説明

アミド化合物からアルコール及び/又はアミンを製造する方法

【課題】
本発明の目的は、調製及び取り扱いが容易で比較的安価に調達できるルテニウム錯体を触媒として用い、水素雰囲気下でアミドからアルコールとアミンを製造する方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、次の一般式(1)
RuXY(CO)(L) (1)
(一般式(1)中、X及びYは同一であっても異なっていてもよくアニオン性配位子を表し、Lは2つのホスフィノ基と−NH−基を有する3座アミノジホスフィン配位子を表す。)
で表されるルテニウムカルボニル錯体を触媒として使用し、水素雰囲気下で、アミド化合物からアルコール及び/又はアミンを製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのホスフィノ基と−NH−基を持つ3座配位子を有するルテニウムカルボニル錯体を触媒として用いて、水素雰囲気下、アミド化合物からアルコール及び/又はアミンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール類やアミン類は工業上広く用いられている有用な化合物であり、これらの製造法は工業上重要である。これらの製造方法としては、例えば参考文献1(Reductions by the Alumino-and Borohydrides in Organic Synthesis VCH Publishers, INC.1991)に記載されているような金属ヒドリドを用いたアミド化合物の還元による製造方法が知られているが、使用される金属ヒドリド試薬の危険性や、理論的に等量以上を必要とする試薬から生じる廃棄物の問題から、より低環境負荷で安全性の高い化学合成技術が求められている。このような化学合成法の一つとして、アミド化合物から水素雰囲気下、触媒的にアルコール類やアミン類を製造する方法が挙げられる。
【0003】
このような反応を触媒するものとしては、ルテニウム錯体が挙げられる。ルテニウム錯体は、白金、ロジウム、イリジウムなどと並び、触媒としてよく用いられる金属のひとつであるが、他の金属に比べて安価であるという工業上の優位点を有している。このようなルテニウム錯体としては、多座配位子を有するルテニウム錯体が挙げられる。3座配位子として2つのホスフィノ基と−NH−基を有するルテニウム錯体としては、特許文献1にはジクロロ錯体が記載されており、非特許文献1ではトリメチルホスフィンを配位子として有するジクロロ錯体やヒドリド錯体が報告されているが、これらの錯体はカルボニル配位子を有していない。また、特許文献1に記載されているルテニウムジクロロ錯体は、塩基存在下にケトン類を水素化還元し、アルコールが得られることが報告されているが、アミドからアルコールやアミンを水素雰囲気下で得る方法は報告されていない。さらに、非特許文献1に記載されているルテニウムホスフィン錯体に関してもアンモニア−ボランの脱水素触媒としての報告がされているが、アミドからアルコールやアミンを水素雰囲気下で得る方法は報告されていない。また、2つのホスフィノ基とピリジン環を持つ3座配位子とカルボニル配位子を有するルテニウム錯体が非特許文献2、非特許文献3及び4に報告されているが、この3座配位子は−NH−基を有していない。また触媒として用いられるルテニウムホスフィン錯体は不安定であることが報告されている。非特許文献2や非特許文献3に記載されているピリジン環を有するルテニウム錯体は、エステル類の水素化還元によってアルコール類が合成できることが報告されているが、アミドからアルコールやアミンを水素雰囲気下で得る方法は報告されていない。
【0004】
アミドから水素雰囲気下、触媒的にアルコール類やアミン類を製造する方法としては特許文献2、3や非特許文献5に示されるような方法が知られている。特許文献2や非特許文献5の方法はアミンを得るための方法であり、得られるアミンの構造も本発明のアミンとは異なっている。またアルコールが生成する場合においても副生成物として、あるいは低収率で得られるのみであった。さらに特許文献3で用いる触媒はシクロペンタジエニル錯体であり、本発明で用いられる触媒とは構造が異なる。また、例外的に反応の早い一部の基質を除いては、十分な転化率を得るためには触媒を基質に対して1〜10モル%使用した上で24〜90時間程度の反応時間が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公開2005/0107638号公報
【特許文献2】US20100010261
【特許文献3】特願2010−168357
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, p.905-907
【非特許文献2】Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, p.1113-1115
【非特許文献3】J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, p.10840-10841
【非特許文献4】Organometallics. 2004, 23, p.4026-4033
【非特許文献5】Chem. Commun. 2007, 3154-3156.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、調製及び取り扱いが容易で比較的安価に調達できるルテニウム錯体を触媒として用い、水素雰囲気下でアミド化合物からアルコールとアミンを製造する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の事情に鑑み、鋭意検討を行った結果、2つのホスフィノ基と−NH−基を持つ3座配位子とカルボニル配位子を有するルテニウム錯体を触媒として用いることで、水素雰囲気下でアミドからアルコール類やアミン類を比較的温和な条件下で効率よく製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の方法は、アミンの保護基として安価で有用であるアシル基の脱保護にも利用できる。アシル基は例えば参考文献2(Protective Groups in Organic Synthesis Second Edition, JOHN WILEY&SONS, INC.1991)に記載されているように、脱保護時に酸性条件下で加熱する条件などが必要であったが本方法を用いれば、酸性条件でなくても比較的容易に脱保護が行えることになる。また、脱保護の結果生じる塩基性であるアミンの精製が、塩の中和操作や続く抽出操作をすることなく行える利点がある。
【0010】
本発明をより詳細に説明すれば、本発明は、以下の[1]から[10]に関するものである。
[1]次の一般式(1)
RuXY(CO)(L) (1)
(一般式(1)中、X及びYは同一であっても異なっていてもよくアニオン性配位子を表し、Lは下記一般式(2)
【0011】
【化1】

【0012】
(一般式(2)中、R、R、R、及びRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、複素環基、又は置換アミノ基を表し、これらのRとR又はRとRは互いに結合し隣接するリン原子と共に環を形成していてもよい。また、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、複素環基、置換アミノ基は置換基を有していてもよい。
及びQは同一であっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよい二価のアルキレン基、置換基を有していてもよい二価のシクロアルキレン基、又は置換基を有していてもよい二価のアラルキレン基を表す。)
で表される3座アミノジホスフィン配位子を表す。)
で表されるルテニウムカルボニル錯体存在下、水素雰囲気下で、下記一般式(A)
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、Rは水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、又はシクロアルケニル基を表し、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、及びシクロアルケニル基は置換基を有していてもよい。RII、及びRIIIはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルキニルオキシカルボニル基、シクロアルキニルオキシカルボニル基、又はスルホニル基を表し、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルキニルオキシカルボニル基、シクロアルキニルオキシカルボニル基、又はスルホニル基は置換基を有していてもよい。さらに、RとRII及び/又はRIII、並びにRIIとRIIIが互いに結合し、環を形成していてもよい。)
で表されるアミド化合物から、アルコール及び/又はアミンを製造する方法。
[2]3座アミノジホスフィン配位子Lが下記一般式(3)
【0015】
【化3】

【0016】
(一般式(3)中、R、R、R、及びRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。nは0から3の整数を表す。)
で表される前記[1]記載の製造方法。
[3]3座アミノジホスフィン配位子Lが下記一般式(4)
【0017】
【化4】

【0018】
(一般式(4)中、Ar、Ar、Ar、及びArは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、アリール基、又は芳香族複素環基を表す。また、これらのアリール基、及び芳香族複素環基は置換基を有していてもよい。)
で表される前記[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]一般式(4)における、Ar、Ar、Ar、及びArが、置換基を有して
いてもよいフェニル基である前記[3]に記載の製造方法。
[5]3座アミノジホスフィン配位子Lが下記一般式(5)
【0019】
【化5】

【0020】
(式中、Phはフェニル基を表す。)
で表される前記[4]記載の製造方法。
[6]3座アミノジホスフィン配位子Lが、光学活性な3座アミノジホスフィン配位子である前記[1]又は[2]に記載の製造方法。
[7]一般式(1)におけるXのアニオン性配位子がヒドリドであり、Yのアニオン性配位子がClである前記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]一般式(1)におけるXのアニオン性配位子がヒドリドであり、Yのアニオン性配位子が、BHである前記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[9]塩基存在下に行う、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]塩基がナトリウムメトキシドである前記[9]記載の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明のルテニウムカルボニル錯体は、3座アミノジホスフィン配位子と前駆体となるルテニウムカルボニル錯体から容易に調製することができ、また、3座アミノジホスフィン配位子は脱離基を有するビスアルキルアミンとホスフィン化合物とを塩基存在下反応させることで容易に調製することができる。さらに、前駆体となるルテニウムカルボニル錯体も容易に入手可能な無機ルテニウム化合物より簡便に調製することができる。このように、本発明のルテニウムカルボニル錯体は調製が容易であるだけでなく、安定性が高く取り扱いも容易であり、工業的な使用に適したものである。本発明のルテニウムカルボニル錯体は比較的温和な反応条件下でも触媒活性が高く、水素雰囲気下、アミドからアルコールやアミンを比較的温和な条件下で効率よく製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明の下記一般式(1)で表されるルテニウムカルボニル錯体について説明する。
RuXY(CO)(L) (1)
(一般式(1)中、X及びYは同一であっても異なっていてもよくアニオン性配位子を表し、Lは下記一般式(2)で表される3座アミノジホスフィン配位子を表す。)
【0023】
【化6】

【0024】
(一般式(2)中、R、R、R、及びRは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、複素環基、置換アミノ基を表し、RとR又はRとRが互いに結合し隣接するリン原子と共に環を形成していてもよい。また、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、複素環基は置換基を有していてもよい。Q及びQは同一であっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよい二価のアルキレン基、置換基を有していてもよい二価のシクロアルキレン基、又は置換基を有していてもよい二価のアラルキレン基を表す。)
【0025】
本発明に用いられる3座アミノジホスフィン配位子について説明する。一般式(1)におけるLで表される3座アミノジホスフィン配位子としては、ふたつのホスフィノ基と−NH−基を有するものが挙げられる。具体的な3座アミノジホスフィン配位子としては前記した一般式(2)で表されるものが挙げられる。
【0026】
一般式(2)におけるR、R、R、及びRについて説明する。
アルキル基としては、炭素数1〜50、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等が挙げられる。
また、シクロアルキル基としては炭素数3〜30、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数3〜10の単環式、多環式又は縮合環式のシクロアルキル基が挙げられ、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、アリール基としては、炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数6〜14の単環式、多環式又は縮合環式のアリール基が挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
また、アラルキル基としては、前記したアルキル基の少なくとも1個の水素原子が前記したアリール基で置換された基が挙げられ、例えば炭素数7〜15のアラルキル基が好ましく、具体的にはベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、3−ナフチルプロピル基等が挙げられる。
【0027】
また、アルキルオキシ基としては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐状のアルキル基からなるアルキルオキシ基が挙げられ、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基等が挙げられる。
また、シクロアルキルオキシ基としては、炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜15、より好ましくは炭素数3〜10の多環式又は縮合環式のシクロアルキル基からなるシクロアルキルオキシ基が挙げられ、例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
また、アリールオキシ基としては、炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数6〜14の単環式、多環式又は縮合環式のアリール基からなるアリールオキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、フェノキシ基、トリロキシ基、キシリロキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
また、アラルキルオキシ基としては前記アルキルオキシ基のアルキル基又はシクロアルキル基の少なくとも1個の水素原子が前記アリール基で置換された基が挙げられ、例えば炭素数7〜15のアラルキルオキシ基が好ましく、具体的にはベンジルオキシ基、1−フェニルエトキシ基、2−フェニルエトキシ基、1−フェニルプロポキシ基、2−フェニルプロポキシ基、3−フェニルプロポキシ基、4−フェニルブトキシ基、1−ナフチルメトキシ基、2−ナフチルメトキシ基等が挙げられる。
【0028】
また、複素環基としては、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基としては、例えば、炭素数2〜14で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子及び/又は硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、3〜8員、好ましくは4〜6員の単環の脂肪族複素環基、多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、アゼチジル基、アゼチジノ基、ピロリジル基、ピロリジノ基、ピペリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、ピペラジノ基、モルホリニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオフェニル基等が挙げられる。
芳香族複素環基としては、例えば、炭素数4〜15で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子及び/又は硫黄原子等の異種原子を含んでいる、5又は6員の単環式ヘテロアリール基、多環式又は縮合環式のヘテロアリール基が挙げられる。その具体例としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピリダジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジル基、キナゾリル基、ナフチリジル基、シンノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、アクリジル基、アクリジニル基等が挙げられる。
【0029】
また、置換アミノ基としては、アミノ基の2つの水素原子が、同一又は異なる前記したアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び/又は複素環基で置換されたアミノ基があげられ、具体的には、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基等のジアルキルアミノ基;N,N−ジシクロヘキシルアミノ基等のジシクロアルキルアミノ基;N,N−ジフェニルアミノ基、N−ナフチル−N−フェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;N,N−ジベンジルアミノ基等のジアラルキルアミノ基などが挙げられる。また、置換アミノ基のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び複素環基はさらに置換基を有していてもよい。
【0030】
これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、複素環基、並びに、置換アミノ基上のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び複素環基が有していてもよい置換基としては、前記したアルキル基、前記したシクロアルキル基、前記したアリール基、前記したアラルキル基、前記したアルキルオキシ基、前記したシクロアルキルオキシ基、前記したアリールオキシ基、前記したアラルキルオキシ基、前記した複素環基、前記した置換アミノ基、ハロゲン原子、シリル基、及び保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。
【0031】
、R、R、及びRの置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0032】
、R、R、及びRの置換基としてのシリル基としては、シリル基の水素原子の3個が前記したアルキル基、前記したシクロアルキル基、前記したアリール基、前記したアラルキル基等に置き換ったものが挙げられる。具体的にはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。
【0033】
、R、R、及びRの置換基としての保護されていてもよい水酸基としては、無保護の水酸基、又は例えばトリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基などのシリル基、ベンジル基やメトキシメチル基など例えば参考文献2(Protective Groups in Organic Synthesis Second Edition, JOHN WILEY&SONS, INC.1991)に記載されているペプチド合成等で用いられている一般的な水酸基の保護基で保護されていてもよい水酸基などが挙げられる。
【0034】
一般式(2)におけるQ、及びQについて説明する。
二価のアルキレン基としては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6の鎖状又は分岐状の二価のアルキル鎖が挙げられ、具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。
また、二価のシクロアルキレン基としては、炭素数3〜15、好ましくは炭素数3〜10、より好ましくは3〜6の単環式、多環式又は縮合環式のシクロアルキル基からなる二価の基が挙げられ、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。
また、二価のアラルキレン基としてはベンジル基、フェネチル基等などのアラルキル基のアリール基から水素を一個除いた炭素数7〜11の二価の基を挙げることができる。ベンジレン基(−Ph−CH−)、2−フェニルエチレン基(−Ph−CHCH−)、1−ナフチルメチレン基(−Np−CH−)、2−ナフチルメチレン基(−Np−CH−)等(式中、−Ph−はフェニレン基を示し、−Np−はナフチレン基を示す。)が挙げられる。
【0035】
これらの二価のアルキレン基、二価のシクロアルキレン基、又は二価のアラルキレン基が有していてもよい置換基としては、前記した一般式(2)におけるR、R、R、及びRについての説明で述べたようなアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、及び複素環基、並びにハロゲン原子、シリル基、置換アミノ基、及び保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。
【0036】
次に、一般式(1)におけるX又はYで表される1価のアニオン性配位子について説明する。
1価のアニオン性配位子としては、例えば、ヒドリド、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヒドロキシ基、アシルオキシ基、スルホニルオキシ基、ハロゲンイオン、AlH、AlH(OCHCHOCH、BH、BHCN、BH(Et)及びBH(sec−Bu)等が挙げられる。好ましいものとしてはBH、ヒドリド、又は塩素イオンが挙げられる。なお、本明細書中では、ヒドリドを単に水素、ハロゲンイオンを単にハロゲンということもある。
【0037】
アシルオキシ基としては(RCO)で表されるものが挙げられる、アシルオキシ基RaCOにおけるRとしては、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられる。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、としては、例えば前記した一般式(2)におけるR、R、R、及びRについての説明で述べたようなアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基が挙げられ、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基は、さらに前記した一般式(2)におけるR、R、R、及びRについての説明で述べたようなアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、及び複素環基、並びにハロゲン原子、シリル基、保護されていてもよい水酸基、及び保護されていてもよいアミノ基等で置換されていてもよい。
の置換基としての保護されていてもよいアミノ基としては、無保護のアミノ基;N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基;N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N−ナフチルアミノ基、N−ナフチル−N−フェニルアミノ基等のモノ又はジアリールアミノ基;N−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基等のモノ又はジアラルキルアミノ基;ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ペンタノイルアミノ基、ヘキサノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基;メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n−プロポキシカルボニルアミノ基、n−ブトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、ペンチルオキシカルボニルアミノ基、ヘキシルオキシカルボニルアミノ基等のアルコキシカルボニルアミノ基;フェニルオキシカルボニルアミノ基等のアリールオキシカルボニルアミノ基;ベンジルオキシカルボニルアミノ基等のアラルキルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。さらに保護されていてもよいアミノ基としては、例えば前記の参考文献1に記載されているペプチド合成等で用いられる一般的なアミノ基の保護基で保護されたアミノ基が挙げられる。
としては例えばメチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。
【0038】
スルホニルオキシ基としては(RSO)で表されるものが挙げられる。スルホニルオキシ基RSOにおけるRとしてはアシルオキシ基におけるRと同様のものがあげられる。
ハロゲンイオンとしては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンが挙げられる。好ましくは塩素イオン、臭素イオン、さらに好ましくは塩素イオンが挙げられる。
【0039】
好ましい3座アミノホスフィン配位子としては下記一般式(3)で表されるものが挙げ
られる。
【0040】
【化7】

【0041】
(一般式(3)中、R、R、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、R同士、RとR又はR又はR、RとR又はRが互いに結合し隣接する炭素原子と共に環を形成していてもよい。nは0から3の整数を表す。また、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、置換基を有していてもよい。)
【0042】
一般式(3)において、R、R、R及びRで表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基としては、前記した一般式(2)におけるR、R、R、及びRについての説明で述べたようなアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基が挙げられる。また、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基が有していてもよい置換基としては、前記した一般式(2)におけるR、R、R、及びRについての説明で述べたようなアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、及び複素環基、並びにハロゲン原子、シリル基、置換アミノ基、及び保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。
【0043】
より好ましい3座アミノジホスフィン配位子としては下記一般式(4)で表されるもの
が挙げられる。
【0044】
【化8】

【0045】
一般式(4)中、Ar、Ar、Ar、Arは同一であっても異なっていてもよく、アリール基、芳香族複素環基を表す。また、これらのアリール基、芳香族複素環基は置換基を有していてもよい。
【0046】
一般式(4)におけるアリール基、芳香族複素環基としては例えば前記した一般式(2)におけるR、R、R、及びRについての説明で述べたようなアリール基や複素環の中で述べた芳香族複素環等が挙げられる。また、これらのアリール基や芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、前記した一般式(2)におけるR、R、R、及びRについての説明で述べたようなアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、及びアラルキルオキシ基、並びにハロゲン原子、シリル基、複素環基、置換アミノ基、及び保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。
【0047】
また、さらに好ましい3座アミノジホスフィン配位子としては下記一般式(5)で表されるものが挙げられる。
【0048】
【化9】

【0049】
また、一般式(2)や(3)で表される3座アミノジホスフィン配位子はQ、Q上の置換基によって、またR〜Rによっては光学活性体として一般式(1)で表されるルテニウムカルボニル錯体の配位子として用いることができる。
【0050】
本発明におけるルテニウムカルボニル錯体を製造するための出発原料であるルテニウム化合物としては、特に制限はないが、例えば、RuCl水和物、RuBr水和物、RuI水和物等の無機ルテニウム化合物、RuCl(DMSO)、[Ru(cod)Cl、[Ru(nbd)Cl、(cod)Ru(2−methallyl)、[Ru(benzene)Cl、[Ru(benzene)Br、[Ru(benzene)I、[Ru(p−cymene)Cl、[Ru(p−cymene)Br、[Ru(p−cymene)I、[Ru(mesitylene)Cl、[Ru(mesitylene)Br、[Ru(mesitylene)I、[Ru(hexamethylbenzene)Cl、[Ru(hexamethylbenzene)Br、[Ru(hexamethylbenzene)I、RuCl(PPh、RuBr(PPh、RuI(PPh、RuH(PPh、RuClH(PPh、RuH(OAc)(PPh、RuH(PPh等が挙げられる。例示中、DMSOはジメチルスルホキシド、codは1,5−シクロオクタジエン、nbdはノルボルナジエン、Phはフェニル基をそれぞれ表す。
【0051】
一般式(1)で表されるルテニウムカルボニル錯体は、3座アミノジホスフィン配位子と前駆体となるルテニウムカルボニル錯体から容易に調製することができる。
3座アミノジホスフィン配位子は、脱離基を有するビス(置換アルキル)アミンとリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属フォスフィド化合物を反応させることで容易に調製することができる。
前駆体となるルテニウムカルボニル錯体は、例えば、Inorg.Synth,1974,15,45.に記載の方法などにより得ることができる。得られた前駆体となるルテニウムカルボニル錯体を3座アミノジホスフィン配位子と反応させて3座アミノジホスフィン配位子を有する本発明のルテニウムカルボニル錯体とすることができる。
【0052】
例えば、一般式(1)で表されるルテニウムカルボニル錯体は、一般式(2)で表される3座アミノジホスフィン配位子LとRuXY(CO)(P(Ar(式中、Arは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリール基を表す。)とを反応させて製造することができる。Arにおける、アリール基やその置換基としては前記したものが挙げられる。好ましいArとしては、置換基を有してもよいフェニル基、特にフェニル基が挙げられる。
また、一般式(1)で表されるルテニウムカルボニル錯体におけるXがBHであるルテニウムカルボニル錯体は、例えば、J.Am.Chem.Soc.2005,127,516.に記載の方法などに準じて、Xが塩素イオンであるルテニウムカルボニル錯体とNaBHを反応させることにより製造することができる。
【0053】
このように調製される錯体は、配位子の配位様式やコンホメーションによって立体異性体を生じることがあるが、反応に用いる錯体はこれら立体異性体の混合物であっても純粋なひとつの異性体であっても構わない。これらの錯体は比較的安定に存在し、取り扱いが容易である。
【0054】
好ましい錯体としては、例えば、下記一般式(8)
RuHCl(CO)(L) (8)
(式中(L)は、前記した一般式(5)で表される3座アミノジホスフィンを表す)で表される錯体が挙げられ、この錯体は一般式(5)で表される3座アミノジホスホスフィン配位子LとRuClH(CO)(PPhを適宜溶媒中で攪拌することで容易に調製される。
【0055】
また、好ましい錯体としては、例えば、下記一般式(9)
RuH(BH)(CO)(L) (9)
(式中(L)は、前記した一般式(5)で表される3座アミノジホスフィンを表す)で表される錯体が挙げられ、この錯体は一般式(8)で表されるルテニウムカルボニル錯体とNaBHを適宜溶媒中で攪拌することで容易に調製される。
このようなルテニウムカルボニル錯体を触媒として用いることで、水素雰囲気下でアミドから、対応するアルコールやアミンを高収率、高触媒効率で製造することが可能となる。
【0056】
続いて本発明における、アミド化合物、アルコール及びアミンについて説明する。本発明において原料の基質としてのアミド化合物は、本発明の触媒的合成法において悪影響を及ぼさないいかなる置換基で置換されていてもよい。本発明におけるアミド化合物からのアルコール及び/又はアミンの製造方法は、一般式(1)で表されるルテニウムカルボニル錯体を水素雰囲気下に用いて行う下記化学反応式(D)
【0057】
【化10】

【0058】
(式中、Rは水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、又はシクロアルケニル基を表し、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、及びシクロアルケニル基は置換基を有していてもよい。RII、及びRIIIはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルキニルオキシカルボニル基、シクロアルキニルオキシカルボニル基、又はスルホニル基を表し、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルキニルオキシカルボニル基、シクロアルキニルオキシカルボニル基、又はスルホニル基は置換基を有していてもよい。さらに、RとRII及び/又はRIII、並びにRIIとRIIIが互いに結合し、環を形成していてもよい。)
で表される、アミド化合物から対応するアルコール(B)及び/又はアミン(C)を製造する方法である。
【0059】
生成するアルコール(B)は、次の一般式(B)、
−CH−OH (B)
(式中、Rは、前記したものと同じである。)
で表され、アミン(C)は、次の一般式(C)、
HN(RII)−RIII (C)
(式中、RII及びRIIIは、前記したものと同じである。)
で表される。
本発明の方法は、アミド化合物からアルコール(B)とアミン(C)が同時に生成する対応するアルコール(B)とアミン(C)を製造する方法である。しかし、アルコール(B)又はアミン(C)のいずれか一方の生成物のみに着目した場合には、アルコール(B)又はアミン(C)の一方の化合物のみの製造方法であるということもできる。
また、後記するようにアミド化合物が環を形成している場合には、アミド化合物はラクタムとなり、その場合の生成物は、アルコール(B)とアミン(C)がRとRII及び/又はRIIIが結合して一緒になったアミノアルコールとなる。
【0060】
一般式(A)におけるR、RII、及びRIIIについて説明する。Rにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び複素環基としては前記した一般式(2)におけるR、R、R、及びRについての説明で述べたようなアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び複素環基が挙げられ、アルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、例えば炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられ、その具体例としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、1−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等が挙げられる。アルキニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜10のアルキニル基が挙げられ、その具体例としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。シクロアルケニル基としては、環内に1又は2個の二重結合を含む4〜10員の単環式〜三環式の脂肪族炭化水素基が挙げられ、具体的には、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロへプテニル基、又はシクロオクテニル基が挙げられる。
これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、又はシクロアルケニル基が有していてもよい置換基としては、前記した一般式(2)におけるR、R、R、及びRについての説明で述べたようなアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、シリル基、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、及び保護されていてもよい水酸基等や、一般式(A)におけるRの説明において述べたようなアルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、及びシクロアルキニルオキシ基が挙げられる。ただし、保護されていてもよい水酸基やアミノ基の保護基がアシル基の場合には保護基が外れた生成物が得られる場合がある。また、置換基としてアルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルキニルオキシカルボニル基、又はシクロアルキニルオキシカルボニル基が存在する場合には、これらが水素化還元された生成物が得られる場合がある。
【0061】
置換基としてのアルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルキニルオキシカルボニル基、シクロアルキニルオキシカルボニル基としては、下記一般式(13)
【0062】
【化11】

【0063】
(式中、R13はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、又はシクロアルケニル基を表す。また、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、及びシクロアルケニル基は置換基を有していてもよい。)
で表されるものが挙げられる。
【0064】
一般式(13)におけるR13について説明する。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び複素環基としては、前記した一般式(2)におけるR、R、R、及びRについての説明で述べたようなアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び複素環基が挙げられ、アルケニル基、アルキニル基、及びシクロアルケニル基としては一般式(A)におけるRとRIIについての説明で述べたようなアルケニル基、アルキニル基、及びシクロアルケニル基が挙げられる。
【0065】
一般式(13)におけるR13が有していてもよい置換基としては、前記した一般式(2)におけるR、R、R、及びRについての説明で述べたようなアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び複素環基、並びに一般式(A)におけるRについての説明で述べたようなアルケニル基、アルキニル基、及びシクロアルケニル基が挙げられる。
【0066】
II、RIIIにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基としては、Rに関する説明で述べたのと同じようなアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基が挙げられ、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基としては前記した一般式(2)におけるR、R、R、及びRについての説明で述べたようなアルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基が挙げられる。これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基が有していてもよい置換基としては、前記した一般式(2)におけるR、R、R、及びRについての説明で述べたようなアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、シリル基、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、及び保護されていてもよい水酸基等や、一般式(A)におけるRの説明において述べたようなアルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、及びシクロアルキニルオキシ基が挙げられる。ただし、保護されていてもよい水酸基やアミノ基の保護基がアシル基の場合には保護基が外れた生成物が得られる場合がある。
【0067】
II、RIIIにおけるアルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルキニルオキシカルボニル基、シクロアルキニルオキシカルボニル基はRとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、又はシクロアルケニル基が有していてもよい置換基として前述したアルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルキニルオキシカルボニル基、シクロアルキニルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0068】
ただし、置換基としてアルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルキニルオキシカルボニル基、又はシクロアルキニルオキシカルボニル基が存在する場合には、これらが水素化還元された生成物が得られる場合がある。
【0069】
本発明による反応において、RとRII及び/又はRIIIが環を形成している場合、好ましくはRとRII又はRIIIが環を形成している場合、即ち、RとRIIが環を形成している場合、又はRとRIIIが環を形成している場合には、一般式(A)で表される化合物はラクタムとなる。これらが環を形成する場合には、RとRII及び/又はRIIIが結合して一緒になる必要がある。RとRII及びRIIIが結合して一緒になる場合には、R中の2個の水素原子が取れて、RII及びRIIIのそれぞれの1個の水素原子が取れた箇所と化学結合することにより生成される。また、RとRII又はRIIIが結合して一緒になる場合には、Rの1個の水素原子が取れて、RII又はRIIIのいずれかの1個の水素原子が取れた箇所と化学結合することによって生成される。
これらのRとRII及び/又はRIIIが環を形成している場合には、ラクタムとなり、その場合の還元生成物は、アルコール(B)のRとアミン(C)のRII及び/又はRIIIが結合して一緒になったアミノアルコールとなる。
【0070】
II、RIIIにおけるスルホニル基としては(RSISO)で表されるものが挙げられる。スルホニル基RSISOにおけるRSIとしてはスルホニルオキシ基について述べたRと同様のものがあげられる。また、RSIは、R、RII又はRIIIと結合し環を形成していてもよい。
【0071】
本発明のアルコール類及び/又はアミンの製造方法は、無溶媒又は溶媒中で好適に実施することができるが、溶媒を使用することが好ましい。用いられる溶媒としては、基質及び触媒を溶解できるものが好ましく、単一溶媒あるいは混合溶媒が用いられる。具体的にはトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、2−ブタノール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等の多価アルコール類が挙げられる。この中でもエーテル類又はアルコール類が好ましく、特に好ましい溶媒としては、テトラヒドロフラン、メタノール又はイソプロパノールが挙げられる。溶媒の使用量は、反応条件等により適宜選択することができる。反応は必要に応じ撹拌下に行われる。
【0072】
触媒の使用量は、基質であるアミド、反応条件や触媒の種類等によって異なるが、通常、基質であるアミドに対するルテニウム金属としてのモル比で0.0001モル%〜10モル%、好ましくは0.005モル%〜5モル%の範囲である。本発明の方法において、水素化還元を行う際の反応温度は、0℃〜180℃、好ましくは0℃〜120℃である。反応温度が低すぎると未反応の原料が多く残存する場合があり、また高すぎると、原料、触媒等の分解が起こる場合があり、好ましくない。
本発明の方法において、水素還元を行う際の水素の圧力は、0.1MPa〜10MPa、好ましくは3MPa〜6MPaである。また反応時問は30分〜72時間、好ましくは2時間から48時間で十分に高い原料転化率を得ることができる。
【0073】
反応終了後は、抽出、濾過、結晶化、蒸留、各種クロマトグラフィー等、通常用いられる精製法を単独又は適宜組み合わせることにより目的のアルコール類を得ることができる。
【0074】
本発明における反応には適宜添加剤を加えてもよい。
添加剤としては例えば塩基性化合物が挙げられる。塩基性化合物の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピペリジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、トリ−n−ブチルアミン及びN−メチルモルホリン等のアミン類、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムイソプロポキシド、カリウムtert−ブトキシド、リチウムメトキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウムtert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド等のアルカリ土類金属アルコキシド、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、の金属水素化物が挙げられる。特に好ましい塩基としては、ナトリウムメトキシド又はカリウムtert−ブトキシドが挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下に実施例を挙げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
なお、反応の評価は、単離した収率を出すかガスクロマトグラフィー(GC)のエリアパーセント(%)を確認することで行った。用いた装置は次のとおりである。
【0076】
GC機器 島津 GC-2010
【0077】
GC;キャピラリー Neutra Bond-1
注入温度 220℃,検出温度 250℃
40℃(0分)−5℃/分−100℃−10℃/分250℃(8分)
【0078】
H−NMRスペクトル及び31P−NMRスペクトルの測定はバリアン社製のMERCURY plus 300を使用した。
【0079】
[実施例1]
次の反応式によりルテニウムカルボニル錯体1を製造した。
【0080】
【化12】

【0081】
窒素気流下、前記反応式中のアミン塩酸塩(4.18mmol)を100mlのフラスコに仕込み、トルエン(33ml)に懸濁させ、15%NaOH水溶液(14ml)を加え固体がなくなるまで室温で撹拌した。溶液を分離後、有機層を蒸留水(14ml×2)で洗浄し、水層をトルエン(14ml×2)で抽出した。あわせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去して遊離のアミンを得た。
前記反応式中のルテニウムカルボニル錯体(4.18mmol)を200mlのフラスコに仕込み、窒素置換した後、トルエン(33ml)に溶解させた遊離のアミンを加え、60分加熱還流を行った。ヘキサン(82ml)を加えた後、窒素雰囲気下にて結晶をろ別した。得られた結晶をヘキサン(10ml)、エタノール(40ml)で洗浄した。減圧乾燥し、前記反応式に記載のルテニウムカルボニル錯体1を1.4g(2.3mmol)得た。
【0082】
H−NMR(300MHz CDCl): δ =
-15.23(t, J = 29.3Hz, 1H), 2.40-2.65(m, 4H), 2.90-3.05(m, 2H), 3.30-3.55(m, 2H), 3.92(bs, 1H), 7.08-7.34(m, 4H), 7.38-7.46(m, 8H), 7.40-7.88(m, 8H)
31P−NMR(121.5MHz CDCl): δ=52.8(d, J = 14Hz)
【0083】
[実施例2]
次の反応式によりN,N−ジメチルオクタンアミドから、1−オクタノールを製造した。
【0084】
【化13】

【0085】
撹拌子を入れた50mlのオートクレーブに、実施例1で製造した錯体1(0.01mmol)を加え、窒素置換した。メタノール(300μl)、N,N−ジメチルオクタンアミド(1mmol)、及び2.0Mナトリウムメトキシドのメタノール溶液(500μl)を加え、水素置換した。水素圧5MPa、100℃で16時間攪拌を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、原料のアミドが2%、1−オクタノールが92%であることが確認された。
【0086】
[実施例3−8]
実施例3から8は原料と触媒量を変えて実施例2と同様に行った。実施例2から実施例8までの結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
[実施例9]
次の反応式によりN−フェニルオクタンアミドから、1−オクタノールとアニリンを製造した。
【0089】
【化14】

【0090】
撹拌子を入れた50mlのオートクレーブに、実施例1で製造した錯体1(0.01mmol)とN−フェニルオクタンアミド(1mmol)を加え、窒素置換した。メタノール(300μl)、及び2.0Mナトリウムメトキシドのメタノール溶液(500μl)を加え、水素置換した。水素圧5MPa、100℃で16時間攪拌を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、原料のアミドは消失し、1−オクタノールとアニリンが合計93%確認された。
【0091】
[実施例10−15]
実施例10から15は原料と触媒量を変えて実施例9と同様に行った。実施例10から実施例15までの結果を表2に示す。
【0092】
【表2】

【0093】
[実施例16]
次の反応式によりN,N−ジフェニルオクタンアミドから、オクタノールとN,N−ジフェニルアミンを製造し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、単離生成した。
【0094】
【化15】

【0095】
撹拌子を入れた50mlのオートクレーブに、実施例1で製造した錯体1(0.01mmol)とN,N−ジフェニルオクタンアミド(5mmol)を加え、窒素置換した。メタノール(1.5ml)、及び2.0Mナトリウムメトキシドのメタノール溶液(2.5ml)を加え、水素置換した。水素圧5MPa、100℃で16時間攪拌を行った。反応後冷却し、反応溶液をジクロロメタン40mLにて希釈して、シリカゲルろ過した(溶出溶媒;ジクロロメタン/メタノール=10/1)。濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し(シリカゲル40g、ヘキサン/酢酸エチル=8/1から4/1)、1−オクタノール(500mg、77%)とN,N−ジフェニルアミン(800mg、95%)を得た。
【0096】
1−オクタノールのNMR
H−NMR(300MHz CDCl): δ=
3.63(t, J = 8.8Hz, 2H), 2.00-1.46(m, 2H), 1.40-1.30(m, 10H), 0.90(t, J=8.8Hz, 3H)
【0097】
N,N−ジフェニルアミンのNMR
H−NMR(300MHz CDCl): δ=
7.38-7.21(m, 4H), 27.05-7.15(m, 4H), 7.00-6.90(m, 2H)
【0098】
[実施例17]
次の反応式によりN−メチル−N−フェニルベンズアミドから、ベンジルアルコールとN−メチル−N−フェニルアミンを合成し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、単離生成した。
【0099】
【化16】

【0100】
撹拌子を入れた50mlのオートクレーブに、実施例1で製造した錯体1(0.01mmol)とN−メチル−N−フェニルベンズアミド(5mmol)を加え、窒素置換した。メタノール(1.5ml)、及び2.0Mナトリウムメトキシドのメタノール溶液(2.5ml)を加え、水素置換した。水素圧5MPa、100℃で16時間攪拌を行った。反応後冷却し、反応溶液をジクロロメタン40mLにて希釈して、シリカゲルろ過した(溶出溶媒;ジクロロメタン/メタノール=10/1)。濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し(シリカゲル40g、ヘキサン/酢酸エチル=8/1から4/1)、ベンジルアルコール(425mg、90%)とN−メチル−N−フェニルアミン(440mg、82%)を得た。
【0101】
ベンジルアルコールのNMR
H−NMR(300MHz CDCl): δ=
7.40-7.30(m, 5H), 4.69(s, 2H), 1.72(brs, 1H)
【0102】
N−メチル−N−フェニルアミンのNMR
H−NMR(300MHz CDCl): δ=
7.20(dd, J = 11.6, 9.6Hz, 2H), 6.74(d, J = 9.6HZ, 1H), 6.65(d, J = 11.6Hz, 2H), 3.22(brs, 1H), 2.85(s, 3H)
【0103】
(比較例1)
特許文献2や非特許文献5記載の触媒を用いて反応を行った。
【0104】
撹拌子を入れた50mlのオートクレーブに、Ru(acac)3(0.005mmol)とTriphos(1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン)(0.01mmol)を加え、窒素置換した。メタノール(1.5ml)、N,N−ジメチルベンズアミド(5mmol)、及び2.0Mナトリウムメトキシドのメタノール溶液(2.5ml)、を加え、水素置換した。水素圧5MPa、100℃で16時間攪拌を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、ベンジルアルコールが1%、安息香酸メチルが12%、原料のN,N−ジメチルベンズアミドが86%であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1)
RuXY(CO)(L) (1)
(一般式(1)中、X及びYは同一であっても異なっていてもよくアニオン性配位子を表
し、Lは下記一般式(2)
【化17】

(一般式(2)中、R、R、R、及びRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、複素環基、又は置換アミノ基を表し、これらのRとR又はRとRは互いに結合し隣接するリン原子と共に環を形成していてもよい。また、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、複素環基、置換アミノ基は置換基を有していてもよい。
及びQは同一であっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよい二価のアルキレン基、置換基を有していてもよい二価のシクロアルキレン基、又は置換基を有していてもよい二価のアラルキレン基を表す。)
で表される3座アミノジホスフィン配位子を表す。)
で表されるルテニウムカルボニル錯体存在下、水素雰囲気下で、下記一般式(A)
【化18】

(式中、Rは水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、又はシクロアルケニル基を表し、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、及びシクロアルケニル基は置換基を有していてもよい。RII、及びRIIIはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルキニルオキシカルボニル基、シクロアルキニルオキシカルボニル基、又はスルホニル基を表し、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アルキニルオキシカルボニル基、シクロアルキニルオキシカルボニル基、又はスルホニル基は置換基を有していてもよい。さらに、RとRII及び/又はRIII、並びにRIIとRIIIが互いに結合し、環を形成していてもよい。)
で表されるアミド化合物からアルコール及び/又はアミンを製造する方法。
【請求項2】
3座アミノジホスフィン配位子Lが下記一般式(3)
【化19】

(一般式(3)中、R、R、R、及びRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。nは0から3の整数を表す。)
で表される請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
3座アミノジホスフィン配位子Lが下記一般式(4)
【化20】

(一般式(4)中、Ar、Ar、Ar、及びArは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、アリール基、又は芳香族複素環基を表す。また、これらのアリール基、及び芳香族複素環基は置換基を有していてもよい。)
で表される請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
一般式(4)における、Ar、Ar、Ar、及びArが、置換基を有していてもよいフェニル基である請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
3座アミノジホスフィン配位子Lが下記一般式(5)
【化21】

(式中、Phはフェニル基を表す。)
で表される請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
3座アミノジホスフィン配位子Lが、光学活性な3座アミノジホスフィン配位子である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項7】
一般式(1)におけるXのアニオン性配位子がヒドリドであり、Yのアニオン性配位子がClである請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
一般式(1)におけるXのアニオン性配位子がヒドリドであり、Yのアニオン性配位子が、BHである請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
塩基存在下に行う、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
塩基がナトリウムメトキシドである請求項9記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−67021(P2012−67021A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211338(P2010−211338)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】