルシランを留去した。残った液体を減圧蒸留することにより、透明液体115mg(0.52mmol)を得た。
この透明な液体について1H NMR、13C NMR、29Si NMRによる測定を行った。以下に結果を示す。
H NMR:CDCl3中、内部標準CHCl3
δ(ppm)
7.18−7.31(m,Ph,5H)
3.62(t,J=7.9Hz,SiOCH,2H)
2.67(dd,J=7.6,7.9Hz,PhCH,2H)
1.85(m,PhCH,2H)
0.96(t,J=7.9Hz,SiCH,3H)
0.58(q,J=7.9Hz,SiCCH,2H)
0.09(s,SiCH,3H)
13C NMR:CDCl3中、内部標準CHCl3
δ(ppm)
142.1(ipso−C
128.4,128.3(meta−C,ortho−C
125.7(para−C
62.0(SiOCH
34.3(PhCH
32.1(PhCH
8.0(SiCH
6.7(SiCH
−2.7(SiCH
29Si NMR:CDCl3中、内部標準テトラメチルシラン
δ(ppm) 18.5
以上の結果から上記透明液体は3−フェニルプロピル−ジメチルエチルシリルエーテルであることが確認された。
【0022】
以下の実施例はカルボン酸の還元反応においては、上記の実施例1のような方法により生成するシリルエーテルを加水分解してアルコールとして精製した例である。またアミドの還元反応においては生成物のアミンを精製した例である。これらの結果を表1にまとめて示す。
【0023】
【表1】

【実施例2】
【0024】
3−フェニルプロピルアルコールの合成
三方コックを付け、攪拌子を入れた2つ口の30mLナス型フラスコを窒素置換した後、触媒〔(Acenaphthylene)Ru3(CO)7〕を16.5mg(25.2×10-3mmol)と1,4−ジオキサン0.45mL、ジメチルエチルシラン0.84mL(6.3mmol)を加えた。室温で30分間攪拌して触媒を溶解させた後、ジヒドロけい皮酸380mg(2.55mmol)を加えた。溶液を30分攪拌させた後、10%硫酸水溶液を7mL加え,三時間激しく攪拌した。生成物を塩化メチレンで抽出した後、NaHCO3水溶液で中和、飽和食塩水で洗浄した。有機層のみを分離した後MgSO4で脱水処理してろ過した。溶媒を減圧下留去して得られた液体を用いてヘキサン/酢酸エチルを展開溶媒としてシリカゲル充填カラムクロマトグラフィーを行うことで、3−フェニルプロピルアルコール248mg(1.82mmol、72%)を精製した。これらの結果をエントリー1として表1に示す。
【実施例3】
【0025】
デシルアルコールの合成
三方コックを付け、攪拌子を入れた2つ口の30mLナス型フラスコを窒素置換した後、触媒〔(Acenaphthylene)Ru3(CO)7〕を6.65mg(10.2×10-3mmol)と1,4−ジオキサン0.18mL、ジメチルエチルシラン0.80mL(6.1mmol)を加えた。室温で30分間攪拌して触媒を溶解させた後、カプリン酸175.7mg(1.02mmol)を加えた。溶液を6時間攪拌させた後、10%硫酸水溶液を7mL加え,三時間激しく攪拌した。生成物を塩化メチレンで抽出した後、NaHCO3水溶液で中和、飽和食塩水で洗浄した。有機層のみを分離した後MgSO4で脱水処理してろ過した。溶媒を減圧下留去して得られた液体を用いてヘキサン/酢酸エチルを展開溶媒としてシリカゲル充填カラムクロマトグラフィーを行うことで、デシルアルコール126.8mg(0.80mmol、80%)を精製した。これらの結果をエントリー2として表1に示す。
【実施例4】
【0026】
ベンジルアルコールの合成
三方コックを付け、攪拌子を入れた2つ口の30mLナス型フラスコを窒素置換した後、触媒〔(Acenaphthylene)Ru3(CO)7〕を7.07mg(10.9×10-3mmol)と1,4−ジオキサン0.18mL、ジメチルエチルシラン0.61mL(4.6mmol)を加えた。室温で30分間攪拌して触媒を溶解させた後、安息香酸132.0mg(1.08mmol)を加えた。溶液を18時間攪拌させた後、10%硫酸水溶液を7mL加え、三時間激しく攪拌した。生成物を塩化メチレンで抽出した後、NaHCO3水溶液で中和、飽和食塩水で洗浄した。有機層のみを分離した後MgSO4で脱水処理してろ過した。溶媒を減圧下留去して得られた液体を用いてヘキサン/酢酸エチルを展開溶媒としてシリカゲル充填カラムクロマトグラフィーを行うことで、ベンジルアルコール54.2mg(0.50mmol、46%)を精製した。これらの結果をエントリー3として表1に示す。
【実施例5】
【0027】
N,N−ジメチル−3−フェニルプロピルアミンの合成
三方コックを付け、攪拌子を入れた2つ口の30mLナス型フラスコを窒素置換した後、触媒〔(Acenaphthylene)Ru3(CO)7〕を6.40mg(9.8×10-3mmol)と1,4−ジオキサン0.18mL、ジメチルエチルシラン0.32mL(2.4mmol)を加えた。室温で30分間攪拌して触媒を溶解させた後、N,N−ジメチル−ベンゼンプロパンアミド0.168mL(0.99mmol)を加えた。溶液を6時間攪拌させた後、1,4−ジオキサンおよび過剰のジメチルエチルシランを留去した。残った液体を減圧蒸留することにより、N,N−ジメチル−3−フェニルプロピルアミン121.0mg(0.74mmol、75%)を精製した。これらの結果をエントリー4として表1に示す。
【実施例6】
【0028】
N,N−ジエチル−ベンジルアミンの合成
三方コックを付け、攪拌子を入れた2つ口の30mLナス型フラスコを窒素置換した後、触媒〔(Acenaphthylene)Ru3(CO)7〕を11.0mg(16.8×10-3mmol)と1,4−ジオキサン0.30mL、ジメチルエチルシラン0.56mL(4.2mmol)を加えた。室温で30分間攪拌して触媒を溶解させた後、N,N−ジエチル−ベンジルアミド324.3mg(1.83mmol)を加えた。溶液を30分間攪拌させた後、1,4−ジオキサンおよび過剰のジメチルエチルシランを留去した。残った液体を蒸留することによりN,N−ジエチル−ベンジルアミン166.4mg(1.00mmol、56%)を精製した。これらの結果をエントリー5として表1に示す。
【実施例7】
【0029】
N,N−ジメチル−3−フェニルプロピルアミンの合成
三方コックを付け、攪拌子を入れた2つ口の30mLナス型フラスコを窒素置換した後、触媒〔(Acenaphthylene)Ru3(CO)7〕を5.91mg(9.1×10-3mmol)と1,4−ジオキサン0.18mL、ジメチルエチルシラン0.30mL(2.4mmol)を加えた。室温で30分間攪拌して触媒を溶解させた後、1−ベンジル−2−ピロリジノン0.146mL(0.91mmol)を加えた。溶液を6時間攪拌させた後、1,4−ジオキサンおよび過剰のジメチルエチルシランを留去した。残った液体を減圧蒸留することによりN−ベンジルピロリジン66.5mg(0.41mmol、45%)を精製した。これらの結果をエントリー6として表1に示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明において触媒として用いられる多核ルテニウム錯体を例示する。
【図2】本発明に従い、シリルエーテル、一級アルコールおよびアミンが製造される反応スキームを概示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテニウム原子にカルボニル基が配位した多核ルテニウムカルボニル錯体であって、下記の式(A)または(B)で表わされるアセナフチレンまたはアズレンの配位した3核ルテニウムカルボニル錯体を触媒とし、下記の一般式(I)で示される少なくとも1個の水素原子を保有するシランを還元剤として用いて、下記の一般式(V)で示すアミドから、下記の一般式(VI)で示すアミンを製造する方法。
【化1】

【化2】

【化3】

(式(I)において、R1、R2およびR3は、互いに同一または別異の官能基または原子から選ばれ、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールアミノ基、ビニル基、シロキシ基、オルガノシロキシ基、オルガノシリル基、または複素環基を表わし、式(V)および式(VI)において、Rは、既知のアミドを構成する官能基または原子から選ばれ、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールアミノ基、シロキシ基、オルガノシロキシ基、オルガノシリル基、または複素環基を表わし、R4およびR5は互いに同一または別異の官能基または原子から選ばれ、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールアミノ基、シロキシ基、オルガノシロキシ基、オルガノシリル基、または複素環基を表わす。)
【化4】

【化5】

【請求項2】
一般式(I)で示される少なくとも1個の水素原子を保有するシランで活性化処理した多核ルテニウムカルボニル錯体を触媒として用いることからなる請求項1に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−1946(P2006−1946A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254322(P2005−254322)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【分割の表示】特願2002−63939(P2002−63939)の分割
【原出願日】平成14年3月8日(2002.3.8)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】